主文 1(1) 原判決を取り消す。 (2) 被控訴人の請求を棄却する。 2 本件附帯控訴を棄却する。 3 被控訴人は,控訴人に対し,18万5743円及びこれに対する平成6年9月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 本件訴訟の総費用及び3項に関する裁判の費用は,被控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 当事者の求めた裁判 1 控訴人主文と同旨 2 被控訴人(1) 本件控訴を棄却する。 (2) 附帯控訴として① 原判決主文第2項を次のとおり変更する。 ② 控訴人は,被控訴人に対し,46万6803円及びうち8万3312円に対する平成3年10月9日から,うち9万0212円に対する平成6年3月30日から,うち7万4459円に対する平成7年11月21日から,うち21万8820円(当審における請求の拡張)に対する平成13年8月14日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 (3) 訴訟の総費用は控訴人の負担とする。 (4) 仮執行の宣言。 第2 事案の概要 1 控訴人の職員であり,通信産業労働組合(通信労組)の組合員である被控訴人は,控訴人の行う保全科ディジタル交換機応用班の訓練(本件訓練)に参加していたが,その訓練日の1日につき,年次有給休暇(年休)の請求(本件請求)をしたところ,控訴人が時季変更権を行使した(本件時季変更権の行使)にもかかわらず,そのまま訓練を欠席した。そこで,控訴人は,被控訴人に対し,無断欠勤を理由として,譴責処分(本件譴責処分)を行い,職能賃金の定期昇給額の4分の2を減じ,さらに一日分の賃金を削減した。本件は,被控訴人が,本件時季変更権の行使は違法であると主張して,本件譴責処分の無効の確認を求めるとともに,削減にかかる賃金等の支払を求めた事案である。 (1) 原審は,被控訴人の の賃金を削減した。本件は,被控訴人が,本件時季変更権の行使は違法であると主張して,本件譴責処分の無効の確認を求めるとともに,削減にかかる賃金等の支払を求めた事案である。 (1) 原審は,被控訴人の請求を全部認容した。 (2) 控訴人が控訴するとともに,民事訴訟法260条2項の申立てをし,被控訴人は,附帯控訴に基づき,原審口頭弁論終結後の定期昇給額の減少に伴う損害について請求を拡張し,差戻前の当審は,控訴人の控訴を棄却し,被控訴人の附帯控訴を認容した。 (3) 控訴人の上告に基づき,上告審は,差戻前の当審判決を全部破棄して,本件を当裁判所に差し戻した。 2 前提事実(争いのない事実等)(1) 当事者① 控訴人は,昭和60年4月1日,日本電信電話公社(電電公社)の一切の権利及び義務を承継して設立された,国内電気通信事業を主たる業務とする株式会社である。 ② 被控訴人は,昭和39年4月1日,電電公社に雇用され,平成元年当時,控訴人の立川ネットワークセンタにおいて,電話交換機の保守を担当する交換課(交換課)に勤務し,工事主任として,電話交換機保守の業務に従事していた。なお,交換課は,当時,共通線信号処理装置にかかる業務も担当していた。 また,被控訴人は,当時通信労組に所属していた。 (2) 本件訓練① 控訴人は,平成元年11月当時,アナログ交換機に代わるものとして,ディジタル交換機を導入し,さらに電話の通話線とは別の共通線を利用することによって,サービスの多様化を図ろうとしていた。立川ネットワークセンタにおいても,平成元年度において,アナログ交換機のユニット数は4台(いずれも通話回線用)であるのに,ディジタル交換機ユニット数は8台(うち通話回線用は4台)となっていた。 このような状況下で,控訴人は,ディジタル交換機の保守技術者の養成と能力向 ユニット数は4台(いずれも通話回線用)であるのに,ディジタル交換機ユニット数は8台(うち通話回線用は4台)となっていた。 このような状況下で,控訴人は,ディジタル交換機の保守技術者の養成と能力向上を図るため,同年11月1日から同月29日まで,控訴人の設置する中央電気通信学園(中央学園)において本件訓練を実施した。 ② 本件訓練の目的は,「ディジタル交換機の故障解析及び異常時の回復措置に必要な高度な知識,技能を取得する」というものであった。また,本件訓練は,ディジタル交換機のうち通話用のD60交換機及びD70交換機についての訓練であったが,同交換機の保守の際に共通線信号装置の処理を要することなどから,共通線についての理解も不可欠であった。このような観点から,平成元年度の訓練より共通線に関する講義時間が3時限から6時限に増やされた。 ③ 控訴人においては,集合訓練は職場の代表として参加する(所属する職場に訓練で学んだ技術等を持ち帰り,職場内で活用する)という意味合いを持っていた。 また,平成元年度の保全科ディジタル交換機応用班の訓練15コース(最終的には12ないし13コース)の受講者の枠は,立川ネットワークセンタには本件訓練のみの1コース1名分しか割り当てられなかった。 ④ このような状況の下で被控訴人は,交換課課長P1(P1課長)の命令により,本件訓練に参加した。 (甲9,乙13,27,95,証人P2,同P3,同P4)(3) 年休の申請① 被控訴人は,控訴人に対し,平成元年11月21日の訓練につき組合休暇願を提出したが,控訴人の立川ネットワークセンタ所長P2(P2所長)は,同月20日,本件訓練中は組合休暇を認めることはできない旨の回答をした。そこで,被控訴人は,同日,翌21日の年次有給休暇を請求したが,控訴人は,休暇は認められないと回答 ンタ所長P2(P2所長)は,同月20日,本件訓練中は組合休暇を認めることはできない旨の回答をした。そこで,被控訴人は,同日,翌21日の年次有給休暇を請求したが,控訴人は,休暇は認められないと回答して,時季変更権を行使した。 ② 平成元年11月21日の訓練は,「共通線信号処理」の講義が予定されていたが,被控訴人は,同日の訓練を欠席した。 (4) 本件譴責処分等の存在控訴人は,平成元年12月19日,被控訴人に対し,同年11月21日の本件訓練に欠席したことが無断欠席であるとして,社員就業規則(乙78,就業規則)69条3号(上長の命令に服さないとき)及び13号(職場規律に違反する行為のあったとき)に当たることを理由に本件譴責処分を行い,同処分に基づき,職能賃金の定期昇給の4分の2の減給(就業規則84条)を行うとともに,無断欠勤として1日分の賃金カット(就業規則78条)を行った。同減給額及びカット額の内訳及び合計額は別紙のとおりである。 (5) 控訴人の金員支払控訴人は,被控訴人に対し,仮執行宣言付き原判決言渡しの翌日である平成6年9月1日,原判決主文第2項に基づく金員の仮払として元本17万3524円及びこれに対する遅延損害金1万2219円の合計18万5743円を支払った。 3 争点に関する当事者の主張(1) 本件時季変更権の行使の適法性① 時季変更権行使の要件の有無ア控訴人の主張(ア) 被控訴人は,国家公務員及び地方公務員の例を挙げて,研修中の年休取得について,労働者の年休権の保障と研修目的の達成との調整が必要になると主張する。しかしながら,被控訴人の挙げる国家公務員及び地方公務員の例においても,研修は,当該受講を命じられた職員の能力啓発にその本旨を置くものであり,他の職員による代替の余地はないとされ,あるいは,研修の期間中にこれを ,被控訴人の挙げる国家公務員及び地方公務員の例においても,研修は,当該受講を命じられた職員の能力啓発にその本旨を置くものであり,他の職員による代替の余地はないとされ,あるいは,研修の期間中にこれを休むということは全く予定されていないとされており,そもそも研修中の年休取得は予定されていないのである。そして,予めカリキュラムにおいて一定期間の休暇取得を想定しているような特殊な場合を除き,一般には,既に組まれたカリキュラムの一部でも欠席すれば,その分の研修目的が達成されないことは,自明の理であるから,研修中の年休取得と研修目的の達成との調整を図ることは不可能である。 控訴人は,集合訓練への社員の参加を決するに当たり,あらかじめ社員に訓練中休まざるを得ない正当な事由があると認めるときは,当初から社員を訓練に参加させないこととして,休暇取得の必要性と研修目的の達成との事前調整をすることがある。 これを本件についていえば,平成元年10月中旬に交換課課長が被控訴人に対し本件訓練への派遣について打診したところ,被控訴人は,特段の事情の申出もせずにこれを受諾した。しかし,被控訴人は,内心においては,本件訓練のカリキュラムを見た上で,同年11月9日の電話番号案内有料化反対のための要請行動に参加するか,訓練に参加するかを決める心積もりであったというのであり,事実,被控訴人は,その恣意的な判断に基づき,同日のカリキュラムは重要であるからとして訓練に参加したが,同月21日のカリキュラムは重要でないからとして,同日の訓練を欠席した。 被控訴人の右のような考え方は,訓練参加者が当日のカリキュラムは重要でないと判断すれば自由に年休を取得することができるということにほかならず,研修目的の達成のために使用者が時季変更権を行使する余地を認めないというに等しいものであ 練参加者が当日のカリキュラムは重要でないと判断すれば自由に年休を取得することができるということにほかならず,研修目的の達成のために使用者が時季変更権を行使する余地を認めないというに等しいものである。 (イ) 本件訓練においては,特段の事情のない限り,訓練参加者が訓練を一部でも欠席することは,予定された知識,技能の修得に不足を生じさせ,訓練の目的を十全に達成することができない結果を招くものというべきである。したがって,控訴人の本件時季変更権の行使は適法である。そして以下に述べるとおり,そのような特段の事情はない。 a 被控訴人が本件訓練までに行ってきた日常保守運用業務での経験,工事試験及び付帯試験への関与,教科書による自習,本件訓練を概ね普通以上の評価をもって終了したことは,いずれも特段の事情には当たらない。 b 被控訴人が予め有していた知識,技能について(a) 被控訴人の日常保守運用業務と本件訓練ⅰ 被控訴人が立川ネットワークセンタで行っていた保守運用業務の範囲は,当該市外交換機とそれにつながる市外交換機及び発信側の市内交換機までの回線の保守であり,市内交換機及び通話回線のうち市内交換機から個々の電話機につながる加入者回線は保守すべき範囲に含まれていない。 しかるに,本件訓練は,市内交換機であるD70形自動交換機についての訓練であって,被控訴人が従事してきた市外交換機を対象としたものではないのである。 なお立川ネットワークセンタに導入されたD70形自動交換機は,特別仕様のため,市外交換機と市内交換機との機能を有していたが,市外交換機として導入され,加入者回線を直接収用していなかったため,被控訴人は同機を市内交換機として保守運用することはなかった。 ⅱ 共通線信号方式においては,共通線信号回線から送出される信号(共通線信号)をどのよう され,加入者回線を直接収用していなかったため,被控訴人は同機を市内交換機として保守運用することはなかった。 ⅱ 共通線信号方式においては,共通線信号回線から送出される信号(共通線信号)をどのように扱うかについて,その約束事を,レベル1ないし4に機能的に分類している。ところで,レベル1ないし3は,サービスの種類に関係なく,市内交換機から共通線信号回線により結ばれるⅤ-STP交換機(共通線交換機)との間,またⅤ-STP交換機から市外交換機の間において適用される約束事である(Ⅴ-STP交換機では,レベル1ないし3までが適用され,レベル4は適用されない。)