平成21(ワ)43011 不当利得返還請求事件

裁判年月日・裁判所
平成23年3月24日 東京地方裁判所
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判決文本文12,381 文字)

平成23年3月24日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成21年(ワ)第43011号不当利得返還請求事件口頭弁論終結日平成23年1月25日判決東京都世田谷区<以下略>原告 A東京都多摩市<以下略>原告 B原告ら訴訟代理人弁護士里見剛東京都港区<以下略>被告株式会社TBSテレビ同訴訟代理人弁護士岡崎洋同大橋正春同前田俊房同渡邊賢作同村尾治亮同新間祐一郎同木嶋望 主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 被告は,原告Aに対し,924万2100円及びうち別紙「利息一覧表」「原告A分」欄記載の各金員に対する同「利息の起算日」欄記載の各日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は,原告Bに対し,396万0900円及びうち別紙「利息一覧表」「原告B分」欄記載の各金員に対する同「利息の起算日」欄記載の各日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告らが,同人らの作曲した楽曲が株式会社東京放送(以下「東京放送」という。)の制作するテレビ番組のオープニングテーマとして長期間にわたって使用されたものの,一部の期間については原告らの許諾を得ずに上記使用がされたと主張して,会社分割 社東京放送(以下「東京放送」という。)の制作するテレビ番組のオープニングテーマとして長期間にわたって使用されたものの,一部の期間については原告らの許諾を得ずに上記使用がされたと主張して,会社分割により東京放送の権利義務を包括的に承継した被告に対し,上記楽曲の使用料相当額の不当利得の返還及びこれに対する民法704条所定の法定利息の支払を求めた事案である。 1 争いのない事実等(末尾に証拠を掲げていない事実は,当事者間に争いがない事実又は弁論の全趣旨により認められる事実である。)(1) 東京放送は,平成15年11月ころ,ケネックジャパン株式会社(以下「ケネック社」という。)に対し,当時同局で放映されていた昼のドラマシリーズ「愛の劇場」の新たなオープニングに利用されるCGアニメーション(以下「本件オープニング映像」という。)の制作を依頼した。 「愛の劇場」は,昭和44年2月24日から平成21年3月27日までの間,東京放送及びその系列局において,毎週月曜日から金曜日の午後1時から1時半までの放送枠で放送されたテレビドラマシリーズの総称であり,共通したオープニング映像が使用されていた。 (2) ケネック社は,平成15年12月ころ,原告Aに対し,本件オープニング映像に付ける音楽の制作(作曲,演奏,録音物の制作)を依頼した。 原告A及び同原告から協力を求められた原告Bは,平成15年12月24日ころまでに,全部で7秒程度の長さの下記楽曲(以下「本件楽曲」という。)を制作し,同曲をケネック社に納品した。原告Aは,上記納品の際,ケネック社から,「TBS愛の劇場,音楽制作費」の名目で,20万円の支払を受けた(なお,上記納品の際,原告らが本件楽曲を「愛の劇場」のオープニングに使用することを許諾していたか否かについては,後記のとおり当事者間に争いが S愛の劇場,音楽制作費」の名目で,20万円の支払を受けた(なお,上記納品の際,原告らが本件楽曲を「愛の劇場」のオープニングに使用することを許諾していたか否かについては,後記のとおり当事者間に争いがある。)(甲2,3,36,38,乙1,2,原告A本人)。 記楽曲名:「愛の劇場」オープニングテーマ~ホワイトチャイム~(3) 東京放送は,平成16年1月から平成21年3月までの間,毎週月曜日から金曜日まで,テレビドラマ「愛の劇場」のタイトルバック音楽として,本件楽曲のテレビ放送を行い,また,本件楽曲を放送用に録音した(これらの利用行為を併せて,以下「本件使用」という。)。 (4) 原告らは,平成18年4月1日付けで,本件楽曲に係る著作権(以下「本件著作権」という。)を,被告系列の音楽会社である株式会社日音(以下「日音」という。)に譲渡し(以下「本件譲渡契約」という。),日音は,本件譲渡契約(第6条)に基づき,本件著作権の管理を社団法人日本音楽著作権協会(以下「JASRAC」という。)に委託した(甲2,3)。 その後,日音は,JASRACから,平成18年4月1日から平成20年3月31日までの本件使用に係る本件楽曲の使用料を受領し,原告らに対し,本件著作権譲渡の対価として,本件譲渡契約(第10条)に基づき上記金額の2分の1を分配した(甲4~11)。 (5) 原告Aは,平成21年2月6日,被告に対し,平成16年1月1日から平成18年3月31日までの本件使用に係る本件楽曲の著作権使用料が支払われていないので,これを支払ってほしい旨を通知した。これに対し,被告は,平成21年3月2日付けの内容証明郵便により,原告Aに対し,本件使用について東京放送はケネック社を通して原告Aから許諾を得ており,原告Aに対して使用料を支払う理由はない旨を回答 これに対し,被告は,平成21年3月2日付けの内容証明郵便により,原告Aに対し,本件使用について東京放送はケネック社を通して原告Aから許諾を得ており,原告Aに対して使用料を支払う理由はない旨を回答した(甲12の1・2,甲13)。 (6) 被告は,平成21年4月1日付け会社分割により,同日付けで,東京放送から同社のテレビ放送事業に関する権利義務を包括的に承継した。 2 争点(1) 原告らは,被告に対して本件使用を許諾したか(争点1)(2) 原告らの損失(争点2) 3 争点に関する当事者の主張(1) 争点1(原告らは,被告に対して本件使用を許諾したか)について[被告の主張]ア原告らは本件使用について許諾していること(ア) 本件楽曲は,「愛の劇場」シリーズのオープニング映像に組み込まれて放送されるために制作された委嘱著作物である。放送局が放送で使用するために楽曲等の制作を著作者に委嘱した場合,委嘱の目的に従って放送されることは当然に予定されていることから,委嘱の際に支払われる委嘱料・制作費以外に,委嘱の目的に従った放送について放送使用料が支払われないことは,委嘱の趣旨から当然であり,委嘱著作物の制作に係る取引全般における慣行である。 (イ) 東京放送は,平成15年11月ころ,ケネック社に対し,愛の劇場のオープニング映像(約10秒のもの)の制作を依頼した。ケネック社は,原告Aに対し,上記映像に付ける音楽の制作(作曲,演奏,録音物の制作)を発注し,その際,原告Aに対し,制作された音楽は平成16年1月から愛の劇場のオープニング映像の音楽として使用される旨を説明した。 したがって,原告Aは,本件楽曲の制作目的である「愛の劇場」シリーズのオープニング映像において放送利用されること(本件使用)を了解して本件楽曲を制作したもの の音楽として使用される旨を説明した。 したがって,原告Aは,本件楽曲の制作目的である「愛の劇場」シリーズのオープニング映像において放送利用されること(本件使用)を了解して本件楽曲を制作したものであり,本件楽曲について本件使用がされることについて,特段条件を付けることなく許諾していたものである。本件使用に係る本件楽曲の使用料は,ケネック社が原告Aに対して「音楽制作費」の名目で支払った20万円の中に含まれている。 (ウ) 原告らは,本件オープニング映像の放送開始後,本件使用がされていることを認識しながら,平成20年12月までは,東京放送又は関連会社に対して本件使用に係る対価の請求をしなかった。この事実は,原告らが本件使用について許諾済みであり,その後に本件使用について許諾料が支払われることは予定されていなかったことを裏付けるものである。 イ本件譲渡契約が締結された経緯原告らが上記のとおり本件使用について許諾し,使用料についても受領していたにもかかわらず,原告らと日音との間で本件譲渡契約が締結され,平成18年4月1日以後の本件楽曲の放送利用(本件使用)について原告らがJASRACから分配金を受領した経緯は,次のとおりである。 (ア) 本件楽曲は,愛の劇場のオープニング映像のために制作された7秒程度の音楽であり,本件使用以外の利用については,特段想定されていなかった。 (イ) ところが,平成18年6月ころ,携帯電話の着信メロディー(着メロ)の配信等を行っていた会社である株式会社フェイス・ワンダワークス(当時の商号は「ギガネットワークス株式会社」)から,日音に対し,「本件オープニング映像のBGMを着メロに使いたいのでJASRACに問い合わせたが,JASRACに信託されていないとのことであった。日音は何か知らないか」,との ークス株式会社」)から,日音に対し,「本件オープニング映像のBGMを着メロに使いたいのでJASRACに問い合わせたが,JASRACに信託されていないとのことであった。日音は何か知らないか」,との問合せがあった。 (ウ) 日音は,上記問合せを受けて東京放送に問い合わせたところ,本件オープニング映像は,本件楽曲も含めて東京放送がケネック社からいわゆる買い取った作品であると言われた。その際,日音は,東京放送の担当者から,本件楽曲の作曲者が日音に本件楽曲の著作権を譲渡し,日音が更にJASRACに信託譲渡することで,本件楽曲の著作権使用料を本件楽曲の作曲者が受けられるようにするよう助言された。 (エ) 東京放送の担当者が上記助言をした理由は,次のとおりである。すなわち,放送局がJASRACに対して支払う著作権使用料は,放送局の放送収入から一定の算式に基づき算出された包括的な一定の額として定められており,放送局によるJASRACの管理楽曲の利用の多寡に関わらない。そのため,東京放送としては,本件楽曲の著作権がJASRACに信託譲渡されたとしても,JASRACに支払うべき著作権使用料は増加しないため不利益を被らないのに対し,上記信託譲渡により,東京放送の100%子会社である日音は,JASRACから本件使用に係る分配金が支払われることになることから,東京放送グループにとって利益となると考えたものである。このようなスキームをとることは,東京放送の基本的な方針となっていた。 [原告らの主張]原告らは,本件楽曲について本件使用がされることを許諾したものの,この許諾は,以下のとおり,「相当額の著作権使用料の支払」を停止条件とするものであった。 ア原告Aは,平成15年12月,ケネック社から,愛の劇場のタイトルバック音楽の制作を依頼されたが,そ の,この許諾は,以下のとおり,「相当額の著作権使用料の支払」を停止条件とするものであった。 ア原告Aは,平成15年12月,ケネック社から,愛の劇場のタイトルバック音楽の制作を依頼されたが,その際,ケネック社に対し,「今回の曲は買取りではないので,著作権使用料の話になったら別途TBSさんと話をさせてください。」と伝え,本件著作物の使用については東京放送による著作権使用料の支払が前提となる旨,念を押し,ケネック社も異議を述べなかった。 なお,原告がケネック社から支払を受けた20万円は,別紙実費一覧表記載のとおり,本件楽曲の制作に要した実費相当分であって,本件使用の対価ではない。原告A(及び作曲,演奏部分に関しては原告B)は,ケネック社との数回にわたる打合せ,依頼内容に沿った形での候補曲4曲の作曲及び演奏,これらの候補曲の中からクライアントが選択した1曲についての,音色・楽器違いの5バージョンの制作,当該5バージョンの中から,クライアントが選択した最終候補である2バージョンについてのマスタリング作業,最終的に選択された1バージョンについてのMA作業(CG,音楽,ナレーションを合わせて編集する作業)への立会いという,複数の楽曲制作を含めた相当量の創作的作業を行っている。 イ原告らは,本件楽曲の使用料の件についてはケネック社から東京放送に伝えられていると考え,東京放送のような大企業が看板番組枠で実際に使用している楽曲の使用料を支払わないということはよもやあり得ないと思い,また,著作権使用料の話を急がせば,東京放送から本件楽曲の使用を打ち切られてしまうのではないかとの心配もあって,東京放送に対して直接請求をすることはしなかった。 ウ東京放送が日音に対し原告らと本件譲渡契約を締結するよう助言したのは,東京放送がケネック社から買い取 れてしまうのではないかとの心配もあって,東京放送に対して直接請求をすることはしなかった。 