- 1 -主文 被告が原告に対して平成12年3月6日付けでした労働者災害補償保険法による遺族補償給付及び葬祭料を支給しない旨の処分を取り消す。 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由第1請求主文同旨第2事案の概要本件は,有限会社日昇舗装興業(以下「日昇興業」という)に雇用されていたP。 1が,道路舗装工事業務に従事中に心肺停止状態となり死亡したのは,業務に起因するものであるとしてP1の妻である原告が被告に対し労働者災害補償保険法以,,,(下「労災保険法」という)による遺族補償年金,同年金前払一時金及び葬祭料の各。 支給を請求したところ,平成12年3月6日付けでいずれも支給しない旨の処分を受けたことから,その取消しを求めた事案である。 争いのない事実等(証拠により認定した事実は,当該証拠を文末の括弧内に記載した)。 ()(),,, P1昭和○年○月○日生まれは平成6年12月1日日昇興業に入社し一般作業員として道路舗装工事に従事していた。 (2)P1は,平成7年7月21日午前9時ころから,東京都足立区<以下略>付近(以下「本件現場」という)において,アスファルトをスコップで均す作業に従。 事していたところ,同日午後4時すぎころ,体調不良を訴えた後横転し,心肺停止状態となった(以下「本件疾病発症」又は「本件事故」という。その後,P1。),(「」。)は本件現場から救急車で帝京大学医学部附属病院以下帝京大学病院というに搬送されたが,平成7年7月21日午後6時51分,死亡した。 (3)原告は,平成9年6月2日,被告に対し,P1の死亡は業務に起因するものであるとして,労災保険法による遺族補償年金,同年金前払一時金及び葬祭料の各支給を請求した。これに対し,被告は, 亡した。 (3)原告は,平成9年6月2日,被告に対し,P1の死亡は業務に起因するものであるとして,労災保険法による遺族補償年金,同年金前払一時金及び葬祭料の各支給を請求した。これに対し,被告は,平成12年3月6日付けで,原告に対し,本件疾病は労働基準法施行規則(以下「労基法施行規則」という)35条,別表第。 1の2第9号所定の「その他業務に起因することの明らかな疾病」とは認められないとして,前記各請求について支給しない旨の処分をした(以下「本件処分」という。 。)(4)原告は,平成12年3月31日,東京労働者災害補償保険審査官に対し,本件処分について審査請求をしたところ,審査官は,同12年7月17日付けで同審査請求を棄却する旨の決定をし翌18日原告に対し決定書謄本が送達された乙,,,(6,7の1。 )(5)原告は,平成12年8月2日,労働保険審査会に対し,本件処分について再審査請求をしたところ,労働保険審査会は,同15年10月23日付けで同再審査請求を棄却する旨の裁決をし同月28日原告に対し裁決書謄本が送達された乙,,,(8,9。 )(6)原告は,平成16年1月26日,本件処分の取消しを求めて本訴を提起した。 - 2 - 争点及び当事者の主張P1の業務と本件疾病発症との間の相当因果関係の存否【原告】(1)労働基準法施行規則35条,別表第1の2第2号8は「暑熱な場所における業務による熱中症」を業務上の疾病としているところ,P1は,本件事故発生日である平成7年7月21日,高温多湿の天候の下,対流や発汗による蒸発を阻害し,熱発散を低下させる服装で,高温の輻射熱に暴露されるアスファルト工事に従事し,熱中症を発症した。そして,P1は,熱中症に伴う凝固障害,多臓器不全の一環として心筋虚血が生じ,その合併 る蒸発を阻害し,熱発散を低下させる服装で,高温の輻射熱に暴露されるアスファルト工事に従事し,熱中症を発症した。そして,P1は,熱中症に伴う凝固障害,多臓器不全の一環として心筋虚血が生じ,その合併症としての致死的不整脈により死亡した。P1は,帝京大学病院に搬入された際,体重の5%以上の脱水症状のほか,肝機能障害,腎不全,肺水腫等の多臓器不全を示唆する所見を有しており,これらの所見はP1が重症の熱中症を発症していたことを裏付けるものである。したがって,P1の業務と本件疾病発症との間には相当因果関係がある。 (2)被告の主張に対する反論ア体温について被告は,P1の帝京大学病院搬入後の体温が35.8℃であったことから,同人が熱中症を発症したとはいえない旨主張する。しかし,前記体温は腋窩温であるところ,腋窩温は直腸温に比べて低めに体温が測定される。また,P1はアスファルト工事現場で体調不良を訴えた後,熱源であるアスファルトから離れ,身体を冷やすなどしたうえ,心原性ショックにより抗ショックホルモンであるカテコールアミン等が大量に分泌されて皮膚などの末梢血流が低下し,冷汗により体表温度が下降したといえる。したがって,P1は,本件疾病発症当時,体温が約40℃であったものの,その後の状況により体温が低下したといえる。 イ皮膚湿潤について被告は,P1が帝京大学病院に搬入された時に皮膚湿潤であったことから,脱水症ないし熱中症を発症したとはいえない旨主張する。しかし,脱水症ないし熱中症を発症しても必ず皮膚が乾燥するものではなく,心肺停止ないしショック状態になると抗ショックホルモンであるカテコールアミンや副腎皮質ホルモン等が過剰分泌し,皮膚が湿潤する場合がある。したがって,P1が帝京大学病院に搬入された時に皮膚湿潤であったとしても,脱水症ないし熱中症 なると抗ショックホルモンであるカテコールアミンや副腎皮質ホルモン等が過剰分泌し,皮膚が湿潤する場合がある。したがって,P1が帝京大学病院に搬入された時に皮膚湿潤であったとしても,脱水症ないし熱中症を発症していなかったとはいえない。 ウ血液検査の結果について被告は,P1の帝京大学病院搬入後に採取された血液(以下「本件血液」という)の検査結果によれば,血清総蛋白値(Tp,ナトリウム値,尿素窒素(B。 )UN)/クレアチニン(Cr)比に異常はなく,P1が脱水症ないし熱中症を発症したとはいえない旨主張する。しかし,血清総蛋白値(Tp)は,脱水症状評価の検査値としてはヘマトクリット値(Hct)より劣るものであるうえ,平成7年5月29日実施の健康診断(以下「本件健康診断」という)時に採取され。 た血液(以下「本件健康診断時の血液」という)は静脈血,本件血液は動脈血。 であるところ,動脈血の血清総蛋白値(Tp)は静脈血の血清総蛋白値(Tp)- 3 -よりも0.5g低値となるから,これを考慮して血清総蛋白値(Tp)により脱水量を算出すると,約3.43kg,P1の体重の約4.7%の脱水があったといえる。また,脱水症状には,ナトリウムが欠乏するものとしないものがあるか,,。 らナトリウム値が正常であるからといって脱水症状がなかったとはいえない尿素窒素値(BUN,クレアチニン値(Cr)は,脱水症状以外にも,食事に)より摂取する蛋白質の量,筋活動,腎不全等の影響を受けるから,尿素窒素(BUN)/クレアチニン(Cr)比の数値が10を超えていないからといって,直ちに脱水症状を否定することはできない。 なお,被告は,本件血液が死亡時の血液に相当するから,その検査結果に基づき脱水症及び熱中症の診断をすることはできない旨主張する。しかし,P1は,帝京大学 ,直ちに脱水症状を否定することはできない。 なお,被告は,本件血液が死亡時の血液に相当するから,その検査結果に基づき脱水症及び熱中症の診断をすることはできない旨主張する。しかし,P1は,帝京大学病院に搬送中,救急隊員により心肺蘇生術が実施され,一定の効果が現れていたのであるから,本件血液が死亡時の血液に相当するということはできない。