平成28年2月16日判決言渡平成26年(行ウ)第225号銃砲刀剣類所持許可更新不許可処分等取消請求事件 主文 1 本件各訴えのうち東京都公安委員会が原告に対し平成25年▲月 ▲ 日付けで行った別紙物件目録記載の散弾銃の仮領置処分の取消しを求めるものを却下する。 2 東京都公安委員会が原告に対し平成25年 ▲ 月 ▲ 日付けで行った銃砲刀剣類所持の許可について更新を認めないと決定した処分を取り消す。 3 訴訟費用は,これを5分し,その4を被告の負担とし,その余を原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 主文2項同旨 2 東京都公安委員会が原告に対し平成25年 ▲ 月 ▲ 日付けで行った別紙物件目録記載の散弾銃の仮領置処分を取り消す。 第2 事案の概要本件は,東京都公安委員会から別紙物件目録記載の散弾銃(以下「本件散弾銃」という。)につき銃砲刀剣類所持の許可を受けていた原告が,同委員会から,平成25年 ▲ 月 ▲ 日付けで,同散弾銃につき銃砲刀剣類所持の許可について更新を認めない旨の処分(以下「本件更新不許可処分」という。)及び同散弾銃の仮領置処分(以下「本件仮領置処分1」という。)を受けたことから,上記各処分は,銃刀法剣類所持等取締法(以下「銃刀法」という。)所定の更新不許可事由又は仮領置事由が存在しないにもかかわらずされた違法なものであると して,原告が,処分行政庁が所属する被告に対し,本件更新不許可処分及び本件仮領置処分1の各取消しを求めている事案である。 1 関係法令の定めの概要(1) 所持の許可ア許可次の各号のいずれかに該当する者は,所持しようとする銃砲又は刀剣類ごとに,その所持について,住所地を管轄する都道府県公安委員会の許可を受 係法令の定めの概要(1) 所持の許可ア許可次の各号のいずれかに該当する者は,所持しようとする銃砲又は刀剣類ごとに,その所持について,住所地を管轄する都道府県公安委員会の許可を受けなければならない(銃刀法4条1項)。 狩猟,有害鳥獣駆除又は標的射撃の用途に供するため,猟銃又は空気銃(空気けん銃を除く。)を所持しようとする者(5号の2に該当する者を除く。)(1号)イ許可の申請(ア) 銃刀法4条の規定による許可を受けようとする者は,住所地又は法人の事業場の所在地を管轄する都道府県公安委員会に,許可申請書を提出しなければならない(同法4条の2第1項)。 (イ) 銃刀法4条の2第1項の許可申請書には,内閣府令で定める書類を添付しなければならない(同条第3項)。 (ウ) 申請書の添付書類銃刀法4条の2第3項(同法7条の3第3項において準用する場合を含む。)の内閣府令で定める書類は,次に掲げるとおりとする(銃砲刀剣類所持等取締法施行規則11条1項)。 銃刀法7条の3第1項の規定により許可の更新を受けようとする者については,別記様式13号(省略)の同居親族書(2号)ウ許可の基準都道府県公安委員会は,銃刀法4条の規定による許可を受けよ うとする者が次の各号のいずれかに該当する場合又は許可申請書若しくはその添付書類中に重要な事項について虚偽の記載(以下「重要事項虚偽記載」という。)があり,若しくは重要な事実の記載が欠けている場合においては,許可をしてはならない(同法5条1項)。 他人の生命,身体若しくは財産若しくは公共の安全を害し,又は自殺をするおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者(前号に該当する者を除く。)(以下「自傷他害のおそれがある者」という。)(18 他人の生命,身体若しくは財産若しくは公共の安全を害し,又は自殺をするおそれがあると認めるに足りる相当な理由がある者(前号に該当する者を除く。)(以下「自傷他害のおそれがある者」という。)(18号)エ許可の更新(ア) 銃刀法4条1項1号の規定による猟銃又は空気銃の所持の許可の更新を受けようとする者は,その者の住所地を管轄する都道府県公安委員会に対し,許可の更新の申請をしなければならない(同法7条の3第1項)。 (イ) 都道府県公安委員会は,銃刀法7条の3第1項の規定による許可の更新の申請があった場合において,申請をした者及び申請に係る猟銃又は空気銃が銃刀法5条(1項1号を除く。)及び同法5条の2(6項を除く。)の許可の基準に適合していると認めるときは,許可の更新をしなければならない(同法7条の3第2項)。 (ウ) 銃刀法4条の2の規定は,同法7条の3第2項の規定による許可の更新を受けようとする者について準用する(同条第3項)。 (2) 仮領置ア都道府県公安委員会は,許可が失効した場合において,人の生命,身体若しくは財産に対する危険を防止するため必要があると認 めるとき(以下「危険防止の必要性があるとき」という。),当該許可を受けていた者に対し当該銃砲の提出を命じ,提出された銃砲を仮領置するものとする(銃刀法8条7項)。 イ都道府県公安委員会は,11条1項各号等の事由が発生した場合において,危険防止の必要性があるときは,取消し前において,当該許可を受けている者に対し当該銃砲の提出を命じ,提出された銃砲を仮領置することができる(同条7項)。 そして,同条1項2号は,上記事由の一つとして,同法4条の規定による許可を受けた者が同法5条1項18号に該当するに至った場合(上記(1)ウ)を挙げ た銃砲を仮領置することができる(同条7項)。 そして,同条1項2号は,上記事由の一つとして,同法4条の規定による許可を受けた者が同法5条1項18号に該当するに至った場合(上記(1)ウ)を挙げている。 ウ都道府県公安委員会は,許可を取り消した場合においては,当該許可を受けていた者に対し当該銃砲の提出を命じ,提出された銃砲を仮領置するものとする(銃刀法11条8項)。 2 前提事実(争いのない事実,顕著な事実及び掲記の証拠により容易に認められる事実)(1) 当事者原告は,処分行政庁から銃砲の所持の許可を受け,本件散弾銃1丁を所持していた。なお,最後に所持の許可を受けたのは,平成22年 ▲ 月 ▲ 日であり,その有効期間が満了する日は,許可を受けた日から3回目の誕生日である平成25年 ▲ 月 ▲ 日であった(乙1)(銃刀法7条の2第1項)。 (2) 本件処分に至る経緯等ア原告は,平成24年12月27日,処分行政庁に対し,銃刀法7条の3第1項の規定に基づく猟銃の所持の許可の更新を申請し(以下「本件更新申請」という。),添付書類として同居親族書(以下「本件同居親族書」という。)を提出した。 イ処分行政庁は,平成25年 ▲ 月 ▲ 日,本件更新申請時に原告が提出した本件同居親族書には重要事項虚偽記載があり,銃刀法5条1項柱書の許可基準に適合しないものとして,本件更新不許可処分をするとともに,本件仮領置処分1を行った。本件仮領置処分1に係る平成25年 ▲ 月 ▲ 日付け仮領置書(甲2。以下「本件仮領置書1」という。)には,本件仮領置処分1の根拠条文として銃刀法11条8項と記載されていた。 ウ原告は,平成25年4月17日,処分行政庁に対し,本件更新不許可処分及び本件仮領置処分1の取消しを求める 1」という。)には,本件仮領置処分1の根拠条文として銃刀法11条8項と記載されていた。 ウ原告は,平成25年4月17日,処分行政庁に対し,本件更新不許可処分及び本件仮領置処分1の取消しを求める異議申立てをした(以下「本件異議申立て」という。)。なお,処分行政庁が,本件異議申立てに対して,本訴の口頭弁論終結時までに応答したことを認めるに足りる証拠はない。 エ処分行政庁は,平成25年6月19日,原告の代理人弁護士に対し,本件仮領置書1に記載した本件仮領置処分1の根拠条文を職権により銃刀法11条8項から同条7項に訂正する旨記載した仮領置書訂正書及び本件散弾銃を銃刀法8条7項の規定により仮領置する旨記載した同日付け仮領置書(以下「本件仮領置書2」という。)を送付した。 オ処分行政庁は,平成25年7月26日,原告の代理人弁護士に対し,本件仮領置書2の仮領置の年月日を,職権により, 平成25年6月19日から同年 ▲ 月 ▲ 日に訂正する旨記載された仮領置書訂正書を送付した。 カ原告は,平成26年5月16日,本件訴訟を提起した。 3 争点(1) 本件仮領置処分1の取消しを求める訴えの利益が存在するか否か(以下「争点(1)」という。)。 (2) 本件更新不許可処分が適法か否か。具体的には,本件同居親族書に重要事項虚偽記載が存在するか否か(以下「争点(2)」という。)。 (3) 本件仮領置処分1が適法か否か。具体的には,原告が銃刀法11条1項2号が掲げる事由のうちの同法5条1項18号所定の要件(自傷他害のおそれがある者)に該当し,かつ,本件が危険防止の必要性があるときに該当するか否か(以下「争点(3)」という。)。 4 争点についての当事者の主張(1) 争点(1)(本件仮領置処分1の取消しを求める訴えの利益の 該当し,かつ,本件が危険防止の必要性があるときに該当するか否か(以下「争点(3)」という。)。 4 争点についての当事者の主張(1) 争点(1)(本件仮領置処分1の取消しを求める訴えの利益の存否)について(被告の主張の要旨)処分行政庁は,本件散弾銃の所持の許可の有効期間満了日である平成25年 ▲ 月 ▲ 日,同許可の有効期間内に限って本件散弾銃を仮領置する本件仮領置処分1をしたのであるから,同日の経過をもって本件仮領置処分1の効力が消滅したことは明らかであるし,銃刀法に基づく仮領置を理由として原告が不利益な取扱いを受けることを定めた法令の規定は存在しない。したがって,本件仮領置処分1を取り消すことによって回復される原告の法律上の利益は存在せず,原告は,本件仮領置処分1の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に当たらないことは明らかである。よって,本件仮領置処分1の取消しを求める訴えは,不適法な訴えとして却下されるべきである。 なお, 被告が本件散弾銃を仮領置しているのは, 処分行政庁が,平成25年 ▲ 月 ▲ 日,本件散弾銃に係る原告の所持許可が失効し,引き続き本件散弾銃を仮領置する必要があるものと認められたことから,銃刀法8条7項に基づき,本件散弾銃を仮領置した(以下「本件仮領置処分2」という。)ことによるものである。 (原告の主張の要旨)本件仮領置処分1が平成25年 ▲ 月 ▲ 日の経過により失効しているとすれば,被告は,原告に対して,直ちに本件散弾銃を原告に対して返還すべきであるにもかかわらず,本件散弾銃の領置をそのまま継続しているのであるから,原告には,本件仮領置処分1の取消しを求める法律上の利益がある。 被告は,平成25年 ▲ 月 ▲ 日に本件仮領置処分2を行った旨主張す らず,本件散弾銃の領置をそのまま継続しているのであるから,原告には,本件仮領置処分1の取消しを求める法律上の利益がある。 被告は,平成25年 ▲ 月 ▲ 日に本件仮領置処分2を行った旨主張するが,同日には被告による行為は何も存在しておらず,本件仮領置処分2は存在しない。 (2) 争点(2)(本件更新不許可処分の適法性(本件同居親族書の重要事項虚偽記載の存否))について(被告の主張の要旨)ア(ア) 原告から本件更新申請を受理した警視庁 β 警察署(以下「 β 署」という。)生活安全課(以下「 β 署生活安全課」を「生活安全課」という。)巡査長A(以下「A巡査長」という。)は,原告から提出を受けた本件同居親族書に,原告の同居者として,原告の妻,長男及び長女(以下,それぞれ「妻」,「長男」及び「長女」といい,3名を併せて「妻ら」という。)の氏名等が記載されていたことから,平成25年▲月上旬,妻らの意見等を聴取するために原告宅等に電話を架けたものの,応答がなく妻らから聴取できなかった。なお, β 署職員が,本件同居親族書の提出に際し,原告からその記載方法について質問を受けた事実や住民票上の記載と同一に記載するように指導した事実は存在しない。 (イ) 生活安全課警部補B(以下「B警部補」という。)及びA巡査長(以下,B警部補と併せて「B警部補ら」という。)は,調 査を行ったところ,平成23年5月5日,同署地域課員が110番通報を受けて原告宅に臨場した際,妻らから,原告と長男がけんかをして原告が割れたガラスで左肩を怪我したこと,妻らは以前から原告に暴力をふるわれていたこと,妻及び長男は,同日,原告から,「お前ら撃ち殺してやる。」