ウ東京放送が日音に対し原告らと本件譲渡契約を締結するよう助言したのは,東京放送がケネック社から買い取ったと思っていた本件著作権に関し,実は買取りの事実が存在しないことが判明したため,少なくとも,その後の使用に関しては許諾を受けたものとする必要に迫られたためであり,いわば苦肉の策として採られた対応である。 原告らは,本件譲渡契約によって平成18年4月以後の著作権使用料の支払については処理されたため,時間はかかったものの,ケネック社において,約束どおり著作権使用料の話を東京放送に通してくれたと思い,むしろ安心した。また,原告らは,本件譲渡契約の際,東京放送,日音,ケネック社のいずれからも,被告の主張する上記[被告の主張]イ(エ)のスキームについては説明を受けておらず,東京放送において平成18年3月以前の著作権使用料を支払う意思がないとの話をされたこともない。 エそこで,原告らは,その後も東京放送に対する直接請求を行わず,東京放送からの著作権使用料の支払を待っていたところ,平成20年12月になって,「愛の劇場」が平成21年3月をもって終了するという情報を得たため,本件楽曲の放送打切りを心配する必要もなくなり,東京放送に対して初めて直接の請求をした。 (2) 争点2(原告らの損失)について[原告らの主張]ア東京放送は,本件譲渡契約後の本件使用に関してはJASRAC経由で原告らに対し著作権使用料を支払っているものの,原告らが本件楽曲の著作権者であった期間(平成16年1月から平成18年3月まで)における本件使用に関しては,原告らに対して著作権使用料を支払っていない。 したがって,平成16年1月から平成18年3月までの間の本件使用に関 者であった期間(平成16年1月から平成18年3月まで)における本件使用に関しては,原告らに対して著作権使用料を支払っていない。 したがって,平成16年1月から平成18年3月までの間の本件使用に関しては,「相当額の著作権使用料の支払」という停止条件が成就しておらず,原告らによる本件使用の許諾は効力を生じていないので,東京放送は,上記期間中の本件使用について法律上の原因なく本件楽曲の使用料相当額の利益を受け,原告らは,上記利益と同額の損失を被った。 イ平成16年1月から平成18年3月までの本件使用による原告らの損失については,本件譲渡契約後に東京放送がJASRAC経由で日音に支払った著作権使用料を基準とすることが合理的である。 別紙著作権使用料一覧表によれば,東京放送がJASRAC経由で日音に支払った著作権使用料は,1期(3か月)平均で146万7000円である。 したがって,平成16年1月から平成18年3月までの本件使用による原告らの損失(被告の利得)は,1320万3000円(146万7000円×9期分)と評価するのが相当である。 ウ原告らは,本件著作権を原告Aが7割,原告Bが3割の割合で共有しているから,原告Aの損失額は924万2100円(1320万3000円×70%)であり,原告Bの損失額は396万0900円(1320万3000円×30%)である。 また,東京放送は,当初から,相当額の著作権使用料を支払わずに本件使用を行っていることを認識していたものであるから,悪意の受益者(民法704条)に当たる。 エよって,原告らは,被告に対し,上記ウの損失額及びこれに対する各月ごとの法定利息として,前記「第1請求」記載の金員の支払を求める。 オ仮に,原告らが,JASRACに本件著作権の管理を委託せずに,東京放送との間 は,被告に対し,上記ウの損失額及びこれに対する各月ごとの法定利息として,前記「第1請求」記載の金員の支払を求める。 オ仮に,原告らが,JASRACに本件著作権の管理を委託せずに,東京放送との間で本件楽曲の使用許諾契約を直接締結した場合でも,JASRACの使用料規程は音楽著作物利用の対価額の事実上の基準として機能していることから,同規程を基準として使用料を決定することが合理的である。その場合,本件楽曲の使用料は,次のとおりとなる。 放送:(1回64,000円)×587日(平成16年1月1日から平成18年3月31日までの期間における月曜日から金曜日までの日数の合計)=37,568,000(円)放送用録音:(1回6,400円)×587日=3,756,800(円)原告らは,本件訴訟において,上記使用料の合計額({3756万8000円+375万6800円}×1.05(消費税)=4339万1040円)の一部として,前記「第1請求」記載の金員を請求する。 [被告の主張]ア原告らの主張を否認ないし争う。 イ JASRACの分配基準は,楽曲の長短を問わず3分以下を一律としていたものであり,これを本件使用についての基準とすることは合理性に乏しい。 また,上記分配額は,JASRACが社団法人日本民間放送連盟に加盟する地上波テレビ放送局の全局から徴収した包括著作権使用料の合計額を基に,JASRACが定める「著作物使用料分配規程」に従って,JASRACが「愛の劇場」に関する分配額として算定したものであり,東京放送がJASRACに支払った本件使用に関する著作権使用料ではない。この分配額には,東京放送による放送分だけでなく,東京放送以外の系列放送局が各地域で放送したことに係る分配額も含まれている。 ウ JASRACの使用料規程が音楽著 使用に関する著作権使用料ではない。この分配額には,東京放送による放送分だけでなく,東京放送以外の系列放送局が各地域で放送したことに係る分配額も含まれている。 ウ JASRACの使用料規程が音楽著作物利用の対価額の事実上の基準として機能しているとの事実はない。 エ原告らは,平成16年1月に本件使用が始まったにもかかわらず,原告らから日音に対する本件著作権の譲渡及び日音からJASRACに対する本件著作権の信託譲渡が平成18年6月まで行われなかった理由は,原告らが,東京放送や日音に対して本件使用に関する著作権使用料の支払を請求すると東京放送が本件楽曲の利用を打ち切るかも知れないと考え,東京放送や日音に直接請求をしなかったからであると主張する。 しかしながら,仮に,原告らが東京放送又は日音に対して著作権使用料を請求していれば,東京放送は,前記(1)[被告の主張]イ(ウ)及び(エ)のとおり,日音を通じてJASRACに信託譲渡するよう,原告らに対して助言をしていたことは確実である。 したがって,原告らは,自ら行動すれば容易にJASRACから著作権使用料の支払を受けることが可能であったものであり,支払を受けられなかったのは専ら原告ら自身の選択によるものであるから,不当利得制度の趣旨である公平の見地に鑑み,原告らに損失があるとはいえない。 また,JASRACから原告らに対して著作権使用料が支払われた場合でも支払われなかった場合でも,東京放送がJASRACに支払った著作権使用料は同額であるから,平成16年1月から平成18年3月までの本件使用に関して東京放送に利得はない。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(原告らは,被告に対して本件使用を許諾したか)について(1) 認定事実ア前記争いのない事実等のほか,証拠(甲2~15,36,3 て東京放送に利得はない。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(原告らは,被告に対して本件使用を許諾したか)について(1) 認定事実ア前記争いのない事実等のほか,証拠(甲2~15,36,38,乙2,4~8,証人C,D,原告A本人)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 (ア) 本件楽曲が制作されるまでの経緯a 東京放送は,平成15年11月ころ,ケネック社に対し,当時同局で放映されていた昼のドラマシリーズ「愛の劇場」の新たなオープニングに利用される10秒程度のCGアニメーション(本件オープニング映像)の制作(この中には,ケネック社の責任において,東京放送が本件オープニング映像を「愛の劇場」のオープニング映像として利用することが可能となるよう権利処理するということも含まれる。)を,250万円の報酬で依頼し,ケネック社は,これを承諾した。なお,ケネック社は,テレビドラマや音楽番組等の放送番組に用いられるタイトルバックの映像制作,番組のオープニング映像の制作等を業務とし,東京放送等のテレビ局とも取引のある会社であった。 b ケネック社は,上記依頼を受けて,企画の立案,演出及び制作管理については同社において行い,キャラクター及び映像の実制作並びに音楽の実制作は外部に発注することとした。 