【機密性2】- 1 - 令和元年8月30日判決言渡平成30年(行ウ)第149号一般乗合旅客自動車運送事業事業計画変更認可処分等取消請求事件主文 1 本件各訴えをいずれも却下する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 処分行政庁が平成30年2月8日付けでC株式会社(以下「C」という。)に対してした一般乗合旅客自動車運送事業の事業計画変更を認可する旨の処分 (以下「本件処分1」という。)を取り消す。 2 処分行政庁が平成30年2月8日付けでCに対してした一般乗合旅客自動車運送事業の運賃の上限設定を認可する旨の処分(以下「本件処分2」といい,本件処分1と併せて「本件各処分」という。)を取り消す。 第2 事案の概要 本件は,処分行政庁が,岡山市内で一般乗合旅客自動車運送事業(乗合バス事業)を営むCに対し,道路運送法15条1項及び同法9条1項に基づき,路線の新設運行に係る本件各処分をした(なお,本件各処分に係る権限は,同法88条2項,同法施行令1条1項2号ニ,同項6号により,国土交通大臣から処分行政庁に委任されている。)ことに関して,同市内外で同事業を営む原告 D及び同市内で同事業及び軌道事業(路面電車の運行に係る事業)を営む原告Eが,本件各処分に基づきCにより新規に運行される路線は,原告らの営む事業に係る路線と競合するところ,本件処分1には道路運送法15条2項が準用する同法6条2号等に反する違法があり,また,本件処分2には同法9条2項等に反する違法がある旨主張して,本件各処分の各取消しを求める事案である。 - 2 - 1 関係法令等の定め本件に関係する法令等の定めは,別紙1「関係法令等の定め」記載のとおりである(同別紙において定義 旨主張して,本件各処分の各取消しを求める事案である。 - 2 - 1 関係法令等の定め本件に関係する法令等の定めは,別紙1「関係法令等の定め」記載のとおりである(同別紙において定義した略語等は,以下においても用いることとする。)。 2 前提事実(証拠等を掲記したもののほかは,当事者の間に争いがない事実である。) (1) 当事者等ア原告Dは,岡山市内外でDバスの名称により一般乗合旅客自動車運送事業を営む株式会社である。 イ原告Eは,岡山市内でEバスの名称により一般乗合旅客自動車運送事業を営むとともに,軌道事業を営む株式会社である。 ウ Cは,岡山市内でCバスの名称により一般乗合旅客自動車運送事業を営む株式会社である。 (2) 本件各処分に至る経緯ア Cは,平成29年3月31日,処分行政庁に対し,「α」停留所(岡山市(住所省略))を起点とし,「β」停留所(同市(住所省略))及び「γ」 停留所(同市(住所省略))を主な経過地として,「δ」停留所(同市(住所省略))を終点とする路線(運行系統名及び系統番号をFとするもの。 以下「ε 線」という。)の新設運行に係る一般乗合旅客自動車運送事業の事業計画変更の認可に係る申請(以下「本件申請1」という。)をするとともに,ε線の上限運賃を210円と設定する内容の運賃の上限設 定の認可に係る申請(以下「本件申請2」といい,本件申請1と併せて「本件各申請」という。)をした。(甲4,5,乙10,11)イ Cは,平成29年9月11日,本件申請2につき,ε 線の運賃の上限設定を300円(実施運賃は250円)などと訂正する内容の追加申請をした。(乙9) ウ Cは,平成29年11月13日,本件申請1につき,2か所の停留所の - 3 -位置を の運賃の上限設定を300円(実施運賃は250円)などと訂正する内容の追加申請をした。(乙9) ウ Cは,平成29年11月13日,本件申請1につき,2か所の停留所の - 3 -位置を変更する旨の追加申請をした。 エ処分行政庁は,平成30年2月8日,本件各申請(前記イ及びウの各追加申請後のもの)に対し,本件各処分をした。 (3) 原告らが運行する路線とε線との競合関係等ア路線の競合状況 (ア)a 原告Dは,本件各処分がされる以前から,一般乗合旅客自動車運送事業として,「ζ」停留所から「η」停留所までを運行する路線(経由する停留所を異にして,運行系統名及び系統番号をGとするものと,Hとするものとがあり,総称して「θ線」という。)を運行している。 また,原告Dは,一般乗合旅客自動車運送事業として,θ線の運行 区域の周辺において,θ線の他にも,概要,別紙2記載の各路線を運行している(なお,別紙2にはθ線も記載されている。)。(甲32)b 原告Eは,本件各処分がされる以前から,①「β」停留場から「ι」停留場を経由して「κ」停留場までの区間の軌道(以下「κ線」という。)及び「β」停留場から「λ」停留場までの区間の軌道(以下「λ 線」という。κ線とは「μ」停留場で分岐する。)に係る軌道事業を営むとともに,②一般乗合旅客自動車運送事業として,「ζ」停留所から「ν」停留所を経由する複数路線を運行している。(甲10,乙7)(イ) θ線及びε線の停留所の名称は,別紙3のとおりであり,θ線,κ線, λ線及び原告Eが一般乗合旅客自動車運送事業として運行する前記(ア)bの各路線並びにε線に係る路線の略図は,別紙4のとおりである。(乙3,4)イ運賃額(ア)a 原告Dは,θ線の実施運賃を,従前,「ζ」 Eが一般乗合旅客自動車運送事業として運行する前記(ア)bの各路線並びにε線に係る路線の略図は,別紙4のとおりである。(乙3,4)イ運賃額(ア)a 原告Dは,θ線の実施運賃を,従前,「ζ」停留所から「κ」停留 所までの区間を最大で220円,「ξ」停留所までの区間を最大で4 - 4 -00円としていたところ,平成30年3月2日,「ζ」停留所から「κ」停留所までの区間を最大で140円,「ξ」停留所までの区間を最大で250円とする実施運賃の変更を届け出たが,同年7月3日,同届出を取り下げた。(甲9,乙5,30)b κ線及びλ線の運賃は,「β」停留場から「ι」停留場(κ線)ま で又は「π」停留場(λ線)までが100円,上記各区間を越える区間が140円である。 (イ) ε線の実施運賃は,「β」停留所から「κ」停留所までの区間が100円であり,他の区間が250円である。(乙9)(4) 本件各訴えの提起 原告らは,平成30年4月17日,本件各訴えを提起した。(当裁判所に顕著な事実) 3 争点(1) 本案前の争点ア原告らが本件処分1の取消しを求める訴えの原告適格を有するか否か (争点①)イ原告らが本件処分2の取消しを求める訴えの原告適格を有するか否か(争点②)(2) 本案の争点ア本件処分1の違法性の有無(争点③) イ本件処分2の違法性の有無(争点④) 4 争点に関する当事者の主張の要旨(1) 争点①(原告らが本件処分1の取消しを求める訴えの原告適格を有するか否か)(原告らの主張) 処分の取消しの訴えの原告適格は,当該処分の取消しを求めるにつき法律 - 5 -上の利益を有する者に認められるところ,行政事件訴訟法9条2項の定め及び判例によれば,処分の相 らの主張) 処分の取消しの訴えの原告適格は,当該処分の取消しを求めるにつき法律 - 5 -上の利益を有する者に認められるところ,行政事件訴訟法9条2項の定め及び判例によれば,処分の相手方以外の者の原告適格の有無の判断は,同項の定める考慮要素に基づき,処分の根拠法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むか否かの解釈問題とな る。 しかるところ,以下のとおり,原告らは,本件処分1の取消しを求める法律上の利益を有し,本件処分1の取消しを求める訴えの原告適格を有することは明らかである。 ア道路運送法の目的について (ア) 道路運送法1条の文言平成12年改正によっても,道路運送法1条における「道路運送事業」に関する言及は完全に削除されるに至っていない。すなわち,平成12年改正は,同改正前の「公正な競争を確保するとともに」との文言を「合理的なものとする」に変更したにすぎない。そして,道路運送事業の公 正な競争は,当該事業を合理的に運営することの一内容であるといえ,平成12年改正後の同法においても,道路運送事業は,公正な競争の上に成立するものである。 したがって,現行の道路運送法1条にいう「道路運送事業の運営を適正かつ合理的なものと」するとは,「公正な競争の確保」を含むものと 解される。そして,この「公正な競争」とは,「事業の健全な発達を阻害する結果を生ずる競争」を排除した競争を意味し,供給輸送力が輸送需要量に対し著しく不均衡となるような競争が,「事業の健全な発達を阻害する結果を生ずる競争」に該当することは明らかであるから,このような競争を排除する趣旨を有する同法は,既存事業者の利益を保護す 送需要量に対し著しく不均衡となるような競争が,「事業の健全な発達を阻害する結果を生ずる競争」に該当することは明らかであるから,このような競争を排除する趣旨を有する同法は,既存事業者の利益を保護す る趣旨を含むものといえる。 - 6 -この点は,第147回国会の衆議院運輸委員会(当時)において,中馬弘毅運輸政務次官(当時)が,平成12年改正前の道路運送法1条の規定を読み上げた上で,「(同法1条は)こういたしております。これと何ら変わっているところはございませんが,少し時代に合わせて,利用者の利便の向上ということを特記させていただいたようなことでござ います。」と述べ,さらに,「決して,今回の改正におきましても,公正な競争,秩序ということを否定するわけではありません」と述べていることと整合する。 (イ) 道路運送法30条の存在等道路運送法30条2項は,「一般旅客自動車運送事業者は,一般旅客 自動車運送事業の健全な発達を阻害する結果を生ずるような競争をしてはならない。」と定め,同条4項は,国土交通大臣は,これに違反する行為がある場合に,当該行為の停止等を命ずることができる旨定めている。同条の仕組みは,平成12年改正前から同一のものである。 健全な発達を阻害する結果を生ずるような競争は,「道路運送事業の 運営を適正かつ合理的なものと」する(道路運送法1条)ことと相反するものであり,同法30条が平成12年改正の前後で内容を実質的に変えずに残されたことは,同法が,道路運送事業の公正な競争を確保することを目的とし,既存事業者の利益を保護する趣旨を含むことを示すものである。 (ウ) 道路運送法1条の解釈に際して参照すべき関係法令a 交通政策基本法について乗合バスは,人口減少,急速な少子高齢化の影 存事業者の利益を保護する趣旨を含むことを示すものである。 (ウ) 道路運送法1条の解釈に際して参照すべき関係法令a 交通政策基本法について乗合バスは,人口減少,急速な少子高齢化の影響により,輸送人員が年々減少傾向にあり,平成19年度以降約1万0206㎞の路線が完全に廃止され,公共交通空白地域の拡大が深刻化している。このよ うに,必要な地方,地域に必要な公共交通ネットワークがない一方, - 7 -「交通」が,国民の日常生活や社会経済上,欠かすことのできないものであることから,国として交通政策の基本計画を策定し,施策を講ずるために交通政策基本法が成立した。 道路運送法は,バスとタクシーに関する許認可等を定めた法律であるところ,バスとタクシーが交通政策基本法にいう「交通」に該当し ないはずはなく,かえって,同法が成立した背景には,バスを中心とする公共交通ネットワークの縮小という実態があることからすれば,同法の基本的な考え方は,同一の社会情勢の下で運用されている道路運送法においても参酌されなければならない。 b 地域公共交通の活性化及び再生に関する法律(以下「活性化法」と いう。)について活性化法は,交通政策基本法の成立及び施行に伴い,平成26年に,目的規定の改正,第3章第7節(地域公共交通再編事業)を加える等の改正がされた。 地方公共団体が活性化法に基づき作成することができる「持続可能 な地域公共交通網の形成に資する地域公共交通の活性化及び再生を推進するための計画」(活性化法5条。以下「地域公共交通網形成計画」という。)や,地域公共交通網形成計画において定められることがある地域公共交通再編事業(活性化法2条11号)は,急速な少子高齢化によって地域公共交通の維持が困難となっている事情に鑑み 通網形成計画」という。)や,地域公共交通網形成計画において定められることがある地域公共交通再編事業(活性化法2条11号)は,急速な少子高齢化によって地域公共交通の維持が困難となっている事情に鑑みて,地 域毎にその実情に応じて関係者が皆で話し合い,適切な公共交通網を構築し,これを維持するためのものである。道路運送法上の事業者は,活性化法に基づいて地域公共交通網の形成,維持に関わることができ,時には同意権が付与されることとされており(活性化法5条7項,6条,27条の2第3項,4項等参照),これらにより,事業者は,法 律による手続参加の機会が明確に保障されているものといえる。そし - 8 -て,地域公共交通再編事業が実施される場合には,道路運送法上の許認可があったこととされる仕組みとなっていること(活性化法27条の6)や,活性化法が限定的な地域に限った法律ではないことからすれば,活性化法の趣旨は,道路運送法の解釈において参酌されなければならない。 c 交通政策基本法及び活性化法の趣旨である地域公共交通網の維持の観点から道路運送法の目的が解釈されるべきこと交通政策基本法及び活性化法は,いずれも,前記aに述べた公共交通空白地域の拡大等の社会経済的条件の下,一般乗合旅客自動車運送事業の維持が極めて困難となる一方で,バス等を中心とする交通手段 の利便性が高く,通勤,通学等の日常生活において欠かすことのできないものであることから,これらによる地域公共交通網を維持することを目的とするものである。地域公共交通網の維持は,既存事業者が適切かつ合理的に事業を運営し,これを持続的かつ安定的なものとすることが論理的前提となる。 地域公共交通網を維持することは,利用者の利益の一内容であるとともに,既存事業者がその「 事業者が適切かつ合理的に事業を運営し,これを持続的かつ安定的なものとすることが論理的前提となる。 地域公共交通網を維持することは,利用者の利益の一内容であるとともに,既存事業者がその「道路運送事業の運営を適正かつ合理的なものと」することができなければ実現不可能である。 したがって,関係法令である交通政策基本法及び活性化法に照らして検討すると,道路運送法は,既存事業者の利益を保護する趣旨を含 むものといえる。 イ事業計画変更認可の認可基準(道路運送法15条2項,6条)に,競合する既存事業者の利益を個別的に保護する趣旨が含まれていること(ア) クリームスキミング的運行を内容とするものでないことが認可基準となっていること a 本件審査基準(経営許可申請事案)3.(7)は,一般乗合旅客自動車 - 9 -運送事業の許可について,運行計画につき「本件処理要領(運行計画)に定めるところによるクリームスキミング的運行を前提とするものでないこと」を審査基準とし,本件処理要領(運行計画)5.は,クリームスキミング的運行が明らかとなった場合に,行政指導による対応のみならず,道路運送法31条1号に基づく事業改善命令又は同法3 0条4項に基づく停止命令も行うものとしている。 そうすると,道路運送法15条2項が準用する同法6条の認可基準のうち,2号に規定する「当該事業の遂行上適切な計画を有するものであること」については,申請者の運行計画がクリームスキミング的運行を内容とするものでないことが含まれるものである。 この点,クリームスキミング的運行の排除は,平成12年改正において需給調整規制が廃止され,新規参入が容易となったことに伴い,いわゆる「いいとこ取り」だけをする業者を許さないための措置である。「いいとこ取 ,クリームスキミング的運行の排除は,平成12年改正において需給調整規制が廃止され,新規参入が容易となったことに伴い,いわゆる「いいとこ取り」だけをする業者を許さないための措置である。「いいとこ取り」を許さないのは,クリームスキミング的運行が,既存事業者の収益に悪影響を与え,事業の健全な発達を阻害するとと もに,やがては,路線の廃止,安全性の欠如等,それが利用者の利便に対しても悪影響を及ぼすからである。すなわち,クリームスキミング的運行の排除は,路線が競合する既存事業者の利益を保護するためのものである。そして,事業計画変更認可に際し,クリームスキミング的運行を内容とするものでないかを審査するということは,個別の 競合事業者の利益を毀損する事態を招かないかを審査することと同一視することができる。これは,道路運送法1条が定める「道路運送事業の運営を適正かつ合理的なもの」とすることや,「道路運送の総合的な発達を図」ることと整合する。 以上のとおり,事業計画変更認可の認可基準にクリームスキミング 的運行を内容とするものでないことが含まれていることからすれば, - 10 -その根拠法規である道路運送法15条1項は,競合する既存事業者の利益を個別的に保護しているものと解される。 b 被告は,本件審査基準(経営許可申請事案)が,事業計画変更認可の要件として,運行計画がクリームスキミング的運行を前提とするものでないことを定めているのは,オフピーク時間帯の運行回数が著し く少なくなるような極端なクリームスキミング的運行が,道路運送法の目的,特に利用者の利益・利便を害する場合があることから定められたものであって,既存事業者の営業上の利益を考慮して定められたものではない旨主張する。 しかし,前記aに述べたとおり,クリームス 法の目的,特に利用者の利益・利便を害する場合があることから定められたものであって,既存事業者の営業上の利益を考慮して定められたものではない旨主張する。 しかし,前記aに述べたとおり,クリームスキミング的運行に対す る規制は,需給調整規制という事業者の利益が一定程度保護されていた法制度を廃止し,規制が緩和されたことに対応して設けられた制度であるから,需給調整規制とは表裏の関係にある。新規参入が認められやすくなる代わりに,路線における不当な競争を排除し,公正な競争を確保するためのものであり,あらかじめ新規事業者の運行計画に つき,クリームスキミング的運行ではないかを審査し,既存事業者に対する影響をできる限り排除することが,クリームスキミング的運行を規制する趣旨である。 加えて,本件処理要領(運行計画)3.(4)は,運行計画の届出に関する手続として,運輸支局長は,運行計画の設定(変更)届出書を受 理した場合は,その旨適当な手段により利害関係人等が知り得る状態にすることとしており,この「利害関係人」には,当該地域における事業者が含まれる。そして,本件処理要領(運行計画)上,クリームスキミング的運行に該当する場合として,「旅客の利便が損なわれるおそれがあることについて利害関係人等から合理的な説明を伴う申出 がなされ,当該申出が適切なものと認められる場合」が挙げられてい - 11 -ることからすると,既存事業者は,他の事業者(新規事業者を含む。)の運行計画の届出を確認する機会が保障されるのみならず,クリームスキミング的運行のチェック機能が与えられ,その申出によって,間接的に,クリームスキミング的運行を規制することが可能となっている。この点からしても,クリームスキミング的運行の規制は,既存事 業者の利益を 的運行のチェック機能が与えられ,その申出によって,間接的に,クリームスキミング的運行を規制することが可能となっている。この点からしても,クリームスキミング的運行の規制は,既存事 業者の利益を保護する趣旨を含むものであることが明らかである。 したがって,被告の上記主張は失当である。 (イ) 申請者に「一般旅客自動車運送事業の健全な発達を阻害する結果を生ずるような競争」行為がないことが認可基準となっていること道路運送法30条1項ないし3項は,「公衆の利便を阻害する行為の 禁止等」を列挙するものであるところ,本件審査基準(変更認可申請事案)1.(2)④は,事業計画変更認可に際し,申請者に,「公衆の利便を阻害する行為」,すなわち,同条2項に規定する「一般旅客自動車運送事業の健全な発達を阻害する結果を生ずるような競争」行為がないことを審査基準としている。 一般乗合旅客自動車運送事業の健全な発達が阻害されることにより,直接その不利益を被るのは当該事業者であり,特定の路線への新規参入の場合には,既存事業者が不利益を被る。その際に,不当な競争を助長する行為を禁止するのが道路運送法30条であるから,その趣旨は,一定の事業者の利益を保護するものと解釈されなければならない。 道路運送法30条は,一般乗合旅客自動車運送事業の許可を受け,又は事業計画変更認可を受けて同事業を営む事業者を対象とするものではあるが,同法が,上記の許可又は認可がされると同時に,同条4項に基づく停止又は変更の命令をする事態を想定しているとは考え難い。このことは,上記に述べた本件審査基準(変更認可申請事案)1.(2)④の定 めからも明らかである。 - 12 -以上のとおり,事業計画変更認可の認可基準に,申請者に「一般旅客自動車運送事業の健 は,上記に述べた本件審査基準(変更認可申請事案)1.(2)④の定 めからも明らかである。 - 12 -以上のとおり,事業計画変更認可の認可基準に,申請者に「一般旅客自動車運送事業の健全な発達を阻害する結果を生ずるような競争」行為がないことが含まれていることからすれば,その根拠法規である道路運送法15条1項は,競合する既存事業者の利益を個別的に保護しているものと解される。 ウ既存事業者の手続参加の機会が保障されていること地域の需要に対応した乗合輸送サービスの提供を図ることを目的として,道路運送法施行規則9条の2により,地域公共交通会議が定められ,これは,地方公共団体の長,一般乗合旅客自動車運送事業者,住民又は旅客,地方運輸局長等から構成される(同規則9条の3)。 前記ア(ウ)に述べたとおり,近時,公共交通の維持は困難となっており,地域住民の生活交通の確保を目的として,地域において関係者間で十分な話し合いの場を設け,生活交通を維持すべく,地域公共交通会議の運用が期待されている。地域公共交通会議の設置及び運営に関するガイドライン(甲29)によれば,地域の実情に応じた適切な乗合旅客運送の態様及び 運賃・料金等に関する事項として,運行の態様,運賃及び料金,事業計画,運行計画等につき具体的協議を行うこととされている。このように,地域公共交通会議は,地域の生活交通ネットワークを維持することに目的があるところ,地域の生活交通を維持するためには,まずは既存事業者の事業が持続的に実施されることが必要不可欠である。 以上のとおり,既存事業者である一般乗合旅客自動車運送事業者が,地域公共交通会議の構成員とされ,地域公共交通会議を通じて当該地域の乗合輸送に対し関与することが法定されていることから,本件各処分が 以上のとおり,既存事業者である一般乗合旅客自動車運送事業者が,地域公共交通会議の構成員とされ,地域公共交通会議を通じて当該地域の乗合輸送に対し関与することが法定されていることから,本件各処分がこれによってされたか否かにかかわらず,既存事業者には一定の手続参加の機会が保障されているということができる。 したがって,道路運送法は,既存事業者の利益を保護する趣旨を含むと - 13 -解される。 エ本件各処分により害される原告らの利益の内容並びにこれが害される態様及び程度(ア) 本件各処分によりε線の運行が開始され,原告らが運営する路線の利用者がε線に分散し減少することなどにより,原告Dは,年間約1億 6000万円,原告Eは,年間約1億1200万円の各減収を余儀なくされる。 特に,原告Dとの関係では,本件各処分は,原告Dが運営するDバスのうち,最も収支率が高く,その収益で多くの赤字路線を賄っていたθ線にCが参入することを認めるものであった。バス事業は,国民の日常 生活に不可欠の移動手段であり,生活や社会経済活動と密接な関係を構築しているところ,一人の利用者から得られる運賃収入が決して高額ではない一方で,決められた運行計画に従って,仮に利用者がなくとも運行することは,バス事業者に課せられた使命であり,義務でもある。バス事業者は,黒字路線から得られる収入をもって,赤字路線を維持する 内部補助が常態化しており,その額の総計は,公的な補助金の総計よりもはるかに多い。バス事業者にとって運賃収入が減ることは,単に収入が減ることを意味するだけではなく,当該事業全体の運営に重大な支障を生じさせるものである。 (イ) したがって,原告らが本件各処分によって受ける不利益は,単なる 収入の減少のみならず,事業の が減ることを意味するだけではなく,当該事業全体の運営に重大な支障を生じさせるものである。 (イ) したがって,原告らが本件各処分によって受ける不利益は,単なる 収入の減少のみならず,事業の廃止の危険を引き受けることでもある。 たまたま原告らが広く事業を展開していることから,現在,赤字路線の廃止はしていないが,このことは問題を先送りしたにすぎない。本件各処分がされたことは,中小規模の事業者であれば廃業を考えざるを得ない程度に衝撃的な事態であるといえる。本件各処分は,地域の公共交通 網を崩壊させる危険性を有している。 - 14 -(ウ) 以上のとおり,本件各処分により,道路運送法の目的である道路運送事業の適正かつ合理的な運営と利用者の保護が,いずれも害される可能性が高いにもかかわらず,これを回復し,是正する手段が皆無であることは,明らかに不合理であり,その利益を回復するための救済手段が必要不可欠である。 オ原告らの主張のまとめ以上のとおり,本件のように,違法な事業計画変更認可によって,既存事業者は,一般乗合旅客自動車運送事業を持続的に運営することができないこととなる危険を負うところ,道路運送法は,社会経済情勢や他の関係法令と相まって,道路運送事業の適正かつ合理的な運営,特に地域の公共 交通網の維持をもその目的としていると解され,事業計画変更認可についてもこの目的は妥当するから,事業計画変更認可の根拠法規は,既存事業者の利益を保護する趣旨を含むものである。 したがって,原告らは,本件処分1の取消しを求める法律上の利益を有し,本件処分1の取消しを求める訴えの原告適格を有する。 (被告の主張)ア原告適格の判断枠組みについて処分の名宛人以外の第三者に当該処分の取消しの訴えの原告適格を肯定 上の利益を有し,本件処分1の取消しを求める訴えの原告適格を有する。 (被告の主張)ア原告適格の判断枠組みについて処分の名宛人以外の第三者に当該処分の取消しの訴えの原告適格を肯定するためには,当該第三者が当該処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(判例により,「当該処分により自己の権利若しくは法律上 保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者」とされている。)であることが必要である(行政事件訴訟法9条1項)。 そして,原告適格の有無は,行政訴訟において適法性が争われている処分の根拠法規の解釈問題であり,当該処分の根拠法規が,特定の範囲の個人の権利利益を保護することを目的として,行政権の行使に制約を課して いる場合には,当該特定の範囲の個人について原告適格が認められる。 - 15 -したがって,原告適格の有無を判断するためには,当該処分の根拠法規が,個別的な利益を保護することを目的として,行政権の行使に制約を課しているといえるかどうかについて検討する必要がある。 イ原告らが本件処分1につき法律上保護された利益を有しないこと道路運送法の目的を定めた同法1条に係る平成12年改正及び平成18 年改正の内容をみると,平成12年改正及び平成18年改正を経た同法は,輸送の安全確保とともに利用者の利益保護及び利便の増進を目的として掲げ,そのために需要の多様化及び高度化に対応したサービスの提供を促進することとして,事業者間の競争により,多様なサービスが提供され,利用者の利益が図られるようにしたものであり,事業者の利益の保護は,目 的ではなく,目的実現のために常に必要とされるものでもないことを明らかにしているといえる。 そして,平成12年改正前の道路運送法は,一般乗合旅客自 にしたものであり,事業者の利益の保護は,目 的ではなく,目的実現のために常に必要とされるものでもないことを明らかにしているといえる。 そして,平成12年改正前の道路運送法は,一般乗合旅客自動車運送事業を免許制とした上,その需要と供給の均衡を図るために,供給輸送力が輸送需要量に対し不均衡とならないことを免許基準とする需給調整規制に より,既存事業者を保護していたのに対し,平成12年改正後の同法は,輸送の安全確保,利用者保護等の面で一定の要件を満たす者には等しく参入を認めることとし,これを許可制とした上,事業許可の基準としても,上記のような需給調整規制を廃止した。 一般乗合旅客自動車運送事業者が,道路運送法15条1項に基づき事業 計画変更認可を受ける場合にあっても,同条2項が同法6条を準用していること等からすれば,上記の趣旨は同様に妥当するものである。 本件審査基準(経営許可申請事案)において,競合事業者の利益を考慮したものとみられる審査基準が見当たらないのも,上記の趣旨に沿ったものということができる。 以上によれば,平成12年改正及び平成18年改正を経た道路運送法が, - 16 -一般旅客自動車運送事業許可や事業計画変更認可による新規参入について,個々の既存事業者の営業に関する利益を,一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,個別的利益として保護していると解することはできない。 したがって,原告らは,本件処分1につき,法律上保護された利益を有しないというべきであり,本件処分1の取消しを求めるにつき法律上の利 益を有する者(原告適格を有する者)には該当しない。 ウ原告らの主張について(ア) 道路運送法の目的に関する原告らの主張についてa 原告らは,道路運送法30条が平成12年改正の前後で内 益を有する者(原告適格を有する者)には該当しない。 ウ原告らの主張について(ア) 道路運送法の目的に関する原告らの主張についてa 原告らは,道路運送法30条が平成12年改正の前後で内容を実質的に変えずに残されたことは,同法が,道路運送事業の公正な競争を 確保することを目的とし,既存事業者の利益を保護する趣旨を含むことを示すものである旨主張する。 しかし,前記イに述べたとおり,事業者の利益の保護は,道路運送法の目的ではなく,目的実現のために常に必要とされるものでもないことからすれば,同法30条2項が,「一般旅客自動車運送事業の健 全な発達を阻害する結果を生ずるような競争」を禁じるのも,事業者間の正当な競争により,需要の多様化及び高度化に対応した多様なサービスの提供を促進するという観点からであって,事業者の営業上の利益を個別的利益として保護する趣旨に出たものではないことは明らかである。 したがって,原告らの上記主張は失当である。 b 原告らは,道路運送法の関係法令である活性化法に照らして検討すると,道路運送法は,既存事業者の利益を保護する趣旨を含むものといえる旨主張する。 しかし,活性化法には,一般乗合旅客自動車運送事業の新規参入等 に関する手続に関連する規定として,地方公共団体がその地域公共交 - 17 -通再編実施計画(活性化法27条の2)について活性化法27条の3第2項の認定を受けた場合には,当該計画に定められた地域公共交通再編事業について道路運送法所定の手続をも経たものとみなす旨の特例(活性化法27条の6第1項)等があるものの,これらは,いずれも本件各処分に適用されるものではなく,本件各処分の取消しについ て原告らが法律上保護された利益を有する者といえるか否かの判断におい (活性化法27条の6第1項)等があるものの,これらは,いずれも本件各処分に適用されるものではなく,本件各処分の取消しについ て原告らが法律上保護された利益を有する者といえるか否かの判断において,活性化法の規定が考慮される余地はない。 この点をおき,活性化法6条に基づく協議会(以下「法定協議会」という。)の構成員に,「関係する公共交通事業者等」(同条2項2号)として一般乗合旅客自動車運送事業者(活性化法2条2号ハ)が 含まれている点についてみても,一般乗合旅客自動車運送事業の新規参入等に係る個別の処分について,法定協議会の直接的,具体的な関与を定める規定はない上,法定協議会において,個々の公共交通事業者の事業計画や運賃等についての決定がされるものでもない。活性化法が,法定協議会の構成員として公共交通事業者等を想定しているの は,当該事業者等が,運送サービスの質の向上のために,交通事業者としての知見や情報を提供することを期待したものであって,既存事業者の営業上の利益を保護しようとした趣旨ではない。 したがって,原告らの上記主張は失当である。 (イ) 事業計画変更認可の認可基準に関する原告らの主張について a(a) 原告らは,本件審査基準(経営許可申請事案)3.(7)の定めなどを根拠に,道路運送法6条2号に規定する「当該事業の遂行上適切な計画を有するものであること」には,申請者の運行計画がクリームスキミング的運行を内容とするものでないことが含まれるとして,同法15条1項は,競合する既存事業者の利益を個別的に保護 している旨主張する。 - 18 -しかし,本件審査基準(経営許可申請事案)が,事業計画変更認可の要件として,運行計画がクリームスキミング的運行を前提とするものでないことを定めているのは, している旨主張する。 - 18 -しかし,本件審査基準(経営許可申請事案)が,事業計画変更認可の要件として,運行計画がクリームスキミング的運行を前提とするものでないことを定めているのは,平成12年改正に際し,運輸省自動車交通局が平成11年11月に作成した「乗合バスとタクシーに係る需給調整廃止に伴う新たな制度等について」(乙28)に 記載されているところと同様の観点,すなわち,オフピーク時間帯の運行回数が著しく少なくなるような極端なクリームスキミング的運行が,道路運送法の目的,特に利用者の利益・利便を害する場合があるから定められたものであって,既存事業者の営業上の利益を考慮して定められたものではない。 したがって,原告らの上記主張は失当である。 (b) 原告らは,本件処理要領(運行計画)において,クリームスキミング的運行に該当する場合として,「旅客の利便が損なわれるおそれがあることについて利害関係人等から合理的な説明を伴う申出がなされ,当該申出が適切なものと認められる場合」が挙げられてい ることを根拠に,既存事業者は,クリームスキミング的運行のチェック機能が与えられ,その申出によって,間接的に,クリームスキミング的運行を規制することが可能となっている旨主張する。 しかし,原告らが指摘する「利害関係人等から合理的な説明を伴う申出がなされ」ることは,本件処理要領(運行計画)4.(1)及び (2)にいうA/Bの数値が競合系統の1.0倍を超え1.5倍以下である場合について,当該運行計画のクリームスキミング的運行該当性に係る審査を行う端緒とされるものにすぎない。しかも,上記「申出」については,「旅客の利便が損なわれるおそれがあることについて」の合理的な説明を伴うものと規定され,その説明に対して「当 当性に係る審査を行う端緒とされるものにすぎない。しかも,上記「申出」については,「旅客の利便が損なわれるおそれがあることについて」の合理的な説明を伴うものと規定され,その説明に対して「当 該申出が適切なものと認められる」か否かが判断されることになる - 19 -のであるから,本件処理要領(運行計画)は,クリームスキミング的運行該当性の判断を,専ら利用者の利益・利便を保護する観点で行うものとしているのである。 したがって,原告らの上記主張は失当である。 b 原告らは,本件審査基準(変更認可申請事案)1.(2)④が,事業計 画変更認可に際し,申請者に,道路運送法30条2項に規定する「一般旅客自動車運送事業の健全な発達を阻害する結果を生ずるような競争」行為がないことを審査基準としていることなどを根拠に,同法15条1項は,競合する既存事業者の利益を個別的に保護している旨主張する。 しかし,道路運送法30条を既存事業者の個別的利益を保護する趣旨の規定と解することができないことは,前記(ア)aに述べたとおりである。 そして,本件審査基準(変更認可申請事案)が,原告らが上記指摘する要件を定めた趣旨は,申請者が法令遵守の点で問題のないことを 確認するためである。すなわち,法令を遵守しない者は事業を適切に運営しない蓋然性が極めて高いことから,事業の適切な運営を確保する観点から,事業規模を拡大しようとする事業計画変更認可の場合において,事業者が法令遵守の点で問題がないものであることを確認するため,従前営んでいた事業における公衆の利便を阻害する行為等に つき改善命令を受けていた場合に,当該事業計画変更認可に係る申請の前に,その命令された事項を改善していたことを認可要件としたものであって,かかる規定に,新たに申 公衆の利便を阻害する行為等に つき改善命令を受けていた場合に,当該事業計画変更認可に係る申請の前に,その命令された事項を改善していたことを認可要件としたものであって,かかる規定に,新たに申請する当該事業計画によって参入する地域又は路線において競合し得る既存事業者の利益の考慮を読み込むことはできない。 したがって,原告らの上記主張は失当である。 - 20 -(ウ) 手続参加の機会に関する原告らの主張について原告らは,既存事業者である一般乗合旅客自動車運送事業者が,地域公共交通会議の構成員とされ,地域公共交通会議を通じて当該地域の乗合輸送に対し関与することが法定されていることから,本件各処分がこれによってされたか否かにかかわらず,既存事業者には一定の手続参加 の機会が保障されているということができるとして,道路運送法は,既存事業者の利益を保護する趣旨を含む旨主張する。 しかし,一般旅客自動車運送事業者が地域公共交通会議の構成員とされているのは,当該地域の需要の実情について,実際に当該事業を営んでいる事業者がこれを把握していると考えられることなどによるものに すぎない上,事業計画変更認可及び上限運賃設定認可に地域公共交通会議が必要的に関与するものと定められているわけではない。また,地域公共交通会議は,平成18年改正後の道路運送法及び同法施行規則に基づき,「地域住民の生活に必要な旅客輸送の確保その他の旅客の利便の増進を図る」(同施行規則9条の2)目的で,地方公共団体の長が任意 に設置するものである。 したがって,地域公共交通会議の構成員とされていることをもって,一般旅客自動車運送事業者に,他の事業者の事業計画変更認可や上限運賃設定認可における手続参加の機会が保障されているとか,道路運送法が既存 たがって,地域公共交通会議の構成員とされていることをもって,一般旅客自動車運送事業者に,他の事業者の事業計画変更認可や上限運賃設定認可における手続参加の機会が保障されているとか,道路運送法が既存事業者の営業上の利益を保護しているなどとはいえない。原告ら の上記主張は失当である。 (エ) 本件各処分により害されるとされる原告らの利益の内容等に関する原告らの主張について原告らは,本件各訴えの原告適格を有することの根拠として,ε線の運行によって原告らに生ずるとする減収等を主張する。 