平成29(ワ)729 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和2年6月22日 岐阜地方裁判所 その他
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判決文本文20,708 文字)

主文 1 被告は,原告に対し,4717万1268円及びこれに対する平成26年6月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを7分し,その1を原告の負担とし,その余は被告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,5559万3290円及びこれに対する平成26年6月12日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,歩行中の亡aが車両に衝突されて死亡した交通事故につき,亡aの相続人である原告が,上記車両の運転者は被告であったと主張して,民法709条に基づき,損害賠償金5559万3290円及びこれに対する上記事故の日である平成26年6月12日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠(特記なき限り枝番を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)⑴ 交通事故の発生(甲2)下記のとおりの交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した。 ア発生日時平成26年6月12日午後7時20分ころイ発生場所岐阜市(住所省略)先路上本件事故現場付近の道路状況は別紙1交通事故現場見取図のとおりであり,東西に延びる片側1車線の道路(以下「東西道路」という。)と南北方向に延びる道路(以下「南北道路」という。)とが交差する信号機による交通 整理が行われていない交差点(以下「本件交差点」という。)である。本件交差点東側には南北方向に横断歩道(以下「本件横断歩道」という。)が設置されている。 ウ 差する信号機による交通 整理が行われていない交差点(以下「本件交差点」という。)である。本件交差点東側には南北方向に横断歩道(以下「本件横断歩道」という。)が設置されている。 ウ事故態様本件交差点を北方から南方に横断歩行中の亡aに,東西道路を東方から西方に直進中の加害車両が衝突した(加害車両の運転者が被告であるか否かについては争いがある。)。 ⑵ 亡aの死亡(甲3)亡aは,本件事故により骨盤骨折等の傷害を負い,岐阜県総合医療センターに救急搬送されたが,平成26年6月13日午前1時40分,上記傷害に基づく出血性ショックにより死亡した。 ⑶ 相続等(甲1)原告は,亡aの夫であるところ,原告以外の亡aの相続人全員との間で,亡aの相続財産につき原告が全て相続する旨の遺産分割協議を行った。 ⑷ 被告に対する刑事手続等(甲42)被告は,本件事故につき,過失運転致死及び道路交通法違反により逮捕・勾留されたが,平成28年2月22日,不起訴処分とされ,原告は,上記処分を不当として検察審査会へ審査申立てをしたところ,岐阜検察審査会は,平成30年1月30日,上記不起訴処分が相当であるとの議決を行った。 2 争点⑴ 本件事故における加害車両の運転者が被告であるか否か⑵ 過失相殺の可否⑶ 損害額 3 争点に対する当事者の主張⑴ 争点⑴(本件事故における加害車両の運転者が被告であるか否か)(原告の主張)以下によれば,本件事故において加害車両を運転していたのは被告である。 ア被告車の損傷状況について 本件事故から4日後の平成26年6月16日に行われた被告車の検証の結果,被告車には,①フロントパネルに車体中心から右へ約22cm,左へ約35c ア被告車の損傷状況について 本件事故から4日後の平成26年6月16日に行われた被告車の検証の結果,被告車には,①フロントパネルに車体中心から右へ約22cm,左へ約35cm,地上高約102cmないし約129cmにわたり凹損が,②フロントパネルに車体中心から左へ約37cm・地上高約109cmの地点から,左へ51cm・地上高約122cmの地点にわたり擦過痕が,③左側ワイパーアームが車体中心から左へ約16cm,地上高約129cmの位置で屈曲し,フロントガラス枠に接触しており,その左端がフロントガラスから約2.5cm浮き上がる損傷がそれぞれ認められた。 上記損傷の状況によれば,相当強度な衝撃が被告車に加わったことは明らかであるところ,被告が本件事故前後に立ち寄ったガソリンスタンド(以下「本件スタンド」という。)の防犯カメラの映像上,本件事故前である午後4時の時点では被告車の前部に凹損は存在しておらず,本件事故後である午後8時15分の時点で凹損が存在していることからすれば,被告車の上記損傷は本件事故において亡aと衝突した際に生じたものと考えられる。 この点,被告は,本件車両の前部凹損は本件事故前の平成26年4月下旬ころ,自動車学校の駐車場において何者かに付けられたものであると主張するが,その具体的内容は,自動車学校に勤務する知人に会いに行ったところ,既に退職していたために会えなかった,凹損の発生原因は被告車の駐車区画に面した崖を近道として利用する人が何らかの原因で滑り落ちたためと思われるなどという荒唐無稽としか言いようのないものである。また,被告はワイパーの屈曲についても,上記自動車学校からの帰宅途中,被告車付近で遊んでいた集団が蹴ったサッカーボールが当たった旨主張するが,被告車のワイパー 唐無稽としか言いようのないものである。また,被告はワイパーの屈曲についても,上記自動車学校からの帰宅途中,被告車付近で遊んでいた集団が蹴ったサッカーボールが当たった旨主張するが,被告車のワイパーは途中でフロントガラス枠に接触し,先端がフロントガラスから浮き上がり,正常に作動しなくなっており,このよ うな状態で1か月もの間放置することなど考えられない(なお,本件事故当日の天候は雨であった。)。 