平成12(ワ)2957 損害賠償請求

裁判年月日・裁判所
平成14年3月11日 福岡地方裁判所
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判決文本文47,618 文字)

主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告らに対し,それぞれ金5778万6274円及びこれに対する平成11年12月4日から支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,原告らの子C(以下「C」という。)が,X市立D小学校(以下「D小学校」という。)における持久走大会の事前練習(以下「本件事前練習」という。)中に倒れ(以下「本件事故」という。),救急車で病院に運ばれた後死亡したことについて,①Cの担任教師であったE(以下「E講師」という。)に,Cにはぜん息の持病があって運動時に度々ぜん息が誘発されることを原告らから告げられるとともに,本件事前練習当日も,健康観察の際,Cから直接「喉が痛い。」と気管支のとう痛を訴えられていたにもかかわらず,本件事前練習に参加させた過失,②D小学校長及び同校教師ら(以下,これらを総称する意味で単に「D小学校」ということがある。)に,ぜん息発作が生じた場合は直ちに発見し応急の処置を施せるように準備をし,安全に配慮する義務に違反した過失,③仮にD小学校としてCのぜん息を知らなかった場合,E講師がD小学校に対しぜん息の持病のあるCの存在を知らせて安全に配慮すべき義務に違反した過失,又は④D小学校教師らの本件事故後の措置に関する過失に基づくものであるとして,原告らが,D小学校の設置者である被告に対し,国家賠償法1条1項に基づき,それぞれ金5778万6274円の損害賠償及びこれに対するCが死亡した日である平成11年12月4日から支払済みまで民法所定の年5分の割合の遅延損害金を求めた事案である。 1 争いのない事実又は証拠により容易に認められる事実(1) 当事者等ア Cは,原告らの長女であり,平成11年1 年12月4日から支払済みまで民法所定の年5分の割合の遅延損害金を求めた事案である。 1 争いのない事実又は証拠により容易に認められる事実(1) 当事者等ア Cは,原告らの長女であり,平成11年12月3日当時,D小学校3年2組の児童であった。 イ被告は,D小学校の設置者である。 ウ E講師は,平成11年4月にD小学校に採用された非常勤講師であり,同年4月23日以降,Cの所属していた3年2組の担任を務めていた。 (2) 本件事前練習についてア本件事前練習は,平成11年12月9日に予定されていた持久走大会(以下「本件持久走大会」という。)の事前練習として同月3日に行われたもので,その内容は大要以下のとおりであった(甲10,乙1,乙5の2,乙10,20,23)。 (ア) 学習内容a 3年生ないし6年生の児童が参加し,各学年に応じた距離を走り,走力,持久力を高める。 b 本件持久走大会と同じコースを走り,当該コースを確認したり,走るペースをつかんだりする。 c 大会本部,閉会式の場所を確認する。 (イ) 走行距離a 3年生─1000メートルb 4年生─1400メートルc 5年生─1800メートルd 6年生─2000メートル(ウ) 走行コース(3年生の場合)X市a区F公園内の児童遊園前付近をスタート地点(以下「本件スタート地点」という。)とし,そこから同公園の周りを反時計回りに周回して約1000メートル先にあるゴール地点(以下「本件ゴール地点」という。)までの区間である。 (エ) スケジュール午後1時55分に6年生,3年生,4年生,5年生の順でD小学校を出発し,午後2時20分ころ,D小学校から約2キロメートル弱離れたF公園の本件事前練習の本部(本件ゴール地点付近横広場,以下「本件事前練習本部」という。)に到着し,各学年のスタート地点 でD小学校を出発し,午後2時20分ころ,D小学校から約2キロメートル弱離れたF公園の本件事前練習の本部(本件ゴール地点付近横広場,以下「本件事前練習本部」という。)に到着し,各学年のスタート地点まで移動した後,午後2時30分ころ6年児童がスタート,午後2時42分ころ5年児童がスタート,午後2時54分ころ4年児童がスタート,午後3時6分ころに3年児童がスタートする。 午後3時15分ころ本件事前練習本部に全員集合し,午後3時25分ころにF公園を出発した後,午後3時50分ころD小学校に到着する。 イ本件事前練習に先立ち,D小学校では同年11月18日から本件事前練習の日までの間,校内走を実施していた。その内容は以下のとおりであった(乙5の1,乙22)。 (ア) 時間月曜日から金曜日までの2校時終了直後の10分間を利用し,午前10時35分から40分まで学年ごとに着替え及び準備運動をし,同40分から45分まで学年ごとに校内走及び整理運動をする。 (イ) コースa 1・2年生─D小学校運動場のトラック内側(1周約130メートル)b 3・4年生─同トラック外側(1周約160メートル)c 5・6年生─同運動場大外周り(1周約200メートル)(3) 本件事故に至る経緯についてア Cは,平成11年12月3日午前8時30分ころ,朝の健康観察時にE講師に対し「のどが痛いです。」と答え,E講師がCに再度確認したところ,再び「のどが痛い。」旨答えた(乙20,証人薄91)。 イ Cは,同日午前10時35分から校内走に参加し,D小学校運動場のトラック外側約7周を約5分間で走った(乙20)。 ウ Cは,同日午後0時30分,給食当番として,他の給食当番の児童とともに給食の準備をし,同日午後1時10分から給食の後片付けをした(Cが同日,給食当番をしたことについては当事者 走った(乙20)。 ウ Cは,同日午後0時30分,給食当番として,他の給食当番の児童とともに給食の準備をし,同日午後1時10分から給食の後片付けをした(Cが同日,給食当番をしたことについては当事者間に争いがない。乙20)。 エ Cを含む3年生から6年生までの児童らは,同日午後1時55分ころ,本件事前練習のためにD小学校を出発し,徒歩でF公園に向かい,同日午後2時20分ころ,本件事前練習本部に到着した(乙1,20)。 オその後,3年生児童は,G教諭(以下「G教諭」という。)及びH教諭(以下「H教諭」という。)に引率され,約1000メートル離れた本件スタート地点まで走行コースとは逆回りに移動し,同日午後2時40分ころ,本件スタート地点に到着した(乙20)。 カそのころ,E講師は本件事前練習本部で待機していた(乙20,証人E(第3回口頭弁論調書と一体となるもの)101)。 キ同日午後3時4分19秒,3年生児童らが本件スタート地点からスタートし,G教諭は最後尾の児童に付いて伴走した(乙20)。 ク G教諭は,同日午後3時10分ころ,本件スタート地点から約720メートル付近で,前方約70メートルの地点に2名の児童が立ち止まっている姿を見つけ,同地点に駆けつけたところ,Cが倒れているのを発見した(乙20,23,24)。 (4) 本件事故後の状況ア本件事故は同日午後3時18分に消防署に通報され,午後3時24分に救急車がF公園に到着した(甲4,13の19)。 イ救急車到着時のCの容体は,脈拍は弱く,瞳孔は正常であり,意識清明だが,眼瞼結膜蒼白,口唇部チアノーゼ,冷感が認められた。(甲4)。 ウ到着した救急隊員は,同日午後3時36分ころ,Cを救急車に収容し本件事故現場を出発してI病院に向かい,途中ぜん息の既往等をCから聴取したが,Cは息苦しさ及び ノーゼ,冷感が認められた。(甲4)。 ウ到着した救急隊員は,同日午後3時36分ころ,Cを救急車に収容し本件事故現場を出発してI病院に向かい,途中ぜん息の既往等をCから聴取したが,Cは息苦しさ及び体動が激しくなり,その後,意識消失するとともに,口腔内より泡まつ状の血たんがあり,心室細動(心室が上位中枢からの興奮によらず,個々の心室固有筋が無秩序に興奮する状態)の後心肺停止する等容体が悪化したため,応急処置を受けながらX市a区f所在のJ病院(以下「J病院」という。)救急救命センターに搬送先を変更され,同時43分,来院時心肺停止の状態で同病院に到着した(甲4,11,12,甲13の13,25,26)。 エ Cは,J病院到着後心肺蘇生措置等の治療を受けたが,翌4日午前2時36分に死亡した(甲13の16,26,乙12)。 (5) 本件事故時ころの気象状況(乙11)本件事故当日(平成11年12月3日)のX市内の天気概況は晴れであり,本件事前練習のスタート時である午後3時ころの気温は約16.1℃,相対湿度は約45パーセントであった。 2 争点(1) 被告の責任の有無についてア Cの死が気管支ぜん息発作に起因するものか否か(争点1)イ E講師にCを持久走に参加させたことにつき過失があったか否か(争点2)ウ D小学校長及び同校教師らに,ぜん息発作が生じた場合は直ちに発見し応急の処置を施せるように準備をし,安全に配慮する義務に違反した過失があったか否か(争点3)エ E講師にはD小学校に対しぜん息の持病のあるCの存在を知らせて安全に配慮する義務を怠った過失があったか否か(争点4)オ本件事前練習の引率・指導に当たったD小学校教師らにはCが倒れた後の措置に過失があったか否か(争点5)カ(前記イないしオの過失が肯定された場合)当該過失とCの死との間の因果関 たか否か(争点4)オ本件事前練習の引率・指導に当たったD小学校教師らにはCが倒れた後の措置に過失があったか否か(争点5)カ(前記イないしオの過失が肯定された場合)当該過失とCの死との間の因果関係,特に原告主張に係る注意義務を尽くしていたとして救命可能性があったか否か(争点6)(2) 原告らの損害(争点7) 3 争点についての当事者の主張(1) 争点1(Cの死が気管支ぜん息発作に起因するものか否か)について(原告らの主張)ア(ア) 救急報告書におけるCの所見より,倒れた後のCには,チアノーゼ,頻呼吸,呼吸困難(息苦しいとの主訴),血の混じったたんの排出が確認されている。 これらは明らかにぜん息大発作の発症を示すものである。 (イ) また,入院連絡表及び予約表,J病院のカルテ,退院時要約,X市教育委員会がCが死亡した日の昼過ぎに記者会見した際に頒布した文書及び同委員会が後日行われた市議会(第一委員会)で報告した際に頒布した文書には,Cが呼吸困難によりしゃがみこんだ又は呼吸困難を訴えていた旨の記載があり,これらの証拠によって,Cが本件事故当時呼吸困難で,その後ずっと呼吸困難を訴えていたことは明確に裏付けられている。 イまた,血液ガスの状態もぜん息大発作の発症を裏付けている。 Cの呼吸器のガス交換の状態を示す血液ガス分析においては,入院直後の測定では,PCO2(炭酸ガス分圧)が100mmHg(ヘクトグラム)以上(正常値35~45mmHg)と著しく高値を示す一方,PO2(酸素分圧)が49mmHg(正常値80~100mmHg)と異常な低値を示していることから,気管支や肺等の呼吸器を通じてのガス交換(酸素を体内に取り込み二酸化炭素を体外に排出すること)がほとんどできておらず,またSO2(血中の酸素飽和度)も低すぎて測定不能の状態(正常値95 ることから,気管支や肺等の呼吸器を通じてのガス交換(酸素を体内に取り込み二酸化炭素を体外に排出すること)がほとんどできておらず,またSO2(血中の酸素飽和度)も低すぎて測定不能の状態(正常値95パーセント以上)となっていることから,呼吸の著しい閉そく状況が読み取れる。そして,PH(血液の酸化の度合いを示す指標)も6.920(正常値7.35ないし7.45)となっており,病院に到着した時点で,すでに生命を維持するための最低レベルとされるPH6.90の水準にあったことが分かり,このことは,呼吸不全がかなり長く続いたことを意味する。 Cはぜん息大発作のため呼吸における特に「呼気」が閉そくし,体内に二酸化炭素が極度に充満することによって血液がアシドーシス(呼吸不全のため血液が極度に酸化した状態)を呈し,炭酸ガスナルコーシス(呼吸不全のため炭酸ガス中毒を起こしたことによる傾眠ないしこん睡状態)に陥り(Cは救急隊員に眠気を訴えている。),それに引き続いてCPA(心肺停止)に至ったものである。 ウカルテ等のデータと当時の状況からみて,Cはまず運動によりぜん息発作が惹起され,持続する呼吸困難からぜん息大発作へと移行し,さらに呼吸不全から肺胞低換気状態を招き,極度の低酸素血症と高炭酸ガス血症に陥り,それがカテコラミンを遊離することなどで,頻脈や不整脈(致死的な不整脈としての心室細動)をもたらし,ショック状態を招き,急速にうっ血を伴う心不全から,CPAOA(来院時心肺停止),肺水腫,多臓器不全を経て死に至ったものである。 こうした一連の流れは,Cが,ぜん息発作の急激な悪化により,CPAOAの状態で病院に運ばれ,結局,蘇生できずに死亡するという小児ぜん息死の典型的な経過をたどったことを如実に物語っている。 エなお,Cには,元来,心臓に欠陥があったわけでも 急激な悪化により,CPAOAの状態で病院に運ばれ,結局,蘇生できずに死亡するという小児ぜん息死の典型的な経過をたどったことを如実に物語っている。 エなお,Cには,元来,心臓に欠陥があったわけでもなく,J病院での冠動脈造影検査の結果,急性心筋梗塞も異常なしの結果であった。 (被告の主張)ア Cの死亡診断書によれば,直接死因の欄には,「来院時心肺停止」と記載されており,「来院時心肺停止」の原因は「心室粗細動の疑い」であり,「心室粗細動の疑い」の原因は「急性心筋炎の疑い」である旨記載されているだけで,ぜん息発作が発生していたとか,それが死亡の原因であるなどとは,全く記されていない。 すなわち,Cの死亡原因については,死亡診断書で「急性心筋炎の疑い」であるとされたのみであり,それとは異なる死亡原因も可能性として指摘されているにとどまり,その可能性としての指摘においてもぜん息発作は挙げられていない。