平成15(行コ)29 遺族補償給付等不支給処分取消請求控訴事件(通称 福岡中央労基署長遺族補償年金給付等不支給処分取消)

裁判年月日・裁判所
平成18年4月7日 福岡高等裁判所
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判決文本文38,946 文字)

-- 主文 原判決を取り消す。 被控訴人の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は,第一,二審とも被控訴人の負担とする。 事実 及び理由第1当事者の求める裁判 控訴人主文と同旨 被控訴人(1)本件控訴を棄却する。 (2)控訴費用は,控訴人の負担とする。 第2事案の概要(略称等は原判決の例に従う)。 本件は,被控訴人が,控訴人に対し,被控訴人の夫であるaが出張先の大分市内で急死したのはaが従事していた業務に起因するものであるとして,労働者災害補償保険法に基づき,遺族補償年金給付及び葬祭料の支給を請求したと,,,,ころ控訴人が各請求につきいずれも不支給とする本件各処分をしたため被控訴人が本件各処分が違法であると主張して,その取消しを求めた事案である。 控訴人は,aが従事していた業務の負荷は過重なものではなかったから,aの死亡は当該業務に起因するものではない旨,aは,慢性的に冠動脈疾患を進行させていたところ,死亡前日からの飲酒及びその後夜間暖房が作動していないホテルビル1階のタイル張りの床に横臥して就寝したことによる身体的負荷が引き金となって発症し,死亡するに至ったのであるから,aの死は業務上の,,,事由によるものではない旨主張して被控訴人の各請求を争ったが原判決はaの直接死因は虚血性心疾患であるところ,同疾患の発症前2か月目ころから同1か月目ころにかけての多数の出張業務を含んだ一連の業務が,aに過重な-- 精神的肉体的負荷を及ぼして疲労を蓄積させ,血管病変等をその自然経過を超えて増悪させて,虚血性心疾患を発症させ,aを死に至らせたものであり,死亡前日からの飲酒及びその後の就寝状況による身体的負荷は,aが心臓疾患を惹起する際の一つの契機にすぎず,上記疾患発症前にaが従事し て増悪させて,虚血性心疾患を発症させ,aを死に至らせたものであり,死亡前日からの飲酒及びその後の就寝状況による身体的負荷は,aが心臓疾患を惹起する際の一つの契機にすぎず,上記疾患発症前にaが従事していた業務と同人の死亡との間には因果関係が存するとして,被控訴人の各請求をいずれも認容した。 本件事案の概要は,後記3及び4のとおり,当審における当事者の主張を付加するほかは,原判決の「事実及び理由「第2事案の概要」の1及び2」,に記載のとおりであるから,これを引用する(ただし,原判決2頁21行目から同22行目にかけての「午前4時ころ,出張先の大分市内において心臓疾患を発症させて死亡した」を「午前4時5分ないし10分ころ,出張先の大分市内において,心筋機能障害(ただし,その直接的原因が内因(疾病)によるものか,外因によるものかについては争いがある)を発症させて死亡している。 のを発見された(以下,単に「発症」という場合は,上記心筋機能障害の発症をいい,同日を「発症当日「発症日」などという」と,原判決3頁17」,。)行目の「脳・心臓疾患」を「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く(以下「脳・心臓疾患」という」とそれぞれ改め,原判決1。)。)0頁22行目の「午前4時ころに」を削除し,原判決12頁16行目の「b医師」を「b医師(以下「b医師」という」と改める。 。)。) 当審における控訴人の主張aが従事していた業務については過重性を認定することができず,当該業務によりaの血管病変等がその自然経過を超えて著しく増悪したものとは認められない上,そもそも,aは,多量の飲酒と低体温との相乗効果により死亡したものと解すべきであるから,原判決には,aが従事していた業務の過重性にかかる事実誤認及び経験則違反が しく増悪したものとは認められない上,そもそも,aは,多量の飲酒と低体温との相乗効果により死亡したものと解すべきであるから,原判決には,aが従事していた業務の過重性にかかる事実誤認及び経験則違反があり,aの死亡時の身体状況等の事実誤認及び死因について医学経験則に反する評価の誤りが存する。 -- (1)業務の過重性についてア原判決は,aが責任者的立場にあり,NTTドコモなどからの個別的な苦情を一身に受けていた旨,NTTドコモからのトラブル対応の催促の電話は,aの携帯電話に夜間や休日でも転送され,厳しい苦情を言われることもあった旨認定するが,これらの事実を裏付ける具体的な証拠がないにもかかわらず,NTTドコモからの苦情の内容を過大に評価し,aが責任者的立場にあり,NTTドコモからの個別的な苦情を一身に受けていたことを,過重な負荷の前提事実としており,不当である。 イ原判決は,平成7年8月以降のaの時間外労働時間の増加を過大に評価している。臨床,病理学,公衆衛生学,法律学の各専門的知見を集約した「脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会報告書(甲8)を踏まえ」て策定された本件通達の基準(以下「新認定基準」という。甲12)を適用した場合でも,aの時間外労働時間は,発症前3か月目及び同2か月目については,業務過重性の他の負荷要因を検討する対象とならないほどの短時間であり,発症前1か月目についても,次の(ア)及び(イ)のとおり,業務と脳・心臓疾患発症との関連性が徐々に強まると評価される1か月の(「」。)時間外労働時間であるおおむね45時間以下45時間の目安という,,をわずかに増加しているにすぎないかその範囲内にとどまっているからaについて,業務による疲労の蓄積は生じていないと考えられる。 (ア)発症前1か月目の時間外労 5時間以下45時間の目安という,,をわずかに増加しているにすぎないかその範囲内にとどまっているからaについて,業務による疲労の蓄積は生じていないと考えられる。 (ア)発症前1か月目の時間外労働時間についてaの時間外労働時間算定の基礎となった勤務予定線表(日本コムシス作成。甲1の138頁,143頁,150頁)及び報告書(日本コムシス作成。甲1の111頁ないし116頁)の勤務時間には,勤務時間に含めるべきでない通勤時間や滞留時間が多数含まれていたことから,これらを控除したaの時間外労働の実態は,別紙1のとおり1か月43時間であり,45時間の目安を超過するものではなかった。 -- (イ)自宅において中継所等を回るルートの確認作業や回路図点検作業を行うことは業務の準備行為であり,どのような業種でもみられることであるから,上記準備行為が長時間を要したり,精神的負荷を生じさせるものであるということはできない。 ウaの出張内容は,ほとんどがファン交換のために自動車で中継所等に出かけるというもので,ルートの選択等はすべてaがみずから行い,精神的緊張を伴わない単独ないし部下のcと2人での作業であり,かつ上記交換作業自体は極めて単純なものであるところ,原判決は,出張内容の詳細な認定をせずに,出張と疲労との一般論により,業務過重性の評価を行っており,経験則に反するものである。 エaは,出張の際の移動手段として,主にaの自家用車かレンタカーを利用していたが,cと共に出張した場合は,同人が地図を見てナビゲートをしたり,作業の記録をしていたし,dと一緒に出張した際には,同人が運転交代を申し出たのにこれを断っており,自動車による移動及び運転自体もaにとってさしたる負担ではなかったのであり,原判決は,aの出張における運転業務の過重性を過大に評価し に出張した際には,同人が運転交代を申し出たのにこれを断っており,自動車による移動及び運転自体もaにとってさしたる負担ではなかったのであり,原判決は,aの出張における運転業務の過重性を過大に評価している。 オ原判決は,中継所等の多くが山中のへんぴな地域にあるとするが,具体的な証拠に基づかない認定である。aは,NTTドコモから目的地までの詳細な地図を入手したり,現地付近でNTTドコモに電話して中継所等の詳細な位置を確認することもできたのであり,ファン交換の目的地が分かりにくいことがあったとしても,これを過大評価すべきではない。 カ脳・心臓疾患発症と業務との相当因果関係が認められるためには,当該脳・心臓疾患発症が業務に内在する危険の現実化でなければならないのであり,まず,当該業務に危険が内在していることが必要であり,さらに,当該脳・心臓疾患の発症が当該業務に内在する危険の現実化であると認められることが必要であるすなわち業務による負荷が平均的労働者被。 ,,(-- 災者と同程度の年齢・経験等を有し,基礎疾患を有していても通常の業務を支障なく遂行することができる程度の健康状態にある者)にとって,血管病変等をその自然経過を超えて著しく増悪させ得る程度の負荷であるといえる場合(危険性の要件)に,危険の内在性を肯定することができる。 そして,危険の現実化が認められるためには,当該業務による負荷がその他の業務外の要因(喫煙,高血圧,私的生活上の精神的肉体的負荷などの私的危険要因等)に比較して相対的に有力な原因となって当該脳・心臓疾患を発症させたと認められること(現実化の要件)が必要であるが,aが行っていた業務は,前記のとおり,危険性の要件及び現実化の要件を満たさない。 (2)aの基礎疾患と死亡との因果関係についてア原判決は 症させたと認められること(現実化の要件)が必要であるが,aが行っていた業務は,前記のとおり,危険性の要件及び現実化の要件を満たさない。 (2)aの基礎疾患と死亡との因果関係についてア原判決は,従来aには心臓の基礎疾患が全く認められないとするが,aは,平成6年9月22日の健康診断受診時に,息切れ,動機,脈の乱れ,,,喉のつかえなどの狭心症の自覚症状を訴えていただけでなく死亡する12年前に胸痛を訴えている上,aが喫煙習慣及び肥満という虚血性心疾患の危険因子を有していたことを勘案すると,もともと器質的心病変が潜在していた可能性が高い。 イ原判決は,aが,死亡する5日前(平成7年10月7日)に胸痛を訴えたことについて,既に血管病変等をその自然経過を超えて増悪させて,虚血性心疾患を発症させていたとするが,これは検証不可能な被控訴人の供述のみに依拠したものである上,胸痛の原因・程度が医学的,客観的に明らかにされていないのであるから,根拠に乏しい判断である。前述のとおり,aにはもともと器質的心病変が潜在し,死亡する1,2年前には胸痛を訴えたことがあった上,死亡する5日前の胸痛の訴えの際は,被控訴人から病院を受診するよう忠告されたところ,受診の機会がありながら受診せず,死亡前日には深夜まで飲酒していることを勘案すると,死亡する5-- 日前において,以前の胸痛と質的に異なる重篤な胸痛があったと認定することはできない。そうすると,死亡する5日前の胸痛は,血管病変等の自然経過における症状にすぎず,その自然経過を超えて増悪したことを示すものということはできない。 (3)死亡時のaの身体状況及び死因について原判決は,aが,虚血性心疾患の危険因子を有していたこと,発症前日に飲酒した後,自らの意思で夜間暖房が作動していないホテルビル1階のタイ ことはできない。 (3)死亡時のaの身体状況及び死因について原判決は,aが,虚血性心疾患の危険因子を有していたこと,発症前日に飲酒した後,自らの意思で夜間暖房が作動していないホテルビル1階のタイル張りの床に横臥して就寝し,発症当日の午前4時ころに死亡したこと,aの血中アルコール濃度検査の結果,心血1ミリリットル中に2.69ミリグ,. ラムのアルコールが検出されたこと同時刻ころの大分市の気温は摂氏137度であったことを認定しながらも,これらは,aが心臓疾患を惹起する際の一つの契機にすぎず,発症前にaの従事した業務と死亡との間には相当因果関係があるとした。 しかしながら,aの死亡時の身体状況等に照らすと,次のとおり,aは,虚血性心疾患を直接死因として死亡したのではなく,多量の飲酒(急性アルコール中毒)を引き金とする偶発性低体温症(凍死)により,死亡したものというべきである。 アaの死亡時の身体状況b医師の意見書(乙7)によると,aは,上記血中アルコール濃度に照らし,死亡前には,泥酔状態,意識混濁状態にあったと推定される旨,こ,,のような飲酒の心臓疾患に対する影響について飲酒時に拡張した血管は飲酒後数時間持続して体温が喪失すると,それに対する生体防御的な自律神経反射として収縮し,飲酒後数時間経過後の安静時に狭心発作が惹起される旨,また,aの死亡当日午前4時の大分市の気温が13.7度であった点につき,aが横臥していたタイル張りの床の夜間の温度はかなり下降していたと考えられ,aはしばしば不整脈や血管収縮が出現する軽症ない-- し中等症の低体温症の状態にあったと推定される旨の医学的見解が示され。 ,,,,ているそしてこのように多量の飲酒においても低体温においてもいずれも狭心発作や不整脈を生じさせる程度に心血管を 症の低体温症の状態にあったと推定される旨の医学的見解が示され。 ,,,,ているそしてこのように多量の飲酒においても低体温においてもいずれも狭心発作や不整脈を生じさせる程度に心血管を収縮させ,心筋を虚血状態にさせる変化を与えることが確認されている上,aには,器質的心病変が潜在していたと考えられ,かなり以前から冠動脈疾患に罹患していた可能性が高いことから,胸痛の新たな出現,あるいは胸痛の頻度や強さの増強などの症状を伴う狭心症や心筋梗塞などを一括して呼ぶ急性冠症候群によって,夜間から早朝の時間帯に,致命的となる重篤な不整脈やショックを惹起して心臓突然死したと判断されるとの医学的見解が示されているところ(乙7,原判決はこのような医学的知見を軽視しており,妥)当ではない。 イaの死因が急性虚血性心疾患である蓋然性の検討(ア)e医師の死体検案書(甲1の9頁)の問題点同医師は,aの直接死因を「急性虚血性心疾患の疑い」とし,その原因は「詳細不明」としているが,その判断は,①aに外傷がないこと及び同人の髄液採取結果に照らし死因が脳性のものではないと推定されること,②aの年齢,性別,体格及び生前健康であったのに急死したこと,,に基づき急性虚血性心疾患と推定されるという断片的なものである上同医師は,上記死因は疑いに止まり,正確なものではないとしている。 また,同医師がaの死体検案をした時点では,aの血中アルコール濃度や死亡当時の気温などの情報がなかった一方,うずくまるように死亡していたなど,事実と相違する情報を前提としたもので,診断の正確性,信用性には限界がある。 (イ)b医師の意見書(乙7)の信用性f教授の意見書乙16も指摘するとおりg医師がその意見書甲(),(5)及び原審における証言により,泥酔と低温暴露 確性,信用性には限界がある。 (イ)b医師の意見書(乙7)の信用性f教授の意見書乙16も指摘するとおりg医師がその意見書甲(),(5)及び原審における証言により,泥酔と低温暴露という外因を,最終-- 疾病の助長・増悪因子に止まるとする点は疑問であり,死亡との因果関係の点からは,仮に,aに潜在した冠動脈疾患が死亡に至る危険を有していても,その因果の流れを追い越して,外因としての泥酔と低温暴露が死亡に直結した以上,死因は外因に限定されるはずである(いわゆる「追い越す因果関係。 」)ウaの死因が凍死(偶発性低体温症)であることについて(ア)偶発的低体温症は,核心温度が偶然に摂氏35度以下に低下することと定義され,気温に加え,薬物やアルコール摂取と深い関係がある。 ,,体温が摂氏35度以下になると身体の総合的な体温調節機能が失われ死亡率は体温低下に伴って上昇する。ほとんどの症例は,気温摂氏11度以下で発症しているが,血中アルコール濃度が泥酔よりも軽い酩酊状態で,気温摂氏15度から19度の場合でも発症することが確認されている。 (イ)aの死亡推定時刻について救急隊員によりaの死亡が確認された平成7年10月12日午前4時50分ころ,aに既に四肢硬直が生じており,死斑が出ていたこと,当時(午前4時)の大分市の気温が摂氏13.7度あり,死斑及び死後硬直が発生するのは死後2ないし3時間後であるという法医学の経験則,aが口から泡を吹いていたことから生前に肺水腫が生じていたことが認められるが,口から泡を吹くに至るのは死後数時間経過後であることからすると,aの死亡推定時刻を午前4時ころとすることは誤りであり,,,f教授がaの死亡時刻を同日午前2時ないし3時ころと推定したのは経験則に基づいた合理的判断である。 ( 時間経過後であることからすると,aの死亡推定時刻を午前4時ころとすることは誤りであり,,,f教授がaの死亡時刻を同日午前2時ないし3時ころと推定したのは経験則に基づいた合理的判断である。 (ウ)飲酒量についてf教授の意見書(乙16)によると,発症前日の午後7時30分ころから同日午後10時50分ころまでの間に,aが飲酒により摂取したア-- ルコール量は,そのビール,焼酎の飲酒内容から102.75ミリリットルないし120.75ミリリットルであると推計される。そして,aの死体検案時の血中アルコール濃度は心血1ミリリットル当たり2.6(. ),,9ミリグラム 269パーセントであり泥酔状態であったからaは,死亡までに合計して清酒1升程度(清酒1升に含まれるにアルコール量は288ミリリットル)に相当するアルコールを飲用したと推測されるところ(乙16の参考資料6,aが,同日午後11時ころNT)Tドコモ大分支店のhらと別れるまでに摂取したアルコール量は,上記のとおり102.75ミリリットルないし120.75ミリリットルに止まるから,aは,hらと別れた後,さらに,かなりの量の飲酒をして泥酔状態に陥ったとされている。上記判断は,aの発症前日の飲酒に係る証拠と科学的根拠に基づくものである。 (エ)飲酒後の睡眠と低体温症に至るメカニズムf教授の意見書(乙16)によると,体温は,深部の温度である核心温度と身体の外層部の外殻温度に大別され,人体における産熱の主座は骨格筋であり,放熱の主座は皮膚である旨,気温の低い場所で冷たい路面に寝た場合,保温処置がされていなければ,寝込みによる骨格筋の運動減少,停止により,産熱が著しく低下するとともに,放熱が一方的に強く進行して体温の低下が急速に進行し,核心温度も低下する上,アルコール 寝た場合,保温処置がされていなければ,寝込みによる骨格筋の運動減少,停止により,産熱が著しく低下するとともに,放熱が一方的に強く進行して体温の低下が急速に進行し,核心温度も低下する上,アルコールの飲用は皮膚の血管を拡張させるので放熱を著しく高める旨の医学的知見が示されている。 これを本件についてみると,aには,死亡当時,心筋梗塞に見られる意識消失による転倒や胸痛で苦しんだ形跡は見られず,飲酒後,路上に等しいタイル張りの床面に身体の背面の大部分が接した状態で,靴も脱ぎ,身体の前面も冷たい大気に接しており,摂氏15.4度から摂氏14.3度(aの死亡当日の大分市の午前1時,同2時及び同3時の各気-- 温は,順に摂氏15.4度,摂氏14.7度,摂氏14.3度と観測されている。甲1の239頁)の低温暴露に対し無防備な状態であったのであるから,大量のアルコールの影響を伴う放熱による体温の低下が急速に進行し,体温の摂氏35度以下への下降も比較的短時間に進行したと考えられ,入眠後数時間で死亡したと考えられる(乙16。 )(オ)以上のとおり,aは,泥酔の上,路上に等しいホテルビル1階の通路床面に寝込んでしまった結果,偶発性低体温症により凍死したものであり,泥酔と凍死の関係については,泥酔が凍死の引き金になったと考えられる。発症前日からの飲酒及びその後,夜間暖房が作動していないホテルビル1階に横臥して就寝したことによる身体的負荷がaの死因そのものであって,上記身体的負荷がaの心臓疾患を惹起する際の一つの契機にすぎないとして,発症前にaの従事した業務と死亡との因果関係を肯定した原判決には明らかな事実誤認が存する。 当審における被控訴人の主張(1)業務の過重性についてア控訴人は,原判決がNTTドコモからの苦情の内容を過大に評価してい と死亡との因果関係を肯定した原判決には明らかな事実誤認が存する。 当審における被控訴人の主張(1)業務の過重性についてア控訴人は,原判決がNTTドコモからの苦情の内容を過大に評価しているとするが,aと一緒に働いていたcやiは,平成7年9月以降のファンのトラブルで,aがNTTドコモから大変厳しく怒られていた旨具体的に証言ないし陳述しているし,jもファンの故障について緊急の場合は夜中でも出てきてもらわなければならない状況にあった旨証言している。NT,(,)Tドコモ大分支店のkは上記各証言と異なる内容の陳述乙13 をするが,同人は,自分たちがaに対し厳しく苦情を述べたせいでaが死亡したとの判断をされることを避けるため,虚偽の陳述をする可能性が強いのであり,上記陳述の信用性は乏しい。 また,cは,定時以降に福岡事務所にかかってきた電話は,aに転送されるようになっていた旨証言しており,iも同旨の陳述をしている。 -- ファンの構造的欠陥が判明したという事態を受けて,九州一円の200か所にのぼる中継所等のファントラブル等の苦情を24時間体制で,たった1人で受けていたことによるaの精神的負担は,想像を絶するものであったことが明らかである。とりわけ,発症前1か月目においては,aはファン交換のために12日間の出張をし,トラブル対応に追われていたのであり,量的にも質的にも仕事の要求度が過重であった上,トラブル発生に応じていつでも出動しなければならない状況が存し,自ら計画を立てて業,。 務を遂行することが困難であり仕事の裁量度は極めて低い状態であったさらに,上記のような過重負荷がかかる中,福岡事務所では,aが実質的,,責任者として業務を遂行すべき状態であったから上司の支援が得にくく途中採用されたcもaと同程度に職責 極めて低い状態であったさらに,上記のような過重負荷がかかる中,福岡事務所では,aが実質的,,責任者として業務を遂行すべき状態であったから上司の支援が得にくく途中採用されたcもaと同程度に職責を果たしうる状況ではなかったから,仕事への支援度も低かったのである。 イ控訴人は,原判決がaの時間外労働時間の増加を過大に評価しているとするが,新認定基準の45時間の目安を形式的に当てはめて非難するのは失当である。 新認定基準の45時間の目安は,あくまでも睡眠時間の確保の観点から導き出された目安時間であるに止まり,業務の過重性については精神的緊張の程度を含めて総合的判断をする必要がある。 福岡事務所へのファンの構造的欠陥に関する苦情の電話は24時間体制でaの携帯電話に転送されるしくみとなっていたため,aは,退社すれば仕事から解放されるというものではなかった。