などと言われて脅されたこと,妻が平成23年10月上旬に原告宅に荷物を取りに行った際, こと,妻らは以前から原告に暴力をふるわれていたこと,妻及び長男は,同日,原告から,「お前ら撃ち殺してやる。」などと言われて脅されたこと,妻が平成23年10月上旬に原告宅に荷物を取りに行った際,原告から怒鳴り散らされて逃げ帰ったことがあること,原告は,長男の携帯電話の留守番電話に「戻って来い。決着を着けようぜ。」などといった伝言を残したこと,を聴取したことが判明した。 (ウ) A巡査長は,平成25年▲月中旬,原告宅に電話を架け,原告に対し,妻らの意見を聞きたい旨告げたところ,原告が,平成23年5月に長男とけんかした際,妻らを追い出したこと,同人らとは一緒に生活をしていないことを述べたことから,B警部補らが,平成25年 ▲ 月 ▲ 日,原告宅の近隣住民から聞き込み調査を行ったところ,約1年前から妻らの姿を見ていないこと,原告が経営する原告宅近くの店舗の騒音問題で,原告と近隣住民がトラブルとなり,原告が近隣住民に対して威圧的な態度で接してくることなどを聴取した。 (エ) B警部補らは,平成25年 ▲ 月 ▲ 日,原告の勤務先において,原告と面接をし,同居親族について聴取したところ,原告は,平成23年5月5日,鯉のぼりを収納している際,長男とけんかとなり,妻が長男に加勢したことで嫌気がさし,妻らを家から追い出したと述べた。B警部補らは,原告に対し,本件同居親族書に別居中の妻らの氏名等を記載した理由について尋ねたところ,原告は,「別居しているが離婚していないので書いた。」などと 答えた。 (オ) 処分行政庁は,上記(ア)~(エ)の調査結果から,本件同居親族書の記載には重要事項虚偽記載があり,銃刀法7条の3第2項に基づく所持許可の更新を認めることはできないものと認められたことから,平成25年 ▲ 月 ▲ 日,本件更新不 )の調査結果から,本件同居親族書の記載には重要事項虚偽記載があり,銃刀法7条の3第2項に基づく所持許可の更新を認めることはできないものと認められたことから,平成25年 ▲ 月 ▲ 日,本件更新不許可処分をした。 イ銃刀法5条1項柱書が重要事項虚偽記載を不許可事由としている趣旨は,許可申請書等の重要事項について虚偽記載がある場合は,都道府県公安委員の審査を著しく困難とするばかりでなく,不許可事由が故意に隠蔽され,その結果として所持許可を与えるべきでない者に対して許可が与えられる危険性を防止するためである。そして,許可を受けようとする者による配偶者暴力が疑われる事案では,銃刀法5条1項18号が規定する自傷他害のおそれがある者に該当するか否かを検討する必要があるから,許可申請書の添付書類である同居親族書により配偶者等の転居の事実を確認し,転居が判明した場合には,その理由や転居先を調査する必要がある。したがって,同居親族書の記載内容は,同条1項柱書の「重要な事項」に該当し,同居していない配偶者を同居親族書に記載することは,「虚偽の記載」に該当する。これを本件について見ると,上記アのとおり,原告が妻らと同居している事実がないにもかかわらず,本件同居親族書に妻らの氏名を記載し,これを処分行政庁に提出したことが重要事項虚偽記載に該当することは明らかである。したがって,本件同居親族書の重要事項虚偽記載の存在を前提として行われた本件不許可処分は適法である。 (原告の主張の要旨)ア原告は,平成23年5月5日,鯉のぼりを片付けていた際,長 男とけんかとなり,突如長男に飛びかかられたために転倒し,その衝撃で近くにあった水槽が割れ,更に長男に馬乗りになって押さえつけられたことから,割れた水槽のガラスで背中や肩に大きな切創を負 男とけんかとなり,突如長男に飛びかかられたために転倒し,その衝撃で近くにあった水槽が割れ,更に長男に馬乗りになって押さえつけられたことから,割れた水槽のガラスで背中や肩に大きな切創を負った。その場に駆けつけた妻は,状況をよく確認しないまま,長男に加勢し,原告の顔面を殴りつけるなどした。そのため,原告は,妻及び長男に対し,「お前らぶち壊しだ。」と発言し,同人らに対して,原告宅を出ていくように指示し,その結果,妻らは原告宅以外に生活の拠とする場所を構えた。もっとも,妻らは,平成23年5月5日以降も原告宅を住所とした住民登録を変更していないし,その所有物は,原告宅に残されており,同人らは,原告宅の鍵を持って原告宅に自由に出入りしている。また,原告がこの際「お前ら撃ち殺してやる。」と発言した事実はないし,原告がこの日以前に妻らに対して暴力をふるった事実も存在しない。そして,原告が,原告宅に荷物を取りに来た妻や長男に怒鳴ったのは,同人らを窃盗犯と間違えたためであるし,原告が長男の携帯電話の留守番電話に「戻って来い。決着を着けようぜ。」などといった伝言を残したのは,家族関係に関する決着を着けるためのを話合いを持ちかけたものである。 イ前記アのとおり,原告が処分行政庁に対し本件同居親族書を提出した平成24年12月27日時点で,原告宅には実質的に妻らの生活実態が存在しており,同人らは原告宅を生活の拠点とする意思も有していたから,本件同居親族書に重要事項虚偽記載は存在しない。 ウ重要事項虚偽記載にいう「重要な事項」に該当するか否かは,その記載により許可等の審査が著しく困難となるか,また,その記載により不許可事由が隠蔽されて所持許可が与えられるべきでな い者に対し,許可が与えられる危険性が生じるか,の2点で判断さ その記載により許可等の審査が著しく困難となるか,また,その記載により不許可事由が隠蔽されて所持許可が与えられるべきでな い者に対し,許可が与えられる危険性が生じるか,の2点で判断されるべきである。許可申請書の添付書類として同居親族書の提出が求められる趣旨は,許可を受けようとする者の同居の親族に,自傷他害のおそれがある者がいる場合には,その者が許可に係る銃砲刀剣類を使用して他人の生命等を害することや,本来は不許可事由に該当する者が同居の親族名義で許可を受けて密かに銃砲刀剣類を所持することを防止するためである。