判決 主文 1 原告a 及び原告b の主位的請求をいずれも棄却する。 2 被告は、原告a に対し、330万円及びこれに対する平成28年10月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を 支払え。 3 被告は、原告b に対し、330万円及びこれに対する平成28年10月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 原告a 及び原告b のその余の請求をいずれも棄却する。 5 原告c及び原告d の請求をいずれも棄却する。 6 訴訟費用のうち原告c及び原告d と被告との間に生じたものについては、同原告らの負担とし、その余の原告らと被告との間に生じたものについては、これを5分し、その4を同原告らの負担とし、その余を被告の負担とする。 7 この判決は、第2項及び第3項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求 1 被告は、原告a に対し、1533万0225円及びこれに対する平成28年 10月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告は、原告b に対し、1533万0225円及びこれに対する平成28年10月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告は、原告cに対し、330万円及びこれに対する平成28年10月3日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 被告は、原告d に対し、330万円及びこれに対する平成28年10月3日 から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要等亡e(以下「e」という。)は、知的障害及び身体障害を有し、被告が設置するf 支援学校(以下「本件支援学校」という。)高等部(以下、単に「高等部」という。)に通学していたところ、平成28年9月15 亡e(以下「e」という。)は、知的障害及び身体障害を有し、被告が設置するf 支援学校(以下「本件支援学校」という。)高等部(以下、単に「高等部」という。)に通学していたところ、平成28年9月15日、給食時間中に 倒れ、その後死亡した(以下「本件事故」という。)。 e の親族である原告らは、e には掻き込むような食べ方をして食物を丸飲みするという傾向があり、これによって咽頭が食物で閉塞され窒息が生じたことにより死亡したとし、本件事故当時本件支援学校の教職員であった者ら(学校長であったg(以下「g」という。)、e の担任であったh(以下「h」とい う。)、中学部の養護教諭であったi(以下「i」という。)及び高等部の臨時養護教諭であったj(以下「j」という。)。以下、前記4名を併せて「本件教職員ら」という。)には、給食時間中のe を見守り、食物による窒息を防止すべき注意義務及び同人の口腔内の食物を直ちに除去するなどの応急処置を採るべき注意義務等があったのに、これらを怠ったなどと主張している。 本件は、原告らが、被告に対し、主位的に民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)715条に基づき、予備的に国家賠償法1条1項に基づき、損害金(治療費、逸失利益、e の慰謝料及び葬儀費用の合計額から既払の災害共済給付金を控除した金額、原告ら固有の慰謝料並びに弁護士費用)合計3726万0450円及びこれらに対する不法行為の後の日である 平成28年10月3日(e 死亡の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 なお、原告らは、本件訴訟において、上記の請求のほかに本件教職員らに対する民法709条に基づく損害賠償請求をしていたが、令和5年6月23日の和解期日において る遅延損害金の支払を求める事案である。 なお、原告らは、本件訴訟において、上記の請求のほかに本件教職員らに対する民法709条に基づく損害賠償請求をしていたが、令和5年6月23日の和解期日において、原告らと本件教職員らとの間で訴訟上の和解が成立した。 1 前提事実(証拠によって認定した事実は、各項末尾の括弧内に認定に供した 証拠を摘示し、その記載のない事実は、当事者間に争いがないか、当裁判所に顕著である。)⑴ 当事者等ア e についてe は、平成11年2月17日生まれの女性である(甲A1)。 e は、平成17年4月、本件支援学校小学部に入学し、平成28年9月15日当時は、高等部3年4組(生活教養科)に在籍していた。なお、高等部は、単一障がい学級(職業生活科)と重複障がい学級(生活教養科)で学級を編成しており、3年1組及び2組が職業生活科、同3組及び4組が生活教養科の学級であった(甲A3、証人k)。 e は、知的障害及び身体障害を有しており、以下の療育手帳(平成27年4月10日再交付)及び身体障害者手帳(平成23年3月29日再交付)の交付を受けていた(甲A2の1・2)。 療育手帳障がいの程度(総合判定):A1 身体障害者手帳身体障害者等級表による級別:2級障害名:運動発達遅滞、甲状腺機能低下症による体幹機能障害(歩行困難)(3級)、脳性障害による音声・言語機能喪失(3級)平成27年3月19日当時のe の精神年齢等は以下のとおりであった (甲A6)。 a 田中ビネー知能検査ⅤMA(精神年齢)2歳1か月、IQ(知能指数)13bS-M社会生活能力検査SA(社会生活年齢)2歳5か月、SQ(社会生活指数)19 イ原告らについて 原 ネー知能検査ⅤMA(精神年齢)2歳1か月、IQ(知能指数)13bS-M社会生活能力検査SA(社会生活年齢)2歳5か月、SQ(社会生活指数)19 イ原告らについて 原告a はe の父であり、原告b はe の母である。e の法定相続人は原告a 及び原告b のみであり、その相続分は各2分の1である(甲A1)。 原告cはe の弟であり、原告d はe の妹である(甲A1)。 ウ被告等について被告は、本件支援学校の学校設置者である。 g は、平成28年9月15日当時、本件支援学校の学校長であった者である。 h は、平成28年9月15日当時、高等部3年所属の教諭であり、eの担任であった者である。 i 及びj は、平成28年9月15日当時、それぞれ、本件支援学校中 等部を担当する養護教諭及び高等部を担当する臨時養護教諭であった者である(分離前相被告i、分離前相被告j)。 k(以下「k」という。)は、平成28年9月15日当時、高等部3年所属の教諭であった者である(証人k)。 ⑵ 給食時におけるe の指導担当者等について ア高等部生活教養科の校時表は以下のとおりであった(甲A3)。 1校時午前8時50分から9時50分2校時午前10時から午前10時45分3校時午前10時50分から午前11時35分4校時午前11時40分から午後0時25分給食・昼休み(清掃)午後0時25分から午後1時20分(午後1時5分から午後1時15分)5校時午後1時20分から午後2時5分6校時午後2時10分から午後2時55分帰りの会等午後2時55分から午後3時5分 下校午後3時10分e が在籍していた高等部3年4組の生徒については、基本的 後2時5分6校時午後2時10分から午後2時55分帰りの会等午後2時55分から午後3時5分 下校午後3時10分e が在籍していた高等部3年4組の生徒については、基本的には、担当している担任と副担任の教員が中心となって支援や指導を行っており、給食時においても同様であった(証人k)。 もっとも、e には、給食時等に、スプーンで食器を叩いたり、コップを持ち上げたりするなどの注目行動があって、食事等が進まなくなるという 傾向があり、コミュニケーションを取れば取るほどその傾向が強くなったことや、同人の指導を担当する教員を変更した際には、気持ちを切り替え、次の活動に移ることができたこともあったことから、e については、給食時、その指導担当者を曜日ごとに変更するという扱いがされていた。高等部3年在籍時のe の給食時における指導担当者は以下のとおりであった (甲A3、証人k、分離前相被告h)。 月曜日 k火曜日 H臨時講師水曜日 h木曜日 A教諭 金曜日 k⑶ 本件事故発生日の給食時間にh がe の下を離れるまでの動静等についてア本件事故発生日である平成28年9月15日(以下、⑶ないし⑸において、「平成28年9月15日」の記載を省略する。)(木曜日)における、本件支援学校の生徒であるM、G、K及びe の給食時における指導担当者 は以下のとおりであった。h が2名の生徒の指導を担当することになったのは、A教諭が平時指導を担当するKに加えて、出張により同日不在にしていたk の代わりに、同人が平時指導を担当するGの指導を担当する必要があったためである(甲A3、証人k、分離前相被告h)。 M H臨時講師 G h(なお、Gには他害の傾向があった。) 代わりに、同人が平時指導を担当するGの指導を担当する必要があったためである(甲A3、証人k、分離前相被告h)。 M H臨時講師 G h(なお、Gには他害の傾向があった。)K he A教諭イ e は、給食時間(午後0時25分から)の開始後約24分が経過した午後0時49分頃、A教諭に連れられて1階にあるランチルームに到着し、 別紙図面(事故発生時の状況図)の「e さん」と記載された場所付近の丸椅子に座った。 h は、午後0時55分頃、e と共に「いただきます。」の挨拶をしたが、e に給食を食べ始める様子がなく、Kが3階の教室に一人でいたこと等の理由から、A教諭に対し、e は自身が見るので上階に向かうよう指示し、 A教諭はランチルームを離れた(甲A3、乙ハB3、分離前相被告h)。 ウ h は、Gが給食を食べ終えた後、午後1時5分頃、他害の傾向があったGを一人で教室に行かせることはできないと判断し、Gを教室に連れていくため、Gと共にランチルームを出た。その際、h は、ランチルームに在室していたi 及びj やその他の者に対し、e に付くよう声を掛けることを せず、Gとランチルームを出た。これにより、e を見守る教諭が一時的に不在の状況になった(甲A3、乙ハB3、乙ホC2、分離前相被告h、分離前相被告j)。 ⑷ 本件事故発生から救急隊員臨場までの動静についてア h がランチルームを離れた後、ランチルーム内で食器の割れる音が生じ、 i、j 及び主任学校栄養職員ら3名が、ランチルーム内にうつ伏せで倒れているe を発見し、その下に駆け付けた。その際、j が時計を確認したところ、時刻は午後1時8分であった(甲A3、A10、分離前相被告i、分離前相被告j)。 イ主任学校栄養職員か うつ伏せで倒れているe を発見し、その下に駆け付けた。その際、j が時計を確認したところ、時刻は午後1時8分であった(甲A3、A10、分離前相被告i、分離前相被告j)。 イ主任学校栄養職員から依頼を受け、副主幹は、午後1時10分頃、11 9番通報をした(甲A3)。 ウ救急物品を持ってランチルームに戻ったi 及びj は、e にパルスオキシメーターを装着するなどしたが、h も含め、呼吸の有無の確認や、胸骨圧迫、人口呼吸等をした者はいなかった(甲A3、分離前相被告j、弁論の全趣旨)。 エ午後1時17分頃、通報を受けた救急隊員3名がランチルームに到着し た(甲A3)。救急隊員は、午後1時21分頃、e が心肺停止状態であったため、CPR(心肺蘇生法)を開始した(甲A3、甲A20の1ないし3)。救急隊員がe の口腔内を確認したところ、大量の食物残渣(ご飯粒様)を認め咽頭展開し吸引を試みたが開口が困難であったため、可能な範囲で異物を除去した(甲A3、甲A20の1ないし3)。 オ e は、午後1時30分頃、救急車で大分県厚生連鶴見病院(以下「鶴見病院」という。)に搬送され、同病院で治療を受けたものの、平成28年10月2日午前4時12分、死亡した(甲A3、A5、甲A20の1ないし3)。 ⑸ 事故調査委員会の設立と事故調査報告書の作成等について ア平成28年12月25日、f 支援学校における事故調査委員会設置要綱に基づき、f 支援学校における事故調査委員会(以下、単に「事故調査委員会」という。)が設置された(甲A3)。 イ事故調査委員会は、令和元年7月付けで、f 支援学校における事故調査報告書(以下、単に「事故調査報告書」という。)を作成した(甲A3)。 ウ事故調査報告書の48頁には、e A3)。 イ事故調査委員会は、令和元年7月付けで、f 支援学校における事故調査報告書(以下、単に「事故調査報告書」という。)を作成した(甲A3)。 ウ事故調査報告書の48頁には、e が転倒した直接の原因につき、「口の中いっぱいに食べ物を入れたことで、咀嚼ができなくなり、食べ物が口腔、咽頭を塞ぎ、呼吸困難を生じさせたことによると結論づけた。」との記載がある(甲A3)。なお、e の死因には後記のとおり争いがある。 ⑹ 本件に係る懲戒処分等及び刑事手続 ア懲戒処分等 大分県教育委員会により、令和2年4月17日、本件事故に関し、h、i及びg に対して、以下の懲戒処分がされた。 なお、その他、教頭2名に対しては、口頭による厳重注意がされた(甲A27の1ないし6)。 h につき、ランチルーム内にいた他の職員に見守りを依頼せず、e を 一時的に見守る教職員がいない状況を作った行為が、生徒の生命、身体の安全の確保を最優先すべき教育公務員として、遺憾な行為であり、その職に対する信用を著しく失墜させ、地方公務員法33条に違反したとして、減給10分の1(1か月)とされた(甲A27の2・4)。 