令和5(行ウ)2 里親委託措置解除処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
令和7年3月24日 津地方裁判所
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判決文本文21,852 文字)

主文 1 本件各訴えのうち、里親委託措置を解除する処分の取消しを求める部分をいずれも却下する。 2 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求の趣旨 1 三重県鈴鹿児童相談所長が令和4年12月16日付けで原告Aに対してした児童福祉法27条1項3号の規定による里親委託措置を解除する旨の処分を取り消す。 2 三重県鈴鹿児童相談所長が令和4年12月16日付けで原告Bに対してした児童福祉法27条1項3号の規定による里親委託措置を解除する旨の処分を取り消す。 3 原告Aが、令和2年12月5日付け里親委託措置決定に基づくCに対する、及び令和3年4月28日付け里親委託措置決定に基づくDに対する里親の地位 をそれぞれ有することを確認する。 4 原告Bが、令和2年12月5日付け里親委託措置決定に基づくCに対する、及び令和3年4月28日付け里親委託措置決定に基づくDに対する里親の地位をそれぞれ有することを確認する。 5 被告は、原告Aに対し、440万円並びにうち330万円に対する令和4年 12月16日から、及びうち110万円に対する令和5年1月17日から、それぞれ支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 6 被告は、原告Bに対し、440万円並びにうち330万円に対する令和4年12月16日から、及びうち110万円に対する令和5年1月17日から、それぞれ支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の概要処分行政庁は、児童福祉法27条1項に基づく里親委託措置により原告らに委託していた児童2名につき、令和4年12月16日付けで里親委託措置を解除した( 事案の概要等 1 事案の概要処分行政庁は、児童福祉法27条1項に基づく里親委託措置により原告らに委託していた児童2名につき、令和4年12月16日付けで里親委託措置を解除した(以下「本件解除」という。)。本件は、原告らが、主位的に本件解除の取消しを求め(以下「本件取消請求」という。)、予備的に公法上の法律関係の 確認訴訟として前記児童らの里親たる地位にあることの確認を求める(以下「本件確認請求」という。)とともに、本件解除及び前記児童らとの面会通信制限が違法であることを理由として、国家賠償法1条1項に基づき、原告らそれぞれにつき損害賠償金440万円並びにうち330万円に対しては不法行為(本件解除)の日である令和4年12月16日から、及びうち110万円に対 しては不法行為(面会通信制限)の日である令和5年1月17日から、それぞれ支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める(以下「本件国賠請求」という。)事案である。 2 前提事実争いのない事実、当裁判所に顕著な事実並びに後掲各証拠(以下、書証番号 は特記しない限り枝番を含む。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実は、次のとおりである。 (1)当事者等ア被告は、三重県鈴鹿児童相談所(以下「鈴鹿児相」という。)を設置する地方公共団体であり、同所長は、その長(処分行政庁)である。 (争いなし) イ原告A及び原告Bは、ともに養育里親(児童福祉法6条の4第1号)として登録を受けた夫婦であり、養子縁組里親(同2号)登録も行っていた。 (原告A本人、弁論の全趣旨)ウ Cは、平成30年2月23日生まれの女児であり、Dは、令和元年5月16日生まれの女児である(以下、C及びDを併せて「本件児童ら」とい う 録も行っていた。 (原告A本人、弁論の全趣旨)ウ Cは、平成30年2月23日生まれの女児であり、Dは、令和元年5月16日生まれの女児である(以下、C及びDを併せて「本件児童ら」とい うことがある。)。本件児童らは、親権者である実母を同じくする姉妹であ る。(争いなし)(2)里親委託措置の経緯原告らは、令和2年12月5日付けでCにつき、令和3年4月28日付けでDにつき、児童福祉法27条1項3号に基づき、それぞれ原告らを里親とする里親委託措置(以下「本件里親委託措置」という。)を受けた。 その後、原告らは、後記(3)イの一時保護決定に至るまで、自宅で本件児童らを養育していた。(争いなし)(3)本件解除に至るまでの経緯ア令和4年7月23日、Cが原告らの自宅で転倒し、その後、前歯が抜け落ちるという出来事があった(以下「本件事案」という。)。原告Aは、同 日中にCに歯科クリニックを受診させた上、同月25日には、本件児童らを保育園に登園させた。(争いなし)イ鈴鹿児相は、令和4年7月26日、本件児童らの通園先の保育園から、Cの前歯が抜けており、身体にあざが生じている旨の通告を受けた。職員が出動したところ、Cに前歯1本の完全脱臼及び1本の亜脱臼並びに左前 腕、腰部及び下顎の皮下出血を認めたことから、処分行政庁は、本件児童らの安全に係る調査のため、同日付けで本件里親委託措置を停止し、同人らを一時保護する決定をした。(甲3、乙1、2、3、31)ウ鈴鹿児相は、上記イの本件委託措置解除後、令和4年11月にかけて、数回にわたり原告らとの面談並びに本件児童らとの面談及び司法面接等の 調査を実施した(以下「児相調査」という。)。(乙11ないし15)エ処分行政庁は、令和4年12月16日 11月にかけて、数回にわたり原告らとの面談並びに本件児童らとの面談及び司法面接等の 調査を実施した(以下「児相調査」という。)。(乙11ないし15)エ処分行政庁は、令和4年12月16日付けで本件里親委託措置を解除した(本件解除)。(甲5)(4)本件解除後の状況及び本件訴えの提起ア鈴鹿児相から本件事案について報告を受けた被告(三重県庁・子育て支 援課)は、令和4年12月27日、本件児童らにつき、里親による被措置 児童等虐待の疑いに係る調査を開始した(以下「被告調査」という。)。被告は、令和5年3月3日、原告ら代理人に対し、被措置児童等虐待であると判断する確証は得られなかった旨の調査結果を報告した。 (乙16、23、24)イ原告Aは、令和4年10月頃から、Cに対する傷害の被疑事実について 三重県警による捜査を受けたが、津地方検察庁四日市支部は、令和5年3月27日、原告Aを不起訴とした。(原告A本人、甲13)ウ原告らは、令和5年3月18日、本件訴えを提起した。(当裁判所に顕著な事実) 3 関係法令の定め 別紙のとおり(本件解除時点のもの) 4 争点(本件取消請求について)(1)本件解除の処分性及び本件解除を争う原告らの原告適格の有無(2)本件解除に係る処分の違法性(取消事由)の有無 (本件確認請求について)(3)原告らの本件児童らに対する里親の地位についての確認の利益の有無(4)原告らに本件児童らに対する里親の地位が認められるか否か(本件国賠請求について)(5)原告らと本件児童らとの間の面会通信制限及び本件解除の国家賠償 法上の違法性並びに処分行政庁の過失の有無(6)損害の発生及び金額 (本件国賠請求について)(5)原告らと本件児童らとの間の面会通信制限及び本件解除の国家賠償 法上の違法性並びに処分行政庁の過失の有無(6)損害の発生及び金額 5 争点に対する当事者の主張の要旨(1)本件解除の処分性及び本件解除を争う原告らの原告適格の有無(原告らの主張) 本件解除は抗告訴訟の対象となる処分(行政事件訴訟法3条2項)に 当たり、その取消しにつき原告らは原告適格(同法9条1項)を有する。 ア処分性について里親の候補者は、あらかじめ里親名簿に登録した上で里親委託措置を受けることで、初めて特定の児童との間で里親・里子関係を形成することになり、里親委託措置を経ず任意に養育里親として里子を預か ることはできないから、里親委託措置によって里親としての法的地位(具体的には、里子との安定的な生活の維持に係る期待権や、里子に対する監護措置権を含む。)を得たといえる。本件解除は、このような原告らの法的地位を一方的に喪失させるものである以上、抗告訴訟の対象である処分に当たる。 イ原告適格について少なくとも里子との間で将来的な養子縁組を希望している里親については、里親委託措置に伴い、里子との安定的な生活が維持されることについての期待権が生じている。里親委託措置の解除は、里親のこのような期待権を一方的に奪うもので、かつ、里子に対して有してい た監護措置権(児童福祉法47条3項)を制限するものでもあるから、本件解除により里親に対する一方的な権利制限が生じているものとして、原告らはその取消しを求めるにつき法律上の利益を有するといえる。 (被告の主張) ア処分性について児童福祉法は 解除により里親に対する一方的な権利制限が生じているものとして、原告らはその取消しを求めるにつき法律上の利益を有するといえる。 (被告の主張) ア処分性について児童福祉法は、特定の里親に児童を委託することを決定する手続を設けていない。また、児童福祉施設の長に対して児童を受託する義務を負わせているのと異なり(同法46条の2第1項)、里親に対して児童の受託義務を課す旨の規定を置かず、かえって養育里親への委託は、 養育里親となることを希望する者に対してのみすることとしている (同法6条の4)。これは、特定の要保護児童の養育を受託するか否かは、事柄の性質上、委託の申込みを受けた里親の意思に委ねられるべきものであって、行政機関が一方的に決定することは相当でないとの趣旨によるものである。このような法の構造及び趣旨に照らすと、知事等の行政機関と児童を受託した里親との関係は、民法上の準委任に 準じた公法上の契約関係とみるのが相当であって、公権力の行使によって里親としての地位を付与するものではない。里親委託措置がこのような法的性質を有する以上、里親委託措置の解除も、公権力の行使によって里親としての地位を喪失させるものではないから、本件解除は抗告訴訟の対象となる処分に当たらない。 イ原告適格について里親委託措置又は本件解除は、児童の親権者又は未成年後見人の権利に制限を加え、又は同制限を解除する法的効果を有するにすぎず、里親の権利又は法律上保護された利益を侵害し、又は必然的に侵害されるおそれがあるとはいえないから、原告らに原告適格は認められな い。原告らは、本件解除により、里子との安定的な生活が維持されることに対する期待が失われ、里子に対する監護措置権が剥奪されると主張するが、上 るとはいえないから、原告らに原告適格は認められな い。原告らは、本件解除により、里子との安定的な生活が維持されることに対する期待が失われ、里子に対する監護措置権が剥奪されると主張するが、上記期待に反するとしても、それは里親委託措置解除に伴う事実上の効果であって、原告の有する期待が法的保護に値する権利又は利益であるとはいえない。 (2)本件解除に係る処分の違法性(取消事由)の有無(原告らの主張)原告らは1年以上にわたり何の問題もなく本件児童らの監護を続けており、かつ、将来的な養子縁組を検討していたところ、処分行政庁は、Cの受傷原因が体罰等の虐待によるものかどうか特定できないのに、児 相調査におけるCの不正確な聴取結果のみに基づいて本件解除に及んで いる(実際、その後の被告調査では、虐待の事実は認められなかった。)。 里親委託措置及びその解除等に当たっては処分行政庁に裁量権が認められるとしても、本件解除は社会通念上合理性を欠き、裁量権の範囲の逸脱又は濫用があったものとして違法である。 (被告の主張) 本件事案によりCは前歯などを負傷しているところ、同人は、原告Aによってされた旨一貫して供述している。被告が「被措置児童等虐待対応ガイドライン」(乙4)に沿って実施した被措置児童等虐待の疑いに係る調査(被告調査)の結果では、虐待であるとする確証は得られなかったものの、上記一貫した供述の存在等を踏まえ、児童らの安全を優先さ せて本件解除をしたことに裁量権の範囲の逸脱又は濫用はない。 (3)原告らの本件児童の里親たる地位についての確認の利益の有無(原告らの主張)仮に、本件解除が抗告訴訟の対象となる処分には当たらないとしても、児 脱又は濫用はない。 (3)原告らの本件児童の里親たる地位についての確認の利益の有無(原告らの主張)仮に、本件解除が抗告訴訟の対象となる処分には当たらないとしても、児童福祉法上の里親委託制度に基づく法律関係は公法上の法律関係であ る。そして、里親委託措置解除は、里親が将来的な養子縁組を希望する里子と安定的な生活を維持することに対する期待権や、里子に対する監護措置権の一切を消滅させることになるから、違法な里親委託措置解除によって里親の権利又は利益が侵害された場合には、紛争解決のため最も有効かつ適切な手段として、里親の地位にあることの確認を求めるに つき、確認の利益が認められる。 (被告の主張)児童福祉法の定めに照らせば、児童の委託を受けた里親は、専ら児童の健全な育成と福祉を図るために、個人的な立場ではなく、公的な立場においてその養育を行うことが期待されているのであって、児童福祉法 上の里親たる地位は法的保護に値する権利又は利益とはいえないから、 本件確認請求は確認の利益を欠く。 (4)原告らに本件児童らに対する里親の地位が認められるか否か(原告の主張)本件解除が抗告訴訟の対象となる処分に当たらないとしても、処分行政庁が里親委託措置を停止又は解除しない限り、原告らの里親たる地位 は、本件児童らが成人に達するまで存続する。そして、本件解除は前記(2)のとおり裁量権の範囲を逸脱又は濫用したものとして違法無効であるから、原告らは本件児童らに対する里親の地位を有する。 (被告の主張)争う。前記(2)のとおり、本件解除が処分行政庁の裁量権の範囲を 逸脱又は濫用したとはいえない以上、本件解除に違法性はない。 に対する里親の地位を有する。 (被告の主張)争う。前記(2)のとおり、本件解除が処分行政庁の裁量権の範囲を 逸脱又は濫用したとはいえない以上、本件解除に違法性はない。 (5)原告らと本件児童らとの間の面会通信制限及び本件解除の国家賠償法上の違法性並びに処分行政庁の過失の有無(原告らの主張)ア面会通信制限について 児童虐待の防止等に関する法律(以下「児童虐待防止法」という。)12条は、児童虐待を行った保護者と児童との面会通信を制限できる旨定めるところ、鈴鹿児相は、同条の「保護者」である原告らに対し、原告らによる虐待の事実が認められず、かつ、原告らが行政指導に従わない旨の意思を真摯かつ明確に表明したにもかかわらず、原告らと 本件児童らとの面会通信を制限する旨の行政指導に及んだ。行政指導は、あくまでも相手方の任意の協力によってのみ行われるべきものであるのに(行政手続法32条1項)、処分行政庁には、原告らの意思に反して行政指導としての面会通信制限を継続したことに職務上の注意義務違反がある。 イ里親委託措置解除について 里親委託措置の停止後、原告らが本件児童らに対して被措置児童等虐待を行った事実を裏付ける事情は認められず、被告調査によっても虐待の事実は認められなかったことを踏まえれば、処分行政庁は、本件解除時点において、虐待が存在しないことを前提に里親委託措置を再開するか、少なくとも児童らとの面会通信を実施してその様子を観 察すべき職務上の注意義務を負っていたのに、これを怠って本件解除を強行したことに過失がある。 ウ以上により、処分行政庁が、職務上の注意義務違反により原告らが本件児童らと面会通信をする権利を違法に侵害したことに 務を負っていたのに、これを怠って本件解除を強行したことに過失がある。 ウ以上により、処分行政庁が、職務上の注意義務違反により原告らが本件児童らと面会通信をする権利を違法に侵害したことによって、原告らは精神的損害を被ったから、被告は国家賠償責任を負う。 (被告の主張)ア面会通信制限について原告らは、児童虐待防止法12条の「保護者」には当たらない。 また、児童福祉法33条の2第2項は、「児童相談所長は、一時保護が行われた児童で親権を行う者又は未成年後見人のあるものについて も、監護及び教育に関し、その児童の福祉のため必要な措置をとることができる」と規定しているところ、本件における面会通信制限は、同項に基づき、Cの前歯が抜けていること、本件児童らがともに原告AがCに対して身体的虐待を行った旨話していること、原告らからはCが負傷したことについての報告がなかったこと、原告らが身体的虐 待を否定していることなどを踏まえて実施したものであり、国家賠償法上の違法性はない。 イ里親委託措置解除について里親委託措置を解除すべきか否かは児童ごとに個別具体的かつ専門技術的な判断を要するものであるから、児童福祉法は、このような判 断を処分行政庁である児童相談所長の専門的合理的な裁量に委ねてい る。本件解除に当たっては、Cの前歯が抜けるなどの負傷が認められ、これについて同人は原告Aによってされた旨一貫して供述する一方、原告らによる受傷機序の説明には一貫しない点がある。被告調査の結果としては、被措置児童等虐待であると判断する確証は得られなかったものの、児童らの安全を優先させて本件解除をしたことに裁量権の 範囲の逸脱又は濫用はなく、公務員としての職務上の注意義務違反を構 果としては、被措置児童等虐待であると判断する確証は得られなかったものの、児童らの安全を優先させて本件解除をしたことに裁量権の 範囲の逸脱又は濫用はなく、公務員としての職務上の注意義務違反を構成することはないから、本件解除は国家賠償法上も違法ではない。 (6)損害の発生及び金額(原告らの主張)ア慰謝料各400万円 違法な本件解除や長期間にわたる面会通信制限により、原告らは本件児童らの監護養育を行うことができず、多大な精神的苦痛を受けた。これを慰謝するのに相当な金額は各400万円(本件解除につき各300万円、面会通信制限につき各100万円)を下らない。 イ弁護士費用各40万円 被告に対する国家賠償請求などのため弁護士費用の負担が発生したから、原告らの各損害額400万円の1割に相当する40万円(原告ら両名の合計で80万円)は、必要不可欠な支出として相当因果関係を有する。 (被告の主張)否認ないし争う。 第3 争点に対する判断 1 本件解除の処分性及び本件解除を争う原告らの原告適格の有無(争点(1))(1)抗告訴訟である取消訴訟の対象となる「処分」(行政事件訴訟法3条2項)とは、公権力の主体たる国又は公共団体が法令の規定に基づき行う行為のうち、その行為によって、直接に国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確 定することが法律上認められているものをいう(最高裁昭和30年2月24 日第一小法廷判決・民集9巻2号217頁、最高裁昭和39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁参照)。原告らは、本件解除が里親である原告らの権利をはく奪するものであり、原告らを名宛人とする「処分」に 民集9巻2号217頁、最高裁昭和39年10月29日第一小法廷判決・民集18巻8号1809頁参照)。原告らは、本件解除が里親である原告らの権利をはく奪するものであり、原告らを名宛人とする「処分」に当たる旨主張するから、この点について検討する。 (2)里親委託措置は、児童福祉法27条1項3号に基づき、児童相談所長に よる要保護児童の報告等を受けた都道府県(又は同法32条1項に基づき都道府県の委任を受けた児童相談所長。以下「都道府県等」という。)が採るべき措置であるところ、同措置は、原則として、児童の親権を行う者又は未成年後見人(以下「親権者等」という。)の意に反しない限り、都道府県等が一方的に行うものであって(同法27条4項)、これによって親権者等の監護措 置権などの権利が制限されることは否定し難い。 しかしながら、児童福祉法は、特定の里親に一方的に児童を委託するといった手続を定めておらず、児童福祉施設の長に対しては児童を受託する義務を負わせる反面(同法46条の2第1項)、里親に対しては、里親委託措置をした児童の受託義務を課す旨の規定を置いていない。むしろ、里親への委託 手続は、児童を養育することを希望する者として養育里親名簿に登録されたもの(同法6条の4)の中から候補者の調整を行った上、委託の申込み及び受託の承諾に基づく任意の手続によって行われていると解されるところ(甲1)、これらの法令の定め等を踏まえると、里親と都道府県等との間の法律関係は、民法上の準委任契約に類する公法上の契約関係に基づいて発生又は消 滅するものであると解される。 そして、都道府県等と里親との法律関係が準委任に準じた公法上の契約関係に当たる以上、個別の里親への児童の委託を解除する都道府県等の行為の法的性質についても、委任者の有する契 ものであると解される。 そして、都道府県等と里親との法律関係が準委任に準じた公法上の契約関係に当たる以上、個別の里親への児童の委託を解除する都道府県等の行為の法的性質についても、委任者の有する契約の解除権の行使とみるのが相当であって、公権力の行使によって里親としての地位を喪失させるものと考える ことはできない。 (3)原告らは、少なくとも里子との間で将来的な養子縁組を希望している里親については、里親委託措置により里子との安定的な生活が維持されることについての期待権が生じており、本件解除はこのような権利を一方的に制限する行政処分であると主張する。しかし、児童福祉法は、同法33条の6の2(現行33条の6の4)第1項に定める特別養子適格の確認請求に係る児 童についての養子縁組里親その他適当な者に対する特別養子縁組の成立の審判の申立勧奨制度(同2項)を設けているほかには、里子との養子縁組を希望する里親について別段の取扱いを定めておらず、里子との安定的な生活の維持に係る里親の期待を保護していると認め得る法的根拠は見当たらない(なお、上記請求勧奨制度も、児童相談所長に対し、養子縁組里親等に当該 児童との特別養子縁組の成立の申立てを促すよう努力義務を課したものにすぎない。)。したがって、原告らの有する上記期待は事実上のものにすぎず、その存在をもって本件解除が行政処分に当たることが基礎付けられるとはいえない。 また、原告らは、里親委託措置の解除によって里子に対する監護措置権を 剥奪されることを主張するが、前記(2)のとおりの里親の公的な位置付けに照らすと、児童福祉法47条3項に定める里親の監護措置権は、当該児童の福祉を図るために必要な手段として認められた権限にすぎず、里親の個人的な権利又は利益としてこれを のとおりの里親の公的な位置付けに照らすと、児童福祉法47条3項に定める里親の監護措置権は、当該児童の福祉を図るために必要な手段として認められた権限にすぎず、里親の個人的な権利又は利益としてこれを保障した趣旨とは解されないから、原告らの主張は採用できない。 なお、原告らが、養育里親のみならず養子縁組里親としての登録をしており(前提事実(1)イ)、かつ、本件児童らとの養子縁組を将来的に希望していたことを踏まえると、原告らの法的地位が不安定であるという懸念も一定程度理解できるものの、上記のような関係条文の解釈としてはやむを得ないといわざるを得ない。 (4)よって、本件解除は抗告訴訟の対象となる処分に当たらないから、争点 (2)について判断するまでもなく、原告らの本件取消請求に係る訴えは不適法である。 2 原告らの本件児童の里親たる地位についての確認の利益の有無(争点(3))(1)上記1(2)のとおり、地方公共団体と里親との間の法律関係は、民法上の準委任契約に類する公法上の契約関係と解される。そうすると、里親た る地位の確認を求める本件確認請求に係る訴えは、上記公法上の契約に基づく法律関係の確認を求めるものとして、「公法上の法律関係に関する確認の訴え」(行政事件訴訟法4条)に当たるということができる。 (2)被告は、児童福祉法上の里親である地位が法的な権利又は利益とはいえないことを理由に、里親である地位の確認を求める訴えには確認の利益がな いと主張する。しかし、里親委託措置の解除が抗告訴訟の対象となるか否かや、原告らがその取消しを求める適格を有するか否かの問題と、里親である地位の確認を求める訴え自体が不適法として許されないかの問題は同一ではない。上記1のとおり、里親が都道府県等との間で有する か否かや、原告らがその取消しを求める適格を有するか否かの問題と、里親である地位の確認を求める訴え自体が不適法として許されないかの問題は同一ではない。上記1のとおり、里親が都道府県等との間で有する法律関係は公法上の契約関係であるから、当該契約関係に基づく個々の権利義務関係等の確認 を求めることと比べ、当該契約上の地位の確認として、里親である地位の確認を訴えにより求めることが、当該里親と都道府県等との間の法律上の紛争を直接かつ抜本的に解決し、当該里親の法律上の地位の不安、危険等を除去するために、最も適切かつ必要な手段となることは否定し得ない(最高裁昭和47年11月9日第一小法廷判決・民集26巻9号1513頁等参照)。 (3)そうすると、被告の上記主張は採用することができず、原告らの本件確認請求に係る訴えには確認の利益が認められる。 3 原告らに本件児童らに対する里親の地位が認められるか否か(争点(4))(1)児童相談所長は、児童福祉法32条1 項に基づき都道府県知事から里親委託措置に関する権限を委任されているところ、当該措置を採り、又はこれ を解除することの判断は、児童福祉に関する専門的知見を踏まえた児童相談 所長の合理的裁量に委ねられていると解される。これに加え、(準)委任契約関係が双方の信頼を基礎とする法律関係であり、民法の規定上、その当事者は広範な解除権を有することにも照らせば、本件解除に係る処分行政庁の判断が著しく不合理であるなどの事情により、民法上の準委任契約に類する公法上の契約関係を失わせる事由に当たらないと評価できるような場合でない 限り、原告らの里親としての地位が依然として存続するということとはならない。 (2)そこで、本件解除に係る処分行政庁の判断の経過を検討すると、後記4 に当たらないと評価できるような場合でない 限り、原告らの里親としての地位が依然として存続するということとはならない。 (2)そこで、本件解除に係る処分行政庁の判断の経過を検討すると、後記4(1)アないしウ及び同(2)で詳論するとおり、処分行政庁は、本件事案の発生後、司法面接の手法によって本件児童らの供述を把握・保全し、原告 Aに対する面談も実施した上、Cの受傷機序に関する医師の意見も踏まえて本件解除の判断をしており、その国賠法上の違法性の有無は別論として、本件解除が公法上の契約関係を失わせる事由に当たらないと評価できるような場合であるとはいえない。被告調査の最終的な結果が、被措置児童等虐待であると判断する確証は得られなかったという内容であったことなどは、上記 結論を左右するものではない。 (3)したがって、本件解除によっても原告らの里親としての地位が存続しているということはできず、原告らの本件確認請求は理由がない。 4 原告らと本件児童らとの間の面会通信制限及び本件解除の国家賠償法上の違法性並びに処分行政庁の過失の有無(争点(5)) (1)認定事実前提事実に加えて、後掲各証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実を認定することができる。 ア本件児童らの生育状況及び従前の監護状況(証人E、原告A本人)(ア)Cは、児童相談所の知能検査において、境界知能に当てはまる数値 であると評価されていた(ただし、発達障害等の確定診断は受けていな い。)。原告らも、里親委託措置を受けた当初からCの当該特性については把握していたほか、里親専門指導員から、実親の虐待による愛着障害の可能性についても聞いたことがあった。Cは落ち着きがなく、普段から家でよく走り回っては転んでいた。 (イ 当該特性については把握していたほか、里親専門指導員から、実親の虐待による愛着障害の可能性についても聞いたことがあった。Cは落ち着きがなく、普段から家でよく走り回っては転んでいた。 (イ)Cの養育に当たっては、こだわりが強く原告らの話を聞き入れない ことがある等の苦労があったものの、本件事案以前、原告らと本件児童ら又は保育園との間にトラブルが生じたことはなく、鈴鹿児相において、不自然な外傷の発生を認識したこともなかった。鈴鹿児相としては、令和2年12月にCを原告らに委託し始めて以降、同人らは本件児童らに愛着をもって接しており、監護状況に問題があるとは捉えていなかった。 イ本件事案の経緯に関する関係者の供述ないし聴取内容等(ア)原告らは、本件事案の発生後、令和4年7月26日に保育園から通告がされるまで(前提事実(3)イ)、Cの負傷について鈴鹿児相に報告していなかった。原告Aとしては、単に乳歯が抜けた事実を逐一報告する必要はないと考えていた。(原告A本人) (イ)Cは、令和4年7月26日、保育園に出動した鈴鹿児相職員と面会し、パパ(原告A)に背中に乗られた、キックされた、腕をペシッとしてきたなどと話した。また、Dは、同日、一時保護施設への移動中の車内で、Cが原告Aに叩かれたのを見たと話した。Dは、自分自身が叩かれたかどうかという質問に対しては、首を横に振って否定した。(乙5) その後、C及びDは、同月29日の一時保護施設における面接でも同旨の話をし、さらに、Cは、同年8月3日の司法面接においても同旨の話をした。(乙12、14)(ウ)原告Aは、令和4年7月26日、鈴鹿児相職員との面談において、本件事案の経緯につき、Cが同月23日にパズルで遊んでいたとこ 月3日の司法面接においても同旨の話をした。(乙12、14)(ウ)原告Aは、令和4年7月26日、鈴鹿児相職員との面談において、本件事案の経緯につき、Cが同月23日にパズルで遊んでいたところ、 パズルのピースを一つ紛失したため探すように声をかけたが、CはDと 一緒にテレビを見ており探そうとしなかったことから、「早く動け」と言ってCの背中を押したところ、フローリングに転んだ旨話した。(乙8)(エ)原告Aは、令和4年11月4日、鈴鹿児相職員との面談において、本件事案の経緯につき、Cのズボンのゴムが緩んでいたこともあって転倒した旨説明した。原告Aは、その後、同年12月27日に実施された 被措置児童等虐待の疑いにかかる聴取調査においても、Cのズボンのゴムが緩んでおり、自ら裾を踏んで転倒した可能性がある旨説明した。(証人E、乙22、23)ウ Cの負傷に関する医師及び歯科医師の意見書の要旨(ア)三重大学大学院医学系研究科法医法科学分野・F医師の令和4年8 月28日付け意見書(乙26)Cの上顎歯の欠落や可動性は鈍体による高度な作用力によって生起し、下顎部や上口唇の皮下出血及び粘膜下出血は打撲や圧挫によって生じたと考えられる。受傷機序を推定するに、平面に下顎をまず打撲し、この動きにより口を開いた状態で上顎歯や上口唇を同じ平面に打撲すること になる結果、下顎部に皮下出血、そして、上口唇に粘膜下出血を伴う上顎歯の欠落や可動性を生じることが考えられる。 なお、前方に倒れた場合には、顔などを打撲しないように上肢を前に出して支えることが多いが、原告らやCの説明には、手をついたとか、手を怪我したなどといった内容が含まれないため、Cは自らが転倒する ことを察知す た場合には、顔などを打撲しないように上肢を前に出して支えることが多いが、原告らやCの説明には、手をついたとか、手を怪我したなどといった内容が含まれないため、Cは自らが転倒する ことを察知する間もなく転倒した可能性があり、このことは、背中を不意に押されたり、蹴られたりすることによって転倒した旨の関係者の聴取内容(乙8、12、15)とも整合する。 (イ)医療法人G歯科・H歯科医師の令和6年5月10日付け意見書(甲15) 後方から背中を押されるなどして転倒した場合、下顎は前方に突き出 した状態になり、床面には下顎の前方正中先端部が接触して受傷し、本件事案のように下顎下方前額部には受傷しないと思われる。Cには、暴行行為のような強力な外力により受傷した場合に該当する所見が認められないから、自ら転倒したことにより下口唇前面部と上顎乳前歯が同時に衝撃を受け、乳歯が迷入、脱落したものと考えられる。 