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昭和35(ネ)82 貸金請求事件

裁判所

昭和36年6月14日 名古屋高等裁判所 金沢支部

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7,223 文字

主文 本件控訴を棄却する。控訴費用は控訴人の負担とする。事実 控訴代理人は「原判決を取消す、被控訴人の請求を棄却する、訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求め、なお当審において請求金額中「内金五万円に対する昭和二十六年七月四日から昭和二十七年七月三日まで年一割、同年七月四日から完済まで日歩五銭の割合による金員」とあるを「内金五万円に対する昭和二十六年十二月九日から昭和二十七年十二月八日まで年一割、同年十二月九日から完済まで日歩五銭の割合による金員」に減縮した。当事者双方の事実上の主張は、双方代理人において左記のとおり陳述した外は、原判決事実摘示の記載と同一であるから、ここにこれを引用する。一、 被控訴代理人の陳述(一) 被控訴組合は昭和三十五年七月十九日その名称を「道下信用農業協同組合」と変更した。 (二) 原判決書二枚目裏八行目(4)の貸付金額五〇、〇〇〇円につき「貸付年月日昭和二六、七、三弁済期昭和二七、七、三」とあるを「貸付年月日昭和二六、一二、八弁済期昭和二七、一二、八」と訂正する。(三) 控訴人の後記(一)の主張事実は否認する。同(二)の主張(時効の抗弁)について、農業協同組合は控訴人のいうとおり中性的法人であつて、公益法人でも営利法人でもない。この組合の非営利性については農業協同組合法第八条に明定しているところであつて、この規定は農業協同組合の本質を規定した強行法規たる性質を有すると同時に組合の行為の効力に関する効力規定と解されている。従つて単に利率又は遅延損害金の率が銀行若しくは相互銀行のそれと同一であるとの一点を捉らえて営利性の論拠とすることは当を得ない。農業協同組合の特質はその組合員に事業 関する効力規定と解されている。従つて単に利率又は遅延損害金の率が銀行若しくは相互銀行のそれと同一であるとの一点を捉らえて営利性の論拠とすることは当を得ない。 強行法規たる性質を有すると同時に組合の行為の効力に関する効力規定と解されている。従つて単に利率又は遅延損害金の率が銀行若しくは相互銀行のそれと同一であるとの一点を捉らえて営利性の論拠とすることは当を得ない。農業協同組合の特質はその組合員に事業 関する効力規定と解されている。従つて単に利率又は遅延損害金の率が銀行若しくは相互銀行のそれと同一であるとの一点を捉らえて営利性の論拠とすることは当を得ない。農業協同組合の特質はその組合員に事業を利用させることによつて最大の奉仕をするという点にある。換言すれば農業協同組合は経済事業を行うことを主たる任務とすることは農業協同組合法第一〇条第一項に定めているから、この点から見ればその行為は形式的には商法第五〇一条又は第五〇二条に該当するように見えるが組合の事業が行われる範囲は原則として組合員に限られ一般第三者との自由な取引が許されないばかりでなく、その事業の目的は組合員に利益を得させるためであつて、組合自体が利益を得たり又は利益を得てこれを組合員に分配することを目的とはしていない。たとえ組合自体が利益を追及しているように見えている行為であつても実は組合員に利益を得させるための行為の形式面に過ぎないのであるから、単にこの形式面を捉えて営業であるとして商事消滅時効の適用を主張するのは当らない。なお旧産業組合法第五条には商人に関する規定を準用する旨の規定があつたが農業協同組合法にはそのような規定がないから商事消滅時効を適用する余地はない。二、 控訴代理人の陳述(一) 甲第一ないし第八号証の借用証書はいずれも当時被控訴組合の参事であつた訴外Aが偽造したものである。そして同訴外人は控訴人若しくは控訴人の親族名義で右借用証書記載の金円を騙取又は着服横領したのである。(二) 仮に控訴人が被控訴組合よりその主張の本件金円を借入れたとしても、本件貸金債権は次の理由により商事債権と解すべきであるから、いずれも五年の期間経過によつて時効により消滅した。