平成27年3月11日判決言渡平成26年(行ケ)第10187号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成27年2月25日判決 原告東芝ライフスタイル株式会社 訴訟代理人弁護士三山峻司同松田誠司同清原直己訴訟代理人弁理士蔦田正人同中村哲士同富田克幸同夫世進同有近康臣同前澤龍同蔦田璋子 被告パナソニック株式会社 訴訟代理人弁護士岩坪哲同速見禎 祥 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求特許庁が無効2012-800008号事件について平成26年6月24日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等(当事者間に争いがない。)被告は,平成22年8月10日に出願(特願2010-179294号。 平成15年12月22日に出願された特願2003-425862号の分割出願。優先日同年8月5日)(以下,この優先日を「本件優先日」という。)され,平成23年12月9日に設定登録された,発明の名称を「帯電微粒子水による不活性化方法及び不活性化装置」とする特許第4877410号(以下「本件特許」という。設 優先日を「本件優先日」という。)され,平成23年12月9日に設定登録された,発明の名称を「帯電微粒子水による不活性化方法及び不活性化装置」とする特許第4877410号(以下「本件特許」という。設定登録時の請求項の数は6である。)の特許権者である。 原告は,平成24年1月31日,特許庁に対し,本件特許の請求項全部について無効にすることを求めて審判の請求(無効2012-800008号事件)をした。上記請求に対し,特許庁が,同年8月2日,無効審決をしたため,被告は,同年9月10日,審決取消訴訟を提起した(知的財産高等裁判所平成24年(行ケ)第10319号)。その後,被告が,同年12月7日,特許庁に対し,訂正審判請求をしたことから,知的財産高等裁判所は,平成25年1月29日,平成23年法律第68号による改正前の特許法181条2項に基づき,上記審決を取り消す旨の決定をした。 被告は,平成25年2月18日,本件特許の請求項1及び4を削除し,請求項2を請求項1と,請求項3を請求項2と,請求項5を請求項3と,請求項6を請求項4とした上で各請求項につき特許請求の範囲の訂正を請求した(以下「本件訂正」という。)。特許庁は,同年5月8日,本件訂正を認めた上で無効審決をしたため,被告は,同年6月14日,審決取消訴訟を提起し(知的財産高等裁判所平成25年(行ケ)第10163号),知的財産高等 裁判所は,平成26年1月30日,上記審決を取り消す旨の判決をした。特許庁は,同年6月24日,「訂正を認める。本件審判の請求は,成り立たない。」との審決をし,その謄本を,同年7月3日,原告に送達した。 原告は,同年7月31日,上記審決の取消しを求めて,本件訴えを提起した。 2 特許請求の範囲の記載本件訂正後の本件特許の特許請求の範囲の記載は,次のとおりで ,同年7月3日,原告に送達した。 原告は,同年7月31日,上記審決の取消しを求めて,本件訴えを提起した。 2 特許請求の範囲の記載本件訂正後の本件特許の特許請求の範囲の記載は,次のとおりである(甲34,39,40。以下,請求項1に係る発明を「本件訂正特許発明1」,請求項2に係る発明を「本件訂正特許発明2」などといい,これらを総称して「本件訂正特許発明」という。また,本件特許の明細書及び図面をまとめて「本件特許明細書」という。)。 請求項1「大気中で水を静電霧化して,粒子径が3~50nmの帯電微粒子水を生成し,花粉抗原,黴,菌,ウイルスのいずれかと反応させ,当該花粉抗原,黴,菌,ウイルスの何れかを不活性化することを特徴とする帯電微粒子水による不活性化方法であって,前記帯電微粒子水は,室内に放出されることを特徴とし,さらに,前記帯電微粒子水は,ヒドロキシラジカル,スーパーオキサイド,一酸化窒素ラジカル,酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のラジカルを含んでいることを特徴とする帯電微粒子水による不活性化方法。」請求項2「大気中で水を静電霧化して,粒子径が3~50nmの帯電微粒子水を生成し,花粉抗原,黴,菌,ウイルスのいずれかと反応させ,当該花粉抗原,黴,菌,ウイルスの何れかを不活性化することを特徴とする帯電微粒子水による不活性化方法であって,前記帯電微粒子水は,大気中に放出されることを特徴とし,さらに,前記帯電微粒子水は,ヒドロキシラジカル,スーパーオキサイド,一酸化窒素ラジカル,酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のラ ジカルを含んでおり,前記帯電微粒子水は,粒子径3nm未満の帯電微粒子水よりも長寿命であることを特徴とする帯電微粒子水による不活性化方法。」請求項3「霧化部に位置する水が静電霧化を起 ジカルを含んでおり,前記帯電微粒子水は,粒子径3nm未満の帯電微粒子水よりも長寿命であることを特徴とする帯電微粒子水による不活性化方法。」請求項3「霧化部に位置する水が静電霧化を起こす高電圧を印加する電圧印加部を備え,当該電圧印加部の高電圧の印加によって,大気中で水を静電霧化して,粒子径が3~50nmであり,花粉抗原,黴,菌,ウイルスの何れかと反応させて,当該花粉抗原,黴,菌,ウイルスの何れかを不活性化するための帯電微粒子水を生成し,前記帯電微粒子水は,室内に放出されることを特徴とする不活性化装置であって,前記帯電微粒子水は,ヒドロキシラジカル,スーパーオキサイド,一酸化窒素ラジカル,酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のラジカルを含んでいることを特徴とする不活性化装置。」請求項4「霧化部に位置する水が静電霧化を起こす高電圧を印加する電圧印加部を備え,当該電圧印加部の高電圧の印加によって,大気中で水を静電霧化して,粒子径が3~50nmであり,花粉抗原,黴,菌,ウイルスの何れかと反応させて,当該花粉抗原,黴,菌,ウイルスの何れかを不活性化するための帯電微粒子水を生成し,前記帯電微粒子水は,大気中に放出されることを特徴とする不活性化装置であって,前記帯電微粒子水は,ヒドロキシラジカル,スーパーオキサイド,一酸化窒素ラジカル,酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のラジカルを含んでおり,前記帯電微粒子水は,3nm未満の帯電微粒子水と比較して長寿命であることを特徴とする不活性化装置。」 3 審決の理由審決の理由は,別紙審決書写しのとおりである。本件訴訟の争点となる部分の要旨は,① 本件訂正特許発明の粒子径の記載はいずれも明確である(特許法36条6項2号の要件を満たす。),② 本件訂正特許発明の粒子径 に関 決書写しのとおりである。本件訴訟の争点となる部分の要旨は,① 本件訂正特許発明の粒子径の記載はいずれも明確である(特許法36条6項2号の要件を満たす。),② 本件訂正特許発明の粒子径 に関し,発明の詳細な説明に記載されていないとすることはできない(同項1号の要件を満たす。),③ 本件訂正特許発明の静電霧化の意味は明確であるほか,本件訂正特許発明の静電霧化手段に関し,発明の詳細な説明に記載されていないとすることはできないし,発明の詳細な説明には,当業者が本件訂正特許発明の実施ができる程度に明確かつ十分な記載がなされていないとすることもできない(同項1号及び2号並びに同条4項1号の要件を満たす。),④ 本件訂正特許発明1及び3はいずれも,I.WuledLENGGOROら「静電噴霧法による液滴およびイオンの発生」粉体工学会誌Vol.37,No.10(日本,2000年),753~760頁(甲10。 以下「甲10」という。)記載の発明(以下,審決が本件訂正特許発明1と対比するに当たり認定した甲10記載の発明を「甲10発明1」と,本件訂正特許発明3と対比するに当たり認定した甲10記載の発明を「甲10発明2」という。)に,特開平11-155540号公報(甲5。以下「甲5」という。),特開平7-135945号公報(甲6。以下「甲6」という。)及び「ラジカル反応・活性種・プラズマによる脱臭・空気清浄技術とマイナス空気イオンの生体への影響と応用」(株)エヌ・ティー・エス発行,2002年10月15日,218~231頁,363~367頁,389~392頁(甲7。以下「甲7」という。)に記載の技術を組み合わせても,当業者が容易に発明できたものではない(同法29条2項の規定に反しない。),⑤ 本件訂正特許発明1及び3はいずれも,特開2002-20365 甲7。以下「甲7」という。)に記載の技術を組み合わせても,当業者が容易に発明できたものではない(同法29条2項の規定に反しない。),⑤ 本件訂正特許発明1及び3はいずれも,特開2002-203657号公報(甲11。以下「甲11」という。)記載の発明(以下,審決が本件訂正特許発明1と対比するに当たり認定した甲11記載の発明を「甲11発明1」と,本件訂正特許発明3と対比するに当たり認定した甲11記載の発明を「甲11発明2」という。)に,甲5ないし7記載の技術を組み合わせても,当業者が容易に発明できたものではない(同上),というものである。 上記④の結論を導くに当たり,審決が認定した甲10発明1及び2の内 容,甲10発明1と本件訂正特許発明1及び甲10発明2と本件訂正特許発明3との一致点及び相違点は以下のとおりである。 