平成24(ワ)36030 薬害C型肝炎被害者救済請求事件

裁判年月日・裁判所
令和4年7月19日 東京地方裁判所
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判決文本文76,149 文字)

令和4年7月19日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成24年第36030号薬害C型肝炎被害者救済請求事件口頭弁論終結日令和4年2月15日判決主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用(補助参加によって生じた費用を含む。)は原告らの負担とする。 事実 及び理由第1 請求被告は、別紙2請求金額目録「原告番号」欄記載の各原告に対し、同目録 「請求金額」欄記載の各金員をそれぞれ支払え。 第2 事案の概要等 1 事案の概要⑴ 本件は、原告ら本人又はその被相続人が、特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第Ⅸ因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金 の支給に関する特別措置法(以下「特措法」という。以下、本文中の略称は別紙でも使用する。)2条1項所定の特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことによってC型肝炎ウイルスに感染し、同法6条各号が規定する感染区分に該当する(各原告が該当する号数は別紙2請求金額目録「感染区分」欄記載のとおり)と主張して、原告らが、同法4条による確定判決等において 訴え等の相手方となるべき被告に対し、同法3条1項又は2項に基づく給付金請求権として、原告ら又は被相続人の病態に応じて同法6条1号から3号による別紙2請求金額目録「請求金額」欄記載の各金額の給付金の支払を求める事案である。 補助参加人は、特定フィブリノゲン製剤を製造及び販売した株式会社ミド リ十字(以下「ミドリ十字」という。)の債務を合併及び会社分割等により 承継した。 ⑵ 個別の原告に関する事案の概要は、別紙個1ないし6の「第1事案の概要等」のうちの「1事案の概要」に各記載のとおりである。 2 前提事実(争いのな 社分割等により 承継した。 ⑵ 個別の原告に関する事案の概要は、別紙個1ないし6の「第1事案の概要等」のうちの「1事案の概要」に各記載のとおりである。 2 前提事実(争いのない事実、当事者が争うことを明らかにしない事実並びに後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認定できる事実) ⑴ C型肝炎についてア C型肝炎ウイルスの概要と感染経過C型肝炎ウイルス(HCV)は、直径約55~57㎚の二重構造を持つ単鎖RNA型ウイルスである。1970年代初頭(昭和45年以降)に、輸血後肝炎のなかにA型でもB型でもない肝炎(非A非B型肝炎)が存在 することが明らかになり、1988年(昭和63年)、米国において血液伝播性非A非B型肝炎ウイルス遺伝子の一部が分離・同定され、C型肝炎ウイルスと名付けられた。 通常、C型肝炎ウイルスに感染すると、1週間ないし3週間後に血清中にHCV-RNAが出現し、15日から150日間の潜伏期間を経て肝細 胞障害(急性肝炎)を発症する。急性肝炎の症状(全身倦怠感、食欲不振、悪心、黄疸など)や臨床検査値は比較的軽度なものが多いものの、急性肝炎の症例は、高率(約70%)に慢性化する。一旦慢性化すると、ウイルスが自然消失することはきわめて稀(年率0.2%)であり、肝炎の持続により肝の線維化が緩徐に進行し、一般的に20年から30年の経過で慢 性肝炎から肝硬変に、さらに10年の経過により肝細胞癌へと進展するとされている。 (乙統3(125頁)、5(942、960頁)、6(20頁)、8(39頁)、223(37、40頁)、弁論の全趣旨)イ検査方法 ウイルス肝炎の病態に必要な検査方法のうち、代表的なものは、次のと おりである。 C型肝炎ウイルスマー 頁)、223(37、40頁)、弁論の全趣旨)イ検査方法 ウイルス肝炎の病態に必要な検査方法のうち、代表的なものは、次のと おりである。 C型肝炎ウイルスマーカー①現在の感染のみならず、過去の感染においても低抗体価で陽性を示すHCV抗体検査、②検査時点でのウイルス量を反映するHCV-RNA検査、③HCVコア抗原検査、④ウイルス型検査等が存在する。 血液生化学検査血清トランスアミナーゼ(AST(GOT)、ALT(GPT))等病理学的検査(肝生検)画像検査(超音波、CT)(乙統3(25ないし27、60、66頁)、221(45、54頁)、 弁論の全趣旨)ウ治療方法C型肝炎の治療方法は、肝炎の活動度(肝細胞破壊の速度)、病期の進展度(肝線維化の程度)、末梢血中のHCV量及び型(セロタイプ又はジェノタイプ)、年齢、全身状態などを基に、総合的に判断して決定される。 一般的には、抗ウイルス療法(インターフェロン治療、インターフェロンとリバビリンの併用による治療)により、HCVを駆除し、完全治癒を図ることが第1の選択肢となる。総合的に判断して、抗ウイルス療法の適応がないと考えられる場合や、抗ウイルス療法を行っても効果がなかった場合には、抗炎症療法(強力ネオミノファーゲンCの静注やウルソデオキ シコール酸の内服など)選択する。 上記選択肢の対象とはならず、肝発がんのリスクが高い状態にまで進展している場合には、肝庇護療法によるとともに、画像診断、腫瘍マーカーを用いた定期的な検査による肝がんの早期発見、早期治療を行う。 (乙統2(27頁)、弁論の全趣旨) エ C型肝炎ウイルス持続感染者の具体的な病態は、主として次のとおりで ーカーを用いた定期的な検査による肝がんの早期発見、早期治療を行う。 (乙統2(27頁)、弁論の全趣旨) エ C型肝炎ウイルス持続感染者の具体的な病態は、主として次のとおりで ある。 無症候性キャリア無症候性キャリアとは、肝炎ウイルスが持続感染しているが、肝機能検査、特に血清トランスアミナーゼ(AST、ALT)が持続的に正常である者をいう。血清トランスアミナーゼの基準値は、多くの検査施設 において、30から40IU/ℓと設定されている。一般に、C型肝炎ウイルス血症を有し(血清HCV-RNAが陽性)、かつ、1年間以上持続的に血清トランスアミナーゼが正常値(基準値)を維持する者が無症候性キャリアに当たるとされる。無症候性キャリアの多くは一定の肝障害を有しているが、その炎症や線維化の程度はごく軽度である。(乙 統8(78、80、81頁)) 慢性C型肝炎慢性C型肝炎は、C型肝炎ウイルスの持続感染により惹起される、持続する肝臓の炎症である。平成8年に日本肝臓学会の犬山シンポジウムで発表された「新犬山分類」によれば、慢性肝炎は、臨床的には、6か 月以上の肝機能検査値(AST(GOT)、ALT(GPT))の異常とウイルス感染が持続している病態をいい、組織学的には、門脈域にリンパ球を主体とした細胞浸潤と線維化を認め、肝実質内には種々の程度の肝細胞の変性・壊死所見を認めるものと定義される。 新犬山分類では、組織所見において、線維化と壊死・炎症所見を反映 させ、線維化と活動性の各段階に応じた分類を行っており、線維化の程度については、門脈域より線維化が進展し小葉が改築され肝硬変へ進展する過程で、線維化なし(F0)、門脈域の線維性拡大(F1)、線維性架橋形成(F2)、 性の各段階に応じた分類を行っており、線維化の程度については、門脈域より線維化が進展し小葉が改築され肝硬変へ進展する過程で、線維化なし(F0)、門脈域の線維性拡大(F1)、線維性架橋形成(F2)、小葉のひずみを伴う線維性架橋形成(F3)までの4段階に区分する。さらに、結節形成傾向が全体に認められる場合に は、肝硬変(F4)と分類する。 (乙統5(960頁)、255(15、16頁))肝硬変肝硬変は、肝臓全体に線維化と結節形成が認められる病態であり、臨床的には、非代償性(肝障害が進行し、肝性脳症や黄疸、腹水、低アルブミン、出血傾向などの臨床所見及び症状が出現した病態)と代償性肝 硬変(上記臨床所見及び症状が出現しておらず、肝予備能が比較的保たれている病態)とに分けられる。肝不全徴候を認める非代償性肝硬変は特徴ある身体所見と検査成績によって診断が比較的容易であるが、自覚症状が少なく、特異的な診断マーカーもない代償性肝硬変では、慢性肝炎との鑑別が困難な場合があり、病歴、検査成績、画像検査所見などを 総合的に評価して診断する。 肝硬変の成因には、ウイルス性肝炎のほか、アルコール性、自己免疫性、胆汁うっ滞型、代謝性、うっ血性、薬物性、特殊な感染症、非アルコール性脂肪肝炎が指摘されているほか、原因不明の症例もあるが、成因によらず、慢性肝障害の終末像として同様の病態を示す。平成11年 から同20年までの肝硬変の成因別頻度は、全体の60.2%がC型肝炎である。 (乙統5(967ないし969頁)、261(40、41、43頁)) 肝がん(肝細胞癌)肝がんは、肝細胞由来の上皮性悪性腫瘍である。日本の肝細胞癌の約 70%をC型慢性肝炎患者が占め ないし969頁)、261(40、41、43頁)) 肝がん(肝細胞癌)肝がんは、肝細胞由来の上皮性悪性腫瘍である。日本の肝細胞癌の約 70%をC型慢性肝炎患者が占める。HCV感染による発がんは線維化のステージと相関しており、最も軽微なF0及びF1では年率0ないし0.5%、F2で1ないし2%、F3で4ないし5%、F4(肝硬変)では約6~7%で発がんすると報告されている。 病初期の肝細胞癌は全くの無症状であるが、随伴する肝硬変の症状と してくも状血管腫、手掌紅斑、黄疸、腹水、肝性脳症などが認められる ことがある。肝細胞癌により死亡する場合の死因は、癌が肝の大部分を占拠することによる肝不全、癌破裂に伴う大量出血、門脈内腫瘍塞栓による静脈瘤破裂、肺転移による呼吸不全などである。 肝細胞癌の診断は、各種画像検査(腹部超音波検査、CT検査、MRI検査、血管造影検査など)を中心に行われ、腫瘍マーカーが補助的に 使用される。 (乙統5(990ないし992頁)、9(10頁))オ感染経路C型肝炎ウイルス(HCV)は、主としてHCVに感染しているヒトの血液が、何らかの経路で被感染者の血液中に入ることより感染が生じる。 具体的な感染経路としては、主要な感染経路である輸血のほか、血液製剤、移植、汚染注射針の再利用、透析、手術時の感染事故、針事故、観血的民間医療、歯科治療時の感染事故、家族内感染など様々な可能性が指摘されており、感染原因が特定されない症例も相当数あると報告されている(乙統2(1、15頁)、218(722頁)、221(89頁))。 カ輸血による感染日本では、平成元年11月頃から輸血用血液のスクリーニングにC型肝炎ウイルスの検査が取り入れられ、その後平成 2(1、15頁)、218(722頁)、221(89頁))。 カ輸血による感染日本では、平成元年11月頃から輸血用血液のスクリーニングにC型肝炎ウイルスの検査が取り入れられ、その後平成4年2月には検査法の改良も行われた。日本での輸血後肝炎の発症率は、昭和30年代後半までの売血時代には約50.9%であったが、献血推進が閣議決定された昭和39 年以降減少し、昭和42年には約31.1%、献血に一本化された昭和47年までには約16.2%まで減少したと報告されている。 また、輸血後C型肝炎(ただし、昭和63年以前は非A非B型肝炎)発症率については、昭和55年から昭和60年にかけては約16.1%、昭和62年から平成元年にかけては約7.7%、平成2年には約2.1パー セント、平成6年には約0.3%であったと報告されている。 (乙統2(17頁)、218(723頁)、230(165、166頁)、弁論の全趣旨)⑵ 特定フィブリノゲン製剤についてアフィブリノゲン製剤の概要フィブリノゲン製剤は、血液の血漿成分から血液凝固第Ⅰ因子であるフ ィブリノゲンを分画精製した血液凝固因子製剤であり、昭和39年6月9日に製造承認され、昭和40年11月1日に人血漿フィブリノーゲン(乾燥)として薬価収載されたものである。 血液製剤とは、輸血療法(血液成分の欠乏又は機能低下により臨床上問題となる病態に対して、人体由来の当該成分を治療用血液として補充して その改善を図る補充療法)に用いられる医薬品である。血液の成分は、血漿(液体成分)と血球(有形成分)で構成されており、血球成分は、赤血球、白血球及び血小板から成る。血液製剤は、血液中のすべての成分を含む全血製剤(保存血液、新鮮血液)、血液中の特定の成分ごとに分離した 液体成分)と血球(有形成分)で構成されており、血球成分は、赤血球、白血球及び血小板から成る。血液製剤は、血液中のすべての成分を含む全血製剤(保存血液、新鮮血液)、血液中の特定の成分ごとに分離した血液成分製剤(赤血球製剤、血小板製剤、血漿製剤)、血漿中の各種たん ぱく質を変質させることなく物理的、化学的に分画精製した血漿分画製剤に大別されるところ、血漿分画製剤のうち、血液凝固因子を種類ごとに血漿から分画精製したものが血液凝固因子製剤である。 (乙統12(21、25ないし34頁)、13(120頁)、16、236、弁論の全趣旨) イ人体の止血機構とフィブリノゲン止血は血管損傷に際して血液が血管外へ失われるのを防ぐ重要な生体防衛反応であり、人体の止血機序は次のとおりである(乙統76(702ないし706頁))。 血管が損傷し出血すると、まず、局所の血管収縮が生じ、流血中の血 小板が血管壁に露出した内皮下組織に速やかに粘着、凝集して血小板血 栓(一次止血栓)を形成する(一次止血)。 次いで、血液が組織液と混ざり合うことにより、血中に含まれる凝固因子が活性化される。一つの因子が活性化されるとその因子が酵素となって次の因子を基質として活性化させる反応が連鎖的に進むことにより、トロンビンが大量に生成されると、トロンビンが血小板をさらに強力に 凝集させると同時に、血液凝固因子の一つであるフィブリノゲンをフィブリンに転換させる(血液凝固反応)。フィブリン同士が結合してフィブリン網を形成すると、フィブリン網が一次止血栓を取り巻いて補強、維持し(二次止血栓の形成)、止血を完了する(二次止血)。 最後に、形成された止血栓は、血管損傷の修復とともに数日後には線 維素溶解現象により融解、吸収され 網が一次止血栓を取り巻いて補強、維持し(二次止血栓の形成)、止血を完了する(二次止血)。 最後に、形成された止血栓は、血管損傷の修復とともに数日後には線 維素溶解現象により融解、吸収される。 ウ低フィブリノゲン血症フィブリノゲンは主に肝臓で生成され、健康人の血漿成分の1㎗中に、通常、200ないし400㎎含まれているところ、このフィブリノゲンの濃度が低下する病態を低フィブリノゲン血症といい、概ね血液中の血漿成 分の1㎗当たり100㎎以下になると、重篤な出血傾向を来たし得る。 先天性の欠乏症として、無フィブリノゲン血症、狭義の低フィブリノゲン血症、異常フィブリノゲン血症などがあり、後天性の欠乏症としては、DIC(播種性血管内凝固症候群)、産後の大出血や重傷外傷に起因して血漿中のフィブリノゲン濃度が低下する場合などがある。 産科臨床上、低フィブリノゲン血症が出現する主な疾患は、常位胎盤早期剥離、子宮内死亡胎児の長期残留、羊水塞栓、子宮破裂、流産時の子宮内容除去術、子宮外妊娠中絶、帝王切開術、胎盤用手剥離術、異型血輸血時、前置胎盤などであり、最も多いものは常位胎盤早期剥離、子宮内死亡胎児の長期残留、羊水塞栓である。 (乙統29(7頁)、30(754、897ないし899頁)、93(2 92頁))エ DIC(播種性血管内凝固症候群) DICは、基礎疾患の存在を背景に、何らかの誘因により血管内でトロンビン生成が起こり、血液凝固系の亢進により細小血管内で微小血栓が形成され、それに伴い、二次的に線溶系の活性化が出現する病態を指 す。これらの過程で全身の、主に細小血管内に血栓が多発し、凝固・線溶因子、血小板が消費され、消耗性凝固障害に基づく特徴的な出血傾向を呈する。 に伴い、二次的に線溶系の活性化が出現する病態を指 す。これらの過程で全身の、主に細小血管内に血栓が多発し、凝固・線溶因子、血小板が消費され、消耗性凝固障害に基づく特徴的な出血傾向を呈する。 DICは、上記のとおり、必ず基礎疾患が存在し、その上に進展する病態であり、特発性のDICと称するものは存在しない。 (乙統100(245頁)、104(1頁)、149(231頁)) DICの基礎疾患は、感染症、ショック、悪性腫瘍、産科的疾患、血管内溶血、組織損傷(大手術後、広範囲の外傷、広範囲の熱傷)、血管病変などに大別されるが、DICを発症する疾患は様々であり、内科・外科・小児科・産婦人科のいずれの領域にも症例は存在する。 このうち、産科領域に関しては、平成15年5月刊行の「産科疾患とDIC(綜合臨牀第52巻第5号)」において、寺尾俊彦教授が、DICの基礎疾患として、①常位胎盤早期剥離、②羊水塞栓症、③DIC型後産期出血、④HELLP症候群、⑤妊娠性急性脂肪肝、⑥重症妊娠中毒症・子癇、⑦死児稽留症候群、⑧敗血症性流産、⑨産褥性敗血症、⑩ 不適合輸血、⑪重症ショック、⑫悪性腫瘍末期を挙げている。 また、昭和55年9月刊行の「産科学入門(第5版)のDICの項では、DICの誘因となる重要な産科疾患として、常位胎盤早期剥離、子宮内死亡胎児の長期残留、羊水塞栓、子宮破裂、流産時の子宮内容除去術、子宮外妊娠中絶、帝王切開術、胎盤用手剥離術、異型血輸血、前置 胎盤、手術侵襲、敗血症などが挙げられており、そのうち最も多いもの は胎盤早期剥離であるとされている。 (乙統97(255頁)、100(246頁)、155(1743頁)、弁論の全趣旨) DICの診断について、 ち最も多いもの は胎盤早期剥離であるとされている。 (乙統97(255頁)、100(246頁)、155(1743頁)、弁論の全趣旨) DICの診断について、症状や検査所見は基礎疾患や病態により異なることもあることから、DICの診断においても、基礎疾患の存在、臨 床症状や血液凝固学的検査所見から総合的になされるべきものであり、決して画一的に考えるべきものではないとされている。 昭和55年、旧厚生省の血液凝固異常症調査研究班は、基礎疾患、臨床症状(出血症状、臓器症状)、検査成績(血清FDP、血小板数、血漿フィブリノゲン、プロトロンビン時間)の各項目について重要度に応 じた点数を割り振り、合計点数によりDICの可能性を診断する基準(以下「厚生省DICスコア」という。)を作成し、昭和63年に診断のための補助的検査成績を加えた改訂版を作成した。 また、寺尾俊彦教授及び真木正博教授は、昭和61年、産科DICの多くが急性であることや、産科DICでは血小板数が大きく低下しない 場合も少なくないことなどにかんがみ、旧厚生省の上記基準について、臨床的事項を重視する一方で検査成績を過大視しないよう項目、点数を調整した診断基準(以下「産科DICスコア」といい、厚生省DICスコアと併せて「DICスコア」という。)を提唱した。 厚生省DICスコア及び産科DICスコアについては、別紙4のとお りである。 (乙統105(221ないし224頁)、155(1746頁)、199(247頁)、200、弁論の全趣旨)オ特定フィブリノゲン製剤の概要特措法2条1項1号に規定する特定フィブリノゲン製剤は、①フィブリ ノーゲン-BBank(昭和39年6月9日製造承認)、 247頁)、200、弁論の全趣旨)オ特定フィブリノゲン製剤の概要特措法2条1項1号に規定する特定フィブリノゲン製剤は、①フィブリ ノーゲン-BBank(昭和39年6月9日製造承認)、②フィブリノー ゲン-ミドリ(昭和39年10月24日製造承認)、③フィブリノゲン-ミドリ(昭和51年4月30日製造承認)及び④フィブリノゲンHT-ミドリ(昭和62年4月30日製造承認。ただし、特措法2条1項1号に該当するのは、ウイルスを不活化するために乾燥加熱処理のみを行ったものに限る。)である(乙統16ないし23、236、特措法2条1項。以下、 ①ないし③を併せて「非加熱製剤」といい、④を「加熱製剤」ということがある。)。 カ特定フィブリノゲン製剤の製造方法フィブリノゲン製剤は、凍結された多数の供血者の血漿(500ℓから2000ℓ)を低温融解してプールした後、エタノール分画を行い、 得られた画分Ⅰを1ロット(中間ロット)として、一旦凍結保存する。 その後、複数のロットを再度融解し、エタノールによる洗浄を2回行い精製したものに、ウイルス不活化処理を行い、最終バルクからバイアルへ分注し、これを凍結乾燥する方法により、製造されていた。 フィブリノゲン製剤に用いられた血漿は、平成5年9月30日製造以 降のロットで国内献血に切り替えられるまでは、海外企業から輸入した売血由来の原料血漿が用いられていた。 (乙統16ないし23、188(資料2-⑷-2ないし18)、196(249頁)、弁論の全趣旨)ウイルス不活化処理の方法の変遷は、次のとおりである。 a 昭和39年(製造承認時)から昭和40年10月頃まで紫外線照射処理のみb 昭和40年11月頃から昭和60年8月7日製造分まで紫外線照 活化処理の方法の変遷は、次のとおりである。 a 昭和39年(製造承認時)から昭和40年10月頃まで紫外線照射処理のみb 昭和40年11月頃から昭和60年8月7日製造分まで紫外線照射及びβプロピオラクトン処理c 昭和60年8月21日製造分から昭和62年2月20日製造分まで 紫外線照射及び抗HBsグロブリン添加処理 d 昭和62年3月31日製造分から平成6年6月16日製造分まで60℃96時間の乾燥加熱処理なお、ミドリ十字は、平成6年12月、原料血漿を国内献血由来とし、ウイルス不活化処理として乾燥加熱処理に加え、SD処理(有機溶媒と界面活性剤によりウイルスの表面の脂質を溶解し不活化する処 理)を行った新しい「フィブリノゲン-HTミドリ」を発売したが、当該製剤は特措法2条1項1号が定める特定フィブリノゲン製剤に当たらない。 (乙統16ないし23、196(252頁)、弁論の全趣旨)キ特定フィブリノゲン製剤の用法、用量及び使用期間等 特定フィブリノゲン製剤は、いずれも効能及び効果を低フィブリノゲン血症の治療として製造承認されていた(乙統16ないし23)。 添付文書の記載昭和60年8月改訂前の添付文書では、特定フィブリノゲン製剤の臨床応用として「フィブリノゲン(又はフィブリノーゲン)欠乏症による 胎盤早期剥離」や「広範囲の外科的処置」、「先天性又は後天性慢性低フィブリノゲン血症」が挙げられている。昭和60年8月全面改訂以降の添付文書においては、「広範囲の外科的侵襲時や常位胎盤早期剥離、羊水塞栓などに起因する大出血、さらにDICなどで観察される低フィブリノゲン血症の是正に使用される」とあり、昭和62年5月作成の添 付文書からは、「先天性低フィブリノゲン血症(機 盤早期剥離、羊水塞栓などに起因する大出血、さらにDICなどで観察される低フィブリノゲン血症の是正に使用される」とあり、昭和62年5月作成の添 付文書からは、「先天性低フィブリノゲン血症(機能異常症を含む)等、フィブリノゲン値が著しく低下している患者の是正に使用される」と記載されていた。 特定フィブリノゲン製剤の用法及び用量としては、添付文書上、同製剤を注射用蒸留水に溶解し、瓶に輸血セットの瓶針を差し込み、適当な 高さに吊り下げて患者の静脈に刺入して使用する方法(以下「静注」と いう。)