また,自宅における中継所等回りのルートの確認作業やファントラブルの原因究明のための回路図点検作業に要した時間を考慮すると,aの実際の労働時間は勤務予定線表などの資料に現われた労働時間数をはるかに上回るものである。このようなaが置かれていた状況を考えると,45時間の目安を形式的に当てはめることがaの業務実態にそぐわないことは明らかである。 -- 控訴人は,aの労働時間の算定にあたり,通勤時間,自宅滞留時間を勤務時間に含めているのは不当であると主張するが,出張の行き帰りの時間や,出張に向かう場合の準備時間は出張の行程の1つであって,勤務時間に含めて計算するのが常識であり,控訴人の主張は,出張についての理解不十分による形式的かつ表面的議論である。 ウ控訴人は,aの出張業務は,自らルート選択を行い,精神的緊張を伴わない1人ないし部下と2人による単純な作業であるから過大視すべきでないとす ついての理解不十分による形式的かつ表面的議論である。 ウ控訴人は,aの出張業務は,自らルート選択を行い,精神的緊張を伴わない1人ないし部下と2人による単純な作業であるから過大視すべきでないとするが,出張は,それ自体自己の生活圏や仕事圏内から離れた場所に行く精神的ストレスをもたらすものであり,業務の過重性の判断材料になることは明らかである上,aの出張業務は,自分で自動車を運転して見知らぬ土地の中継所等を捜しながら移動するという極めて精神的緊張を伴うものであり,業務の過重性の評価において重視できるものである。 エ控訴人は,原判決がaの出張における運転業務の過重性を過大評価しているとするが,aは,平成7年8月以降,ファンのトラブルが頻発するようになってからは1人で出張することが多くなり,同年10月6日には,大分出張に当たりdに運転手だけでも雇いたい旨申し出ていることからも,aがいかに運転に疲れていたかがうかがわれるのであり,控訴人の批判は当たらない。 オ控訴人は,原判決がファン交換の目的地が分かりにくい場所にあることを過大評価しているとするが,NTTドコモ大分支店のkや実際に現地に赴いたcも,中継所等の多くが地図に掲載されておらず,山間部にある旨述べている上,中継所等は九州一円に200か所もあったから,たまたまaの死亡前日の作業場所である中継所等が市街地や国道沿いに存在したからといって,へんぴな場所にはなかったということはできない。 カ控訴人は,脳・心臓疾患発症と業務との相当因果関係が認められるためには,業務による負荷が,平均的労働者にとって,血管病変等をその自然-- 経過を超えて著しく増悪させ得る程度の負荷であると認められること及び当該業務による負荷がその他の業務外の要因(当該労働者の私的危険要因など)に比較して相対的に て,血管病変等をその自然-- 経過を超えて著しく増悪させ得る程度の負荷であると認められること及び当該業務による負荷がその他の業務外の要因(当該労働者の私的危険要因など)に比較して相対的に有力な原因となって当該脳・心臓疾患を発症させたと認められることが必要であるとするが,控訴人の判断基準は,最高裁判決(平成12年7月17日第1小法廷判決)に照らしても,狭すぎる判断基準を設定するもので不当である。上記最高裁判決は,業務起因性を認定する要件として,業務が被災者の基礎疾患を自然経過を超えて増悪させる要因となり得る程度の負荷(過重負荷)のある業務であったと認められること,被災者の基礎疾患が,確たる発症の危険因子がなくてもその自然経過により脳・心臓疾患を発症させる程度にまで進行していたとは認められないこと,被災者には,他に確たる発症因子が認められないことの3点を示しており,一般経験則上,発症前に従事した業務による負荷が基礎疾患をその自然経過を超えて増悪させ,脳・心臓疾患を発症させたと認められれば相当因果関係を認めるという立場であると解することができ,医学経験則上,業務による負荷が基礎疾患をその自然経過を急激に著しく超えて増悪させ,脳・心臓疾患を発症させなければ相当因果関係を認めないという立場ではない。また,同僚等の労働者にとっても特に過重負荷と認められるか否かという点を検討対象としていない。このように,控訴人の判断基準は,上記最高裁判決の立場と相容れないもので不当である。 (2)aの基礎疾患と死亡との因果関係についてア控訴人は,原判決が従来aには心臓の基礎疾患が全く認められない旨認定したのは誤りであるとするが,被控訴人の記憶によると,aが肋間神経痛と思われる胸痛を訴えたのは,死亡する1,2年前ではなく,7,8年前のaが44,45 来aには心臓の基礎疾患が全く認められない旨認定したのは誤りであるとするが,被控訴人の記憶によると,aが肋間神経痛と思われる胸痛を訴えたのは,死亡する1,2年前ではなく,7,8年前のaが44,45歳ころのことで,痛みも胸がちくちくするという軽い程度のものであった(甲17)から,上記胸痛を心疾患の存在と結びつけることは困難であるし,平成7年9月19日の健康診断においても,aに-- は心電図の異常は認められていない。そもそもaに器質的心病変が潜在し,。 ていたとする控訴人の主張こそ医学的証明に基づかない推測にすぎないイ控訴人は,aが死亡する5日前に既に血管病変等を自然経過を超えて増,,悪させていたとの原判決認定は根拠が乏しいとするが被控訴人の供述はaを直接見る機会があった家族の供述であって極めて重要な証拠であるし,原判決は,当時aが置かれていた状況などを総合的に判断したのであり,上記認定は相当である。 (3)死亡時のaの身体状況及び死因について控訴人は,aの死因は多量の飲酒と低体温の相乗効果によるものであるとするが,前提事実を誤っている。 ア飲酒により,安静時狭心症発作が惹起されたとしている点についてb医師の意見書(乙7)は,aの死体検案時に採取した血液中のアルコール濃度が心血1ミリリットル中2.69ミリグラムであったことから,aが泥酔状態であったと推定するが,1ミリリットル中3.5ないし4. 5ミリグラムである場合や血中濃度0.31ないし0.40パーセントの場合をもって泥酔とする文献(甲15,16)も存する上,死体検案時の血中濃度が生前の血中濃度をそのまま示すとは限らず,死後のアルコール産生により濃度が高まることも有り得るから,上記死体検案時の血中アルコール濃度をもって,aが泥酔状態であったとするのは正確ではない。 中濃度が生前の血中濃度をそのまま示すとは限らず,死後のアルコール産生により濃度が高まることも有り得るから,上記死体検案時の血中アルコール濃度をもって,aが泥酔状態であったとするのは正確ではない。 さらに,aの体温が飲酒後数時間持続して喪失したという前提自体推測にすぎないのであって,aが放置された時間や摂取したアルコール量,就寝場所の気温などの複合的要素の相関関係により,血管の収縮状況が左右されるのである。これらを具体的に考察することなく,血管が収縮し安静時の狭心症発作が惹起されたと言いきることはできない。 むしろ,aには死亡する5日前に不安定狭心症をうかがわせる胸痛が出現したと認められるのであり,この当時,aの基礎疾患が高度に増悪して-- いたと考えられるから,業務起因性の判断に当たってはそのような増悪に何が関与したかを考察する必要がある。 イb医師の意見書(乙7)は,aが軽度ないし中等症の低体温状態にあったと推定するが,その具体的根拠が示されていない。また,f教授の意見書(乙16)においても,外気温が何度の場所に,どのような状態で何時間居れば,どの程度の低体温症を発症するのかに関しては,何ら具体的に示されていない。aの死亡当日の午前4時の大分市の外気温が摂氏13. 7度であっても,aが横臥していた屋内であるホテルビル1階の気温は不明であり,床部分の温度も不明であるから,aが低体温症を発症したとするのは,一般的可能性の域を超えるものではないのであり,aが低体温症を発症したか否かについて,科学的検討を施す前提を欠いている。 第3当裁判所の判断当裁判所は,aには心臓の基礎疾患が存した可能性があると推測されるが,aが従事していた業務による精神的肉体的負荷は,上記存在した可能性が推測される基礎疾患を自然経過を超えて著しく増悪させる要 の判断当裁判所は,aには心臓の基礎疾患が存した可能性があると推測されるが,aが従事していた業務による精神的肉体的負荷は,上記存在した可能性が推測される基礎疾患を自然経過を超えて著しく増悪させる要因となりうる程度に過重であったとは認められない上,aは,発症前日からの多量の飲酒により泥酔状態に陥った後,暖房がされていないホテルビル1階のタイル張りの床面に横臥して就寝したことにより,急激な体温低下及び飲酒により拡張した血管の収縮が生じ,このため心血管にも収縮が生じたことから,不整脈,心室細動などによる心筋機能障害をきたし,凍死した可能性が高いことから,aの心筋機能障害の発症は,同人が従事した業務に起因するものと認めることはできないと考える。 ,(,,,,, 前記争いのない事実等に加えて 証拠 甲1 8ないし12乙13ないし5,7ないし12,16,17,原審証人c,同j,原審における被控訴人本人,調査嘱託の結果)及び弁論の全趣旨によれば,次の事実を認めることができ,上記証拠のうち,同認定に反する部分はたやすく採用することができない。 -- (1)aの業務内容等アaは,昭和38年3月,電気通信設備の建設・保守を事業内容とする日本コムシスの前身である日本通信建設株式会社に入社し,その後,日本コムシス九州北支店の工事長(課長相当職)の地位にあったが,平成6年4月ころ,日本コムシス社員の身分を有したまま,同年3月下旬に設立された日本エリクソンの福岡事務所に技術職員として派遣され(賃金,出張旅費等は日本コムシスから支払われていた,必要に応じ,日本エリクソ。)ンの指揮命令を受けて就労していた。日本エリクソンは,親会社である大手電気通信機器製造業者エリクソンの日本における販売代理店であり,福岡事務所のほか,札幌 れていた,必要に応じ,日本エリクソ。)ンの指揮命令を受けて就労していた。日本エリクソンは,親会社である大手電気通信機器製造業者エリクソンの日本における販売代理店であり,福岡事務所のほか,札幌,名古屋,大阪に事務所を置いており,エリクソンが製造したMDEをNTTドコモに納入することを主たる業務としているところ,日本コムシスは,日本エリクソンのNTTドコモに対するMDE納入業務全般を請け負っていることから,aら社員を日本エリクソンの各事務所に派遣しているものである。 ,,,,福岡事務所の従業員は当初は所長のdのほかはaのみであったが同年5月に事務職員のiが,平成7年2月に技術職員のc(昭和▲年▲月▲日生)がそれぞれ加わり,aが死亡するまで,a,i及びcの3名が常駐していた。dは他の3か所の事務所の所長も兼務しており,2,3週間に1回程度しか福岡事務所に来所しなかったため,aは,事実上,福岡事務所の責任者的立場にあった。福岡事務所の担当地域は,九州全域及び沖縄であり,平成7年9月ないし10月当時,担当地域内に存するNTTドコモの中継所等は約150か所であった。 福岡事務所は福岡市<以下略>に所在するところ,aは,福岡県久留米市に居住しており,自宅と福岡事務所間の通勤には,バス及び電車等を利,。 用しており通勤所要時間は片道1時間30分ないし2時間程度であったなお,a死亡後の平成8年5月当時,福岡事務所には,男性技術職員3-- 名及び女性2名の従業員が常駐勤務して,平成7年10月当時の2倍程度に増設された約290か所の中継所等を担当していた。 