平成15(行ヒ)16 労働委員会救済命令取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成15年12月22日 最高裁判所第一小法廷 判決 棄却 東京高等裁判所 平成12(行コ)161
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判決文本文12,698 文字)

主文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理由 上告代理人諏訪康雄,同熊谷正博,同瀬野康夫,同菊池理恵子の上告受理申立て理由及び上告補助参加代理人竹澤哲夫,同大森鋼三郎,同廣谷睦男,同佐藤太勝,同佐藤哲之,同内田信也,同菊池紘,同岡村親宜,同加藤健次,同松島暁,同松本篤周,同東垣内清,同村松昭夫の上告受理申立て理由について 1 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。 (1) 日本国有鉄道改革法(以下「改革法」という。)は,日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)による鉄道事業その他の事業の経営が破たんし,公共企業体による全国一元的経営体制の下においてはその事業の適切かつ健全な運営を確保することが困難となっている事態に対処して,これらの事業に関し,輸送需要の動向に的確に対応し得る新たな経営体制を実現し,その下において我が国の基幹的輸送機関として果たすべき機能を効率的に発揮させることが,国民生活及び国民経済の安定及び向上を図る上で緊要な課題であることにかんがみ,これに即応した効率的な経営体制を確立するための国鉄の経営形態の抜本的な改革に関する基本的な事項を定めるものである(1条)。改革法の骨子は,① 国鉄の旅客鉄道事業を分割して被上告人B1鉄道株式会社(以下「B1」という。)外5社を設立してこれらに引き継がせる(6条),② 国鉄の貨物鉄道事業を旅客鉄道事業から分離し,被上告人B2鉄道株式会社(以下「B2」という。)を設立してこれに引き継がせる(8条),③ 運輸大臣は,国鉄の事業等の引継ぎ並びに権利及び義務の承継等に関する基本計画を定め,国鉄は,基本計画に従って承継法人ごとにその事業等の引継ぎ並びに権利及び義務の承継に関する実施計画を作成し 条),③ 運輸大臣は,国鉄の事業等の引継ぎ並びに権利及び義務の承継等に関する基本計画を定め,国鉄は,基本計画に従って承継法人ごとにその事業等の引継ぎ並びに権利及び義務の承継に関する実施計画を作成し,運輸大臣の認可を受ける(- 1 -19条),④ 認可を受けた実施計画の定めに従い,承継法人の成立の時において,承継法人に事業等が引き継がれ,権利及び義務が承継される(21条,22条),⑤ 国は,国鉄が承継法人に事業等を引き継いだときは,国鉄をF事業団(以下「事業団」という。)に移行させ,承継法人に承継されない資産,債務等を処理するための業務等を事業団に行わせるほか,臨時に,その職員の再就職の促進を図るための業務を行わせる(15条),というものである。 (3) 被上告人ら承継法人の職員の採用手続について,改革法23条は,① 承継法人の設立委員は,国鉄を通じ,その職員に対し,それぞれの承継法人の職員の労働条件及び採用の基準を提示して,職員の募集を行う(1項),② 国鉄は,①によりその職員に対し労働条件及び採用の基準が提示されたときは,承継法人の職員となることに関する国鉄の職員の意思を確認し,承継法人別に,その職員となる意思を表示した者の中から当該承継法人に係る①の採用の基準に従い,その職員となるべき者を選定し,その名簿(以下「採用候補者名簿」という。)を作成して設立委員に提出する(2項),③ 採用候補者名簿に記載された国鉄の職員のうち,設立委員から採用する旨の通知を受けた者であって,昭和62年4月1日に国鉄の職員であるものは,承継法人の成立の時(同日)において,当該承継法人の職員として採用される(3項),④ 承継法人の職員の採用について,当該承継法人の設立委員がした行為及び当該承継法人の設立委員に対してなされた行為は,それぞれ,当該承継法人が において,当該承継法人の職員として採用される(3項),④ 承継法人の職員の採用について,当該承継法人の設立委員がした行為及び当該承継法人の設立委員に対してなされた行為は,それぞれ,当該承継法人がした行為及び当該承継法人に対してなされた行為とする(5項),⑤ ③により国鉄の職員が承継法人の職員となる場合には,その者に対しては,国家公務員等退職手当法に基づく退職手当は支給せず(6項),承継法人は,その者の退職に際し,退職手当を支給しようとするときは,その者の国鉄の職員としての引き続いた在職期間を当該承継法人の職員としての在職期間とみなして取り扱う(7項)旨を定める。 - 2 -(3) G鉄道株式会社及びB2鉄道株式会社に関する法律附則2条は,運輸大臣は,G鉄道株式会社6社及び被上告人B2(以下,この7社を「H各社」という。)ごとに設立委員を命じ,当該会社の設立に関して発起人の職務を行わせる旨を(1項),設立委員は,同項及び改革法23条に定めるもののほか,当該会社がその成立の時において事業を円滑に開始するために必要な業務を行うことができる旨を(2項),それぞれ規定する。そして,運輸大臣は,昭和61年12月4日,H各社の共通設立委員16人及び会社ごとに設立委員2ないし5人を任命した。 (4) 昭和61年12月11日,H各社合同の第1回設立委員会が開催され,各社共通の採用の基準として,国鉄在職中の勤務の状況からみて,当該会社の業務にふさわしい者であること(なお,勤務の状況については,職務に対する知識技能及び適性,日常の勤務に関する実績等を,国鉄における既存の資料に基づき,総合的かつ公正に判断すること)等が定められ,その後,労働条件と共に採用の基準が国鉄に提示された。 (5) 運輸大臣は,昭和61年12月16日,改革法19条1項に基づき,閣議決 既存の資料に基づき,総合的かつ公正に判断すること)等が定められ,その後,労働条件と共に採用の基準が国鉄に提示された。 (5) 運輸大臣は,昭和61年12月16日,改革法19条1項に基づき,閣議決定を経て基本計画を定め,国鉄職員のうち承継法人の職員となる者の総数を21万5000人,うち被上告人B1の職員数を1万3000人,同B2の職員数を1万2500人と決定した。 (6) 国鉄は,昭和61年12月24日,採用の基準に該当しないことが明白な者を除く職員約23万0400人に対し,承継法人の労働条件及び採用の基準を記載した書面並びに承継法人の職員となる意思を表明する意思確認書の用紙を配布したところ,昭和62年1月7日までに,国鉄職員22万7600人が意思確認書を提出し,そのうち承継法人への採用希望者は21万9340人であった。 (7) 国鉄は,承継法人ごとに採用候補者を選定して採用候補者名簿を作成し,昭和62年2月7日,これを設立委員に提出した。採用候補者名簿の記載者数は,- 3 -被上告人B1については1万3000人であり,同B2については1万2289人であったが,上告補助参加人らに所属する原判決別表第1記載の者(以下「第1の組合員」という。)及び原判決別表第2記載の者(以下,第1の組合員と併せて「本件組合員」という。)は,採用候補者名簿に記載されなかった。 (8) 昭和62年2月12日,H各社合同の第3回設立委員会において,採用候補者名簿に記載された者全員を当該承継法人の職員に採用することが決定されたが,本件組合員は,全員不採用となった。H各社の採用予定者は,同年4月1日,H各社の発足と同時に当該会社の職員となった(以下,この被上告人らの職員の採用を「4月採用」という。)。他方,承継法人に採用されなかった国鉄職員は,同日以降,事業団の職員 用予定者は,同年4月1日,H各社の発足と同時に当該会社の職員となった(以下,この被上告人らの職員の採用を「4月採用」という。)。他方,承継法人に採用されなかった国鉄職員は,同日以降,事業団の職員となり,日本国有鉄道退職希望職員及びF事業団職員の再就職の促進に関する特別措置法(以下「特措法」という。)に基づき,再就職が図られることとされたが,特措法が平成2年4月1日限りで失効することから,3年以内に再就職するものとされていた。 (9)被上告人B1は,昭和62年4月,募集対象者を北海道地区に勤務する事業団の職員,採用予定人員を約280人,採用予定日を同年6月1日,採用の基準を国鉄及び事業団在職中の勤務状況からみて同被上告人の業務にふさわしい者であることとする職員の追加採用(以下「6月採用」という。)を行った。応募者2947人中281人が採用されたが,上告補助参加人らに所属する組合員は応募者544人中6人の採用にとどまり,第1の組合員で採用されたものはなかった。 (10) 上告補助参加人らは,4月採用及び6月採用に際し所属組合員が採用されなかったのは不当労働行為に当たると主張して,北海道地方労働委員会に対し,救済を申し立てたところ,同委員会は,平成元年3月20日,本件組合員につき,被上告人ら設立時(昭和62年4月1日)からの採用取扱い,被上告人らに採用さ- 4 -れていたならば得たであろう賃金相当額(以下「賃金相当額」という。)と事業団から実際に支払われた賃金額との差額の支払等を命じる救済命令を発した。 被上告人らは,上告人に対し,上記初審命令を不服として再審査を申し立てたが,上告人は,平成6年1月19日,不利益取扱いを受けた組合員の具体的な特定はできないが,4月採用に関して本件組合員の少なくとも一部の者について,6月採用に関して第1の 不服として再審査を申し立てたが,上告人は,平成6年1月19日,不利益取扱いを受けた組合員の具体的な特定はできないが,4月採用に関して本件組合員の少なくとも一部の者について,6月採用に関して第1の組合員の少なくとも一部の者について,それぞれ不当労働行為の成立が認められると判断した上で,上記初審命令を変更して,本件組合員のうち同2年4月2日に事業団からの離職を余儀なくされた者であって被上告人らに採用を申し出たものについての職員採用に関する選考やり直し,選考やり直しの結果採用すべきものと判定した者についての採用取扱い及び同日以降の賃金相当額の60%相当額の支払等を命じ,その余の救済申立てを棄却する旨の命令を発した。 2 本件は,被上告人らが上記命令のうち再審査申立てを棄却して救済を命じた部分の取消しを求めた事案である。 3 原審は,① 4月採用について,採用手続の過程において不当労働行為があったときは,設立委員が当該不当労働行為に具体的に関与したか否かにかかわらず,被上告人らは不当労働行為責任を免れない,② 4月採用及び6月採用について,本件組合員が採用されなかった経緯等の具体的な事情にかかわらず,新規採用であることのみを根拠として,本件組合員の不採用がおよそ労働組合法7条1号本文の不利益な取扱いに当たらず,同条3号の支配介入にも当たらないと解することはできない,③ しかし,4月採用につき本件組合員を採用候補者に選別しなかった国鉄に,6月採用につき第1の組合員を採用しなかった被上告人B1に,不当労働行為意思があったとは認められないから,上記不採用は労働組合法7条1号本文の不利益な取扱い及び同条3号の支配介入に当たらないと判断した。論旨は,原審のこの判断には法令の解釈適用の誤りがある旨をいう。 - 5 - 4 改革法23条は,承継法人の職員の採 働組合法7条1号本文の不利益な取扱い及び同条3号の支配介入に当たらないと判断した。論旨は,原審のこの判断には法令の解釈適用の誤りがある旨をいう。 - 5 - 4 改革法23条は,承継法人の職員の採用手続において,設立委員が,国鉄を通じ,労働条件及び採用の基準を提示して職員の募集を行い(1項),これを受けて,国鉄が,職員の意思を確認し,採用の基準に従い採用候補者の選定及び採用候補者名簿の作成を行い(2項),設立委員が,採用候補者名簿に記載された者の中から職員として採用すべき者を決定し,採用する旨を通知する(3項)とし,採用手続に段階を設け,各段階ごとに行う事務手続の内容,主体及び権限を規定する。 改革法は,前記のとおり,承継法人を設立して国鉄の事業等を引き継がせ,国鉄が承継法人に事業等を引き継いだときは,国鉄を事業団に移行させて,承継法人に承継されない資産,債務等を処理するための業務等を行わせるほか,その職員の再就職の促進を図るための業務を行わせることとしたのであり,これを受けて,国鉄の職員について,承継法人の職員に採用されるべき者と国鉄の職員のまま残留させる者とに振り分けることとし,国鉄にその振り分けを行わせることとしたのである。 そして,改革法は,23条において,上記のとおり,承継法人設立時にその職員として採用する者を決定する手続を特に定めたのであるから,国鉄の職員であっても,同条所定の手続によらない限り,承継法人設立時にその職員として採用される余地はなかったものというべきである。