平成31年3月19日判決言渡同日原本交付裁判所書記官平成29年(ワ)第27298号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成30年12月4日判決 原告 Rセキュリティ株式会社 同訴訟代理人弁護士 佐久間明彦 被告 株式会社Superfeed (以下「被告会社」という。)A 被告 A(以下「被告A」という。) 被告 B(以下「被告B」という。) 被告 C (以下「被告C」という。)被告ら4名訴訟代理人弁護士 北澤香織 主文 1 被告会社は,原告に対し,138万6000円及びこれに対する平成27年3月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求はいずれも棄却する。 3 訴訟費用は,原告に生じた訴訟費用の560分の1及び被告会社に生じた訴訟費用の140分の1を被告会社の負担とし,その余を原告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 被告らは,原告に対し,連帯して,1億8783万9135円及びこれに対する平成27年3月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 本件は,鍵の販売,取付け,修理その他の関連工事等を業とする 連帯して,1億8783万9135円及びこれに対する平成27年3月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,鍵の販売,取付け,修理その他の関連工事等を業とする株式会社である原告が,被告らに対し,被告らが共謀して原告が所有する工具等を違法に持ち 出した行為及び被告Aが原告の従業員を違法に引き抜いて被告会社に転職させた行為が不法行為に該当し,また,被告らが共謀して原告の開錠技術等に関する営業秘密を違法に持ち出し,被告会社の業務に使用した行為が不正競争行為に該当し,また,原告の元従業員であった被告B及び被告Cが被告会社に転職したことが競業避止義務違反の債務不履行に該当すると主張して,被告A,被告B,被 告Cについては民法709条,719条1項,不正競争防止法2条1項4号,同項5号,5条2項,同条3項3号に基づき,また,被告B,被告Cについては民法415条に基づき,被告会社に対しては,民法709条,民法715条1項又は会社法350条に基づき,損害賠償金等の支払を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨によ り容易に認められる事実) 当事者等原告は,鍵の販売,取付け,修理その他の関連工事等をすることを業とする株式会社である。 被告会社は,ウェブ広告,鍵の修理・交換を業とする株式会社である。 被告Aは,被告会社の代表取締役である。 被告B及び被告Cは,原告の元従業員である。 被告Bらの入社及び退職の時期訴外D(以下「D」という。),被告B,訴外E(以下「E」という。),訴外F(以下「F」という。),訴外G(以下「G」という。)及び被告Cは,いずれも原告の元 被告Bらの入社及び退職の時期訴外D(以下「D」という。),被告B,訴外E(以下「E」という。),訴外F(以下「F」という。),訴外G(以下「G」という。)及び被告Cは,いずれも原告の元従業員であり,いずれも開錠作業を行う鍵師として原告の業務に従 事していた者(以下,当該6名を「本件元従業員ら」と総称することがある。)である。その入社及び退職の時期は以下のとおりであり,本件元従業員らは,いずれも原告退職後,被告会社において鍵師として業務に従事した時期がある。 D 平成22年12月頃入社,平成27年1月頃退職被告B 平成23年10月頃入社,平成26年10月10日退職 E 平成25年7月頃入社,平成27年1月頃退職F 平成26年2月頃入社,平成26年10月10日退職G 平成26年2月頃入社,平成27年1月頃退職被告C 平成26年2月頃入社,平成27年3月31日退職 2 争点 工具等の持ち出し行為の有無違法な引き抜き行為の有無不正競争行為(営業秘密の使用行為等)の有無 被告B及び被告Cの競業避止義務違反の有無 被告会社の責任原因 原告の損害額 3 争点に関する当事者の主張 争点 (工具等の持ち出し行為の有無)について(原告の主張)本件元従業員ら及び被告Aは,以下のとおり,共謀して,原告所有の工具等 を持ち出して,被告会社の管理下に移した。 アキーマシンの持ち出し以下の事実から,被告Bやその他の本件元従業員らが,原告所有の複数台のキーマシンを持ち出し,被告会社の管理下に移したことは明らかである。 原告従業員であったLが,同じく原告従業員であ の持ち出し以下の事実から,被告Bやその他の本件元従業員らが,原告所有の複数台のキーマシンを持ち出し,被告会社の管理下に移したことは明らかである。 原告従業員であったLが,同じく原告従業員であるHに対し,F及び被告Bが原告を退職する際に原告の工具等を持ち出したと述べたこと Eが原告従業員であるIに対し,被告Bがキーマシンを持ち出したことを示唆するLINEメッセージを送信したこと平成27年3月初旬頃,被告会社所有の車両に,原告所有の株式会社ジョーエイ製機製の製造番号853番等のキーマシン及びKEYLINE株式会社製のキーマシンが積まれていたこと 平成27年3月14日,被告会社所有の車両に,原告所有の株式会社ジョーエイ製機製の製造番号555番のキーマシンが積まれていたこと平成27年5月26日頃,新宿区鶴巻町所在の被告会社の倉庫(以下「本件倉庫」という。)に,原告所有の株式会社ジョーエイ製機製の製造番号597番のキーマシンが保管されていたこと イグンマジの持ち出し被告Cは,原告を退職した日である平成27年3月31日,原告代表者であるX(以下「X」という。)が開発し,原告が製造した,開錠に使用する工具であるグンマジを返却せず,持ち出した。このことは,被告Cが,同日,原告従業員であるJ(以下「J」という。)からグンマジの所在を問 いただされ,グンマジを返却していないことを認めたことからも明らかである。なお,被告Cは,グンマジは返却しており,Jとの会話は,グンマジではなく,原告から支給されたL型ピックセット(自動車の開錠作業で使用するピッキング道具)を返却しなかったことを述べたものであり,原告支給のピックセットは破損したために廃棄し,その後は私費で購入した ピックセットを使用して ピックセット(自動車の開錠作業で使用するピッキング道具)を返却しなかったことを述べたものであり,原告支給のピックセットは破損したために廃棄し,その後は私費で購入した ピックセットを使用していたために返却しなかったと主張するが,そうで あるならば,Jから問いただされたときにそのように説明すれば足りるにもかかわらず,そうしなかったこと,Jが「お前犯罪者やで。」と言ったのに対しても反論しなかったことからも,被告Bがグンマジを返却せずに持ち出したことは明らかである。 Fは,原告を退職する際に,原告から支給されたグンマジを返却せずに 持ち出して,被告会社の開錠業務に使用した。 平成27年5月26日頃,本件倉庫に,グンマジの構成部品が複数保管されていた。 ウ前記ア,イ以外に持ち出された工具等具体的な個数は明らかではないが,前記ア,イのキーマシンやグンマジ以 外にも,本件元従業員らは,原告から多数の工具等を持ち出して,被告会社に移した。具体的には,Fが原告に入社し,研修を開始した平成26年3月1日から被告Cが原告を退職した平成27年3月31日までの期間において,原告において所在が分からなくなった工具等は,本件元従業員らによって持ち出され,被告会社に移されたと考えられる。