ア甲10発明1及び2の内容甲10発明1「液体を静電噴霧して,粒子径が数nmで幾何標準偏差が1.1程度のイオンを含む液滴を生成する方法」甲10発明2「導電性の細管の先端に位置する液体が静電噴霧を起こす高電圧を印加する高圧電源を備え,当該高圧電源の高電圧の印加によって,液体を静電噴霧して,液滴径が数nmで幾何標準偏差が1.1程度のイオンを含む液滴を生成する静電噴霧装置」イ本件訂正特許発明1と甲10発明1について一致点「液体を静電霧化して,粒子径が3~50nmの帯電微粒子の液滴を生成する工程を含む方法」相違点a 相違点10a「本件訂正特許発明1は,水を静電霧化して帯電微粒子水を生成し,帯電微粒子水を花粉抗原,黴,菌,ウイルスのいずれかと反応させ,当該花粉抗原,黴,菌,ウイルスの何れかを不活性化する不活性化方法であるのに対して,甲10発明1は,帯電微粒子の液滴が,花粉 を生成し,帯電微粒子水を花粉抗原,黴,菌,ウイルスのいずれかと反応させ,当該花粉抗原,黴,菌,ウイルスの何れかを不活性化する不活性化方法であるのに対して,甲10発明1は,帯電微粒子の液滴が,花粉抗原,黴,菌,ウイルスのいずれかと反応し,それらの何れかを不活性化するか不明である点」b 相違点10b「本件訂正特許発明1では,大気中で水を静電霧化し,帯電微粒子水は,室内に放出されるのに対し,甲10発明1では,大気中で液体を 静電霧化するのか,また,液滴が室内に放出されるのか明らかでない点」c 相違点10c「本件訂正特許発明1では,帯電微粒子水は,ヒドロキシラジカル,スーパーオキサイド,一酸化窒素ラジカル,酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のラジカルを含んでいるのに対して,甲10発明1では,帯電微粒子の液滴が,そのようなラジカルを含んでいるか不明である点」ウ本件訂正特許発明3と甲10発明2について一致点「霧化部に位置する液体が静電霧化を起こす高電圧を印加する電圧印加部を備え,当該電圧印加部の高電圧の印加によって,水を静電霧化して,粒子径が3~50nmである帯電微粒子の液滴を生成する装置」相違点a 相違点10d「本件訂正特許発明3は,水を静電霧化して帯電微粒子水を生成し,花粉抗原,黴,菌,ウイルスの何れかと反応させ,当該花粉抗原,黴,菌,ウイルスの何れかを不活性化する帯電微粒子水による不活性化装置であるのに対し,甲10発明2は,帯電微粒子の液滴が,花粉抗原,黴,菌,ウイルスのいずれかと反応し,それらの何れかを不活性化するか不明である点」b 相違点10e「本件訂正特許発明3では,大気中で水を静電噴霧し,帯電微粒子水は,室内に放出されるのに対し,甲10発明2では,大気中で液体を ,それらの何れかを不活性化するか不明である点」b 相違点10e「本件訂正特許発明3では,大気中で水を静電噴霧し,帯電微粒子水は,室内に放出されるのに対し,甲10発明2では,大気中で液体を静電霧化するのか,また,液滴が室内に放出されるのか明らかでない点」 c 相違点10f「本件訂正特許発明3では,帯電微粒子水は,ヒドロキシラジカル,スーパーオキサイド,一酸化窒素ラジカル,酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のラジカルを含んでいるのに対し,甲10発明2では,帯電微粒子の液滴が,そのようなものであるか明らかでない点」前記⑤の結論を導くに当たり,審決が認定した甲11発明1及び2の内容,甲11発明1と本件訂正特許発明1及び甲11発明2と本件訂正特許発明3との一致点及び相違点は以下のとおりである。 ア甲11発明1及び2の内容甲11発明1「空気中で水を静電霧化して,0.001μm(1nm)程度の大きさである,小イオンを生成し,集塵する方法であって,前記小イオンは,室内に供給され,さらに,前記小イオンは,水の分子に極小イオンが結合して水分子のクラスターを核としている,小イオンによる集塵方法」甲11発明2「放電電極を兼ねる水管の先端から滴下する水滴がコロナ放電により微細な水滴となって霧散する高電圧を印加する高圧電源とを備え,該高電圧の印加によって,空気中で水を静電霧化して,0.001μm(1nm)程度の大きさである,集塵するための小イオンを生成し,前記小イオンは室内に供給される装置」イ本件訂正特許発明1と甲11発明1について一致点「大気中で水を静電霧化して,帯電微粒子水を生成し,室内の空気を清浄化する帯電微粒子水による方法であって,前記帯電微粒子水は,室内に放出される方法」相 1と甲11発明1について一致点「大気中で水を静電霧化して,帯電微粒子水を生成し,室内の空気を清浄化する帯電微粒子水による方法であって,前記帯電微粒子水は,室内に放出される方法」相違点 a 相違点11a「本件訂正特許発明1は,帯電微粒子水の粒子径が3~50nmであるのに対して,甲11発明1は,小イオンの大きさが1nm程度である点」b 相違点11b「本件訂正特許発明1は,帯電微粒子水を花粉抗原,黴,菌,ウイルスのいずれかと反応させ,当該花粉抗原,黴,菌,ウイルスの何れかを不活性化する不活性化方法であるのに対して,甲11発明1は,小イオンによって集塵する方法である点」c 相違点11c「本件訂正特許発明1では,帯電微粒子水は,ヒドロキシラジカル,スーパーオキサイド,一酸化窒素ラジカル,酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のラジカルを含んでいるのに対して,甲11発明1では,小イオンがそのようなラジカルを含んでいるか不明である点」ウ本件訂正特許発明3と甲11発明2について一致点「霧化部に位置する水が静電霧化を起こす高電圧を印加する電圧印加部を備え,当該電圧印加部の高電圧の印加によって,大気中で水を静電霧化して空気を清浄化するための帯電微粒子水を生成し,前記帯電微粒子水は,室内に放出される装置」相違点a 相違点11d「本件訂正特許発明3では,帯電微粒子水の粒子径が,3~50nmであるのに対して,甲11発明2では,小イオンの大きさが1nm程度である点」b 相違点11e 「本件訂正特許発明3では,帯電微粒子水が,花粉抗原,黴,菌,ウイルスのいずれかと反応させ,当該花粉抗原,黴,菌,ウイルスの何れかを不活性化するためのものであるのに対して,甲11発明2は, 「本件訂正特許発明3では,帯電微粒子水が,花粉抗原,黴,菌,ウイルスのいずれかと反応させ,当該花粉抗原,黴,菌,ウイルスの何れかを不活性化するためのものであるのに対して,甲11発明2は,小イオンが集塵するためのものである点」c 相違点11f「本件訂正特許発明3では,帯電微粒子水が,ヒドロキシラジカル,スーパーオキサイド,一酸化窒素ラジカル,酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のラジカルを含んでいるのに対して,甲11発明2では,小イオンがそのようなラジカルを含んでいるか不明である点」第3 原告主張の取消事由以下のとおり,審決には,粒子径に関する明確性要件の判断の誤り(取消事由1),粒子径に関するサポート要件の判断の誤り(取消事由2),静電霧化手段に関するサポート要件及び実施可能要件の判断の誤り(取消事由3),甲10を主引例とする進歩性の判断の誤り(取消事由4)及び甲11を主引例とする進歩性の判断の誤り(取消事由5)があり,これらの誤りは審決の結論に影響を及ぼすものであるから,審決は取り消されるべきである。 1 取消事由1(粒子径に関する明確性要件の判断の誤り)審決は,本件訂正特許発明における「粒子径が3~50nm」とは,凝集していない個々の粒子のほぼ全てが粒子径3~50nmの範囲に分布していることを意味することが明確である旨判断した。 しかし,審決は,甲10において静電霧化により生成する液滴の粒径分布が非常に狭く単分散性が高いことを前提としているが,本件特許の特許請求の範囲には,粒子のほぼ全てが上記範囲内にあるか否かは何ら記載されていない。 そして,「粒子径が3~50nm」と幅をもって表現された場合に,その上限,下限の値が,平均粒子径の幅を示しているのか,D50(頻度の累積 が50% 内にあるか否かは何ら記載されていない。 そして,「粒子径が3~50nm」と幅をもって表現された場合に,その上限,下限の値が,平均粒子径の幅を示しているのか,D50(頻度の累積 が50%になる粒子径〔メジアン径〕)の幅を示しているのか,ピーク値(最大ピークとなる最頻出値)の幅を示しているのか,様々な解釈があり得るところ,本件特許明細書には,どのような幅を示しているのかの説明はされておらず,本件特許明細書の記載を参酌しても,上記の幅は不明確である。 現に,本件特許明細書の記載を参酌した場合,粒子径の範囲の解釈については,その記載箇所に応じて,ピーク値の幅と解釈したり(【0024】,粒子のほぼ全てが範囲内にあると解釈したり(【0038】)する余地があり,特許請求の範囲を画一的に把握することができない。 そうすると,「粒子径が3~50nm」との記載については,本件特許明細書の記載を参酌しても,複数の意味に解釈される余地があるから,本件特許の特許請求の範囲は明確とはいえない。 よって,審決の前記判断は誤りである。 2 取消事由2(粒子径に関するサポート要件の判断の誤り) 審決は,本件特許明細書【0013】,【0024】及び【0052】の記載等から,帯電微粒子水の粒子径の上限は,粒子の空間内への拡散性や人の肌への浸透性の観点から100nmが好ましく,抗原の不活性化の作用や空気中の湿度に影響を与えないという観点から,50nmが好ましいこと,また,粒子径の下限は,粒子の寿命と抗原の不活性化の作用の観点から3nmが好ましいことが把握されるから,本件特許明細書に実施例として示されたものが,20nm付近をピークとして,10~30nmに分布を持つ帯電微粒子水のみであったとしても,粒子のほぼ全てが粒子径10~30nmの範囲に分布している から,本件特許明細書に実施例として示されたものが,20nm付近をピークとして,10~30nmに分布を持つ帯電微粒子水のみであったとしても,粒子のほぼ全てが粒子径10~30nmの範囲に分布している帯電微粒子水であれば,室内への拡散性が良いことや,長寿命であること,抗原の不活性化の作用を奏しつつ,空気中の湿度調整に影響を与えない等の作用効果を奏することは,当業者が明細書及び図面の記載に基づいて理解できる事項である,と認定判断した。 しかし,審決の判断は 上記判断は誤りである。 そして,「粒子径が3~50nm」の意味はピーク値の幅と解釈する余地が十分にあり,そのように解釈した場合,本件特許明細書には3~50nmのうちの20nm付近の粒子径についてしか長寿命化と不活性化効果が示されていないのであるから(【0042】,【0045】~【0048】),かかる実施例を本件訂正特許発明の全体まで拡張ないし一般化することはできない。 「粒子径が3~50nm」との数値は,本件訂正特許発明の課題を解決する作用効果に直結する重要な数値であるところ,本件特許明細書の実施例には,粒子径3~10nm未満の部分と粒子径30nm~50nmの部分のいずれについても,長寿命化という効果を裏付けるデータの記載はない。