国鉄によって承継法人の採用候補者に選定されず採用候補者名簿に記載されなかった者は,国鉄の職員の地位にとどまり,国鉄が事業団に移行するのに伴ってその職員となり,国鉄との従前の雇用契約関係が形を変えて存続することとなったのであるから,上記職員の雇用主は,国鉄,次い されなかった者は,国鉄の職員の地位にとどまり,国鉄が事業団に移行するのに伴ってその職員となり,国鉄との従前の雇用契約関係が形を変えて存続することとなったのであるから,上記職員の雇用主は,国鉄,次いで事業団であることが明らかである。このように,改革法は,国鉄が上記振り分けに当たって採用候補者として選定せず採用候補者名簿に記載しなかったため承継法人の職員として採用されなかった国鉄の職員については,国鉄との間で雇用契約関係を存続させ,国鉄が事業団に移行するのに伴い事業団の職員とし,事業団との間に雇用契約関係を存続させることとしたが,この措置は,事業団の職員となった者に- 6 -ついて特措法により移行日から3年内に再就職を図るものとしてその間に再就職の準備をさせることとしたものであり,雇用契約関係終了に向けての準備期間を置くことを目的としたものである。承継法人の職員に採用されず国鉄の職員から事業団の職員の地位に移行した者は,承継法人の職員に採用された者と比較して不利益な立場に置かれることは明らかである。そうすると,仮に国鉄が採用候補者の選定及び採用候補者名簿の作成に当たり組合差別をした場合には,国鉄は,その職員に対し,労働組合法7条1号が禁止する労働組合の組合員であることのゆえをもって不利益な取扱いをしたことになるというべきであり,国鉄,次いで事業団は,その雇用主として同条にいう「使用者」としての責任を免れないものというべきである。 他方,改革法は,前記のとおり,所定の採用手続によらない限り承継法人設立時にその職員として採用される余地はないこととし,その採用手続の各段階における国鉄と設立委員の権限については,これを明確に分離して規定しており,このことに改革法及び関係法令の規定内容を併せて考えれば,改革法は,設立委員自身が不当労働行為を行った その採用手続の各段階における国鉄と設立委員の権限については,これを明確に分離して規定しており,このことに改革法及び関係法令の規定内容を併せて考えれば,改革法は,設立委員自身が不当労働行為を行った場合は別として,専ら国鉄が採用候補者の選定及び採用候補者名簿の作成に当たり組合差別をしたという場合には,労働組合法7条の適用上,専ら国鉄,次いで事業団にその責任を負わせることとしたものと解さざるを得ず,このような改革法の規定する法律関係の下においては,設立委員ひいては承継法人が同条にいう「使用者」として不当労働行為の責任を負うものではないと解するのが相当である。 前記事実関係によれば,4月採用については,設立委員自身が不当労働行為を行ったとはいい難く,設立委員ひいては被上告人らが同条にいう「使用者」として不当労働行為の責任を負うものではないというべきである。 5 また,企業者は,経済活動の一環としてする契約締結の自由を有し,自己の営業のために労働者を雇用するに当たり,いかなる者を雇い入れるか,いかなる条件- 7 -でこれを雇うかについて,法律その他による特別の制限がない限り,原則として自由にこれを決定することができるものであり,他方,企業者は,いったん労働者を雇い入れ,その者に雇用関係上の一定の地位を与えた後においては,その地位を一方的に奪うことにつき,雇入れの場合のような広い範囲の自由を有するものではない(最高裁昭和43年(オ)第932号同48年12月12日大法廷判決・民集27巻11号1536頁参照)。そして,労働組合法7条1号本文は,「労働者が労働組合の組合員であること,労働組合に加入し,若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもって,その労働者を解雇し,その他これに対して不利益な取扱をすること」又は 働組合の組合員であること,労働組合に加入し,若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもって,その労働者を解雇し,その他これに対して不利益な取扱をすること」又は「労働者が労働組合に加入せず,若しくは労働組合から脱退することを雇用条件とすること」を不当労働行為として禁止するが,雇入れにおける差別的取扱いが前者の類型に含まれる旨を明示的に規定しておらず,同号及び同条3号は雇入れの段階と雇入れ後の段階とに区別を設けたものと解される。