なお,被告Bは,被告会 社から釣銭を持ち出している。 被告らは,被告会社で必要な工具等は,同社で購入していたと主張するが,被告らが提出する明細書等の証拠(乙9,10)は,平成27年3月以降の日付のものに限られており,それ以前は原告から工具等を持ち出していたといえる。このことは,被告会社の車両や本件倉庫に散在していた基材や部材 類についての購入記録が提出されていないことからも明らかである。 エ被告らの 以前は原告から工具等を持ち出していたといえる。このことは,被告会社の車両や本件倉庫に散在していた基材や部材 類についての購入記録が提出されていないことからも明らかである。 エ被告らの共謀の事実前記のとおり,本件元従業員らは,原告の倉庫等から多数の工具等を持ち出し,被告会社に移して同社の業務に使用しているが,本件元従業員らが,被告会社の代表者である被告Aの指示もなく,上記各不法行為を行うことは 考えられず,また,本件元従業員らが工具等を持ち出すことで利益を得るの は被告会社であるから,本件元従業員らの行為は被告Aの明示又は黙示の指示によるものであることは明らかであり,本件元従業員ら及び被告Aは共謀して,上記各不法行為に及んだ。 (被告らの主張)アキーマシンの持ち出しについて 被告B及び被告Cがキーマシンを持ち出したことは否認する。原告の主張ないし,の事実は不知。原告の主張の事実のうち,当該車両が被告会社所有の車両であったことは認めるが,その余は不知。 イグンマジの持ち出しについて被告Cがグンマジを原告に返却せずに持ち出したことは否認する。被告C は,原告退職日である平成27年3月31日,退社前に原告支給の工具箱及び工具を全て返却し,Jの目の前で工具等が全て揃っていることを確認しており,その際にグンマジも返却している。 また,被告Cが,平成27年3月31日,Jからグンマジの所在を問いただされ,グンマジを返却していないことを認めたことも否認する。Jから所 在を問いただされたのはグンマジではなく,原告から支給されたL型ピックセットである。被告Cは,原告から支給されたピックセットが作業中に破損したために廃棄し,それ以降は購入した私物 。Jから所 在を問いただされたのはグンマジではなく,原告から支給されたL型ピックセットである。被告Cは,原告から支給されたピックセットが作業中に破損したために廃棄し,それ以降は購入した私物のピックセットを使用していた。 被告Cは,原告支給のピックセットがないことをJから問いただされ,その事実を認めたにすぎず,グンマジを持ち出したことを認めた事実はない。J の「お前犯罪者やで。」との発言は,被告Cが原告を退職するにもかかわらず,ピックセットを所持していること自体が犯罪(特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律)になるという意味であり,被告Cは被告会社で開錠業務を続けることを原告に知られたくなかったために反論しなかったにすぎない。 ウ前記ア,イ以外に持ち出された工具等 Fが原告に入社し,研修を開始した平成26年3月1日から被告Cが原告を退職した平成27年3月31日までの期間において,原告において所在が分からなくなった工具等に関する事実については不知。被告B及び被告Cが工具等を持ち出した事実は否認する。 エ被告らの共謀の事実 否認ないし争う。被告B及び被告Cが他の本件元従業員らと共謀して工具等を持ち出した事実はなく,被告Aが本件元従業員らに対して持ち出しを指示した事実もない。 争点 (違法な引き抜き行為の有無)について(原告の主張) 前提事実のとおり,本件元従業員らは半年の間に原告を退職して被告会社に転職しており,また,前記の原告の主張のとおり,被告らは共謀して,原告から多数の工具等を持ち出していることからすれば,被告Aが,本件元従業員らに対して不当な働きかけをして,被告会社に転職させたことは明らかであり,かかる被告Aの行為は違法な り,被告らは共謀して,原告から多数の工具等を持ち出していることからすれば,被告Aが,本件元従業員らに対して不当な働きかけをして,被告会社に転職させたことは明らかであり,かかる被告Aの行為は違法な引き抜き行為であり,不法行為に該当する。 (被告らの主張)否認ないし争う。被告Aが,本件元従業員らに対し,原告から多数の工具等を持ち出すように指示した事実はなく,被告Aの行為が違法な引き抜き行為であるとはいえない。 争点 (不正競争行為(営業秘密の使用行為等)の有無)について (原告の主張)ア営業秘密の内容原告は,グンマジの開錠方法及び構造・部材に関する以下の情報(以下「本件情報」という。)を保有している。 グンマジの開錠方法に関する情報 ●(省略)● イ秘密管理性原告は,グンマジを倉庫に鍵を掛けて保管し,Jが定期的にその数をチェックしており,従業員が倉庫からグンマジを持ち出す際には,必ずJの承諾を得なければならなかった。また,グンマジを構成する部材については,信頼できる訴外会社から仕入れ,グンマジの組立てを担う別の訴外会社との間 では秘密保持契約を締結しており,X以外はグンマジの部品の製造元を知っている者はいなかった。さらに,グンマジの構造図及び設計図は原告の社長室のキャビネット内に施錠の上保管され,社長室には監視カメラも設置されている。このように原告においては,グンマジの構造・部材に関する情報(本件情報⑥~⑪)の管理を徹底していた。 また,原告は,従業員全員に,原告の機密情報等を第三者に開示又は漏えいしないこと,原告所有の工具類などを業務で使用する場合を除いて社外に持ち出さないこと等を内容とする誓約書を提出させており,グンマ また,原告は,従業員全員に,原告の機密情報等を第三者に開示又は漏えいしないこと,原告所有の工具類などを業務で使用する場合を除いて社外に持ち出さないこと等を内容とする誓約書を提出させており,グンマジの開錠方法に関する情報(本件情報①~⑤)の管理も徹底していた。 被告らは,原告が,グンマジを販売し,グンマジの開錠方法を教える講座 を開いていたなどと主張するが,そのような事実はない。被告らは原告がオフィシャルブログで,講座においてグンマジの開錠方法を教えていることやグンマジを販売しているとの記事を掲載していると主張するが,これらのブログ記事は,原告のブログの作成担当者であったK(以下「K」という。)が誤って作成して公開したものである。 ウ有用性グンマジの開錠方法は,玄関扉の覗き窓の穴からファイバースコープ付きの触手を伸ばして扉の内側から開錠するというものであり,覗き窓がある玄関扉であれば,どのような扉でも開錠することができる極めて画期的な開錠方法であり,グンマジを使用した開錠方法は,スイッチサムターン(防犯の ため,サムターンのつまみを把持するだけでは開錠できないように,つまみ 部分にボタンを付け,ボタンを押した場合にのみサムターンを回せる構造等を有するサムターン)であっても開錠することができる唯一の方法である。 原告はグンマジの開錠方法を開発したことで,競合他社にはない優位性を得ることができ,原告の売上に大きく貢献することになった。そして,本件情報は,グンマジを製造し,使用するために有用な情報である。 エ非公知性前記イのとおり,原告は,本件情報を秘密として管理しており,グンマジの製造会社との間で秘密保持契約を締結し,従業員からも秘密保持の誓約書を提出させているから,本 エ非公知性前記イのとおり,原告は,本件情報を秘密として管理しており,グンマジの製造会社との間で秘密保持契約を締結し,従業員からも秘密保持の誓約書を提出させているから,本件情報は公然と知られていないものである。 オその他の要件 被告Aは,本件元従業員らに指示して,グンマジを持ち出させ,また,本件元従業員らを違法に引き抜く方法によって,営業秘密である本件情報を取得し,被告会社の業務に使用しているから,被告らの当該行為は,不正競争防止法2条1項4号の不正競争行為に該当する。被告らが本件情報を使用していることは,原告が調査のため,調査会社を使って,被告会社に住宅開錠 作業を依頼したところ,被告会社の従業員としてFが現れ,グンマジを使用して開錠を行ったことから明らかである。 また,被告Bや被告Cは,上記違法行為の首謀者である被告Aが代表者を務める被告会社に転職し,本件情報を使用して業務を行っているから,不正競争防止法2条1項5号の不正競争行為にも該当する。 (被告らの主張)ア営業秘密の内容グンマジの解錠方法の仕組みについては認める。 イ秘密管理性否認ないし争う。原告は,インターネット上でグンマジの開錠方法を紹介 し,さらにグンマジを販売している。また,原告は,「鍵の学校ロックマス ター養成講座」との名称の解錠技術等の講座(以下「本件講座」という。)を開講しており,受講料を支払えば誰でも講座を受講することができた。そして,本件講座では,グンマジの開錠方法を教えており,原告の従業員ではない受講者もグンマジの開錠方法を学ぶことができた。実際に,被告Bは,原告に入社する前に本件講座を受講し,グンマジの開錠方法を学んでいる。し ,グンマジの開錠方法を教えており,原告の従業員ではない受講者もグンマジの開錠方法を学ぶことができた。実際に,被告Bは,原告に入社する前に本件講座を受講し,グンマジの開錠方法を学んでいる。し たがって,グンマジの構造・部品や開錠方法についての情報が秘密として管理されていたとはいえない。 ウ有用性否認ないし争う。玄関扉の覗き穴から工具を挿入して開錠する方法は,一般に広く知られている手法であり,原告が独占する技術ではない。 エ非公知性否認ないし争う。前記イのとおり,グンマジ本体の構造・部品や開錠方法についての情報が秘密として管理されていたとはいえず,その情報は非公知ではない。 オその他の要件 いずれも否認ないし争う。被告B及び被告Cは,被告会社で開錠業務をしていた際には,グンマジを使用していない。 争点 (被告B及び被告Cの競業避止義務違反の有無)について(原告の主張)被告B及び被告Cは,原告との間で,原告に入社してから5年以内に退職し た場合には,退社後3年間は退職後に競合関係に立つ事業者に就職しない旨の競業避止義務を内容とする誓約書を提出しており,原告に対して退職後の競業避止義務を負うにもかかわらず,原告を退職した後,直ちに競合他社である被告会社に転職しているから,競業避止義務違反の債務不履行責任を負う。 これに対し,被告Bは,誓約書は公序良俗に反して無効であるなどと主張す るが,原告は極めて有効なグンマジの開錠技術を用いて業務を行っており,そ の技術を教示した従業員が競合他社に転職することを制限する必要があること,転職を禁止する職種や労働者の範囲も一定範囲に限定していること,期間も退社後3年間と限定していることから,従業員 の技術を教示した従業員が競合他社に転職することを制限する必要があること,転職を禁止する職種や労働者の範囲も一定範囲に限定していること,期間も退社後3年間と限定していることから,従業員の職業選択の自由を侵害しているとはいえず,公序良俗に反するとはいえない。 (被告B及び被告Cの主張) 被告Bについては誓約書を提出した事実は認めるが,被告Cは誓約書を提出しておらず,競業避止義務を負わない。 また,被告Bは,原告に受講料を支払い,本件講座でグンマジの開錠方法等を学び,その後,原告に入社したのであり,原告従業員の立場でグンマジの開錠方法等を教わったものではない。すなわち,被告Bは,授業料という対価を 支払ってグンマジの開錠方法等を原告から教示されたのであり,被告Bが競業避止義務を負わなければならない合理的理由はない。また,原告は従業員全てに誓約書を提出させていると主張しているのであるから,競業避止義務を負わせる従業員の範囲を合理的範囲にとどめているともいえず,少なくとも,本件講座で解錠技術を学んだ被告Bについて競業避止義務を課すのは不当である。 さらに,被告Bが提出した誓約書は,場所的制限もなく一律に競合関係に立つ事業者への転職を禁止するものであって,競業避止義務を課すことに対する代償措置も講じられていないことからすれば,上記誓約書は公序良俗に反して無効であり,被告Bは競業避止義務を負わない。 争点 (被告会社の責任原因)について (原告の主張)被告Aは,被告会社の代表取締役であり,被告会社の職務として,上記各違法行為に及んだのであるから,被告会社は,原告に対し,会社法350条に基づく損害賠償責任を負う。 また,被告会社は,被告A及び本件元従業員らのみで構 締役であり,被告会社の職務として,上記各違法行為に及んだのであるから,被告会社は,原告に対し,会社法350条に基づく損害賠償責任を負う。 また,被告会社は,被告A及び本件元従業員らのみで構成されており,組織 体の意思として,原告所有の工具等を持ち出しているから,民法709条に基 づく損害賠償責任を負う。 さらに,本件元従業員らは,被告会社の従業員として開錠業務を行っていたこと,本件元従業員らによる原告の工具等の持ち出しは,被告会社での業務のためのものであり,たとえ工具等を持ち出したのが,被告会社への転職前であるとしても,本件元従業員らは事実上,被告会社の実質的な指揮・監督関係の 下で,各持ち出し行為を行ったといえるから,被告会社は,原告に対し,民法715条1項の使用者責任に基づく損害賠償責任を負う。 (被告会社の主張)いずれも否認ないし争う。仮に本件元従業員らが工具等を持ち出しているとしても,被告会社は,本件元従業員らの行動を把握していなかったのであり, その行動を管理することはできないから,使用者責任を負うことはない。 争点 (原告の損害額)について(原告の主張)被告らの不法行為によって,原告に生じた損害の内容及びその額は以下のとおりである。 アキーマシン等の工具やその他の部材等の持ち出しによる損害Fが原告に入社し,研修を開始した平成26年3月1日から被告Cが原告を退職した平成27年3月31日までの期間において,所在が分からなくなったキーマシン等の工具購入代金相当額合計982万4460円及びその他の部材等の購入代金相当額合計1463万8390円 イグンマジの持ち出し,違法な引き抜き,不正競争行為(不正競争防止法5条2項,3項3号),競業 代金相当額合計982万4460円及びその他の部材等の購入代金相当額合計1463万8390円 イグンマジの持ち出し,違法な引き抜き,不正競争行為(不正競争防止法5条2項,3項3号),競業避止義務違反による損害原告がグンマジの開錠方法を独占的に使用することで得られていた市場による優位性を喪失したことによる逸失利益。具体的には,本件元従業員らが原告を退職し,被告会社に転職することで,原告が喪失した本件元従業員 ら6名分の売上が逸失利益であり,従業員1名当たりの月額の売上77万円 に,被告Bら原告元従業員6名が被告会社で業務をしていた期間(被告会社での勤務開始日から本件訴訟提起日である平成29年8月10日までの期間)を乗じた金額合計1億4630万円(77万円×2年10か月×2名(被告B,F)+77万円×2年7 か月×3名(D,E,G)+77万円×2年5か月×1名(被告C)) ウ弁護士費用相当額1707万6285円(被告らの主張)いずれも否認ないし争う。また,被告会社は,平成28年3月末日頃,開錠業務を止めている。 