しかし,原告らが本件各処分によって害されると主張する既存事業者 - 21 -の営業上の利益は,その性質上,まずもって,当該処分の根拠法規が既存事業者の営業上の利益を個別的利益として保護する趣旨を含むものであるかどうかによって,取消訴訟の原告適格を基礎付ける「法律上保護された利益」といえるか否かが決せられるべきであって,当該処分により原告らが害されると主張する営業上の利益の具体的内容及び程度等を 直ちに問題とすることは相当ではない。 そして,本件各処分の各根拠法規が既存事業者の営業上の利益を個別的利益として保護する趣旨を含むものと解されないことは,これまでに述べたところ及び後記(2)の(被告の主張)に述べるとおりであるから,原告らが本件各処分により害されると主張する営業上の利益の具体的内 容及び程度等について考慮するまでもなく,原告らが本件各処分につき法律上保護された利益を有しないことは明らかである。 (2) 争点②(原告らが本件処分2の取消しを求める訴えの原告適格を有するか否か)(原告らの主張) 前記(1)の(原告らの主張)のア,ウ及びエに述べた道路運送法の目的,既存事業者への手続参加の機会の保障及び本件各処分 2の取消しを求める訴えの原告適格を有するか否か)(原告らの主張) 前記(1)の(原告らの主張)のア,ウ及びエに述べた道路運送法の目的,既存事業者への手続参加の機会の保障及び本件各処分により害される原告らの利益の内容等のほか,以下に述べるところからすれば,原告らが,本件処分2の取消しを求める訴えの原告適格を有することは明らかである。 ア道路運送法9条が運賃等の認可制度及び適正原価適正利潤の原則を定め ており,同条に既存事業者の利益を個別的に保護する趣旨が含まれていること(ア) 一般乗合旅客自動車運送事業の運賃について一般乗合旅客自動車運送事業の運賃は,道路運送法9条が定める認可制度を採用している。事業収入の基礎となる運賃を,事業者の完全な裁 量に委ねることはせず,事前に行政庁の審査を経ることとされ,認可さ - 22 -れなければ事業者は運賃を設定することができない。一般乗合旅客自動車運送事業は,公共性を有することから,あらかじめ,その運賃を審査の対象とすることで,不当な原価計算等による暴利等を防止して利用者を保護し,他方,一定の利潤を加えた対価であることを担保して,事業者が健全な経営を行うことができるようにするため,認可制度を採用し ているものである。 利用者の保護は,平成12年改正によらずとも考慮されるべきものであるが,少なくとも,平成12年改正は,事業者に対し運賃の設定に係る一定の裁量を与えたという点で,利用者の利便の向上を図るというにとどまり,運賃の認可制度そのものは,平成12年改正前と同改正後(現 行)とでその目的に異なるところはない。 (イ) 適正原価適正利潤の原則について上限運賃等設定認可においては,事業者が申請した運賃の内容が「能率的な経営の下における適正な原価に適 後(現 行)とでその目的に異なるところはない。 (イ) 適正原価適正利潤の原則について上限運賃等設定認可においては,事業者が申請した運賃の内容が「能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えないものであるかどうか」,すなわち,適正原価適正利潤の原則に適合し ているか否かが審査される。 道路運送法は,事業者の新規参入を促すことで多様なサービスの提供がされることを促進しつつも,運賃を認可制度にかからしめている。その審査における「適正な」原価と「適正な」利潤とは,利用者にとって不当に高額な運賃が設定されていないよう審査するだけではなく,当該 申請者のみならず道路運送事業が適切かつ合理的に運営されるという,より広い意味で解釈すべきである。実際に,上限運賃における原価計算の方法は,地域ごとに定められ,その認可も,地域ごとに行うこととされており,このことは,当該地域において存在する公共交通網に対する影響を考慮するものといえることから,適正原価適正利潤の原則は,既 存事業者の事業活動への影響に対し配慮する趣旨を含むものといえる。 - 23 -この点,仮に,上限運賃が極端に安価に設定されている場合には,当該地域において調達することとなる必要な資源の確保の結果発生する原価計算をしなかったものといえるから,当該運賃は,「不適正な」原価あるいは利潤によるものといわざるを得ず,適正原価適正利潤の原則に違反するものである。 (ウ) 実施運賃の変更命令について運賃が,他の事業者に対して不当な影響を及ぼす場合があることは,「他の一般旅客自動車運送事業者との間に不当な競争を引き起こすおそれがあるものであるとき」に運賃変更命令をすることができる旨の制度が置かれていることから明らかである(道路運送法 す場合があることは,「他の一般旅客自動車運送事業者との間に不当な競争を引き起こすおそれがあるものであるとき」に運賃変更命令をすることができる旨の制度が置かれていることから明らかである(道路運送法9条6項3号)。 この運賃変更命令は,認可された上限運賃の範囲内における実施運賃額が他の事業者との間で不当な競争を引き起こす場合を想定するものであるが,一般乗合旅客自動車運送事業における運賃制度の一環であり,上限運賃制度と相まって,利用者の利益の保護及び道路運送事業の適正かつ合理的な運営(健全な経営の確保)を目的として設けられたもので あるから,運賃変更命令及び上限運賃制度は,一体的な制度とみるべきである。極端に安価な運賃額の設定がされた場合,道路運送法は,それが上限運賃であれば,同法9条2項の審査において,それが実施運賃であれば,同条6項3号により対処することを想定しているものといえる。 したがって,道路運送法が定める一般乗合旅客自動車運送事業の運賃 認可制度は,既存事業者の事業活動上の利益を保護する趣旨を含むものと解することができる。 イ本件処理方針(運賃等上限認可)の定める取扱いによれば,既存事業者の個別的利益が保護されていること(ア) 本件処理方針(運賃等上限認可)第3の2.及び第5の1.本文は, 参入事業者の運賃の制定形態及び上限運賃の水準を,いずれも原則とし - 24 -て既存事業者のそれらと同一とする旨を定めている。 利用者の利益を強調し,多様なニーズに応じたサービスの提供を促進するということであれば,運賃の制定形態や上限運賃の水準について,既存事業者のそれらを考慮する必要はない。それにもかかわらず,本件処理方針(運賃等上限認可)において「既存事業者」の文言が登場し, 新規参入事業者 れば,運賃の制定形態や上限運賃の水準について,既存事業者のそれらを考慮する必要はない。それにもかかわらず,本件処理方針(運賃等上限認可)において「既存事業者」の文言が登場し, 新規参入事業者の運賃制定形態と上限運賃の水準について,既存事業者のそれと同一であるか否かを審査の出発点としていることは,上限運賃等設定認可の審査手続において,既存事業者の利益に配慮した取扱いをしているというほかなく,上限運賃等設定認可においては,既存事業者の個別的利益が保護されていると解される。 (イ) 被告は,参入事業者の上限運賃が,原則として既存事業者の上限運賃と同一とすることとされているのは,事業者が不当に高い運賃等を設定することによって得ようとする過剰な利潤を防止する観点から,道路運送法9条2項にいう「能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えない」ものとしての上限運賃を定めるに当たって, 既に認可されている既存事業者の上限運賃と同一とすることが差し当たり相当であると考えられたためである旨主張する。 しかし,被告の上記主張は,自身が主張するところの平成12年改正の趣旨と全く整合しない上,上限運賃等設定認可に際して計算される原価は事業者ごとに異なるのであるから,差し当たり既存事業者の上限運 賃と同一とするのが相当であるということになれば,およそ道路運送法9条2項に定める要件審査をしていないことになる。 したがって,被告の上記主張は,明らかに不合理な結果をもたらすものであって,失当である。 ウ道路運送法89条により既存事業者の手続参加の機会が保障されている - 25 -こと地方運輸局長は,上限運賃等設定認可について,必要があると認めるときは,利害関係人又は参考人の出頭を求めて意見を聴取す より既存事業者の手続参加の機会が保障されている - 25 -こと地方運輸局長は,上限運賃等設定認可について,必要があると認めるときは,利害関係人又は参考人の出頭を求めて意見を聴取することができ,当該意見の聴取に際しては,利害関係人に対し,証拠を提出する機会が与えられなければならない(道路運送法89条1項1号,同条3項)。そし て,上記の「利害関係人」には,当該上限運賃等設定認可の申請者と競争の関係にある者が含まれる(同法施行規則56条2号)。 上限運賃が不当に低廉な額に抑えられて認可されることになれば,必然的に届出運賃も当該上限運賃額の範囲内となることから,そのような不適切な運賃体系による運行がされれば,不公正な競争となる。これを未然に 防ぐため,競争関係者の意見聴取の機会が保障されている。 したがって,これらの手続は,競合する既存事業者が認可手続に参加することを明確に認めたものであり,その目的は,既存事業者の利益を保護する点にあるから,道路運送法は,上限運賃等設定認可について,既存事業者の利益を個別的に保護していると解される。 エ原告らの主張のまとめ以上のとおり,本件のように,違法な上限運賃等設定認可によって,既存事業者は,その事業に直結する運賃収入の減少という不利益を被るところ,参入事業者に対する上限運賃等設定認可の根拠法規は,既存事業者の利益を保護する趣旨を含むものである。 したがって,原告らは,本件処分2の取消しを求める法律上の利益を有し,本件処分2の取消しを求める訴えの原告適格を有する。 (被告の主張)ア原告らが本件処分2につき法律上保護された利益を有しないこと道路運送法において,事業者の利益の保護は,目的ではなく,目的実現 のために常に必要とされるものでも する。 (被告の主張)ア原告らが本件処分2につき法律上保護された利益を有しないこと道路運送法において,事業者の利益の保護は,目的ではなく,目的実現 のために常に必要とされるものでもないことは,前記(1)の(被告の主張) - 26 -のイに述べたとおりである。 そして,道路運送法9条1項が,一般乗合旅客自動車運送事業者において,当該事業の運賃等の上限を定め又は変更する際に国土交通大臣の認可を必要とするのは,一般乗合旅客自動車運送事業が高度の公共性を有しているため,その運賃等が一般公衆に与える影響も重大であって,これを自 由に放任することができないからである。すなわち,同条の趣旨は,利用者の安全を確保し,利用者の利益を保護するところにある。 そして,上限運賃等設定認可について,既存事業者の利益が個別的利益として保護されることをうかがわせる規定は存在しない。 したがって,原告らは,本件処分2につき,法律上保護された利益を有 しないというべきであり,本件処分2の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(原告適格を有する者)には該当しない。 イ原告らの主張について原告らの主張が失当であることは,前記(1)の(被告の主張)のウ(ア),(ウ)及び(エ)に述べたところのほか,以下のとおりである。 (ア) 上限運賃等設定認可の認可基準等に関する原告らの主張について原告らは,①上限運賃等設定認可の認可要件を定める道路運送法9条2項は,適正原価適正利潤の原則を定めたものであり,既存事業者の事業活動への影響に対し配慮する趣旨を含むものである,②「他の一般旅客自動車運送事業者との間に不当な競争を引き起こすおそれがあるもの であるとき」にすることができる同条6項3号に基づく運賃変更命令と同条1項に基づく 慮する趣旨を含むものである,②「他の一般旅客自動車運送事業者との間に不当な競争を引き起こすおそれがあるもの であるとき」にすることができる同条6項3号に基づく運賃変更命令と同条1項に基づく上限運賃制度とは,一体的な制度とみるべきであるから,同法が定める一般乗合旅客自動車運送事業の運賃認可制度自体が,既存事業者の事業活動上の利益を保護する趣旨を含むものである旨主張する。 しかし,平成12年改正を経た現行の道路運送法9条は,利用者の利 - 27 -便向上の観点から,運賃についても事業者が自らの経営判断に基づき設定することができる制度とすることを企図し,事業者の競争を促進するため,実施運賃については従前の認可制から事前届出で足りるものとしたことを前提に,事業者が過剰な利潤を得るために不当に高い運賃を設定することを防止するため,上限運賃の設定について認可制としたもの である。それゆえ,同条2項に基づき行う上限運賃等設定認可に係る審査は,運賃が不当に「高い」ものとなることを防ぐ観点で行うものとして定められている。上限運賃等設定認可は,実施運賃の「下限」を定めるものではなく,同法の規定上,不当に「安い」ものではないかという観点で上限運賃等設定認可に係る審査をすることは想定されていない。 また,道路運送法は,一般旅客自動車運送事業者が極端に「安い」運賃を設定するなどすることによる他の事業者との間に不当な競争を引き起こすおそれについては,上限運賃等設定認可に係る審査によってこれを防止するのではなく,実施運賃の届出(同法9条3項)により実際に利用者が支払うことになる運賃を把握し,その変更命令を発動するか否 かの国土交通大臣の裁量判断の要件として考慮する(同条6項3号)こととしているところ,同号の規定は,競合事 3項)により実際に利用者が支払うことになる運賃を把握し,その変更命令を発動するか否 かの国土交通大臣の裁量判断の要件として考慮する(同条6項3号)こととしているところ,同号の規定は,競合事業者の営業上の利益を個別的利益として保護する趣旨の規定とはいえない。この点をおくとしても,実施運賃の変更命令の発動に係る判断と上限運賃等設定認可に係る審査とは,異なる観点でされることが予定されているのであるから,同号は, 上限運賃等設定認可の根拠法規に係る法律上保護された利益の判断に当たり考慮されるべきものではない。 したがって,上限運賃等設定認可の根拠法規である道路運送法9条1項が,競合事業者の営業上の利益を個別的利益として保護する趣旨を含む規定と解され得ないことは明らかであり,原告らの上記主張はいずれ も失当である。 - 28 -(イ) 本件処理方針(運賃等上限認可)の定める取扱いに関する原告らの主張について原告らは,本件処理方針(運賃等上限認可)第5の1.本文が,参入事業者の上限運賃の水準を原則として既存事業者のそれと同一とする旨を定めていることを根拠に,上限運賃等設定認可においては,既存事業 者の個別的利益が保護されていると解される旨主張する。 本件処理方針(運賃等上限認可)において,上限運賃の基準は,本来,本件処理方針(運賃等上限認可)の別紙2「一般乗合旅客自動車運送事業の運賃原価・収入の算定基準」に従い算定されるところ,参入事業者の場合,運送収入の算定基礎とされる輸送人員としては,既存事業者の 輸送人員(実績)からの移動及び新規開拓が見込まれるものの,その人員数の予測が困難であるために,必ずしも上記算定基準によることが最も適切とはいえない場合がある。参入事業者の上限運賃を,原則として既存事業 員(実績)からの移動及び新規開拓が見込まれるものの,その人員数の予測が困難であるために,必ずしも上記算定基準によることが最も適切とはいえない場合がある。参入事業者の上限運賃を,原則として既存事業者の上限運賃と同一とすることとされているのは,事業者が不当に高い運賃等を設定することによって得ようとする過剰な利潤を防止 する観点から,道路運送法9条2項にいう「能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えない」ものとしての上限運賃を定めるに当たって,既に認可されている既存事業者の上限運賃と同一とすることが差し当たり相当であると考えられたことによる。 したがって,原告が指摘する本件処理方針(運賃等上限認可)の定め は,既存事業者の営業上の利益を保護する趣旨によるものではないから,原告らの上記主張は失当である。 (ウ) 道路運送法89条による手続参加の機会に関する原告らの主張について原告らは,道路運送法89条が上限運賃等設定認可について定める手 続は,競合する既存事業者が認可手続に参加することを明確に認めたも - 29 -のであり,その目的は,既存事業者の利益を保護する点にある旨主張する。 しかし,前記(ア)に述べた上限運賃等設定認可の趣旨にも照らせば,道路運送法89条1項1号,2項及び同法施行規則56条が,上限運賃等設定認可に際し,利害関係人として申請者と競争の関係にある者につい ても意見聴取の手続を定めたのは,上限運賃等設定認可に当たり,当該交通圏の状況に照らし,申請に係る上限運賃が適切であるかを検討する限りにおいて,競争関係者の意見聴取を可能としたものにすぎず,上限運賃等設定認可について,競合事業者の利益を個別的利益として保護していることを示すものではない。 したがって,原 を検討する限りにおいて,競争関係者の意見聴取を可能としたものにすぎず,上限運賃等設定認可について,競合事業者の利益を個別的利益として保護していることを示すものではない。 したがって,原告らの上記主張は失当である。 (3) 本案の争点(争点③及び争点④)本案の争点に関する当事者の主張の要旨は,別紙5「本案の争点に関する当事者の主張の要旨」記載のとおりである。 第3 当裁判所の判断 1 争点①(原告らが本件処分1の取消しを求める訴えの原告適格を有するか否か)について(1) 判断の枠組みについてア行政事件訴訟法9条は,取消訴訟の原告適格について規定するが,同条1項にいう当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者」 とは,当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうのであり,当該処分を定めた行政法規が,不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には,このような利 益もここにいう法律上保護された利益に当たり,当該処分によりこれを侵 - 30 -害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は,当該処分の取消しの訴えにおける原告適格を有するものというべきである。そして,当該処分の相手方以外の者について上記の法律上保護された利益の有無を判断するに当たっては,当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく,当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内 容及び性質を考慮し,この場合において,当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たっては,当該法令と目的を共通にする関係法令があるときは 令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内 容及び性質を考慮し,この場合において,当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たっては,当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌し,当該利益の内容及び性質を考慮するに当たっては,当該処分がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案 すべきものである(同条2項,最高裁平成16年(行ヒ)第114号同17年12月7日大法廷判決・民集59巻10号2645頁参照)。 