令和3(ネ)77 憲法53条違憲国家賠償請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和4年1月27日 広島高等裁判所 岡山支部 棄却 岡山地方裁判所 令和30(ワ)163
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判決文本文10,121 文字)

1主文1 本件控訴を棄却する。 2 控訴費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由第1 控訴の趣旨1 原判決を次のとおり変更する。 2 被控訴人は,控訴人に対し,1 万円及びこれに対する平成29年7月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要(略語は,新たに定義しない限り,原判決の例による。以下,本判決において同じ。)1 本件は,他の衆議院議員119名と連名で平成29年6月22日に憲法53条後段に基づく臨時会召集決定を要求(本件召集要求)した衆議院議員である控訴人が,被控訴人に対し,内閣を加害公務員として,内閣が合理的期間内に召集を決定すべき義務に違反して本件召集要求後98日が経過するまで臨時会の召集(本件召集)を怠る(以下「本件懈怠」という。)加害行為をしたことによって,国会議員の権能行使を侵害されたと主張して,国家賠償法(国賠法)1条1項に基づき,慰謝料等110万円及びこれに対する加害行為の日である本件召集要求から合理的期間である20日経過後の平成29年7月13日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 原審は,控訴人の請求を棄却した。 これに対し,控訴人は,慰謝料1万円及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で一部控訴をした。 当裁判所は,原審と同様,控訴人の請求を棄却すべきと判断した。 2 前提事実,争点及び当事者の主張は,後記3のとおり当審における当事者の補足的主張を加えるほかは,原判決「事実及び理由」の「第2 事案の概要等」 21及び2(原判決2頁14行目~16頁21行目)に記載のとおりであるから,これを引用する とおり当審における当事者の補足的主張を加えるほかは,原判決「事実及び理由」の「第2 事案の概要等」 21及び2(原判決2頁14行目~16頁21行目)に記載のとおりであるから,これを引用する。 3 当審における当事者の補足的主張憲法53条後段に基づく臨時会の召集要求があった場合において,内閣は,個々の国会議員に対し,国賠法1条1項適用上の職務上の法的義務として,臨時会の召集を行うことを決定する義務を負うか(争点2)(控訴人)控訴人の国会活動は,公務ないし公益目的のものではあるが,下記ア及びイのとおり,控訴人の職業活動の自由(憲法22条1項),表現の自由(憲法21条)及び参政権(憲法15条)に基づく主観的な権利利益であることも否定されないというべきである。内閣は,控訴人に対し,職務上の法的義務として,臨時会の召集を決定する義務を負っていたにもかかわらず,本件召集要求に応じるべき合理的期間(20日)を超えて本件懈怠をしたことにより,控訴人の召集されるべき臨時会における国会活動という国賠法上保護される権利利益を侵害したというべきである。 ア 職業活動の自由(憲法22条1項)に基づく国会活動公務を含む「職業は,ひとりその選択,すなわち職業の開始,継続,廃止において自由であるばかりでなく,選択した職業の遂行自体,すなわちその職業活動の内容,態様においても,原則として自由であることが要請されるのであり,したがって,右規定(憲法22条1項)は,狭義における職業選択の自由のみならず,職業活動の自由の保障をも包含しているものと解すべきである」(最高裁判所昭和50年4月30日大法廷判決・民集29巻4号572頁)ところ,国会議員は,月額129万4000円の報酬を得る以上,職業であるといえ,控訴人は,職業自体に人格的利益を と解すべきである」(最高裁判所昭和50年4月30日大法廷判決・民集29巻4号572頁)ところ,国会議員は,月額129万4000円の報酬を得る以上,職業であるといえ,控訴人は,職業自体に人格的利益を有しており,その職業の内容たる国会議員の仕事(国会活動)も職業活動の自由として憲法22条1項により保護されるというべきである(甲A1 314)。 そして,控訴人は,本件懈怠によって,国民を代表し,国民の意思を国会活動(質問,議論,調査,出席議員の過半数による議決など)を通じて国政に反映させるという,臨時会が召集されたならば行なえたであろう国会議員としての中核的な活動が98日間全く行えなかったから,臨時会を召集すべき合理的期間(20日間)を除く期間にわたり,控訴人の職業活動の自由に基づく国会活動を侵害されたといえる。 