第3 当裁判所の判断 1 原告会社及び被告会社の業務等について後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 原告の代表者であるXは,扉に防犯対策として普及しつつあったスイッチサムターン(つまみ部分にボタンを付け,ボタンを押した場合にのみ回すことができる構造を有するサムターン)が設けられている場合でも解錠することがで きる道具の開発を進め,平成17年頃,その開発に成功し,その道具をグンマジと名付け,顧客の依頼を受けて,開かなくなった鍵を開錠する業務等を行う原告を設立した。(甲70,X〔4-7頁〕)原告は,グンマジを協力する 進め,平成17年頃,その開発に成功し,その道具をグンマジと名付け,顧客の依頼を受けて,開かなくなった鍵を開錠する業務等を行う原告を設立した。(甲70,X〔4-7頁〕)原告は,グンマジを協力する工場に委託して製造している。原告の従業員は,開錠業務を行うに当たり,必要に応じ,原告が所有し,従業員に使用させてい たグンマジその他の開錠のための工具を用いていた。(甲45,70,X〔7-9頁〕,J〔36頁〕,被告B〔6頁〕) 本件元従業員らは,平成22年12月頃から平成26年2月頃までの間に原告に入社して,原告において開錠業務を行っていた。 被告Bは,平成23年10月頃の原告への入社後,原告において開錠業務を 行っていたが,原告での勤務等に不満を持ち,退職して自ら開錠業務を開業す ることを考え,平成26年夏頃,Fの紹介で,被告会社の代表者である被告Aと会い,ホームページの製作や集客等について相談した。これに対し,被告会社や被告Aには開錠業務の経験,ノウハウはなかったが,被告Aは,被告Bに対し,被告会社に入社し,被告会社の従業員として開錠業務等を始めることを提案し,被告Bもこれを了承した。その頃,Fも,原告での勤務等に不満があ り,退職して他の会社に転職したいと考えていて,Fは,被告Aに対し,自分も被告Bと一緒に被告会社で開錠業務をさせてほしい旨依頼し,原告を退職することにした。(乙23,24,被告A〔1-3頁〕,被告B〔2-5頁〕)。 被告B及びFは,いずれも平成26年10月10日に原告を退職し,F,被告Bの順に,平成26年12月頃から被告会社での勤務を開始した。被告会社 は,被告Bらの入社に伴い,開錠業務を行うようになり,被告Bらはその業務に従事するようになった。 従前の被告会社や被告Aには, に,平成26年12月頃から被告会社での勤務を開始した。被告会社 は,被告Bらの入社に伴い,開錠業務を行うようになり,被告Bらはその業務に従事するようになった。 従前の被告会社や被告Aには,開錠業務についてのノウハウはなかったため,上記業務を開始する上で必要な道具等は,被告BやFから指示を受けて準備し,また,広告ホームページ製作,リスティングの手配,電話番号の契約等を行っ た。(乙8,9,23,24,25,被告A〔2-5頁〕,被告B〔11頁〕)被告会社は,開錠業務の業務開始後,順調に売上が伸びた。そこで,Fが原告の従業員に声をかけ,D,E,G及び被告Cが原告を順次退職して,被告会社に入社した。また,被告会社は,平成27年3月頃,従業員らの待機場所兼倉庫として,本件倉庫を借りた。(乙23,24,25,被告A〔5-6頁〕,被 告B〔6頁〕)被告会社は,平成28年3月末頃,開錠業務の売上げが落ち込んだことから,開錠業務を行うことを止め,その後,被告Bらを解雇した(乙23,24,25,被告A〔11-13頁〕,被告B〔8頁〕,被告C〔7頁〕) 2 争点(工具等の持ち出し行為の有無)について 認定事実 後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア原告は,従業員に対し,開錠業務に使用する工具等を入れるため,大型と小型の2個のジュラルミンケースを支給していた。 被告Cは,原告の従業員であったとき,業務に使用する工具等を,原告から支給されたジュラルミンケースではなく自ら購入した2個のボックス型 ケースに入れて持ち運んでおり,原告から支給されたジュラルミンケースは原告の会社内の道具棚に置いていた。また,被告Cは,原告からL型ピックセットを支給されていたが, ら購入した2個のボックス型 ケースに入れて持ち運んでおり,原告から支給されたジュラルミンケースは原告の会社内の道具棚に置いていた。また,被告Cは,原告からL型ピックセットを支給されていたが,作業中に破損したために廃棄し,それ以降は,自ら購入したピックセットを使用していた。(乙25,被告C〔1-5頁〕)イ被告Cは,原告への最終出勤日であった平成27年3月31日,私物のボ ックス型のケースとともに原告から支給されたジュラルミンケースを原告の道具棚から持ち出し,被告Cが使用していた社用車に乗せて,千代田区駿河台の開錠の現場に向かった。被告Cは,その開錠業務を終えた後,本件倉庫に立ち寄り,本件倉庫前に停車した社用車内で,原告から支給された道具を私物のボックス型ケースから原告支給のジュラルミンケースに入れ替え, 私物のボックス型ケースを本件倉庫に置き,原告から支給されたジュラルミンケースを持って原告本社に戻った。(甲23,乙25,被告C〔1-3頁〕)ウ Xは,原告従業員のJに対し,被告Cから返却を受けるべき物が全て揃っているか確認するように指示し,Jは,平成27年3月31日,千代田区駿河台の開錠の現場から原告に戻った被告Cの同席の下,被告Cが所持し,原 告に返還する工具等をチェックし,その結果をXに報告した。そうすると,Xは,Jに対し,被告Cに対して「工具」との単語を使用して,返却を受けるべき物の一部がないことを指摘するように指示し,また,ICレコーダーを渡して被告Cには告げずに会話を録音するように指示した。 (J〔8-9頁〕,X〔24-25頁〕) エ Jは,Xからの上記指示を受けて,被告Cの元に戻り,Jと被告Cは以下 の会話(括弧内は発言者)をした。Jは被告Cには告げずに会話を録音していた。 頁〕,X〔24-25頁〕) エ Jは,Xからの上記指示を受けて,被告Cの元に戻り,Jと被告Cは以下 の会話(括弧内は発言者)をした。Jは被告Cには告げずに会話を録音していた。(甲28,29,J〔14-16,35-36頁〕,被告C〔3,10-12,18-20頁〕)(J)「工具は。」(C)「はい。」 (J)「工具はどこ。」(C)「家に置いてきたんすよ」(J)「家に帰ったらあかんやろ仕事中に。」(C)「今度持ってきます。」(J)「いやお前犯罪者やで。」 (C)「はい大丈夫です。明日持ってきます。」(J)「あ,ちょっと待って。おまえ,今日現場終わってどこいってたん。」(C)「はい。」(J)「現場,はまってたん。」(C)「はまってました。千代田区で。」 (J)「千代田区でずっと。」(C)「はい。」(J)「あ,そうなん。ほんで,家帰って,道具置いてきたん」(C)「あ,いや。道具を置いてきたのは,この3連休入る前です。」(J)「あ,そうなん。まあとにかくもってこいよ」 (C)「わかりました。お疲れ様でーす。」(J)「お疲れっす。」オ平成27年3月14日,被告会社所有の車両に,原告が所有する株式会社ジョーエイ製機製の製造番号555番のキーマシンが積まれていた。また,同年5月27日頃,本件倉庫に原告が所有する株式会社ジョーエイ製機製の 製造番号597番のキーマシンが置かれていた。(甲16~21,52) カ株式会社アヴァンセインテリジェンスは,平成27年3月13日,原告の依頼を受け,調査のため,被告会社に対し,身分や目的を 号597番のキーマシンが置かれていた。(甲16~21,52) カ株式会社アヴァンセインテリジェンスは,平成27年3月13日,原告の依頼を受け,調査のため,被告会社に対し,身分や目的を告げずに新宿区北新宿所在のマンションの一室の住宅開錠の依頼を行ったところ,被告会社は,現場にFを派遣し,Fはグンマジを使用して開錠作業をした。