平成25(行ウ)8 大垣市違法公金支出返還請求事件

裁判年月日・裁判所
平成27年1月8日 岐阜地方裁判所
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判決文本文12,397 文字)

主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由 第1 請求 1 被告は,別紙支出目録の「氏名」欄記載の者に対し,同目録の「特別車両料金」欄記載の各金員を請求せよ。 2 訴訟費用は被告の負担とする。 第2 事案の概要本件は,岐阜県大垣市(以下,単に「大垣市」という。)が平成24年度に行政視察等を行った別紙支出目録の「氏名」欄記載の市議会議員やこれに随行した職員(以下「本件議員等」という。)に対して同目録の「特別車両料金」欄記載の各金員(以下「本件特別車両料金」という。)を支払ったことに関し,大垣市の住民である原告らが,本件議員等は上記行政視察等に際して特別車両(いわゆるグリーン車)を利用しておらず,法律上の原因なく本件特別車両料金を受領しているため,大垣市に対し同料金相当額の不当利得返還義務を負っているにもかかわらず,被告がその返還請求を怠っていると主張し,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,被告において,本件議員等に対し,同料金相当額の各金員をそれぞれ返還請求するよう求めた事案である。 1 前提事実(争いがない事実並びに後掲証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実) 当事者等ア原告らは,いずれも大垣市の住民である。 イ被告は,大垣市長である。 ウ本件議員等は,いずれも平成24年度において大垣市議会議員又は大垣市職員であった者である。 大垣市における旅費支給に関する規定(乙1,2) ア大垣市においては,地方自治法203条に基づき,大垣市議会議員の議員報酬,費用弁償等に関する条例(昭和31年条例第8号。乙1)が定められ,同条例4条は,議員がその する規定(乙1,2) ア大垣市においては,地方自治法203条に基づき,大垣市議会議員の議員報酬,費用弁償等に関する条例(昭和31年条例第8号。乙1)が定められ,同条例4条は,議員がその職務のため市外に出張した場合の費用弁償の額は,原則として,大垣市職員の旅費に関する条例(昭和31年条例第6号。以下「職員旅費条例」という。乙2)に基づき市長に支給される旅費額に相当する額を支給する旨規定している。 イ職員旅費条例は,職員(市長を含む。)が出張した場合等に支給される旅費に関し,以下の定めをおいている(乙2)。 第6条旅費の種類は,鉄道賃(中略)とする。 2 鉄道賃(中略)は,それぞれ鉄道旅行(中略)について行程に応じ旅客運賃等により支給する。 (以下略)第9条概算払にかかる旅費の支給を受けた旅行者は,当該旅行を完了した後7日以内に旅費の精算をしなければならない。 2 前項の規定による精算の結果過払金のあった場合には直ちに当該過払金を返納しなければならない。 第10条鉄道賃の額は,旅客運賃及び急行料金並びに座席指定料金による。この場合において,特別車両料金を徴する客車を運行する線路による片道100キロメートル以上の旅行をする場合には,本文に規定するほか,特別車両料金を支給する(以下「本件特別車両料金規定」という。)。 (以下略)第19条特別の事情により定額を支給する必要がないと認めるときは,旅費の全部又は一部を支給しないことができる。 (2項略) 3 職員が別表で定める職務区分を異にする者(市議会議員及び各種委員を含む。)と共に宿泊を伴う旅行をする場合は,上位の職務区分に該当する旅行者の旅費に相当する旅費を支給することができる。 (以下略)附則4条第10条第1項後段の適用については,当分 委員を含む。)と共に宿泊を伴う旅行をする場合は,上位の職務区分に該当する旅行者の旅費に相当する旅費を支給することができる。 (以下略)附則4条第10条第1項後段の適用については,当分の間,同条同項後段中「特別車両料金を徴する」とあるのは,「別表の職務区分1(注記:市長・副市長・教育長)に該当する者(当該職員と共に宿泊を伴う旅行をする者を含む。)