イ 表現の自由(憲法21条)及び参政権(憲法15条)に基づく国会活動控訴人は,本件懈怠によって,前記ア同様,臨時会が召集されたならば行なえたであろう控訴人の表現の自由(憲法21条)及び参政権(憲法15条)に基づく政治活動の自由の一環である国会活動を侵害されたといえる(最高裁判所令和2年11月25日大法廷判決・民集74巻8号2229頁。以下「地方議会議員出席停止懲罰判決」という。)。 国民は,「固有の権利」たる人権として,憲法15条により選挙権が保障されており,これを選挙権という1枚のコインの裏面たる選挙で選出された国会議員の側からみると,国会議員は,他の国家機関から制約なく国会活動を行うことが保障されているというべきである。控訴人は,本件召集要求に応じて合理的期間内に召集されるはずの臨時会において,国会活動をすることができたはずであり,ことに表現の自由(憲法21条)及び参政権の一態様であり れているというべきである。控訴人は,本件召集要求に応じて合理的期間内に召集されるはずの臨時会において,国会活動をすることができたはずであり,ことに表現の自由(憲法21条)及び参政権の一態様であり,衆議院議員として最も基本的・中核的な権利というべき上記臨時会における発言の自由が保障されていたといえる(名古屋高等裁判所平成24年5月11日判決・判例時報2163号10頁。甲A124。以下「市議会議員代読拒否判決」という。)。 控訴人の国会活動は,公務であり,公益目的のものであるが,だからといって,控訴人の主観的利益がなくなるわけではない。最高裁判所は,公務としての性格をも有する選挙権の侵害につき国賠法に基づく慰謝料の支 4払を命じている(最高裁判所平成17年9月14日大法廷判決・民集59巻7号2087頁)し,議員活動の自由に対する条例による制約が憲法21条1項に違反するかを審査しており(最高裁判所平成26年5月27日第3小法廷判決・集民247号1頁),議員活動の自由が同項によって保障されることを前提としており,公務,公益目的の故に議員の主観的利益があることを否定していない(地方議会議員出席停止懲罰判決,市議会議員代読拒否判決)。 (被控訴人)国賠法1条1項の適用上,違法の評価を受けるには,その前提として,個別の国民の権利ないし利益が侵害されたことが必要であり,これについては,当該公権力行使の根拠法令によって保護された権利ないし利益が侵害されたことが必要である(最高裁判所平成25年3月26日第3小法廷判決・集民243号101頁)。本件における公権力行使の根拠法令である憲法53条後段は,個々の国会議員の法的権利又は法律上保護される利益として臨時会召集要求権を規定していないというべきである。 控訴人が指摘する判例等は,いずれ 本件における公権力行使の根拠法令である憲法53条後段は,個々の国会議員の法的権利又は法律上保護される利益として臨時会召集要求権を規定していないというべきである。 控訴人が指摘する判例等は,いずれも憲法53条後段によって保護される権利ないし利益について判断しておらず,本件争点と無関係なものというべきである。また,控訴人は,職業活動の自由(憲法22条1項),表現の自由(憲法21条)及び参政権(憲法15条)に基づく国会活動の利益が侵害されたと主張するが,憲法53条後段の趣旨と無関係に国会議員としての職業活動の機会が失われたと主張するにすぎない。 第3 当裁判所の判断1 当裁判所の判断は,次のとおり改め,後記2のとおり当審における当事者の補足的主張に対する判断を加えるほかは,原判決「事実及び理由」の「第3 当裁判所の判断」1及び2(原判決16頁23行目~28頁14行目)に記載のとおりであるから,これを引用する。 5(1) 原判決17頁11行目の「司裁判所の審査権」を「裁判所の司法審査権」に改める。 (2) 原判決23頁初行の「にすぎないもの」を削る。 (3) 原判決23頁7行目末尾に改行の上,次のとおり加える。 「 また,憲法は,天皇が内閣の助言と承認によって国会を召集することとしているから(憲法7条2号),国会の活動を開始するためには,期日と場所を定めて国会議員を集めるという,天皇の国事行為である召集が必要であり,これなしに国会議員が自主的に集合し,政治活動を行うことは何ら妨げられないが,これを国会の活動であるということはできない。国会が国会として活動する会期を開始するためには召集を要するのであり,憲法上定められている定期の常会(憲法52条),衆議院解散後の特別会(憲法54条1項)及び臨時の必要による臨時会(憲法5 きない。