なお,Fが原告からグンマジを購入したことがあったことを認めるに足りる証拠はない。 (甲3,14,46,57,X〔14頁〕,被告B〔10-11頁〕)また,平成27年5月27日頃,本件倉庫内にグンマジのファイバースコープ,パイプ,先端に付ける把持爪等の構成部品が複数個置かれていた。(甲52,J〔24頁〕,被告B〔17頁〕,被告C〔16頁〕) キーマシンの持ち出しについて ア前記オの事実に,本件元従業員らが,平成26年10月以降,原告を順次退職し,被告会社に転職したこと(前記1)を総合すると,株式会社ジョーエイ製機製の製造番号555番及び597番のキーマシン(計2台)は,本件元従業員らのうちの誰かが,原告内に置かれていたものを持ち出したか,又は,仕事等のために持ち出し,そのまま返却せずに被告会社に移して,業 務に使用したものと認められる。 イもっとも,本件元従業員らのうちの誰かが上記キーマシン(2台)を持ち出したことは認められるものの,その中の誰が上記キーマシン(2台)を持ち出したかは不明であり,被告B又は被告Cが上記キーマシン(2台)を持ち出したと認めるに足りる証拠はない。 原告は,原告の元従業員であるLが原告の従業員であるHに対し,F及び被告Bが原告を退職する際,原告所有に係る工具類や部材類を持ち出した旨告げたことや,Eが原告の従業員であるIに対し,被 。 原告は,原告の元従業員であるLが原告の従業員であるHに対し,F及び被告Bが原告を退職する際,原告所有に係る工具類や部材類を持ち出した旨告げたことや,Eが原告の従業員であるIに対し,被告Bがキーマシンを持ち出したことを示唆するLINEメッセージを送ったこと(甲15)などから,被告Bがキーマシンを持ち出したと主張する。しかし,上記従業員らの 会話の内容やその根拠は明らかではない。また,上記LINEメッセージは, 被告Bの関与なくされたものであって,Eのメッセージの内容を裏付ける証拠もないことなどから,これによって被告Bがキーマシンを持ち出したと認めることはできない。その他,被告Bがキーマシンを持ち出したと認めるに足りる証拠はなく,原告の主張は採用することができない。 また,原告は,平成27年3月初旬頃,被告会社所有の車両に,原告所有 の株式会社ジョーエイ製機製の製造番号853番等のキーマシン及びKEYLINE株式会社製のキーマシンが積まれていたとも主張するが,これを裏付ける客観的な証拠はなく,上記事実は認めるに足りない。 グンマジの持ち出しについてア被告Cによる持ち出しについて 原告は,被告Cが,最終出勤日である平成27年3月31日,原告に返却すべきグンマジを返却せず,これを持ち出したと主張する。そして,Jは,同日,被告Cが原告に戻った際,被告Cがグンマジを持っておらず,Jがその所在を問いただしたところ,グンマジを返却していないことを認めた旨証言する。 上記のJと被告Cの会話の内容は,前記エのとおりである。J及び被告Cは,被告Cが原告に返却すべき「工具」ないし「道具」を返却していないことを前提として会話をしているものの,その「工具」ないし「道具」がグン 被告Cの会話の内容は,前記エのとおりである。J及び被告Cは,被告Cが原告に返却すべき「工具」ないし「道具」を返却していないことを前提として会話をしているものの,その「工具」ないし「道具」がグンマジであるとの発言はない。 この会話について,被告Cは,Jと前記エの会話をしたことは覚えてい るが,当該会話の前,すなわち,録音が開始される前の会話において,Jから所在を聞かれたのはグンマジではなくL型ピックセットであり,グンマジを返却していないとの話はされず,上記会話中で指摘されたのもL型ピックセットのことだと思ったと供述し,グンマジは,原告に返却した旨供述する(被告C〔3,10-12,18-20頁〕)。被告Cが返却した支給品の中 にピックセットがなかったことは当事者間に争いがない。 Jと被告Cの会話においては,「工具」ないし「道具」の返却が話されており,グンマジについては全く触れていないこと,原告が独自開発したグンマジが被告Cから返却されないことが問題となっていたのであれば,会話の中でそれに触れられるほか,甲としても,Jに対して被告Cとの会話やその内容の録音を指示するに当たり,「工具」との単語(前記ウ)ではなく,「グ ンマジ」との単語も使用するよう指示することが自然ともいえることなどからも,上記会話によって,被告Cが,グンマジを原告から持ち出したことを認めるに足りない。 原告は,上記会話において被告Cがピックセットを返却できない理由を説明していないことやJから「お前犯罪者やで。」と言われたことに対しても 反論しなかったことから,上記会話における被告Cの発言はグンマジの持ち出しを認めたものであると主張する。しかしながら,その後被告会社において開錠業務に携わる予定であった被告Cが,同じく開錠業務を行う 反論しなかったことから,上記会話における被告Cの発言はグンマジの持ち出しを認めたものであると主張する。しかしながら,その後被告会社において開錠業務に携わる予定であった被告Cが,同じく開錠業務を行う原告に対しては詳しい事情を述べず,正当な理由なく所持等することが違法となり得る開錠道具を翌日に返還することのみを述べることはあり得ることであり, 原告指摘の事情は,上記認定を左右するものではない。 また,Jは,平成27年3月31日,被告Cが仕事先から帰社した際,被告Cはグンマジを返却していなかったことから,その場で,返却されていない工具にグンマジを含むことが記載されたメモ(甲25)を作成したと証言する(J〔36,38頁〕)。しかし,そのメモはJが作成したものであって, その場に立ち会っていたという被告Cのサイン等もなく,当該メモから,同人がグンマジを返却せずに持ち出したと認めることはできない。そして,X及びJの供述,証言等のその他の証拠を踏まえても,被告Bがグンマジを持ち出したと認めるに足りない。 イ Fが所持していたグンマジについて 前記カ及び弁論の全趣旨によれば,Fは,少なくとも本件元従業員らの うちの誰かが原告から支給されて原告から持ち出したグンマジを,被告会社に転職した後も使用していたと認めることができる。 ウ本件倉庫に置かれていたグンマジについて前記カのとおり,平成27年5月27日頃,本件倉庫内にグンマジのファイバースコープ,パイプ,先端に付ける把持爪等の構成部品が複数個置か れていた。 グンマジは原告が製造している道具であり,被告会社が原告からグンマジを購入した事実はなく(被告A〔21頁〕),これらの構成部品は,前記のキーマシンと同様に,本件元従業員らのうちの誰かが, いた。 グンマジは原告が製造している道具であり,被告会社が原告からグンマジを購入した事実はなく(被告A〔21頁〕),これらの構成部品は,前記のキーマシンと同様に,本件元従業員らのうちの誰かが,原告内に保管されていたものを持ち出したか,又は,仕事等のために持ち出していたキーマシン をそのまま返却せずに,本件倉庫に移したものと認められる。 もっとも,本件元従業員らのうち,誰がグンマジを持ち出したかは不明であり,被告B又は被告Cがグンマジを持ち出したと認めるに足りる証拠はない。また,証拠(甲52)からは,本件倉庫内にグンマジがどのように保管されていたかも明らかではなく,グンマジを持ち出して使用していた者以外 の本件元従業員らが,本件倉庫内にグンマジが置かれていたことを知っていたと認めるに足りる証拠はない。 