そうすると,【要旨】雇入れの拒否は,それが従前の雇用契約関係における不利益な取扱いにほかならないとして不当労働行為の成立を肯定することができる場合に当たるなどの特段の事情がない限り,労働組合法7条1号本文にいう不利益な取扱いにも,同条3号の支配介入にも当たらないと解するのが相当である。 前記事実関係によれば,6月採用は,既に被上告人B1が設立された後において,同被上告人が採用の条件,人員等を決定して行ったものであり,同被上告人が雇入れについて有する広い範囲の自由に基づいてした新規の採用というべきであって,6月採用における採用の拒否について上記特段の事情があるということはできない。 したがって,6月採用における採用の拒否は,労働組合法7条1号本文にいう不利益な取扱いにも,同条3号の支配介入にも当たらないというべきである。 6 以上によれば,4月採用及び6月採用につき被上告人らの不当労働行為の責任- 8 -を否定した原審の判断は,結論において是認することができる。論旨は採用することができない。 よって,裁判官深澤武久,同島田仁郎の反対意見があるほか,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 裁判官深澤武久,同島田仁郎の反対意見は,次のとおりである。 1 私たちは,① 承継法人の4 。 よって,裁判官深澤武久,同島田仁郎の反対意見があるほか,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。 裁判官深澤武久,同島田仁郎の反対意見は,次のとおりである。 1 私たちは,① 承継法人の4月採用について,設立委員自身が不当労働行為を行ったとはいい難く,設立委員ひいては被上告人らが労働組合法7条にいう「使用者」として不当労働行為の責任を負うものではない,② 6月採用は,被上告人B1が設立された後に雇入れについて有する広い範囲の自由に基づいてした新規の採用であって,6月採用における採用拒否は同条1号本文にいう不利益な取扱いにも同条3号の支配介入にも当たらない,とする多数意見に賛同することはできない。 また,4月採用につき本件組合員を採用候補者に選別しなかった国鉄に,6月採用につき第1の組合員を採用しなかった被上告人B1に,不当労働行為意思があったとは認められないとする原審の判断を是認することはできない。その理由は次のとおりである。 2(1)) 改革法23条は,承継法人の職員採用手続を定めており,その内容は,原審の適法に確定した事実関係等の概要(2)のとおりであるが,これは承継法人の設立に際して27万人を超える国鉄職員の中から改革法成立後約4か月間に21万5000人という多数の職員を採用しなければならないため,職員についての資料を有し,その事情を把握している国鉄が採用候補者名簿の作成等を行うのが適切であるとされたからにすぎない。そのために,国鉄は,承継法人の職員の採用のために設立委員の提示した採用の基準に従って採用候補者名簿の作成等の作業をすることとされ,国鉄総裁が設立委員に加わり,設立委員会における実際の作業も国鉄職員によって構成された設立委員会事務局によって行われたものと考えられる。 - 9 -このような採用手続の各段階における作 ることとされ,国鉄総裁が設立委員に加わり,設立委員会における実際の作業も国鉄職員によって構成された設立委員会事務局によって行われたものと考えられる。 - 9 -このような採用手続の各段階における作業は,各々独立の意味を持つものではなく,すべて設立委員の提示する採用の基準に従った承継法人の職員採用に向けられた一連の一体的なものであって,同条において国鉄と設立委員の権限が定められていることを理由に,その効果も分断されたものと解するのは,あまりにも形式論にすぎるものといわざるを得ない。 (2) 改革法の国会審議において,法案を所管する運輸大臣は,国鉄と設立委員の関係について,国鉄は設立委員の採用事務を補助する者で,民法上の準委任に近いものである旨を繰り返し答弁し,さらに,国鉄は設立委員の補助者であるから,国鉄の組合と団体交渉をする立場にはないと説明しているのである。国会の法案審議における大臣の答弁は,立法者意思として法解釈に際して重く評価しなければならない。