主文 被告は,原告に対し,金150万3161円及びこれに対する平成17年10月15日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 訴訟費用は被告の負担とする。 この判決は,仮に執行することができる。 事実 及び理由第1請求主文同旨第2事案の概要 事案の要旨(1)本件は,被告の預金口座に誤って150万3161円を振り込んでしまった原告が,被告に対し,不当利得による利得金返還請求権に基づき,誤って振り込んだ金銭の返還を求めている事案である(附帯請求は,訴状送達の日の翌日からの民法所定の年5分の割合による遅延損害金請求である。)。 (2)これに対し,被告は,上記150万3161円が誤って振り込まれたものであることは認めた上で,原告に対して請負代金請求権などを有しているとして,相殺の抗弁を主張している。 前提となる事実(1)当事者等ア原告は,建築一式工事の請負及び設計施工監理等を目的とする株式会社であり,被告は,建物に対する断熱工事の施工及び材料の販売等を目的とする株式会社である。 (争いがない。)イ被告は,平成11年12月ころから,換気設備工事及び断熱工事などを原告から請け負うようになったが,遅くとも本件誤振込(下記(4)ア)がなされた平成17年8月ころには,原告との取引はなくなっていた。 (乙9,被告代表者)ウ(ア)Aは,平成12年よりも前から,被告の代表取締役と務めている。 (争いがない。)(イ)Bは,平成9年に被告に雇用され,それ以後,主に営業部門を担当しており,現在は,被告の取締役を務めている。 (乙9,証人B)(2)本件建物使用契約ア原告は,平成12年2月8日,Aから,別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)の建築工事を請け負い,平成12年6月12日ま 締役を務めている。 (乙9,証人B)(2)本件建物使用契約ア原告は,平成12年2月8日,Aから,別紙物件目録記載の建物(以下「本件建物」という。)の建築工事を請け負い,平成12年6月12日までに同工事を完了し,Aに対し,本件建物を引き渡した。 (争いがない。)イ原告とAは,上記アの請負契約を締結する際,平成12年6月17日から平成13年3月末まで,原告が本件建物をモデルハウスとして使用する旨合意した(以下,この契約を「本件建物使用契約」という。)。 (争いがない。)(3)C邸工事及びD邸工事被告は,平成13年7月ころ,原告から,2つの建物における換気工事を請け負った(以下,これらの工事を「C邸工事」,「D邸工事」という。)。 (争いがない。)(4)本件誤振込ア原告は,平成17年8月22日,株式会社Eの預金口座に対して150万3161円を振り込もうとしたところ,誤って同額を被告の預金口座に振り込んだ(以下,この振り込みを「本件誤振込」という。)。 (甲4の1・2,甲5)イ本件誤振込は,原告の経理担当者が,振込依頼書(15の振込先が一覧表となっている。甲2号証は複写式になっているその控えである。)に記 入する際,下から3段目の株式会社Eの欄に記載すべき振込金額を最下段の被告の欄に記載したことから起こった。 (甲2,弁論の全趣旨)ウ原告は,本件誤振込の後,数日以内に,被告に対し,電話で,本件誤振込について説明するとともに,誤って振り込んでしまった金銭を返還するよう要請した。 (甲5)(5)相殺の意思表示及び消滅時効の援用ア本件建物使用契約関係(ア)Aは,本件訴えが提起された後である平成17年12月19日,本件建物使用契約は賃料支払の合意のある賃貸借契約であったとして,同契約による未払賃料169万8000円 ア本件建物使用契約関係(ア)Aは,本件訴えが提起された後である平成17年12月19日,本件建物使用契約は賃料支払の合意のある賃貸借契約であったとして,同契約による未払賃料169万8000円を被告に譲渡し,同月22日,原告に対し,その旨を通知した。 (争いがない。)(イ)被告は,平成18年1月23日の本件弁論準備手続期日において,原告に対し,上記賃料債権をもって,原告の本訴請求債権とその対当額において相殺する旨の意思表示をした。 (当裁判所に顕著)イ本件追加工事関係(ア)被告は,C邸工事については平成13年7月4日よりも前に,D邸工事については同月10日よりも前に,それぞれ18万9000円の追加工事を請け負い(以下,これらの工事を「本件追加工事」と総称する。),受注後1週間以内に各工事を完了して原告に引き渡したと主張して,平成17年11月11日の本件口頭弁論期日において,上記各請負代金請求権をもって,原告の本訴請求事件とその対当額において相殺するとの意思表示をした。 (イ)上記(ア)の相殺の抗弁に対し,原告は,仮に被告が本件追加工事による請負代金請求権を有しているとしても,本件追加工事の終了から既に3年が経過しているとして,平成17年12月14日の本件弁論準備手続期日において,被告に対し,消滅時効(民法170条2号)を援用する旨の意思表示をした(以下,この消滅時効の援用を「本件時効援用」という。)。 (当裁判所に顕著) 争点 (1)原告は,C邸工事及びD邸工事につき,被告に対し,追加工事を注文したか。 ア被告の主張(ア)被告は,平成13年7月ころ,原告から,C邸工事につき2階第3種アルプス換気取付工事を,D邸工事につき換気ダクト断熱処理増工工事を,いずれも代金18万9000円(消費税相当額込み)で請け 張(ア)被告は,平成13年7月ころ,原告から,C邸工事につき2階第3種アルプス換気取付工事を,D邸工事につき換気ダクト断熱処理増工工事を,いずれも代金18万9000円(消費税相当額込み)で請け負った。 (イ)被告は,C邸の追加工事については同月14日ころまでに,D邸の工事については同月17日ころまでに,それぞれ追加工事を完了し,原告に対し,引き渡した。 イ原告の主張(ア)上記アの事実は否認する。 (イ)原告の発注業務は,原告発行の注文書及び相手方発行の注文請書に基づいて行われているところ,被告の主張する本件追加工事については,被告発行の見積書(乙3,4)が存在するのみで,原告発行の発注書及び被告発行の注文請書が存在しない。このことからも,原告と被告が本件追加工事に関する請負契約を締結した事実が存在しないことが分かる。 (2)原告は,被告に対し,本件追加工事に関する請負代金債務を承認したか。 また,本件時効援用は,信義則に反するといえるか。 ア被告の主張(ア)被告は,平成13年7月以降,原告に対し,再三,本件追加工事による請負代金の支払を求めていた。 (イ)被告の営業部門を担当していたBは,平成17年3月8日,原告の長野支店を訪問し,担当者のEに対し,本件追加工事による請負代金の支払を求めたところ,Eは,Bに対し,被告の意向を本社に伝えると述べた。 (ウ)原告は,その後,被告に対し,前記請負代金を支払わないとの意向を明確に示さなかった。 (エ)それどころか,Eをはじめとする原告の担当者は,平成13年7月以降,本件追加工事による請負代金債務が存在することを前提とする対応をしていた。 (オ)上記(ア)ないし(エ)の事実経過によると,a原告は,時効完成後,被告に対し,本件追加工事による代金債務を承認したというべ 事による請負代金債務が存在することを前提とする対応をしていた。 (オ)上記(ア)ないし(エ)の事実経過によると,a原告は,時効完成後,被告に対し,本件追加工事による代金債務を承認したというべきであり,bまた,被告が,本件追加工事による請負代金請求権について時効中断の手続を採らなかったのはやむを得ないというべきであるから,本件時効援用は,信義則に反して無効であるというべきである。 イ原告の主張(ア)上記ア(ア),(イ)の事実は認める。同(ウ),(エ)の事実は否認する。同(オ)の主張は争う。 (イ)原告は,被告から本件追加工事による請負代金の請求を受けた後,数回にわたり,被告に対し,電話で,原告発行の注文書及び被告発行の注文請書が存在しない以上,被告主張の追加工事代金の支払には応じられない旨告げている。 (3)本件建物使用契約は,賃料支払の合意のある賃貸借契約か。それとも,賃料支払の合意のない使用貸借契約か。 ア被告の主張(ア)Bは,本件建物使用契約を締結する際,原告との間で,賃料として1か月18万円を支払う旨合意した。 (イ)Bは,原告に対し,本件建物使用契約による賃料を支払うよう求めていたが,原告は,全くこれに応じなかった。 イ原告の主張(ア)上記アの事実は否認する。 (イ)本件建物使用契約が賃料支払の合意のない使用貸借契約であったことは,①同契約に関する契約書(乙1)に賃料に関する記載がないこと,②本件建物の請負代金が,本件建物を原告がモデルハウスとして使用することを考慮して,坪単価で約10万円減額していることなどからも分かる。 第3当裁判所の判断 争点(1)(原告は,C邸工事及びD邸工事につき,被告に対し,追加工事を注文したか。)について(1)被告の営業部門を担当していた証人Bは,その ることなどからも分かる。 第3当裁判所の判断 争点(1)(原告は,C邸工事及びD邸工事につき,被告に対し,追加工事を注文したか。)について(1)被告の営業部門を担当していた証人Bは,その証人尋問において,争点(1)アの主張事実に沿う旨の証言,すなわち,被告が原告から本件追加工事を請け負った旨証言し,同人の陳述書である乙9号証にも同旨の記載がある。 