さらに,死亡原因が急性心筋炎であるとしても,急性心筋炎を発生させる起因となった疾病がいかなるものなのかについては,不明である。 イよって,Cが死亡に至ったそもそもの原因がぜん息発作であるとの根拠はないといわざるを得ない。 (2) 争点2(E講師にCを持久走に参加させたことにつき過失があったか否か)について(原告らの主張)ア本件事故発生の予見可能性(ア) Cが気管支ぜん息に罹患し,運動によってぜん息発作(呼吸困難)を起こし得る状態にあったことaCは,平成11年4月26日の夜に気管支ぜん息を起こし,翌朝K子どもクリニックで「中発作」と診断されて以来,本件事故前日まで気管支ぜん息の発作を繰り返し,継続的にその治療を受けていた。 また,本件事故当時は,事故前の1週間に3回以上の発作(平成11年11月26日,同年12月1日,同月2日)を繰り返してい 本件事故前日まで気管支ぜん息の発作を繰り返し,継続的にその治療を受けていた。 また,本件事故当時は,事故前の1週間に3回以上の発作(平成11年11月26日,同年12月1日,同月2日)を繰り返していたことから,急性期にあったことは明らかである。 b 運動誘発性ぜん息とは,一般に気管支ぜん息患者が運動によって一時的な呼吸困難(ないし気管支ぜん息の発作)を起こしている状態をいうところ,Cが現に気管支ぜん息に罹患していたことは明らかであり,また,そのために運動を契機として呼吸困難等の気管支ぜん息の発作を起こせば,運動誘発性ぜん息が発症したことになる。すなわち,気管支ぜん息と運動誘発性ぜん息とは「一体不可分」のものとして捉えるべきである。 (イ) 本件事故当日の運動によりぜん息発作が惹起され,生命に危険が及ぶ恐れがあったことa 本件事故当日の運動の量(a) 本件事故当日のCの運動量は,以下のとおり,極めて過酷なものであった。 ① 校内走として5分間に運動場の外周7週(1120メートル)② D小学校よりF公園まで25分間の徒歩③ F公園でのジョギングを10分間,ストップウォッチでタイムを意識させての持久走(4分間ないし10分間)以上,本件事故当日走ったり歩いたりした時間は,44分間ないし50分間であり,トータルの距離は,実に5000メートルにも及んでいる。 (b) 前記(a)は,文部省(当時)が定めた学校指導要領又はそれに基づく小学校指導書体育編において目安として挙げられている「走ったり歩いたりしながらの駆け足3,4分程度」,小学校規定教育計画で例示する「100メートルを30乃至35秒のペースで約2分間走る」をはるかに超える時間と距離であり,健常児童にとってさえ適度なものとはいえず,ましてや発作が頻発していた急性期のぜん息児童にとっては,ま する「100メートルを30乃至35秒のペースで約2分間走る」をはるかに超える時間と距離であり,健常児童にとってさえ適度なものとはいえず,ましてや発作が頻発していた急性期のぜん息児童にとっては,まさに殺人的なものであったといわなければならない。 b 本件事故当日の運動の質(a) 本件事故当日,D小学校は,Cら3年生児童に対し,事前に4年生の持久走を応援させたり,ストップウォッチでタイムを計ったりして,事実上,競争意識を高揚させていた。 (b) 小冊子「ぜん息を持つ児童の指導ポイント」12頁には,「冬の持久走などは,乾いた冷たい空気を吸いながら長時間行う運動ですので,運動誘発性ぜん息が起こりやすくなります。」と明記されている。 (c) したがって,本件事故当日における全ての運動は,質的にぜん息の急性期にあったCにとって極めて不適切なものであったことは明らかである。 (d) 加えて,Cは,本件事前練習までに10回行われた校内走中,4回も休み,しかも,本件事前練習の前の5回の校内走のうち3回はぜん息を理由に休んでいるのであって,Cは持久走について段階的な練習を全くできていなかったものである。 c ぜん息発作と具体的な状況的要因ぜん息発作は,運動時におけるぜん息患者の①気道の状態,②心理的ストレスと運動との相乗作用,③環境,④天候,⑤運動の種類や運動量,⑥運動する際の精神的な構え(メンタリティ),⑦運動を中止すべきかどうかの判断力,⑧予防措置の有無,⑨事後措置の適切性,⑩当時の病状,⑪運動誘発性ぜん息から重大な気管支ぜん息発作への移行の可能性等,様々な状況的要因によって,その帰結が大きく変わってくるところ,本件事故当時のCが置かれていた具体的な状況は,以下のとおり,かなり劣悪なものであり,生命の危険を予見させるものであった。 (a) Cは, 々な状況的要因によって,その帰結が大きく変わってくるところ,本件事故当時のCが置かれていた具体的な状況は,以下のとおり,かなり劣悪なものであり,生命の危険を予見させるものであった。 (a) Cは,本件事故当日のどの痛みをE講師に2度にわたって訴えており,これは,運動等によるぜん息発作を予見させる重大な徴候であった。 (b) 心理的ストレスが背景にあると運動による気管支ぜん息の発作がひどくなる傾向が指摘されているところ,CはE講師のいじめに遭い,心理的ストレスがあった。 (c) 本件事故当日の運動は,午前中は運動場で行われ,午後は学校から徒歩で25分間も戸外を歩かされ,F公園も風が強く木立に囲まれているため,花粉や埃をかなり吸い込まざるを得ない状況下にあり,ぜん息児童にとっては劣悪な環境の中で長時間行われたものである。 (d) 本件事故当日は,湿度は45パーセントと非常に乾燥した気候であり,X市の年平均湿度が69パーセント(X管区気象台調べ)であることからみても,いかに気管支ぜん息発作を起こす確率の高い気候であったか分かる。 また,本件事故当日の天候は,移動性高気圧が張り出し,乾燥した冬場の小春日和であって,気管支ぜん息発作ないし運動誘発性ぜん息の悪化を促す要因となるものである。 (e) 本件事故当日の運動の種類及び運動量については,前記a,bのとおりである。 気管支ぜん息患者は,通常の条件下でも一定の運動を負荷すれば50パーセント以上の高い確率で運動誘発性ぜん息を起こすことはよく知られているが,本件事前練習のような冬場の持久走では,冷たい空気を吸いながら気管支を酷使し,気管支の乾燥と冷却を促すため,気管支を収縮させ,一層ぜん息を悪化させる確率が高くなる。 (f) 前記b(a)より,本件事故当時の3年児童らの精神的な構え(メンタリティ) を吸いながら気管支を酷使し,気管支の乾燥と冷却を促すため,気管支を収縮させ,一層ぜん息を悪化させる確率が高くなる。 (f) 前記b(a)より,本件事故当時の3年児童らの精神的な構え(メンタリティ)は,「最後まで頑張ろう」,「少しでもいいタイムを出そう」といったものであったに違いなく,かかる精神的な構え(メンタリティ)は,運動を中止すべき時を逸する背景的要因となり,発作の重篤性を増幅させるおそれがあるものである。 (g) 前記小冊子「ぜん息を持つ児童の指導ポイント」12頁では,運動誘発性ぜん息が回復する前提条件として強い症状にならないうちに運動を中止するという条件が挙げられているところ,前記(f)の雰囲気にかんがみれば,本件事故当時,ぜん息の強い症状にならないうちに運動を中止すべき時を適切に判断するのは,9歳児童にとっては至難であったといわざるを得ない。 (h) 前記小冊子「ぜん息を持つ児童の指導ポイント」12頁では,運動誘発性ぜん息が回復する前提として,強い症状にならないうちに運動を中止した上で,さらに腹式呼吸すること等が挙げられているところ,Cは腹式呼吸等の指導も処置も何ら受けておらず,さらに文部省が全国の小学校に配布した資料にも注意されているマスク着用等の予防措置も何らとられていなかった。 (i) 本件事故の事後措置は,下記(5)(原告らの主張)のとおり,明らかに不適切なものであった。 (j) Cは前記(ア)aのとおりぜん息発作を頻発する急性期であったことは間違いないところ,運動誘発性ぜん息でも放置しておくと,ぜん息のより深刻な事態を引き起こすといわれている。 Cは本件事故当時,安静時でさえもぜん息発作を頻発する急性期にあり,したがって,また,重症度においてもほぼ中等症状の範疇に入っていたこと,及びD小学校の前記(i)のずさんな管 起こすといわれている。 Cは本件事故当時,安静時でさえもぜん息発作を頻発する急性期にあり,したがって,また,重症度においてもほぼ中等症状の範疇に入っていたこと,及びD小学校の前記(i)のずさんな管理体制や対応を考え併せると,その後の呼吸困難症状の悪化の推移から,激しい運動によって誘発されたぜん息発作がより深刻な発作へと移行したことは間違いない。 d ぜん息発作と生命の危険性(a) 前記(ア)bのとおり,運動誘発性ぜん息は気管支ぜん息と一体不可分のものであり,生命の危険性の判断にあたっては気管支ぜん息の危険性を問題にしなければならないところ,気管支ぜん息は本来生命の危険をはらむ病気であり,現に年間6000人以上もの人がぜん息で亡くなっている。 (b) 気管支ぜん息が本来生命の危険をはらむ病気であることは,多くのぜん息児童を預かる小学校においては常識であり,また,ぜん息という呼吸器疾患を有する児童に激しい運動をさせれば,発作を起こし易く,容体を悪化させる位のことは,小学校の教員ならずとも一般人としての常識である。 (c) また,ぜん息児童が発作を起こせば,たとえそれが軽症であっても,死に至る大発作を起こす恐れは少なからず存在する。 (ウ) 被告側がCの病状を認識していたこと及び生命の危険について予見可能であったことaCがぜん息と確定診断される前の原告らの告知とD小学校の認識(a) D小学校は,Cの2年次の検査時でさえ,Cが持病としてアトピーやアレルギー性鼻炎といったいわゆるぜん息の素因であるアレルギー疾患の持病を持っていたことを十分把握していた。 (b) 原告らは,Cがぜん息との確定診断を受ける半月ほど前の平成11年4月12日に提出した「保健調査票」には,2年連続で「せきやたんがよくでる」の欄に「○」を付けており,Cがぜん息同様の症 いた。 (b) 原告らは,Cがぜん息との確定診断を受ける半月ほど前の平成11年4月12日に提出した「保健調査票」には,2年連続で「せきやたんがよくでる」の欄に「○」を付けており,Cがぜん息同様の症状が出ていることはきちんと告知していた。 bE講師がCが気管支ぜん息に罹患していることを認識した時期(a) E講師がD小学校に赴任したのは平成11年4月22日であるが,その数日後,Cは気管支ぜん息の中発作を起こし,同月27日,28日と2日連続で学校を欠席した。翌29日は祭日(みどりの日)だったので,Cは計3日間も自宅で静養していた。 (b) E講師は,自身で同月28日の出席簿にCの欠席理由として「ゼンソク」と記入している。 (c) また,同月30日の健康観察簿には,Cのぜん息発作が完治せず,まだせきが出ていたため,「せ」(せきの意)とE講師が自ら記入している。 (d) 以上のとおり,原告らは,同年4月の時点で,Cがぜん息であったことをD小学校にきちんと告知し,E講師もそのことを十分認識して出席簿や健康観察簿に自ら記録していたことから,E講師が同月の時点でCが気管支ぜん息に罹患していた事実を既に十分認識していたことは明白である。 c 家庭訪問時の告知とその内容平成11年5月に行われた家庭訪問において,原告B(以下「原告B」という。)は,E講師に対し,大要以下のとおりCのぜん息について告げた。 (a) 初めてぜん息発作を起こした時は,突然息苦しさ等を訴えたのでびっくりした。 (b) 今はぜん息発作を起こしていないが,いつまだ起きるか分からない。 (c) 家庭ではいつも注意して見ておくので,学校ではE講師に注意をしてもらいたい。 (d) Kクリニックより受けたぜん息の説明に基づき,「ぜん息とは気道が何らかの原因で非常に狭くなることによる呼吸困難であ 家庭ではいつも注意して見ておくので,学校ではE講師に注意をしてもらいたい。 (d) Kクリニックより受けたぜん息の説明に基づき,「ぜん息とは気道が何らかの原因で非常に狭くなることによる呼吸困難であり,必ずしも激しくせき込むとは限らない」こと。 (e) Kクリニックより受けたぜん息の説明に基づき,「喉に炎症が起きると,ぜん息の発作が起きやすくなる」こと。 (f) ぜん息以外には特に病気はないこと。 d 本件事故一週間前(平成11年11月26日)の告知とその内容(a) 原告A(以下「原告A」という。)は,平成11年11月26日の朝,Cとともに,Cのぜん息の病状と今後の配慮を要請するためD小学校のE講師の教室を訪れた。 (b) 原告Aは,それまでE講師との面識はなく,それまでD小学校を訪れて,担任と話し合いを持ったことは1度もなかったが,Cが,①当時体調が優れず,長く走ると息苦しくなることもあるので,持久走の練習は休みたいが,E講師が子どもの言うことなど全く信用せず,絶対に走らせること,また,②よく訳も分からぬまましかられているため,学校に行きたくないと言って後ずさりをするほどの悲惨な状況に陥っていることの2点を重くみて,あえてE講師との直談判に踏み切ったものである。 (c) 原告Aの同日(a)の訪問の目的は,自己の娘の前記(b)の窮状を何とか救うためにCの気管支ぜん息の病状を説明し,今後の配慮を要請し,それによってC本人が体調不良を訴えれば,休ませる等の適切な措置がとられるようにすることであり,また,CがE講師のいじめのような冷たく厳しい対応を受けずに済むようにすることであった。 (d) 原告Aが同日E講師に告げた内容は,次のとおりである。 ① Cが登校途中で,どうしても学校に行きたくないと言った。 ② 同日,朝起きがけに軽いぜん息発作が起こっ ずに済むようにすることであった。 (d) 原告Aが同日E講師に告げた内容は,次のとおりである。 ① Cが登校途中で,どうしても学校に行きたくないと言った。 ② 同日,朝起きがけに軽いぜん息発作が起こった。 ③ 持久走の練習が始まったころから体調が優れないようである。 ④ ぜん息があるため,長く走っていると息苦しくなることがある。 ⑤ 日常の生活は大丈夫のようなので連れてはきた。 ⑥ 発作が起こっているときは苦しそうだが,治まるとすぐ普通に見える状態になるので,逆に心配でE講師に知らせておこうと思った。 ⑦ Cのぜん息発作は激しくせき込むというより,呼吸困難になるタイプである。 ⑧ 今日は無理なので,持久走の練習は休ませたい。 ⑨ ぜん息の治療は続けており,ときどき病院に連れて行っている。 ⑩ 風邪を引いたり,喉が痛い時,ぜん息の発作が起きやすい。 ⑪ Cは最近時々発作が起きるのでよく注意をしてもらいたい。 ⑫ 突発的に発作が起きるので,連絡帳等で知らせることができないこともあり得るが,今後特に配慮をお願いする。 (e) E講師は,原告Aの前記(d)の説明に相づちを打ち,質問をしながら十分理解した上で,今後よく注意して見ておくとの約束をした。 e 原告らのD小学校に対するCのぜん息の事実の告知回数以上を含め,D小学校は,以下のとおり,平成11年において,原告らからCのぜん息に関して少なくとも12回以上もの告知を受けてきた。 (a) 平成11年4月28日(前記b)(b) 同年5月の家庭訪問時(前記c)(c) 同年7月の懇談会原告Bは,同懇談会の後,E講師との立ち話において「ぜん息は今のところ少し落ち着いているみたいです。でもまだ完全に直ったわけではないので心配ですけどね。」といった程度のことを話した。 (d) 同年9月29日の懇談会原告Bは,同懇談会当日 において「ぜん息は今のところ少し落ち着いているみたいです。でもまだ完全に直ったわけではないので心配ですけどね。」といった程度のことを話した。 (d) 同年9月29日の懇談会原告Bは,同懇談会当日にE講師に対し「夜,寝息に『ひゅうひゅう』という音が混じること,秋が深まれば発作が出やすくなるかもしれないから不安であること」を告げている。 (e) 同年10月22日,原告BはD小学校に「ぜん息で病院に連れて行く」旨連絡していた。 (f) 同月25日の連絡帳による体育授業の見学要請(g) 同日のC本人の口頭によるぜん息の申し出(h) 同月28日の連絡帳による体育授業の見学要請(i) 同日のC本人の口頭によるぜん息の申し出(j) 同年11月26日の原告AとE講師との面談(前記d)(k) 同年12月1日の連絡帳による体育授業の見学要請(l) 同月2日の連絡帳による体育授業の見学要請f 以上述べたことから,E講師ないしD小学校は,原告らやC本人からの度重なる告知により,Cが本件事故当時気管支ぜん息に罹患しており,本件事故直前は,安静時ですら気管支ぜん息の発作を頻発する容体であったことを知悉しており,過度の運動に参加させれば,生命に危険が及ぶ恐れがある状態であったことを十分認識していたといわざるを得ない。 g 被告は,原告らが夏にCの「水泳の参加承諾書」を出したことをことさらに重視し,Cが「ぜん息だとは認識できなかったこと」や「Cの病状に生命の危険がなかったこと」の根拠の1つにしている。 しかし,湿気の多い環境での「水泳」が,ぜん息の治療にむしろ適する運動であることは,医師ならずとも,多くのぜん息児童を預かる初等教育者には周知の事実であって,E講師も水泳がぜん息の治療になることは知っていたのであり,この点に関する被告の前記主張には理由がない。 h であることは,医師ならずとも,多くのぜん息児童を預かる初等教育者には周知の事実であって,E講師も水泳がぜん息の治療になることは知っていたのであり,この点に関する被告の前記主張には理由がない。 h また,被告は,本件持久走大会の参加承諾書の下欄にCのぜん息のことについて何も書いていなかったと主張しているが,当該書面に持病等を書く欄はなかったものであり,この点に関する被告の主張には理由がない。 イよって,E講師には,前記アのとおり本件事故の予見可能性が肯定される状況の下,Cを本件事前練習に参加させないよう安全に配慮すべき義務があるにもかかわらず,同義務に違反して本件事前練習に参加させた過失がある。 (被告の主張)ア Cの病状からの予見可能性について以下に述べる事実に照らすと,本件事故当時のCの病状について明らかなのはCがぜん息に罹患しているという事実のみであって,Cにぜん息の発作が起きると生命に危険を及ぼすおそれがあるという事実,状況は,何ら存在しない。 (ア) Cが気管支ぜん息であるとの「確定診断」をKクリニックのK医師から受けたと原告らが主張する平成11年4月27日以後,CがKクリニックを受診したのは,わずか5日間であって,定期的な通院ではない。 (イ) また,前記(ア)の各受診日におけるCの病状について,K医師が記載したメモによれば,Cの病状が格別の配慮を必要とするものであることをうかがわせる記載は,何らない。 (ウ) 原告らは,Cのぜん息の管理に関し,K医師から,Cの日常の生活において何らかの注意をするよう具体的な指示は受けておらず,また,原告らの家庭でのCへの対応も,「風邪をひかさないようにいつも気をつけて,水分を補給するように,水を飲みなさいとかそういうことをよくやってました。それから加湿器を小さくしたり大きくしたり」という ,原告らの家庭でのCへの対応も,「風邪をひかさないようにいつも気をつけて,水分を補給するように,水を飲みなさいとかそういうことをよくやってました。それから加湿器を小さくしたり大きくしたり」という程度のものであった。 (エ) また,一般にぜん息発作が起きたとき吸入器で薬剤を吸入すると発作の速やかな抑制に効果があるから,D小学校においても万一の発作発生に備え吸入器を学校に持参する児童がいたが,Cの場合は吸入器を使用してはいなかった。 (オ) 服薬についても,Kクリニックの最後の通院日であった平成11年10月22日に,「四,五日分」もらっただけで,定期的な服薬を行っていたものではない。 (カ) Cにぜん息発作が起きたとき又はその兆候があるときにおける原告らの対処内容は,以下のとおりであって,こうした原告らの対処内容を見ても,原告らが,万一Cにぜん息発作が発生したら生命に危険を及ぼすおそれがあると考えていたと認めることはできない。 a 家庭でCがぜん息発作を起こしたときの対処内容は,加湿器を作動させて,水を飲ませるという程度であって,その時点で直ちに医療機関にCを搬送することはしていない。原告Aにおいても,ぜん息発作時の対処については,ぜん息発作が起きても水を飲ませるなどの措置をとれば,あとは様子を見ることで足りるという認識であった。 b 学校では,Cには,気分が悪くなったらすぐに先生に言いなさいとの指示を与えていただけである。 cCはクラシックバレエを習っていたが,原告Aは,Cのクラシックバレエの練習時間や練習の回数について把握していない。 (キ) さらに,原告らは,Cが「体もきつそうになってきた」という状況と認識していたにもかかわらず,その時点でCを直ちに受診をさせ,その後の持久走の練習に参加させても安全かどうかを判断しようとはしなかった さらに,原告らは,Cが「体もきつそうになってきた」という状況と認識していたにもかかわらず,その時点でCを直ちに受診をさせ,その後の持久走の練習に参加させても安全かどうかを判断しようとはしなかった。 以上のとおり,Cはぜん息ではあったが,その発作が起きると生命に危険を及ぼすおそれがあると具体的に予見しうる事実,状況は何ら存在していなかったことは明らかであり,D小学校教師らにおいて,Cがぜん息に罹患しているという情報のみから,Cは発作が起きるとその生命に危険を及ぼすおそれがあると具体的に予見することはできないから,その予見可能性を前提としてD小学校教師らにCに対する格別の配慮を要求することができないことも明らかである。 イ D小学校教師らによるCの病状把握について以下のとおり,D小学校においては,格別の配慮を要する疾病に罹患しているかどうかにかかわらず,児童の健康状態を日常的に把握するとともに,児童に運動をさせる場合には,これを踏まえて適切に対応する方針・態勢が築かれ,かつ,実施されており,E講師もD小学校において定められていたこうした方針に則って的確に対応していたが,Cが発作が起きるとその生命に危険を及ぼすおそれがあると具体的に予見することは不可能であった。 (ア) D小学校では,日ごとの児童の健康状態を把握するため,担任教師が,毎朝定例の健康観察を行うとともに,電話や連絡帳により,児童の保護者と連絡を取り,情報交換をしている。また,水泳学習や持久走大会のような学習を行う際には,事前に全児童の保護者からの承諾書を受領して,参加させることにしていた。 (イ) 健康観察は,児童の健康状態を把握し,それに応じた適切な生活指導を行い,かつ,健康に異常のある児童に対して必要な保健指導を行うため,学校生活のあらゆる機会を通じて行うものである にしていた。 (イ) 健康観察は,児童の健康状態を把握し,それに応じた適切な生活指導を行い,かつ,健康に異常のある児童に対して必要な保健指導を行うため,学校生活のあらゆる機会を通じて行うものであるが,特に毎朝1時間目の授業の前には,出欠の確認と合わせて,次の要領で健康観察を行っている。 a 担任教師は,各児童の氏名を呼び,児童は,口頭で自己の健康状態を答える。 b 担任教師は,当該児童の様子や声の調子を観察し,児童が答えた健康状態と整合することを確認したうえで,観察の結果を健康観察簿に記録する。 c また,前日学校を休んだりした児童には,声をかけるなどして間をとり,特に注意して健康状態を観察する。 (ウ) 持久走の練習を開始するに当たって児童の保護者から提出してもらう持久走大会参加承諾書には,持久走大会及び事前練習への参加の諾否を記入するだけではなく,参加させるに当たって児童の健康上留意すべき事柄を保護者に記載してもらうことができるようにしており,これを通じて児童の状況を把握し,そのうえで児童を練習に参加させている。 (エ) 担任教師は,保護者から連絡があった児童には,保護者の意見を踏まえて,練習を休ませるなどの措置をとっており,保護者の意見に不明な点があれば,保護者に連絡して確認している。 (オ) 担任教師は,毎朝の定例の健康観察を,こうした保護者の意見を踏まえて行うとともに,前日持久走の練習を休んだりした児童については,特に注意して健康状態を観察する。 (カ) さらに,担任教師は,各児童に対して,朝の健康観察後であっても,体調を悪くしたり,けがをしたりした場合には,直ちに教師や近くにいる他の児童に知らせるよう指導するとともに,他の児童の体調が悪いようであったり,けがをしたりしたことに気がついた場合にも,気がついた児童が直ちに教師な ,けがをしたりした場合には,直ちに教師や近くにいる他の児童に知らせるよう指導するとともに,他の児童の体調が悪いようであったり,けがをしたりしたことに気がついた場合にも,気がついた児童が直ちに教師などに知らせるよう指導しており,連絡を受けた担任は,状況に応じて練習に参加させるべきかどうかを判断している。 (キ) そして,体調に不安があるものの練習への参加を希望している児童については,練習前の着替えの際などに,児童の意思も考慮したうえで参加させるかどうかを判断し,参加させる場合は,寒くないように上着を着るよう指導するなどの配慮をしている。また,練習に参加させない児童については,見学をさせるか,見学も無理な状態であれば,保健室で休ませるようにしている。 (ク) また,学級担任による健康観察などの指導と併せ,D小学校の養護教諭は,児童の健康状態の把握について次のような役割を果たしている。 a 朝の定例の健康観察の結果は,健康観察簿に記録されるが,その健康観察簿は保健室に提出されることになっており,養護教諭は,これを集計して健康観察日計表に整理し,校長・教頭に毎日報告する。その際,校長・教頭から指導があれば,学級の担任教師に指導内容を伝達する。 b また,健康観察簿の集計は月ごとにも行い,養護教諭は,児童の様子を確認するとともに,校長・教頭に報告する。 c 養護教諭は,「ほけんだより」を発行の上,児童を通じて全保護者に配布し,保健に関する保護者への連絡事項の通知,保護者への協力依頼などに利用する。 d 年2回開催する学校保健安全委員会に,健康観察の集計結果を提出し,児童の健康指導について,校長,教頭,教務主任,養護教諭,校医,保健主事,PTAの役員や保健厚生委員,児童の代表が意見交換を行う。 e 保健室に来室した児童については,その一人一人につい を提出し,児童の健康指導について,校長,教頭,教務主任,養護教諭,校医,保健主事,PTAの役員や保健厚生委員,児童の代表が意見交換を行う。 e 保健室に来室した児童については,その一人一人について「びょうきのきろくカード」が作られ,養護教諭は,毎日これを集計表にまとめる。 f 養護教諭は,毎日の集計結果を,さらに月ごとに集計し,「ほけんだより」や学校保健安全委員会の資料として活用する。また,保健室の掲示板に集計結果を掲示することにより,児童の健康意識の啓発にも活用する。 (ケ) 本件において,E講師は,以下のとおり,機会あるごとに,Cの健康状態を把握するための対処を行っていた。 aE講師は,平成11年5月に,原告ら宅への家庭訪問を実施した際,原告Bに対し,Cに関し健康上の留保事項があれば教えてほしい旨依頼したが,原告Bは,何も答えず,Cに健康上特段の問題があるということや,ぜん息について話をしていない。 bD小学校では,保護者に対し,夏期に実施される水泳学習について「水泳学習参加承諾書」の提出を求めており,原告Aは,平成11年6月10日付で,水泳学習に参加させる旨の記載をして当該承諾書を提出している。当該承諾書には,「水泳学習に参加しない場合の理由をご記入ください。また,水泳学習に際して,担任にお知らせしておきたいことがありましたらご記入ください」との記載があり,保護者が記載できる欄があるが,原告らは,同欄には何らの記載をしていない。 