令和6年4月24日判決言渡令和5年(ネ)第10052号、第10080号、令和6年(ネ)第10002号特許権侵害差止等請求控訴、同附帯控訴、民訴法260条2項の申立て事件(原審・東京地方裁判所平成30年(ワ)第28930号)口頭弁論終結日令和6年1月17日 判決 控訴人兼附帯被控訴人(第1審被告)株式会社東京精密(以下「控訴人」という。) 同訴訟代理人弁護士服部誠同中村閑同訴訟復代理人弁護士岩間智女同訴訟復代理人弁理士加藤志麻子 同黒川恵同補佐人弁理士相田義明同山下崇 被控訴人兼附帯控訴人(第1審原告) 浜松ホトニクス株式会社(以下「被控訴人」という。) 同訴訟代理人弁護士設樂隆一同高林龍 同尾関孝彰 同河合哲志同松本直樹同大澤恒夫同訴訟代理人弁理士長谷川芳樹同柴田昌聰 同補 直樹同大澤恒夫同訴訟代理人弁理士長谷川芳樹同柴田昌聰 同補佐人弁理士小曳満昭 主文 1 控訴人の控訴及び被控訴人の附帯控訴に基づき、原判決主文3項及び4項を次のとおり変更する。 (1) 控訴人は被控訴人に対し、8億3191万6753円及びその内金であ る別紙2遅延損害金目録「認容元本額」欄記載の金員に対する同「起算日」欄記載の日から支払済みまで同「利率」欄の割合による金員を支払え。 (2) 被控訴人のその余の請求を棄却する。 2 被控訴人は控訴人に対し、7億9427万0202円及びこれに対する本判決送達の日の翌日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 3 控訴人のその余の民訴法260条2項に基づく申立てを棄却する。 4 訴訟費用は、第1、2審を通じこれを7分し、その2を控訴人の、その余を被控訴人の負担とする。 5 この判決の1項(1)及び2項は、仮に執行することができる。 6 原判決主文1項及び2項は、被控訴人の当審における訴えの取下げにより、 失効している。 事実 及び理由【略語】本判決で用いる主な略語は、別紙1「略語一覧」のとおりである。その他、原判決で使用されている略語は、本判決でもそのまま使用する。 第1 事案の要旨 本件は、発明の名称を「レーザ加工装置」とする本件特許1(特許第3867108号)及び発明の名称を「レーザ加工方法及びレーザ加工装置」とする本件特許2(特許4601965号)の特許権者である被控訴人が、控 、発明の名称を「レーザ加工装置」とする本件特許1(特許第3867108号)及び発明の名称を「レーザ加工方法及びレーザ加工装置」とする本件特許2(特許4601965号)の特許権者である被控訴人が、控訴人による被告製品の製造、販売等がこれらの特許権の侵害に当たると主張して、控訴人に対し損害賠償等を求める事案である。 第2 原審の判断及び控訴の提起等 1 原審は、下記の判断を示し、被控訴人の原審における請求中、①特許法100条1項及び2項に基づく差止め及び廃棄請求を認容するとともに、②損害賠償請求(主請求額24億円)を15億0697万8762円の限度で認容した。 【原審の判断の骨子】・被告製品(固定・低追従とも)は、本件発明1、本件発明2-2、本件発明2-3の技術的範囲に属する。 ・控訴人主張の特許無効の抗弁(進歩性欠如、サポート要件違反、明確性要件違反等)及び本件実施許諾契約に係る実施許諾の抗弁は、いずれも理由がない。 ・特許法102条1項及び2項は本件に適用されない(被控訴人が販売するSDエンジンは、侵害品であるSDダイサーの部品に相当するものであり、市場において競合関係に立つものと認められないため)。 ・同条3項に基づく損害額は、侵害対象の売上高(●●●●●●●●●●●●円)に相当実施料率30%を乗じ、●●●●●●の弁護士費用を加えた15億 0697万8762円である。 2 原判決に対し、①控訴人は、敗訴部分を不服として控訴を提起するとともに、本件仮払につき民訴法260条2項の申立てをし、②被控訴人は、特許権侵害の対象取引につき請求原因の追加をする一方で、請求額は後記3(3)イのとおりの一部請求とし、原判決に対する不服の対象もこの限度とする附帯控訴を提 起した。また、③ し、②被控訴人は、特許権侵害の対象取引につき請求原因の追加をする一方で、請求額は後記3(3)イのとおりの一部請求とし、原判決に対する不服の対象もこの限度とする附帯控訴を提 起した。また、③特許権の存続期間の満了を受けて、被控訴人は、原審で求め ていた被告製品の製造販売等の差止め及び廃棄に係る請求を取り下げた(控訴人同意)。 3 以上の結果、当審において当事者の求める裁判は、以下のとおりとなっている。 (1) 控訴の趣旨 ア原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。 イ上記取消しに係る部分について、被控訴人の請求を棄却する。 (2) 民訴法260条2項の申立て被控訴人は、控訴人に対し、7億9475万8666円及びこれに対する令和5年1月21日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 (3) 附帯控訴の趣旨ア原判決主文3項を次のとおり変更する。 イ控訴人は被控訴人に対し、22億0450万1960円及びその内金である別紙2遅延損害金目録「請求元本額」欄の金額に対する同「起算日」欄の日から支払済みまで同「利率」欄の割合による金員を支払え(主請 求は主位的に不法行為、予備的に不当利得に基づくもの)。 第3 前提事実 1 本件各特許の概要(1) 本件特許1ア被控訴人は、以下の本件特許1に係る特許権を有していた。同特許権は、 令和3年9月13日、存続期間満了により消滅した(甲1)。 