。そして,レベル4は,市内交換機及び市外交換機において適用される約束事であるが,市外交換機ではレベル4において規定される約束事のうち,発信源情報や接続先情報というレベル4の一部の約束事しか適用されない。したがって,市外交換機の保守運用業務しか従事していない被控訴人は,レベル4の約束事の一部しか知り得なかったのである。レベル4に規定されるほとんどの約束事は,市内交換機に適用されるものである。 なお,レベル4は,電話用呼処理(電話網),自動車電話(移動通信網),ファクシミリ(ファクシミリ通信網)等各種サービスの種類に応じてそれぞれ約束事が異なっている。したがって,被控訴人がファクシミリを扱った経験があるからといって,レベル4の全体が分かるものではないし,Ⅴ-STP交換機のAユニットの保守業務に従事し,Ⅴ-STP交換機のBユニットでは工事試験や付帯試験に従事したとしても,レベル4の約束事について分かることにはならないのである。 ⅲ ところで,被控訴人が欠席した訓練は,「概要」「電話用呼処理(レベル4)」「信号処理(1)共通線信号関連ソフトウェア」の講義(本件講義)である。このうち,「概要」では「 とにはならないのである。 ⅲ ところで,被控訴人が欠席した訓練は,「概要」「電話用呼処理(レベル4)」「信号処理(1)共通線信号関連ソフトウェア」の講義(本件講義)である。このうち,「概要」では「信号データリンク(レベル1)」,「信号リンク制御(レベル2)」,「信号網機能(レベル3)」について行う講義であり,ここまでが基礎知識として学習する内容である。これに対して「電話用呼処理(レベル4)」では,レベル4の内容を学ぶものであるが,この部分についてはプログラムトレースを行うことから,応用訓練と位置付けられている。また「電話用呼処理」と「信号処理」の講義は,講義中に3,4人のグループで,それぞれプログラムトレースを行うことが予定されており,このプログラムトレースを行うことによって,プログラムがどのような処理をしているかを見つけだし,トラブルが発生した場合にどのような処理を行えばよいのか,迅速かつ的確に行うことができるようにする訓練であって,日常業務では経験できないものである上,グループでの討議を通じての自己啓発の機会ともなる訓練である。 ⅳ このように,被控訴人は,日常運用業務では,本件訓練で予定していた市内交換機を扱ったことはなく,また本件講義で予定されていたレベル4の約束事についてはその一部しか知らなかったのであるから,業務を通じてその知識や技能を修得していたとは到底いえない。 (b) 被控訴人が受講してきた訓練について被控訴人が本件訓練以前に受けてきた各種訓練は,本件訓練とその目的・内容を異にしており,これらの訓練を受けたことをもって「特段の事情」ということはできない。 ⅰ 中央学園における技術科ディジタル交換機(D70形)班の訓練について(D70形訓練)被控訴人は,昭和58年8月から9月にかけて,D70形訓練を受けた。しかし の事情」ということはできない。 ⅰ 中央学園における技術科ディジタル交換機(D70形)班の訓練について(D70形訓練)被控訴人は,昭和58年8月から9月にかけて,D70形訓練を受けた。しかし,その当時は,ディジタル交換機のうち市内交換機の普及率は0.11パーセント,市外交換機のそれは0.60パーセントであって,実際に共通線信号方式は採用されていなかった時代であったから,同訓練において,同方式の実際の保守運用について取り上げることはなかった。なお,D70形交換機は,共通線信号方式の機能は有していることから,訓練において同方式についての簡単な説明はあったかも知れないが,本件訓練の目的や本件講義の時間数に照らすと,その内容や水準は全く異なるものというべきである。 ⅱ 中央学園における保全科ファクシミリ通信網班訓練について(ファクシミリ訓練)被控訴人は,昭和60年3月から4月にかけて,ファクシミリ訓練を受けた。しかし,本件講義で予定されていたものは「電話用呼処理(レベル4)」であり,ファクシミリの講義を受けたことは直ちに「電話用呼処理」についての講義を受けたことにはならない。しかもファクシミリ訓練では,プログラムトレースを行っていないことに照らすと,同訓練は,基礎段階の訓練にすぎないものであり,応用段階のそれである本件訓練とは水準を異にするのであって,ファクシミリ訓練を受けたことをもって本件訓練で修得を予定していた知識,技能を有していたとはいえない。 ⅲ 東京学園における保全科D10形自動交換機応用班訓練について(D10形訓練)被控訴人は,昭和62年12月にD10形訓練を受けた。しかし,同訓練において,被控訴人が受講した共通線信号方式に関する講義は2,3時間にすぎず,かつプログラムトレースもしていないのであるから,同訓練によって, ,昭和62年12月にD10形訓練を受けた。しかし,同訓練において,被控訴人が受講した共通線信号方式に関する講義は2,3時間にすぎず,かつプログラムトレースもしていないのであるから,同訓練によって,本件訓練で修得を予定していた知識,技能を有していたとはいえない。 イ被控訴人の主張研修中の年休取得と時季変更権の行使の関係については,年休取得は労働者の当然の権利であるが,研修中の場合,年休取得によって研修目的が達成されないことになってはならないので,年休権の保障と研修目的の達成との調整が必要となる。 このことは,国家公務員及び地方公務員の場合も,研修中の年休取得が予定されていること,そして,時季変更権の行使が許されるかどうかは,研修計画全体から見て,これを阻害すると認められるかどうかによること,すなわち,研修目的の達成との調整にあることが認められる。 研修中の年休取得についての上記のような考え方は,民間企業においては,より一層当てはまる。結局,研修中の年休取得が「事業の正常な運営を妨げる場合」とは,明らかに研修目的が達成されない場合と解すべきである。 そして,被控訴人は,本件訓練を欠席しても支障のないレベルの知識,技能を修得していたのであるから,欠席によって研修目的が達成されないとはいえない。したがって,本件時季変更権の行使は違法である。 (ア) 本件講義について本件講義は,本件訓練全体において,もともと中心として位置づけられていない共通線訓練のうちの,しかも基本的な部分であり,講義形式による訓練である。さらに,平成元年度の訓練の受講対象者は,共通線の基礎訓練すら受けていないレベルであった。したがって,11月21日に予定されていた本件講義は,基礎的内容について,しかも教科書をこなすことで精一杯であり,22日にも21日に行う予定の電 は,共通線の基礎訓練すら受けていないレベルであった。したがって,11月21日に予定されていた本件講義は,基礎的内容について,しかも教科書をこなすことで精一杯であり,22日にも21日に行う予定の電話用呼処理についての講義がなされているのである。またそこで予定されているプログラムトレースについても,講義を受けなければ修得できない内容のものではなく,受講生の間での協議に任せてしまう程度のものであって,その位置づけは低いといわざるを得ない。 (イ) 過去の研修実績について被控訴人は,以下のことから,本件講義の内容を事前に理解修得していた。 aD70形訓練立川ネットワークセンタでは,昭和58年ころ,市外中継局として,市外回線のディジタル化すなわち共通線使用に向けて,市外通話用に特別仕様が加えられたD70形ディジタル交換機(特仕)の導入準備が進められていた。この導入に備えて,被控訴人は,D70形訓練に参加した。その際,授業に用いられた教科書が「ディジタル交換機〔参考Ⅱ〕共通線信号方式」(甲138)であり,これに沿って授業が進められた。また,この訓練には,立川ネットワークセンタの交換課から,被控訴人も含めて4人も参加していることからして,保守運用者にも十分に役立つものであり,導入予定のD70形ディジタル交換機(特仕)の保守運用に役立つものと位置づけられていたことは明らかである。 b ファクシミリ訓練ファクシミリサービスでは共通線信号方式が採用されていたため,教科書には,共通線信号方式に関する項目があり,この項目に対応して授業が行われ,教官によるプログラムの説明があった。なお,その際使用された教科書「ファクシミリ通信システム」〔Ⅱ〕(甲136の2)に出てくるプログラムには,本件訓練の演習問題に出されているものもあった。 cD10形交換機 プログラムの説明があった。なお,その際使用された教科書「ファクシミリ通信システム」〔Ⅱ〕(甲136の2)に出てくるプログラムには,本件訓練の演習問題に出されているものもあった。 cD10形交換機Fユニットへのファクシミリ通信機能の追加導入に際しての職場訓練立川ネットワークセンタには,昭和62年ころ,既に設置されていたD10形交換機Fユニットにファクシミリサービス機能が追加導入された。職場でファクシミリサービス機能の勉強会が訓練として行われた。この勉強会の中では,共通線信号方式も重要なテーマであり,数日間にわたって,学園教育で使用された教科書や資料が配付され,これに従って勉強会が行われた。 dD10形訓練被控訴人は,昭和62年12月東京学園でD10形アナログ交換機DEX応用班訓練を受講した。この訓練は22日間の訓練であるが,そのうち,共通線信号方式について,教科書(D10形自動交換機〔参考Ⅳ〕,甲137)を使用して,2ないし3時限の授業があった。また,被控訴人はこの訓練においてプログラムトレースの訓練を受けた。 e 配布された図書の独習被控訴人は,昭和62年ころ,控訴人から,「やさしい共通線信号方式」という本(甲141)の配布を受け,これを独習していた。 f 本件講義は,その内容において上記aないしeの訓練と共通しており,しかも被控訴人はこれを独習していたのである。そして,控訴人が本件訓練において配布した教科書(甲135)の内容は,そのほとんどが過去の訓練で配布された教科書と重複しているのであるから,過去の訓練や教科書によって知識や技能を修得していた被控訴人は,本件講義を欠席しても支障のない知識・技能を有していたといえる。 (ウ) 被控訴人の保守業務と知識・経験の蓄積についてa 立川ネットワークセンタでは,平成元年当時,交換 技能を修得していた被控訴人は,本件講義を欠席しても支障のない知識・技能を有していたといえる。 (ウ) 被控訴人の保守業務と知識・経験の蓄積についてa 立川ネットワークセンタでは,平成元年当時,交換機9台のうち,6台がディジタル交換機であったし(甲146の1,2,乙1),共通線信号方式を使用したファクシミリサービスは昭和60年3月から,同じくクレジット通話サービスは昭和61年7月時点でそれぞれ導入されていた。また共通線専用交換機(STP)も導入されていた。したがって,立川ネットワークセンタでは,本件訓練当時,交換機のディジタル化が定着し,共通線信号方式の導入もかなり行われていたのである。 b 被控訴人は,立川ネットワークセンタの工事主任として,保守運用業務に携わってきたのであり,電話用呼処理に関する共通線信号の内容である発信源情報,接続先情報(いずれもレベル4)についても,当然の知識として有していた。そして,被控訴人は,平成元年6月から8月までの間,現場責任者として,Ⅴ-STP交換機のBユニットの付帯試験に携わり,同業務を確実に遂行するとともに,知識をも深めたのである。また,被控訴人は,付帯試験に引き続き,共通線信号方式の仕組みを応用して行うⅤ-STP交換機のBユニットの切り替え作業を本件訓練の直前まで行っていたのである。 (エ) 被控訴人は,上記のとおり十分な知識と技術を有していたからこそ,本件講義後の訓練にも参加した上,本件訓練を終了しているのである。 ② 本件時季変更権の行使の手続的適法性ア被控訴人の主張本件時季変更権の行使は,控訴人の就業規則に定められた者によってされていないから,違法である。すなわち,本件においては,P2所長が被控訴人に対して時季変更権を行使しているところ,時季変更権は中央学園の訓練部長が有しているのであ の就業規則に定められた者によってされていないから,違法である。すなわち,本件においては,P2所長が被控訴人に対して時季変更権を行使しているところ,時季変更権は中央学園の訓練部長が有しているのであるから,時季変更権は適法に行使されたとはいえない。仮に,中央学園の訓練部長が有していないとしても,時季変更権を行使すべきか否かの判断は,学園においてすべきであり,これをしていない本件時季変更権の行使は違法である。 イ控訴人の主張控訴人においては,就業規則39条において,社員からの年休申請に対する時季変更権は「所属長」が行使することとされているが,当該「所属長」とは,「直属上長」とされている。そして,直属の上長が不在等のときは直近の,さらに直近の上長不在のときはその上長が行使すべきこととされている。ところで,本件では,被控訴人の直属の上長はP1課長であるが,先にP2所長に対して組合休暇の申請があり,これを同所長が不承認としたところ,被控訴人から年休の申請がされたものの,P1交換課長はその場に居合わせなかったことから,その上長であるP2所長が時季変更権を行使したのであって,何ら違法ではない。 ③ 本件時季変更権の行使と不当労働行為の成否ア被控訴人の主張被控訴人は,平成元年11月当時,通信労組の中央執行委員及び東京支部書記長であったが,通信労組が加盟する全国労働組合総連合(全労連)の結成大会に出席するために,本件請求をしたのである。 控訴人は,以下のとおり,通信労組を不当に差別し,通信労組の組合員である控訴人に対しても差別的取扱いを行ってきており,本件時季変更権の行使は,これらの差別行為の一環で,被控訴人が通信労組の代表として全労連の結成大会に参加することを妨害するためにしたもので不当労働行為である。 (ア) 組合休暇の申請日被控訴人 ,本件時季変更権の行使は,これらの差別行為の一環で,被控訴人が通信労組の代表として全労連の結成大会に参加することを妨害するためにしたもので不当労働行為である。 (ア) 組合休暇の申請日被控訴人は,組合休暇の申請日を平成元年11月17日から同月16日に訂正することにより,控訴人の不当労働行為意思を根拠付けようと主張し,供述する。しかしながら,被控訴人は,原審において,P1課長に対して組合休暇を申請したのは同月17日であると供述し,また,その陳述書(甲12)にも,そのように記載しているのであり,これを当審において改める被控訴人の上記主張及び供述は,事実に反する。 (イ) 通信労組に対する差別a 通信労組は,控訴人の電電公社時代には,民営化反対闘争を全国で繰り広げ,控訴人発足後は,104有料化反対闘争やダイヤルQ2適正化運動等を行ってきた。 ところで,使用者は,同一企業内に複数の労働組合が併存する場合には,すべての組合に対し,中立的な態度を保持するとともに,その団結権を平等に承認,尊重すべきである。しかるに,控訴人は,控訴人民営化以降の合理化政策を共に推進してきた控訴人内の他組合である全国電気通信労働組合(全電通)に対しては便宜を図る一方で,通信労組に対しては,全国的な規模でこれを嫌悪,敵視してきた。例えば,組合事務所ないし組合掲示板の貸与,団体交渉における制限の有無,労働協約や交渉記録書の取扱い,災害故障時等の連絡系統図の記載等につき,通信労組を不当に差別してきた。そのほか,通信労組組合員に対しても,親睦会や旅行会からの排除,共同安全検討会からの排除,任用差別,退職の強要,立て看板の破損,ビラ配布へのいやがらせ等を行って,個別的に差別的取扱いをしている。 b 通信労組は,全国での通信労組に対する差別事例を集め,差別黒書(甲120) からの排除,任用差別,退職の強要,立て看板の破損,ビラ配布へのいやがらせ等を行って,個別的に差別的取扱いをしている。 b 通信労組は,全国での通信労組に対する差別事例を集め,差別黒書(甲120)としてまとめているが,これによれば,控訴人が通信労組に対して全国的規模で系統的に差別していることが明らかである。 通信労組に対する差別の具体例としては,控訴人側が通信労組浜松分会の新入組合員に対し会社をやめてもらうと発言したこと,平成6年3月,控訴人労務担当者が通信労組が設置した国民春闘立て看板を深夜破壊したこと,平成7年7月初め,控訴人は,連絡系統図(甲117)に全電通多摩NWC分会の連絡先のみを記載し,通信労組立川分会の連絡先を記載せず,通信労組から通信労組立川分会の連絡先を記載するように申入れを受けるや,通信労組立川分会の連絡先を記載しないために全電通多摩NWC分会の連絡先の記載を削除したこと,被控訴人らが通信労組のビラを配布している際,控訴人管理職らがビラをごみ箱に捨てるよう無言の圧力をかけていたこと等が挙げられる。 (ウ) 被控訴人に対する差別的取扱いa 被控訴人は,昭和39年に控訴人の前身である電電公社に雇用された後,全電通に加入し,全電通組合員として,主に全電通の民主的運営を求める運動や,電電公社の民営化反対運動を中心に活動してきたが,昭和62年に全電通組合役員の選挙の立候補を断念して,通信労組に加入した。その後,被控訴人は,主に104番号案内有料化反対運動や通信労組の組織拡大等に取り組んできた。 b 次の事情は,控訴人が,被控訴人の組合活動を嫌悪し,あるいは通信労組の組合員であることを理由に差別的取扱いを行ってきたことを示すものである。 (a) 控訴人には,先任順に高位の職に就く先任権制度があるが,控訴人は,被控訴人と同期の者が 活動を嫌悪し,あるいは通信労組の組合員であることを理由に差別的取扱いを行ってきたことを示すものである。 (a) 控訴人には,先任順に高位の職に就く先任権制度があるが,控訴人は,被控訴人と同期の者がほとんど課長等になっているにもかかわらず,被控訴人のみを工事主任に据え置いたままである。 (b) 控訴人は,昭和62年当時,他の社員に多くの上級の訓練を受けさせたていたにもかかわらず,被控訴人には,一般ディジタル基礎班の訓練しか受けさせていなかった。 (c) 控訴人は,昭和63年には,夜間宿直者に対し,被控訴人には電話での相談をしないように周知徹底を行い,平成元年2月1日の料金改定に伴う深夜及び早朝作業に際しては,他の課からわざわざ要員を配置した上で,被控訴人を同作業から除外した。 (d) 控訴人は,学園で行う訓練の際,通信労組の拡大を防ぐために,被控訴人の入寮を認めない措置を採った。 (e) 控訴人は,被控訴人の周囲の社員を被控訴人から遠ざけ,業務においては設計,積算の仕事をさせず,また昇格のためのスキル判定を受けさせないようにした。 (エ) 本件時季変更権の行使の差別性a 控訴人は,通信労組の組合員としての被控訴人の諸活動を認識していたところ,平成元年10月下旬ころ,突然,本件訓練の参加者をP15職員から被控訴人に変更した。この変更は,従前,被控訴人が訓練受講を強く希望し続けていたにもかかわらず,受講がかなわなかったことや,P15職員から被控訴人への変更に合理的な理由がないことからすれば,被控訴人の全労連結成大会参加を妨害するためにされたものである。 b 被控訴人の年休請求は,組合休暇申請が認められない旨の通知がされた後にされたものであって,控訴人は,被控訴人が前記大会に参加するために年休を取得することを認識していたし,そもそも,控訴人にお 。 b 被控訴人の年休請求は,組合休暇申請が認められない旨の通知がされた後にされたものであって,控訴人は,被控訴人が前記大会に参加するために年休を取得することを認識していたし,そもそも,控訴人においては,訓練中でも年休を認めてきた実態が存するのであることからしても,本件時季変更権の行使は被控訴人の前記大会参加を妨害するためにされたものである。 (オ) 組合休暇の申請日について被控訴人は,従前,組合休暇の申請日を平成元年11月17日であると主張してきたが,これは,同年12月11日に,組合休暇の申請日を同年11月16日であると記載した「1989年11月21日の年休申請について」と題する書面(甲116)を立川ネットワークセンタ所長に提出した後,同所長から組合休暇の申請日を同月16日から同月17日に訂正するよう執拗に求められ,錯誤に陥って,組合休暇の申請日を同日と勘違いしたためである。 被控訴人は,平成元年11月16日(木曜日)に中央学園から立川ネットワークセンタの交換課課長に電話をして,同月21日に組合休暇を取る旨口頭で申請した。これに対し,交換課課長は,訓練中の組合休暇の申請であることを何ら問題とせず,同月18日(土曜日)に事務手続を取るように指示した。また,被控訴人は,同月17日(金曜日),中央学園の担任教官に同月3日に組合休暇を取る旨を伝えたが,担任教官は,職場に連絡するように指示した。このように,交換課課長も担任教官も,被控訴人が同月12日に組合休暇を取ることを何ら問題視していなかったのである。しかるに,後日,立川ネットワークセンタ所長が組合休暇を認めないとし,さらに,年休請求に対して時季変更権を行使したのは,通信労組員であることを理由とした被控訴人に対する差別的取扱いにほかならない。 イ控訴人の主張(ア) 通信労組ないし組 が組合休暇を認めないとし,さらに,年休請求に対して時季変更権を行使したのは,通信労組員であることを理由とした被控訴人に対する差別的取扱いにほかならない。 イ控訴人の主張(ア) 通信労組ないし組合員に対する差別についてa 通信労組と全電通とは,その組織人員に格段の差があり,したがって,その交渉力にも,大きな差があることから,交渉の結果において,組合事務所の貸与等に差が生じているのであって,差別していることにはならない。また,親睦会等は社員の任意団体であって,その運営に控訴人は関与していない。さらに,被控訴人は控訴人に任用差別があると主張するが,そのような事実はない。 b 被控訴人は,差別黒書(甲120)によれば,控訴人の通信労組に対する差別は,全国的規模で系統的に行われていることが明らかである,あるいは,多摩ネットワークセンタの災害・故障時等の連絡系統図(甲117。以下「連絡系統図」という。)に全電通の分会の連絡先を記載し,通信労組の分会の連絡先を記載しなかったこと及びその後通信労組からの通信労組の分会の連絡先をも記載するようにとの申入れを受けて全電通の分会の連絡先を連絡系統図から削除し,通信労組の分会の連絡先を記載しなかったことを通信労組に対する差別であると主張する。しかしながら,差別黒書は,およそ裏付けのない一方的な主張を記載したにすぎないものであり,また,連絡系統図の記載の問題は,本件の被控訴人に対する時季変更権の行使があってから約5年8か月後のことであって,本件とは無関係の事柄である。 (イ) 被控訴人に対する差別についてa 控訴人には被控訴人の主張にかかる先任権なる制度はないし,そもそも被控訴人が通信労組に加入したのは,昭和62年であるから,昇進遅滞と通信労組の組合員であることに何の関係もない。むしろ,被控訴人は,平成3年3 は被控訴人の主張にかかる先任権なる制度はないし,そもそも被控訴人が通信労組に加入したのは,昭和62年であるから,昇進遅滞と通信労組の組合員であることに何の関係もない。