平成26(行ケ)10277 審決取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成27年9月10日 知的財産高等裁判所 4部 判決 請求棄却
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判決文本文40,931 文字)

- 1 -平成27年9月10日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成26年(行ケ)第10277号審決取消請求事件口頭弁論終結日平成27年8月27日判決 原告 X同訴訟代理人弁理士滝田清暉 被告特許庁長官同指定代理人畑井順一同黒瀬雅一同井上茂夫同根岸克弘 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求特許庁が不服2014-4404号事件について平成26年11月20日にした審決を取り消す。 第2 事案の概要 1 特許庁における手続の経緯等(1) 原告は,平成22年3月2日,発明の名称を「隔壁付きベッド及びそれに使用する隔壁」とする特許出願をしたが(特願2010-45198号。以下「本願」という。甲1),平成25年12月5日付けで拒絶査定を受けた(甲6)。 - 2 -(2) 原告は,平成26年3月6日,これに対する不服の審判を請求するとともに,同日付け手続補正書により,特許請求の範囲の補正をした(以下「本件補正」という。請求項数13。甲7)。 (3) 特許庁は,これを不服2014-4404号事件として審理し,平成26年11月20日,本件補正を却下した上で,「本件審判の請求は,成り た(以下「本件補正」という。請求項数13。甲7)。 (3) 特許庁は,これを不服2014-4404号事件として審理し,平成26年11月20日,本件補正を却下した上で,「本件審判の請求は,成り立たない。」との別紙審決書(写し)記載の審決(以下「本件審決」という。)をし,その謄本は,同年12月5日,原告に送達された。 (4) 原告は,平成26年12月26日,本件審決の取消しを求めて本件訴訟を提起した。 2 特許請求の範囲の記載(1) 本件補正前(平成25年10月24日付け手続補正書(甲5)による補正後のもの。請求項数14。以下同じ。)の特許請求の範囲の記載は,次のとおりである。以下,本件補正前の請求項に記載された発明を,請求項の番号に従って「本願発明1」などといい,併せて「本願発明」という。また,本件補正前の明細書(甲1,4,5)を,図面を含めて「本願明細書」という。 【請求項1】部屋を分割するために使用される隔壁付きベッドであって,ベッドの一つの側面,又は(逆)L字型を構成する二つの側面に,少なくとも,ベッド本体部高さの3倍以上の高さを有する,間仕切り用の隔壁を設けてなると共に,前記ベッドが有する足に移動用のキャスターが設けられてなることを特徴とする隔壁付きベッド。 【請求項2】前記隔壁の幅が,取り付けるベッド側面の長さ以上の幅を有する,請求項1に記載された隔壁付きベッド。 【請求項3】前記隔壁が,高さ及び/又は長さにおいて調整可能な隔壁である,請求項1又は2に記載された隔壁付きベッド。 【請求項4】前記隔壁が,底面に,床との間に長さ調整可能な支持具を有する,請求項1~3のいずれかに記載された隔壁付きベッド。 - 3 -【請求項5】前記長さ調整が可 【請求項4】前記隔壁が,底面に,床との間に長さ調整可能な支持具を有する,請求項1~3のいずれかに記載された隔壁付きベッド。 - 3 -【請求項5】前記長さ調整が可能な隔壁の底部に,戸車が設けられている,請求項3又は4に記載された隔壁付きベッド。 【請求項6】前記キャスターがロック可能なキャスターである,請求項1~5の何れかに記載された隔壁付きベッド。 【請求項7】前記二つの隔壁の接続部に,接続を隠すカバーが設けられている,請求項6に記載された隔壁付きベッド。 【請求項8】前記隔壁の,ベッド側の何れかの部分にルームライトを有する,請求項1~7の何れかに記載された隔壁付きベッド。 【請求項9】前記隔壁の何れかの上部に,天井との間に突っ張り棒を設置することが可能な部分が少なくとも1箇所存在する,請求項1~8の何れかに記載された隔壁付きベッド。 【請求項10】隔壁上部に存在する,前記天井との間に突っ張り棒を設置することが可能な部分が,前記隔壁の底面に設けられた支持具の位置,及び/又は,隔壁とベッド側面との系合部の位置と対応する,請求項9に記載された隔壁付きベッド。 【請求項11】部屋の内部を仕切る隔壁であって,ベッドの側面及び/又は足に固定できるように,ベッド側面及び/又は足と対応する少なくとも一箇所に,ベッド側面又は足に固定可能な固定手段を少なくとも一つ有することを特徴とする,請求項1~10の何れかに記載された隔壁付きベッド用隔壁。 【請求項12】前記隔壁が高さ方向に補強骨を有し,該補強骨の底部に床との間の高さ調節可能な支持具を有すると共に,少なくとも前記補強骨の上部に,天井との間に突っ張り棒を設置すること 。 【請求項12】前記隔壁が高さ方向に補強骨を有し,該補強骨の底部に床との間の高さ調節可能な支持具を有すると共に,少なくとも前記補強骨の上部に,天井との間に突っ張り棒を設置することのできる平面を有することを特徴とする,請求項11に記載された隔壁付きベッド用隔壁。 【請求項13】前記支持具がキャスター付き支持具である,請求項12に記載された隔壁付きベッド用隔壁。 【請求項14】前記隔壁が,引き戸方式及び/又は折り畳み方式で長さが可- 4 -変となっている,請求項11~13の何れかに記載された隔壁付きベッド用隔壁。 (2) 本件補正後の特許請求の範囲の記載は,次のとおりである(甲7)。 【請求項1】部屋を分割するために使用される隔壁付きベッドであって,ベッドの一つの側面,又は(逆)L字型を構成する二つの側面に,少なくとも,ベッド本体部高さの3倍以上の高さを有する,間仕切り用の隔壁を設けてなると共に,前記ベッドが有する足に移動用のキャスターが設けられてなることを特徴とする隔壁付きベッド。 【請求項2】前記隔壁の幅が,取り付けるベッド側面の長さ以上の幅を有する,請求項1に記載された隔壁付きベッド。 【請求項3】前記隔壁が,高さ及び/又は長さにおいて調整可能な隔壁である,請求項1又は2に記載された隔壁付きベッド。 【請求項4】前記隔壁が,底面に,床との間に長さ調整可能な支持具を有する,請求項1~3のいずれかに記載された隔壁付きベッド。 【請求項5】前記長さ調整が可能な隔壁の底部に,戸車が設けられている,請求項3又は4に記載された隔壁付きベッド。 【請求項6】前記キャスターがロック可能なキャスターである,請求項1~ 【請求項5】前記長さ調整が可能な隔壁の底部に,戸車が設けられている,請求項3又は4に記載された隔壁付きベッド。 【請求項6】前記キャスターがロック可能なキャスターである,請求項1~5の何れかに記載された隔壁付きベッド。 【請求項7】前記(逆)L字型を構成する隔壁の少なくとも一方の自由端に,扉として機能し得る,開閉可能な隔壁が設けられている,請求項1~6の何れかに記載された隔壁付きベッド。 【請求項8】前記隔壁の何れかの上部に,天井との間に突っ張り棒を設置することが可能な部分が少なくとも1箇所存在する,請求項1~7の何れかに記載された隔壁付きベッド。 【請求項9】部屋の内部を仕切る隔壁であって,ベッドの側面及び/又は足に固定できるように,ベッド側面及び/又は足と対応する少なくとも一箇所- 5 -に,ベッド側面又は足に固定可能な固定手段を少なくとも一つ有することを特徴とする,請求項1~8の何れかに記載された隔壁付きベッド用隔壁。 【請求項10】前記隔壁の一方の端部に,扉として機能し得る開閉可能な隔壁を有する,請求項9に記載された隔壁付きベッド用隔壁。 【請求項11】前記隔壁が高さ方向に補強骨を有し,該補強骨の底部に床との間の高さ調節可能な支持具を有すると共に,少なくとも前記補強骨の上部に,天井との間に突っ張り棒を設置することのできる平面を有することを特徴とする,請求項9又は10に記載された隔壁付きベッド用隔壁。 【請求項12】前記支持具がキャスター付き支持具である,請求項11に記載された隔壁付きベッド用隔壁。 【請求項13】前記開閉可能な隔壁が,蛇腹方式で長さが可変となっている隔壁である,請求項10~12の何れかに記載さ ター付き支持具である,請求項11に記載された隔壁付きベッド用隔壁。 【請求項13】前記開閉可能な隔壁が,蛇腹方式で長さが可変となっている隔壁である,請求項10~12の何れかに記載された隔壁付きベッド用隔壁。 3 本件審決の理由の要旨(1) 本件審決の理由は,別紙審決書(写し)記載のとおりである。要するに,①本件補正のうち本件補正後の請求項13に係る補正は,「蛇腹方式で長さが可変となっている隔壁」との事項を追加するものであるが,本願の願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲及び図面(以下「本願当初明細書等」という。)の記載から導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであり,本願当初明細書等に記載した事項の範囲内でするものではなく,また,本件補正のうち本件補正後の請求項7,10及び13に係る補正は,それぞれ「扉として機能し得る,開閉可能な隔壁が設けられている」,「扉として機能し得る開閉可能な隔壁を有する」,「蛇腹方式で長さが可変となっている隔壁」との発明特定事項を新たな請求項として追加するものであり,特許請求の範囲の減縮,請求項の削除,誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明を目的とするものではないから,これらの補正事項を含む本件補正は,特許法17条の2第3項,第5項の規定に違反する- 6 -ものとして却下した上で,②本願発明1は,本願の出願前に頒布された刊行物である特開平7-184744号公報(甲2。以下「引用例」という。)に記載された発明(以下「引用発明」という。)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本願は拒絶すべきものである,というものである。 (2) 本件審決が認定した引用発明,本 明をすることができたものであって,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであるから,本願は拒絶すべきものである,というものである。 (2) 本件審決が認定した引用発明,本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は,以下のとおりである。 ア引用発明ベッド1は,ベッド本体2とこのベッド本体2の外周部に立設されたベッド壁3とを主体として構成されており,ベッド壁3は,ベッド本体2の約2倍の高さに形成され,ベッド本体2と一体的に構成され,平面視L字状をなし,ベッド壁3によって寝室12を区切るベッド1。 イ本願発明1と引用発明との一致点部屋を分割するために使用される隔壁付きベッドであって,ベッドの(逆)L字型を構成する二つの側面に,間仕切り用の隔壁を設けてなる,隔壁付きベッド。 ウ本願発明1と引用発明との相違点(ア) 相違点1本願発明1の「隔壁」が,「少なくとも,ベッド本体部高さの3倍以上の高さを有する」ものであるのに対し,引用発明の「ベッド壁3」は,「ベッド本体2の約2倍の高さに形成され」ている点。 (イ) 相違点2本願発明1の「ベッドが有する足に移動用のキャスターが設けられて」いるのに対して,引用発明は,その点につき明らかでない点。 