同居に至らない親族を同居親族書に記載して届け出ても,許可等の審査が著しく困難になることはないし,本来許可されるべきでない者に対して許可が与えられる危険が生じることはあり得ないから,本件同居親族書の記載は,重要事項虚偽記載にいう「重要な事項」に該当しない。 エ重要事項虚偽記載に該当するためには,故意又は悪意によって虚偽の記載をする必要がある。原告が,本件同居親族書の提出に際し, β 署職員に対し,住民票上は同居の親族が3名いるが, 同人らは原告宅の他にも生活の拠としている場所があることを伝え,同居親族書の記載方法を尋ねたところ,同職員は,住民票上の記載が公的な記録であるから,その記載に合わせて同居親族書を記載するよう指導した。したがって,本件同居親族書の記載に際し,原告には虚偽記載の故意が存在しないから,本件同居親族書の記載は,重要事項虚偽記載に該当しない。 オ以上によれば,本件同居親族書の記載は重要事項虚偽記載に該当しないから,本件更新不許可処分は不適法である。 (3) 争点(3)(本件仮領置処分1の適法性(原告の自傷他害のおそれ該当性及び本件の危険防止の必要性該当性))について(被告の主張の要旨) 当しないから,本件更新不許可処分は不適法である。 (3) 争点(3)(本件仮領置処分1の適法性(原告の自傷他害のおそれ該当性及び本件の危険防止の必要性該当性))について(被告の主張の要旨)ア処分行政庁は,前記(2)(被告の主張の要旨)ア(ア)~(エ)の調 査結果から,原告が銃刀法11条1項2号が規定する自傷他害のおそれがある者に該当し,危険防止の必要性があるときに当たるから,本件散弾銃を仮領置する必要があるものと認め,同日,同条7項に基づき,本件仮領置処分1をした。 イ銃刀法11条7項に基づく仮領置は,銃の所持の許可を受けようとする者が自傷他害のおそれがある者に該当する場合において,危険防止の必要性があるときにできるものであるところ,前記(2)(被告の主張の要旨)アのとおり,原告は,度々妻らに暴力を加え,長男とけんかした際には,妻や長男に対し,「お前ら撃ち殺してやる。」などと言って脅したこと,原告が原告宅に荷物を取りに来た妻や長男に対し怒鳴りつけたこと,原告が長男の携帯電話の留守番電話に「戻って来い。決着を着けようぜ。」との伝言を残したこと,原告に原告宅を追い出された妻らが原告宅に戻っていないこと,妻らは,原告からの暴力を恐れ,原告に住所地を知られないようにしていることからすれば,原告が自傷他害のおそれがある者に該当するとともに,本件が危険防止の必要性があるときに該当することは明らかである。したがって,本件仮領置処分1は適法である。 (原告の主張の要旨)前記(2)(原告の主張の要旨)アのとおり,原告が妻らに暴力をふるったり,「お前ら撃ち殺してやる。」などと言って脅したりしたことはないから,原告が自傷他害のおそれがある者に該当するとはいえないし,妻らが未だ原告宅に戻 旨)アのとおり,原告が妻らに暴力をふるったり,「お前ら撃ち殺してやる。」などと言って脅したりしたことはないから,原告が自傷他害のおそれがある者に該当するとはいえないし,妻らが未だ原告宅に戻っていないことをもって本件が危険防止の必要性があるときに該当するとはいえないから,本件仮領置処分1は不適法である。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実並びに掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 (1) 原告の家族,職業及び散弾銃の所持の許可ア原告は, 昭和21年 ▲ 月 ▲ 日生まれの男性であり, 昭和50年代頃から妻と同棲するようになり,その後,妻と婚姻し,妻との間に,平成3年に長男を,平成5年頃に長女をもうけた。原告は,平成5年頃,妻を殴り,鼻の骨を骨折させたことがあったが,長男が中学生になって以降,妻らに対して暴力をふるったことはなかった。なお,原告と妻は,長女をもうけた頃,一時離婚していたことがあったが,1年くらいで復縁した。(甲9,11,乙2,11,原告本人,証人C,弁論の全趣旨)イ原告は,昭和50年頃から,東京都 β 区所在の原告宅近くで,(省略) を営む会社を経営している(甲9,原告本人)。 ウ原告は,昭和63年6月9日,散弾銃の所持の許可を受け,途中更新を怠り失効した期間があるものの,以降散弾銃の所持の許可の更新を受け続けていた(甲9,乙3の1・2,原告本人)。 (2) 平成23年5月5日の出来事等ア原告は,平成23年5月5日,当時大学生の長男と一緒に原告宅のベランダに設置した鯉のぼりの支柱を片付けていた際,長男に対して片付けのやり方を注意したところ,長男は,原告に体当たりをして原告を転倒させ,更に原告の上に馬乗り 日,当時大学生の長男と一緒に原告宅のベランダに設置した鯉のぼりの支柱を片付けていた際,長男に対して片付けのやり方を注意したところ,長男は,原告に体当たりをして原告を転倒させ,更に原告の上に馬乗りになり,原告を押さえつけた。妻は,この騒ぎを聞いて駆けつけ,長男に加勢し,長男に押さえつけられている原告の顔面を,数回,殴りつけた。原告は,転倒した際に割れたガラスの水槽の破片で背中や左肩に切創を負 った。原告は,駆けつけた警察官が手配した救急車に乗り込む際,妻及び長男に対して,「お前ら,戻ってきたときにここにいるんじゃねえぞ。」と伝えた。なお,妻は,上記やり取りの際,原告が妻及び長男に対して,「お前ら撃ち殺してやる。」と叫んだ旨供述するが,原告本人及び証人C(長男)は,いずれも原告がかかる発言をしたことを否定している。以上のやり取りにおいて,原告が妻や長男に対して,暴力をふるったことはなかった。(甲6,9,11,原告本人,証人C)イ原告が,平成23年5月5日深夜,病院での治療を終えて自宅に戻ったところ,妻らは,自宅におらず,自宅には,妻らが原告に宛てた手紙が残されており,妻の手紙には「止めるつもりが手が出てすみません今度合って話をする前は3発返してください現在の生活は無理が来ていますねお互が良い方に話しが出来たら良かったです。」と,長男の手紙には「一時の感情に身をまかせて,あのような行動をとって本当に大人気なかったと思います。本当にすいませんでした。」