1 主文被告人を懲役5年に処する。 未決勾留日数中120日をその刑に算入する。 2 理由要旨(犯行に至る経緯)被告人は,けんかをして無期停学処分を受けたことから高校を中途退学し,実家の和菓子店の手伝いをするなどした後,厨房機器販売会社に勤務したが,給料が少なく,サラ金から返済督促が来て居づらくなり,同社を辞めて弁当製造販売会社で働くようになった。 その間の平成10年1月末ころ,被告人は,浜松駅近くで声をかけて親しくなった甲女(昭和53年1月30日生)が妊娠したことから,平成11年7月甲女と婚姻し,平成12年1月長男,平成13年12月二男をもうけたが,被告人が,理屈を付けて自己の給料を家計に入れず,不審を抱いた甲女が,被告人の勤務先を訪ねて,被告人が給料の支払い状況等についてうそをつき,給料の前借りまでしていることを知り,その後,被告人がサラ金から借金をしていることも知られるに及んで,被告人が家を飛び出して別居状態となり,平成14年9月9日甲女が子どもを引き取り,被告人が養育費月3万円を支払う約束で調停離婚した。 一方,乙女(昭和55年7月16日生)は,短大在学中に17歳の定時制高校生であった丙男と親しくなり,平成12年2月23日Aを出産し,同年12月婚姻届をして丙男の実家で結婚生活を送ったが,嫁としての生活になじめず,平成13年5月ころからミニクラブのホステスとして稼働し,その寮に親子3人で移り住んだ。乙女は,丙男が乙女の収入をあてにするようなことをしたことなどから,平成13年8月ころ別居し,平成14年1月離婚した。 被告人は,平成13年8月ころ,ホステスをしていた乙女と知り合い,交際を始めて同年末ころから肉体関係を持ち,平成14年3月ころから乙女の勤務先の寮で同棲を始めたが,同年6月ころ乙女は勤務先を辞めて実家に戻 は,平成13年8月ころ,ホステスをしていた乙女と知り合い,交際を始めて同年末ころから肉体関係を持ち,平成14年3月ころから乙女の勤務先の寮で同棲を始めたが,同年6月ころ乙女は勤務先を辞めて実家に戻った。被告人は,その後も乙女と交際を続け,同年7月下旬ころ乙女が妊娠していることが分かったが,経済的に困窮していたことから,被告人が費用を調達して妊娠中絶をすることにした。 被告人は,同年8月ころ,実母に実情を打ち明けて180万円を借り,これでサラ金の借金を返済して肩書住居地のアパートを借り,同月23日乙女及びAと共に入居した。被告人は,Aがすぐに泣き出し,静かにしろと注意してもなかなか泣きやまず,また,部屋の中で足踏みをしたり走り回ったりし,それを注意したことからAがますますなつかなくなり,乙女がAに適切なしつけをしないといらだち,密かにAをつねる等の体罰を加えた。 被告人は,乙女が料理を作らないことから,外食したりコンビニで弁当を買ってくるなどしたが,同年9月10日を過ぎると所持金も1000円くらいとなり,被告人が勤務先の配達用の昼食弁当の予備を1,2個抜き取って自宅に届けていた。 (罪となるべき事実)被告人は,平成14年9月12日午後7時30分ころ,静岡県浜松市内の自宅浴室内において,乙女に頼まれてA(当時2歳)を風呂に入れて遊ばせていたところ,シャワーのお湯がかかって同児が泣き出し,一旦泣き止んだものの,同児の洗髪をしたところ,同児が再び泣き出し,いくら注意しても激しく泣き続けたことから,これに憤激し,同児を立たせ,右手拳で同児の額部付近を強く殴りつけて,その勢いで同児の後頭部を浴室壁面に打ち付けさせた上その反動で転倒させてその前頭部を床に打ち付けさせ,泣き止まない同児を立たせて,さらに,右手掌でその左側頭部を手加減せずに殴りつけ,そ く殴りつけて,その勢いで同児の後頭部を浴室壁面に打ち付けさせた上その反動で転倒させてその前頭部を床に打ち付けさせ,泣き止まない同児を立たせて,さらに,右手掌でその左側頭部を手加減せずに殴りつけ,その勢いで同児の頭部を浴室角の二つの壁面に連続して打ち付けた上その反動で転倒させて前頭部を床に打ち付け,そのため同児の頭部がひどく腫れ上がり,目の周りも黒くなったのに,「冷やしタオルを載せておけばいい」などとうそぶいて布団に寝かせさせておき,その後の同月14日午後6時15分ころ,弁当の余りがなくて持ち帰ることができず,所持金もほとんどなくなり,実母から金を借りようしてけんかとなった腹立ち紛れに,自宅居間の布団の中で寝ていたAの腹部を右手刀で3回強打する暴行を加え,これらの暴行により同児に頭蓋底亀裂骨折及び腸間膜出血等の傷害を負わせ,よって,同日午後10時54分ころ,聖隷浜松病院において,同児を上記傷害に基づく外傷性ショックにより死亡するに至らせたものである。 (証拠の標目)略(法令の適用)略(量刑の理由)本件は,被告人が,同棲相手の連れ子を虐待死させた傷害致死の事案である。 暴行の態様は,判示のとおり,大人の男性である被告人が,わずか2歳の幼児に対し,感情の激するまま,手加減することなく,2回にわたり,その額部や頭部という身体の重要部位を殴りつけ,同児をはね飛ばしてその頭部等を浴室の壁面や床面に打ち付けたものであり,その暴行が強度であったことは,同児に頭蓋底亀裂骨折等の傷害を負わせ,その頭部がひどく腫れ上がって目の周りが黒ずんだことからも明白である。被告人は,同児の頭部等が異様な状態になったのに気づきながら,タオルで冷やせば大丈夫だなどとうそぶき,その後さらに憂さ晴らしに,布団の中で寝ていた同児の腹部を手刀で強打する暴行を加えて 明白である。被告人は,同児の頭部等が異様な状態になったのに気づきながら,タオルで冷やせば大丈夫だなどとうそぶき,その後さらに憂さ晴らしに,布団の中で寝ていた同児の腹部を手刀で強打する暴行を加えて八つ当たりし,同児に腸間膜出血の負傷をさせ,これらの暴行により同児を死亡するに至らせたものである。被告人の犯行は卑劣かつ凶暴である。 犯行の動機は,2歳児であればやむを得ない行動に対して,被告人は,苛立ちを募らせ,泣くのを暴力で抑えつけようとし,あるいは八つ当たりに暴力を振るったのであり,誠に理不尽である。 犯行に至る経緯をみても,被告人は,サラ金に借金があり,養うべき妻子もいながら,ミニクラブに遊びに行き,気に入ったホステスと交際して妊娠させ,自らの家庭を崩壊させて,同女と同棲を始め,働かない同女にも不満を抱いて,その連れ子に八つ当たりをしたものである。被告人が経済的に困窮して精神的に追い詰められたのは,被告人の無計画な生活態度と見栄のためであり,被告人がストレスをためて本件犯行に及んだという経緯に同情すべきところはない。 犯行の結果,わずか2歳の幼児の命を失わせており,誠に重大である。同児は,父母の離婚により,実父と別れさせられ,同居した男性からは痛めつけられ,その苦痛の中でわずか2年でこの世を去らなければならなかったのであり,哀れである。 被害児の実母は,理不尽な行動を取った前夫と別れ,可愛いい盛りの我が子と共に楽しい生活を送ることができるものと考えて,被告人と同棲を始めたところ,被告人の暴力により愛児を失わさせられたのである。その悲しみは深く,処罰感情が極めて強いのも当然である。被害児の実父の被害感情も厳しい。 そうすると,被告人が本件犯行を認め,反省の情を示していること,被告人は,被害児らが生活できるように努力していたのであり,被 ,処罰感情が極めて強いのも当然である。被害児の実父の被害感情も厳しい。 そうすると,被告人が本件犯行を認め,反省の情を示していること,被告人は,被害児らが生活できるように努力していたのであり,被害児の実母にも善処すべき点があったこと,被告人の親が,賠償金の一部として300万円を用意して申し入れており,被告人の監督方も約束していること,被告人には前科がないことなど被告人のために酌むべき諸事情を十分に考慮しても主文の刑はやむを得ない。 (求刑-懲役6年)
▼ クリックして全文を表示