4 取消事由- 7 -(1) 本件補正を却下した判断の誤り(取消事由1)(2) 本願発明1の容易想到性に係る認定判断の誤りア本願発明1の要旨認定の誤り(取消事由2-1)イ本願発明1と引用発明との一致点及び相違点の認定の誤り(取消事由2-2)ウ相違点に係る容易想到性判断の誤り(取消事由2-3)(3) 従属項に対する判断の遺脱(取消事由3)第3 当事者の主張 1 取消事 点及び相違点の認定の誤り(取消事由2-2)ウ相違点に係る容易想到性判断の誤り(取消事由2-3)(3) 従属項に対する判断の遺脱(取消事由3)第3 当事者の主張 1 取消事由1(本件補正を却下した判断の誤り)について〔原告の主張〕(1) 新規事項の追加について本件審決は,本件補正後の請求項13に係る補正は,「蛇腹方式で長さが可変となっている隔壁」との事項を追加するものであるが,本願当初明細書等には,隔壁が「蛇腹方式」であることは記載されておらず,隔壁が「蛇腹方式」であることは本願当初明細書等の記載から導き出せる事項であるともいえないとして,上記補正事項は,新たな技術的事項を導入するものであり,本願当初明細書等に記載した事項の範囲内でするものではない旨判断した。 しかしながら,「蛇腹方式」の隔壁は,本願当初明細書等の【0013】に記載された「折りたたみ形式」の隔壁の一態様であるといえるものであり(甲10~14),このことは,その記載から容易に理解されることである。 (2) 補正の目的について本件審決は,本件補正後の請求項7,10及び13に係る補正は,それぞれ「扉として機能し得る,開閉可能な隔壁が設けられている」,「扉として機能し得る開閉可能な隔壁を有する」,「蛇腹方式で長さが可変となっている隔壁」との発明特定事項を新たな請求項として追加するものであるから,特許請求の範囲の減縮,請求項の削除,誤記の訂正又は明りょうでない記載- 8 -の釈明を目的とするものではない旨判断した。 しかしながら,本件補正前の請求項3には「高さ及び/又は長さにおいて調整可能」である隔壁が,同請求項14には,「引き戸方式及び/又は折り畳み方式で長さが可変となっている隔壁付きベッド用 。 しかしながら,本件補正前の請求項3には「高さ及び/又は長さにおいて調整可能」である隔壁が,同請求項14には,「引き戸方式及び/又は折り畳み方式で長さが可変となっている隔壁付きベッド用隔壁」が記載されているところ,本件補正後の請求項7,10及び13に記載された隔壁は,これらの隔壁の一態様であって,本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであることは明らかである。また,本件補正後の請求項7,10及び13は,本件補正前の請求項1を減縮するものである。 (3) 以上のとおり,本件審決が本件補正を却下した判断は誤りである。 〔被告の主張〕(1) 新規事項の追加について本願当初明細書等には,隔壁が「蛇腹方式で長さが可変となっている」ものであることは記載されておらず,また,隔壁が「蛇腹方式で長さが可変となっている」ことは,本願当初明細書等の記載からみて,自明な事項であるとはいえない。 したがって,本件補正後の請求項13に係る補正事項は,本願当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものではない。 (2) 補正の目的について本件補正後の請求項7,10及び13に係る補正は,それぞれ「扉として機能し得る,開閉可能な隔壁が設けられている」,「扉として機能し得る開閉可能な隔壁を有する」,「蛇腹方式で長さが可変となっている隔壁」との発明特定事項を新たな請求項として追加するものであるから,特許請求の範囲の減縮,請求項の削除,誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明を目的とするものではない。 (3) したがって,本件審決における判断に誤りはない。 2 取消事由2-1(本願発明1の要旨認定の誤り)について- 9 -〔原告の主張〕本件審決は,本願発明1の要旨を前記第2の (3) したがって,本件審決における判断に誤りはない。 2 取消事由2-1(本願発明1の要旨認定の誤り)について- 9 -〔原告の主張〕本件審決は,本願発明1の要旨を前記第2の2(1)のとおり認定したが,以下のとおり,本願発明1の本質に照らし誤りである。 (1) 隔壁付きベッドについて本願発明1は,本願明細書の【0007】に記載されているように,「工事をすることなく,家族構成の変化のような状況の変化に対応して,簡便にベッドを有する部屋を設けるのに適した隔壁付きベッドを提供すること,及び,それに使用する隔壁を提供すること(第3の目的)」を目的とし,これにより,【0010】に記載されているように,「実質的な部屋数を簡便に変更することができるので,引越の頻度を必要最小限に低減することができる」という効果を奏するものである。 すなわち,本願発明1の「隔壁付きベッド」は,それを用いることによって,部屋数を実際に増やしたり間取りを変更したりする効果をもたらすものであるから,請求項1に記載された「部屋を分割するために使用される隔壁付きベッドであって,」との構成は,単に部屋を区切ったり仕切ったりする間仕切りとは明確に区別される,「部屋数を変更する機能を有する隔壁付きベッド」である点が認定されなければならない。 (2) キャスターについて本願発明1の「隔壁付きベッド」における「ベッド本体の高さの3倍以上の高さを有する隔壁」は,独立した部屋を構成するためのものであるから,随時移動可能であることを前提にする使用形態を想定することが困難なものである(請求項2~4,9,【0013】参照)。 すなわち,本願発明1の「隔壁付きベッド」は,一旦設置したら,特別の理由が生じない限りめったに移動させ する使用形態を想定することが困難なものである(請求項2~4,9,【0013】参照)。 すなわち,本願発明1の「隔壁付きベッド」は,一旦設置したら,特別の理由が生じない限りめったに移動させないものであるにもかかわらず,本願発明1のベッドの足に移動用のキャスターを設けるように構成したのは,子供の成長等の,生活状況の変化に応じて部屋数や部屋の大きさを容易に変更- 10 -することができるようにするという新規な目的を達成するためであるから,単に移動することを目的とするキャスターが設けられているにすぎないものとは明確に区別して,「一旦設置したら原則として動かさないもので,間取りの変更等を十分に可能とする」ものである点が認定されなければならない。 〔被告の主張〕本件審決は,本件補正を却下した上で,本件補正前の特許請求の範囲(請求項1)の記載に基づき本願発明1の要旨を認定したものであり,その認定に誤りはない。 特許請求の範囲(請求項1)には,「隔壁付きベッド」について,「単に部屋を区切ったり仕切ったりする間仕切りとは明確に区別」することを特徴付ける構成は特定されておらず,また,「移動用のキャスター」について,「一旦設置したら原則として移動させないもので,間取りの変更等を十分に可能」とすることを特徴付ける構成は特定されておらず,原告の主張は,特許請求の範囲(請求項1)の記載に基づかないものであって,失当である。 3 取消事由2-2(本願発明1と引用発明との一致点及び相違点の認定の誤り)について〔原告の主張〕(1) 一致点の認定の誤りについてア本件審決は,本願発明1と引用発明とが,「部屋を分割するために使用される隔壁付きベッド」である点で一致する旨判断した。 しかしながら,本願発明1の目 1) 一致点の認定の誤りについてア本件審決は,本願発明1と引用発明とが,「部屋を分割するために使用される隔壁付きベッド」である点で一致する旨判断した。 しかしながら,本願発明1の目的及び効果から明らかなように,本願発明1における「隔壁」は,分割される部屋を構成している既存の壁面と協同して,新たに小さな部屋を構成するという作用,効果を有するものである。 これに対し,引用発明は,引用例の【0005】に記載されているように,「広い寝室に設置するだけで,ベッドと,その他のゾーンとを開放感- 11 -を持たせつつ区切ることができるベッドおよびこのベッドが設けられた住居を提供すること」を目的とし,これにより,【0020】に記載されているように,「このベッドを寝室に設置するだけで,ベッドと,その他のゾーンとを開放感を持たせつつ区切ることができる」という効果を奏するものであるから,引用発明における「ベッド壁3」は,既存の壁面と協同して,新たな部屋を構成するという作用,効果を有するものではない(なお,引用例において「ゾーン」が「部屋」と同義のものとして用いられているわけではないから,引用例における各ゾーンはそれぞれ独立した部屋であるとは認識されないものである。)。引用例の【0019】に,「ベッド壁3はベッド本体2の外周部の一部を除いて,つまり,ベッドに人間が入れる入口部となる部分を残して設ければよい。」と記載されているように,引用発明における「ベッド壁3」は,人間の出入りする場所を除き,ベッドの外周に沿ってベッドをぐるりと囲む壁であって,寝室の中央にこのベッドを設置すれば(請求項3),島のようにベッドが設置されるにすぎず,既存の部屋を多様化することはできても,本願発明1のように,物理的に部屋を分割することはできない。 壁であって,寝室の中央にこのベッドを設置すれば(請求項3),島のようにベッドが設置されるにすぎず,既存の部屋を多様化することはできても,本願発明1のように,物理的に部屋を分割することはできない。 したがって,引用発明における「ベッド壁3」は,部屋数を増加させる(部屋を構成する)機能を有しないものであって,本願発明1における「隔壁」に相当するものではなく,本願発明1と引用発明とが「部屋を分割するために使用される隔壁付きベッド」の点で一致するとの本件審決における認定は誤りである。 イ本件審決は,本願発明1と引用発明とが,「ベッドの(逆)L字型を構成する二つの側面に,間仕切り用の隔壁を設けてなる」点で一致する旨判断した。 しかしながら,本願発明1の「隔壁」は,部屋と認められる空間を確保するために,「ベッド本体部高さの3倍以上の高さを有する」ものであり,- 12 -単なる間仕切り用の壁とは本質的に異なるものである。 これに対し,引用例には,本願発明1の「隔壁」のように,部屋と認められる空間を確保するための隔壁は記載も示唆もされていない。引用発明において,「ベッド壁」をベッド側面よりも長くしたり(本願発明2),天井との間に突っ張り棒を設けたり(本願発明9),ベッド本体部高さの3倍以上の高さを有するようにしたりすること(本願発明1)は,大きな部屋を「開放感を持たせつつ区切る」という目的(【0005】)を阻害するものであり,引用発明における「ベッド壁」は,部屋を「開放感を持たせつつ区切る」という間仕切りの機能を果たすべく,いくら高くてもよいというものではない。そして,引用発明において,「ベッド壁3」の高さが「ベッド本体2の約2倍の高さ」であるというのは,人が椅子に座ったときの目の高さと同等か,それより若干低い く,いくら高くてもよいというものではない。そして,引用発明において,「ベッド壁3」の高さが「ベッド本体2の約2倍の高さ」であるというのは,人が椅子に座ったときの目の高さと同等か,それより若干低い高さであって,人の視界を妨げないという点において,ほぼ上限値であると解されるものである。 以上のとおり,本願発明1における「隔壁」と引用発明における「ベッド壁」とはその本質的な作用,効果を異にするものである。 しかしながら,本件審決は,本願発明1の部屋を分割するための「隔壁」が有する本質的な作用,効果を無視して「ベッド本体部高さの3倍以上の高さを有する」「隔壁」を単なる「間仕切り」と抽象化し,引用発明の部屋を開放感を持たせつつ区切るための「ベッド壁3」の有する本質的な作用,効果を無視して「ベッド本体2の約2倍の高さ」を有する「ベッド壁3」を単なる「間仕切り」と抽象化した上で,両者が「ベッドの(逆)L字型を構成する二つの側面に,間仕切り用の隔壁を設けてなる」点で一致するとするものであり,誤りである。 (2) 相違点の認定の誤りについて本件審決における前記第2の3(2)のとおりの相違点の認定は,以下のとおり,本願発明1と引用発明との本質的な相違を看過するものであり,誤りで- 13 -ある。 