前記,以外に持ち出された工具等の有無原告は,Fが原告に入社し,研修を開始した平成26年3月1日から被告Cが原告を退職した平成27年3月31日までの期間において,原告が管理して いる工具等のうち所在が分からなくなった工具等は,全て本件元従業員らによって持ち出され,被告会社に移されたと考えられると主張する。しかし,工具等の所在が不明になったことや,本件元従業員らがそれらの工具等を持ち出したことを裏付ける客観的な証拠はなく,原告が主張する事実を認めるに足りない。 なお,本件倉庫内には,グンマジ以外にも複数の工具等が保管されていたが (甲52,64),グンマジ以外の工具等はいずれも市販されているものであること(X〔34頁〕),上記のとおり,工具等の所在が不明になったことや,本件元従業員らがそれらの工具等を持ち出したことを認めるに足りる証拠はないことから,本件倉庫内で保管されていた工具等が のであること(X〔34頁〕),上記のとおり,工具等の所在が不明になったことや,本件元従業員らがそれらの工具等を持ち出したことを認めるに足りる証拠はないことから,本件倉庫内で保管されていた工具等が原告から持ち出されたものであると認めるには足りない。 被告らの共謀の事実原告は,本件元従業員らが被告会社の代表者である被告Aの明示又は黙示の指示もなく,違法行為に及ぶとは考えられず,被告Aを含めた全員が共謀して,原告からグンマジ,キーマシン及びその他多数の工具等を持ち出したと主張する。 しかしながら,前記1のとおり,本件元従業員らの原告退職日,被告会社入社日,転職を決めた経緯はそれぞれ異なっており,全員が意を通じて,一斉に原告から被告会社へ転職したものではなく,誰かが原告所有の工具等を持ち出すことを考えたとしても,他の者と協力する必要はなく,各自で持ち出せば足りる。また,被告Aには開錠業務のノウハウはなく,被告BやFの指示を受け て道具等の準備をしていたにすぎず,本件元従業員らが原告所有の工具等を持ち出すことを知り得る立場でも,そのように指示する立場でもなかった。そして,その他,本件元従業員らと被告Aが共謀して工具等を持ち出したと認めるに足りる証拠もない。 本件では,原告が所有する道具が複数,原告から持ち出されていることが認 められるところではあるが,上記に述べた事情に照らせば,そのことについて被告Aや本件元従業員ら全員が共謀したとの事実を認めるに足りないというべきである。 原告の主張は採用することができない。 3 争点(違法な引き抜き行為の有無)について 原告は,被告Aの勧誘によって,本件元従業員らが半年の間に被告会社に転職 しており,また,本件元従業員らと被告Aは共謀して工 い。 3 争点(違法な引き抜き行為の有無)について 原告は,被告Aの勧誘によって,本件元従業員らが半年の間に被告会社に転職 しており,また,本件元従業員らと被告Aは共謀して工具等を持ち出していることから,このような被告Aの行為は違法な引き抜き行為であり,不法行為に該当すると主張する。 前記1のとおり,被告Aは被告Bに対して被告会社に転職するように提案し,また,その後,Fやその他の本件元従業員らが被告会社に入社したものの,本件 元従業員らが,被告Aの指示を受け,共謀の上,原告の倉庫等から複数の工具類を持ち出したと認めるに足りる証拠はない。そして,前記1の経緯で,被告Aが被告Bに対して被告会社に転職するように提案したり,Fやその他の本件元従業員らが被告会社に入社するようになったりしたこと自体に関する被告Aの行為が自由競争の範囲を逸脱した行為であると認めるに足りず,被告Aの行為が,違 法な引き抜き行為として,不法行為を構成するとは認められない。 4 争点(不正競争行為(営業秘密の使用行為等)の有無)について 認定事実後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 アグンマジは,原告の代表者であるXが,平成17年頃,開発し,原告が製 造し,開錠業務においてその従業員に使用させている開錠工具である。(甲70,X〔4-7頁〕)イグンマジの構造・部材は本件情報⑥~⑪のとおりであり,グンマジを使用する開錠方法は本件情報①~⑤のとおりである。グンマジを使用した開錠方法を用いれば,扉にスイッチサムターンが設けられていても開錠することが できる。スイッチサムターンが設けられている場合,グンマジを使用した開錠方法以外に一般に知られている開錠方法はないというのが甲の認識で ,扉にスイッチサムターンが設けられていても開錠することが できる。スイッチサムターンが設けられている場合,グンマジを使用した開錠方法以外に一般に知られている開錠方法はないというのが甲の認識であった。(甲70,J〔4,27頁〕,X〔1-6頁〕,被告B〔18頁〕)。 ウ原告は,東京,大阪,神戸において,一般人を対象として,「鍵の学校ロックマスター養成講座」との名称の開錠技術等を教える本件講座を開講して いた。本件講座には,お手軽開業コース(2週間程度。受講料28万円),短 期集中コース(1週間程度。受講料38万円),おすすめ開業コース(2か月程度。受講料48万円)等のコースがある。本件講座の受講生には,解錠技術等を習得して,鍵師として自らで業務を行うために受講する者や,原告に入社して従業員として勤務することを考えて受講する者もいる。 (乙4,5,24,被告B〔1,20-21頁〕) エ本件講座においては,ピッキングによる開錠方法,オープナーを使用する開錠方法のほか,グンマジを使用する開錠の方法が教えられていた。また,原告は,少なくとも本件講座と関係して,グンマジを29万8000円で販売していた。被告Bも,原告に入社する前に本件講座を受講し,グンマジの開錠方法を学んだ。(後記の認定事実の補足説明参照) 認定事実エの補足説明被告らは,原告が,インターネット上でグンマジの開錠方法を紹介し,グンマジを販売するほか,本件講座においてグンマジを使用する開錠の方法が教えられていたと主張するのに対し,原告はこれを否定するので,以下,検討する。 ア原告は,インターネット上で公開していたオフィシャルブログ等において, 以下の記事等を掲載していた。 平成26年5月31日から少なくとも平成30年6月 を否定するので,以下,検討する。 ア原告は,インターネット上で公開していたオフィシャルブログ等において, 以下の記事等を掲載していた。 平成26年5月31日から少なくとも平成30年6月8日まで公開されていた「鍵の学校の在校生・卒業生インタビュー第三話」と題する記事には,本件講座のおすすめ開業コースの受講生の受講の様子が記載され,「一般的なU9のLA錠は簡単に開けられたものの,防犯性の高いスイッ チサムターンには苦戦を強いられたようです。当学校で開発したぐんまじを使って2時間,すったもんだして開けられたときには最高に嬉しかったとのこと!」,「☆ぐんまじも絶賛販売中☆」との記載がある。(乙5)平成26年10月2日から少なくとも平成30年6月8日まで公開されていた「鍵の学校は道具も買わなきゃいけないの?」と題する記事には, 「鍵の学校が開発した特殊開錠工具も販売しております。」,「たったの9 8,000円ぽっきりのものと298,000円ぽっきりの2種類。29万のはいまならファイバースコープ付き!!」との記載がある。(乙6)平成26年10月8日から少なくとも平成30年8月8日まで公開されていた「鍵開け現場でハマったら」と題する記事には,スイッチサムターンの写真が掲載され,当該写真の下に「スイッチサムターン。この手の タイプはなかなか開けられないことが多いですが,鍵の学校で販売中の特殊工具だと開きます!」との記載がある。(乙20の1・2)平成27年1月3日から少なくとも平成30年6月8日まで公開されていた「鍵開け眼鏡男子。」