令和1(ワ)34855 損害賠償等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和5年8月10日 東京地方裁判所
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判決文本文28,496 文字)

令和5年8月10日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和元年(ワ)第34855号損害賠償等請求事件口頭弁論終結日令和5年7月10日判決 主文 1 被告は、原告に対し、181万0920円及びこれに対する令和2年1月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用はこれを100分し、その3を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告は、原告に対し、5831万2129円及びこれに対する令和2年1月9 日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の概要本件は、被告が運営する㋑大学(以下「本件大学」という。)の医学部(以下「本件医学部」という。)の平成30年度入学試験を受験した原告が、被告に対し、① 被告が、原告について不合格の判定をしたことは、被告の裁量権を逸脱、濫用する違法なものであり、原告の公正な判定を受ける権利又は法律上保護された利益が侵害されたと主張し、不法行為に基づく損害賠償として5611万2129円及びこれに対する令和2年1月9日(不法行為の日の後である訴状送達の日の翌日)から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法所定の年5分 の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに、②被告が、原告が不合格であ るとの虚偽の不合格発表を行ったこと及び記者会見で「特殊な事情」があったため不合格としたと述べたことによって、原告は社会的評価を低下させられ、名誉感情を著しく傷つけられたと主張し、不法行為に基づく損害賠償として220万円及びこれに対する 者会見で「特殊な事情」があったため不合格としたと述べたことによって、原告は社会的評価を低下させられ、名誉感情を著しく傷つけられたと主張し、不法行為に基づく損害賠償として220万円及びこれに対する令和2年1月9日から支払済みまで同法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがないか、後掲の証拠により容易に認定することができる事実)⑴ 当事者ア原告は、平成21年3月に大学(法学部)を卒業後、音楽活動を続けながら塾講師、飲食店スタッフ等として勤務した経験を有する男性で、平成28 年度及び同29年度に医学部を受験したものの不合格となり、本件医学部の平成30年度入学試験を受験した者である(受験当時の年齢32歳)。 イ被告は、本件大学を設置し、本件医学部を運営する学校法人である。 ⑵ 平成30年度大学入学者選抜実施要項平成30年度大学入学者選抜実施要項(平成29年6月1日付け文部科学省 高等教育局長通知)(甲13。以下「本件実施要項」という。)は、文部科学省が、各大学に対し、入学者選抜を適切に実施することを要請するものであり、各大学における入学者受入れの方針(アドミッション・ポリシー)の策定、入試方法、学生募集要項の作成、入学手続等の在り方について定めている。本件実施要項には、要旨、以下のような記載がある。 ア基本方針各大学は、入学者の選抜を行うに当たり、公正かつ妥当な方法によって、入学志願者の能力・意欲・適正等を多面的・総合的に判定する。その際、各大学は、年齢、性別、国籍、家庭環境等に関して多様な背景を持った学生の受入れに配慮する。 イ入学者受入れの方針 入学者受入れの方針(アドミッション・ポリシー)につい 各大学は、年齢、性別、国籍、家庭環境等に関して多様な背景を持った学生の受入れに配慮する。 イ入学者受入れの方針 入学者受入れの方針(アドミッション・ポリシー)については、卒業認定・学位授与の方針及び教育課程編成・実施の方針を踏まえ、それぞれの方針が、これらの方針に基づく教育を受ける学生の選抜としてふさわしいものとなるよう留意して策定する。 アドミッション・ポリシーにおいては、抽象的な「求める学生像」だけで なく、入学志願者に高等学校段階までにどのような力を培うことを求めるのか、そうした力をどのような基準・方法によって評価するのかなどについて、可能な限り具体的に示す。 ウ募集要項等各大学は、アドミッション・ポリシー、募集人員、出願要件、出願手続、 試験期日、試験方法、試験場、入学検定料その他入学に要する経費の種類・額やその納入手続・期限など入学志願者が出願等に必要な事項を決定し、それらを明記した募集要項を平成29年12月15日までに発表する。 エ入試情報の取扱い各大学は、受験者本人への成績開示や、入試方法の区分に応じた受験者数、 合格者数、入学者数等の入試情報の積極的開示に努める。また、試験の評価・判定方法については、可能な限り情報開示に努める。 オ入学者選抜の公正確保入学者選抜は、中立・公正に実施することを旨とし、入試問題の漏洩など入学者選抜の信頼性を損なう事態が生ずることのないよう、学長を中心とし た責任体制の明確化、入試担当教職員の選任における適格性の確保、研修の実施など実施体制の充実を図る。 ⑶ 本件医学部の学生募集要項(平成30年度)被告は、本件医学部の平成30年度入学試験の実施に先立ち、平成30年度の学生募集要項を おける適格性の確保、研修の実施など実施体制の充実を図る。 ⑶ 本件医学部の学生募集要項(平成30年度)被告は、本件医学部の平成30年度入学試験の実施に先立ち、平成30年度の学生募集要項を発表した(乙7。以下「本件募集要項」という。)。本件募集 要項には、入学者選抜の基本方針として、「医学部は、医師・医学者になろうと 努力する学生に対し、6年間で卒業し、ストレートで医師国家試験に合格させるよう教育しますが、単に医師国家試験合格だけを目指すのではなく、国家試験をものともしない、知性と教養と感性溢れる医師・医学者を養成するため、入学者選抜方法として、学力試験のみならず、受験生の感性や医師・医学者となるべき人物・識見・教養を見極めるために、小論文試験・面接試験を課し、 また、小中高に至る活動を知る資料の提出により、総合的な判定に基づき、入学者を選抜します。」との記載があり、年齢や浪人年数を合否判定の考慮要素とする旨の記載はなかった。 ⑷ 本件医学部の平成30年度入学試験被告が実施した本件医学部の平成30年度入学試験には複数の方式のもの があるところ、原告は、同年1月及び2月に、一般入学試験A方式(以下「本件A方式試験」という。)及びセンター・一般独自併用入学試験(以下「本件併用方式試験」という。)を受験した(以下、本件A方式試験及び本件併用方式試験を併せて「本件入学試験」という。)。なお、原告は、本件入学試験のほか、本件医学部の平成30年度入学試験のセンター利用入学試験(以下、「平成3 0年度センター利用試験」という。)も受験した。 本件入学試験の概要、合否判定基準、原告の試験結果等は、以下のとおりである(甲3、5、乙7、弁論の全趣旨)。 ア本件A方式試験 概要 募集人数: 用試験」という。)も受験した。 本件入学試験の概要、合否判定基準、原告の試験結果等は、以下のとおりである(甲3、5、乙7、弁論の全趣旨)。 ア本件A方式試験 概要 募集人数:60名選抜方法:一次試験(以下「本件A方式一次試験」ということがある。)は、調査書及び学力試験の評価を総合的に判断し、一次試験合格者を選抜し、二次試験(以下「本件A方式二次試験」ということがある。)は、小論文試験、面接試験及び一次試験結果を総 合的に判断し、二次試験合格者を選抜する。 一次試験:学力試験(マークシート)、学力試験(記述式)二次試験:小論文、面接一次試験の合否判定基準(以下、「本件A方式一次合否判定基準」という。)定員の最大10倍程度を合格者数の目処とし、学力試験偏差値の序列ご とに、一定順位以下の受験生につき、浪人年数、性別及び調査書記載の評価(○A、A、B、C、D、E)を基準とした合否判定を行う。 