i につき、ランチルーム内でe が給食時に倒れた際、e の救急対応にお いて、e に対し、救急隊員が到着するまでの間、出血を視認して、出血の状況を確認したが、意識状態や呼吸の有無を確認しなかった行為が、生徒の生命、身体の安全の確保を最優先すべき教育公務員として、遺憾な行為であり、その職に対する信用を著しく失墜させ、地方公務員法33条に違反したとして、減給10分の1(1か月)とされた(甲A27 の3・4)。 g につき、校長として部下職員を指導・監督する立場にありながら、このような行 墜させ、地方公務員法33条に違反したとして、減給10分の1(1か月)とされた(甲A27 の3・4)。 g につき、校長として部下職員を指導・監督する立場にありながら、このような行為を防げなかったことは、部下職員の指導・監督が不十分であったといわざるを得ないとして、文書による訓告とされた(甲A27の4・5)。 イ刑事手続原告側は、平成29年1月17日に、g 及びh 外2名を刑事告訴し、捜査が尽くされたが、令和2年4月8日、嫌疑不十分として不起訴処分とされた(甲A27の1)。 2 争点 ⑴ 被告が民法715条に基づく使用者責任を負うか(争点⑴) ⑵ 本件教職員らの注意義務違反の有無(争点⑵)⑶ 前記注意義務違反とe の死亡との間の因果関係(争点⑶)⑷ 原告らの損害(争点⑷) 3 争点に関する当事者の主張⑴ 被告が民法715条に基づく使用者責任を負うか(争点⑴) (原告らの主張)被告は、本件教職員らの使用者であり、被告は、同人らの注意義務違反によってe が死亡したことについて、民法715条の使用者責任を負う。 なお、本件は県立の支援学校における学校事故であって、本件教職員らの行為は権力的行政作用には当たらず、「公権力の行使」に該当するかの境界 領域にあるというべきであるところ、このような場合には、国家賠償法1条1項と民法715条の適用関係は法条競合の関係に立つものと解される。そして、本件では、原告は主位的に民法715条に基づく損害賠償請求をし、予備的に国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求をしているのであるから、裁判所は被告について民法715条の使用者責任の成立を認めなければなら ない。 (被告の主張)本件事故は県立学校の給食時間中に発 償法1条1項に基づく損害賠償請求をしているのであるから、裁判所は被告について民法715条の使用者責任の成立を認めなければなら ない。 (被告の主張)本件事故は県立学校の給食時間中に発生したものであって、「公権力の行使」によるものとして国家賠償法上の責任の有無が問題となる事案であるところ、このような場合には民法上の使用者責任は問題となり得ないから、原 告の民法715条に基づく損害賠償請求には理由がない。 ⑵ 本件教職員らの注意義務違反の有無(争点⑵)(原告らの主張)一般に、学校の教師は、学校における教育活動により生ずるおそれのある危険から生徒を保護すべき義務を負っているところ、後記各事情等に照 らせば、本件教職員らには後記各義務違反があるというべきである。 ア注意義務の前提となるe の摂食の態様等について早食い、詰め込み食い、丸飲みといった態様での摂食は窒息等のリスクが高いところ、e は、食物をよく咀嚼しないまま飲み込むという問題を抱えており、本件支援学校の教職員も、e にそのような問題があることを認識していた。 このことは、①高等部1年生時の目標が「食べ物を見ながらゆっくりよく噛んで食べること」とされ(事故調査報告書11頁)、かつ、給食時に本件支援学校の教職員がe を見守ることとされていたこと、②事故調査委員会が行った聴き取りにおいて、h が、「ほとんど噛まずに飲み込むような傾向があり」「噛むことが上手にできない」などと述べていたこと(同 12頁、14頁)、③本件支援学校の教職員が本件事故時に臨場した救急隊員に対し、e が食物を丸飲みにする傾向がある旨を伝えていたこと(甲A20の1ないし3)等からも明らかである。 実際、e の口腔や咽頭を塞いでいた食物は卵やご飯粒である 本件事故時に臨場した救急隊員に対し、e が食物を丸飲みにする傾向がある旨を伝えていたこと(甲A20の1ないし3)等からも明らかである。 実際、e の口腔や咽頭を塞いでいた食物は卵やご飯粒であると特定されているところ、本件事故発生時においてe が食物を丸飲みにしていたこと は明らかである。 イ h の注意義務違反について給食時間中にe を見守るべき注意義務の違反前記アからすれば、本件事故発生時にe の見守りを担当していたh には、e の給食時間中、ランチルーム内でe から目を離すことなく常時見 守り、食物による窒息を防止すべき義務(以下「見守り義務」ということがある。)があったというべきである。 しかるに、h は、Gと共にランチルームを出る際、他の教職員に見守りを依頼することなくe を一人残し、その場を離れているのであって、前記義務に違背している。 e を適切に救護すべき注意義務の違反 h がe の見守りを担当していたこと、本件事故を惹起したことなどからすれば、h には、以下の①及び②の注意義務(以下、後記①及び②の義務を併せて「救護義務」ということがある。)があったというべきである。 ① e が転倒した際に、同人の呼吸の有無や口腔内の状況(食物の有無) などを確認する義務② e が転倒した際に、口腔内の食物を直ちに除去するなどの応急処置を採る義務しかるに、h は、呼吸の有無等を確認せず、また、気道確保、心肺蘇生のための胸部圧迫、AEDの使用を怠っているのであって、前記各義 務に違背している。 なお、被告は、j 及びi を含む本件教職員らにとって、e の口腔内から食物残渣を取り除くことは不可能であった旨主張するが、救急隊員が臨場した際、e の口は指一本分開けるこ 務に違背している。 なお、被告は、j 及びi を含む本件教職員らにとって、e の口腔内から食物残渣を取り除くことは不可能であった旨主張するが、救急隊員が臨場した際、e の口は指一本分開けることができる状態にあり、救急隊員は、その場で一部口腔内の異物を除去し、その結果、換気良好となって いるのであって、被告の反論は当たらない。 ウ j 及びi の注意義務違反についてj 及びi は、本件支援学校の養護教諭として、e に応急処置をして同人を病院へ引き継ぐ責務を有していたことからすると、両名には、h と同様の救護義務があったというべきである。 しかるに、j 及びi は、呼吸の有無等を確認せず、また、気道確保、心肺蘇生のための胸部圧迫、AEDの使用を怠っているのであって、前記各義務に違背している。 被告は、j 及びi が窒息を疑わなかったことに理由がある旨主張するが、e の右下顎に3センチメートルの挫創があったことは、頚椎損傷や 脳挫傷を疑う根拠として薄弱であるし、また、救急隊員に対して頚椎損 傷や脳損傷を疑った旨を伝えていなかったこと等からして、両名がこれらの障害を疑っていなかったのは明らかである。なお、仮にj 及びi が頚椎損傷や脳挫傷などを疑ったとしても、呼吸の有無が不明である場合、心肺蘇生を開始する必要がある(甲B21号証・6頁、7頁参照)。 エ g の注意義務違反について 注意義務の内容特別支援学校では、生徒の状態や特性を十分に把握して計画を作成すべきであり、平成24年及び平成25年に、障害を有する児童生徒が給食時間中に窒息する事故が発生したことを契機として文部科学省からもたびたび指導がなされていたのであるから、本件支援学校の学校長であ り、本件支援学校の職員を指導、監 、障害を有する児童生徒が給食時間中に窒息する事故が発生したことを契機として文部科学省からもたびたび指導がなされていたのであるから、本件支援学校の学校長であ り、本件支援学校の職員を指導、監督すべき立場にあったg には、以下の①ないし④の注意義務があったというべきである。 ① 給食時間中、児童及び生徒を見守る教諭がいなくなるという事態の発生を防止すべく、職員に対し前記事態が生じないよう指導し、また、前記事態が生じないような人事配置を行う義務 ② 給食時間中に窒息事故を含む事故が発生した際のマニュアルを策定し、適宜これに沿った訓練を実施して、職員に、事故発生時の適切な対応の在り方を習得させる義務③ e が転倒した際、校内に整備されたマニュアルに従って、h、i 及びj に対し、e の呼吸の有無等を確認するよう指示する義務 ④ e が転倒した際、校内に整備されたマニュアルに従って、h、i 及びj に対し、口腔内の食物を直ちに除去するなどの応急処置を行うよう指示する義務注意義務違反g は、本件事故発生日、高等部3年を担当するk が出張のため終日不 在とすることを認識しつつも、給食時間中の見守り体制を補充するため の措置が採られているかどうかを確認していない(前記注意義務①違反)。 g は、窒息事故等の事故が発生した場合の対応に関するマニュアルの策定を怠った(前記注意義務②違反)上、本件事故発生時、本件支援学校の職員に対し呼吸の有無の確認をするよう指示することも、心肺蘇生 のための胸部圧迫、AEDの使用に係る指示をすることもなかった(前記注意義務③及び④違反)。 (被告の主張)ア注意義務の前提となるe の摂食の態様等についてe が食物を口腔内に掻き込むような食べ方をしていたこ Dの使用に係る指示をすることもなかった(前記注意義務③及び④違反)。 (被告の主張)ア注意義務の前提となるe の摂食の態様等についてe が食物を口腔内に掻き込むような食べ方をしていたことは認める。 しかしながら、食物を掻き込むように口腔内に入れるからといって、必ずしも食物をよく咀嚼しないまま飲み込むことにはならない(なお、事故調査報告書12頁の「ほとんど噛まずに飲み込むような傾向があり」との事実及び同14頁の「噛むことが上手にできない」との事実は否認する。)。後記ないしのとおり、e の摂食について、窒息や誤嚥の危険 性はなかった。 なお、h は、e の食事を促すためにランチルーム内にいたのであって、同人を常時見守り、食物による窒息を防止するためにランチルーム内にいたのではないし、食物をカットして提供していた点についても、e の摂食に窒息等の危険性があることを前提とした措置ではない。 事故調査報告書について事故調査報告書10頁から11頁に記載されているとおり、e は、小学部では、次第に噛む回数が少しずつ増えて以前より多く噛んで食べられるように、中学部では、一口ずつこぼさないように食べる姿勢がみられるようになっており、高等部では、担当教員を代えると給食を完食で きることが多くなるなどしている。また、事故調査委員会が行った聴き 取りにおいても、e の両親(原告a 及び原告b)は、e の摂食について、「大きささえ気をつければ、危ないとかやめた方がよいという食材はない。」「スナック菓子はがりがりと食べる。」「これまでに詰まらせたり、むせたりすることはなかった。」と述べているし、h も、「これまでに喉に詰まらせたことはなかった。」と述べている。 なお、原告の指摘する事故調査報告書 りと食べる。」「これまでに詰まらせたり、むせたりすることはなかった。」と述べているし、h も、「これまでに喉に詰まらせたことはなかった。」と述べている。 なお、原告の指摘する事故調査報告書11頁の記載(前記⑵ア①)はe が高等部1年生時の通知表の自立活動の項に記載されたものであるが、その見出しは「【健康の保持】」であって、同記載は、飽くまでも健康面から、よく食物を噛むことを目標にしていたことを示すものにすぎない。 障害者手帳及び身体障害者診断書等についてe の身体障害者手帳(甲A2の2)には「咀嚼機能の障害」の記載はなく、また、身体障害者診断書(甲A22の2)の、「4『そしゃく機能障害』の状態及び所見」欄に何らの記載がなく、「経口摂取のみで栄養摂取できるが、誤嚥の危険が大きく摂取できる食物の内容・摂取方法 に著しい制限がある。」との項目にもチェックがされていないように、e は、医師から摂食機能に問題があると診断されたことはなかった。 放課後等デイサービス及び社会福祉法人別府発達医療センター(以下「別府発達医療センター」という。)の記録について放課後等デイサービス提供記録(甲A23の2)には、複数箇所にわ たり、e が一人で昼食やおやつを食べていた旨の記載がある。また、別府発達医療センター作成の診療録(甲A22の4、甲A22の6)には、いずれも、「食べ始めたら、一気に食べ込む傾向ではあったがムセる事もなく摂取できた。」との記載が、前記診療録のうち甲第A22の6号証の診療録には、「当初は、ほとんど摂取せず、スナック菓子をスタッ フが見ていない時に食べたりする程度であった」との記載がある。この ように、e は、施設の職員が見ていない間に食物を口中に入れることがありながら、それを喉に詰ま 、スナック菓子をスタッ フが見ていない時に食べたりする程度であった」との記載がある。この ように、e は、施設の職員が見ていない間に食物を口中に入れることがありながら、それを喉に詰まらせることはなかった。e について、食事の際に常時見守る者がいて注意を促す等していたという原告らの主張は事実に反する。フェイスシート(甲A23の1)やアセスメント(甲A22の3)にも、e の咀嚼機能や嚥下機能に問題がないことがありのま まに記載されているというべきであるし、心理判定記録(精神発達遅滞)(甲A8の1ないし6)の「日常生活の介助度」の「食事」欄は平成20年2月20日以降、全介助から半介助に変更されており、e の食事に係る機能の基本的な部分は進歩していたというべきである。 なお、別府発達医療センター作成の診療録(甲A22の1)には、 「摂食指導行っていく」などといった記載があるものの、同記載は、本件事故から14年以上前になされたものであって、本件事故発生時点において、e の摂食の態様に問題があったことを明らかにするものではない。 