また,3nm及び50nmをそれぞれ下限値及び上限値とする不活性化効果については記載されているものの,それを裏付けるデータも記載されていないし,帯電微粒子水の長寿命化についても記載されていない。 したがって,本件特許明細書の具体的な実施例をもって,「粒子径が3~50nm」の全体についてまで長寿命化と不活性化の各効果が存在するものと理解することはできない。 よって,審決の前記判断は誤りである。 被告は,粒子径3~50nmという数値限 て,「粒子径が3~50nm」の全体についてまで長寿命化と不活性化の各効果が存在するものと理解することはできない。 よって,審決の前記判断は誤りである。 被告は,粒子径3~50nmという数値限定につき,帯電微粒子水の粒子径を本件発明の課題目的に沿って最適化したものであって,当該上限,下限値が課題目的を達成し,顕著な作用効果を奏する臨界的意義を有する数値というわけでないから,具体的な測定結果をもって裏付けられている必要はない旨主張する。 しかし,本件訂正特許発明の出願時の技術常識に照らすと,本件訂正特許発明の特徴的な部分は,静電霧化で発生させて殺菌等に用いるラジカルとし て,粒子径が3~50nmの帯電微粒子水に含まれたラジカルを用いる点にあり,かつ,上記粒子径は,長寿命化と不活性化の双方の技術的課題達成のために不可欠な特徴であるから,粒子径3~50nmの数値限定は,単に望ましい数値範囲を示したものであるとはいえない。 3 取消事由3(静電霧化手段に関するサポート要件及び実施可能要件の判断の誤り) 審決は,① 対向電極を有しない静電霧化手段であっても,高電圧を印加することによって霧化部に電荷を集中させれば水を静電霧化の現象が実現できることは,本件優先日前公知の事項であるから(甲17,18),静電霧化手段における「対向電極」を特定事項としないことによって,本件訂正特許発明の実施をすることができないとはいえない,② 本件訂正特許発明は,本件特許明細書【0006】に記載の「花粉抗原,黴,菌,ウイルスの何れかを不活性化できる帯電微粒子水による不活性化方法及び不活性化装置を提供する」ことを解決しようとする課題とするものであって,その課題は,「ラジカルを含んでいる粒子径が3~50nmの帯電微粒子水を生成し,花粉抗原, る帯電微粒子水による不活性化方法及び不活性化装置を提供する」ことを解決しようとする課題とするものであって,その課題は,「ラジカルを含んでいる粒子径が3~50nmの帯電微粒子水を生成し,花粉抗原,黴,菌,ウイルスのいずれかと反応させ,当該花粉抗原,黴,菌,ウイルスの何れかを不活性化する」旨の本件訂正特許発明の特定事項を含む技術的手段により,解決されることが明らかである,として,本件訂正特許発明が静電霧化手段における「対向電極」を特定事項として含まないことによって,発明の詳細な説明に記載されていないとすることはできないし,発明の詳細な説明には,当業者が本件訂正特許発明の実施ができる程度に明確かつ十分な記載がされていないとすることもできない,と判断した。 しかし,対向電極を有しない場合でも静電霧化が可能であることが認識できたとしても,本件特許明細書には,対向電極を有しない場合に関する記載が全くないし,公知文献(甲17,18)にもnm単位の粒子径のものは開示されていないから,当業者は,本件訂正特許発明において,対向電極を有 しない場合に,どのような条件の下で3~50nmの範囲の粒子径の帯電微粒子水が生成できるかを認識することができない。 したがって,対向電極を有することを発明特定事項としなければ,明細書の記載につき発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえない。 また,対向電極を有する場合であっても,放電電極から発生したラジカルが帯電微粒子水とどのような状態にあるのかについては,本件優先日時点の当業者において理解できなかったはずであるし,対向電極を有しない場合には,ラジカルが帯電微粒子水に含まれるか否かという本件訂正特許発明の帯電微粒子水の特性を有するか否かを予測することは,当業者には困難である。 し 解できなかったはずであるし,対向電極を有しない場合には,ラジカルが帯電微粒子水に含まれるか否かという本件訂正特許発明の帯電微粒子水の特性を有するか否かを予測することは,当業者には困難である。 したがって,対向電極を有しない場合について,単に静電霧化が可能であるとかラジカルが発生しているとかいう技術常識があったとしても,本件優先日時点の当業者が,本件訂正特許発明の「ラジカルを含んでいることを特徴とする帯電微粒子水」という帯電微粒子水の特性を踏まえた上で,どのような条件下においてラジカルが含まれるようになるかを認識することは困難である。 以上のとおり,対向電極を有するものしか記載されていない本件特許明細書の記載に鑑みれば,本件訂正特許発明は,対向電極を有する場合のラジカルを含有させた方法又は物の発明であるので,対向電極について何ら規定していない本件訂正特許発明は,発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない。また,対向電極を有しないものについて,発明の詳細な説明にはその実施ができるように明確かつ十分に記載されているとはいえない。 よって,審決の前記判断は誤りである。 4 取消事由4(甲10を主引例とする進歩性の判断の誤り) 相違点10aの認定の誤り審決は,甲10発明1が溶質を含む液体を静電霧化するものであり,水を 静電霧化する点は記載されていないので,この点が本件訂正特許発明1との相違点であると認定している。 しかし,甲10には,単なる水を静電霧化させる点も記載されているから,水を静電霧化する点を相違点とした相違点10aの認定は誤りである。 相違点10aに関する判断の誤り審決は,水を静電霧化する甲5ないし7記載の技術と甲10発明1とは,静電霧化する対象の前提が異なり, を相違点とした相違点10aの認定は誤りである。 相違点10aに関する判断の誤り審決は,水を静電霧化する甲5ないし7記載の技術と甲10発明1とは,静電霧化する対象の前提が異なり,かつ,帯電微粒子水の液滴の応用分野も異なっているので,甲10発明1に甲5ないし7に記載の技術を組み合わせ,花粉抗原等の不活性化方法に適用しようとする動機付けを見いだすことは,当業者にとって,困難というべきである,などと判断している。 静電霧化させる対象とされている。 また,イオンに除菌・殺菌効果があることは従来からの周知技術であるし(甲5~7),甲5ないし7記載の技術は,コロナ放電やプラズマ放電等により生成されるイオンに関するものであるため,電極と対向電極の間に高電圧を印加することで生成するイオンを利用するという点で,水を静電霧化する甲10発明1と共通の密接に関連した技術分野に属する技術である。 したがって,甲10発明1に甲5ないし7に記載の技術を組み合わせて甲10発明1の静電霧化により生成されたイオンを含む帯電液滴を不活性化の方法に利用することは当業者において容易想到である。 したがって,審決の上記判断は誤りである。 相違点10cに関する判断の誤りア審決は,甲5ないし7は,帯電微粒子水がラジカルを含むことを何ら示唆しないから,甲10発明1に甲5ないし7に記載の技術を組み合わせても,相違点10cに係る本件訂正特許発明1の特定事項である「帯電微粒子水は・・・ラジカルを含んでいる」ことを導くことはできないと判断し ている。 しかし,甲5ないし7に記載されたイオンに含まれるO2-(スーパーオキサイド)は,不対電子をもつイオンであって,ラジカルを意味しているから,甲5ないし7には,不活性化を行 ている。 しかし,甲5ないし7に記載されたイオンに含まれるO2-(スーパーオキサイド)は,不対電子をもつイオンであって,ラジカルを意味しているから,甲5ないし7には,不活性化を行うイオンとしてラジカル(O2-)を用いることが示唆されている。 したがって,甲10発明1のイオンを含む帯電液滴を,前記知技術に基づき不活性化の方法に用いる際に,当該帯電液滴に含まれるイオンとしてO2-(スーパーオキサイド)を用いることは,当業者において容易想到である。 よって,審決の上記判断は誤りである。 イ被告は,原告の主張が,前記第2の1の知財高裁平成26年1月30日判決(甲32。以下「甲32判決」という。)の確定判断の蒸し返しである旨主張する。 しかし,原告の主張は,甲5ないし7に記載された「イオン」が「水を静電霧化して得られた帯電微粒子水」とは異なるとの甲32判決を受け入れた上で,技術分野の関連性(甲5ないし7のコロナ放電やプラズマ放電は電極と対向電極との間に高電圧を印加するという点で甲10の静電霧化に密接に関連する技術である。)を根拠として,甲5ないし7には,帯電微粒子水がラジカルを含むことについて,具体的な記載はなくても,そのことの示唆にはなるというものであるから,コロナ放電等によって生成される微粒子が水を静電霧化して得られた帯電微粒子水とは異なることを前提として,かかる静電霧化により生成されたある程度の粒子径を持つ帯電微粒子水にラジカルを含ませることが,甲5及び甲7に記載されていないことを判断したにすぎない甲32判決の判断と抵触するものではない。 相違点10bについての判断の欠落審決は,相違点10bについて判断していないが,甲10発明1における 静電噴霧が大気中で行われ,ま 32判決の判断と抵触するものではない。 相違点10bについての判断の欠落審決は,相違点10bについて判断していないが,甲10発明1における 静電噴霧が大気中で行われ,また,生成された帯電液滴を室内に放出するのは,当業者であれば容易に想到し得ることである。 本件訂正特許発明3に関する判断の誤り前記ないしと同様の理由により,審決には,本件訂正特許発明3に関する進歩性の判断の誤りがある。 5 取消事由5(甲11を主引例とする進歩性の判断の誤り) 相違点11aに関する判断の誤りア審決は,甲11発明1における小イオンは,・・・コロナ放電の作用によって生じているため,その大きさが1nm程度であって,・・・寿命が1秒以上のものと認められるのに対し,本件訂正特許発明1は,帯電微粒子水の粒子径を3nm以上とすることによって,コロナ放電を用いて生成した粒子径が1nmの帯電微粒子水と比較して,より長寿命化することができ,10分経過後も約半数の帯電微粒子水が存在するという作用を奏し,その作用により,花粉抗原等の不活性化という課題解決に資するものである,したがって,相違点11aに係る本件訂正特許発明の特定事項は,課題解決手段としての技術的意義を有するから,相違点11aが単なる設計的事項であるということはできない旨判断している。 