により投与し、通常1回3ないし8ℊ(1バイアルに含まれるフィブリノゲンは1ℊである。)を用いるが、症状により患者の血漿フィブリノゲン値が正常となるまで反復するものとされていた。 特定フィブリノゲン製剤は、いずれも10℃以下の温度で保存しなければならず、有効期間は倉出しの日(昭和46年11月発行以降の添付 文書上は検定合格の日から)3年間であった。 (乙統31ないし57、弁論の全趣旨)クフィブリン糊としての使用フィブリン糊は、フィブリノゲン製剤にトロンビンなどの複数の薬剤を配合して糊状にし、その組織接着作用を利用して、出血創傷面の閉鎖、 骨折片の固定、末梢神経又は微小血管の吻合、腱接着又は腱縫合の補強、実質臓器の創傷部の接着などに臨床使用するものである。 具体的な調製方法としては、フィブリノゲン製剤の注射用蒸留水で溶解した溶液(A液)と、トロンビン製剤に注射用蒸留水、アプロニチン及び塩化カルシウムを混合した溶解トロンビン液(B液)を準備する。 そして、使用方法としては、接着面にA液を最初に塗布しておいて、その上からB液を塗布する方法(重層法)と、接着面にA液とB液を予め容器の中で混ぜておき、これ トロンビン液(B液)を準備する。 そして、使用方法としては、接着面にA液を最初に塗布しておいて、その上からB液を塗布する方法(重層法)と、接着面にA液とB液を予め容器の中で混ぜておき、これを直ちに組織に塗布する方法(混合法)がある。なお、上記キのとおり、薬事法上承認を受けたフィブリノゲン製剤の効能及び効果は低フィブリノゲン血症の治療であり、かつ、承認を 受けた用法は注射用蒸留水に溶解し静脈内に注入するもの(静注)であるから、フィブリン糊としての使用は適応外使用に該当する。 (乙統177、196、弁論の全趣旨)フィブリン糊は、昭和55年には、当時の西ドイツにおいて、キット製剤が市販されており、広く臨床の場でその有用性、安全性が認められ つつあった。このような情報を把握した当時のミドリ十字は、キット製 剤の開発を進めるべく直ちに基礎的研究を開始し、昭和56年6月12日、その成果を「手術用接着剤としてのヒト・フィブリン糊の研究」として日本輸血学会で報告した。また、ミドリ十字は、臨床医師を集めてフィブリン糊研究会を組織し、同年11月1日には、第1回フィブリン糊研究会を開催するなどした。フィブリン糊研究会は、昭和57年10 月30日には第2回研究会が開催されたものの、その後、ミドリ十字において、特定フィブリノゲン製剤によるC型肝炎発症防止のための加熱処理製剤開発の大幅な遅れや、各製剤を組み合わせたキットによる製造承認取得が困難視されていることなどを理由にキットの開発中断が決定されると、フィブリン糊研究会の開催も中止された。 (乙統174(683、684頁))ヘキスト社及び日本臓器社は、昭和63年4月、フィブリン糊キット製剤(ベリプラストP、ティシール)を発売した。上記キット製剤は、 催も中止された。 (乙統174(683、684頁))ヘキスト社及び日本臓器社は、昭和63年4月、フィブリン糊キット製剤(ベリプラストP、ティシール)を発売した。上記キット製剤は、組織の接着・閉鎖を効能効果とし、同製剤のフィブリン糊としての使用は、保険適応となる適応使用であった。 ミドリ十字は、上記2社のフィブリン糊キット製品が市場に潤沢に出回ったと判断した同年7月、過去のフィブリン糊研究会参加者に対し、フィブリノゲンHT-ミドリは、安全性に大きな問題があることが判明したことなどを受け、他に代替品のないごく限られた症例分以外には供給を中止することを説明の上、同製剤によるウイルス対策が早期確立さ れるまでの間、同製剤の代替品として、上記2社のフィブリン糊キット製剤を利用するよう依頼する内容の挨拶状を配布した。 (乙統174(685、792頁)、175、176)⑶ 特定フィブリノゲン製剤の使用実態等ア特定フィブリノゲン製剤の製造本数 薬害肝炎の検証及び再発防止に関する研究班が平成21年3月27日に 作成した「薬害肝炎の検証及び再発防止に関する研究中間報告書」(以下「中間報告書」という。)によれば、特定フィブリノゲン製剤の製造本数は、概数、次のとおりである。 昭和39年 539本昭和40年 13135本昭和41年 12387本昭和42年 23692本 昭和43年 23603本昭和44年 22410本昭和45年 33115本昭和46年 35581本昭和47年 47384本昭和48年 49742本昭和49年 56323本昭和50年 63046本昭和51年 57619本昭和52年 88980本 昭和53年 484 本昭和47年 47384本昭和48年 49742本昭和49年 56323本昭和50年 63046本昭和51年 57619本昭和52年 88980本 昭和53年 48491本昭和54年 47302本昭和55年 63811本昭和56年 65290本昭和57年 57271本昭和58年 79118本昭和59年 90299本昭和60年 63166本昭和61年 84464本昭和62年 80975本 昭和63年 13627本平成元年 4554本(乙統196(69ないし72頁))イ使用実態に関するアンケートフィブリノゲン製剤の納入及び使用が確認された医療機関につき、どのような診療科においてどのような症状に用いられていたかなどに関するウ ェルファイド社(ミドリ十字の債務を承継した会社)による医療機関にするアンケート調査によると、フィブリノゲン製剤を静注で使用した診療科としては、産婦人科領域(産婦人科、産科、婦人科)が最も多かった。産婦人科における静注での使用対象疾患としては、アンケート回収枚数608枚のうち、胎盤早期剥離・膣壁裂傷などの産中・産後の出血が499件、 DICが70件、低フィブリノゲン血症が28件、卵巣がん・子宮がん等 の手術時が12件、先天性フィブリノゲン血症6件であった。(乙統197)ウ学会への照会(乙統196(441、442頁))厚生労働省医薬局は、平成14年5月23日、各診療科領域におけるフィブリノゲン製剤の使用実態について、各学会に照会を行った。 社団法人日本産科婦人科学会は、上記に対し、「分娩周辺期には時に大量の出血が発生することがあり、適切な治療が施されない場合には、DICに進展す の使用実態について、各学会に照会を行った。 社団法人日本産科婦人科学会は、上記に対し、「分娩周辺期には時に大量の出血が発生することがあり、適切な治療が施されない場合には、DICに進展する可能性が高く、その結果母体死亡に至ることが稀ではありませんでした。その場合の治療としては、出血の原因を取り除くことと、出血に伴って失われたものを補充する治療があり、出血により起 こった低フィブリノーゲン血症に対する補充療法としてフィブリノーゲン製剤の投与が当時行われておりました。」、「フィブリノーゲンの単独投与はむしろ少ないと考えられますが、常備不能である新鮮血や新鮮凍結血漿、クリオプレシピテートを低フィブリノーゲン血症に当初から使用するには、当時の供給体制では困難であった施設、地域があったこ とも事実であり、常備可能なフィブリノーゲン製剤を緊急時救命の目的にて使用していたと考えております。しかしながら、その使用量に関するデータはありません。」、「また、使用方法に関するガイドラインというものは無く、旧ミドリ十字からの添付文書に従うことを原則としておりました。」、「昭和62年当時の医療の水準では、DICの治療に おいては補充療法としてフィブリノーゲン製剤が有効であるとの考え方が一般的でした。」などと回答した。 社団法人日本産婦人科医会は、上記の照会に対し、「昭和52年頃までは、産科ではDICの補充療法としてフィブリノゲン輸注の必要性が強調されていました。その理由は、現在DICとして取り扱われてい る症候群が、かっては産科的低線維素原血症と呼ばれ、フィブリノゲン の低下のみが注目されていたからです。その後、DICが起こるとフィブリノゲンのみならず血小板や他の凝固因子も低下することが多いということが 科的低線維素原血症と呼ばれ、フィブリノゲン の低下のみが注目されていたからです。その後、DICが起こるとフィブリノゲンのみならず血小板や他の凝固因子も低下することが多いということが明らかにされ、補充療法としては単にフィブリノゲンのみの補充よりも新鮮血や新鮮凍結血漿(FFP)を輸注した方が良いとされるようになりました。ただし、フィブリノゲンが著明に低下していて、か つそれを輸血だけで補充すると大量の輸血によって赤血球過剰状態となりDICを悪化させることが懸念される場合や緊急手術を要する場合には、フィブリノゲン製剤を用います。」などと回答した。 エ医学文献の記載産科領域における低フィブリノゲン血症の診断要素に関し、当時の一般 的な治療指針を示す医学文献には、次の記載が見られる。 「血液の凝固性が欠如した頑固な出血があれば無フィブリノーゲン血症を考慮して、直ちに血液凝固時間の測定を行なう。もし凝血が37℃、5~6分で起り、そのまま37℃15分間おいて凝血が固形をとどめるならば、重篤な線維素溶解現象は除外できる。さらに、 Fibrinogentitertest を行なえば、病像の程度を判定するのに便利である。」(昭和43年刊行「最新産科学異常篇改訂第14版」64頁)「他に原因なく水のように出血する時は低線維素原血症とみてフィブリノゲンを開封溶解して静注する。採血して試験管内に放置してみれば診断容易。」(昭和49年版「今日の治療指針」471頁。乙統111) 低フィブリノゲン血症が続発しうると考えられる子宮胎盤溢血や稽留流産の場合には、「一定時間の間隔をおいて血液凝固時間を測り、これの延長を認めたならばフィブリノーゲンを補給し新鮮血液を大量に輸血する」(昭和51年刊行「最 続発しうると考えられる子宮胎盤溢血や稽留流産の場合には、「一定時間の間隔をおいて血液凝固時間を測り、これの延長を認めたならばフィブリノーゲンを補給し新鮮血液を大量に輸血する」(昭和51年刊行「最新産科学異常編改訂第17版」249頁)「出血傾向がみられ、赤沈値5-15㎜/時間以下、出血時間5-1 0分以上となれば、血小板数10-15万/㎣以下、血中フィブリノゲ ン100-150㎎/㎗以下、FDP40-80㎍/㎖以上を確かめDICを診断して、新鮮血輸血、フィブリノゲン製剤4-8ℊ、トラジロール30万単位/6-8時間などを投与する。」(昭和57年版「今日の治療指針」633頁。乙統122))⑷ 特定フィブリノゲン製剤の使用による肝炎リスクの周知 ア添付文書の記載特定フィブリノゲン製剤の添付文書上、同製剤の使用に伴う肝炎の発症リスクに関する注意書きは次のとおり変遷している。 昭和38年2月発行「フィブリノーゲンBBankは紫外線照射を施してあるが、この方 法による滅菌は必ずしも全ヴイールス一万一原血漿中に同種血清肝炎ヴイールスの接触汚染があつたとしたらそのヴイールスをも含む一の完全不活性化を信頼することが出来ない。」との記載がある(乙統31(4頁))。 昭和40年11月発行(同41年12月発行、同43年6月発行) 昭和40年11月発行の添付文書には、「フィブリノーゲン注射による血清肝炎」として「血清肝炎という世界的に未解決な大問題に対し、ミドリ十字は研究、努力を傾注し、フィブリノーゲンミドリにもβプロピオ・ラクトンの処理並びに紫外線照射により殺ウイルス処置を加えて、血清肝炎予防に最善を尽しているが、現段階ではウイルスの完全不活性 化を保証すること 傾注し、フィブリノーゲンミドリにもβプロピオ・ラクトンの処理並びに紫外線照射により殺ウイルス処置を加えて、血清肝炎予防に最善を尽しているが、現段階ではウイルスの完全不活性 化を保証することはできない。」と記載されていた。 その後、昭和41年12月発行の添付文書では、上記記載の直後に「しかし、AndersonによればCohnの低温エタノール分画法によつて製造し、紫外線照射を施したものは肝炎発症率は極めて小さく、また、罹患してもその症状は重篤でないことが報告されている。」と加 筆され、昭和43年6月の添付文書では、さらに「フィブリノーゲンミ ドリでは1966年(昭和41年)1月から、各包装ごとにアンケート回答ハガキを同封し、使用医師の調査協力を求め、1967年(昭和42年)10月終まで22カ月間に30、330瓶を供給したところ、僅かに2例の黄疸(肝炎)発生の告知を受けただけであった。フィブリノーゲンミドリを使用された多くの医師において、本品の使用による肝炎 発生は経験されていない。」と付け加えられている。 (乙統33(5頁)、34(5頁)、35(5頁)) 昭和49年5月発行一般的注意として「本剤の使用により、まれに血清肝炎に罹患することがある。」と記載されている(乙統39(2頁))。 昭和52年9月発行(昭和60年8月改訂)昭和52年9月発行の添付文書では、一般的注意として「血清肝炎等の肝障害があらわれることがあるので観察を十分に行うこと。アメリカにおいては本剤の使用により、15~20%の急性肝炎の発症があるとの報告があり、使用の決定に際しては患者のリスク負担と投与によって 受ける治療上の利益とを秤量すべきであるとされている。」と記載されてい 本剤の使用により、15~20%の急性肝炎の発症があるとの報告があり、使用の決定に際しては患者のリスク負担と投与によって 受ける治療上の利益とを秤量すべきであるとされている。」と記載されていたが、昭和60年8月改訂では、上記「アメリカにおいては」の記載が削除されている(乙統42(2頁)、47(1頁))。 昭和62年5月発行一般的注意として「肝炎等の血液を介して伝播するウイルス疾患が知 られているので、使用に際しては必要最小限の投与とし十分な観察を行うこと。使用の決定に際しては、患者のリスク負担と投与によって受ける治療上の利益を考慮すること。」と記載されている(乙統49(1頁))。 昭和63年6月改訂 文書冒頭に「非A非B型肝炎が報告されているので、本剤の使用に当 たっては、適応を十分に考慮するとともに、投与は必要最小限とし、十分な観察を行うこと。」と記載されている(乙統53(1頁))。 イ集団感染とミドリ十字の対応等昭和62年1月、青森県三沢市の産婦人科医院から旧厚生省薬務局安全課に対し、フィブリノゲン製剤を投与した8例中7例で、肝炎が発生 した旨の電話連絡があり、その後、青森県の市立病院から3例の肝炎発生が報告された。これを受け、旧厚生省は、ミドリ十字に対し、同年3月26日、青森県での肝炎集団発生に関連して全国調査の実施を指示した。旧厚生省は、同年4月9日にもミドリ十字に対し、早急に調査し報告するよう強く指導するとともに、加熱製剤への切替えを急ぐよう指示 した。 ミドリ十字は、非加熱製剤の出荷を同年4月9日に停止した上、同月20日以降に非加熱製剤の納入先医療機関及び卸売業者を訪問し、非加熱製剤の販売を中止して未使用のものについては回収すること及び した。 ミドリ十字は、非加熱製剤の出荷を同年4月9日に停止した上、同月20日以降に非加熱製剤の納入先医療機関及び卸売業者を訪問し、非加熱製剤の販売を中止して未使用のものについては回収すること及び緊急時の出血に対応するために代替品として加熱製剤の治験品を提供するこ とを記載した説明文書を配布し、可能な限り非加熱製剤の回収を行った。 上記集団感染の事実は、昭和62年4月以降、新聞各紙で報道された。 (乙統29(20ないし21頁)、180、181、196(2頁)、丙C23002ないし06)ミドリ十字は、昭和63年2月、納入先医療機関に対し、「謹告」と 冠して「フィブリノゲンHT-ミドリ使用に際してのお願い」と題する書面を配布した。同書面では、冒頭に「フィブリノゲンHT-ミドリには肝炎発症の可能性があります。」と記載されており、同剤には非A非B型肝炎発症の可能性があるため、使用に当たってはその使用が治療上必要不可欠であることを患者の肝炎発症のリスクと同剤による治療上の 必要性において十二分に考慮の上、使用の可否を決定するよう求めた。 (乙統185別添資料、弁論の全趣旨)旧厚生省は、昭和63年6月2日、ミドリ十字に対し、フィブリノゲン製剤の添付文書の改訂および緊急安全性情報配布の指示を行い、これを受けたミドリ十字は、同月6日から乾燥加熱製剤の全納入医療機関に対する緊急安全性情報の配布を開始し、ミドリ十字の医薬情報担当者か らフィブリノゲンHT-ミドリの口座を有する医療機関2428施設に同月23日までに配布を完了した。 上記緊急安全性情報における周知内容は、フィブリノゲンHT-ミドリの投与によると疑われる非A非B型肝炎の発症例が確認されたこと、先天性低フィブリノゲン血症等のフィブリノゲンが著 布を完了した。 上記緊急安全性情報における周知内容は、フィブリノゲンHT-ミドリの投与によると疑われる非A非B型肝炎の発症例が確認されたこと、先天性低フィブリノゲン血症等のフィブリノゲンが著しく低下している 場合に限って同製剤を使用すべきであること、同製剤の使用決定に際しては添付文書の記載に留意の上、患者治療上有益か否かを十分考慮の上、やむを得ない場合にのみ必要最小限量を使用してほしいことなどである。 同時に、ミドリ十字は、緊急最小必要数を除く不要不急の製品在庫について返品依頼を実施し、当時の納入先医療機関全1381機関のうち の671機関からの返品を完了させた。これにより全在庫数6199バイアルのうちの2557バイアルの返品が完了したが、その余の710機関の在庫3642バイアルは未返品であった。そのうちには、緊急時の必要性などの理由で返品に応じない医療機関も存在した。 (乙統171、172、187、弁論の全趣旨) ⑸ 個別の原告に関する判断の前提事実は、別紙個1ないし6の「第1事案の概要等」のうちの「2前提事実」に各記載のとおりである。 3 特措法の定め別紙3記載のとおり。特措法上、給付金の支給を受けるためには、その者が①特定C型肝炎ウイルス感染者(特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第 Ⅸ因子製剤の投与(獲得性の傷病に係る投与に限る。)を受けたことによって C型肝炎ウイルスに感染した者及びその者の体内又は産道においてC型肝炎ウイルスに感染した者。2条3項)であって、②6条1号、2号又は3号に該当することが確定判決等で確定される必要がある(4条)。 第3 争点及び争点に関する当事者の主張 1 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、低フィブリノゲ 、②6条1号、2号又は3号に該当することが確定判決等で確定される必要がある(4条)。 第3 争点及び争点に関する当事者の主張 1 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、低フィブリノゲン血 症又は、低フィブリノゲン血症の要因となるDICの治療若しくは予防の必要があったと認められる必要があるか(原告らの主張)⑴ 本訴訟で証人尋問を行った産科医、助産師及び外科医の証言から、フィブリノゲン製剤を投与するかどうかの判断基準は、第1に出血量、第2に出血 傾向、第3に目視による血液の性状(さらさらであるか、動脈血かなど)であることがわかる。血液の凝固検査を行うと答えた医師についても、その証言からは、結局のところ、上記3つの基準で判断していると考えられる。血液の凝固検査を挙げた医師も、耳たぶを針で突いて出血時間を図るという簡易な方法を採っていたと証言している。3名の外科医は、そもそも低フィブ リノゲン血症やDICに至っていたかという問題意識を持っていたかどうかすら不明である。 また、DICスコアについては、産科DICスコアを使用ないしこれと同様の方法によりDICを診断していたことをうかがわせる証言はない。 さらに、フィブリノゲン製剤を投与するかどうかの判断基準に出血性ショ ックを挙げている医師もいるが、出血性ショックは、出血により体内に循環する血液が減少する結果として発生する全身の循環障害であり、血液内の凝固因子の減少が顕著に進行した状態を指す低フィブリノゲン血症やDICとは明確に区別される病態である。 フィブリノゲン製剤の適応外投与の事実が極めて多く存在しており、医療 現場では、産科大量出血に対する有効な止血措置の一環として同製剤が使用 されていたとの実情に照らせば、産 フィブリノゲン製剤の適応外投与の事実が極めて多く存在しており、医療 現場では、産科大量出血に対する有効な止血措置の一環として同製剤が使用 されていたとの実情に照らせば、産科DICスコアに基づき患者が低フィブリノゲン血症ないしDICに陥っていた事実のみを同製剤投与の推認根拠とする被告の見解は不適切であって、大量出血の存在自体が、フィブリノゲン製剤投与を強く推認させる間接事実であることが明らかといえる。 ⑵ 中間報告書(乙統196)の33頁の図表2-7「フィブリノゲン製剤の 静注での使用疾患・用途」の産科疾患の欄には、急性胎盤早期剥離、羊水血栓症、羊水塞栓症、常位胎盤早期剥離その他の産科疾患が列挙されているところ、同図表は、フィブリノゲン製剤の使用例が後天性低フィブリノゲン血症が生じていることを前提とするかのような記載になっているが、図表の注釈には、「実際に低フィブリノゲン(100mg 未満)であることが確認さ れて投与されているかどうかについては定かではない。」との明確な記載が存在することに照らせば、図表2-7に列挙されている疾患それ自体が、フィブリノゲン製剤の使用疾患だったというほかない。 ⑶ 被告自らがフィブリノゲン製剤の投与を認めてきた事例が、DICスコアを満たすものばかりでないことは、顕著な事実であり、また、フィブリノゲ ン製剤の出荷本数は、その全てがDICないし低フィブリノゲン血症の確定診断がついた症例のみに使用されたとみるには、余りに大量である。 DICの危険が発生した場合にのみフィブリノゲン製剤の投与が行われていたと断定し、かつ、DICスコアを持ち出して、これを満たすだけの事実がなければ投与の事実が存在しないと強弁する被告の主張は、およそ事実に 即しない詭弁であり、D リノゲン製剤の投与が行われていたと断定し、かつ、DICスコアを持ち出して、これを満たすだけの事実がなければ投与の事実が存在しないと強弁する被告の主張は、およそ事実に 即しない詭弁であり、DICスコアへの当てはめを強調することで、結局のところ、現存する証拠からは立証不可能な事実に訴訟を収れんさせようとするものであって、特措法の付帯決議の趣旨にも明白に反している。 (被告及び補助参加人の主張)⑴ア低フィブリノゲン血症の病態は、後天性の場合としては、重症肝臓疾患 での産生低下、DICにおける凝固因子の消費亢進等により招来される。 フィブリノゲン製剤は、DICのうち、産科分野のDICに併発して生じることのあるフィブリノゲン補充を要する病態に有効かつ有用であるとの位置付けがされるようになり、DICの場合や、DICの基礎疾患となり得る産後の大出血や重症外傷に起因して血漿中のフィブリノゲン濃度が低下する場合など、極めて限定された症例に対してその投与が推奨されたも のである。しかるに、産科DICには、急性のものが多く、検査成績の判明を待つ前にいろいろな処置を進めなければならないという例が少なくないため、臨床的な事項を重要視するスコアリングが望ましいなどとして、基礎疾患、臓器障害や出血傾向の程度等の臨床症状、検査項目の3つを柱とする産科DICスコアが提唱され、同スコアに基づきDICか否かの判 定が行われることがある。 