イ被告の注意義務違反の有無について 見守り義務についてa 見守り義務の存否についてh に見守り義務があったことは争う。前記アのとおり、本件事故以前にe が本件支援学校で食物を喉に詰まらせたことはなく、e の摂食について窒息や誤嚥の危険性はなかった。また、本件事故発生日にお いても、e は倒れる直前の時点まで普段と同様の状況で食事をしていたのであって、h において、e が食物を喉に詰まらせる可能性を予見することはできなかった。 b 他の教職員に声を掛けずにランチルームを離れたことの相当性について h が他の職員に声を掛けずにランチルームを離れたことは認め を喉に詰まらせる可能性を予見することはできなかった。 b 他の教職員に声を掛けずにランチルームを離れたことの相当性について h が他の職員に声を掛けずにランチルームを離れたことは認める。 なお、平成28年度中、h がe の給食時の指導を担当していた際に、同人がランチルームにいる状態で同所を離れたのは本件事故時が初めてである。 h は、他害の傾向があったGを一人でランチルームから教室へ移動させることはできず、同人に付き添う必要があったために同所を離れ たのである。h の行為は、社会的相当性ないし職務上相当性の認められるものである。 救護義務についてh に救護義務があったことは争う。h がe の歯に指をかけ口を開けようとしたものの硬くて開口できなかったこと、本件支援学校に臨場した 救急隊員であってもe の開口は困難であったこと、鶴見病院の医師による処置の下でも、鶴見病院に到着後10分以上が経過した午後1時43分の時点で、「食物残渣の大きさが大きく、セッシ、ゾンデでかきだそうとするがなかなかかきぜせず(ママ)」といった状況であったことからすれば、h、i 及びj が、e の口腔内の食物残渣を除去することは不可 能であった。 ウ i の注意義務違反の有無についてi は、e が食事をする際に両腕を上げるようにするということを知っていたところ、同人が視界に入った際には、腕は上がっておらず静かに座っていた。その後、食器が割れる音がして、e が倒れたことに気付いた。ま た、床に散乱した食物の量は、本件事故発生日に配膳された量とほぼ同量であった。さらに、食事中であれば近くにいるはずの教諭もいなかった。 以上の状況から、i は、e が、平成28年3月15日に負った膝の怪我の影響で倒れたのでは 、本件事故発生日に配膳された量とほぼ同量であった。さらに、食事中であれば近くにいるはずの教諭もいなかった。 以上の状況から、i は、e が、平成28年3月15日に負った膝の怪我の影響で倒れたのではないかと考え、頭部打撲・脳損傷を起こした可能性を優先して対応することにした。なお、i は、チアノーゼはてんかんの発作 によるものと考えていた。 エ j の注意義務違反の有無についてj は、本件事故発生日にe に配膳された分の団子が残っていること(e が団子を食べていないこと)や同人の口から食物がこぼれていないことを確認した上で、e は頚椎損傷の状態にあると考え、同人が窒息していることを前提とする処置(呼吸の確認)を行わなかった。このことは、救急事案 に関する照会について(回答)(甲A20の1)の「搬送中、救急車内で教員から聴取した内容」に「出血があり、どこから出血しているか分からなかったため、動かさない方がよいと判断し、その状態のまま他の職員に救急要請を依頼した。」との記載がある点によって裏付けられている。 原告らは、事故調査報告書に、j が頚椎損傷を疑っていた旨の発言をし たことが記載されていない点を指摘するが、これは、ヒアリングの回数が1回しかなく、十分に発言する機会を与えられなかったためである。また、頚椎損傷を疑っていたからこそ、j は、窒息の発生を防止する目的でe に叩き上げをする際にも、後頭部を叩く等せず背中を叩くにとどめたのである。 オ g の注意義務違反の有無について前記アのとおり、e の摂食について窒息や誤嚥の危険性はなかったし、本件支援学校の教職員は、そのような危険性を認識していなかったこと、文部科学省が発出している指針(甲B4)や通知(甲B2、3)において、窒息に係るマニュアル について窒息や誤嚥の危険性はなかったし、本件支援学校の教職員は、そのような危険性を認識していなかったこと、文部科学省が発出している指針(甲B4)や通知(甲B2、3)において、窒息に係るマニュアルを作成することは求められていないこと、g におい て、保健医療に係る専門的資格を有していたi やj の判断を尊重するのは当然であることからすれば、g に、原告ら主張の義務があったということはできない。 ⑶ 前記注意義務違反とe の死亡との間の因果関係(争点⑶)(原告らの主張) ア原告らの主張 口腔内に大きく多量の食物残渣が貯留していたこと、e の食道から胃にかけて未消化の食物残渣が大量に貯留していたこと(このことは、胃管カテーテルが30センチメートル以上挿入できなかったことにより裏付けられる。)などからすれば、本件では、掻き込むような食べ方をして食物を丸飲みするというe の障害によって、咽頭が食物で閉塞され窒息が生じた というべきである。 なお、e の気管支内には食物は認められておらず、誤嚥によって窒息が生じたとはいえない。 イ被告の主張に対する反論被告は、e がチョークサインを示していない点を指摘するが、障害のあ る子供の場合、チョークサインを示さないこともある(甲B29参照)。 また、被告は、e の状態が3秒で急変したとするのは不自然である旨主張するが、窒息に至る経過には、20秒から1分ほどの第1期(前駆期又は無症状期)、1分から3分ほどの意識消失や尿失禁の生じる第2期(呼吸困難及びけいれん期)、1分ほどの第3期(無呼吸期)、1分ほどの第 4期(終末呼吸期)があるところ、第2期までの経過を目撃した者がおらず、e が意識を消失した時点で、たまたま主任学校栄養職員に目撃されたと考 期)、1分ほどの第3期(無呼吸期)、1分ほどの第 4期(終末呼吸期)があるところ、第2期までの経過を目撃した者がおらず、e が意識を消失した時点で、たまたま主任学校栄養職員に目撃されたと考えるのが合理的である。 経過記録(甲A24の1)記載のとおり、e がてんかんの発作を起こしたのは小学2年生の時の1回のみである。このことは、第13回f 支援学 校事故調査委員会記録(甲A25)記載のとおり、鶴見病院の医師も確認している。てんかんの発作を起こしている者の口を開こうとすれば、歯が折れ、指が食いちぎられるのであって、そのような経過のない本件においててんかん発作が起きたと認めることはできない。 (被告の主張) ア後記イのとおり、e の死因が食物を喉に詰まらせたことを原因とする窒 息に起因する低酸素性脳症であるとは認められないが、この点を措くとして、e は、主任学校栄養職員がe の様子を現認した直後に倒れており、hがe の食事の状況を見守っていたとしても、ランチルーム内でのe とh の位置関係からして、e が食物を喉に詰まらせて倒れることを回避するのは困難であった。 イ原告の主張する以外の原因あるいは機序によってe が死亡した場合、仮に、h がe を見守っていたとしても、同人において、e の状態が急変するのを回避できたとはいえず、また、本件事故発生後、本件教職員らが何らかの処置を採ることでe の死亡を回避することができたともいえないところ、以下のとおり、e の死因は不明であり、原告ら主張の各注意義務違反 とe の死亡との間の因果関係は認められない。 e が窒息したとするのが不自然であることについて「口腔内食物残渣によって呼吸を感ぜず」(事故調査報告書30頁)は否認する。e は、「ぜーぜー とe の死亡との間の因果関係は認められない。 e が窒息したとするのが不自然であることについて「口腔内食物残渣によって呼吸を感ぜず」(事故調査報告書30頁)は否認する。e は、「ぜーぜー」と苦しそうにではあるが呼吸をしており、また、失禁した際にも「うー」と声を出している。 e は、本件事故発生前、動かずに静かに座っているところを主任学校栄養職員に目撃されてから約3秒後に倒れている(なお、i 及びj は、もがいたり、せき込んだり、むせたりする等の音を聞いていない。)ところ、①e が、食物等により気道閉塞が生じた際に示すチョークサインを示していなかったのは不自然であるし、②動かず静かに座っていたe が、同職員が再びe の方を見るまでの約3秒間に食物を気道に詰まらせて窒息状態に陥り心肺停止に至ったとするのも不自然であるまた、e の口中から取り出された卵焼きは、長方形の形状が完全に失われており、やや縦長の球状になっている上、赤色の他の食材も混在しているように見える。このように、卵焼きが原形をとどめておらず他の 食材と混然一体となっていることは、e が十分な咀嚼をしていたことを 裏付けるものである。 てんかん発作が生じた可能性について①事故調査報告書の47頁には「てんかんの発作は、可能性として否定はできない。」との記載が、②経過記録(甲A24の1)の平成27年7月7日の部分には、「時々 一瞬ぼーっとすることがある」「動作 が止まる」「発作かどうか??」との記載が、③平成25年3月27日付け特別児童扶養手当認定診断書(甲A24の2)には「抗けいれん薬の継続投与を必要とします」との記載があり、④平成27年5月13日付け障害児福祉手当(福祉手当)認定診断書(精神の障害用)(甲A24の3)には「てん 手当認定診断書(甲A24の2)には「抗けいれん薬の継続投与を必要とします」との記載があり、④平成27年5月13日付け障害児福祉手当(福祉手当)認定診断書(精神の障害用)(甲A24の3)には「てんかん発作のタイプ大発作」「てんかん発作の頻度 月1回程度」との記載がある。 事故調査報告書の「症候性てんかん」に係る記載部分(8頁)には、「以後、発作は起きていない。」などと記載されているが、前記証拠と整合しない。 そして、食事中や食事直後にてんかんの発作が起きると嘔吐する場合 があるとされているところ、咀嚼し、嚥下もして食道や胃内に送り込まれた食物残渣が、てんかん発作に伴う嘔吐により胃から逆流し、これが窒息の原因となったことも十分に考えられる。 誤嚥が生じた可能性についてe の気道に食物が詰まっていたことは認めるが、鶴見病院の患者個別 カルテ情報(甲A15)上も、窒息したとは断定されておらず、また、画像診断報告書には、「両肺上葉を腫に、びまん性に境界不明瞭なすりガラス状影と左肺上葉背側には、consolidation が認められます。肺うっ血と誤嚥等による変化が混在しているのでしょうか。」などの記載があることからすると、誤嚥の可能性を完全には排除できない。 なお、e の食道から胃の中にかけては大量の食物残渣が確認されてい ることからすると、胃の中の食物が咽頭部分まで逆流した可能性も否定できない。 ⑷ 原告らの損害(争点⑷)(原告らの主張)ア e の損害 治療費 16万8940円逸失利益 1684万3945円e は、20歳から70歳までの間、障害基礎年金(年額97万4125円)を受給できたはずである。 生 16万8940円逸失利益 1684万3945円e は、20歳から70歳までの間、障害基礎年金(年額97万4125円)を受給できたはずである。 生活費控除(3割)を考慮し、中間利息を障害基礎年金の受給年数 (50年)に対応する新ホフマン係数を用いて控除すると、次式のとおり、上記金額となる(1円未満切上げ)。 (計算式)974,125 円×0.7×24.70194201=16,843,945 円e の慰謝料 3038万1488円葬儀費用 247万8762円 既払金 ▲2800万0000円合計 2187万3135円相続e の損害(上記ないし)については、原告a 及び原告b が法定相続分(各2分の1)に従って相続したのであり、その金額は、各109 3万6568円(1円未満切上げ)である。 イ原告ら固有の慰謝料各300万円ウ弁護士費用原告a 及び原告b 各139万3657円(計算式)(10,936,568 円+3,000,000 円) ×0.1=1,393,656.8 円 原告c及び原告d 各30万0000円 (計算式)3,000,000 円 ×0.1=300,000 円エ原告らの損害したがって、原告a 及び原告b の損害は、各1533万0225円であり、原告c及び原告d の損害は、各330万円である。 (被告の主張) ア e の損害争う。 e は死亡当時障害基 たがって、原告a 及び原告b の損害は、各1533万0225円であり、原告c及び原告d の損害は、各330万円である。 (被告の主張) ア e の損害争う。 e は死亡当時障害基礎年金の給付を受けていないところ、同年金は無拠出性の年金給付であり、20歳に達した時点で厚生労働大臣の裁定を経て権利が確定するものであるため、e につき逸失利益は認められない。 既払金は認める。 イ原告ら固有の慰謝料争う。 原告c及び原告d はe の兄弟姉妹であり、固有の慰謝料は認められない。 ウ弁護士費用争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実のほか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば、以下の事 実を認めることができる。 ⑴ 本件事故発生日における本件事故発生までのh の動静等についてア高等部生活教養科の給食時間前後の校時表は以下のとおりであった(前提事実⑵ア)。 