イしかし,長寿命化効果については,前記2のとおり,粒子径が3~50nmである本件訂正特許発明1に係る帯電微粒子水の全体に共通する効果とはいえず,甲11発明1におけるコロナ放電を用いて生成した粒子径が1nmの微粒子水と比較して格別顕著な長寿命化効果が得られるのかは明らかではない。 ウまた,甲11発明1における小イオンの寿命が「1秒以上」とされてい けるコロナ放電を用いて生成した粒子径が1nmの微粒子水と比較して格別顕著な長寿命化効果が得られるのかは明らかではない。 ウまた,甲11発明1における小イオンの寿命が「1秒以上」とされているのは,本件特許明細書に記載された通常のコロナ放電による粒子径が1nmの微粒子の半減期が2分30秒であることに照らすと,測定方法や測定条件の違いによると考えるべきである。異なる測定方法と思われる結果 数値を単純に比較すること自体,その判断の前提において誤りがある。 エ甲11発明1における小イオンは,甲11の【0044】の記載に照らすと,通常のコロナ放電とは異なり,静電霧化によるものであるから,「コロナ放電を用いて生成した粒子径が1nmの帯電微粒子水」ではなく,「コロナ放電を用いて静電霧化の作用を受けた粒子径が1nm程度の帯電微粒子水」と認定すべきである。 オ甲11発明1の小イオンは,通常のコロナ放電とは異なる静電霧化の作用を受けるものであって水の分子が付着したものであること,粒子径についても「0.001μm程度」と多少の広がりを持たせて記載されていること,甲11には小イオンの一部がさらに安定した高質量イオン(大イオン)に変わっていくことが記載されていることに鑑みると,甲11には,通常のコロナ放電により得られる粒子径が1nmの微粒子水よりも大きい数nmのものも実質的に記載されていると解するのが相当である。また,甲11には,水の分子が付着することで,通常のコロナ放電によるものよりも静電霧化の作用を受けた帯電微粒子水の粒子径が大きくなった方が安定化されること(水の分子を供給することによって,安定した大量の小イオンを生成することや安定した高質量イオン(大イオン)になること)が記載されており,粒子径を大きくすることによる長 きくなった方が安定化されること(水の分子を供給することによって,安定した大量の小イオンを生成することや安定した高質量イオン(大イオン)になること)が記載されており,粒子径を大きくすることによる長寿命化効果も示唆されている。 カ以上のとおり,甲11発明1の小イオンは,本件訂正特許発明1の帯電微粒子の粒子径の下限値である3nmと重複する可能性のあるほど近似した粒子径を持つものであり,また,粒子径が大きいほど長寿命化されることも示唆されているので,甲11発明1の小イオンの粒子径を3nm以上とすることは当業者が容易に想到し得た設計的事項にすぎない。 したがって,審決の相違点11aに関する判断は誤りである。 相違点11bについての判断の誤り 審決は,甲11には,小イオンによる集塵が,帯電微粒子水と塵と反応して生じることについて記載されておらず,甲5ないし7には,静電噴霧による帯電微粒子水にはマイナスイオンが含まれ,除菌,殺菌,消臭効果を奏することは記載されているが,上記の効果について,帯電微粒子水が菌や臭い物質と反応することにより生じるとは,記載されていないし示唆もないから,甲11発明1に甲5ないし甲7記載の記載事項を組み合わせても,相違点11bに係る本件訂正特許発明の特定事項を導くことはできない旨判断した。 しかし,前記4のとおり,マイナスイオンに除菌・殺菌効果があることは,従来からある周知技術である。また,甲5ないし7記載の技術は,不対電子をもつイオンであり,ラジカルを意味する同一の活性種(O2- スーパーオキサイド)を含むマイナスイオンによる空気浄化技術(甲5ないし7では除菌,殺菌,消臭等に対し,甲11では集塵)という点で,甲11発明1と共通の技術分野に属する技術である。 したがって スーパーオキサイド)を含むマイナスイオンによる空気浄化技術(甲5ないし7では除菌,殺菌,消臭等に対し,甲11では集塵)という点で,甲11発明1と共通の技術分野に属する技術である。 したがって,マイナスイオンにより菌等を不活性化することは,共通の技術分野に属する甲5ないし7により従来周知であるため,甲11発明1の小イオンを不活性化の方法に利用することは本件優先日時点の当業者において容易想到である。 よって,審決の上記判断は誤りである。 相違点11cに関する判断の誤りア審決は,甲11にも,甲5ないし7にも,静電噴霧による帯電微粒子水がラジカルを含むことに関して,示唆するところがなく,甲7には,クラスターイオンが空気中を浮遊する菌と衝突してラジカルが発生する旨の記載はされているが,このクラスターイオンは,プラズマ放電で空気中の水分子を電離させたものであって,静電噴霧によるものではないから,甲11発明1に甲5ないし7記載の記載事項を組み合わせても,相違点11cに係る本件訂正特許発明1の特定事項を導くことはできない旨判断した。 しかし,甲11の小イオンに含まれるマイナスイオンである図3に記載のO2-(スーパーオキサイド)は,不対電子をもつイオンであり,ラジカルを意味しており,甲11には,ラジカルを含む記載がある。また,甲5ないし7に記載されたイオンに含まれるO2-(スーパーオキサイド)も,不対電子をもつイオンであり,ラジカルを意味しているから,甲5ないし7にも,不活性化を行うイオンとしてラジカルを用いることが示唆されている。 したがって,甲11発明1に甲5ないし7の記載事項を組み合わせて,相違点11cに係る本件訂正特許発明1の特定事項を導くことは当業者において容易想到である。 よって,審決の上記判 唆されている。 したがって,甲11発明1に甲5ないし7の記載事項を組み合わせて,相違点11cに係る本件訂正特許発明1の特定事項を導くことは当業者において容易想到である。 よって,審決の上記判断は誤りである。 イ被告は,原告の主張が,甲32判決の確定判断の蒸し返しである旨主張する。 しかし,甲32判決は,甲11の小イオンが「大気中で水を静電霧化して生成された帯電微粒子水」とは異なることを前提として,かかる帯電微粒子水にラジカルを含ませることが,甲11に記載されていないことを判断したにすぎない。したがって,原告の甲11に含まれるマイナスイオンであるO2-(スーパーオキサイド)は不対電子もつラジカルであるとの主張は,甲32判決の具体的な判断に抵触するものではなく,同判断には示されていない事項である。よって,原告の主張は,確定判断を蒸し返すものではない。 本件訂正特許発明3に関する判断の誤り前記ないしと同様の理由により,審決には,本件訂正特許発明3に関する進歩性の判断の誤りがある。 第4 被告の反論 1 取消事由1(粒子径に関する明確性要件の判断の誤り)について 原告の主張は,審決が技術常識を踏まえて判断していることを踏まえないものである。 すなわち,審決は,甲10の記載(753頁左欄5~16行,754頁右欄末尾から3~末行)を踏まえ,本件特許明細書【0042】の「20nm付近をピークとし,10~30nmに分布を持つ」との記載は,同【0024】の測定を前提とし,20nm付近の大きさを有する粒子の数が最も多く,かつ,粒径分布が非常に狭く単分散性が高いので,粒子径が10nmより小さい粒子や30nmより大きい粒子はほとんど存在しない,すなわち,粒子のほぼ全てが粒子径10~30nmの する粒子の数が最も多く,かつ,粒径分布が非常に狭く単分散性が高いので,粒子径が10nmより小さい粒子や30nmより大きい粒子はほとんど存在しない,すなわち,粒子のほぼ全てが粒子径10~30nmの範囲に分布していることを示していると理解することができると判断し(【0038】の記載も同様),以上を前提に,特許請求の範囲の「3~50nmの粒子径」は,明細書全体において統一的に解釈することができる意味内容のものであって,不明確ではないとするものである。 審決の「「粒子径が3~50nm」とは,「凝集していない個々の粒子」のほぼ全てが「粒子径3~50nmの範囲に分布している」ことを意味することが明確である」との判断は,甲10の技術常識から,当該数値範囲を超える粒子がほとんど存在しないという意味を説いたものとして,妥当である。 そもそも,本件特許明細書【0024】には,微分型電気移動度計測計(DMA)によって所定範囲の粒子径と粒子数が定量されることが示されている。 したがって,審決の判断に誤りはない。 2 取消事由2(粒子径に関するサポート要件の判断の誤り)について本件特許明細書には,「粒子径が3~100nm(電気移動度が0.1~0. 001㎝2/vsec)が望ましい。粒子径が3nm未満になると,帯電微粒子水の寿命が極端に短くなってしまって室内の隅々まで帯電微粒子水がいきわたることが困難となる」(【0013】),「帯電微粒子の粒子径が3nm以上である場合,3nm未満である時よりもその寿命は明らかに長寿命化される」(【0024】),「粒子径が3nmより小さい場合及び粒子径が50nmを超え る場合,上記のような抗原の不活性化といった作用はあまり得ることができなかった」(【0052】)として,本件発明の課題を解決できると当業者 径が3nmより小さい場合及び粒子径が50nmを超え る場合,上記のような抗原の不活性化といった作用はあまり得ることができなかった」(【0052】)として,本件発明の課題を解決できると当業者が認識できる程度の説明がなされている。 また,粒子径3~50nmという数値限定は,帯電微粒子水の粒子径を本件発明の課題目的に沿って最適化したものであるが,当該上限,下限値が課題目的を達成し,顕著な作用効果を奏する臨界的意義を有する数値というわけでない以上,具体的な測定結果をもって裏付けられている必要はない。 よって,審決の判断に誤りはない。 3 取消事由3(静電霧化手段に関するサポート要件及び実施可能要件の判断の誤り)について静電霧化は,水印加電極と他の電極との間に高電圧が印加されることにより,その電位差によって生ずる現象であることが技術常識である。