むしろ,被控訴人は,平成3年3月の付帯試験の責任者でありながら,他の者に業務完了報告書を提出してもらっているなどの事実があることからすると,被控訴人が昇進しないことには合理的な理由がある。 b 被控訴人は,控訴人が被控訴人に対し,昇格と関係するスキル判定を受けさせなかったことをもって差別であると主張するが,スキル判定と昇格とは関係がなく,しかも,被控訴人が受けられないのは,判定を受ける前提としての研修を受けられる出勤状態になかったからである。 c 被控訴人は,訓練受講回数が他の職員に比較して少ないと主張するがそのような事実はない。そして,夜間障害時の連絡系統は別に定められており,これに従って処理されているのであるから,被控訴人を除外したことにもならない。なお,平成元年2月の料金改定作業は,毎年交代で担当しているものであって,被控訴人を除外したものではない。 d 被控訴人は,控訴人が被控訴人に設計・積算の仕事をさせようとせず,差別したと主張するが,設計・積算の業務は被控訴人の所属する交換係の業務ではないのであるから,これを被控訴人に分担させないことは当然である。 e 被控訴人は,控訴人が被控訴人の周囲の社員を被控訴人から遠ざけようと画策していた主張するが,そのような事実はない。 (ウ) 時季変更権行使の差別についてa 控訴人においては,病気などの人道上の理由があれば,訓練中の年休であっても,時季変更権の行使を例外的に差し控えているが,原則としては訓練中に年休は取得できないのであり,したがって,訓練中に年休を申請する事例そのものが極端に少ないのである。このことからすると,控訴人 ても,時季変更権の行使を例外的に差し控えているが,原則としては訓練中に年休は取得できないのであり,したがって,訓練中に年休を申請する事例そのものが極端に少ないのである。このことからすると,控訴人においては,訓練中に年休は取得できないことが周知徹底されてきているといえるのである。そして本件において,本件請求につき,その取得理由に人道上の理由等が見つからないことから,時季変更権を行使しただけのことであり,何ら不当労働行為には当たらない。 b また,控訴人は,被控訴人の行った具体的な組合活動を認識していないし,訓練期間中でない通信労組組合員については,すべて全労連結成大会に出席しているのであるから,被控訴人が通信労組組合員であることを理由に,本件時季変更権の行使をしたということはできない。 ④ 本件時季変更権の行使と権利濫用の有無ア被控訴人の主張控訴人は,原則として,訓練中の年休申請をそのまま認めてきたのであり,時季変更権の行使は極めて抑制的であって,訓練目的達成の観点から極めて例外的にのみ行使されていたにすぎなかった。しかるに,控訴人は,本件の場合,通信労組に対する敵視と被控訴人に対する差別から,被控訴人がたまたま訓練中であることを奇貨として,時季変更権を行使したものであるから,権利の濫用である。 イ控訴人の主張控訴人においては,訓練中に年休は取得できないのが原則であり,訓練中に年休は取得できないことが周知徹底されてきているといえるのである。そして,本件においては,本件請求に際し,その取得理由に人道上の理由等が見つからないことから,時季変更権を行使しただけのことであり,何ら権利の濫用とはいえない。 (2) 本件譴責処分の手続及び内容の適法性① 被控訴人の主張ア本件譴責処分の手続(ア) 控訴人は,懲戒事由の存否,特に時季変更 季変更権を行使しただけのことであり,何ら権利の濫用とはいえない。 (2) 本件譴責処分の手続及び内容の適法性① 被控訴人の主張ア本件譴責処分の手続(ア) 控訴人は,懲戒事由の存否,特に時季変更権の行使については厳格な要件が必要であることからして,慎重な検討をしなければならないところ,杜撰な審査に基づいて,懲戒事由を認め懲戒権を行使したもので,違法である。 (イ)a 懲戒規程(乙68)3条によれば,懲戒権者は,社長及び同規程5条の規定により懲戒権の委任を受けた者であり,同規程5条1項によれば,事業本部長は,譴責処分をする権限の委任を受けているところ,本件譴責処分をしたのは,ネットワーク支社長である。控訴人は,譴責処分をする権限が事業本部長からネットワーク支社長に再委任されている(同規程5条2項)と主張するが,上記再委任の手続がとられた事実が認められる証拠はなく,本件譴責処分は,手続上の要件を満たしていない。 b 学園訓練中に訓練生が非違行為をしたときは,学園の長が非違行為の調査及び処分の上申をすることとされているにもかかわらず,本件では,中央学園長ではなく,立川ネットワークセンタ所長が被控訴人の調査及び処分の上申をしたが,これは,中央学園側を差し置いて,立川ネットワークセンタ所長が本件譴責処分を強行したということができるものである。かえって,中央学園長はもちろん担当のP3教官も,被控訴人が年休を取得することを問題にしていなかったのである。 イ訓練中の年休取得事例控訴人は,訓練中の年休取得は,人道上の理由のある場合にのみ認めていると主張するが,訓練中に年休の請求があっても,ほとんどの場合,その理由を聞くことなく,年休取得を認めているのが実態であり,時季変更権を行使する場合は,年休取得を認めると訓練終了又は卒業と認められなくなる場合 が,訓練中に年休の請求があっても,ほとんどの場合,その理由を聞くことなく,年休取得を認めているのが実態であり,時季変更権を行使する場合は,年休取得を認めると訓練終了又は卒業と認められなくなる場合である。このように,訓練中の年休請求が相当数あるにもかかわらず,それらの請求者に対し,時季変更権が行使されたり,それに従わないことを理由に懲戒処分をうけた事例を被控訴人は聞いていない。したがって,被控訴人に対する本件譴責処分は不公平である。 過去の年休取得事例の社員名,訓練の期間,場所及び名称,年休取得期間並びに年休取得事由は,次のとおりである。 (ア) P5 昭和37年7月中旬から3月間東京学園C41・C51クロスバー交換機の保守作業の訓練1日間登山(イ) P6 昭和52年12月ころ駒場学園保全課電子交換機概要班の訓練1日間ゴルフ(ウ) P7 昭和63年4月7日から同月14日まで東京研修センターディジタル交換機基礎Aコース訓練1日間引っ越しの手伝(エ) P8 平成5年12月7日から同月10日までCUSTOM一般実習者研修4日コースの訓練1日間ゴルフ(オ) P9 昭和58年8月中旬から同年11月上旬まで広島電機通信学園保全補修科市内電話機械班の訓練2日間(カ) P10 昭和59年ころ広島電気通信学園保全課電力班訓練(キ) P11 平成3年8月27日から同年9月13日まで中央研修センター共通線上級1・STPコースの訓練(ク) P12 昭和45年9月駒場学園C400クロスバー交換機班1か月コースの訓練2時間組合の選挙活動(ケ) P13 昭和59年4月から同年5月にかけての約3週間中央学園ディジタル交換機設計班の集合訓練2日間風邪② 控訴人の主張ア本件譴責処分の経緯(ア) 控訴人における懲戒の 選挙活動(ケ) P13 昭和59年4月から同年5月にかけての約3週間中央学園ディジタル交換機設計班の集合訓練2日間風邪② 控訴人の主張ア本件譴責処分の経緯(ア) 控訴人における懲戒の種類には,懲戒解雇,諭旨解雇,出勤停止,減給,譴責がある(就業規則70条,懲戒規程4条)ところ,非違行為に対して,公平妥当な処分を決定するため,「懲戒規程の運用について(基準)」6条関係17項は,懲戒処分の量定は,故意か過失か,既遂か未遂か,手段又は行為の態様,結果,動機,非違者の年令,在職年数,責任の程度,その他量定に必要な事項を総合的に判断し,公平に決定しなければならないと定めている。 (イ) 控訴人においては,懲戒処分を行うに当たっては,懲戒審査会を開催し,その答申を受けて懲戒権者が懲戒処分を実施することとされているが,懲戒処分の量定については,各事項について懲戒審査会において総合的に判断されるとともに,その際,過去の同様の処分事例等を参考にし,全社的に公平な量定が実施されるように配慮し,懲戒権の恣意的運用の防止を図っている。 (ウ) 被控訴人の無断欠勤は懲戒処分の対象となることから,P2所長は,懲戒規程6条に従い中央ネットワーク支社に上申した。ところで,中央学園における訓練中は,原則として,中央学園の長が所属長になり得るが,本件の場合,被控訴人は無断欠勤をする前から被控訴人の原局である立川ネットワークセンタにおいて,組合休暇の申請及び年休の請求をめぐるやりとりをしており,しかも,立川ネットワークセンタにおいて事前に無断欠勤は懲戒処分の対象になると警告を発していたこともあるなど,中央学園よりも立川ネットワークセンタが被控訴人の無断欠勤に至る経緯を把握していたことから,P2所長が事案を調査して処分調書を作成し,上申したものである。 (エ) と警告を発していたこともあるなど,中央学園よりも立川ネットワークセンタが被控訴人の無断欠勤に至る経緯を把握していたことから,P2所長が事案を調査して処分調書を作成し,上申したものである。 (エ) 上申を受けた中央ネットワーク支社は,無断欠勤が1日であっても,業務命令違反等積極的に職場規律を乱すものであれば,減給とされることがあるが,減給については中央ネットワーク支社長に懲戒権がないことから,さらにネットワーク事業本部に上申した。 (オ) 上申を受けたネットワーク事業本部は,平成元年12月11日,懲戒審査会を開催し,本件の無断欠勤を譴責処分相当(減給処分不相当)と判断し,本件の無断欠勤に対する懲戒処分の量定を中央ネットワーク支社に差し戻した。 (カ) 差戻しを受けた中央ネットワーク支社の懲戒審査会は,審査の結果本件無断欠勤は,上司の厳重な注意に反してなされたものであり,被控訴人から始末書が提出されていないなど加重要素があるものの,欠勤日数が1日であり,被控訴人の日常の勤務態度に特段の問題が見られないなど軽減要素あることを斟酌し,以下に記載の過去の無断欠勤に対する懲戒処分例との平等取扱いの観点等を総合的に勘案し,譴責処分を相当と判断した。したがって,本件譴責処分の手続に就業規則違反はなく,適法になされたというべく,本件譴責処分も相当なものというべきであって,他の者と比較して不公平な処分ということもできない。 イ過去の無断欠勤に対する懲戒処分例過去の無断欠勤に対する懲戒処分例の処分発令日,処分量定及び非違の概要は次のとおりであり,これと比較しても,本件譴責処分は相当である。 (ア) 昭和53年6月20日戒告訓練中,1日の年休請求があったが,時季変更権を行使し,出勤を命じたにもかかわらず,これを無視し,1日の無断欠勤をした(始末書未提 ,本件譴責処分は相当である。 (ア) 昭和53年6月20日戒告訓練中,1日の年休請求があったが,時季変更権を行使し,出勤を命じたにもかかわらず,これを無視し,1日の無断欠勤をした(始末書未提出)。 (イ) 昭和61年12月1日減給訓練中,辞職願(会社未承認)を提出し,その直後から6日間と2時間40分にわたり無断欠勤をした。なお,事後抑うつ状態と診断され,入院治療を受けた。 (ウ) 昭和62年1月23日減給訓練中,出勤日に飲酒して3時間45分の無断欠勤をした。なお,本人はアルコール依存症の病歴があり,以前にも3日間無断欠勤をし,再三にわたり厳重な注意を受けており,勤務態度も不良であった。 (エ) 昭和62年10月12日減給訓練中,理由もなく4日間無断欠勤した。なお,事後,抑うつ状態と診断され,入院治療を受けた。 (オ) 昭和63年3月1日譴責訓練中,出勤日自宅を出たまま理由もなく1日の無断欠勤をした。 (3) 定期昇給減額措置及び賃金削減の正当性(控訴人)① 控訴人においては,懲戒処分の有無にかかわりなく,無断欠勤した社員は,就業規則84条及び社員給与規則(乙69)32条により,職能賃金の定期昇給額が減額される。したがって,本件譴責処分の当不当にかかわらず,被控訴人の無断欠勤についてなされた職能賃金の定期昇給の4分の2の減給は正当である。 ② 本件時季変更権の行使が適法である以上,被控訴人の年休取得は認められず,被控訴人が欠勤した日は不就労といわざるを得ない。したがって,社員給与規則13条により1日分の賃金が削減される。 第3 当裁判所の判断 1 本件譴責処分の経緯本件譴責処分の経緯は,次のとおり訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」第三の一記載のとおりであるからこれを引用する。 (1) 原判決14枚目裏5行目の「 当裁判所の判断 1 本件譴責処分の経緯本件譴責処分の経緯は,次のとおり訂正するほかは,原判決の「事実及び理由」第三の一記載のとおりであるからこれを引用する。 (1) 原判決14枚目裏5行目の「保証」を「保障」に改める。 (2) 同16枚目表7行目の「決定し」から8行目末尾までを,「決定した。これを受けて,被控訴人は,同月16日午前中に中央学園から立川ネットワークセンタのP1課長に電話をし,同月21日に組合休暇を取らせてもらいたい旨申し出たところ,P1課長は,同月18日に組合休暇の申請の事務手続を取るように指示した。そこで,被控訴人は,同月16日夜に開催された通信労組東京支部執行委員会において,同月21日に組合休暇を取ることにしたので全労連結成大会に参加することを報告した。次いで,被控訴人は,同月17日,中央学園の本件訓練の担当教官であるP3教官に対し,同月21日に組合休暇を取る旨を報告したところ,P3教官は,原局に連絡するように指示するとともに,中央学園においては組合休暇の取得につき別段の処理はないと答えた(甲12,82の9,115の2,116,121,被控訴人供述,被控訴人(当審第1回)。)」に改め,同裏8行目の「原告は,」の次に「同月20日」を加える。 (3) 同17枚目裏6行目の「言われた」を「告げた」に,同9行目の冒頭から同11行目の末尾までを次のとおりそれぞれ改める。 「になった。被控訴人は,同日の訓練は欠席したものの,本件訓練は終了したものとされ,本件訓練中の各科目の成績は,おおむね普通以上であった。 その後,被控訴人は,P2所長の求めにより,同年12月11日,通信労組とも相談の上,『1989年11月21日の年休申請について』と題する書面を控訴人に提出した。被控訴人は,同書面において,当初,組合休暇を申請した日を同年1 長の求めにより,同年12月11日,通信労組とも相談の上,『1989年11月21日の年休申請について』と題する書面を控訴人に提出した。被控訴人は,同書面において,当初,組合休暇を申請した日を同年12月16日と記載していたが,提出の際にP2所長から同月17日の記憶違いではないかと指摘されて,よく確認しないまま,言われたとおりに組合休暇を申請した日を同日と訂正した(甲7,12,21,92の1~3,115の2,116,乙31,証人P3,被控訴人供述(原審,当審))。」 2 争点についての判断(1) 本件譴責処分の無効確認の利益について被控訴人が,本件譴責処分の無効を確認するにつき法律上の利益を有することは,原判決の「事実及び理由」第三の二1に説示のとおりであるから,これを引用する(ただし,原判決19枚目表6行目の「被告」を「控訴人の」と改める。)。 (2) 時季変更権行使の要件の有無について① 事実関係ア本件訓練の目的と背景について証拠(甲9,乙1,13,21,29,証人P3,同P2)によれば次の事実が認められる。 (ア) 電話交換機にはアナログ交換機とディジタル交換機とがあるが,本件訓練の実施された平成元年当時,控訴人においては,電話の通話線ですべてを賄うアナログ交換機に代わるものとして,音質が良く,情報を大量に送ることができ,通話線以外の共通線を利用することでサービスの多様化を図ることのできるディジタル交換機の導入を積極的に進めていた。例えば,立川ネットワークセンタにおいては,平成元年度において,アナログ交換機ユニット数は4台(いずれも通話回線用)であるのに対し,ディジタル交換機ユニット数は8台(うち通話回線用は4台)となっていた。 (イ) このように,控訴人としても,また立川ネットワークセンタとしても,ディジタル交換機の保守技 話回線用)であるのに対し,ディジタル交換機ユニット数は8台(うち通話回線用は4台)となっていた。 (イ) このように,控訴人としても,また立川ネットワークセンタとしても,ディジタル交換機の保守技術者の養成と能力向上の必要があった中で,本件訓練が実施されたものであり,その訓練目的は「ディジタル交換機の故障解析及び異常時の回復措置に必要な高度な知識・技能を修得する」というものであった。また,本件訓練は,ディジタル交換機のうち,通話用のD60形交換機及びD70形交換機の訓練であったが,交換機の保守の際に共通線信号装置の処理も入ること等を含め,共通線についての理解も不可欠であった。 (ウ) 以上のような観点から,被控訴人の参加した平成元年度から,共通線に関する講義時間が3時限から6時限に増やされていた。 イ訓練者の選出について証拠(乙5の1,2,14,21,28,64,66,証人P2,同P3)によれば,次の事実が認められる。 (ア) 控訴人においては,例えば,平成元年度の職員総数26万6000人のうち,9つの研修センタにおける各集合研修に参加した人員は6万2270人であり(中央学園だけでみると1万3513人),すべての職員が集合研修を受けることができるわけではなく,また,訓練設備や教官体制等の制約もあるので,集合研修ないし訓練は,参加者個人の知識,技能の向上とともに,職場の代表として参加する(所属する職場に訓練で学んだ技術等を持ち帰り,職場内で活用する。)という意味合いを持っていた。 (イ) 本件訓練における立川ネットワークセンタでの参加者の選出状況をみると,まず,平成元年度の保全科ディジタル交換機応用班(15コース)の受講者の枠は昭和63年度末ころに決まったが,立川ネットワークセンタには,平成元年11月1日から同月29日までの1コースの 況をみると,まず,平成元年度の保全科ディジタル交換機応用班(15コース)の受講者の枠は昭和63年度末ころに決まったが,立川ネットワークセンタには,平成元年11月1日から同月29日までの1コースのうちの1名分の枠しか割り当てられなかった。 (ウ) 立川ネットワークセンタにおいて交換機関係を担当する部署は,交換課及び第2回線サービス課であり,当初は第2回線サービス課のP15職員を参加させる予定になっていたが,同年10月末にP15職員が人事異動により交換課に来ることになったため,従前から自己申告表等で保全科ディジタル応用班訓練の受講を希望していた交換課所属の被控訴人を参加させることにした。 ウ本件訓練について証拠(甲9,12,42,146の1,2,乙21,28,31,93,95,98,証人P4,被控訴人(原審,当審第2回),弁論の全趣旨)によれば,以下の事実が認められる(ア) 本件講義の内容a 本件訓練では,共通線の理解を深めるため,共通線信号処理6時限,共通線の利用例2時限,故障解析2時限,異常時の措置方法2時限の講義が,予定されていた。 なお,「共通線信号処理」は,それまで基礎レベルの講義3時限であったが,前記アのとおり6時限とし,応用レベルの訓練をも実施することとされた。 b 共通線信号処理に関する訓練の内容は以下のとおりである。 ⅰ 概要(95分。1時限)概要,信号網,信号の構成,信号処理について講義を行い,訓練生の知識を確認し,あるいは記憶を喚起させ,知識レベルを共有化する。 なお,共通線信号回線により送出される信号(共通線信号)をどのように扱うのかについてその約束事を機能的に分類したものを「共通線信号方式における信号機能」といい,これはレベル1から4に分類されるところ,概要で取り上げられた講義は,いずれもレベル1な 号)をどのように扱うのかについてその約束事を機能的に分類したものを「共通線信号方式における信号機能」といい,これはレベル1から4に分類されるところ,概要で取り上げられた講義は,いずれもレベル1ないし3に関するものである。 ⅱ 電話用呼処理(190分。2,3時限)共通線信号方式の特徴,通話接続処理,CSBWT制御,通話路導通試験,通話回線の両方向運用,閉塞・閉塞解除シーケンス,微分信号対策等について講義を行い,さらに演習(共通線信号のモニタ)を行う。これらに関する約束事はレベル4に当たる。なおレベル4に含まれる約束事には,着信電話番号,発信側電話番号,付加ダイヤル情報,無鳴動着信識別表示等がある。 ⅲ 信号処理(共通線信号関連ソフトウェア。95分。4時限)共通線信号サブシステム,機能ブロック,トランザクション,トランク制御,共通線信号装置の制御(CSC)について講義を行い,さらに演習(両方向トランク制御)を行う。 ⅳ 送信処理(95分。5時限)ⅴ 受信処理(95分。6時限)c 被控訴人が欠席した平成元年11月21日には,上記ⅰないしⅲの1時限から4時限までが予定されていた。 (イ) 被控訴人の欠席した講義被控訴人は平成元年11月21日の訓練を欠席し,「概要」「電話用呼処理」「信号処理」の訓練を受けなかった。 なお,被控訴人は同月22日の訓練は「電話用呼処理」から始められたと供述するが,予定された「概要」の時間が95分にすぎないことに照らすと,21日の訓練が「概要」のみで終わったものとは到底思われず,同供述は信用することができない。 (ウ) 被控訴人の担当業務a 被控訴人は,電電公社に入社以来,交換機の保守運用業務に従事してきたのであるが,立川ネットワークセンタでは,通話回線のうち,市外交換機及び市外網(市外交換機とそれにつ (ウ) 被控訴人の担当業務a 被控訴人は,電電公社に入社以来,交換機の保守運用業務に従事してきたのであるが,立川ネットワークセンタでは,通話回線のうち,市外交換機及び市外網(市外交換機とそれにつながる市外交換機及び発信側の市内交換機までの範囲)の保守運用業務を行ってきたのであって,市内交換機及び市内網(市内交換機から個々の電話機につながる加入者回線までの範囲)の保守運用業務には従事したことがなかった。 なお,立川ネットワークセンタに導入されたGユニットであるD70形ディジタル交換機は特別仕様であり,市内交換機及び市外交換機の各機能を有していたが,市外交換機として使用され,被控訴人は市外交換機としての保守運用を行っていた。 b 被控訴人は,本件訓練まで市外交換機や共通線交換機(Ⅴ-STP交換機)の保守運用業務に従事していたのであるが,市外交換機ではレベル4の約束事のうち,発信源情報や接続先情報といったレベル4の約束事の一部しか適用されず,また,Ⅴ-STP交換機についてはレベル4は適用されない。 なお,レベル4は,電話用呼処理(電話網),自動車電話(移動体網),ファクシミリ(ファクシミリ網)等の各種サービスに応じた約束事(処理)となっており,ファクシミリを扱った経験があるからといって,当然に電話用呼処理のレベル4が理解されることにはならない。 c 被控訴人は,平成元年6月から8月までの間,現場責任者として,V-STP交換機のBユニットの付帯試験に携わり,さらに本件訓練の直前まで,V-STP交換機のBユニットの切り替え作業にも従事していた。これらの作業には共通線信号方式の理解が必要であるが,その内容はレベル1ないし3の範囲である。 (エ) 被控訴人の過去の研修等aD70形訓練被控訴人は,昭和58年8月から9月にかけて,D70形訓練を の作業には共通線信号方式の理解が必要であるが,その内容はレベル1ないし3の範囲である。 (エ) 被控訴人の過去の研修等aD70形訓練被控訴人は,昭和58年8月から9月にかけて,D70形訓練を受けた。同訓練は,交換機の設置工事をするためのものであり,しかも,その当時は,共通線の工事はなかったので,同訓練では共通線信号方式の紹介程度の訓練に止まるものであった。 b ファクシミリ訓練被控訴人は,昭和60年3月から4月にかけて,ファクシミリ訓練を受け,共通線信号方式についての講義を受けた。しかし,プログラムトレースによる訓練は行われなかった。 c 保全科D10形訓練被控訴人は,昭和62年12月にD10形訓練を受けた。しかし,同訓練において,被控訴人が受講した共通線信号方式に関する講義は2,3時間にすぎなかった。 d 勉強会被控訴人は,D70形交換機が職場に導入される際の勉強会において,共通線信号方式の勉強をした。 エ訓練中の年休取得について証拠(甲100~104,108,109,114,121,122,124,134,乙89,証人P5,同P6,同P7,証人P14,証人P13,被控訴人本人(当審))によれば,控訴人におけるこれまでの訓練中の年休取得の主な事例の社員名,訓練の期間,場所及び名称,年休取得期間並びに年休取得理由は,後記(ア)ないし(サ)のとおりであること,及び(ク)のP13の年休取得例をみると,同人は,風邪のため2日間年休を取り,体調が回復しないことから3日目も年休を取ろうとしたところ,担任教官から2日間を超えて年休を取ると卒業できなくなると言われて,風邪を押して訓練に参加したことが認められる。 これによれば,控訴人においても,訓練中の年休取得は,控訴人主張の人道上の理由に限られ,それ以外の理由ではおよそ認めな ると卒業できなくなると言われて,風邪を押して訓練に参加したことが認められる。 これによれば,控訴人においても,訓練中の年休取得は,控訴人主張の人道上の理由に限られ,それ以外の理由ではおよそ認めないというものではなく,訓練の期間にもよるが,おおむね1日間程度の年休の請求であれば,年休取得により訓練の目的が達成されなくなるとは判断されず,時季変更権が行使されることなく,請求どおり年休が付与されていたことが認められる。 (ア) P5 昭和37年7月中旬から3か月間東京学園C41・C51クロスバー交換機の保守作業の訓練1日間登山(イ) P12 昭和42年8月29日から同年10月26日まで駒場学園クロスバーC400形班の訓練2時間組合の選挙活動(ウ) P17 昭和51年ころ鴫野局訓練センタPCM24B訓練3日間コース2日間風邪(エ) P6 昭和52年12月ころ駒場学園保全課電子交換機概要班の訓練1日間ゴルフ(オ) P18 昭和55年鈴鹿学園無線主任班1か月訓練1日間親族の葬儀(カ) P9 昭和58年8月中旬から同年2月上旬まで広島電気通信学園保全補修科市内電話機械班の訓練2日間所用(キ) P10 昭和59年ころ広島電気通信学園保全課電力班の訓練1日間頭痛(ク) P13 昭和59年4月から同年5月にかけての約3週間中央学園ディジタル交換機設計班の集合訓練2日間風邪(ケ) P7 昭和63年4月7日から同月14日まで東京研修センターディジタル交換機基礎Aコース訓練1日間引っ越しの手伝(コ) P11 平成3年8月27日から同年9月13日まで中央研修センタ共通線上級1・STPコースの訓練1日間所用(サ) P8 平成5年12月7日から同月10日までCUSTOM一般実習者研修営業4日コ 11 平成3年8月27日から同年9月13日まで中央研修センタ共通線上級1・STPコースの訓練1日間所用(サ) P8 平成5年12月7日から同月10日までCUSTOM一般実習者研修営業4日コースの訓練1日間ゴルフ② 以上の事実に基づいて検討する。 ア急速な技術革新を遂げつつある電気通信の分野の事業を営む控訴人にとって,その職員に対し,普段から技術革新に即応した高度の知識を習得させ,その技能の向上を図ることは,控訴人の事業の遂行上不可欠であるから,そのための具体的な方法として,当該職員の勤務する職場内において,又は中央学園のような研修専門機関において実施する研修・訓練等(以下,これらを総称して「訓練」という。)は,控訴人の事業の遂行上必要な業務であるということができる。したがって,控訴人の各事業場が所属職員を訓練に参加させることは,当該事業場における業務であるということができ,また,訓練への参加は,職場の代表者として取得した知識,技能を職場に持ち帰ることをも目的とするが,直接的には参加を指名された当該職員の知識及び技能の増進,向上を目的とするものであるから,当該職員が自ら訓練に参加することに意義があり,訓練への参加の一部を他の職員をもって代替することは,訓練の趣旨に反することになるので許されず,その意味において,訓練への参加は,非代替的な業務であるということができる。 したがって,年休取得により非代替的業務である訓練の一部を欠いたとしても,当該訓練の目的及び内容,欠席した訓練の内容とこれを補う手段の有無,当該職員の知識及び技能の程度等によっては,他の手段によって欠席した訓練の内容を補い,当該訓練の所期の目的を達成することのできるなど特段の事情がない限り,時季変更権を行使することが許されるものと解するのが相当である。 イこれ 等によっては,他の手段によって欠席した訓練の内容を補い,当該訓練の所期の目的を達成することのできるなど特段の事情がない限り,時季変更権を行使することが許されるものと解するのが相当である。 イこれを本件についてみると,前記事実関係によれば,本件訓練は,控訴人の事業遂行に必要なディジタル交換機の保守技術者の養成と能力向上を図るため,各職場の代表を参加させて,1か月に満たない比較的短期間に集中的に高度な知識,技能を修得させ,これを所属の職場に持ち帰らせることによって,各職場全体の業務の改善,向上に資することを目的として行われたものということができる。 被控訴人は,本件訓練において修得することが不可欠とされ,そのため従前の講義時間が2倍に増やされていた共通線に関する講義6時限のうち最初の4時限が行われる日について年休を請求したのであるから,当日の講義を欠席することは,本件訓練において予定された知識,技能の修得に不足を生じさせるおそれが高いものといわなければならない。しかも,被控訴人は,交換課の平成元年度における唯一の代表として,保全科ディジタル交換機応用班の訓練に参加していたのであるから,被控訴人の上記修得不足は,ひいては,交換課全体の業務の改善,向上に悪影響を及ぼすことにつながるものということができる。 ウ(ア) 被控訴人は,前記講義には教科書があること(したがって,自習によって欠席した講義について知識を補うことができること),被控訴人の所属していた職場である交換課は共通線信号処理装置にかかわる業務を担当していたことなどを根拠に,被控訴人の努力により欠席した4時限の講義内容を補うことが十分可能であるなどとして,上記欠席が本件訓練の目的達成を困難にするとはいえないと主張している。 しかしながら,通常は,教科書が配布され,教科書に基づいて自習 り欠席した4時限の講義内容を補うことが十分可能であるなどとして,上記欠席が本件訓練の目的達成を困難にするとはいえないと主張している。 しかしながら,通常は,教科書が配布され,教科書に基づいて自習することがあるとしても,自習することによって,4時限の講義によるものと同程度の知識,技能の修得が可能であるとは解されず(参加者に教科書等に基づく自習による場合よりも高い程度の知識,技能を修得させるために,本件訓練のような形態の研修が行われるものというべきである。),6時限の講義のうち最初の4時限を欠席した者が,残る2時限の講義を受講することによって不足を補うことも困難であると推認される。のみならず,そもそも,被控訴人が自習をすることは,被控訴人自身の意思に懸かっており,控訴人は,時季変更権を行使するか否かを決定するに際して,自習がされることを前提とすることはできないから,自習がされない場合における事業の運営への影響を考慮することが許されるものというべきである。 (イ) 被控訴人は,入社以来本件訓練まで,市外交換機の保守運用の業務を行い,その中で,共通線信号方式の知識を得てきたこと,本件訓練までに受講した訓練において,共通線信号方式の訓練を受け,交換機の導入に伴い職場の勉強会で,共通線信号方式について学んだことがあること,したがって,共通線信号方式について,ある程度の知識を有していたことは認められるが,他方,本件訓練では,被控訴人がこれまでの保守運用業務において使用していない市内用交換機を用いて訓練していること,被控訴人が欠席した本件講義の大半は,被控訴人が日常の保守運用業務において一部しか扱っていないレベル4にかかわる約束事について,電話用呼処理全般を対象として扱ったものであること,本件講義では,プログラムトレースが行われ,応用班としてより 訴人が日常の保守運用業務において一部しか扱っていないレベル4にかかわる約束事について,電話用呼処理全般を対象として扱ったものであること,本件講義では,プログラムトレースが行われ,応用班としてより高度な訓練内容となっていたことが認められる(なお,被控訴人は,D10形訓練において,共通線信号処理についてある程度訓練を受けたことが認められるが,その時間数からして,本件訓練と同等には評価できない。)のであって,これら訓練の対象とされた交換機の種類,訓練の内容,程度に照らすと,前記の事実から,被控訴人の知識,技能が,本件講義を欠席しても予定された知識,技能の修得に不足を生じさせないものであったとまで認めることはできない。 (ウ) また,被控訴人が本件訓練をおおむね普通以上の評価をもって終了したことも,時季変更権行使の時点では控訴人の予見し得ない事情にすぎない上,講義において予定されていた知識,技能の修得に不足を生じなかったことを直ちに裏付けるに足りる事情ということもできない。 また,被控訴人が本件訓練において,普通以上の成績を修めて訓練を終了したとしても,そのことから,被控訴人が本件講義の全体を理解していたことを示すものとはいえず,被控訴人において,本件講義を欠席しても,なお不足を生じさせない程度に知識,技能を有していたものと認めることはできず,他にこの事実を認めるに足りる証拠はない。 (エ) 集合訓練中の年休取得の事例や年休の取扱いに関する被控訴人主張の事実も,本件における年休の取得が本件訓練の目的達成を困難にすると判断することを妨げるものとはいえない。 エしたがって,控訴人において,本件における年休の取得が本件訓練の目的達成を困難にすると判断したことは相当であり,この点に違法はないというべきである。 (3) 本件時季変更権の行使の手続的違 い。 エしたがって,控訴人において,本件における年休の取得が本件訓練の目的達成を困難にすると判断したことは相当であり,この点に違法はないというべきである。 (3) 本件時季変更権の行使の手続的違法について被控訴人は,本件において,P2所長が被控訴人に対して時季変更権を行使しているところ,時季変更権は中央学園の訓練部長が有しているのであるから,時季変更権の行使は就業規則に違反して違法であると主張する。 ① 証拠(甲91,102,103,113,乙79,91)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア就業規則39条は,「社員は年次休暇の時季の指定をする場合,事前に行わなければならない。 