と題する記事には,「鍵の学校の特殊サムターン用オープナー「ぐんまじ」を購入の際にファイバーが付いてまいります。」 との記載がある。(乙7)少なくとも平成30 ていた「鍵開け眼鏡男子。」と題する記事には,「鍵の学校の特殊サムターン用オープナー「ぐんまじ」を購入の際にファイバーが付いてまいります。」 との記載がある。(乙7)少なくとも平成30年8月8日まで公開されていた「鍵の学校では,学校が編み出した開錠工具を販売中!!」と題する記事には,「一般オープナーは98,000円,特殊開錠工具は298,000円ポッキリです。」との記載があり,「特殊サムターン開錠工具(グンマジ)販売中」,「税込価 格:29万8千円」と書かれ,モザイクがかけられた工具の写真が掲載されているチラシの写真が掲載され,当該写真の下に「特殊開錠工具は一応モザイクかけております。具体的に見たい方は学校へのご入学をば!!」,「生徒さんも卒業生さんも,ご購入の際はぜひご連絡を!」,「当社独自のものなので,他店では手に入らない逸品ですよ。」との記載があり,さらに 担当者がKであることや,電話番号,メールアドレスの表示がある。本件講座は,原告に入社する者だけではなく,鍵師として自営業を営むことを考えている者も受講しており,そのような者が本件講座で教わったグンマジの開錠方法を用いて業務を行うためにはグンマジが必要であるところ,この記事には,以上のとおり,「生徒」のほか,「卒業生」である元受講者 に対してもグンマジを販売しているとの記載がある。(乙19) イ被告Bは,原告に入社する前に,本件講座を受講し,本件講座でグンマジを用いた開錠方法を教わり,本件講座が行われていた建物内には前記アのチラシが掲載されていたと供述する(被告B〔1,20-21頁〕)。 ウ前記アのとおり,原告は,インターネット上のオフィシャルブログにおいて,本件講座においてスイッチサムターンが設けられた扉に対するグンマジ れていたと供述する(被告B〔1,20-21頁〕)。 ウ前記アのとおり,原告は,インターネット上のオフィシャルブログにおいて,本件講座においてスイッチサムターンが設けられた扉に対するグンマジ による開錠方法を教えていることやグンマジを販売していること等を紹介している。このような内容のブログの各記事について,原告は,本件講座ではグンマジによる開錠方法を教えてはいないし,グンマジを販売していた事実もなく,原告のブログの上記各記事は,ブログの作成担当者であったKが誤って作成して公開したものであると主張し,X,J及びKはこれに沿う供 述,証言をする。 しかしながら,Kが,実際には記事に記載されたような事実がないにもかかわらず,誤って,すなわち,上司からの指示があったり事実と異なる記事を作成する特別の理由があったりしたわけでもないのに,前記アのような具体的な出来事にも触れた記事を複数作成して,公開するというのは極めて不 自然である。また,ブログに掲載されているチラシの写真(乙19)は,紙媒体のものを撮影したものであるから,グンマジの販売が事実でないとすれば,Kやその他の従業員が,わざわざブログに掲載するために実際には存在していないチラシを作成して,写真撮影し,モザイクをかけてブログ記事として掲載したことになるが,このような作業を,上司からの指示があったり 事実と異なる記事を作成する特別の理由があったりしたわけでもないのに行うというのも極めて不自然である。X,J及びKの各供述,証言はにわかに措信しがたい。なお,上記記事の写真の中にはグンマジを使用しているとはいえない写真があることもうかがえるが,記事が複数あることやその内容を考慮すると,そのような写真があるとしてもそれが上記判断を左右するも のではない。 にはグンマジを使用しているとはいえない写真があることもうかがえるが,記事が複数あることやその内容を考慮すると,そのような写真があるとしてもそれが上記判断を左右するも のではない。 これに対し,被告Bの上記供述は,上記各ブログやブログに掲載されているチラシの内容とも一致しており,信用できるというべきである。 以上によれば,前記のとおり,本件講座においては,グンマジを使用する開錠の方法が教えられており,また,原告は,少なくとも,本件講座の受講生や元受講生を対象として,グンマジを29万8000円で販売していた と認定するのが相当であり,これに反する原告の主張は採用することができない。 本件情報の営業秘密該当性本件で,原告が営業秘密であると主張する情報は,グンマジの開錠方法に関する情報(本件情報①~⑤)及びグンマジの構造・部材に関する情報(本件情 報⑥~⑪)であるところ,上記のとおり,原告は本件講座において,受講生に対して本件情報①~⑤を含むグンマジの解錠技術を教えていた。そして,受講生に対して本件情報①~⑤が秘密であると告げていたことを認めるに足りる証拠はない。また,原告は,受講生に対してグンマジを使わせ,さらに主に受講生や元受講生に対し,グンマジを販売しており,その購入者は,グンマジの 外形的な構造,大きさ,部品の構成を当然に知ることができ,これらについての情報である本件情報⑥~⑪を知ることができた。原告が,原告の従業員でないそのような受講生や元受講生の購入者に対して本件情報⑥~⑪を含むグンマジの構造・部材に関する情報が秘密であると告げていたことを認めるに足りる証拠はない。 そうすると,本件情報はいずれも「秘密として管理されている」とも「公然と知られていない」(不正競争 の構造・部材に関する情報が秘密であると告げていたことを認めるに足りる証拠はない。 そうすると,本件情報はいずれも「秘密として管理されている」とも「公然と知られていない」(不正競争防止法2条6項)ともいえないから,その余の要件について判断するまでもなく,営業秘密に該当するとはいえない。 5 争点(被告B及び被告Cの競業避止義務違反の有無)について 被告Bについて ア被告Bは,原告に入社した後の平成25年9月25日,以下の記載がある 誓約書に署名押印した上で,原告に提出したことが認められる(甲37,乙24,被告B〔3-4頁〕)。 「私は,貴社の機密情報等に関して,下記の事項を遵守することを誓約致します。 1.貴社の機密情報,顧客・従業員その他の個人情報を第三者に開示及び漏 洩いたしません。 2.貴社所有の工具等を,貴社の業務で使用する場合を除き,貴社の許可無く社外に持ち出しません。 3.貴社で教わった技術及び知った技術を貴社以外の者に教えません。 4.貴社で教わった技術及び知った技術を犯罪に使用することは絶対にいた しません。 5.貴社に入社してから5年以内に退社した場合は,貴社を退社後3年間にわたり,貴社の営業と競業する行為を避止し,次の行為を行わないことを誓約致します。 貴社と競合関係に立つ事業者に,就職したり役員に就任すること。 貴社と競合関係に立つ事業者の提携先企業に,就職したり役員に就任すること。 貴社と競合関係に立つ事業を自ら開業又は設立すること。 6.万一,本誓約書に違反した場合は,貴社の被った損害を賠償致します。 以上」 イ前記アのとおり,被告Bは,原告に入社してから5年以内に退職した場合には ら開業又は設立すること。 6.万一,本誓約書に違反した場合は,貴社の被った損害を賠償致します。 以上」 イ前記アのとおり,被告Bは,原告に入社してから5年以内に退職した場合には,退社後3年間は退職後に競合関係に立つ事業者に就職しない旨の競業避止義務を内容とする誓約書に署名押印しているところ,被告Bは原告に平成23年10月頃入社してから5年以内である平成26年10月に原告を退職し,さらに同年12月頃に原告と競合関係に立つ被告会社に入社した。 ここで,被告Bは,上記誓約書は公序良俗に反して無効であるなどと主張 して,被告Bが本件誓約書記載の競業避止義務を負わない旨主張する。 