だからこそ,本件特許明細書【0033】には,対向電極が接地されアースとして機能することにより,水印加電極との電位差が発生し,帯電微粒子水の静電霧化現象が生ずることを開示している。このような技術常識に鑑みれば,水印加電極との間に対向電極を設けずとも,アース(地面又は地面と接地した室内の壁面等)が存在すれば,水印加電極に高電圧が印加されることによって当該電極とアースとの間には静電霧化現象が起きる。 したがって,本件特許明細書には,対向電極を備えなくても,ラジカルを含有する粒子径3~50nmの帯電微粒子水を静電霧化により発生させることができることが,技術常識を踏まえて当業者が適宜実施できる程度に明確かつ十分に記載されている。 よって,審決の判断に誤りはない。 4 取消事由4(甲10を主引例とする進歩性の判断の誤り)について甲32判決は,甲5には,水を静電霧化して帯電微粒子水を生成 明確かつ十分に記載されている。 よって,審決の判断に誤りはない。 4 取消事由4(甲10を主引例とする進歩性の判断の誤り)について甲32判決は,甲5には,水を静電霧化して帯電微粒子水を生成したものではないし,帯電微粒子水がラジカルを含んでいるようにすることについての記 載がない,と判断している。また,甲7に関し,甲7記載のコロナ放電によるものも,水噴霧法(レナード効果)によるものも,いずれも水を静電霧化して帯電微粒子を生成したものではないし,甲7には,帯電微粒子水がラジカルを含んでいるようにすることについての記載もないから,甲7の記載をもって,高電圧により大気中で水を静電霧化して生成された帯電微粒子水にラジカルが含まれると当業者が認識することの根拠とすることはできない,と判断している。 甲32判決は確定しており,原告の主張は確定判断の蒸し返しであって,行訴法33条1項に照らしても主張立証が許されない事項である。 また,審決の甲6に関する微粒子化した液滴がラジカルを含むものであるかについて,何ら示唆するものでない,との認定判断にも,何らの誤りもない。 よって,相違点10a,10bについて検討するまでもなく,審決の結論に誤りはない。 5 取消事由5(甲11を主引例とする進歩性の判断の誤り)について甲32判決は,甲11には,高電圧により大気中で水を静電霧化して生成された帯電微粒子水にラジカルが含まれることが開示されているとは認められない,と判断しており,原告の主張は,同確定判決の判断の蒸し返しであり,失当である。 よって,相違点11a,11bについて検討するまでもなく,審決の結論に誤りはない。 第5 当裁判所の判断当裁判所は,原告の各取消事由の主張にはいずれも理由がないから,審決にはこれを取り消 よって,相違点11a,11bについて検討するまでもなく,審決の結論に誤りはない。 第5 当裁判所の判断当裁判所は,原告の各取消事由の主張にはいずれも理由がないから,審決にはこれを取り消すべき違法はないものと判断する。その理由は,以下のとおりである。 1 本件特許について本件特許の特許請求の範囲の記載は,前記第2の2のとおりである。そして, 本件特許明細書(甲34,39,40)には,以下の記載がある(なお,明らかに誤記と認められる部分は適宜訂正した。)。 技術分野「【0001】本発明は,帯電微粒子水,つまりは帯電しているとともに微粒子とされている帯電微粒子水による不活性化方法及び不活性化装置に関するものである。」 背景技術「【0002】水に電荷を付与することによって生成される帯電微粒子水は,吸着性が高く,レイリー分裂によって微細化されやすい。このような帯電微粒子水の特徴を生かし,特開平13-170514号公報には,ナノメータサイズの粒子径の帯電微粒子水を効率のよい集塵剤として利用した例が示されている。 【0003】一方,活性化学種であるラジカルは,化学的に反応性が高くて悪臭成分の分解無臭化などに効果的であることが知られている。しかし,活性であるが故に,非常に不安定な物質で空気中では短寿命であり,臭気成分と反応する前に消滅してしまうために十分な効果を得ることが困難であった。 【0004】また,より効果を高める目的で,ラジカルを含んだ微粒子水を用いることによって空気浄化などを試みたものが特開昭53-141167号公報,特開平13-96190号公報などに示されている。」 発明が解決しようとする課題「【0006】本発明は上記の従来の問題点 気浄化などを試みたものが特開昭53-141167号公報,特開平13-96190号公報などに示されている。」 発明が解決しようとする課題「【0006】本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって,花粉抗原,黴,菌,ウイルスの何れかを不活性化できる帯電微粒子水による不活性化方 法及び不活性化装置を提供することを課題とするものである。」 課題を解決するための手段「・・・【0011】水を静電霧化して生成した活性種を含む帯電微粒子水を,花粉抗原,黴,菌,ウイルスの何れかと反応させることで,当該花粉抗原,黴,菌,ウイルスの何れかを不活性化することができる。 【0012】なお,化学的に不安定なラジカルをナノメータサイズに微細化された帯電微粒子水に含有させることによって,長寿命化でき,空間内への拡散を大量に行うことができる。 【0013】ナノメータサイズの粒子径とするのは,これより大きいミクロンオーダーのサイズになると,移動度が小さく,空間内への拡散が困難となるためであるが,上述のように,粒子径が3~100nm(電気移動度が0.1~0. 001cm2/vsec)が望ましい。粒子径が3nm未満になると,帯電微粒子水の寿命が極端に短くなってしまって室内の隅々まで帯電微粒子水がいきわたることが困難となるからであり,特に障害物などがある場合は尚更困難となる。なお,粒子径が100nmを超えると後述の人の肌の保湿性能の確保が困難となる。100nm程度といわれている肌の角質層の隙間からの帯電微粒子水の浸透が困難となる。 【0014】含有するラジカルは,ヒドロキシルラジカル,スーパーオキサイド,一酸化窒素ラジカル,酸素ラジカルであると,反応性も高く,また大気中の酸素や水蒸気から生 微粒子水の浸透が困難となる。 【0014】含有するラジカルは,ヒドロキシルラジカル,スーパーオキサイド,一酸化窒素ラジカル,酸素ラジカルであると,反応性も高く,また大気中の酸素や水蒸気から生成されるためにラジカル原材料を用いる必要もなくて,ラジカル含有状態の確保が容易となる。 【0015】ちなみに,粒子径がμmオーダーのものであると,含まれる活性種が殆どなく,また帯電微粒子水が有する電荷量もきわめて低く,また,対向電極を接地し,水に負電圧を加えた場合には,マイナスイオン効果も期待することができるものの,その効果は低く,実際上,湿度調整に有効なだけである。・・・【0019】帯電微粒子水の帯電極性は,特に限定はされないが,マイナスに帯電させることによって,脱臭作用だけでなく,いわゆるマイナスイオン効果として知られるストレス低減効果をも併せ持つことができる上に,ナノメータサイズのものであるために,通常のマイナスイオンよりも高い効果を得ることができる。 【0020】なお,ラジカルを含有する上に粒子径がナノメータサイズであると,空気中に放出された時の寿命が長くて拡散性が大である。 【0021】ナノメータサイズの粒子径に霧化された帯電微粒子水は,どのような装置で生成してもよいが,静電霧化装置,殊に水を搬送する多孔質体で構成された搬送体と,搬送体で搬送される水に電圧を印加する水印加電極と,上記搬送体と対向する位置に配された対向電極と,上記水印加電極と対向電極との間に高電圧を印加する電圧印加部とからなり,搬送体で保持される水と対向電極との間に印加される高電圧によって水を帯電微粒子水とするものを好適に用いることができる。 【0022】このような静電霧化装置において,多孔質体の材質,形状,対向電極との距離,印 る水と対向電極との間に印加される高電圧によって水を帯電微粒子水とするものを好適に用いることができる。 【0022】このような静電霧化装置において,多孔質体の材質,形状,対向電極との距離,印加する電圧値,電流値などを制御することで,目的とするナノメー 【図1】タサイズの粒子径の粒子を容易に得ることができる。 【0023】なお,得られた帯電微粒子の粒子径は,微分型電気移動度計測器(DMA/ワイコフ興業製)を用いて電気移動度として計測し,ストークスの法則に基づいて粒子径に換算している。このようにすることで粒子径の正確な測定が可能となるとともに,上記の静電霧化装置の構造や運転条件に粒子径の制御についてのフィードバックが可能となり,目的とするナノメータサイズの粒径を得ることがはじめて可能となった。 【0024】帯電微粒子の粒子径が3nm以上である場合,3nm未満である時よりもその寿命は明らかに長寿命化される。アルミ容器内に帯電微粒子を取り込んで粒子数の変化を微分型電気移動度計測器(DMA)を用いて測定することで,20nm付近の粒子径をもつ帯電微粒子水イと1nmの粒子径の帯電微粒子水ロの粒子数とその寿命を求めた結果を図1に示す。なお,20nmの粒子径の微粒子水イは,後述の実施例で示した静電霧化装置を用いて生成し,1nmの粒子径の微粒子水ロはコロナ放電電極を用いて生成した。・・・」 発明の効果「【0029】本発明は,水を静電霧化して,活性種を含む帯電微粒子水を生成し,花粉抗原,黴,菌,ウイルスの何れかと反応させるので,当該花粉抗原,黴,菌,ウイルスの何れかを不活性化することができる。」 【図2】 発明を実施するための形態「【0031】以下,本発明を添付図面に示す 反応させるので,当該花粉抗原,黴,菌,ウイルスの何れかを不活性化することができる。」 【図2】 発明を実施するための形態「【0031】以下,本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明すると,図2は帯電微粒子水を生成するための静電霧化装置の一例を示すもので,水溜め部1と,下端を水溜め部1内の水に浸している複数本の多孔質体からなる棒状の搬送体2と,これら搬送体2の保持及び水に対する電圧の印加のための水印加電極4と,絶縁体からなる保持部6によって保持されているとともに上記複数本の搬送体2の先端部と対向する対向部を備えている対向電極3と,上記水印加電極4と対向電極3との間に高電圧を印加する電圧印加部5とからなるもので,対向電極3と水印加電極4は共にカーボンのような導電材を混入した合成樹脂やSUSのような金属で形成されている。 