c そこで,ケネック社は,平成15年12月12日ころ,同社の役員であるCと旧知の原告Aに対し,本件オープニング映像のタイトルバックに使用する音楽である旨を説明した上,この音楽の制作を依頼した。なお,ケネック社は,原告Aに上記依頼をした当時,原告Bとの面識はなかった。 d 原告Aは,平成15年12月24日ころまでに,7秒ほどの長さの本件楽曲を制作し,これをケネック社に納品して,同社から,「TBS愛の劇場,音楽制作費」として20万円の 告Bとの面識はなかった。 d 原告Aは,平成15年12月24日ころまでに,7秒ほどの長さの本件楽曲を制作し,これをケネック社に納品して,同社から,「TBS愛の劇場,音楽制作費」として20万円の支払を受けた。また,原告Aは,本件楽曲を制作するに当たり,原告Bの協力を得た。 (イ) 本件使用の開始本件楽曲は,平成16年1月から,「愛の劇場」のオープニング映像(本件オープニング映像)のタイトルバック用音楽として使用され,東京放送及びその系列局において放映された。原告Aは,本件楽曲が本件オープニング映像に使用されていることを認識していたものの,東京放送に対して本件使用に関する本件著作権の使用料の支払を求めることはなかった。 (ウ) 本件譲渡契約が締結された経緯a 携帯電話の着信メロディー(着メロ)の配信等の業務を行っていた会社である株式会社フェイス・ワンダワークス(当時の商号は「ギガネットワークス株式会社」)は,平成18年6月ころ,本件オープニング映像のBGM(本件楽曲)を携帯電話の着メロに使用したいと考え,JASRACに問い合わせたところ,JASRACは本件楽曲の信託譲渡を受けていないとの回答を受けたため,東京放送系列の音楽出版社であり,東京放送の100%子会社である日音に対し,本件楽曲について何か知らないかと照会した。 b 日音は,上記照会を受けて,本件楽曲につき東京放送に問い合わせたところ,本件オープニング映像は,本件楽曲も含めて東京放送がケネック社からいわゆる買い取った作品であるとの説明を受けるとともに,東京放送の担当者から,本件楽曲の作曲者が日音に本件楽曲の著作権を譲渡し,日音が更にJASRACに信託譲渡することで,本件楽曲の著作権使用料を本件楽曲の作曲者が受けられるようにするよう助言された。 c 東京放送の ら,本件楽曲の作曲者が日音に本件楽曲の著作権を譲渡し,日音が更にJASRACに信託譲渡することで,本件楽曲の著作権使用料を本件楽曲の作曲者が受けられるようにするよう助言された。 c 東京放送の担当者が上記助言をしたのは,放送局が放送における著作物の利用に関してJASRACに支払う著作権使用料は,JASRACと放送局との間の協定により,放送局の放送事業収入に所定の使用料率を乗じるなどして算定した金額とするものとし,これをJASRACの管理する著作物についての包括的な利用許諾料とすることが定められていたことから(乙4~6),本件楽曲の著作権がJASRACに信託譲渡されたとしても,東京放送がJASRACに支払うべき著作権使用料は増加しない一方,上記信託譲渡により,東京放送のグループ会社である日音は,JASRACから本件使用に係る分配金を受けることができることになるため,東京放送グループにとって利益となると考えたからである。 また,東京放送は,ケネック社にも上記案を説明し,同社に対し,同案は原告Aの利益にも適うものなので,ケネック社から原告Aに連絡し,日音に本件著作権を譲渡するよう働きかけてほしいと頼んだ。 d 東京放送から上記助言を受けた日音は,同助言に沿って原告らとの間で本件著作権を原告らから日音に譲渡する譲渡契約を締結することとし,平成18年4月1日付けで,以下の点等を内容とする著作権譲渡契約(本件譲渡契約)を締結した(甲2,3)。 ① 原告Aの著作権を70%とし,原告Bの著作権を30%とする。 ② 契約期間を平成18年4月1日から本件楽曲の著作権の存続期間中とする。 ③ 日音は,本件楽曲の著作権の管理をJASRACに委託する。 e 日音は,本件譲渡契約(第6条)に基づき,本件著作権をJASRACに対して信託譲渡した。 本件楽曲の著作権の存続期間中とする。 ③ 日音は,本件楽曲の著作権の管理をJASRACに委託する。 