ア相違点1の認定について(ア) 本願発明1と引用発明の目的及び効果の相違本願発明1は,隔壁付きベッドを設置して「一つの広い部屋」を「二つの部屋」に分割することを目的とするものであるのに対し,引用発明は,ベッドを設置して「広い寝室」を多様化するだけで,「広い寝室」は「広い寝室」のままに維持することを目的とするものである。 さらに,本願発明1は,「実質的な部屋数を簡便に変更することがで ベッドを設置して「広い寝室」を多様化するだけで,「広い寝室」は「広い寝室」のままに維持することを目的とするものである。 さらに,本願発明1は,「実質的な部屋数を簡便に変更することができるので,引越の頻度を必要最小限に低減することができる」という効果を奏するものであるのに対し,引用発明は,「このベッドを寝室に設置するだけで,ベッドと,その他のゾーンとを開放感を持たせつつ区切ることができる」という効果を奏するものである。 以上のように,本願発明1と引用発明とは,その目的及び効果の点で相違する。 (イ) 本願発明1の「隔壁」と引用発明の「ベッド壁3」との構成の相違本願発明1と引用発明とは,前記(ア)のとおり,その目的及び効果の点で相違するものであるから,本願発明1における「隔壁」と引用発明における「ベッド壁」も,その作用及び効果を異にする構成であり,両者は,単に,その高さにおいて相違するだけでなく,発明の目的の相違から生じる構成自体においても本質的に相違するものである。 すなわち,本願発明1の「隔壁」は,その具体的態様として,請求項2以下に記載された態様,すなわち「隔壁の幅が,取り付けるベッド側面の長さ以上の幅を有する」もの(請求項2),「高さ及び/又は長さにおいて調整可能な隔壁」(請求項3),「底面に,床との間に長さ調整可能な支持具を有する」もの(請求項4),「長さ調整が可能な隔壁であって,底部に戸車が設けられている」もの(請求項5),「何れかの- 14 -上部に,天井との間に突っ張り棒を設置することが可能な部分が少なくとも1箇所存在する隔壁」(請求項9)等を含むものであるが,ベッド側面と「面一」の隔壁を設けても部屋を分割することはできないから,このような態様は含まない っ張り棒を設置することが可能な部分が少なくとも1箇所存在する隔壁」(請求項9)等を含むものであるが,ベッド側面と「面一」の隔壁を設けても部屋を分割することはできないから,このような態様は含まない。 これに対し,引用発明における「ベッド壁3」は,ベッドの外周に沿って立設される壁であるから,ベッド側面の長さよりも長くなることはあり得ず,他方,引用例の【0013】及び図1ないし図3に記載されているように,ベッド壁の端部が,それぞれベッド側面の端部と「面一」である態様を含むものである。 したがって,本願発明1の「隔壁」と引用発明の「ベッド壁3」とは,その構成においても相違する。 (ウ) 以上によれば,本件審決における相違点1の認定は,本願発明1の「隔壁」と引用発明の「ベッド壁3」の対比について,その目的,効果及び構成における相違点を看過するものであって,誤りである。 イ相違点2の認定について本願発明1と引用発明とは,前記ア(ア)のとおり,その目的及び効果の点で相違するものであるから,両者は,単に,移動用のキャスターの有無において相違するわけではない。 本件審決における相違点2の認定は,本願発明1の「隔壁付きベッド」と引用発明の「ベッド1」との,目的,効果及び構成における相違点を看過するものであって,誤りである。 また,引用例には,引用発明のベッドに「移動用キャスター」を設けることを示唆する記載は一切ないから,引用発明のベッドは「移動用キャスター」を設けることをそもそも想定しないものであって,引用発明が「ベッドが有する足に移動用のキャスターが設けられて」いるのか明らかでないとした本件審決における相違点2の認定は,誤りである。 - 15 -ウなお,本願 定しないものであって,引用発明が「ベッドが有する足に移動用のキャスターが設けられて」いるのか明らかでないとした本件審決における相違点2の認定は,誤りである。 - 15 -ウなお,本願発明1と引用発明とは,本願発明1が「ベッドの一つの側面」のみに隔壁を有する構成を含むものであるのに対し,引用発明はこのような構成を含まない点においても相違するが,本件審決は,上記相違点を看過し,かかる相違点についての判断を遺脱した点においても,誤りである。 〔被告の主張〕(1) 一致点の認定の誤りについてア本件審決における本願発明1と引用発明との一致点の認定に誤りはない。 イ引用発明の「ベッド壁」は,引用発明で「ベッド壁3によって寝室12を区切るベッド1」とされるように,「寝室12を区切る」ものであり,部屋を「区切る」以上,「部屋を分割する」ものであることは明らかである。 また,引用例の【0015】及び【0016】の記載から,ベッド壁3で,寝室12から,サンルーム(ゾーン14)と書斎(ゾーン20)が区切られており,「ベッド壁」が,「寝室」(部屋)を,「サンルーム(ゾーン14)」と「書斎(ゾーン20)」とに分割する機能を備えることは明らかである。 したがって,引用発明の「ベッド壁3」と本願発明1の「隔壁」との間には,原告が主張するような差異はない。 ウ本願発明1の「隔壁」が「ベッド本体部高さの3倍以上の高さを有する」ものである点については,本件審決は,本願発明1と引用発明との相違点(相違点1)として認定し,その容易想到性について判断している。 (2) 相違点の認定の誤りについてア相違点1の認定について引用発明の「ベッド壁」は,寝室を区切ってサンルームや書 1)として認定し,その容易想到性について判断している。 (2) 相違点の認定の誤りについてア相違点1の認定について引用発明の「ベッド壁」は,寝室を区切ってサンルームや書斎を分割する機能を有するものであるから,本願発明1の「隔壁」と同様に,「分割- 16 -される部屋を構成している既存の壁面と協同して,新たに小さな部屋を構成するという作用,効果を有する」ものである。 したがって,本件審決における相違点1の認定に誤りはなく,本件審決には,原告主張に係る相違点の看過は存しない。 イ相違点2の認定について本願発明1の「隔壁付きベッド」の「隔壁」と引用発明の「ベッド」の「ベッド壁」との間で,目的,効果及び構成が全く異なるというようなことはなく,原告の主張は,その前提において失当である。 したがって,本件審決における相違点2の認定に誤りはなく,本件審決には,原告主張に係る相違点の看過は存しない。 ウ本願発明1における「ベッドの一つの側面」のみに隔壁を有する構成に係る相違点の看過との主張について本願発明1は,「ベッドの一つの側面,又は(逆)L字型を構成する二つの側面に」,「間仕切り用の隔壁を設けてなる」と特定されており,間仕切り用の隔壁を,「ベッドの一つの側面」と,「(逆)L字型を構成する二つの側面」のいずれかに選択的に設けることとされている。 これに対し,引用発明の「ベッド壁3」は,「ベッド本体2の外周部に立設され」,「平面視L字状をな」すもの,すなわち「(逆)L字型を構成する二つの側面」に設けられたものである。 したがって,本願発明1と引用発明とは,少なくとも「ベッドの(逆)L字型を構成する二つの側面に,間仕切り用の隔壁を設け なわち「(逆)L字型を構成する二つの側面」に設けられたものである。 したがって,本願発明1と引用発明とは,少なくとも「ベッドの(逆)L字型を構成する二つの側面に,間仕切り用の隔壁を設けてなる」点で一致するものであって,本件審決が「ベッドの(逆)L字型を構成する二つの側面に,間仕切り用の隔壁を設けてなる」ことを一致点に含めたことに誤りはなく,本件審決には,原告主張に係る相違点の看過は存しない。 4 取消事由2-3(相違点に係る容易想到性判断の誤り)について〔原告の主張〕- 17 -(1) 相違点1に係る容易想到性判断の誤りについてア本件審決は,引用発明において,間仕切り用の隔壁の高さを,どの程度とするかは,当業者が当該引用発明を実施する際に適宜定めるべき設計的事項であるが,本願明細書をみても,相違点1に係る本願発明1の発明特定事項である「ベッド本体部高さの3倍以上の高さを有する」とした点に格別の臨界的意義があるものではないから,引用発明において,相違点1に係る本願発明1の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到し得たことである旨判断した。 イしかしながら,引用発明における「ベッド壁」は,部屋を「開放感を持たせつつ区切る」という間仕切りの機能を果たすべく,いくら高くてもよいというものではない。 すなわち,引用発明において,「ベッド壁3」の高さが「ベッド本体2の約2倍の高さ」であるというのは,人の視界を妨げないという点において,ほぼ上限値であると解され,たとえ,「ベッド本体の約2倍の高さ」よりも幅を持たせるとしても,ベッド本体の3倍の高さにまでなると,人が椅子に座ったときのみならず,場合によっては,立っているときの視界をも妨げることになって,引用発明の目的を達成するこ 2倍の高さ」よりも幅を持たせるとしても,ベッド本体の3倍の高さにまでなると,人が椅子に座ったときのみならず,場合によっては,立っているときの視界をも妨げることになって,引用発明の目的を達成することができないから,最大でも「ベッド本体の3倍の高さ」よりは低く設定せざるを得ないはずである。 したがって,引用発明において,「ベッド壁3」の高さを「ベッド本体部高さの3倍以上の高さを有するようにすることには阻害要因がある。 ウ以上によれば,本件審決における相違点1に係る容易想到性の判断は,誤りである。 (2) 相違点2に係る容易想到性判断の誤りについてア本件審決は,一般に,ベッドに足を設け,該足に移動用のキャスターを設けることは,当業者にとって常套手段であるが,本願発明1において,- 18 -ベッドに足を設け,該足に移動用のキャスターを設ける点に,格別の技術的意義はないから,引用発明において,相違点2に係る本願発明1の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到し得たことである旨判断した。 イしかしながら,本件審決が,「ベッドに足を設け,該足に移動用のキャスターを設けることは,当業者にとって常套手段である」との認定の根拠として挙げる周知例(甲3,8,9)は,いずれも病院で使用するのに好適なベッドであり,本願発明1の隔壁付きベッドや引用発明のベッドとは,全く異なる特殊用途に使用するベッドである。これらの周知例に記載されたベッドのように,移動させる機能を本質的に必要とする場合には,足にキャスターを設けることが常套手段であるとはいえても,本願発明1や引用発明のように,移動を前提としない場合にまで,これが常套手段であるとすることはできない。 さらに,引用発明のベッドは,部屋の中央に設 けることが常套手段であるとはいえても,本願発明1や引用発明のように,移動を前提としない場合にまで,これが常套手段であるとすることはできない。 さらに,引用発明のベッドは,部屋の中央に設置するものであり,移動するようにしたり,折り畳み式にすることには何らの利点もないから,引用発明におけるベッドは移動を前提としないものであり,引用発明において,ベッドの足に移動用のキャスターを設けるようにすることには,動機付けがない。 したがって,引用発明において,相違点2に係る本願発明1の発明特定事項とすることは,当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 ウ以上によれば,本件審決における相違点2に係る容易想到性の判断は,誤りである。 〔被告の主張〕(1) 相違点1に係る容易想到性の判断の誤りについてア引用例の【0004】の記載によれば,引用発明は,寝室の床から天井までを間仕切り壁で仕切ることにより開放感がなくなるという課題を解決しようとするものであるが,引用発明の「ベッド壁3」を本願発明1のよ- 19 -うにベッド本体の3倍としても,ベッド壁3と天井までとの間には十分な空間が形成されることは明らかであって,開放感がなくなってしまい,上記の課題を解決することができなくなるということはない。 