c 平成11年7月の保護者との懇談会の際,E講師は保護者向けのアンケートを配布し,児童の健康状態を尋ねたが,原告らからは,何らの申し出はなかった。 d 平成11年9月に実施された保護者との個人懇談会において,E講師は,家庭訪問の時期からかなり日時が経っていたため,健康面を含めCについて状況の変化がな ,原告らからは,何らの申し出はなかった。 d 平成11年9月に実施された保護者との個人懇談会において,E講師は,家庭訪問の時期からかなり日時が経っていたため,健康面を含めCについて状況の変化がないか原告らに尋ねているが,原告らからは,何らの申し出はなかった。 eD小学校では,保護者に対し,本件持久走大会について「持久走大会参加承諾書」の提出を求めており,原告Aは,平成11年11月18日付で,「持久走大会参加承諾書」をD小学校に提出している。当該承諾書には,「連絡事項,不参加の方はその理由を下の欄にお書きください」との記載があり,保護者が記載できる欄があるが,原告らは,同欄に何らの連絡事項も記載していない。 f また,E講師は,保護者との日常的な連絡のための手段として,「連絡ノート」を活用していた。原告らにおいても,Cに体育を休ませたいときにはその旨記載するなど,連絡ノートのこうした機能は十分承知し,活用していた。そして,E講師は,原告らからの連絡があれば,連絡してくれたことへのお礼の言葉を連絡ノートに記載するともに,これをひとつひとつ丁寧に処理しており,原告らの要望に反した対応をすることはなかった。よって,E講師の就任後本件事前練習の日までのどの時点においても,原告らは,Cのぜん息の詳細な内容や,学校において配慮してほしい事項などを,連絡ノートに記載して,これをE講師に伝達することが可能であったのに,原告らがそうした記載をすることはなかった。 g さらに,平成11年11月26日に,原告AはD小学校を訪問し,E講師と面会している。その際,原告Aは,E講師がぜん息の具合を尋ねたのに対し,「すぐに治ります。ときどき軽いぜん息が出ますが,普通どおり生活できます。ただ,今日の持久走練習は休ませてください。よろしくお願いします」と答えただけ 告Aは,E講師がぜん息の具合を尋ねたのに対し,「すぐに治ります。ときどき軽いぜん息が出ますが,普通どおり生活できます。ただ,今日の持久走練習は休ませてください。よろしくお願いします」と答えただけであり,E講師において,それまでのCへの対処とは異なる具体的な配慮をしなければならないと判断できるような事柄は,何ら示されなかった。 h また,E講師は,ぜん息に罹患している児童については,服薬や吸入器の使用をしている場合であればそのことを常に念頭に置くとともに,児童の様子が通常でないと思われたときは,保健室に行くよう勧めるなどの指導を行っていたが,E講師はCが吸入器やぜん息の薬を携帯しているのを見ることはなかった。 ウ本件事前練習の計画内容の妥当性について(ア) 小学校教育における指導計画の作成についてa 小学校の教育課程は,学校教育法施行規則及び文部大臣が公示する小学校学習指導要領(以下「学習指導要領」という。)によるものとされていること(学校教育法施行規則25条)から,小学校においては,学習指導要領に従って教育に当たる必要がある。 b しかしながら,学習指導要領は,各教科について目標や学年ごとの学習内容等を定めるにあたっては,各小学校が,児童の実態等を考慮し,適切な指導が十分にできるようにすること,学習内容を確実に身につけることができるよう,児童の実態等に応じて個別の指導方法の改善に努めること,学校の実態等に応じ,教師の協力的な指導を行ったりする等,指導体制の工夫改善に努めること等に配慮した上で,創意工夫をして具体的な指導計画を作成するものとし(学習指導要領2枚目及び3枚目),教科の内容については,概括的な表現をするにとどまることから,文部省は,学習指導要領について「解説するとともに,各学校が適切な指導計画を作成し指導を行う上での とし(学習指導要領2枚目及び3枚目),教科の内容については,概括的な表現をするにとどまることから,文部省は,学習指導要領について「解説するとともに,各学校が適切な指導計画を作成し指導を行う上での参考となる事項をまとめたもの」として,各教科ごとに指導書(以下,単に「指導書」という。)を作成し,その中で具体的な教育内容を例示している。 以上に加えて,X市教育委員会は,「学習指導要領に基づき,各小学校が適切な教育課程を編成する場合の基本的な留意事項とともに,基底となる参考資料」として,小学校基底教育計画(以下「基底教育計画」という。)を作成し,各小学校に示している。 c したがって,D小学校を含むX市立の各小学校は,教育課程の編成に当たっては,学習指導要領に従い,指導書及び基底教育計画を参考にして,それぞれの学校の児童の心身の発達と地域や学校の実態を考慮した指導計画を作成し,指導を行っているものであって,本件持久走大会を実施するに際しても,指導計画として校内走実施案及び持久走大会実施案を作成し,指導を行っている。 (イ) 持久走で目標とする速度及び距離についてa 学習指導要領は,持久走について特に明示してはおらず,小学3年生については,「走・跳の運動(中略)を行う」としているのみであって,概括的な定め方となっている。 b これについて,指導書は,「走・跳の運動」の解説として,これを「かけっこ・リレー(中略)や歩幅,姿勢,方向,距離,人数などを変えて動きを工夫しながら走ったり(中略)する」ことであるとし,「無理のない速さで走ったり,歩いたりしながらかけ足を続ける」場合の運動量の目安として「かけ足(3,4分間程度)」を挙げている。 また,基底教育計画は,持久走の目的は「決まりを守り,同じ調子で長く走ること」,すなわち一定の速度で持続的に走るこ かけ足を続ける」場合の運動量の目安として「かけ足(3,4分間程度)」を挙げている。 また,基底教育計画は,持久走の目的は「決まりを守り,同じ調子で長く走ること」,すなわち一定の速度で持続的に走ることで児童の心肺持久力を高めることであるとし,運動量の目安としては,「100メートルを30から35秒のペースで約2分間」走ることや「同じ調子で1~2分間走り続ける」ことを挙げている。さらに,体育学習を実施する教師のための指導資料(以下,単に「指導資料」という。)には,学習のねらいとして「無理のない速さで,2分間くらいゆっくり走り続ける。」こととともに,「同じ速さで,時間(距離)をのばして走る。」ことが挙げられている。 このように,これらの速度や時間は,いずれも絶対的な基準を示したものではなく,速度と持続時間の相対関係を示した例であって,指導書及び基底教育計画においては,もとより小学3年生が一律に同じ速度で走ることは想定されておらず,速度そのものは,あくまで「自分の力以上のペースを出さないように」留意して,指導するものとされている。 c そこで,D小学校においては,持久走の速度について,「自分のペースを見つけ」,「無理のない速度で走り,きつくなったら無理をしないで調子を整える」ように指導計画を作成し,指導していた。 d また,D小学校では,本件持久走大会及び本件事前練習における3年生の持久走の距離を1000メートルとしているが,この距離については,本件事故以前において10年以上にわたり,継続的な校内走実施の成果として,F公園を利用して同様に行われてきたものである。 なお,持久走の距離は,各小学校で異なるが,D小学校以外で持久走大会を実施しているX市立の小学校においても,3年生の児童について,継続的な体育指導の成果として800メートルないし1200メ である。 なお,持久走の距離は,各小学校で異なるが,D小学校以外で持久走大会を実施しているX市立の小学校においても,3年生の児童について,継続的な体育指導の成果として800メートルないし1200メートルを走ることを目標としている学校が少なくない。 エ本件事前練習にCを参加させたことに過失がないことについて(ア) まず,前記ア,イのとおりCは発作が起きると生命に危険を及ぼすおそれがあると具体的に予見しうる事実,状況は存在していなかったのであるから,原告らの主張はその前提を欠き,失当である。 この点をおくとしても,以下に述べるとおり,E講師らに,Cを持久走の練習に参加させるに当たり要求されるCへの健康状態に関する配慮を欠いた過失はなかったのであるから,原告らの主張は失当である。 aCの体育参加状況についてCは,持久走の練習が始まった平成11年11月18日以降は,小学校を欠席していない。また,体育の授業及び持久走の練習にも,見学したことがあったものの,参加したことが多かったから,E講師において,学校におけるCのそれまでの日常生活をもとに判断する限り,従前とは異なる特段の配慮が必要であることをうかがわせる事態が生じていたとはいえない。 bCの本件事前練習当日の運動量について本件事前練習日における運動量が,小学3年生の児童にとって過重なものではないことについては,前記ウのとおりである。持久走の練習では,継続的な指導の中で,徐々に距離や時間を延ばすことが予定されているところ,D小学校では,11月18日から連日校内走を実施しており,Cが,前述のとおりこの校内走に参加していたことからみても,本件事前練習における運動量は,過重なものとはならないよう,配慮されたものであった。 c 保護者である原告らから,何らの具体的申し出がなかったこと 述のとおりこの校内走に参加していたことからみても,本件事前練習における運動量は,過重なものとはならないよう,配慮されたものであった。 c 保護者である原告らから,何らの具体的申し出がなかったことまた,原告らは,平成11年12月1日及び2日の両日にわたって,Cにぜん息の発作があったため持久走の練習を休ませてほしい旨連絡帳に記載をしているが,同月3日については,原告らのいずれもが,連絡帳には何らの記載をしていない。さらに,原告Aに至っては,その日わざわざD小学校まで来訪し,E講師と面会するためしばらくは教室で待っていたというのに,Cのことについて何ら依頼することなく,学校を立ち去っている。 d 健康観察によるCの状況また,本件事前練習の日に,Cは,E講師が観察する限り,普段と変わりはなかった。 (イ) また,F公園での本件事前練習を欠席又は見学する児童は,本件事前練習を行う3年生以上の各学年の各学級に存在した。これら児童は,保護者からの申し出に基づいて不参加とさせた者,健康観察の状況を踏まえ児童本人の意志も考慮した上で不参加とさせた者などであるが,D小学校教師らは,F公園に到着した時点においても,体調がすぐれないと思う者は本件事前練習に参加しなくても良いので,その旨申し出るよう指導しており,こうした指導の結果,参加しないことにした者もあった。なお,Cの属していた3年2組でも,1名の欠席者と4名の見学者がいる。 (ウ) 以上のとおり,D小学校教師らに,Cを本件事前練習に参加させたことについて過失はない。 (3) 争点3(D小学校長及び同校教師らに,ぜん息発作が生じた場合は直ちに発見し応急の処置を施せるように準備をし,安全に配慮する義務に違反した過失があったか否か)について(原告らの主張)ア仮にCを本件事前練習に参加させる場合 教師らに,ぜん息発作が生じた場合は直ちに発見し応急の処置を施せるように準備をし,安全に配慮する義務に違反した過失があったか否か)について(原告らの主張)ア仮にCを本件事前練習に参加させる場合においても,Cは前記(2)(原告らの主張)アの如き状況にあったのであるから,D小学校には,ぜん息の発作が生じた場合には直ちに発見し応急の処置を施せるよう用意し,危険な状態であれば直ちに病院に連絡搬送できるよう準備をし,安全に配慮する義務があるにもかかわらず,下記のとおりこれを怠った過失がある。 イ伴走態勢及び教員配置の不備(ア) D小学校は,本件事前練習に参加した10名の教師のうち9名の教師は本件ゴール地点付近に待機させ,伴走者は一切つけず,G教諭ただ1人が最後尾を追走する態勢しかとっていなかった。 (イ) F公園は,大きな池があり,走るところは冷たく硬いアスファルトで,多くの木立に囲まれていて,視界も決してよいとはいえず,様々な意味で,幼い児童に1000メートルもの長距離を伴走者なしでバラバラに競走させるには,大変危険な場所であるといわざるを得ない。 (ウ) 3年児童の間では,最も速い者と最も遅い者との間に2倍以上のスピード差があり,先頭の者と最後尾から追走していたG教諭との間には500メートル以上の児童ランナーの列ができていたのであり,その間に教師の監視の目は全くなかったものである。 ウ養護教諭を同行させなかったこと(ア) 本件事前練習は,本件持久走大会のいわば予行演習であったため,ほぼ全校的な行事であり,しかも持久走というかなり過激な運動をさせるのであるから,養護教諭の同行は必須事項であるところ,D小学校では,本件事前練習への養護教諭の付き添いは当初から予定されていなかった。 (イ) 小学校学習指導要領解説(特別活動編)にも,「活発な せるのであるから,養護教諭の同行は必須事項であるところ,D小学校では,本件事前練習への養護教諭の付き添いは当初から予定されていなかった。 (イ) 小学校学習指導要領解説(特別活動編)にも,「活発な身体活動を伴う行事の実施に当たっては,児童の健康や安全には特に留意し,教師間の協力体制を万全にし,事故防止に努める必要がある」とか,「主として各学級担任の教師が指導する学級活動にあっても,その活動内容を充実させるために,学年の教師の協力を得たり,養護教諭や学校栄養職員,司書教諭等の協力を得るなど連携を図るようにすること」と書かれている。 さらに,文部省がぜん息に関する啓蒙の一環として全国の小学校に配布した小冊子にも,「喘息に関しては学級担任の判断だけによらず,発作時や特別な行事などでは養護教諭との連携や学校医との相談が必要」と書かれている。 