イ特定フィブリノゲン製剤は、出血性疾患のうち、血液中のフィブリノゲン(血症凝固第Ⅰ因子)が減少ないし欠乏することに起因して、止血機構自体が正常に機能しなくなり、その結果、止血困難を来す「低フィブリノゲン血症」が発症した場合に、これに対して投与を推奨されてきた製剤で あり、低フィブリ ないし欠乏することに起因して、止血機構自体が正常に機能しなくなり、その結果、止血困難を来す「低フィブリノゲン血症」が発症した場合に、これに対して投与を推奨されてきた製剤で あり、低フィブリノゲン血症以外の症例において、単に多量の出血があったとの事実をもって、直ちにフィブリノゲン製剤の投与事実を推認できるという関係は、論理則上も医学的な経験則上も認められない。 このことは、大量出血により出血性ショック症状が引き起こされた場合も同様であり、出血性ショックに対する治療として、循環血液量を増加さ せるために、輸血や輸液を行った場合、出血傾向が亢進することがあり得、その場合に特定フィブリノゲン製剤を投与することがあり得るものの、輸血や輸液によって出血傾向が亢進する原因は様々であって、フィブリノゲンの減少ないし欠乏はそのうちの1つでしかないから、大量出血により出血性ショック症状を呈したとしても、当然に特定フィブリノゲン製剤の投 与が推認されるわけではない。 ウ一方、フィブリノゲン製剤は、製剤承認当初から、添付文書上に肝炎のリスクが指摘されるなど一定の副作用リスクを有する医薬品であったから、医師が、患者の治療にフィブリノゲン製剤を使用するかどうかを判断するに当たっては、フィブリノゲン製剤の投与を受けたと主張する個別の原告本人又はその被相続人(以下「当該患者」という。)の病態を踏まえ、フ ィブリノゲン製剤の効能、効果を考慮するのみならず、フィブリノゲン製剤使用による肝炎リスクも比較衡量して、最終的な使用の有無を決定していたと考えられ、このような観点から見ても、単に出血量が多いとか、出血性ショックがあるというだけで、特定フィブリノゲン製剤の投与を推認することはできない。 エ以上、特定フィ を決定していたと考えられ、このような観点から見ても、単に出血量が多いとか、出血性ショックがあるというだけで、特定フィブリノゲン製剤の投与を推認することはできない。 エ以上、特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、まず第1に、患者について低フィブリノゲン血症に陥っていたこと、または、低フィブリノゲン血症の要因となるDICの治療若しくは予防の必要があったことが認められなければならない。 ⑵ これに対し、原告らは、本訴訟での医師らの証言を根拠として、大量出血 の存在自体が、特定フィブリノゲン製剤の投与があったことを強く推認させると主張するが、同医師らは、いずれも個別の事案について、特定フィブリノゲン製剤の投与方針や個別の患者に対する同製剤の投与の有無等を証言したものである。いかなる病態に対していかなる治療措置を選択して実施するかは医師の自由な裁量に委ねられており、その場その場における個々の医師 の判断と言わざるを得ないところ、DICの判断(とりわけ、臨床的な事項を重視する産科領域におけるDICの判断)は医師によって異なり得るものといえ、また、特定フィブリノゲン製剤投与の判断も医師によって異なることはあり得る。 しかしながら、具体的な事案に関し、担当医師の投与方針が明らかでない 場合において特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを推認するためには、 投与の判断が医師によって異なり得るというだけでは足りず、少なくとも特定フィブリノゲン製剤の投与に係る一般的な医学的適応が認められる場合であることが必要である。そうすると、上記⑴の医学的知見に照らし、大量出血や出血性ショックが認められる場合には、特定フィブリノゲン製剤を投与する方針であったとする医師が存在するからといって、ほかの医師も ることが必要である。そうすると、上記⑴の医学的知見に照らし、大量出血や出血性ショックが認められる場合には、特定フィブリノゲン製剤を投与する方針であったとする医師が存在するからといって、ほかの医師もこれら の場合に特定フィブリノゲン製剤を投与したであろうと推認することはできない。 ⑶ 中間報告書の図表2-7は、ウェルファイド社が提出した資料に基づき、フィブリノゲン製剤が使用されたことのある疾患名を列挙したものにすぎず、一定の症例に対して特定フィブリノゲン製剤が投与される一般的な可能性が あることを示すにすぎない。同図表の記載に関し、「図表2-7においては「後天性低フィブリノゲン血症」という疾患に対してフィブリノゲンが投与されたかのように記載されているが、実際に低フィブリノゲン(100mg未満)であることが確認されて投与されているかどうかについては定かではない。」とある趣旨は、同表作成の原資料に記載された情報だけからでは各 症例について、低フィブリノゲン血症、又は、低フィブリノゲン血症の要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があった場合なのかそうではない場合なのかは不明であったというにすぎず、実際に各症例について低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があった場合である可能性を否定するものではなく、同表に列挙されている疾患が 認められれば、特定フィブリノゲン製剤の投与が直ちに推認されるとはいえない。 3 個別の原告が、①特定C型肝炎ウイルス感染者(特措法2条3項)に該当するか、②特措法6条1号、2号又は3号に該当するかに関する当事者の主張は、別紙個1ないし6の「第2 争点及び争点に関する当事者の主張」欄に各記載 のとおりである。 第4 当裁判所の判断 6条1号、2号又は3号に該当するかに関する当事者の主張は、別紙個1ないし6の「第2 争点及び争点に関する当事者の主張」欄に各記載 のとおりである。 第4 当裁判所の判断 1 フィブリノゲン製剤の投与及び同投与と感染との因果関係に関する証明の対象について⑴ 証明の対象についてア原告らは、本件における「投与の事実」及び「因果関係」の要件につい ては、㋐「他原因の不存在」、すなわち、当該患者にフィブリノゲン製剤の投与以外にC型肝炎に感染する原因が存在しないこと、㋑「フィブリノゲン製剤投与の対象となる病態の存在」、すなわち、個別の原告が主張する投与年月日において、フィブリノゲン製剤投与の対象となるような病態が存在したこと及び㋒「フィブリノゲン製剤の使用可能な状態での存在」、 すなわち、個別の原告が主張する投与年月日において、当該病院にフィブリノゲン製剤が使用可能な状態で存在したこと、以上の3点が立証されれば、特措法上は別個の要件として規定されている「投与の事実」及び「因果関係」が相関的に認定できることになると主張して、個別の原告に関し、上記㋐ないし㋒に沿って主張する。 イしかしながら、特措法3条1項によれば、給付金の支給対象は「特定C型肝炎感染者」又はその相続人であると規定され、同法2条3項によれば、「特定C型肝炎感染者」は「特定フィブリノゲン製剤(中略)の投与(中略)を受けたことによってC型肝炎ウイルスに感染した者」と規定されているから、特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたこと、すなわち、「投 与の事実」が、特措法に基づく給付金の支給を受けるための前提となる要件に関する事実であることは明らかである。また、同法2条3項からは、①C型肝炎ウイルスに感染したこと(感染)、② わち、「投 与の事実」が、特措法に基づく給付金の支給を受けるための前提となる要件に関する事実であることは明らかである。また、同法2条3項からは、①C型肝炎ウイルスに感染したこと(感染)、②投与によって感染したこと(因果関係)、同法6条各号からは、③特定C型肝炎ウイルス感染者の症状(症状)の要件がいずれも明らかである(以下、「投与の事実」と上 記①ないし③を併せて「特措法要件」という。)。 これに対し、原告らが主張する上記ア㋐ないし㋒の3要件は、いずれも特措法の各条項から読み取ることができない。 ウ原告らが主張する上記ア㋐ないし㋒の個別の要件についてみても、C型肝炎ウイルスには様々な感染経路があることが指摘されており、その感染原因が不明である場合も相当数あることからすると(前提事実⑴ オ)、感染に関し、フィブリノゲン製剤投与以外の原因が存在しないことを客観的に立証することはできないから、㋐「他の原因の不存在」を要件とすることはできない。 エまた、DICの診断においては、基礎疾患の存在、臨床症状や血液凝固学的検査所見から総合的にされるべきもので、決して画一的に考 えるべきではないとされているとおり(前提事実⑵エ)、医師が低フィブリノゲン血症ないしDICの病態にあると診断する指標は画一的なものではないことからして、一般的にはフィブリノゲン製剤の効能・効果があるとされたことや大量出血があったことをもって、直ちに当該患者にフィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできないものと いうべきである。 そうすると、個別の原告が主張する投与年月日において、フィブリノゲン製剤投与の対象となるような病態が存在したことからといって、直ちに当該患者にフィブリノゲン製剤が投与されたと推認す うべきである。 そうすると、個別の原告が主張する投与年月日において、フィブリノゲン製剤投与の対象となるような病態が存在したことからといって、直ちに当該患者にフィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできないもので、㋑「フィブリノゲン製剤投与の対象となる病態の存在」を要件とす ることは相当でない。 オさらに、個別の原告が主張する投与年月日において、当該病院にフィブリノゲン製剤が使用可能な状態で存在したことは、それなしでは「投与の事実」はあり得ないものの、上記エで説示したとおり、当該患者の個別の病態に関する検討を経ずに、㋒「フィブリノゲン製剤の使用可能な状態で の存在」をもって、直ちに当該患者にフィブリノゲン製剤が投与されたと 推認することはできない。 カしたがって、㋐「他の感染原因の不存在」、㋑「フィブリノゲン製剤を投与するような病態の存在」及び㋒「同製剤の使用可能な状態での存在」が立証されれば、投与事実及び因果関係が相関的に認定できるとする原告らの主張は、採用できない。 ⑵ 以上、原告らは、特措法に基づく給付金の支給を受けるため、特措法要件に係る事実のうち被告が否認する事実については、その存在を是認し得る高度の蓋然性を証明する必要があるものである。 2 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、低フィブリノゲン血症又は、低フィブリノゲン血症の要因となるDICの治療若しくは予防の必要 があったと認められる必要があるかについて⑴ 原告らは、本訴訟で証人尋問を行った産科医、助産師及び外科医の証言からすれば、フィブリノゲン製剤を投与するかどうかの判断基準は、第1に出血量、第2に出血傾向、第3に目視による血液の性状(さらさらか、動脈血かなど)であることがわか た産科医、助産師及び外科医の証言からすれば、フィブリノゲン製剤を投与するかどうかの判断基準は、第1に出血量、第2に出血傾向、第3に目視による血液の性状(さらさらか、動脈血かなど)であることがわかること、フィブリノゲン製剤の適応外投与の事例 が極めて多く存在しており、医療現場では、産科大量出血に対する有効な止血措置の一環として同製剤が使用されていたとの実情があることに照らせば、産科DICスコアに基づき患者が低フィブリノゲン血症ないしDICに陥っていた事実のみを同製剤投与の推認根拠とする被告の見解は不適切であって、大量出血の存在自体が、フィブリノゲン製剤投与を強く推認させる間接事実 であることが明らかといえると主張する。 ⑵ フィブリノゲン製剤の医学的適応しかしながら、フィブリノゲン製剤は、低フィブリノゲン血症の治療を効能及び効用として、薬事法上の製造承認を受けており、添付文書上も、低フィブリノゲン血症等フィブリン値が著しく低下している患者の是正に使用さ れる旨記載されていたこと(前提事実⑵キ)、後天性のフィブリノゲン欠乏 症の主要な原因として、DIC、産後の大出血や重症外傷に起因して血漿中のフィブリノゲン濃度が低下する場合などが挙げられ(前提事実⑵ウ)、産後の大出血や重症外傷はDICの基礎疾患に数えられていること(前提事実⑵エ)などからすれば、フィブリノゲン製剤は、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療に必要であると認められる場合に医学的適応 があるものと認められる。 そして、社団法人日本産婦人科学会及び社団法人日本産婦人科医会から、フィブリノゲン製剤の使用実態に関し、産科領域一般においては、分娩周辺期の大量出血によるDIC、低フィブリノゲン血症に対する補充療 そして、社団法人日本産婦人科学会及び社団法人日本産婦人科医会から、フィブリノゲン製剤の使用実態に関し、産科領域一般においては、分娩周辺期の大量出血によるDIC、低フィブリノゲン血症に対する補充療法としてフィブリノゲン製剤が使用されており、その際には、添付文書に従った使用 方法が採用されていたと報告されていること(前提事実⑶ウ)、昭和40年代から50年代にかけて、低フィブリノゲン血症に対する治療方法としてフィブリノゲン製剤の投与を推奨する医学文献がみられること(前提事実⑶エ)などに照らし、殊に産科分野において、上記添付文書にある使用方法に従い、DIC、低フィブリノゲン血症に対する補充療法として、フィブリノゲン製 剤の投与が行われ、かつ、推奨されてきたことが認められる。 さらに、産科DICには急性のものが多く、検査成績の判明を待つ前にいろいろな処置を進めなければならないという例が少なくなく、MOF(多臓器不全)を合併すると著しく予後が不良になるので、早期診断、早期治療が大切であるとされている(乙統30(904頁)、105(222頁)、前 提事実⑵エ)。 以上を総合すると、フィブリノゲン製剤は、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要があったと認められる場合に、医学的適応があるものとして広く普及していたと認められる。 ⑶ 低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必 要があったと認められる場合 ア患者の病態が、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要があったと認められる場合といえるかについては、基礎疾患の存在、臨床症状や血液凝固学的検査所見から総合的に判断されるべきものである(前提事実⑵ ン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要があったと認められる場合といえるかについては、基礎疾患の存在、臨床症状や血液凝固学的検査所見から総合的に判断されるべきものである(前提事実⑵エ)。 ところで、産科DICスコアは、総合的に認定・判断されるべきDIC の惹起について、過去の産科領域におけるDIC症例を検討した上で、その判断の具体的要素を拾い上げて、基礎疾患スコア、臨床症状スコア及び検査所見スコアに分類し、各要素の重要性を踏まえて配点し、一定以上の点数に達したものはDICとしての治療を開始すべき時期にあると認めるものである。そして、産科DICには急性のものが多く、検査成績の判明 を待つ前にいろいろな処置を進めていかなければならないという例が少なくないことから、厚生省DICスコアに比べ、臨床的な事項が重要視されているという違いがある。それにもかかわらず、臨床的にDICである、あるいはDICの疑いがあると判断した時点での産科的DICスコアと厚生省DICスコアとを比較してみると、両者間には驚くほどの密接な相関 がみられたと報告されている。なお、厚生省DICスコア及び産科DICスコアは、いずれも過去の症例をもとに診断方法を客観化し、特に産科DICスコアは早期治療につなげる目安を示したものであるが、いずれも新たな診断基準を提唱するものではない。(乙統105、200)そうすると、主として治療開始のタイミングを重視したスコアである産 科DICスコアから、ある病態についてスコアリングを行い、DICの治療若しくは予防の必要があったと認められるかどうかを検討することは、それ自体合理的というべきである。 イしかしながら、本訴訟における当該患者の病態の認定は、DICスコアの在り方を検 Cの治療若しくは予防の必要があったと認められるかどうかを検討することは、それ自体合理的というべきである。 イしかしながら、本訴訟における当該患者の病態の認定は、DICスコアの在り方を検討する際の症例研究とは全く異なり、臨床症状、全身状態等 の臨床データ、薬剤の投与や検査結果を含む当該診療行為の内容を記載し た診療録すらない場合に、残存する医療記録(手術記録、各種台帳、診断書、入院診療録要約、母子健康手帳等を広く含める。)、問題となった診療行為に近接した時期に患者本人ないし近親者が書き留めた記録(日記やメモ等を含める。)、医療関係者(担当医師その他当該治療に関わり、あるいは、これを知る者を広く含める。)の証明書、陳述書その他の供述証 拠、患者本人や近親者等の供述証拠、医学文献(特に当該診療行為の時点における医学的知見を明らかにするものは重要である。)その他の証拠方法といった全証拠を経験則に照らして総合的に検討し、当該患者について、当該診療行為の時点において、DICの治療若しくは予防の必要があったと認めることができるかどうかを認定・判断するというものである。 そのような事実認定を行うに当たり、産科DICスコアをいわば反対解釈して、臨床症状スコアの項目に当たる客観的な臨床データや検査所見スコアの項目に当たる検査所見が存在しないことから、一定の点数に達する可能性がないとして、直ちにDICとしての治療を開始すべき時期になかったと認めるとすれば、それ自体重大な事実の誤認を生じるおそれがある もので、許されないというべきである。 ウそうすると、産科DICスコアは、DICの治療若しくは予防の必要があったと認められるかどうかという本来医師が患者の病態を総合的に検討して初めて認定可能な事実に関 れないというべきである。 ウそうすると、産科DICスコアは、DICの治療若しくは予防の必要があったと認められるかどうかという本来医師が患者の病態を総合的に検討して初めて認定可能な事実に関し、考慮すべき要素を列挙した上で、各種要素に重みづけを与える試みであるが(上記ア)、いずれの時期において もフィブリノゲン製剤の使用に関するガイドラインとして扱われていたものではなかったこと(前提事実⑶ウ)から、裁判所は、当該患者の診療録すらない状況にあって、診療録以外の全証拠を総合的に検討する際、DICに関する医学的知見や産科DICスコアの内容を参考にして、基礎疾患が存在することを前提に、臨床症状や検査所見については、点数の積上げ によらず、例えば、出血量、出血状況や患者が自覚したバイタルサインな どからショック症状があることを推認するなどの方法が可能であればこれを用いるなどした上で考慮すれば足りるものというべきである。 ⑷ 原告らの主張についてア原告らが主張する投与認定の基準以上検討したとおり、フィブリノゲン製剤は、低フィブリノゲン血症又 はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要があったと認定できる場合に、医学的適応があるものとして広く普及していたと認められるところ、上記認定に当たり、出血量、出血傾向や目視による血液の性状といった事情が重要であるという指摘は正当であるが、これらの事実だけから上記認定を行うことができないこともまた明らかである。 したがって、フィブリノゲン製剤を投与するかの基準が第1に出血量、第2に出血傾向、第3に目視による血液の性状であるとして判断すべきであるとする原告らの主張は理由がない。 イ適応外投与の存在原告らは、フィブリノゲン製剤の適 るかの基準が第1に出血量、第2に出血傾向、第3に目視による血液の性状であるとして判断すべきであるとする原告らの主張は理由がない。 イ適応外投与の存在原告らは、フィブリノゲン製剤の適応外投与の事実が極めて多く存在し ており、医療現場では、産科大量出血に対する有効な止血措置の一環として同製剤が使われていたから、大量出血の存在自体がフィブリノゲン製剤投与を強く推認させる間接事実であると主張する。 しかしながら、本件各証拠に照らし、フィブリノゲン製剤が、止血剤として一般的に使用されていたことを裏付ける医学的知見は見当たらない。 これまで説示したとおり、フィブリノゲン製剤は、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要があったと認定できる場合に、医学的適応があるものとして広く普及していた薬剤であると認められる。そして、DICの治療若しくは予防の必要があったと認められるかどうかは、基礎疾患の存在、臨床症状や血液凝固学的検査所見から 総合的に判断されるべきものである。 そうすると、担当医師あるいは当該診療行為が行われた病院において、医学的適応と一致しない態様で投与する方針が行われていたと認められない限り、当該患者に対し、適応外投与が行われたという事実を推認することはできないものというべきである。 したがって、一般に、大量出血の存在自体がフィブリノゲン製剤投与を 強く推認させる間接事実であるとする原告らの主張は、採用できない。 ウ中間報告書図表2-7の注釈の記載原告らは、中間報告書33頁図表2-7「フィブリノゲン製剤の静注での使用疾患・用途」にある注釈の記載からは、同図表に列挙されている疾患それ自体がフィブリノゲン製剤の使用疾患だったというほかないと主張 原告らは、中間報告書33頁図表2-7「フィブリノゲン製剤の静注での使用疾患・用途」にある注釈の記載からは、同図表に列挙されている疾患それ自体がフィブリノゲン製剤の使用疾患だったというほかないと主張 する。しかし、「図表2-7においては「後天性低フィブリノゲン血症」という疾患に対してフィブリノゲンが投与されたかのように記載されているが、実際に低フィブリノゲン(100mg 未満)であることが確認されて投与されているかどうかについては定かではない。」とある注釈は、同表作成の原資料に記載された情報だけからでは、各症例についてフィブリ ノゲン値100mg 未満の低フィブリノゲン血症であることが確認されて投与されているかどうか明らかでないと注記する趣旨にとどまる。すなわち、先天性低フィブリノゲン血症及び第ⅩⅢ因子欠乏症以外の疾患名は、分類上「後天性低フィブリノゲン血症」とされるべきものであるが、原資料には具体的な記載例にある疾患名の記載にとどまるものが含まれている というにすぎないもので、具体的な記載例にある疾患を発症しているが、後天性低フィブリノゲン血症を発症していない場合を含むと記載したものではないことが明らかである。 