イ原告らは,本件各処分に基づき新設運行される一般乗合旅客自動車運送事業の路線と競合する同事業の路線を運行しているなどとして,本件各処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者であると主張するとこ ろ,以下,前記アに説示した判断の枠組みに従い,本件処分1の相手方以外の者である原告らが本件処分1の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者であるといえるか否かを検討する。 (2) 検討ア道路運送法15条1項の趣旨の検討方法 本件処分1の根拠法規である道路運送法15条1項についてみると,同項は,一般旅客自動車運送事業者が,一定の事業計画の変更をしようとするときは,国土交通大臣の認可(事業計画変更認可)を受けなければならない旨を定めるものであるが,同条2項により,一般旅客自動車運送事業許可の基準を定める同法6条が,事業計画変更認可について準用されてい ることから,事業計画の変更は,一般旅客自動車運送事業許可における審 - 31 -査と同様の観点からその適否が審査されるものである。 そこで,本件処分1の根拠法規である道路運送法15条1項の趣旨は,基本的に,一般旅客自動車運送事業許可を 運送事業許可における審 - 31 -査と同様の観点からその適否が審査されるものである。 そこで,本件処分1の根拠法規である道路運送法15条1項の趣旨は,基本的に,一般旅客自動車運送事業許可を定める同法4条1項の趣旨に照らし検討することが相当であると解される。 イ道路運送法4条1項の趣旨に照らした検討 (ア) 平成12年改正前の道路運送法においては,一般乗合旅客自動車運送事業等を経営しようとする者は,国土交通大臣の免許を受けることを要するものとされる(同法4条1項)とともに,その免許の基準として,「当該事業の開始が輸送需要に対し適切なものであること」(同法6条1項1号)や,「当該事業の開始によって当該路線又は事業区域に係る 供給輸送力が輸送需要量に対し不均衡とならないものであること」(同項2号)が掲げられ,一般乗合旅客自動車運送事業について,いわゆる需給調整の仕組みが採られていた。 平成12年改正により,一般乗合旅客自動車運送事業は,現行の許可制(道路運送法4条1項)に移行し,かつ,上記の需給調整を内容とす る免許の基準の定めは削除された。現行の同法6条は,一般旅客自動車運送事業許可の基準として,「当該事業の計画が輸送の安全を確保するため適切なものであること」(1号),「前号に掲げるもののほか,当該事業の遂行上適切な計画を有するものであること」(2号)及び「当該事業を自ら適確に遂行するに足る能力を有するものであること」(3 号)を掲げているところ,これらの基準は,輸送の安全,事業の適切性等を確保する趣旨で定められたものであって,その文言自体からは,競合する既存事業者の利益を保護する趣旨を読み取ることは困難である。 (イ) ここで,道路運送法の目的についてみると,平成12年改正前の道路運送法1条は, められたものであって,その文言自体からは,競合する既存事業者の利益を保護する趣旨を読み取ることは困難である。 (イ) ここで,道路運送法の目的についてみると,平成12年改正前の道路運送法1条は,同法は,貨物自動車運送事業法と相まって,道路運送事 業の適正な運営及び公正な競争を確保するとともに,道路運送に関する - 32 -秩序を確立することにより,道路運送の総合的な発達を図り,もって公共の福祉を増進することを目的とする旨を定めていたが,平成12年改正により,上記のうち,道路運送事業の「公正な競争」の確保や,「道路運送に関する秩序」の確立といった文言は削除された。 そして,平成18年改正により,「輸送の安全」の確保や,道路運送 の利用者の「利便の増進」を図るものであること等が加えられ,現行の道路運送法1条は,同法は,貨物自動車運送事業法と相まって,道路運送事業の運営を適正かつ合理的なものとし,並びに道路運送の分野における利用者の需要の多様化及び高度化に的確に対応したサービスの円滑かつ確実な提供を促進することにより,輸送の安全を確保し,道路運送 の利用者の利益の保護及びその利便の増進を図るとともに,道路運送の総合的な発達を図り,もって公共の福祉を増進することを目的とする旨を定めるに至っている。 なお,道路運送法1条が同法と目的を共通にする関係法として掲げる貨物自動車運送事業法は,同法1条において,輸送の安全の確保や,貨 物自動車運送事業の健全な発達を図ること等をその目的として掲げ,平成12年改正前の道路運送法1条が掲げていたところに相当する,公正な競争の確保や,運送に関する秩序の確立といった,事業者間の利益の調整に関連する文言は掲げられていない。 (ウ) 以上にみた,道路運送法6条が定める一般旅客自動車運 掲げていたところに相当する,公正な競争の確保や,運送に関する秩序の確立といった,事業者間の利益の調整に関連する文言は掲げられていない。 (ウ) 以上にみた,道路運送法6条が定める一般旅客自動車運送事業許可 の基準のほか,同法4条1項及び6条に係る平成12年改正の内容や,平成12年改正を経た同法1条が定めるところにも照らすと,同法4条1項は,その許可の権限を行使することを通じて,一般旅客自動車運送事業の運営を適正かつ合理的なものとすることにより,当該事業に係る輸送の安全を確保し,当該事業の利用者の利益を保護することをその趣 旨とするものと解され,このことは,同法15条1項の認可についても, - 33 -同様に当てはまるものというべきである。 ウ原告らの主張の検討(ア) 道路運送法の目的に関する原告らの主張についてa 原告らは,一般旅客自動車運送事業者は,一般旅客自動車運送事業の健全な発達を阻害する結果を生ずるような競争をしてはならない 旨を定める道路運送法30条2項や,国土交通大臣による上記の競争行為の停止等の命令を定める同条4項が,平成12年改正の前後で内容を実質的に変えずに残されたことは,同法が,道路運送事業の公正な競争を確保することを目的とし,既存事業者の利益を保護する趣旨を含むことを示すものである旨主張する。 しかし,道路運送法30条2項及び4項の規定が,一般旅客自動車運送事業において複数の事業者が競合する状況自体が存在し得ることを前提とするものであることは,その文言上明らかである。そして,一般旅客自動車運送事業が,平成12年改正により,従前採られていた免許制から許可制に移行し,従前の需給調整を内容とする免許の基 準に相当する同法の規定が見当たらないことや,同法1条が掲げる目的 般旅客自動車運送事業が,平成12年改正により,従前採られていた免許制から許可制に移行し,従前の需給調整を内容とする免許の基 準に相当する同法の規定が見当たらないことや,同法1条が掲げる目的の定めといった前記イに説示したところも併せ考えれば,同法30条2項に規定する「一般旅客自動車運送事業の健全な発達を阻害する結果を生ずるような競争」には,少なくとも,通常の市場原理による結果をもたらすにとどまるような競争,例えば,既存の一般旅客自動 車運送事業者が運行する路線への新規事業者の参入による競争のうち,新規の交通需要が開拓されない場合にはいずれかの事業者が淘汰されることが予想されるにとどまるような態様によるものは含まれないと解されるのであり,同項に規定する「一般旅客自動車運送事業の健全な発達を阻害する結果を生ずるような競争」とは,過当競争に 伴う経費の削減等により安全性やサービスの質の低下を招くなど,輸 - 34 -送の安全や利用者の利益の保護及びその利便の増進を損なう結果を生ずるような競争をいうものと解するのが相当である。 そうすると,特定の競争が道路運送法30条2項に該当するか否かを検討する過程において,当該競争が,既存の一般旅客自動車運送事業者を含む競業者に対しどのような影響を与えるかといった検討が 行われ,同項に該当するものとされて当該競争が禁止される結果,当該競業者の何らかの利益が保護されることがあり得るとしても,当該競業者の当該利益は,輸送の安全や利用者の利益の保護及びその利便の増進を損なう結果を防止するという同項の目的の達成の過程において,反射的に保護されるものにとどまるといわざるを得ない。 したがって,道路運送法30条2項及び4項の規定が,既存の一般旅客自動車運送事業者の当該事業に係る いう同項の目的の達成の過程において,反射的に保護されるものにとどまるといわざるを得ない。 したがって,道路運送法30条2項及び4項の規定が,既存の一般旅客自動車運送事業者の当該事業に係る営業上の利益を個別的利益として保護する趣旨を含むものと解することはできず,同規定をもって同法の目的に既存事業者の利益を保護する趣旨が含まれる旨述べる原告らの上記主張も採用することはできない。 b(a) 原告らは,道路運送法の関連法令として交通政策基本法及び活性化法を挙げ,これらの法律の成立の背景やその趣旨等に照らして検討すると,道路運送法は,既存事業者の利益を保護する趣旨を含むものといえる旨主張する。 (b) 交通政策基本法についてみると,同法は,1条で「交通に関する 施策を総合的かつ計画的に推進し,もって国民生活の安定向上及び国民経済の健全な発展を図ること」をその目的として掲げ,交通に関する施策について,基本理念及びその実現を図るのに基本となる事項を定め,並びに国及び地方公共団体の責務等を明らかにしたものである。同法2条から6条までにおいて,交通に関する施策につ いての基本理念が規定されているところ,同法2条が,「交通に関 - 35 -する施策の推進は,(中略)将来にわたって,その機能が十分に発揮されることにより,国民その他の者(以下「国民等」という。)の交通に対する基本的な需要が適切に充足されることが重要であるという基本的認識の下に行われなければならない。」と,同法5条が,「交通に関する施策の推進は,(中略)交通手段(中略)の選 択に係る競争及び国民等の自由な選好を踏まえつつそれぞれの特性に応じて適切に役割を分担し,かつ,有機的かつ効率的に連携することを旨として行われなければならない。」と,同法6条が, (中略)の選 択に係る競争及び国民等の自由な選好を踏まえつつそれぞれの特性に応じて適切に役割を分担し,かつ,有機的かつ効率的に連携することを旨として行われなければならない。」と,同法6条が,「交通に関する施策の推進は,(中略)国,地方公共団体,運輸事業その他交通に関する事業を行う者(以下「交通関連事業者」という。), 交通施設の管理を行う者(以下「交通施設管理者」という。),住民その他の関係者が連携し,及び協働しつつ,行われなければならない。」と,それぞれ規定するほか,交通の機能の確保及び向上(同法3条),交通による環境への負荷の低減(同法4条)が規定されているものの,これらの中に,既存の一般旅客自動車運送事業者の 当該事業に係る営業上の利益を個別的利益として保護する趣旨を含むと解し得る具体的な規定又は文言は見当たらない。また,同法8条1項は,「国は,第2条から第6条までに定める交通に関する施策についての基本理念(中略)にのっとり,交通に関する施策を総合的に策定し,及び実施する責務を有する。」と規定し,同法16 条から31条までにおいて,国が講ずべき施策が列挙され,同法21条が「国は,運輸事業その他交通に関する事業の安定的な運営が交通の機能の確保及び向上に資するものであることに鑑み,その健全な発展を図るため,事業基盤の強化,人材の育成その他必要な施策を講ずるものとする。」と,同法27条が,「国は,国,地方公 共団体,交通関連事業者,交通施設管理者,住民その他の関係者が - 36 -相互に連携と協働を図ることにより,交通に関する施策の効果的な推進が図られることに鑑み,これらの者の間における協議の促進その他の関係者相互間の連携と協働を促進するために必要な施策を講ずるものとする。」と,それぞれ規定す ことにより,交通に関する施策の効果的な推進が図られることに鑑み,これらの者の間における協議の促進その他の関係者相互間の連携と協働を促進するために必要な施策を講ずるものとする。」と,それぞれ規定するほか,日常生活等に必要不可欠な交通手段の確保等(同法16条),高齢者,障害者,妊産 婦等の円滑な移動のための施策(同法17条),交通の利便性向上,円滑化及び効率化(同法18条)等が規定されているものの,これらの中にも,既存の一般旅客自動車運送事業者の当該事業に係る営業上の利益を個別的利益として保護する趣旨を含むと解し得る具体的な規定又は文言は見当たらない。そして,同法のその余の規定を みても,同様に,既存の一般旅客自動車運送事業者の当該事業に係る営業上の利益を個別的利益として保護する趣旨を含むと解し得る具体的な規定又は文言は見当たらない。 (c) 次に,活性化法についてみると,活性化法の目的を定める1条は,「地域公共交通の維持に困難を生じていること等の社会経済情勢の 変化に対応し,(中略)地域における公共交通網(以下「地域公共交通網」という。)の形成の促進の観点から地域公共交通の活性化及び再生を推進することが重要となっていることに鑑み,交通政策基本法(中略)の基本理念にのっとり,地方公共団体による地域公共交通網形成計画の作成及び地域公共交通特定事業の実施に関する 措置並びに新地域旅客運送事業の円滑化を図るための措置について定めることにより,持続可能な地域公共交通網の形成に資するよう地域公共交通の活性化及び再生のための地域における主体的な取組及び創意工夫を推進し,もって個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現に寄与すること」を目的とする旨定めている。そうすると,活 性化法と,道路運送事業の運営を適正かつ合理的な における主体的な取組及び創意工夫を推進し,もって個性豊かで活力に満ちた地域社会の実現に寄与すること」を目的とする旨定めている。そうすると,活 性化法と,道路運送事業の運営を適正かつ合理的なものとするとと - 37 -もに,道路運送の分野におけるサービスの円滑かつ確実な提供を促進することにより,輸送の安全を確保し,道路運送の利用者の利益の保護及びその利便の増進を図ることや,道路運送の総合的な発達を図ることを目的とする道路運送法(前記イ(イ)参照)とは,その目的を主要な部分において共通にするとまでは解し難い。 この点をひとまずおき,活性化法が上記の目的を達成するため定める手段をみると,①地方公共団体が,地域公共交通網形成計画を作成しようとするときは,地域公共交通網形成計画の作成及び実施に関し必要な協議を行うための協議会(法定協議会)を組織すること(活性化法6条1項)も含む利害関係者の意見を反映させるため に必要な措置を講ずべきこと(活性化法5条6項。同条7項も参照)や,②地方公共団体が,地域公共交通再編実施計画(地域公共交通網形成計画に即して地域公共交通再編事業(活性化法2条11号)を実施するための計画。活性化法27条の2)を定めようとするときは,あらかじめ,当該地域公共交通再編事業を実施する区域内に 全部または一部の路線が存する一般乗合旅客自動車運送事業者等の同意を得るべきこと(同条3項)等を定めつつ,③地方公共団体が,地域公共交通再編実施計画について国土交通大臣による活性化法27条の3第2項の認定を受けたときには,当該地域公共交通再編実施計画に定められた地域公共交通再編事業は,道路運送法の特例の 適用を受ける(活性化法27条の6。例えば,一般乗合旅客自動車運送事業に係るものであれば,道路運送 きには,当該地域公共交通再編実施計画に定められた地域公共交通再編事業は,道路運送法の特例の 適用を受ける(活性化法27条の6。例えば,一般乗合旅客自動車運送事業に係るものであれば,道路運送法4条1項の許可(一般旅客自動車運送事業許可),同法9条1項の認可(上限運賃等設定認可)又は15条1項の認可(事業計画変更認可)を受けたり,同法9条3項の届出(実施運賃等の届出)をしたりしたものとみなされ るなどする(活性化法27条の6第1項)。)旨を定めていること - 38 -等からすれば,少なくとも,活性化法の地域公共交通再編事業の実施に関する規定は,既存の一般乗合旅客自動車運送事業者の当該事業に係る営業上の利益に配慮する趣旨を有していると解し得る。しかしながら,上記のとおり,活性化法が,地域公共交通再編事業の道路運送法上の取扱いについて,同法の特例を定めるものと位置付 けていることにも照らせば,上記にみた活性化法の地域公共交通再編事業の実施に関する規定の趣旨は,「持続可能な地域公共交通網の形成」,「地域公共交通の活性化及び再生」といった活性化法の目的(活性化法1条参照)を達成するための手段の一つと位置付けられる地域公共交通再編事業の実施という特定の場面におけるもの にとどまるものというべきであり,活性化法の当該規定の適用がない場合における道路運送法の趣旨及び目的の解釈においてこれを直ちにしんしゃくすべきものとは解し難い。 ⒟ 以上によれば,交通政策基本法及び活性化法の趣旨及び目的等をもって道路運送法の目的に既存事業者の利益を保護する趣旨が含ま れる旨述べる原告らの前記(a)の主張を採用することはできない。 (イ) 事業計画変更認可の認可基準に関する原告らの主張についてa(a) 原告らは,本件審査基準( 利益を保護する趣旨が含ま れる旨述べる原告らの前記(a)の主張を採用することはできない。 (イ) 事業計画変更認可の認可基準に関する原告らの主張についてa(a) 原告らは,本件審査基準(経営許可申請事案)3.(7)及び本件処理要領(運行計画)5.の定めを根拠に,道路運送法6条2号に規定する「当該事業の遂行上適切な計画を有するものであること」 には,申請者の運行計画がクリームスキミング的運行を内容とするものでないことが含まれるとした上で,クリームスキミング的運行の排除は,路線が競合する既存事業者の利益を保護するためのものであるから,同法15条1項は,競合する既存事業者の利益を個別的に保護している旨主張する。 証拠(甲22,乙8,28)によれば,①本件処理要領(運行計 - 39 -画)において,「クリームスキミング」とは,典型的には,終日一定レベルの運行回数が確保されているような路線に対し,朝夕のピーク時間帯のみに参入する参入形態と捉えられていること(この点は,本件処理要領(運行計画)4.(クリームスキミングの要件)の定めからも明らかである。),②本件処理要領(運行計画)にお いて「クリームスキミング的運行」の是正が図られている趣旨は,クリームスキミングとなる参入形態が,既存事業者においても,自らの相対的優位性を低下させないように行動する結果,相対的に旅客数の少ないオフピーク時間帯における運行を減少等させることをもたらすことが多く,結果として利用者の利便性の低下につながる ものであると考えられたためであることが認められる。 そうすると,そもそも,原告らの上記主張のうち,既存の一般乗合旅客自動車運送事業者が運行する路線との関係で利益の獲得が容易と見込まれる路線についてのみ路線を新設することをも「 ることが認められる。 