このように,特別活動における児童の健康管理に関しては,養護教諭の役割は極めて重要とされているのである。 (被告の主張)本争点に関する原告らの主張は,Cがぜん息発作を起こしたなら生命に危険を及ぼすおそれがあること及びCが本件事前練習において現にぜん息発作を起こしたことを前提として成立するのであるが,これらのことについては何ら立証されていないから,原告らの主張は,その前提を欠き,失当である。 そのうえで,疾病を有する児童を含む多数の児童が参加して行う本件事前練習の実施に当たり,D小学校教師らに,適切な措置を講じていなかったという過失がなかったことについて述べる。 ア伴走態勢に過失がないことについて(ア) D小学校教師らは,以下のとおり,伴走者を確保し,傷病者が発生した場合の連絡態勢を確保していたのであるから,この点についての原告らの主張は,失当である。 a 本件事前練習では,G教諭が,走る児童の最後尾で 校教師らは,以下のとおり,伴走者を確保し,傷病者が発生した場合の連絡態勢を確保していたのであるから,この点についての原告らの主張は,失当である。 a 本件事前練習では,G教諭が,走る児童の最後尾で伴走していた。1000メートルを走る際,足の速い児童と遅い児童とでは距離が開くが,1000メートルの完走時間は,足の速い児童で約5分,足の遅い児童で約8分であって,その差は最大でも3分に過ぎない。 bD小学校教師らは,児童らに,万一走っている途中で具合が悪い児童がいるのを確認したら,直ちに最寄りの教師に知らせるよう指導していた。 (イ) なお,この点に関し,原告らは,参加した10名の教師のうち9名の教師をなぜか本件ゴール地点付近に待機させていたとして,より充実した伴走態勢を確保できたのにD小学校教師らが意図的にこうした措置を講じていないかのように主張する。 しかしながら,以下のとおり,10名の教師がそれぞれの役割を担って活動していたのであって,果たすべき役割を持たない教師が漫然と本件ゴール地点付近にいたわけではないから,この点についての原告らの主張は,失当である。 a 本件事前練習の日に,F公園において持久走の指導に当たった教師は,全部で10名であったが,この日の練習は,そもそも,3年生から6年生までの4学年の児童が,時間をずらしながら走るというものであった。 具体的には,①6年生,②5年生,③4年生,④3年生の順番で走り,4学年全体の練習が終了したら,D小学校に戻るという計画であった。 b 3年生が本件事前練習を開始するときには,6年生から4年生までの3学年は,すでに走り終えており,本件ゴール地点付近で休憩していたが,6年生の担任の教師2名,5年生の担任の教師2名及び4年生の担任の教師2名の合計6名は,児童が池に転落するといった事故が発生 での3学年は,すでに走り終えており,本件ゴール地点付近で休憩していたが,6年生の担任の教師2名,5年生の担任の教師2名及び4年生の担任の教師2名の合計6名は,児童が池に転落するといった事故が発生しないよう,それぞれの担当児童を監視するといった任務にあたっていた。 c 3年生の本件事前練習を開始する際,これを担当した4名の教師の配置及び役割分担は,次のとおりであった。 E講師本件ゴール地点で,走り終えた児童の対応G教諭本件スタート地点で,スタートの合図をした後,最後尾で伴走することL 教諭本部で,全般的統括をすることH教諭伴走,具合の悪くなった児童の対応などを含む全般的補助dH教諭については,当初伴走する予定であったが,スタート直前に具合が悪くなった児童が発生したため,その児童の対応に当たることとなり,本件事故発生時には,その児童を連れて,本件事前練習本部まで歩いて戻る途中であった。 e 以上のような配置及び役割分担となっていたため,本件事故発生時には,結果的に,9名の教師が本件ゴール地点付近にいることとなったのである。 イ養護教諭が同行しなかったことについて過失がないこと(ア) 原告らは,本件事前練習の現場に「養護教諭を同行させ」ていないことがD小学校教師らの過失であると主張するが,次のとおり,養護教諭を本件事前練習に同行させなかったことは何らD小学校教師らの過失には当たらない。 (イ) そもそも,D小学校教師らは,本件事前練習に当初から養護教諭を同行させる必要がないと判断していたものではない。当初,養護教諭も同行する予定であったところ,具合が悪くなり保健室に来た児童が2名おり,これらの児童への対応が必要となったために学校に残ったのである。現実に看護を要する児童がいる以上,その児童を放置することが妥 も同行する予定であったところ,具合が悪くなり保健室に来た児童が2名おり,これらの児童への対応が必要となったために学校に残ったのである。現実に看護を要する児童がいる以上,その児童を放置することが妥当でなかったことはいうまでもない。 (ウ) また,傷病者が発生したときに養護教諭が行うことができる行為は,応急処置に限定されているのであって,治療行為を行うことができるものではない。このことは,養護教諭が医師又は看護婦の免許を有していないことからも明らかである。 そもそも養護教諭の第一義的な任務とは,学校における保健教育の中心的役割を担うことであって,養護教諭自身が応急処置を適切に行いうることは重要ではあるが,それと同程度に,他の教師が適切に応急処置を行えるよう指導することも,養護教諭の役割としては,重要なのである。 (エ) さらに,仮に本件事前練習の現場に養護教諭がいたとしても,本件事案におけるCへの対処の過程においては,以下に述べるとおり,何ら変わりがなかったというべきである。 a 横たわっているCが伴走役であったG教諭によって確認されたのは午後3時10分ころであるが,その2分後である午後3時12分ころには,G教諭及びM教諭(以下「M教諭」という。)が携帯していたPHS又は携帯電話で,それぞれ救急車を要請しようとしたのであるから,仮に養護教諭がその場にいたとしても,救急車の要請を同様に行ったものと考えられ,Cへの対処としては,何ら変わりがない。 b また,救急車が到着するまでの間は,D小学校教師らは,Cに,楽な姿勢をさせる,水を飲ませようとする,ジャンパーを足にかけようとする,などの応急処置をほどこしていたのであり,その時点のCの状態が,意識清明で,呼吸困難も見られなかったことからすれば,そのような状況における応急処置としては適切にな ,ジャンパーを足にかけようとする,などの応急処置をほどこしていたのであり,その時点のCの状態が,意識清明で,呼吸困難も見られなかったことからすれば,そのような状況における応急処置としては適切になされており,仮に養護教諭がその場にいたとしても,同様の応急処置以上の処置を期待することはできないというべきである。 c 念のため付け加えると,Cの様態の急変は,救急車に収容された後の搬送中に生じたものであって,F公園においては,Cは,意識清明で,呼吸困難も見られなかったのである。CがF公園で横たわっていた時点におけるCの状況からとりうると考えられる応急処置は,D小学校教師らによって適切になされているのであって,とるべき応急処置がとらていないとか,誤った応急処置がなされたということはできない。 (4) 争点4(E講師にはD小学校に対しぜん息の持病のあるCの存在を知らせて安全に配慮する義務を怠った過失があったか否か)について(原告らの主張)仮にD小学校としてCのぜん息の事実を知らなかったというのであれば,E講師には,前記(2)(原告らの主張)アの状況の下,D小学校に対しぜん息の持病のあるCの存在を知らせて安全に配慮すべき義務を怠った過失がある。 (被告の主張)E講師がD小学校の他の教師にCのぜん息について報告しなかったのは,D小学校における疾病を有する児童への下記のとおりの対処方針に照らし,Cが他の教師に報告しておくべきような,格別の注意を要する病状にあるとの情報を,C本人及びその保護者たる原告らからはもちろん,健康診断の結果からも,ついに得ることがなかったからであり,E講師が,Cのぜん息を他の教師に伝えていないことについて何ら過失はない。 アまず,D小学校における注意を要する疾病に罹患している児童及び格別の配慮を要する病状にある児童への対処 かったからであり,E講師が,Cのぜん息を他の教師に伝えていないことについて何ら過失はない。 アまず,D小学校における注意を要する疾病に罹患している児童及び格別の配慮を要する病状にある児童への対処方針は,次のとおりである。 (ア) 児童が,心臓病など,注意を要する疾病に罹患しているかどうか及び格別の配慮を要する病状にあるかどうかについては,各学級担任を中心に保護者からの情報収集に努める。 (イ) こうした児童については,担任教師が,職員会議で,児童名,児童の病気の内容,その児童に対して教員としてとるべき対応の内容を報告し,教師全員の共通理解とする。 (ウ) また,養護教諭は,健康観察の結果の集約,「びょうきのきろくカード」の結果の集約などを通じて,全児童の健康状態を把握し,学校長,職員会議にその内容や注意すべき点について報告する。 イ D小学校においては,格別の配慮を要する疾病に罹患している児童については,以上のとおり,その具体的状況をD小学校教師ら全体の認識としたうえで,そうした児童に適切に対処する方針・態勢を築いていた。 ウ E講師もD小学校において定められていたこうした方針に則って対応しており,現にE講師は,ぜん息に罹患していた他の担当児童については,ぜん息の症状が軽易でなく,吸入器を使用していたから,こうした事項を職員会議で報告している。 エ Cについては,前記(2)(被告の主張)ア,イで述べたとおり,発作が起きると生命に危険を及ぼすおそれがあると具体的に予見しうる事実,状況は存在していなかったから,Cには格別の配慮が必要であるとの認識をE講師が持つことはできなかったものである。 オなお,この点に関する原告らの主張は,E講師が学校長などD小学校の他の教師にCがぜん息であることを知らせれば,これを認識した他の教師においてE講師とは 講師が持つことはできなかったものである。 オなお,この点に関する原告らの主張は,E講師が学校長などD小学校の他の教師にCがぜん息であることを知らせれば,これを認識した他の教師においてE講師とは異なる対処がなされるとの前提に基づくものと考えられる。しかしながら,既に述べたとおり,Cへの格別の配慮が必要との具体的な情報提供がE講師になされていない以上,学校の他の教師らも,Cに対するこうした配慮の必要性を認識することは,同様にできなかったものであるから,たとえ,他の教師がCがぜん息であることを知ったとしても,E講師と異なる対処がなされることにはなりえず,原告らの主張は失当である。 (5) 争点5(本件事前練習の引率・指導に当たったD小学校教師らにはCが倒れた後の措置に過失があったか否か)について(原告らの主張)ア Cは本件事故当日の午後3時8分ころ,およそ790メートル走った地点で息苦しくなり,うずくまりながら前のめりに座り込み,その後,右後方に転倒した。 そのため,仰向けに倒れ,両目を固くつむり,歯を食いしばり,両手を拳骨状に強く握りしめたまま前に突き出し,足をバタバタと痙攣させて,まさに瀕死の状態でもがき苦しんでいた。 イ救急車要請の遅れCが倒れた時間は,午後3時8分ころであり,G教諭が倒れたCを発見したのがその約2分後の午後3時10分ころであったが,救急車の出動要請の電話をしたのは午後3時18分になってからであり,かかる救急車要請の遅れに関しD小学校には過失がある。 ウ救急車受け入れ態勢の不備救急車が本件事故の現地に到着したのは,午後3時24分のことであったが,Cの搬送開始時刻は,午後3時36分と大幅に遅れている。 これは,救急車がCの側に付けようとするのを阻む鉄柵が2か所あり,1か所の鉄柵は救急隊員が抱えて外したが,もう一方 3時24分のことであったが,Cの搬送開始時刻は,午後3時36分と大幅に遅れている。 これは,救急車がCの側に付けようとするのを阻む鉄柵が2か所あり,1か所の鉄柵は救急隊員が抱えて外したが,もう一方の鉄柵には鍵がかかっていて,美術館の警備員に頼んで鍵を開けてもらったために時間がかかったからである。 D小学校には,救急車を受け入れるために事前に障害物を除去するなど,事前に救護の段取りをしていなかった過失がある。 (被告の主張)ア本件事故発生時のCの状況について救急車が来るまでのCの状態は,本件ゴール地点付近から駆けつけたE講師が,Cの体に手を当てて,寒くないかどうか,どこが痛むのかを尋ねると,Cは「きつい。足が痛い。」「水が飲みたい。」と答えた。そこで,E講師がCの上体を起こし,M教諭がCの口に水を含ませた後,Cが再度水が飲みたいと言ったことから,もう一度水をCの口に含ませようとしたが,うまくいかなかった。 以上のとおり,Cは,意識清明で,D小学校教師らの質問にも,「足が痛い」など明確に返事をしており,顔色が悪く,「きつい」ということは言っていたが,原告ら主張のような状態ではなかった。 イ救急車の手配について横たわっているCが伴走役であったG教諭によって確認されたのは午後3時時10分ころであるが,その2分後である午後3時12分ころには,G教諭及びM教諭が携帯していたPHS又は携帯電話で,それぞれ救急車を要請しようとした。しかし,電話がつながらなかったため,駆けつけたL教諭が,午後3時13分ころ学校に電話し,学校から救急車の要請を行うよう依頼したのである。 したがって,D小学校教師らは横たわっているCを確認した後直ちに救急車を要請したものである。 ウ鉄柵の除去についてこの点についての事実経過は以下のとおりであり,原告らの主張には誤り たのである。 したがって,D小学校教師らは横たわっているCを確認した後直ちに救急車を要請したものである。 ウ鉄柵の除去についてこの点についての事実経過は以下のとおりであり,原告らの主張には誤りがある。 