が,特別車両料金を徴する」とする。 ウ職員旅費条例に基づき,大垣市職員の旅費に関する施行規則は,職員旅費条例19条に関し,以下の定めをおいている(乙7)。 第10条条例第19条の規定に基づき,次の各号に該当する場合は,当該各号に定める基準により旅費の支給を調整する。 (以下略) 本件職員らによる行政視察と本件特別車両料金の支給(乙6の1ないし3,弁論の全趣旨)ア本件議員等(ただし,Aを除く。)は,それぞれ,別紙支出目録の「期間」欄記載の各期間において,同目録の「行政視察等」欄記載の各行政視察等のため,同目録の「旅行先」欄記載の各旅行先へ旅行した。その際,本件議員等は,いずれも特別車両を使用しなかった。 イ大垣市は,上記各旅行について,本件議員等に対し,旅費として別紙支出目録の「旅費」欄記載の各金員を支給した。同金員のうち同目録の「特別車両料金」欄記載の金員(ただし,Bについては1万5000円)は,本件特別車両料金規定に基づき,特別車両料金として支給されたものである。ただし,Aについては,実際には旅行をしなかったため,上記金員が返納されている。 ウ本件議員等のうちの一部は,平成25年3月15日,大垣市に対し,既に受領済みの平成23年度分の特別車両料金の返還を申し出たが,大垣市はその受け取りを拒否した。 住民監査請求及び本件訴訟提起(甲1の1な のうちの一部は,平成25年3月15日,大垣市に対し,既に受領済みの平成23年度分の特別車両料金の返還を申し出たが,大垣市はその受け取りを拒否した。 住民監査請求及び本件訴訟提起(甲1の1ないし1の5,弁論の全趣旨)ア原告らは,それぞれ,平成25年4月2日,平成24年度中に特別車両料金の支給を受けた,本件議員等を含む全ての職員等に関し,大垣市が平成2 4年度中に特別車両料金を支給した行為,当該各支給金額について行う支出負担行為,支出命令その他一切の行為について,違法又は不当な公金の支出に該当すると主張して,大垣市監査委員に対し,特別車両料金の支給を受けた者からその返還(精算)を受けることなどの勧告をするよう求める住民監査請求をした。 イ大垣市監査委員は,平成25年5月22日,本件特別車両料金は職員旅費条例10条1項等に基づいて支給されたものであり,違法又は不当な公金の支出であるとは認められないとして,上記各住民監査請求をいずれも棄却した。 ウ原告らは,同年6月21日,本件訴訟を提起した。 2 争点及びこれに対する当事者の主張 本件特別車両料金の支給が違法か否か(原告らの主張)職員旅費条例は,実際に特別車両を利用しなかった者に対する特別車両料金の支給を許容していない。本件特別車両料金の支給は違法であり,法律上の原因なく支払われたものである。 ア本件特別車両料金規定は,定額支給方式ではなく,実際に特別車両を利用した場合に限り,特別車両料金を支給する旨を定めた規定である。 すなわち,職員旅費条例9条によれば,概算払に係る旅費の支給を受けた旅行者は,過払金があった場合には直ちにこれを精算しなければならないとされており,同条は,旅費の支給に関し実額精算を義務付けている。このような実額精算の原 条によれば,概算払に係る旅費の支給を受けた旅行者は,過払金があった場合には直ちにこれを精算しなければならないとされており,同条は,旅費の支給に関し実額精算を義務付けている。このような実額精算の原則や鉄道賃について「定額」である旨明記されていないことなどに照らせば,本件特別車両料金規定も,実際に特別車両を利用した場合に限り,特別車両料金を支給する規定と解するべきである。また,職員旅費条例を解釈するに当たっては最小経費最大効果原則(地方自治法4条1項)を逸脱しないようにしなければならないところ,仮に本件特別車両料金規定が,特別車両利用の有無にかかわらず特別車両料金を定額支給する規定だと解すると,同規定は支給する必要性も合理性もない金銭を支給する内容ということになり,同原 則に反する違法な規定であることになる。 被告は,旅費の算定・支給に係る事務負担の増大等を防ぐためには定額支給方式が合理的であって,本件特別車両料金規定は定額支給方式を採っていると主張する。