そうすると,そもそも,原告らの上記主張のうち,既存の一般乗合旅客自動車運送事業者が運行する路線との関係で利益の獲得が容易と見込まれる路線についてのみ路線を新設することをも「クリームスキミング」と解することを前提としている点については,上記 に認定した本件処理要領(運行計画)における「クリームスキミング」の意義とその理解を異にする部分があるというべきである。この点をおくとしても,上記に認定したとおり,「クリームスキミング」又は「クリームスキミング的運行」に係る本件処理要領(運行計画)の定めや,「クリームスキミング的運行」の規制の趣旨にお いて,既存の一般乗合旅客自動車運送事業者の当該事業に係る営業上の利益への影響等が明示的に考慮の対象とされていないことからすれば,原告らが指摘する本件処理要領(運行計画)5.の定めや,本件処理要領(運行計画)が定義する「クリームスキミング的運行」を前提とする本件審査基準(経営許可申請事案)3.(7)の定めが, 既存の一般乗合旅客自動車運送事業者の当該事業に係る営業上の利 - 40 -益を個別的利益として保護する趣旨を含むものとは解し難い(なお,国土交通省自動車交通局旅客課が監修した社団法人日本バス協会作成の「乗合バス新事業規制ハンドブック」(甲51)には,クリームスキミングの規制が「当該系統における不当な競争を排除するもの」である旨等の記載があるものの,それと同時に,クリームスキ ミングの規制の趣旨が,既存事業者の運行の打切りや減便により「多数のバス利用者に輸送サービスレベルの低下を招くおそれがある」ためである旨も記載されているから,上記の認定及び判断を覆すものではない。)。 したがって,そもそも,原告らの上記指摘するところが法令上の 根拠 輸送サービスレベルの低下を招くおそれがある」ためである旨も記載されているから,上記の認定及び判断を覆すものではない。)。 したがって,そもそも,原告らの上記指摘するところが法令上の 根拠に基づくものではなく,これらの定めを道路運送法の解釈において必ず勘案すべきものとまではいい難い点をおいたとしても,本件審査基準(経営許可申請事案)3.(7)等の定めをもって道路運送法15条1項が競合する既存事業者の利益を個別的に保護している旨の原告らの上記主張を採用することはできない。 (b) 原告らは,本件処理要領(運行計画)3.(4)の定めや4.(2)が定めるクリームスキミング的運行の定義を指摘し,既存事業者は,他の事業者の運行計画の届出を確認する機会が保障されるのみならず,クリームスキミング的運行のチェック機能が与えられ,その申出によって,間接的に,クリームスキミング的運行を規制すること が可能となっている旨主張する。 しかし,本件処理要領(運行計画)4.(2)は,クリームスキミング的運行を,所定の要件を満たした上で「旅客の利便が損なわれるおそれがあることについて利害関係人等から合理的な説明を伴う申出がなされ,当該申出が適切なものと認められる場合」と定め,そ の判断を最終的には旅客の利便が損なわれるか否かの判断にかから - 41 -しめているのである。 したがって,前記(a)と同様に原告らの上記指摘するところが法令上の根拠に基づくものでない点をおいたとしても,それらの定めは,前記(a)の判断を何ら覆すものではない。 b 原告らは,道路運送法30条2項が一定の事業者の利益を保護する 趣旨を有する旨の解釈を前提に,同条及び本件審査基準(変更認可申請事案)1.(2)④の各規定を根拠に,事業計画変更認可の認可 b 原告らは,道路運送法30条2項が一定の事業者の利益を保護する 趣旨を有する旨の解釈を前提に,同条及び本件審査基準(変更認可申請事案)1.(2)④の各規定を根拠に,事業計画変更認可の認可基準に,申請者に同条2項が禁止する「一般旅客自動車運送事業の健全な発達を阻害する結果を生ずるような競争」行為がないことが含まれているとして,道路運送法15条1項は,競合する既存事業者の利益を個別 的に保護しているものと解される旨主張する。 しかし,前記(ア)aに説示したとおり,一般旅客自動車運送事業者は,一般旅客自動車運送事業の健全な発達を阻害する結果を生ずるような競争をしてはならない旨を定める道路運送法30条2項の規定が,既存の一般旅客自動車運送事業者の当該事業に係る営業上の利益を個別 的利益として保護する趣旨を含むものと解することはできないから,同条及び本件審査基準(変更認可申請事案)1.(2)④の各規定をもって,事業計画変更認可の認可基準に,申請者に「一般旅客自動車運送事業の健全な発達を阻害する結果を生ずるような競争」行為がないことが含まれる旨の主張の当否について判断するまでもなく,道路運送 法15条1項が競合する既存事業者の利益を個別的に保護している旨述べる原告らの上記主張は,前提を欠き,これを採用することはできない。 (ウ) 手続参加の機会に関する原告らの主張について原告らは,既存事業者である一般乗合旅客自動車運送事業者が,地域 公共交通会議の構成員とされ,地域公共交通会議を通じて当該地域の乗 - 42 -合輸送に対し関与することが法定されていることから,本件各処分がこれによってされたか否かにかかわらず,既存事業者には一定の手続参加の機会が保障されているということができる旨主張する。 しかし, -合輸送に対し関与することが法定されていることから,本件各処分がこれによってされたか否かにかかわらず,既存事業者には一定の手続参加の機会が保障されているということができる旨主張する。 しかし,そもそも,法令上,地域公共交通会議が,本件のような路線の新設運行を内容とするものを含む事業計画変更認可又は一般旅客自動 車運送事業許可の審査に関与する権限を有する旨の規定はないから,既存事業者である一般乗合旅客自動車運送事業者が地域公共交通会議の構成員となり得る点をもって,道路運送法15条1項の規定が,既存の一般旅客自動車運送事業者の当該事業に係る営業上の利益を個別的利益として保護する趣旨を含むことの根拠となるとはいい難い。 したがって,原告の上記主張を採用することはできない。 (エ) ε線の運行によって原告らに生ずるとされる減収等に関する原告らの主張について原告らは,本件処分1の取消しを求める訴えの原告適格を有することの根拠として,ε線の運行によって原告らに生ずるとされる減収等を主 張する。 しかし,これまでに説示したとおり,道路運送法は,道路運送事業の運営を適正かつ合理的なものとするとともに,道路運送の分野におけるサービスの円滑かつ確実な提供を促進することにより,輸送の安全を確保し,道路運送の利用者の利益の保護及びその利便の増進を図ることや, 道路運送の総合的な発達を図ることを目的とするものであり,この目的自体,既存の一般旅客自動車運送事業者の当該事業に係る営業上の利益が個別的利益として保護されるべき旨の趣旨を含むものとは直ちに解し難い上,同法30条2項及び4項の規定も,通常の市場原理による結果をもたらすにとどまるような競争を禁止するものではなく,むしろ,前 述した平成12年改正の内容等に照らすと, ものとは直ちに解し難い上,同法30条2項及び4項の規定も,通常の市場原理による結果をもたらすにとどまるような競争を禁止するものではなく,むしろ,前 述した平成12年改正の内容等に照らすと,そのような競争が生じるこ - 43 -とを前提とし,これを許容するものと解される。 これらによれば,仮に,本件処分1により,原告らにおいて,原告らが主張するような減収等が生ずるとしても,直ちに,それらが本件処分1(事業計画変更認可)において考慮されるべき利益に含まれるものとは解し難い。 (3) 小括以上のほか,道路運送法及びその関係法令を通覧しても,本件処分1の根拠法規である道路運送法15条1項について,既存の一般旅客自動車運送事業者の当該事業に係る営業上の利益を,当該事業者の個別的利益として保護する趣旨の規定は見当たらない。 そうすると,本件処分1の根拠法規である道路運送法15条1項が,既存の一般旅客自動車運送事業者の当該事業に係る営業上の利益を,専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する当該事業者の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解することはできない。 以上によれば,本件処分1について,本件各処分に基づき新設運行されるε線と競合する一般乗合旅客自動車運送事業の路線を運行する既存事業者である原告らが,本件処分1の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に当たるということはできない。 したがって,原告らは,本件処分1の取消しを求める訴えの原告適格を欠 くというべきである。 2 争点②(原告らが本件処分2の取消しを求める訴えの原告適格を有するか否か)について以下,前記1(1)アに説示した判断の枠組みに従い,本件処分2の相手方以外の者である原告らが本件処 である。 2 争点②(原告らが本件処分2の取消しを求める訴えの原告適格を有するか否か)について以下,前記1(1)アに説示した判断の枠組みに従い,本件処分2の相手方以外の者である原告らが本件処分2の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する 者であるといえるか否かを検討する。 - 44 -(1) 検討ア道路運送法9条1項の趣旨(ア) 道路運送法9条1項は,一般乗合旅客自動車運送事業者は,運賃等の上限を定め,国土交通大臣の認可(上限運賃等設定認可)を受けなければならず(前段),これを変更しようとするときも同様とする(後段) 旨を定め,同条2項は,国土交通大臣は,上限運賃等設定認可をしようとするときは,能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えないものであるかどうかを審査して,これをしなければならない旨を定めている。 この点,平成12年改正前の道路運送法においては,一般乗合旅客自 動車運送事業の旅客の運賃その他運輸に関する料金について国土交通大臣の認可を要するものとされ(9条1項),その認可の基準として,「能率的な経営の下における適正な原価を償い,かつ,適正な利潤を含むものであること」(同条2項1号)のほか,「他の一般旅客自動車運送事業者との間に不当な競争を引き起こすこととなるおそれがないものであ ること」(同項4号)等が掲げられていたが,平成12年改正により,一般乗合旅客自動車運送事業の運賃等は,上記のとおり,その上限について国土交通大臣の認可を要するものとされ,一般乗合旅客自動車運送事業者は,当該認可を受けた運賃等の上限の範囲内で,実施運賃等を定め,その旨を国土交通大臣に届け出ることとされた(同条3項)。 なお,道路運送法9条6項は,国土交通大臣は,実施運賃等が 運送事業者は,当該認可を受けた運賃等の上限の範囲内で,実施運賃等を定め,その旨を国土交通大臣に届け出ることとされた(同条3項)。 なお,道路運送法9条6項は,国土交通大臣は,実施運賃等が「他の一般旅客自動車運送事業者との間に不当な競争を引き起こすおそれがあるものである」(同項3号)等と認めるときは,当該一般乗合旅客自動車運送事業者に対し,期限を定めてその運賃等を変更すべきことを命ずることができる旨を定めている。 (イ) 前記(ア)にみた,道路運送法9条2項が定める上限運賃等設定認可の - 45 -基準のほか,同条に係る平成12年改正の内容や,前記1(2)に説示した同法の趣旨及び目的にも照らすと,同法9条1項は,その認可の権限を行使することを通じて,基本的には,一般乗合旅客自動車運送事業者が不当に高い運賃等を設定して過剰な利潤を得ることを防止し,当該事業の利用者の利益を保護することをその趣旨とするものと解される。 なお,道路運送法9条1項は,同条2項の定めにかかわらず,一般乗合旅客自動車運送事業者による上限運賃等の設定において,当該上限運賃等が,能率的な経営の下における適正な原価を著しく下回る結果,自ずと当該事業者の資本が毀損され,経費の削減や労働条件の悪化等により安全性やサービスの質の低下を招くなど,輸送の安全や利用者の利益 の保護及びその利便の増進を損なう結果を生ずることが懸念される事態となることは,およそ許容していないものと解される。 イ原告らの主張の検討(ア) 道路運送法9条が運賃等の認可制度及び適正原価適正利潤の原則を定めている旨の原告らの主張について 原告らは,道路運送法9条は,一般乗合旅客自動車運送事業の運賃について認可制度を採用するとともに,既存事業者の事業活動の利益 及び適正原価適正利潤の原則を定めている旨の原告らの主張について 原告らは,道路運送法9条は,一般乗合旅客自動車運送事業の運賃について認可制度を採用するとともに,既存事業者の事業活動の利益を保護する趣旨を含む旨主張し,その根拠として,要旨,①運賃の認可制度は,一般乗合旅客自動車運送事業が公共性を有することから,あらかじめ,その運賃を審査の対象とすることにより,不当な原価計算等による 暴利等を防止して利用者を保護しつつ,一定の利潤を加えた対価であることを担保して,事業者が健全な経営を行うことができるようにするため定められているものであり,同条の平成12年改正前と同改正後(現行)とでその目的に異なるところはない旨,②運賃の認可の審査(適正原価適正利潤の原則への適合性の審査)における「適正な」原価と「適 正な」利潤とは,利用者にとって不当に高額な運賃が設定されていない - 46 -よう審査するだけではなく,当該申請者のみならず道路運送事業が適切かつ合理的に運営されるという,より広い意味で解釈すべきである旨,③上限運賃における原価計算の方法が地域ごとに定められ,その認可も地域ごとに行うこととされていることは,当該地域において存在する公共交通網に対する影響を考慮するものといえることから,適正原価適正 利潤の原則は,既存事業者の事業活動への影響に対し配慮する趣旨を含むものといえる旨,④同条6項3号による運賃の変更命令は,一般乗合旅客自動車運送事業における運賃制度の一環であり,上限運賃制度と相まって,利用者の利益の保護及び道路運送事業の適正かつ合理的な運営(健全な経営の確保)を目的として設けられたものであるから,当該変 更命令及び上限運賃制度は,一体的な制度とみるべきであり,極端に安価な運賃額の設定がされた場 路運送事業の適正かつ合理的な運営(健全な経営の確保)を目的として設けられたものであるから,当該変 更命令及び上限運賃制度は,一体的な制度とみるべきであり,極端に安価な運賃額の設定がされた場合,当該運賃は,適正原価適正利潤の原則に反し,同法は,それが上限運賃であれば同条2項の審査において,それが実施運賃であれば同条6項3号により,それぞれ対処することを想定しているものといえる旨を主張する。 しかし,平成12年改正後の道路運送法においては,一般乗合旅客自動車運送事業等を経営する者における旅客の運賃その他運輸に関する料金の認可基準につき「能率的な経営の下における適正な原価を償い,かつ,適正な利潤を含むものであること」を定めていた同改正前の同法9条2項1号に相当する規定が見当たらない(現行の同法9条2項は,運 賃等の上限の設定が「能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えないものであるかどうか」を認可の基準とする旨を定めているにすぎない。)こと,同条6項3号が規制するところの実施運賃等が「他の一般旅客自動車運送事業者との間に不当な競争を引き起こすおそれがある」場合が,当該実施運賃等が「能率的な経営の下に おける適正な原価を償い,かつ,適正な利潤を含むもの」を下回る場合 - 47 -と同義であるとは直ちに解し難いことに照らせば,原告らの上記①及び②の主張は,少なくとも,同条の規定が,一般旅客自動車運送事業者による上限運賃等の設定又は実施運賃等の定めが「能率的な経営の下における適正な原価」に「適正な利潤」を加えたものであることを担保する趣旨である旨を述べる点において,採用し難い。そして,上限運賃等設 定認可の審査における原価計算の方法が地域ごとに定められる(本件処理方針(運賃等上限認 な利潤」を加えたものであることを担保する趣旨である旨を述べる点において,採用し難い。そして,上限運賃等設 定認可の審査における原価計算の方法が地域ごとに定められる(本件処理方針(運賃等上限認可)別紙2の第6参照)とともに,上限運賃等設定認可が特定の地域ごとに行うこととされている(本件処理方針(運賃等上限認可)第3の3.参照)としても,これらは,地域により適正な原価が異なる場合があるため,地域ごとの実情を踏まえ,運賃等の上限 の設定が「能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えないものであるかどうか」の審査をしているものである(乙28)から,これらをもって,直ちに,道路運送法9条の規定が,当該地域において存在する公共交通網に対する影響を考慮しているとは解し難く,原告らの上記③の主張も採用し難い。さらに,平成12年改正前 の同法においては,一般乗合旅客自動車運送事業の旅客の運賃その他運輸に関する料金について認可制が採られていたところ,同改正により,一般乗合旅客自動車運送事業の運賃等につき,その上限の設定につき認可制が,実施運賃等につきその範囲内における届出制が,それぞれ採用されたという前記アに説示した同法9条に係る同改正の内容を踏まえれ ば,実施運賃等をその要件判断の対象とする道路運送法9条6項の定めをもって,直ちに,上限運賃等設定認可を定める同条1項の趣旨及び目的を解釈することも困難といわざるを得ず,同条を一体として「運賃等に関する認可制度」と捉え,その趣旨を論じる原告らの上記④の主張も採用し難い。 したがって,原告らの上記主張は,いずれも採用することができない。 - 48 -なお,前記ア(イ)に説示したとおり,道路運送法9条1項は,一般乗合旅客自動車運送事業者による上限 い。 したがって,原告らの上記主張は,いずれも採用することができない。 - 48 -なお,前記ア(イ)に説示したとおり,道路運送法9条1項は,一般乗合旅客自動車運送事業者による上限運賃等の設定において,当該上限運賃等が,能率的な経営の下における適正な原価を著しく下回る結果,輸送の安全や利用者の利益の保護及びその利便の増進を損なう結果を生ずることが懸念される事態となることは許容していないと解されるものの, この点を踏まえても,同項に既存の一般旅客自動車運送事業者の当該事業に係る営業上の利益を個別的利益として保護する趣旨が含まれるものとは解し難い。 (イ) 本件処理方針(運賃等上限認可)の定める取扱いに関する原告らの主張について 原告らは,本件処理方針(運賃等上限認可)第3の2.及び第5の1. 本文が,参入事業者の運賃の制定形態及び上限運賃の水準を,いずれも,原則として既存事業者のそれらと同一とする旨を定めていることを根拠に,上限運賃等設定認可においては,既存事業者の個別的利益が保護されていると解される旨主張する。 しかし,運賃の制定形態の点についてみると,本件処理方針(運賃等上限認可)第3の2.