すなわち,本件事故後救急車が進入したF公園の通路には,車止めが2か所あり,救急車がF公園に到着したとき,1つ目の車止めは,その一部が除去されて車両が進入できるように開放されており,救急車の進入に支障はなかった。しかし,2つ目の車止めには,鍵がかけられており,救急車の運転手は,Cのいる付近まで進入できるだろうと考えて,とっさにハンドルを切り,X市美術館の敷地内に進入したが,行き止まりになっていたことから,停車した。 救急救命士は,同停車地点からCを囲む人が見えたため,同地点で下車し,垣根を乗り越えて,D小学校教師の案内に従ってCのもとに駆けつけた。他方,救急車は,Uターンして2つ目の車止めまで戻ったところ,車止めは既に前記美術館の警備員により除去されようとしており,その後Cの側まで進入した。 したがって,救急救命士は救急車がCの側に停車する前に,Cのもとに駆けつけて必要な処置を開始していたのであるから,車止めの1か所が施錠されていたことをもって,救急車による搬送が遅延したということはできない。 (6) 争点6((前記(2)ないし(5)の過失が肯定された場合)当該過失とCの死との間の因果関係,特に原告主張に係る注意義務を尽くしていたとして救命可能性があったか否か)について(原告らの主張)本件事故によりCが倒れるころ,すなわち平成11年12月3日午後3時8分以前,あるいは,遅くともCが倒れたのを発見してすぐの同日午後3時10分ころに救急車を要請するとともに前記(5)の2つの鉄柵を事前に除去していたならば,Cを同日午後3時27分ないし29分 後3時8分以前,あるいは,遅くともCが倒れたのを発見してすぐの同日午後3時10分ころに救急車を要請するとともに前記(5)の2つの鉄柵を事前に除去していたならば,Cを同日午後3時27分ないし29分以前に病院に搬入することができた。 Cは同日3時40分ころに意識を失ったのであるから,D小学校の対応が早ければ,まだ十分意識があり,呼吸も心臓も機能しているうちに病院に運び,医師の管理下で気管内挿管し,人工呼吸器で大量の酸素を肺に送り込んだり,輸液により脱水症状の緩和や血液循環の改善を図ったり,除細動器により心室細動を元に戻したりする等の本格的な救急救命治療が早期に開始され,Cは十分助かっていた。 (被告の主張)仮に原告らが主張するように救急車の要請及び病院への搬送が,本件の事実経過と比較して,より短時間になされたとしても,そのことによってCの生命が救われたかどうかについては,明らかとはいえない。 (7) 争点7(原告らの損害)について(原告らの主張)ア(ア) 治療費  10万2764円(イ) 葬儀費 285万4891円イ逸失利益4661万4894円3,402,100円(平成9年度女子平均賃金)×(1-0.3)(生活費控除3割)×19.574(≒26.8516(58年の新ホフマン係数)-7.2782(9年の新ホフマン係数))(1円未満切り上げ)ウ慰謝料Cに生じた分 4000万円原告ら固有の慰謝料各800万円被告の機関であるX市教育委員会は,虚偽内容の事実や,一方的な調査に基づく事実を報道機関に発表する等,責任逃れに汲々とし,原告らの悲しみや疑問に思いを致さず,ろくに原因の究明や再発防止の対策も検討せず,現場にいた教師らのみでなく,他の父兄や児童に対しても,原告らの事情聴取に応じないよう働きかける等卑劣な対応を取ったことも考慮 しみや疑問に思いを致さず,ろくに原因の究明や再発防止の対策も検討せず,現場にいた教師らのみでなく,他の父兄や児童に対しても,原告らの事情聴取に応じないよう働きかける等卑劣な対応を取ったことも考慮すべきである。 エ弁護士報酬1000万円(被告の主張)否認する。 なお,日本体育・学校健康センターから死亡見舞金として2500万円,医療費として22万9966円の計2522万9966円が給付されている。 第3 争点に対する判断 1 前提となる事実証拠(各項目ごとに記載した。)によれば,以下の事実が認められる。 (1) 本件事前練習当日に至る前のCのぜん息症状と学校の認識についてア(ア) Cは,D小学校において,1年生時,2年生時及び3年生時に学校医の健康診断(内科検診)を受診したが,心疾患や循環器系を含め特に異常所見は指摘されていなかったが,2年生時の平成10年11月に行われた呼吸器・アレルギー症状等の調査(診断)において,アトピー性皮膚炎寛解,アレルギー性鼻炎,アレルギー性結膜炎寛解との結果が出ていた(乙6,16)。 (イ) 原告らは,Cが2年生時と3年生時に,健康診断等の参考資料としてD小学校に提出する保健調査票に,Cの病気や当該時点の様子について,「せきやたんがよくでる」の項に「○」と記入していた(甲13の7,乙16)。 イ Cは,平成11年4月26日の夜から呼吸困難の症状を呈し,翌27日,学校を休んでKクリニックで受診し,気管支ぜん息中発作との診断を受け,吸入及び点滴治療を受けた(甲3の1,甲8)。 そして,Cは,翌28日にはぜん息を理由に学校を休み,翌29日は祝日のため学校に行かなかった(甲8)。 Cは,翌30日には学校に登校したが,せきが出ており,朝の健康観察(児童生徒の健康状態を把握するために,例えば出席をとりながら児童生徒1人 を休み,翌29日は祝日のため学校に行かなかった(甲8)。 Cは,翌30日には学校に登校したが,せきが出ており,朝の健康観察(児童生徒の健康状態を把握するために,例えば出席をとりながら児童生徒1人1人についてその健康状態を観察する等し,その結果を健康観察簿に記録するもの,乙17)においてその旨確認された(甲13の2)。 ウ Cは,同年8月2日及び同月10日,上気道炎と合併したぜん息の軽度発作のため,Kクリニックで受診し,内服治療を受けた(甲3の1)。 エ Cは,同年10月22日,学校を休み,上気道炎に伴うぜん息発作のためにKクリニックで受診し,気管支ぜん息のための吸入,内服治療を受けた(甲3の1,甲18,乙7の1)。 その際,原告らはD小学校に対し,電話でCがぜん息のために学校を休む旨を伝えた(原告B本人31)。 この点,被告は,同日は原告らからCが腹痛のため欠席する旨告げられたと主張し,また乙第7号証の1によれば同日の児童出席簿にはCが腹痛で欠席した旨の記載があることが認められるが,他方において,甲第3号証の1によれば同日にCに腹痛はなかったものと認められるとともに,原告らは前記イのとおり同年4月27日に医師によりCのぜん息発作について診断を経ており,ぜん息症状が出た場合に他の理由をD小学校に伝えることは考えにくいから,前記出席簿の記載は採用することができず,被告の前記主張は理由がない。 オ Cは,同年10月25日,健康観察においてぜん息を訴え,また,原告らは連絡ノート(担任教師と保護者との間で児童に関する連絡事項を交換したり児童自身が自己の課題を記録等するノート,甲13の14)においてぜん息気味のため当日の体育の授業を見学させて欲しい旨要請し,E講師は,当日の体育の授業時にCを見学させた(乙7の1,乙8の1)。 カ Cは,同月28日, 題を記録等するノート,甲13の14)においてぜん息気味のため当日の体育の授業を見学させて欲しい旨要請し,E講師は,当日の体育の授業時にCを見学させた(乙7の1,乙8の1)。 カ Cは,同月28日,健康観察においてぜん息を訴え,また,原告らは連絡ノートにおいてぜん息気味でせきが出ているため当日の体育の授業を見学させて欲しい旨要請し,E講師は,当日の体育の授業時にCを見学させた(乙7の1,乙8の2)。 キ Cは,同年11月12日,健康観察において腹痛を訴え,また,原告らは連絡ノートにおいて腹痛のため当日の体育の授業を見学させて欲しい旨要請し,E講師は,当日の体育の授業時にCを見学させた(乙7の2,乙8の3)。 ク同月26日朝,Cに軽いぜん息症状が出ており,Cは原告Aに対し,身体がきつくて校内走に参加したくない旨訴えた(甲13の1)。 そこで,原告Aは,CとともにD小学校に赴き,E講師に対し,直接,Cが当日軽いぜん息発作が起こっていること,長く走っていると少し息苦しくなる時がある旨訴えていること等を告げるとともに,当日の校内走を休ませたい旨要請し,また,Cに時々ぜん息発作があるため注意してもらいたい旨の要望を告げた。同日Cは朝の健康観察において喉の痛みを訴え,E講師は,Cに同日の校内走を休ませた(甲13の1,乙7の2)。 この点,被告は,前記第2の3(2)(被告の主張)イ(ケ)gのとおり,E講師がぜん息の具合を尋ねたのに対し,「すぐに治ります。ときどき軽いぜん息が出ますが,普通どおり生活できます。ただ,今日の持久走練習は休ませてください。よろしくお願いします」と答えただけである旨主張するが,前記オないしキのとおり原告らが連絡ノートで要請したときにはその都度E講師がCを体育の授業時に見学させていたことにかんがみれば,前記被告主張の程度の内容を いします」と答えただけである旨主張するが,前記オないしキのとおり原告らが連絡ノートで要請したときにはその都度E講師がCを体育の授業時に見学させていたことにかんがみれば,前記被告主張の程度の内容を告げるために原告AがD小学校に赴くことは考えにくく,少なくとも前記認定の程度のことはE講師に告げたものと認めるのが相当である。 ケ Cは,同年12月1日,健康観察において異状を訴えなかったが,原告らは連絡ノートにおいて,朝軽いぜん息発作が出たため当日の体育の授業を見学させて欲しい旨要請し,E講師は,当日の校内走を休ませた(乙7の3,乙8の4)。 コ Cは,同月2日,健康観察において異状を訴えなかったが,原告らは連絡ノートにおいて,朝軽いぜん息発作が出たため当日の体育の授業を見学させて欲しい旨要請し,E講師は,当日の校内走を休ませた(乙7の3,同8の4)。 サ原告らは,同月3日の本件事前練習当日,連絡ノートに何も記載しなかったが,他方,Cは,前記第2の1(3)アのとおり朝の健康観察においてE講師に対し喉の痛みを2度にわたり訴えた。 (2) 本件事前練習におけるD小学校教師らの引率・指導態勢について(甲10,乙10,20)ア本件事前練習は,各学年2名ずつの教師とL教諭(責任者)及びH教諭の総勢10名の教師によって引率・指導され,うちG教諭,M教諭を含む複数の教師は携帯電話又はPHSを所持していた。他方,養護教諭は本件事前練習に同行しなかった。 イ 3年児童のスタート時,走り終えた4年ないし6年の児童の引率・指導担当教師らはいずれも本件事前練習本部におり,3年児童の指導・引率態勢は,本件スタート地点までG教諭及びH教諭が引率し,スタート後G教諭が最後尾の生徒に伴走すると共に,E教諭が本件事前練習本部にてストップウォッチによりゴールしてくる児童の対 3年児童の指導・引率態勢は,本件スタート地点までG教諭及びH教諭が引率し,スタート後G教諭が最後尾の生徒に伴走すると共に,E教諭が本件事前練習本部にてストップウォッチによりゴールしてくる児童の対応に当たるというものであった。 (3) 本件事故の発生時刻乙第20号証,27号証の3,4によれば,本件事前練習における3年児童のスタート時刻は午後3時4分19秒であり,当時のD小学校3年児童のうち最速で本件ゴール地点に到着した児童のタイムが約4分13秒であり,Cと700メートル地点まで共に走っていた児童のタイムが約5分31秒であることが認められ,以上の事実関係からすれば,Cが本件スタート地点から790メートル離れた本件事故現場で走行不能となったのは,本件スタートから約4分後の午後3時8分ころであると推認するのが相当である。 (4) 本件事故発生後救急車到着までのCの症状G教諭が本件スタート地点から約790メートル地点でCを発見してから救急車が本件事故地点に到着するまでの間,Cの症状は,顔色が悪く,歯を食いしばり,息苦しいと言いながら,仰向けになり足を上下に動かしていた状態であった(甲1の4,5,同4,同13の16,25,26,乙20)。 この点,原告らは,前記第2の3(5)(原告らの主張)アのとおり瀕死の状態でもがき苦しんでいた旨主張する。 しかしながら,前記第2の1(4)アないしウで認定した事実に甲第4号証及び第13号証の28を総合すれば,救急車到着時のCの症状は,意識は正常であり,呼吸は頻呼吸の状態で,喘鳴呼吸や呼吸困難と認められるほどの症状ではなかったことが認められるとともに,救急車搬送途中において搬送先の医療機関を変更する程度に容態が悪化したことが認められ,かかる事実関係を前提とすると,救急車到着までのCの症状は,前記認定のとおり息苦し かったことが認められるとともに,救急車搬送途中において搬送先の医療機関を変更する程度に容態が悪化したことが認められ,かかる事実関係を前提とすると,救急車到着までのCの症状は,前記認定のとおり息苦しい状況であったことは認められるものの,原告ら主張に係る瀕死の状況であったとまでは認められない。 (5) 本件事故現場付近の状況ア本件事故当時,本件事故の通報を受け出動した救急車が本件現場に向かった際に通った日本庭園とX市美術館の間の通路(以下「本件通路」という。)には2つの車止め(以下,本件事故現場から遠い順に「本件車止め①」,「本件車止め②」という。)があり,そのままでは救急車が本件事故現場に近寄れない状況であった。 本件車止め①は,「オートバイ等の乗り入れはできません」又は「許可車以外は進入できません」と表示が付され,コンクリートの重しによって固定されているもので,施錠等がされておらずそのまま手動で動かすことの可能なものである。 本件車止め②は,地中に埋められて施錠がなされており,鍵がなければ動かすことのできないものである。 (甲13の23,24,乙23,24)イ本件事前練習本部横には,公衆電話(無料で119番通報できるもの)が2台設置してあった(甲13の20,21)。 2 争点1(Cの死が気管支ぜん息発作に起因するものか否か)について(1) 運動誘発性ぜん息の意義,発生機序及び症状甲第6号証,同第13号証の12,乙第27号証の5,6によれば,小児のぜん息及び運動誘発性ぜん息の意義,発生機序及び症状について,以下の事実が認められる。 