1~200位:特別な理由のない限り合格とする。 201位~300位:男3浪C以下不合格、女2浪C以下不合格301位~400位:男2浪C以下不合格、女1浪C以下不合格 401位~500位:男2浪B以下不合格、女1浪B以下不合格501位~600位:男1浪C以下不合格、女1浪A以下不合格601位以下:調査書評価が○AまたはAなどの人物のうちから合格者を検討 原告の試験結果 原告は本件A方式試験について、一次試験で不合格と判定された(以下「本件A方式不合格判定」という。)。 原告の本件A方式一次試験の結果は、500点満点中355点で、順位は216位であった。被告は、原告が社会人として勤務していた期間を浪人期間とみなした上で、上記 判定」という。)。 原告の本件A方式一次試験の結果は、500点満点中355点で、順位は216位であった。被告は、原告が社会人として勤務していた期間を浪人期間とみなした上で、上記の合否判定基準(男3浪C以下不合格)に 従って、原告に対して本件A方式不合格判定を行った。 イ本件併用方式試験 概要募集人数:24名選抜方法:一次試験(以下「本件併用方式一次試験」ということがある。) は、調査書、大学入試センター試験、一般独自試験(学力試験) の評価を総合的に判断し、一次試験合格者を選抜し、二次試験(以下「本件併用方式二次試験」ということがある。)は、小論文・英作文試験、面接試験及び一次試験結果を総合的に判断し、二次試験合格者を選抜する。 一次試験:センター試験、学力試験(マークシート)、学力試験(記述式) 二次試験:小論文、英作文、面接 本件併用方式試験の合否判定基準(以下「本件併用方式合否判定基準」という。)総合得点率80%程度以上及び定員の最大10倍程度を一次試験合格者とする。 二次試験合格者数は定員の2倍程度を目処とし、小論文試験、英作文試験及び面接試験の評価を審査の上、合格者を検討する。具体的には、一次試験の学力成績結果(得点率)の序列順位ごとに、小論文試験、英作文試験及び面接試験の各平均値の合計値を基準として、受験者の性別により異なる方法で合否判定を行う。 小論文試験は、A+、A、B、C、Dの5段階評価とし、それぞれ0.4、0.3、0.2、0.1、0点と点数換算する。 英作文試験については、2名の採点教員が25点満点で採点し、かかる点数に0.01を乗じて点数換算し、評価平均点を算出する。 面接試験については、3人の面接官がA+ 2、0.1、0点と点数換算する。 英作文試験については、2名の採点教員が25点満点で採点し、かかる点数に0.01を乗じて点数換算し、評価平均点を算出する。 面接試験については、3人の面接官がA+、A、A-、B+、B、B-、 C+、C、C-の9段階評価をして、それぞれ5.0、4.5、4.0、3.5、3.0、2.5、2.0、1.5、1.0と点数換算し、評価平均点数を算出する。 小論文試験、英作文試験及び面接試験の合格評価点(最高点5.65点)が2.5点未満の者は不合格として、評価点が2.5点以上の者について、以下の判定基準に従って、合格者を検討する。 (合格者) 1~25位男2.5点以上女3.0点以上合格26~75位男3.0点以上、女3.5点以上合格76~125位男3.5点以上、女4.0点以上合格126~175位男4.0点以上、女4.5点以上合格 原告の試験結果 原告は本件併用方式試験について、一次試験は合格と判定されたが、二次試験で不合格と判定された(以下、「本件併用方式不合格判定」といい、本件A方式不合格判定と併せて「本件不合格判定」という。)。 原告の本件併用方式一次試験の結果は、1250点満点中1113点、順位は20位であった。また、本件併用方式二次試験の小論文試験の評価 は、A、A、B及びC、英作文試験の評価が16点、面接試験の評価がA+、B-及びC-で、合計評価点が3.218点であった。 被告は、原告の合否を検討するに際し、原告が面接試験で、3名の面接官のうち、1名の面接官にC-評価を付けられていたことと、原告の年齢を考慮した上で、本件併用方式不合格判定を行った。 なお、本件併用方式二次試験の面接試 が面接試験で、3名の面接官のうち、1名の面接官にC-評価を付けられていたことと、原告の年齢を考慮した上で、本件併用方式不合格判定を行った。 なお、本件併用方式二次試験の面接試験でC-評価を付けられた受験生は、原告を含めて合計150名おり、このうち本件併用方式合否判定基準を満たす者は原告を含めて2名いたが、被告は、原告以外のもう1名の受験生については合格判定を行った。 ⑸ ㋺規範の公表 一般社団法人㋩(㋺)は、平成30年11月16日、大学医学部における入学試験制度の検証を行った結果として、大学医学部入学試験制度に関する規範(乙1の1・2。以下「㋺規範」という。)を公表した。㋺規範には、要旨、以下の内容が記載されている。 ア大学医学部は入学した学生を、一人の脱落もなく、医療人・医学者として 教育・育成しなければならない責務を負っている。学生の進級・卒業が困難 になる主な理由は、学生の学力不足又は意欲も含めて学生が医学教育に適応できないことである。全国の大学医学部は、かかる理由を勘案して入学試験を行っている。 大学医学部の入学試験制度が適切であるか否かは、国民から見て公平であること(公平性)と国民にとって良い医療人・医学者になり得る人材を確保 すること(人材確保)の2つの尺度から問題点を整理することができ、これらの尺度から外れる入学試験制度は、国民の理解が得られるものではない。 イ一般入学試験においては、入学者選抜は、各大学医学部の教育理念に基づいて定められたアドミッション・ポリシーに従って行われるべきである。 入学者選抜において、入学者が将来どの程度社会への還元を行うことがで きるかといった観点からの評価を加えることも大学な社会的な責務であるが、その評価基準は社会的常 に従って行われるべきである。 入学者選抜において、入学者が将来どの程度社会への還元を行うことがで きるかといった観点からの評価を加えることも大学な社会的な責務であるが、その評価基準は社会的常識を逸脱するものであってはならない。一般入学試験においては、公平性と人材確保の観点から判断すると、浪人年数(年齢)により一律的に判定基準に差異を設けること及び点数操作は不適切であり、決して許容されるものではない。 ⑹ 第三者委員会の設置及び緊急第一次報告書の提出ア第三者委員会の設置被告は、平成30年10月18日、文部科学省の要請を受けて、本件医学部の入学試験における事実関係の調査、不正の存否の調査等を行うことを目的として第三者委員会を設置した(以下「本件第三者委員会」という。)。 イ緊急第一次報告書の提出本件第三者委員会は、平成30年12月3日、被告に対し、本件医学部の平成29年度及び同30年度の入学試験について、要旨、以下の内容を含む「緊急第一次報告書」(甲3。以下「本件第一次報告書」という。)を提出した。 意見 本件医学部の入学試験において、浪人年数を理由とした合否判定基準が定められ、現役生に比べて、浪人や浪人年数が多い受験者が、合否判定上不利益に取り扱われる内容の基準が適用されていることが確認された。 本件医学部の入学試験においてかかる不利益取扱いが行われてきた理由について、被告の教職員に対してヒアリングを行った結果、筆記試験の 実力集団において、より早く一定の学力水準に到達した者を優秀であるものとして合格者として選定することには一定の合理性がある等の説明がされた。 しかしながら、被告が、浪人年数が多い学生の留年状 団において、より早く一定の学力水準に到達した者を優秀であるものとして合格者として選定することには一定の合理性がある等の説明がされた。 しかしながら、被告が、浪人年数が多い学生の留年状況や成績状況等について、被告内外における特段の追跡調査や検証等を行っていたものとは 解されず、受験者が当該浪人年数に至った事由や大学入学後の伸び代を含めた能力には個人差が存在すると想定されるところ、それらに関する個別審査の機会を与えずに、浪人年数に基づく一定の基準のもとに不利益な取扱いがされることに適切な根拠を認めることはできない。アドミッション・ポリシー等において、合否判定において浪人年数が基準とされる旨の 記載がないことに鑑みても、上記の理由が浪人年数による不利益取扱いについての合理的理由であるとは認められない。 