イaの福岡事務所における業務内容は,エリクソンからNTTドコモに納()入するため搬入されたMDEを保管先である運送業者近鉄エクスプレスの倉庫において点検すること(以下 継所等を担当していた。 イaの福岡事務所における業務内容は,エリクソンからNTTドコモに納()入するため搬入されたMDEを保管先である運送業者近鉄エクスプレスの倉庫において点検すること(以下「事前点検業務」という,NTT。)ドコモの依頼に対応して,上記運送業者に指示して中継所等にMDEを納入すること,NTTドコモに納入したMDEのメンテナンス(機材の修理・交換,NTTドコモに対する報告,打合わせ等のトラブル対応全般)をすること(以下「保守対応業務」という)などであった。aは,重大な。 トラブルが生じたときなどに,日本エリクソン本社やdの指示を受けるものの,通常の業務や個別的な業務については,自らの判断で業務を行っていた。cの業務内容もaと同じであり,年長者であるaから指示を受けて業務を行っていたが,同人は,入社後の期間が浅く,MDEの各種のトラブルに対応するには技術及び経験が不足する面があり,また,自動車の運転免許を有していなかったため,公共交通機関の利用が不便な地域の中継所等には単独で出張することができなかった。 ,(。),事前点検業務は上記運送業者の倉庫冷暖房装置はないにおいて搬入されたMDEに不良品や輸送中の損傷がないかなどを点検するもので,1台当たり40分程度の時間を要するところ,搬入状況に応じて実施していた。平成7年8月ころからは,cが単独で事前点検業務を行えるようになっていた。 保守対応業務における修理等は,MDEが納入されている中継所等にレ(。)ンタカーなどで福岡事務所には業務用自動車が配置されていなかった出張して行うところ,中継所等は,山中,ビルやマンション等の屋上,NTT局舎内などに設置されており,特に基地局は,施設規模が小さく,多くが山中にあるため,市販の地図に載っていないことが多い なかった出張して行うところ,中継所等は,山中,ビルやマンション等の屋上,NTT局舎内などに設置されており,特に基地局は,施設規模が小さく,多くが山中にあるため,市販の地図に載っていないことが多い。出張して中-- 継所等に赴く際には,事前に現地のNTTドコモの支店を訪問し,打合せを行って中継所等の鍵を預かるほか,当該支店が準備した現地までの具体的な地図の交付を受けるなどしており,出発した後も当該支店と電話連絡をして現地付近の道順を確認することができたが,地理に不案内であるため分かりにくい場合もあり,中継所等を探し回ることもあった。中継所等に出入りする際には,警備の必要から,その都度,NTTドコモのオペレーションセンター(jは同センターのオペレーターである)に電話で連。 絡することとなっていた。出張の際,cがaに同行するか否かは,aが当該保守対応業務の内容や他の業務の繁忙度などを考慮して決め,cに指示していた。 保守対応業務におけるNTTドコモとの個別的連絡,打ち合わせ等は,aが,福岡事務所に常駐する実質的な責任者として対応していた。 (2)発症直前期のaの勤務及び生活状況等ア平成7年7月ないし8月ころ携帯電話の急速な普及に伴ってNTTドコモの中継所等が増設され,これに伴いMDEの搬入台数が急増したため,福岡事務所においても事前点検業務が増加した。さらに,MDEのROM能力を向上させるため,ROM及びファンを交換する必要が生じたところ,福岡事務所においても,7月中旬ころから8月上旬ころにかけて,順次計画的に,福岡県内の中継所等のROM及びファン交換の作業を行った。また,aは,日本エリクソンが全国から技術職員を集めて集中的に行うこととしたROM等の交換作業に従事するため,7月24日から同月28日にかけて大阪に,8月22日 ROM及びファン交換の作業を行った。また,aは,日本エリクソンが全国から技術職員を集めて集中的に行うこととしたROM等の交換作業に従事するため,7月24日から同月28日にかけて大阪に,8月22日から9月2日にかけては連続して名古屋及び北海道にそれぞれ出張し,上記ROM等の交換作業を行った。 aは,8月12日,トラブル対応のために自動車を運転して長崎の中継所等に出張するにあたり,jらを同人らの勉強のために同行したが,その-- 際,1人で運転して中継所等に赴くのは大変なので,県外に出張する際は息子にアルバイトとして運転を頼もうと思っている旨述べた。 イ平成7年9月ころ9月に入ると,エリクソンがドイツから輸入してMDEに組み込んだファンが停止するトラブル(以下「本件ファントラブル」という)が発生。 し始め,福岡事務所の担当地域においても本件ファントラブルが相次いで発生した。ファンが停止した場合,直ちに携帯電話の利用ができなくなるものではないが,これを放置しておくと,MDEがシステムダウンして,顧客が携帯電話を利用できなくなるおそれがあるため,NTTドコモから本件ファントラブル発生の連絡を受けると,aは,おおむね1日ないし2日以内,遅くとも1週間以内には,cを同行し,あるいは単独で現地に赴き,ファンの交換作業を行っていた。9月における本件ファントラブル発,(。 ),生等の対応等のためのaの出張状況は9月13日大分日帰りc同行(。 ),(。 同月14日ないし15日長崎1泊c同行同月17日沖縄日帰り現地でd及びスウェーデンの技師と合流,同月19日(大分日帰り。c)同行,同月26日ないし27日(宮崎1泊。c同行,同月28日(長))崎日帰り。ただし。長崎での作業終了後,新たにトラブル発生の連絡を受けた福岡市のα の技師と合流,同月19日(大分日帰り。c)同行,同月26日ないし27日(宮崎1泊。c同行,同月28日(長))崎日帰り。ただし。長崎での作業終了後,新たにトラブル発生の連絡を受けた福岡市のα局に立ち寄り,交換作業をして帰社。c同行)という内容であり,沖縄出張以外は,aが自動車を運転して移動した。 9月下旬ころ,本件ファントラブルの原因が,ドイツから輸入したファンの製造上の欠陥によるものであることが判明したことから,日本エリクソンは,上記ファンをすべて交換することとした。このため,福岡事務所においても,当時担当地域に設置されていた約150か所の中継所等のMDEほぼすべてについてファン交換作業をすることとなった。aは,同月,。 25日にNTTドコモに対し本件ファントラブルの対応状況を報告した福岡事務所では,担当地域における本件ファントラブルに係るファン交-- 換作業を順次計画的に行っていく方針であったが,NTTドコモから特定の中継所等で本件ファントラブルが現実に発生した旨の連絡が入ると,上記のとおり,顧客の携帯電話の利用に支障を生じるおそれがあるため,計画外でも当該中継所等に随時出張して対応する必要があった。aとcが同行して出張する場合,上記のとおり,cは自動車の運転ができないため,,,,aが自動車を運転するほか交換作業も自ら行ったことからcの役割は中継所等までの道程をナビゲートしたり,作業記録を記載する程度にとどまった。aが単独で出張するときは,その間,cが福岡事務所に残って事前点検業務等に従事したり,公共交通機関を利用して出張できる中継所等の保守対応業務に従事したりした。なお,ファン交換作業自体は,特別の技術を要するものでも,危険を伴うものでもなく,cも単独で作業するこ。 ,,とができたまた1回の作業所要時 て出張できる中継所等の保守対応業務に従事したりした。なお,ファン交換作業自体は,特別の技術を要するものでも,危険を伴うものでもなく,cも単独で作業するこ。 ,,とができたまた1回の作業所要時間は20分ないし30分程度であり中継所等のMDE設置場所は常時冷暖房による温度調整がされていた。 上記のとおり,9月13日ころから相次いで本件ファントラブルが発生したことから,福岡事務所は,週に2,3回の割合でNTTドコモの支店からトラブル発生の電話連絡を受けるようになった。上記電話には,ほとんどaが出て応対したが,中には早くトラブルに対応するよう催促されたり,厳しい口調で苦情を言われることもあった。 なお,福岡事務所の所定営業時間外(夜間や休日など)におけるNTTドコモからのトラブル発生等の緊急電話連絡は,aの携帯電話に転送される取扱いになっていたが,実際に,aが夜間や休日に上記緊急電話連絡を受けたり,夜間等に緊急に出動したという経緯は存しない。 aは,9月中旬ころから,それまでと異なり,妻である被控訴人,c,i及びjに対して,たびたび疲労を訴えるようになり,同月下旬ころからは,被控訴人に対して,不眠も訴えるようになったほか,一生懸命業務に従事していたのにエリクソンの部品が不良品であったことや日本コムシス-- のl部長から,その処理をa1人でやるように言われた旨を述べていた。 ウ平成7年10月2日(月曜日,発症日の10日前)aは,午前9時に出勤して福岡事務所で事務処理を行っていたが,午後4時30分ころ,NTTドコモ大分支店から,大分市所在のβ局で本件ファントラブルが発生した旨の電話連絡を受けたので,単独で同日中に大分に赴き,翌日に交換作業を行うこととした。そして,レンタカーの経費を削減してaの自宅から自家用車を運転して直接大分へ出張 局で本件ファントラブルが発生した旨の電話連絡を受けたので,単独で同日中に大分に赴き,翌日に交換作業を行うこととした。そして,レンタカーの経費を削減してaの自宅から自家用車を運転して直接大分へ出張することにし,その準備のため一旦帰宅した。aは,自宅で食事後,午後8時ころに自家用車で出発して午後11時ころ大分市に到着し,γに宿泊した。 エ平成7年10月3日(火曜日,発症日の9日前)aは,午前8時30分ころから午前9時30分ころまで,NTTドコモ大分支店で担当者と打合せを行い,自動車で上記β局に赴いてファン交換作業を終了した。その後,トラブル発生の連絡は受けていなかったが,同市所在のδ局及び大分県大分郡所在のε局にも赴いて,ファン交換作業を行い,午後10時ころ福岡事務所に戻って,翌4日午前0時30分ころ帰宅し,入浴もせずに就寝した。 オ平成7年10月4日(水曜日,発症日の8日前)aは,起床時に被控訴人に腰痛を訴え,湿布薬を求めた。aが午後から,,出勤すると言うので被控訴人が会社を休んで静養するよう促したところaは,福岡事務所に連絡して代休を取得し,自宅で横になって翌日のNTTドコモの担当者との打合せの準備をしていたが,夕方には頭痛を訴えて頭痛薬を求め,食欲もあまりないようであった。aが腰痛を理由に会社を休んだのは同日が初めてであった。 カ平成7年10月5日(木曜日,発症日の1週間前)aは,出勤時に被控訴人に胃痛を訴え,食事をせずに胃薬を飲んで出勤し,午前9時から福岡事務所において事務処理を行い,午後1時30分か-- ら午後5時30分まで,NTTドコモの担当者との打合せ及び運送業者の倉庫における調査を行った。上記打合せにおいて,本件ファントラブルに,,かかる交換作業についてはトラブルが続発して苦情が寄せられている上 30分まで,NTTドコモの担当者との打合せ及び運送業者の倉庫における調査を行った。上記打合せにおいて,本件ファントラブルに,,かかる交換作業についてはトラブルが続発して苦情が寄せられている上地理的にも不便なNTTドコモ大分支店管内の中継所等(12か所程度)について,早急に対応するため,aが大分に出張し,同月11日及び12日に集中的にファン交換作業(暫定的に旧式のファンに交換して対処するもの)を行うこととし,その間,cは福岡事務所に残り,他のトラブル発生の連絡等に対応することになった。