イ被告車に付着した血痕等の鑑定結果について 左前輪マッドガード内側の血痕について被告車左前輪マッドガードの内側からは血痕様のものが採取され,これをDNA型鑑定した結果,人血痕であり,亡aの口腔内細胞のDNA型とSTR型15座位全てで一致していたことが明らかとなった。このような一致は,最も出現頻度の高い型を掛け合わせたとしても,約4兆7000億人に1人の確率であることから,上記人血痕は亡aの血液であると認められる。そして,本件事故以外に被告車に亡aの血液が付着することは考えられず,上記鑑定結果は被告車が亡aに衝突した動かぬ証拠となる。 ワイパーの組織片について被告車のワイパーからは組織片が採取され,これをDNA型鑑定した結果,これが人体組織片であり,複数人に由来するDNAの混合が考えられ,亡aのものが混入しているとして矛盾するものではないとの結果が示された。そして,その鑑定結果を詳細にみると,対照資料である亡aの口腔内細胞に由来するDNA型と同一の型が,STR型15座位中14座位で検出されており,唯一検出されていない型も亡aの型と相反していないこを補充・補強するものである。 亡aの着用していた衣服のタイヤ痕について本件事故当時に亡aが着用していた 検出されており,唯一検出されていない型も亡aの型と相反していないこを補充・補強するものである。 亡aの着用していた衣服のタイヤ痕について本件事故当時に亡aが着用していた衣服を赤外線写真撮影したところ,左膝外側相当部付近にタイヤ痕と判断できる部分があり,これと被告車のタイヤ痕を対照したところ,亡aの衣服に認められるタイヤ痕は被告車のタイヤと同一のタイヤにより印象された可能性があるとの鑑定結果が得られた。これは後記ウのとおり,亡aが加害車両に下肢を轢過された事実と整合するものである。 小括以上の各鑑定結果によれば,被告車が亡aに衝突し,倒れた亡aを轢過したものといえる。 ウ被告車の損傷状況と亡aの傷害内容との整合性について 司法解剖の結果,亡aの死因は骨盤骨折等の多発損傷であり,その損傷の態様,程度からは亡aが相当の重量と速度を有する鈍体との衝突等で成傷されたものであって,損傷の態様や部位等を総合して判断すると,車両等が亡aの左側やや背面寄りに衝突して路面上に投げ出され,その後さらに下肢をタイヤで轢過されて成傷されたと推定されるとされた。 本件事故現場付近には,本件横断歩道の西側端線から西に7.6mの地点を起点として1.3mの長さの擦過痕(別紙2現場痕跡図において「A擦過痕」と記載があるもの。以下「A擦過痕」という。)が,同端線から西に10.3mの地点を起点として1.8mの長さの擦過痕(別紙2現場痕跡図において「B擦過痕」と記載があるもの。以下「B擦過痕」という。)がそれぞれ存在する。 交通事故工学の専門家であるb(以下「b」という。)は,被告車の損傷状況,亡aが負った傷害の態様・程度及びA・B両擦過痕の状況等に基づき,本件事故 痕」という。)がそれぞれ存在する。 交通事故工学の専門家であるb(以下「b」という。)は,被告車の損傷状況,亡aが負った傷害の態様・程度及びA・B両擦過痕の状況等に基づき,本件事故につき,時速約30kmで走行中の被告車が,本件横断歩道上を横断中の亡aの左側やや背面寄りに自車を衝突させた後,制動措置を講ずることなく下肢を轢過したものと考えられる旨の意見(以下「b意見」という。)を示している。b意見は,交通事故に関し豊富な鑑定経験を有する元警察官であるbが,自らの専門分野について意見を述べたものであって,その内容も合理的なものである上,前記イのとおり,被告車左前輪マッドガードに亡aの血液が付着していたこと,亡aの衣服に被告車のタイヤと同一のタイヤによって印象された可能性のあるタイヤ痕が存在したことともよく整合するもので,十分に信用することができる。 エ本件事故前後の被告の行動について被告は,本件事故直後の平成26年6月12日午後8時15分ころ,本件スタンドに立ち寄り,降車後,被告車正面に佇立して前部の状況を確認した後,再び被告車に乗り込みその場を去ったもので,この間1分にも満たないこと,この約4時間前にも本件スタンドにおいて給油をしていることに照らせば,被告の上記行動は極めて不自然であり,亡aと衝突したことを認識していたからこそ,帰宅前にあえて本件スタンドに立ち寄り,衝突箇所を確認したものといえる。 これに対し,被告は,本件スタンドに立ち寄った理由につき,本件事故前に本件スタンドで給油した後,スーパーマーケット(以下「本件スーパー」という。)において買物中,クレジットカードを紛失したことに気づき,探しに戻ったためであると述べる。しかし,本件事故現場は,本件スーパーから本件スタンドへ向かう通常の経 ット(以下「本件スーパー」という。)において買物中,クレジットカードを紛失したことに気づき,探しに戻ったためであると述べる。しかし,本件事故現場は,本件スーパーから本件スタンドへ向かう通常の経路を大きく外れた位置にある上,被告は,事前に本件スタンドに電話確認すらしておらず,給油時にカバンを落としたとする給油口付近を確認した形跡もなく,クレジットカードを探しに行った者の行動としては不自然である。 オ被告の主張について以上に対し,被告は,被告車の先行車両が本件事故現場付近で停車し,右寄りに進路を変えながら前進したため,これに引き続いて停車・再発進したところ,本件事故現場付近を通過する際,路上で傘が動くのが見えたため,被告車を停車させ,バックミラーを確認すると,後方に倒れている人物が見えたなどとして,同先行車両が加害車両であるかの如く主張する。しかし,そもそも,本件事故発生当時,本件事故現場において停車したこと自体,本件事故に何らかの形で関与していることがうかがわれる上,先行車両の挙動や被告が停車した経緯に係る被告の供述も変遷しており全く信用できない。 (被告の主張) 否認ないし争う。 被告が本件事故現場を通過したのは,本件事故発生後であって,被告車が亡aに衝突したとの事実はない。 ア被告車の損傷状況について平成26年6月12日午後4時ころの時点で,被告車に凹損等の損傷がなかったとの事実は否認する。