特に,改革法は,国鉄の抜本的改革を目的として,昭和61年11月28日に成立し,同年12月4日に公布,施行されたものであるところ,同62年4月1日に国鉄改革を実施することとされ(同法5条),極めて短期間のうちにその内容を実現して,役割を果たしたのであって,この経緯を考慮すれば,合理的な理由もなく立法者意思に反した法解釈をするのは避けるべきである。これら大臣の答弁は法案説明のために便宜的に用いられたものにすぎないというような見解は,国会の審議を軽視し,国民の国会審議に対する信頼を損なうもので,到底容認できない。 また,大臣の上記発言を受けて,当時,国鉄が承継法人の職員採用に関しての団体交渉に応じなかった経緯も考慮すべきである。 (3) 上記のとおり,改革法は,承継法人の職員採用について国鉄に設立 できない。 また,大臣の上記発言を受けて,当時,国鉄が承継法人の職員採用に関しての団体交渉に応じなかった経緯も考慮すべきである。 (3) 上記のとおり,改革法は,承継法人の職員採用について国鉄に設立委員の補助的なものとして権限を付与したものと解すべきであるから,原審が正当に判断したように,採用手続過程において国鉄に不当労働行為があったときは,設立委員ひいては承継法人が労働組合法7条の「使用者」として不当労働行為責任を負うことは免れないのである。 - 10 - 3 雇主は,労働者を採用するに当たり,どのような者を採用するか,いかなる条件で採用するか,について採用の自由を有するのである。しかし,営業譲渡とか新会社を設立して旧会社の主たる資産を譲り受け,労働者を承継するといったような,雇主が労働者の従前の雇用関係と密接な関係があると認められるような事情がある場合には,採用の自由が制限されることもある。改革法は,国鉄と承継法人との関係について原審の適法に確定した事実関係等の概要(1)のとおり,また,国鉄の職員が承継法人の職員となる場合の関係について同(2)⑤のとおり,それぞれ定めており,承継法人は,国鉄の事業を引き継ぎ,運輸大臣の認可を受けた実施計画の定めに従って権利及び義務を承継し,職員は国鉄職員のうちからのみ採用することとして,国鉄職員の約80%の職員を採用し,退職手当の支給について国鉄職員の在職期間を通算することとして雇用契約の一部を承継するなどしたのである。 そして,6月採用は,被上告人B1が,設立直後に追加採用として,募集対象者を北海道地区に勤務する事業団の職員に限定して行ったものである。同被上告人は,事業団移行前の上記職員と国鉄との雇用関係とこのような密接な関係を有していた以上,6月採用において労働者採用の自由について制限を受けるもの 務する事業団の職員に限定して行ったものである。同被上告人は,事業団移行前の上記職員と国鉄との雇用関係とこのような密接な関係を有していた以上,6月採用において労働者採用の自由について制限を受けるものというべきである。したがって,6月採用が新規の採用であることを理由として,その採用の拒否が労働組合法7条1号本文にいう不利益な取扱い及び同条3号の支配介入に当たらないと断ずることはできない。この点に関する原審の判断も是認することができる。 4 以上の点に関して,原審は私たちと同様の判断をした上,結論として国鉄及び被上告人B1には不当労働行為意思があったとは認められないとした。 しかしながら,原審の確定するところによれば,① 承継法人等(事業団本務を含む。)の北海道における4月採用についての所属組合別の職員の採用率は,I労働組合(以下「I」という。),J労働組合(以下「J」という。)等によって結成- 11 -されたK労働組合総連合会(以下「K」という。)が99.4%,L労働組合(以下「L」という。)が79.1%であったのに対し,M労働組合(以下「M」という。)は28.1%であった,② 被上告人B1の6月採用についての所属組合別の職員の採用率は,K等が38.3%,Lが38.5%であったのに対し,Mは1.1%であった,③ 甲機関区の検修助役は,昭和61年9月,検修係で勤務するM組合員に対し,「Mにいては採用が危ない。」