国会が国会として活動する会期を開始するためには召集を要するのであり,憲法上定められている定期の常会(憲法52条),衆議院解散後の特別会(憲法54条1項)及び臨時の必要による臨時会(憲法53条)のうち,前2者は国会自身をして必要に応じた自律的な会期を開始するに足りる規定とはいえない。そこで,憲法53条は,まず,前段において「内閣は,国会の臨時会の召集を決定することができる」と規定し,天皇の国事行為に先行する臨時会の召集決定権を内閣総理大臣及びその他の国務大臣によって組織される内閣(憲法66条1項)に帰属させ,内閣による臨時会召集決定によって他律的に会期を開始させることを定めつつ,次いで,後段において「いづれかの議院の総議員の4分の1以上の要求があれば,内閣は,その召集を決定しなければならない」と規定し,実質的に国会をして自ら会期を開始して活動できるようにしたものと解される。もっとも,国会自身が自律的に会期を開始すべき行為をしようといっても,当然ながら会期前のことであり,その行為自体は形式的には国会の活動といえないことになる。そこで,憲法53条後段は,「いづれかの議院の総議員の4分の1以上の要求」という一部少数の国会議員らによる意思形成の形式(国会法3条参照)を用いることによって,実質的に国会をして自律的に会期を開 6始させることができるようにしたものであり,同条後段はそこに意味があると解される。すなわち,国会法3条は「いずれかの議院の総議員の4分の1以上の議員が連名で,議長を経由して内閣に要求書を提出しなければならない」と定めており,国会外で署名を集め,それがいずれかの議院の総議員の4分の1以上集積したときに,内閣に対して直接要求するという形式を採用していないのであり,議長を経由することにより,あくまで,実質的に国 めており,国会外で署名を集め,それがいずれかの議院の総議員の4分の1以上集積したときに,内閣に対して直接要求するという形式を採用していないのであり,議長を経由することにより,あくまで,実質的に国会の意思形成の形式を用いているのであって,国会と内閣との間の関係であることを前提としているといえる。そうすると,憲法53条後段は,実質的に国会をして必要に応じて活動しうる権限を与えた趣旨の規定というべきであり,かつ,活動を開始する限りの国会の意思形成としては過半数でなく「4分の1以上」で足りるとすることによって,少数派の尊重をも図ったといえる。かくして,憲法は,臨時会について,飽くまで内閣に対し,自ら召集を決定するほか(同条前段),「いづれかの議院の総議員の4分の1以上の要求」に応じて召集を決定すべきものと義務付け(同条後段),もって内閣と国会の機関相互の権限分配を定めたといえる。このことは,前記のとおり憲法が同条を常会(憲法52条)及び特別会(憲法54条1項)と並べて規定していることからもうかがえるところである。すなわち,憲法は,常会,特別会,臨時会を問わず,天皇が内閣の助言と承認によって国会を召集するとした上,憲法53条をもって実質的には国会が他律的のみならず自律的にも活動を開始できる旨の機関を規律する規定であることを明らかにすべく,憲法52条及び憲法54条と並べて配置するとともに,常会及び特別会について召集の決定権限者を明らかに規定しなかったのとは異なり,内閣の決定権限をあえて明記したと解される(憲法53条が,議員を主語とせずに内閣を主語とした上,内閣をして「いづれかの議院の総議員の4分の1以上の要求」によって決定すべきものと義務付ける形式で規定した点は,内閣と国会という機関相互の権 7限分配を規定したことを表現する趣旨と解さ た上,内閣をして「いづれかの議院の総議員の4分の1以上の要求」によって決定すべきものと義務付ける形式で規定した点は,内閣と国会という機関相互の権 7限分配を規定したことを表現する趣旨と解される。)。同条の趣旨が以上のとおりだとすれば,会期の他律的な開始においては召集決定権を合議体としての内閣に帰属させる一方,会期を自律的に開始させる召集要求権については,そもそも国会が本来的に合議体の機関であることを併せ考慮すればなおさら,各個別の国会議員の権限として分散的に帰属させることに実質的な意味があるとみるのは不自然であり,それは形式にすぎないとともに少数派を尊重したものであって,同条は前段,後段とも内閣と国会という機関相互の権限分配を規定したものと統一的に理解すべきである。このように解してこそ,同条前段による臨時会も同条後段による臨時会も,国会の会期ないし活動として何らの異同もないことを自然に理解できるといえる。 したがって,内閣は,「いづれかの議院の総議員の4分の1以上の要求」によって成立した国会の臨時会召集要求という権限行使に応じないときには,国会による自律的な活動の開始を妨げたものとして,国会ひいては全国民(憲法43条1項参照)に対して政治的責任を免れないといわざるを得ない。