アぜん息とは,気管支に多くの痰が溜まったり,気管支の粘膜がむくんだり,気管支が収縮したりして,呼吸が困難になる病気であり,ぜん息の発症や発作の発現にアレルギー症状を引き起こす物質(アレルゲン)が関与し ん息とは,気管支に多くの痰が溜まったり,気管支の粘膜がむくんだり,気管支が収縮したりして,呼吸が困難になる病気であり,ぜん息の発症や発作の発現にアレルギー症状を引き起こす物質(アレルゲン)が関与している場合,これらはアレルギー型(アトピー型)と分類され,小児のぜん息の80パーセントないし90パーセントがこの型であるといわれている。 また,ぜん息発作を何度も繰り返していると気道が敏感になり,普通の人では何でもないわずかな刺激で発作を起こすこともあり,このような状態を気道反応性の亢進という。 以上のアレルギー反応(体質)及び気道反応性の亢進が,小児のぜん息の特徴といわれている。 イ運動誘発性ぜん息とは,運動したときに起こる一時的な呼吸困難症状をいい,ぜん息になると気道が非常に敏感になっていることから,ぜん息が重症な人ほど起こりやすい症状である。 運動誘発性ぜん息は,運動で呼吸が速くなり,気管支が冷やされたり,粘膜の水分が蒸発することで,気管支の平滑筋が収縮するために起こる現象と理解されており,運動の内容としては,ランニングは起きやすく,水泳,散歩は起きにくいとされており,また,強い運動を長時間持続するほど起きやすいものとされている。 ウ運動誘発性ぜん息の症状は,アレルゲンが身体に入って起きる発作とは違い,ほとんどの場合,肺機能が最も低下するのは運動終了後5ないし10分間であり,多くの場合,特に治療をしなくても20ないし30分後にはほぼ運動前値まで肺機能が回復する(即時型)が,患者によっては約6時間後に再度呼吸困難を訴える人もいる(遅発型)。 (2) ①前記(1)の運動誘発性ぜん息の発生機序及び症状,②前記1(1)のとおり,本件事前練習に至るまでCにはぜん息の既往症状があり,特に本件事前練習の前日,前々日である平成11年12月1日,同月2 2) ①前記(1)の運動誘発性ぜん息の発生機序及び症状,②前記1(1)のとおり,本件事前練習に至るまでCにはぜん息の既往症状があり,特に本件事前練習の前日,前々日である平成11年12月1日,同月2日にはぜん息発作を理由に校内走を休んでいたこと,③前記1(4)の認定事実によれば,Cは790メートル走った地点において倒れたが,その後,息苦しさを訴え,仰向けになって足を上下に動かしているような状況であったこと,④甲第24ないし第26号証によれば,救急車内におけるCの口唇部チアノーゼ,意識消失及びJ病院におけるCの血液ガスの結果(pH6.920,炭酸ガス分圧100mmHg以上)は,気管支ぜん息発作及びそれに伴う呼吸障害の症状と符合すると認められること,⑤前記1(1)アの健康診断の結果によれば,同イのぜん息の診断を受けるまでCについて呼吸器の異常はなかったことが認められ,Cの前記③の症状がぜん息以外の要因に基づくとは考えにくいこと,以上によれば,本件事故は,Cに運動誘発性ぜん息が発症して呼吸困難となり,走行不能となって生じたものと推認するのが相当であり,また,本件事故とCとの死との間には条件関係が認められることは明らかであるから,前記運動誘発生ぜん息とCの死との間においても,条件関係が認められると解するのが相当である。 3 争点2(E講師にCを持久走に参加させたことにつき過失があったか否か)について(1) 本件事故の予見可能性についてア本件事前練習の内容について(ア) 持久走に関する学校指導要領等の定め乙第4号証,第13号証によれば,学習指導要領は,持久走について特に明示してはおらず,小学3年生については,「走・跳の運動(中略)を行う」と概括的な定め方をしており,指導書は,「走・跳の運動」の解説として,これを「かけっこ・リレー(中略)や は,持久走について特に明示してはおらず,小学3年生については,「走・跳の運動(中略)を行う」と概括的な定め方をしており,指導書は,「走・跳の運動」の解説として,これを「かけっこ・リレー(中略)や歩幅,姿勢,方向,距離,人数などを変えて動きを工夫しながら走ったり(中略)する」ことであるとし,「無理のない速さで走ったり,歩いたりしながらかけ足を続ける」場合の運動量の目安として「かけ足(3,4分間程度)」を挙げていることが認められる。 また,乙第3号証によれば,基底教育計画は,持久走の目的は「決まりを守り,同じ調子で長く走ること」であるとし,運動量の目安としては,「100メートルを30~35秒のペースで約2分間」走ることや「同じ調子で1~2分間走り続ける」ことを挙げていることが認められる。 さらに,乙第14号証によれば,指導資料には,持久走についての学習のねらいとして「無理のない速さで,2分間くらいゆっくり走り続ける。」こととともに,「同じ速さで,時間(距離)をのばして走る。」ことが挙げられていることが認められる。 (イ) 本件事前練習の相当性本件事前練習は,Cを含む小学校3年児童については1000メートル走ることを内容とするものであり,前記(ア)の指導書,基底教育計画及び指導資料の定められた内容に比するとその走行距離は相当長いものと認められる。 しかしながら,①乙第13号証によれば,学習指導要領は,各小学校が指導計画を作成するにあたっての配慮事項として,「学校の創意工夫を生かし,全体として調和のとれた具体的な指導計画を作成するものとする。」旨指示するとともに,指導内容について相当概括的に記載していることが認められ,このことにかんがみれば,学習指導要領の内容を解説した指導書等の定めは,各小学校が指導計画を作成・実施する際に参考とすべき全 示するとともに,指導内容について相当概括的に記載していることが認められ,このことにかんがみれば,学習指導要領の内容を解説した指導書等の定めは,各小学校が指導計画を作成・実施する際に参考とすべき全国的ないしはX市内における小学校の教育の大綱的基準を示すもので,その具体的な内容は一応の目安となる基準を示したものと評価することができ,教師は,その内容を尊重して指導計画を作成,実施すべきであるが,その示された程度を越えた指導計画を直ちに違法とすることはできないこと,②前掲(ア)の各証拠によれば,持久走とは自分の体力にあわせ一定距離を持続して走ることをいうものと認められ,走行距離が伸びたからといって直ちに児童の生命・身体への危険性が増大するものとは認められないこと,③乙15号証及び弁論の全趣旨によれば,D小学校は本件事前練習と同様の距離の持久走練習を継続的に実施し,その成果として本件事前練習の距離を設定したものであるとともに,X市内の他の複数の小学校においても同程度の距離の持久走練習を行っている実績があると認められること,④本件事前練習の前に,D小学校では校内走を継続的に実施しており,3年生児童は約5分の持久走を相当回数経験していたこと,以上の各事実に照らせば,本件事前練習の計画内容自体が不相当であるとは認められない。 そして,乙第18号証によれば,本件事前練習に児童を参加させるにあたっては,事前に連絡ノートや健康観察で児童の健康状態を確認していることが認められるとともに,甲第10号証,乙第20号証,証人Eの証言(152項ないし157項)によれば,本件事前練習のスタート直前に腹痛を訴え休んだ生徒もいることが認められ,一応生徒の健康状態を把握した上で本件事前練習を実施しているものと認めることができる。 さらに,甲第10号証及び乙第20号証によ 本件事前練習のスタート直前に腹痛を訴え休んだ生徒もいることが認められ,一応生徒の健康状態を把握した上で本件事前練習を実施しているものと認めることができる。 さらに,甲第10号証及び乙第20号証によれば,本件事前練習の前において,D小学校教師らは参加者に対し,「走っている途中気分が悪くなったら近くの先生に知らせる」「気分が悪そうな友達に気付いたら近くの先生に知らせる」旨の指導をしていたことが認められる。 以上の各事実からすれば,本件事前練習の実施がCら小学3年生の児童にとってそれ自体生命・身体への具体的な危険を予見し得るような無謀なものであったとは認められない。 この点,原告らは,本件事前練習までに10回行われた校内走中,4回も休み,しかも,本件事前練習の前の5回の校内走のうち3回はぜん息を理由に休んでいることから,Cは持久走について段階的な練習を全くできていなかった旨主張するが,本件事前練習までに約5分間の持久走を6回経験していることは,約1000メートルの距離の持久走についての経験を有しているものと評価できるから,この点に関する原告らの主張は採用できない。 また,原告らは,本件事故当日に校内走が行われ,これにCが参加していたこと及び本件事前練習に参加するまでの移動も含めて,本件事前練習の内容が過酷であった旨主張するが,前記2(1)イの運動誘発性ぜん息の発生機序にかんがみ,本件事前練習の約4時間半前に行われた校内走が直ちに本件事故に影響を与えるとは認められないうえ,本件事前練習に参加するまでの運動(D小学校からF公園までの徒歩,準備運動等)も,3年生の児童にとって過酷なものであったとは到底いえないから,この点に関する原告らの主張は採用できない。 イ E講師がCのぜん息症状について認識し又は認識し得た事実まず,前記1(1)認定の事実より 3年生の児童にとって過酷なものであったとは到底いえないから,この点に関する原告らの主張は採用できない。 イ E講師がCのぜん息症状について認識し又は認識し得た事実まず,前記1(1)認定の事実より,本件事故以前にCのぜん息症状についてE講師が認識し又は認識し得たことを推認させる事実として,①平成11年4月27日,28日にCがぜん息を理由に学校を休んだ事実,②同年10月22日にぜん息を理由に学校を休んだ事実,③同月25日,28日にぜん息のため体育の授業を見学した事実,④同年11月26日,Cがぜん息発作を起こし校内走を休んだ事実,Cが長く走っていると少し息苦しくなる時がある旨原告らに訴えている事実及びCには時々ぜん息発作があるため原告Aから注意してもらいたい旨の要望があった事実,⑤同年12月1日及び翌2日に軽いぜん息発作のため校内走を休んだ事実,⑥同月3日の本件事前練習当日の朝の健康観察においてCがE講師に対し喉の痛みを訴えた事実,以上の各事実が認められる。 なお,原告らは,⑦平成11年5月のE講師の原告ら宅への家庭訪問時,⑧同年7月の懇談会,⑨同年9月29日の懇談会の際に原告BがCのぜん息症状についてE講師に伝えた旨主張し,甲第14号証の1(原告B作成の陳述書)中には同主張に沿う部分が存在するが,他方,証人Eは同各事実を否定しており,前記証拠によっては同各事実を認めるには足りず,他にこれらの事実を認めるに足りる証拠はない。また,仮に家庭訪問ないし懇談会の機会にぜん息について原告BとE講師との間で話題に上ったとしても,ここで問題となっている本件事故の予見可能性との関係で,E講師がCのぜん息症状について前記①ないし⑥から把握できる以上の情報を告げられたものとは認められない。 次に,本件事前練習当日のCの症状は,前記第2の1(3)アのとおり 事故の予見可能性との関係で,E講師がCのぜん息症状について前記①ないし⑥から把握できる以上の情報を告げられたものとは認められない。 次に,本件事前練習当日のCの症状は,前記第2の1(3)アのとおり喉が痛い状態であったと認められるが,証人Eの証言(143ないし145)によれば,喘鳴等外観上ぜん息症状をうかがわせる症状はなかったことが認められる。 ウ Cのぜん息症状の程度について(ア) ぜん息発作の程度分類甲第6号証及び乙第27号証の5によれば,日本小児アレルギー学会における小児気管支ぜん息の発作の程度には,その判定基準として,a 小発作…①呼吸の状態は,軽い喘鳴があり,軽い陥没呼吸を伴うことがあり,②生活の状態は,遊び,睡眠,会話,食事ともに普通に行うことができる状態b 中発作…①呼吸の状態は,明らかな喘鳴と陥没呼吸,呼吸困難を認め,②生活の状態は,遊びはやや困難,睡眠はときどき目を覚まし,機嫌はやや不良で話しかければ返事をする状態,食事もやや不良な状態c 大発作…①呼吸の状態は,著名な喘鳴,呼吸困難,起坐呼吸を呈し,時にチアノーゼを認めるものであり,②生活の状態は,遊びは不能又はそれに近い状態であり,睡眠は不良又はそれに近い状態,機嫌は不良で話しかけても返事ができない状態,食事は不良またはそれに近い状態に分類され,同学会による小児気管支ぜん息のぜん息重症度は,観察期間を1年以上として,(a) 軽症…1年に数回以内の小・中発作又は6か月に数回の小発作が出る場合(b) 中等症…1か月に数回の小発作,6か月に数回の中発作又は1年に数回以内の大発作が出る場合(c) 重症…1か月に数回の中・大発作又は6か月に数回の大発作が出る場合に分類されていることが認められる。 (イ) 上記(ア)によれば,本件事前練習以前のCのぜん息症状 回以内の大発作が出る場合(c) 重症…1か月に数回の中・大発作又は6か月に数回の大発作が出る場合に分類されていることが認められる。 (イ) 上記(ア)によれば,本件事前練習以前のCのぜん息症状については,観察期間が平成11年4月27日に初めてぜん息に罹患していると診断されてから1年未満であり正確な分類は不可能であったが,他方,それまでに大発作が発生したことはなく,中発作も1回発生したのみであるから,少なくとも重症であるとうかがわせる事情は存しなかったものと認められる。 エぜん息発作と死亡との相関関係について甲第27号証,第41号証によれば,国内で約6000人の患者がぜん息の発作により死亡しているとともに,中等,軽症例から死亡につながる大発作が突然に発生することが推測される事例が数多く存在することが認められる。 