【DRY-RUN】主 文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事 実 控訴代理人は原判決を取消す、被控訴人は控訴人に対し金十万円及之に対する本 件訴
主文 本件控訴を棄却する。 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実 控訴代理人は原判決を取消す、被控訴人は控訴人に対し金十万円及之に対する本件訴状送達の翌日以降完済迄年五分の割合による金員を支払え、訴訟費用は第一、二審共被控訴人の負担とするとの判決並担保を条件とする仮執行の宣言を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。 当事者双方の事実上の陳述は左記の外原判決事実摘示と同一であるから之を引用する。 控訴代理人の陳述一、 被控訴人は本件債権差押及転付命令の送達を受けた昭和二十六年十一月七日当時A名義にて普通預金十一万五千円(預金口座番号二四九七号)の預金債務を負担していた、AというのはAの通名又は別名であるから其の預金債権者はAを措いて他に存しない、AとAは同一人格であることに付き執行裁判所に於て顕著ではなかつたから債務名義(支払命令)に於ける債務者の名義かAである限り債権差押及転付命令の申請は債務者の表示としてはAと表示するの外はない、既に右の申請に於て債務者の表示としてAと表示すべきものである限りA名義の預金債権の差押及転付を求めることは到底許容せられ得べくもないから即ち前記の預金口座番号を明記して差押及転付の意図を示唆し以て其の差押及転付を受けたもので之に依つて差押及転付目的之特定するに明確を欠いたとは謂えない、AがAの別名に外ならぬことは当事者聞に明認せられていたから被控訴人が差押及転付の後に当該預金をAに支払つたことは控訴人に対する免責を肯認せられ得ないものである。 二、 AはAの通名又は別名なることは本件債権差押及転付命令申請書には記載しなかつた。 三、 本件債権差押及転付命令正本が被控訴人に送達せられた後に於て石正本に表示せられていた前記預金番号を被控訴人主張 AはAの通名又は別名なることは本件債権差押及転付命令申請書には記載しなかつた。 三、 本件債権差押及転付命令正本が被控訴人に送達せられた後に於て石正本に表示せられていた前記預金番号を被控訴人主張の如く名古屋地方裁判所B書記官が抹消したことは之を認める、然し右は裁判所の更正決定によるものではないから無効である。 四、 本件転付債権に付き控訴人が昭和二十六年十一月二十八日被控訴人から支払を受けた金額は四万五千四百十円五十銭であつたが右金員の支払を受けるに際し被控訴人主張の如く控訴人が被控訴人には損害も迷惑も掛けぬと言う特約を為したことを否認する。 被控訴代理人の陳述一、 本件債権差押及転付命令の正本が昭和二十六年十一月七日被控訴人に送達せられた後同月十二日該命令正本の目録(転付債権の表示)記載中の其の番号「(但預金番号二四九七)」を名古屋地方裁判所B書記官が被控訴銀行C支店に来りて抹消して此処に官印を押捺した、既に裁判所書記官が官印を以て抹消した以上被控訴人としては右抹消が裁判所の内部的の如何なる手続を経たものか又は民事訴訟法上如何なる手続によつたものかを問わず其の公証力に依拠せざるを得ないのであるから被控訴人は前記番号の抹消を適法として共の命令に従つて処理したのである。 二、 被控訴人は昭和二十六年十一月二十八日控訴人に対して転付金元利金四万五千四百十円五十銭を支払つたが其の際本件差押及転付命令に依て之を支払うもので右命令書の欠陥其の他如何なる故障が生じても控訴人は責任を自ら引受け被控訴人には聊かの損害も迷惑も掛けぬと言う特約をしたのであるから控訴人の本控訴請求は失当である。 三、 被控訴人はAの通称がAであつてAとAは同一人であることは之を知らない、本件差押及転付命令の送達を受けた当時は勿論共の送達後A名義の預金を支払う であるから控訴人の本控訴請求は失当である。 三、 被控訴人はAの通称がAであつてAとAは同一人であることは之を知らない、本件差押及転付命令の送達を受けた当時は勿論共の送達後A名義の預金を支払う当時もAと言うのはAの通称であることを知らず別の人だと思つていた。 証拠として控訴代理人は当審証人Dの証言を援用し乙号各証の成立を認め乙第十、十一号証は其の印影が同一であること及乙第十二号証の預金口座番号の記載及之が更正決定によることなく抹消せられている点を利益に援用すると述べ被控訴代理人は当審証人Eの証言を援用し乙第一乃至十二号証を提出した。 