ここで,本願明細書の【0010】に記載されているように,本願発明1においても,「隔壁」の高さは「開放感」に影響を与えない程度のものが想定されているから,隔壁の高さをベッドの高さの「約2倍」とするか「3倍以上」とするかは,部屋を分割することと開放感を確保することとの間で,どちらをより重視するかにより適宜設定される設計的事項であるといえる。 もともと,部屋の開放感は,部屋の床から天井までの高さ とするかは,部屋を分割することと開放感を確保することとの間で,どちらをより重視するかにより適宜設定される設計的事項であるといえる。 もともと,部屋の開放感は,部屋の床から天井までの高さとベッドの隔壁の高さとのバランスや居住者の視線の高さ等が影響するものであり,一概にベッド本体部高さと隔壁の高さの比のみによって決まるものではない。 人によって,開放感という感覚は違うものであるから,「約2倍」から「3倍以上」としたからといって,格別の作用効果が生じるとはいえない。 加えて,本願明細書には,「ベッド本体部高さの3倍以上の高さを有する」ことに関し,「隔壁の高さは,ベッドとしての機能を維持する観点から,ベッド本体の高さの3倍以上であることが必要である」(【0013】)と記載されているのみであって,開放感との関連で「3倍以上」とすることに,格別の作用効果や臨界的意義があるということはできない。 そうすると,引用発明において,間仕切り用の隔壁の高さをどの程度とするかは,当業者がこれを実施する際に適宜定めるべき設計的事項であるといえる。 イ以上によれば,本件審決が,引用発明において,相違点1に係る本願発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことであるとした点に誤りはない。 (2) 相違点2に係る容易想到性の判断の誤りについて- 20 -ア引用例の【0019】には,ベッド1を移動させて,居住者が自分の好みに合わせて部屋の空間を可変とすることが示されており,引用発明のベッド壁3を設けたベッド1は,部屋内を移動することを前提としたものである。 そして,家具等の重量があって持ち運びが困難なものについて,移動を容易にするためにキャスターを取り付けることは常套手段であり,引用発明のベ 部屋内を移動することを前提としたものである。 そして,家具等の重量があって持ち運びが困難なものについて,移動を容易にするためにキャスターを取り付けることは常套手段であり,引用発明のベッドも,重量があり持ち運びが困難であって,その上,移動することが想定されるものであるから,引用発明のベッドには,移動を容易にするためのキャスターを組み合わせる動機付けが存在する。 イ以上によれば,本件審決が,引用発明において,相違点2に係る本願発明1の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到し得たことであるとした点に誤りはない。 5 取消事由3(従属項に対する判断の遺脱)について〔原告の主張〕仮に,本願発明1に進歩性の欠如する発明が含まれていたとしても,請求項2以下の従属項に記載された発明が進歩性を欠如するとは限らないから,請求項2以下に記載された発明についても,審理し,本件審決において,その判断を示すべきであった。 それにもかかわらず,本件審決は,請求項2以下の従属項に記載された発明については,判断しなかった。 このような取扱いは,審判請求費用が請求項の数に依存することとも整合しない。 以上に照らせば,本件審決には,従属項に対する判断を遺脱した違法があるというべきである。 〔被告の主張〕本件審決は,原査定の拒絶理由を検討した結果,本願発明1は,特許法29- 21 -条2項の規定により,特許をすることができないものであると判断し,かかる発明を含む本件出願は特許法49条の規定により拒絶すべきであると判断したものである。 本件審決に係る手続に違法な点は存しない。 第4 当裁判所の判断 1 本願発明1について(1) 本願発明1の特許請求の範囲(請求項1)の記載は,前 べきであると判断したものである。 本件審決に係る手続に違法な点は存しない。 第4 当裁判所の判断 1 本願発明1について(1) 本願発明1の特許請求の範囲(請求項1)の記載は,前記第2の2(1)に記載のとおりであるところ,本願明細書(甲1,4,5)には,次のような記載がある(図1ないし図3については,別紙1の本願明細書図面目録を参照。)。 ア技術分野【0001】本発明はベッドに関し,特に間仕切り機能を有するベッドに関する。 イ背景技術【0002】近年,都市人口が増大するにつれ,都市部では住空間が狭くなってきたが,人口減少の兆候と共に,賃貸住宅事情が変化し始めた事もあり,広い空間が望まれ,LDKに対する需要が増大している。その一方で,更に1部屋が欲しいという希望もあり,3畳程度の小部屋を設ける傾向がある一方でやはり6畳程度の部屋が欲しいというニーズも強い。 【0003】例えば,書斎が欲しいという場合には3畳間があれば良いが,状況が変化すれば,寝られるだけでも良いから寝室が欲しいという場合も生じる,或いは,6畳を子供部屋として使用していたが子供が二人になったので,6畳を3畳づつに分割してそれぞれの子供の自立性を養いたいという場合が生じることもあれば,6畳を寝室と書斎に分割したいという場合も生じる。 【0004】また,一つの部屋を大きく取る事による開放感を損なわない- 22 -ように,ベッド本体の高さの,二倍程度の壁を有するベッドを部屋の中心に設置することも提案されている(特許文献1:特開平7-184744)が,この方法に対する需要は殆どないのが実体である。 【0006】そこで本発明者は,多様なニーズに対応できる方法について鋭意検討した結果,LDKの一角を,居住者の好 文献1:特開平7-184744)が,この方法に対する需要は殆どないのが実体である。 【0006】そこで本発明者は,多様なニーズに対応できる方法について鋭意検討した結果,LDKの一角を,居住者の好みに合わせた広さ及び高さで,ベッドを利用して簡便に寝室に変身させたり,子供の増減によって適宜実質的な部屋数を増減させたりすることが合理的であることを見出し,本発明に到達した。 ウ発明が解決しようとする課題【0007】したがって本発明の第1の目的は,自由空間から得られる開放感に与える影響が少ない寝室を,居住者が自分の好みに合わせて簡便に設置するに適したベッドを提供することにある。 本発明の第2の目的は,状況に合わせて適宜実質的な部屋数を変更するのに適したベッドを提供することにある。 更に本発明の第3の目的は,本発明の隔壁付きベッドに使用するに適した隔壁を提供することにある。 エ課題を解決するための手段【0008】本発明の上記の諸目的は,部屋を分割するために使用される隔壁付きベッドであって,ベッドの一つの側面,又は(逆)L字型を構成する二つの側面に,少なくとも,ベッド本体部高さの3倍以上の高さを有する,間仕切り用の隔壁を設けてなると共に,前記ベッドが有する足に移動用のキャスターが設けられてなることを特徴とする隔壁付きベッド,及び,該ベッド用の隔壁によって達成された。 【0009】本発明における隔壁の長さは,取り付けるベッドの側部幅より長い事が好ましく,また,隔壁底部には,隔壁が破損しにくくなるように,床との間を調整することのできる支持具が設けられていることが好ま- 23 -しい。更に,本発明においては,隔壁の長さ及び/又は高さを可変とすることも可能であり,ベッド側の壁に読書用等 るように,床との間を調整することのできる支持具が設けられていることが好ま- 23 -しい。更に,本発明においては,隔壁の長さ及び/又は高さを可変とすることも可能であり,ベッド側の壁に読書用等のルームライトをつけることもできる上,必要に応じて,隔壁に補強骨を設けたり隔壁底面にキャスターや戸車を設けたりすることもできる。 オ発明の効果【0010】本発明のベッドは,使用者の好みに合わせて,自由空間から得られる開放感に与える影響を少なくするように,寝室を簡便に設置することができるだけでなく,実質的な部屋数を簡便に変更することができるので,引越の頻度を必要最小限に低減することができる。また,本発明の隔壁は,既存のベッドを隔壁付きベッドに改変するのに便利である。 カ発明を実施するための最良の形態【0013】図1は,大部屋の一角に,ベッドの側面に(逆)L字型に隔壁を有する本発明のベッドを用い,簡易寝室を構成させた図である。図中の符号1はベッド本体,2は隔壁である。この場合には,隔壁の長さは当然ベッドの長さ及び幅より長くなるので,複数枚の隔壁を,固定手段を用いてつなぎ合わせても良いし,例えば,引き戸や折りたたみ形式或いはそれらを組合わせた,長さが可変である隔壁とすることもできる。長さが可変である場合には,移動する隔壁底部に戸車を使用する必要がある。特に,引き戸形式又は折り畳み形式である場合は,先端部近傍に取っ手を付けておくことにより,開閉可能な扉として機能させる上で好都合である。 尚,戸車としては,床を傷付けないゴム製のものを使用することが好ましく,また隔壁の高さは,ベッドとしての機能を維持する観点から,ベッド本体の高さの3倍以上であることが必要である。 【0014】図2は,6畳間を を傷付けないゴム製のものを使用することが好ましく,また隔壁の高さは,ベッドとしての機能を維持する観点から,ベッド本体の高さの3倍以上であることが必要である。 【0014】図2は,6畳間を,本発明のベッドを用いて3畳間の子供用寝室に2分割した概念図である。二つのベッドの内,一方のベッドのみが隔壁を備えていても良いが,一つの隔壁に二つのベッドが結合しても良い- 24 -ことは当然である。二人の子供の年齢差にしたがって,広さの分配を調整することもできる。このようにすることにより,2段ベッドからの,落下の危険性を回避することができる。 【0015】図3は,6畳間を,本発明のベッドを用いて3畳間の寝室と書斎に分割した概念図である。図中の符号3は机,4は椅子である。好みにしたがって,分配する部屋の広さを適宜調整することは自由であり,また,机の配置箇所も自由に決めることができる。 キ産業上の利用可能性【0017】本発明のベッドは,使用者の好みに合わせて,寝室等を簡便に設置することができるだけでなく,実質的な部屋数を簡便に変更することができるので,特に賃貸住宅における居住空間を常に最適に保つのに便利であり,これによって引越の頻度を必要最小限に低減することができ,無駄を減らすことができるので,産業上極めて有意義である。 (2) 前記(1)の記載によれば,本願発明1の特徴は以下のとおりであると認められる。 ア本願発明は,間仕切り機能を有するベッドに関する(【0001】)。 近年,広い空間が望まれる一方で,更に1部屋欲しいという希望があったり,設ける部屋の大きさについてのニーズも多様化している(【0002】,【0003】)。 また,従来,一つの部屋を大きく取る事による開放感を損なわない で,更に1部屋欲しいという希望があったり,設ける部屋の大きさについてのニーズも多様化している(【0002】,【0003】)。 また,従来,一つの部屋を大きく取る事による開放感を損なわないように,ベッド本体の高さの2倍程度の壁を有するベッドを部屋の中心に設置することも提案されている(甲2)が,この方法に対する需要はほとんどない(【0004】)。 そこで,このような多様なニーズに対応できる方法について検討し,LDKの一角を,居住者の好みに合わせた広さ及び高さで,ベッドを利用して簡便に寝室に変身させたり,適宜実質的な部屋数を増減させたりするこ- 25 -とが合理的であることを見いだし,本願発明に至ったものである(【0006】)。 イ本願発明は,自由空間から得られる開放感に与える影響が少ない寝室を,居住者が自分の好みに合わせて簡便に設置するに適したベッドを提供すること(第1の目的),状況に合わせて適宜実質的な部屋数を変更するのに適したベッドを提供すること(第2の目的)及び本願発明の隔壁付きベッドに使用するに適した隔壁を提供すること(第3の目的)を目的とし(【0007】),本願発明1(請求項1)では,部屋を分割するために使用される隔壁付きベッドであって,ベッドの一つの側面,又は(逆)L字型を構成する二つの側面に,少なくとも,ベッド本体部高さの3倍以上の高さを有する,間仕切り用の隔壁を設けてなるとともに,ベッドが有する足に移動用のキャスターが設けられてなることを特徴とする隔壁付きベッドとの構成を採用した(【0008】,【0009】)。 