しかしながら,この召集要求とこれに対する懈怠ないし拒絶は,実質的には国会と内閣という機関相互間における権限の行使に関する紛争であるから,本来的には国民の権利義務ないし法律関係には直接関係しないというべきである(なお,裁判所が機関相互間における権限の存否又はその行使に関する紛争を審判するには,その旨の法律の定めを要する(裁判所法3条1項,行政事件訴訟法6条,42条参照)。)。」(4) 原判決23頁9行目の「遅延したとしても,」の後に「それ自体は国会と 行使に関する紛争を審判するには,その旨の法律の定めを要する(裁判所法3条1項,行政事件訴訟法6条,42条参照)。)。」(4) 原判決23頁9行目の「遅延したとしても,」の後に「それ自体は国会と内閣という機関相互間における権限の行使に関する紛争に留まり,」を加える。 (5) 原判決27頁10行目の「しかし」から17行目末尾までを次のとおり改める。 8「 確かに,憲法53条後段に基づく臨時会召集要求権自体をもって,これに参加した各個別の国会議員が国賠法上保護される権利利益を有すると解するのであれば,内閣は,国賠法上,当該各個別の国会議員に対しては職務上の法的義務を負う一方,その余の国会議員に対してはこれを負わないと解さざるを得ない。しかしながら,そもそも内閣が行使する公権力というべき同条後段に基づく臨時会召集決定とは,実質的に国会をして自律的に活動を開始させるものであって,活動を開始した臨時会においては当該各個別の国会議員とその余の国会議員が区別なく活動するに至るのであるから(同条前段による臨時会と同条後段による臨時会は,国会の会期ないし活動として何らの異同もないことは既に説示したとおりである。),同条後段に基づく臨時会召集要求権が,国会による自律的な活動の開始という公益のみならず,当該各個別の国会議員についてだけは主観的利益を保護する趣旨をも含むとして,内閣の国会議員に対する関係での職務上の法的義務に区別を生じさせること自体に何らの合理性もなく,不自然であるといわざるを得ない。同条後段に基づく臨時会召集要求権は,実質的には国会と内閣という機関相互間の権限の問題であるから,当該各個別の国会議員は,召集要求をしたこと自体において,公益を離れ,あるいは公益に解消されない憲法上保障され又は保護されている権利利益を有するも 国会と内閣という機関相互間の権限の問題であるから,当該各個別の国会議員は,召集要求をしたこと自体において,公益を離れ,あるいは公益に解消されない憲法上保障され又は保護されている権利利益を有するものではないというべきである。そうすると,内閣は,国の機関として臨時会召集決定をするに当たり,同じく国の機関である国会に対する関係において,召集手続等を行うために通例必要な合理的期間内に臨時会を召集する法的義務を負うのであり,この法的義務は機関相互を規律するものではあるが,機関を構成する当該各個別の国会議員との関係を規律するものではないというべきである。したがって,控訴人の主張は採用できない。」2 当審における当事者の補足的主張に対する判断(1) 憲法53条後段に基づく臨時会の召集要求があった場合において,内閣は, 9個々の国会議員に対し,国賠法1条1項適用上の職務上の法的義務として,臨時会の召集を行うことを決定する義務を負うか(争点2)ア ①国賠法1条1項は,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに,国又は公共団体がこれを賠償する責任を負うことを規定するから,内閣がした本件懈怠が同項の適用上違法となるかどうかは,憲法53条後段に基づく臨時会召集要求を受けた内閣の行動が,個別の国民すなわちこれに参加した各個別の国会議員に対して負う職務上の法的義務に違背したかどうかの問題であること,②当該各個別の国会議員の権利又は法律上保護された利益が侵害されたといえなければ,内閣が,当該各個別の国会議員との関係で職務上の法的義務に違反したといえないこと,③憲法53条後段に基づく臨時会召集要求権は,実質的に国会と内閣という機関相互間の権限の問題であり,こ いえなければ,内閣が,当該各個別の国会議員との関係で職務上の法的義務に違反したといえないこと,③憲法53条後段に基づく臨時会召集要求権は,実質的に国会と内閣という機関相互間の権限の問題であり,これに参加した各個別の国会議員が,召集要求自体において,公益を離れ,あるいは公益に解消されない憲法上保障され又は保護されている権利利益(主観的利益である国賠法上保護される権利利益)を有しないことは,前記引用に係る原判決(ただし,前記1で改めた後のもの。以下本判決において同じ。)が説示したとおりである。 もっとも,内閣が,本件懈怠によって,国会との機関相互間における権限行使,不行使に留まらず,控訴人の国賠法上保護される権利利益をも侵害したときには,控訴人は,国民の権利義務ないし法律関係である国に対する国賠法1条1項に基づく損害賠償請求権を取得し得るといえるが,臨時会召集要求と内閣の懈怠ないし拒絶が本来的には国民の権利義務ないし法律関係に直接関係しないことも原判決が説示したとおりである。