浪人年数を基準とした不利益取扱いを内容とする合否判定基準については、合理的理由があるとは認められず、被告の裁量の範囲を逸脱した不適切な取扱いに当たると判断する。 なお、本件実施要項においては、入学試験の合否判定基準について、「公正かつ妥当な方法」によるべきとするのみで、具体的な基準の定めがなく、大学関係者らにおいて、入学試験実施の際における浪人年数の扱いにつき問題意識を持ちづらい状況があったと解される点には汲むべき点があるとも言い得るが、この点を踏まえても、上記の結論は左右されない。 提言 本件医学部の入学試験における浪人年数を理由とした不利益取扱いに合理的理由は認められない。被告において、直ちに本件判定基準の運用を廃止し、平成31年度の入学試験において、公正かつ妥当な方法による入試を確実に実施・遂行すべきである。 ⑺ 本件入学試験結 扱いに合理的理由は認められない。被告において、直ちに本件判定基準の運用を廃止し、平成31年度の入学試験において、公正かつ妥当な方法による入試を確実に実施・遂行すべきである。 ⑺ 本件入学試験結果の再検証 被告は、平成30年12月、原告の本件A方式一次試験における浪人年数による取扱いの差異を合否判定基準から排して再検証し、その結果、原告は、同一次試験につき合格の判定となった。また、被告は、原告の本件併用入試二次試験の合否判定において再検証を行い、原告を追加合格の対象とした。被告は、原告に上記判定結果を通知した。 ⑻ 被告による記者会見被告は、平成30年12月10日、平成29年度及び同30年度の医学部入学試験についての記者会見(甲1。以下「本件記者会見」という。)において、平成30年度に多浪の男子1人を不合格とした理由について「浪人年数に加え、特殊な事情があった」と述べた(以下「本件発言」という。)。 ⑼ 文部科学省による調査についての最終まとめ文部科学省高等教育局大学振興課大学入試室は、大学の医学部医学科の入学者の選抜において不適切な取扱いがされていたことが判明したことを受け、医学部医学科を置く全ての大学を対象として緊急調査を実施し、平成30年10月23日、医学部医学科の入学者選抜における公正確保等に係る緊急調査の中 間まとめ(以下「本件中間まとめ」)を公表し、同年12月14日、医学部医学科の入学者選抜における公正確保等に係る緊急調査結果に関する最終まとめ(乙5。以下「本件最終まとめ」という。)を作成した。本件最終まとめには、要旨、以下のような記載がある。 ア大学入学者選抜実施要項においては、各大学が、入学者の選抜を行うに当 たり、公正かつ妥当な方法によって、入学志願者 )を作成した。本件最終まとめには、要旨、以下のような記載がある。 ア大学入学者選抜実施要項においては、各大学が、入学者の選抜を行うに当 たり、公正かつ妥当な方法によって、入学志願者の能力・意欲・適性等を多 面的・総合的に判定するものとされており、個別具体的な入学者選抜の方法については、この原則に反しない範囲で、各大学のアドミッション・ポリシーに基づく各大学の判断に委ねられる。また、大学入学者選抜実施要項においては、各大学は、アドミッション・ポリシー、募集人員、出願要件、出願手続、試験期日、試験方法など入学志願者が出願等に必要な事項を決定し、 それらを明記した募集要項を一定の時期までに公表するものとされており、募集要項は、入学志願者にとって出願に影響を及ぼす重要な判断材料としての役割を持っている。このような考え方を踏まえつつ、これまでの調査の中で把握した事案について検討した結果、文部科学省としては、少なくとも、募集要項等であらかじめ説明していた試験方法や合否判定基準に反して又 はあらかじめ説明していないにもかかわらず、合理的な理由なく性別、年齢、現役・浪人の別等の属性に応じた一律の得点調整や取扱いの差異の設定などを行うことについては、不適切と判断すべきであると考える。 このことは、募集要項であらかじめ説明すれば、差別的な取扱いも許容されるという趣旨のものではなく、性別、年齢等の属性による取扱いの差異を 設けるならば、募集要項等であらかじめ説明するだけではなく、大学がその合理的な理由を説明できることが必要であるという趣旨である。性別、年齢等の属性により一律に差異を設けるような取扱いは、社会通念上、認められるものではないと考えられる。 イ少なくとも、①合否判定に際して、合理的な ることが必要であるという趣旨である。性別、年齢等の属性により一律に差異を設けるような取扱いは、社会通念上、認められるものではないと考えられる。 イ少なくとも、①合否判定に際して、合理的な理由なく、特定の受験者を合 格又は不合格とすること(合理的な理由なく、成績の順番を飛ばして合格又は不合格とすることを含む。)、②合否判定に際して、合理的な理由なく、性別、年齢、現役・浪人の別、出身地域、居住地域等という属性を理由として一律的に取扱いの差異を設けることについては、募集要項等であらかじめ説明されているか否かを問わず、不適切であると判断すべきである。 ウ入学者選抜における公正性についての基準は必ずしも明文化されておら ず、入学者選抜においてどのような取扱いが不適切であるかの考え方について文部科学省が具体的に示したのは、平成30年10月23日に発表した本件中間まとめが初めてであるところ、調査対象の大学からは、過去の入学者選抜に遡って入学者選抜が不適切であることを論じるべきではないとの指摘もあった。 しかしながら、本件中間まとめは、入学者選抜においてどのような取扱いが不適切であるかの考え方を創設したものではなく、これまでも社会通念上認められてこなかった取扱いを具体的に明文化したものであり、今回の調査において不適切であると指摘されているような事案が、今回の調査や本件中間まとめの発表以前においては適切であったと説明するのは困難である。 3 争点及び争点についての当事者の主張⑴ 本件不合格判定による不法行為の成否(争点1)(原告の主張)ア学校教育法3条に基づく大学設置基準2条の2は、「入学者の選抜は、公正かつ妥当な方法により、適切な体制を整えて行うものとする。」としてお 合格判定による不法行為の成否(争点1)(原告の主張)ア学校教育法3条に基づく大学設置基準2条の2は、「入学者の選抜は、公正かつ妥当な方法により、適切な体制を整えて行うものとする。」としてお り、本件実施要項は、「各大学は、入学者の選抜を行うに当たり、公正かつ妥当な方法によって、入学志願者の能力・意欲・適性等を多面的・総合的に判定する。その際、各大学は、年齢、性別、国籍、家庭環境等に関して多様な背景を持った学生の受入れに配慮する。」と定めている。 本件入学試験は、被告が募集要項を定めて出願者を募集し、出願者が出願 書類の提出とともに検定料等を納付し、被告が受験資格の有無等を審査の上、受験票を送付することによって、出願者において本件入学試験を受験し、被告においてその結果を審査・採点の上合否判定を行うことを内容とする契約が成立するとの契約関係にあり、上記法令等の定めからすると、本件入学試験の出願者は、アドミッション・ポリシー等で説明されていない以上は、性 別、年齢、社会的身分等によって一律に不利益に扱われることはないとの期 待を有しており、原告は、入試要項に基づき信義則に違反しない公正な判定を受ける権利又は法律上保護された利益を有する。 被告は、どのような学生を入学させるかについて、自ら基準を定め、それに従って選抜をすることができる一定の裁量があるが、上記法令等の定めからすると、何らの合理的理由なく年齢を基準として不利益な取扱いをするこ と、特定の受験者だけに対して合否判定基準を一律に適用しないという取扱いをすることは、被告の裁量の範囲を逸脱、濫用する違法なものである。 イ本件A方式不合格判定について被告は、本件A方式一次試験における原告の順位が216位であったにもかかわらず、「男3浪C以下 いをすることは、被告の裁量の範囲を逸脱、濫用する違法なものである。 イ本件A方式不合格判定について被告は、本件A方式一次試験における原告の順位が216位であったにもかかわらず、「男3浪C以下不合格」という合否判定基準により、原告を不合 格と判定した。 原告は2浪であり、「男3浪」以下の条件に当てはまらないが、被告は、原告の高校卒業からの年数を根拠に年齢による差別を行った。