は,参入事業者は,既存事業者と同一の運賃の制定形態による参入を原則とするとしつつも,「運賃の制定形態が異なることによる利用者の混乱回避のために停留所,車両の外部等における運賃額の表示等必要な措置が講じられていること」及び「運賃の制定形態 が異なることにより,乗車・降車位置の相違等が発生する場合にあっては,利用者の安全確保及び周辺道路の交通安全の確保の観点から,自ら実施することが必要な措置を講ずるとともに,道路管理者,交通管理者等において実施することが必要な措置について道路管理者,交通管理者等の了解 用者の安全確保及び周辺道路の交通安全の確保の観点から,自ら実施することが必要な措置を講ずるとともに,道路管理者,交通管理者等において実施することが必要な措置について道路管理者,交通管理者等の了解が得られていること」をいずれも満たす場合には,既存事業者 と異なる運賃の制定形態を認めるものとする旨定めている。上記の例外 - 49 -要件の定めからすれば,既存事業者と同一の運賃の制定形態による参入を原則としている趣旨は,利用者の混乱の回避や,利用者の安全及び周辺道路の交通安全の確保にあり,既存の一般旅客自動車運送事業者の当該事業に係る営業上の利益の保護にあるとは認め難い。 上限運賃の水準の点についてみると,本件処理方針(運賃等上限認可) 第5の1.本文は,参入事業者の上限運賃の水準について,原則として,既存事業者と同一の制定形態による場合は,運賃の適用方法を含め当該上限運賃と同一とする旨を定めている。弁論の全趣旨によれば,これは,参入事業者の運送収入の算定基礎とされる輸送人員の人員数の予測が,その性質上困難であるために,参入事業者の上限運賃の水準は,事業者 が不当に高い運賃等を設定して過剰な利潤を得ることを防止する観点から,差し当たり既存事業者の上限運賃と同一とすることが相当であるとの趣旨で定められたものと認められ,道路運送法9条2項の定める基準への適合性の審査の在り方として相応の合理性を有すると認められる。 そうすると,本件処理方針(運賃等上限認可)第5の1.本文について も,これを既存の一般旅客自動車運送事業者の当該事業に係る営業上の利益を積極的に保護する趣旨のものであるとは認め難く,参入事業者の上限運賃の水準の適正を確保する趣旨のものにとどまるというべきである。 したがって,そもそも,原告らの上記指摘す 事業に係る営業上の利益を積極的に保護する趣旨のものであるとは認め難く,参入事業者の上限運賃の水準の適正を確保する趣旨のものにとどまるというべきである。 したがって,そもそも,原告らの上記指摘するところが法令上の根拠 に基づくものではなく,これらの定めを道路運送法の解釈において必ず勘案すべきものとまではいい難い点をおいたとしても,これらの定めは,いずれも,上限運賃等設定認可を定める同法9条1項につき,既存の一般旅客自動車運送事業者の当該事業に係る営業上の利益が保護されていることの根拠となるものとはいえない。原告らの上記主張を採用するこ とはできない。 - 50 -(ウ) 手続参加の機会に関する原告らの主張についてa 原告らは,道路運送法89条が上限運賃等設定認可について定める手続は,競合する既存事業者が認可手続に参加することを明確に認めたものであり,その目的は,既存事業者の利益を保護する点にある旨主張する。 しかし,これまでに説示したところに照らせば,道路運送法89条が上限運賃等設定認可について定める利害関係人の意見聴取の手続は,基本的に,当該上限運賃等設定認可に係る運賃等が,同法9条2項の基準を満たすものであるか否か,すなわち,不当に高い運賃等の設定により当該事業の利用者の利益の保護に欠けるところがないかどうか という観点から行われるものであり,既存の一般旅客自動車運送事業者の当該事業に係る営業上の利益を個別的利益として保護する趣旨を含むものとは解し難い。 したがって,道路運送法89条1項1号,2項及び道路運送法施行規則56条2号により,上限運賃等設定認可について,利害関係人と して意見を述べる機会が当該上限運賃等設定認可に係る申請者と競争の関係にある者に与えられていることは,上限運 及び道路運送法施行規則56条2号により,上限運賃等設定認可について,利害関係人と して意見を述べる機会が当該上限運賃等設定認可に係る申請者と競争の関係にある者に与えられていることは,上限運賃等設定認可を定める同法9条1項につき,既存の一般旅客自動車運送事業者の当該事業に係る営業上の利益が保護されていることの根拠となるものとはいえない。原告らの上記主張を採用することはできない。 b 原告らは,既存事業者である一般乗合旅客自動車運送事業者が,地域公共交通会議の構成員とされ,地域公共交通会議を通じて当該地域の乗合輸送に対し関与することが法定されていることから,本件各処分がこれによってされたか否かにかかわらず,既存事業者には一定の手続参加の機会が保障されているということができる旨主張する(本 件処分1との関係について,前記1(2)ウ(ウ)参照)。 - 51 -しかし,法令上,地域公共交通会議が上限運賃等設定認可の審査に関与する権限を有する旨の規定はない(なお,道路運送法9条4項,道路運送法施行規則9条の2により,運賃等について地域公共交通会議において協議が調っているときには,同法9条1項及び3項にかかわらず,当該運賃等を届け出ることをもって足りるものとされている が,これは,一般乗合旅客自動車運送事業者が,上限運賃等設定認可を得ることなく運賃等を定めることができる場合を特に設けたものにすぎないから,これをもって,地域公共交通会議が,上限運賃等設定認可の審査に関与するものということはできない。)から,既存事業者である一般乗合旅客自動車運送事業者が地域公共交通会議の構成員 となり得る点をもって,同条1項の規定が,既存の一般旅客自動車運送事業者の当該事業に係る営業上の利益を個別的利益として保護する趣旨を る一般乗合旅客自動車運送事業者が地域公共交通会議の構成員 となり得る点をもって,同条1項の規定が,既存の一般旅客自動車運送事業者の当該事業に係る営業上の利益を個別的利益として保護する趣旨を含むことの根拠となるとはいい難い。 したがって,原告らの上記主張を採用することはできない。 (エ) ε線の運行によって原告らに生ずるとされる減収等に関する原告ら の主張について原告らは,本件処分2の取消しを求める訴えの原告適格を有することの根拠として,ε線の運行によって原告らに生ずるとされる減収等を主張する。 しかし,本件処分1の取消しを求める訴えとの関係について前記1(2) ウ(エ)に説示したところに加え,これまでに説示したとおり,上限運賃等設定認可を定める道路運送法9条1項が,一般乗合旅客自動車運送事業の利用者の利益を保護すること等の趣旨及び目的の他に,既存の一般旅客自動車運送事業者の当該事業に係る営業上の利益を個別的利益として保護する趣旨を含むものと解すべき法令上の根拠は見当たらず,同法及 びその関係法令を通覧しても,その趣旨の規定は見当たらない。 - 52 -そうすると,仮に,本件処分2により,原告らにおいて,原告らが主張するような減収等が生ずるとしても,直ちに,それらが本件処分2(上限運賃設定認可)において考慮されるべき利益に含まれるものとは解し難い。 (2) 小括 以上によれば,本件処分2の根拠法規である道路運送法9条1項が,既存の一般旅客自動車運送事業者の当該事業に係る営業上の利益を,専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する当該事業者の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解することはできない。 そうすると,本件処分2について,本件各処分に 公益の中に吸収解消させるにとどめず,それが帰属する当該事業者の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解することはできない。 そうすると,本件処分2について,本件各処分に基づき新設運行されるε線と競合する一般乗合旅客自動車運送事業の路線を運行する既存事業者である原告らが,本件処分2の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に当たるということはできない。 したがって,原告らは,本件処分2の取消しを求める訴えの原告適格を欠 くというべきである。 3 結論よって,その余の点について判断するまでもなく,本件各訴えはいずれも不適法であるからこれらを却下することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部 裁判長裁判官 鎌野真敬 裁判官 福渡裕貴 - 53 - 裁判官 獅子野 裕 介(別紙省略) (別紙2省略)(別紙3省略)(別紙4省略) - 54 -(別紙1)関係法令等の定め第1 道路運送法の定め 1 1条(目的)(1) 平成12年法律第86号による改正(以下「平成12年改正」という。) 前の定め道路運送法1条(平成12年改正前のもの)は,同法は,貨物自動車運送事業法と相まって,道路運送事業の適正な運営及び公正な競争を確保するとともに,道路運送に関する秩序を確立することにより,道路運送の総合的な発達を図り,もって公共の福祉を増進することを目的とする旨を定 めていた。 (2) 平成18年法律第19号及び同年法律第40号による各改正(以下,両改正を併せて「平成18年改正」という。)前の定め道路運送法1条(平成18年改正前のもの)は,同法は,貨物 めていた。 (2) 平成18年法律第19号及び同年法律第40号による各改正(以下,両改正を併せて「平成18年改正」という。)前の定め道路運送法1条(平成18年改正前のもの)は,同法は,貨物自動車運送事業法と相まって,道路運送事業の運営を適正かつ合理的なものとする ことにより,道路運送の利用者の利益を保護するとともに,道路運送の総合的な発達を図り,もって公共の福祉を増進することを目的とする旨を定めていた。 (3) 現行の定め道路運送法1条は,同法は,貨物自動車運送事業法と相まって,道路運 送事業の運営を適正かつ合理的なものとし,並びに道路運送の分野における利用者の需要の多様化及び高度化に的確に対応したサービスの円滑かつ確実な提供を促進することにより,輸送の安全を確保し,道路運送の利用者の利益の保護及びその利便の増進を図るとともに,道路運送の総合的な発達を図り,もって公共の福祉を増進することを目的とする旨を定めてい る。 - 55 - 2 4条(平成12年改正前の見出しは,「一般乗合旅客自動車運送事業等の免許」。現行の見出しは,「一般旅客自動車運送事業の許可」。)1項(1) 平成12年改正前の定め道路運送法4条1項(平成12年改正前のもの)は,一般乗合旅客自動車運送事業又は一般乗用旅客自動車運送事業(以下「一般乗合旅客自動車 運送事業等」という。)を経営しようとする者は,国土交通大臣の免許を受けなければならない旨を定めていた。 (2) 現行の定め道路運送法4条1項は,一般旅客自動車運送事業(一般乗合旅客自動車運送事業,一般貸切旅客自動車運送事業及び一般乗用旅客自動車運送事業 から成る。)を経営しようとする者は,国土交通大臣の許可を受けなければならない旨を定めている(以下,同項に基 乗合旅客自動車運送事業,一般貸切旅客自動車運送事業及び一般乗用旅客自動車運送事業 から成る。)を経営しようとする者は,国土交通大臣の許可を受けなければならない旨を定めている(以下,同項に基づく一般旅客自動車運送事業の許可を「一般旅客自動車運送事業許可」ということがある。)。 3 6条(平成12年改正前の見出しは,「免許基準」。現行の見出しは,「許可基準」。) (1) 平成12年改正前の6条1項の定め道路運送法6条1項(平成12年改正前のもの)は,国土交通大臣は,一般乗合旅客自動車運送事業等の免許をしようとするときは,以下の基準に適合するかどうかを審査して,これをしなければならない旨を定めていた。 一当該事業の開始が輸送需要に対し適切なものであること。 二当該事業の開始によって当該路線又は事業区域に係る供給輸送力が輸送需要量に対し不均衡とならないものであること。 三当該事業の遂行上適切な計画を有するものであること。 四当該事業を自ら適確に遂行するに足る能力を有するものであること。 五その他当該事業の開始が公益上必要であり,かつ,適切なものである - 56 -こと。 (2) 現行の定め道路運送法6条は,国土交通大臣は,一般旅客自動車運送事業の許可をしようとするときは,以下の基準に適合するかどうかを審査して,これをしなければならない旨を定めている。 一当該事業の計画が輸送の安全を確保するため適切なものであること。 二前号に掲げるもののほか,当該事業の遂行上適切な計画を有するものであること。 三当該事業を自ら適確に遂行するに足る能力を有するものであること。 4 9条(平成12年改正前の見出しは,「運賃及び料金」。現行の見出しは, 「一般乗合旅客自動車運送事業の運 であること。 三当該事業を自ら適確に遂行するに足る能力を有するものであること。 4 9条(平成12年改正前の見出しは,「運賃及び料金」。現行の見出しは, 「一般乗合旅客自動車運送事業の運賃及び料金」。)(1) 1項ア平成12年改正前の定め道路運送法9条1項(平成12年改正前のもの)は,一般乗合旅客自動車運送事業等を経営する者は,旅客の運賃その他運輸に関する料金 (一般乗合旅客自動車運送事業の料金のうち国土交通省令で定めるものを除く。以下同じ。)を定め,国土交通大臣の認可を受けなければならず(前段),これを変更しようとするときも同様とする(後段)旨を定めていた。 イ現行の定め 道路運送法9条1項は,一般乗合旅客自動車運送事業を経営する者(以下「一般乗合旅客自動車運送事業者」という。)は,旅客の運賃及び料金(旅客の利益に及ぼす影響が比較的小さいものとして国土交通省令で定める運賃及び料金を除く。以下「運賃等」という。)の上限を定め,国土交通大臣の認可を受けなければならず(前段),これを変更し ようとするときも同様とする(後段)旨を定めている(以下,同項に基 - 57 -づく運賃等の上限設定の認可を「上限運賃等設定認可」と,運賃の上限設定の認可を「上限運賃設定認可」とそれぞれいうことがある。)。 (2) 2項ア平成12年改正前の定め道路運送法9条2項(平成12年改正前のもの)は,国土交通大臣 は,同条1項の認可をしようとするときは,以下の基準によって,これをしなければならない旨を定めていた。 一能率的な経営の下における適正な原価を償い,かつ,適正な利潤を含むものであること。 二,三略 四他の一般旅客自動車運送事業者(一般旅客自動車運送事業を経営する者をいう。 いた。 一能率的な経営の下における適正な原価を償い,かつ,適正な利潤を含むものであること。 二,三略 四他の一般旅客自動車運送事業者(一般旅客自動車運送事業を経営する者をいう。以下同じ。)との間に不当な競争を引き起こすこととなるおそれがないものであること。 五略イ現行の定め 道路運送法9条2項は,国土交通大臣は,同条1項の認可をしようとするときは,能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものを超えないものであるかどうかを審査して,これをしなければならない旨を定めている。 (3) 3項 道路運送法9条3項は,一般乗合旅客自動車運送事業者は,同条1項の認可を受けた運賃等の上限の範囲内で運賃等を定め,あらかじめ,その旨を国土交通大臣に届け出なければならず(前段),これを変更しようとするときも同様とする(後段)旨を定めている(以下,同条3項に基づき国土交通大臣に届け出られた運賃等を「実施運賃等」と,運賃を「実施運 賃」とそれぞれいう。)。 - 58 -(4) 4項道路運送法9条4項は,一般乗合旅客自動車運送事業者が,地域における需要に応じ当該地域の住民の生活に必要な旅客輸送の確保その他の旅客の利便の増進を図るために乗合旅客の運送を行う場合において,国土交通省令で定めるところにより,地方公共団体,一般乗合旅客自動車運送事業 者,住民その他の国土交通省令で定める関係者が当該運送に係る運賃等について合意しているときは,当該一般乗合旅客自動車運送事業者は,同条1項及び同条3項の規定にかかわらず,あらかじめ,その旨を国土交通大臣に届け出ることをもって足り(前段),これを変更しようとするときも同様とする(後段)旨を定めている。 (5) 6項道路運送法9条6 項の規定にかかわらず,あらかじめ,その旨を国土交通大臣に届け出ることをもって足り(前段),これを変更しようとするときも同様とする(後段)旨を定めている。 (5) 6項道路運送法9条6項は,国土交通大臣は,同条3項若しくは同条4項の運賃等が以下の2号又は3号のいずれかに該当すると認めるときは,当該一般乗合旅客自動車運送事業者に対し,期限を定めてその運賃等を変更すべきことを命ずることができる旨を定めている。 一略二特定の旅客に対し不当な差別的取扱いをするものであるとき。 三他の一般旅客自動車運送事業者との間に不当な競争を引き起こすおそれがあるものであるとき。 5 15条(事業計画の変更) (1) 1項道路運送法15条1項は,一般旅客自動車運送事業者は,事業計画の変更(同条3項,4項及び同法16条1項に規定するものを除く。)をしようとするときは,国土交通大臣の認可を受けなければならない旨を定めている(以下,同法15条1項に基づく事業計画の変更の認可を「事業計画変更認可」 ということがある。)。 - 59 -(2) 2項道路運送法15条2項は,同法6条の規定は,同法15条1項の認可について準用する旨を定めている。 (3) 4項道路運送法15条4項は,一般旅客自動車運送事業者は,営業所の名称 その他の国土交通省令で定める軽微な事項に関する事業計画の変更をしたときは,遅滞なく,その旨を国土交通大臣に届け出なければならない旨を定めている。 6 30条(公衆の利便を阻害する行為の禁止等)(1) 2項 道路運送法30条2項は,一般旅客自動車運送事業者は,一般旅客自動車運送事業の健全な発達を阻害する結果を生ずるような競争をしてはならない旨を定めている。 (2) 4項 )(1) 2項 道路運送法30条2項は,一般旅客自動車運送事業者は,一般旅客自動車運送事業の健全な発達を阻害する結果を生ずるような競争をしてはならない旨を定めている。 (2) 4項道路運送法30条4項は,国土交通大臣は,同条1項ないし3項に規定 する行為があるときは,一般旅客自動車運送事業者に対し,当該行為の停止又は変更を命ずることができる旨を定めている。 7 31条(事業改善の命令)道路運送法31条は,国土交通大臣は,一般旅客自動車運送事業者の事業について旅客の利便その他公共の福祉を阻害している事実があると認めると きは,一般旅客自動車運送事業者に対し,以下に掲げる事項を命ずることができる旨を定めている。 一事業計画(路線定期運行を行う一般乗合旅客自動車運送事業者にあっては,事業計画又は運行計画)を変更すること。 二ないし七略 8 89条(利害関係人等の意見の聴取) - 60 -(1) 1項 道路運送法89条1項は,地方運輸局長は,その権限に属する以下に掲げる事項について,必要があると認めるときは,利害関係人又は参考人の出頭を求めて意見を聴取することができる旨を定めている。 一一般乗合旅客自動車運送事業における運賃等の上限に関する認可 二略(2) 2項道路運送法89条2項は,地方運輸局長は,その権限に属する同条1項各号に掲げる事項について利害関係人の申請があったとき,又は国土交通大臣の権限に属する同項各号に掲げる事項若しくは旅客自動車運送事業の停止の 命令若しくは許可の取消しについて国土交通大臣の指示があったときは,利害関係人又は参考人の出頭を求めて意見を聴取しなければならない旨を定めている。 (3) 3項道路運送法89条3項は,同条1項及 令若しくは許可の取消しについて国土交通大臣の指示があったときは,利害関係人又は参考人の出頭を求めて意見を聴取しなければならない旨を定めている。 (3) 3項道路運送法89条3項は,同条1項及び2項の意見の聴取に際しては,利 害関係人に対し,証拠を提出する機会が与えられなければならない旨を定めている。 (4) 4項道路運送法89条4項は,同条1項及び2項の意見の聴取に関し必要な事項は,国土交通省令で定める旨を定めている。 第2 道路運送法施行規則の定め 1 9条の2(法第9条第4項の合意しているとき)道路運送法施行規則9条の2は,道路運送法9条4項の合意しているときとは,同項の届出に係る運賃等について地域公共交通会議(地域住民の生活に必要な旅客輸送の確保その他の旅客の利便の増進を図るために必要な一般 乗合旅客自動車運送事業等に関する協議を行うために一又は複数の市町村長 - 61 -(特別区の区長を含む。)又は都道府県知事が主宰する会議をいう。以下同じ。)等において協議が調っているときとする旨を定めている。 2 9条の3(地域公共交通会議の構成員)第1項道路運送法施行規則9条の3第1項は,地域公共交通会議は,以下に掲げる者により構成するものとする旨を定めている。 一地域公共交通会議を主宰する市町村長又は都道府県知事その他の地方公共団体の長二一般乗合旅客自動車運送事業者その他の一般旅客自動車運送事業者及びその組織する団体三住民又は旅客 四地方運輸局長五一般旅客自動車運送事業者の事業用自動車の運転者が組織する団体 3 56条(利害関係人)道路運送法施行規則56条は,道路運送法89条に規定する利害関係人とは,以下の各号のいずれかに該当する者をいう旨を定めている。 事業者の事業用自動車の運転者が組織する団体 3 56条(利害関係人)道路運送法施行規則56条は,道路運送法89条に規定する利害関係人とは,以下の各号のいずれかに該当する者をいう旨を定めている。 一一般乗合旅客自動車運送事業における運賃等の上限に関する認可又は一般乗用旅客自動車運送事業における運賃及び料金に関する認可の申請者二前号の申請者と競争の関係にある者三略第3 「一般乗合旅客自動車運送事業に係る事業計画変更認可申請事案等の審査基 準について」(平成18年中国運輸局公示第70号。甲12,乙1。以下「本件審査基準(変更認可申請事案)」という。)の定め 1 本件審査基準(変更認可申請事案)1.(1)は,道路運送法15条1項に基づく事業計画の変更の認可は,「一般乗合旅客自動車運送事業に係る経営許可申請事案の審査基準について」(平成18年中国運輸局公示第69号。 甲13,乙2。以下「本件審査基準(経営許可申請事案)」という。)の - 62 -2.から8.まで及び10.の定めるところに準じて審査する旨を定めている。 2 本件審査基準(変更認可申請事案)1.(2)柱書本文は,事業規模の拡大となる申請については,申請者又は申請者が法人である場合にあってはその法人の業務を執行する常勤の役員が,以下の全てに該当するものであること 等法令遵守の点で問題のないことを審査基準とする旨を定めている。 ①ないし③ 略④ 道路運送法等の違反により,輸送の安全の確保,公衆の利便を阻害する行為の禁止,公共の福祉を阻害している事実等に対し改善命令を受けた場合にあっては,申請日前にその命令された事項が改善されていること。 ⑤ないし⑦ 略第4 本件審査基準(経営許可申請事案)3.(7)の定め本件審査基準 いる事実等に対し改善命令を受けた場合にあっては,申請日前にその命令された事項が改善されていること。 ⑤ないし⑦ 略第4 本件審査基準(経営許可申請事案)3.(7)の定め本件審査基準(経営許可申請事案)3.(7)は,路線定期運行に係る事業計画等における運行計画について,「一般乗合旅客自動車運送事業の運行計画の届出等の処理要領」(平成13年9月27日付け国自旅第90号国土交通省自動 車交通局長通達。甲22,乙8。以下「本件処理要領(運行計画)」という。)に定めるところによるクリームスキミング的運行を前提とするものでないことを審査基準とする旨を定めている。 第5 本件処理要領(運行計画)の定め 1 「3.運行計画の届出に関する手続きについて」「(4)届出書の送付」 本件処理要領(運行計画)3.(4)本文は,運輸支局長は,運行計画の設定(変更)届出書を受理した場合は,その旨適当な手段により利害関係人等が知り得る状態にするとともに,速やかに地方運輸局長宛てに写しを送付することとする旨を定めている。 2 「4.クリームスキミングの要件について」 本件処理要領(運行計画)4.は,本件処理要領(運行計画)にいう「ク - 63 -リームスキミング的運行」とは,以下のいずれかの要件に該当するものをいう旨を定めている。 (1) 届出がなされた運行計画に定められた1日当たりの全てのピーク時間帯(ピークの期間及び曜日を含む。以下同じ。)の運行回数(A)と1日当たりの全てのオフピーク時間帯の運行回数(B)について,A/Bの数 値(小数点第2位以下の端数切り上げ)が,競合系統(届出がなされた運行系統の系統キロの50%以上が重複する他事業者の運行系統で,複数ある場合は,運行回数がもっとも多いもの。以下同じ。)の当該 値(小数点第2位以下の端数切り上げ)が,競合系統(届出がなされた運行系統の系統キロの50%以上が重複する他事業者の運行系統で,複数ある場合は,運行回数がもっとも多いもの。以下同じ。)の当該数値の1. 5倍の数値を上回る場合又はオフピーク時間帯の運行回数(B)が0回の場合。 この場合において,ピーク時間帯,オフピーク時間帯については,曜日ごとに各運行系統ごとの判断を行うものとする。 (2) 以下の①又は②に該当する場合であって,本件処理要領(運行計画)3.(4)により運行計画の届出について利害関係人等が知り得る状態になった日から14日以内に,旅客の利便が損なわれるおそれがあることにつ いて利害関係人等から合理的な説明を伴う申出がなされ,当該申出が適切なものと認められる場合。 ① (1)のA/Bの数値が,競合系統の当該数値の1倍を上回り1.5倍以下の数値となる場合② 届出がなされた運行系統が他事業者の運行系統と近接するもの等であ って,当該運行系統が他事業者の運行系統と実質的に競合関係にあることが認められ,かつ,(1)のA/Bの数値が,他事業者の運行系統の当該数値の1倍を上回る数値となる場合 3 「5.クリームスキミング的運行に係る運行計画の変更命令等について」(1) 5.① 本件処理要領(運行計画)5.①は,事業の許可申請又は路線の新設に - 64 -係る事業計画の変更認可申請の内容でクリームスキミング的運行が行われることが明らかである場合は,許可又は事業計画の変更認可の審査段階で,申請者に対しこれを是正させる旨を定めている。 (2) 5.②本件処理要領(運行計画)5.②は,5.①以外の場合において,届出 がなされた運行計画の内容でクリームスキミング的運行が行われることが明ら しこれを是正させる旨を定めている。 (2) 5.②本件処理要領(運行計画)5.②は,5.①以外の場合において,届出 がなされた運行計画の内容でクリームスキミング的運行が行われることが明らかである場合には,届出者に対しこれを是正するよう指導するとともに,指導に従わない場合には,道路運送法31条1号に基づく事業改善命令を発動するものとする旨を定めている。 (3) 5.③ 本件処理要領(運行計画)5.③は,本件処理要領(運行計画)4.に規定する要件には該当しないものの,運行が行われた結果,競合系統等のオフピーク時間帯の利用者利便の低下が生じた場合には,上記にかかわらず,当該運行を行う事業者に対しこれを是正するよう指導するとともに,指導に従わない場合には,道路運送法31条1号に基づく事業改善命令を 発動するものとする旨を定め(本文),運行計画の変更を伴わない是正措置が必要な場合には,同法30条4項に基づく事業の健全な発達を阻害する競争の停止命令を発動するものとする旨も定めている(なお書)。 第6 「一般乗合旅客自動車運送事業の運賃及び料金の上限の認可に関する処理方針」(平成13年12月5日付け国自旅第116号国土交通省自動車交通局長 通達。乙20。以下「本件処理方針(運賃等上限認可)」という。)の定め 1 第3(上限運賃の制定形態及び設定地域)(1) 本件処理方針(運賃等上限認可)第3の1.は,運賃の制定形態は,原則として,一般バス及び限定バスについては対キロ区間制,特殊区間制,均一制又は地帯制のいずれかとする旨及び料金の制定形態は事業者の 任意とする旨を定めている。 - 65 -(2) 本件処理方針(運賃等上限認可)第3の2.(参入事業者の制定形態)本文は,既存事業者が運行する路線に競合参入 び料金の制定形態は事業者の 任意とする旨を定めている。 - 65 -(2) 本件処理方針(運賃等上限認可)第3の2.(参入事業者の制定形態)本文は,既存事業者が運行する路線に競合参入する事業者であって,当該地域の路線について運賃の上限の賃率の認可を受けていない事業者(以下「参入事業者」という。)については,既存事業者と同一の運賃の制定形態による参入を原則とするが,以下の要件を全て満たす場合に限 り,既存事業者と異なる運賃の制定形態を認めるものとする旨を定めている。 「(1) 運賃の制定形態が異なることによる利用者の混乱回避のために停留所,車両の外部等における運賃額の表示等必要な措置が講じられていること。 (2) 運賃の制定形態が異なることにより,乗車・降車位置の相違等が発生する場合にあっては,利用者の安全確保及び周辺道路の交通安全の確保の観点から,自ら実施することが必要な措置を講ずるとともに,道路管理者,交通管理者等において実施することが必要な措置について道路管理者,交通管理者等の了解が得られていること。」 (3) 本件処理方針(運賃等上限認可)第3の3.(上限運賃の設定地域等の単位)は,事業者ごとに,一般バスについては本件処理方針(運賃等上限認可)別紙1の標準運賃ブロック単位,限定バスについては路線単位に設定することを基本とするが,事業者の判断により,原価の差異が明確な場合等における営業所単位,運行地域単位等の細分地域単位若しくは路線 単位の設定又は全地域を一括した設定を認めるものとする旨を定めている。 2 第5(上限運賃の水準に関する特例)1.(参入事業者の上限運賃の水準)本文本件処理方針(運賃等上限認可)第5の1.本文は,原則として,既存事 業者と同一の制定形態による場 ている。 2 第5(上限運賃の水準に関する特例)1.(参入事業者の上限運賃の水準)本文本件処理方針(運賃等上限認可)第5の1.本文は,原則として,既存事 業者と同一の制定形態による場合は,運賃の適用方法を含め当該上限運賃と - 66 -同一とし,異なる制定形態による場合は,本件処理方針(運賃等上限認可)別表に定める方法により換算した上限運賃とする旨を定めている。 以上 - 67 -(別紙5)本案の争点に関する当事者の主張の要旨第1 争点③(本件処分1の違法性の有無)(原告らの主張)本件処分1には,以下に述べる違法がある。このことは,Cに対する本件各 処分を巡る手続において,既存事業者に対するものとは異なる極めて例外的な取扱いが重ねられており,法令上の要件の適合性に無関係の事情が考慮されたことが強く推認されることからも明らかである。 1 3か所の停留所について本件審査基準(経営許可申請事案)の停留所の基準を満たしていなかった違法があること 以下のとおり,ε線の停留所のうち,「σ」,「τ」及び「I前」の3か所については,本件審査基準(経営許可申請事案)の定める審査基準を満たしていなかった。この点を看過してされた本件処分1は,違法である。 (1) 本件審査基準(経営許可申請事案)等の定め本件審査基準(経営許可申請事案)3.⑹は,バスの停留所に関し,「申 請者が,原則として3年以上の使用権原を有するものであること」及び「道路法,道路交通法等関係法令に抵触しないものであること」等を審査基準としている。 この点,「『一般乗合旅客自動車運送事業の申請に対する処理方針』の細部取扱について」(平成13年9月27日付け国自旅第93号国土交通省自 動車交通局旅客課長通達。乙32。以下「本件 ている。 この点,「『一般乗合旅客自動車運送事業の申請に対する処理方針』の細部取扱について」(平成13年9月27日付け国自旅第93号国土交通省自 動車交通局旅客課長通達。乙32。以下「本件細部取扱」という。)によれば,上記にいう「使用権原」については,「契約期間が概ね3年以上の賃貸借契約書の提示又は写しの提出をもって,使用権原を有するものとする。」と,上記にいう「原則として3年以上」については,「道路占用許可,道路使用許可については,道路管理者等が附する期限まででよいこととする趣旨」 と,上記にいう「道路法,道路交通法等の法令に抵触しない」については, - 68 -「事業者が関係機関に対して行う道路占用許可,道路使用許可を得ているか若しくは確実に得られる見込みのあること」とそれぞれされている。 (2) 「σ」停留所ア Cは,ε線において「σ」停留所の設置を計画し,平成29年2月1日,岡山市長に対し,道路占用許可申請をし,岡山市長は,同月9日,設置場 所の地先所有者の了解を得ることを「特記占用許可条件」として,同申請に係る許可をした。 しかし,現在まで,地先所有者は,Cに対し,停留所としての使用について了解しておらず,上記の許可条件は満たされていないから,当該許可の効果は発生していない。 したがって,「σ」停留所は,本件審査基準(経営許可申請事案)の定める審査基準を満たしていない。 イ被告は,当該道路占用許可に付された「特記占用許可条件」の性質は,講学上の「負担」であるから,当該条件を満たすまで許可の効力が発生しないという法的効果を有するものではない旨主張する。 しかし,設置場所の地先所有者の了解を得ることとする条件は,地先所有者が不利益を受忍していることを確認するものであり,許可にとっ が発生しないという法的効果を有するものではない旨主張する。 しかし,設置場所の地先所有者の了解を得ることとする条件は,地先所有者が不利益を受忍していることを確認するものであり,許可にとって重要な要素であるといえる。 したがって,当該条件は,講学上の「条件」であり,これが成就しなければ許可の効力は生じていないものといえる。被告の上記主張は失当であ る。 (3) 「τ」停留所「τ」停留所に係る道路占用許可の事実経緯は,おおむね前記(2)アの「σ」停留所のそれと同一であるところ,現在まで,「τ」停留所の設置について,地先所有者の承諾はない。 したがって,「τ」停留所は,本件審査基準(経営許可申請事案)の定め - 69 -る審査基準を満たしていない。 (4) 「I前」停留所ア 「I前」停留所は,I株式会社(以下「I」という。)が所有する土地に停留所を設置するものであったところ,Cは,平成29年9月6日,Iに対し,停留所の設置に承諾するよう申入れをし,Iは,同月26日,停 留所の設置位置やデザイン等の仕様につきIの承認を得ること,設置期間を原則1年間とすること,双方当事者共に設置期間中においても解除することができるものとすること等の許可条件を付して承諾をした。しかし,Cは,本件処分1がされるまでの間,停留所の設置位置等について,Iに対し承認を求めることはなかった。 したがって,上記の許可条件は成就しておらず,Iの承諾の効果は発生していない上,期間を原則1年間としていること等のその内容に照らしても,「I前」停留所は,本件審査基準(経営許可申請事案)の定める審査基準を満たしていない。 イ被告は,①停留所の設置位置やデザイン等は,事業計画変更認可を受け, 実際に設置する停留所が確定した 「I前」停留所は,本件審査基準(経営許可申請事案)の定める審査基準を満たしていない。 イ被告は,①停留所の設置位置やデザイン等は,事業計画変更認可を受け, 実際に設置する停留所が確定した後に,詳細な検討に着手することが合理的かつ一般的な行動であると考えられることなどからすれば,Iが承諾に付した許可条件は,本件処分1の時点で成就していなければ承諾の効果が発生しないというような停止条件としての性質を有するものではない,②本件細部取扱は,停留所について,本件審査基準(経営許可申請事案)が 「原則として3年以上の使用権原を有するものであること」とする要件の審査に係る取扱いに関し,「賃貸借契約期間が3年未満であっても,契約期間満了時に自動的に当該契約が更新されるものと認められる場合に限っては,使用権原を有するものとみなす。」とする営業所に係る審査の取扱いに準じるとしているから,設置期間が原則1年間とされていたとしても, 本件処分1が本件審査基準(経営許可申請事案)又は本件細部取扱に反し - 70 -違法となるとはいえない旨主張する。 しかし,上記①については,Cが,本件処分1の当時,全くの新規事業者ではなく,既に岡山市内で一般乗合旅客自動車運送事業を営んでいた事業者であったことなどからすれば,本件処分1の時点で十分に当該許可条件を成就させることはできたのであり,Iは,当該許可条件が成就しなけ れば承諾の効果は発生しないものと意図していたと考えることが自然である。上記②については,被告が指摘する本件細部取扱の定めは,自動的な更新の結果,3年以上の使用権原を有するものと同一視できる場合をいうものであるところ,当該許可条件の内容は,設置期間を原則1年間とするのみならず,「以降,甲乙協議により更新するものとします」との な更新の結果,3年以上の使用権原を有するものと同一視できる場合をいうものであるところ,当該許可条件の内容は,設置期間を原則1年間とするのみならず,「以降,甲乙協議により更新するものとします」との文言 があるとおり,自動的な更新をうかがわせるものとはなっていない上,前記アに述べたとおり設置期間中も無条件で解除することができるものとされていたのであるから,3年以上の使用権原を有するものと同一視できる場合には当たらないというべきである。 したがって,被告の上記主張はいずれも失当である。 (5) その他の被告の主張について被告は,停留所の名称及び位置等の変更は,事後届出で足りるとされており,このことは,一般乗合旅客自動車運送事業の事業計画を全体としてみた場合に,その適法性等に重大な影響を与えるものではなく,事業計画の実態を把握するにすぎないことを示しているなどと主張する。 しかし,自ら本件審査基準(経営許可申請事案)を定め,これを処分の要件審査の基準としながら,これに反する処分が違法とならない旨主張することは,自己矛盾である。また,道路運送法施行規則が,一部の事項について軽微変更という概念を設け,変更後の事後的な届出手続で足りるものとしている理由は,当該事項の変更が生じても認可が与えられた路線運行が本質的 に変更されるものではなく,その影響が及ぶ範囲が限定されているからであ - 71 -るから,このことを理由に処分の適法性に影響を与えないというのは,論理的飛躍がある。 したがって,被告の上記主張は失当である。 2 運行計画に係る違法があること道路運送法6条2号にいう「当該事業の遂行上適切な計画を有するものであ ること」に,申請者の運行計画がクリームスキミング的運行を内容とするものでないことが 2 運行計画に係る違法があること道路運送法6条2号にいう「当該事業の遂行上適切な計画を有するものであ ること」に,申請者の運行計画がクリームスキミング的運行を内容とするものでないことが含まれることは,本文第2・4(1)の(原告らの主張)のイ(ア)に述べたとおりである。