すなわち被控訴組合は農業協同組合法に基いて設立された組合であつて、いわゆる中性的法人でありその与信 権は次の理由により商事債権と解すべきであるから、いずれも五年の期間経過によつて時効により消滅した。すなわち被控訴組合は農業協同組合法に基いて設立された組合であつて、いわゆる中性的法人でありその与信事務及び受信事務は原則として組合員に対してなされるものであるが、甲第一ないし第八号証の記載によつて明らかなように利息の割合が日歩二銭八厘又は三銭であり、また損害金の割合も日歩五銭であつて、銀行法上の銀行、相互銀行法上の相互銀行等の金融機関の貸付金の利息及び損害金の割合と同額である。 時効により消滅した。すなわち被控訴組合は農業協同組合法に基いて設立された組合であつて、いわゆる中性的法人でありその与信事務及び受信事務は原則として組合員に対してなされるものであるが、甲第一ないし第八号証の記載によつて明らかなように利息の割合が日歩二銭八厘又は三銭であり、また損害金の割合も日歩五銭であつて、銀行法上の銀行、相互銀行法上の相互銀行等の金融機関の貸付金の利息及び損害金の割合と同額である。従つてこの点より見ると少くとも貸付業務においては利益を得る目的をもつて貸付が反覆してなされているもの、すなわち営業としてなされているものと解すべきであるから、商法第五〇二条第八号所定の銀行取引に該当する。それ故被控訴組合につき本件貸付行為は商行為となるから本件債権は商行為によつて生じた債権というべきである。なお農業協同組合がいわゆる中性的法人であることから同組合のすべての行為につき商法の適用が排除されると解するのは正当ではない、被控訴組合の貸付業務が他の銀行等の金融機関の貸付業務と主要な点で全く同一であること、従つて取引関係を迅速に解決するという要請が当然になされてよいこと及びかの債権者取消権においていわゆる相対的効力が(法の目的によつて)認められること等を勘考すれば前記のように本件貸金債権は五年の商事消滅時効にかかるものと解するのが正当である。 証拠関係については、被控訴代理人において新たに甲第一七号証、第一八号証の一ないし四、第一九、第二〇号証の各一、二、第二一号証を提出し、当審証人Aの証言を援用し、後記乙号各証の成立は認めると述べ、控訴代理人において新たに乙第三ないし第九号証、第一〇号証の一、二、第一一号証の一ないし六、第一二号証を提出し、当審証人A、同B 提出し、当審証人Aの証言を援用し、後記乙号各証の成立は認めると述べ、控訴代理人において新たに乙第三ないし第九号証、第一〇号証の一、二、第一一号証の一ないし六、第一二号証を提出し、当審証人A、同Bの各証言を援用し、甲第一七号証の成立は認めるその余の右甲号各証の成立は不知と述べた外は、原判決事実摘示のとおりであるからこれを引用する。理由 被控訴組合が昭和三十五年七月十九日その名称を「道下信用農業協同組合」と変更したことは本件記録編綴の登記簿抄本の記載によつて明らかである。而して成立に争のない甲第一三号証の控訴人Cの印影と甲第一、第四号証の各控訴人Cの印影、成立に争のない甲第一一号証の一、二の各控訴人Cの印影と甲第二号証のDCの印影がそれぞれ同一であることを控訴人が認めていること、原審における鑑定人Eの鑑定の結果によれば成立に争のない甲第一〇号証の一、二の各控訴人Cの印影と甲第三号証のFC、同第五号証のGCの各印影並びに甲第六ないし第八号証の各控訴人Cの印影及び甲第四号証の連帯保証人DCの印影がいずれも同一であることが認められること、控訴人とD、同F、同Gとが被控訴人主張のような親族関係にあること(このことは当事者間に争がない)、以上の事実に原審証人H、原審並びに当審証人Aの各証言を総合すれば、甲第一ないし第三号証、同第六ないし第八号証の各借用証書はいずれも当時被控訴組合の参事であつた訴外Aが、また同第四、第五号証の各借用証書は同じく被控訴組合の事務員であつた訴外Hがそれぞれ控訴人の依頼により被控訴組合備付のガリ版又は活版刷の用紙を使つて作成したものであつて、控訴人若しくは前記D、同F、同GCの印影はいずれも控訴人自から又は右A、Hが控訴人の見ている前で押印したものであることが認められる。 