仮に、本件A方式不合格判定が原告の浪人年数を理由とするものであったとしても、浪人年数をもって、一律に現役生に比べて厳しい合否判定基準を用いることについ て合理的な理由があるとはいえない。 原告は、本件A方式不合格判定により、本件A方式二次試験を受ける機会を不当に奪われた。原告は、本件併用方式二次試験では合計評価点として3. 218点を獲得したのであるから、本件A方式二次試験を受ける機会を不当に奪われさえしなければ、本件A方式試験で合格していた蓋然性が高かった。 以上のとおり、被告は、年齢や浪人年数を合否判定の考慮要素とすることについて、本件募集要項等で表示していなかったにもかかわらず、原告に対し、何らの合理的理由なく年齢を基準として不利益な取扱いをし、本件A方式不合格判定をしたのであるから、本件A方式不合格判定は、被告の裁量の範囲を逸脱、濫用した違法なものである。 ウ本件併用方式不合格判定について 本件併用方式一次試験における原告の順位は20位で、同二次試験の合計評価点が3.218点であることから、原告は、「1~25位男2.5以上女3.0以上合格」という合否判定基準を満たしていた。 しかしながら、被告は、原告の面接試験がC-評価であったことから、当該面接の評価及び原告の受験当時の年齢を考慮し、原告を不合格と判定し 5以上女3.0以上合格」という合否判定基準を満たしていた。 しかしながら、被告は、原告の面接試験がC-評価であったことから、当該面接の評価及び原告の受験当時の年齢を考慮し、原告を不合格と判定した。 かかる判定は、面接試験でC-評価となった者について、既定の合否判定基準を適用せず、既に換算表に従って点数化されたはずの当該面接試験の評価及び年齢という新たな審査項目を設けて合否判定を行うものであり、面接試験の結果を二重に不利に考慮するものである。このような取扱いは、本件募集要項に記載されておらず、被告内部においても当該取扱いを定める客観的 資料は存在しない。むしろ、本件第一次報告書では、「各年度の合格判定基準が一律に適用された合格判定が行われている。」とされている。 そうすると、本件併用方式不合格判定は、原告のみが合否判定基準を一律に適用されないという差別的な取扱いをするものである。被告は、原告と同じく面接試験でC-評価としながら、合格とした1名について、「検討の結 果、年齢なども考慮し合格としている」と主張しているが、かかる主張は、合否判定基準が一律に適用されるとの本件第一次報告書の内容と矛盾しており、原告の本件併用方式不合格判定の直接の理由は、年齢であるというほかない。 以上のとおり、被告は、年齢や浪人年数を合否判定の考慮要素とすること について、本件募集要項等で表示していなかったにもかかわらず、一律に適用されるはずの本件併用方式合否判定基準を原告に対してだけ適用せず、年齢を直接の理由として本件併用方式不合格判定をしたのであるから、本件併用方式不合格判定は、被告の裁量の範囲を逸脱、濫用した違法なものである。 (被告の主張) ア本件実施要項における大学入学者選抜における「公正」として主に想定さ 定をしたのであるから、本件併用方式不合格判定は、被告の裁量の範囲を逸脱、濫用した違法なものである。 (被告の主張) ア本件実施要項における大学入学者選抜における「公正」として主に想定さ れているのは、入学に関する寄付金等の収受禁止、及び入学者選抜実施方法として一般的にあってはならないこととされる事項(入試問題の漏洩や受験生の不正行為等)の未然防止であると解され、「公正」な大学入学者選抜として、必ずしも学力テストで客観的に明らかになる順位のみを基準とする選抜を実施することが義務付けられているものではない。 平成30年12月14日付けで文部科学省が実施した「医学部医学科の入学者選抜における公正確保等に係る緊急調査」にかかる本件最終まとめがなされるまで、入学者選抜に関する公正性について明文化された基準はなく、どのような取扱いが不適切であるかの考え方が示されたのは、同年10月23日に発出された本件中間まとめが初めてである。また、本件最終まとめに おいて文部科学省が挙げた㋺規範も、同年11月16日に初めて公表されたものである。 したがって、原告が主張する、公正な入学試験を受験し、公正な合否判定を受けるという権利又は法律上保護された利益の具体的内容は、少なくとも本件入学試験実施時点では明確にされていなかったのであり、同時点におい て、原告に対する何らかの権利侵害等の認識を有する余地はなく、被告には故意又は過失のいずれも認められない。 イ大学は、高等教育機関として、学問の自由(憲法23条)の核心をなす大学の自治の保障下にあり、学生は当然に大学の構成員に該当する。その構成員を大学の判断で決定することは、大学の自治の本質を成す事柄であり、結 社の自由に基づき国公立大学と比較してよりその内部自治が の自治の保障下にあり、学生は当然に大学の構成員に該当する。その構成員を大学の判断で決定することは、大学の自治の本質を成す事柄であり、結 社の自由に基づき国公立大学と比較してよりその内部自治が尊重されるべき私立大学においては、よりその自由な判断が尊重されなければならない。 医学部に入学する者は、学部教育の6年間に加え、医師国家試験合格後も10年以上の研鑽・経験を全うするための知力、体力、気力が必要である。 このような医師としての素養の判断要素の一つとして、筆記試験の実力集団 において、より早く一定の学力水準に到達しているか、という点を考慮する ことには合理性が認められる。 また、私立大学医学部入試の場合、入試に合格し入学した者は、当該私立大学医学部の構成員として、将来、その多くが国家試験及び同大学附属病院での臨床研修等を経て、当該私立大学医学部を起点とする研究・医療の担い手となることが期待されるものである。合格時の年齢が若い方が将来医師と して長く働ける可能性が高いのであり、このような点を勘案し、医学部の選抜において、一定数の若手を入学させるとの判断にも合理的な理由がある。 したがって、合否判定にあたり浪人年数を考慮に入れることは、建学の精神や独自の校風による自主性が特に尊重されるべき私立大学である被告の広範な裁量に属するものであり、同裁量判断に合理性も認められることに照 らせば、本件入学試験において浪人年数を考慮する合否判定基準は、受験者を合理的な理由なく単に年齢により差別することにはあたらない。 ウ本件A方式不合格判定について本件A方式一次試験受験者については、合格者定員の約3.3倍に相当する上位200位までの学力試験上位者は、特別な理由がない限り合格とされ、 浪人の有無などを考慮した合 方式不合格判定について本件A方式一次試験受験者については、合格者定員の約3.3倍に相当する上位200位までの学力試験上位者は、特別な理由がない限り合格とされ、 浪人の有無などを考慮した合格審査は、学力試験順位が201位以下の受験生に限り対象とされていた。 本件A方式一次合否判定基準による合格審査の対象となる201位以下の受験生についても、学力試験の結果が無になるわけではなく、学力試験結果に応じて段階的に、学力試験の成績が上位の者ほど、上記各判断要素によ る影響がより抑制される内容の基準により合格審査がなされていた。 以上のとおり、被告においては、浪人生であったとしても、一律にこれらを排除する訳ではなく、浪人年数と成績を組み合わせた上で合否判定基準を設けており、浪人生にも合格の可能性は十分にあるから、被告による選抜基準は、被告の裁量権の範囲内のものと解される。 原告は、平成30年度一般A方式の一次試験の結果は216位であったが、 原告が社会人として勤務していた期間を浪人期間とみなし、不合格の判定をしたものであるところ、かかる取扱いは、合理的理由に基づくものである。 なお、本件A方式二次試験と本件併用方式二次試験は別個独立の試験であるから、原告が本件併用方式二次試験で合格評価点として3.218点を獲得したからといって、原告が本件A方式試験で合格していた蓋然性が高いと はいえない。 エ本件併用方式不合格判定について本件併用方式二次試験では、二次試験の合否判定基準を満たすか否かにより自動的に合否の結論が導かれたものではなく、一次試験の順位と、各試験共通の二次試験で実施される小論文試験、英作文試験及び面接試験の合格評 価点に基づく各合否判定基準を満たす者の中から合格者を検討することによって 導かれたものではなく、一次試験の順位と、各試験共通の二次試験で実施される小論文試験、英作文試験及び面接試験の合格評 価点に基づく各合否判定基準を満たす者の中から合格者を検討することによって決せられていた。 