と発言した,④ 乙機関区長は,同年12月2日,M組合員であった者を機関区長室に呼び,Mを脱退しなければ新会社に残れない旨を発言し,同月8日,M組合員であった者を機関区長室に呼び出して説得し,Mを脱退させ,Iに加入する手続をさせた,⑤ Mは,国鉄から提案された労使共同宣言の締結を拒否したところ,国鉄総裁は,同年10月21日の衆議院特別 M組合員であった者を機関区長室に呼び出して説得し,Mを脱退させ,Iに加入する手続をさせた,⑤ Mは,国鉄から提案された労使共同宣言の締結を拒否したところ,国鉄総裁は,同年10月21日の衆議院特別委員会において,労使共同宣言を交わすことに反対の労働組合に対する信頼を持つことができず,雇用の安定等に関する協約を締結することもできない旨を述べた,⑥ 国鉄職員局次長は,同年11月30日付けの「公企労レポート」に,国鉄改革に協力してきた労働組合の組合員は,出向,広域異動,教育等の改革のための諸施策に協力し,努力と犠牲を払っており,このことは個人個人の成績として蓄積されているため,承継法人に移る人は,そういう人の中から多く生まれる可能性があり,かなり得をしたといえるが,国鉄の再建の妨害をした労働組合に所属している者は,1日も早く自らの意識改革を行い,先に行っている人に追いついてほしい旨を発言したインタビュー記事を寄稿した,というのである。 そして,上告人は,原審において,① 甲機関区では,J及びIの組合員の採用率が100%であったのに対し,M組合員の採用率は25%であった,② 同機関区に所属するM組合員数は,昭和61年4月1日時点で268人であったところ,同62年2月までにそのうち56人がMを脱退してJ又はIに加入し,その全員が承継法人等に採用された,③ 同様の傾向は,丙,乙,D及びEの各機関区でもみら- 12 -れ,E機関区では,承継法人等に採用されたJ組合員の中には刑事事件で逮捕された者や飲酒運転で交通事故を起こした者も含まれていたが,M組合員では,無事故や増収活動で表彰された者でも採用されなかった,と主張しているが,原審は,この事実の有無を確定していない。 仮に上記主張に係る事実が認められるとすれば,M組合員とJ及びIの組合員とは,その採 無事故や増収活動で表彰された者でも採用されなかった,と主張しているが,原審は,この事実の有無を確定していない。 仮に上記主張に係る事実が認められるとすれば,M組合員とJ及びIの組合員とは,その採用において明らかに区別されたのみならず,M組合員として同じように国鉄の分割民営化に強硬に反対する立場から一連の行動をしていた者であっても,Mを脱退した者は,採用候補者名簿に記載されたこととなる。そして,上記の国鉄の当局者や北海道の機関区の管理者の言動をも考慮すると,M組合員とJ及びIの組合員並びにM脱退者との間に採用候補者名簿の記載に顕著な差があるとすれば,M組合員の不採用者について,採用者との比較において劣位に評価されてもやむを得ない事由がない限り,Mに所属することのみを理由として,上記記載について差別的な取扱いがされたことが一応推認されるところである。確かに,原審が判示するように採用希望者全員が被上告人らの職員として採用される状況にはなかったのであり,また,正当な組合活動を逸脱する行為をした者が評定上不利益を受けることもやむを得ないところである。しかしながら,原判示の事情から直ちにMを脱退しなかった本件組合員全員について上記事由があると判断することはいささか早計であるといわざるを得ず,更に審理を尽くさなければ,本件組合員について,原審が判断するように,承継法人の職員としてふさわしい者か否かという観点から劣位に評価されたとしてもやむを得ないと断ずることはできない。以上は,被上告人B1の設立直後にされた補充採用である6月採用における採用拒否についても,同様である。 そうすると,これらの点について審理を尽くすことなく不当労働行為意思があったとは認められないとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令- 13 -の違反がある。論旨 同様である。 そうすると,これらの点について審理を尽くすことなく不当労働行為意思があったとは認められないとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令- 13 -の違反がある。論旨はこの趣旨をいうものとして理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,不当労働行為の点について更に審理させるため,本件を原審に差し戻すべきである。 (裁判長裁判官深澤武久裁判官横尾和子裁判官甲斐中辰夫裁判官泉徳治裁判官島田仁郎)- 14 -

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