「せっかく親父がここまで作り上げたものを失うのも嫌なのでもしよかったら話し合ってもらいたいです。」と,長女の手紙には「今まで育ててくれてありがとうございました。」と,それぞれ記載されていた。(甲6,7,8の1・2,甲9,11,原告本人,証人C)ウ妻は,平 たら話し合ってもらいたいです。」と,長女の手紙には「今まで育ててくれてありがとうございました。」と,それぞれ記載されていた。(甲6,7,8の1・2,甲9,11,原告本人,証人C)ウ妻は,平成23年5月6日, β 署を訪れ,原告は普段から激高しやすい性格であること,同月5日,些細なことで原告と長男がつかみ合いのけんかになったことなどを相談した(乙3の1・2,乙10,証人A)。 エ妻らは,原告宅を出た後,当初東京都△△市に,その後, 東京都□□市α に, アパートを借り, 3人で生活を始めたが, 原告宅 に残した荷物を運び出すなどするため,原告宅に出入りするほか,妻は,月に1回,原告宅を訪れ,原告から生活費の支給を受け,長女等の近況を報告していた(甲9,11,原告本人,証人C)。 (3) 平成23年10月8日の出来事等ア原告の妻は,平成23年10月7日深夜,原告の携帯電話にメールで,明日の午後3時頃に,荷物の引取りのために原告宅を訪問する旨連絡し,同月8日午後3時頃,長男と一緒に原告宅を訪れた。 上記メールを見ておらず入浴中だった原告は,妻及び長男を,原告宅に侵入した窃盗犯と間違え,怖い思いをさせられたことに腹立ち,同人らに対して怒鳴りつけた。原告は,同日,長男の携帯電話の留守番電話に「戻って来い。決着を着けようぜ。」との伝言を残した。 (甲9~11,原告本人,証人C)イ妻は, 平成23年10月8日, β 署を訪れ, 同年5月以降,原告と別居していること,荷物の引取りのために原告宅を訪れる旨原告にメールで連絡したところ返信がなく,同日,原告宅を訪れたところ,原告から,「許可も立会いもなく,勝手に来やがって。」などと怒鳴りつけられたことから逃げ帰ったこと,長男の携帯電話には上記アのとおり伝言が残されて したところ返信がなく,同日,原告宅を訪れたところ,原告から,「許可も立会いもなく,勝手に来やがって。」などと怒鳴りつけられたことから逃げ帰ったこと,長男の携帯電話には上記アのとおり伝言が残されていたことを相談した(乙3の1・2,乙10,証人A)。 ウ長男は,平成24年8月頃から,原告が経営する会社でアルバイトを開始し,原告宅と妻が借りているアパートの双方を行ったり来たりして暮らすようになった。原告は,長男がアルバイトを終えた後,長男を妻が借りているα のアパートまで自動車で送り届けたことが何十回もあった。長男は,平成27年3月に大学を卒業し,同年4月から,原告が経営する会社に正社員として入社し,稼働している。(甲11,証人C) (4) 本件更新申請及びこれに伴う調査等ア A巡査長は,平成24年10月から生活安全課に勤務して銃刀法に係る許可の事務を取り扱うようになり,前任者から,原告について,平成23年5月に妻とトラブルを起こしたことや近隣住民とトラブルを起こしたことがあり,十分注意するよう申し送りを受けた(乙3の1・2,乙10,証人A)。 イ原告は,平成24年12月27日,生活安全課において,A巡査長に対して,本件更新申請に係る猟銃等所持許可更新申請書及び本件同居親族書等の添付書類を提出して,本件更新申請を行った。 本件同居親族書には,同居親族として妻らが記載されていた。A警部補は,この際,原告に対して,妻らとの同居の有無等について確認しなかった。(甲9,乙1,2,3の1・2,乙10,原告本人,証人A)ウ B警部補らは,本件更新申請を受けたことから,妻の相談に関する記録を確認したところ,前記(2)ウ及び(3)イのとおり,妻が平成23年5月6日及び同年10月8日に相談していることが判明した(乙3の1 B警部補らは,本件更新申請を受けたことから,妻の相談に関する記録を確認したところ,前記(2)ウ及び(3)イのとおり,妻が平成23年5月6日及び同年10月8日に相談していることが判明した(乙3の1・2,乙10,証人A)。 エ A巡査長は,平成25年▲月頃,本件同居親族書に同居者として妻らが記載されていたことから,同居の有無について確認するため,原告に電話を架けたところ,電話に出た原告は,平成23年5月に長男とけんかし,その際,妻らを原告宅から追い出し,現在は妻らと同居していない旨述べた(乙3の1・2,乙10,証人A)。 オ B警部補らは,平成25年 ▲ 月 ▲ 日,原告宅の近隣住民に聞き込み調査をしたところ,約1年前から妻らの姿を見ていないこと,原告とトラブルになっている近隣住民がおり,原告が近隣住民に対してポケットに手を入れて威圧的な態度で接するといった話を聴 取した(乙10,証人A)。 カ B警部補らは,平成25年 ▲ 月 ▲ 日,原告に対し,妻らの所在を尋ねたところ,原告は,平成23年5月5日,長男とけんかとなった際,妻が長男に加勢したことに嫌気がさし,妻らを原告宅から追い出した,妻らの住所地は知らない旨回答した。そこで,B警部補らが,本件同居親族書に同居していない妻の氏名等を記載した理由について質問したところ,原告は,別居しているが離婚していない旨回答した。(乙3の1・2,乙10,証人A)(5) 本件更新不許可処分及び本件仮領置処分1等ア処分行政庁は,平成25年 ▲ 月 ▲ 日,本件更新申請時に原告が提出した本件同居親族書には重要事項虚偽記載があり,同法5条1項柱書の許可基準に適合しないものとして,本件更新不許可処分をするとともに,本件仮領置処分1を行った。 イ B警部補らは,平成25年 ▲ 月 た本件同居親族書には重要事項虚偽記載があり,同法5条1項柱書の許可基準に適合しないものとして,本件更新不許可処分をするとともに,本件仮領置処分1を行った。 イ B警部補らは,平成25年 ▲ 月 ▲ 日午後5時35分頃,原告宅において,原告に対し,本件更新不許可処分に係る同日付け通知書の内容を読み聞かせた上,上記アの本件更新不許可処分の理由を伝えたところ,原告は,同通知書の受領書に署名押印してこれを受領した。