本件募集要項にも、本件医学部においては、被告が求める学生像を念頭に、入学者選抜方法として、学力試験のみならず、受験生の感性や医師・医学者となるべき人物・識見・教養等を見極めるため、小論文試験・面接試験を課 し、また、小中高に至る活動を知る資料の提出により、総合的な判定に基づき入学者を選抜することが基本方針とされている。各試験方式における選抜方法としても、一次選考では調査書、学力試験の評価を「総合的に判断」の上で一次試験合格者を選抜すること、二次選考では小論文試験、英作文試験、面接試験、一次選考結果等を「総合的に判断」の上で二次試験合格者を選抜 することが明記されている。 原告については、本件併用方式一次試験の結果が合格と判定されており、同二次試験の合計評価点が合否判定基準の合格点数を満たしていたものの、面接試験で1名の面接官がC-評価を付けていたことから、当該面接試験の評価及び原告の年齢を考慮し、不合格と判定したのであって、小論文試験、 英作文試験、面接試験、一次選考結果等を「総合的に判断」した結果である。 ⑵ 被告の不合格発表及び本件記者会見による不法行為の成否(争点2)(原告の主張)ア虚偽の不合格発表被告は、原告が本件入学試験に合格していたにもかかわらず、不合格とする旨の虚偽の不合格発表(以下「本件不合格発表」という。)を行った。 合格発表では、合格者の受験番号が公表されるところ、原告の受験番号を知っている原告の家族や予備校関係者等は、本件不合格発表により、原告が本件入 表(以下「本件不合格発表」という。)を行った。 合格発表では、合格者の受験番号が公表されるところ、原告の受験番号を知っている原告の家族や予備校関係者等は、本件不合格発表により、原告が本件入学試験で不合格になったとの事実を当然に知ることができた。 また、原告の受験番号を知らない者であっても、原告が本件医学部を受験していることを知っている者は、時の経過とともに自ずと原告が不合格とな った事実を知ることができ、本件不合格発表は、原告が本件入学試験で不合格になったとの事実を伝播するものである。 そして、原告が2年間仕事をせず、いわゆる専業受験生として医学部受験に励んでいた状況や、当時の原告の年齢が32歳であったことに照らせば、原告が本件入学試験で不合格となったとの事実は、通常の一般人を基準とし たとき、働きもせず、親又は配偶者のすねをかじって勉強したくせに合格できなかった人、医師になる素質が無い人、努力をしても結果が出せない人といったマイナス評価を抱かせるものであり、これを発表したことにより原告の社会的評価が低下したことは明らかである。 したがって、本件不合格発表は、原告の社会的評価を低下させるものであ り、原告に対する名誉毀損に当たり、不法行為を構成する。 仮に、名誉毀損に当たらないとしても、本来合格であったはずの受験生に対して不合格と告げる行為は、社会通念上許される限度を超える侮辱行為であり、原告の名誉感情を侵害するものである。 イ本件記者会見における本件発言 被告は、本件記者会見において、原告を不合格と判定した理由として「浪 人年数に加え、特殊な事情があった」と述べた(本件発言)。 原告は、再判定で合格となった唯一の男性であるため、被告が本件発言に際して原告の氏名を明示していなくても特 定した理由として「浪 人年数に加え、特殊な事情があった」と述べた(本件発言)。 原告は、再判定で合格となった唯一の男性であるため、被告が本件発言に際して原告の氏名を明示していなくても特定が容易であり、原告の家族、知人や周囲にいる人間は、原告が当時「特殊な事情」を抱えていたことから不合格の判定をされたと認識することになる。 そして、本件記者会見にかかる報道を見た通常の一般人を基準にしたとき、本件発言は、原告につき、不合格判定を受けざるを得ないような特殊事情、具体的には人格や経歴、場合によっては思想や信条に問題がある人物であるとの評価を抱かせるものであり、これにより原告の社会的評価が低下したことは明らかである。 仮に本件発言が名誉毀損に当たらないとしても、被告が原告を不合格と判定した理由として「特殊な事情」があると述べ、原告が普通ではない特殊な人物であるかのように報道されたことで、原告は、働きながら音楽活動に力を入れてきた自らの生き方を否定されたように感じ、原告自身の価値意識や感情(いわゆるプライドや自尊心)を大いに傷つけられた。本件発言は、社 会通念上許される限度を超える侮辱行為であり、原告の名誉感情を侵害するものである。 (被告の主張)否認ないし争う。 被告が「虚偽の不合格の通知」をした事実はない。もとより、入学試験の結 果として、合格者の受験番号を表示する行為が、公然と人の社会的評価を低下させるに足りる事実を摘示する行為であるとはいえず、名誉棄損に該当するものではない。 また、被告が、本件記者会見において、原告の不合格について「特殊な事情」という表現を用いたのは、被告の求める学生像を見極めるために様々な要素を 総合的に判定の上合格者を検討するという入学者選抜の基本方針に基づく総 者会見において、原告の不合格について「特殊な事情」という表現を用いたのは、被告の求める学生像を見極めるために様々な要素を 総合的に判定の上合格者を検討するという入学者選抜の基本方針に基づく総 合的な判定・検討の結果、原告が不合格判定となった事情を指す趣旨の発言である。被告は、原告の氏名を開示したわけでもなく、あたかも原告が普通ではない「特殊な人物」であるような発言は一切行っていない。 ⑶ 損害の発生及びその額(争点3)(原告の主張) 被告の不法行為により、原告は以下のとおり、合計5831万2129円の損害を被った。 ア本件不合格判定に係る損害合計5611万2129円慰謝料1000万円被告は、原告が社会人経験を有する浪人生であるという、医学部で学ぶ べき者を選抜するための入学試験において選考基準となるべき学力とは全く無関係な属性を理由に差別を行い、原告を故意に不合格と判定した。 原告は、本件入学試験で合格と判定されていれば、本件医学部に入学し、勉学に励むことができたにもかかわらず、不当な差別が理由でこれが叶わず、配偶者と別離して㋭県での一人暮らしを余儀なくされた。 本件不合格判定は、原告の人生を捻じ曲げるもので、原告に生じた精神的苦痛は極めて大きく、その苦痛を慰謝するに足りる金額は、1000万円を下らない。 本件入学試験及び平成30年度センター利用試験の受験料 10万円原告は、①本件A方式試験の受験料6万円、②本件併用方式試験の受験 料6万円、③平成30年度センター利用試験の受験料4万円、④送金手数料2000円を支出したところ、被告から、消費者機構日本を通じて、本件A方式試験の受験料6万円、送金手数料2000円の支払を受けた。 本件入学試験及び平成 ンター利用試験の受験料4万円、④送金手数料2000円を支出したところ、被告から、消費者機構日本を通じて、本件A方式試験の受験料6万円、送金手数料2000円の支払を受けた。 本件入学試験及び平成30年度センター利用入学試験の受験に要した往復交通費(㋬・㋣間)6000円 本件入学試験及び平成30年度センター利用入学試験の受験のために 購入した参考書・模試代35万円㋥大学への進学及びそれに係る費用4054万9390円原告は、被告に対し、既に㋥大学で1年次を終えているため、本件医学部に再入学する場合には2年次からの編入を認めてほしいとの希望を伝えたが、被告はこれに応じず、本件医学部に入学した際の補償の意向も示 さなかった。そのため、原告は、本件医学部への入学を断念し、配偶者と別居して㋭での一人暮らしをする形での㋥大学への入学を余儀なくされたのであり、㋥大学への進学に要した一切の費用は、本件不合格判定と相当因果関係のある損害である。 