特許番号:特許第3867108号請求項の数:1発明の名称:レーザ加工装置出願日:平成18年3月2日 優先日:平成12年9月13日 登録日:平成18年10月13日イ本件 の数:1発明の名称:レーザ加工装置出願日:平成18年3月2日 優先日:平成12年9月13日 登録日:平成18年10月13日イ本件特許1の特許請求の範囲(請求項1)は、設定登録後、平成30年7月2日付けの訂正審決(確定)を経て、本件無効審判手続において、令和3年5月28日付け訂正請求(本件訂正)がされた。同年11月18日、本件訂正を認めた上で本件無効審判の請求を不成立とする審決が され、その審決取消訴訟が提起されたが、令和4年11月29日に請求棄却判決がされ、同判決の確定により、上記審決及び本件訂正は確定した。 ウ本件訂正前後の特許請求の範囲(請求項1)の記載は、別紙3のとおりであり、訂正箇所は、後記構成要件の分説でいう構成要件Fに関する部 分である。 (2) 本件特許2ア被控訴人は、以下の本件特許2に係る特許権を有していた。同特許権は、令和6年1月9日、存続期間満了により消滅した(甲2)。 特許番号:特許4601965号 発明の名称:レーザ加工方法及びレーザ加工装置請求項の数:20出願日:平成16年1月9日登録日:平成22年10月8日イ本件特許2の特許請求の範囲の請求項13、15、16の記載は、それ ぞれ、原判決別紙「特許請求の範囲」記載2-1、2-2、2-3のとおりである。 2 本件各発明の概要(1) 本件訂正発明1ア構成要件の分説 A ウェハ状の加工対象物の内部に、切断の起点となる改質領域を形成す るレーザ加工装置であって、B 前記加工対象物が載置される載置台と、C レーザ光を出射するレーザ光源と、D 前記載置台に載置された前記加工対象物の 切断の起点となる改質領域を形成す るレーザ加工装置であって、B 前記加工対象物が載置される載置台と、C レーザ光を出射するレーザ光源と、D 前記載置台に載置された前記加工対象物の内部に、前記レーザ光源から出射されたレーザ光を集光し、そのレーザ光の集光点の位置で前 記改質領域を形成させる集光用レンズと、E レーザ光の集光点が前記加工対象物の内部に位置するように、前記加工対象物のレーザ光入射面を基準として前記加工対象物の厚さ方向に第1移動量だけ前記集光用レンズを移動させ、レーザ光の集光点が前記加工対象物の切断予定ラインに沿って移動するように、前記加工 対象物の厚さ方向と直交する方向に前記載置台を移動させた後、レーザ光の集光点が前記加工対象物の内部に位置するように、前記レーザ光入射面を基準として前記加工対象物の厚さ方向に第2移動量だけ前記集光用レンズを移動させ、レーザ光の集光点が前記切断予定ラインに沿って移動するように、前記加工対象物の厚さ方向と直交する方向 に前記載置台を移動させる機能を有する制御部と、を備え、F 前記加工対象物は、シリコン単結晶構造部分に前記切断予定ラインに沿った溝が形成されていないシリコンウェハであることを特徴とするレーザ加工装置。 イ本件訂正発明1の技術的特徴 本件明細書等1の記載は原判決「事実及び理由」第4の1(1)(261頁~)に記載のとおりであり、これによれば、本件訂正発明1につき、次のような開示があることが認められる。 (ア) 本件訂正発明1は、半導体材料基板、圧電材料基板やガラス基板等の加工対象物の切断に使用されるレーザ加工装置に関する(【000 1】)。 (イ) レーザを切断に用いる場合、加工対象物の表面のうち 導体材料基板、圧電材料基板やガラス基板等の加工対象物の切断に使用されるレーザ加工装置に関する(【000 1】)。 (イ) レーザを切断に用いる場合、加工対象物の表面のうち切断する箇所となる領域周辺も溶融されるため、加工対象物が半導体ウェハの場合、表面に形成された半導体素子のうち、上記領域付近に位置する半導体素子が溶融するおそれがある。これに対応するため、加工対象物の切断する箇所をレーザ光により加熱し、加工対象物を冷却することにより、切断 する箇所に熱衝撃を生じさせて切断する方法もあったが、加工対象物に生じる熱衝撃が大きいと、加工対象物の表面に、切断予定ラインから外れた割れ等の不必要な割れが発生し、加工対象物が半導体ウェハである場合は、半導体チップが損傷する等の問題があった(【0002】~【0004】)。 (ウ) 本件訂正発明1は、加工対象物の表面に不必要な割れを発生させることなくかつその表面が溶融しないレーザ加工装置を提供することを目的とする(【0005】)。 (エ) 本件訂正発明1は、上記の目的を解決するため、請求項1の構成を採用した。本件訂正発明1では、レーザ光の照射により加工対象物の 内部に形成された改質領域を起点として比較的小さな力で加工対象物を切断することができるので、切断予定ラインから離れた不必要な割れが発生することはない。加工対象物の表面ではレーザ光がほとんど吸収されないため、加工対象物の表面が溶融することはない。加工対象物を切断する際の起点となる箇所を増やすことができるので、加工 対象物の厚みが比較的大きい場合等においても、加工対象物の切断が可能となる。(【0007】~【0012】)。 (2) 本件発明2ア構成要件の分説(本件発明2-1) 工 対象物の厚みが比較的大きい場合等においても、加工対象物の切断が可能となる。(【0007】~【0012】)。 (2) 本件発明2ア構成要件の分説(本件発明2-1) I 第一のレーザ光を加工対象物の内部に集光点を合わせて照射し、前 記加工対象物の切断予定ラインに沿って前記加工対象物の内部に改質領域を形成するレーザ加工装置であって、J 前記第一のレーザ光及び前記加工対象物の主面の変位を測定するための第二のレーザ光を前記加工対象物に向けて集光するレンズと、K 前記第二のレーザ光の照射に応じて前記主面で反射される反射光を 検出して前記主面の変位を取得する変位取得手段と、L 前記加工対象物と前記レンズとを前記加工対象物の主面に沿って移動させる移動手段と、M 前記レンズを前記主面に対して進退自在に保持する保持手段と、N 前記移動手段及び前記保持手段それぞれの挙動を制御する制御手段 と、を備え、O 前記第二のレーザ光を照射しながら、前記制御手段は前記加工対象物と前記レンズとを前記主面に沿って相対的に移動させるように前記移動手段を制御し、前記変位取得手段は前記切断予定ラインに沿った前記主面の変位を取得し、 P 前記第一のレーザ光を照射し、前記制御手段は前記変位取得手段が取得した変位に基づいて前記レンズと前記主面との間隔を調整しながら保持するように前記保持手段を制御し、前記レンズと前記加工対象物とを前記主面に沿って相対的に移動させるように前記移動手段を制御して前記改質領域を形成し、 Q 前記制御手段は前記第二のレーザ光の集光点が前記加工対象物に対する所定の位置に合うように設定された測定初期位置に前記レンズを保持するように前記保持手段を制御し、R 当該 を形成し、 Q 前記制御手段は前記第二のレーザ光の集光点が前記加工対象物に対する所定の位置に合うように設定された測定初期位置に前記レンズを保持するように前記保持手段を制御し、R 当該レンズを測定初期位置に保持した状態で前記第二のレーザ光の照射を開始し、前記制御手段は前記レンズと前記加工対象物とを前記 主面に沿って相対的に移動させるように前記移動手段を制御し、前記 主面で反射される前記第二のレーザ光の反射光に応じて、前記レンズを前記測定初期位置に保持した状態を解除するように前記保持手段を制御し、S 当該解除後に、前記制御手段は前記主面で反射される前記第二のレーザ光の反射光を検出しながら前記レンズと前記主面との距離を調整 するように前記保持手段を制御し、前記変位取得手段は前記切段予定ラインに沿った前記主面の変位を取得する、レーザ加工装置。 (本件発明2-2)2I 第一のレーザ光を加工対象物の内部に集光点を合わせて照射し、前記加工対象物の切断予定ラインに沿って前記加工対象物の内部に改 質領域を形成するレーザ加工装置であって、2J 前記第一のレーザ光及び前記加工対象物の主面の変位を測定するための第二のレーザ光を前記加工対象物に向けて集光するレンズと、2K 前記第二のレーザ光の照射に応じて前記主面で反射される反射光を検出して前記主面の変位を取得する変位取得手段と、 2L 前記加工対象物と前記レンズとを前記加工対象物の主面に沿って移動させる移動手段と、2M 前記レンズを前記主面に対して進退自在に保持する保持手段と、2N 前記移動手段及び前記保持手段それぞれの挙動を制御する制御手段と、を備え、 2O 前記第二のレーザ光を照射しながら、前記制御手段は前記加工対象物と前記レン 在に保持する保持手段と、2N 前記移動手段及び前記保持手段それぞれの挙動を制御する制御手段と、を備え、 2O 前記第二のレーザ光を照射しながら、前記制御手段は前記加工対象物と前記レンズとを前記主面に沿って相対的に移動させるように前記移動手段を制御し、前記変位取得手段は前記切断予定ラインに沿った前記主面の変位を取得し、2P 前記第一のレーザ光を照射し、前記制御手段は前記変位取得手段 が取得した変位に基づいて前記レンズと前記主面との間隔を調整しな がら保持するように前記保持手段を制御し、前記レンズと前記加工対象物とを前記主面に沿って相対的に移動させるように前記移動手段を制御して前記改質領域を形成し、2Q 前記制御手段は前記変位取得手段が取得した前記切断予定ラインに沿った前記主面の変位に基づいて前記主面に対して前記レンズを保 持する加工初期位置を設定し、当該設定した加工初期位置に前記レンズを保持するように前記保持手段を制御し、2R 当該レンズを加工初期位置に保持した状態で前記第一のレーザ光の照射を開始し、前記制御手段は前記レンズと前記加工対象物とを相対的に移動させるように前記移動手段を制御して前記切断予定ライン の一端部において前記改質領域を形成し、2S 当該一端部における改質領域の形成後に、前記制御手段は、前記レンズを前記加工初期位置に保持した状態を解除し、前記変位取得手段が取得した前記主面の変位に基づいて前記レンズと前記加工対象物との間隔を調整するように前記保持手段を制御し、前記レンズと前記 加工対象物とを相対的に移動させるように前記移動手段を制御して前記改質領域を形成する、レーザ加工装置。 (本件発明2-3)3I 前記変位取得手段が前記切断予定ラインに沿った前記主 加工対象物とを相対的に移動させるように前記移動手段を制御して前記改質領域を形成する、レーザ加工装置。 (本件発明2-3)3I 前記変位取得手段が前記切断予定ラインに沿った前記主面の変位を取得する際に併せて前記第一のレーザ光を照射し、前記切断予定ラ インに沿って前記改質領域を形成する、3J 請求項10~15のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。 イ本件発明2の技術的特徴本件明細書等2の記載は原判決「事実及び理由」第4の8(1)(309頁~)に記載のとおりであり、これによれば、本件発明2につき、次の ような開示があることが認められる。 (ア) 本件発明2は、レーザ光を照射することで加工対象物を加工するためのレーザ加工方法及びレーザ加工装置に関する(【0001】)。 (イ) 従来のレーザ加工技術には、加工対象物を加工するためのレーザ光を集光する集光レンズに対し、加工対象物の主面高さを測定する測定手段を所定の間隔をもって並設させたものがあったが、加工対象物の外側か ら測定を開始し、加工対象物の内側へと測定を行っていくことになるため、測定によって得られた主面高さの測定値に基づいて集光レンズを駆動すると、加工対象物の端部においてレーザ光の集光点がずれる場合があるという問題があった(【0002】、【0004】)。