ただし,指定された時季における年次休暇が事業の正常な運営を妨げる場合は,所属長は他の時季に変更することができるものとする。」と規定し,「所属長」については,「社員就業規則等における所属長の範囲に関する規程」(乙78)2条により,「直属上長」となる。そして直属の上長は組織規程(乙91)別表4に定める管理職位にある直近の上長とされており,被控訴人の場合交換課課長となる。また「社員就業規則等における所属長の範囲に関する規程」5条1項によれば「直属上長」に事故等があるときは直近の上長が,また,直近の上長に事故等があるときは順次直近の上長が,直属の上長の職務を代わって行うこととされている。なお,社員が組合休暇を取得する場合には「所属長」の許可が必要であるが(就業規則48条),この場合の「所属長」は「組織の長」である。したがって,立川ネットワークセンタにおいて,被控訴人の直属上長はP1課長であり,時季変更権行使における所属長は同課長となる。また,組合休暇については,P2所長になる。 イ他方,学園集合訓練中の訓練生の扱いについては,訓練中に年休を付与した ,被控訴人の直属上長はP1課長であり,時季変更権行使における所属長は同課長となる。また,組合休暇については,P2所長になる。 イ他方,学園集合訓練中の訓練生の扱いについては,訓練中に年休を付与した場合は,学園で訓練生の休暇等の付与通知を作成して原局へ送付する扱いとなっていた。 ② 以上の事実によれば,控訴人においては,訓練中の社員に対する時季変更権を行使する主体は,原局での所属長と学園での所属長とが考えられるところ,いずれにしても使用者である控訴人の有する時季変更権を行使するものであることからすると,訓練の参加によって原局の所属長が当然に排除されるとの関係にたつものでもなく,また,学園における訓練も業務の一環であることからすると学園長もまた所属長ということができるのであって,控訴人内部においてそのいずれが行使することも可能であり,いずれが行使することが事案との関係において合理的であるかにかかるものというべきである。本件では,本件訓練が各職場の代表としてこれを職場に持ち帰らせて業務の改善,向上に資することをも目的としていること,欠席する訓練において予定された知識,技能の修得に不足を生じるか否かについての検討をするには,原局である立川ネットワークセンタにおいても判断できることからすると,立川ネットワークセンタにおいて時季変更権を行使することが合理性を欠くとはいえず,違法であるということはできない。そして,引用した原判決の認定した事実によれば,本件では,被控訴人は,平成元年11月18日午後,組合休暇の申請書を控訴人に提出したこと,これに対し,P2所長は,同月20日午後3時ころ,被控訴人に対して組合休暇については許可しない旨の連絡をしたこと,その後,被控訴人からの年休の申請に対して,P2所長は年休は認められないとして時季変更権を行使したこ 所長は,同月20日午後3時ころ,被控訴人に対して組合休暇については許可しない旨の連絡をしたこと,その後,被控訴人からの年休の申請に対して,P2所長は年休は認められないとして時季変更権を行使したことが認められ,このような経緯からすれば,本来の所属長であるP1課長が年休申請の場に居合わせなかったことから,しかも年休取得が翌日に差し迫っているのに,申請されたのが午後3時ころであったことからすると,その上長であるP2所長が時季変更権を行使したものと評価できるのであって,これをもって違法であるということはできない。 (4) 本件時季変更権の行使と不当労働行為の成否について当裁判所も本件時季変更権の行使が不当労働行為に当たらないものと判断する。 その理由は,次のとおり付加するほか,原判決「事実及び理由」第三の二3に説示するとおりであるから,これを引用する。 ① 通信労組に対する差別についてア被控訴人は,多摩ネットワークセンタの「災害・故障時等の連絡系統図」の記載において,通信労組と全電通とを差別したと主張する。 証拠(甲117,118)によれば,平成7年7月に作成された多摩ネットワークセンタで作成された「災害・故障時等の連絡系統図」には,当初全電通の分会の連絡先が記載されていたにもかかわらず,通信労組の連絡先を記載していなかったこと,及びその後全電通の分会の連絡先を削除したことが認められるものの,この記載の差によって通信労組が全電通に比して不利益を受けるものとはいえず,組合間差別があったということはできないし,また,仮にこれが差別に当たるとしても,本件から5年も経過した後の事柄であって,このことをもって,本件時季変更権の行使が不当労働行為であると認める根拠とすることはできない。 イ被控訴人は,通信労組組合員に対して,親睦会や旅行会から排除して 件から5年も経過した後の事柄であって,このことをもって,本件時季変更権の行使が不当労働行為であると認める根拠とすることはできない。 イ被控訴人は,通信労組組合員に対して,親睦会や旅行会から排除していると主張するが,仮に,通信労組組合員がこれらの親睦会等に加われなかったとしても,これらの会は,控訴人とは別の任意の団体であるから,上記のことが直ちに被控訴人の通信労組組合員に対する差別的扱いに当たるとはいえない。 ウ被控訴人は,通信労組組合員に対して,任用差別をしていると主張し,これに沿う証拠(甲78の1,2,証人P14)があるが,同証拠によっても,通信労組加入前に昇格に差があったことが認められるのであるから,これによって任用差別があるものと認めることはできない。 エ被控訴人は,控訴人の課長が通信労組浜松分会の新人組合員に対して,何ら合理的な理由もなく,会社を辞めてもらうと述べて,通信労組組合員を敵視した旨,及び控訴人の労務担当者が通信労組の設置した立て看板を破壊した旨主張するが,仮にそのとおりであったとしても,前者は平成7年5月のことであり(甲128,129),後者は平成6年3月のこと(甲130ないし133)であって,いずれも本件より5,6年も後のことであるから,この事実によって,本件時季変更権の行使が通信労組への敵視政策に基づく不当労働行為であると認める根拠とすることはできない。 オ被控訴人は,ビラ配布の際ゴミ箱を置いたことが敵視政策の表れであると主張するが,証拠(甲123)によれば,その場所は入口の奥であることが認められるのであるから,これをもって直ちに敵視政策の表れということはできない。 カ被控訴人は,控訴人による差別を立証するものとして,「差別黒書」と題する書面(甲120)を提出するが,同書面の記載から直ちに書面記載のとおりの れをもって直ちに敵視政策の表れということはできない。 カ被控訴人は,控訴人による差別を立証するものとして,「差別黒書」と題する書面(甲120)を提出するが,同書面の記載から直ちに書面記載のとおりの差別があったものとは認められない。 キ以上のとおりであるから,本件時季変更権の行使が,被控訴人の主張するような通信労組に対する敵視ないし差別の結果であると認めることはできない。 ② 被控訴人に対する差別的取扱いについてア被控訴人は,被控訴人の昇進が同期入社の者に比べて必ずしも順調ではなく,遅れていることについて合理的な理由がないので,差別的取扱いであると主張するが,当該労働者と同種同等同量の労働を提供しているにもかかわらず,差が生じているときに初めて差別があると評価できるのであって,同期の者が昇進したのに被控訴人が昇進しなかったことのみをもって,昇進につき差別があるということはできない。 イ被控訴人は,D10形訓練の際,控訴人が入寮を認めない措置を採ったが,これは通信労組の拡大を防ぐためにした差別であると主張するが,被控訴人本人の供述によれば,被控訴人が入寮を希望したことはなく,また,立川ネットワークセンタに勤務する者でも通勤する者がいたことが認められるのであるから,上記の事実をもって被控訴人に対する差別であるとはいえない。 ウ被控訴人は,控訴人は被控訴人を敵視しており,周囲の社員を被控訴人から遠ざけて,差別したと主張し,これに沿う証拠〔甲122(P13の陳述書),甲123(P16の陳述書),証人P13〕がある。 しかし,証人P13の供述(甲122を含む。)は,P13が,平成元年3月に立川ネットワークセンタに被控訴人の上司として異動した際,被控訴人には注意するように言われたことを内容とするものであるところ,被控訴人は,既に通信労組に 122を含む。)は,P13が,平成元年3月に立川ネットワークセンタに被控訴人の上司として異動した際,被控訴人には注意するように言われたことを内容とするものであるところ,被控訴人は,既に通信労組に加盟して東京支部執行委員になっていたにもかかわらず,証人P13は,被控訴人が全電通の反主流派に属していたものと認識していたというのであって,上司として注意するように言われた当の人間の所属組合すら誤っていることからすると,前記供述は信用することができない。また,甲123(P16の陳述書)には,入社したころに,被控訴人は全電通とは違うもう一つの流れの組合に加入している人であるから注意するようにと言われたとの記載があるが,P16は昭和61年4月の入社であり(乙85),当時,被控訴人が通信労組の組合員ではなかったことに照らすと,上記の記載もにわかに信用することができない。 したがって,被控訴人の前記主張事実は認めることができない。 エ被控訴人は,控訴人が,被控訴人を,設計,積算の仕事をさせず業務において差別し,また,昇格のためのスキル判定(技術力の判定)を受けさせないようにして差別した旨主張する。 しかし,証拠(乙12)によれば,設計・積算の業務は,通信処理系設備に関する設計・積算業務は通信処理係の,また電話系交換設備に関する設計・積算業務は建設係の担務と定められ,被控訴人の所属する交換係の業務には設計・積算業務は含まれていないことに照らすと,被控訴人主張の業務は,被控訴人のなすべき業務であるということはできず,これを被控訴人に分担させなかったとしても,これをもって差別であるということはできない。また,証人P13の供述によれば,同人は係長で退職しているところ,スキル判定を受けていないことが認められるので,スキル判定が必ずしも昇格に結びつくものという をもって差別であるということはできない。また,証人P13の供述によれば,同人は係長で退職しているところ,スキル判定を受けていないことが認められるので,スキル判定が必ずしも昇格に結びつくものということはできない。したがって,被控訴人にスキル判定を受けさせないことがあったとしても,これをもって差別であるとはいえない。 ③ 本件時季変更権の行使における差別について被控訴人は,(a)控訴人は,平成元年10月下旬ころ,突然,本件訓練の参加者をP15職員から被控訴人に変更したが,この変更は,従前被控訴人が訓練受講を強く希望し続けていたにもかかわらず,受講がかなわなかったことや,P15職員から被控訴人への変更に合理的な理由がないこと,(b)被控訴人の年休請求は,組合休暇申請が認められない旨の通知がされた後にされたものであって,控訴人は,被控訴人が全労連の結成大会に参加するために年休を取得することを認識していたこと,(c)控訴人は,訓練中でも,年休を認めてきたことからすると,控訴人の時季変更権の行使は,被控訴人の全労連結成大会参加を妨害するためのものであると主張する。 ア (a)について引用した原判決の認定した事実によれば,控訴人が本件訓練の参加者をP15職員から被控訴人に変更したのは,P15職員の異動があったためであり,その理由には合理性があるのであって,参加者の変更自体が不当労働行為の目的に出たものとまで認めることはできない。 