理由 控訴人が訴外Aとの間の名古屋簡易裁判所昭和二六年(口)第八三号仮執行宣言付支払命令正本に基き名古屋地方裁判所に対し同訴外人の被控訴銀行に対する普通預金債権の差押及転付命令の申請を為し同裁判所は之に基き昭和二十六年十一月六日附を以て右訴外人が被控訴銀行C支店に有する普通預金債権今十六万七千六百十七円但預金番号二四九七を差押え且右債権を控訴人に転付する旨の同裁判所昭和二六年(ル)第八〇号債権差押及転付命令を発し、右命令正本は同月七日被控訴銀行に送達されたことは当事者間争がない。そして成立に争なき乙第一乃至四号証、同第十、十一号証によれば被控訴銀行は其のC支店に於て右命令送達の同月七日当時(一)A名義の開始の日同年二月一日開始番号二〇二五番なる普通預金債務四万五千円五十銭、(二)A名義の開始の日同年十一月二日開始番号二四九七番なる普通預金債務十一万五千円を夫々負担していたこと、及右(一)(二)の普通預金開始に付き被控訴銀行C支店に預金者から差出された印鑑の印影は同一であるが其の住所は(一)の預金名義人Aは名古屋市a区b町c番地であり(二)の預金名義人Aは同市d区e町f丁目g番 )(二)の普通預金開始に付き被控訴銀行C支店に預金者から差出された印鑑の印影は同一であるが其の住所は(一)の預金名義人Aは名古屋市a区b町c番地であり(二)の預金名義人Aは同市d区e町f丁目g番地であつて両者異つていたことを認め得る。然るに当審証人Dの証言によれげAとはAが自ら使用していた通名に過ぎずAとAは同一人であることを認め得ろから被控訴銀行が本件債権差押及転付命令の送達を受けた当時Aは被控訴銀行に対して右(一)(二)の普通預金債権を有していたものと認められるのである。そして右両者は前記の如く預金開始の日及開始番号を異にするのみならず成立に争なき乙第三、四号証の如く夫々別異の預金通帳が発行されていたのであるから別個の債権で<要旨>あり即ちAは被控訴銀行に対して二個の債権を有していたのである。そこで本件差押及転付命令によ</要旨>り如何なる債権に付き差押の効力を生じたかに付て考えるに元来被差押債権は債権差押及転付命令の記載自体により定まるものである。本件債権差押及転付命令には前記の如く其の発令及之が第三債務者に送達された当時差押うべき債権の表示として「一、金十六万七千六百十七円但債務者が第三債務者銀行のC支店に有する普通預金債権但預金番号二四九七)」と記載されていたが其の債務者の表示は成立に争なき乙第十二号証によれば名古屋市a区b町c番地旧姓A事Aとあるのみで「A」なる通称を表示していない。従つて右命令の差押うべき債権の表示によればA名義の前記(一)の普通預金債権のみが差押うべき債権として特定せられ之のみに付て差押の効力を生じ、A名義の(二)の普通預金債権に付ては差押の効力を生じていないものと謂れなければならぬ。 尤も右の如く預金番号二四九七とあつて此の番号は前記の如く(二)の普通預金債権の番号であるけれども被差押債権は債務者 (二)の普通預金債権に付ては差押の効力を生じていないものと謂れなければならぬ。 尤も右の如く預金番号二四九七とあつて此の番号は前記の如く(二)の普通預金債権の番号であるけれども被差押債権は債務者(預金若即ちA)の氏名において先づ特定すべきものであるから債務者以外の氏名の預金番号を表示するも何等の意義のないものと謂うべきを以て右番号の記載があつても差押及転付命令目体において何等かの方法により預金名義人なるAがAと同一人なることの表示がない以上差押の効力は(二)の預金に付て生ずるものではない。そして右は第三債務者たる被控訴銀行がAとAが同一人なることを知つていたと否とに拘らないのである。(当審証人Eの証言によると被控訴銀行はAがAと同一人であることを知らなかつたことが認められる。)本件に於て被控訴銀行は差押及転付の効力を生じた(一)の普通預金元利合計四万五千四百十円五十銭を昭和二十六年十一月二十八日控訴人に支払つたことは当事者間争がないから控訴人が差押及転付命令によつて取得した債権は既に完済を受けて消滅しているのである。然らば控訴人が(一)の預金のみならず(二)の預金に付ても亦差押及転付の効力を生じていると主張する本訴請求は失当であつて之を棄却した原判決は正当である。 仍て本件控訴を棄却すべく民事訴訟法第三百八十四条第一項第九十五条第八十九条を適用し主文の如く判決する。 (裁判長裁判官中島奨裁判官白木伸裁判官縣宏)
▼ クリックして全文を表示