また、主面が凸凹している加工対象物を加工する技術としては、加工準備として、 加工を施す部分全ての平面度を平面度測定手段によって測定した後、その平面度測定手段をブレードに取り替えて、測定した平面度に基づいて加工対象物を加工するものがあったが、測定時と加工時とでそれぞれに用いる手段を交換するので、交換の手間がかかると共に交換に伴うずれが生じる恐れがあるとい レードに取り替えて、測定した平面度に基づいて加工対象物を加工するものがあったが、測定時と加工時とでそれぞれに用いる手段を交換するので、交換の手間がかかると共に交換に伴うずれが生じる恐れがあるという問題があった(【0003】、【000 5】)。 (ウ) 本件発明2の目的は、レーザ光の集光点のずれを極力少なくしつつ効率よくレーザ加工を行うことである(【0006】)。 (エ) 本件発明2は、上記の目的を解決するため、請求項13、15、16の構成を採用した。請求項13の構成を備えることにより、端部を検知 した後にレンズの保持状態を解除し、加工対象物の主面の変位を取得した上で、当該取得した変位に基づき、同じレンズで加工対象物の内部に改質領域を形成することができるため、加工対象物の端部における形状変動による影響を極力排除してその変位を取得することができる。請求項15の構成を備えることにより、加工初期位置にレンズを保持した状 態で切断予定ラインの一端部において改質領域を形成し、その後レンズ を保持した状態を解除して主面の変異(ママ)に追従させながら改質領域を形成することにより、加工対象物の端部の形状変動による影響を極力排除して変位を取得できる。請求項16の構成を備えることにより、主面の変位の取得に併せて改質領域も形成するので、一度のスキャンで測定と加工とを行うことができる(【0015】、【0016】、【0 018】~【0020】)。 3 当事者、被告製品の概要等この点に関する前提事実は、原判決「事実及び理由」第2の3(1)(19頁)、(4)~(8)(24頁~44頁)に記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、「低追従AF方式の具体的な制御内容」に関する同(8)ウ(ウ)aの 「事実及び理由」第2の3(1)(19頁)、(4)~(8)(24頁~44頁)に記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、「低追従AF方式の具体的な制御内容」に関する同(8)ウ(ウ)aの 項(41頁)中の「なお、この区間では加工用レーザは照射されない」(同①)及び「(なお、エッジ処理区間では加工用レーザが照射されない。)」(同②)との説明は、控訴人の控訴理由書における指摘も踏まえて削ることとする。 第4 争点及び当事者の主張 1 争点 控訴人は、原審において主張していた本件特許1に係る特許無効の抗弁(本件無効審判の確定審決により排斥された無効理由と同一)を撤回し、被控訴人は差止め及び廃棄請求を取り下げ、また、控訴人は、当審において民訴法260条2項の申立てをしたことにより、当審における争点は、次のとおりとなっている(原審における争点3〔本件特許1の特許無効の抗弁〕及び同8〔差止 めの必要性〕は争点から脱落し、新たに争点9が加わっている。)。 (1) 被告製品が本件訂正発明1の技術的範囲に属するか(争点1)なお、原審においては、本件訂正前の特許請求の範囲の記載を前提に、技術的範囲の属否が議論されているが、争いのある構成要件は本件訂正の対象となっておらず、本件訂正が上記議論に影響を及ぼす要素も見当たらないの で、争点1に係る原判決中の当事者の主張及び原審の判断を引用する場合、 本件訂正発明1を前提とするものとみなして引用することとする。 ア被告製品は「改質領域」(構成要件A及びD)を形成するものといえるか(争点1-1)イ被告製品は「集光点の位置で」(構成要件D)改質領域を形成させるものといえるか(争点1-2) ウ被告製品のレーザ加工領域は「 びD)を形成するものといえるか(争点1-1)イ被告製品は「集光点の位置で」(構成要件D)改質領域を形成させるものといえるか(争点1-2) ウ被告製品のレーザ加工領域は「切断の起点となる」(構成要件A)ものといえるか(争点1-3)エ被告製品は「集光用レンズを移動させ・・る機能を有する」(構成要件E)ものといえるか(争点1-4)オ被告製品は「前記レーザ光入射面を基準として前記加工対象物の厚さ方 向に第2移動量だけ前記集光用レンズを移動させ・・る機能を有する」(構成要件E)ものといえるか(争点1-5)カ被告製品は「制御部」(構成要件E)を備えるものといえるか(争点1-6)(2) 被告製品が本件発明2の技術的範囲に属するか(争点2) ア被告製品は「測定初期位置に前記レンズを保持する」(構成要件Q)、「加工初期位置に前記レンズを保持する」(構成要件2Q)ものといえるか(本件発明2-1及び2-2に関して)(争点2-1)イ被告製品は「レンズを測定初期位置に保持した状態で第二のレーザ光の照射を開始」(構成要件R)するものといえるか(本件発明2-1に関 して)(争点2-2)ウ被告製品は「前記第二のレーザ光の反射光に応じて、前記レンズを前記測定初期位置に保持した状態を解除」(構成要件R)し、「当該解除後に・・前記主面との距離を調整するように前記保持手段を制御」(構成要件S)するものといえるか(本件発明2-1に関して)(争点2-3) エ被告製品は「前記切断予定ラインの一端部において前記改質領域を形成 し」(構成要件2R)、また、「当該一端部における改質領域の形成後に・・前記レンズを前記加工初期位置に保持した状態を解除」(構成要件2S 切断予定ラインの一端部において前記改質領域を形成 