本件スタンドの防犯カメラの画像は不鮮明であり,損傷の有無は明確に確認できない。 被告は,平成26年4月下旬ころ,被告車を運転して自動車学校に赴き,懇意にしている同校職員に面会に行った。しかし,同職員は既に退職しており面会することはできず,2,30分ほどして駐車場に駐車中 被告は,平成26年4月下旬ころ,被告車を運転して自動車学校に赴き,懇意にしている同校職員に面会に行った。しかし,同職員は既に退職しており面会することはできず,2,30分ほどして駐車場に駐車中の被告車に戻ると,その前部に凹損が生じていた。被告車の駐車区画は崖のすぐ下にあり,自動車学校への近道として崖を上り下りする人々がいたことから,駐車中に何者かが崖から滑り落ちて被告車の前部に衝突したものと思われる。また,ワイパーの屈曲については,上記自動車学校からの帰宅途中,畜産センターに立ち寄り,被告車を駐車して花を観賞していたところ,付近で遊んでいたグループの1名が蹴ったサッカーボールが直撃したことにより生じたものであって,いずれも本件事故とは無関係に生じたものである。 イ被告車に付着した血痕等の鑑定結果について被告車のワイパーから採取された組織片及び左車輪マッドガードから採取された血痕のDNA鑑定結果については,いずれも亡aのものが混合しているか,亡aに由来するものとして矛盾はないというものにすぎず,確定的な判断はされていない。また,亡aの衣服に残されたタイヤ痕についても,被告車のタイヤによって印象された可能性があるという程度であって確実性は低い。 ウ被告車の損傷状況と亡aの傷害内容との整合性について亡aの解剖結果によれば,本件事故により,骨盤付近に最も衝撃が加わったものと考えられるが,亡aの骨盤の位置と本件車両の前部凹損の位置は食い違 っている。また,被告車の先端部分であり,最初に亡aと衝突することになると思われるフロントグリルに破損の痕跡もなく,車体底部に破損も見当たらないことから,被告車が人体と衝突し,轢過したとは認められない。 この点,原告はb意見に依拠し,被告車の損傷状況と亡aの損傷等が整合す われるフロントグリルに破損の痕跡もなく,車体底部に破損も見当たらないことから,被告車が人体と衝突し,轢過したとは認められない。 この点,原告はb意見に依拠し,被告車の損傷状況と亡aの損傷等が整合すると主張するが,b意見は,衝突時の被告車の速度を時速30~40kmと推定した理由につき10~20kmの低速度や50~60kmの高速度はいずれも不合理であると述べるにとどまり,明確な根拠を示すことができていない。 また,A・B擦過痕がいずれも亡aが車両に轢過された際に生じたものであることを前提しており,A擦過痕につき亡aが落下した後,路面を転がり停止するまでに生じたものである可能性を考慮しておらず,その条件設定に重大な疑問がある。加えて,亡aの飛翔距離の算出に当たり,車両の制動措置が考慮されていないが,車両の運転者が歩行者と衝突した際一切ブレーキを踏まないというのは明らかに不合理である。以上によれば,b意見は,衝突地点が本件横断歩道内であるとの結論を導くために無理な推論を重ねたものといわざるを得ず,信用することはできない。 エ本件事故前後の被告の行動について被告は,本件事故当日午後4時ころ,本件スタンドにおいて給油した後,本件スーパーで買い物をしたが,その際,クレジットカードを紛失していることに気づくとともに,本件スタンドで給油をした際にかばんを落としたことを思い出した。そこで,本件スタンドにクレジットカードが落ちているかもしれないと考え,本件スーパーを出て北上し,本件事故現場東側交差点(甲交差点)を左折した後,本件事故現場付近を通行した。その後,本件スタンドへ赴き,店長にクレジットカードの有無を確認したが,落し物はないとの回答であったため,自宅に戻った(なお,クレジットカードは後日別のかばんから発見された。)。このように, した。その後,本件スタンドへ赴き,店長にクレジットカードの有無を確認したが,落し物はないとの回答であったため,自宅に戻った(なお,クレジットカードは後日別のかばんから発見された。)。このように,被告は本件事故発生前から本件スタンドに向かうことを予定していたのであって,被告車の損傷を確認しようとしたなどという原告の主 張はこじつけに過ぎない。 ⑵ 争点⑵(過失相殺の可否)について(被告の主張)仮に,被告が本件事故につき損害賠償責任を負うとしても,前記⑴被告の主張ウにおいて述べたとおり,本件衝突事故の地点を本件横断歩道上であるとするb意見は信用できず,亡aが本件横断歩道外を歩行していた際に発生した事故である可能性も否定できないことから,相応の過失相殺がされるべきである。 (原告の主張)争う。 前記⑴原告の主張ウで述べた通り,本件事故の衝突地点を本件横断歩道上とするb意見は十分に信用できる。そうすると,被告は,本件事故現場を進行するに際し,本件横断歩道の歩行者の有無及びその動静を注視し,安全を確認して進行すべき注意義務があるにもかかわらずこれを怠り,相当速度で進行した過失により,本件横断歩道を歩行中の亡aに被告車を衝突させたのであって,被告が制動措置を講じていないことも踏まえると,本件事故は被告の一方的過失により生じたものである。 ⑶ 争点⑶(損害額)について(原告の主張)ア死亡逸失利益 1219万4227円亡aは,本件事故当時専業主婦として家事に従事しており,その死亡逸失利益は以下のとおりとなる。 死亡当時の亡aの年齢 75歳基礎収入 343万1900円(平成26年賃金センサス男女計学歴計70歳以上平均賃金)生活費 事しており,その死亡逸失利益は以下のとおりとなる。 死亡当時の亡aの年齢 75歳基礎収入 343万1900円(平成26年賃金センサス男女計学歴計70歳以上平均賃金)生活費控除率 30%就労可能年数 6年(対応するライプニッツ係数5.076) (計算式)343万1900円×(1-0.3)×5.076=1219万4227円イ死亡慰謝料 3600万円 亡a本人の慰謝料 3000万円 原告固有の慰謝料 600万円前記⑵のとおり,本件事故は被告の一方的過失により生じたものであり,被告が衝突後も制動措置を講じていないことからすると,行為態様として悪質である。