また,本件血液は,遅くともP1存命中の平成7年7月21日午後5時43分までに採血されたところ,心電図にP波,QRS群が記録されていること,動,,,脈血ガス分析によれば十分に酸素化が行われ炭酸ガスも排泄されていること血糖値がカテコールアミンの影響で急上昇していることからすれば,同時点でP1が死亡していたとはいえない。 エP1の心肺停止の原因について(ア)被告は,P1の右冠動脈には75%の狭窄があったところ,冠動脈攣縮により100%閉塞し,このため急性心筋梗塞を発症し,更に致死的不整脈を発症した旨主張する。しかし,血栓形成を伴わない冠動脈攣縮による冠動脈閉塞のみを原因として心筋梗塞が発症するということは,一般的に認められた医学的知見とまではいえない。また,右冠動脈の閉塞によって出現する心筋梗塞は左室下壁梗塞であるところ,P1の陳旧性心筋梗塞(4週間以上前に発生した心筋梗塞部位の線維化が完成した後の状態のこと)部位及び心筋の好酸性変性を伴う急性変化部位は左室後壁であるから,右冠動脈の閉塞により急性心筋梗塞を発症したとはいえない。したがって,P1は,急性心筋梗塞を発症したため,致死的不整脈を発症したとはいえない。 (イ)また,被告は,P1の致死的不整脈が陳旧性心筋梗塞を基礎としたリエントリー(reentry=再び侵入するの意味,心臓の電気的興奮が同じ箇所を何度も旋回する異常な状態のこと)により発症した 。 (イ)また,被告は,P1の致死的不整脈が陳旧性心筋梗塞を基礎としたリエントリー(reentry=再び侵入するの意味,心臓の電気的興奮が同じ箇所を何度も旋回する異常な状態のこと)により発症した旨主張する。しかし,P1は,高温環境下で本件疾病を発症したこと,P1は体重の5%の減少を伴う脱水症状となっていたこと,腎不全その他の多臓器不全を発症していることに照らすと,P1の致死的不整脈が陳旧性心筋梗塞を基礎としたリエントリーにより発症したとはいえない。 【被告】(1)アP1の右冠動脈には75%の狭窄があったところ,冠動脈攣縮により100%閉塞し,このため心臓の左室下壁に急性心筋梗塞を再発し,その後心停止につながる心室細動(心室がけいれんして収縮できなくなり,心臓から血液が送り出せなくなる状態のこと,すなわち致死的不整脈を発症したものである。なお,P)- 4 -1の死体検案書によれば,同人の心臓の左室後壁に梗塞が生じていたとされているが,これは臨床的に隣接している左室下壁であったと考えられ,右冠動脈の閉塞と梗塞発生部位との間に矛盾はない。 イまた,仮にP1が急性心筋梗塞を発症したのではないとした場合には,陳旧性心筋梗塞を基礎としたリエントリーにより致死的不整脈を発症したものと考えられる。すなわち,心臓では,正常な心筋は電気を伝導するが,壊死した領域は電気を伝導しないところ,電気を伝導しない領域が部分的に存在すると,正常な心筋領域だけを通る電気的興奮がリエントリーと呼ばれる旋回興奮を起こすことがある。そして,リエントリーは,血圧低下を招き,心筋壊死や機能低下につながり,心室頻拍へ移行したうえ,最終的に心停止につながる心室細動,すなわち致死的不整脈を発症する場合がある。P1の陳旧性心筋梗塞は,心外膜から心内膜まで壊死に至る貫通性の梗 心筋壊死や機能低下につながり,心室頻拍へ移行したうえ,最終的に心停止につながる心室細動,すなわち致死的不整脈を発症する場合がある。P1の陳旧性心筋梗塞は,心外膜から心内膜まで壊死に至る貫通性の梗塞ではなく,壊死を起こしている領域と正常な心筋の,,領域が混在している状態にあったものでありこれによりリエントリーを起こし致死的不整脈を発症したものである。 ウ以上のとおり,本件疾病は,P1の基礎疾患が自然的経過により増悪した結果発症したものであり,P1の業務との間に相当因果関係はない。 (2)原告の主張に対する反論,,,,アP1は本件疾病発症当日朝食及び昼食により塩分の補給をしておりまた水分を自由に補給できる環境下で作業をしており,少なくとも当日午後3時には水分の補給をしている。また,帝京大学病院搬入時,P1の体温は35.8℃にすぎず,皮膚も湿潤であったとされており,温度調節作用が正常に働いていた。 さらに,熱中症のうち最も重篤な熱射病の病態の1つは,体温が41℃以上になった場合の赤血球崩壊による溶血,すなわち赤血球数の減少であるところ,本件血液の赤血球値及びヘモグロビン値はいずれも基準値内であり,本件健康診断時の血液と比べても増加しており,赤血球の溶血は生じていない。そして,帝京大学病院で投与された輸液及び薬剤の量等を考慮しても,本件疾病発症前後でP1の体重に変化はなく,P1は本件疾病発症の際に脱水症ないし熱中症を発症していない。 イ原告は,P1が本件疾病発症の際に脱水症を発症していたことの根拠として,()。 本件健康診断時の血液と本件血液のヘマトクリット値Hctの変化を挙げるしかし,本件健康診断は本件疾病発症の約2か月前に実施されたものであり,他方本件血液は死亡後の血液であることからすると,これらの血液検査の結果を比 血液と本件血液のヘマトクリット値Hctの変化を挙げるしかし,本件健康診断は本件疾病発症の約2か月前に実施されたものであり,他方本件血液は死亡後の血液であることからすると,これらの血液検査の結果を比べて脱水症の有無を判断することはできない。仮に本件血液の検査結果によっても,血清総蛋白値(Tp)から推測されるP1の体液欠乏量は0・88リットルにすぎないこと,ナトリウム値,血清総蛋白値(Tp)が基準値内であること,尿素窒素(BUN)/クレアチニン(Cr)比の数値が9.4であることなどに照らすと,ヘマトクリット値(Hct)の上昇からだけで,P1が本件疾病発症の際,体重の5%以上の脱水があったとはいえない。 ウP1は,急性心筋梗塞又は陳旧性心筋梗塞による致死的不整脈を生じたことにより,心肺停止状態となり血流が途絶え,そのため,肺,肝,腎等複数の臓器が- 5 -うっ血状態となって機能不全を生じたものである。また,肺うっ血は,肺血管,特に肺毛細血管に血液の貯留する状態において,肺静脈圧が上昇することにより発生するものであり,多くは心筋梗塞などの急性左心不全が起こり,肺水腫に至るところ,P1は,心肺停止による血液還流障害により全身性うっ血を生じ,その結果肺水腫を発症したのであり,熱射病により肺水腫を発症したのではない。 第3争点に対する判断 判断の枠組み労災保険法に基づく遺族補償給付及び葬祭料の給付は,労働基準法79条,80条所定の「労働者が業務上死亡した場合」に行われるところ(労災保険法12条の8第2項,業務上の疾病により死亡したというためには,当該疾病が労基法施行規則3)5条,別表第1の2各号所定の疾病に該当することを要し,当該疾病につき業務起因性が認められなければならない。そして,労災保険法による労働者災害補償制度は,業務に内在ない 該疾病が労基法施行規則3)5条,別表第1の2各号所定の疾病に該当することを要し,当該疾病につき業務起因性が認められなければならない。そして,労災保険法による労働者災害補償制度は,業務に内在ないしは通常随伴する各種の危険性が現実化した場合の損失について,使用者の過失の有無にかかわらず補償するという特質を有することに照らすと,業務起因性の認定においては,単に当該疾病が業務遂行中に発生したという条件関係の存在だけでは足りず,当該疾病が業務に内在ないしは通常随伴する危険の現実化と認められる関係があって初めて相当因果関係,換言すれば,業務起因性を認めるのが相当である(最二小判昭和51年11月12日裁集民119号189頁,最三小判平成8年1月23日裁集民178号83頁,最三小判平成8年3月5日裁集民178号621頁参照。