Cが転倒時に手をついておらず、手を怪我していないとしても、特に発達遅滞児の場合、「かばい手」が出るのが遅く、顎や顔面が先に床面に接触することがほとんどである。また、吸指癖や吸唇癖のある幼児は、歯牙脱落の違和感から上唇内側部を欠損部に吸い込み、上唇内側部に内出血や赤班を起こすことがよくある。 エ原告らと本件児童らとの面会通信制限の経緯(ア)鈴鹿児童相談所長は、原告らの里親委託措置を停止した令和4年7月26日以降、原告らと本件児童らとの面会通信を認めていない。(争いなし)(イ)原告らは、令和4年12月26日、原告ら代理人弁護士を通じて、 鈴鹿児童相談所長に対し、これ以上の面会通信制限に関する行政指導には応じないので、速やかに面会通信を実施するよう求めた。(甲7)(ウ)鈴鹿児童 26日、原告ら代理人弁護士を通じて、 鈴鹿児童相談所長に対し、これ以上の面会通信制限に関する行政指導には応じないので、速やかに面会通信を実施するよう求めた。(甲7)(ウ)鈴鹿児童相談所長は、令和5年1月17日、上記(イ)の原告らの要請に対し、「本件児童らにつきましては、令和4年12月16日付で、貴殿らへの里親委託措置解除をいたしております。貴職からは、通知人 ら(原告ら)と本件児童らとの面会通信を要請いただいておりますが、これに応じる予定はございませんので、本書にてご回答いたします。」と回答した。(甲8)(2)検討児童相談所長は、児童福祉法32条1 項に基づき都道府県知事から里親委 託措置に関する権限を委任されているところ、当該措置を採り、又はこれを 解除することや、児童と里親との面会通信を制限することの判断は、児童福祉に関する専門的知見を踏まえた児童相談所長の合理的裁量に委ねられていると解される。そこで、里親委託措置解除又は面会通信制限が児童相談所長の職務上の注意義務違反を構成し、国家賠償法上違法と評価されるのは、当該判断が著しく不合理であり、裁量権の範囲の逸脱又は濫用に当たる場合に 限られるというべきである。原告らは、里親委託措置解除及び本件児童らとの面会通信制限について、それぞれ裁量権の範囲の逸脱又は濫用がある旨主張するから、以下検討する。 ア里親委託措置解除について(ア)評価 前記(1)の認定事実によれば、処分行政庁は、①本件事案によりCが現に負傷していること、②本件事案について、Cが原告Aによる有形力の行使があった旨を一貫して供述し、Dもこれに沿う供述をしていること、③原告Aは、児相調査に対し、当初はCの背中を押した旨説明していたものの、 ていること、②本件事案について、Cが原告Aによる有形力の行使があった旨を一貫して供述し、Dもこれに沿う供述をしていること、③原告Aは、児相調査に対し、当初はCの背中を押した旨説明していたものの、その後、Cのズボンのゴムが緩んでいたという説明に転 じたことを踏まえて本件解除をしたと認めることができる。本件児童らの供述が互いに整合、一貫する一方、原告Aの供述には一部変遷が見られることに加え、Cの前歯の欠落、下顎部や上口唇の皮下出血及び粘膜下出血の状況から推測される受傷機序が、後方から加わった外力により転倒したものとみて矛盾しないと読み取れる F 医師の見解(前記(1) ウ(ア))も踏まえると、処分行政庁の認識としては、本件解除の時点で、原告Aによる虐待の可能性を完全には払拭し得ない状況にあったといえる(なお、Cに認められた腰部及び左前腕の内出血(前提事実(3)イ)については、本件児童らの供述や上記各医師らの見解を踏まえても、本件事案との関連性が明らかであるとはいえないから、上記判断に当たっ て考慮しなかった。)。 他方で、本件解除には、本件事案により負傷したのがCのみであること(前提事実(3)ア)、原告が里親委託措置の開始から1年以上、問題なく本件児童らを養育しており、その他の機会に本件児童らが原告らによって虐待を受けていたことをうかがわせる事情がないこと(前記(1)ア(イ))に加え、本件解除後に報告された被告調査の最終的な内容(前 提事実(4)ア)は、結果的には本件解除に当たっての処分行政庁の上記認識と整合し難いものであったにもかかわらず、被告調査の完了に先立って本件解除が決定されたことなどの懸念点が存在する。しかし、児童の福祉を最優先の要請とする児童福祉法の趣旨、目的や、鈴鹿児相による調査及び 合し難いものであったにもかかわらず、被告調査の完了に先立って本件解除が決定されたことなどの懸念点が存在する。しかし、児童の福祉を最優先の要請とする児童福祉法の趣旨、目的や、鈴鹿児相による調査及び面接等と被告調査とは趣旨を異にする手続であると解され ることなどを考慮すると、処分行政庁が本件解除当時に把握していた諸事情に基づき、本件児童らの安全確保を最大限に優先した児童相談所長の判断には相当の理由があったということができ、解除の時点の選択も含め、その判断に裁量権の範囲の逸脱又は濫用があったとまで認めることはできない。 したがって、里親委託措置解除につき、児童相談所長に職務上の注意義務違反は認められない。 (イ)原告らの主張について原告らは、「踏んだ」とか「蹴った」といったCの発言は普段の口癖にすぎないこと、ケース記録(乙5、12、14)に記載されたCの聴取 結果には、同人が用いることができない受動態の表現や、普段は原告Aに対する呼称として用いない「パパ」といった表現がみられるなど、正確な供述内容を反映していないことを指摘する。この点、本件事案当時4歳であるCは限られた表現力しか有していないことに照らせば、面接を担当した職員がCの発言の趣旨を多少補うことがあったり、口癖であ る可能性などを差し引いていないことがあったりしたとしても、原告A が何らかの有形力を加えて負傷したという限度においてCの説明の一貫性を損なうこととはならず、かつ、同人の受傷状況は医学的に見てその説明と矛盾しないのであるから、前記評価は左右されない。 なお、G歯科医師の意見書(前記(1)ウ(イ))によれば、Cが暴行行為のような強力な外力により受傷したものではなく、自ら転倒したと 考えられる根拠として、「強 記評価は左右されない。 なお、G歯科医師の意見書(前記(1)ウ(イ))によれば、Cが暴行行為のような強力な外力により受傷したものではなく、自ら転倒したと 考えられる根拠として、「強力な力(暴行行為等)で直接歯牙に衝撃を受けた場合は歯肉組織に何らかの裂傷がある」、「下顎下方から外力(アッパーカット)により突き上げられたことによる歯牙脱臼の場合は、受傷後の摂食時に下顎関節に違和感(疼痛や咬合異常)を訴えることがある」のに、これらの所見が認められないことを述べるが(甲15)、本件事案 においてCが前方に転倒したことに争いはなく、原告Aが背中を押すなどして後方から外力を加えたか否かが問題となっているのであるから、上記意見書は、その前提とする状況が必ずしも本件事案に具体的に即したものといえず、採用できない。 