B警部補らは,原告に対し,本件散弾銃を仮領置する旨説明したところ,原告が了承し,本件散弾銃を任意提出したことから,本件仮領置処分1をするとともに,原告に対し,本件仮領置処分1に係る本件仮領置書1を交付した。本件仮領置書1には,本件仮領置処分1の根拠条文として銃刀法11条8項と記載されていた。 ウ処分行政庁は,平成25年6月19日,原告の代理人弁護士に対し,本件仮領置書1に記載した本件仮領置処分1の根拠条文を職権により銃刀法11条8項から同条7項に訂正する旨記載した仮領置書訂正書及び本件散弾銃を銃刀法8条7項の規定により仮領 置する旨記載した同日付け本件仮領置書2を送付した。 エ処分行政庁は,平成25年7月26日,原告の代理人弁護士に対し,本件仮領置書2の仮領置の年月日を,職権により,「平成25年6月19日」から「平成25年 ▲ 月 ▲ 日」に訂正する旨記載した仮領置書訂正書を送付した。 2 争点(1)(本件仮領置処分1の取消しを求める訴えの利益の存否)についてこの点について,被告は,本件散弾銃の所持の許可の有効期間満了日である平成25年 ▲ 月 ▲ 日,同許可の有効期間内に限って本件散弾銃を仮領置する本件仮領置処分1をしたのであるから,同日の経過をもって本件仮領置処分1の効力は消滅した旨主張する 期間満了日である平成25年 ▲ 月 ▲ 日,同許可の有効期間内に限って本件散弾銃を仮領置する本件仮領置処分1をしたのであるから,同日の経過をもって本件仮領置処分1の効力は消滅した旨主張する。本件仮領置書1には,本件仮領置処分1を上記許可の有効期間内に限ってする旨の明示的な記載はないから(甲2),被告の上記主張は,本件仮領置処分1の効力は,事柄の性質上,上記許可の有効期間経過により当然に失われるという趣旨のものと解されるが,その理由については必ずしも具体的に主張されていない。 そこで検討すると,銃砲刀剣類の仮領置については,前記「関係法令の定めの概要」(2)で見たとおり,①銃砲刀剣類所持の許可が失効した場合の仮領置(銃刀法8条7項),②当該許可の取消前の仮領置(同法11条7項),③当該許可の取消後の仮領置(同条8項)が定められているところ,本件仮領置処分1は,原告につき,当該許可の取消事由(銃刀法11条1項)の一つである自傷他害のおそれ(同法5条1項18号)があるとしてされたものであり,上記②の仮領置に該当するものである。 ところで,上記②の仮領置がされた場合において,上記許可が取り消されなかったときには,都道府県公安委員会は,仮領置した銃砲刀剣類を,速やかにこれを所持していた者に返還しなければならない旨定めら れているが(同法11条10項),これは,上記②の仮領置がされた場合には,その後に所定の聴聞手続(同法12条)が持たれることとなり,その上で許可が取り消されなかったときには,仮領置の効力が消滅するものとして,仮領置した銃砲刀剣類を返還すべきであるとする一方で,取消事由があるとして許可が取り消されたときには,改めて上記③の仮領置をするまでもなく,上記②の仮領置の効力が の効力が消滅するものとして,仮領置した銃砲刀剣類を返還すべきであるとする一方で,取消事由があるとして許可が取り消されたときには,改めて上記③の仮領置をするまでもなく,上記②の仮領置の効力が存続するとした趣旨のものと解される。この点,本件では,本件仮領置処分1(上記②の仮領置)がされた後,許可の更新がされなかったため,許可の効力が期間満了により失われたものであるが(同法8条1項8号),かかる場合に,取消しによって許可の効力が消滅した場合と同様に当該仮領置の効力は存続するのか,それとも当該仮領置の効力は失われるのかについては,これを明文で定めた規定はない。しかしながら,かかる場合には,もはや聴聞手続によって取消事由の存在を確認することはできず,上記許可を取り消す余地はないことに鑑みると,同法11条10項の定める「許可が取り消されなかった場合」に該当するものとして,当該仮領置の効力は失われるものと解するのが相当である。本件仮領置処分1が効力を有するのは本件散弾銃の所持の許可の有効期限内に限られるという被告の主張は,以上のような理由に基づくものとしてならば首肯し得るものである。 そうすると,本件仮領置処分1は既にその効力が失われている以上,その取消しを求める訴えは訴えの利益を欠くものとして不適法というべきである(なお,当然のことながら,以上の検討は,その後別個の処分として本件仮領置処分2がされたと証拠上認められるかどうかについての判断を示すものではない。この点は,請求内容に照らすと,本訴における判断対象外である。)。 3 争点(2)(本件更新不許可処分の適法性(本件同居親族書の重要事項 虚偽記載の存否))について(1) 銃刀法5条1項は,銃砲刀剣類の所持の許可を申請する者が同 象外である。)。 3 争点(2)(本件更新不許可処分の適法性(本件同居親族書の重要事項 虚偽記載の存否))について(1) 銃刀法5条1項は,銃砲刀剣類の所持の許可を申請する者が同項1号から18号までの事由に該当するときは許可をしてはならないとするほか,同項柱書において,許可申請書若しくはその添付書類中に重要な事項について虚偽の記載がある場合又は重要な事実の記載が欠けている場合にも許可をしてはならないと定めている。 このように,同条1項各号の個別の事由に該当しなくても,許可申請書等の重要事項について虚偽記載や不記載がある場合には許可をしてはならないとしたのは,それが,許可に係る審査を著しく困難とするばかりでなく,不許可事由が故意に隠蔽され,その結果として所持許可を与えるべきでない者に対して許可が与えられる危険性があることから,それを防止する趣旨に出たものと解される。 そうすると,虚偽記載された事項が上記の重要な事項に当たるかどうかは,その事項について虚偽の記載があれば許可の審査を著しく困難とし,又は審査に当たって判断を誤らせることとなるかどうかを基準にして判断されるべきものと解するのが相当である。この点,被告が提出する注釈書(乙5の1)においては,これと同様の考えに立った上で,銃刀法4条の2第1項1号から3号までに挙げられた法定の記載事項及び同項4号の内閣府令で定める事項は,いずれも上記の重要な事項に当たるとしている。