ところで,労基法施行規則35条,別表第1の2第2号ないし第7号は,)特定の有害因子を含む業務に従事することにより当該業務に起因して発症し得ることが医学経験則上一般的に認められている疾病を規定し,当該疾病を発症させるに足りる条件のもとで業務に従事してきた労働者が当該疾病に罹患した場合には,特段の反証がない限り,業務に起因する疾病として取り扱うことにしたものと解される(最三小判昭和63年3月15日・体系労災保険判例総覧(平成3年1月18日発行【3)09頁】参照。そして,労基法施行規則35条,別表第1の2第2号8は「暑熱),な場所における業務による熱中症」を業務上の疾病としているのであるから,労働者が暑熱な場所における業務に従事中,熱中症を発症して死亡したと認められる場合に,,。 は特段の反証がない限り当該疾病は業務に起因するものと認めるのが相当である以下,このような見地から本件について検討する。 認定事実前記争いの 中症を発症して死亡したと認められる場合に,,。 は特段の反証がない限り当該疾病は業務に起因するものと認めるのが相当である以下,このような見地から本件について検討する。 認定事実前記争いのない事実等,証拠(文章中又は文末に掲記したもの)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる(なお,当事者間に争いのない事実は,文章中又は文末に証拠等を掲記しない。 )(1)P1の経歴アP1は,昭和57年9月14日に原告と結婚し,本件疾病発症当時,原告及び2人の子と同居していた(甲4,5)。 イP1は,昭和50年5月から平成6年11月18日までの間,東京都荒川区<以下略>所在のサパースナック「α」において,当初はバーテンとして,その後約10年間は店長として稼働していた。この当時のP1の勤務時間は,午後8時- 6 -から翌朝午前7時ころまでの間であった(甲5,9,乙13)。 ウP1は,平成6年12月1日,日昇興業に入社し,一般作業員として道路舗装工事に従事していた。 (2)P1の健康状態等P1は,平成5年7月1日から同7年7月20日までの間,医療機関で治療を受けた形跡はなく,日昇興業に勤務しはじめてから本件事故発生日までの間,病気により欠勤したことはない。P1は,本件事故発生の約2か月前である平成7年5月29日,医療法人財団河北総合病院健診センター(以下「河北総合病院健診センター」という)において,本件健康診断を受けた。本件健康診断の結果は,概略,。 以下のとおりであり,問題になる点は,軽度の肥満,総コレステロール値が高いこと,タバコの本数が多いことであり,他に異常な点は見られなかった。なお,河北総合病院健診センター医師P2は,被告の照会に対し,P1について,本件健康診断時,心電図は正常範囲で,新鮮若しくは陳旧性心筋梗塞を疑 コの本数が多いことであり,他に異常な点は見られなかった。なお,河北総合病院健診センター医師P2は,被告の照会に対し,P1について,本件健康診断時,心電図は正常範囲で,新鮮若しくは陳旧性心筋梗塞を疑う所見は認められなかった旨回答している(甲21,22,28,乙6,8)。 ア身長166.2cm体重73.4kg肥満度23.2イ受診前の主な自覚症状等喫煙1日当たり31本以上アルコール量多い家族歴心臓病検診受診歴初ウ診療所見異常所見なしエ血圧最高血圧130,最低血圧70オ心電図検査(安静時心電図)正常範囲(),(),(),()カ尿検査蛋白±糖±ウロビリノーゲン+潜血反応-キ血球計数別紙1のとおりク血液検査別紙1のとおりケ判定(B)判定(僅かに異常を認めますが日常生活に支障はありません)・ウロビリノゲン反応が認められますが,心配はいりません。ウロビリノゲンは運動・飲酒・肉食・便秘の影響を受けます。 ・尿蛋白値の上昇が認められますが,心配はいりません。 ・尿糖が認められますが,心配はいりません。 (C1)判定(要1年後検査)・総コレステロール値の上昇が認められますので,1年後に検査してください。コレステロールとは脂質で,動脈硬化促進の最大因子です。 ・中性脂肪値の上昇が認められますので,1年後に検査してください。 肥満・お酒が原因とも考えられます。中性脂肪値は,食事・お酒の影響を強く受けます。 - 7 -(E)判定(精密検査が必要です)・ALP値の上昇が認められますので,精密検査を受けてください。明確な原因は特定できません。ALPとは,肝臓・胆管・骨などに多く含まれる酵素で,これらに異常があると上昇します。 ・食後3時間の血糖 ALP値の上昇が認められますので,精密検査を受けてください。明確な原因は特定できません。ALPとは,肝臓・胆管・骨などに多く含まれる酵素で,これらに異常があると上昇します。 ・食後3時間の血糖値が上昇していますので,精密検査を受けてください。肥満・お酒・運動不足が原因とも考えられます。隠れた糖尿病も考えられます。75g糖負荷テストが必要です。 ※肥満傾向が認められますので,減量に努めてください。 ※喫煙指数(本数/日×喫煙年数:400以上は要注意)が高めです。喫煙指数については,肺癌発生との疫学的な関連が指摘されています。節煙に努めてください。 (3)P1の業務内容等ア道路舗装工事の概要道路舗装工事は,道路基礎工事とアスファルト工事に大別される。道路基礎工事とは,道路上のアスファルトを剥がす作業であり,アスファルト工事とは,ダンプカーに積載されてきたアスファルトを道路上に敷き,それをスコップ,トンボ,ローラー等で均したり,機械で叩いたりする作業である。P1は,日昇興業入社後日が浅かったこともあり,本件疾病発症当時,熟練を要するトンボでアスファルトを均す作業に従事することはなかったが,アスファルト工事に関する雑(,)。 作業スコップやほうきを使った作業カラーコーンの移動等に従事していた(甲6,乙13,14)イ作業環境,,,,,,道路舗装工事の作業員は安全のため夏でも長袖長ズボン安全靴軍手ヘルメットを着用して作業をしている。そして,アスファルトの温度は約145,。 ℃となるため作業中は多量の発汗を伴い着ているシャツが汗で絞れる位になる日昇興業における作業中の水分補給は,会社の費用で午前10時と午後3時にジュース等を購入するほかは,従業員が持参した麦茶等で賄う状況であった(甲。 7ないし10 い着ているシャツが汗で絞れる位になる日昇興業における作業中の水分補給は,会社の費用で午前10時と午後3時にジュース等を購入するほかは,従業員が持参した麦茶等で賄う状況であった(甲。 7ないし10,乙13,42)ウ勤務形態日昇興業の勤務形態は,昼勤(午前8時から午後5時まで又は午前9時から午後6時まで)と夜勤(午後8時から翌朝午前4時ころまで)があるが,いずれの,。 ,勤務に就くかは仕事の都合により決まり連続して勤務することもあったまた日昇興業は,休憩時間について,昼勤の場合は午前10時から20分間,正午から60分間,午後3時から20分間の3回と定め,夜勤の場合は午後10時から20分間,午前零時から60分間の2回と定めていたが,アスファルトの温度が下がらないうちに作業を終えなくてはならないため,作業員は必ずしも予定通り休憩時間が取れるわけではなかった。さらに,日昇興業では,毎週日曜日を所定,,,休日としていたが降雨の場合は作業ができないため作業員を休日出勤させてその前後に代休を与える場合もあった(甲5,6,10,乙13,14)。 (4)本件疾病発症時の状況(本項での出来事はいずれも平成7年7月21日である- 8 -ので,特段の事情のない限り,同日の記載を省略する)。 