第一ないし第三号証、同第六ないし第八号証の各借用証書はいずれも当時被控訴組合の参事であつた訴外Aが、また同第四、第五号証の各借用証書は同じく被控訴組合の事務員であつた訴外Hがそれぞれ控訴人の依頼により被控訴組合備付のガリ版又は活版刷の用紙を使つて作成したものであつて、控訴人若しくは前記D、同F、同GCの印影はいずれも控訴人自から又は右A、Hが控訴人の見ている前で押印したものであることが認められる。そして右甲第一ないし 活版刷の用紙を使つて作成したものであつて、控訴人若しくは前記D、同F、同GCの印影はいずれも控訴人自から又は右A、Hが控訴人の見ている前で押印したものであることが認められる。そして右甲第一ないし第八号証の各記載と原審証人H同Aの各証言によつて真正に成立したと認められる甲第九号証の二ないし八原審証人Bの証言(第二回)によつて真正に成立したと認められる甲第一四、第一五号証、当審証人Aの証言によつて真正に成立したと認められる甲第一八号証の一ないし四同第一九、第二〇号証の各一、二、同第二一号証の各記載に原審証人H、原審並びに当審証人B(原審は第一、二回)同Aの各証言を総合すると、被控訴組合は別紙目録記載のとおり控訴人に対し、控訴人若しくはその親族の借入名義で昭和二十五年十二月三十一日から昭和二十七年十二月四日までの間に八回に亘り合計金五十八万円を同目録記載のとおりの弁済期、利息損害金の約定で貸付けたところ、控訴人は同目録(5)及び(6)記載の貸金について元本の内金として合計金八万四千円及び同(2)記載の貸金について昭和二十六年三月十三日までの利息を支払つたのみでその余の弁済をしないことを認めることができる。原審における控訴本人尋問の結果中右認定に反する部分は措信しない。なお控訴人は甲第一ないし第八号証の借用証書はいずれも前記訴外Aか偽造したもので、同訴外人が控訴人若しくは控訴人の親族名義で前記金円を騙取又は着服横領したものであると主張するが、当裁判所の措信しない右控訴本人の供述を除いては、他に前示認定を覆し控訴人の右主張を認めるに足る証拠はない。次に控訴人は、仮に控訴人が被控訴組合よりその主張の本件金円を借入れたとしても、本件貸金債権は商事債権であるからいずれも五年の期間経過によつて時効により消滅した旨主張するのでこの点につき考えて見 次に控訴人は、仮に控訴人が被控訴組合よりその主張の本件金円を借入れたとしても、本件貸金債権は商事債権であるからいずれも五年の期間経過によつて時効により消滅した旨主張するのでこの点につき考えて見る。 拠はない。次に控訴人は、仮に控訴人が被控訴組合よりその主張の本件金円を借入れたとしても、本件貸金債権は商事債権であるからいずれも五年の期間経過によつて時効により消滅した旨主張するのでこの点につき考えて見 次に控訴人は、仮に控訴人が被控訴組合よりその主張の本件金円を借入れたとしても、本件貸金債権は商事債権であるからいずれも五年の期間経過によつて時効により消滅した旨主張するのでこの点につき考えて見る。<要旨>被控訴組合は農業協同組合法に基いて設立された組合であつて、控訴人がその組合員であることは弁論の全</要旨>趣旨に徴し当事者間に争がない。而して農業協同組合法に基いて設立された農業協同組合(以下単に組合という)は組合員の協同により農業生産力の増進と組合員たる農民の経済的社会的地位の向上を図り、併せて国民経済の発展を期することを目的とする法人であつて、営利を目的とするものでないことは農業協同組合法第一、第五、第八条の各規定に徴し明らかである。すなわち組合はその事業そのものによつて構成員たる組合員の事業又は家計の助成を図ることを目的とし、組合自体が金銭的利益を得てこれを組合員に分配することを目的とするものではない。それであるが故に組合は国家の後見を受け(同法第四四条第二項、第五九条)、特にその事業の運営に関し厳重な行政監督の方式が採用され(同法第九三条以下)、またその行い得る事業は同法第一〇条の規定するところに限定されていてこれに違反して事業を行つたときは行政庁より組合の解散を命ぜられ(同法第九五条の二)、更に組合の役員は過料或は刑罰を科せられることになつているのである。そこで今組合の行い得る事業のうち金員の貸付及び貯金等の受入れ業務について見るに、組合は組合員に対し組合員の事業又は生活に必要な資金を貸付けること及び組合員から預金等の受入れをすることであつて(同法第一〇条第一、第二号)、右貸付及び受入れの業務はその対象の範囲が原則として組合員に限られ、一般銀行等の金融機関のように汎く不定多数の者より預金その他の方法により収受した金銭 することであつて(同法第一〇条第一、第二号)、右貸付及び受入れの業務はその対象の範囲が原則として組合員に限られ、一般銀行等の金融機関のように汎く不定多数の者より預金その他の方法により収受した金銭を他人の需用に供するが如き媒介行為をなすのと異つているのである。 