ウ本願発明のベッドは,使用者の好みに合わせて,自由空間から得られる開放感に与える影響を少なくするように,寝室を簡便に設置することができるだけでなく,実質的な部屋数を簡便に変 0009】)。 ウ本願発明のベッドは,使用者の好みに合わせて,自由空間から得られる開放感に与える影響を少なくするように,寝室を簡便に設置することができるだけでなく,実質的な部屋数を簡便に変更することができるので,特に賃貸住宅における居住空間を常に最適に保つのに便利であり,これによって引越の頻度を必要最小限に低減することができるという効果を奏する(【0010】,【0017】)。 2 取消事由1(本件補正を却下した判断の誤り)について(1) 新規事項の追加について原告は,「蛇腹方式」の隔壁は,本願当初明細書等の【0013】に記載された「折りたたみ形式」の隔壁の一態様であるといえるものであり,このことはその記載から容易に理解されることであるから,本件審決が,本件補正後の請求項13に係る補正事項は新規事項の追加に該当する旨判断したのは誤りである旨主張する。 - 26 -本願当初明細書等には,特許請求の範囲の請求項3に「前記隔壁が,高さ及び/又は長さにおいて調整可能な隔壁である」との記載,請求項17に「該隔壁が,引き戸方式及び/又は折り畳み方式で長さが可変となっている」との記載,【0013】には「例えば,引き戸や折りたたみ形式或いはそれらを組合わせた,長さが可変である隔壁とすることもできる。長さが可変である場合には,移動する隔壁底部に戸車を使用する必要がある。特に,引き戸形式又は折り畳み形式である場合は,先端部近傍に取っ手を付けておくことにより,開閉可能な扉として機能させる上で好都合である。」との記載があるものの,「蛇腹方式」を用いた隔壁は記載されていない。また,本願当初明細書等の記載から,「蛇腹方式」を用いた隔壁であることが自明であるともいえない。 したがって,本件補正後の請求項13に係る の,「蛇腹方式」を用いた隔壁は記載されていない。また,本願当初明細書等の記載から,「蛇腹方式」を用いた隔壁であることが自明であるともいえない。 したがって,本件補正後の請求項13に係る補正事項(「蛇腹方式で長さが可変となっている隔壁」との事項の追加)は,新たな技術的事項を導入するものであって,本願当初明細書等に記載した事項の範囲内でするものであるとは認められない。 そうすると,本件審決が,本件補正後の請求項13に係る補正事項は新規事項を追加するものであるとして,上記補正事項を含む本件補正は,特許法17条の2第3項の規定に違反するものであると判断した点に誤りはない。 (2) 補正の目的についてア原告は,本件補正後の請求項7,10及び13に係る補正は,特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから,本件審決が,これらの補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものではない旨判断したのは誤りである旨主張する。 しかしながら,特許法17条の2第5項2号に規定する特許請求の範囲の減縮は,同法36条5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するもの,すなわち特許請求の範囲の限定的減縮- 27 -に限られる。 本件補正が,本件補正前の請求項7,8,10及び14を削除し,本件補正後の請求項7,10及び13に特定されている事項を追加するものであることは,本件審決が認定し,原告も認めるところである。そして,本件補正後の請求項7に係る補正は,「扉として機能し得る,開閉可能な隔壁が設けられている」との発明特定事項を有する「隔壁付きベッド」の発明を,請求項10に係る補正は「扉として機能し得る開閉可能な隔壁を有する」との発明特定事項を有する「隔壁付きベッド用隔壁」の発明を, 壁が設けられている」との発明特定事項を有する「隔壁付きベッド」の発明を,請求項10に係る補正は「扉として機能し得る開閉可能な隔壁を有する」との発明特定事項を有する「隔壁付きベッド用隔壁」の発明を,請求項13に係る補正は「開閉可能な隔壁が,蛇腹方式で長さが可変となっている隔壁である」との発明特定事項を有する「隔壁付きベッド用隔壁」の発明を,それぞれ新たな請求項として追加するものであるから,特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものであるとは認められない。 イ原告は,本件補正後の請求項7,10及び13に記載された隔壁は,本件補正前の請求項1,3及び14に記載された隔壁の一態様であるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する旨主張する。 (ア) 本件補正前の請求項1について本件補正前の請求項1は,「(逆)L字型を構成する二つの側面に」「間仕切り用」として設けた「少なくとも,ベッド本体部高さの3倍以上の高さを有する」隔壁を発明特定事項として規定するが,かかる隔壁の「自由端」又は「端部」に設けた「扉として機能し得る,開閉可能な隔壁」については何ら規定していない。 したがって,本件補正後の請求項7の「(逆)L字型を構成する隔壁の少なくとも一方の自由端」に,「扉として機能し得る,開閉可能な隔壁が設けられている」との発明特定事項は,本件補正前の請求項1には存在しなかった隔壁を付加することを特定した事項であって,同請求項1に記載された隔壁の一態様であるとはいえず,本件補正前の請求項1- 28 -に記載された発明特定事項を限定するものには当たらない。 また,本件補正後の請求項10の「隔壁の一方の端部」に,「扉として機能し得る開閉可能な隔壁を有する」との発明特定事項も,同様に,本件補正前の請求 明特定事項を限定するものには当たらない。 また,本件補正後の請求項10の「隔壁の一方の端部」に,「扉として機能し得る開閉可能な隔壁を有する」との発明特定事項も,同様に,本件補正前の請求項1に記載された隔壁の一態様であるとはいえず,本件補正前の請求項1に記載された発明特定事項を限定するものには当たらない。 さらに,本件補正後の請求項13は,「開閉可能な隔壁」が,「蛇腹方式で長さが可変となっている隔壁である」と規定するものであるから,かかる発明特定事項も,本件補正前の請求項1に記載された隔壁の一態様であるとはいえず,本件補正前の請求項1に記載された発明特定事項を限定するものには当たらない。 (イ) 本件補正前の請求項3について本件補正前の請求項3は,「前記隔壁」,すなわち,本件補正前の請求項1に記載された「隔壁」が,「高さ及び/又は長さにおいて調整可能な隔壁である」ことを発明特定事項として規定するものであり,かかる隔壁の「自由端」又は「端部」に設けた「扉として機能し得る,開閉可能な隔壁」については何ら規定していない。 したがって,前記(ア)と同様に,本件補正後の請求項7,10及び13の発明特定事項は,本件補正前の請求項3に記載された隔壁の一態様であるとはいえず,本件補正前の請求項1に記載された発明特定事項を限定するものには当たらない。 (ウ) 本件補正前の請求項14について本件補正前の請求項14は,「前記隔壁」,すなわち,本件補正前の請求項1に記載された「隔壁」が,「引き戸方式及び/又は折り畳み方式で長さが可変となっている」ことを発明特定事項として規定するものであり,かかる隔壁の「自由端」又は「端部」に設けた「扉として機能- 29 -し得る,開閉可能な隔壁」 戸方式及び/又は折り畳み方式で長さが可変となっている」ことを発明特定事項として規定するものであり,かかる隔壁の「自由端」又は「端部」に設けた「扉として機能- 29 -し得る,開閉可能な隔壁」については何ら規定していない。 したがって,前記(ア)と同様に,本件補正後の請求項7,10及び13の発明特定事項は,本件補正前の請求項3に記載された隔壁の一態様であるとはいえず,本件補正前の請求項1に記載された発明特定事項を限定するものには当たらない。 ウそうすると,本件審決が,本件補正後の請求項7,10及び13に係る補正事項は特許請求の範囲の減縮を目的とするものではないとして,上記補正事項を含む本件補正は,特許法17条の2第5項の規定に違反するものであると判断した点に誤りはない。 (3) 以上によれば,本件審決が,本件補正を却下した判断に誤りはなく,原告の取消事由1に係る主張は理由がない。 なお,本件審決が判断の対象とした特許請求の範囲の請求項1の記載は,本件補正の前後を通じて変わっていないから,本件補正却下の許否は,本件の結論に影響しない。 3 引用発明について(1) 引用例に,前記第2の3(2)アに認定した引用発明が記載されていることは,当事者間に争いがない。 引用例(甲2)には,引用発明について,概略,次のような記載がある(図1及び図3については,別紙2の引用例図面目録を参照。)。 ア特許請求の範囲【請求項1】ベッド本体と,このベッド本体の外周部に立設されたベッド壁とを具備してなり,前記ベッド壁は,ベッド本体の外周部の一部を除いて,ベッド本体の外周に沿って,かつベッド本体より高く形成されていることを特徴とするベッド。 体の外周部に立設されたベッド壁とを具備してなり,前記ベッド壁は,ベッド本体の外周部の一部を除いて,ベッド本体の外周に沿って,かつベッド本体より高く形成されていることを特徴とするベッド。 【請求項3】請求項1または2記載のベッドを設けた住居であって,住居の寝室のほぼ中央部に前記ベッドが設置され,このベッドのベッド壁によ- 30 -って寝室内が区切られて,当該ベッド壁と寝室の内壁との間に所定目的の居住空間が設けられていることを特徴とするベッドが設けられた住居。 イ発明の詳細な説明(ア) 産業上の利用分野【0001】本発明は,ベッドとこのベッドが設けられた住居に係り,特に,ベッドによって住居の寝室を区画することができるものに関する。 (イ) 従来の技術【0002】住居の寝室にベッドを配置する場合,寝室の内壁に沿って設置するのが一般的である。これは,従来,寝室は就寝や休憩以外の目的で使用することがあまりなかったため,ベッドを設置するスペースと,その他の簡単な家具を設置するスペースとを有する比較的狭い部屋で済み,このような比較的狭い寝室の中央部にベッドを配置すると,寝室に家具等を設置する場所が狭くなるか,あるいは無くなったりして寝室の空間を有効利用することができないからである。 【0003】一方,近年,一つの部屋の大きさを広くとって解放感を与え,快適な生活を送れるような住居が提供されつつある。このような住居において,寝室を広くとった場合,寝室に,就寝,休憩以外を目的とする,例えば,書斎,化粧場所,サンルーム等のゾーン(空間)をとることができるので,より快適な生活が送れる。 (ウ) 発明が解決しようとする課題【0004】しかしながら,夫婦で1つ ,例えば,書斎,化粧場所,サンルーム等のゾーン(空間)をとることができるので,より快適な生活が送れる。 (ウ) 発明が解決しようとする課題【0004】しかしながら,夫婦で1つの寝室を使用する場合,寝室に上記のようなゾーンを設けると,就寝している者と,その他のゾーンを使用している者とが一つの部屋に混在していることになるので,気兼ねなく各ゾーンを使用することができない。そこで,寝室をカーテンヲール等の間仕切り壁で仕切って,ベッドと各ゾーンとを区切った場合,従来の狭い寝室に逆戻りするため,開放感がなくなり,寝室を広くとった- 31 -意味がなくなる。 【0005】本発明は上記事情に鑑みてなされたもので,広い寝室等に設置するだけで,ベッドと,その他のゾーンとを開放感を持たせつつ区切ることができるベッドおよびこのベッドが設けられた住居を提供することを目的としている。 (エ) 課題を解決するための手段【0006】上記目的を達成するために,本発明の請求項1のベッドは,ベッド本体と,このベッド本体の外周部に立設されたベッド壁とを具備してなるもので,前記ベッド壁を,ベッド本体の外周部の一部を除いて,ベッド本体の外周に沿って,かつベッド本体より高く形成したことを特徴としている。 【0008】請求項3のベッドが設けられた住居は,住居の寝室のほぼ中央部に前記請求項1または2のベッドが設置され,このベッドのベッド壁によって寝室内が区切られて,当該ベッド壁と寝室の内壁との間に所定目的の居住空間(ゾーン)が設けられていることを特徴としている。 (オ) 作用【0009】本発明の請求項1のベッドにあっては,ベッドを寝室に設置するだけで,ベッド壁によって,ベッドと,その他のゾ ーン)が設けられていることを特徴としている。 (オ) 作用【0009】本発明の請求項1のベッドにあっては,ベッドを寝室に設置するだけで,ベッド壁によって,ベッドと,その他のゾーンとを開放感を持たせつつ区切ることができる。 【0011】請求項3のベッドが設けられた住居にあっては,住居の寝室のほぼ中央部に前記ベッドを設置することによって,ベッド壁により寝室を間仕切り壁等を用いることなく,解放感を持たせつつ区切って所定目的の居住空間を形成し,部屋の有効利用することができる。 (カ) 実施例【0012】以下,本発明の一実施例について,図1ないし図3を参照して説明する。図1および図2は本発明のベッドの一実施例を示すもの- 32 -で,これらの図において符号1はベッドを示す。このベッド1はダブルベッドであり,ベッド本体2と,このベッド本体2の外周部に立設されたベッド壁3とを主体として構成されている。 【0013】前記ベッド本体2は,多数のスプリングが内蔵されて弾力性が付与されたソファー4と,このソファー4が載置される木製の載置台5とによって構成されている。なお,符号6は掛け布団またはベッドカバー,符号7,7は枕を示す。また,載置台5には引き出し等を設け,その内部を収納部としてもよい。前記ベッド壁3は平面視L字状をなすもので,ベッド本体2の外周部のうち,枕7,7が載置される上側面と,この上側面に直交する右側面に沿って形成され,その一方の端部はベッド本体2の左側面と面一にされ,また他方の端部は前記上側面と平行な下側面と面一にされている。また,ベッド壁3は所定の厚みを持ち,内部は中空に形成され,上面には面板8が貼設されている。さらに,ベッド壁3は,ベッド本体2の約2倍の高さに形成 端部は前記上側面と平行な下側面と面一にされている。また,ベッド壁3は所定の厚みを持ち,内部は中空に形成され,上面には面板8が貼設されている。さらに,ベッド壁3は,ベッド本体2の約2倍の高さに形成され,その下端部がベッド本体2の載置台5に着脱自在に取り付けられ,ベッド本体2と一体的に構成されている。 【0015】上記構成のベッド1は,図3に示すように,住居Jの寝室12のほぼ中央部に設置される。この寝室12は平面視ほぼ長方形状をなすもので,その前側の壁面には,そのほぼ全面に窓13が設けられ,この窓13より内側のゾーン14がサンルームとされている。また,寝室12の左側の壁面には,その一部に窓15が設けられ,その内側のゾーン16が化粧ルームとされている。さらに,寝室12の右側の壁面には書棚17が設けられ,この書棚17の左側には机18と椅子19,19が設けられ,このゾーン20が書斎とされている。なお,サンルームとされているゾーン14の両側には物入21が設けられ,扉21a…によって物品が出し入れできるようになっており,また,化粧ルームとさ- 33 -れているゾーン16には,クローゼット22が設けられ,扉22a…によって衣服が出し入れできるようになっている。 【0016】前記寝室12にベッド1を設置する場合,ベッド壁3の一方の片3aを,前記窓13と所定間隔を隔てて,当該窓13と平行になるようにし,かつ,ベッド壁3の他方の片3bを前記書棚17と所定間隔を隔てて,当該書棚17と平行になるように設置する。このようにすると,ゾーン14と,ゾーン20とがベッド壁3によって,ベッド1から区切られ,それぞれの目的にあったゾーンとなる。また,化粧ルームとされるゾーン16は,前記ゾーン14,20から区切られ,ベッド1が設置されてクロ 4と,ゾーン20とがベッド壁3によって,ベッド1から区切られ,それぞれの目的にあったゾーンとなる。また,化粧ルームとされるゾーン16は,前記ゾーン14,20から区切られ,ベッド1が設置されてクローゼット22を有する寝室空間となる。 【0018】上記実施例によれば,住居Jの寝室12のほぼ中央部に,ベッド壁3を有するベッド1を設け,このベッド壁3によって,寝室12を区切って,サンルームとなるゾーン14と,書斎となるゾーン20と,化粧室となるゾーン16とを区切ったので,広い寝室12を間仕切り壁等を用いることなく,有効利用することができる。また,ベッド1のベッド壁3がベッド本体2の2倍程度の高さであるので,解放感を失うことなく,各ゾーンを区切ることができる。さらに,ベッド1のベッド壁3内には収納部11が設けられ,かつ,このベッド壁3はゾーン14,20に向いているので,各ゾーンにて使用する物品を効果的に収納することができ,部屋の有効利用を図ることができる。 【0019】なお,上記実施例では,ベッド1のベッド壁3をサンルームとなるゾーン14および書斎となるゾーン20に向けて,これらゾーンを区切るようにしたが,寝室12に設けられている各種機能,設備等によって,ベッド1の設置場所を変えて,ベッド壁3によって区切るゾーンを変更することにより,部屋の空間および雰囲気を可変とすることができる。また,上記実施例では,ベッド本体2の外周部のうちの2つ- 34 -の側面側にベッド壁3を設けたが,これに限ることなく,ベッド壁3はベッド本体2の外周部の一部を除いて,つまり,ベッドに人間が入れる入口部となる部分を残して設ければよい。 (キ) 発明の効果【0020】以上説明したように,本発明の請求項1のベッドによれば, 外周部の一部を除いて,つまり,ベッドに人間が入れる入口部となる部分を残して設ければよい。 (キ) 発明の効果【0020】以上説明したように,本発明の請求項1のベッドによれば,ベッド本体の外周部に設けるベッド壁を,ベッド本体の外周部の一部を除いて,ベッド本体の外周に沿って,かつベッド本体より高く形成したので,このベッドを寝室に設置するだけで,ベッドと,その他のゾーンとを開放感を持たせつつ区切ることができる。 【0022】請求項3のベッドが設けられた住居によれば,住居の寝室のほぼ中央部に前記ベッドを設置し,このベッドのベッド壁によって寝室内を区切って,当該ベッド壁と寝室の内壁との間に所定目的の居住空間を設けたので,寝室を間仕切り壁等を用いることなく,解放感を持たせつつ区切って,有効利用することができる。 (2) 前記(1)の記載によれば,引用例には,引用発明に関し,以下の点が開示されているものと認められる。 ア引用発明は,ベッドによって住居の寝室を区画することができるものに関する(【0001】)。 近年,一つの部屋の大きさを広くとって解放感を与え,快適な生活を送れるような住居が提供されつつあるが,このような住居において,寝室を広くとった場合,寝室に,就寝,休憩以外を目的とする,例えば,書斎,化粧場所,サンルーム等のゾーン(空間)をとることができるので,より快適な生活が送れる(【0003】)。 しかしながら,夫婦で1つの寝室を使用する場合,寝室に上記のようなゾーンを設けると,就寝している者と,その他のゾーンを使用している者とが一つの部屋に混在していることになるので,気兼ねなく各ゾーンを使- 35 -用することができないが,寝室をカーテンウォール等の間仕切り壁で仕切って,ベッドと各ゾ の他のゾーンを使用している者とが一つの部屋に混在していることになるので,気兼ねなく各ゾーンを使- 35 -用することができないが,寝室をカーテンウォール等の間仕切り壁で仕切って,ベッドと各ゾーンとを区切った場合,従来の狭い寝室に逆戻りするため,開放感がなくなり,寝室を広くとった意味がなくなる(【0004】)。 引用発明は,上記事情に鑑みてされたものであり,広い寝室等に設置するだけで,ベッドとその他のゾーンとを開放感を持たせつつ区切ることができるベッドを提供することを目的とするものである(【0005】)。 イ特許請求の範囲の請求項1に記載された発明の実施例に相当する引用発明のベッド1は,ベッド本体2と,このベッド本体2の外周部に立設されたベッド壁3とを主体として構成され(【0012】),ベッド壁3は平面視L字状をなすもので,ベッド本体2の外周部のうち,上側面と,この上側面に直交する右側面に沿って,ベッド本体の約2倍の高さに形成され,ベッド本体と一体的に構成されている(【0013】)。 また,特許請求の範囲の請求項3に記載された発明の実施例として,住居の寝室のほぼ中央部に引用発明のベッド1を設置する場合,ベッド壁3の一方の片を,窓と所定間隔を隔てて,当該窓と平行になるようにし,かつ,ベッド壁3の他方の片を書棚と所定間隔を隔てて,当該書棚と平行になるように設置すると,ゾーン14と,ゾーン20とがベッド壁3によって,ベッド1から区切られ,それぞれの目的にあったゾーンとなる(【0016】)。上記実施例によれば,住居の寝室のほぼ中央部に,ベッド壁3を有するベッド1を設け,このベッド壁3によって,寝室を区切って,サンルームとなるゾーン14と,書斎となるゾーン20と,化粧室となるゾーン16とを区切ったので,広い の寝室のほぼ中央部に,ベッド壁3を有するベッド1を設け,このベッド壁3によって,寝室を区切って,サンルームとなるゾーン14と,書斎となるゾーン20と,化粧室となるゾーン16とを区切ったので,広い寝室を間仕切り壁等を用いることなく,有効利用することができ,また,ベッド1のベッド壁3がベッド本体2の2倍程度の高さであるので,解放感を失うことなく,各ゾーンを区切ることができる(【0018】)。 - 36 -さらに,寝室に設けられている各種機能,設備等によって,ベッド1の設置場所を変えて,ベッド壁3によって区切るゾーンを変更することにより,部屋の空間及び雰囲気を可変とすることができる(【0019】)。 ウ引用発明によれば,ベッド1を寝室に設置するだけで,ベッドと,その他のゾーンとを開放感を持たせつつ区切ることができる(【0020】)。 また,引用発明のベッド1が設けられた住居によれば,寝室を間仕切り壁等を用いることなく,解放感を持たせつつ区切って,有効利用することができる(【0022】)。 4 取消事由2-1(本願発明1の要旨認定の誤り)について(1) 本願発明1の要旨は,特許請求の範囲(請求項1)の記載のとおり,「部屋を分割するために使用される隔壁付きベッドであって,ベッドの一つの側面,又は(逆)L字型を構成する二つの側面に,少なくとも,ベッド本体部高さの3倍以上の高さを有する,間仕切り用の隔壁を設けてなると共に,前記ベッドが有する足に移動用のキャスターが設けられてなることを特徴とする隔壁付きベッド。」と認定すべきである。本件審決の認定に誤りはない。 (2) 原告の主張について原告は,本願発明1の効果や目的に照らし,請求項1に記載された「部屋を分割するために使用される隔壁付き 。」と認定すべきである。本件審決の認定に誤りはない。 (2) 原告の主張について原告は,本願発明1の効果や目的に照らし,請求項1に記載された「部屋を分割するために使用される隔壁付きベッドであって,」との構成は,「部屋数を変更する機能を有する隔壁付きベッド」である点が,また,「ベッドが有する足に移動用のキャスターが設けられてなる」との構成は,「一旦設置したら原則として動かさないもので,間取りの変更等を十分に可能とする」ものである点が,それぞれ認定されなければならない旨主張する。 しかしながら,原告の上記主張は,特許請求の範囲(請求項1)の記載を離れ,「部屋を分割するために使用される」との文言を「部屋数を変更する機能を有する」と読み替え,「ベッドが有する足に移動用のキャスターが設けられてなる」との「ベッド」について,「一旦設置したら原則として動か- 37 -さないもので,間取りの変更等を十分に可能とする」という構成を付加するに等しいものである。 