加えて,被告は本件事故後,自ら救急車を呼ぶこともなく,臨場した警察官に事故状況を説明することもせず,道路交通法上の救護義務及び報告義務を怠ったばかりか,本件事故現場を離れた後,真っ先に本件スタンドに向かい被告車の損傷状況を確認するなど,本件事故の重大性を全く認識していない。被告は,刑事手続において否認を続け,本訴においても荒唐無稽で不合理な供述を繰り返すなど,遺族の被害感情を踏みにじる態度を続けている。原告は,本件事故により最愛の妻を失ったもので,特に,本件事故が原告の面前で起こったものであることからすると,その衝撃や悲嘆は計り知れない。以上の事情を総合すると,死亡慰謝料については,亡a本人の慰謝料として3000万円,原告固有の慰謝料として600万円を下回ることはない。 ウ葬儀費用等 239万9063円 医療費(死亡診断書文書料を含む。) 5万0480円 葬儀費用 112万8848円 納骨式費用 41万4945円 一周忌費用(記念誌発行費用を含 医療費(死亡診断書文書料を含む。) 5万0480円 葬儀費用 112万8848円 納骨式費用 41万4945円 一周忌費用(記念誌発行費用を含む。) 80万4790円エ弁護士費用 500万円(被告の主張)ア死亡逸失利益 基礎収入額につき高額に過ぎる。亡aは家事に従事していた高齢の主婦であり,その基礎収入額としては男女別の平均賃金が参照されるべきであるところ,平成26年賃金センサス女子学歴計70歳以上の平均賃金は319万1900円である。 また,生活費控除率についての生活費控除割合は30%から40%までの間とされており,原告の主張する30%はその最下限であって低率に過ぎる。 イ死亡慰謝料亡aは原告と共に生活していた主婦であり,一家の支柱に準ずる場合に該当するものと考えられるが,その場合の死亡慰謝料としては近親者慰謝料も併せて2400万円から2700万円の範囲内の金額が相当であるところ,被告が救護義務・報告義務を怠ったことを裏付ける証拠はなく,上記金額の幅を上回る死亡慰謝料は認められない。 ウ葬儀費用等一周忌に要した費用は葬祭費に含まれるものではなく,本件事故と相当因果関係を有する葬祭費としては130万円から170万円の範囲内の金額が相当である。 エ弁護士費用争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前記前提事実に加え,後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ⑴ 本件事故現場付近の状況等ア本件事故現場は,片側1車線の東西に延びる道路(東西道路)と中央線の設けられていない南北に延びる道路(南北道路)が交わる信号機により交 の事実が認められる。 ⑴ 本件事故現場付近の状況等ア本件事故現場は,片側1車線の東西に延びる道路(東西道路)と中央線の設けられていない南北に延びる道路(南北道路)が交わる信号機により交通整理の行われていない十字路交差点であり,その東側には南北に横断歩道 (本件横断歩道)が設けられている(前記前提事実⑴イ)。東西道路はアスファルト舗装が施された平坦な直線道路であり,最高速度は時速40kmに規制され,歩車道の区別がある。本件交差点付近における東西道路の幅員は東行車線(以下,東西道路の東行車線を単に「東行車線」という。)が5.0m,西行車線(以下,東西道路の西行車線を単に「西行車線」という。)が5.2mであるところ,本件事故現場東側交差点(甲交差点)に向かって,東行車線は直進・左折レーン,直進専用レーン及び右折専用レーンに分かれて片側3車線となり,これに伴い,西行車線の幅員は3.2mに狭まる。他方,南北道路には中央線が設けられておらず,その幅員は本件交差点北側において5.1m,南側において5.5mである。なお,本件事故当時の天候は曇りであり,直前の降雨により本件交差点付近の路面は湿潤状態であった。(甲22,29)イ本件交差点南東角には水銀灯が設置されているほか,東西道路北側には看板等や外灯が設置されており,夜間であっても東西道路を走行する車両が本件横断歩道の状況を確認することは可能である。平成26年7月3日午後7時25分から同日午後7時35分までの間に行われた被告立会いの実況見分(天候は降雨)において,被告は,本件横断歩道東端から東に37.6mの西行車線上に前照灯を下向きにして停車中の被告車から,本件横断歩道左右の歩道上に佇立させた仮想被害者を視認することができた。(甲34)⑵ 本件事故の状況等(甲 件横断歩道東端から東に37.6mの西行車線上に前照灯を下向きにして停車中の被告車から,本件横断歩道左右の歩道上に佇立させた仮想被害者を視認することができた。(甲34)⑵ 本件事故の状況等(甲32,45,原告本人)亡aは,本件事故日である平成26年6月12日(以下,本項及び次項においては同日の出来事を指す。),原告と共に散歩に出かけ,午後7時20分ころに本件横断歩道付近に差し掛かった。原告と亡aは,本件事故直前,南北道路の北側道路東端付近を歩行しており,亡aが原告に先行して本件交差点に進入し,西行道路を西進する車両に衝突された。 ⑶ 本件事故前後の被告の行動等(甲32,45,原告本人,被告本人) 被告は,午後4時ころ,被告車を運転して本件ガソリンスタンドに立ち寄り給油を行った。その後,被告は,本件事故発生時刻である午後7時20分ころ,西行道路を西進して本件事故現場付近に差し掛かり,本件事故発生直後,被告車を本件事故現場西側に停車させて降車し,路上に倒れている亡aの元に向かった。その後,被告は,本件事故現場を離れ,午後8時15分ころ,本件スタンドに立ち寄り,降車して被告車の前方に立った後,再び被告車に乗り込み,午後8時17分ころ本件ガソリンスタンドを出た。このとき,被告が降車から乗車までに要した時間は約54秒であった。 ⑷ 本件事故現場付近の路面痕跡等(甲29)平成26年6月12日午後7時40分から実施された実況見分において,本件事故現場付近の路面には別紙2現場痕跡図のとおり,本件横断歩道西端から西側7.6mの位置を起点として,長さ1.3mにわたりA擦過痕が,本件横断歩道西端から西側10.3mの位置を起点として長さ1.8mにわたりB擦過痕が確認された。