4校時午前11時40分から午後0時25分 給食・昼休み(清掃)午後0時25分から午後1時20分(午後1時5分から午後1時15分)5校時午後1時20分から午後2時5分イ e については、給食時、その指導担当者を曜日ごとに変更するという扱いがされており、本件事故発生日(木曜日。以下、この項から⑷までにおいて同じ。)におけるe の給食時の指導担当者はA教諭であった。 もっとも、本件事故発生日、k が出張により不在にしていたことから、教職員間での協議の結果、本件事故発生日における本件支援学校の生徒で あるM、G、K及びe の給食時の指導担当者は以下のとおりとなった(前提事実⑶ア、証人k)。 M H臨時講師G h 議の結果、本件事故発生日における本件支援学校の生徒で あるM、G、K及びe の給食時の指導担当者は以下のとおりとなった(前提事実⑶ア、証人k)。 M H臨時講師G hK h e A教諭ウ e は、本件事故発生日、本件支援学校1階被服実習室において、B教諭が担当する4校時目の授業を受けていた(甲A3)。 エ B教諭は、4校時目の授業を終えた後、e と共に3階の教室に立ち寄ってから1階のランチルームに向かおうとしたが、e は、その道中で何度か 動きを止めてしまっていた(甲A3)。 B教諭は、午後0時45分頃、ランチルームにおいてG及びKと共に給食を食べていたh に対し、携帯電話で電話をかけ、e の動きが止まっている旨を連絡した(甲A3、分離前相被告h)。 オ給食を食べ終えていたA教諭は、前記エのやり取りを聞き、「私、B先 生と替わります。」とh に伝え、自身が担当していたKを連れて、e を迎えに行った(前提事実⑶ア、甲A3、分離前相被告h)。 Kは、A教諭の後を追い、3階の教室に向かった(分離前相被告h) カ本件事故発生日に本件支援学校で提供された給食は、御飯、豆腐汁(具材は、豆腐、人参、椎茸、ねぎ、ごぼう)、卵焼き、里芋とイカの煮物、お月見団子、牛乳であった(甲A3)。 h は、e がランチルームに来るまでの間に、e の給食を以下のとおりカットした上、小皿に取り分けた(甲A3、分離前相被告h)。 里芋とイカの煮物一口大にカット卵焼き一口大にカット豆腐汁の具材豆腐以外の具材を一口大にカットお月見団子半分の大きさにカットキ e は、A教諭に連れられ、午後0時49分頃、ランチルームに到着した (前提事実⑶イ)。 e ット豆腐汁の具材豆腐以外の具材を一口大にカットお月見団子半分の大きさにカットキ e は、A教諭に連れられ、午後0時49分頃、ランチルームに到着した (前提事実⑶イ)。 e は、手洗いを済ませ、別紙図面の「e さん」と記載された場所付近の丸椅子に座ったところ、h は、e にエプロンを着せ、お盆の下にエプロンを敷き込み、午後0時55分頃、e と共に「いただきます。」の挨拶をした(前提事実⑶イ、甲A3)。 ク h は、Gの横に戻り給食を食べた(甲A3、分離前相被告h)。 h は、e が給食を食べ始める様子でなかったことや上階でKが1人になっていたこと(前記エ)等の理由から、A教諭に対し、e は自身が見る旨を告げ、Kのいる上階に向かうよう指示した(前提事実⑶イ、甲A3、分離前相被告h)。 ケ h は、Gが給食を食べ終えた後、午後1時5分頃、Gに他害の傾向がありGを一人にすることができなかったため、Gと共にランチルームを出た。 その際、ランチルームには、j 及びi が所在していたが、h は、前記2名その他の者に対し、e の指導を担当するよう声を掛けることはなかった(前提事実⑶ウ)。 h は、ランチルーム退室時、e の側を通る際に、e に食べる様子がなか ったことから、「食べようね」と声掛けをした(甲A3)。 ⑵ 本件事故発生から救急隊員が臨場するまでの動静についてア事故調査報告書には、主任学校栄養職員が、「e さんがじっと座っているのを目撃し、ランチルームから厨房へ向かおうとした約3秒後に、ランチルーム内で『がちゃん』という、食器が割れる音がした」と述べたとの 記載がある(甲A3の25頁)。 イ食器の割れる音が生じた際、ランチルーム内には、i、j 及び主任学校栄養職員 後に、ランチルーム内で『がちゃん』という、食器が割れる音がした」と述べたとの 記載がある(甲A3の25頁)。 イ食器の割れる音が生じた際、ランチルーム内には、i、j 及び主任学校栄養職員ら3名が所在しており、i 及びj は、それぞれ、別紙図面の「養護教諭」及び「臨時養護教諭」と記載された場所で、本件支援学校の生徒(教職員が目を離した際にトラブルを起こしたり、食事の際の見守りが必 要であったりはしない生徒)を挟んで立っていた(甲A3、A10、分離前相被告i、分離前相被告j)。 ウ前記イの教諭ら3名は、食器の割れる音が生じてからすぐにe の下へ駆け付け、j が、うつ伏せで倒れているe の顔を左向きにした。その際、j が時計を確認したところ、時刻は午後1時8分であった(甲A3、分離前相 被告j)。 エその後、h がランチルームに駆け付け、e の口の中に何かが入っているかもしれないと思い、同人の口に手を当てて口中を見ようとしたが、開口できなかった (甲A3、分離前相被告h)。 オ i は、主任学校栄養職員に対し、救急車を呼ぶよう指示するとともに、 保健室に備え付けられた救急物品を取りに向かった(甲A3、分離前相被告i、分離前相被告j)。 カ e は、午後1時10分頃、失禁するとともに、「うー」とうめくような声を出し、一度目を開け、再度閉じた(甲A3、分離前相被告h)。 キ主任学校栄養職員から依頼を受け、副主幹は、午後1時10分頃、11 9番通報をした(甲A3)。 ク救急物品を持ってランチルームに戻ったi 及びj は、e にパルスオキシメーターを装着するなどしたが、h も含め、呼吸の有無の確認や、胸骨圧迫、人口呼吸等をした者はいなかった(前提事実⑷ウ)。 ケ午後1時17分頃、通報を受け 戻ったi 及びj は、e にパルスオキシメーターを装着するなどしたが、h も含め、呼吸の有無の確認や、胸骨圧迫、人口呼吸等をした者はいなかった(前提事実⑷ウ)。 ケ午後1時17分頃、通報を受けた救急隊員3名がランチルームに到着した(同エ)。 ⑶ 救急隊到着後、e が鶴見病院に搬送されるまでの動静についてア救急隊員が、e の体位を仰臥位に変換し、同人を観察したところ、その結果は以下のとおりであった(甲A3、甲A20の1ないし3)。 意識JCSⅢ-300、気道に食物残渣あり、脈拍触れず、呼吸感ぜず、眼球上転、チアノーゼ、無表情、下顎挫創、痙攣なし、嘔吐なし、 麻痺なしイ救急隊員は、午後1時21分頃、e が心肺停止状態であったため、CPR(心肺蘇生法)を開始した(甲A3、甲A20の1ないし3)。 ウ救急隊員がe の口腔内を確認したところ、大量の食物残渣(ご飯粒様)を認め咽頭展開し吸引を試みたが開口が困難であった(約1横指のみしか 開口できなかった。)ため、可能な範囲で異物を除去した(甲A3、甲A20の1ないし3)。 エ救急隊員は、鶴見病院へ受入れ要請を行い、同要請につき了承を得た後、午後1時25分頃、e を救急車に収容した。なお、同病院が本件支援学校から近い場所に所在し、異物の除去後、換気は良好であったため、医師へ の指示要請は行われなかった(甲A3、甲A20の1ないし3)。 オ e を乗せた救急車は、午後1時27分頃、本件支援学校を出発した。同救急車には、h 及びi が同乗した(甲A3、甲A20の1ないし3)。 カ同救急車は、午後1時30分頃、鶴見病院に到着した(甲A3、A5、甲A20の1ないし3)。 キ 「救急事案に関する照会について(回答)」(甲A20の1)には、以 ないし3)。 カ同救急車は、午後1時30分頃、鶴見病院に到着した(甲A3、A5、甲A20の1ないし3)。 キ 「救急事案に関する照会について(回答)」(甲A20の1)には、以 下の記載がある。 「(現場活動中に聴取した内容)傷病者は普段から食べ物を丸飲みする傾向があった」「(搬送中、救急車内で教員から聴取した内容)・13時10分頃、食堂から食器を落としたような物音がしたため、職 員が見に行ったところ、傷病者が倒れていた。出血があり、どこから出血しているか分からなかったため、動かさない方がよいと判断し、その状態のまま他の職員に救急要請を依頼した。依頼を受けた教頭が救急要請を行った。 ・傷病者は12時50分頃から1人で食事をしており、目撃者はいない。 ・既往歴はてんかん・ADLは中等度介助」ク救急票(甲A20の2)には、「口腔内に大量の食物残渣を認めた。普段から食物を丸飲みにする傾向があり、12時50分頃から1人で食事をしていたと教員から聴取した。」との記載がある。 ケ経時救急活動概要(甲A20の3)には、「14:53 <聴取内容>教員より聴取(中略)傷病者は12時50分頃から1人で食事をしており、目撃者なし。傷病者は普段から食べ物を丸飲みする傾向があった。」との記載がある。 ⑷ 鶴見病院到着以降の動静等 ア患者個別カルテ情報(甲A15)の患者診療記録の以下の時刻部分(いずれも平成28年9月15日)には、それぞれ以下の記載がある。 午後1時41分「lDr挿管行うため咽頭展開すると咽頭部食物残渣多量にあり吸引行う食物残渣吸引できる」 午後1時43分 「食物残渣の大きさが大きく、セッシ、ゾンデでかきだそうとするがなかなかかきぜ うため咽頭展開すると咽頭部食物残渣多量にあり吸引行う食物残渣吸引できる」 午後1時43分 「食物残渣の大きさが大きく、セッシ、ゾンデでかきだそうとするがなかなかかきぜせず(ママ)」午後1時45分「食物残渣とれず、頚部後屈させ、口腔内吸引行う。食物残渣吸引できないものをlDr手技でセッシ用いてとる。その際黄色の食物残渣 直径5センチ程度のもの摘出する。」午後2時20分「胃管カテーテル挿入試みるが30センチほど挿入すると強い抵抗あり胃管カテーテル抜去すると、先端、空洞部に食物残渣付着あり」午後2時25分 「右顎部に5センチほどの切創あり」午後3時36分「CT上食道から胃にかけて大量の食物残渣が貯留。また胃管カテーテルも挿入できず食物残渣が詰まり、口腔内にも上がってくるとのことで、消化器内科m 先生にご相談。食道がかなり屈曲しているので、 胃管の挿入は難しいだろうとのこと。食物残渣は自然に落ちるのを待ち、上がってきた分は適宜吸引しながら経過観察。」午後4時00分「看護師2名でスポンジブラシを使用し口腔清拭施行する。口腔内に食物残渣多量にあり」 午後5時37分「右下顎部に約3㎝の挫創あり。」「深部に下顎骨露出あり。」イ e は、平成28年10月2日午前4時12分、死亡した(前提事実⑷オ)。 鶴見病院医師l 作成の「死体検案書」(甲A5)には、「直接死因 低酸素脳症」「の原因食物誤嚥による窒息」との記載があり、「死 因の種類」欄の「6窒息」に丸が付されている。 ウ患者個別情報カルテ(甲A15)の退院時サマリー「入院までの経過」欄には、以下の記載がある。 「生来健康であり、知的障害があるため支援学校の高等部に通学 類」欄の「6窒息」に丸が付されている。 ウ患者個別情報カルテ(甲A15)の退院時サマリー「入院までの経過」欄には、以下の記載がある。 「生来健康であり、知的障害があるため支援学校の高等部に通学していた。2016年9月15日の給食中にバタンと音がして教員が見に行った ところ、膳を持った状態で腹臥位になって倒れていた。顔面を負傷しておりチアノーゼが出ていたため救急要請した。救急隊到着時は心肺停止状態で、CPRを開始するとともに、口腔内に食物残渣が大量に貯留していたため吸引を行い、当院に搬入された。搬入後口腔内を観察したところ、最大3センチ以上のものも含む複数の食塊が残存していた。せっしにて食塊 を取り除いた後気管挿管し人工呼吸器に装着した。その間に自己心拍は再開しており昇圧剤の投与を行った。自発呼吸も出現したが非常に弱いものであった。そのまま集中治療室に入院した。なお、来院時に窒息によると思われる心肺停止患者として、警察に連絡した。」エ患者個別情報カルテ(甲A15)の退院時サマリー「入院後臨床経過」 欄には、以下の記載がある。 「♯1 低酸素性脳症」「来院時の全身CTや血液検査では心肺停止の原因となる所見を認めなかったことから、窒息による呼吸停止から心停止に至ったものと考えられた。誤嚥性肺炎をきたす可能性も考えられたため、昇圧剤とともに抗菌薬(SBT/ABPC 6g/day)の投与を行い ながら経過観察した。入院翌日の9月16日未明から対光反射や自発呼吸が消失、さらに次第に血圧も低下した。午前8時すぎには収縮期血圧が40台にまで低下し、塩酸ドパミンの増量も行っていたが、午前9時20ごろ心室細動に陥った。心臓マッサージ、電気ショック、アドレナリン投与による蘇生処置を1時間程度継続し、自己心拍が再開した。し 圧が40台にまで低下し、塩酸ドパミンの増量も行っていたが、午前9時20ごろ心室細動に陥った。心臓マッサージ、電気ショック、アドレナリン投与による蘇生処置を1時間程度継続し、自己心拍が再開した。しかしその後 も数十分おきにPEAとなり、アドレナリンの投与を繰り返し行わなけれ ばならなかった。同日夕よりノルアドレナリンの持続投与を開始したところ、脈拍や血圧が安定した。しかし意識や自発呼吸の回復が見られず、9月21日に頭部CTの撮影を行い、広範囲の虚血と高度の脳浮腫を認めた。 脳神経外科の医師より家族に対し、臨床的に脳死に近い状態であり、予後は1-2週間以内と説明していただいた。家族と相談し、次回心停止に陥 った場合は蘇生処置を行わない方針とし、電解質の補正などを行いながら経過観察した。徐々に血圧が低下していったが、10月2日未明に急激に血圧と脈拍が低下し、死亡された。」との記載がある。 