しかしながら,旅費の算定がインターネットで検索することで瞬時に行えるようになっており,現に大垣市議会事務局の現在の運用として,行政視察等の際には,各議員に対し特別車両を使用するか否かについての意思確認を事前に行った上で,使用の有無に応じて乗車券等を手配していることからすれば,実額精算方式であっても事務負担は大きくないのであるから,定額支給方式が合理的であるという根拠はない。仮に実額精算により何らかの事務負担の増大が生じるとしても,その事務負担軽減の利益は,税金の公正・適正な使用という利益に優るものではない。 また,後述の羽島市事件判決以降,岐阜県内の各市では特別車両料金の支給に関する運用が見直され,現在,実際に利用していない特別車両料金を支払っているのは大垣市だけになっ 益に優るものではない。 また,後述の羽島市事件判決以降,岐阜県内の各市では特別車両料金の支給に関する運用が見直され,現在,実際に利用していない特別車両料金を支払っているのは大垣市だけになっている。また,近時では,不況等による国民の購買力の低下や少子高齢化等による将来に対する不安などにより,公金の使い道に対する国民の関心は飛躍的に強くなっており,そのような世論の姿勢を反映し,司法もまた公金支出に対して厳しい立場をとるようになっている。 被告は,職員旅費条例が定額支給方式を採用していることを前提として,後述の大垣市事件判決等を根拠に,定額支給方式における「標準的な実費の額」をどのように定めるかは大垣市議会の裁量判断であり,特別車両料金を含めた金額の旅費の支給もその裁量の範囲内にあると主張する。しかしながら,大垣市事件判決以降,上記ものであり,現在においては,特別車両を利用しないのに特別車両料金を支出することが正当化されるような状況は全く存在しない。本件特別車両料金規定が定額支給方式を定めたものであると解することはできない。 また,仮に本件特別車両料金規定が定額支給方式を採っているとしても,職員旅費条例19条1項は,特別の事情により定額を支出する必要がない と認めるときは,旅費の全額又は一部を支給しないことができると定めており,同項は,旅費法46条1項と同じく,定額支給額が実際の旅費額と極端に食い違う場合における調整規定であると解される。定額支給によって特別車両料金分の支給を受けながら特別車両を利用しなかった場合は,定額支給額と実際の旅費額とが極端に食い違う場合に該当するから,特別車両を利用しなかった本件議員等については,上記「特別の事情により定額を支出する必要がない」ときに該当するため,本件特別車両料金を支給 支給額と実際の旅費額とが極端に食い違う場合に該当するから,特別車両を利用しなかった本件議員等については,上記「特別の事情により定額を支出する必要がない」ときに該当するため,本件特別車両料金を支給すべきではなく,同料金の支給は法律上の原因を欠くものである。 (以下「大垣市事件判決」という。)では,本件特別車両料金規定に基づく特別車両料金の支出の違法性を否定する旨の判決が言い渡されている。しかし,(以下「羽島市事件判決」という。)では,羽島市における同様の規定による特別車両料金の支出が,「任命権者は,旅行者が公用の交通機関,宿泊施設を利用して旅行した場合その他当該旅行における特別の事情により,又は当該旅行の性質上この条例の規定による旅費を支給した場合には,不当に旅行の実費を超えた旅費又は通常必要としない旅費を支給することとなる場合においては,その実費を超えることとなる部分又はその必要としない部分の旅費を支給しないことができる。」との規定(羽島市職員の旅費に関する条例23条1項)の趣旨に照らし,法律上の根拠を欠くものであるとして,同料金相当額の不当利得の返還を命ずる判決が言い渡されている。 羽島市の上記規定の趣旨及び文言は,旅費法46条1項とほぼ同一のものであり,羽島市事件判決の判断は,職員旅費条例19条1項にも妥当するものである。 (被告の主張)以下のとおり,職員旅費条例は実額精算を一般的には義務付けておらず,定 額支給方式を採用しており,その標準的な実費の額として特別車両料金を含めた金額を支給することも許される。本件特別車両料金の支給は同条例に基づく適法なものであって,本件議員等に対する不当利得返還請求権は存在しない。 