また,B擦過痕の開始地点から南側1.4mの位 .6mの位置を起点として,長さ1.3mにわたりA擦過痕が,本件横断歩道西端から西側10.3mの位置を起点として長さ1.8mにわたりB擦過痕が確認された。また,B擦過痕の開始地点から南側1.4mの位置(別紙現場痕跡図におけるCの位置)にはメガネレンズが遺留されており,本件横断歩道西端から西側14.5mの位置(別紙2現場痕跡図におけるDの位置)には血痕が付着しており,同所には亡aが頭部を北向きにして倒れていた。 ⑸ 被告車の損傷等の状況(甲14)平成26年6月16日,被告車(車両番号省略・トヨタハイエース)の検証が実施され,その結果,同車には以下の損傷等が認められた。 アフロントパネルの状況車体中心から右に約22cm・左に約35cm,地上高約102cmから約129cmにかけて凹損がある。 車体中心から左に37cm・地上高109cmの地点から,車体中心から左に51cm・地上高122cmの地点にかけて擦過痕がある。 イ左側ワイパーの状況 左側ワイパーアームが車体中心から左に約16cm,地上高約129cmの位置で折れ曲がり,フロントガラス枠に接触しており,左側がフロントガラスから約2.5cm浮き上がっている。 ウナンバープレートの状況ナンバープレートの下端が車体中心から右に約12cm・左に約4cmにかけて後方に折れ曲がっている。 エ車体左後部の状況 左前輪マッドガード内側に血痕様のものが付着している。 左後輪中心から前方に約160cm・地上高約58cmから約59cmから,左後輪中心から前方へ約35cm・地上高約58cmから約59cmにかけて直線状の擦過痕がある。 オ車体底部の状況車体底部に破損は見当たらな ・地上高約58cmから約59cmから,左後輪中心から前方へ約35cm・地上高約58cmから約59cmにかけて直線状の擦過痕がある。 オ車体底部の状況車体底部に破損は見当たらないが,左前輪スタビライザーに長さ約10cmの払拭痕がある。 ⑹ DNA鑑定の結果等(甲16~19)被告車からは,左側ロッカパネルから毛髪様のもの1本,ワイパーから組織片様のもの若干量,左前輪マッドガード内側から血痕様のもの若干量がそれぞれ採取されており,これらにつき岐阜県警察本部刑事部科学捜査研究所において,亡aの口腔内細胞のDNA型との異同識別等に関する鑑定が実施された。 その結果は以下のとおりである。 ア毛髪様のものについて人頭毛であり,毛根鞘は認めなかった。毛根部についてDNA型検査を実施したが,微量の為,STR型及びアメロゲニン型検査に至らなかった。 イ組織片様のものについて人体組織片であって,そのDNA型検査結果は別紙3表1のとおりである。 すなわち,STR型15座位中14座位において亡aと同一の型が含まれて おり,残る1座位(CSF1PO型)についても,亡aのアリル型(m,n)のうち片方(m)が検出され,アメロゲニン型は亡aと同じくX型であった。 上記人体組織片については,複数人に由来するDNAの混合が考えられ,亡aのものが混合しているとして矛盾するものではない。 ウ血痕様のものについて人血痕であって,そのDNA型検査結果は別紙4表2のとおりである。すなわち,上記人血痕は亡aのものとSTR型15座位全てにおいて一致しており,アメロゲニン型は亡aと同じくX型であった。上記人血痕については,亡aに由来するものとして矛盾するものではない。 ⑺ タイヤ痕の鑑定結果(甲 亡aのものとSTR型15座位全てにおいて一致しており,アメロゲニン型は亡aと同じくX型であった。上記人血痕については,亡aに由来するものとして矛盾するものではない。 ⑺ タイヤ痕の鑑定結果(甲21)本件事故当時,亡aが着用していたズボンにつき,岐阜県警察本部刑事部鑑識課において,タイヤ痕の有無等につき鑑定が実施され,その結果,亡aのズボンの左膝外側相当部付近にはタイヤ痕の印象が認められ,同タイヤ痕と被告車のタイヤによって印象されたタイヤ痕とは曲線状のブロック模様の形状・大きさ,曲線状のブロック模様と2本の直線模様の位置関係,2本の直線模様の太さなどが似ており,双方にタイヤ模様の類似性が認められるものの,欠損痕・亀裂痕・摩擦痕などの使用特徴が現れていないことから,亡aのズボンのタイヤ痕は被告車のタイヤと同じタイヤにより印象された可能性があるにとどまると判断された。 ⑻ 亡aの解剖結果等(甲26)亡aについては,平成26年6月14日,岐阜大学大学院医学系研究科医科学専攻法医学分野解剖室において司法解剖が実施され,その結果,亡aの死因は骨盤骨折等の多発損傷であり,その損傷の態様・程度等から,相当の重量と速度を有する鈍体との衝突等で成傷されたものであって,損傷の態様や部位等を総合して判断するに,車両等が亡aの左側やや背面寄りに衝突して路面上に投げ出され,その後さらに下肢をタイヤで轢過されて成傷されたものと推定さ れるとの意見が示された。 ⑼ b意見について(甲28,43,44)原告から本件事故に関する工学鑑定を依頼された株式会社日本交通事故調査機構のbは,被告車の損傷状況,亡aの解剖結果等を踏まえ,①被告車のフロントパネルには創底滑らかな凹損があり,これは塑性物体としての人体が衝突した痕跡と整 学鑑定を依頼された株式会社日本交通事故調査機構のbは,被告車の損傷状況,亡aの解剖結果等を踏まえ,①被告車のフロントパネルには創底滑らかな凹損があり,これは塑性物体としての人体が衝突した痕跡と整合すること,②歩行者が背面やや左寄りから被告車の如きワンボックスカーに衝突した場合には,まず,下肢が車両の最も突出した部位であるフロントバンパー底辺部(ナンバープレート底辺部)に衝突し(ただし,フロントバンパーの強度は人体下肢の強度よりも強いため,衝突速度によってはフロントバンパー自体に損傷が生じない場合もある。),その後,慣性の法則により後傾姿勢となった歩行者の胴体部及び頭部がそれぞれ車両フロントパネル及びその上方(ワイパーアーム付近)に衝突すること,③衝突速度が高速である場合には,歩行者は遠方に飛翔する一方,車両側には制動効果が働くため,落下した被害者より手前で停止するが,衝突速度が比較的低速である場合,歩行者は伏臥姿勢で車両近辺に飛翔落下するため,転倒後,停止前の車両に轢過される現象が生じる可能性があることから,本件事故につき,被告車が比較的低速で亡aの左側やや背面寄りに自車前部を衝突させ,その後路面に投げ出された亡aの下肢を轢過したものであるとの意見を示した。