したがって,原告の上記主張は,特許請求の範囲(請求項1)の記載に基づかないものであって,失当である。 (3) 以上によれば,原告の取消事由2-1に係る主張は理由がない。 5 取消事由2-2(本願発明1と引用発明との一致点及び相違点の認定の誤り)について(1) 本願発明1と引用発明について本願発明1は,「部屋を分割するために使用される隔壁付きベッドであって,ベッドの一つの側面,又は(逆)L字型を構成する二つの側面に,少なくとも,ベッド本体部高さの3倍以上の高さを有する,間仕切り用の隔壁を設けてなると共に,前記ベッドが有する足に移動用のキャスターが設けられてなることを特徴とする隔壁付きベッド。」であり,本件審決が認定した引用発明は,「ベ の3倍以上の高さを有する,間仕切り用の隔壁を設けてなると共に,前記ベッドが有する足に移動用のキャスターが設けられてなることを特徴とする隔壁付きベッド。」であり,本件審決が認定した引用発明は,「ベッド1は,ベッド本体2とこのベッド本体2の外周部に立設されたベッド壁3とを主体として構成されており,ベッド壁3は,ベッド本体2の約2倍の高さに形成され,ベッド本体2と一体的に構成され,平面視L字状をなし,ベッド壁3によって寝室12を区切るベッド1。」というものである(なお,原告は,引用例に本件審決が認定した上記引用発明が記載されていること自体は争っていない。)。 (2) 本願発明1と引用発明との一致点についてア本願発明1における「部屋を分割するために使用される隔壁付きベッド」の意義について本願発明1の特許請求の範囲(請求項1)には,「部屋を分割するために使用される隔壁付きベッド」との記載があるが,「部屋を分割する」とはどのような状態をいうものか,請求項1の記載からは一義的に明らかであるとはいえない。 - 38 -そこで,本願明細書の記載を参酌すると,本願発明1の特徴は,前記1(2)記載のとおり,自由空間から得られる開放感に与える影響が少ない寝室を,居住者が自分の好みに合わせて簡便に設置するに適したベッドを提供すること(第1の目的),状況に合わせて適宜実質的な部屋数を変更するのに適したベッドを提供すること(第2の目的)を目的とするものであり,請求項1記載の構成を採用することにより,使用者の好みに合わせて,自由空間から得られる開放感に与える影響を少なくするように,寝室を簡便に設置することができるだけでなく,実質的な部屋数を簡便に変更することができるので,特に賃貸住宅における居住空間を常に最適に保つのに 由空間から得られる開放感に与える影響を少なくするように,寝室を簡便に設置することができるだけでなく,実質的な部屋数を簡便に変更することができるので,特に賃貸住宅における居住空間を常に最適に保つのに便利であり,これによって引越の頻度を必要最小限に低減することができるという効果を奏するものであると認められる。 本願発明1の上記特徴に照らせば,本願発明1において,「部屋を分割する」とは,「隔壁付きベッド」により仕切られる空間がこれと隣接する他の空間から完全に独立した状態で部屋を複数の領域に分けることを意味するものではなく,開放感に与える影響を少なくするように,「隔壁付きベッド」により仕切られた空間がこれと隣接する他の空間と連続した状態,すなわち,「隔壁」の高さが天井に達せず,隔壁の上端と天井との間に,開放感が得られる程度の間隙がある状態で部屋を複数の領域に分けることを意味するものと解される。 次に,本願発明1の「隔壁」について,特許請求の範囲(請求項1)には,「少なくとも,ベッド本体部高さの3倍以上の高さを有する,間仕切り用の隔壁」であることが規定されている。 ここで,「隔壁」とは,「間をへだてる壁。仕切り。」を意味する用語であるが(新村出編「広辞苑第6版」2008年1月,岩波書店発行),本願発明1に係る特許請求の範囲や本願明細書中には,「隔壁」がこれと異なる意義で用いられていることを示す記載はない。 - 39 -また,本願明細書中には,ベッド本体部の高さや隔壁の高さについて,具体的数値に言及した記載は存せず,本願発明1において「隔壁」の有する高さの下限値は一義的に定まるものではないから,本願発明1の「隔壁」という用語自体が,「間を隔てる壁」又は「仕切り」の高さを画するものであるとはいえ 記載は存せず,本願発明1において「隔壁」の有する高さの下限値は一義的に定まるものではないから,本願発明1の「隔壁」という用語自体が,「間を隔てる壁」又は「仕切り」の高さを画するものであるとはいえない。 したがって,本願発明1の「隔壁」は,その用語の字義のとおり,「間を隔てる壁」又は「仕切り」を意味するものと解され,「隔壁」に該当するか否かは,一定以上の高さや幅を有するものであるか否かにはかかわらないものと認められる。 以上によれば,本願発明1において「部屋を分割するために使用される隔壁付きベッド」とは,壁(仕切り)の高さが天井に達せず,壁(仕切り)の上端と天井との間に,開放感が得られる程度の間隙がある状態で部屋を複数の領域に分けるために使用される壁(仕切り)付きベッドを意味するものと解される。 イ引用発明は,前記3(2)記載のとおり,広い寝室等に設置するだけで,ベッドとその他のゾーンとを開放感を持たせつつ区切ることができるベッドを提供することを目的とするものであり,引用発明のベッド1を寝室に設置するだけで,ベッドと,その他のゾーンとを開放感を持たせつつ区切ることができ,引用発明のベッド1が設けられた住居によれば,寝室を間仕切り壁等を用いることなく,解放感を持たせつつ区切って,有効利用することができるものであると認められる。 ところで,引用発明の「ベッド壁3」は,ベッド本体2の約2倍の高さに形成されたものであるが,引用例には,ベッド本体2の高さやベッド壁3の高さについて具体的数値に言及した記載は存しないから,「ベッド壁3」の高さは具体的に明らかではない。 しかしながら,引用発明が,上記のとおり,ベッド1を寝室に設置する- 40 -だけで,ベッドと,その他のゾーンとを開放感を持たせつつ区切ること ベッド壁3」の高さは具体的に明らかではない。 しかしながら,引用発明が,上記のとおり,ベッド1を寝室に設置する- 40 -だけで,ベッドと,その他のゾーンとを開放感を持たせつつ区切ることができるものであることからすると,「ベッド壁3」は,開放感を持たせつつ部屋を複数の領域に分けることができる程度の高さを有する壁(仕切り)であると解される。 したがって,引用発明の「ベッド壁3によって寝室12を区切る,ベッド1」は,寝室12を壁(仕切り)の高さが天井に達せず,壁(仕切り)の上端と天井との間に,開放感が得られる程度の間隙がある状態で部屋を複数の領域に分けるために使用される壁(仕切り)付きベッドであると認められる。 ウ以上によれば,引用発明の「ベッド本体2と一体的に構成され」た「ベッド壁3によって寝室12を区切る,ベッド1」は,本願発明1の「部屋を分割するために使用される隔壁付きベッド」に相当する。 また,引用発明の「ベッド壁3」は,「ベッド本体2の外周部に立設され」,「平面視L字状をな」すものであるから,本願発明1の「ベッドの(逆)L字型を構成する二つの側面に」設けられたものであるといえる。 したがって,本願発明1と引用発明とは,「部屋を分割するために使用される隔壁付きベッドであって,ベッドの(逆)L字型を構成する二つの側面に,間仕切り用の隔壁を設けてなる,隔壁付きベッド。」である点で一致する。 エ原告の主張について原告は,本願発明1の「隔壁」は,分割される部屋を構成している既存の隔壁と協同して,新たに小さな部屋を構成するという作用,効果を有するものであるのに対し,引用発明の「ベッド壁3」は,部屋数を増加させる機能を有しないものであって,本願発明1の「隔壁」に相当しないから,引用発明の「ベッド壁3 な部屋を構成するという作用,効果を有するものであるのに対し,引用発明の「ベッド壁3」は,部屋数を増加させる機能を有しないものであって,本願発明1の「隔壁」に相当しないから,引用発明の「ベッド壁3」が本願発明1の「隔壁」に相当するとする本件審決における一致点の認定は誤りである旨主張する。 - 41 -しかしながら,本願発明1の「隔壁」も,引用発明の「ベッド壁3」も,その上端と天井との間に,開放感が得られる程度の間隙がある状態で部屋を複数の領域に分ける機能を有する壁(仕切り)であって,本願発明1の「隔壁」と引用発明の「ベッド壁3」とは,壁(仕切り)の高さの程度に差異があるものの,かかる機能自体は両者に共通するものである。 そして,本願発明1の「隔壁」は,「間を隔てる壁」又は「仕切り」を意味するものと解され,「隔壁」に該当するか否かは,一定以上の高さや幅を有するものであるか否かにはかかわらないものと認められるから,引用発明の「ベッド壁3」はこれに相当するものであると認められる。 したがって,引用発明の「ベッド壁3」が本願発明1の「隔壁」に相当しないことを前提に,本件審決における一致点の認定に誤りがある旨の原告の主張は,理由がない。 (3) 本願発明1と引用発明との相違点についてア本願発明1と引用発明とは,本願発明1の「隔壁」が,「少なくとも,ベッド本体部高さの3倍以上の高さを有する」ものであるのに対し,引用発明の「ベッド壁3」は,「ベッド本体2の約2倍の高さに形成され」ている点(相違点1)において相違する。 原告は,本願発明の「隔壁」は,分割される部屋を構成している既存の隔壁と協同して,新たに小さな部屋を構成するという作用,効 体2の約2倍の高さに形成され」ている点(相違点1)において相違する。 原告は,本願発明の「隔壁」は,分割される部屋を構成している既存の隔壁と協同して,新たに小さな部屋を構成するという作用,効果を有するものであるが,ベッド側面と「面一」の隔壁を設けても部屋を分割することはできないから,このような態様を含まないものであるのに対し,引用発明の「ベッド壁3」は,ベッドの外周に沿って立設される壁であるから,ベッド側面の長さよりも長くなることはあり得ず,ベッド壁の端部が,それぞれベッド側面の端部と「面一」である態様を含むものである点で相違するにもかかわらず,本件審決はかかる相違点を看過した旨主張する。 しかしながら,前記(2)アのとおり,本願発明1の「隔壁」は,引用発明- 42 -の「ベッド壁3」と同様に,その上端と天井との間に,開放感が得られる程度の間隙がある状態で部屋を複数の領域に分ける機能を有する壁(仕切り)であって,「隔壁」に該当するか否かは,一定以上の高さや幅を有するものであるか否かにはかかわらないものであると認められる。 したがって,本願発明1の「隔壁」が,その端部が,ベッド側面の端部と「面一」である態様を含まないものであるとはいえないから,かかる態様を含まないものであることを前提に本件審決に相違点の看過がある旨の原告の上記主張は,理由がない。 イまた,引用例には,「ベッドを寝室に設置するだけで,ベッド壁によって,ベッドと,その他のゾーンとを開放感を持たせつつ区切ることができる。」(【0009】),「寝室12に設けられている各種機能,設備等によって,ベッド1の設置場所を変えて,ベッド壁3によって区切るゾーンを変更することにより,部屋の空間および雰囲気を可変とすることが る。」(【0009】),「寝室12に設けられている各種機能,設備等によって,ベッド1の設置場所を変えて,ベッド壁3によって区切るゾーンを変更することにより,部屋の空間および雰囲気を可変とすることができる。」(【0019】)などと,引用発明のベッド1が一旦設置した場所から他の場所に移動され得るものであることを示唆する記載はあるものの,引用発明のベッド1が,足を有し,該足に移動用のキャスターが設けられているものであることを示す記載はない。 したがって,本願発明1と引用発明とは,本願発明1の「ベッドが有する足に移動用のキャスターが設けられて」いるのに対して,引用発明は,その点につき明らかでない点(相違点2)において相違する。 