アP1は,午前9時ころから,本件現場において,前記(3)イの服装・装備でアスファルト工事に従事していた。P1は,午前10時30分ころから午前11時ころまでの間,午後零時15分ころから午後1時30分ころまでの間及び午後3時ころ,それぞれ休憩を取った。P1は,前記昼食時の休憩の際には冗談を言うなどしており,午後3時ころの休憩の際も特段体調不良を訴えることはなかった(甲1,乙14)。 イ東京都の平成7年7月21日の天候は,東京管区気象台の地上気象観測原簿 昼食時の休憩の際には冗談を言うなどしており,午後3時ころの休憩の際も特段体調不良を訴えることはなかった(甲1,乙14)。 イ東京都の平成7年7月21日の天候は,東京管区気象台の地上気象観測原簿によれば,雨一時曇り,最高気温28.8℃(午後3時50分,平均気温25. )9℃,平均相対湿度83%,降雨量2.5mmであり,午後1時から午後5時ま。 ,,. での間に降雨はなかったまた東京都の同日午後3時の天候は平均気温285℃,平均相対湿度73%,風速1.1m/sであり,同日午後4時の天候は,平均気温28.5℃,平均相対湿度73%,風速1.5m/sであった(甲1。 1,乙40。 )ウP1は,午後4時すぎころ,別紙図面①地点において,アスファルトをスコップで均す作業に従事していたところ「具合が悪い」と述べ,現場監督者P3の,指示で,同②地点(P4家玄関先)において,5,6分間横になって休息した。 この際,P1は,P4家の住人によって,頭部をタオルで冷やしてもらった。その後,P1は,同③地点において,作業を再開したが,身体がふらついたため,同僚のP5から「具合が悪いのに出てくるんじゃない」と注意され,同④地点で再び休息した。さらに,P1は,同⑤地点において,再び作業を開始しようとしたが横転して,口から泡を出し,けいれんを起こした。このため,P1は,同⑥地点で横に寝かされたが,しばらくするといびきをかき始めたため,本件現場付近の押部南公園の同⑦地点に運ばれた。P1は,同⑦地点において,ベニヤ板の上に仰向けに寝かされたが,うなり声をあげ始めたため,工事関係者が午後5時2分に救急車を要請した。そして,救急隊が,午後5時7分,同⑦地点に到着した。P1は,前記救急隊が到着した時点で既に心肺停止状態であったが,嘔吐,。(,,,,, め,工事関係者が午後5時2分に救急車を要請した。そして,救急隊が,午後5時7分,同⑦地点に到着した。P1は,前記救急隊が到着した時点で既に心肺停止状態であったが,嘔吐,。(,,,,,,,尿便失禁はなかった甲1ないし3 乙14 21)エP1は,午後5時25分,救急車に乗せられ,救急車内で心臓マッサージをされながら,午後5時38分に帝京大学病院に搬入された(甲2,3,26,3。 5,41,乙20,21)オP1は,帝京大学病院搬入時,心肺停止状態,体温35.8℃(右腋窩,脈)触れず,血圧測定不能,自発呼吸なし,意識レベルⅢ-300(痛み刺激に反応しない,皮膚湿潤の状態であり,肺水腫が認められた。また,P1は,帝京大)学病院搬入時には,嘔吐,尿便失禁が認められた。なお,本件血液の血液所見は,。(,別紙2のとおりであり動脈血ガス分析所見は別紙3のとおりであった甲326,27,31,35,36,41,乙21)なお,証拠(甲27,36)によれば,帝京大学病院におけるP1に対する採,,血時間について動脈血ガス分析伝票上は午後5時46分と記載されていること- 9 -末梢血・生化学伝票上は同日午後6時18分と記載されていることが認められる。しかし,証拠(甲26,27,35,38,39,41)及び弁論の全趣旨によれば,通常,動脈血ガス,末梢血,生化学検査のための採血は,病院搬入後,,直ちに行われること動脈血ガス分析伝票及び末梢血・生化学伝票の検査時間は検体を器械に注入した時間若しくはコンピュータ入力時間が記載されるため,実際の採血時間との間に齟齬が生じるうえ,末梢血,生化学検査の伝票に記載される検査時間は,検体処理等のため,動脈血ガス分析の伝票に記載される検査時間よりも通常30 ピュータ入力時間が記載されるため,実際の採血時間との間に齟齬が生じるうえ,末梢血,生化学検査の伝票に記載される検査時間は,検体処理等のため,動脈血ガス分析の伝票に記載される検査時間よりも通常30分程度遅れること,P1は,午後5時38分に酸素マスクにより濃度50%,1分間当たり10リットルの酸素投与が行われた状態で帝京大学病院に搬送され,その後,遅くとも午後5時43分までに酸素投与法が酸素マスクから直接挿管チューブに切り替えられているところ「救命救急センター来院時,所見」には採血の条件として「マスク10L,50%」との記載がされてい,ることが認められる。そうだとすると,本件血液は遅くともP1が存命中の午後5時43分ころまでに採血され,血液ガス検体,末梢血検体及び生化学検体にされたものと認めるのが相当であり,当該判断を覆すに足りる証拠は存在しない。 カP1は,午後5時43分ころ,経口挿管により気道が確保され,輸液(部位・右そけい部及び右腋窩,輸液量・Free)及び薬剤投与(ボスミン・5アンプル,メイロン200ml)がされるとともに,心臓マッサージが施された。しか,,,,し帝京大学病院医師らは午後6時15分救急車に同乗してきたP3に対しP1の心拍,呼吸が再開しないことを報告し,原告の同病院到着後の午後6時51分,P1の死亡を確認した(甲3,26,35,37,41。 。 )キ原告は,P1死亡直後,帝京大学病院から,ビニール袋に入った状態でP1が本件疾病発症時に着用していた衣服を返却されたが,当該衣服は水が絞れる程濡れていた(甲8,9,弁論の全趣旨。 )(5)解剖所見アP1の解剖を担当した東京都監察医P6(以下「P6医師」という)は,死。 体検案書において,P1の直接死因を陳旧性心筋梗塞としている。また,P6医師は, 9,弁論の全趣旨。 )(5)解剖所見アP1の解剖を担当した東京都監察医P6(以下「P6医師」という)は,死。 体検案書において,P1の直接死因を陳旧性心筋梗塞としている。また,P6医師は,解剖主要所見において,P1について,①陳旧性心筋梗塞:左室後壁の陳旧性梗塞,右冠状動脈にて75%の狭窄あり,左心室肥大中程度,②大動脈の著,,,,。 明な粥状硬化③肺の急性肺水腫④肝腎脾の急性鬱血などを指摘しているさらに,P6医師は,意見書において,P1について「身長167cm,体重,72kg」と記載するとともに「直接死因:陳旧性心筋梗塞について」との表,題の下「剖検にて,心臓重量380gで,左心室の拡張性肥厚を伴う。左心室,後壁に,線維性瘢痕病変が広がり,乳頭筋をまきこんでいる。この瘢痕病変の周辺には,心筋の好酸性変性を伴う,急性変化も伴っている。冠状動脈では,右冠状動脈にて75%の狭窄を認め,左冠状動脈では,25%の狭窄を認める。従って,本例は,右冠状動脈の硬化による左心室後壁の陳旧性心筋梗塞で,乳頭筋をまきこんでいることから,僧帽弁閉鎖不全状態になっていたと思われる『陳旧。 性』とは,既に以前に心筋梗塞をおこしていた状態を指しますが,瘢痕病変周辺には心筋壊死の急性変化も伴っていました」と記載し「解剖所見について」。 ,- 10 -との表題の下「①大動脈の著明な粥状硬化:大動脈の動脈硬化状態は,胸部,,腹部,分岐部にかけて,石灰化と潰瘍形成を伴う,粥状硬化を認めた,②肺(1000:1200g:急性うっ血と急性肺水腫の状態,③肝(1940g:))急性うっ血を認める,肝細胞の脂肪化は軽度,④脾(130g:急性うっ血,)⑤腎(210:180g:急性うっ血状態,糸球体に少数の糸球体硬化を認め)る,近位尿細管は拡 ,③肝(1940g:))急性うっ血を認める,肝細胞の脂肪化は軽度,④脾(130g:急性うっ血,)⑤腎(210:180g:急性うっ血状態,糸球体に少数の糸球体硬化を認め)る,近位尿細管は拡張性(+・・・」と記載し「陳旧性心筋梗塞と業務との),因果関係について」との表題の下「本例の心筋梗塞は,本例が今回倒れる以前,の過去に生じており,その意味で,発作当日の業務を行ったために,心筋梗塞が生じ死亡にいたったものではない。しかし,本例の心筋梗塞は過去に生じたものではあるが,そのために,心筋機能障害,特に,僧帽弁閉鎖不全を合併する結果となり,不整脈などのために,いつ,致死的結果を生じてもいい状態にあり,道路舗装士としての仕事が,間接的に,死を惹起する結果になったと考えられる。 陳旧性心筋梗塞状態で,肉体労働である道路舗装の業務は無理と考えられる」。 と記載している(甲12,13)。 イP6医師は,平成11年5月31日,原告訴訟代理人に対し,本件疾病発症とアスファルト工事との関係について「アスファルト工事が高温作業下で行われ,ていたとすれば,脱水現象などにより,血栓が出来やすく,陳旧性心筋梗塞に伴う併発症状を呈した可能性が否定できない」との意見を述べている(甲14。 。 )()(,,,,,【, 熱中症に関する医学的知見甲28乙8 証人P7 4ないし6頁)】ア熱中症とは,高温多湿の環境下において体温,体液恒常性維持に障害を生じる熱性障害を総称したものであり,通常,体温の上昇を伴わない日射病・熱けいれんと,体温上昇を伴う熱疲労・熱射病とに分類することができる。 日射病は,炎天下や高温環境に長時間曝されることにより,血管拡張,発汗のため循環血液量が減少し,脳虚血が生じる病態であり,頭重感 熱けいれんと,体温上昇を伴う熱疲労・熱射病とに分類することができる。 日射病は,炎天下や高温環境に長時間曝されることにより,血管拡張,発汗のため循環血液量が減少し,脳虚血が生じる病態であり,頭重感,めまい,一過性の意識障害を来す。 ,,,,熱けいれんは大量の発汗により水ナトリウムを喪失したにもかかわらず水分補給のみを続けたことにより,低張性(低ナトリウム性)脱水を来したものであり,嘔気,めまい,口喝を訴え,筋肉の興奮性亢進により腹痛,嘔吐や強直性有痛性けいれんを来す。 熱疲労は,循環血液量減少のため,疲労感,口喝,頻脈,血圧低下,頭痛,不穏など軽度の意識障害を来す病態である。熱疲労は,初期には発汗があるため体温上昇は中程度であるが,体温調節異常が始まっており,熱射病の前段階といえる。 熱射病は,熱中症の最重症型であり,著しい脱水によるショック,意識障害,全身けいれんを生じさせる。熱射病では,体温調節機構の破綻のため,体温が40.5℃以上の超高温となりながら発汗が停止し,皮膚は乾燥,紅潮する。そして,熱射病では,多臓器不全やDIC(播種性血管内凝固症候群,ショックなどに合併して,全身の微小血管内に血栓を生じ,血小板とフィブリノゲンなどの凝固因子が消費されてしまい,全身に出血傾向が起こる状態)に陥ると多くは死亡- 11 -する。 イ熱中症の症状の特徴等(ア)前記アからも明らかなとおり,熱中症は,高温多湿の環境下において労働や運動を行っているときに発生するのが通常である。 (イ)熱中症は,脱水をベースに発生するものであり,脱水の結果,体を循環する体液の恒常性を維持できなくなる。すなわち,短時間のうちに大量の体液が失われると,これに対する補充が不十分な場合には,循環血液量の低下,電解質バランスの異常を来し,口渇,皮膚・粘膜の乾 体を循環する体液の恒常性を維持できなくなる。すなわち,短時間のうちに大量の体液が失われると,これに対する補充が不十分な場合には,循環血液量の低下,電解質バランスの異常を来し,口渇,皮膚・粘膜の乾燥,全身倦怠感,めまい,無欲状態といった症状が生じ,重症になると意識障害,血圧低下,ショック(末)。 ,,(),梢循環不全を来す脱水の有無は体重の減少ヘマトクリット値Hct血清総蛋白値(Tp,尿素窒素値(BUN,クレアチニン値(Cr,BU)))N/Cr比,ナトリウム値,意識障害の有無などから総合的に判断される。脱水が,4%未満は軽症,4ないし8%は中等,8ないし12%は重症と分類される。 (ウ)熱中症においては,①脳細胞は高体温によりしばしば脳浮腫を惹起し,けいれん,意識障害を合併すること,②肝障害,腎障害を併発すること,③呼吸障害を併発すること,④血液凝固障害を併発することが,通常みられる。 (エ)熱中症のうち,最重症である熱射病においては,体温の上昇,意識障害,発汗の停止の症状が見られるのが通常である。 ウ熱中症のリスクファクター(危険因子)(ア)脱水体重の3%を超える脱水は,体温上昇に関連し,高温環境での運動は1時間. ,,当たり25リットル以上の発汗を来すため十分な水分補給が行われないと脱水が徐々に進行し,熱中症が発症しやすい状態となる。 (イ)服装通気性の悪い服装や過度の厚着は,対流や発汗による熱放散を低下させ,熱中症が発症しやすい状態となる。 (ウ)肥満肥満の者は熱放散が限られてしまう。肥満者は体重当たりの心拍出量が少なく,熱放散に利用できる皮膚の面積も身体の容量に比べ少ないためである。 当裁判所の判断(1)P1の熱中症発症の有無についてア熱中症の症状との符合性(ア)前記2(6)イに の心拍出量が少なく,熱放散に利用できる皮膚の面積も身体の容量に比べ少ないためである。 当裁判所の判断(1)P1の熱中症発症の有無についてア熱中症の症状との符合性(ア)前記2(6)イによれば,熱中症は,①高温多湿の環境下において運動,労働を行っているときに発生するのが通常であること,②脱水をベースに発生するものであること,③けいれん,意識障害を合併することがあること,④肝障害,腎障害を併発することがあること,⑤呼吸障害を併発することがあること,⑥血液凝固障害を併発することがあること,⑦熱中症のうち,最重症である熱射病では,体温の上昇,意識障害,発汗の停止の症状が見られるのが通常であることがいわれている。そこで,以下,本件疾病発症時,P1に前記のよ- 12 -うな熱中症に特徴的な症状が認められるのか否かについて検討する。 (イ)環境(前記(ア)①)について前記2(3)ア,イ(4)アないしウによれば,P1は,平成7年7月2,1日午前9時ころから同日午後4時すぎころまでの間,途中,3度の休憩を挟んで,アスファルトをスコップで均すなどの肉体労働に従事していたこと,アスファルトの温度は約145℃という高温となること,P1は,上記作業中,安全のため,長袖,長ズボン,安全靴,軍手,ヘルメット等を着用していたため,対流や発汗による熱放散が低下した状態であったこと,同日は,平均気温25.9℃,最高気温28.8℃(午後3時50分,平均相対湿度83%で)あり相当に蒸し暑かったことが認められる。そうだとすると,P1は,本件疾病発症時,高温多湿の環境下で労働していたということができ,前記(ア)①の熱中症発症の環境下にいたということができる。 (ウ)脱水(前記(ア)②)についてa前記2(2(4(6)及び弁論の全趣旨によれば,①脱水の有 境下で労働していたということができ,前記(ア)①の熱中症発症の環境下にいたということができる。 (ウ)脱水(前記(ア)②)についてa前記2(2(4(6)及び弁論の全趣旨によれば,①脱水の有無は,),),体重の減少,ヘマトクリット値(Hct,血清総蛋白値(Tp,尿素窒))素値(BUN,クレアチニン値(Cr,BUN/Cr比,ナトリウム値,))意識障害の有無などから総合的に判断するのが相当であること,②ヘマトクリット値(Hct)等の血液分析は,本件血液が帝京大学病院搬入時P1存命中に採取された血液であることに照らすと,本件血液と本件事故発生日の約2か月前の本件健康診断時の検査結果とを比較するなかで行うのが相当であることが認められる。 