主文 原判決を破棄する。 本件を東京高等裁判所に差し戻す。 理由 上告代理人後藤徳司、同日浅伸廣の上告理由第四点について被上告人の本件訴えについて確認の利益を認めた原審の判断は、正当として是認することができる。論旨は採用することができない。 同第九点について一原審の確定したところによれば、被上告人は、昭和三七年一一月一五日、上告会社との間で、三〇万円の入会金を預託して、上告会社の経営するゴルフクラブであるAカントリークラブの個人正会員となる入会契約を締結したものである。本件訴訟は、被上告人が上告会社に対し、本件ゴルフクラブの個人正会員の地位を有することの確認を求めるものであるところ、上告会社は、抗弁として、被上告人は昭和四四年一月一日以降本件ゴルフクラブのゴルフ場施設を利用していないから、被上告人のゴルフ会員権は時効により消滅した旨を主張している。 二原審は、被上告人の有する本件ゴルフクラブの個人正会員としての地位は、いわゆる預託金会員組織のゴルフ会員権に該当し、ゴルフ場施設の優先的利用権、年会費納入等の義務、据置期間経過後に退会に伴って行使し得る預託金返還請求権などの債権債務関係を内容とする契約上の地位であるから、被上告人が長期間会員としての権利を行使せず、あるいは上告会社が被上告人を長期間会員として認めていなかったとしても、被上告人の個人正会員の地位それ自体が消滅時効にかかることはあり得ないとして、上告会社の消滅時効の抗弁を排斥し、被上告人の請求を認容すべきものと判断した。 三しかし、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次のとおり- 1 -である。 原審の確定した事実関係によれば、被上告人の有する本件ゴルフクラブの個人正会員としての地位は、いわ 三しかし、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次のとおり- 1 -である。 原審の確定した事実関係によれば、被上告人の有する本件ゴルフクラブの個人正会員としての地位は、いわゆる預託金会員組織のゴルフ会員権に該当する債権的契約関係であり、その内容として、会員は、ゴルフクラブ会則に従ってゴルフ場施設を利用し得る権利を有するとともに年会費納入等の義務を負担し、また、入会の際に預託した預託金を会則に定める据置期間の経過後に退会に伴って返還請求することができるというのである。これによれば、右契約関係においては、会員のゴルフ場施設利用権がその基本的な部分を構成するものであるところ、会員は、ゴルフクラブの会員としての資格を有している限り、会則に従ってゴルフ場施設を利用することができ、上告会社は、会員に対してゴルフ場施設を利用可能な状態に保持し、会則に従ってこれを利用させる義務を負うものというべきである。 そうだとすれば、会員がゴルフ場施設の利用をしない状態が継続したとしても、そのことのみによっては会員のゴルフ場施設利用権について消滅時効は進行せず、契約関係に基づく包括的権利としてのゴルフ会員権が消滅することはないが、上告会社が会員に対して除名等を理由にその資格を否定してゴルフ場施設の利用を拒絶し、あるいはゴルフ場施設を閉鎖して会員による利用を不可能な状態としたようなときは、その時点から会員のゴルフ場施設利用権について消滅時効が進行し、右権利が時効により消滅すると、ゴルフ会員権は、その基本的な部分を構成する権利が失われることにより、もはや包括的権利としては存続し得ないものと解するのが相当である。けだし、上告会社において会員の資格を否定することなく、ゴルフ場施設を会員による利用が可能な状態に保持している場合には、上告会社は会員 もはや包括的権利としては存続し得ないものと解するのが相当である。けだし、上告会社において会員の資格を否定することなく、ゴルフ場施設を会員による利用が可能な状態に保持している場合には、上告会社は会員に対し契約に基づく債務の履行をし、会員は右債務の履行を受けているものというべきであるから、そのような状態の下においては、会員のゴルフ場施設利用権について消滅時効が進行する余地はないが、上告会社が会員の資格を否定してゴルフ場施設の- 2 -利用を拒絶し、あるいは会員によるゴルフ場施設の利用を不可能な状態としたようなときは、上告会社による前記債務の履行状態が消滅し、会員の上告会社に対する権利の行使を妨げるべき事実が生じたものということができ、その時点から消滅時効が進行するもの(民法二九一条参照)と解すべきだからである。 したがって、右に判示したような点について検討することなく、被上告人の個人正会員の地位それ自体が消滅時効にかかることはあり得ないとして上告会社の消滅時効の抗弁を排斥した原審の判断には、法令の解釈適用の誤り、ひいては審理不尽、理由不備の違法があり、その違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は右の趣旨をいうものとして理由があり、その余の論旨について判断するまでもなく、原判決は破棄を免れない。そして、本件については、右の点につき更に審理を尽くさせる必要があるから、これを原審に差し戻すのが相当である。 よって、民訴法四〇七条一項に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 最高裁判所第三小法廷裁判長裁判官大野正男裁判官園部逸夫裁判官可部恒雄 裁判長裁判官大野正男裁判官園部逸夫裁判官可部恒雄裁判官千種秀夫裁判官尾崎行信- 3 -
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