【0032】また,上記搬送体2は多孔質体で形成されてその上端が針状に尖った針状霧化部となっているもので,複数本,図示例では6本の搬送体2が水印加電極4に取り付けられている。これら搬送体2は水印加電極4の中央5を中心とする同心円上に等間隔で配置されて,上部が水印加電極4よりも上方に突出し,下部は下方に突出して上記水溜め部1内に入れられた水と接触する。 【0033】対向電極3は,中央に開口部を有するとともに,この開口部の縁が上方から見た時,前記複数本の搬送体2の上端の針状霧化部を中心とする複数の同一径の円弧Rを他の円弧で滑らかにつないだものとなっている。対向電極3 を接地し,水印加電極4に電圧印加部5を接続して高電圧を印加するとともに,多孔質体で形成されている搬送体2が毛細管現象で水を吸い上げている時,搬送体2の上端の針状霧化部が印加電極4側の実質的な電極として 地し,水印加電極4に電圧印加部5を接続して高電圧を印加するとともに,多孔質体で形成されている搬送体2が毛細管現象で水を吸い上げている時,搬送体2の上端の針状霧化部が印加電極4側の実質的な電極として機能すると同時に,対向電極3の上記円弧Rが実質的な電極として機能するものである。電圧印加部5としては,700~1200V/mmの電界強度を与えることができるものが好ましい。・・・【0037】いずれにせよ,水溜め部1内の水に搬送体2を接触させて毛細管現象で水を吸い上げさせ,さらに対向電極3を接地するとともに水印加電極4に電圧印加部5を接続して,水印加電極4に電圧を印加した時,この電圧が搬送体2の針状霧化部に位置する水にレイリー分裂を起こさせることができる高電圧であれば,搬送体2の上端の針状霧化部において水はレイリー分裂を起こして霧化する。静電霧化がなされるわけであり,この時,静電霧化で生じるミストは,電界強度が700~1200V/mmである時,3~100nmの粒子径を有するナノメータサイズのものとなるとともに,ラジカル(ヒドロキシラジカル,スーパーオキサイド等)を持ち,且つ強い電荷量を持ったものとなる。 【0038】ところで,700~1200V/mmの電界強度を与えた時,粒子径が3~20nmのミストと粒子径が30~50nmのミストが多く発生するが,電界強度を高くすると,粒子径が小さくなる方向にシフトすることが観察でき,また電界強度900V/mmで16~20nmの粒子径を持つミストを多く発生させた場合に,上記の各効果が特に有効に現れた。 【0039】ちなみに搬送体2としては,前述のように,気孔率が10~60%,粒子径が1~100μm,先端針状部の先端断面形状がφ0.5mm以下の多孔 【図5】質セラミックを用いると, 【0039】ちなみに搬送体2としては,前述のように,気孔率が10~60%,粒子径が1~100μm,先端針状部の先端断面形状がφ0.5mm以下の多孔 【図5】質セラミックを用いると,粒子径が揃ったミストを発生させることができ,特に気孔率が40%,粒子径が1~3μm,針状霧化部の先端断面形状がφ0.25mmの時に900V/mmの電界強度を与えた時,16~20nmの粒子径を持つミストを多く発生させることができた。・・・【0041】そして,このようなナノメータサイズの帯電微粒子水は,脱臭,花粉が持つ花粉症を引き起こす物質の不活性化,空気中のウイルスや菌の不活性化,空気中の黴の除去及び抗黴効果といった作用を有することが確認できた。 【0042】すなわち,水印加電極4が負電極となるようにした状態で上記の静電霧化装置によって得られた帯電微粒子水が,微分型電気移動度計測器による測定で図5に示す粒径分布で示されるもの,つまり20nm付近をピークとして,10~30nmに分布を持つものであり,また,生成される帯電微粒子水の量が水溜め部1内の水の減少量による測定で0. 5g/hrであり,帯電微粒子水中のラジカルの電子スピンスペクトル法による測定チャートが図6(判決注・省略)に示されるもの(図中Aはラジカルの検出ピーク,Bは標準物質である酸化マンガンのピーク)であり,さらに帯電微粒子水中のドリフトチューブ型イオン移動度/質量分析装置で測定された各種イオンの分析結果が図7(判決注・省略)に示すものである時,この帯電微粒子水を用いて確認することができた効果について,以下に記す。 なお,図6から明らかなように,この帯電微粒子水はラジカルを含有する上に,図7から明らかなように,大気中の窒素や二酸化炭素から生成されたと考えられる窒素酸化物や とができた効果について,以下に記す。 なお,図6から明らかなように,この帯電微粒子水はラジカルを含有する上に,図7から明らかなように,大気中の窒素や二酸化炭素から生成されたと考えられる窒素酸化物や有機酸といった酸性種を多く含有したものとなっている。 【0043】まず,3Lチャンバー内における10ppmのアセトアルデヒドを上記帯電微粒子水で1時間処理すると,60%の減少が確認された。その測定結果を図8(判決注・省略)に示す。図中αが上記帯電微粒子水で処理した場合,βが粒子径1nmの帯電微粒子水で処理した場合を,γが何も処理しなかった場合である。 【0044】このような,脱臭効果は,臭気ガスが帯電微粒子中のラジカルとの化学反応で無臭化されることでなされるものであると考えられる。下記はラジカルとアセトアルデヒドをはじめとする各種臭気との脱臭反応式である。・OHはヒドロキシラジカルを示す。 【0045】アセトアルデヒド CH3CHO+6・OH+O2→2CO2+5H2Oアンモニア 2NH3+6・OH→N2+6H2O酢酸 CH3COOH+4・OH+O2→2CO2+4H2Oメタンガス CH4+4・OH+O2→CO2+4H2O一酸化炭素 CO+2・OH→CO2+H2O一酸化窒素 2NO+4・OH→N2+2O2+2H2Oホルムアルデヒド HCHO+4・OH→CO2+3H2Oまた,上記帯電微粒子水に黴菌を曝したところ,黴残存率は60分後には0%となる結果を得ることができた。OHラジカルが黴の菌糸を分解するために抗黴効果を得られるものと考えられる。 【0046】また,上記の帯電微粒子水に杉花粉から抽出した抗原Cryj1,Cryj2を曝露させてELISA試験を行ったところ,図9(判決注・省略)に示すように,抗 を得られるものと考えられる。 【0046】また,上記の帯電微粒子水に杉花粉から抽出した抗原Cryj1,Cryj2を曝露させてELISA試験を行ったところ,図9(判決注・省略)に示すように,抗原量が初期状態(blank)から半減するという結果を得 ることができた。 【0047】また,上記静電霧化装置から上記帯電微粒子水が内部に供給される円筒容器(φ55×200mm)内に一端開口から噴霧器にてウイルス溶液を噴霧し,他端開口からウイルスをインピンジャーで回収してプラーク法により抗ウイルス効果を確認したところ,回収溶液中のプラーク数はウイルスを単にマイナスイオンに曝した場合よりも少なくなる結果を得ることができた。 【0048】また,大腸菌O-157を上記帯電微粒子水に曝露させたところ,30分後には不活性化率が100%となる結果を得ることができた。これは帯電微粒子水中の活性種が菌体表面のタンパクを変成し,菌体の増殖を抑制するためと考えられる。・・・【0052】なお,粒子径が3nmより小さい場合及び粒子径が50nmを超える場合,上記のような抗原の不活性化といった作用はあまり得ることができなかった。 また粒子径が3~50nmというきわめて小さい帯電微粒子水は,空気中の湿度調整という点に関して殆ど影響を与えることはない。」 2 取消事由1(粒子径に関する明確性要件の判断の誤り)について 原告は,本件特許の請求項1ないし4の「粒子径が3~50nm」との記載は,本件特許明細書の記載を参酌しても,複数の意味に解釈される余地があるから明確ではない旨主張する(前記第3の1)。 アしかし,本件特許明細書の【0024】の記載(前記1)及び【0042】(前記1)の記載に照らすと,本件訂正特許発明における粒子径及び るから明確ではない旨主張する(前記第3の1)。 アしかし,本件特許明細書の【0024】の記載(前記1)及び【0042】(前記1)の記載に照らすと,本件訂正特許発明における粒子径及び粒子数は,微分型電気移動度計測器(DMA)により計測されるものであることが理解できる。そして,DMAは,粒子を荷電させ,その電気移動度を測定することで,粒子径ごとにその大きさを有する粒子数を計測 するものであるから,本件特許明細書の図1及び図5において,発生した帯電微粒子がDMAで計測され,それらの粒子径ごとにその粒子数がプロットされていることが理解できる。 イそして,本件特許明細書においては,長寿命化ないしは不活性化の効果の有無について,粒子径の大きさに着目した記載がなされている(【0013】(前記1),【0024】(前同),【0052】(前記1)。 ウさらに,本件特許明細書の実施例で開示された帯電微粒子水の粒子径は,「3~100nm」(【0037】,前記1),「3~20nm」,「30~50nm」及び「16~20nm」(【0038】,前同)といったものである。 他方,「粒子径が50nmを超える場合,上記のような抗原の不活性化といった作用はあまり得ることができなかった」(【0052】,前同)とされ,不活性化の効果が十分でないことが示されている。 そして,甲10には,「液体が供給される導電体の細管と対向電極との間に数kVの電圧を与えると,細管の先端に出ている液体には,表面張力,静電気力,さらに重力が作用する。これらの力の合力が推進力となり,液体が円錐メニスカスとなるコーン状に歪められる(図1)。つまり,静電気力が増加し,表面張力を越えると液体表面が不安定になり,液体の液柱化現象が生じる。この液柱の不安定性により液柱が分裂 力となり,液体が円錐メニスカスとなるコーン状に歪められる(図1)。つまり,静電気力が増加し,表面張力を越えると液体表面が不安定になり,液体の液柱化現象が生じる。この液柱の不安定性により液柱が分裂し,そこからイオンおよび液滴が発生する。これが静電噴霧(エレクトロスプレー)の原理である。/発生できる液滴径は数nmからmmオーダーと広い範囲で,かつ単分散性が高いので,静電噴霧法がいろいろな分野に応用されている。」