では,本件懈怠により,控訴人の本件召集要求自体ではない権利利益が真実侵害されたといえるであろうか。 イ 控訴人は,本件懈怠によって,本件召集要求のほかに,控訴人の職業活 10動の自由(憲法22条1項),表現の自由(憲法21条)及び参政権(憲法15条)に基づく政治活動の自由の一環である国会活動という憲法上保障され又は保護されている権利利益が侵害されたとし,控訴人の国会活動は,公務ないし公益目的であるものの,上記各法条により保障された主観的利益性を併有する旨を主張する。 確かに,控訴人は,国民として政治活動の自由が保障されているから,国会議員であるがためになしうる国会活動も,政治活動の自由の一環として,憲法上保障され又は保護されている権利利益 張する。 確かに,控訴人は,国民として政治活動の自由が保障されているから,国会議員であるがためになしうる国会活動も,政治活動の自由の一環として,憲法上保障され又は保護されている権利利益として公益に解消されない主観的利益の側面があることを否定はできない(ただし,控訴人は,国会活動は職業活動の自由として,憲法22条1項により保障されていると主張するが,一般に,職業が公務である場合,公務は法令の規制の下で公共の福祉の実現のためにされるものであり,公務員一般の公務遂行は職業活動の自由として憲法22条1項の保障を受けるものではないとされているのであり,国会議員の公務遂行も同様に憲法22条1項の保障を受けるものではないと解される。)。 しかしながら,本件懈怠と直接結びつく権利利益,換言すれば,本件懈怠が直接侵害したといえるのは,控訴人の国会活動ではなく,本件召集要求(憲法53条後段に基づく臨時会召集要求権)である。臨時会召集要求権が実質的に国会の内閣に対する権限であり,これによって召集されるべき臨時会において,控訴人とその余の議員が区別なく活動すること(同条前段による臨時会と同条後段による臨時会は,国会の会期ないし活動として何らの異同もないこと)は原判決が説示したとおりであるから,控訴人の上記臨時会における国会活動が,同条前段による臨時会と同様,格別に保護されるものでないことは明らかである。そうすると,本件召集要求に参加した控訴人は,本件召集要求自体において,公益を離れ,あるいは公益に解消されない主観的利益としての国賠法上保護される権利利益を有し 11ないというべきである。 しかも,仮に控訴人の国会活動が本件懈怠により侵害されたとしても,控訴人が侵害されたと主張する国会活動は,臨時会が召集されたならばなし得たであろう国会 益を有し 11ないというべきである。 しかも,仮に控訴人の国会活動が本件懈怠により侵害されたとしても,控訴人が侵害されたと主張する国会活動は,臨時会が召集されたならばなし得たであろう国会活動を指しているにすぎず,そこにおいては,本件召集要求をした議員達の求める事項についての優先的先議権があるわけでもなく,常会,特別会や同条前段による臨時会と全く同様の国会活動が行われるのであり,本件召集要求に参加しなかった他の議員達も本件召集要求をした議員達と全く同様の国会活動をすることができるものである。そうすると,控訴人が主張するなし得たであろう国会活動の内容は,仮定的ないし抽象的な可能性をいうに留まっているといわざるを得ない。国賠法1条1項は,公務員が個別の国民の権利又は法律上保護される利益を侵害して,国民が具体的な損害を被った場合に,その損害を賠償させることにより当該侵害を救済する趣旨の規定であり,仮定的ないし抽象的な可能性を保護の対象にするものではないから,内閣が仮定的ないし抽象的な国会活動の可能性を有するに留まる控訴人との関係で職務上の法的義務違背を生じることもないというべきである。 したがって,控訴人の主張は採用できない。 なお,控訴人の指摘する判例等は,いずれも国民の権利利益を具体的に侵害したといえる事案に関するものであるから,本件とは事案を異にするといわざるを得ない。 (2) 以上のとおり,控訴人の国賠法1条1項に基づく本件請求は,その余の争点について判断するまでもなく,理由がないというべきである。 3 よって,原判決は相当であるから,本件控訴を棄却することとし,主文のとおり判決する。 広島高等裁判所岡山支部第2部 12裁判長裁判官 塩 田 直 よって,原判決は相当であるから,本件控訴を棄却することとし,主文のとおり判決する。 広島高等裁判所岡山支部第2部 12裁判長裁判官 塩 田 直 也 裁判官 榎 本 康 浩 裁判官 渡 邉 健 司

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