び受入れの業務はその対象の範囲が原則として組合員に限られ、一般銀行等の金融機関のように汎く不定多数の者より預金その他の方法により収受した金銭 することであつて(同法第一〇条第一、第二号)、右貸付及び受入れの業務はその対象の範囲が原則として組合員に限られ、一般銀行等の金融機関のように汎く不定多数の者より預金その他の方法により収受した金銭を他人の需用に供するが如き媒介行為をなすのと異つているのである。従つてたとえ右金員の貸付につき一定の利息ないし損害金の定めがあり、それが銀行等のそれと同率であるとしても、これを目して直ちに利益を得る目的をもつて貸付が反覆してなされているもの、すなわち営業としてなされているものと解することはできず、また右行為をもつて商法第五〇二条第八号にいう銀行取引に該当するということはできない。それ故本件貸金債権が商事債権であるとして商法第五二二条による五年の消滅時効を主張する控訴人の前示時効の抗弁はこれを採用することができない。そうすれば、控訴人は被控訴人に対し前記貸金元本残合計金四十九万六千円と各貸金につき未払の利息及び弁済期の翌日から日歩五銭の約定損害金を支払う義務があるものというべきであるから、控訴人に対し右金四十九万六千円及び別紙目録(1)記載の貸金につき済済期後である昭和二十九年二月二十六日から完済まで日歩五銭、同(2)記載の貸金につき弁済期の翌日である昭和二十六年三月十四日から完済まで日歩五銭同(3)記載の貸金につき貸付の翌日である昭和二十六年二月五日から弁済期である同年三月三十一日まで利息制限法による制限内に引直した年一割、同年四月一日から完済まで日歩五銭、同(4)記載の貸金につき右同様昭和二十六年十二月九日から昭和二十七年十二月八日まで年一割、同年十二月九日から完済まで日歩五銭、同(5)記載の貸金につき残金四万六千円に対する右同様昭和二十七年一月二十日から昭和二十八年一月十九日まで年一割同年一月二十日から完済まで日歩五銭同(6)記載の貸 年十二月九日から完済まで日歩五銭、同(5)記載の貸金につき残金四万六千円に対する右同様昭和二十七年一月二十日から昭和二十八年一月十九日まで年一割同年一月二十日から完済まで日歩五銭同(6)記載の貸金につき残金一万五千円に対する右同様昭和二十七年十月二十二日から昭和二十八年四月二十日まで年一割、同年四月二十一日から完済まで日歩五銭同(7)記載の貸金につき右同様昭和二十七年十一月二十八日から昭和二十八年四月二十日まで年一割同年四月二十一日から完済まで日歩五銭、同(8)記載の貸金につき右同様昭和二十七年十二月五日から昭和二十八年四月二十日まで年一割同年四月二十一日から完済まで日歩五銭の割合による金員の支払を求める被控訴人の本訴請求は正当としてこれを認容すべきものである。 四月二十日まで年一割、同年四月二十一日から完済まで日歩五銭同(7)記載の貸金につき右同様昭和二十七年十一月二十八日から昭和二十八年四月二十日まで年一割同年四月二十一日から完済まで日歩五銭、同(8)記載の貸金につき右同様昭和二十七年十二月五日から昭和二十八年四月二十日まで年一割同年四月二十一日から完済まで日歩五銭の割合による金員の支払を求める被控訴人の本訴請求は正当としてこれを認容すべきものである。原判決は控訴人に対し右(4)記載の貸金五万円につき昭和二十六年七月四日から昭和二十七年七月三日まで年一割、同年七月四日から完済まで日歩五銭の割合による金員の支払を命じたものであるが、被控訴人は当審において右認定の請求以外については請求の減縮をしたので右減縮された限度において原判決は失効し、従つて原判決は相当であることとなり本件控訴は理由なきものというべきである。よつて、民事訴訟法第三八四条により本件控訴を棄却し、訴訟費用の負担につき同法第九五条第八九条を適用して主文のとおり判決する。(裁判長裁判官小山市次裁判官広瀬友信裁判官高沢新七)<記載内容は末尾1添付>

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