そして,クリームスキミング的運行が,本件処理要領(運行計画)が定める特定の時間帯等への参入のみを意味すると解すべき合理的な理由はなく,路線そのものの参入についても,クリームスキミング的運行に該 当すると解するのが同号の正当な解釈である。 そして,本件申請1に係る運行計画が原告らの利益を著しく害することは,本文第2・4(1)の(原告らの主張)のエに述べたとおりである。 以上の点を看過した本件処分1は,クリームスキミング的運行に対する規制を極めて限定的に解している点で,法令の考え方を誤ったものというほかなく, 違法である。 (被告の主張) 1 3か所の停留所に関する原告らの主張について(1) 原告らは,「σ」及び「τ」の各停留所について岡山市長がした道路占用許可には,設置場所の地先所有者の了解を得ることが「特記占用許可条件」 とされていたにもかかわらず,いずれの停留所についても,地先所有者は,現在まで,Cに対し,停留所としての使用について了解しておらず,上記の許可条件は満たされていないから,上記の許可の効果は発生していない旨主張する。 しかし,上記の許可条件は,その内容からして,占用物件(バス停標識) の設置位置や形状に関する事項等,明らかに道路占用許可の効果発生後に行 - 72 -うべき行為を定めたものが含まれていることからわかるように,その性質は,講学上の「負担」であると解されるのであって,当該条件を満たすまで許可の効力が に道路占用許可の効果発生後に行 - 72 -うべき行為を定めたものが含まれていることからわかるように,その性質は,講学上の「負担」であると解されるのであって,当該条件を満たすまで許可の効力が発生しないという法的効果を有するものではない。 この点,岡山市は,本件処分1の後に原告らから指摘を受け,再調査を行った結果,道路占用許可が有効であるとの判断を示している。同市は,その 理由として,同市が道路占用許可に際し,道路法87条1項に基づき「設置場所の地先所有者の了解を得ること」との許可条件を附しているのは,占用する物件等による地先敷地の出入りへの影響等を勘案したものであるとした上で,本件のようなバス停留所の標識を道路に設置することによる地先所有者への影響は小さいことや,同条2項において「前項の規定による条件は, (中略)不当な義務を課することとならないものでなければならない。」とされている趣旨を挙げており,この点からしても,同市が上記の許可条件を講学上の「負担」として課したものであることが明らかである。 したがって,原告らの上記主張は失当である。 (2)ア原告らは,Iが「I前」停留所の設置についてした承諾に付された許可 条件は成就していないから,当該承諾の効果は発生していない旨主張する。 しかし,上記の許可条件は,その内容からして,本件処分1の時点で成就していなければ承諾の効果が発生しないというような停止条件としての性質を有するものではないことが明らかである。 そして,「停留所又は乗降地点の名称及び位置並びに停留所間又は乗降 地点間のキロ程」の変更は,道路運送法15条4項にいう「その他の国土交通省令で定める軽微な事項」であり(同法施行規則15条の2第1項3号),許可や認可,事前届出といった手続を要せず,事後 降 地点間のキロ程」の変更は,道路運送法15条4項にいう「その他の国土交通省令で定める軽微な事項」であり(同法施行規則15条の2第1項3号),許可や認可,事前届出といった手続を要せず,事後届出で足りるとされていることにも照らせば,事業計画変更認可を受け,実際に設置する停留所が確定した後に,それらの停留所の詳細な設置位置やデザイン等の 検討に着手することが合理的かつ一般的な行動であると考えられ,Iが付 - 73 -したとされる上記の許可条件も,これを前提にしたものと考えることが自然である。 したがって,原告らの上記主張は失当である。 イ原告らは,Iが「I前」停留所の設置についてした承諾が,設置期間を原則1年間としていること等に照らし,「I前」停留所は,本件審査基準 (経営許可申請事案)の定める審査基準を満たしていない旨主張する。 本件細部取扱は,停留所について,本件審査基準(経営許可申請事案)が「原則として3年以上の使用権原を有するものであること」とする要件の審査に係る取扱いに関し,「借用の場合は契約期間が概ね3年以上の賃貸借契約書の提示又は写しの提出」があれば使用権原を有するものと認め るとしつつ,「賃貸借契約期間が3年未満であっても,契約期間満了時に自動的に当該契約が更新されるものと認められる場合に限っては,使用権原を有するものとみなす。」とする営業所に係る審査の取扱いに準じるとしている。 その趣旨は,一般乗合旅客自動車運送事業において,新規路線のため新 たに設置した営業所や停留所等の施設は,実際に運行が開始されれば,相当程度長期間にわたって使用されることが通常想定されているものであることから,これらの敷地として使用される土地の賃貸借契約書等に記載されている当初契約期間が3年未満とされてい 運行が開始されれば,相当程度長期間にわたって使用されることが通常想定されているものであることから,これらの敷地として使用される土地の賃貸借契約書等に記載されている当初契約期間が3年未満とされていたとしても,バスの営業所や停留所として使用する場所として当該契約を締結している以上,契約当 事者において,少なくとも3年程度は契約を更新し使用を継続することを想定し,それが当然の前提になっているものと考えられ,このような契約について,当初契約期間を3年以上とするよう修正した当該土地の使用契約を改めて締結するよう求める等の対応をすることはう遠であり,申請者に過度の負担を強いることにもなると考えられたことによる。 そして,上記の趣旨と同様の観点から,当初の契約期間が3年未満であ - 74 -り,かつ,自動更新と明記されていない契約であっても,更新されないであろうことが認められる事情がない限り,自動更新とされている場合に準じた扱いをしているのが実情であり,上記の趣旨からすれば,このような取扱いをもって,本件審査基準(経営許可申請事案)又は本件細部取扱に反するものとして,事業計画変更認可が違法となるとはいえない。 したがって,原告らの上記主張は失当である。 (3) 前記(2)アに述べたとおり,停留所の名称及び位置等の変更は,事後届出で足りるとされており,このことは,一般乗合旅客自動車運送事業の事業計画を全体としてみた場合に,その適法性等に重大な影響を与えるものではなく,事業計画の実態を把握するにすぎないものであることを示している。 また,Cは,本件処分1の後の平成30年4月26日に,「σ」及び「I前」の各停留所の廃止等に係る事業計画変更届を提出しており,仮に,これら2つの停留所について,本件処分1の当時,何らかの瑕 また,Cは,本件処分1の後の平成30年4月26日に,「σ」及び「I前」の各停留所の廃止等に係る事業計画変更届を提出しており,仮に,これら2つの停留所について,本件処分1の当時,何らかの瑕疵があったとしても,同月27日のε線の運行開始前に治癒されており,本件処分1の取消原因たり得るものではない。 以上によれば,本件処分1の取消原因として停留所の審査に瑕疵があった旨主張する原告らの主張に理由がないことは明らかである。 2 運行計画に関する原告らの主張について原告らは,道路運送法6条2号にいう「当該事業の遂行上適切な計画を有するものであること」に,申請者の運行計画がクリームスキミング的運行を内容 とするものでないことが含まれるとした上で,黒字路線のみへの参入等もクリームスキミング的運行に該当し得るとの理解を前提に,本件申請1に係る運行計画が原告らの利益を著しく害することから,本件処分1は,同号の認可基準を満たさない違法がある旨主張する。 しかし,本件審査基準(経営許可申請事案)が,事業計画変更認可の要件と して,運行計画がクリームスキミング的運行を前提とするものでないことを定 - 75 -める趣旨及びクリームスキミング的運行の意義は,本文第2・4(1)の(被告の主張)ウ(イ)aに述べたとおりである。黒字路線のみへの参入等も規制の対象となる旨の原告らの主張は,独自のものにすぎず,平成12年改正を経た道路運送法の趣旨を正解しないものである。 したがって,原告らの上記主張は失当である。 第2 争点④(本件処分2の違法性の有無)(原告らの主張)本件処分2には,以下に述べる違法がある。このことは,Cに対する本件各処分を巡る手続において,既存事業者に対するものとは異なる極めて例外的な取扱いが重ねら 分2の違法性の有無)(原告らの主張)本件処分2には,以下に述べる違法がある。このことは,Cに対する本件各処分を巡る手続において,既存事業者に対するものとは異なる極めて例外的な取扱いが重ねられており,法令上の要件の適合性に無関係の事情が考慮された ことが強く推認されることからも明らかである。 1 運賃の制定形態が本件処理方針(運賃等上限認可)等に反する違法があること(1) 本件処理方針(運賃等上限認可)第3の2.本文は,参入事業者について,既存事業者と同一の運賃形態による参入を原則とする旨を定めている。また, 「一般乗合旅客自動車運送事業の運賃及び料金に関する制度」(平成13年12月5日付け国自旅第118号国土交通省自動車交通局長通達。甲50,乙41。以下「運賃制度通達」という。)によれば,都市郊外の路線における運賃形態は,特殊区間制又は対キロ区間制によるものとされている。 しかし,θ線が対キロ区間制により運賃認可を受けているにもかかわらず, 本件処分2におけるε線の運賃制定形態は,均一制及び地帯制が採用されているから,本件処分2は,上記の本件処理方針(運賃等上限認可)の定めとは異なる取扱いを認めたものである。また,ε線は,都市郊外に相当する「φ」停留所以東の区間においても,均一制及び地帯制を採用していることから,本件処分2は,上記の運賃制度通達の定めに反した運賃形態を採用している。 したがって,本件処分2は,本件処理方針(運賃等上限認可)及び運賃制 - 76 -度通達の定める基準に反する違法がある。 (2)ア被告は,本件処分2は,本件処理方針(運賃等上限認可)第3の2.(1)及び(2)の要件を全て満たし,既存事業者と異なる運賃形態を制定することができる例外に該当するものとして,本件申請2に (2)ア被告は,本件処分2は,本件処理方針(運賃等上限認可)第3の2.(1)及び(2)の要件を全て満たし,既存事業者と異なる運賃形態を制定することができる例外に該当するものとして,本件申請2に係る運賃形態を認めたものである旨主張する。 しかし,前記第1の(原告らの主張)の1(1)ないし(3)に述べたとおり,「σ」及び「τ」の各停留所について有効かつ適法な道路占用許可がされていないことからすれば,道路管理者の了解が得られているとはいえない。 これに加え,同(4)に述べたとおり,「I前」停留所について土地所有者であるIの承諾の効果も生じていないことも踏まえれば,岡山県公安委員会 の了解が得られたものともいい難い。さらに,ε線が運行する道路は,従前から渋滞が頻発しており,ε線が運行すれば渋滞が激しさを増すことは容易に想像できるものであり,道路管理者及び交通管理者の了解は,これらの事情を無視してされたものである。 したがって,本件申請2は,本件処理方針(運賃等上限認可)第3の2. (1)及び(2)の要件を満たすものであったとはいえず,被告の上記主張は失当である。 イ被告は,ε線は,都市近郊の路線に当たることから,運賃制度通達によれば,原則は特殊区間制又は対キロ区間制となるものの,それは飽くまで「原則」であり,ε線の路線の態様等を勘案するなどして,均一制運賃と した本件申請2を認めることとした旨主張する。 しかし,ε線は,βからξまで運行し,ξで折り返して岡山駅に戻ってくるものにすぎないから,その「路線の態様」を循環路線とみる余地はない上,「旅客の流動状況」について分析した形跡はない。 したがって,均一制及び地帯制を採用する理由として勘案する事情がな く,本件処分2は運賃制度通達に反するものというほかな 線とみる余地はない上,「旅客の流動状況」について分析した形跡はない。 したがって,均一制及び地帯制を採用する理由として勘案する事情がな く,本件処分2は運賃制度通達に反するものというほかないから,被告の - 77 -上記主張は失当である。 2 適正原価適正利潤の原則に適合しない違法があること原告が試算したところによれば,Cが運行するバス事業全体は,年間約7400万円の赤字であると推測される。 そして,被告の主張によれば,本件申請2の審査において原価計算書の提出 は本来不要であり,その内容が本件処分2の効力に影響を与えるものではないというにもかかわらず,中国運輸局が,本件申請2の審査の過程において,Cに対し,原価計算書の提出を指示し,これを受領していたことや,被告が,本件訴訟において,上記原価計算書を提出しないことにも照らせば,本件処分2は,道路運送法9条2項の定める適正原価適正利潤の原則に反するものであっ たにもかかわらずされたものであることが,強く推認される。 (被告の主張) 1 運賃の制定形態に関する原告らの主張について(1)ア原告らは,θ線が対キロ区間制により運賃認可を受けているにもかかわらず,本件処分2におけるε線の運賃制定形態は,均一制及び地帯制が 採用されているから,本件処分2は,本件処理方針(運賃等上限認可)の定める基準に反する旨主張する。 しかし,本件処分2は,本件処理方針(運賃等上限認可)第3の2.(1)及び(2)の要件を全て満たし,既存事業者と異なる運賃形態を制定することができる例外に該当するものとして,本件申請2に係る運賃形態を認め たものである。 イ原告らは,「σ」及び「τ」の各停留所について有効かつ適法な道路占用許可がされていないことなどからすれば,本件申請 外に該当するものとして,本件申請2に係る運賃形態を認め たものである。 イ原告らは,「σ」及び「τ」の各停留所について有効かつ適法な道路占用許可がされていないことなどからすれば,本件申請2について,道路管理者や岡山県公安委員会の了解が得られているとはいえない旨主張する。 しかし,停留所に関する原告らの主張に理由がないことについては,前 記第1の(被告の主張)の1に述べたとおりであり,原告らの上記主張は, - 78 -前提において理由がない。加えて,そもそも,本件処理方針(運賃等上限認可)第3の2.(2)にいう「道路管理者,交通管理者等において実施することが必要な措置」とは,「利用者の安全確保及び周辺道路の交通安全の確保」の観点,例えば,周辺道路の交通量及び交通事故の危険性等の観点から,道路管理者,交通管理者等が実施するものとしては,車線の増加, 道路の切込みの形状の変更,信号の位置や制御に関する変更,速度制限の変更等といった措置の要否が検討されることを想定したものであり,こうした措置の要否等について交通管理者等の意見を照会した上,仮に,必要とされた場合には,これを実施することについて「道路管理者,交通管理者等の了解」を要するとしたものであって,原告らの主張するような停留 所に関する土地の使用権原や地先所有者の了解の有無とは関連性がない。 したがって,原告らの上記主張は失当である。 (2)ア原告らは,ε線は,都市郊外に相当する「φ」停留所以東の区間においても,均一制及び地帯制を採用していることから,本件処分2は,運賃制度通達の定めに反した運賃形態を採用している旨主張する。 しかし,運賃制度通達において,原告の上記指摘は,飽くまで「原則」とされており,運賃の制定形態は,「路線の態様,旅客の流動状 ,運賃制度通達の定めに反した運賃形態を採用している旨主張する。 しかし,運賃制度通達において,原告の上記指摘は,飽くまで「原則」とされており,運賃の制定形態は,「路線の態様,旅客の流動状況等を勘案して選択する」こととされている。そして,平成12年改正後の道路運送法が,運賃制定形態について,基本的に事業者の判断に任せることとした趣旨にも鑑み,本件処分2は,ε線の路線の態様等を勘案し,既存事業 者と運賃形態が異なることによる利用者の混乱回避措置が講じられていることなども踏まえ,均一制運賃とした本件申請2を認めることとしたものである。 したがって,本件処分2は,運賃制度通達に反するものではなく,原告らの上記主張は失当である。 イ原告らは,ε線は,βからξまで運行し,ξで折り返して岡山駅に戻っ - 79 -てくるものにすぎず,その「路線の態様」を循環路線とみる余地はない上,「旅客の流動状況」について分析した形跡はないから,運賃の制定形態につき,均一制及び地帯制を採用する理由として勘案する事情がない旨主張する。 しかし,前記アに述べたとおり,運賃制度通達は,一般バスの運賃の制 定形態について,「路線の態様,旅客の流動状況等を勘案して選択する」旨定めており,事業者の判断において選択することを前提に,路線の長さや形状,地理的要件,運行方法,当該地域の人口規模や地域特性,旅客の流動状況等を総合的に勘案して,事業者が選択した運賃形態が不相当なものでないかを審査するとしたものである。そして,そもそも,道路運送法 又は関係法令,関係する審査基準等をみても,「循環路線」あるいは「循環線」に言及した規定はなく,その意義等も明らかとはいえないのであって,都市近郊の路線について,当該路線が「循環路線」あるいは「循環線 は関係法令,関係する審査基準等をみても,「循環路線」あるいは「循環線」に言及した規定はなく,その意義等も明らかとはいえないのであって,都市近郊の路線について,当該路線が「循環路線」あるいは「循環線」であるか否かによって,均一制運賃とすることが認められるか否かが決せられるものではないことは明らかである。 したがって,原告らの上記主張は失当である。 2 適正原価適正利潤の原則に適合しない旨の原告らの主張について原告らは,ε線の運行により,Cが運行するバス事業全体は,年間約7400万円の赤字となると推測され,中国運輸局が,本件申請2の審査の過程において,Cに対し,原価計算書の提出を指示し,これを受領していたことや,被 告が,本件訴訟において,上記原価計算書を提出しないことにも照らせば,本件処分2は,道路運送法9条2項の定める適正原価適正利潤の原則に反するものであったにもかかわらずされたものであることが,強く推認される旨主張する。 しかし,原告らの上記主張は,結局のところ,ε線の実施運賃について論難 するにすぎず,本文第2・4(2)の(被告の主張)のイ(ア)に述べたところから - 80 -すれば,上限運賃の設定認可である本件処分2の適法性に関するものとはいえないから,主張自体失当である。 なお,原告らは,本件訴訟において,Cが本件申請2に際し提出した原価計算書を提出するように求めている。しかし,道路運送法施行規則8条3項5号により,原価計算書の提出は,本件申請2において本来必要なかったものであ り,Cが,本件申請2に際して原価計算書を提出したのは,飽くまで参考資料としてであって,当該原価計算書は,本件処分2に係る審査の対象とされたものではない。したがって,当該原価計算書は,本件処分2の適法性に影響を与える に際して原価計算書を提出したのは,飽くまで参考資料としてであって,当該原価計算書は,本件処分2に係る審査の対象とされたものではない。したがって,当該原価計算書は,本件処分2の適法性に影響を与えるものではないから,本件訴訟においてこれを提出する必要は認められない。 以上
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