他方,乙第27号証の6によれば,本件のように運動誘発性ぜん息の発作が出て,そのまま死亡した症例がどの程度あるかについては,日本小児アレルギー学会の「ぜん息死委員会レポート2000」によっても報告されていないことが認められ,この点についてはその他本件全証拠によっても明らかでない。 オ以上を前提としてE講師が本件事故を具体的に予見し得たか否かを検討するに,まず,前記アのとおり本件事前練習の内容がCら小学3年生の児童にとってそれ自体生命・身体への具体的な危険を予見し得るような無謀なものであったと認められない。 次に,前記ウ(ア),エのぜん息発作の分類及びぜん息発作と死亡との相関関係並びに前記2(1)の運動誘発性ぜん息の意義,発生機序及び症状によれば,気管支ぜん息の疾患を有する児童は,持久走等の運動によりぜん息発作が誘発されることがあり,たとえそれまで軽症,中等症のぜん息発作しか発生したことがなくても,突然に死亡につながるような 症状によれば,気管支ぜん息の疾患を有する児童は,持久走等の運動によりぜん息発作が誘発されることがあり,たとえそれまで軽症,中等症のぜん息発作しか発生したことがなくても,突然に死亡につながるような大発作が発生し得る可能性があることは否定できない。 しかしながら,持久走が児童の身体能力の向上を始めとする心身の発達に教育上有用なものであることにかんがみれば,本件事前練習のような持久走大会にぜん息疾患を有する児童の参加を回避すべき義務が発生するというためには,前記のようにぜん息疾患を有するという理由のみから導かれる一般的・抽象的なぜん息大発作の発生可能性の存在だけでは足りず,当時の具体的状況の下で突然死亡につながるような大発作が発生する具体的な予見可能性が要求されるというべきである。 そこで,検討するに,前記イ①ないし⑥の各事実によれば,Cは本件事故の前日及び前々日は軽いぜん息発作のため校内走を休んでおり,本件事故当日においても朝の健康観察において喉の痛みを訴えていたのであるから,E講師としては,本件事故当日の午前中の校内走の始まる前にCから持久走に参加するか否かについて事情聴取する等して,場合によっては当日の校内走及び本件事前練習を休ませることも1つの選択肢であったと考えられるところではある。しかしながら,前記1(1)ケないしサのとおり本件事故の前日,前々日には原告らによりCにぜん息症状のため校内走を休ませてほしい旨要請されたが,本件事故当日は連絡ノートにそのような記載がなかったこと,本件事故当日,Cに喘鳴等外観上ぜん息症状をうかがわせる症状がなかったこと(前記イ),Cのぜん息の症状は重症とは認められず,本件事前練習までに大発作が発生したこともないこと(前記ウ(イ)),連絡ノートにCについて異常がある旨の記載がなかった平成11年11月1 かったこと(前記イ),Cのぜん息の症状は重症とは認められず,本件事前練習までに大発作が発生したこともないこと(前記ウ(イ)),連絡ノートにCについて異常がある旨の記載がなかった平成11年11月18日,19日,22日,25日,29日,30日にはCは各当日の校内走には参加していること(前記第2の1(2)イ,第3の1(1)のキ,コ),本件事故当日の午前中のD小学校運動場における校内走において特に異常があったことをうかがわせる事情は認められないこと(前記第2の1(3)イ),その他甲第13号証の7によればCが喘息以外の原因により特に病弱な状態にはなかったと認められることも併せかんがみれば,小学校の教師に過ぎず医学の専門知識を有しないE講師及び関係者において,Cが本件事前練習に参加するにあたり,同人が同練習により,ぜん息の軽度の発作ではなく,本件事故のように,死に至るようなぜん息の大発作が発症することを具体的に予見することが可能であったとは認められない。 (2) 以上によれば,E講師にCの本件事前練習への参加を回避すべき義務があったとまではいうことはできないから,結局,E講師がCを本件事前練習に参加させたことについて過失まで認めることはできないと解さざるを得ない。 4 争点3(D小学校長及び同校教師らに,ぜん息発作が生じた場合は直ちに発見し応急の処置を施せるように準備をし,安全に配慮する義務に違反した過失があったか否か)について(1) 十分な伴走態勢をとらなかったことについて本件事前練習におけるD小学校教師らの引率・指導態勢は,前記1(2)のとおり,同3年児童については,本件スタート地点にH,G両教諭,本件ゴール地点にE講師がおり,最後尾の生徒にG教諭が伴走して一緒に本件ゴール地点に向かったというものである。 そして,①乙第10号証,第18号証 3年児童については,本件スタート地点にH,G両教諭,本件ゴール地点にE講師がおり,最後尾の生徒にG教諭が伴走して一緒に本件ゴール地点に向かったというものである。 そして,①乙第10号証,第18号証によれば,本件事前練習に参加したD小学校の3年児童の数が48人であったことが認められ,生徒48人に対し伴走する教師の人数が1人であることが著しく少ないとまではいえないこと,②本件事前練習のコースがF公園の周り約2分の1を反時計回りに周回して本件ゴール地点に向かうというもので,他の児童から極端に遅れる児童を除き,走行中は他の生徒とともに走ることになるものと認められることに照らせば,本件ゴール地点と最後尾にそれぞれ教師が存在する状況の下,走行中にある児童に異常が発生した際に,他の児童の発見が端緒となって速やかに本件ゴール地点の教師又は最後尾で伴走している教師に連絡されることを期待することにも一定の合理性があるというべきであること,③本件事故についても,本件事故発生時刻である午後3時8分ころ(前記1(3))から約2分後にはG教諭がCを発見できていることに照らせば,本件事前練習におけるD小学校教師らの伴走態勢が不相当なものであったとは認められない。 (2) 本件事前練習に養護教諭を参加させなかったことについてア養護教諭の意義・役割養護教諭は,学校教育法28条1項により小学校に置くことが義務づけられている,児童の養護をつかさどる教諭(同法28条7項)であり,ここでいう「養護をつかさどる」とは,児童生徒の健康を保持増進するための全ての活動をいうものと解すべきであるから,養護教諭は,専門的立場から全ての児童生徒の保健及び環境衛生の実態を的確に把握し,疾病や情緒障害,体力,栄養に関する問題等,心身の健康に問題を持つ児童生徒の個別の指導に当たり,また,健 であるから,養護教諭は,専門的立場から全ての児童生徒の保健及び環境衛生の実態を的確に把握し,疾病や情緒障害,体力,栄養に関する問題等,心身の健康に問題を持つ児童生徒の個別の指導に当たり,また,健康な児童生徒についても健康の増進に関する指導に当たるべき役割を有する者であると認められる。 イ前記アの養護教諭の意義・役割にかんがみ,本件事前練習に養護教諭を参加させなかったことについて検討するに,①本件事前練習は3年生以上の児童のみが参加したものであり,D小学校には1,2年生の児童が残っていたこと,②証人薄の証言(79ないし84項)によれば,本件事前練習当時2人の体調不良の児童が保健室で療養していたことが認められること,③前記1(2)のとおり本件事前練習には10人の教師が引率・指導に当たっていたこと,④各学校の養護教諭の人数は限られている(同法103条では小学校においては当分の間養護教諭を置かなくてもよいとされている。)ことに照らせば,本件事前練習を実施するにあたり,養護教諭に連絡し得る態勢を取りつつ,養護教諭をその本拠地である保健室に待機させておくことにも合理性があるというべきであるから,本件事前練習に養護教諭を参加させなかったことについて,D小学校教師らに過失があるとは認められない。 5 争点4(E講師にはD小学校に対しぜん息の持病のあるCの存在を知らせて安全に配慮する義務を怠った過失があったか否か)について前記3(1)オのとおり,E講師において,Cが本件事前練習当時に同練習への参加によって死に至るようなぜん息発作が発症することを具体的に予見することができた可能性は認められず,かかる状況の下で,E講師に本件事前練習実施前において他の教師に対しCがぜん息に罹患している事実を知らせるべき義務は認められず,E講師にD小学校に対しぜん息の持病 ることができた可能性は認められず,かかる状況の下で,E講師に本件事前練習実施前において他の教師に対しCがぜん息に罹患している事実を知らせるべき義務は認められず,E講師にD小学校に対しぜん息の持病のあるCの存在を知らせなかったことにつき過失は認められない。 6 争点5(本件事前練習の引率・指導に当たったD小学校講師らにはCが倒れた後の措置に過失があったか否か)について(1) 救急車要請についてG教諭が本件事故により倒れているCを発見したときのCの状況は,前記1(4)のとおり,走行不能により仰臥位となって息苦しさ等の苦痛を訴え足を上下に動かしていたというものであり,身体上異常を呈しているとともに,外見上直ちに生命に対する危険が生じていることを認識し得る状況ではないとしても,その後の具体的状況いかんによっては生命の安全も脅かされることが予測し得る状況であったと認められる。 そして,乙第20号証によれば,G教諭は倒れているCについて,歯を食いしばっていたからという理由でまずてんかんを疑い対応しようとしたが,E講師からてんかんの既往症はない旨告げられ,その後,同教師らはCにジャンパーを着せたり,トレーナーを頭の下に敷いたり,口にハンドタオルをかませようとしたり,Cの足にジャンパーをかけようとするもCに拒絶されたり,Cに求められるままに水を飲ませたりする等,病状を的確に把握しないままに様々な処置を行っていることが認められ,Cの前記状況は,本件事前練習の引率・指導に当たったD小学校教師らがその知識等によって適切に対処し得ない状態であったものと認められる。 かかる場合,G教諭を含む本件事前練習の引率・指導に当たったD小学校教師らには,Cを速やかに医療機関に搬送させる処置を施す義務があるというべきである。 そこで,同教師らが速やかに医療機関に搬送さ 。 かかる場合,G教諭を含む本件事前練習の引率・指導に当たったD小学校教師らには,Cを速やかに医療機関に搬送させる処置を施す義務があるというべきである。 そこで,同教師らが速やかに医療機関に搬送させる処置を施したか否かを検討するに,前記第2の1(3)ク,同(4)アのとおり本件事故について救急車が要請されたのは,G教諭がCを発見してから約8分間を経過した午後3時18分であるが,乙第20号証によれば,午後3時12分ころ,G教諭及びM教諭が持っていたPHS又は携帯電話で,それぞれ救急車を要請しようとしたものの,電話がつながらなかったため,駆けつけたL教諭が,午後3時13分ころ学校に電話し,学校から救急車の要請を行うよう依頼したものであるところ,同証拠によれば,G教諭及びM教諭の電話がつながらなかった理由は119番通報に市外局番である092を付して電話をかけようとしていたためであることがうかがわれ,また,L教諭はD小学校に連絡した際,電話を受けた土生教諭に対し救急車を要請することなくまず校長に取り次ぐよう要請したとされており,これらの点につき,同教諭らの対応には不手際な点がみられることは否定できない。 しかしながら,前記1(4)のとおり救急車到着までのCの症状が原告ら主張に係る瀕死の状況であったとまでは認められないこと,かかる緊急時においては,傷病者に対する応急の対応や傷病状態に関する具体的な状況判断を経て適切な決定に至るまでにある程度の時間を要することは社会通念上やむを得ないというべきであることにかんがみれば,Cが倒れてから搬送行為及び医療行為を経て死に至るまでの本件全過程の中においてG教諭がCを発見してから救急車の要請までに8分を経過したことを評価した場合に,本件事前練習の引率・指導に当たったD小学校教師らに,速やかに救急車を要請しなかっ て死に至るまでの本件全過程の中においてG教諭がCを発見してから救急車の要請までに8分を経過したことを評価した場合に,本件事前練習の引率・指導に当たったD小学校教師らに,速やかに救急車を要請しなかった過失があったということまでの評価をすることはできない。 (2) 救急車受け入れ態勢について前記1(5)アのとおり,本件通路には本件車止め①,②があり,そのままでは救急車が本件通路を通って本件事故現場に近寄れない状況であったと認められるが,救急車がどのルートを通って現場に到着するかも判然としない等本件事故当時の具体的状況の下で,救急車要請後にその受け入れ態勢をどのようにすべきかについて適切かつ合理的な判断を下すことは困難であるというべきであり,特に本件車止め②は施錠されており,外すことの可否ないしその具体的方法を検討するには一定の時間が必要であったというべきであるから,消防士等の具体的指示のない段階で本件事前練習の引率・指導に当たったD小学校教師らが本件車止め①,②を外すことを思い至らなかったとしても,やむを得ないものというべきである。 他方,乙第20号証によれば,G教諭及びL教諭は救急車要請後において,救急車の誘導のため本件通路及び本件通路の入口に向かっていたことが認められ,本件事前練習の引率・指導に当たったD小学校教師らは救急車が本件事故現場に到着し易くするための一応の対策を取っていたといえるから,救急車の受け入れ態勢についてD小学校教師らに過失があるということはできない。 7 結論以上によれば,その余の点を判断するまでもなく,原告らの本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用につき民事訴訟法61条,65条を適用して,主文のとおり判決する。 福岡地方裁判所第6民事部 いずれも理由がないからこれを棄却することとし,訴訟費用につき民事訴訟法61条,65条を適用して,主文のとおり判決する。 福岡地方裁判所第6民事部裁判長裁判官杉山正士裁判官阪口彰洋裁判官光岡弘志

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