(判決主文)被告人を懲役7年に処する。 未決勾留日数中120日をその刑に算入する。 (罪となるべき事実)被告人は,第1 平成12年7月31日ころ,秋田市ab番c号所在のA(当時79歳)方において,交際中の同人に対し,返済の意思も能力もないのにこれあるように装い,「会社の金を盗まれてしまって困っている。自転車の前籠に200万円を入れたセカンドバックを入れたまま自転車を置いて知り合いの人と話をしている間にセカンドバックを盗まれてしまった。後で必ず返すから,200万円貸してくれないか。」などとうそを言い,同人をしてその旨誤信させ,よって,同年8月1日ころ,同人方において,同人から現金200万円の交付を受け,もって,人を欺いて財物を交付させ第2 同年8月7日ころ,前記A方において,交際中の同人に対し,前同様に装い,「会社の関係で200万円どうしても必要になった。何とか貸してもらえないか。保険の満期金が下りたら間違いなく前に借りた200万円と一緒に返すから頼む。」などとうそを言い,同人をしてその旨誤信させ,よって,同月10日ころ,同人方において,同人から現金200万円の交付を受け,もって,人を欺いて財物を交付させ第3 同年11月9日ころ,前記A方において,交際中の同人に対し,前同様に装い,「知り合いが怪我をして入院した。入院費用30万円を立て替えてくれ。ちゃんと返してもらえる金だから,何とか貸してやってもらえないか。」などとうそを言い,同人をしてその旨誤信させ,よって,同月10日ころ,同人方において,同人から現金30万円の交付を受け,もって,人を欺いて財物を交付させ第4 Bほか4名が現に住居に使用している同市d町e番f号所在のC所有のアパートg荘(木造亜鉛メッキ鋼板葺2階建共同住宅,床面積合計約114.17平方メートル)の って,人を欺いて財物を交付させ第4 Bほか4名が現に住居に使用している同市d町e番f号所在のC所有のアパートg荘(木造亜鉛メッキ鋼板葺2階建共同住宅,床面積合計約114.17平方メートル)のh号室を賃借し,同室の家財につき,i生活協同組合との間で保障額合計800万円の新型火災共済に加入していたものであるが,前記火災共済の火災等共済金を得るため,前記g荘を焼損しようと企て,平成13年3月8日午前6時35分過ぎころ,前記g荘h号室前記B方に玄関から侵入し,同人方において,同人方押入内の衣類等に灯油を散布した上,所携のライターで前記衣類等に点火して火を放ち,続いて,前記h号室において,同室内の押入内の衣類等に灯油を散布した上,前記同様火を放ち,前記B方の押入及び天井等並びに前記h号室の押入等に燃え移らせ,よって,前記B方ほか1室の天井板等合計約35.52平方メートル及び前記h号室の押入等約0.18平方メートルを焼損したものである。 (法令の適用)被告人の判示第1ないし第3の各所為はいずれも刑法246条1項に,判示第 4の所為のうち住居侵入の点は同法130条前段に,現住建造物等放火の点は同法108条にそれぞれ該当するところ,判示第4の住居侵入と現住建造物等放火との間には手段結果の関係があるので,同法54条1項後段,10条により1罪として重い現住建造物等放火罪の刑で処断することとし,判示第4の罪について所定刑中有期懲役刑を選択し,以上は同法45条前段の併合罪であるから,同法 47条本文,10条により重い判示第4の罪の刑に同法14条の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役7年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中120日をその刑に算入することとし,訴訟費用については,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用し 制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役7年に処し,同法21条を適用して未決勾留日数中120日をその刑に算入することとし,訴訟費用については,刑事訴訟法181条1項ただし書を適用して被告人に負担させないこととする。 (量刑の理由)本件は,被告人が,当時交際していた被害者から,3回に渡って合計430万円の現金を騙取したという詐欺の事案及び火災保険金を騙取する目的で,自己が賃借していたアパートの隣室に忍び込み,同室及び自室に火を放ったという住居侵入,現住建造物等放火の事案である。 まず,詐欺事件については,被告人は,稼働先を解雇されたことなどから金銭に窮していたところ,秋田市内の施設の浴場で知り合った一人暮らしの老女である被害者が多額の貯えを有していると聞き及び,庭の手入れなどしてやって親切なふりをして同女を信用させ,言葉巧みに同女から合計430万円もの多額の現金を騙取したものであって,その犯行は計画的で被害者の好意を逆手にとった卑劣かつ悪質なものである。そして,現在に至るまで,被害者に対し,全く被害弁償がなされておらず,同女の被害感情は強い。 さらに,住居侵入,現住建造物等放火事件については,上記被害者から騙取金の返還を強く迫られていたため,火災保険金を得てこれに充てようと,本件犯行に及んだものであり,その動機は極めて悪質である。被告人は,隣室から火が出たように装うため,あらかじめ自室の窓を目張りするなどした後,早朝に,隣室の住民が出勤するのを見計らって同室内に侵入し,衣類等に予め用意していた灯油をかけて火を放ち,さらに自室にまで火を放っており,その犯行は相当手の込んだ計画的なものである上,当時,同アパートには数名の住人が現在しており, なかには就寝中の者もいたことや,同アパート 灯油をかけて火を放ち,さらに自室にまで火を放っており,その犯行は相当手の込んだ計画的なものである上,当時,同アパートには数名の住人が現在しており, なかには就寝中の者もいたことや,同アパートが住宅地に位置し,延焼のおそれがあり,なかんずく近くには大規模なガス会社の施設もあることなどを考えると, 状況次第では,人命が失われたり,大規模火災に発展していた可能性も否定できず,本件犯行は極めて危険なものであった。本件犯行により,同アパートは解体を余儀なくされ,同アパートの住民はいずれも退去せざるを得ない状況に追い込まれたが,やはり被告人からは一切被害弁償はなされておらず,同アパートの所有者はもちろんのこと,住民らも被告人の厳重処罰を望んでいる。 以上の事情に加えて,被告人が,これまで強盗罪等前科15犯を有していること,本件一連の犯行の後,警察に発見されるまで東京方面に逃亡していたことなどを併せ考えると,被告人の刑事責任は重いというほかない。 ただ,他方において,放火については幸い早期に発見され,住民はいずれも避難して無事であったこと,他家に延焼することもなかったこと,現在75歳と高齢であり,体調も万全ではないこと,被告人には帰りを待つ高齢の内妻がいることなど,被告人にとって酌むべき事情も認められるので,これら一切の事情を考慮して,被告人を主文掲記の刑に処することとした。 よって,主文のとおり判決する。 平成14年3月20日秋田地方裁判所刑事部裁判長裁判官穴澤成巳裁判官菊池絵理裁判官剱持亮 判官剱持亮
▼ クリックして全文を表示