したがって、原告らの上記主張のような解釈は、採用できない。 3 投与の事実に関する判断枠組み ⑴ これまでの検討を踏まえ、当裁判所は、産科領域における診療行為に際し、 特定フィブリノゲン製剤が投与されたと主張する当該患者に関し、投与の事実が認められるかどうかについて、以下の判断枠組みに沿って検討する。 アまず、当該患者に関する全ての証拠のうちに、特定フィブリノゲン製剤投与の事実を裏付ける客観的な直接証拠があるかどうか検討する。 ただし、ここにいう客観的な直接証拠とは、フ って検討する。 アまず、当該患者に関する全ての証拠のうちに、特定フィブリノゲン製剤投与の事実を裏付ける客観的な直接証拠があるかどうか検討する。 ただし、ここにいう客観的な直接証拠とは、フィブリノゲン製剤を投与 した旨の記載がある診療録、投薬指示書、看護記録、同製剤に関するレセプト等を指すから、本訴訟における当該患者については現存していない。 イ客観的な直接証拠がない場合、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の当該患者に関する全ての証拠から認定できる当該患者の具体的な傷病の状態及び医師の投与方針等の間接事実から、当該患者に対し、特定 フィブリノゲン製剤の投与がされたことを推認できるかどうかを検討する。 ⑵ 当該患者の傷病の状態についてア特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを推認できるかどうかの検討に当たっては、まず、当該患者の傷病の状態(病態)から、当該診療行為の当時、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しく は予防の必要があったと認められるかどうかを検討する。 イ当該患者の病態を認定するに当たっては、産科DICの基礎疾患の内容、程度(ただし、DICの誘因となる重要な産科疾患がある場合には、これも考慮する。乙統97(255頁)参照)、当該診療行為当時の当該患者の臨床症状、全身状態を可能な限り拾い挙げるなどして認められる当該患 者の病態から、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要があったと推認できるかどうか検討する。 ウ上記検討の結果、当該患者の病態について、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要があったと推認できる場合には、特段の事情がない限り、当該患者に対しフィブリノゲン製剤が投 記検討の結果、当該患者の病態について、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要があったと推認できる場合には、特段の事情がない限り、当該患者に対しフィブリノゲン製剤が投 与された事実を合理的に推認できる。 そして、上記特段の事情としては、当該病院にフィブリノゲン製剤の納入事実がないこと、当該診療行為時点に在庫がないこと、担当医師が病態にかかわらず投与しない方針を採用していたことなどが考えられる。 エ前説示(上記2⑶イ)のとおり、証拠方法の性質による制限は行わない。 診療行為時ないしこれと近接した時期に作成された資料は、医師、看護 師や医療機関が作成したものにとどまらず、その他の者(患者本人を含む。)が作成したものであっても、その余の証拠、資料から信用性が認められれば、客観資料に近いものとして、これを前提とする。 一方、当該診療行為の状況等を明らかにするために本訴訟の提訴準備段階以降に作成された資料については、作成者の属性(医療関係者であるか など)や文書の性質(見出しが「証明書」であるなど)にかかわらず、その作成経過等を検討した上で、慎重に信用性を検討することになる。 ⑶ 担当医師あるいは当該病院における投与方針についてア DICの治療若しくは予防の必要があったと認められるかどうかについて、基礎疾患の存在、臨床症状や血液凝固学的検査所見から総合的に判断 し、医学的適応にあると認められない場合には、当該患者の病態からは、フィブリノゲン製剤が投与されたことが推認されないこととなる。 イしかしながら、DICスコアはフィブリノゲン製剤の使用に関するガイドラインとして扱われていたものはなかったこと(前提事実⑶ウ)、産科DICは急性のものが多く、検 ことが推認されないこととなる。 イしかしながら、DICスコアはフィブリノゲン製剤の使用に関するガイドラインとして扱われていたものはなかったこと(前提事実⑶ウ)、産科DICは急性のものが多く、検査成績の判明を待つ前に処置を進めなけれ ばならない例が少なくないこと(乙統200(119頁))、担当医師の個別の判断により、DICの基礎疾患と認められる出血量に達していなくとも投与適応とする方針を有する場合もあること(甲C22324(原告番号194番に関する・・・・医師の証人調書)、原告番号227番に関する・・・医師の証言など)などからすると、低フィブリノゲン血症又は その要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったかどうかの判 断については、個別の医師の方針や判断が重要であったと認められるから、医局の方針や当該医師の臨床経験、時代背景などの影響を受け、一様ではなかったことを考慮する必要がある。 ウそうすると、当該患者の病態について、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったとまでは認めるこ とができない場合であっても、当該診療行為を担当した医師の診療当時における個別の投与方針又は当該病院の投与方針に照らし、投与適応と認められる場合には、当該患者に対する特定フィブリノゲン製剤の投与事実が合理的に推認できるというべきである。 ⑷ 産科領域以外における診療行為についても、特定フィブリノゲン製剤投与 の事実を裏付ける客観的な直接証拠があるかどうかを検討し、これがないときは、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の当該患者に関する全ての証拠から認定できる当該患者の具体的な傷病の状態及び医師の投与方針等の間接事実から、当該患者に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与 は、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の当該患者に関する全ての証拠から認定できる当該患者の具体的な傷病の状態及び医師の投与方針等の間接事実から、当該患者に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを推認できるかどうかを検討する点は同様に当てはまる(上記⑴)。 ただし、当該患者の傷病の状態について、産科DICの考え方が当てはまるわけではないから、当該病態等に応じて検討する必要がある。 4 判断枠組みの当てはめ当裁判所が、上記3の「投与事実に関する判断枠組み」に基づき、原告ら又はその被相続人(当該患者)に対する特定フィブリノゲン製剤の投与(使用) の有無について検討した結果は、別紙個1ないし6の「第3 当裁判所の判断」に記載したとおりであり、全ての当該患者について、特定フィブリノゲン製剤が投与(使用)された事実を認めることができない。 よって、その余の特措法要件について判断するまでもなく、原告らの請求は理由がない。 第5 結論 以上によれば、原告らの請求は、別紙個1ないし6の「第4 結論」に記載したとおり、いずれも理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第44部 裁判長裁判官藤澤裕介 裁判官川畑百代 裁判官多田尚史は、差支えのため、署名押印できない。 裁判長裁判官藤澤裕介 別紙1当事者目録は記載省略 請求金額目録(別紙 2)原告番号請求金額感染区分 2000万円 2000万円 4000万円 2000万円 2000万円 2000万円 (別紙 2)原告番号請求金額感染区分 2000万円 2000万円 4000万円 2000万円 2000万円 2000万円 (別紙 3) 特定フィブリノゲン製剤及び特定血液凝固第Ⅸ因子製剤によるC型肝炎感染被害者を救済するための給付金の支給に関する特別措置法(特措法)前文フィブリノゲン製剤及び血液凝固第Ⅸ因子製剤にC型肝炎ウイルスが混入し、多くの方々が感染するという薬害事件が起き、感染被害者及びその遺族の方々は、 長期にわたり、肉体的、精神的苦痛を強いられている。 政府は、感染被害者の方々に甚大な被害が生じ、その被害の拡大を防止し得なかったことについての責任を認め、感染被害者及びその遺族の方々に心からおわびすべきである。さらに、今回の事件の反省を踏まえ、命の尊さを再認識し、医薬品による健康被害の再発防止に最善かつ最大の努力をしなければならない。 もとより、医薬品を供給する企業には、製品の安全性の確保等について最善の努力を尽くす責任があり、本件においては、そのような企業の責任が問われるものである。 C型肝炎ウイルスの感染被害を受けた方々からフィブリノゲン製剤及び血液凝固第Ⅸ因子製剤の製造等を行った企業及び国に対し、損害賠償を求める訴訟が提 起されたが、これまでの五つの地方裁判所の判決においては、企業及び国が責任を負うべき期間等について判断が分かれ、現行法制の下で法的責任の存否を争う訴訟による解決を図ろうとすれば、さらに長期間を要することが見込まれている。 一般に、血液製剤は適切に使用されれば人命を救うために不可欠の製剤であるが、フィブリノゲン製剤及び血液凝固第Ⅸ因子製剤によってC型肝炎ウイルスに 感染した方々 を要することが見込まれている。 一般に、血液製剤は適切に使用されれば人命を救うために不可欠の製剤であるが、フィブリノゲン製剤及び血液凝固第Ⅸ因子製剤によってC型肝炎ウイルスに 感染した方々が、日々、症状の重篤化に対する不安を抱えながら生活を営んでいるという困難な状況に思いをいたすと、我らは、人道的観点から、早急に感染被害者の方々を投与の時期を問わず一律に救済しなければならないと考える。しかしながら、現行法制の下でこれらの製剤による感染被害者の方々の一律救済の要請にこたえるには、司法上も行政上も限界があることから、立法による解決を図 ることとし、この法律を制定する。 第1条(趣旨)この法律は、特定C型肝炎ウイルス感染者及びその相続人に対する給付金の支給に関し必要な事項を定めるものとする。 第2条(定義) 1 この法律において「特定フィブリノゲン製剤」とは、乾燥人フィブリノゲン のみを有効成分とする製剤であって、次に掲げるものをいう。 一昭和三十九年六月九日、同年十月二十四日又は昭和五十一年四月三十日に薬事法の一部を改正する法律(昭和五十四年法律第五十六号)による改正前の薬事法(昭和三十五年法律第百四十五号。以下「昭和五十四年改正前の薬事法」という。)第十四条第一項の規定による承認を受けた製剤 二昭和六十二年四月三十日に薬事法及び医薬品副作用被害救済・研究振興基金法の一部を改正する法律(平成五年法律第二十七号)第一条の規定による改正前の薬事法(以下「平成五年改正前の薬事法」という。)第十四条第一項の規定による承認を受けた製剤(ウイルスを不活化するために加熱処理のみを行ったものに限る。) 2(省略) 3 この法律において「特定C型肝炎ウイルス感染者」とは、特定フィ 十四条第一項の規定による承認を受けた製剤(ウイルスを不活化するために加熱処理のみを行ったものに限る。) 2(省略) 3 この法律において「特定C型肝炎ウイルス感染者」とは、特定フィブリノゲン製剤又は特定血液凝固第Ⅸ因子製剤の投与(獲得性の傷病に係る投与に限る。 第五条第二号において同じ。)を受けたことによってC型肝炎ウイルスに感染した者及びその者の胎内又は産道においてC型肝炎ウイルスに感染した者をい う。 第3条(給付金の支給) 1 独立行政法人医薬品医療機器総合機構(以下「機構」という。)は、特定C型肝炎ウイルス感染者(特定C型肝炎ウイルス感染者がこの法律の施行前に死亡している場合にあっては、その相続人)に対し、その者の請求に基づき、医 療、健康管理等に係る経済的負担を含む健康被害の救済を図るためのものとし て給付金を支給する。 2 給付金の支給を受ける権利を有する者が死亡した場合においてその者がその死亡前に給付金の支給の請求をしていなかったとき(特定C型肝炎ウイルス感染者が慢性C型肝炎の進行により死亡した場合を含む。)は、その者の相続人は、自己の名で、その者の給付金の支給を請求することができる。 3(省略)第4条(給付金の支給手続)給付金の支給の請求をするには、当該請求をする者又はその被相続人が特定C型肝炎ウイルス感染者であること及びその者が第六条第一号、第二号又は第三号に該当する者であることを証する確定判決又は和解、調停その他確定判決と同一 の効力を有するもの(当該訴え等の相手方に国が含まれているものに限る。)の正本又は謄本を提出しなければならない。 第6条(給付金の額)給付金の額は、次の各号に掲げる特定C型肝炎ウイルス感染者の区分に応じ、当該各号に定める 等の相手方に国が含まれているものに限る。)の正本又は謄本を提出しなければならない。 第6条(給付金の額)給付金の額は、次の各号に掲げる特定C型肝炎ウイルス感染者の区分に応じ、当該各号に定める額とする。 一 慢性C型肝炎が進行して、肝硬変若しくは肝がんに罹り患し、又は死亡した者 四千万円 二 慢性C型肝炎に罹患した者 二千万円 三 前二号に掲げる者以外の者 千二百万円 (別紙 4) 第1 厚生省DICスコア Ⅰ 基礎疾患・あり 1・なし 0 Ⅱ 臨床症状 1 出血症状・あり 1・なし 0 2 臓器症状・あり 1・なし 0 Ⅲ 検査成績 1 血清FDP値(㎍/㎖) 40≦ 320≦、<40 2 10≦、<20 1 10> 0 2 血小板数(×102/㎕) 50≧ 380≧、>50 2 120≧、>80 1 120> 0 3 血漿フィブリノゲン濃度(㎎/㎗) 100≧ 2150≧、>100 1 150< 0 4 プロトロンビン時間時間比(正常対照値で割った値) 1.67≦ 21.25≦、<1.67 11.25> 0 Ⅳ 判定 1 7点以上 間時間比(正常対照値で割った値)1.67≦ 21.25≦、<1.67 11.25> 0 Ⅳ 判定 1 7点以上 DIC6点 DICの疑い5点以下 DICの可能性少ない 2 白血病その他注1に該当する疾患(略) Ⅴ 診断のための補助的検査成績、所見(略)Ⅵ 注(略)Ⅶ 除外規定(略) 第2 産科DICスコア Ⅰ 基礎疾患a 常位胎盤早期剥離・子宮硬直、児死亡 5・子宮硬直、児生存 4・超音波断層所見及びCTG所見による早剥の診断 4 b 羊水塞栓症・急性肺性心 4・人工換気 3・補助呼吸 2・酸素放流のみ 1 cDIC型後産期出血 ・子宮から出血した血液または採血血液が低凝固性の場合 4・2000㎖以上の出血(出血開始から24時間以内) 3・1000㎖以上2000㎖未満の出血(出血開始から24時間以内) 1d 子癇・子癇発作 4 e その他の基礎疾患 1Ⅱ 臨床症状a 急性腎不全・無尿(≦5㎖/hr) 4・乏尿(5<、≦20㎖/hr) 3 b 急性呼吸不全(羊水塞栓症を除く)・人工換気または時々の補助呼吸 4・酸素放流のみ 1c 心、肝、脳、消化管などに重篤な障害がある時はそれぞれ4点を加える・心(ラ音または泡沫性の喀痰など)4 は時々の補助呼吸 4・酸素放流のみ 1c 心、肝、脳、消化管などに重篤な障害がある時はそれぞれ4点を加える・心(ラ音または泡沫性の喀痰など)4 ・肝(可視黄疸など) 4・脳(意識障害および痙攣など) 4・消化管(壊死性腸炎など) 4d 出血傾向・肉眼的血尿およびメレナ、紫斑、皮膚粘膜、歯肉、注射部位などからの出 血 4e ショック症状・脈拍 ≧100/分 1・血圧 ≦90㎜Hg(収縮期)または40%以上の低下 1・冷汗 1 ・蒼白 1 Ⅲ 検査項目・血清FDP ≧10㎍/㎖ 1・血小板数 ≦10×104/㎣ 1・フィブリノゲン ≦150㎎/㎗ 1・プロトロンビン時間(PT) ≧15秒(≦50%)またはヘパプラスチン テスト≦50% 1・赤沈 ≦4㎜/15min または≦15㎜/hr 1・出血時間 ≧5分 1・その他の凝固・線溶・キニン系因子(例、AT-Ⅲ≦18㎎/㎗または≦60%、プレカリクレイン、α2-PI、プラスミノゲン、その他の凝固因子≦ 50%) 1以上をもとに、7点以下は「その時点ではDICとはいえない」、8~12点は「DICに進展する可能性が高い」、13点以上は「DICとしてよい」(ただし、DICと確診するためには、13点中2点、又はそれ以上の検査成績スコアが含まれる必要がある。)と判断する。 別紙個1(原告番号217番) 」、13点以上は「DICとしてよい」(ただし、DICと確診するためには、13点中2点、又はそれ以上の検査成績スコアが含まれる必要がある。)と判断する。 別紙個1(原告番号217番) 以下、本別紙中では、原告番号217番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・・・・・・生)が、昭和55年1月9日、・・・・ ・・・・(以下「本件病院」という。)において、帝王切開術により第2子を出産(以下「本件出産」という。)した際、特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことにより、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎に罹患したと主張して、被告に対し、特措法6条2号による給付金2000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 本件出産の状況等(甲C21702、弁論の全趣旨)ア原告は、昭和55年1月9日午後1時31分頃、第2子を出産した(本件出産。甲C21702)。 イ本件出産の担当医師は、・・・・医師(以下「・・医師」という。)で ある。 ウ本件出産に関する母子健康手帳(甲C21702。以下「本件母子手帳」という。)12頁「出産の状態」では、「分娩の経過(母児の状態)」欄の「特記事項」として「弛緩出血」、「子宮膣上部切断術」と記載されており、「出血量」欄には「多量」に〇印が付された上で「1200㎖」と 記入されている(甲C21702)。 エ本件出産に関し、本件出産当時に作成された医療関係記録は、本件母子手帳が存在するものの、診療録、レセプトその他の医療記録は現存しない。 本件母子手帳にフィブリノゲン製剤投与に関する記載はない。(甲C21702、弁論の全趣旨) ⑵ 原告のC型肝炎ウイルスへの感染等 原告は、遅 その他の医療記録は現存しない。 本件母子手帳にフィブリノゲン製剤投与に関する記載はない。(甲C21702、弁論の全趣旨) ⑵ 原告のC型肝炎ウイルスへの感染等 原告は、遅くとも平成24年8月20日には、C型慢性肝炎との診断を受けた(甲C21701)。 ⑶ 本件病院に対する特定フィブリノゲン製剤の納入本件病院は、厚生労働省が公開している特定フィブリノゲン製剤の納入病院リスト上、納入実績が確認されている(甲21704)。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告の主張)⑴ 本件出産当時、本件病院にフィブリノゲン製剤が納入されていたこと、厚生労働省による薬害肝炎の検証および再発防止に関する研究班の中間報告書 (乙統196(33頁))において、分娩後弛緩出血それ自体がフィブリノゲン製剤の使用疾患として明記されていること、子宮摘出が止血困難な産後出血の救命における最終手段であることからすると、原告に対し、大量出血に対する止血剤として、フィブリノゲン製剤が投与された蓋然性が高い。 ⑵ 原告は、本件出産までの間、大きな病気やけがをしたこともなく、本件出 産の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたことの他にC型肝炎ウイルスに感染する原因が考えられない。 ⑶ したがって、本件出産の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与された高度の蓋然性がある。 (被告及び補助参加人の主張) ⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、患者について低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったことが認められる必要があるところ、原告は、弛緩出血により1200㎖の出血をした事実が認められ、産科 には、患者について低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったことが認められる必要があるところ、原告は、弛緩出血により1200㎖の出血をした事実が認められ、産科DICスコアが1点算定できるものの、この他にDICスコアを算定すべき事情は認められない。 ⑵ 弛緩出血の場合において、必ず特定フィブリノゲン製剤が投与されていた という医学的、薬学的知見を認めることはできないから、本件出産の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたはずであるとは認められない。 ⑶ 止血剤を打ちましたと・・医師から説明を受けたとする原告の供述は、客観的な証拠がない上、陳述書に一切記載されておらず、陳述書に記載されていなかった理由についての説明も変遷していることから、全く信用できない。 ⑷ ・・医師の投与方針を明らかにする客観的証拠はなく、原告の供述によっても、・・医師の投与方針は不明といわざるを得ないから、担当医師の投与方針に照らして特定フィブリノゲン製剤の投与事実を認めることもできない。 ⑸ したがって、本件出産時における特定フィブリノゲン製剤の投与事実を認めることはできない。 2 原告のC型肝炎ウイルス感染事実の有無(原告の主張)原告は、平成12年頃、C型肝炎と診断された。 (被告及び補助参加人の主張)HCV-RNA陽性であることを示す検査結果等が提出されていないため、 否認する。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と原告のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無(原告の主張)本件出産の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、 上記投与と原告のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特 (原告の主張)本件出産の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、 上記投与と原告のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎に罹患した事実の有無(原告の主張) 原告は、慢性C型肝炎に罹患した。