ア職員旅費条例19条1項が「定額」の文言を使用し,例外的に実費額を支給する場合があると規 両料金の支給は同条例に基づく適法なものであって,本件議員等に対する不当利得返還請求権は存在しない。 ア職員旅費条例19条1項が「定額」の文言を使用し,例外的に実費額を支給する場合があると規定していることからすれば,同条例は,実額精算を一般的に義務付けているものではなく,旅行者が現実にどれだけの旅費を必要としたかを都度確認せず,標準的な実費額を支給する定額支給方式を採用していると解すべきである。原告らが実額精算の根拠として挙げる同条例9条の規定は,職員らが旅行命令の全部又は一部を達成できなかった場合を想定した規定であり,原告らが主張するような精算を求める規定ではない。 そして,上記の標準的な実費額をどのように定めるかは大垣市議会の裁量判断であり,特別車両料金を含めた金額の旅費の支給もその裁量の範囲内にあるため,本件特別車両料金の支給は適法である。 原告らは,事情の変化を強調するが,大垣市事件判決当時と現在との間に,社会経済的事情に著しい変化があったとは認められず,大垣市事件判決当時と異なる取扱いをすべき合理的な理由はない。他の市の取扱いは,それぞれ独自の判断によりされているものにすぎず,本件特別車両料金の支給の違法性とは関係ない。 イまた,本件特別車両料金は,職員旅費条例19条1項の「特別の事情により定額を支出する必要がない」旅費に該当しない。 同項は,旅費の調整を規定するものであって,「特別の事情」とは,旅費が二重に支給されるような場合など,明らかに旅費の定額を支給する必要がない場合を指す。そして上記「特別の事情」については,大垣市職員の旅費に関する条例施行規則10条が規定しているところ,特別車両を利用しなかった場合は,同条各号のいずれにも該当せず,上記「特別の事情」には当たらない。原告らは,羽島市事件判決の判断が ,大垣市職員の旅費に関する条例施行規則10条が規定しているところ,特別車両を利用しなかった場合は,同条各号のいずれにも該当せず,上記「特別の事情」には当たらない。原告らは,羽島市事件判決の判断が職員旅費条例19条1項にも妥当すると主張するが,羽島市事件判決は,あくまで羽島市職員の旅費に関する条例について の判決であり,羽島市事件で問題となった同条例23条1項と職員旅費条例19条1項では条文の文言も異なっていることなどからすれば,羽島市事件判決を先例とするのは適切ではない。 不当利得の額について(原告らの主張)本件特別車両料金相当額である。 (被告の主張)争う。不当利得の額は,特別車両に乗車するために増加する実質の特別車両料金であるところ,これは単に旅費請求(支給)明細書の特別車両料金欄に記載された金額そのものではない。 第3 当裁判所の判断 違法か否か)について 本件特別車両料金規定が,特別車両利用の有無にかかわらず旅費を支給する定額支給方式を定めたものか否かア上記前提事実及び証拠(乙2)によれば,職員旅費条例の中には,「航空賃の額は,現に支払った旅客運賃とする。」(12条)など実額で支給することが明確に定められている旅費がある一方,本件特別車両料金規定は「鉄道賃の額は,旅客運賃及び急行料金並びに座席指定料金による。この場合において,(中略)片道100キロメートル以上の旅行をする場合には,本文に規定するほか,特別車両料金を支給する。」と定めるのみであり,片道100キロメートル以上の旅行をするという支給事由に該当する場合には,実際に特別車両を利用したか否かにかかわらず,標準的な実費として,特別車両料金を加えた鉄道賃を支給するという定額支給方式を採用したものと解するのが相当である。 イ いう支給事由に該当する場合には,実際に特別車両を利用したか否かにかかわらず,標準的な実費として,特別車両料金を加えた鉄道賃を支給するという定額支給方式を採用したものと解するのが相当である。 イ原告らは,職員旅費条例9条が旅費の支給一般に関し実額精算を原則としており,このことからすれば,本件特別車両料金規定も,実際に特別車両を利用した場合に限り,支給する趣旨と解するべきであると主張する。 