(753頁左欄5~17行。「/」は改行部分を示す。),「発生した粒子のサイズ分布は幾何標準偏差が1.1程度であり,静電噴霧を用いることによって,非常に単分散に近い液滴が発生することがわかる。」(754頁右欄下から3~1行)と記載されており,これらの記載に照らすと,静電霧 化により発生した粒子の粒径分布は,非常に狭く,単分散性が高いことは周知の事項であると認められる。 以上の本件特許明細書【0052】及び甲10の記載を踏まえると,上記の本件特許明細書の実施例に示された帯電微粒子水の粒子径は,いずれもそれぞれの粒子径が「3~50nm」の範囲内にあることを前提としたものと理解することができる。 エそうすると,本件特許の特許請求の範囲の請求項1ないし4の「粒子径が3~50mm」との記載は,静電霧化により発生した粒子のうち,DMAによる計測の結果,その粒子径が3~50nmのものを意味するものと明確に理解することができる。 オなお,原告は,本件特許明細書【0024】の記載は,粒子径の範囲についてピーク値の幅と解釈している旨主張する(前記第3の1)が,同段落は,「帯電微粒子の粒子径が3nm以上である場合,3nm未満である時よりもその寿命は明らかに長寿命化される。」ことを示すために,「20nm付近の粒子径をもつ帯電微粒子水イ 前記第3の1)が,同段落は,「帯電微粒子の粒子径が3nm以上である場合,3nm未満である時よりもその寿命は明らかに長寿命化される。」ことを示すために,「20nm付近の粒子径をもつ帯電微粒子水イと1nmの粒子径の帯電微粒子水ロの粒子数とその寿命を求めた」にすぎないと解されるから,同段落の記載が前記エの認定を左右するものとはいえない。 そうすると,原告の上記主張は採用することができない。 よって,原告の取消事由1の主張は理由がない。 3 取消事由2(粒子径に関するサポート要件の判断の誤り)について特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か,また,その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否 かを検討して判断すべきである。 原告は,本件特許の請求項1ないし4の「粒子径が3~50nm」との記載が明確でないこと(取消事由1)を前提に,粒子径につきサポート要件違反がある旨主張するが(前記第3の2),前記2において説示したとおり,上記記載は明確であるから,原告の上記主張はその前提を欠き採用することができない。 ア原告は,仮に,「粒子径が3~50nm」との記載が明確であるとしても,本件特許明細書の実施例には,粒子径3~10nm未満の部分と粒子径30nm~50nmの部分のいずれについても,長寿命化という効果を裏付けるデータの記載はなく,3nm及び50nmをそれぞれ下限値及び上限値とする不活性化効果については記載され nm未満の部分と粒子径30nm~50nmの部分のいずれについても,長寿命化という効果を裏付けるデータの記載はなく,3nm及び50nmをそれぞれ下限値及び上限値とする不活性化効果については記載されているものの,それを裏付けるデータも記載されていないし,帯電微粒子水の長寿命化についても記載されていないから,サポート要件違反がある旨主張する(前記第3の2)。 イしかし,まず,本件特許明細書【0013】(前記1)の記載から,帯電微粒子水の粒子径がミクロンオーダーのサイズになると,移動度が小さく,空間内への拡散が困難となる一方,その粒子径が3nm未満になると,帯電微粒子水の寿命が極端に短くなってしまって室内の隅々まで帯電微粒子水が行き渡ることが困難となるという空間内への拡散の観点,及び,粒子径が100nmを超えると,肌の角質層の隙間からの帯電微粒子水の浸透が困難となるとの観点から,帯電微粒子水の粒子径が3~100nmであることが望ましいことが把握できる。 ウそして,本件特許明細書【0024】(前記1)には,帯電微粒子水の粒子径が3nm以上である場合,3nm未満であるときよりもその寿命が明らかに長寿命化されることが記載されているから,定性的にではあるものの,3~10nm及び30~50nmの範囲も含め,長寿命化の作用 効果が裏付けられている。 エまた,不活性化の効果についても,本件特許明細書【0037】及び【0042】(前記1)の記載から,3~100nmの粒子径を有する帯電微粒子水が,ラジカルを含むことが把握できるところ,同【0043】ないし【0048】(前同)の記載から,上記粒子径を有する帯電微粒子水が含むラジカルが,黴,花粉抗原,ウイルス及び菌に対して不活性化作用を奏することが記載されている。 オ加えて,本件 3】ないし【0048】(前同)の記載から,上記粒子径を有する帯電微粒子水が含むラジカルが,黴,花粉抗原,ウイルス及び菌に対して不活性化作用を奏することが記載されている。 オ加えて,本件特許明細書【0052】(前記1)には,帯電微粒子水の粒子径が3nmより小さい場合と50nmを超える場合には,上記のような抗原の不活性化といった作用はあまり得ることができなかったことが記載されている。 カ以上によれば,本件特許明細書の発明の詳細な説明には,長寿命化については,帯電微粒子水の粒子径が3~10nm及び30~50nmの範囲についても定性的にではあるがその作用が存在することが記載されており,また,粒子径が3~50nmの範囲について不活性化の作用効果が存在することが記載されているものと認められるから,本件訂正特許発明は,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるということができる。 したがって,原告の前記主張は採用することができない。 原告は,本件訂正特許発明の出願時の技術常識に照らすと,本件訂正特許発明の特徴的な部分は,静電霧化で発生させて殺菌等に用いるラジカルとして,粒子径が3~50nmの帯電微粒子水に含まれたラジカルを用いる点にあり,かつ,上記粒子径は,長寿命化と不活性化の双方の技術的課題達成のために不可欠な特徴であるから,粒子径3~50nmの数値限定は,単に望ましい数値範囲を示したものであるとはいえず,上記範囲についてのデータ の記載が必要である旨主張する(前記第3の2)。 しかし,従来は,活性化学種であるラジカルは,化学的に反応性が高く,悪臭成分の分解無臭化などに効果的であることが知られているが,活性であるた 記載が必要である旨主張する(前記第3の2)。 しかし,従来は,活性化学種であるラジカルは,化学的に反応性が高く,悪臭成分の分解無臭化などに効果的であることが知られているが,活性であるために,非常に不安定な物質で空気中では短寿命であり,臭気成分と反応する前に消滅してしまうために十分な効果を得ることが困難であった(本件特許明細書【0003】,前記1)ところ,本件訂正特許発明は,水を静電霧化して生成した活性種を含む帯電微粒子水を,花粉抗原,黴,菌,ウイルスのいずれかと反応させることで,当該花粉抗原,黴,菌,ウイルスのいずれかを不活性化することができ (同【0011】,同),化学的に不安定なラジカルをナノメータサイズに微細化された帯電微粒子水に含有させることによって,長寿命化でき,空間内への拡散を大量に行うことができるようにしたというものである(同【0012】,前同)から,本件訂正特許発明の本質的部分は,上記の点にあるものと認められる。 他方,本件特許明細書には,前記イの説示のとおり,帯電微粒子水の粒子径が3nm以上であれば長寿命化が図られることが記載されている。また,不活性化の点についても,帯電微粒子水の粒子径が3nmより小さい場合と50nmを超える場合には,上記のような抗原の不活性化といった作用はあまり得ることができなかったとされているにとどまり(本件特許明細書【0052】),効果が全く得られなかったことまで記載されているわけではない。 そうすると,帯電微粒子水の粒子径が「3~50nm」の数値範囲にあることは,あくまで望ましい数値範囲を示したにすぎないものというべきである。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 よって,原告の取消事由2の主張は理由がない。 4 取消事由3(静電霧化手段に関するサ 数値範囲を示したにすぎないものというべきである。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 よって,原告の取消事由2の主張は理由がない。 4 取消事由3(静電霧化手段に関するサポート要件及び実施可能要件の判断の誤り)について 原告は,対向電極を有するものしか記載されていない本件特許明細書の記載に鑑みれば,本件訂正特許発明は,対向電極を有する場合のラジカルを含有させた方法又は物の発明であるので,対向電極について何ら規定していない本件訂正特許発明は,発明の詳細な説明に記載された発明とはいえない旨,また,対向電極が無いものについて,発明の詳細な説明にはその実施ができるように明確かつ十分に記載されているとはいえない旨主張する(前記第3の3)。 しかし,そもそも,本件訂正特許発明は,前記第2の2のとおりのものであるところ,本件特許明細書には,その実施例として,対向電極のある静電霧化装置が記載され,対向電極が接地されアースとして機能することにより,水印加電極との電位差が発生し,帯電微粒子水の静電霧化現象が生ずることが開示されている(【0033】,前記1)。そして,本件特許明細書は,上記装置により,長寿命化のために必要とされる粒子径が3nm以上の帯電微粒子水が生成できること(【0037】,【0038】,前同),前記3エの説示のとおり,不活性化の効果についても,上記装置により生成される3~100nmの粒子径を有する帯電微粒子水がラジカルを含み,上記粒子径を有する帯電微粒子水が含むラジカルが,黴,花粉抗原,ウイルス及び菌に対して不活性化作用を奏することをそれぞれ開示している。 そうすると,本件特許明細書には,対向電極を有する静電霧化装置の構成等が開示されることにより,発明の詳細な説明に本件訂正特許発明の実施ができ して不活性化作用を奏することをそれぞれ開示している。 そうすると,本件特許明細書には,対向電極を有する静電霧化装置の構成等が開示されることにより,発明の詳細な説明に本件訂正特許発明の実施ができるように明確かつ十分に記載されているものといえる。