その上で,A擦過痕及びB擦過痕の印象過程につき,亡aが衝突後,A擦過痕の開始位置に落下して停止し,轢過される過程でA・B両擦過痕を残しながら路面を滑走移動して,最終停止位置(別紙2現場痕跡図におけるDの位置)に至ったと認められ,被告車がブレーキペダル操作で減速に転じたのは轢過完了後であるとし,人体の飛翔距離から車両の衝突速度を算出する公式を用いて計算すると,衝突位置を本件横断歩道西端から0.6m東寄り,被告車の走行速度を時速約30km,亡aの飛翔距離を8.4mと想定した場合が, とし,人体の飛翔距離から車両の衝突速度を算出する公式を用いて計算すると,衝突位置を本件横断歩道西端から0.6m東寄り,被告車の走行速度を時速約30km,亡aの飛翔距離を8.4mと想定した場合が,被告車の損傷態様・程度,路面痕跡,亡aの本件事故直前の歩行位置及びその後の自然な横断方法と合理的に 整合すると結論付けた。 2 争点⑴(本件事故における加害車両の運転者が被告であるか否か)について⑴ DNA鑑定結果について前記認定事実⑹ウのとおり,被告車の左前輪マッドガード内側からは人血痕が検出され,そのDNA型は,亡aのものとSTR型15座位及びアメロゲニン型の全てが一致しているところ,STR型15座位全てが一致する確率は,各アリルのうち最も出現頻度の高いものを掛け合わせたとしても約4兆7000億人に1人程度にとどまることからすれば(甲23),上記人血痕は,亡aの血液に由来するものであると認められる。そして,本件事故以前に被告と亡aに面識はなく,被告車の左前輪マッドガード内側に亡aの血液が付着する機会としては,本件事故を除いては考え難いことから,上記人血痕は被告車が亡aに衝突・轢過した際に付着したものと推認できる。前記認定事実⑹イのとおり,被告車のワイパーから人体組織片が採取され,そのDNA型につき,STR型15座位中14座位において亡aと同型のものが含まれており,アメロゲニン型は亡aと同じくX型であって,亡aのものが混合しているとして矛盾がないとの鑑定結果が示されていることは上記推認を補強するものである。 ⑵ 被告車の損傷状況についてア前記認定事実⑸のとおり,被告車にはフロントパネル部分に凹損が,左側ワイパーアーム及びナンバープレート底部に折損がそれぞれ生じているほか,左前輪スタビライザーに長さ約10cmの払拭痕が ついてア前記認定事実⑸のとおり,被告車にはフロントパネル部分に凹損が,左側ワイパーアーム及びナンバープレート底部に折損がそれぞれ生じているほか,左前輪スタビライザーに長さ約10cmの払拭痕が存在する。そして,本件事故当日における本件スタンドの防犯カメラ映像に係る写真撮影報告書(甲15)によれば,本件事故発生後である平成26年6月12日午後8時15分ころの時点で被告車のフロントパネルに明確な凹損が認められる一方,本件事故前である同日午後4時ころの時点では,明確な損傷の存在は確認できないことからすると,被告車両の損傷はこの間に生じたものであることが窺われる。 イ上記被告車の損傷等につき,bは,その報告書(甲28,43,44)及び証人尋問において,時速30km程度の比較的低速で亡aの左側やや背面寄りに自車前部を衝突させ,その後路面に投げ出された亡aの下肢を轢過した際に生じた損傷とみて整合する旨の意見を述べるところ,同意見は,長年交通課の警察官として多数の交通事故捜査に携わり,その後も民間の調査会社において交通事故鑑定業務に従事するbが専門家としてその知見を述べたもので,その内容も合理的であって,前記認定事実⑺のとおり,亡aのズボンに被告車のタイヤと同一のタイヤによって印象された可能性があるタイヤ痕が印象されていた事実とも整合するもので,信用することができる。 ウ被告は,b意見につき,被告車の速度を時速30kmとしたことに明確な根拠が示されていない,A擦過痕が車両による轢過によるものではなく,亡aが路面に落下後,滑動ないし転動して停止するまでの間に形成された可能性が考慮されていない,ブレーキ操作による制動効果が考慮されていないなどと指摘する。しかし,bは,被告車の検証調書(甲14)から認められる被告車の損傷内容・ 転動して停止するまでの間に形成された可能性が考慮されていない,ブレーキ操作による制動効果が考慮されていないなどと指摘する。しかし,bは,被告車の検証調書(甲14)から認められる被告車の損傷内容・程度も踏まえ,被告車の速度を算定したものであって,A擦過痕及びB擦過痕がほぼ平行に印象されていることに照らし,両擦過痕がいずれも轢過の際に生じたものであると判断し,加害車両が亡aに衝突後,停止することなく轢過に至ったとの事実を踏まえて,ブレーキ操作による制動措置が講じられていないとの結論に至ったもので,その検討過程に格別不合理な点も見当たらず,被告の上記指摘は前記判断を左右しない。 エ以上に対し,被告は,被告車の損傷はいずれも本件事故の約1か月前に本件事故とは無関係に生じたものである旨主張し,陳述書(乙4)及び本人尋問において,平成26年4月下旬ころ,知人職員と面会する目的で自動車学校を訪れたが,同職員は既に退職していたため面会することはできず,同校駐車場に駐車中の被告車に戻ったところフロントパネルに凹損が生じていた,同損傷については駐車区画に面する崖を行き来する者が滑り落ちてきた 際に生じたものと考えられる,ワイパーの屈曲については,上記自動車学校からの帰宅途中,被告車の周囲で遊んでいた集団が蹴ったサッカーボールが被告車前面上部に当たったことによるものである旨供述する。