しかしながら,職員旅費条例は,上記の航空賃の定めのように実額で支給する場合にはその旨が明示的に規定されていることに加え,同条例19条1項など,定額支給を原則とし,例外的に実費額を支給する旨の規定もあることからすれば,同条例9条が実額精算を原則として義務付けているということはできない。同条は,定額支給方式の旅費については,日程又は行程等に変更があり,当該旅行が旅行命令と本質的に相違するなどの事情がある場合に限り,旅費の精算を行うことを義務付ける規定と解すべきであり,この点に係る原告らの主張は採用できない。 本件特別車両料金規定は違法か否かア原告らは,本件特別車両料金規定が特別車両利用の有無にかかわらず特別車両料金を支給する規定だと解すると,同規定は支給する必要性も合理性もない金銭を支給するものということになり,最少経費最大効果原則(地方財政法4条1項)に反する違法な規定になると主張する。 イこの点,普通地方公共団体の議会の議員等は職務を行うために要する費用の弁償を受けることができ(地方自治法203条2項),その費用弁償の額及び支給方法は条例でこれを定めなければならない(同条4項)と規定されているところ,弁償を受けることができる費用とは,本来的には実際に職務の執行等に要した費用である実費の弁償にほかならないから,費用弁償の支 方法は条例でこれを定めなければならない(同条4項)と規定されているところ,弁償を受けることができる費用とは,本来的には実際に職務の執行等に要した費用である実費の弁償にほかならないから,費用弁償の支給方式は,費用を要した都度,その実費を計算してこれを支給する実額方式が望ましいものといえる。しかしながら,費用の中には実費の算定が困難なものもあり,また,個々の支出について旅行者に証拠書類の確保を要求し,事務担当者にその確認の負担を負わせることによって事務負担が増大し,かえって原告らの指摘する最少経費最大効果の原則に反する場合もあり得ることから,あらかじめ費用弁償の支給事由を定め,それに該当するときには,実際に費消した額の多寡にかかわらず,標準的な実費である一定額を支給する定額支給方式を採ることも許容され,そして,この場合の支給事由及び標準的な実費としての支給額をどのように定めるかは,費用弁償に関する条例を定める議会の裁量判断に委 ねられているものと解される(最高裁平成2年(行ツ)第91号同2年12月21日第二小法廷判決・民集44巻9号1706頁参照)。ただし,議会に認められる裁量も,当然に無制約のものではあり得ず,費用の弁償においては実費の弁償が原則であることから,実額方式を採用した場合に想定される事務負担量や,定額支給方式による支給額と実額方式による支給額との乖離の程度等を考慮して合理性があるものであることが求められ,それが,著しく不合理である場合には,議会の裁量の範囲を逸脱しており,違法であると認められることになる。 ウそこで本件特別車両料金規定について検討するに,特別車両料金について実額方式を採用すると,公務出張の都度,使用済みの切符など特別車両利用の証拠書類の提出を旅行者に求め,予定されていた行程等と証拠書類を事務担当 別車両料金規定について検討するに,特別車両料金について実額方式を採用すると,公務出張の都度,使用済みの切符など特別車両利用の証拠書類の提出を旅行者に求め,予定されていた行程等と証拠書類を事務担当者において対照するなどして特別車両利用の事実を確認することが必要となり,鉄道を利用した公務出張がごく日常的に行われるものであること(弁論の全趣旨)からすると,相当程度の事務負担の増大を招くといえる。弁論の全趣旨によれば,大垣市では,各委員会の担当書記が議会事務局の旅費担当者から職員旅費条例に従って支給された旅費を預かり,議員等を代行して一括して乗車券等を購入する取扱いをしているが,その場合であっても,当該乗車券等を実際に使用したことを裏付ける資料の提出とその確認は必要である上,このような取扱いに拘束力はなく,議員等が自ら乗車券等を購入することが禁止されるわけでもないのであるから,やはり上記のような事務負担は生じ得るといえる。 