a ㋥大学受験のための交通費・ホテル宿泊費等15万円 b ㋭の物件探しのための交通費・ホテル宿泊費等30万円c ㋭への引越しのための交通費・家財の送料等15万円d ㋭宅で必要となる最低限の家具の購入費用 40万円e ㋥大学入学金等44万円入学金28万2000円、㋥大学医学部医学科後援会費(6年分)9 万円、㋥大学医学部医学科同窓会会費(6年分)3万円、㋥大学同窓会会費(6年分)2万円、㋥医学会1万8000円の合計f ㋥大学学費321万4800円1年間につき53万5800円を6年間分g ㋭宅の契約金(敷金・礼金等)12万6440円 h ㋭宅の家賃等475万9200円月 f ㋥大学学費321万4800円1年間につき53万5800円を6年間分g ㋭宅の契約金(敷金・礼金等)12万6440円 h ㋭宅の家賃等475万9200円月額6万6100円を少なくとも6年間分i ㋭宅の水道光熱費 72万円月額1万円を少なくとも6年間分j ㋭での自動車代292万8950円 自動車代52万8950円及び維持費年額40万円を6年間分 k ㋭での生活費936万円月額13万円を少なくとも6年間分l 東京・㋭間の交通費1800万円東京・㋭間の往復費用を10万円、年間30往復(60回搭乗)と仮定し、年額300万円を少なくとも6年間 弁護士費用510万6739円イ本件不合格発表及び本件記者会見に係る損害合計220万円慰謝料200万円原告は、本件不合格発表と本件記者会見における「特殊な事情」という本件発言により、その名誉ないし名誉感情を毀損された。これにより原告 の被った精神的苦痛を慰謝するに足る金額は200万円を下らない。 弁護士費用20万円(被告の主張)否認ないし争う。 ⑷ 損益相殺(争点4) (被告の主張)原告が本件医学部に入学して、仮に6年間で卒業した場合、その間に要する学費等は合計2163万9800円となるところ、原告は、本件不合格判定の結果として、上記学費等の支出を免れたのであるから、その全額を原告が上記⑶アで主張する損害から損益相殺として控除すべきである。 (原告の主張)否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(本件不合格判定による不法行為の成否)について⑴ 本件A方式不合格判定について 原告は、被告が、原告 (原告の主張)否認ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点1(本件不合格判定による不法行為の成否)について⑴ 本件A方式不合格判定について 原告は、被告が、原告に対し、浪人年数ないし年齢を理由に一律に不利益な 取扱いを定める本件A方式一次合否判定基準を適用して、本件A方式不合格判定を行ったことが不法行為に該当すると主張し、被告は、本件A方式一次合否判定基準には合理性があり、同基準を適用して本件A方式不合格判定を行ったことは、私立大学としての入学者選抜における裁量の範囲内である旨反論していることから、以下検討する。 ア被告は、私立学校法3条の定める学校法人であり、本件大学は、学校法人によって設置された私立大学に該当するから、その入学試験の合否判定の基準等、入学者の選抜については、原則として、その設置目的等に応じた広範な裁量が認められるべきである。 もっとも、私立大学は、「法律に定める学校」として公の性質を有するもの と認められる(学校教育法1条、2条2項、教育基本法6条1項参照)から、被告は、公の性質を有する教育機関である本件医学部の入学者の選抜に関しても、憲法及びこれを受けた公法上の諸規定の趣旨を尊重する責務を負う。 そして、憲法14条1項は、性別、社会的身分による差別を禁じており、また、学校教育法3条に基づいて定められた大学設置基準2条の2は、入学者 の選抜は、公正かつ妥当な方法により、適切な体制を整えて行う旨を定めているところ、ここにいう「公正かつ妥当な方法」とは、不合理な差別的取扱いを許容するものではないことはいうまでもない。本件実施要項において、各大学が入学者の選抜を行うに当たり、公正かつ妥当な方法によって、入学志願者の能力・意欲・適正等を多面的・総合的に 理な差別的取扱いを許容するものではないことはいうまでもない。本件実施要項において、各大学が入学者の選抜を行うに当たり、公正かつ妥当な方法によって、入学志願者の能力・意欲・適正等を多面的・総合的に判定し、その際、各大学は、 年齢、性別、国籍、家庭環境等に関して多様な背景を持った学生の受入れに配慮すると定めている(前記第2の2⑵)のも同様の趣旨によるものと解される。 イ本件入学試験については、被告が本件募集要項を公表して出願者を募集し、出願者が出願書類の提出と共に受験料等を納付し、被告が受験資格の有無等 を審査の上、受験票を出願者に送付することによって、被告と出願者との間 に、出願者が本件入学試験を受験した場合、被告において受験の結果を審査し、合否判定を行うことを内容とする契約が成立するものと解される。 前記アのとおり、被告は、公の性質を有する教育機関である本件医学部の入学者の選抜に関し、憲法の平等原則及びこれを受けた公法上の諸規定を尊重し、公正かつ妥当な方法により入学者の選抜を行い、多様な背景を持った 学生の受入れに配慮すべき責務を負うものと解される。そして、本件実施要項には、考慮すべき多様性に係る属性として年齢、性別、国籍、家庭環境が挙げられているところ、上記募集に当たって、これらを合否判定の考慮要素とする旨の表示が皆無である場合には、当該募集は、出願者との関係では、原則として、これらの属性を考慮しないことを内容とするものと解するのが 相当である。なお、浪人年数は、年齢そのものとは異なるが、高校卒業からの年数を考慮するものであるから、実質的には年齢を考慮要素とするものであり、年齢と同様に解すべきである。 他方、出願者にとって、大学の入学試験における合否判定が、その後の人生や職業に影響を与え らの年数を考慮するものであるから、実質的には年齢を考慮要素とするものであり、年齢と同様に解すべきである。 他方、出願者にとって、大学の入学試験における合否判定が、その後の人生や職業に影響を与え得る重大な事項であることはいうまでもなく、出願者 は、被告が、上記のとおり、憲法の平等原則等を尊重し、多様性に配慮した上で公正かつ妥当な方法による入学者の選抜を行うことを前提として、選抜に要する大学側の費用等を負担した上で、出願を行うものと解される。したがって、出願者は、性別、年齢、国籍、家庭環境等の属性を基準として一律に不利益な取扱いをされることはないとの期待を有しており、かかる期待は、 出願者と大学との間の法律関係の前提となり、法的保護に値するものと認められる。 ウ本件A方式一次合否判定基準は、学力試験の順位が201位以下の受験生の合否判定において、一定順位以下の受験生について、浪人年数が一定の年数以上の者を一律に不合格とするというものであり(前記第2の2⑷ア)、 浪人年数という属性を理由に一律に不利益な取扱いをするものといえる。 しかし、本件募集要項には、年齢や浪人年数を合否判定の考慮要素とする旨の記載はなく(前記第2の2⑶)、被告は、本件入学試験の出願者との関係では、本件医学部の入学者の選別に当たり、原則として、年齢や浪人年数を考慮しないことを内容とする募集を行ったものと認められ、これに応募した原告を含む受験生は、年齢や浪人年数を基準として一律に不利益な取扱い をされることはないとの期待を有していたものと推認される。そうすると、被告が、浪人年数という属性を理由に一律に不利益な取扱いを行う本件A方式一次合否判定基準を用いて合否判定を行うことは、自らが行った募集内容に反するものであり、かかる募 ものと推認される。そうすると、被告が、浪人年数という属性を理由に一律に不利益な取扱いを行う本件A方式一次合否判定基準を用いて合否判定を行うことは、自らが行った募集内容に反するものであり、かかる募集に応じた原告の有する法的保護に値する期待を損なうものといわざるを得ない。 この点につき、被告は、医師としての素養の判断要素の一つとして、筆記試験の実力集団において、より早く一定の学力水準に到達していることを考慮することには合理性があり、また、私立大学医学部入試の場合、合格して入学した者は当該私立大学の構成員として研究・医療の担い手となることが期待されるから、将来医師として長く働ける可能性が高い、合格時年齢の若 い者を入学させるとの判断にも合理的な理由があるなどと主張し、(現役+1浪)/(2浪+3浪人以上)の比が高いと、大学の医師国家試験の新卒の合格率が高くなることが示されたとする報告書(乙3)を提出する。 