また,本件訂正特許発明は,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものとされているということができる。したがって,実施可能要件及びサポート要件はいずれも充足されているものというべきであり,対向電極を有しない構成が開示されていないからといって直ちに,実施可能要件ないしはサポート要件が充足されないものとすることはできない。原告の上記主張は採用することができない。 よって,原告の取消事由3の主張は理由がない。 5 取消事由4(甲10を主引例とする進歩性の判断の誤り)について 本件訂正特許発明1及び3と甲10発明1及び2との一致点及び相違点について甲10には,前記第2の3アの甲10発明1及び2が記載されていることが認められる(甲10)。 そして,本件訂正特許発明1と甲10発明1を対比すると,少なくとも相違点c(前記第2の3イc)が存在することが認められる。 また,本件訂正特許発明3と甲10発明2を対比すると,少なくとも相違点f(前記第2の3ウc)が存在することが認められる。 相違点10cに関する判断についてア甲10発明1の内容は,前記のとおりであり,液体を静電霧化することによりイオンを含む液滴を生成するものである。しかし,甲10には,液滴にラジカルが含まれることや,液滴を不活性化作用に用いることについての記載及びその示唆はない。 イ甲5 静電霧化することによりイオンを含む液滴を生成するものである。しかし,甲10には,液滴にラジカルが含まれることや,液滴を不活性化作用に用いることについての記載及びその示唆はない。 イ甲5には,食品を保存する保存庫本体を有する食品保存庫において,保存庫本体内に負イオンを供給する負イオン発生手段,保存庫本体内に水等の液体の微粒子或いは蒸気を供給する加湿手段を配置した点が記載されている(甲5)。しかし,これは,コロナ放電によるものであり(甲5【0017】),水を静電霧化して帯電微粒子水を生成したものではないし,他に甲5には帯電微粒子水がラジカルを含んでいるようにすることについての記載はない。 ウ甲6には,食品鮮度維持装置において,イオン解離機構と,液滴の活性化機構と,気体分子のイオン化機構と,気液分離機構とを有する負イオン発生装置を設けて,液体のイオン解離,液滴の活性化,気体のイオン化を行い,気液分離処理によって多量の負イオンを含む高湿空気が得られ,こ の高湿空気を保存室内に満たすことによって保存室内を高度に清浄,且つ無菌状態に維持でき,空気中に含まれた負イオンによる除菌,脱臭作用を利用して食品の鮮度保持,動植物の蘇生効果を得るようにした点が記載されている(甲6)。 しかし,甲6には,本件訂正特許発明1のように,水を静電霧化して,粒子径が3~50nmの帯電微粒子水を生成し,同帯電微粒子水にラジカルを含んでいるようにするという技術事項は記載されていない。 エ甲7には,空気浄化の仕組みとして,クラスターイオンを発生させ部屋に放出し,クラスターイオンが空気中に浮遊している菌・ウイルスや臭い分子に衝突すると,非常に活性力のある水酸基OHに変化し,有害物質の中から水素原子を抜き取って水となり,不活性化・無臭化さ させ部屋に放出し,クラスターイオンが空気中に浮遊している菌・ウイルスや臭い分子に衝突すると,非常に活性力のある水酸基OHに変化し,有害物質の中から水素原子を抜き取って水となり,不活性化・無臭化されること(225頁図19),クラスターイオンが水の分子で取り囲まれたプラスとマイナスのイオンであること(222頁),空気イオンは,大気中に浮遊している荷電微粒子の総称で,分子数個からなる分子集合体(クラスター)から帯電した浮遊塵埃まで,幅広い粒子分布があること(364頁),マイナスイオンの発生法として,コロナ放電法及び水噴霧法(レナード効果)があり,コロナ放電では直径1nm,レナード効果によるものでは直径3nmに粒子分布の中心が存在し,いずれも水分子がクラスター化して存在すること(365,366頁),コロナ放電により発生したイオンはすぐに減少するのに対し,レナード効果により発生したイオンは気流に運ばれて遠くまで行くこと,その理由は,分子の粒子径が大きく,イオンの移動度が小さいので消滅しにくいと考えられること(367頁),イオン濃度が約半分になる経過時間は,コロナ放電は約0.4秒であるのに対し,水噴射(レナード効果)は約13秒となること(367頁図10)が記載されている(甲7)。 しかし,甲7記載のコロナ放電によるものは,針状電極にマイナスの電 荷を与えて放電を起こしてマイナスイオンを発生させるものであり(365頁),また,水噴霧法(レナード効果)は水を機械的に分裂させたものであって(365頁),いずれも水を静電霧化して帯電微粒子を生成したものではない。また,甲7には,帯電微粒子水がラジカルを含んでいるようにすることについての記載もない。 オ以上によれば,甲5ないし7には,水を静電霧化して帯電微粒子水を生成し,同帯電微粒 ものではない。また,甲7には,帯電微粒子水がラジカルを含んでいるようにすることについての記載もない。 オ以上によれば,甲5ないし7には,水を静電霧化して帯電微粒子水を生成し,同帯電微粒子水にラジカルを含んでいるようにするという技術事項は記載されていないから,水を静電霧化する甲10発明1に甲5ないし7の記載事項を組み合わせる動機付けがあるということはできないし,仮に,甲10発明1に甲5ないし7の記載事項を組み合わせたとしても,相違点10cに係る構成を導き出すこともできない。 したがって,審決の相違点10cに関する判断に誤りはないから,その余の点について判断するまでもなく,本件訂正特許発明1は,甲10発明1に甲5ないし7記載の技術を組み合わせても,当業者が容易に発明をすることができたものではないとした審決の結論に誤りはない。 カ原告は,甲5ないし7に記載されたイオンに含まれるO2-(スーパーオキサイド)は,不対電子をもつイオンであって,ラジカルを意味しているから,甲5ないし7には,不活性化を行うイオンとしてラジカル(O2-)を用いることが示唆されており,甲10発明1のイオンを含む帯電液滴を,周知技術である不活性化の方法に用いる際に,当該帯電液滴に含まれるイオンとしてO2-(スーパーオキサイド)を用いることは,当業者において容易想到である旨主張する(前記第3の4ア)。 しかし,仮に,イオンにより菌等を不活性化することが周知技術であり,甲10発明1にこの技術を組み合わせたとしても,前記イないしオの説示のとおり,甲5ないし7に記載されたものは,いずれも水を静電霧化したものではなく,水微粒子とラジカルの関係については開示がない以上,甲 5ないし7の記載をもって,高電圧により大気中で水を静電 のとおり,甲5ないし7に記載されたものは,いずれも水を静電霧化したものではなく,水微粒子とラジカルの関係については開示がない以上,甲 5ないし7の記載をもって,高電圧により大気中で水を静電霧化して生成された帯電微粒子水にラジカルが含まれると当業者が認識することの根拠とすることはできないし,その示唆があるということもできない。したがって,甲10発明1に甲5ないし7の記載事項を組み合わせたとしても,相違点10cに係る構成を導き出すことはできない。 よって,原告の上記主張は採用することができない。 相違点10fに関する判断について前記の説示と同様の理由により,審決の相違点10fに関する判断に誤りはない。 したがって,その余の点について判断するまでもなく,本件訂正特許発明3は,甲10発明2に甲5ないし7記載の技術を組み合わせても,当業者が容易に発明をすることができたものではないとした審決の結論に誤りはない。 よって,原告の取消事由4の主張は理由がない。 6 取消事由5(甲11を主引例とする進歩性の判断の誤り)について 相違点11cに関する判断について甲11発明1の内容は,前記第2の3アのとおりであるところ,甲11には,甲11発明1における放電によって発生するマイナスの極小イオンは,その後,水の分子に極小イオンが結合して,水分子のクラスターを核とする0.001μm(1nm)程度の大きさの動きやすい小イオンとなること(甲11【0048】)が開示されているにとどまる。また,甲11の図3には「O2-(H2O)n」が示されているものの,これも上記の小イオンに該当するものである。 そうすると,甲11に,高電圧により大気中で水を静電霧化して生成された帯電微粒子水にラジカルが含まれることが開示されているとは n」が示されているものの,これも上記の小イオンに該当するものである。 そうすると,甲11に,高電圧により大気中で水を静電霧化して生成された帯電微粒子水にラジカルが含まれることが開示されているとは認められない。 そして,甲5ないし7には,水を静電霧化して帯電微粒子水を生成し,同 帯電微粒子水にラジカルを含んでいるようにするという技術事項は記載されておらず,そのような示唆もないことは前記5イないしカに説示したとおりである。 そうすると,甲11発明1に甲5ないし7の記載事項を組み合わせたとしても相違点11cに係る構成を導き出すことはできない。 したがって,審決の相違点11cに関する判断に誤りはないから,その余の点について判断するまでもなく,本件訂正特許発明1は,甲11発明1に甲5ないし7記載の技術を組み合わせても,当業者が容易に発明をすることができたものではないとした審決の結論に誤りはない。 相違点11fに関する判断について前記の説示と同様の理由により,審決の相違点11fに関する判断に誤りはない。 したがって,その余の点について判断するまでもなく,本件訂正特許発明3は,甲11発明2に甲5ないし7記載の技術を組み合わせても,当業者が容易に発明をすることができたものではないとした審決の結論に誤りはない。 よって,原告の取消事由5の主張は理由がない。 7 まとめ以上によれば,原告の各取消事由の主張はいずれも理由がなく,審決の結論に誤りはない。 第6 結論よって,原告の請求は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官石井忠雄 裁判 主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第3部 裁判長裁判官石井忠雄 裁判官西理香 裁判官神谷厚毅
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