オ患者個別情報カルテ(甲A15)の画像診断報告書には、「両肺上葉を腫に、びまん性に境界不明瞭なすりガラス状影と左肺上葉背側には、co nsolidationが認められます。肺うっ血と誤嚥等による変化が混在しているのでしょうか。」との記載がある。 ⑸ てんかん発作に係る記載等についてア別府発達医療センター作成の診療録(甲A22の1)の「傷病名」欄には「症候性てんかん」との記載があり、その「開始日」は平成18年4月 18日とされている。同「傷病名」欄には、「症候性てんかん」のほかに、「(主)精神遅滞」「運動発達遅滞」「言語発達遅滞」「両外反足」「両臼蓋形成不全」「脳血管運動神経症」「二次性全般化を伴う複雑部分発作」「自閉症」「甲状腺機能低下症」「アトピー性皮膚炎」「便秘症」「尿路感染症の疑い」「副腎皮質機能低下症」「左膝 」「両外反足」「両臼蓋形成不全」「脳血管運動神経症」「二次性全般化を伴う複雑部分発作」「自閉症」「甲状腺機能低下症」「アトピー性皮膚炎」「便秘症」「尿路感染症の疑い」「副腎皮質機能低下症」「左膝蓋骨脱臼」「便秘症」との 記載がある。 イ原告b 作成の平成24年4月2日付けのフェイスシート(甲A23の1)には、「現病歴てんかん」との記載があり、「けいれん(有・無)」部分には「有」に丸が付されており、同部分の下側には「小2の時1回のみ」との記載がある。 ウ平成25年3月27日付け特別児童扶養手当認定診断書(甲A24の2) には、「抗けいれん薬の継続投与を必要とします」との記載がある。 エ別府発達医療センター作成の経過記録(甲A24の1)の以下の年月日の欄には、それぞれ以下の記載がある。 平成25年8月22日「小2に1回発作あっただけ」「それ以降はない」「体調良い」 平成27年7月7日「時々 一瞬ぼーっとすることがある」「動作が止まる」「発作かどうか??」平成27年10月13日「その後、ぼーっとすることは特にない」 オ平成27年5月13日付け障害児福祉手当(福祉手当)認定診断書(精神の障害用)(甲A24の3)には、「てんかん発作のタイプ(大発作)」との記載があり、「てんかん発作の頻度((年間・月・週)1回程度)部分には、「月」に丸が付されている。 カ平成28年5月13日付けのアセスメント(甲A22の3)の「痙攣発 作(有・無)」部分には、「有」に丸が付されており、同部分の下側には「小2の時、1回のみ」との記載がある。 キ事故調査報告書の46頁から47頁には以下の記載がある(甲A3)。 「事故時に、てんかん発作が起きた可能性鶴見病院理事や母親からの 同部分の下側には「小2の時、1回のみ」との記載がある。 キ事故調査報告書の46頁から47頁には以下の記載がある(甲A3)。 「事故時に、てんかん発作が起きた可能性鶴見病院理事や母親からの聴き取り、倒れたときの状況(倒れるような 大きな音がしなかった、歯を食いしばっていなかった)から、事故調査委員会としては、てんかん発作が起きた可能性については、以下のように結論づけた。 てんかんの発作は、可能性として否定はできない。しかし、服薬の状況、脳波所見、当日の状況から、発作が起きた可能性は非常に低く、発作によ り、事故に至ったとは考えにくい。」 ⑹ e の摂食の態様等に係る記載について別紙「e の摂食の態様等に係る記載について」のとおりである。 2 争点⑴(被告が民法715条に基づく使用者責任を負うか)について原告らは、本件訴訟において、本件教職員らの行為が権力的行政作用には当たらず、「公権力の行使」に該当するかの境界領域にあるとし、国家賠償法1 条1項と民法715条の適用関係は法条競合の関係に立つことを前提として、被告に対し、主位的請求として民法715条に基づく損害賠償請求権をする。 この点、原告らは、県立学校である本件支援学校の教職員である本件教職員らの勤務時間内の作為又は不作為について注意義務違反があると主張しているところ、「公権力の行使」については、被害者の損害填補を目的とする国家賠 償法の趣旨に照らし、国又は公共団体の非権力的作用も含めるのが相当であるから、公務員である本件教職員らの行為は公権力の行使に当たるものと解される。 そして、公権力の行使に当たる国の公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を与えた場合には、国がその被害者に対 して は公権力の行使に当たるものと解される。 そして、公権力の行使に当たる国の公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を与えた場合には、国がその被害者に対 して賠償の責に任ずるのであって、公務員個人はその責を負わないものと解される(最高裁昭和49年(オ)第419号同53年10月20日第二小法廷判決・民集32巻7号1367頁)ことに照らせば、本件において、被告が民法715条に基づく損害賠償責任を負うものとは解し難いから、原告らの上記主張を採用することはできず、原告らの主位的請求は棄却されるべきことに帰す る。 したがって、以下では、原告らの予備的請求である国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求について、その当否を検討することとする。 3 争点⑵(本件教職員らの注意義務違反の有無)について⑴ h の注意義務違反(見守り義務の違反)の有無について ア原告らは、本件事故発生時にe の見守りを担当していたh には、e の給 食時間中、ランチルーム内でe から目を離すことなく常時見守り、食物による窒息を防止すべき義務(見守り義務)があったにもかかわらず、Gと共にランチルームを出る際、他の教職員に見守りを依頼することなくe を一人残し、その場を離れており、前記義務に違背した旨を主張するので、この点について検討する。 イ一般に、学校の教諭には、その職務の性質や内容に照らし、学校における教育活動により生ずるおそれのある危険から生徒を保護すべき義務(安全配慮義務)があると解される。 特別支援学校は、視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者又は病弱者(身体虚弱者を含む。以下同じ。)に対して、幼稚園、小学校、中 学校又は高等学校に準ずる教育を施すとともに、障害に 特別支援学校は、視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者又は病弱者(身体虚弱者を含む。以下同じ。)に対して、幼稚園、小学校、中 学校又は高等学校に準ずる教育を施すとともに、障害による学習上又は生活上の困難を克服し自立を図るために必要な知識技能を授けることを目的とするものであり(学校教育法72条)、このような目的を実現するために、特別支援学校においては1学級ごとの児童生徒の人数等が制限されている(令和3年9月24日文部科学省令第45号による改正前の学校教育法施行規則 120条等)。 そして、知的障害を有する児童生徒は、一般に危険認知能力が低く、危険にさらされる場面が多くなると考えられていることも踏まえると、特別支援学校においては、知的障害を持つ児童生徒一人一人の特質に日頃から注目し、これに応じた特段の指導や配慮が求められるものというべきであり、その指 導に当たる特別支援学校の教諭には、前記義務にとどまらず、当該児童生徒の障害の特質を踏まえた安全配慮義務があるものと解される。 その上で、特別支援学校において児童が給食時間中に食物を誤嚥し喉に詰まらせる事故が発生したことを契機として、平成24年7月3日付けで、文部科学省から、各都道府県の教育委員会等に対し、「食物の誤嚥は重大事故 につながる可能性があることを改めて認識し(中略)食べる機能に障害のあ る幼児児童生徒の指導に豊富な経験を有する教職員を含む複数の教職員で指導する等により安全確保を徹底すること」、「食事中(中略)の幼児児童生徒の様子を観察し、適切かつ安全な指導を行うよう留意すること」等を域内の学校等に周知するよう求める通知(24初特支第9号。甲B2)が発せられたほか、平成25年7月1日付けで、同種の事故の発生を契機として前記 指導の かつ安全な指導を行うよう留意すること」等を域内の学校等に周知するよう求める通知(24初特支第9号。甲B2)が発せられたほか、平成25年7月1日付けで、同種の事故の発生を契機として前記 指導の徹底を求める事務連絡(甲B3)が発せられているのであるから、特別支援学校である本件支援学校の教職員においては、給食時における窒息や誤嚥が重大事故につながる可能性があることを踏まえ、給食時において、当該児童生徒の有する特質に照らした配慮をすることが求められていたというべきである。 ウ以上を踏まえ、本件において、e を給食時に指導していたh において、原告らの主張する見守り義務があったといえるかを検討する。 前記1⑹のとおり、事故調査報告書には、e の担任であるh が事故調査委員会からの聴き取りにおいて①「e さんは、ほとんど噛まずに飲み込むような傾向があり、お皿を持ってスプーンで掻き込むようにして食 べる。」②「噛むことが上手にできないe さんのために食物を一口大にカットする。」と述べていた旨や本件支援学校の調理員が「食物を小さくして、搔き込む感じで食べていた。「ざーっと食べて止まって、ざーっと食べて止まって」という感じだった」と述べた旨が記載され(同ア、)、また、消防署職員が作成した書類には、本件事故に関する救 急活動に際して行った聴き取りにおいて、救急隊員に応対した本件支援学校の職員が、e は普段から食物を丸飲みにする傾向があったと述べた旨(認定事実⑶キないしケ)がそれぞれ記載されている。 また、h は、e が倒れた後にランチルームに駆け付けた際、e の口の中に何かが入っているかもしれないと思い、同人の口に手を当てて口中 を見ようとしていた(認定事実⑵エ)。 前記の記載に加え、e が倒れた後のh にランチルームに駆け付けた際、e の口の中に何かが入っているかもしれないと思い、同人の口に手を当てて口中 を見ようとしていた(認定事実⑵エ)。 前記の記載に加え、e が倒れた後のh の行動からすると、e には食物を搔き込むようにして口の中に入れ、よく咀嚼をせずに飲み込むような傾向があり、本件事故の発生前において、本件支援学校の教職員であるh らもそのことを認識していたことが認められる。 そして、e の前記の傾向は、食事の際に食物を喉に詰まらせるなどし て窒息等が発生する危険を伴うものと評価されるものであり(甲B25、B26、証人n)、前記イで説示したとおり、特別支援学校である本件支援学校の教職員においては、給食時における窒息等が重大事故につながる可能性があって、給食時において、当該児童生徒の有する特質に照らした配慮をすることが求められていたことも踏まえれば、e の前記の 傾向を認識していたh においては、本件事故発生時において、e の給食時間時、その動静を見守り、窒息等の危険性のある行動があった場合にそれを制止するなどして窒息等を防止すべき義務があったというべきである。 この点、被告は、事故調査報告書の上記の記載のうち、e が「ほとん ど噛まずに飲み込むような傾向があり」、「噛むことが上手にできない」とh が述べたとされる記載については、その信用性が認められない旨を主張する。しかしながら、正確な聴取りが要求される事故調査報告書の作成の場面において、h ないしその他の職員に対する聴取を行った者が、聞き間違いや記憶違いにより実際には聴取していない事項を事故調査報 告書等に記録することは想定し難い(なお、h は、事故調査報告書に係る前記記載①につき、「その時にお話したからここに載っているんだろ 違いや記憶違いにより実際には聴取していない事項を事故調査報 告書等に記録することは想定し難い(なお、h は、事故調査報告書に係る前記記載①につき、「その時にお話したからここに載っているんだろうなとは思います。」などと供述している(分離前被告h)。)し、また、h にとって、e が食物を咀嚼せずに飲み込むような傾向を有しており、そのことを認識していた旨を認める趣旨の発言をすることは、自身 に対する責任追及のおそれを生じさせかねない行動であり、そのような リスクがあることは容易に認識可能であると考えられるところ、h において、真実は、e が食物を咀嚼せずに飲み込むような傾向を有していないのに、あえてそのような傾向を有していた旨虚偽の供述をすることも想定し難いから、被告の前記主張は採用し難いものといわざるを得ない。 a 被告は、事故調査報告書における両親からの聴き取りに係る「これ までに詰まらせたり、むせたりすることはなかった。」との記載(事故調査報告書9頁)を指摘し、見守り義務の前提となる事実がない旨を主張しているように解されるが、同記載の前には、「食べる速度は速かった。飲み込むまでの時間が速い。食事時間は10分から15分程度、食べ始めると食器を持って搔き込むようにしていた。お茶碗に 入っている分だけ掻き込んでしまう。『速いよ』と声をかけると止まる。(中略)噛まずに飲み込んでいるような様子だった。」との記載があり(前記1⑹ア)、e が食べ物を喉に詰まらせる危険があるとの情報が両親から指摘されていたことがうかがわれるし、そのような状況にあったのにかかわらず、e が食物を喉に詰まらせたりすること がなかったのは、周囲の者がe のことを見守り、e が口に食物を詰め込むような行動をした際に注意を促す等してい し、そのような状況にあったのにかかわらず、e が食物を喉に詰まらせたりすること がなかったのは、周囲の者がe のことを見守り、e が口に食物を詰め込むような行動をした際に注意を促す等していたためであるとも解されるのであり、前記の記載のみをもって、見守り義務が生じないとする根拠とはなし得ないものといわざるを得ない。 