dは,上記大分出張について,aに対し,日本エリクソンから応援人員を派遣することを提案したが,aは,上記応援人員は技術不足で手助けにならず,かえって指導する負担が増えると考えて,上記提案を断った上,出張中の自動車運転についてアルバイトを見つけたいと述べた。 上記打合せ後,aは福岡事務所で事務処理を行い,午後7時半ころ退社した。aは,帰宅後,被控訴人に疲労,頭痛及び不眠を訴え,翌日午前2時ころまで起きていたようであった。 キ平成7年10月6日(金曜日,発症日の6日前)aは,午前9時に出勤し,午前中はタクシーを利用して福岡市所在のζ局に機器を搬入し,午後は,午後5時30分まで,d,スウェーデンの技師及びiと共に,NTTドコモの技術部及び設備部の担当者を訪問し,MDEのファントラブルに関する会議に参加し,NTTドコモに対し,福岡。 ,,事務所における今後のファン交換作業の予定表を提出したその後aは午後6時から福岡事務所において,上記のとおり,早急に対応することとしたNTTドコモ大分支店管内への出張の準備をし,午後7時ころ退社した。aは,同日,dに対し,上記大分出張の際のアルバイト運転手として息子を雇いたい旨申し出て,日本エリクソン本社の許可を得たこと としたNTTドコモ大分支店管内への出張の準備をし,午後7時ころ退社した。aは,同日,dに対し,上記大分出張の際のアルバイト運転手として息子を雇いたい旨申し出て,日本エリクソン本社の許可を得たことから,その後,長男にも上記大分出張の際の運転を要請した。 -- aは,午後9時ころ帰宅し,孫を連れて帰省していた娘から顔色が悪いと指摘されて腰痛を訴えるとともに,NTTドコモからの苦情に日本エリクソン側として対応しなければならず,自分は日本コムシス側の人間であると言いたいが言えない立場であって神経的に参っており,夜眠れないこともある旨述べた。また,aは,孫を抱く際,左肩と腕の痛みを訴えた。 ク平成7年10月7日(土曜日,発症日の5日前)aは,この日は休日であったが,午前中,タクシーを利用してNTTドコモの久留米基地局(η局)に赴き,午後0時ころまで保守対応業務に従。 ,,,事したaは午後5時ころ帰宅し被控訴人に対してひどい頭痛を訴え頭痛薬を購入して服用した。また,aは,午後7時すぎころ,右手で胸の中心部を押さえて,被控訴人に対し「胸がキューと痛いんだ。締め付け,られる感じだ」と訴え,その際に被控訴人が言及した「○○」という薬。 を求めたが,自宅に買い置きがなかったため,服用しなかった。被控訴人は,aに対し,従前からの胃痛と異なり,胸痛であるなら重大な事である,()。 から休日明けの月曜日同月9日には必ず病院に行くように忠告したケ平成7年10月8日(日曜日,発症日の4日前)aは,午前7時ころ,これまでのいびきとは異なり,息が一瞬止まるような大きないびきをしていた。aは,この日は休日であったが,午前9時ころから自宅で九州地図を広げて中継所等の場所を調べるなどし,夕食後も午後10時ころから翌日午前1時ころまで なり,息が一瞬止まるような大きないびきをしていた。aは,この日は休日であったが,午前9時ころから自宅で九州地図を広げて中継所等の場所を調べるなどし,夕食後も午後10時ころから翌日午前1時ころまで調べものをしていた。aは,被控訴人の母に腰痛を訴えて湿布薬を求め,腰痛のため入浴もせずに就寝した。 コ平成7年10月9日(月曜日,発症日の3日前),,,aは午前9時に出勤し午前中は福岡事務所において事務処理を行いNTTドコモの久留米局から連絡を受けて,午後1時から電車を利用して同局に機器を持参し,午後4時に福岡事務所に帰着後,事務処理を行って-- 午後7時に退社した。aは,帰宅するなり,被控訴人に業務の多忙と疲労を訴えた。また,息子から,大学の授業があるため大分出張に同行できないとして運転のアルバイトを断られたことから,息子に対しても業務の多忙を訴え,落胆して食事もあまりとらず,自室に入り,そのまま入浴もせずに就寝した。なお,被控訴人が胸痛について病院に行ったのか尋ねたところ,aは,忙しくて行けなかったと答えた。 サ平成7年10月10日(火曜日,発症日の2日前)aは,同日は休日であったが,翌日からの大分出張の準備のため,早朝から自宅で書類の再点検を行った。午後6時40分ころ自宅を出て,午後8時ころ,福岡市中央区所在のレンタカー店で自動車を借りて大分市に向けて出発し,午後11時ころ大分市に到着して,γに宿泊した。 シ平成7年10月11日(水曜日,発症日の前日)aは,午前9時から,NTTドコモ大分支店において,担当者とファン交換作業の打合せを行った後,午後6時ころまで自動車を運転して,以下のとおり,大分県の6か所の中継所等を回り,ファン交換作業を行った。 aは,午前9時30分ころjに電話連絡をし,その際「今日は5,6局,。 の打合せを行った後,午後6時ころまで自動車を運転して,以下のとおり,大分県の6か所の中継所等を回り,ファン交換作業を行った。 aは,午前9時30分ころjに電話連絡をし,その際「今日は5,6局,。 。 ,回る予定ですもうすごく体がきついよ仕事ができる人数がいないので今上司の人とけんかするぐらい言ってるんだよ。こんなにたくさん回っているのに,またエリクソンがパネルの交換を言ってきて150局くらいを。 。」。 僕が行かなくてはいけないんだよもう疲れたよと疲れた声で話した「。 。」,jが大丈夫ですかあまり無理をしないで下さいねと言ったところaは「ありがとう。でも本当にきついんだよ」と言って電話を切った。 ,。 午前10時25分ころθ無線中継所(速見郡<以下略>)午後0時34分ころ宇佐基地局(宇佐市)午後1時30分ころ中津基地局(中津市)午後2時35分ころι基地局(宇佐郡<以下略>)-- 午後4時00分ころκ無線中継所(速見郡<以下略>)午後5時20分ころλ無線中継所(杵築市)aは,午後6時ころファン交換作業を終え,午後7時ころ中継所等の鍵を返還するためにNTTドコモ大分支店に戻った。なお,上記λ無線中継所は,翌12日に作業を予定していたが,aの判断で,前倒しで11日の作業に追加して実施したものである。 aは,作業出発前に同支店の従業員であるk及びhに対し,本件ファントラブルのお詫びをかねて飲食の誘いをしていたので,勤務終了後の午後7時30分ころから午後10時30分ころまで,k及びhとともに,大分市内の居酒屋で飲食した。aは,同店において,生ビール大ジョッキ1杯と麦焼酎(アルコール度は25度)のお湯割り(お湯と焼酎の割合は6:4)3,4杯を飲んだ。その際,aは,楽しそうに話し,ファンの不具合の原因 屋で飲食した。aは,同店において,生ビール大ジョッキ1杯と麦焼酎(アルコール度は25度)のお湯割り(お湯と焼酎の割合は6:4)3,4杯を飲んだ。その際,aは,楽しそうに話し,ファンの不具合の原因,携帯電話市場の未来,無人局の場所,aの海外勤務時代のことなどが話題に上ったが,心から疲れている様子であった。 上記飲食店を出た後,a,k及びhは,近くの飲食店に行き,午後10時50分ころまで飲食し,3名合計でビール中瓶2本を飲んだ(ただし,うち1本は飲み干していない。なお,上記両飲食店の飲食費は,すべ。)てaが支払い,1店目では日本エリクソン名義で,2店目では日本コムシス名義の領収証を発行してもらった。 ,,「。」2店目の飲食店を出た後kらはaからどこかお店を知らないかと聞かれ,aが飲み足りなさそうであると感じたが,kは,夜も遅いし,aには翌日も交換作業が予定されていたことから「もう休んだ方がいい,ですよ」と答え,まだ宿泊先を確保していないというaを目前にあった。 ホテルに連れて行こうとしたが,aはこれを断り,午後11時ころ,kらと別れ,飲屋街の方に去って行った。 ス平成7年10月12日(木曜日,発症当日)-- 午前4時5分ないし10分ころ,aは,kらと別れた場所から徒歩約5分の距離にあるホテルμが入居しているビル1階内のブティックの出入口付近のタイル張り床の上に,左右の靴を脱ぎ,自分の鞄を肩から頭部の下に敷いて仰向けの状態で横になり,口から泡を吹いて死亡しているのを同ホテルの従業員に発見された。午前4時39分ころ,通報を受けた警察官が臨場し,その後到着した消防署の救急隊員がaの死亡を確認した後,同所で医師によるaの死体検案が行われたが,同医師は,aの直接死因は急性虚血性心疾患の疑いであり,その原因については詳 を受けた警察官が臨場し,その後到着した消防署の救急隊員がaの死亡を確認した後,同所で医師によるaの死体検案が行われたが,同医師は,aの直接死因は急性虚血性心疾患の疑いであり,その原因については詳細不明であって,死亡推定時刻は午前4時ころであり,発症から死亡までの時間については短時間である旨診断した。死体検案時,遺体に外傷はなく,背面に暗紫赤色の死斑(指圧で消える,弱ないし中等の死後硬直が確認され,アルコー)ル臭がしていた。また,採血をして,警察において血中アルコール濃度を検査した結果,aの心血1ミリリットル中2.69ミリグラムのアルコールが検出された。 上記のとおり,aに外傷は認められず,着衣や所持品等にも異常が認められなかったことから,犯罪被害などの事件性が認められず,被控訴人ら遺族からの要請もなかったので,遺体の解剖は実施されなかった。上記医師は,福岡中央労働基準監督署が平成8年7月ないし8月に行った意見照会及び面接照会に対し,死体検案時に,aがホテルビル1階フロアの隅にうずくまるようにして死亡しているところを発見されたと聞いたこと,死因については,警察からaが生来健康であった旨聞いたこと及び髄液を採取した結果,血液が混ざっていなかったので脳疾患ではないことから,急性心臓死と推定したが,aが小太りの体格であったので急性虚血性心臓死の可能性が高いと判断した旨,上記死因の診断は正確なものではなく疑いに止まる旨,死亡推定時刻は,死後硬直及び死斑の状態から推測した旨回答した。 -- ,,,aの遺体が発見された上記ホテルビルは飲食店街にありその1階は上記ブティックや喫茶店等の店舗が入居しており,道路に面した南側及び北側にそれぞれ1か所ずつ自動ドアがあり,夜間暖房は作動していなかった。上記自動ドアからの出入りは24時間可 食店街にありその1階は上記ブティックや喫茶店等の店舗が入居しており,道路に面した南側及び北側にそれぞれ1か所ずつ自動ドアがあり,夜間暖房は作動していなかった。上記自動ドアからの出入りは24時間可能であることから,北側道路と南側道路間の通り抜け通路として事実上利用することができるところ,夜間にホームレス等が入り込んでいるとして苦情が出たことがあった。上記喫茶店は午前0時ころまで,上記ビルの3,4階の飲食店は午前2時ころまで営業しているが,平成7年10月12日については,1階に人が倒れている等の報告や苦情はなかった。なお,aは上記ホテルに宿泊しておらず,宿泊予約をした事実もない。 大分地方気象台の観測によると,同日の午前1時,同2時,同3時及び,. ,. ,同4時の大分市の地上気温はそれぞれ摂氏154度摂氏147度摂氏14.3度,摂氏13.7度であり,同日の最低気温は,午前6時の摂氏13.0度であった。 aは,同日は,午前中から大分県南部所在の約6か所の中継所等を順に回り,ファン交換作業をする予定であった。 (3)発症直前期のaの労働時間,出張日数等及び休日日数ア労働時間福岡事務所は,始業午前9時,終業午後5時30分で,午後0時から午後1時までの1時間が休憩時間であり,1日の所定労働時間は7時間30。 ,。 ,分である所定休日は毎週土曜日及び日曜日並びに祝祭日であるまた労働時間の管理は,自己申告により行われており,各自が所定の「勤務予定線表」に実際に労働した時間を記入することになっていた。 aの勤務予定線表の記入内容を,c及びiの勤務状況並びにaの交通費支出調書等の資料を総合して補充・訂正すると,発症直前期のaの労働時間は,次のとおりである。 -- (ア)平成7年7月14日から同年8月12日まで(発 を,c及びiの勤務状況並びにaの交通費支出調書等の資料を総合して補充・訂正すると,発症直前期のaの労働時間は,次のとおりである。 -- (ア)平成7年7月14日から同年8月12日まで(発症前3か月目)総労働時間178時間30分,時間外労働時間12時間30分(イ)同年8月13日から同年9月11日まで(発症前2か月目)総労働時間185時間,時間外労働時間36時間30分(ウ)同年9月12日から同年10月11日まで(発症前1か月目)総労働時間227時間30分,時間外労働時間51時間30分なお,労働基準法32条規定の1日当たり8時間,1週間当たり40時間を超えた労働時間を時間外労働時間とした。また,1か月間を30日とし,発症前5週間目において,発症前31日目から始まる5日間に休日を取得していない場合は,発症前29日目及び30日目は休日労働とみなしてその労働時間をすべて時間外労働時間とし,休日を1日取得している場合は,発症前29日目及び30日目の労働時間の合計から8時間を,休日を2日取得している場合は,これから合計16時間を控除した労働時間を時間外労働時間として算出した。 イ出張日数等(ア)平成7年7月14日から同年8月12日まで(発症前3か月目)aは,同期間中7日間,県外出張を行い,このうち7月24日から28日までの大阪,8月2日及び3日の北九州の各出張は宿泊を伴うものであって,北九州への出張以外は,1人での出張であった。 (イ)同年8月13日から同年9月11日まで(発症前2か月目)aは,同期間中14日間,県外出張を行っており,このうち8月22日から26日までの名古屋,同月28日から9月2日までの北海道の各出張は宿泊を伴うものであり,9月5日の大分,同月11日の長崎の各出張以外は1人での出張であった。なお,8月27日の このうち8月22日から26日までの名古屋,同月28日から9月2日までの北海道の各出張は宿泊を伴うものであり,9月5日の大分,同月11日の長崎の各出張以外は1人での出張であった。なお,8月27日の札幌での休日を含めると,同月22日から9月2日まで11泊12日間にわたって自宅を離れていた。 -- (ウ)同年9月12日から同年10月11日まで(発症前1か月目)aは,同期間中12日間,県外出張を行っており,このうち9月14日及び15日の長崎,同月26日及び27日の宮崎,10月2日及び3日の大分,同月10日及び11日の大分の各出張は,宿泊を伴うものであった。 そして,県外出張のうち,10月2日及び3日の大分,同月10日及び11日の大分の各出張は,1人での出張であった。 ウ休日日数aは,平成7年7月14日から同年8月12日まで(発症前3か月目)の間に8日,同年8月13日から同年9月11日まで(発症前2か月目)の間に10日,同年9月12日から同年10月11日まで(発症前1か月目)の間に6日(9月23日,同月24日,同月30日,10月1日,同月4日(代休,同月8日)の休日を取得した。 )(4)aの健康状態等アaは,発症当時53歳の男子であり,発症約3週間前である平成7年9月19日の健康診断時,身長154.1センチメートル,体重58.9キログラム,肥満度(BMI)プラス21パーセントで肥満傾向にあった。 また,高血圧はみられず,総コレステロールは標準値内であるが,中性脂. (),肪は1790mg/で標準値50ないし140mg/を超えておりŒŒγ-GTPは125.0IU/と高値であり(標準は11ないし50IU/•)であり,胸部検査及び心電図に異常所見は認められなかった。 •なお,aは,平成6年9月22日の健康診 を超えておりŒŒγ-GTPは125.0IU/と高値であり(標準は11ないし50IU/•)であり,胸部検査及び心電図に異常所見は認められなかった。 •なお,aは,平成6年9月22日の健康診断の際,眼の疲れ,耳鳴,息切れ動悸脈の乱れ喉のつかえ及び背中の痛みについていずれも時,,,,「々ある」と申告しており,又,aは,死亡する1,2年前,被控訴人に対し,胸がちくちくするとして軽い胸痛を訴えたことがあるが,平成3年以降上記平成7年までの健康診断において,心電図に異常所見が認められた-- ことはなかった。 ,,,イaは1日10本ないし20本の煙草を吸い喫煙歴は30年間であり1日に1合から2合の焼酎を飲む習慣があった。 ウaは,まじめな性格で,MDEのトラブルに対しても,機材を交換するだけではなく,回路図等を見てその原因を究明しようとしたり,出張に際しては,短時間で効率よく作業を行い,できるだけ多数の中継所等を回ろうとするなど,仕事熱心であった。自分1人ですべて処理しようとし,自分を追いつめるようなところもあった。 aは,上司であるdから仕事に真剣に取り組む頑張り屋であると評価さ,。 れており取引先のNTTドコモからも仕事振りについて信頼を得ていたまた,aは,平成7年9月以前には,c及びiに対して,業務による疲労を訴える等弱音を漏らすことはなかった。 (5)虚血性心疾患についての医学的知見ア虚血性心疾患は,血液を供給する導管としての冠状動脈の血流障害によって,心筋の需要に応じた酸素の供給不足が生じ,その結果,心筋が酸素不足(虚血)に陥り,心筋機能が障害される心臓疾患であり,心筋梗塞,狭心症などがある。血流障害は,冠状動脈の硬化や血栓等の形成による冠状動脈の狭窄又は完全閉塞などによって生じるもの 結果,心筋が酸素不足(虚血)に陥り,心筋機能が障害される心臓疾患であり,心筋梗塞,狭心症などがある。血流障害は,冠状動脈の硬化や血栓等の形成による冠状動脈の狭窄又は完全閉塞などによって生じるものであり,冠状動脈硬化症は慢性的な経過で進行して疾患の終末期に虚血症状が出現し,過度の身体的負荷,精神的負荷等が引き金因子となることもあるとされている。 そして,虚血性心疾患に関しては,高血圧,喫煙習慣,高脂血症の3大危険因子のほか,肥満,精神的肉体的ストレスなどが危険因子とされている。職業性ストレスは,虚血性心疾患の危険因子の一つであって,発症に強い影響を及ぼすものであり,その相対的危険度は1.3倍から4倍である旨の報告もある。職業性ストレスの評価に当たっては,仕事の負荷・責任などの仕事の要求度,仕事を行う上での裁量度,上司や同僚の支援度な-- どの要因が視点となるとされている。 イ虚血性心疾患を含む脳・心臓疾患は,血管病変等の形成,進行及び増悪によって発症するものであり,このような血管病変等の形成等には,主に加齢(男性45歳以上,食生活,生活環境等の日常生活による諸要因や)遺伝等の個人に内在する要因(基礎的要因)が密接に関連するとされている。すなわち,脳・心臓疾患は,このような基礎的要因によって生体が受ける通常の負荷により,長年の生活の営みの中で,徐々に血管病変等が形成,進行及び増悪するといった自然経過をたどって発症に至るものとされているが,そのような自然経過の過程において,業務が血管病変等の形成に当たって直接の要因とはならないものの,業務による過重な負荷が加わることによって発症の基礎となる血管病変等がその自然経過を超えて著しく増悪し,脳・心臓疾患が発症する場合があるとされている。 (6)アルコール摂取及び偶発性低体温症につい 業務による過重な負荷が加わることによって発症の基礎となる血管病変等がその自然経過を超えて著しく増悪し,脳・心臓疾患が発症する場合があるとされている。 (6)アルコール摂取及び偶発性低体温症についての医学的知見アアルコール摂取について血中アルコール濃度(以下,単位は㎎/である)が1.5ないしml。 2.5の場合,判断力低下,運動失調,興奮・麻痺の症状が現れる酩酊とされ,2.5ないし4.0の場合は,意識障害,構音障害,低体温の症状が現れる泥酔とされ,4.0以上の場合,昏酔,呼吸抑制,血圧低下の症状が現われ,死亡に至るとされており,3.5ないし4.5の場合,重篤な低血糖,低体温となり,死の危険性が大きいとされている。また,泥酔の場合のアルコール飲用量は,清酒1升又はビール大瓶8本ないし10本程度に相当するところ,清酒1升に含まれるアルコール量は288ミリリットルとされている。 イ偶発的低体温症について(ア)偶発的低体温症は,直腸温などの身体深部温度である核心温度が故意によらず偶然に摂氏35度以下に低下することと定義されており,気-- 温に加え,薬物やアルコール摂取と深い関係がある。体温が摂氏35度以下になると,身体の総合的な体温調節機能が失われ,死亡率は体温低下に伴って上昇する。ほとんどの症例が摂氏11度以下で発症しているが,酩酊状態の場合,後記ウのとおり,屋外で,気温摂氏15度ないし19度でも凍死した例が確認されている。 身体症状は,体温低下とともに進行し,核心温度が摂氏30ないし29度になると,漸次意識が喪失し,脈拍・血圧測定が困難となり,呼吸数も減少し,核心温度が摂氏26ないし25度で致命的な心室細動が出現し,核心温度が摂氏24度で呼吸機能の重度障害による肺水腫を起こし,核心温度が摂氏22ないし21度になると 圧測定が困難となり,呼吸数も減少し,核心温度が摂氏26ないし25度で致命的な心室細動が出現し,核心温度が摂氏24度で呼吸機能の重度障害による肺水腫を起こし,核心温度が摂氏22ないし21度になると心室細動が頻発し,核心温度が摂氏20度近くで死亡するとされている。 (イ)体温は,核心温度と身体の外層部の外殻温度に大別され,人体における産熱の主座は骨格筋であり,放熱の主座は皮膚であるところ,気温の低い場所で冷たい路面等に寝た場合,保温処置がされていなければ,寝込みによる骨格筋の運動減少・停止により,産熱が著しく低下するとともに,放熱が一方的に強く進行して体温の低下が急速に進行し,核心温度も低下する。冠状動脈は,皮膚血管と同様に反応するので,体表の血管が低温暴露により収縮すると,冠状動脈も収縮する。この場合,もともと冠状動脈に硬化狭窄があると,低温暴露の際に,冠状動脈内腔の狭窄はいっそう強まり,死亡を早める要因となる。 ウアルコールの摂取と低体温についてアルコール摂取は,皮膚の血管を拡張させ,体熱の対外発散を著しく高める上,特に酩酊時には,寒冷感覚の麻痺により対寒防御機能が低下し,体温低下が急速に進行する東京都監察医務院の報告によると酩酊者血。 ,(中アルコール濃度1.5ないし2.5)では,外気温摂氏15度ないし19度でも凍死することが確認されており,剖検時の凍死者の血中アルコー-- ル濃度は,1.5ないし2.4の中等度酩酊が多いが,40歳代ないし50歳代の場合は,2.5以上の強度酩酊の場合が多いとされている。 ,,,また飲酒の心臓疾患に対する影響について飲酒時に拡張した血管は飲酒後数時間持続して体温が喪失すると,それに対する生体防御的な自律神経反射として収縮し,飲酒後数時間経過後の安静時に狭心発作が惹起されるという の心臓疾患に対する影響について飲酒時に拡張した血管は飲酒後数時間持続して体温が喪失すると,それに対する生体防御的な自律神経反射として収縮し,飲酒後数時間経過後の安静時に狭心発作が惹起されるという報告もある。 