ウ原告は,本願発明1と引用発明とは,本願発明1が「ベッドの一つの側面」のみに隔壁を有する構成を含むものであるのに対し,引用発明はこのような構成を含まない点において相違するにもかかわらず,本件審決はかかる相違点を看過し,かかる相違点についての判断を遺脱した旨主張する。 しかしながら,本願発明1は,その特許請求の範囲(請求項1)に「ベッドの一つの側面,又は(逆)L字型を構成する二つの側面に」,「間仕- 43 -切り用の隔壁を設けてなる」と記載されているように,その発明特定事項として,「ベッドの一つの側面」に隔壁を設ける構成と,「(逆)L字型を構成する二つの側面」に隔壁を設ける構成とを,選択的に規定している。 そして,本件審決は,選択的に規定された発明特定事項のうち,「(逆)L字型を構成する二つの側面」に隔壁を設ける構成について,引用発明と対比し,引用発明に基づき容易に発明をすることができたものであるか否かを判断したものであるから,これと選択的に規定された,「ベッドの一つの側面」 る二つの側面」に隔壁を設ける構成について,引用発明と対比し,引用発明に基づき容易に発明をすることができたものであるか否かを判断したものであるから,これと選択的に規定された,「ベッドの一つの側面」に隔壁を設ける構成を引用発明が備えるか否かは問題とならない。 したがって,原告の上記主張は理由がない。 (4) 以上のとおり,本件審決における本願発明1と引用発明との一致点の認定及び相違点の認定に誤りはなく,本件審決には相違点の看過は存しない。 よって,原告の取消事由2-2に係る主張は,理由がない。 6 取消事由2-3(相違点に係る容易想到性判断の誤り)について(1) 相違点1の容易想到性についてア本願発明1と引用発明とは,本願発明1の「隔壁」が,「少なくとも,ベッド本体部高さの3倍以上の高さを有する」ものであるのに対し,引用発明の「ベッド壁3」は,「ベッド本体2の約2倍の高さに形成され」ている点(相違点1)において相違する。 イ引用発明は,広い寝室等に設置するだけで,ベッドとその他のゾーンとを開放感を持たせつつ区切ることができるベッドを提供することを目的とするものであり,ベッド本体の外周部の一部を除いて,ベッド本体の外周に沿って立設され,かつ,ベッド本体より高く形成されたベッド壁を設けることにより,引用発明のベッド1を寝室に設置するだけで,ベッドと,その他のゾーンとを開放感を持たせつつ区切ることができ,引用発明のベッド1が設けられた住居によれば,寝室を間仕切り壁等を用いることなく,- 44 -開放感を持たせつつ区切って,有効利用することができるというものである。 そして,引用発明のベッド1は,引用例の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明の実施 用いることなく,- 44 -開放感を持たせつつ区切って,有効利用することができるというものである。 そして,引用発明のベッド1は,引用例の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明の実施例に相当するところ,請求項1は「ベッド壁は,・・・ベッド本体より高く形成されている」と規定するのみで,ベッド壁がベッド本体部の高さに比べどの程度高く形成されているものであるのかやベッド壁の高さの上限については具体的に規定していない。また,引用発明のベッド1を設けた住居は,引用例の特許請求の範囲の請求項3に記載された発明の実施例に相当するところ,引用例には,引用発明のベッド1を寝室12に設けることにより,「ベッド壁3によって,寝室12を区切って,サンルームとなるゾーン14と,書斎となるゾーン20と,化粧室となるゾーン16とを区切った」実施例が記載されているが(【0016】,【0018】),請求項3には「ベッド壁と寝室の内壁との間に所定目的の居住空間が設けられている」と記載されており,ベッド壁により区切られる空間の用途も特に限定されていない。 そうすると,引用発明において,ベッド壁3の高さをどの程度のものとするかは,これを設置する寝室の広さや天井の高さ,ベッド壁3により区切られる居住空間(ゾーン)の用途,居住者(当該寝室を使用する者)の特性等を考慮しながら,当業者が適宜設定し得る設計的事項であるというべきである。 ウそして,本願発明1の隔壁の高さは,「少なくとも,ベッド本体部高さの3倍以上の高さ」であると規定されているが,本願明細書中には,ベッド本体部の高さや隔壁の高さについて,具体的数値に言及した記載は存しないから,そもそも,本願発明1は,その隔壁の高さの下限値を具体的数値をもって規定したものではなく,さらに,「少なくとも,ベッド本 ド本体部の高さや隔壁の高さについて,具体的数値に言及した記載は存しないから,そもそも,本願発明1は,その隔壁の高さの下限値を具体的数値をもって規定したものではなく,さらに,「少なくとも,ベッド本体部高さの3倍以上の高さ」に規定することに関しても,僅かに「隔壁の高さ- 45 -は,ベッドとしての機能を維持する観点から,ベッド本体の高さの3倍以上であることが必要である。」(【0013】)との記載があるのみで,「ベッド本体部高さの3倍以上」という範囲を選択した数値的な根拠や,当該範囲外の場合と比較して,当該範囲内の場合に顕著な作用効果を奏すると認められるに足りる十分な検証結果等が記載されているわけではない。 したがって,本願発明1において,隔壁の高さを「少なくとも,ベッド本体部高さの3倍以上の高さ」であると規定したことに格別の技術的意義があると認めることはできない。 加えて,引用発明の「ベッド壁3」は,「ベッド本体2の約2倍の高さに形成され」ているものの,引用例中にも,ベッド本体2の高さやベッド壁3の高さについて,具体的数値に言及した記載は存しないところ,ベッド本体部の高さは,その用途(子供用か大人用か)やデザイン等によっても一様でないことは明らかであるから,本願発明1における隔壁の高さ(「少なくとも,ベッド本体部高さの3倍以上の高さを有する」)と引用発明における「ベッド壁3」の高さ(「べッド本体2の約2倍の高さに形成され」)の関係も,常に前者が後者を上回るというような,一様なものではないこと,本願発明1の「隔壁」も引用発明の「ベッド壁3」も,いずれも,その上端と天井との間に,開放感が得られる程度の間隙がある状態で部屋を複数の領域に分ける機能を有する壁(仕切り)であることに照らせば,引用発明において,ベッド壁3の高さをベッド本 3」も,いずれも,その上端と天井との間に,開放感が得られる程度の間隙がある状態で部屋を複数の領域に分ける機能を有する壁(仕切り)であることに照らせば,引用発明において,ベッド壁3の高さをベッド本体2の高さの3倍以上とすることに阻害要因があるとはいえない。 エ以上によれば,引用発明において,相違点1に係る本願発明1の構成を備えるようにすること,すなわち,「ベッド壁3」の高さを「少なくとも,ベッド本体部高さの3倍以上の高さを有する」ようにすることは,当業者が容易に想到することができたものであると認められる。 (2) 相違点2の容易想到性について- 46 -ア本願発明1の「ベッドが有する足に移動用のキャスターが設けられて」いるのに対して,引用発明は,その点につき明らかでない点(相違点2)において相違する。 イ甲8(特開2001-128795号公報)の【0012】,図1,図4,甲3(特開2007-2541号公報)の図7,甲9(特開2007-332685号公報)の図7,図8には,足を有し,該足に移動用のキャスターを設けたベッドが開示されており,ベッドを移動させるために,ベッドに足を設け,該足に移動用のキャスターを設けることは,本願の出願前に,当業者において周知慣用手段であったと認められる。 ウそして,引用例には,「ベッドを寝室に設置するだけで,ベッド壁によって,ベッドと,その他のゾーンとを開放感を持たせつつ区切ることができる。」(【0009】),「寝室12に設けられている各種機能,設備等によって,ベッド1の設置場所を変えて,ベッド壁3によって区切るゾーンを変更することにより,部屋の空間および雰囲気を可変とすることができる。」(【0019】)などと,引用発明のベッド1が一旦設置した よって,ベッド1の設置場所を変えて,ベッド壁3によって区切るゾーンを変更することにより,部屋の空間および雰囲気を可変とすることができる。」(【0019】)などと,引用発明のベッド1が一旦設置した場所から他の場所に移動され得るものであることを示唆する記載があるから,引用発明において,ベッドを移動させるための周知慣用手段である,ベッドに足を設け,該足に移動用のキャスターを設けるという構成を採用することには動機付けがあるというべきである。 エ以上によれば,引用発明において,相違点2に係る本願発明1の構成を備えるようにすること,すなわち,「ベッドが有する足に移動用のキャスターが設けられて」いるようにすることは,当業者が容易に想到することができたものであると認められる。 (3) 小括以上のとおり,本件審決における相違点1及び2に係る容易想到性の判断に誤りはなく,原告の取消事由2-3に係る主張は,いずれも理由がない。 - 47 - 7 取消事由3(従属項に対する判断の遺脱)について(1) 原告は,本件審決は,請求項2以下の従属項に記載された発明について判断しなかったから,本件審決には判断の遺脱の違法がある旨主張する。 (2) 特許法は,一つの特許出願に対し,一つの行政処分としての特許査定又は特許審決がされ,これに基づいて一つの特許が付与され,一つの特許権が発生するという基本構造を前提としており,請求項ごとに個別に特許が付与されるものではない。このような構造に基づき,複数の請求項に係る特許出願であっても,特許出願の分割をしない限り,当該特許出願の全体を一体不可分のものとして特許査定又は拒絶査定をするほかなく,一部の されるものではない。このような構造に基づき,複数の請求項に係る特許出願であっても,特許出願の分割をしない限り,当該特許出願の全体を一体不可分のものとして特許査定又は拒絶査定をするほかなく,一部の請求項に係る特許出願について特許査定をし,他の請求項に係る特許出願について拒絶査定をするというような可分的な取扱いは予定されていない。このことは,特許法49条,51条の文言のほか,特許出願の分割という制度の存在自体に照らしても明らかである。 そして,本件審決は,本願発明1について,特許法29条2項の規定により特許を受けることができないと判断しているのであるから,これによって本願が全体として同法49条2号に該当し,拒絶をすべきものとなることは明らかである。仮に,本件審決が請求項2以下に係る発明について判断をしたとしても,本願発明1が同号に該当するものである以上,本願を拒絶すべきものであるという結論には影響しない。 原告は,請求項2以下の従属項に記載された発明について判断しないことは,審判請求費用が請求項の数に依存することと整合しない旨主張する。しかし,拒絶査定不服審判について,手数料額の一部が,当該特許出願に含まれる請求項の数に応じた額とされているのは,審判請求人が当該審判で主張する利益,すなわち特許査定がされることにより審判請求人に与えられる利益が特許出願の全体に及ぶことに対応するものであるから,原告の上記指摘は当たらない。 - 48 -以上のとおり,本件審決に請求項2以下の従属項に記載された発明についての判断遺脱の違法は存しない。 (3) 以上によれば,原告の取消事由3に係る主張は理由がない。 8 結論以上の次第であるから,原告主張の 下の従属項に記載された発明についての判断遺脱の違法は存しない。 (3) 以上によれば,原告の取消事由3に係る主張は理由がない。 8 結論以上の次第であるから,原告主張の取消事由はいずれも理由がなく,本件審決にこれを取り消すべき違法は認められない。 したがって,原告の請求は棄却されるべきものである。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官髙部眞規子 裁判官柵木澄子 裁判官鈴木わかな

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