bヘマトクリット値(Hct)前記2(2(4)オ,証拠(甲28,証人P7【1,3頁)及び弁論),】の全趣旨によれば,①ヘマトクリット値(Hct)は,血液中の血球成分の量と液体成分の比率をパーセンテージで表したものであり,脱水すなわち水分が減少すると相対的に血球成分の割合が多くなることから脱水の指標となるものであり,脱水の程度を見る指標としては体重とともに重要なものであること,②ヘマトクリット値(Hct)による水分欠乏量は,体重×0.6×(1-健常時Hct/脱水後Hct)により求めることができること,③P1の体重は本件健康診断時73.4kgであり,ヘマトクリット値(Hct)は本件健康診断時には42.7%であったのが帝京大学病院搬入時には46・8%と上昇していたことが認められる。 以上によれば,P1は,本件疾病発症当時,約3.86kg(73.4kg×0.6×(1-42.7/46.8)≒3.86kg)の水分を喪失し,. (. . ていたこととなりこれはP1の体重の約526% P1は,本件疾病発症当時,約3.86kg(73.4kg×0.6×(1-42.7/46.8)≒3.86kg)の水分を喪失し,. (. . ていたこととなりこれはP1の体重の約526% 86kg/734kg≒526%に当たるしたがってP1はヘマトクリット値H. )。 ,,(ct)の数値の変動からみる限り,本件疾病発症時,中等の脱水状態に陥っていたと推認するのが相当である。 c血清総蛋白値(Tp)前記2(2(4)オ,証拠(甲39)及び弁論の全趣旨によれば,①),- 13 -血清総蛋白値(Tp)は,血液中にゼル状に存在しているタンパク質量が脱水により血清が濃縮することにより変化するため脱水の有無を判断する指標となること,②血清総蛋白の大部分を占めるアルブミンは血管内外に出入りするため,脱水の有無を判断する指標としては血清総蛋白値(Tp)はヘマ(),(),トクリット値Hctよりも劣っていること③血清総蛋白値Tpは動脈血が静脈血に比べて,約0.5g/dl低値となることから,本件血液のTp7.2g/dlは,静脈血換算にすると7.7g/dlとなること,④血清総蛋白値(Tp)による水分欠乏量は,体重×0.6×(1-健常時Tp/脱水後Tp)により求めることができること,⑤P1の本件健康診断時の体重は73.4kgであり,血清総蛋白値(Tp)は,本件健康診断時には7.1g/dlであったのが帝京大学病院搬入時には7.7g/dlに上昇していたことが認められる。 以上によれば,P1は,本件疾病発症当時,約3.43kg(73.4kg×0.6×(1-7.1/7.7)≒3.43kg)の水分を喪失してい,. (. . たということになりこれはP1の体重の約47% 43kg/734kg≒4.7%)に 3kg(73.4kg×0.6×(1-7.1/7.7)≒3.43kg)の水分を喪失してい,. (. . たということになりこれはP1の体重の約47% 43kg/734kg≒4.7%)に当たる。したがって,P1は,血清総蛋白値(Tp)の数値からみる限り,本件疾病発症時,中等の脱水状態に陥っていたと推認するのが相当である。 d尿素窒素値(BUN,クレアチニン値(Cr))(,,【,,,】)) 証拠 甲28 証人P7 7頁及び弁論の全趣旨によれば,①尿素窒素及びクレアチニンは,本来,腎臓からタンパク質の老廃物として除去されるものであり,尿素窒素値(BUN)及びクレアチニン値(Cr)は腎不全により上昇すること,②クレアチニン値(Cr)の上昇は,急性腎不全の場合であっても1日で0.5~1mg/dl程度にすぎないこと,③クレアチニン値(Cr)が,心筋梗塞ないし致死的不整脈による心原性ショックだけで1時間30分程度の間に上昇することはないところ,本件血液のクレアチニン値(Cr)は2.3mg/dlという高値になっていることが認められる。 以上の医学的知見及び弁論の全趣旨によれば,本件血液のクレアチニン値(Cr)が2.3mg/dlと高値となっているのは,P1が本件疾病発症当日午前から脱水状態のため腎血流量が低下し,腎臓から排泄されるはずのクレアチニンが血液中に蓄積され,これに熱中症が加わり,多臓器不全の1つとして急性腎不全に陥ったため更に上昇したものと推認するのが相当である。 e血糖値前記2(2(4)オ,証拠(甲28,証人P7【1,30,31頁)),】及び弁論の全趣旨によれば,①P1の血糖値は,本件健康診断時には130mg/dl(食後3時間)であったのに,本件疾病発症後は435mg/dlと異 証拠(甲28,証人P7【1,30,31頁)),】及び弁論の全趣旨によれば,①P1の血糖値は,本件健康診断時には130mg/dl(食後3時間)であったのに,本件疾病発症後は435mg/dlと異常な上昇を示していること,②本件血液の血糖値の異常な高数値は糖尿病の自然経過により上昇したものとは考え難いこと,③前記血糖値の上昇- 14 -は,P1が脱水状態であったこと,生体に加わった高度のストレスに対して抗ショックホルモンであるカテコールアミン,副腎皮質ホルモン等が異常に分泌されたことの結果と推認するのが相当であることが認められる。 f意識障害前記2(4)によれば,P1は,本件疾病発症時,口から泡を出し,けいれんを起こし,横に寝かされたところ,しばらくするといびきをかき始めたことが認められ,意識障害があったことが認められる。 gP1の着用していた衣服の状況前記2(4)キによれば,P1の妻である原告は,P1死亡直後,帝京大学病院から,ビニール袋に入った状態でP1が本件疾病発症時着用していた衣服を返還されたが,当該衣服は水が絞れるほど濡れていたことが認められる。 h小括前記aないしg,とりわけ,ヘマトクリット値(Hct,血清総蛋白値)(Tp,クレアチニン値(Cr,血糖値,意識障害の存在,P1が本件))疾病時着用していた衣服の状況等に照らし,P1は,本件疾病発症時,脱水症状を起こしていたと認めるのが相当である。 なお,被告は,脱水状態になるとBUN/Cr比の数値が10.0以上になるところ,本件血液のBUN/Cr比は9.4しかなくP1は本件疾病発症時脱水状態ではなかったと主張する。しかし,証拠(甲28,39,証人P7【7,8頁)及び弁論の全趣旨によれば,脱水状態になると通常BU】,(),,N/Cr比が上昇するものの 件疾病発症時脱水状態ではなかったと主張する。しかし,証拠(甲28,39,証人P7【7,8頁)及び弁論の全趣旨によれば,脱水状態になると通常BU】,(),,N/Cr比が上昇するものの尿素窒素BUNは食事中の蛋白質の量体格等の影響を受けるうえ,腎不全を発症したり,脱水が高度の状態となると必ずしもBUN/Cr比が上昇するとは限らないことが認められる。そうだとすると,本件血液のBUN/Cr比が10.0を超えていないからといってP1が脱水状態であったことを否定することはできず,本件血液のBUN/Cr比の数値は前記判断を覆すものということはできない。 また,前記2(4)オによれば,本件血液のナトリウム値は,正常範囲内のものであったこと認められる。しかし,証拠(甲39)及び弁論の全趣旨によれば,脱水にはナトリウムが欠乏するものとしないものがあることが認められる。そうだとすると,本件血液のナトリウム値が正常範囲内であったことをもってP1が脱水状態になかったということはできず,本件血液のナトリウム値の数値は前記判断を覆すものということはできない。 