b 被告は、①e の身体障害者手帳(甲A2の2)に「咀嚼機能の障害」 の記載がない旨、②e に係る身体障害者診断書(甲A22の2)の「4『そしゃく機能障害』の状態及び所見」欄に何ら記載がない旨を指摘し、見守り義務の前提となる事実がない旨を主張するように解される。しかしながら、「そしゃく機能障害」と認定されるのは、「そしゃく機能の喪失」(経管栄養以外に方法がない状態)又は「そしゃ く機能の著しい障害」(経管栄養との併用が必要、あるいは、摂取で きる食物の内容、摂取方法に著しい制限がある状態(開口不能等のため摂取が半固形物等、極度に限られる状態)に当たる場合であるところ(甲B28)、e がこれらの状態になかったことをもって、摂食の態様について問題がなく、直ちに見守りが必要なかった状況にあったということは困難である。 c 被告は、e に係る放課後等デイサービス及び別府発達医療センターの記録では、e が食物を喉に詰まらせたりすることがなかった旨が読み取れるとして、見守り義務がなかった旨を主張するよう解されるが、これらの施設においてe が食物を喉に詰まらせるという事態が生じなかったとしても、食事の際のe の前記の傾向が窒息等の危険を伴うも のであることに変わりはないから、同記録の内容を根拠に見守りが必要なかったと帰結することは困難であるといわざるを得ない。 また、被告は、平成24年4月2 の前記の傾向が窒息等の危険を伴うも のであることに変わりはないから、同記録の内容を根拠に見守りが必要なかったと帰結することは困難であるといわざるを得ない。 また、被告は、平成24年4月2日付けのフェイスシート(甲A23の1)の「食事」欄の「咀嚼・嚥下:良・困難」部分の「良」に丸が付されていることを見守り義務がなかったことの根拠としているよ うに解されるが、他方で、同欄には、「介護程度」は「半介助」「食べこぼし多く見守り必要」と記載されており、食事に当たっては、介助が全く不要とされていたわけではないことを踏まえれば、同記載を根拠に、見守りが必要なかったと帰結することはこれまた困難であるといわざるを得ない。 エ前記ウのとおり、h には、e の給食時間時、その動静を見守り、窒息等の危険性のある行動があった場合にそれを制止するなどして窒息等を防止すべき義務があったことからすると、h が、本件事故発生前にランチルームを離れる際、ランチルーム内には本件支援学校の教職員であるiやj が在室していたのであるから、窒息等の防止義務の具体的な内容と して、同人らにe の給食時の様子を見守るよう依頼すべきであったとい え、そのことも容易かつ可能であったところ、h は、同人らに声を掛けることもなく、e に「食べようね」と声掛けをした上で、同人をランチルームに一人残したまま同所を離れている(前記1⑴ケ)のであって、h は、前記義務に違背したものと認められる。 これに対し、被告は、h が担当していたGに他害の傾向があり、同人 を教室に移動させるに当たって付き添う必要があってランチルームを離れたのであり、h の行為には社会的相当性ないし職務上相当性が認められる旨主張する。 この点については、前記 り、同人 を教室に移動させるに当たって付き添う必要があってランチルームを離れたのであり、h の行為には社会的相当性ないし職務上相当性が認められる旨主張する。 この点については、前記1⑴イのとおり、本件事故発生日当日は、kが出張により不在にしていたこと等により、h が2名の生徒の指導を担 当することになっており、本件事故は、そのような当日の人的態勢の下で、状況に応じて教職員間で生徒の引継ぎ等をしつつ対応をする中で、結果的にe を給食時間中に一人にするという状況が生じてしまったものということができる。 そして、知的障害を持つ児童生徒の特質を踏まえれば、児童生徒が一 般的に想定される合理的行動をすることを常に期待することができるとはいい難く、そのような児童生徒の指導に当たる本件支援学校の教職員らにおいては、限られた人的態勢の下で、日々の勤務において刻々と変化する状況へ的確に対応することに相応の負担を伴うことは想像に難くなく、本件事故発生日においても、前記1⑴エからクまでのとおり、4 校時目の授業を終えた後、e がランチルームに向かう途中で動きを止めてしまったことを契機として、本件事故発生に至るまでの間、h らが順次担当する児童生徒を互いに引き継ぐなどしていたことが認められる。 そのような中で、h は、他害の傾向があるGを一人で教室に行かせるわけにはいかないとの判断から、食事を開始していなかったe を短時間一 人にすることとし、Gを教室に連れていくという判断をしたものである ところ、前記のとおり、当時は教職員が一名不在であり、また、次の校時の開始時間が差し迫っているという状況下でh がこのような判断をしたことについて、h 一人にその責めを負わせることは酷であるという側面がない訳ではない 、当時は教職員が一名不在であり、また、次の校時の開始時間が差し迫っているという状況下でh がこのような判断をしたことについて、h 一人にその責めを負わせることは酷であるという側面がない訳ではない。 もっとも、上記の状況下においても、前記のとおり、h はi 及びj に対してe の見守りを依頼した上でランチルームを離れることは容易かつ可能であったのであり、これを困難たらしめる事情は本件ではうかがわれないのであるから、まず、この点において、h の上記の判断及び同人らに声を掛けずにe を一人でランチルームに残した行動が社会的相当性ないし職務上相当性があるものとは認め難い。 オ以上のとおり、h には、e の給食時間中、ランチルーム内でe から目を離すことなく常時見守り、食物による窒息を防止すべき義務(見守り義務)があったにもかかわらず、Gと共にランチルームを出る際、他の教職員に見守りを依頼することなくe を一人残して、e に「食べようね」と声掛けをしてその場を離れており、前記義務に違背したものというべきである。 4 争点⑶(前記注意義務違反とe の死亡との間の因果関係)について⑴ 前記3のとおり、h には見守り義務に違反した注意義務違反があったというべきところ、次に、同注意義務違反とe の死亡に因果関係が認められるかについて検討する。 ⑵ e の死因について証拠上、e が、心肺停止や突然死に直ちにつながり得る ような疾患を有していたという事情はうかがわれず(認定事実⑸ア参照)、現にe の咽頭には食物が詰まっていた(甲A25)。かかる状況の下、鶴見病院のl 医師は、来院時の全身CTや血液検査では心肺停止の原因となる所見を認めなかったことも踏まえ、e の直接死因及び死因の種類が、それぞれ、低酸素性脳症 ていた(甲A25)。かかる状況の下、鶴見病院のl 医師は、来院時の全身CTや血液検査では心肺停止の原因となる所見を認めなかったことも踏まえ、e の直接死因及び死因の種類が、それぞれ、低酸素性脳症及び窒息である(「呼吸が止まって、心臓が止まって脳に血 液がいかなくなって脳が正常に働かない状態になっ」た。)と判断してい るところ(同⑷イ、エ、甲A25)、その判断に疑問を差し挟むべき事情はうかがわれず、同判断は専門的な見地からの意見として信用できるというべきである。したがって、e は窒息し、直接死因を低酸素性脳症として死亡したと認められる。 なお、被告は、事故調査報告書の記載(前記1⑵ア)や、i 及びj が、食 器の割れる音を聞く前後で、e がもがいたり、せき込んだり、むせたりするような音を聞いていないと陳述ないし供述していること(分離前相被告i、分離前相被告j)を指摘して、e が窒息したとするのは不自然である旨主張するが、そもそも、本件事故発生前に主任学校栄養職員、i 及びj がe の動静を意識的に見聞きしていたという事情はうかがわれないことからすると、 前記の陳述ないし供述は直ちには採用し難く、これを前提とする前記主張も採用し難い。 また、被告は、e には、食物等により気道閉塞が生じた際に示されるチョークサインがみられなかった点を根拠にするが、障害を有する子供はチョークサインを示すことが困難な場合もある(甲B29参照)とされていること も踏まえると、同主張は、前記認定を直ちに左右しないというべきである。 ⑶ 窒息の原因についてア e の口から取り出された卵焼き様の異物の大きさは約3.5センチメートル程度であり、かみ砕いたようなものではなかったこと(甲A3、乙イA5の1、原告b 本人)からすれば、本件 息の原因についてア e の口から取り出された卵焼き様の異物の大きさは約3.5センチメートル程度であり、かみ砕いたようなものではなかったこと(甲A3、乙イA5の1、原告b 本人)からすれば、本件事故発生日においても、e は、 食物を咀嚼することなく丸飲みにしていたと認められる。そして、前記のとおり、食物を丸飲みにする場合には、窒息等の危険性がある(甲B25、26、証人n)。そうすると、本件において、e は、食物を丸飲みにしたことによって食物を咽頭に詰まらせ窒息したと認めるのが自然かつ合理的である。 イこれに対し、窒息の原因について、被告は、前記第2、3⑵イのとおり、 てんかん発作等によって胃の内容物が逆流し気道が閉塞された可能性がある旨主張するため、以下検討する。 この点、e のてんかんの主治医は、カルテ上、平成18年4月18日に全身性の強直性けいれんがあった後に発作はなかった旨、薬物血中濃度は有効域にありコントロールとしては良好な状態にあった旨及び本件事故の 10日前の平成28年9月5日に行ったてんかんに係る検査の結果も軽度異常にとどまっていた旨を述べている(甲A3、A15、A25)。そして、原告b は、e がてんかん発作を起こしたのは1度のみであると陳述ないし供述しているところ、同陳述ないし供述は、原告b が、h に対しても、「小学校の時からずっと発作が起こっていない」と述べていたこと(分離 前相被告h)にも符合し信用できる。そうすると、障害児福祉手当(福祉手当)認定診断書(精神の障害用)の記載(前記1⑸オ)をもって、てんかん発作が頻繁にあったと断定する根拠とはなし難く、e にてんかん発作が生じたのは平成18年4月18日の1回のみであると認めるのが相当である。 そして、てんかん発作 1⑸オ)をもって、てんかん発作が頻繁にあったと断定する根拠とはなし難く、e にてんかん発作が生じたのは平成18年4月18日の1回のみであると認めるのが相当である。 そして、てんかん発作が生じている者の口は大抵の場合食いしばって開かず、開口させようとすると、歯が折れたり、開口させようとした者の指が食いちぎられたりする(甲A25)ところ、本件において、e の口は横一指分開いており(前記1⑶ウ)、また、歯が折れる等の状況があったことをうかがわせる証拠ないし事情は存しない。 以上を総合すれば、本件事故発生時にてんかん発作が生じたと認めることは困難であり、被告の主張は採用し難い。 また、その他の原因により胃の内容物が逆流したという主張についても、抽象的な可能性を指摘するものにすぎず、かえって、救急隊員がランチルームに臨場した際の観察結果は、「嘔吐なし」とされていること(同ア) に照らせば採用の限りでない。 ⑷ h の注意義務違反とe の死亡の因果関係についてe は、「ゆっくり食べようね」など、教員が言っていることは理解でき(前記1⑹ア)、食事中に「早いよ」と注意したり、手をつかんだりなどすれば、早く食べるのをやめることができた(原告b 本人)のであるから、h が、i 及びj らにe を見るように声掛けをし、同人らにおいて、食物を丸飲 みにしようとするe に対し、そのような行為をやめるよう働きかけるなどしていれば本件事故の発生を防ぐことができたといえ、前記義務違反とe の死亡との間には因果関係が認められる。 なお、被告は、e が誤嚥した結果、食物が咽頭に詰まった場合には、前記義務違反とe の死亡との因果関係が認められないかのような主張をするが、 前記のとおり、誤嚥も、食物を丸飲みにする る。 なお、被告は、e が誤嚥した結果、食物が咽頭に詰まった場合には、前記義務違反とe の死亡との因果関係が認められないかのような主張をするが、 前記のとおり、誤嚥も、食物を丸飲みにすることに伴って起こり得るものであるから、仮に、e が食物を誤嚥した結果、その食物が咽頭に詰まったのだとしても、そのような結果は前記義務に違反したことにより惹起されたものといえ、同主張には理由がない。 ⑸ 小括 以上のとおり、h の注意義務違反(見守り義務違反)とe の死亡との間には因果関係が認められるから、その余の本件教職員らの注意義務違反の有無等について判断するまでもなく、被告は、本件事故においてe が死亡したことにつき、国家賠償法1条1項の責任を負うというべきである。 5 争点⑶(原告らの損害)について ⑴ 治療費証拠(甲C1の1・2)及び弁論の全趣旨によれば、鶴見病院は本件事故に係るe の入院料等として合計16万8940円を請求したと認められ、同入院料等相当額は、本件事故と相当因果関係のある損害と認められる。 ⑵ 逸失利益 原告らは、e は死亡当時障害基礎年金を受給していなかったものの、将来 これを受給する蓋然性があったとして、障害基礎年金の受給額に相当する額を逸失利益として主張するから、この点について検討する。 e は、国民年金法5条所定の被保険者資格を得るよりも前に、その傷病について初めて医師の診療を受けているところ、同法30条1項に基づく障害基礎年金は、初診日において国民年金の被保険者であることが受給要件の一 つとされていることから(同法7条1項1号)、e が同法30条1項に基づく障害基礎年金を受給する蓋然性があったとは認め難い。