このような実額方式を採った場合の事務負担の増大に加え,本件特別車両料金規定によって支給される特別車両料金は,鉄道賃の中の相当額を占めるものの,実額方式が採用されている航空賃などよりは一般的に低額であることも踏まえると,一旦支給した特別車両料金について,旅行後の精算は求めない扱いにすることについては,原告らが指摘するような社会情勢の変化があることを考慮しても,なお現時点において,著しく不合理であるとまではいえない。 エしかしながら,本件特別車両料金規定が片道100キロメートル以上の旅行をする場合に特別車両料金を支給する旨規定しているのは,重い職責を有する議員らに視察等における職務を全うさせるべく,長距離移動による疲労を軽減できるよう配慮する趣旨等から規定されているものと解されることからすると,議員らが事前に特 旨規定しているのは,重い職責を有する議員らに視察等における職務を全うさせるべく,長距離移動による疲労を軽減できるよう配慮する趣旨等から規定されているものと解されることからすると,議員らが事前に特別車両の利用の必要性がないと自ら判断し,特別車両を利用しない旨の申出をしている場合にも,定額支給方式であるからといって特別車両料金を支給する必要性は乏しいといわざるを得ないし,このような場合にまで特別車両料金を支給することは,公務遂行に必要であった実費を弁償するという費用の弁償の趣旨からも著しく逸脱するものである。 また,議員らから事前に特別車両を利用しない旨の申出がある場合には特別車両料金を支給しない扱いにすると,事前に特別車両の使用の有無を確認する事務量が増加し,また,事前確認の際には特別車両を利用しない旨の申出をしていたが,旅行中に,特別車両の利用の必要性が生じた場合などの対応等,一定の事務負担の増加が認められるものの,旅行後に精算をする場合と比べればその事務負担の増加は限られたものであり,現在に,大垣市においては,行政視察等を実施する場合には,各委員会の担当書記が議員らから特別車両の利用の有無を聴取した上で旅行会社を通じて鉄道の切符を手配する扱いをしており(弁論の全趣旨),担当書記が議会事務局の旅費担当者に特別車両の利用の有無を報告することによって,議会事務局の旅費担当者が視察予定の議員等が特別車両を利用するか否かを容易に把握することができ,上記方式による事務量の増加は限定的なものにとどまる。 上記検討したように,議員らが事前に特別車両を利用しない旨の申出をした場合にも,特別車両料金を一律に支給することは,実費支給の原則からの逸脱が著しく,また,事務軽減の必要性も乏しいことからすれば,上記の場合にまで特別車両料金を支給することは合 用しない旨の申出をした場合にも,特別車両料金を一律に支給することは,実費支給の原則からの逸脱が著しく,また,事務軽減の必要性も乏しいことからすれば,上記の場合にまで特別車両料金を支給することは合理性に著しく欠けているといえる。 オ以上の検討からすれば,支給した特別車両料金について旅行後の精算を求めない扱いをすることについては,大垣市の議会に認められた裁量権の範囲 内であると評価することができるものの,議員らが事前に特別車両を利用しない旨の申出をし,実際に特別車両を利用しなかった場合についてまで定額支給をすることは,合理性を著しく欠くものである。したがって,本件特別車両料金規定は,議員らが事前に特別車両を利用しない旨の申出をし,実際に特別車両を利用しなかった場合を除き,定額支給をすることを定めている規定であると限定的に解釈運用すべきであり,議員らが事前に特別車両を利用しない旨の申出をし,実際に特別車両を利用しなかった場合についてまで,特別車両の料金を定額支給した場合には,当該支給は違法に支給されたものとなり,当該議員等は,普通車両の指定席料と特別車両料金との差額を不当に利得したことになる。 職員旅費条例19条1項の「特別の事情」該当性ア原告らは,特別車両料金規定が適用され得る場合であっても,実際に特別車両を利用しないときは職員旅費条例19条1項の「特別の事情により定額を支出する必要がない」ときに該当するため,本件議員等に対する本件特別車両料金の支給は違法であり,法律上の原因を欠くものであると主張する。 