その他,本件全証拠を検討するも,P1が,本件疾病発症時,脱水状態であったという事実を覆すに足りる的確な証拠は見当たらない。 以上によれば,P1は,本件疾病発症時,脱水状態であり,前記(ア)②の熱中症の症状の特徴に符合しているということができる。 (エ)けいれん,意識障害(前記(ア)③)について前記(ウ)fでも判断したとおり,前記2(4)によれば,P1は,本件疾病発症時,口から泡を出し,けいれんを起こし,横に寝かされたところ,しば- 15 -らくするといびきをかき始めたことが認められる。そうだとすると,P1は,本件疾病発症時,けいれん,意識障害があり,前記(ア)③の熱中症の症状の特徴に符 こし,横に寝かされたところ,しば- 15 -らくするといびきをかき始めたことが認められる。そうだとすると,P1は,本件疾病発症時,けいれん,意識障害があり,前記(ア)③の熱中症の症状の特徴に符合しているということができる。 (オ)肝障害,腎障害(前記(ア)④)について前記(ウ)dでも判断したとおり,①クレアチニンは,本来,腎臓からタンパク質の老廃物として除去されるものであり,腎不全により上昇するものであること,②クレアチニン値(Cr)の上昇は,急性腎不全の場合であっても1. ,(),日で05~1mg/dl程度にすぎないこと③クレアチニン値Crが心筋梗塞ないし致死的不整脈による心原性ショックだけで1時間30分程度の間に上昇することはないところ,本件血液のクレアチニン値(Cr)は2.3,()mg/dlという高値になっていること④本件血液のクレアチニン値Crが高値となっているのは,P1が本件疾病発症当日午前から脱水状態のため腎,,血流量が低下し腎臓から排泄されるはずのクレアチニンが血液中に蓄積されこれに熱中症が加わり,多臓器不全の1つとして急性腎不全に陥ったため更に上昇したものと推認するのが相当であることがそれぞれ認められる。 また,前記2(5)のP1の解剖所見によれば,P1の遺体からは,急性肺水腫,肝,腎,脾の急性鬱血が見られ,肝機能障害,腎不全等の多臓器不全を発症してしたことが認められる。 以上によれば,P1は,本件疾病発症時,肝機能障害,腎障害の症状が出て,()。 おり前記ア④の熱中症の症状の特徴に符合しているということができる(カ)呼吸障害(前記(ア)⑤)について前記2(4)ウによれば,P1がうなり声をあげ始めたため,平成7年7月21日午後5時2分に救急車を要請し,救急隊が到着した同日午後5時7 るということができる(カ)呼吸障害(前記(ア)⑤)について前記2(4)ウによれば,P1がうなり声をあげ始めたため,平成7年7月21日午後5時2分に救急車を要請し,救急隊が到着した同日午後5時7分ころにはP1は心肺停止状態にあったことが認められる。そうだとすると,P1,,,()は本件疾病発症時呼吸も困難な状況にあったということができ前記ア⑤の熱中症の症状の特徴に符合しているということができる。 (キ)血液凝固障害(前記(ア)⑥)について証拠(甲28,乙25の1)及び弁論の全趣旨によれば,脱水状態になると血液が濃縮されて粘ちょう性を増し,ヘマトクリット値(Hct)が上昇し,凝固機能は亢進するといわれていることが認められる。これを本件についてみるに,前記(ウ)で認定したとおり,P1は,本件疾病発症時,脱水状態にあり,しかもヘマトクリット値(Hct)も上昇していることが認められる。そうだとすると,P1は,本件疾病発症時,血液凝固障害の状況にあったと推認するのが相当であり,これを覆すに足りる的確な証拠は存在しない。以上によれば,P1は,本件疾病発症時,前記(ア)⑥の熱中症の症状の特徴に符合しているということができる。 (ク)熱射病の3徴表(前記(ア)⑦)について()(),,,a前記2 イエによれば熱中症のうち最重症である熱射病では体温の上昇,意識障害,発汗の停止の症状が見られるのが通常であるといわれていることが認められる。そして,P1が,本件疾病発症時に,意識障害- 16 -がみられたことは,前記(エ)でみてきたとおりである。そこで,以下,体温の上昇,発汗の停止についてみてみることにする。 b体温の上昇,発汗の停止(a)前記2(4)オによれば,P1が帝京大学病院に搬入された時の体温(腋 エ)でみてきたとおりである。そこで,以下,体温の上昇,発汗の停止についてみてみることにする。 b体温の上昇,発汗の停止(a)前記2(4)オによれば,P1が帝京大学病院に搬入された時の体温(腋窩温)は35.8℃であったこと及び同人の皮膚は湿潤していたことが認められる。そうだとすると,少なくとも,P1が帝京大学病院に搬入された平成7年7月21日午後5時38分ころには,P1には体温の上昇の事実はなく,発汗の停止があったということはできず,熱射病の3徴表。 ,のうち2徴表に反するとみうる状況があったということができる問題はこのような事実から,P1が熱中症に罹患していたということを否定するのが相当かという点である。検討を進めることにする。 (b)前記2(4)オ,証拠(甲28,証人P7【1,8,9頁)及び弁】論の全趣旨によれば,次の事実が認められる。 ⅰP1は,平成7年7月21日午後4時ころ発症し,145℃のアスファルトの輻射熱の熱源から遠ざけられ,涼しいところで休息し,頭をタオルで冷やしてもらっていた。帝京大学病院搬入時のP1に対する体温測定は,本件疾病発生から約2時間弱を経過した後の測定であった。 ⅱ救急隊が到着した平成7年7月21日午後5時7分ころ,P1は,既に心肺停止状態であった。 ⅲ帝京大学病院でのP1に対する体温測定は,腋窩温であるところ,腋窩温は直腸温に比べて通常0.6℃低く計測される。 ,,ⅳP1は心原性ショックを起こしていたと考えられるところこの場合抗ショックホルモンであるカテコールアミンや副腎皮質ホルモンが過剰に分泌され,その影響により皮膚などの末梢血流は低下し,冷汗を伴っ,。 て体表温度は深部温度に比べて更に降下し皮膚が湿潤することもあるⅴ熱中症のうち,日射病,熱けいれんは体温の上昇を伴わず,熱射病以 泌され,その影響により皮膚などの末梢血流は低下し,冷汗を伴っ,。 て体表温度は深部温度に比べて更に降下し皮膚が湿潤することもあるⅴ熱中症のうち,日射病,熱けいれんは体温の上昇を伴わず,熱射病以外のタイプの熱中症でも,程度の違いはあっても脱水や血液凝固障害を引き起こす。 (c)前記(b)で認定した各事実に照らすと,P1が帝京大学病院に搬入された時の体温が35.8℃であり,その際同人の皮膚が湿潤していたからといって,そのことから,直ちに,P1が本件事故発生当時,熱中症に罹患していなかったということはできないというべきである。 (ケ)小括以上によれば,熱中症は,高温多湿の環境下において労働を行っているときに発生するのが通常であり,①脱水をベースに発生するものであること,②けいれん,意識障害を合併することがあること,③肝障害,腎障害を併発することがあること,④呼吸障害を併発することがあること,⑤血液凝固障害を併発,,,することがあることがその症状の特徴であるところP1は本件疾病発症時これら熱中症の症状の特徴に符合する状態であったことが認められる。 イ熱中症のリスクファクター(危険因子)- 17 -前記2(6)ウによれば,熱中症のリスクファクターとして,脱水,服装,肥満が挙げられているが,前記2(2(3,3(1)ア(ウ)によれば,P1),)は,本件疾病発生時,脱水の状態にあり,通気性の悪い服装で労働に従事し,しかも軽度の肥満であるなど熱中症のリスクファクターを持っていたことが認められる。 