し」(構成要件2R)、また、「当該一端部における改質領域の形成後に・・前記レンズを前記加工初期位置に保持した状態を解除」(構成要件2S)するものといえるか(本件発明2-2に関して)(争点2-4)オ被告製品は「改質領域」(構成要件I、P、2I、2P、2R、2S、3I)を形成するものといえるか(本件発明2全てに関して)(争点2 -5)カ被告製品は「制御手段」(構成要件N~S、2N~2S)を有するか(本件発明2-1及び2-2に関して)(争点2-6)(3) 本件特許2が特許無効審判により無効にされるべきものと認められるか(争点4) アサポート要件違反1(本件発明2全てに関して)(争点4-1)イサポート要件違反2(本件発明2全てに関して)(争点4-2)ウ明確性要件違反(本件発明2全てに関して)(争点4-3)(4) 本件実施許諾契約の成否(争点5)(5) 原告の損害額(争点6) ア特許法102条2項に基づく損害額等(争点6-1)(ア) 特許法102条2項の適用の可否(争点6-1-1)(イ) 特許法102条2項に基づく損害額(争点6-1-2)イ特許法102条1項に基づく損害額等(争点6-2)(ア) 特許法102条1項の適用の可否(争点6-2-1) (イ) 特許法102条1項に基づく損害額(争点6-2-2)ウ特許法102条3項に基づく損害額(争点6-3)エ推定規定によらない損害賠償の成否及び損害額(争点6-4)(6) 不当利得の成否及び不当利得金の額(争点7)(7) 民訴法260条2項に基づき返還すべき額に、受領日からの遅延損害 エ推定規定によらない損害賠償の成否及び損害額(争点6-4)(6) 不当利得の成否及び不当利得金の額(争点7)(7) 民訴法260条2項に基づき返還すべき額に、受領日からの遅延損害金を 付すべきか(争点9) 2 争点に関する当事者の主張上記争点に関する控訴人の主張は、後記3のとおり当審における当事者の補充又は追加主張((17)は当審で新たに争点に加わったもの)を加えるほか、原判決「事実及び理由」第3の1~12(49頁~133頁)、25~36(210頁~260頁)に記載のとおりであるから、これを引用する。 3 当審における当事者の補充又は追加主張(1) 争点1-1:被告製品は「改質領域」(構成要件A及びD)を形成するものといえるか【控訴人の主張】ア原判決は、構成要件Aの「切断の起点となる改質領域」について、溶融 処理領域の存在を認定しているが、それが「切断の起点となる」ものであるか否かを認定していない。 イ本件明細書1の記載によれば、「改質領域」は、これを起点として、比較的小さい力で半導体基板に割れを発生させるものであり(【0007】、【0060】)、半導体基板は「改質領域」から割れるものであ る(【0018】、【0019】)。そして、本件明細書には、「改質領域」としては、「溶融処理領域」があり、「溶融処理領域」とは、一旦溶融後再固化した領域、溶融状態の領域、溶融状態から再固化する状態の領域であり、相変化した領域や結晶構造が変化した領域ということもできる旨記載されている(【0027】)。 ウ被告製品によるレーザ加工では、ボイド及びその周辺領域(両者を合わせて「ボイド周辺領域」という。)と、ボイド周辺領域の上方の加工領域(以下「 もできる旨記載されている(【0027】)。 ウ被告製品によるレーザ加工では、ボイド及びその周辺領域(両者を合わせて「ボイド周辺領域」という。)と、ボイド周辺領域の上方の加工領域(以下「ボイド上方領域」という。)とを形成する。ボイド周辺領域とボイド上方領域は、単結晶シリコン領域によって隔てられており、それぞれ別の領域として、「切断の起点となる改質領域」に該当するかが 検討されるべきである。 エステルスダイシングにおいて、ウェハ切断の起点となるのは、ボイド上方領域の「高転位密度層内の転位」、「テール部での塑性変形に伴い発生した微小亀裂」ないし「テール部での塑性変形に伴い発生したクラック」であって、ボイド周辺領域は、切断の起点にはならない(甲33、76、乙41、146、150)。 オ被告製品により形成されるボイドは溶融により形成されたものではなく、クーロン爆発(マイクロ・エクスプロージョン)によるものであり(乙447)、クーロン爆発においては、固体状態から、溶融状態を経ずに、一気に高圧なプラズマ状態、もしくはガス状態(気体)に変化するため、周囲の結晶格子に原子が入り込み、ボイドが形成されるものであるから、 「改質領域」も存在しない。したがって、ボイド周辺領域には、「切断の起点となる改質領域」は存在しない。a教授は、控訴人からの改質層形成原理についての質問に対し、改質層は、固体状態で高温となって、内部が高圧となり周囲から引っ張られることで滑りが発生し亀裂が発生していること、ボイドは溶けているのではなく、ボイドのところにあっ た原子が周りに押し込まれて生じていることを明瞭に説明し、その旨が記載された議事録に署名もしている(乙455)。 カ被告製品において切断の起点となっているのは はなく、ボイドのところにあっ た原子が周りに押し込まれて生じていることを明瞭に説明し、その旨が記載された議事録に署名もしている(乙455)。 カ被告製品において切断の起点となっているのは転位部分であり、単結晶構造のままであって、結晶構造が変化した領域には該当しない。 キ原判決は、被告製品によって形成される加工領域(ボイド上方領域)に ついて、アモルファスが生じている以上、溶融後再固化が生じていることに変わりはない旨判示するが、控訴人の新たに行った実験・分析結果(乙452)によれば、アモルファスは生じていない。被告製品により形成されたレーザ加工領域は、アモルファスや多結晶ではなく、単結晶のみで構成されている。 また、仮に少量の多結晶やアモルファスが認められたとしても、多結 晶やアモルファスへの相転移メカニズムとしては、溶融後再固化のほかに、圧力誘起による可能性が考えられるし(乙453)、それら多結晶やアモルファスの部分は、切断の起点とはならない(前記エ)。 