他方で、その初診日において20歳に達しておらず、国民 が受給要件の一 つとされていることから(同法7条1項1号)、e が同法30条1項に基づく障害基礎年金を受給する蓋然性があったとは認め難い。他方で、その初診日において20歳に達しておらず、国民年金の被保険者になっていなかった者であっても、同法30条の4第1項所定の受給要件を充足する者に対しては、障害基礎年金が支給されることとされていることから、以下では、e が 受給する可能性のあった同項に基づく障害基礎年金相当額が逸失利益として認められるかについて検討する。 同法30条1項に基づく障害基礎年金は、原則として、保険料を納付している被保険者が所定の障害等級に該当する障害の状態になったときに支給されるものであり、保険料が拠出されたことに基づく給付としての性格を有し ている。一方、同法30条の4第1項に基づく障害基礎年金は、被保険者資格を取得する20歳に達する前に疾病にかかり、又は負傷し、これによって重い障害の状態にあることとなった者に対し、一定の範囲で国民年金制度の保障する利益を享受させるべく、同制度が基本とする拠出制の年金を補完する趣旨で設けられた無拠出制の年金給付であるとされる(最高裁平成17年 (行ツ)第246号同19年9月28日第二小法廷判決・民集61巻6号2345頁参照)。 そして、同法は、同法30条の4第1項に基づく障害基礎年金について、刑事施設等に拘禁されている場合の支給停止(同法36条の2第1項)や所得制限による支給停止(同法36条の3第1項)等の支給停止事由を定めて いるところ、これらの支給停止事由は、同法30条1項に基づく障害基礎年 金については定められていない。 そうすると、同法30条の4第1項に基づく障害基礎年金は、拠出した保険料とのけん連関係があるものとはいえず、社会保障的 由は、同法30条1項に基づく障害基礎年 金については定められていない。 そうすると、同法30条の4第1項に基づく障害基礎年金は、拠出した保険料とのけん連関係があるものとはいえず、社会保障的性格が強いものであるというべきであり、同法30条1項に基づく障害基礎年金とは直ちには同列には解し難い。 したがって、e が同法30条の4第1項に基づく障害基礎年金を受給していた蓋然性があったと認められたとしても、同年金がe の逸失利益であると認めるのは困難であるというほかないから、原告の前記主張は採用し難いものといわざるを得ない。 ⑶ 葬儀費用 証拠(甲C3)及び弁論の全趣旨によれば、e の葬儀費用は247万8762円と認められるところ、本件事故と相当因果関係のある葬儀費用として150万円を認める。 ⑷ 死亡慰謝料ア e の慰謝料 e は、会話支援アプリケーションを用いて行きたい場所等を伝えることできるようになるなど、周囲に見守られる中で成長を続けていた。また、e は、人とかかわることが何よりも好きで、毎日を楽しく過ごしていた(原告a 本人、原告b 本人、甲A28、甲C4)。その最中、17歳という若さで不意の事故により突然生命を絶たれ将来を奪われたe の悲しみと 無念さは計り知れないこと、本件事故は障害を抱える生徒が安心して学校生活を送ることができるはずの特別支援学校で起きたものであったことその他本件に顕れた一切の事情を考慮し、本件事故によるe の慰謝料は2200万円と認めるのが相当である。 イ原告a 及びb の慰謝料 原告a 及び原告b は、障害を抱える生徒が安心して学校生活を送ること ができるはずの特別支援学校にe を託し、その成長を見守っていたのに、本件事故によりその希 及びb の慰謝料 原告a 及び原告b は、障害を抱える生徒が安心して学校生活を送ること ができるはずの特別支援学校にe を託し、その成長を見守っていたのに、本件事故によりその希望は絶たれるに至った。また、原告a 及び原告b は、その将来を考え、e が他人とコミュニケーションを取ることのできる方法を模索するなど、e を大切に育て、その成長を誰よりも楽しみにし、e が見せる笑顔に喜びや幸せを感じていた(原告a 本人、原告b 本人)。e を 本件事故により突然失ったことによる原告a 及び原告b の精神的苦痛は筆舌に尽くし難く、その悲しみと喪失感は察するに余りあるものがある。これらに加え、本件においては、本件訴訟に先立ち、f 支援学校における事故調査委員会設置要綱に基づき設置された事故調査委員会による事故原因の調査・検証や再発防止策の提言、本件教職員らに対する大分県教育委員 会による懲戒処分が行われたという経緯を経た上で、本件訴訟において、被告が、h の注意義務違反を始め本件事故の原因や責任を争ってきたものと認められる。被害者の損害填補及び損害の公平な分担を旨とする国家賠償法ないし不法行為に基づく損害賠償請求に係る民事訴訟の追行と事故調査委員会による調査や懲戒処分とは、おのずとその趣旨目的や制度の基盤 を異にするものであり、被告が前記経緯を離れて本件訴訟においてこれを争うことは、それ自体責められるべき筋合いのものではないとはいえ、本件事故の被害遺族である原告らにとっては、前記経緯を離れた被告の本件訴訟における訴訟活動は整合的に理解し難い面があり、これに接した原告らが、不信感を強め、更なる悲しみや精神的苦痛を増大させたこと自体も 了解可能なものということができる。 このようなe の死亡後の経緯を含む 活動は整合的に理解し難い面があり、これに接した原告らが、不信感を強め、更なる悲しみや精神的苦痛を増大させたこと自体も 了解可能なものということができる。 このようなe の死亡後の経緯を含む本件に顕れた一切の事情を考慮すると、e の死亡により原告a 及び原告b に生じた精神的損害に対する慰謝料としては、各300万円をもって相当と認める。 ウ原告c及びd の慰謝料 原告c及び原告d は、それぞれe の実弟、実妹であり、民法711条所 定の近親者には該当しないから、加害者に対し、同条を直接適用して、本件事故により受けた精神的苦痛に対する固有の慰謝料を請求することはできないものの、文言上、同条に該当しない者であっても、被害者との間に同条所定の者と実質的に同視し得べき身分関係が存し、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者は、同条の類推適用により、加害者に対し 直接に固有の慰謝料を請求し得るものと解される(最高裁昭和49第212号同年12月17日第三小法廷判決・民集28巻10号2040頁)。 これを本件についてみるに、原告c及び原告d がe に対して経済的な援助をしてきたなどの特別な事情もうかがわれないのであるから、両名とeとの間に、同条所定の者と実質的に同視し得べき身分関係が存すると認め ることは困難であるといわざるを得ない。 そうすると、原告c及び原告d がe の死亡によって多大な精神的苦痛を受けたことは想像に難くなく、また、原告cについては本件教職員らの対応に憤りを感じ「自分は助けることができる人になりたい」との思いからライフセイバーの資格を取ったこと、原告d については、本件事故直後は 愚痴やわがままを言わず母に甘えたい気持ちをこらえつつも、e の葬儀の際には涙を流していたこととい なりたい」との思いからライフセイバーの資格を取ったこと、原告d については、本件事故直後は 愚痴やわがままを言わず母に甘えたい気持ちをこらえつつも、e の葬儀の際には涙を流していたことといった事情があること(原告a 本人、原告b本人、甲A28)を踏まえても、その固有の慰謝料の発生を認めることは困難というほかない。 ⑸ 小括 以上のうち、e の損害額の合計2366万8940円(治療費16万8940円、葬儀費用150万円、慰謝料2200万円)の損害賠償請求権を原告a 及び原告b がそれぞれの法定相続分(各2分の1)に従って相続した(各1183万4470円)ものと認められる。しかしながら、原告らは、独立行政法人日本スポーツ振興センターから災害共済給付金(死亡見舞金) として2800万円の給付を受けており(弁論の全趣旨)、原告らは自ら同 金員をe の損害に係る請求から控除しているところ、前記の災害共済給付金2800万円を上記のe の損害額から控除すると、本件訴訟において原告らが請求することのできるe の損害は0円となる。 他方で、前記⑷イのとおり、原告a 及び原告b は固有慰謝料として各300万円の損害賠償請求権を有する(なお、独立行政法人日本スポーツ振興セ ンター法施行令4条4項は児童生徒等の法定代理人としての保護者又は児童生徒等に対して災害共済給付金の支払をすることとしており、また、同施行令3条には、保護者が同一の事由による損害賠償を受けた場合の災害共済給付金の給付に係る調整規定は見当たらないから、既払金による控除は認めない。)ところ、これを請求するための弁護士費用として、各30万円を本件 各不法行為と相当因果関係のある損害と認める。 したがって、原告a 及び原告b は、被告に対し、各330万円 控除は認めない。)ところ、これを請求するための弁護士費用として、各30万円を本件 各不法行為と相当因果関係のある損害と認める。 したがって、原告a 及び原告b は、被告に対し、各330万円の損害賠償請求権を有する。 6 小括以上によれば、原告らの主位的請求にはいずれも理由がなく、原告a 及び原 告b の予備的請求はそれぞれ330万円の損害賠償及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、原告c及び原告d の予備的請求にはいずれも理由がないことに帰するところ、本件事案の内容及び性質に加え、本件訴訟の審理経過や弁論終結後の事情等も踏まえ、若干付言する。 本件は、障害を抱えた生徒が安心して学校生活を送ることができる本来安全で あるべき特別支援学校という場において、その生徒であったe が給食時間中に給食を喉に詰まらせて窒息し尊い命を失ったという誠に痛ましい事故に係る事案である。 そして、当裁判所の判断はこれまでに説示したとおり、e の給食時間中、e の担任教員が、ランチルームを出る際に他の教職員に見守りを依頼することなく同 所にe を一人残すなどしたことが、同教員が負っている見守り義務に違背したと いうものである。本件事故が、同教員を含む特別支援学校の教員らが限られた人的・物的態勢の下で相応の負担を伴いながら障害を抱えた生徒の指導等に当たっている中で生じたものであることも踏まえれば、本件のような痛ましい事故が二度と起きることなく、障害を抱えた子を持つ保護者が安心して子を託し、その成長を見届けることができるようにするためには、ひとり担任教員の責任追及のみ に終始するのではなく、特別支援学校の運営に関わる学校関係者一同、ひいてはその設置管理者である地方自治体が一丸となって、本件事故の原因を ができるようにするためには、ひとり担任教員の責任追及のみ に終始するのではなく、特別支援学校の運営に関わる学校関係者一同、ひいてはその設置管理者である地方自治体が一丸となって、本件事故の原因を含む背景的要因も踏まえた再発防止にこれまで以上に真摯に取り組むことが求められているものと思料される。 当裁判所は、本件が一日でも早く解決に至ることを願うと共に、特別支援学校 においてこのような事故が二度と起きることのないよう、本件を契機として、再発防止に資する有効な施策が講じられることを願ってやまないものである。 第4 結論以上によれば、原告a 及び原告b の各予備的請求は、主文第2項及び第3項の限度で理由があるから、その限度でこれを認容し、原告a 及び原告b のその 余の各請求並びに原告c及び原告d の各請求はいずれも理由がないのでこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。 大分地方裁判所民事第2部 裁判長裁判官石村智 裁判官周藤崇久 裁判官齋藤壮来 別紙 e の摂食の態様等に係る記載について ア事故調査報告書について事故調査報告書の8頁から9頁には以下の記載がある。 「ご両親からの聞き取りでは、e さんの家庭での食事は、以下のような状況 であった。 <環境・食器等>・お盆の上にお茶碗とお皿、コップなどを置く。小さめのお茶碗とお皿でプラスチック製。スプーンとフォークを使っていた。 ・iPadの色が減っていくタイマーを使い、朝食は30分、夕食は長めに設 定をして食事にかける時間を決めていた。タイマーが鳴ったときに食べ始めていなけれ 製。スプーンとフォークを使っていた。 ・iPadの色が減っていくタイマーを使い、朝食は30分、夕食は長めに設 定をして食事にかける時間を決めていた。タイマーが鳴ったときに食べ始めていなければ『ごちそうさまする?』と尋ねていた。 ・食事用の椅子やテーブル(作業療法士に頼んで製作)で食べていた。 <量・食材準備>・小さめのお茶碗とお皿に食材を取り分け、お代わりの要求があれば注ぎ足し ていた。 ・食材は、2cmくらいの大きさ、一口大。汁物などにはとろみはつけない。 大きささえ気をつければ、危ないとかやめた方がよいという食材はない。 <食べる量・食べ方>・食べ始めるまでに時間がかかる。 ・あまりたくさん食べることはない。朝しっかり食べると昼は食べないなど、一日三食きちんと食べることは少ない。 ・食べる速度は速かった。飲み込むまでの時間が速い。食事時間は10分から15分程度、食べ始めると食器を持って掻き込むようにしていた。お茶碗に入っている分だけ掻き込んでしまう。「速いよ」と声をかけると止まる。口にほ おばれば手を止め、口を動かしながら噛むような動作をしていた。少しずつ飲 み込む。口の中のものがある程度なくなれば、次のものを入れる。噛まずに飲み込んでいるような様子だった。 ・小さめのお皿で出すと、一つのお皿分ずつ食べる。