イ面会通信制限について (ア)原告らが鈴鹿児相による面会通信制限の根拠として主張する児童虐待防止法12条1項は、一時保護中の児童について、児童虐待の防止及び児童虐待を受けた児童の保護のため必要があると認めるときは、児童相談所長は、当該児童虐待を行った保護者について、当該児童との面会通信の全部又は一部を制限することができる旨規定するところ、一時保 護中の児童の保護者(里親委託措置中における一時保護の場合にあっては、保護者である里親)に対し、行政処分として、当該児童との面会通信を強制的に制限する権限を児童相談所長に与えたものと解される。 (イ)原告らは、令和5年1月17日以降の面会通信制限について、これがあくまで行政指導に当たることを前提に、児童相談所が、児童虐待防 止法上の「保護者」(同法2条柱書)である原告らの意思に明確に反する 事実を認識しながら当該指導を継続した て、これがあくまで行政指導に当たることを前提に、児童相談所が、児童虐待防 止法上の「保護者」(同法2条柱書)である原告らの意思に明確に反する 事実を認識しながら当該指導を継続したことが、行政手続法32条1項に反するから、国家賠償法1条1項の適用上違法と評価されると主張する。しかし、前記(ア)のとおり、児童虐待防止法12条1項は、一時保護中の児童の保護者との面会通信制限を規律するものであって、本件のように、既に里親委託措置が解除され、かつ、同措置を解除したこと に違法性が認められるとはいえない場合、もはや原告らが本件児童らを現に監護している者と評価することは困難であり、同条にいう「保護者」に該当するとはいえない。原告らは、里親委託措置の停止まで本件児童らの監護を継続しており、その後も監護する意思を有していたから、依然として「保護者」に該当するというが、内心の意思の有無によって保 護者であるか否かを決するのと差異がなくなりかねず、採用できない。 そして、同条は行政処分としての面会通信制限について規定したものであるから、原告らの主張は、この意味でも前提を欠くものといわざるを得ない。 (ウ)なお、被告が面会通信制限の根拠として主張する児童福祉法33条 の2第2項は、児童相談所長は、一時保護が行われた児童で親権を行う者のあるものについても、監護及び教育に関し、その児童の福祉のため必要な措置を採ることができる旨規定しており、同項に規定する監護のための必要な措置には、行政指導として、一時保護を受けた児童とその保護者との面会を制限することも含まれるものと解される。この面会制 限は、行政指導として行うものである以上、あくまで相手方(保護者)の任意の協力によって実現しなければならないことは言うまでもないが(行 面会を制限することも含まれるものと解される。この面会制 限は、行政指導として行うものである以上、あくまで相手方(保護者)の任意の協力によって実現しなければならないことは言うまでもないが(行政手続法32条1項)、原告らは、児童福祉法上の「保護者」(同法6条。児童虐待防止法上の「保護者」と同一の意義であると理解される。)にも該当しないから、仮に、本件における面会通信制限を、児童福祉法 33条の2第2項に基づく行政指導としての面会通信制限であると解し た場合であっても、原告らの任意の協力なくしてこれを実施することに違法性はない。 したがって、面会通信制限をしたことにつき、児童相談所長に裁量権の範囲の逸脱又は濫用があったと認めることはできず、職務上の注意義務違反は認められない。 (3)よって、争点(6)について判断するまでもなく、原告らの本件国賠請求には理由がない。 第4 結論以上によれば、原告らの各請求に係る訴えのうち、本件取消請求に係る部分の訴えは不適法であるからこれを却下し、原告らのその余の請求はいずれも理由が ないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 津地方裁判所民事部 裁判長裁判官竹内浩史 裁判官芹澤美知太郎 裁判官後藤寛樹 別紙(児童福祉法)第6条この法律で、保護者とは、親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護する者をいう。 第6条の4 この法律で、 藤寛樹 別紙(児童福祉法)第6条この法律で、保護者とは、親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護する者をいう。 第6条の4 この法律で、里親とは、次に掲げる者をいう。 一厚生労働省令で定める人数以下の要保護児童を養育することを希望する者(都道府県知事が厚生労働省令で定めるところにより行う研修を修了したことその他の厚生労働省令で定める要件を満たす者に限る。)のうち、第34条の19に規定する養育里親名簿に登録されたもの(以下「養育里親」という。)二前号に規定する厚生労働省令で定める人数以下の要保護児童を養育するこ と及び養子縁組によつて養親となることを希望する者(都道府県知事が厚生労働省令で定めるところにより行う研修を修了した者に限る。)のうち、第34条の19に規定する養子縁組里親名簿に登録されたもの(以下「養子縁組里親」という。)三号略 第25条要保護児童を発見した者は、これを市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所又は児童委員を介して市町村、都道府県の設置する福祉事務所若しくは児童相談所に通告しなければならない。ただし、罪を犯した満14歳以上の児童については、この限りでない。この場合においては、これを家庭裁判所に通告しなければならない。 2項略第26条児童相談所長は、第25条第1項の規定による通告を受けた児童、第25条の7第1項第1号若しくは第2項第1号、前条第1号又は少年法(昭和23年法律第168号)第6条の6第1項若しくは第18条第1項の規定による送致を受けた児童及び相談に応じた児童、その保護者又は妊産婦について、 必要があると認めたときは、次の各号のいずれかの措置を採らなければならな 項若しくは第18条第1項の規定による送致を受けた児童及び相談に応じた児童、その保護者又は妊産婦について、 必要があると認めたときは、次の各号のいずれかの措置を採らなければならな い。 