その証拠が、甲C21701号証である。 (被告及び補助参加人の主張)提出された証拠からは、6か月以上の肝機能検査値の異常など、新犬山分類を満たすことが確認できないため、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与事実の有無 ⑴ 原告は、本件出産の際、大量出血に対する止血剤として、フィブリノゲン製剤が投与された高度の蓋然性があると主張するが、本件出産の際、原告に特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを裏付ける医療記録その他の直接的な証拠はない(前提事実⑴エ)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によ って認定できる原告の具体的な傷病の状態及び担当医師の投与方針等の間接事実から、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことが合理的に推認できるかどうかを検討する。 ⑵ 原告の病態ア本件母子手帳の記載(前提事実⑴ウ)及び原告の供述(原告本人4頁) によれば、原告の病態に関し、原告が帝王切開による出産後、弛緩出血により約1200㎖の出血をし、膣上部切断術による子宮摘出に至ったことが認められるところ、1000㎖以上の後産期出血はDICの原因となる基礎疾患に当たる。 加えて、原告は、弛緩出血の症例について、通常は施行しないが、子宮 収縮促進法に 宮摘出に至ったことが認められるところ、1000㎖以上の後産期出血はDICの原因となる基礎疾患に当たる。 加えて、原告は、弛緩出血の症例について、通常は施行しないが、子宮 収縮促進法による治療他のいかなる止血法も無効な場合には、やむをえず子宮摘出術を行う旨の医学的知見(乙統97(252頁)など)を援用し、子宮の摘出が止血困難な産後出血に対する最終手段であることを強調する。 イしかしながら、大量出血が認められる場合の産科領域における一般的な止血方法としては、手術療法として、用手的ないし冷却による子宮収縮を 促す一般的処置や、双手圧迫法、膣強圧タンポン法等が存在し、薬物療法 としても、子宮を収縮させることにより止血する方法や、止血機構の機能を改善・増強することによる一般的な止血剤(アドナ、トランサミンなど)により止血する方法等が存在している一方で(乙統83(394頁)、94(277頁以下)、98(28頁))、特定フィブリノゲン製剤の効能及び効果は、低フィブリノゲン血症の治療であって、これらの産後出血に 対する一般的な止血方法の一つとして位置づけられるものではないから(乙統97(252頁)参照)、大量出血があったという事実及び子宮摘出に至った事実をもって、直ちに特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるとまではいえない。 ウそして、本件各証拠に照らしても、原告の病態が、本件出産当時、低フ ィブリノゲン血症又はDICの治療若しくは予防の必要性がある状態であったと認めることはできない。 この点、原告は、中間報告書(乙統196(33頁))図表2-7において、分娩後弛緩出血がフィブリノゲン製剤の使用疾患として明記されていることを援用し、弛緩出血自体がフィブリノゲン製剤の使用対象疾患で の点、原告は、中間報告書(乙統196(33頁))図表2-7において、分娩後弛緩出血がフィブリノゲン製剤の使用疾患として明記されていることを援用し、弛緩出血自体がフィブリノゲン製剤の使用対象疾患で あったと主張する。しかし、同図表の注釈が「具体的な記載例」にある疾患を発症しているが、後天性低フィブリノゲン血症を発症していない場合を含むと明示したものではないから、原告らの上記主張は採用できない(本判決本文第4の2⑷ウ)。仮に臨床現場において、担当医師の個別の判断の下、低フィブリノゲン血症の診断を待たずに弛緩出血の患者に対し て投与された症例があったとしても、そうした症例が存在するからと言って、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性がない症例について、担当医師が当該症例をどのように判断したか、あるいは、担当医師の一般的な投与方針に照らして当該症例が投与対象となるかといった要素の検討なしに、適応外投与があった事実を推認す ることはできない。 ⑶ 本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針本件各証拠によっても、本件出産当時の本件病院ないし・・医師その他の本件出産を担当した医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針を認めるに足りない。 原告は、・・医師から本件出産後に止血剤を打ちましたと説明を受けたと 供述する(原告本人4頁)が、本件出産後の原告と・・医師との会話内容に言及している陳述書(甲C21703)にも記載がないのに、上記供述までに記憶が喚起された経緯について原告から合理的な説明がなく、曖昧な内容であって(原告本人16ないし19頁)、信用できない。 また、産科大量出血に対し、薬物療法として使用される止血剤について、 一般的止血剤が存在することは上記⑵イ 合理的な説明がなく、曖昧な内容であって(原告本人16ないし19頁)、信用できない。 また、産科大量出血に対し、薬物療法として使用される止血剤について、 一般的止血剤が存在することは上記⑵イのとおりであるから、原告の上記供述を前提にしても、・・医師の上記説明は、原告に対して特定フィブリノゲン製剤を投与したことを意味する発言に当たるものではなく、これにより原告に対する特定フィブリノゲン製剤の投与事実を認めることはできない。 ⑷ 他原因の存否 原告は、本件出産時の他にC型肝炎ウイルスに感染する原因が考えられないと主張する。 しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路は輸血であり、その他の感染経路として、血液製剤に加えて、医療行為時の感染事故など様々なものがあること (乙統2(15頁)、218(722頁)等)からすれば、原告がC型肝炎ウイルスに感染している事実から、直ちに本件出産の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑸ よって、原告の具体的な傷病の状態に照らしても、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件出産の際の特定フィブ リノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件出産の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとする。 別紙個2(原告番号225番) 以下、本別紙中では、原告番号225番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・ ることとする。 別紙個2(原告番号225番) 以下、本別紙中では、原告番号225番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・・・・・・・生)が、昭和58年12月30日、 ・・・・・・・・(以下「本件病院」という。)において、第2子出産(以下「本件出産」という。)後の弛緩出血に対する止血処置(以下「本件処置」という。)の際、特定フィブリノゲン製剤を投与されたことにより、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎が進行して肝硬変に罹患したと主張して、被告に対し、特措法6条1号による給付金4000万円の一部2000万円 の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ア原告は、昭和58年12月30日午前1時39分頃、本件病院において、第2子を出産した(本件出産)。 イ本件出産は、自然分娩による出産であり、本件病院の・・・・医師 (以下「・・医師」という。)が担当医師である(甲C22504)。 ウ本件出産に関する母子健康手帳(以下「本件母子手帳」という。)12頁「出産の状態」には、「分娩の経過」欄の「頭位」に○印が付けられ、「特記事項」として「弛緩性大出血輸血児は異常なし」との記載があり、「出血量」欄の「多量」に○印が付つけられ、その上部に 「2500㎖」、との記載があり、「出産の場所名称」欄に、「・・・・・・・・・・・・」の記名印が押されている(甲C22504)。 ⑵ 原告は、遅くとも平成11年5月頃までにC型肝炎ウイルスに感染したとの診断を受け、平成13年7月16日までに慢性C型肝炎に罹患したとの診断を受け、令和2年6月12日、肝硬変との診断を受けた(甲C22 501、22502)。 ⑶ 本件出産に関し、本 を受け、平成13年7月16日までに慢性C型肝炎に罹患したとの診断を受け、令和2年6月12日、肝硬変との診断を受けた(甲C22 501、22502)。 ⑶ 本件出産に関し、本件出産当時に作成された医療関係記録としては、本件母子手帳が存在するものの、診療録、レセプトその他の医療記録は現存していない。また、・・医師その他医療関係者からは、本件出産に関する陳述は得られていない。(甲C22505、弁論の全趣旨)第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件処置の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告の主張)⑴ 原告は、本件出産後、分娩室で輸血とともに、止血のために本件処置として特定フィブリノゲン製剤の投与を受けた可能性が極めて高い。 このことは、①本件出産後、原告がうとうとしていると、近くで・・医 師と夫が話しており、同医師が「血が止まらないから、国立病院に行きます。」と言っているのが聞こえ、分娩室で輸血を受けたこと、②本件母子手帳に「弛緩性大出血」と記載され、・・医師が夫に「血が止まらないから、国立病院に行きます。」と説明していたこと、③2500㎖の出血は命にかかわる大出血であること、④出産した昭和59年頃は全国的にフィ ブリノゲン製剤が大量に使用されていた時期であり、本件病院がフィブリノゲン製剤の納入実績のある病院であることなどから裏付けられる。 ⑵ 原告には、本件出産の際以外に大量出血をした経験がなく、その他のC型肝炎ウイルスの感染原因が考えられない。 (被告及び補助参加人の主張) ⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、患者について、低フィブリノゲン血症又は低フィブリノゲン血症の要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったと認めら 加人の主張) ⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、患者について、低フィブリノゲン血症又は低フィブリノゲン血症の要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったと認められる必要があるところ、本件各証拠をみても、原告が低フィブリノゲン血症と診断された事情は存在しない。原告については、本件出産後弛緩出血した事実(出血量2500㎖) が認められ、産科DICスコアが3点加算される可能性があるものの、こ のほかにDICの原因となる基礎疾患や、本件処置時における重篤な障害やショック症状の有無等の臨床症状、本件処置時における原告の身体症状等は不明であり、点数を算定すべき事情は認められない。 また、弛緩出血の治療としては、子宮収縮剤の使用といった薬物療法のほか、双手圧迫法、全身管理など様々なものが考えられるから、原告に250 0㎖の弛緩出血があったからといって、直ちに特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるものではない。 さらに、原告の供述によっても、本件処置の際、出血に対する処置として輸血をされた以外にいかなる止血処置がされたかは不明で、医師等から止血処置の内容や特定フィブリノゲン製剤を含む止血剤使用の有無等について説 明を受けたという経過もないから、本件処置として、特定フィブリノゲン製剤の投与があったとは言えない。 ⑵ 本件処置における担当医師の投与方針を明らかにする客観的証拠はない。 原告の供述によっても、担当医師の投与方針は不明と言わざるを得ないから、特定フィブリノゲン製剤の投与事実を認めることはできない。 2 原告のC型肝炎ウイルス感染事実の有無(原告の主張)原告は、平成11年頃、・・・・病院に約1週間入院して左膝の手術をした際、その時の血液検査でC型肝炎ウ 認めることはできない。 2 原告のC型肝炎ウイルス感染事実の有無(原告の主張)原告は、平成11年頃、・・・・病院に約1週間入院して左膝の手術をした際、その時の血液検査でC型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 (被告及び補助参加人の主張) 否認する。 退院時要約には、HCV-RNA定量検査の結果及びHCV-RNAゲノタイプについての記載があるものの、同記載は、検査結果を機械的に印字したものではなく、転記の正確性が明らかではない。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と原告のC型肝炎ウイルス感染との間の因果 関係の有無 (原告の主張)本件処置の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、上記投与と原告のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎が進行して肝硬変に罹患した事実の有無(原告の主張)新薬の治療により現在はウイルスは消えているが、肝硬変(非活動性)との診断を受けている。 (被告及び補助参加人の主張) 否認する。 原告提出証拠からは、各種検査結果により6か月以上の肝機能検査値の異常など、新犬山分類の要件を満たすことが確認できない。肝硬変についても、診断の根拠となる画像兼検査結果等は提出されていない。 第3 当裁判所の判断 1 本件処置の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無⑴ 原告は、本件出産後の弛緩出血に対する止血のための本件処置の一環として、輸血とともに特定フィブリノゲン製剤の投与を受けた可能性が高いと主張するが、本件処置の際、原告に対し特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを 産後の弛緩出血に対する止血のための本件処置の一環として、輸血とともに特定フィブリノゲン製剤の投与を受けた可能性が高いと主張するが、本件処置の際、原告に対し特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを裏付ける医療記録等の客観的な直接証拠はない(前提事実⑶)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる原告の具体的な傷病の状態及び医師の投与方針等の間接事実から、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを推認できるかどうかを検討する。 ⑵ 原告の病態 ア本件母子手帳の記載(前提事実⑴ウ)及び原告の供述(原告本人4頁) によれば、原告の病態について、自然分娩の後、弛緩出血し、出血量が2500㎖に及んだという事実が認められ、2000㎖以上の後産期出血はDICの原因となる基礎疾患に当たる(乙統200(120頁))。 イしかしながら、本件各証拠によっても、本件出産前後を通じ、原告の全身状態が著しく悪化していたとか、出血傾向が出現していたなどとし て、原告の病態が低フィブリノゲン血症又はDICに至るおそれがある状態であったと認めることはできない。 また、大量出血が認められる場合の産科領域における一般的な止血方法としては、手術療法として、用手的ないし冷却による子宮収縮を促す一般的処置や、双手圧迫法、膣強圧タンポン法等が存在し、薬物療法としても、 子宮を収縮させることにより止血する方法や、止血機構の機能を改善・増強することによる一般的な止血剤(アドナ、トランサミンなど)により止血する方法等が存在していたこと(乙統83(394頁)、94(277頁以下)、98(28頁))、弛緩性出血が生じた場合の対処法としても、止血のため子宮収縮促進法として、一般的な止血 ンなど)により止血する方法等が存在していたこと(乙統83(394頁)、94(277頁以下)、98(28頁))、弛緩性出血が生じた場合の対処法としても、止血のため子宮収縮促進法として、一般的な止血法及び子宮収縮剤の投与 法のほか、いかなる止血法も無効な場合にはやむを得ず子宮摘出術を行うこととされていること(乙統97(252頁))、本件は子宮摘出に至っていないことなどからして、弛緩性出血による大量出血があったという事実をもって、直ちに特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるとまではいえない。 ウまた、原告の供述(原告本人4頁)によれば、本件処置の当時、・・医師と原告の夫との間で、このまま出血が止まらなければ国立・・病院に原告を搬送しなければならないと話し合われたとあり、原告の出血量が2500㎖に及ぶことからすると、その供述は十分信用できるが、その後も出血傾向が続いていた事実を基礎づけるものではないから、上記 のやり取りの存在をもって、特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理 的に推認されるということもできない。 ⑶ 本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針本件各証拠によっても、本件処置当時における・・医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針を認めるに足りない。 また、原告の供述(原告本人7、8、20頁)によれば、本件処置の当時 に本件病院に在籍していた・・・・・元婦長が原告に対し、昭和50年代後半には大量出血の時には止血剤を使っていたと述べたとあるが、同元婦長に対し、原告から、フィブリノゲン製剤という名称を出して確認したところ、その名称は記憶していないとも聞かされたもので、上記の元婦長の発言から特定フィブリノゲン製剤の投与方針を推認されるということはできない。 から、フィブリノゲン製剤という名称を出して確認したところ、その名称は記憶していないとも聞かされたもので、上記の元婦長の発言から特定フィブリノゲン製剤の投与方針を推認されるということはできない。 そうすると、本件処置の当時、・・医師がどのような投与方針の下でこれを投与していたのかは明らかでない。 ⑷ 他原因の存否原告は、本件出産後の大量出血以外には事故や手術で大量出血したことはなく、他にC型肝炎ウイルスに感染する原因が考えられないと主張する。 しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路は輸血であり、その他の感染経路として、血液製剤に加えて、医療行為時の感染事故など様々なものがあること(乙統2(15頁)、218(722頁)等)、原告に対しては、本件処置の際、輸血が行われていること、昭和58年頃は、輸血後C型肝炎 (非A非B型肝炎)発症率は約16.1%であったと報告されていること(乙統218(723頁))などを総合すれば、原告がC型肝炎ウイルスに罹患している事実から、直ちに本件処置の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑸ よって、原告の具体的な傷病の状態に照らしても、残存する医療記録、 供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件処置の際の特定フィブ リノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 3 以上によれば、本件処置の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がな いからこれを棄却することとする。 別紙個3(原告番号226番) 以下、本別紙中では 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がな いからこれを棄却することとする。 別紙個3(原告番号226番) 以下、本別紙中では、原告番号226番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・・・・・・・・生)が、昭和42年2月27日、 ・・・・・・(以下「本件病院」という。)において、出血性十二指腸潰瘍に対する止血処置(以下「本件処置」という。)を受けた際、特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことにより、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎が進行して肝がんに罹患したと主張して、被告に対し、特措法6条1号による給付金4000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 本件処置の状況等(甲C22602ないし04、弁論の全趣旨)ア本件処置に関し、当時に作成された医療関係記録は、診療録、レセプトその他一切現存しない(甲C22605)。 イ原告は、昭和62年9月14日、本件病院内科を受診し、外来診療録の 同日の欄には、「輸血歴○+ 20年前」とある(甲C22602)。 ウ原告が平成14年10月30日頃に受けた・・・・・病院の短期人間ドック成績報告書の「指示事項」欄には、「S42年に輸血歴があることより輸血に起因したC型慢性肝炎と考えます」とある(甲C22603)。 エ・・・・・(以下「・・看護師」という。)は、平成24年2月6日付 けで「記憶」と題する文書(甲C22604。以下「本件メモ」という。)を作成した。本件メモには、「私は、・・・・・病院に看護婦として勤務しておりましたが昭和42年2月頃、大量出血で・・・・さんが入院され輸血を受けられていたこと、奥さんが毎日看病に来院されていた 。)を作成した。本件メモには、「私は、・・・・・病院に看護婦として勤務しておりましたが昭和42年2月頃、大量出血で・・・・さんが入院され輸血を受けられていたこと、奥さんが毎日看病に来院されていたこと等記憶しております。」とあり、末尾に・・看護師の署名押印がある。 ⑵ 原告のC型肝炎ウイルスへの感染等 ・・・・の・・・医師作成の平成24年9月8日付け診断書(甲C22601。