原告は,従業員に対して誓約書を提出させて競業避止義務を課すことに関して,極めて有効なグンマジの開錠技術を教示した従業員が競合他社に転職することを制限する必要があると主張していて,この競業避止義務を課すこととしたのは,原告が従業員に解錠技術を教示した後,その対価(当該従業 員の売上)を十分に得られないまま,従業員が原告を退社し,競業他社等に転職して,原告が教示した解錠技術を使用されることを避けるためであると考えられる。しかしながら,被告Bは,そもそも,原告に受講料を支払って本件講座を受講して開錠技術等を学び,また,本件講座でグンマジを用いた開錠方法を教わった(前記4)後,原告に入社したのであり,原告の従業 員として教示された解錠技術の有無,内容は明らかではない。そうすると,上記理由によって被告Bに競業避止義務を課す必要が生ずることは必ずしも明らかではない。また,被告Bが原告に提出した誓約書は,場所的制限もなく一律に退職後3年間というある程度の長期間にわたり競合関係に立つ事業者への転職を禁止するものであり,かつ,競業 ることは必ずしも明らかではない。また,被告Bが原告に提出した誓約書は,場所的制限もなく一律に退職後3年間というある程度の長期間にわたり競合関係に立つ事業者への転職を禁止するものであり,かつ,競業避止義務を課すことに対 する代償措置も講じられていない。 上記によれば,上記誓約書は公序良俗に反して無効であるというべきである。したがって,被告Bは上記誓約書に基づき,競業避止義務を負うものではない。 被告Cについて 被告Cについての誓約書は証拠として提出されておらず,被告Cは誓約書を提出したかは覚えていないと供述している(乙25,被告C〔5,20頁〕)。 被告Cが誓約書を提出したと認めるに足りる証拠はなく,被告Cが原告に対して誓約書に基づく競業避止義務を負うとは認められない。 6 争点(被告会社の責任原因)について 以上のとおり,原告が主張する各不法行為のうち,本件元従業員らのうちの誰 かがキーマシン及びグンマジを持ち出した行為(前記2,)は,原告に対する不法行為を構成するというべきである。また,これらの行為は,遅くとも,本件元従業員らのうち,最も遅く原告を退職した被告Cの退職日である平成27年3月31日までに行われたと認められる。 もっとも,被告B又は被告Cが上記不法行為をしたと認めるに足りず,また, 被告B,被告C及び被告Aが上記不法行為に共謀等によりその不法行為に加担したとも認めるに足りないから,被告B,被告C及び被告Aが不法行為責任を負うとは認められない。 他方,上記キーマシンやグンマジが原告から持ち出された時期は不明であるものの,これらの工具等は,原告から持ち出された後,いずれかの時期に,被告所 有の車両や本件倉庫に移され,また,被告会社従業員が使用 記キーマシンやグンマジが原告から持ち出された時期は不明であるものの,これらの工具等は,原告から持ち出された後,いずれかの時期に,被告所 有の車両や本件倉庫に移され,また,被告会社従業員が使用しているのであるから,持ち出した者がその時点で既に被告会社の従業員であったか,又は,少なくとも,持ち出した者と意を通じて,被告会社の管理下に移すことに協力した被告会社の従業員がいたと推認することができる。 そして,上記工具等は,被告会社が行う開錠業務で使用するために持ち出され たものであると認められるから,工具等を持ち出した者,又は,その協力者は,被告会社での業務のために,工具等を持ち出し,原告に損害を加えているのであり,使用者である被告会社は,原告に対し,使用者責任に基づく損害賠償責任を負うというべきである。 これに対し,被告会社は,本件元従業員らの行動を把握していなかったことな どから使用者責任を負うことはないと主張するが,被告会社が被用者の選定やその事業の監督について相当な注意をしたとも,相当な注意をしても損害が生ずべきであったとも認められず,被告会社は使用者責任に基づく損害賠償責任を免れないというべきである。 7 争点(原告の損害額)について 以上のとおり,原告が主張する各不法行為のうち,本件元従業員らのうちの誰 かがキーマシン及びグンマジを持ち出した行為について,被告会社は使用者責任に基づく損害賠償責任を負う。 キーマシンを持ち出したことによる損害について証拠(甲16~19)及び弁論の全趣旨によれば,被告会社の車両及び本件倉庫に置かれていた原告所有の株式会社ジョーエイ製機製の製造番号555 番及び597番のキーマシンの販売価格は32万円であると認められ,2台の販売 び弁論の全趣旨によれば,被告会社の車両及び本件倉庫に置かれていた原告所有の株式会社ジョーエイ製機製の製造番号555 番及び597番のキーマシンの販売価格は32万円であると認められ,2台の販売価格合計64万円が損害額となる。 グンマジを持ち出したことによる損害について原告は,本件元従業員らがグンマジを持ち出したことによって,原告がグンマジの開錠方法を独占的に使用することで得られていた市場による優位性を 喪失し,得べかりし利益を喪失したと主張する。 しかし,原告は,本件講座において,原告従業員ではなく,また,原告従業員になるとは限らない本件講座の受講生にもグンマジの解錠技術を教え,原告に入社せずに,鍵師として自らで開錠業務を行うことを考えている元受講生に対してもグンマジを販売していたといえるから,原告がグンマジの開錠方法を 市場において独占的に使用していたとは認められない。また,グンマジによって開錠することができるというスイッチサムターンの一般家庭における普及率は明らかではなく,スイッチサムターンでない鍵はグンマジを使用しなくても開錠することができるのであり,原告においても,開錠依頼があった案件の全てでグンマジが使用されていたわけではない。また,被告会社が開錠業務を 行っていた規模が原告の業務に影響を及ぼす程度であったことを認めるに足りる証拠はない。(甲36,K〔18-20頁〕,被告B〔18-19頁〕,前記4)。 以上によれば,本件元従業員らがグンマジを持ち出したことによって,原告が市場による優位性を喪失したことによる損害が生じたとは認められない。も っとも,本件倉庫にあった構成部品と併せて,F及び本件元従業員らのうちの 誰かが,合計少なくとも2台のグンマジを持ち出したと認められ, したことによる損害が生じたとは認められない。も っとも,本件倉庫にあった構成部品と併せて,F及び本件元従業員らのうちの 誰かが,合計少なくとも2台のグンマジを持ち出したと認められ,被告会社はこの行為について使用者責任に基づく損害賠償責任を負うところ,グンマジの販売価格は1台29万8000円であったから,2台の販売価格相当額の合計59万6000円が損害となるといえる。 弁護士費用相当額の損害額 本件に現れた諸事情に照らし,本件における弁護士費用相当額の損害額は15万円とするのが相当である。 小括したがって,原告は,被告会社に対し,損害賠償金合計138万6000円及びこれに対する,上記不法行為が行われた可能性のある最も遅い日である平 成27年3月31日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる。 8 結論よって,原告の請求は主文の限度で理由があるからこれらを認容し,その余は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第46部 裁判長裁判官柴田義明 裁判官安岡美香子 裁判官大下良仁
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