e 日音は,本件譲渡契約(第6条)に基づき,本件著作権をJASRACに対して信託譲渡した。その後,日音は,平成18年4月1日以後の本件使用に関する使用料について,JASRACから,JASRACが社団法人日本民間放送連盟に加盟する地上波テレビ放送局の全局から徴収した包括著作権使用料の中からJASRACの「著作物使用料分配規程」に基づき本件使用に関する分配額として算定された金額の分配を受け,これを本件譲渡契約(第10条)に基づき原告らに対して分配した。 (エ) 原告Aから東京放送に対する本件使用の対価の請求原告Aは,平成20年12月ころ,「愛の劇場」の放映が平成21年3月末をもって終了することを知った。 原告Aは,平成21年2月6日,被告に対し,平成16年1月1日から平成18年3月31日までの本件使用に係る本件楽曲の著作権使用料が支払われていないので,これを支払ってほしい旨を通知した。これに対し,被告は,平成21年3月2日付けの内容証明郵便により,原告Aに対し,本件使用について東京放送はケネック社を通して原告Aから許諾を得ており,原告Aに対して使用料を支払う理由はない旨を回答した。 イ原告らは,本件楽曲の制作及び納品に当たって,ケネック社に対し,本件楽曲は買取りではなく,「愛の劇場」のオープニング映像に使用する場合の使用料については別途東京放送と交渉する意向である旨を伝えていたと主張し,原告Aの供述(同人の陳述書(甲38)を含む。)中にはこれに沿う部分があるが,これを裏付けるに足りる客観的証拠はなく,前掲各証拠に照らし採用することができない。 (2) 上記事実関係によれば,① 東京放送は,ケネック社に対して本件オープ 。)中にはこれに沿う部分があるが,これを裏付けるに足りる客観的証拠はなく,前掲各証拠に照らし採用することができない。 (2) 上記事実関係によれば,① 東京放送は,ケネック社に対して本件オープニング映像の制作を依頼するに当たって,同映像に係る著作権処理をすべて済ませた物を納品するよう求め,ケネック社は,これを承諾して本件オープニング映像を制作し,東京放送に納品していること,② 原告らは,本件オープニング映像用に本件楽曲を制作して同曲をケネック社に納品し,本件楽曲が平成16年1月から「愛の劇場」のオープニング映像用のタイトルバックとして使用されていることを認識していたにもかかわらず,平成20年12月までの約5年間,東京放送に対して本件楽曲の使用料を請求していないこと,③ 本件楽曲は,全体で7秒程度のごく短いものであり,ケネック社から原告らに支払われた20万円という金額は,「愛の劇場」のオープニング映像としての使用料を含むものであったとしても,特段不自然とはいえないこと,などが認められ,これらの事実に鑑みると,原告らは(原告Bについては原告Aを通して),ケネック社又は東京放送に対し,金20万円を対価として,本件楽曲を本件オープニング映像に使用することを許諾したものと認めるのが相当であり,許諾に当たり,原告らの主張するような停止条件が付されていたと認めることはできない。 また,原告らは,平成18年4月1日付けで日音との間で本件譲渡契約を締結し,同日以後の本件使用に係る使用料については,日音から本件著作権の信託譲渡を受けたJASRACを通じて分配金を受け取っていることが認められるが,本件譲渡契約の締結された経緯については上記(1)ア(ウ)に認定のとおりであり,東京放送が本件使用に関して原告らに使用料の支払義務があることを前提としたも 分配金を受け取っていることが認められるが,本件譲渡契約の締結された経緯については上記(1)ア(ウ)に認定のとおりであり,東京放送が本件使用に関して原告らに使用料の支払義務があることを前提としたものではなかったものであるということができるから,上記本件譲渡契約の締結等の事実は,上記認定を左右するものではない。 2 よって,その余の点について判断するまでもなく,原告らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47部 裁判長裁判官阿部正幸 裁判官山門優 裁判官柵木澄子

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