しかし,銃刀法5条1項柱書の文言が「法定の記載事項」ではなく「重要な事項」となっていること,法定の記載事項にも種々のものがあり,その内容の真実性が審査に与える影響も事案により様々であると解されることに照らすと,虚偽の内容が記載されたことが法定の記載事項に該当するかどうかは,それが重要な事 定の記載事項にも種々のものがあり,その内容の真実性が審査に与える影響も事案により様々であると解されることに照らすと,虚偽の内容が記載されたことが法定の記載事項に該当するかどうかは,それが重要な事項に当たるか否かについての考慮要素の一つにはなるとしても,それだけで直ちに重要な事項に当た るといえるものではなく,当該事項の性格,個別の事案において虚偽とされた記載の具体的内容,当該事案の審査に係る諸事情等を踏まえつつ,当該記載が当該事案における許可の審査を著しく困難とし,又は審査に当たって判断を誤らせることとなるかどうかを基準にして,上記該当の有無が判断されるべきものと解するのが相当である。 また,銃刀法5条1項柱書記載の不許可事由が,他の不許可事由が故意に隠蔽されることを防止するものであること,同柱書記載の事由は絶対的不許可事由とされていること等に照らすと,不許可とされるのは,虚偽記載をしたことについて故意がある場合に限られるものというべきであり,過失により虚偽記載をしたような場合は当該不許可事由に当たらないものと解するのが相当である(この点は,上記注釈書も同趣旨である。)。 (2) 以上の観点から,原告が本件同居親族書に妻と同居している旨記載したことが重要な事項についての虚偽記載に当たるといえるかどうかについて,検討する。 アそこでまず,本件更新申請に係る事情についてみると,前記認定事実において見たとおり,原告とその妻らとの間で平成23年5月にトラブルがあったことや,同年10月に原告宅を訪問した妻らとの間でトラブルになったことについては,いずれも,その翌日に妻が β 署に相談に訪れており, 同署においてかかるトラブルについて把握していたほか,同年10月の相談時には,原告と妻が別居していることも伝えられて ルになったことについては,いずれも,その翌日に妻が β 署に相談に訪れており, 同署においてかかるトラブルについて把握していたほか,同年10月の相談時には,原告と妻が別居していることも伝えられていたものである。そして,本件更新申請に係る調査を担当したA巡査長は,平成24年10月に銃刀法に係る許可の事務を取り扱うようになる時点で,前任者から上記状況について引継ぎを受けており,相談時の聴取内容も相談記録により把 握していた。本件更新申請に際して提出された本件同居親族書には,原告が妻らと同居している旨の記載がされていたが,A巡査長が,原告にこの点について確認したところ,平成23年5月に長男とけんかをして妻らを追い出し,現在は妻と同居していない旨,原告は答えており,その際に原告が特に隠し立てをしたような事情があったとは認められない。 本件更新申請は,平成24年12月27日にされ,許可の有効期間満了日である平成25年 ▲ 月 ▲ 日に本件更新不許可処分がされたものである。上記申請後の調査としては,電話で原告に聴取をするなどしたことがうかがわれるが,申請後にA巡査長らが原告本人に面会して調査をしたのは,本件更新不許可処分前日である平成25年 ▲ 月 ▲ 日になってであり, 近隣住民に対する聞き込みをしたのも,同日であった。上記申請後にA巡査長らが原告の妻らに面談して事情を確認することは行われていない。その結果された本件更新不許可処分は,自傷他害のおそれ(銃刀法5条1項18号)ではなく,重要な事項についての虚偽記載(同項柱書)を理由としてされているが,これは,後者については物証(同居親族書の記載のことと考えられる。)が残っているとの判断に基づくものであった(証人A)。 イ(ア) 本件更新申請の審査に係る事情は以上のよう 由としてされているが,これは,後者については物証(同居親族書の記載のことと考えられる。)が残っているとの判断に基づくものであった(証人A)。 イ(ア) 本件更新申請の審査に係る事情は以上のようなものであるところ,被告は,配偶者暴力や家庭内トラブルがある事案では,自傷他害のおそれ(銃刀法5条1項18号)の該当性について検討する必要があり,その場合には,同居親族書により妻らの転居事実を確認し,当該事実が判明した場合には,その理由や転居先等を調査するなどして,上記おそれの有無について検討する必要があるのであって,実際には同居していない親族を同居親族書に 記載することとなれば,誤った事実に基づいて許可が更新されることになりかねないと主張し,A巡査長も,本件同居親族書に妻らと同居している旨の記載があったことから,原告と妻との関係は修復したものと思っており,平成25年▲月になって念のため確認したところ,同居していないことが判明した旨供述している(乙10)。 なるほど,夫婦が別居しているかどうかは,当該夫婦間の関係が円満であるかどうかを判断する事情の一つといえるものではあるが,当該夫婦間において配偶者暴力がされるおそれがあるかどうかは,個々の配偶者の性格や過去における暴力の有無・程度等の個別具体的事情によって判断されるべきものであり,同居の有無をもって,当該おそれを判断するに際しての決め手となる事情ということはできない。同居夫婦間における配偶者暴力の存在はしばしば見聞きするところであり,同居しているからこそ配偶者暴力が生じる機会が多くなるという面もある。また,配偶者暴力は繰り返されやすいものともいわれているから,配偶者暴力によって一旦別居した夫婦が再度同居に至ったからといって,両者の関係が直ちに円満で問題のないものに 会が多くなるという面もある。また,配偶者暴力は繰り返されやすいものともいわれているから,配偶者暴力によって一旦別居した夫婦が再度同居に至ったからといって,両者の関係が直ちに円満で問題のないものに復し,当該夫婦間において配偶者暴力の危険がなくなると当然にいえるものでもない。そして,A巡査長が引き継ぎを受けたという情報の中には,原告が普段から激高しやすいこと,原告から「お前ら撃ち殺してやる。」