イこの点,原告らが主張するとおり,大垣市職員の旅費に関する条例施行規則10条は,その文言上,職員旅費条例19条1項の「特別の事情」について限定列挙していると解することはできず,本件特別車両料金が上記規則10条各号に 張するとおり,大垣市職員の旅費に関する条例施行規則10条は,その文言上,職員旅費条例19条1項の「特別の事情」について限定列挙していると解することはできず,本件特別車両料金が上記規則10条各号に該当しないからといって,職員旅費条例19条1項の適用がないとはいえない。 ウしかしながら,そもそも職員旅費条例19条1項は特別の事情により定額を支出する必要がないときに,旅費の全部又は一部を「支給しないことができる」と定めるにとどまり,これを適用するか否かについては基本的には大垣市の裁量に委ねられているというべきである。 そして,で述べた事情に照らせば,特別車両料金の定額支給が許容される場合において,旅行者が実際には特別車両を利用しなかったときに,同項を適用せず特別車両料金を支給したとしても,それが上記裁量権を逸脱し,違 法となるということはできず,この点に係る原告らの主張は採用できない。 エしたがって,職員旅費条例19条1項を根拠として,本件特別車両料金が不当利得に当たるとする原告らの主張には理由がない。 本件特別車両料金の支給が違法か否か平成24年度に支給された本件特別車両料金について検討すると,当時は,長年にわたり議員等がグリーン車を利用していないという状況において,各委員会の担当書記が,視察予定の議員らの個別的な意向を特に聴取することなく,特別車両ではなく普通車両の指定席を,旅行会社を通じて手配していたことが認められる(甲12の1)。当時の運用においては,視察予定の議員らが,実質的には特別車両の利用の要否の判断をする機会がなく,その判断をしていないから,特別車両料金を定額支給することが違法となる場合には該当しない。 なお,現在,大垣市においては,各委員会の担当書記が視察予定の議員らに事前に特別車両の利用の有無を確 なく,その判断をしていないから,特別車両料金を定額支給することが違法となる場合には該当しない。 なお,現在,大垣市においては,各委員会の担当書記が視察予定の議員らに事前に特別車両の利用の有無を確認し,その意向に沿って特別車両あるいは普通車両の指定席を手配しているから,特別車両を利用しない旨の申出をした議員らに対して特別車両料金を支給することは違法となる。 結語以上によれば,本件特別車両料金は,本件議員等に対し,特別車両料金規定に従って適法に支給されたものであり,これが法律上の原因がなく支給されたものであるとする原告らの主張は,いずれも採用することができない。 なお付言するに,本判決は,定額支給方式を採用する本件特別車両料金規定が議会の裁量の範囲を逸脱しているとまでは認められないと判断するにとどまるものであって,本件特別車両料金規定が政策的に合理的であると判断したものではない。本件議員等に対する本件特別車両料金の支給が違法ではないとしても,公務に要する費用の弁償は本来的には実費によるべきであり,定額支給方式を採る場合であっても,事務負担等も考慮した上で,できる限り実費に近い形となることが望ましいというべきである。特別車両料金が旅費の中でも相当程度の割合を占めていることを考慮すると,現状における特別車両の利用状 況や原告らが主張するような社会情勢の変化等の様々な事情を踏まえ,特別車両料金の支給のあり方について,今後,大垣市の議会においてより合理的な取扱いを採ることができないか議論されることが望ましいというべきである。 2 結論以上によれば,その余の点について判断するまでもなく原告らの請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとお 論以上によれば,その余の点について判断するまでもなく原告らの請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし,訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法61条を適用して,主文のとおり判決する。 主文 岐阜地方裁判所民事第1部 裁判長裁判官唐木浩之 裁判官平山俊輔 裁判官松田康孝

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