次々と掻き込むことはない。 ・噛むのはあまり上手ではなかったが、全く噛めないことはない。スナック菓 子はがりがりと食べる。パンなどを噛みちぎることはできない。一口大の食材を奥に入れて食べる。 ・これまでに詰まらせたり、むせたりすることはなかった。一般的にお茶でむせるなどと同じ様子だった。」事故調査報告書の10頁には以下の記載がある。 「・通知表 ☆個別の指導計画 る。 ・これまでに詰まらせたり、むせたりすることはなかった。一般的にお茶でむせるなどと同じ様子だった。」事故調査報告書の10頁には以下の記載がある。 「・通知表 ☆個別の指導計画小学部2年生・ほとんど噛まずに飲み込むことが多かったのですが、『もぐもぐするよ』と声かけをして、よく噛んでいるとほめたり、時間を空けてスプーンですくったりしました。次第に噛む回数が少しずつ増えてきて、以前より 多く噛んで食べられるようになってきています。 ・自分で食べるものを見てすくったり、スプーンを見て口に入れたりする姿も見られるようになりました。 中学部3年生・言葉かけが必要な場合が多いですが、特に食べ始めの時間帯において は、正しくお茶碗を持ち一口ずつこぼさないように食べる姿が見られるようになっています。また、この指導を始めたことがきっかけになり、すぐに食べ始める様子も見られるようになっています。」事故調査報告書の11頁には以下の記載がある。 「個別の教育支援計画の願う姿(高等部3年間)には、『時間内に食事をほぼ 完食する』とあり、個別の指導計画や通知表には、食事に関することに以下の ような記述がみられる。 ・通知表 ☆個別の指導計画高等部1年生 ・給食は食べ物を見ながらゆっくりよく噛んで食べることを目標にした。食べ始めると食べ物を見ていないためこぼすことが多いので、『よく見て食べ ようね』『よく噛んで食べようね』と言葉かけをすると少し食べ物を見ることができることもあり、こぼす量も少なかった。 ・給食時の注目行動が減り、時間内に食べ終わることができるようになったことに大きな成長を感じます。 ・教室移動や給食の支援をする教師を変更したところ、気持ちを切り替えるこ とが なかった。 ・給食時の注目行動が減り、時間内に食べ終わることができるようになったことに大きな成長を感じます。 ・教室移動や給食の支援をする教師を変更したところ、気持ちを切り替えるこ とができ、次の活動に移ることができた。 ☆目標(4月)…給食を残さずに食べる。 ☆指導方法(4月)…準備をできるだけ早くし、ランチルームに遅れないように行き、給食をゆっくり食べる。 ☆指導の経過と評価(4月)…給食はほぼ残さず食べることができた。 高等部2年生 ・着替えや給食も少しずつペースをつかんで取り組めるようになっています。 ☆目標(1学期)…給食をできるだけ全部食べる。 ☆指導方法(1学期)…給食を時間内に完食できるよう、つく教師を変更し たり、食べやすいように小さく切ってやったりする。 ☆指導の経過と評価(1学期)…担当教員を代えると給食を完食できることが多かったが、担任がつくと注目行動により時間がかかり、少し残すこともあった。 高等部3年生 ※食事に関する記載なし このことから、高等部1年生時には、『ゆっくりよく噛んで食べること』 を目標にしたこともあるが、e さんの食事の指導では、食べ方よりも食べる量や時間内に食べ終えることに重点が置かれていた。」事故調査報告書の11頁から12頁には以下の記載がある。 「(・担任 ☆主任学校栄養職員 △E調理員)<配膳・量> ・e さんの手前に小皿がくるようにして置き(全体量の3分の1程度の量を小皿に)取り分けて食べていた。お皿に食べるものがなくなると、スプーンでかんかんと食器を叩いてアピールをしていた。スプーンで食器を叩く合図があると、教員が小皿に注ぎ足していた。 ・e さんに配膳される量は、他の生徒より少なめにしていた。 <大 と、スプーンでかんかんと食器を叩いてアピールをしていた。スプーンで食器を叩く合図があると、教員が小皿に注ぎ足していた。 ・e さんに配膳される量は、他の生徒より少なめにしていた。 <大きさ>・給食として出たものは食べやすい大きさにカットしていた。 <食べ方>・e さんは、ほとんど噛まずに飲み込むような傾向があり、お皿を持ってスプーンで掻き込むようにして食べる。 ・パンを食べるときしか近くで見ていないが、噛み合わせがよくなかったので、パンは横でかじっていた。 △食物を小さくして、掻き込む感じで食べていた。「ざーっと食べて止まって、ざーっと食べて止まって」という感じだった。 ・食べ方のことは引き継いだときからこういう食べ方だったので、この子はこ ういう食べ方だと思っていた。 ・これまで喉に詰まらせたことはなかった。 ☆食物を詰まらせるような様子を見たことはない。 △今までにe さんが(喉に食べ物を)つかえたとかいうのは聞いたことがない。 <その他の様子> ・e さんは、「ゆっくり食べようね」など、教員が言っていることは理解できる。 ・私(担任)の注目を集めたいという感じのアピールがよくあっていた。 ・何もなく、すんなりとランチルームに座ると、そこからいろいろなものを見たり、自分の方を見てほしいという気持ちや、誰かが気になるという様子でな かなか食べ始めない。担任が近くにいると、e さんはほとんど食べなかった。 横にいても食べてくれる教員もいたので、そういう教員は指差したり、ゆっくり食べようねと言ったりして指導していた。 ・人がいる時に食べると、誰かを見ながら食べるので、ここ(手元)に注目できなくてこぼすことが多かった。 ・コミュニケーションを取れば取るほど食が進まない ようねと言ったりして指導していた。 ・人がいる時に食べると、誰かを見ながら食べるので、ここ(手元)に注目できなくてこぼすことが多かった。 ・コミュニケーションを取れば取るほど食が進まないので、いつも隠れて見るようにはしていた。 ☆たまたま柱の陰に先生が隠れていたので、「なんで隠れるんですか。」と聞いたら、人がいると食べないから、壁のところにいるとか、廊下にいるとかしていた。 ・e さんが食べている様子は日によって見えたり、見えなかったりしていた。 私(担任)は、e さんから見えないように背後に回ったり、生徒の陰に隠れたりしていた。 ☆一人になることが多かった。 △一人で残って最後まで食べていることが多かった。 △人が見ていると食べなかったり、人からいろいろと言われたら動かなくなるので、遅くまで残っていることが多かった。 ・パンの日はよく食べるので、パンの日(水曜日)は担任の担当にしていた。」 事故調査報告書の13頁から14頁には以下の記載がある。 「担任からの聞き取りでは、e さんの食事に関して次のような配慮が述べられ た。」「・噛むことが上手にできないe さんのために食物を一口大にカットする。」イ障害者手帳及び身体障害者診断書等について平成23年3月17日付けの身体障害者診断書(甲A22の2)の、「4『そしゃく機能障害』の状態及び所見」欄には、「下の『該当する障害』の□に✓を 入れ、さらに①又は②の該当する□に✓又は()内に必要事項を記述すること」「『該当する障害』」「□そしゃく・嚥下機能の障害」「□咬合異常によるそしゃく機能の障害」「①そしゃく・嚥下機能の障害」「a 障害の程度」「□経口的に食物等を摂取できないため、経管栄養を行っている。」「□経口摂取のみ 」「□そしゃく・嚥下機能の障害」「□咬合異常によるそしゃく機能の障害」「①そしゃく・嚥下機能の障害」「a 障害の程度」「□経口的に食物等を摂取できないため、経管栄養を行っている。」「□経口摂取のみでは十分に栄養摂取できないため、経管栄養を併用している。」「□経口摂取のみ で栄養摂取できるが、誤嚥の危険が大きく摂取できる食物の内容・摂取方法に著しい制限がある。」との記載があるが、いずれについても、チェックが付されていない。 ウ放課後等デイサービス及び別府発達医療センターの記録について別府発達医療センター作成の診療録(甲A22の1)の以下の年月日部分に は、以下の記載がある。 a 平成13年1月10日「食事…ほぼ全介助」b 平成14年8月7日「摂食へのFollow必要」「摂食指導行っていく」「食事~(略)口腔 の過敏大きい。食形態の見直し必要(?)」c 平成14年12月4日「(食事)-(略)口腔過敏の問題」別府発達医療センター作成の診療録(甲A22の1)の経過記録の以下の年月日部分には、それぞれ以下の記載がある。 a 平成14年8月7日 「丸のみで摂食している。今後もゆっくりかむ(Ex)必要。」「口腔過敏」b 平成16年7月7日「かじりとって食べることを目標」c 平成16年10月27日「moが介助して食べさせていた。」 d 平成18年11月11日「一気に口につめるためむせることも」e 平成19年3月31日「口につめるような食べ方」f 平成19年9月18日 「一気にかきこむなどスピードコントロールpoor」放課後等デイサービス提供記録(甲A23の2)の下記年月日の特記事項欄には、それぞれ以下の記載がある。 a 平成 19年9月18日 「一気にかきこむなどスピードコントロールpoor」放課後等デイサービス提供記録(甲A23の2)の下記年月日の特記事項欄には、それぞれ以下の記載がある。 a 平成24年5月11日「おやつもひとりで畳の部屋で食べる。」 b 平成24年5月18日「おやつは畳の部屋でひとりで食べる。」c 平成24年6月29日「おやつを持ってウロウロし、みんなが食べ終わり、片付けた後、ひとりでおやつを食べる。」 d 平成25年2月22日「おやつは椅子に1人座って食べる。」e 平成25年5月24日「おやつはスヌーズレンで1人で食べる。」f 平成25年12月27日 「昼食は、他の利用者皆さんと一緒のテーブルに自ら好んで座るがまったく 食べようとせず、お茶のみ。散歩後、静養室で1人で食べる。」g 平成26年3月7日「昼食はひとりで作業室へ行くが食べず、みっけの部屋で仕切りをしているとひとりで食べる。」h 平成26年4月18日 「おやつを出して作業室で1人で食べる。」i 平成26年9月5日「作業室でおやつを一人で食べ、パズルで遊んでいる。」j 平成26年10月3日「おやつは作業室でひとりで食べ、その後散歩へ行く」 k 平成27年2月20日「おやつは作業室でひとりで食べる。」l 平成27年2月27日「おやつを食べたいと意思表示するが、みっけの畳室で一人で食べるように用意すると、すぐに食べてしまう。」 m 平成27年3月20日「みっけ卒業生よりもらったクッキーを選んで食べる。初めはみっけの部屋で食べていたが、自分から作業室に行き、一人で食べる。」n 平成27年5月8日 m 平成27年3月20日「みっけ卒業生よりもらったクッキーを選んで食べる。初めはみっけの部屋で食べていたが、自分から作業室に行き、一人で食べる。」n 平成27年5月8日「自分で、おやつを出して、別室にて食べる。」 o 平成27年7月17日「昼食は別室で1人で食べる。」p 平成27年12月25日「昼食は自分の居場所が見つからず、弁当持ってウロウロするが、畳の部屋で一人で食って片付ける。(早いペースであった)」 平成28年度放課後等デイサービスみっけ提供記録(甲A23の2)の平成 28年8月12日の支援内容欄には、「昼食はみんなと一緒に食べないが『ごはん食べたらプール』と伝えると、ひとりで完食する。」との記載がある。 平成28年8月3日付けの看護サマリー(甲A22の4)の「食事」欄の「自立・一部介助・全介助」部分には、「一部介助」に丸が付されており、その右側の特記事項欄には、「人が見たりすると食べない(中略)。食べる時は 一気に食べる。」との記載がある。また、同看護サマリーの「看護過程評価」欄には、「当初は、ほとんど摂取せず、スナック菓子をスタッフが見てない時に食べたりする程度であったが、食堂の雰囲気に慣れて、自力で食事摂取できる様になった。食べ始めたら、一気に食べ込む傾向ではあったがムセる事もなく摂取できた。」との記載がある。 看護評価(甲A22の6)には、「当初は、ほとんど摂取せず、スナック菓子をスタッフが見てない時に食べたりする程度であったが、食堂の雰囲気に慣れて、食事摂取自力でする様になった。食べ始めたら、一気に食べ込む傾向ではあったがムセる事もなく摂取できた。」との記載がある。 原告b 作成の平成24年4月2日付けのフェイスシート(甲A2 気に慣れて、食事摂取自力でする様になった。食べ始めたら、一気に食べ込む傾向ではあったがムセる事もなく摂取できた。」との記載がある。 原告b 作成の平成24年4月2日付けのフェイスシート(甲A23の1)の 「食事」欄の「咀嚼・嚥下:良・困難」部分には「良」に丸が付されている。 平成28年5月13日付けのアセスメント(甲A22の3)の「2.適切に飲食する」の欄には、「食べる能力に問題無・有」との記載があり、「無」部分に丸が付されている。また、「4.身体の位置を動かし、又良い姿勢を保持する」の欄の「ADL状況」の「食事」の部分には、「見守りセッティン グ+エプロン」と記載されている。 「心理判定記録(精神発達遅滞)」(それぞれ下記判定日のもの。甲A8の1ないし6)の「日常生活の介助度」の「食事」欄(「自立・半介助・全介助」が記載されている欄)には、以下の記載に〇が付され、補足的な記載がされている。 平成13年 4月11日全介助 平成15年12月22日全介助(上手くかめずにまる飲みするので、つききりで少しずつ食べさせる。)平成18年 2月10日全介助(咀しゃくは弱い。)平成20年 2月20日半介助平成23年 3月18日半介助 平成27年 3月19日半介助以上
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