前述のとおり、切断の起点となる転位部分は、単結晶構造から非晶構造及び多結晶構造を含む構造に変化した領域ではないから、アモルファ スが生じていることのみを理由に被告製品のレーザ加工領域が溶融処理領域に該当するとの認定は誤りである。 ク原判決は、①パルスレーザの照射中に、温度上昇によってシリコンの吸集係数が増大する、②融点を超えることにより、焦点付近でウェハ内部のシリコンが溶融する、③溶融領域がレーザの入射する表面の方向に拡 大・移動していく、④③の際、ボイドのシリコン原子が固体領域に移動して凝固する、という被控訴人の主張に沿って、改質領域の認定をしたものと解される。 しかし、甲33、76はシミュレーションをしている ていく、④③の際、ボイドのシリコン原子が固体領域に移動して凝固する、という被控訴人の主張に沿って、改質領域の認定をしたものと解される。 しかし、甲33、76はシミュレーションをしているにすぎないから、被告製品のステルスダイシング加工において融点に到達したことが立証 されたとはいえず、甲33においては、加熱時の超高圧縮下では溶融・蒸発が抑制されると明記されていること及び前記オによれば、溶融が生じたともいえない。 薄ウェハ(ウェハ(A)と(B))を2枚貼り合わせ、両者の界面に2μm程度の隙間が生じているものを試料とし、下側のウェハ(B)内の 界面付近に集光点を設定しレーザを照射した実験を行ったところ、ウェハ(B)の右側では、ボイドが観察されると共に、当該ボイドの上方のウェハ(A)に、レーザ加工領域が観察され(ボイドとレーザ加工領域とが、隙間を挟んで、物理的に離れた場所で形成される。)、一方、ウェハ(B)の左側では、レーザ光が照射されているにもかかわらず、ボ イドが観察されず、ウェハ(A)では、レーザ加工領域が形成された下 側端面に、下方への突起が観察されるという結果となった(乙446)。 ボイドとボイド上方領域とが、隙間を挟んで物理的に離れた場所で形成されていること、ボイド上方領域はボイドの形成有無にかかわらず形成されることから、ボイドのシリコン原子は、ボイド上方領域の形成に寄与していないとみるべきである(乙447、453)。 【被控訴人の主張】ア本件明細書等1には、パルスレーザ光の照射により局所的に加熱され形成された溶融処理領域を切断の起点となる領域とすること、すなわち、溶融処理領域を起点として断面方向に向かって割れを発生させ、その割れにより切断が 1には、パルスレーザ光の照射により局所的に加熱され形成された溶融処理領域を切断の起点となる領域とすること、すなわち、溶融処理領域を起点として断面方向に向かって割れを発生させ、その割れにより切断がされることが記載されているのであるから(【0017】 ~【0019】、【0027】、【0028】、【0030】、【0033】)、本件訂正発明1の構成要件Aにおける改質領域(溶融処理領域)とは、パルスレーザ光の照射により局所的に加熱されていったん溶融した後再固化等した領域(全体)を指すものである。そして、本件明細書等1では、その溶融処理領域を更に細かく特定して、どの部分から 割れが生じるかについては、何も記載していないし、これを細かく特定する必要もなかった。したがって、本件訂正発明1においては、溶融処理領域のいずれかから割れが生じ、その割れが切断の起点となればよいのである。 したがって、本件訂正発明1においては、溶融処理領域をボイドやその 上方領域等と細分化し、その細分化されたすべての部分から割れが発生すべきとする必要もないのであり、また、溶融処理領域中の一部から割れが生じることを理由として、その余の部分を溶融処理領域ではないということもできない。 イ控訴人は、被告製品により形成されるボイドは溶融ではなく、クーロン 爆発により形成された旨主張するが、その根拠とする乙447はフェム ト秒レーザによるサファイアの加工の場合についてシミュレーションされたものにすぎず、被告製品におけるナノ秒レーザによるシリコンの熱的加工に当てはまるとはいえない。 ウ控訴人は、被告製品において切断の起点となっているのは転位部分であり、単結晶構造のままであって、結晶構造が変化した領域には該当しな いと リコンの熱的加工に当てはまるとはいえない。 ウ控訴人は、被告製品において切断の起点となっているのは転位部分であり、単結晶構造のままであって、結晶構造が変化した領域には該当しな いと主張する。しかし、被告製品における転位部分が切断の起点であるとしても、被告製品によりレーザ照射した部分は、局所的に加熱されてシリコンの融点をはるかに超える温度まで加熱されて溶融し、その後再固化するのであるから、シリコン単結晶の転位部分は溶融後再固化した領域に含まれ、「転位」部分も「溶融処理領域」に該当し、切断の起点 となる。 エ控訴人は、新たに行った実験・分析結果(乙212、452)によれば、被告製品により形成されたレーザ加工領域は、アモルファスや多結晶ではなく、単結晶のみで構成されている旨主張するが、一観察面で単結晶のみが観察されたからといって、被告製品により形成されたレーザ加工 領域は、アモルファスや多結晶ではなく、単結晶のみで構成されているとするのは論理が飛躍している。 オ控訴人の新たな実験である乙446では、シリコンウェハの界面を挟んで直接光と反射光による表面加工が別々に行われたにすぎず、「内部加工」を前提とする被告製品における切断に被控訴人主張の加工メカニズ ムの適用が否定されることにはならない。また、乙446の実験結果では、シリコンウェハ(B)のボイド上方界面付近に加工痕がみられ、シリコンウェハから上方への突起が複数観察されるのであり、乙453意見書では、これらのシリコン原子が上方に移動したであろう痕跡について合理的な説明もない。 (2) 争点1-5:被告製品は「前記レーザ光入射面を基準として前記加工対象 物の厚さ方向に第2移動量だけ前記集光用レンズを移動させ・・る機能を有 跡について合理的な説明もない。 (2) 争点1-5:被告製品は「前記レーザ光入射面を基準として前記加工対象 物の厚さ方向に第2移動量だけ前記集光用レンズを移動させ・・る機能を有する」(構成要件E)ものといえるか【控訴人の主張】ア本件訂正発明1は、集光用レンズを、「加工対象物のレーザ光入射面を基準として」、厚さ方向に第1移動量移動させた位置で改質領域を形成 した後、「前記レーザ光入射面を基準として」、厚さ方向に第2移動量移動させた位置で改質領域を形成することを定めたものである。 改質領域の位置をレーザ光入射面を基準として定めることにより、ウェハに反りや凹凸があっても、確実にウェハ内部に改質領域を形成することができ、「加工対象物の表面に不必要な割れを発生させることなく かつその表面が溶融しないレーザ加工装置を提供すること」という本件訂正発明1の課題(本件明細書等1【0005】)を確実に解決することができる。 イ被控訴人は、本件特許1の出願過程で、特許法39条2項(同一発明の出願)の拒絶理由通知に対し、第1移動量と第2移動量について「レー ザ光入射面」を基準とするとの補正をした上、補正と同時に提出した意見書(乙458-1)において、「本願の請求項1に係る発明においては、加工対象物の厚さ方向への第1移動量及び第2移動量が加工対象物のレーザ光入射面を基準としたものであるのに対し、同日出願の請求項1に係る発明においては、加工対象物の厚さ方向への第1移動量及び第 2移動量が所定の位置を基準としたものである点。」で、別件出願に係る発明とは異なると説明し、第1移動量と第2移動量の基準がレーザ光入射面であることは、別件出願における所定の位置とする基準の下位概念に相当すると述べた 置を基準としたものである点。」で、別件出願に係る発明とは異なると説明し、第1移動量と第2移動量の基準がレーザ光入射面であることは、別件出願における所定の位置とする基準の下位概念に相当すると述べた上、「レーザ光入射面」を基準とすることにより、レーザ光入射面から所定の距離だけ内側に改質領域を精度良く形成する ことが可能となると説明した。 この出願経過に鑑みれば、レーザ光入射面以外の所定の位置を基準として2段目の改質領域を形成するものは、本件訂正発明1の技術的範囲に含まれない。被告製品は、2段目の加工を行う際、レーザ加工エンジンユニットを、「第1 段AF追従レーザ加工をした位置から」、第2移動量だけシリコンウェハの主面に近づいた位置に移動させるのであって、 シリコンウェハの主面を基準としてレーザ加工エンジンユニットを移動するのではない。 ウ被告製品のようにレーザダイシング装置がAF追従制御を行う場合には、特に加工対象物に反りがある場合を想定すると、1段目の加工の開始位置である「レーザ光の入射面」を基準に第1移動量移動した位置と、1 段目の加工を終了し2段目の加工に移動するときの位置とには、ずれが生じる。その結果、1段目の加工をしたときの位置を基準に、2段目の加工位置まで第2移動量移動した位置は、「レーザ光の入射面」を基準に第2移動量移動した位置ともずれることになる。 したがって、原判決が、第2移動量の移動も、結果的には、シリコンウ ェハの主面を基準として決定されているとか、1段目の加工を開始する時点(第1移動量の移動を行った時点)と、1段目の加工が終了した時点(第2移動量の移動を行う時点)とで、集光用レンズのシリコンウェハの主面からの距離は変わらないとするのは、誤りである。 【被控訴人 第1移動量の移動を行った時点)と、1段目の加工が終了した時点(第2移動量の移動を行う時点)とで、集光用レンズのシリコンウェハの主面からの距離は変わらないとするのは、誤りである。 【被控訴人の主張】 ア構成要件Eは、「レーザ光入射面を基準として」厚さ方向に第1移動量ないし第2移動量だけ集光用レンズを移動させることを規定しているにすぎず、レーザ光入射面から第1移動量ないし第2移動量離れた位置に改質領域が形成されることを定めるものではない。「第2移動量」は、「レーザ光入射面を基準として」決められていれば足りるのであって、 レーザ光入射面との距離を意味するものではない。 イ控訴人は、被控訴人が、出願経過において、第1移動量と第2移動量の基準がレーザ光入射面であり、「レーザ光入射面」を基準とすることにより、レーザ光入射面から所定の距離だけ内側に改質領域を精度良く形成することが可能となると説明した旨主張する。 しかし、被告製品における第2移動量の移動は、直接的には、第1段目 のレーザ加工をした位置を基準とするものであるが、当該第1段目のレーザ加工をした位置自体は、シリコンウェハの主面を基準として決定されているのであるから、第2移動量の移動も、シリコンウェハの主面を基準として決定されているのであって、レーザ光入射面から所定の距離だけ内側に改質領域を精度よく形成できることに何ら変わりはない。 ウ本件訂正発明1は、加工中において、集光用レンズの厚さ方向の位置が、第1移動量ないし第2移動量移動した位置から変動するか否かという事項については、何ら規定するものではないから、本件訂正発明1は、加工中にAF追従する態様など、レーザ光入射面を基準として第1移動量移動した位置と第1段目の 動量移動した位置から変動するか否かという事項については、何ら規定するものではないから、本件訂正発明1は、加工中にAF追従する態様など、レーザ光入射面を基準として第1移動量移動した位置と第1段目のレーザ加工を終了する位置が同じではない態 様を含むものといえる。