また,本件追加工事については,被告が作成した見積書(乙3,4)及び報告書(甲6,7)が存在する。 (2)しかしながら,①本件追加工事については,その発注を明確に示す書類が存在せず,被告が基本工事の中に含まれるべき工事又は工事内容の一部変更をもって追加工事であると主張しているのか,それとも本当に有償の追加工事の合意が存在するのか判然としないこと,②上記見積書及び報告書に は,形式上,作成日付が存在するものの,その作成日付が正確であると認めるに足りる証拠はないこと,③また,その内容も,いずれも被告の認識のみを前提とするものであり,本件追加工事の存在を直接的に裏付けるとはいい難いこと,④証拠(乙7)によると,原告が,平成13年7月当時,基本的には原告の発行する注文書によって発注するという方針を採用していたと認められること,⑤本件追加工事に関する交渉記録(お客様訪問日誌(乙5))をはじめ,本件全証拠を検討しても,原告が本件追加工事が存在することを前提とした対応をとっていたとは認められないこと,⑥証人Bの証言によると,原告と被告の間では,これまでに20件から30件の口頭による追加工事の合意がなされたが,本件追加工事以外に,請負代金の不払が問題となっている工事はないと認められることなどに照らすと,上記(1)の証人Bの証言及び陳述書の記載は,にわかに信用することができないし,ま の合意がなされたが,本件追加工事以外に,請負代金の不払が問題となっている工事はないと認められることなどに照らすと,上記(1)の証人Bの証言及び陳述書の記載は,にわかに信用することができないし,また,被告が作成した見積書(乙3,4)及び報告書(甲6,7)の存在から,本件追加工事の合意の事実を推認することはできないといわざるを得ない。他に,争点(1)アの主張事実を認めるに足りる証拠はない。 (3)そうすると,その余の点につき検討するまでもなく,本件追加工事に基づく請負代金請求権を自働債権とした被告の相殺の抗弁は,理由がないことに帰する。 (4)なお,仮に,本件追加工事の合意が存在し,被告が原告に対して請負代金請求権を有していたとしても,本件追加工事は,被告の主張する工事の終了時期から3年が経過しているから(前記第2の2(5)イ),これらの債権は,いずれも時効によって消滅していると認められる。被告は,争点(2)アのとおり,原告が債務を承認したとか,本件時効援用が信義則に反するなどと主張するが,一件記録を精査しても,原告が本件追加工事に関する請負契約が存在することを前提に対応していた事実を認めるに足りないから,被告のこの点に関する主張は,その余の点について検討するまでもなく採用できない。 争点(3)(本件建物使用契約は,賃料支払の合意のある賃貸借契約か。それとも,賃料支払の合意のない使用貸借契約か。)について(1)被告の代表者であるAは,その本人尋問において,争点(3)アの主張事実に沿う旨,すなわち,原告とAは,本件建物使用契約を締結する際,賃料として1か月18万円を支払う旨合意したと供述し,その陳述書である乙8号証にも同旨の記載がある。 (2)しかしながら,①本件建物使用契約についての契約書(乙1)には,契約内容を変更する 際,賃料として1か月18万円を支払う旨合意したと供述し,その陳述書である乙8号証にも同旨の記載がある。 (2)しかしながら,①本件建物使用契約についての契約書(乙1)には,契約内容を変更する際にはすべて書面をもって行うと明記されているなど,原告とAは,本件建物使用契約に関する合意内容を明確化しようとしていたと認められるところ,本件建物使用契約の契約書の中には,モデルハウスとして使用する間の水道及びガスなどの光熱費については原告が負担する旨の記載が存在するものの,賃料に関する記載が存在しないこと,②証拠(被告代表者)及び弁論の全趣旨によると,Aは,本件誤振込がなされるまで,原告に対し,少なくとも書面をもって賃料の支払を請求したことがないと認められることなどに照らすと,上記Aの供述及び陳述書の記載は,にわかに信用することができない。他に,争点(3)アの主張事実を認めるに足りる証拠はない。 (3)そうすると,本件建物使用契約に基づく賃料支払請求権を自働債権とした被告の相殺の抗弁は,理由がないことに帰する。 結論 以上によると,原告の請求は理由があるから認容すべきである。よって,主文のとおり判決する。 甲府地方裁判所民事部裁判官岩井一真
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