以下「本件診断書」という。)には、「病名」として「肝細胞癌とC型慢性肝炎の治療後」とあり、これまでの病歴として「1968年・・・・病院で十二指腸潰瘍のため2.2L輸血。フィブリノゲン製剤を使用された可能性が高い。」、「1992年日赤人間ドックでC型慢性肝炎と診断」、 「2006年5月福大でS4径15㎜、S7径11㎜初発肝細胞癌にRFA。」などと記載されている。 ⑶ 本件病院に対する特定フィブリノゲン製剤の納入本件病院は、厚生労働省が公開している特定フィブリノゲン製剤の納入病院リスト上、納入実績が確認されている(弁論の全趣旨)。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件処置の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告の主張)⑴ 原告は、昭和42年2月25日、体調不良により倒れて意識を失ったため、その2日後に・・医院の外来を受診し、血液と便の検査を受けたとこ ろ、・・・・院長から、十二指腸潰瘍で出血がひどいので、至急入院施設のある病院に入院して下血止めと輸血を受けることが必要である旨言われ、本件病院に搬送されて、入院した。本件病院では、下血止めの投与と2200ccの輸血を受けた。 ⑵ ①原告の妻が、本件処置当時、医師から「出血がひどい。止血と輸血を している。」と説明されたこと、②・・医 送されて、入院した。本件病院では、下血止めの投与と2200ccの輸血を受けた。 ⑵ ①原告の妻が、本件処置当時、医師から「出血がひどい。止血と輸血を している。」と説明されたこと、②・・医師が本件処置の際にフィブリノゲン製剤を投与された可能性が高いと述べていること、③本件病院の外来診療録の昭和62年9月14日の欄に「輸血歴○+ 20年前」と記載があること、④・・・・・病院の短期人間ドック成績報告書に「昭和42年に輸血歴があることより輸血に起因したC型慢性肝炎と考えます」と記載が あること、⑤本件病院に看護師として勤務していた・・看護師が、原告が 本件処置当時、本件病院に大量出血で入院し、輸血を受けたこと、原告の妻が毎日来院していたことなどを述べていることを総合考慮すると、原告が、・・医院から本件病院に搬送された際に、十二指腸潰瘍による下血を止めるために2200㏄の輸血を受けると同時に、止血のためにフィブリノゲン製剤が投与された可能性が高い。 ⑶ 原告は、本件処置の際に特定フィブリノゲン製剤を投与された以外には、C型肝炎ウイルスに感染する原因が考えられない。 (被告の主張)⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、患者について低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要 性があったことが認められる必要がある。しかし、全証拠に照らしても、原告が低フィブリノゲン血症と診断されたことを裏付ける事情は認められない。また、原告について、DICの原因となる基礎疾患や臨床症状等は不明であり、DICの治療又は予防の必要性も認められない。 原告が2200㏄の輸血を受けたという主張は、客観的な裏付けを欠い ている。この点をおいても、出血量はなお不明であり、輸血を 等は不明であり、DICの治療又は予防の必要性も認められない。 原告が2200㏄の輸血を受けたという主張は、客観的な裏付けを欠い ている。この点をおいても、出血量はなお不明であり、輸血を行った理由、処置の内容及び下血止めの種類等も明らかでないから、投与された下血止めが特定フィブリノゲン製剤であると推認することはできない。 ⑵ 本件処置当時の担当医師の投与方針を明らかにする証拠はないから、担当医師の投与方針に照らして、特定フィブリノゲン製剤の投与を認めるこ ともできない。 なお、本件診断書は、本件処置に何らの関与及び関係がない医師によって作成されたものであり、かつ、原告の申告内容をそのまま記載したものと考えられるから、本件診断書の記載を基に、原告に対する特定フィブリノゲン製剤の投与事実を認めることはできない。 ⑶ 以上のとおり、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは 認められない。 (補助参加人の主張)⑴ 本件処置に関するカルテ等の客観的証拠は一切提出されておらず、原告に対して輸血及びフィブリノゲン製剤が投与された事実を確認することはできない。原告が指摘する医療記録における2200㏄の輸血や原告の輸 血歴に関する記載は、原告の自己申告に依拠したものであり、原告に対する輸血施行の事実の裏付けにはならない。 また、この点をおいて、仮に原告に輸血がされていたとしても、原告が低フィブリノゲン血症であったとは認められず、フィブリノゲン製剤が投与されたことにはならない。 ⑵ 本件メモは、・・看護師が原告のことを記憶していること自体きわめて疑問があり、信用できない上に、本件処置を担当した医師の投与方針を明らかにするものではない。 ⑶ 以上のとおり、原告に対する特定フィブリ メモは、・・看護師が原告のことを記憶していること自体きわめて疑問があり、信用できない上に、本件処置を担当した医師の投与方針を明らかにするものではない。 ⑶ 以上のとおり、原告に対する特定フィブリノゲン製剤の投与事実は認められない。 2 原告のC型肝炎ウイルス感染事実の有無(原告の主張)原告は、平成5年9月28日から同年11月5日までに受けた肝生検の結果、C型肝炎の確定診断を受けた。 (被告及び補助参加人の主張) HCV-RNA検査結果等が提出されておらず、C型肝炎ウイルス感染の事実が認められないため、否認する。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と原告のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無(原告の主張) 本件処置の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるか ら、上記投与と原告のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎が進行して、肝がんに罹患した事実の有無(原告の主張) 原告は、平成5年に慢性C型肝炎の診断を受け、その後、肝細胞癌を指摘されて現在も治療を継続している。証拠として、甲C22601号証がある。 (被告及び補助参加人の主張)新犬山分類に基づく慢性C型肝炎の診断の根拠及び肝がんの診断の根拠となる各種検査結果等が提出されていないため、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件処置の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無⑴ 原告は、本件処置の際に下血止めとしてフィブリノゲン製剤が投与された高度の蓋然性があると主張するが、その際、原告に特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを裏付ける医療記録そ ン製剤投与の有無⑴ 原告は、本件処置の際に下血止めとしてフィブリノゲン製剤が投与された高度の蓋然性があると主張するが、その際、原告に特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを裏付ける医療記録その他の直接的な証拠はない。 そこで、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる原告の具体的な傷病の状態及び担当医師の投与方針等の間接事実から、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことが合理的に推認できるかどうかを検討する。 ⑵ 原告の病態 ア原告の病態について、原告は、十二指腸潰瘍により大量出血し、下血止めの投与と2200㏄の輸血を受けたと述べる(甲C22605(3頁))が、これを裏付ける客観的資料はなく、また、原告の上記陳述の信用性を補う供述証拠その他の証拠も見当たらない上、原告の陳述によれば、血液検査と便検査から・・医院において十二指腸潰瘍の診断を受けたというも のの、医学的知見(乙統85(15頁以下))によれば、画像診断を伴わ ずに潰瘍の部位を特定する経過が不明であるし、仮に潰瘍が発見されたとすれば、潰瘍に対する処置が必要であると思われるのに、内科的処置あるいは外科的処置の有無も明らかでなく、・・病院医師からは、輸血と下血止めの投与のために本件病院への転院の指示を受けたというのであるから、経過が不自然であって、原告が上記陳述どおりの病態であったと認めるこ とはできず、低フィブリノゲン血症又はDICの治療若しくは予防の必要性がある状態であったと認めることはできない。 これに対し、原告は、本件病院の外来や・・・・・病院における医療記録に、原告の輸血歴に関する記載(甲C22602、03)があることを指摘するが、これらは原告の肝機能検査の数値に異常が認められたことに これに対し、原告は、本件病院の外来や・・・・・病院における医療記録に、原告の輸血歴に関する記載(甲C22602、03)があることを指摘するが、これらは原告の肝機能検査の数値に異常が認められたことに ついて、医師に対し原告が自ら申告した内容を医師が記載したものと認められる。この点をおいても、上記各記載からは、昭和42年頃に原告に対して輸血が施行された事実が認められるにとどまり、当時の具体的な病態、出血量や輸血量は明らかにならない。 イそうすると、原告の病態について、出血量、出血状況とも不明であり、 原告の陳述によれば、輸血と下血止めの投与が行われたということであるが、止血のためにどのような処置が行われたかが明らかでなく、「下血止め」がどのような薬剤を指すかも明らかでないから、原告の病態から特定フィブリノゲン製剤の投与事実を合理的に推認することはできない。 ウまた、原告は、原告の当時の病態に関し、原告の妻から、本件処置当時、 原告が点滴をしており、医師が「出血がひどい。止血と輸血をしている。」と説明していた旨聞いたと述べ(甲C22607)、・・看護師も、原告が本件処置当時、大量出血で本件病院に入院し、輸血を受けたこと、原告の妻が毎日来院していたことなどを述べるが(甲C22604)、上記各陳述内容を前提としても、出血の程度や止血のために原告に対し行われた 処置の具体的な内容はやはり明らかでなく、点滴の詳細も不明である。 エさらに、原告は、・・医師が本件診断書において、本件処置の際にフィブリノゲン製剤を投与された可能性が高いと述べていることをフィブリノゲン製剤投与の事実を推認する根拠として主張するが、本件診断書の作成経緯を明らかにする資料はなく、原告の陳述書(甲C22605)によると、本件処 を投与された可能性が高いと述べていることをフィブリノゲン製剤投与の事実を推認する根拠として主張するが、本件診断書の作成経緯を明らかにする資料はなく、原告の陳述書(甲C22605)によると、本件処置の担当医師は「・・・医師」、「・・・医師」とあるから、 本件診断書の作成者である・・医師は本件処置の担当医師でないこと、本件処置に関し、診療録等の医療記録が一切現存していないことなどからして、・・医師による上記記載について、原告の病態を踏まえた内容であるとみる余地はなく、信用できない。 したがって、本件診断書の記載をもって、原告に対する特定フィブリノ ゲン製剤の投与を認めることはできない。 ⑶ 本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針本件各証拠によっても、本件処置当時の本件病院ないし担当医師のフィブリノゲン製剤に関する投与方針を認めるに足りない。 ⑷ 他原因の存否 原告は、本件処置時の他にC型肝炎ウイルスに感染する原因が考えられないと主張する。 しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路は輸血であり、その他の感染経路として、血液製剤に加えて、医療行為時の感染事故など様々なものがあること (乙統2(15頁)、218(722頁)等)、原告は本件処置の一環で輸血を受けたと陳述していること、昭和42年当時の輸血後肝炎発症率は約31.1%と報告されていること(乙統230(166頁))などを総合すると、原告がC型肝炎ウイルスに感染している事実から、直ちに本件処置の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認すること はできない。 ⑸ よって、原告の具体的な傷病の状態に照らしても、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本 本件処置の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認すること はできない。 ⑸ よって、原告の具体的な傷病の状態に照らしても、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件処置の際の特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件処置の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとする。 別紙個4(原告番号228番) 以下、本別紙中では、原告番号228番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・・・・・・・生)が、昭和56年6月23日、・ ・・・・・(以下「本件病院」という。)において、帝王切開術により第2子を出産(以下「本件出産」という。)した際、特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことにより、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎に罹患したと主張して、被告に対し、特措法6条2号による給付金2000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 本件出産(甲C22801、弁論の全趣旨)ア原告は、昭和56年6月23日午後4時00分頃、帝王切開術により第2子を出産した(本件出産)。 イ本件出産の担当医師は、・・・・医師(以下「・・医師」という。)で ある。 ウ本件出産に関する母子手帳(甲C22801。以下「本件母子手帳」という。)12頁「出産の状態」では、「分娩の経過(母児の状態)」欄の「頭位」に◯印が付された上で、「特記事項」として「前置胎盤のため帝王切開術」、「Apgar9点」とある。また、「出血量」欄の「少量・ 2頁「出産の状態」では、「分娩の経過(母児の状態)」欄の「頭位」に◯印が付された上で、「特記事項」として「前置胎盤のため帝王切開術」、「Apgar9点」とある。また、「出血量」欄の「少量・ 中量・多量( ㎖)」の「多量」に◯印が付されており、その上に「1500」と記載されている。 エ本件出産に関し、本件出産当時に作成された医療関係記録としては、本件母子手帳が存在するものの、診療録、レセプトその他の医療記録は現存していない(甲C22807)。 ⑶ 原告のC型肝炎ウイルスへの感染等 ・・・・・・・・・・・の・・・・医師作成の平成24年9月20日付け「医証」(甲C22806)には、「病名」として「C型慢性肝炎」とあり、「1996年近医で肝炎を指摘され、4月8日当院内科を初診、HCV群別1型、HCVRNAプロープ法0.5MEq/mL未満、PCR定性で陽性」、「1996年6月10日肝生検を行い慢性活動性肝炎の病理学的診 断」、「2012年9月13日現在、HCV抗体陽性、HCVグループ1型、HCVRNA6.1LogIU/mL(1型、高ウィルス量)。エコーにて肝形態異常なし。」などと記載されている。 ⑷ 本件病院に対する特定フィブリノゲン製剤の納入本件病院には、昭和56年当時の特定フィブリノゲン製剤の納入実績が確 認されている(甲C22805)。 ⑸ 他の出産ア原告は、昭和51年9月13日、・・・・・・において、経膣分娩により第1子を出産した。上記出産に関する母子健康手帳12頁「出産の状態」の「出血量」欄では、「中量」に◯印が付されている。(甲C22802) イ原告は、昭和57年11月30日、本件病院において、帝王切開術により第3子を出産した。上記出産の担当医 状態」の「出血量」欄では、「中量」に◯印が付されている。(甲C22802) イ原告は、昭和57年11月30日、本件病院において、帝王切開術により第3子を出産した。上記出産の担当医師は・・・医師である。上記出産に関する母子健康手帳12頁「出産の状態」の「出血量」欄では「多量」に◯印が付され、「860㎖」と記入されている。(甲C22803)第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告の主張)⑴ 本件出産の際、原告は、約2000㎖もの大量出血を生じ、輸血を受けているところ、産科出血において出血量が1500~2000㎖を超えると血液凝固因子の消失が進行し、希釈性凝固障害を引き起こすという医学 的知見が存在する。また、出産直後には・・医師から原告に対し、出血量 に関する説明がされている。こうした経過からして、原告が低フィブリノゲン血症又は産科DICに陥っていた可能性が認められるから、原告に対し、フィブリノゲン製剤が投与された可能性が高い。 ⑵ 仮に原告が低フィブリノゲン血症又は産科DICに陥った可能性が認められないとしても、フィブリノゲン製剤は、低フィブリノゲン血症又はD ICの症例にしか使用されないわけではなく、昭和56年当時、適応外使用の症例は既に多数存在しており、厚生労働省による薬害肝炎の検証および再発防止に関する研究班の中間報告書(乙統196(33頁))でも、前置胎盤は特定フィブリノゲン製剤の使用対象疾患とされている。また、出血性ショックに対する医療処置として特定フィブリノゲン製剤の投与が 必要ないし極めて有用である旨記載された医学文献が存在する。 そして、本件出産前から、・・医師が全前置胎盤を原因とする出 、出血性ショックに対する医療処置として特定フィブリノゲン製剤の投与が 必要ないし極めて有用である旨記載された医学文献が存在する。 そして、本件出産前から、・・医師が全前置胎盤を原因とする出産時の大量出血を予見していたことに鑑みれば、・・医師において、当時本件病院に納入され、効用の高い止血剤として産婦人科で多用されていたフィブリノゲン製剤を準備せずに帝王切開術に対応したとは到底考え難く、原告に生じた 2000㎖もの大量出血への処置としてフィブリノゲン製剤が投与された蓋然性が認められる。 ⑶ 原告の第1子の出産は正常分娩であり、大量出血をした事実はないこと、第3子の出産では、大量出血をもたらす基礎疾患がなく、帝王切開中に出血により意識を喪失した事実もないことに照らせば、本件出産以外の出産 の機会にフィブリノゲン製剤が投与された可能性は低い。そして、原告には、本件出産の機会以外に大量出血を伴う手術を受けたことはなく、本件出産の際の特定フィブリノゲン製剤の投与以外にC型肝炎ウイルスに感染する原因が考えられない。 (被告及び補助参加人の主張) ⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、患者について低 フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったことが認められる必要があるところ、本件各証拠をみても、原告が低フィブリノゲン血症と診断された事情は存在しない。原告は、前置胎盤であり、本件出産時に1500㎖の出血があったことがうかがわれ、産科DICスコアが1点加算される可能性はあるものの、この他に、DI Cの診断基準に照らして、点数を算定すべき事情があることを裏付ける客観的な証拠は存在しない。なお、本件出産後、・・医師から出血量が2000㎖であると言われたと 能性はあるものの、この他に、DI Cの診断基準に照らして、点数を算定すべき事情があることを裏付ける客観的な証拠は存在しない。なお、本件出産後、・・医師から出血量が2000㎖であると言われたという原告の供述は、一般的に信用性が高いと考えられる本件母子手帳の記載に反する一方で客観的な裏付けを欠いているから、信用できない。 また、1500~2000㎖を超える出血が直ちに希釈性凝固障害を起こすという医学的知見はなく、出血量とフィブリノゲン値の具体的な相関関係も明らかでない。 ⑵ア原告には、前置胎盤を要因とする弛緩出血が生じていたと疑われるものの、弛緩出血の治療法としては、様々なものが考えられるから、1500 ㎖の弛緩出血の事実から、直ちに特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるものではない。 イ特定フィブリノゲン製剤は、出血性疾患のうち、血液中のフィブリノゲンが減少ないし欠乏することに起因して、止血機構自体が正常に機能しなくなり、その結果、止血困難を来たす低フィブリノゲン血症が発症した場 合に投与が推奨されてきた製剤であるから、単に多量の出血があったことを理由に投与されるものではない。出血性ショックに対する治療として輸血や輸液を行った場合に出血傾向が亢進し、そのためにフィブリノゲン製剤を投与することはあり得るものの、出血傾向が亢進する原因もフィブリノゲンの減少ないし欠乏に限られるものではない。したがって、大量出血 により出血性ショックを呈したとしても、そのことから直ちに出血傾向が 亢進し、その原因がフィブリノゲンの減少ないし欠乏にあることにはならず、当然に特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるわけではない。 ウいかなる病態に対していかなる治療処置を選択して実施するかは医師の の原因がフィブリノゲンの減少ないし欠乏にあることにはならず、当然に特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるわけではない。 ウいかなる病態に対していかなる治療処置を選択して実施するかは医師の自由な裁量に委ねられており、その場その場の個々の医師の判断と言わざるを得ないから、前置胎盤に基づく大量出血の場合に特定フィブリノゲン 製剤の投与が推奨されていたとしても、治療の選択肢としてはそれ以外にも存在する以上、特定フィブリノゲン製剤を投与したと直ちに推認することはできない。 ⑵ 本件出産時の・・医師の投与方針を明らかにする客観的証拠はなく、原告の供述によっても不明と言わざるを得ないから、担当医師の投与方針に照ら して特定フィブリノゲン製剤の投与を認めることもできない。 ⑶ したがって、本件出産時における特定フィブリノゲン製剤の投与事実を認めることはできない。 2 原告のC型肝炎ウイルス感染事実の有無(原告の主張) 原告は、平成8年、C型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 (被告及び補助参加人の主張)HCV-RNA検査結果等が提出されておらず、C型肝炎ウイルス感染の事実が認められないため、否認する。