ウP1の健康状態前記2(2)によれば,①P1は,本件疾病発症前の2年間は医療機関で治療を受けた形跡がなく,日昇興業に勤務し始めてから本件事故発生日までの間,病気により欠勤したことはないこと,②本件事故発生から約2か月前の本件健康診 ,①P1は,本件疾病発症前の2年間は医療機関で治療を受けた形跡がなく,日昇興業に勤務し始めてから本件事故発生日までの間,病気により欠勤したことはないこと,②本件事故発生から約2か月前の本件健康診断の結果によれば,P1は,総コレステロール値及び中性脂肪値の上昇について要1年後検査,ALP値及び食後3時間の血糖値について要精密検査との判定を受けていたものの,心電図検査は正常範囲であり,この時点では新鮮若しくは陳旧性心筋梗塞を疑うような所見はなかったことが認められる。そして,本件全証拠によるも,P1が本件疾病発症当日である平成7年7月21日までの間に,狭心症ないし心筋梗塞を疑わせるような胸痛等を訴えたと認めるに足りる証拠はない。そうだとすると,P1は,本件疾病発症当時,陳旧性心筋梗塞の既往症があったことが認められるものの,直ちに致死的不整脈を発症するような健康状態にあったとは考え難い。 エ熱中症の有無前記2(6,3(1)アないしウ及び弁論の全趣旨によれば,①P1の本件)疾病発症時の症状は熱中症の症状に符合し,熱中症の症状と矛盾する状況は認められないこと,②重症の熱中症は多臓器不全を招来すること,③P1は本件疾病当時,急性肺水腫,肝機能障害,腎不全等の多臓器不全を発症していたこと,④P1は本件疾病発症当時,熱中症のリスクファクターを持っていたこと,⑤P1は,本件疾病発症当日である平成7年7月21日までの間,旧性心筋梗塞の既往症を有していたものの,直ちに致死的不整脈を発症するような健康状態にあった,,,とは考え難いことなどを総合考慮するとP1は脱水状態から熱中症を発症し更に肺水腫,肝機能障害,腎不全等の多臓器不全を発症するとともに,その一環として心筋虚血を発症し,これに伴う致死的不整脈が生じて死亡するに至ったと認めるのが相当であり 1は脱水状態から熱中症を発症し更に肺水腫,肝機能障害,腎不全等の多臓器不全を発症するとともに,その一環として心筋虚血を発症し,これに伴う致死的不整脈が生じて死亡するに至ったと認めるのが相当であり,当該判断を覆すに足りる証拠は存在しない。 (2)被告の主張についてア被告は,P1の右冠動脈には75%の狭窄があったところ,冠動脈攣縮により100%閉塞し,このため急性心筋梗塞を発症し,更に致死的不整脈を発症した旨主張し,東邦大学医学部付属大橋病院循環器内科教授P8(以下「P8医師」という)がこれに沿う意見書を提出し,同様の証言をしている。 。 ,()(,,,【,】)しかし前記2 及び証拠甲28 証人P7 29頁,,(),によれば①P1の左心室後壁には繊維性瘢痕病変が広がり陳旧性心筋梗塞乳頭筋を巻き込んでいること,②この瘢痕病変の周辺には心筋の好酸性変性を伴う急性変化も伴っていることは認められるものの,他方,右冠動脈の閉塞によって出現する心筋梗塞は左室下壁梗塞であり,上記瘢痕病変等とは出現部位を異に- 18 -すること,③冠動脈攣縮のみで心筋梗塞が生じるか否かについては否定的見解もあること,④P1の解剖を行ったP6医師はP1について急性心筋梗塞の診断をしていないことが認められる。また,本件全証拠によるも,P1が本件疾病発症の際に胸痛等の急性心筋梗塞の特有の症状を訴えていたこと,P1の右冠動脈が100%閉塞した後,再び75%狭窄の状態に戻ったことを認めるに足りる的確な証拠はない。さらに,P1が急性心筋梗塞により致死的不整脈を発症したとすると,前記2(4)オのとおり本件血液のクレアチニン値(Cr)及びヘマトクリット値(Hct)が上昇していることを合理的に説明することができない(証人P7【10 筋梗塞により致死的不整脈を発症したとすると,前記2(4)オのとおり本件血液のクレアチニン値(Cr)及びヘマトクリット値(Hct)が上昇していることを合理的に説明することができない(証人P7【10ないし12頁】参照。 )したがって,P1が急性心筋梗塞により致死的不整脈を発症した旨の被告の主張及びこれに沿うP8医師の意見書及び証言は採用することができない。 イまた,被告は,P1が陳旧性心筋梗塞を基礎としたリエントリーにより致死的不整脈を発症した旨主張し,P8医師がこれに沿う意見書を提出し,同様の証言をしている。そして,P1の解剖を行ったP6医師も,P1の直接の死因を陳旧性心筋梗塞としている(前記2(5。 ))しかし,前記2(2)によれば,P1は,本件健康診断時において,総コレステロール値,中性脂肪値の上昇について要1年後検査,ALP値,血糖値(食後3時間)の上昇について要精密検査と判定されているものの,心電図は正常範囲で新鮮又は陳旧性心筋梗塞を疑う所見はなかったことが認められるうえ,本件疾病発症に至るまでP1が胸痛を訴えたと認めるに足りる証拠もない以上,前記陳旧性心筋梗塞がいつの時点で発生したものかは不明というほかなく,前記陳旧性心筋梗塞が本件疾病発症の直接の原因となったとは考え難い(証人P8【2,3頁】参照。また,本件全証拠によるも,P1の心肺停止の原因が陳旧性心筋梗)塞を基礎としたリエントリーによる致死的不整脈であると認めるに足りる的確な証拠は存在せず,一般論として陳旧性心筋梗塞を発症している者がリエントリーにより致死的不整脈を発症する可能性があることが認められるとしても,前記(1)のとおり,P1は,高温下の業務に従事して,体重の5%を超える脱水状態となったうえ,多臓器不全等を発症するとともに心肺停止状態となっていることに照 る可能性があることが認められるとしても,前記(1)のとおり,P1は,高温下の業務に従事して,体重の5%を超える脱水状態となったうえ,多臓器不全等を発症するとともに心肺停止状態となっていることに照らすと,上記リエントリー発症の可能性をもって,P1の致死的不整脈の発症が脱水症及び熱中症に起因するものであることを否定することはできない。 ちなみに,前記2(5)イによれば,P6医師は,本件疾病発症とアスファルト工事との関係について「アスファルト工事が高温作業下で行われていたとすれ,ば,脱水現象などにより,血栓が出来やすく,陳旧性心筋梗塞に伴う併発症状を呈した可能性が否定できない」として,P1が脱水から死亡に至った可能性を。 否定まではしていない。 以上によれば,P1が陳旧性心筋梗塞を基礎としたリエントリーにより致死的不整脈を発症した旨の被告の主張,P8医師の意見書及び証言は採用することができない。 小括以上の検討結果によれば,P1は,アスファルト工事という「暑熱な場所における- 19 -業務」に従事中,熱中症を発症したうえ,致死的不整脈を発症し,死亡したものと認めることができるところ,当該判断を覆すに足りる特段の反証はない。そうだとすると,P1の本件疾病発症は業務に起因すると認めるのが相当である。 第4結語以上によれば,P1の本件疾病を業務に起因するものではないとして,被告が原告に対してした労災保険法による遺族補償給付及び葬祭料の支給をしない旨の処分は違法であるのでこれを取り消すこととし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第36部裁判長裁判官難波孝一裁判官山口均裁判官矢野明 判長 裁判官難波孝一 裁判官山口均 裁判官矢野明
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