エ死亡推定時刻について死後硬直及び死斑は,死後2時間ないし3時間経過後に出現する。生前に肺水腫を発症した場合,口から泡を吹く現象が認められるのは死後数時間経過後である。 aの業務と死亡(心筋機能障害発症)との相当因果関係について(1)前記1のとおり,aは,平成6年4月ころ日本エリクソンの福岡事務所に技術職員として派遣され,以後,NTTドコモに納入するMDEの事前点検業務及び保守対応業務などに従事していたこと,所長のdは,福岡事務所に常駐しておらず2,3週間に1回来所する程度であり,もう一人の技術職,,員であるcは入社後の期間が浅く技術及び経験が不足する面があったためaは,事実上,福岡事務所の責任者的立場にあり,通常の業務や個別的業務の処理についてはaが判断し,自らあるいはcに指示して行っていたこと,福岡事務所の担当地域は,九州全域及び沖縄であり,平成7年9月ないし10月ころ,上記担当地域内に存する中継所等は約150か所あり,専らa及びcの2名で,担当地域における事前点検業務及び保守対応業務を処理していたこと,同年7月ころ,携帯電話の急速な普及に伴って,事前点検業務が増加していた上,機材の能力向上のためROM等の交換作業を行うことになり,aとcは,同月中旬から同年8月上旬にかけて,福岡県内の中継所等に出張して,計画的に上記交換作業を行ったほか,aは,同年7月下旬から同年9月初旬にかけて,それぞれ5日間程度の日程で,大阪,名古屋及び北海-- 道に出張し,全国から技術職員を集めて集中的に行われた上記交換作業に従 換作業を行ったほか,aは,同年7月下旬から同年9月初旬にかけて,それぞれ5日間程度の日程で,大阪,名古屋及び北海-- 道に出張し,全国から技術職員を集めて集中的に行われた上記交換作業に従事したこと,同年9月中旬ころから,今度は,担当地域において本件ファントラブルが相次いで発生したため,保守対応業務として本件ファントラブル対応業務が加わり,aとcは,本件ファントラブル発生の連絡を受けると,顧客の携帯電話の利用に支障が生じないよう,おおむね1日ないし2日以内,,,には当該中継所等に出張してファン交換作業を行ったことこのためaは同年9月13日から同月28日までの16日間に,トラブル発生の連絡に対応して,大分日帰り,長崎1泊,沖縄日帰り,大分日帰り,宮崎1泊及び長崎日帰りの各出張(沖縄出張以外は,いずれもcを同行したが,同人は運転ができないため,aが終始自動車を運転して移動した)を行ったほか,同。 年10月2日にも,本件ファントラブル発生の連絡を受けて,同日から大分に単独で1泊の出張をしたこと,aは,NTTドコモからのトラブル発生の連絡に福岡事務所の実質的責任者として応対し,厳しい口調で苦情を言われることもあったこと,また,aは,同年9月下旬ころ,本件ファントラブルの対応状況の報告等を行ったほか,今後のトラブル対応について,同年10月5日には打合せに,翌6日には,所長であるd及びスウェーデンの技師らとともに会議にそれぞれ出席し,本件ファントラブルが続発して苦情が寄せられ,地理的にも不便なNTTドコモ大分支店管内の中継所等(12か所程度)のトラブル対応を早急に実施することを含めた,ファン交換作業の予定表を提出したこと,そして,同月6日ころから準備をした上,同月11日及び12日に集中的にファン交換作業を行うため,同月10日の夜か 度)のトラブル対応を早急に実施することを含めた,ファン交換作業の予定表を提出したこと,そして,同月6日ころから準備をした上,同月11日及び12日に集中的にファン交換作業を行うため,同月10日の夜から大分に単独で出張し,心筋機能障害発症の前日である翌11日に,合計6か所の中継所等のファン交換作業を行ったこと,aは,本件ファントラブルが発生した同年9月中旬ころから,それまでとは異なり,家族や同僚らに疲労を訴えるようになったほか,被控訴人ら家族に対しては,さらに腰痛,頭痛,不眠や胸痛などの症状を訴えて,頭痛薬を服用していたこと,上記大分出張にあ-- たり,息子に自動車運転のアルバイトを依頼したが,断られたため落胆していたこと,本件ファントラブルにつき,NTTドコモに対しては,派遣先である日本エリクソンの職員として対応しなければならない辛さや,日本コムシスが本件ファントラブル対応人員を補充しないことへの不満などを訴えていたこと,心筋機能障害発症前3か月間におけるaの労働状況は,発症前3か月目(同年7月14日から同年8月12日まで)は,総労働時間178時間30分,時間外労働時間12時間30分,県外出張合計7日間,休日合計8日であり,発症前2か月目(同月13日から同年9月11日まで)は,総労働時間185時間,時間外労働時間36時間30分,県外出張合計14日間,休日合計10日であり,発症前1か月目(同月12日から同年10月11日まで)は,総労働時間227時間30分,時間外労働時間51時間30分,県外出張合計12日間,休日合計6日間(このうち,発症前1週間の休日は1日)であったこと(なお,控訴人は,上記発症前1か月目のaの労働時間には,勤務時間に含めるべきでない通勤時間や自宅滞留時間が含まれて,,,いるからこれらを控除すべきであると 前1週間の休日は1日)であったこと(なお,控訴人は,上記発症前1か月目のaの労働時間には,勤務時間に含めるべきでない通勤時間や自宅滞留時間が含まれて,,,いるからこれらを控除すべきであるとするが控訴人が指摘するところはいずれも県外出張の際に,通常の通勤の場合よりも,早出したり,遠方まで移動した場合や,出張先での業務遂行の円滑や移動経費削減のためいったん帰宅し,自宅から自家用車で出発した場合等であるところ,これらはいずれも出張業務の遂行に通常伴う拘束時間であると認められ,その相当範囲を逸脱しているというべき事情もうかがえないから,出張行程の一環と解するのが相当であり,労働時間から控除すべきであるとまでは認められない)が。 認められる。 (2)労働者災害補償保険法による保険給付の一種類である遺族補償年金給付及び葬祭料が支給されるには,労働者に生じた傷病等が「業務上(同法7」条1項1号,労働基準法75条)のものであること,すなわち,当該傷病等と労働者が従事していた当該業務との間に相当因果関係が認められる必要が-- あるところ,上記相当因果関係が認められるためには,労働者が従事していた業務に内在ないし通常随伴する危険の現実化として,当該傷病等が発症したものと認められることが必要であると解され,当該傷病等が脳・心臓疾患である場合は,労働者が発症前に従事した業務による精神的肉体的負荷が血管病変等をその自然経過を超えて著しく増悪させ,脳・心臓疾患を発症させたと認められることが必要であると解される。 そして,業務による精神的肉体的負荷の過重性の評価においては,労働時間の長さは,業務量の大きさを示す指標であり,過重性の評価の最も重要な要因であるから十分に考慮すべきであるが,さらに,勤務実態,作業環境及び精神的緊張の状態等を具体的か 重性の評価においては,労働時間の長さは,業務量の大きさを示す指標であり,過重性の評価の最も重要な要因であるから十分に考慮すべきであるが,さらに,勤務実態,作業環境及び精神的緊張の状態等を具体的かつ客観的に把握検討し,総合的に判断する必要があるところ,新認定基準(甲12)は,医学などの専門家による検討結果を踏まえて,業務による明らかな過重負荷と認められるものを,脳・心臓疾患発症直前の異常な出来事,同発症前1週間の短期間における過重業務及び長期間の過重業務の3つに区分し,各認定基準を整備しているところ,上記区分のうち長期間の過重業務については,疲労の蓄積が基礎的病態等をその自然経過を超えて著しく増悪させ,上記疾患の発症に至ることがあることを前提として,発症前おおむね6か月間を評価期間とし,著しい疲労をもたらす特に過重な業務に従事したかについて業務量,業務内容,作業環境等を考慮することとし,過重負荷の目安としての労働時間数については,1週40時間を超える時間を時間外労働時間として,同時間が1か月当たりおおむね45時間(45時間の目安)を超えて長くなるほど業務と上記疾患の発症との関連性が徐々に強まると評価できるとした上で,時間外労働時間が発症前1か月間におおむね100時間又は発症前2か月間ないし6か月間にわたって1か月当たりおおむね80時間を超える場合は,業務と発症との関連,。 性が強いと評価できることからこれを踏まえて判断することとされている(3)そこで,新認定基準を踏まえて,aの労働状況について検討する。 -- ア前記認定のとおり,aは,発症前日は,地理不案内な県外の出張先において,単独で自動車を運転して移動し,1日で合計6か所の中継所等でフ,,,ァン交換作業を集中的に行っており作業は多量であったが上記出張は同年1 ,aは,発症前日は,地理不案内な県外の出張先において,単独で自動車を運転して移動し,1日で合計6か所の中継所等でフ,,,ァン交換作業を集中的に行っており作業は多量であったが上記出張は同年10月6日ころから日程,作業か所,作業内容を計画し,予め準備をしていたもので,当日はNTTドコモ大分支店で担当者との打合せを経て作業に出発しており,ファン交換作業自体はaにとって手慣れたものであること,aが,翌日に予定していたλ無線中継所の作業を前倒して行い,勤務終了後には,同支店担当者を誘って飲酒していることに照らすと,発症前日の作業は,内容,行程ともに円滑に遂行できたものと認められ,業務上,異常な出来事が発生したということはないし,発症前1週間は,福岡事務所における事務処理,NTTドコモ担当者との打合せや会議(会議),,には所長であるdが同席大分出張の準備等を中心とする業務に従事しおおむね午後7時ころまでに退社しており,日常業務に比較して,特に過重な精神的肉体的負荷を生じさせる業務に従事したというべき事情は存しない。 イ次に,発症前3か月間の労働状況について検討する。 (ア)携帯電話の急速な普及に伴い事前点検業務が増加していることに加え,平成7年7月中旬から,機材の能力向上のためのROM等交換作業のため,cとともに担当地域である福岡県内を順次出張して作業したほか,単独で1か所5日間程度の日程で3か所の県外出張をして,集中的,,な上記交換作業に従事しさらに同年9月中旬から同年10月初旬まで本件ファントラブルが相次ぎ発生したため,不定期に入るトラブル発生の連絡に即応して,県外出張を繰り返したことから,発症に近づくに連れ,1か月毎の総労働時間及び時間外労働時間が増加し,特に発症前1か月目の時間外労働時間は,45時間の目安を超過する 入るトラブル発生の連絡に即応して,県外出張を繰り返したことから,発症に近づくに連れ,1か月毎の総労働時間及び時間外労働時間が増加し,特に発症前1か月目の時間外労働時間は,45時間の目安を超過する51時間30分に及んでいること,上記業務量の増加に対応して,aは,同年9月中旬-- ,,,ころから家族や同僚らに疲労や体調不良を訴え頭痛薬を服用したり出張時の自動車運転の負担を軽減しようと,息子に運転のアルバイトを要請しているところ,発症前1か月目の時間外労働時間は新認定基準において業務と発症の関連性が強いと評価される労働時間(1か月おおむね100時間)の約2分の1程度に止まり,発症前3か月間の時間外労働時間をみても,1か月平均が33時間30分であり,業務と発症との関連性が指摘される1か月当たりおおむね80時間に満るところでないし,加えて,aの前記業務の遂行が,日常の業務の範ちゅうにとどまるところであることも勘案すると,この間のaの業務が特に過重であったということはできない。 (イ)そこで,さらにaの勤務実態について検討する。 事前点検業務は,aが福岡事務所に派遣された当初から従事してきた日常的業務であり,作業量が増加したことにより,納入期限が切迫し処理に追われていたなどというべき具体的事情はうかがえない上,前記認定のとおり,平成7年8月ころからはcが単独で事前点検業務を行えるようになっており,事前点検業務増加による負担がaに集中したとする経緯は認められない。 また,同年7月中旬から,保守対応業務に,機材の能力向上のためのROM交換作業が加わったが,福岡事務所の担当地域における上記作業については,順次計画的に実施されているところ,aは,福岡事務所の責任者的立場にある者として,自分やcの勤務状況を踏まえて無理のない作業計画を 作業が加わったが,福岡事務所の担当地域における上記作業については,順次計画的に実施されているところ,aは,福岡事務所の責任者的立場にある者として,自分やcの勤務状況を踏まえて無理のない作業計画を立てるなどの裁量が可能であったものとうかがえるし,aが大阪,名古屋及び北海道へ相次いで県外出張している点については,上記県外出張により11泊12日間にわたって自宅を離れた期間も存するが,上記出張中の業務は応援人員として従事したものであり,作業の量や内容が特に精神的肉体的負担の大きいものであったというべき事情-- はうかがえないし,出張の前後において休日が確保されており,特に過重な業務形態が続いていたと認めることもできない。 そして,同年9月中旬ころから本件ファントラブルが相次いで発生したため,aは,同年9月13日から同年10月3日まで間に,7回出張して本件ファントラブル等に対応しているが(なお,同年9月11日から同月22日までの12日間は連続勤務し,この間に5回の県外出張をしている,上記トラブル対応のための出張は,不定期に入るトラブル)発生の連絡に対応して,おおむね1日ないし2日以内にはトラブルが発生した中継所等に出張していたもので,このような本件ファントラブルは,いつどこで発生するか予測がつかないため,計画的,効率的な対応ができない上,同年9月中旬以降,本件ファントラブルが担当地域の広範囲において続発したことから,通常の保守対応業務に比して業務量が増大したことが認められないではないが,本件ファントラブル対応業務の内容及び形態は,aが従前から日常的に担当してきた保守対応業務と格別に異なるものでないし,心筋機能障害発症前において,aが本件ファントラブル対応のため,随時出張した期間は,上記のとおり,同年9月13日ころから同年10月3 から日常的に担当してきた保守対応業務と格別に異なるものでないし,心筋機能障害発症前において,aが本件ファントラブル対応のため,随時出張した期間は,上記のとおり,同年9月13日ころから同年10月3日ころまでの21日の期間に止まり,その後は,原因が判明した本件ファントラブルの対応方について,NTTドコモとの打合せ及びdが出席した上での会議を経て,ファン交換作業計画が作成され,その予定表をNTTドコモに提出し,上記計画の一環として,aが大分に出張し,発症前日の作業を行ったものである。そうすると,本件ファントラブル対応業務が,特に過重な業務であったとまで認めることは困難である。 これに対し,被控訴人は,新認定基準は,あくまでも睡眠時間確保の観点から,業務と脳・心臓疾患発症の関連性が強いとされる労働時間の目安を導き出しているに過ぎないから,これを形式的に当てはめるので-- はなく,精神的緊張の程度などの業務実態を含めて総合的に判断する必要があり,aがトラブル発生にかかる九州一円のNTTドコモからの苦情を24時間体制でたった1人で受けていたことによる精神的負担や,休日にも中継所等回りのルート確認作業等を要したこと,出張の際の運転業務やへんぴな場所にある中継所等を探すことの過重負担,aが責任者的立場にあることによる仕事の支援度の低さは,業務の過重性の判断において重視されるべきであるとする。 確かに,前記認定事実によると,本件ファントラブル発生の連絡に対してはほとんどaが応対しており,NTTドコモから厳しく苦情を言われることもあったこと,福岡事務所の所定営業時間外である夜間や休日におけるトラブル発生等の緊急電話連絡は,aの携帯電話に転送されるシステムとなっていたこと,中継所等のうち基地局は山中など分かりにくい場所に設置されていることが多 所の所定営業時間外である夜間や休日におけるトラブル発生等の緊急電話連絡は,aの携帯電話に転送されるシステムとなっていたこと,中継所等のうち基地局は山中など分かりにくい場所に設置されていることが多く,県外出張の際,自動車での移動はaが終始運転業務に従事していた上,目的地を探し回ることもあったことが認められるが,a及びcは,本件ファントラブル発生の連絡を受けた後,おおむね1日ないし2日以内,遅くとも1週間以内には,出張してファン交換作業を行い,トラブル処理に即応していたのであり,対応が遅れたため実際にMDEがシステムダウンし顧客の携帯電話の利用に支障が生じたという事情はうかがえない上,平成7年10月6日ころまでには,NTTドコモに対し,本件ファントラブル対応状況の説明をした上で,今後のトラブル対応の予定表を提出するなどして抜本的対策が打ち出されていたのであり,また,この間,担当地域のNTTドコモからの苦情がaに集中するなどして,強度の精神的ストレスを受けていたという経緯は認められない。また,aが実際に夜間や休日に緊急電話連絡を受けたり,夜間等に緊急に出動したという経緯が存しないことは前記認定のとおりであり,緊急電話連絡に対応するため,aが退社後や-- 休日の行動をことさら抑制していたという事情も認められないところである。さらに,aは,本件ファントラブル発生以前から,保守対応業務の遂行のため自動車を運転して担当地域内の中継所等に出張してきたのであり,県外出張についても日常的業務遂行の一環として従事してきたこと,中継所等の場所については,NTTドコモから具体的地図の交付等の情報提供を受けていたことに照らすと,同年9月中旬以降の出張業務について,aが業務量の増大による負担に加え,さらなる精神的肉体的な過重負荷を受けたと評価すべき ,NTTドコモから具体的地図の交付等の情報提供を受けていたことに照らすと,同年9月中旬以降の出張業務について,aが業務量の増大による負担に加え,さらなる精神的肉体的な過重負荷を受けたと評価すべき事情が存するとまでは認められない。 ウ以上のとおり,心筋機能障害発症前3か月間のaの労働の内容,態様,状況等を勘案するも,aが,著しい疲労をもたらす特に過重な業務に従事していたと認めることは困難である。 そして,前記認定のとおり,aは,心筋機能障害発症時53歳であり,肥満傾向にあり,約30年間の喫煙歴を有する喫煙習慣を有するところ,これらは虚血性心疾患の危険因子とされている上,aが平成6年の健康診,,,,断の際息切れ動悸脈の乱れなどの自覚症状を申告していたことからaには,平成7年9月当時すでに虚血性心疾患などの心臓の基礎的疾患が存在した可能性が高いと推測されるが,同年9月19日の健康診断の際には心電図に異常所見は認められなかったこと,aは,被控訴人らに対し,疲労や腰痛,頭痛,不眠などの症状を訴えており,同年10月7日には自宅で胸痛を訴えているが,前示のとおり,心電図による検査結果では,異常所見が認められなかったというのであり,また,aの前記業務の内容,態様等に照らすと,aの業務が格別に過重であったと認めることは困難なところであることにかんがみると,aに上記基礎疾患が存在していたとしても,心筋機能障害発症までの間に,上記基礎疾患が業務によって,急激に進行,増悪したと認めることは困難である。また,aの上記症状につい-- ては,医師の診断や検査を受けておらず,その程度及び原因については明らかでなく,これが上記心臓疾患に基づく胸痛であると直ちに認めるに足りる的確な証拠も存しない。 したがって,aの死亡(心筋機能障害発症)と同 師の診断や検査を受けておらず,その程度及び原因については明らかでなく,これが上記心臓疾患に基づく胸痛であると直ちに認めるに足りる的確な証拠も存しない。 したがって,aの死亡(心筋機能障害発症)と同人が従事していた業務との間に相当因果関係が存するとたやすく認めることはできない。 aの死因について前記認定のとおり,aの死体検案をした医師は,直接死因について,急性虚血性心疾患の疑いと診断し,死亡推定時刻を平成7年10月12日午前4時ころとしたが,他方,同医師は,上記直接死因については,正確なものではなく疑いに止まる旨説明しており,aの遺体については解剖がされておらず,急性虚血性心疾患を発症したことを具体的に示す所見は存在しないところである。 また,死亡推定時刻についても,aの遺体には,死体検案時,死斑及び弱ない,,し中程度の死後硬直が出現し口から泡を吹いていたことが認められるところ死斑及び死後硬直は,死後2時間ないし3時間経過後に出現し,口から泡を吹く現象(生前に呼吸機能の重度障害による肺水腫を発症していたことによる)が認められるのは死後数時間経過後であるとする医学的知見に照らすと,aの死亡時刻は,同日午前2時ないし3時ころであると推定するのが相当である。 そして,前記認定のaの遺体発見時における身体状況,殊にaに心血1ミリリットル中に2.69ミリグラムのアルコールが検出されており,上記血中アルコール濃度に照らすと,aは泥酔状態であったと認められること,さらにaが横臥していた場所の状況,同日午前0時ころから午前4時ころまでの大分市の気温に加え,アルコール摂取と低体温について,酩酊状態で外気温が摂氏15度ないし19度の場所に置かれると凍死することが確認されているところ,そのメカニズムは,アルコール摂取により拡張した皮膚血管からの体熱の発 ,アルコール摂取と低体温について,酩酊状態で外気温が摂氏15度ないし19度の場所に置かれると凍死することが確認されているところ,そのメカニズムは,アルコール摂取により拡張した皮膚血管からの体熱の発散が著しく高まる上,寒冷感覚の麻痺により対寒防止機能が低下し,体温低下が急速に進行して偶発性低体温症を発症し,身体の総合的な体温調節機能が失わ-- れて,ついには心室細動が頻発し,死亡に至るというものであるとの医学的知見が存する。 以上を総合考慮すると,aの死因は,飲酒に伴う凍死である可能性が極めて高いと推測される。 以上のとおりであるからaが心筋機能障害を発症して死亡したことはそ,,「の他業務に起因することの明らかな疾病(労働基準法施行規則35条,別表」第1の2,9号)に基づくものであるとは認められない。 第4 結論 よって,本件各処分はいずれも取り消されるべきであるとして,被控訴人の請求をいずれも認容した原判決は不当であるから,これを取り消して,被控訴人の請求をいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 福岡高等裁判所第4民事部裁判長裁判官星野雅紀裁判官近下秀明裁判官野島香苗

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