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と原告のC型肝炎ウイルス感染との間の因果 関係の有無(原告の主張)本件出産の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、上記投与と原告のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張) 特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎に罹患した事実の有無(原告の主張)原告は、平成8年、慢性C型肝炎の診断を受けている。その証拠が、甲C ゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎に罹患した事実の有無(原告の主張)原告は、平成8年、慢性C型肝炎の診断を受けている。その証拠が、甲C22806である。 (被告及び補助参加人の主張) 提出された証拠からは、6か月以上の肝機能検査値の異常など、新犬山分類を満たすことが確認できないため、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件出産の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与事実の有無⑴ 原告は、本件出産の際の止血処置の一環として特定フィブリノゲン製剤の 投与がされた蓋然性が高いと主張するが、本件出産の際、原告に特定フィブリノゲン製剤が投与されたことを裏付ける医療記録その他の直接的な証拠はない(前提事実⑴エ)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる原告の具体的な傷病の状態及び担当医師の投与方針等の間 接事実から、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを合理的に推認されるかどうかを検討する。 ⑵ 原告の病態ア本件母子手帳の記載によれば、原告の病態について、前置胎盤であり、帝王切開術の処置が施され、その際の出血量が1500㎖の大量出血であ った事実が認められ、1000㎖を超える出血はDICの原因となる基礎疾患に当たり、前置胎盤及び帝王切開術はDICの誘因となる産科疾患に当たる(乙統97(255頁)、200(120頁))。 この点、原告は、本件出産後に医師から出血量が2000㏄であったと説明された旨供述するが(原告本人6頁)、本件母子手帳の上記記載と整 合しない上に、これを裏付ける客観的証拠はない。原告は、本件母子手帳 の記載が・・医師によるものでない ったと説明された旨供述するが(原告本人6頁)、本件母子手帳の上記記載と整 合しない上に、これを裏付ける客観的証拠はない。原告は、本件母子手帳 の記載が・・医師によるものでないこと(原告本人29頁)を理由に、本件母子手帳には暫定的な出血量が記載されたものと推測するが、本件出産時の出血が断続的に続いていたなど、暫定的な出血量を記載する原因となる事情もうかがわれないから、原告の上記推測に根拠はない。 したがって、原告の上記供述は信用できない。 イそうすると、原告の病態について、全前置胎盤であり、腹式帝王切開術の処置が施され、その際の出血量が1500㎖であった事実のほか、保存血による輸血が施されたこと、原告が意識を失っていた理由が帝王切開手術開始前の麻酔によること(原告本人6、15、16、25頁)などが認められ、本件各証拠によっても、本件出産当時の原告の全身状態等は不明 であることからすると、本件出産前後を通じ、原告の病態が低フィブリノゲン血症又はDICの治療若しくは予防の必要性がある状態であったとは認められない。 これに対し、原告は、産科出血において出血量が1500~2000㎖を超えると血液凝固因子の消失が進行し、希釈性凝固障害を引き起こすと いう医学的知見の存在を強調し、本件出産当時の原告の病態について、低フィブリノゲン血症又はDICに陥っていた可能性があると主張し、原告が援用する医学文献(甲C22808)には、出産時の出血量が1500~2000㎖を超えてくると、妊婦の凝固因子喪失が進み、赤血球輸血や補液が優先されることとも相まって、希釈性凝固障害(凝固因子の血中濃 度が止血可能域を下回る状態)が生じること、大量出血が生じた際に真っ先に止血可能域を下回る凝固因子がフィブリノゲンと確 血や補液が優先されることとも相まって、希釈性凝固障害(凝固因子の血中濃 度が止血可能域を下回る状態)が生じること、大量出血が生じた際に真っ先に止血可能域を下回る凝固因子がフィブリノゲンと確認されていることなどの記載がある。しかし、同記載の趣旨は、1500~2000㎖を超える産科大量出血に際して血液凝固因子の補充が優先的に行われないと希釈性凝固障害が生じるおそれがあるというもので、同記載からも、そうし た出血が生じると直ちに低フィブリノゲン血症又はDICになるとみるこ とは困難であって、低フィブリノゲン血症又はDICに陥っていた可能性があるかどうかについては、上記説示のとおり、出血量以外の本件出産前後の全身状態等を総合して考慮しなければならない。 ウ大量出血が認められる場合の産科領域における一般的な止血方法としては、手術療法として、用手的ないし冷却による子宮収縮を促す一般的処置 や、双手圧迫法、膣強圧タンポン法等が存在し、薬物療法としても、子宮を収縮させることにより止血する方法以外にも、止血機構の機能を改善・増強することによる一般的な止血剤(アドナ、トランサミンなど)により止血する方法等が存在していたから(乙統83(394頁)、94(277頁以下)、98(28頁))、前置胎盤により1500㎖の出血があっ たという事実をもって、直ちに特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるとまではいえない。 エこれに対し、原告は、昭和42年に刊行された医療文献からは、一般に1250~1750㎖の出血で中等度ないし重症のショック状態を来たし、1750㎖以上の出血となると直ちに適切な処置を行わなければ致死的な ショックを起こすとされており、失血ショックの治療法として、フィブリノゲン製剤の投与が 度ないし重症のショック状態を来たし、1750㎖以上の出血となると直ちに適切な処置を行わなければ致死的な ショックを起こすとされており、失血ショックの治療法として、フィブリノゲン製剤の投与が推奨されていたことが明らかであると主張する。 しかしながら、特定フィブリノゲン製剤は、血液中のフィブリノゲンが減少ないし欠乏したと認められる場合に、これを補充して凝固系の障害を解消することにより、止血機構の正常な機能を回復させて止血させるため に投与される血液製剤であり、単に多量の出血があったことを理由に投与されるものとはいえない。原告が指摘する医療文献も、当然ながら、上記製剤が有する止血機能の内容を踏まえ、大量出血や出血性ショックに対する治療方法として、有効な止血剤を列挙する中で、その一つとして同製剤を挙げたものであるから、同文献を基に、低フィブリノゲン血症ないしD ICの予防の必要性がない症例に対しても、特定フィブリノゲン製剤投与 が推奨されていたとみることはできない。 したがって、原告の上記主張は、採用できない。 オさらに、原告は、厚生労働省による薬害肝炎の検証および再発防止に関する研究班の中間報告書(乙統196)図表2-7において、前置胎盤がフィブリノゲン製剤の使用疾患として明記されていることを援用し、弛緩 出血字体がフィブリノゲン製剤の使用対象疾患であったと主張する。しかし、同図表の注釈が「具体的な記載例」にある疾患を発症しているが、後天性低フィブリノゲン血症を発症していない場合を含むと明示したものではないから、原告らの上記主張は採用できない(本判決本文第4の2⑷ウ)。仮に臨床現場において、担当医師の個別の判断の下、低フィブリノ ゲン血症の診断を待たずに弛緩出血の患者に対して投与された症 はないから、原告らの上記主張は採用できない(本判決本文第4の2⑷ウ)。仮に臨床現場において、担当医師の個別の判断の下、低フィブリノ ゲン血症の診断を待たずに弛緩出血の患者に対して投与された症例があったとしても、そうした症例が存在するからと言って、低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性がない症例について、担当医師が当該症例をどのように判断したか、あるいは、担当医師の一般的な投与方針に照らして当該症例が投与対象となるかといった要素 の検討なしに、適応外投与があった事実を推認することはできない。 したがって、原告の上記主張も採用できない。 カ以上、原告の病態から、原告に対する特定フィブリノゲン製剤の投与を直ちに推認することはできない。 ⑶ 本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針 本件各証拠によっても、本件出産当時の本件病院ないし・・医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針を認めるに足りない。 原告は、前置胎盤による大量出血が本件出産前から予見されていたことから、・・医師がフィブリノゲン製剤を準備しておかなかったとは考えられないと主張するが、前置胎盤による出血に対する止血方法がフィブリノゲン製 剤投与に限られないことは上記⑵のとおりであるから、本件病院ないし・・ 医師の投与方針が明らかでない以上、上記の推測を基に特定フィブリノゲン製剤の投与を認めることは困難である。 ⑷ 他原因の存否原告は、原告には、本件出産時の前置胎盤による大量出血以外には、C型肝炎ウイルスに感染する原因が見当たらないと主張する。 しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路は輸血であり、その他の感染経路として、 肝炎ウイルスに感染する原因が見当たらないと主張する。 しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路は輸血であり、その他の感染経路として、血液製剤に加えて、医療行為時の感染事故など様々なものがあるとされている(乙統2(1、2、15頁)、218(722頁)等)。このことに加え、原告に対しては、本件出産の際、輸血が行われていること、 昭和56年頃の輸血後C型肝炎(非A非B型肝炎)発症率は約16.1%であったと報告されていること(乙統218(722頁))などを総合すれば、原告がC型肝炎ウイルスに罹患している事実から、直ちに本件出産の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはできない。 ⑸ よって、原告の具体的な傷病の状態に照らしても、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件出産の際の特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件出産の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとする。 別紙個5(原告番号230番) 以下、本別紙中では、原告番号230番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・・・・・・生)が、平成2年5月15日、・・・ ・・・・・・・(以下「本件病院」という。)において、子宮頸がん手術(以下「本件手術」という。)を受けた際、特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことにより、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎が進行して肝がんに罹患したと主張して、被 。)において、子宮頸がん手術(以下「本件手術」という。)を受けた際、特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことにより、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎が進行して肝がんに罹患したと主張して、被告に対し、特措法6条1号による給付金4000万円の一部2000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 本件手術の状況等ア原告は、平成2年4月27日に本件病院に入院し、同年5月15日、本件手術を受けた。本件病院における担当医師は、・・・医師であった。 (甲C23005、06) イ上記アの入院中に原告が書き込んだ手帳(以下「本件手帳」という。甲C23005)のノート欄には、平成2年4月27日から日ごとの記載があり、同年5月15日の欄には「いよいよ手術本番」などの記載があり、同月16日の欄には「夕方先生来おなかの中がひどかった 1800㏄の出血とのこと、止血(400㏄輸血)」などの記載がある。 ⑵ 原告は、平成4年頃、C型肝炎ウイルス感染との診断を受け、治療を受けていたが、遅くとも平成24年9月14日にはC型慢性肝炎の診断を受け、平成25年5月9日には肝細胞癌との診断を受けた(甲C23001、02、06)。 ⑶ 本件病院における特定フィブリノゲン製剤の納入状況に関し、ミドリ十 字を合併により承継したウェルファイド株式会社が保有する納入実績デー タ(以下「本件納入データ」という。)上は、非加熱製剤であるフィブリノゲン-ミドリ(以下「本件非加熱製剤」という。)について、昭和62年2月に5本、3月に11本、5月に2本それぞれ納入したのを最後に、その後の納入はされておらず、フィブリノゲンHT-ミドリ(以下「本件加熱製剤」という。)について、昭和62年6月に1本、7月に5本、9 月 、3月に11本、5月に2本それぞれ納入したのを最後に、その後の納入はされておらず、フィブリノゲンHT-ミドリ(以下「本件加熱製剤」という。)について、昭和62年6月に1本、7月に5本、9 月に5本、11月に11本、12月に3本、昭和63年1月に7本、2月に5本、4月に3本納入されたのを最後に、その後の納入はされておらず、同年6月には11本返品されている(丙C23001、弁論の全趣旨)。 ⑷ 本件手術に関し、当時に作成された医療関係記録は、診療録、レセプトその他一切現存しない(甲C23004)。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件手術の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告の主張)⑴ 原告について、平成2年5月15日に行われた子宮頸がん手術(本件手術)の際に止血のために特定フィブリノゲン製剤を投与された可能性が極 めて高い。 このことは、①薬害肝炎の検証及び再発防止に関する研究班の中間報告書(乙統196(33頁))において、「フィブリノゲン製剤の静注での使用疾患・用途」として、図表の「婦人科疾患」欄に「子宮頸癌」が挙げられているとおり、子宮頸がん手術の症例において、止血のために特定フ ィブリノゲン製剤が静注された実例が実際にあること、②本件手帳の平成2年5月16日(水)のページに、「夕方(・・)先生来おなかの中がひどかった 1800㏄の出血とのこと、止血(400㏄輸血)」との記載があり、その際、・・医師から「昔の盲腸の手術と帝王切開のせいで、内臓と内臓、内臓と腸壁が酷く癒着していて、それを切り離すのが大変だ った。出血が多くて1800㏄程になり、まだ、切り離さなくてはいけな い状態なのに、これ以上出血するままにしていたら命の危険にも及ぶので く癒着していて、それを切り離すのが大変だ った。出血が多くて1800㏄程になり、まだ、切り離さなくてはいけな い状態なのに、これ以上出血するままにしていたら命の危険にも及ぶので、止血の必要があると判断し、止血剤を使った。」との説明を受けたことを併せると、本件手術時に1800㏄の多量出血があり輸血を400㏄するとともに止血剤として特定フィブリノゲン製剤を投与したことが強く推認されること、③本件病院が特定フィブリノゲン製剤の納入実績がある病院 であることなどから裏付けられる。 ⑵ 原告は、昭和44年に帝王切開術により第1子を出産したが、出血量は少なく無事終了したことから、本件手術の際以外には、C型肝炎ウイルスに感染する原因が考えられない。 (被告の主張) ⑴ 特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、本件手術の当時、原告について低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったと認められる必要があるが、本件において、本件手術の状況を明らかにし、上記必要性を認めるに足りる客観的な証拠は存在しない。 原告の陳述、供述を踏まえて検討しても、原告の出血量は、本件手帳の記載から1800㏄、輸血400㏄と認めることができるものの、それ以上の具体的な手術経過は不明であり、本件手術時における重篤なショック症状等の臨床症状の有無、身体症状、執られた措置の内容等は不明であり、本件手術時、低フィブリノゲン血症やDICを発症させるほどの状態であ ったと認めるに足りる事情は見当たらない。 また、原告は、・・医師から、止血剤を使ったと説明を受けたことや、手術後に点滴を受けた旨を供述するものの、点滴を受けた際の状況は判然とせず、止血剤の名称や種類については聞いていないか らない。 また、原告は、・・医師から、止血剤を使ったと説明を受けたことや、手術後に点滴を受けた旨を供述するものの、点滴を受けた際の状況は判然とせず、止血剤の名称や種類については聞いていないから、原告の供述によっても、いかなる薬剤又は止血剤が投与されたかは不明である。仮に原 告に点滴等の投与が行われ、それが止血剤であったとしても、止血剤には アドナ、トランサミン等の種類があり、昭和60年以降、特定フィブリノゲン製剤の使用について慎重な態度で臨むことが推奨されるようになっていたことを踏まえると、特定フィブリノゲン製剤以外の止血剤の投与により止血が行われた可能性は相当に高いというべきである。 ⑵ 担当医師の投与方針に照らして、特定フィブリノゲン製剤が投与された かどうかを検討しても、本件手術時における担当医師の投与方針を明らかにする証拠はなく、原告の供述によっても、上記投与方針は不明と言わざるを得ないことから、上記観点からも、本件手術の際に、特定フィブリノゲン製剤の投与事実を認めることはできない。 (補助参加人の主張) 被告の主張を援用し、以下の主張を追加する。 ⑴ 本件非加熱製剤については、本件手術当時には、本件病院で患者らに対して使用されていないことが明らかである。すなわち、本件納入データに鑑みれば、本件病院においては、昭和62年6月時点で肝炎リスクが懸念される本件非加熱製剤から本件加熱製剤に切替えがされていたことが明ら かであるところ、本件非加熱製剤の回収状況等に鑑みれば、本件手術当時に、本件病院に本件非加熱製剤が残存していなかったことは明らかであり、原告に対して本件非加熱製剤を使用することはなかったと言える。 ⑵ 本件加熱製剤についても、本件手術当時には、本件病院で患者らに対して 件病院に本件非加熱製剤が残存していなかったことは明らかであり、原告に対して本件非加熱製剤を使用することはなかったと言える。 ⑵ 本件加熱製剤についても、本件手術当時には、本件病院で患者らに対して使用されていないことが明らかである。すなわち、昭和63年6月に本 件加熱製剤に関する緊急安全性情報が発出されたことから、ミドリ十字は、同製剤の納入実績がある全医療機関に対して、本件加熱製剤の非A非B型肝炎の発症リスクを通知し、その投与は必要最小限とするよう注意喚起を行うとともに、回収措置を行ったもので、本件病院においても、昭和62年6月から昭和63年4月にかけて本件加熱製剤が40本納入され、他方 で、同年6月には11本が返品されている。そして、この返品は、本件病 院が残存する本件加熱製剤の回収措置に応じたことによるものと考えられ、その後、本件手術がおこなわれた平成2年5月まで納入されていない。 ⑶ 本件納入データを含む納入実績データの提供を受けていた理由は、①卸売業者からの支払代金額及びリベート・アローアンスの額を決定するため、②製薬会社としての義務を果たすため、並びに③営業計画を立てて日々の プロモーション活動のツールとするためである。特に①は、卸売業者の売上げ・収支に直結することであり、不正確な情報提供を行うことは卸売業者としての信用を失墜させる行為であることから、卸売業者は正確な納入実績データの提供を心掛けていたと考えられる。したがって、納入実績データの信用性は高い。 2 原告のC型肝炎ウイルス感染事実の有無(原告の主張)原告は、平成4年4月にC型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 (被告及び補助参加人の主張)HCV-RNA陽性であることを示す検査結果等が提出されておらず、否 有無(原告の主張)原告は、平成4年4月にC型肝炎ウイルスに感染していることが判明した。 (被告及び補助参加人の主張)HCV-RNA陽性であることを示す検査結果等が提出されておらず、否 認する。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と原告のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無(原告の主張)本件手術の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、 上記投与と原告のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 C型慢性肝炎が進行して肝がんに罹患した事実の有無(原告の主張) 原告は、平成4年4月にC型肝炎と診断され、その後様々な治療を受け続 したが肝炎ウイルスを消すことができないまま、平成25年5月に肝細胞癌と診断された。 (被告及び補助参加人の主張)診断書における診断の根拠となった各種検査結果等が提出されておらず、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件手術の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無⑴ 原告は、本件手術の際、特定フィブリノゲン製剤を投与されたと主張するが、本件手術に当たり、原告に対し特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを裏付ける医療記録等の客観的な直接証拠はない(前提事実⑷)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる原告の具体的な傷病の状態及び医師の投与方針等の間接事実から、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを推認できるかどうか検討する。 ⑵ 原告の病態 ア原告の陳述、供述及び本件手帳の記載によれば、原告の病態につい 針等の間接事実から、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを推認できるかどうか検討する。 ⑵ 原告の病態 ア原告の陳述、供述及び本件手帳の記載によれば、原告の病態について、平成2年4月27日の入院後、手術日まで各種検査を受検し、特段の急変等は認められないまま本件手術に至ったこと、本件手術の際、開腹後、臓器の癒着が確認されたこと、1800㏄の出血が認められ、止血がされたこと、400㏄の輸血が行われたことが認められる。 しかしながら、本件手帳を含む本件各証拠によっても、具体的な手術経過は不明であり、本件手術時において異常な経過があったとか、本件手術前後に、重篤な障害、ショック症状等の臨床症状や身体症状があったことはうかがわれないこと、子宮頸がん手術は、厚生省DIC診断基準のうちの基礎疾患である「組織損傷」「大手術後」には当たらないこと(乙統2 00(121、122頁)、106(371頁))などからして、原告に DICを発症する恐れのある基礎疾患があったとか、臨床症状として出血によりショック状態に陥り全身状態が著しく悪化していた等の事情があったと認めることはできない。 イまた、原告は、本件手帳に「止血」との記載があることや原告が・・医師から、癒着がひどく臓器を「切り離さなくてはいけない状態なのに、こ れ以上出血するままにしていたら命の危険にも及ぶので、止血の必要があると判断し、止血剤を使った。」と説明されたと供述していることを挙げて、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたことが推認されると主張するが、本件手帳の記載に基づき、本件手術の際の出血への対応として、止血処置が行われたことは認められるものの、その具体的な内容は 明らかでなく、止血剤であるという原告の上記 が推認されると主張するが、本件手帳の記載に基づき、本件手術の際の出血への対応として、止血処置が行われたことは認められるものの、その具体的な内容は 明らかでなく、止血剤であるという原告の上記供述も客観的資料の裏付けを欠くものといわなければならない。 そもそも医学的知見によれば、局所的要因による出血については、局所的出血の原因は機械的なものであり、大部分は物理的手段によって直接止血することができるとされていて(外科的出血)、止血法としては、機械 的(圧迫、結紮、縫合、クリップ、駆血帯、骨蠟、接着剤)、温熱(電気凝固、冷却、冷凍)、科学的(アドレナリン、トロンビン、ゼラチン、セルロースの局所使用)、臓器切除(例:腎出血、脾破裂)などの方法があるとされているから(乙統85(107頁))、本件手帳に記載がある「止血」が当然に止血剤を意味するわけではない。 この点をおき、止血処置の一環として、原告に対し止血剤が投与されたことを前提としても、一般的な止血方法のうち、薬物療法としては、止血機構の機能を改善・増強することによる一般的な止血剤(アドナ、トランサミン等)により止血する方法等が存在する一方(乙統83(394頁))、本件加熱製剤については、昭和63年には、非A非B型肝炎を発 症する可能性があるという警告文書が発出されていたこと(丙C2301 1)、本件病院でも、同年4月を最後に納入実績が認められず、同年6月には11本の返品が行われていること(丙C23001)からして、単に医師が「止血剤」と説明したからといって、その約3年後である平成2年5月に行われた本件手術の際に投与された「止血剤」が、当時既に肝炎発症の危険性が広く認識されていた特定フィブリノゲン製剤であったと推認 することは困難であるといわ て、その約3年後である平成2年5月に行われた本件手術の際に投与された「止血剤」が、当時既に肝炎発症の危険性が広く認識されていた特定フィブリノゲン製剤であったと推認 することは困難であるといわなければならない。 ⑶ 本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針本件各証拠によっても、本件手術時の本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針を認めるに足りないから、この観点から、特定フィブリノゲン製剤投与の事実を推認することもできない。 ⑷ 本件病院における特定フィブリノゲン製剤の在庫状況本件病院における特定フィブリノゲン製剤の納入状況に関し、本件納入データ上は、本件非加熱製剤について、昭和62年5月に2本納入したのを最後に、その後の納入はされておらず、本件加熱製剤について、昭和62年6月から納入が開始されたが、昭和63年4月に3本納入されたのを最後に、 その後の納入はされておらず、同年6月には本件加熱製剤11本が返品されている(前提事実⑶)。 以上の納入状況について、①昭和62年4月以降、本件非加熱製剤が原因と疑われる肝炎の集団感染の事実が新聞報道されたこと(丙C23004、05)、②同月以降、ミドリ十字は非加熱製剤の出荷を停止し、納入先医療 機関や卸売業者から非加熱製剤の回収を行っていたこと(丙C23002、03)、③同年6月に本件加熱製剤が発売されたが、昭和63年6月には、本件加熱製剤の投与により非A非B型肝炎が発症したことを受けて緊急安全性情報が発出されたこと(乙統172)、④ミドリ十字が、フィブリノゲン製剤の納入実績がある医療機関に対し、本件加熱製剤の非A非B型肝炎の発 症リスクを通知し、その投与は必要最小限とするよう注意喚起を行い、回収 措置を行っ リ十字が、フィブリノゲン製剤の納入実績がある医療機関に対し、本件加熱製剤の非A非B型肝炎の発 症リスクを通知し、その投与は必要最小限とするよう注意喚起を行い、回収 措置を行ったこと(丙C23007、08)などの社会状況などを総合すると、本件病院は、フィブリノゲン製剤投与による肝炎リスクが認識されたことを受けて、昭和62年6月には、本件非加熱製剤から本件加熱製剤に切り替えたこと、しかし、その後、昭和63年6月に本件加熱製剤に関する緊急安全性情報が発出されたことを受け、同年6月には同時点における在庫とな っていた特定フィブリノゲン製剤を全て返品し、それ以降特定フィブリノゲン製剤を納入しなかったという経過が容易に推認できる。 そうすると、本件手術の時点で、本件病院に使用可能な特定フィブリノゲン製剤が存在していたと認めることはできないから、この点からも、原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与が推認されないことになる。 ⑸ 他原因の存否原告は、本件手術の際以外に、C型肝炎ウイルスに感染する原因が見当たらないと主張するが、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路である輸血のほか、その他の感染経路として、血液製剤、汚染手術針の再利用、手術時の感染事故、 針事故といった医療行為時の感染事故や感染者からの血液を介した感染など様々なものが指摘されており、感染原因が特定されない例も相当数あるとされていること(乙統2(1、2、15頁)、218(722頁)、221(89頁)等)などを総合すれば、原告がC型肝炎ウイルスに感染した事実から、直ちに本件手術の際に特定フィブリノゲン製剤 が投与されたと推認することはできない。 ⑹ よって、残存する医療記録、供述 9頁)等)などを総合すれば、原告がC型肝炎ウイルスに感染した事実から、直ちに本件手術の際に特定フィブリノゲン製剤 が投与されたと推認することはできない。 ⑹ よって、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件手術の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件手術の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が 投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとする。 別紙個6(原告番号233番) 以下、本別紙中では、原告番号233番を「原告」という。 第1 事案の概要等 1 事案の概要本件は、原告(・・・・・・・・・・生)が、昭和57年5月26日、・・ ・・・・・・(現・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。以下「本件病院」という。)において、子宮外妊娠による左卵管破裂に対する治療としての左卵管切除術による卵管摘出手術(以下「本件手術」という。)を受けた際、特定フィブリノゲン製剤の投与を受けたことにより、C型肝炎ウイルスに感染し、慢性C型肝炎に罹患したと主張して、被告に対し、特措法6条2号による 給付金2000万円の支払を求める事案である。 2 前提事実⑴ 本件手術ア原告は、昭和57年5月26日、本件病院に入院し、左卵管切除術(本件手術)を受けて、同年6月7日に退院した。本件手術は、・・・・医師 (以下「・・・医師」という。)が担当した。(甲C23301の2)イ本件手術に関する入院診療録の表紙(以下「本件診療録表紙」という。)には、「臨床診断」欄に「子宮外妊娠」、 ・・・・医師 (以下「・・・医師」という。)が担当した。(甲C23301の2)イ本件手術に関する入院診療録の表紙(以下「本件診療録表紙」という。)には、「臨床診断」欄に「子宮外妊娠」、「ショック」とあり、その直下の「(術後)」部分には「左卵管妊娠破裂」、「腹腔内出血約2000㎖」とある。また、「治療」欄には、「左卵管切除術 57年5月26日」、 「輸血保存血7pac」と記載されている(甲C23301の2)。 ウ本件手術に関し、本件手術当時に作成された医療関係記録としては、本件診療録表紙及び退院時の要約が存在するものの、診療録、レセプトその他の医療記録は現存しない。また、本件診療録表紙及び退院時の要約には、フィブリノゲン製剤投与の記録はない。(甲C23301の1、2、弁論 の全趣旨) ⑵ 原告のC型肝炎ウイルスへの感染等原告は、遅くとも平成13年4月18日にはC型慢性肝炎の診断を受け、令和3年2月9日には肝細胞癌、C型代償性肝硬変の診断を受けた(甲C23304)。 ⑶ 本件病院に対する特定フィブリノゲン製剤の納入 本件病院は、厚生労働省が公開している特定フィブリノゲン製剤の納入病院リスト上、昭和57年当時の納入実績が確認されている(甲23308)。 ⑷ 他の出産ア原告は、昭和46年5月5日、・・・・院において、自然分娩により第1子を出産した。上記出産に関する母子手帳(甲C23302)10頁 「出産の状態」の「出血量」欄では、「少量」に◯印が付されている。 イ原告は、昭和47年9月4日、・・・・院において、自然分娩により第2子を出産した。上記出産に関する母子手帳(甲C23303)10頁「出産の状態」の「出血量」欄では、「少量」に◯印が付されている。 原告は、昭和47年9月4日、・・・・院において、自然分娩により第2子を出産した。上記出産に関する母子手帳(甲C23303)10頁「出産の状態」の「出血量」欄では、「少量」に◯印が付されている。 第2 争点及び争点に関する当事者の主張 1 本件手術の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与の有無(原告の主張)⑴ 原告がC型肝炎に罹患した原因として考えられるのは、本件手術時のフィブリノゲン製剤の投与しか心当たりがなく、他の原因は考えられない。 ⑵ 本件手術の際、①原告が妊娠3週目に相当し、血液循環量の増加前であっ たことからすると、約2000㎖もの出血量は、生命に危機を及ぼすほどの産科危機的出血であったといえること、②原告の出血原因は卵管破裂であり、本件手術の時点で、既に出血が始まって相当時間経過し、原告は出血性ショックに陥っていたことなどから、原告が大量出血の結果、凝固因子不足の状態となっていたことは容易に認定できる。 また、本件手術が夜間に行われており、原告の病態の切迫性から新鮮血を 確保する時間的余裕もない中、血液凝固因子が不足する保存血7パックの輸血のみでこれだけの大量出血が止血できたとは考えられない。凝固因子を補充するフィブリノゲン製剤の投与が不可欠であったと考えられる。 ⑶ 上記⑵の原告の緊迫した病態に加え、本件手術当時、本件病院において、フィブリノゲン製剤が納入されていたこと、産婦人科領域で、止血作用に定 評がありフィブリノゲン製剤が多用されていたこと、・・・医師が、術後に原告に「止血のためにあらゆる措置をとりました」と説明していたことからすると、本件手術の際、原告に対し、フィブリノゲン製剤が投与されたことは確実である。 (被告及び補助参加人の主張) ⑴ア に「止血のためにあらゆる措置をとりました」と説明していたことからすると、本件手術の際、原告に対し、フィブリノゲン製剤が投与されたことは確実である。 (被告及び補助参加人の主張) ⑴ア特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるためには、患者について低フィブリノゲン血症又はその要因となるDICの治療若しくは予防の必要性があったことが認められる必要があるところ、原告の出血は、胎嚢の破裂や卵管の破裂に伴う血管の破断という物理的損傷によって生じた外科的要因により局所的に生じた出血であるから、その病態に照らし、原告に凝 固性の障害が生じていたとは直ちには言えない。また、卵管妊娠破裂は、DICの原因となる産科的基礎疾患とされていない。 イ原告は、出血性ショックの状態にあったとうかがえるところ、出血性ショックの場合には当然に凝固性の障害が生じているとはいえず、原告の病態に関しては、脈拍・血圧・その他出血性ショックの具体的な症状等は不 明であり、判明している出血量や輸血量、その他原告が指摘する事情だけでは、原告に凝固性の障害が生じていたと判断することはできない。 なお、分娩時の出血と外科的要因による出血では、出血のメカニズム等が異なるから、分娩時との比較で、原告に凝固性の障害が生じていたと判断することはできない。 ウよって、原告の病態に関し、低フィブリノゲン血症又はその要因となる DICの治療若しくは予防の必要性があったとは認められない。 エ 「あらゆる止血処置をした」、「あと30分も遅れていれば死ぬところであった」などの・・・医師の発言については、出血性ショックの治療としてまず考えられるのは、原因治療や循環動態を維持するための全身管理であるから、同発言をもって、原告に特定フィブリノゲン 死ぬところであった」などの・・・医師の発言については、出血性ショックの治療としてまず考えられるのは、原因治療や循環動態を維持するための全身管理であるから、同発言をもって、原告に特定フィブリノゲン製剤が投与され たと推認することはできない。 ⑵ ・・・医師の投与方針を明らかにする客観的証拠はなく、原告の供述によっても投与方針は不明である。 なお、昭和50年代後半になると特定フィブリノゲン製剤の投与を推奨する記述が乏しくなり、産科ショックにおいて投与すべき製剤の最後に挙げら れる程度になっていた上、昭和60年代に入ると、一般に投与に慎重な態度で臨むことが推奨されるようになったことなどからすれば、産婦人科領域において、当時、止血作用に定評がありフィブリノゲン製剤が多用されていたという医学的知見を認めることはできない。 ⑶ したがって、本件手術時における特定フィブリノゲン製剤の投与事実を認 めることはできない。 2 原告のC型肝炎ウイルス感染事実の有無(原告の主張)原告は、平成13年4月5日、風邪のため診察を受けた近所の・・・医院での血液検査の結果、肝機能の数値に異常が出て、C型肝炎と診断された。 (被告及び補助参加人の主張)HCV抗体検査の結果等が提出されていないため、否認する。 3 特定フィブリノゲン製剤の投与と原告のC型肝炎ウイルス感染との間の因果関係の有無(原告の主張) 本件手術の際、特定フィブリノゲン製剤が投与された事実が認められるから、 上記投与と原告のC型肝炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎に罹患した事実の有無(原告の主張) 炎ウイルスへの感染との間に因果関係がある。 (被告及び補助参加人の主張)特定フィブリノゲン製剤投与の事実が認められないため、否認する。 4 慢性C型肝炎に罹患した事実の有無(原告の主張) 原告は、慢性C型肝炎に罹患し、その後進行して肝細胞癌に罹患している。 その証拠が、甲C23304、07号証である。 (被告及び補助参加人の主張)診断書(甲C23304)や退院時サマリー(甲C23305)の診断の根拠となる各種検査結果等の証拠が提出されておらず、慢性C型肝炎に罹患した ことが確認できないため、否認する。 第3 当裁判所の判断 1 本件手術の際の原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与事実の有無⑴ 原告は、本件手術の際に特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことは確実であると主張するが、その際、原告に特定フィブリノゲン製剤が投与され たことを裏付ける医療記録その他の直接的な証拠はない(前提事実⑴ウ)。 そこで、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠によって認定できる原告の具体的な傷病の状態及び担当医師の投与方針等の間接事実から、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤の投与がされたことを合理的に推認できるかどうかを検討する。 ⑵ 原告の病態ア本件診療録表紙及び原告の供述によれば、原告の病態について、子宮外妊娠による左卵管破裂を原因として腹腔内に大量出血したこと、出血により原告がショック状態に陥ったこと、原告に対し、左卵管切除術による卵管摘出手術の処置が施されたこと、原告の出血量は2000㎖であり、7 パック(1400㎖)の保存血輸血が行われたことが認められるところ、 卵管破裂は子宮外(卵管)妊娠中絶の一様式であり、子宮外妊娠中絶はDICの誘因とな 量は2000㎖であり、7 パック(1400㎖)の保存血輸血が行われたことが認められるところ、 卵管破裂は子宮外(卵管)妊娠中絶の一様式であり、子宮外妊娠中絶はDICの誘因となる産科疾患に当たる(乙統97(255頁)、109(102頁))。 イしかしながら、医学的知見によれば、卵管妊娠中絶は、卵膜のほかに極めて薄い被包脱落膜と破壊浸食された卵管筋層から形成された卵管妊娠の 胎嚢が妊卵の発育成長による伸展で卵管壁とともに破裂することを機転とする外科的要因による出血であるから、一次的な止血法としては、開腹による原因除去が挙げられ、本件手術はこれに当たる。具体的な治療方法としては、診断が確定したら、まずショック対策として、輸血、輸液、必要に応じて強心剤や副腎皮質ホルモンなどを投与し、血圧などの一般状態が 回復したところで、可及的速やかに開腹し、患側の卵管切除と腹腔内血液の清掃を行うこととされている。(乙統109(101、102、104頁))そうすると、原告は、左卵管破裂により約2000㎖もの出血をし、ショックに陥ったものであるが、輸血その他の方法で一般状態を回復させた 上で、出血原因の外科的な除去がされたという経過が認められるから、出血があったこと、ショックに陥ったことから直ちに原告に対する特定フィブリノゲン製剤の投与が推認されるとはいえない。 ウこれに対し、原告は、原告の出血原因、本件手術に至る経過及び原告がショック状態に陥っていたことなどから、原告が大量出血の結果、凝固因 子不足の状態となっていたことが容易に認定できると主張する。 しかしながら、上記イのとおり、原告の左卵管妊娠破裂による出血は、胎嚢の破裂や卵管の破裂に伴う血管の切断という物理的な損傷によって生じた外科的要因によ なっていたことが容易に認定できると主張する。 しかしながら、上記イのとおり、原告の左卵管妊娠破裂による出血は、胎嚢の破裂や卵管の破裂に伴う血管の切断という物理的な損傷によって生じた外科的要因により、局所的に生じた出血であり、出血の原因となった病態に照らして、止血機能の正常な機能を妨げる出血性の素因となる凝固 系の障害があるとまではいえない(乙統83(394頁))。 したがって、原告が大量出血の結果、凝固因子不足の状態となっていたという原告の主張は、採用できない。 エそうすると、本件手術前後を通じ、原告の病態について、低フィブリノゲン血症又はDICの治療若しくは予防の必要性がある状態であったと認めるに足りない。 ⑶ 本件病院又は担当医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針本件各証拠によっても、本件手術当時の本件病院ないし・・・医師の特定フィブリノゲン製剤投与方針を認めるに足りない。 原告は、本件手術後に・・・医師から、「大量出血のためいろいろな処置を施しました」という趣旨の説明を受けたと述べる(原告本人14頁)が、 卵管破裂に対する一般的な治療指針は上記⑵イのとおりであるから、・・・医師の上記発言をもって、直ちに原告に対する特定フィブリノゲン製剤投与について説明したものと解することはできない。 ⑷ 他原因の存否原告は、原告には、本件手術時の特定フィブリノゲン製剤の投与以外には、 C型肝炎ウイルスに感染する原因が考えられないと主張する。 しかし、C型肝炎ウイルスの感染源は、同ウイルスに感染しているヒトの血液であるところ、主要な感染経路は輸血であり、その他の感染経路として、血液製剤に加えて、医療行為時の感染事故など様々なものがあるとされている(乙統2(1、2、15頁)、218(722 ているヒトの血液であるところ、主要な感染経路は輸血であり、その他の感染経路として、血液製剤に加えて、医療行為時の感染事故など様々なものがあるとされている(乙統2(1、2、15頁)、218(722頁)等)。このこ とに加え、原告に対しては、本件手術の際、輸血が行われていること、昭和57年頃の輸血後C型肝炎(非A非B型肝炎)発症率は約16.1%であったと報告されていること(乙統218(722頁))などを総合すれば、原告がC型肝炎ウイルスに罹患している事実から、直ちに本件手術の際に特定フィブリノゲン製剤が投与されたと推認することはで きない。 ⑸ よって、原告の具体的な傷病の状態に照らしても、残存する医療記録、供述証拠、医療文献その他の本件各証拠から、本件手術の際の特定フィブリノゲン製剤投与の事実が合理的に推認されるということはできない。 2 以上によれば、本件手術の際、原告に対し、特定フィブリノゲン製剤が投与されたとは認められない。 第4 結論以上、原告の請求は、その余の争点について判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとする。

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