などと言われて脅されたこと,妻が原告からたびたび暴力を振るわれていたなどと原告の妻らが述べていたことも含まれていたという(乙10)のであるから,仮にかかる情報が真実であったとすれば,たとえ妻が原告と再度同居するに至ったとしても,なお,配偶者暴力が生じるおそれがあることは否定できないものと なる以上,この点について十分な調査検討が必要であったものというべきである (もっとも,平成23年に β 署側が上記情報を得たことを契機に許可取消事由の存否について調査がされたとは証拠上うかがわれないし,また,本件更新許可申請後にされた調査は上記アのとおりである。)。 (イ) 以上のとおり,本件の事情の下においては,A巡査長らとしては,本件同居親族書の記載内容のいかんにかかわらず,原告による配偶者暴力のおそれを中心に不許可事由の調査検討を行うべき事情があったものといえるから,同書面に事実と異なる記載があったとしても,それにより,許可の審査を著しく困難とし,又は審査に当たって判断を誤らせることになったとはいえない。 したがって,本件の事情の下では,当該記載は,銃刀法5条1項柱書にいう重要な事項に当たらない。 (ウ) なお,被告は,種々の事情を指摘して原告に自傷他害のおそれがあった旨主張する。この主張に係る事情は,上記の重要な事項に該当するかどう は,銃刀法5条1項柱書にいう重要な事項に当たらない。 (ウ) なお,被告は,種々の事情を指摘して原告に自傷他害のおそれがあった旨主張する。この主張に係る事情は,上記の重要な事項に該当するかどうかの判断に直接関係するものとは解し難いが,当該事情の内容いかんによっては,その判断に影響するところが全くないとはいい切れないので,念のため,付言する。 まず,被告は,原告がたびたび妻らに暴力を加えていた旨主張するが,原告が,過去,妻の鼻を骨折させたことがあったと認められるものの,それは20年ほども前のことであり,近時,妻らに対して暴行を加えていたと認めるに足りる証拠はない。また,被告は,原告が,平成23年5月に,妻らに対して「お前ら撃ち殺してやる。」などといって脅した旨主張するが,仮に原告がこれに類する発言をしたとしても,それは,長男から押さえつけられた上,妻からも殴られるという一方的な暴行を受けた時点で憤 激の余り出た発言と理解し得る上,かかる発言があったのは更新申請の1年半以上前であって,その後の妻らとの関係は既に述べたとおりであるから,上記のような発言があったからといって,それが妻子に対して本件散弾銃を用いるおそれがあることを裏付けるようなものとはいえない。さらに,被告は,原告が,平成23年10月に荷物を取りに来た妻や長男に対して怒鳴りつけ,長男の携帯電話の留守番電話に「戻って来い。決着を着けようぜ。」と伝言したとも主張するが,怒鳴ったのは,同人らが荷物を取りに来た際の行き違いのため,同人らを窃盗犯と誤認させられたことによるものとうかがわれるし,同じ時期に原告と妻との間でやりとりされたメール(甲10)中に,原告から荷物の引取りや離婚のことなどが切り出されていることからすると,決着を付けるという趣旨は,離婚する によるものとうかがわれるし,同じ時期に原告と妻との間でやりとりされたメール(甲10)中に,原告から荷物の引取りや離婚のことなどが切り出されていることからすると,決着を付けるという趣旨は,離婚するという文脈で理解するのが自然であり,暴力をふるうことの予告と理解することはできない。他に,被告は,原告には近隣との間で騒音に関するトラブルがあったり,威圧的な態度を示したりしたとも主張するが,トラブルについては民事訴訟による解決が図られており,かかる法的解決以外の暴力的解決に頼ろうとしたような状況は見受けられないし,威迫というのも,常にポケットに手を突っ込んで接してくるので,近隣の者は原告が威圧的との印象を持ったという程度のものであって(証人A),脅迫をするとか暴力をふるうといった事情があったとは認められない。 以上のとおりであるから,自傷他害のおそれの存在についての被告の主張はにわかに採用できないものというべきである。したがって,当該主張は,重要事項該当性についての上記判断を左右するものではない。 ウイで述べたところによれば,本件において銃刀法5条1項柱書記載の不許可事由に該当する事実は存在しないこととなるが,付言すると,本件更新許可申請当時,原告と妻は別居して1年半ほど経っていたものの,妻は原告からの離婚協議に応じておらず(甲10),別居後も原告は毎月妻に生活費を手渡ししており,子が原告の経営する会社で働き始めるなどの動きもあったものであり,原告と妻はかつて一時離婚していたが,その後復縁したという経緯もあったところである。このように原告と妻との夫婦としての関係が途切れていたとまではいい切れないことに加えて,妻と原告との住民登録上の住所が本件更新申請時においても同一であったことや,同居といえるかどうかの判断は一 る。このように原告と妻との夫婦としての関係が途切れていたとまではいい切れないことに加えて,妻と原告との住民登録上の住所が本件更新申請時においても同一であったことや,同居といえるかどうかの判断は一定程度評価的な側面もあることを考慮すると,同居親族書における同居に係る記載の仕方についての明確な基準の有無や当該基準の周知の有無が証拠上明らかでないといった事情の下では,原告が,本件同居親族書の記載を,当該書面記載のルール上許されない虚偽のものであると認識しつつ記載したといえるかについては,疑問を呈する余地があることを否定できないものというべきである。 (3) 以上のとおりであるから,本件において銃刀法5条1項柱書所定の不許可事由に該当する事情があると認めるに足りないというべきであり,当該事情の存在を理由としてされた本件更新不許可処分は違法というべきである。 第4 結論よって,本件各訴えのうち本件仮領置処分1の取消しを求める訴えは不適法であるから却下し,原告のその余の訴えに係る請求は理由があるからこれを認容することとして,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第51部 裁判長裁判官小林宏司 裁判官桃崎剛 裁判官武見敬太郎
▼ クリックして全文を表示