しかしながら,面会相手である職員の在籍を確認することもなく自動車学校を訪問すること自体不自然である上,被告車のワイパーは,前記認定事実⑸イのとおり,中央部が屈曲しフロントガラス部に接触しているほか,左端がフロントガラスから約2.5cm浮き上がるなど,ワイパーとしての機能に明らかな支障が生じているところ,被告が被告車を日常的に使用していたこと(被告本人)か フロントガラス部に接触しているほか,左端がフロントガラスから約2.5cm浮き上がるなど,ワイパーとしての機能に明らかな支障が生じているところ,被告が被告車を日常的に使用していたこと(被告本人)からすれば,被告が上記ワイパーの損傷を1か月以上にわたり放置していたとは考え難く,本件事故直前の天候は降雨であったことにも照らすと,被告車の損傷に係る被告の供述は信用することができない。 ⑶ 本件事故前後の被告の行動についてア前記認定事実⑶のとおり,被告は,本件事故発生時刻ころ,被告車を運転して本件事故現場付近を通過し,本件事故発生直後,被告車を停車させて,亡aの元に向かったもので,被告の上記行動自体,本件事故への関与をうかがわせるものである。そして,被告は,本件事故発生時刻から約55分後,本件スタンドに立ち寄り,被告車の前方に佇立するという行動に及んでいるところ,このとき,降車から乗車までに要した時間は1分未満と極めて短時間であること,被告が既に同日午後4時に本件スタンドにおいて給油済みであることに照らし不自然な行動であるといわざるを得ず,上記のとおり被告車のフロントパネルに凹損が生じていることに照らすと,被告の上記行動は,被告車の損傷部位を確認していたものと考えられ,加害車両の運転者の行動と整合するものである。 イ以上に対し,被告は,本件スタンドに立ち寄った理由について,本件スタンドで給油をした後,本件スーパーにおいて会計中,クレジットカードを紛失していることに気付き,上記給油時に落としたのではないかと思い当たり, 確認に行ったものであるなどと述べる。しかしながら,前記認定事実⑶のとおり,被告が本件スタンドにおいて,被告車から降車して前方に回り込み,再び乗車するまでの時間はわずか54秒間であって,この間に紛失したカー ったものであるなどと述べる。しかしながら,前記認定事実⑶のとおり,被告が本件スタンドにおいて,被告車から降車して前方に回り込み,再び乗車するまでの時間はわずか54秒間であって,この間に紛失したカードの所在を店員に確認する,心当たりの場所を探すなどの行動に及んだとは考え難い。また,本件スタンド,本件スーパー及び本件事故現場の位置関係に照らし,本件スーパーから本件スタンドに向かう経路としては,本件スーパーの南側に位置する交差点を西進するのが最短であるところ,これと反対に,本件スーパーの北西側に位置する本件事故現場を経由するというのはいささか不自然である。この点,被告は本件スーパー南側の交差点に面する道路の存在を知らなかった旨述べるが,被告が50年もの間岐阜市に在住し,車の運転をしてきたこと(被告本人)からすれば不合理であるといわざるを得ず,結局,本件スタンドへの立ち寄りに関する被告の供述については信用することができない。 ⑷ 小括以上のとおり,被告車の左前輪マッドガード内側に亡aの血液が付着していること,被告車に亡aに衝突・轢過した際に生じた損傷と整合する損傷が生じていることに加え,被告が本件事故前後において,本件事故への関与をうかがわせる行動に及んでいることからすれば,本件事故における加害車両の運転者が被告であると認めるのが相当である。 ⑸ 被告の主張について以上に対し,被告は,本件事故現場を通過したのは本件事故発生後であると主張し,本人尋問において,本件事故前後の状況につき,本件事故現場東側交差点(甲交差点)を左折したところ,先行車両が本件横断歩道の手前付近を走行していた,先行車両は本件横断歩道を通過後,本件横断歩道の手前まで後退し,一時停止したため,被告も先行車両に引き続き一時停止した,その後,先行車両は再発進し, 先行車両が本件横断歩道の手前付近を走行していた,先行車両は本件横断歩道を通過後,本件横断歩道の手前まで後退し,一時停止したため,被告も先行車両に引き続き一時停止した,その後,先行車両は再発進し,西行道路中央線寄りを走行していった,このとき,前方の 路上に傘が見えたため,先行車両はこれを避けたのだろうと思った,被告車を再発進させた後,本件横断歩道を通過してバックミラーに目をやると,後方に人が倒れているのが見えたため,停車し,倒れている人の元へ駆け寄った,なお,この間,被告車に傘が当たったことはないなどと供述する。 しかしながら,被告は,平成26年7月3日に行われた実況見分において,警察官に対し,本件事故現場東側交差点(甲交差点)を左折後,先行車両に追従して西行道路を西進した,本件横断歩道手前において先行車両が急停車した後,進路を右寄りに変えた,被告車が本件横断歩道を通過する際,左前フロントガラスの下に傘が当たり,被告車を停止させた,降車すると左前輪に傘が挟まっていた,その後,後方に人が倒れているのを発見した旨の指示説明をしていたもので(甲22),被告の本人尋問における上記供述とは,本件事故前の先行車両の走行位置や後退動作の有無,被告車と傘の接触の有無,亡aの発見経緯等において異なっている。この点,被告は,実況見分において被告車に傘が当たったと説明したことはない旨述べる(被告本人)が,警察官が被告車と傘の接触の有無につき架空の指示説明を作出する理由は見当たらない上,被告の指示説明状況を撮影した写真が実況見分調書に添付されていることにも照らせば,被告の上記供述は採用できない。また,被告は,令和元年11月30日付けの陳述書(乙4)においても,先行車両及び被告車の後退の事実について何ら言及していなかったもので,本件事故前後の状況に も照らせば,被告の上記供述は採用できない。また,被告は,令和元年11月30日付けの陳述書(乙4)においても,先行車両及び被告車の後退の事実について何ら言及していなかったもので,本件事故前後の状況に関する被告の供述は,先行車両及び被告の動静に関する重要な部分において変遷しており,到底信用することができない。よって,被告の上記供述によっても前記⑷の認定は左右されない。 