イ (b)について引用した原判決の認定した事実によれば,被控訴人の年休請求は,組合休暇申請が認められない旨の通知がされた後にされたものであることは認められるものの,そのことから直ちに,控訴人において,被控訴人が全労連の結成大会に参加するために年休を取得することを認識していたとまでは認められない。 ウ (c)につ れた後にされたものであることは認められるものの,そのことから直ちに,控訴人において,被控訴人が全労連の結成大会に参加するために年休を取得することを認識していたとまでは認められない。 ウ (c)について学園の訓練参加中に年休を取得した者がいること,及び本人や親族の病気,親族の慶弔を理由とした取得のほか,登山,妹の引越のほか所用ないし理由を述べずに年休を取得した者がいることは,前記2(2)①エに認定したとおりである。したがって,被控訴人は,病気等の人道上の理由以外であっても,訓練参加中の年休の取得を認めていたということができる。 しかし,証拠(甲40,100,114,121,証人P14,同P6)によっても,年休取得者の参加した訓練の内容,特に年休を取得した日に具体的に予定された訓練がどのようなものであり,欠席することによって予定された知識,技能の修得に不足を生じさせるものであるかについては,全く不明であること(なお,証人P6の供述によれば,同人はテスト日に年休を取得したが,後日受験していることが認められ,同人の年休取得については,年休の取得によって予定された知識等に不足を生じさせない訓練であったというができる。)からすると,時季変更権を行使することができた訓練であったか否かも明らかでなく,他にこの事実を認めるに足りる証拠はない。 他方,控訴人においては,訓練中,1日についての年休請求があった際,時季変更権を行使した事例もあること(乙71)が認められるのであって,前記の事実から,訓練中の年休請求に対して,時季変更権を行使したことが通常と異なる扱いであるということはできない。 したがって,時季変更権を行使したことが直ちに被控訴人に対する差別的取扱いに当たるということはできない。そして,仮に,控訴人において,被控訴人が全労連の結成大会に いであるということはできない。 したがって,時季変更権を行使したことが直ちに被控訴人に対する差別的取扱いに当たるということはできない。そして,仮に,控訴人において,被控訴人が全労連の結成大会に参加するために年休を申請したことを認識していたとしても,引用した原判決が認定した事実によれば,全労連結成大会には,被控訴人以外の通信労組の出席予定者は,いずれも年休や組合休暇を取得して参加していることが認められ,しかも,被控訴人は,同大会では傍聴者の立場であったのである(原審被控訴人)から,控訴人が被控訴人についてだけ時季変更権を行使して参加を妨害する合理的な理由も見出し難いのであって,控訴人が被控訴人の大会参加を嫌悪して時季変更権を行使したものと認めることはできない。 なお,引用した原判決の認定した事実によれば,P2所長が平成元年11月22日に中央学園を訪れていること,同月21日の出勤簿については,通常の事務処理と異なり,斜線を入れた上で事後処理を立川ネットワークセンタに任せたことが認められるが,被控訴人は時季変更権を行使されたにもかかわらず,それに従わずに欠勤したのであり,そのこと自体が異常な事態というべきであるから,上記の事実が不自然であるということはできない。 ④ 以上のとおりであるから,本件時季変更権の行使が不当労働行為であるということはできない。 (5) 時季変更権の濫用について被控訴人は、控訴人が,通信労組に対する敵視と被控訴人に対する差別から,被控訴人がたまたま訓練中であることを奇貨として,時季変更権を行使したものであるから,権利の濫用である旨主張するが,前記のとおり,控訴人が,訓練中の年休の請求に対し,時季変更権を行使しない扱いをしていたとまでは認めることができず,また,被控訴人が訓練中を奇貨として時季変更権を行使したとい 濫用である旨主張するが,前記のとおり,控訴人が,訓練中の年休の請求に対し,時季変更権を行使しない扱いをしていたとまでは認めることができず,また,被控訴人が訓練中を奇貨として時季変更権を行使したということもできないから,被控訴人の主張は理由がない。 (6) 本件譴責処分の違法性について① 本件譴責処分の決定に至る経緯ア控訴人においては,懲戒の種類として,懲戒解雇,諭旨解雇,出勤停止,減給,譴責が定められており〔就業規則70条,懲戒規程(乙68)4条〕,懲戒処分を行う権限(懲戒権)は,社長及びその委任を受けた者(譴責処分については更に委任を受けた者)がこれを行使するものと定められている(懲戒規程3条,5条)。そして,本社,全社的な集約業務事業所及び事業本部には,懲戒審査会が設置されており,懲戒審査会は非違行為があった場合には,迅速かつ適正に量定をして,答申をすることとされている〔懲戒規程6条2項,7条,「懲戒規程の運用について」(乙68)7条関係〕。 また,所属長は,所属社員等について懲戒に当たる事実があると思料するときは,速やかに調査し,懲戒処分を行う必要があると認める場合は,所定の手続により処分しなければならないし,処分を行う権限がないときは,その社員等の懲戒権を有する者に速やかに上申しなければならないものと定められている(懲戒規程6条1項)。ここに「所属長」とは,登録組織単位の長等をいうが,学園等に所属していない訓練生にっいて調査する場合には,原則としてその学園の長が所属長となる(「懲戒規程の運用について」6条関係)。 これを,本件についてみると,被控訴人に対する譴責処分については,事業本部長からの再委任により中央ネットワーク支社長がその権限を有することになり(弁論の全趣旨),また,本件は,訓練中の欠席が非違行為として問題と についてみると,被控訴人に対する譴責処分については,事業本部長からの再委任により中央ネットワーク支社長がその権限を有することになり(弁論の全趣旨),また,本件は,訓練中の欠席が非違行為として問題となっていることから,中央学園の長が,原則としてその所属長となるということになる。 イ証拠(乙70ないし78)によれば,(ア) P2所長は,平成元年11月27日,中央ネットワーク支社長に対し,事実経過及び事情聴取の結果を記載した処分調書,P2所長作成の機関長意見書,P1課長作成の所属長意見書,P3教官作成の現認書等を添えて,懲戒申請を上申したこと,(イ) 中央ネットワーク支社長は,更にこれをネットワーク事業本部長に上申したこと,(ウ) ネットワーク事業部では,平成元年12月11日,懲戒審査会を開き,過去の訓練期間中の無断欠勤の事例5例とも比較検討した結果,譴責処分が相当であると判断し,同日,同事業本部懲戒審査委員長名により,中央ネットワーク支社長に対し,その旨連絡したこと,(エ) これを受けて,中央ネットワーク支社長は,同月15日,懲戒審査委員会を開催し,被控訴人を譴責処分とすることの了承を得た上で,譴責処分相当と判断し,同日その旨をP2所長に伝えたこと,(オ) なお,処分調書中の事実経過欄等には,「訓練の実施に支障が生じる」ことから年休を不承認にした旨記載されていること,以上の事実が認められる。 ② 以上の事実によれば,懲戒事由については,P2所長が中心となって事実調査を行い,その結果を基礎に本件譴責処分が決定されたこと,その際の時季変更権行使の理由としては,「訓練の実施に支障を生じる」と記載されているのみであったことが認められる。しかし,本件訓練において,時季変更権の行使の理由としては同記載で十分であり,その結果を前提に量定をしたとしても 由としては,「訓練の実施に支障を生じる」と記載されているのみであったことが認められる。しかし,本件訓練において,時季変更権の行使の理由としては同記載で十分であり,その結果を前提に量定をしたとしても,何ら杜撰な調査ということはできないのであって,同調査結果を基礎に本件譴責処分を行ったことが違法であるということはできない。 また,本件は訓練中の非違行為であるから,原則として学園長が事実調査を行うべきところではあるが,引用した原判決の認定した事実によれば,被控訴人は無断欠勤をする前から被控訴人の原局である立川ネットワークセンタにおいて,組合休暇の申請及び年休の請求をめぐるやりとりをしており,しかも,立川ネットワークセンタにおいて事前に無断欠勤になると警告を発していたことが認められ,これらの事情からすると,中央学園よりも立川ネットワークセンタの方が被控訴人の無断欠勤に至る経緯をよりよく把握していたといえるのであるから,P2所長において事実調査したとしても,そのことの故に本件譴責処分が違法であるということはできない。 更に,中央学園において,被控訴人の無断欠席を問題にしていなかったと認めるに足りる証拠はない。そして,本件譴責処分が,他の処分例に比して不当に重いと認めるに足りる証拠もない。 (7) 定期昇給減額措置及び賃金削減の正当性(控訴人の主張)について就業規則84条及び社員給与規則(乙69)32条によれば,懲戒処分の有無にかかわりなく,無断欠勤した社員は,職能賃金の定期昇給額が減額され,その額は職能賃金の定期昇給の4分の2にすることができるのであるから,控訴人の定期昇給減額の措置は正当である。また,本件時季変更権の行使は適法であるから,被控訴人の年休取得は認められず,被控訴人が欠勤した日は不就労といわざるを得ない。したがって,同社員給 あるから,控訴人の定期昇給減額の措置は正当である。また,本件時季変更権の行使は適法であるから,被控訴人の年休取得は認められず,被控訴人が欠勤した日は不就労といわざるを得ない。したがって,同社員給与規則13条により1日分の賃金を削減したことは正当である。 (8) 仮執行宣言に基づいて支払った金員の返還及び損害賠償(控訴人の主張)について控訴人が,被控訴人に対し,平成6年9月1日,原判決主文第2項に基づく金員の「仮払として」元金17万3524円及び遅延損害金1万2219円の合計18万5743円を支払ったことは,前記第2の2(5)に記載のとおりであるところ,控訴人は,同月12日には本件控訴を提起し,同判決によって履行を命じられた債務の存在を争っているのであるから,他に特段の事情があることについて主張立証のない本件においては,同金員は,原判決の仮執行宣言に基づいて支払われたものと認めるのが相当である(最高裁昭和47年6月15日第1小法廷判決・民集26巻5号1000頁参照)。 したがって,被控訴人は民事訴訟法260条2項に基づき,同金員及びこれに対する金員を支払った日である平成6年9月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払う義務がある。 3 結論以上によれば,被控訴人の主張はいずれも理由がないので,本訴請求は,当審において拡張した分を含めて,棄却を免れない。そして,控訴人の民事訴訟法260条2項の規定による申立ては理由があるので認容すべきである。 よって,上記と結論を異にする原判決は相当でないから,これを取り消した上,被控訴人の請求及び附帯控訴をいずれも棄却し,控訴人の民事訴訟法260条2項の規定による申立てを認容することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第11民事部裁判長裁判官瀬戸正義裁判官遠山廣直裁判 及び附帯控訴をいずれも棄却し,控訴人の民事訴訟法260条2項の規定による申立てを認容することとして,主文のとおり判決する。 東京高等裁判所第11民事部裁判長裁判官瀬戸正義裁判官遠山廣直裁判官河野泰義
▼ クリックして全文を表示