一次条の措置を要すると認める者は、これを都道府県知事に報告すること。 二号ないし八号略2項略第27条都道府県は、前条第1項第1号の規定による報告又は少年法第18条 第2項の規定による送致のあつた児童につき、次の各号のいずれかの措置を採らなければならない。 一、二及び四号略三児童を小規模住居型児童養育事業を行う者若しくは里親に委託し、又は乳児院、児童養護施設、障害児入所施設、児童心理治療施設若しくは児童 自立支援施設に入所させること。 2項及び3項略 4 第1項第3号又は第2項の措置は、児童に親権を行う者(第47条第1項の規定により親権を行う児童福祉施設の長を除く。以下同じ。)又は未成年後見人があるときは、前項の場合を除いては、その親権を行う者又は未成年後見人の 意に反して、これを採ることができない。 5 都道府県知事は、第1項第2号若しくは第3号若しくは第2項の措置を解除し、停止し、又は他の措置に変更する場合には、児童相談所長の意見を聴かなければならない。 6 都道府県知事は、政令の定めるところにより、第1項第1号から第3号まで の措置(第3項の規定により採るもの及び第28条第1項第1号又は第2号ただし書の規定により採るものを除く。)若しくは第2項の措置を採る場合又は第1項第2号若しくは第3号若しくは第2項の措置を解除し、停止し、若しくは他の措置に変更する場合には、都道府県児童福祉審議会の意見を聴かなければならない。 第32条都道府県知事は、第27条 項第2号若しくは第3号若しくは第2項の措置を解除し、停止し、若しくは他の措置に変更する場合には、都道府県児童福祉審議会の意見を聴かなければならない。 第32条都道府県知事は、第27条第1項若しくは第2項の措置を採る権限又 は児童自立生活援助の実施の権限の全部又は一部を児童相談所長に委任することができる。 2項及び3項略第33条児童相談所長は、必要があると認めるときは、第26条第1項の措置を採るに至るまで、児童の安全を迅速に確保し適切な保護を図るため、又は児 童の心身の状況、その置かれている環境その他の状況を把握するため、児童の一時保護を行い、又は適当な者に委託して、当該一時保護を行わせることができる。 2項ないし12項略第33条の2 1項略 2 児童相談所長は、一時保護が行われた児童で親権を行う者又は未成年後見人のあるものについても、監護及び教育に関し、その児童の福祉のため必要な措置をとることができる。この場合において、児童相談所長は、児童の人格を尊重するとともに、その年齢及び発達の程度に配慮しなければならず、かつ、体罰その他の児童の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならな い。 3項及び4項略第33条の6の2 児童相談所長は、児童について、家庭裁判所に対し、養親としての適格性を有する者との間における特別養子縁組について、家事事件手続法(平成23年法律第52号)第164条第2項に規定する特別養子適格の確 認を請求することができる。 2 児童相談所長は、前項の規定による請求に係る児童について、特別養子縁組によつて養親となることを希望する者が現に存しないときは、養子縁組里親その他の適当な者に対し、当該児童に係る民法第817条の2第1項に規定する請 前項の規定による請求に係る児童について、特別養子縁組によつて養親となることを希望する者が現に存しないときは、養子縁組里親その他の適当な者に対し、当該児童に係る民法第817条の2第1項に規定する請求を行うことを勧奨するよう努めるものとする。 第34条の19 都道府県知事は、第27条第1項第3号の規定により児童を委 託するため、厚生労働省令で定めるところにより、養育里親名簿及び養子縁組里親名簿を作成しておかなければならない。 第46条の2 児童福祉施設の長は、都道府県知事又は市町村長(第32条第3項の規定により第24条第5項又は第6項の規定による措置に関する権限が当該市町村に置かれる教育委員会に委任されている場合にあつては、当該教育 委員会)からこの法律の規定に基づく措置又は助産の実施若しくは母子保護の実施のための委託を受けたときは、正当な理由がない限り、これを拒んではならない。 2項略第47条 1項及び2項、4項及び5項略 3 児童福祉施設の長、その住居において養育を行う第6条の3第8項に規定する厚生労働省令で定める者又は里親(以下この項において「施設長等」という。)は、入所中又は受託中の児童で親権を行う者又は未成年後見人のあるものについても、監護及び教育に関し、その児童の福祉のため必要な措置をとることができる。この場合において、施設長等は、児童の人格を尊重する とともに、その年齢及び発達の程度に配慮しなければならず、かつ、体罰その他の児童の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない。 (児童虐待の防止等に関する法律)第2条この法律において、「児童虐待」とは、保護者(親権を行う者、未成年後 見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)がその監護 。 (児童虐待の防止等に関する法律)第2条この法律において、「児童虐待」とは、保護者(親権を行う者、未成年後 見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)がその監護する児童(18歳に満たない者をいう。以下同じ。)について行う次に掲げる行為をいう。 一児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。 二号ないし四号略 第12条児童虐待を受けた児童について児童福祉法第27条第1項第3号の措 置(以下「施設入所等の措置」という。)が採られ、又は同法第33条第1項若しくは第2項の規定による一時保護が行われた場合において、児童虐待の防止及び児童虐待を受けた児童の保護のため必要があると認めるときは、児童相談所長及び当該児童について施設入所等の措置が採られている場合における当該施設入所等の措置に係る同号に規定する施設の長は、厚生労働省令で定めると ころにより、当該児童虐待を行った保護者について、次に掲げる行為の全部又は一部を制限することができる。 一当該児童との面会二当該児童との通信2項及び3項略

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