3 争点⑵(過失相殺の可否)について前記認定事実⑵のとおり,亡aは本件事故直前,南北道路の北側道路東端付近を歩行していたもので,これにb意見(なお,b意見の信用性については前記2⑵で述べたとおりである。)を総合すれば,本件事故は,信号機の設置されていな い横断歩道上又はその直近を歩行中の亡aに,西行道路を時速約30kmの速度で西進中の被告車が衝突したものであると認められる。そうすると,被告は,西行道路を直進するに当たり,前方左右を注視し,本件横断歩道等を横断する歩行者の有無及びその動静に留意し,その安全を確認して進行すべき注意義務を負っていたのにこれを怠り,前方左右の安全を確認することなく漫然進行した過失によって,本件事故を発生させたものであるといえる。そして,前記認定事実⑴のとおり,本件事故現場付近には水銀灯等が設置されており,夜間であっても西行道路を西進する車両が本件横断歩道の状況を確認することは容易であることに加え,亡aが衝突後轢過されていること及び本件事故後の被告車の停止位置(被告立会の実況見分調書(甲22)によると,被告車の停止位置は本件横断歩道西端付近から約50m西側であって,原告及び本件事故現場の通行人ら各立会の実況見分調書(甲30~33)によっても,被告車と思われる車両の停止位置は本件横断歩道の相当西側である。)からすると,有意の制動 端付近から約50m西側であって,原告及び本件事故現場の通行人ら各立会の実況見分調書(甲30~33)によっても,被告車と思われる車両の停止位置は本件横断歩道の相当西側である。)からすると,有意の制動措置が講じられたとも認められず,被告の過失の程度は著しいといえる。そうすると,本件事故につき損害の公平な分担という見地から過失相殺をすることが相当であるとはいえない。 4 争点⑶(損害額)について⑴ 死亡逸失利益 1134万0788円証拠(甲45,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,亡aは本件事故当時,夫である原告と同居して家事労働に従事していたこと,原告と亡aは既に退職し,家計は両名の年金により賄われていたことが認められるところ,原告が本件事故の約半年前である平成26年2月6日に脳梗塞等により入院し,亡aが一時,原告の入通院の付添等を行っていたことを考慮しても,その家事労働の内容は,有職配偶者の家事,育児,介護等を伴うものと比較して軽易なものであったといえる。このような亡aの本件事故当時の家族構成,生活状況,年齢を総合考慮し,その基礎収入としては,賃金センサス(平成26年)女性学歴 計70歳以上の平均賃金である319万1900円とし,生活費控除率を30%,就労可能年数を6年間(弁論の全趣旨。対応するライプニッツ係数は5. 0757)として算定するのが相当である。 (計算式)319万1900円×(1-0.3)×5.0757=1134万0788円(小数点以下切捨て)⑵ 亡a本人の慰謝料 2700万円上記3のとおり,本件事故は被告の一方的過失により惹起されたものであるところ,亡aは,夫である原告と共に,趣味の活動や友人らとの交流など,充実した生活を送っていたにもかかわらず,本件事故により突如としてその とおり,本件事故は被告の一方的過失により惹起されたものであるところ,亡aは,夫である原告と共に,趣味の活動や友人らとの交流など,充実した生活を送っていたにもかかわらず,本件事故により突如としてその生命を絶たれたもので,その無念は察するに余りある。また,被告の供述によっても,被告は,本件事故後,目撃者が救急車を手配した際に「よろしくお願いします」などと述べたにとどまるというのであって,救護の措置を十分に尽くしたとはいえず,かえって,本件事故から1時間も経たずして本件事故現場を離れ本件スタンドに赴くなど,自らの惹起した事故により重篤な傷害を負った亡aの容態を案じた様子も窺われない。加えて,その後の刑事手続においても,捜査機関に対し加害車両を運転していた事実を否認し,本訴に至ってもなお,亡aに衝突していない旨不合理な供述を繰り返すなど,事故後の態様も悪質である。以上のほか,本件に顕れた一切の事情に照らし,亡aの死亡慰謝料として2700万円を相当と認める。 ⑶ 原告固有の慰謝料 300万円上記⑵で述べた事情に加え,本件事故によりかけがえのない妻を奪われた原告の悲嘆を考慮して,原告固有の慰謝料として,300万円をもって相当と認める。 ⑷ 治療費等 5万0480円亡aは,本件事故による傷害の結果,岐阜県総合医療センターに搬送され,治療費等として5万0480円(死亡診断書作成料2380円を含む。)を要 した(甲4)。 ⑸ 葬儀費用等 150万円証拠(甲5~13)及び弁論の全趣旨によれば,原告は,亡aの葬儀費用として112万8848円,納骨式費用として41万4945円,一周忌費用として80万4790円の合計234万8583円をそれぞれ支出したことが認められるが,葬儀及びその後の追悼行事等の aの葬儀費用として112万8848円,納骨式費用として41万4945円,一周忌費用として80万4790円の合計234万8583円をそれぞれ支出したことが認められるが,葬儀及びその後の追悼行事等の内容・費用については,故人の社会的地位や遺族の意向等に左右されるものであることに鑑み,うち150万円を本件事故と相当因果関係のある損害と認める。 ⑹ 弁護士費用 428万円本件事案の難易,審理の経過,認容額その他の事情を考慮すると,本件事故と相当因果関係のある弁護士費用としては上記金額が相当である。 ⑺ 合計 4717万1268円 5 結論以上によれば,原告の請求は,被告に対し,4717万1268円及びこれに対する本件事故日である平成26年6月12日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余の請求は理由がないからこれを棄却することとして,主文のとおり判決する。 岐阜地方裁判所民事第2部 裁判官木野村瑛美子 (別紙1ないし4省略)

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