しかし、本件第一次報告書においては、受験者が当該浪人年数に至った経緯や大学入学後の伸び代を含めた能力には個人差が存在すると考えられ、浪 人年数の多寡をもって、一律に現役生に比べて厳しい合否判定基準を用いることについて合理的な理由があるとは直ちには認められないと指摘されている(前記第2の2⑹)ところ、被告からは、この点についての的確な主張立証がなされているとはいえない。 仮に、私立大学医学部入試において、受験生の年齢や浪人年数を考慮する ことについて、一定の合理性があると解する余地があるとしても、本件募集 要項に年齢や浪人年数を合否判定の考慮要素とする旨の記載が一切ないにもかかわらず、浪人年数という属性により一律に厳しい合否判定基準を用いて不利益な取扱いを行う本件A方式一次合否判定基準を用いることにつ 項に年齢や浪人年数を合否判定の考慮要素とする旨の記載が一切ないにもかかわらず、浪人年数という属性により一律に厳しい合否判定基準を用いて不利益な取扱いを行う本件A方式一次合否判定基準を用いることにつき、合理的な理由があると認めることは困難である。 エ以上によれば、被告が、原告に対し、浪人年数が一定の年数以上の者を一 律に不合格とする本件A方式一次合否判定基準を適用して、本件A方式不合格判定を行ったこと(なお、原告は平成28年度及び同29年度に医学部を受験して不合格となっており、本件入学試験当時、いわゆる2浪であったところ、被告は、原告が社会人として勤務していた期間を浪人期間とみなした上で、本件A方式一次合否判定基準を適用しており、原告の年齢も考慮した ものと推認される。)は、被告の裁量を逸脱するものであって違法であり、不法行為を構成する。 ⑵ 本件併用方式不合格判定について原告は、被告が、本件併用方式合否判定基準を満たしていた原告に対し、原告の年齢を考慮して本件併用方式不合格判定を行ったことが不法行為を構成 すると主張し、被告は、本件併用方式不合格判定は、「総合的な判定」を行った結果であると反論するので、以下検討する。 ア前記前提事実のとおり、被告は、一次試験の順位が20位、二次試験の成績が合計評価点3.218点で、「1~25位男2.5点以上」とする本件併用方式合否判定基準を満たしていた原告に対し、面接試験において1名の 面接官がC-評価を付けていたことと原告の年齢を考慮した上で、本件併用方式不合格判定を行ったものである(前記第2の2⑷イ)。そして、本件募集要項には、「入学者選抜方法として、学力試験のみならず、受験生の感性や、医師・医学者となるべき人物・識見・教養を見極めるために、小論文試験・面接 たものである(前記第2の2⑷イ)。そして、本件募集要項には、「入学者選抜方法として、学力試験のみならず、受験生の感性や、医師・医学者となるべき人物・識見・教養を見極めるために、小論文試験・面接試験を課し、また、小中高に至る活動を知る資料の提出により、総 合的な判定に基づき、入学者を選抜します。」との記載があり(前記第2の2 ⑶)、本件入学試験では、学力試験のみならず、小論文試験・面接試験等の総合的な判定に基づき、入学者の選別が行われていたことが認められる。 しかし、本件併用方式試験については、本件併用方式合否判定基準が設けられているところ(前記第2の2⑷イ)、本件第一次報告書では、本件医学部の入学試験において、各年度の合否判定基準が一律に適用された合否判 定が行われている状況が確認されたと報告されており(甲3)、合否判定基準を満たしていたにもかかわらず、総合的な評価に基づき不合格判定とされた受験生が、原告以外にも存在することは伺われない。前記前提事実のとおり、本件併用方式試験二次試験の面接試験でC-評価を受けた受験生のうち、本件併用方式合否判定基準を満たしていた者が原告の他に1名おり、被告は その者については合格判定を行っていること(前記第2の2⑷イ)も併せるなら、被告は、本件併用方式試験の入学者選抜において、原則として、一律に本件併用方式合否判定基準に則った合否判定を行っていたことが推認される。 そうすると、原告の成績が、一次試験の順位が20位、二次試験の成績が 合計評価点3.218点であり、「1~25位男2.5点以上」とする本件併用方式合否判定基準を大きく上回るものであったにもかかわらず、被告が一律に適用されるべき本件併用方式合否判定基準を原告についてのみ適用せず、本件併用方式不合格判 25位男2.5点以上」とする本件併用方式合否判定基準を大きく上回るものであったにもかかわらず、被告が一律に適用されるべき本件併用方式合否判定基準を原告についてのみ適用せず、本件併用方式不合格判定を行った理由は、原告の年齢であることが推認され、本件併用方式不合格判定は、原告の年齢という属性を理由とする不 利益な取扱いであると認められる。 イ前記⑴で判示したとおり、被告は、公の性質を有する教育機関である本件医学部の入学者の選抜に関し、憲法の平等原則及びこれを受けた公法上の諸規定の趣旨を尊重し、公正かつ妥当な方法により入学者の選抜を行い、多様な背景を持った学生の受入れに配慮すべき責務を負うところ、被告が、本件 募集要項において、年齢を合否判定の考慮要素とすることを記載せず、出願 者との関係では、入学者の選別に当たり、年齢を考慮しないことを内容とする募集を行い、これに応じて出願を行った原告は、年齢を基準として一律に不利益な取扱いをされることはないとの期待を有していたものである。そうすると、本件併用方式合否判定基準を満たしていた原告について、一律に適用されるべき本件併用方式合否判定基準を適用せず、年齢という属性を理由 に本件併用方式不合格判定を行ったことは、被告の裁量を逸脱するものであって違法であり、不法行為を構成する。 ⑶ 被告の主張について被告は、本件入学試験の実施時点では、入学者選抜に関する公正性について明文化された基準はなく、文部科学省が本件中間まとめを公表するまで、どの ような取扱いが不適切であるかの考え方が示されていなかったから、被告が本件不合格判定によって原告に対する何らかの権利侵害が生ずることを認識する余地はなく、故意や過失はないと主張する。 確かに、㋺規範の公表は平成30年1 あるかの考え方が示されていなかったから、被告が本件不合格判定によって原告に対する何らかの権利侵害が生ずることを認識する余地はなく、故意や過失はないと主張する。 確かに、㋺規範の公表は平成30年11月16日、本件第一次報告書の提出は同年12月3日で、いずれも、本件入学試験の後である上、本件第一次報告 書には、本件実施要項においては、入学試験の合否判定基準について、「公正かつ妥当な方法」によるべきとするのみで、具体的な基準の定めがなく、大学関係者らにおいて、入学試験実施の際における浪人年数の扱いにつき問題意識を持ちづらい状況があったと解される点には汲むべき点があるとも言い得るとの記載があり(前記第2の2⑹イ)、本件入学試験以前には、浪人年数の取扱 いについて、明確な基準はなかったものと推認される。 しかし、本件実施要項においては、年齢、性別、国籍、家庭環境等に関して多様な背景を持った学生の受入れに配慮することが求められており(前記第2の2⑵)、配慮すべき学生の多様な背景の一つとして、年齢が明記されている。 そうすると、本件入学試験の実施の時点で、被告が、合否判定において浪人年 数ないし年齢を考慮することに合理性があると認識していたとしても、アドミ ッション・ポリシー等で、合否判定において浪人年数や年齢を考慮することを一切明らかにすることなく、浪人年数が一定の年数以上の者を一律に不合格とする合否判定基準を用いることや、合否判定基準を満たしている者について一律に適用されるべき合否判定基準を適用せず、年齢を理由に不合格判定をすることが、社会通念上許容されないものであることは認識可能であったというべ きである。 本件最終まとめでも、本件中間まとめは、入学者選抜においてどのような取扱いが不適切であるかの考え方を をすることが、社会通念上許容されないものであることは認識可能であったというべ きである。 本件最終まとめでも、本件中間まとめは、入学者選抜においてどのような取扱いが不適切であるかの考え方を創設したものではなく、これまでも社会通念上認められてこなかった取扱いを具体的に明文化したものであると指摘され、一連の調査において不適切であるとされた事案が、調査や本件中間まとめの公 表以前においては適切であったと説明するのは困難であるとの見解が表明されていること(前記第2の2⑼)も考慮するなら、上記被告の主張を採用することは困難である。 ⑷ 以上によれば、被告が、年齢や浪人年数を合否判定の考慮要素とすることについて、本件募集要項等で表示していなかったにもかかわらず、本件A方式不 合格判定及び本件併用方式不合格判定を行ったことは、原告に対する不法行為を構成する(以下「本件不合格判定に係る不法行為」という。)。 2 争点2(被告の不合格発表及び本件記者会見による不法行為の成否)について⑴ 本件不合格発表による不法行為の成否原告は、原告が本件入学試験に合格していたにもかかわらず、不合格とする 旨の虚偽の合格発表(本件不合格発表)を被告が行ったと主張し、本件不合格発表を行ったことが原告に対する名誉棄損ないし侮辱行為として不法行為を構成すると主張する。 しかしながら、被告は、本件不合格発表時点では本件不合格判定を行っていた以上、本件不合格発表において虚偽の不合格発表を行ったとは認められない から、上記原告の主張は採用できない。 ⑵ 本件記者会見による不法行為の成否前記前提事実のとおり、被告は、本件記者会見において、多浪の男子1名を不合格とした理由として「浪人年数に加え、特殊な事情があ きない。 ⑵ 本件記者会見による不法行為の成否前記前提事実のとおり、被告は、本件記者会見において、多浪の男子1名を不合格とした理由として「浪人年数に加え、特殊な事情があった」と述べているが(本件発言。前記第2の2⑻)、本件発言によっても、原告の氏名や年齢等、原告個人を特定できる個人情報は開示されていない。原告も、本件発言か ら当該人物が原告であることを特定できる人がいる可能性があると述べるにとどまっており(原告本人)、本件発言から、本件入学試験で不合格となった「多浪の男子1 人」が原告であることを容易に特定できたことを認めるに足りる証拠はない。そうすると、本件発言によって原告の社会的評価が低下したとまで認めることは困難である。 しかし、本件入学試験で不合格となった「多浪の男子1人」が原告であることは、原告自身には理解できることが明らかである。そして、被告が原告につき不合格判定を行った理由について、浪人年数に加えて「特殊な事情」があったとする本件発言の表現は、一般人をして、原告には、浪人年数以外に、医学部への入試において不合格判定を受けざるを得ないような事情として、例えば、 人格や経歴、思想や信条等に問題があるとの評価を抱かせ得るものであり、原告の名誉感情を傷つけるものと認められる。被告が、原告に対し、「特殊な事情」の内容を明らかにしていないこと(甲12)も併せると、本件発言は、社会通念上許される限度を超えた侮辱行為に該当するというべきである。 よって、本件記者会見における本件発言は、原告に対する不法行為を構成す る(以下「本件記者会見に係る不法行為」という。)。 3 争点3(損害の発生及びその額)について⑴ 本件不合格判定に係る不法行為による損害についてア は、原告に対する不法行為を構成す る(以下「本件記者会見に係る不法行為」という。)。 3 争点3(損害の発生及びその額)について⑴ 本件不合格判定に係る不法行為による損害についてア積極損害について 本件入学試験及び平成30年度センター利用試験の受験料 原告は、浪人年数や年齢を理由に不利益な取扱いを受けることをわかっ ていれば、本件入学試験及び平成30年度センター利用試験を受験することはなかったと陳述する(甲12)。かかる陳述内容は、原告が、本件入学試験の受験当時、いわゆる2浪で、32歳であったことに照らしても、首肯できるところである。 したがって、本件併用方式試験の受験料6万円については、本件不合格 判定に係る不法行為と相当因果関係のある損害と認めるのが相当である。 ただし、平成30年度センター利用試験の受験料は、本件不合格判定に係る不法行為と相当因果関係のある損害とは認められない。 本件入学試験及び平成30年度センター利用試験の受験に要した往復交通費(㋬・㋣間) 本件A方式試験及び本件併用方式試験の受験に要した往復交通費(㋬・㋣間)については、本件不合格判定に係る不法行為と相当因果関係のある損害と認められ、その金額は920円(往復電車賃の額460円×2)と認めるのが相当である。ただし、平成30年度センター利用試験の受験に要した往復交通費は、本件不合格判定に係る不法行為と相当因果関係のあ る損害とは認められない。 本件入学試験及び平成30年度センター利用試験の受験のために購入した参考書・模試代原告が本件入学試験及び平成30年度センター利用試験の受験のために購入した参考書・模試代として主張する費用については、本件不合格判 定に係る不法行為と相当因果関係のあ 入した参考書・模試代原告が本件入学試験及び平成30年度センター利用試験の受験のために購入した参考書・模試代として主張する費用については、本件不合格判 定に係る不法行為と相当因果関係のある損害と認めることは困難である。 ㋥大学への進学及びそれに係る費用原告が㋥大学に進学したことは、本件不合格判定を受けたことと無関係ではないが、進学先を㋥大学としたことは、原告自身の選択であり、㋥大学への進学及びそれに係る費用については、本件不合格判定に係る不法行 為と相当因果関係のある損害とは認められない。 以上によれば、原告が主張する積極損害のうち、本件不合格判定に係る不法行為と相当因果関係のある損害は、合計6万0920円と認めるのが相当である。 イ慰謝料について原告は、本件A方式試験では、いわゆる2浪であったことに加えて社会人 として勤務していた期間を浪人期間とみなされ、浪人年数を基準に一律に不利益な取扱いを行う本件A方式一次合否判定基準を適用され、浪人年数ないし年齢という属性を理由に本件A方式不合格判定を受けて、本件A方式二次試験の受験機会を失ったものである(ただし、本件全証拠によっても、原告が本件A方式二次試験を受験していれば、合格判定を受けることができたと まで認めることは困難である。)。 また、原告は、本件併用方式試験では、本件併用方式合否判定基準を大きく上回る成績であり、同基準に従えば合格判定を受けるべきだったにもかかわらず、一律に適用されるべき同基準を適用されず、年齢という属性を理由に本件併用方式不合格判定を受けて、本件医学部への入学機会を失ったもの である。 以上の事情に加え、本件に現れた一切の事情を勘案すれば、本件不合格判定に係る不法行為より原告が被った精神的苦痛に 本件併用方式不合格判定を受けて、本件医学部への入学機会を失ったもの である。 以上の事情に加え、本件に現れた一切の事情を勘案すれば、本件不合格判定に係る不法行為より原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料の額は、150万円と認めるのが相当である。 ⑵ 本件記者会見に係る不法行為による損害について 原告は、本件発言により精神的苦痛を被ったものと認められ、これに対する慰謝料の額は、10万円と認めるのが相当である。 ⑶ 弁護士費用について被告の各不法行為と因果関係のある弁護士費用の額は、併せて15万円と認めるのが相当である。 ⑷ 小括 以上によれば、損害額の合計は181万0920円である。 4 争点4(損益相殺)について被告は、本件不合格判定の結果、原告は本件医学部の学費(6年間の合計2163万9800円)の支出を免れており、その全額について、原告主張の本件不合格判定に係る不法行為の損害から損益相殺として控除すべきであると主張す る。 しかしながら、上記3のとおり、本件不合格判定に係る不法行為と相当因果関係を有する原告の損害は受験料、受験に要した往復交通費及び慰謝料であるところ、原告が支出を免れた本件医学部の学費が、かかる損害について、損益相殺の対象になるものとは認められない。 したがって、被告の主張は採用できない。 第4 結論よって、原告の請求は、主文の限度で理由があるからその限度でこれを認容し、その余の請求は理由がないから棄却することとして、主文のとおり判決する。なお、仮執行免脱宣言は相当でないからこれを付さないこととする。 東京地方裁判所民事第35部 裁判長裁判官関根澄子 裁判官 とおり判決する。なお、仮執行免脱宣言は相当でないからこれを付さないこととする。 東京地方裁判所民事第35部 裁判長裁判官 関根澄子 裁判官 桐谷康 裁判官 河口嵩朋

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