したがって、1段目の加工の開始位置である「レーザ光の入射面」を基準に第1移動量移動した位置と、1段目の加工を終了し2段目の加工に移動するときの位置とのずれや、1段目の加工をしたときの位置を基準に、2段目の加工位置まで第2移動量移動した位置と、「レーザ光の入射面」を基準に第2移動量移動した位置との ずれを理由に、構成要件Eの非充足をいう控訴人の主張は理由がない。 (3) 争点2-1:被告製品は「測定初期位置に前記レンズを保持する」(構成要件Q)、「加工初期位置に前記レンズを保持する」(構成要件2Q)ものといえるか(本件発明2-1及び2-2に関して)【控訴人の主張】 ア原判決は、被告製品を、被告製品(固定)、被告製品(低追従)の2種 類に分けているが、被告製品(固定)には、実際には③サムスン社等用の「被告製品(固定)WH」(メモリ、座標基準、エッジオフ区間あり)と④TI社用の「被告製品(固定)RM」(アナログ、光量基準、エッジオフ区間なし)の2種類があり、原判決が認定した被告製品(低追従)には、実際には①サムスン社等用の「被告製品(低追従)WH」(メモリ、座標 基準、エッジオフ区間あり)と②TI社用の「被告製品(低追従)RM」(アナログ、光量基準、エッジオフ区間なし)と⑤「被告製品(低追従)FH」(センサ、座標基準、エッジオフ区間なし)の3種類がある。 被告製品①~⑤は、上述のとおり、それぞれ仕様が異なるから、「 基準、エッジオフ区間なし)と⑤「被告製品(低追従)FH」(センサ、座標基準、エッジオフ区間なし)の3種類がある。 被告製品①~⑤は、上述のとおり、それぞれ仕様が異なるから、「被告 製品の具体的構成」は、被告製品ごとに認定されるべきものである。 イ被告製品WHは、先にレーザダイシング装置によりレーザ加工を行い、その後に別の装置によりグラインディング(ウェハの一方の面を砥石で平らに削って厚さを薄くする加工)を行う、「GAL」(GrindingAfterLaser)と呼ばれる製造プロセスを採用している。「WH」が用いられる GALプロセスにおいて、レーザ加工時の加工対象物は、グラインディングにより裏面研削される前であるため、その主面及び裏面の端部には、 ベベルが存在する。ウェハエッジ等の判断方法として座標基準が採用され、加工用レーザの照射において「エッジオフ区間」が設定される。 「メモリ」を加工対象とするGALプロセスにおいて、光量基準ではウェハエッジを正確に判断できず、また、ウェハエッジ部分で加工用レーザを照射することにより、アブレーションやチッピング等の不具合が生 じたことによる。なお、サムスンにおいて、控訴人又はその現地法人のエンジニアが、サムスンの依頼を受け、50mm×50mmの矩形状の小片を用いて亀裂進展量の検査を行うことはあり(1/4ウェハを用いて検査を行うことはない。)、その際に控訴人において光量基準に設定することがあり得るが、その場合、当該小片には、レーザが突入する断面 にベベルがないため、小片の現実の端部から低追従AFが行われることとなり、小片の端部において「初期位置」での「保持」はなされず、構成要件R、2Rを充足する方法で検査が行われることはない。 にベベルがないため、小片の現実の端部から低追従AFが行われることとなり、小片の端部において「初期位置」での「保持」はなされず、構成要件R、2Rを充足する方法で検査が行われることはない。 被告製品RMは、ウェハ上にアナログ用の集積回路を設ける加工対象物の加工を行う。●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●その主面側には、ベベルが存在し ない。GALプロセスのような不具合が生じないLAGプロセスにおいて使用される「RM」については、従来通り、光量基準を採用し、ウェハエッジから加工用レーザを照射する構成(エッジオフ区間が設定されない構成)となっている。 被告製品FHは、被告製品RMと同様に、LAGと呼ばれる製造プロ セスを採用しているが、グラインディングにより平らに削った面が裏面 側、削っていない面が主面側となる。需要家によるレーザ加工において、ウェハから切り出すチップのサイズが小さいことから、座標基準でウェハエッジを正確に判断しつつ、ベベルの終端辺りから改質層を形成して、できるだけ多くのチップを切り出すことができるようにするためである(乙425)。 以上のような被告製品の構成は、需要家ごとに異なっている加工対象物や装置の特性に応じて設定されるものであることから、被告製品の納品時の設定が、納品後に変更されることはない。 ウ被告製品(低追従)は、いずれも、加工対象物であるウェ に異なっている加工対象物や装置の特性に応じて設定されるものであることから、被告製品の納品時の設定が、納品後に変更されることはない。 ウ被告製品(低追従)は、いずれも、加工対象物であるウェハ上において、低追従による制御をしており、測定初期位置での「保持」(レンズの高 さが初期位置に固定されており、少なくとも初期位置の高さからZ軸方向には変動しないこと)は行われないから、「測定初期位置」で「保持」するとの構成を備えていない。したがって、被告製品(低追従)は、本件発明2-1の構成要件Q及び本件発明2-2の構成要件2Qを充足しない。 【被控訴人の主張】ア控訴人が、5種類の被告製品によって異なると主張しているのは、被告製品の構成ではなく、被告製品の構成が同一であることを前提とした、加工条件の設定の違いにすぎない。 被告製品では、加工条件の設定/変更(光量基準とするか座標基準とす るかを含む。)をGUIによるパラメータの設定/変更により行うことができる(控訴人主張に係る「アプリケーション」、「制御プログラム」及び「ソフトウェア」は、設定登録されたパラメータ〔加工条件〕のセットであり、これを「レシピ」ともいう。)。 イ控訴人は、被告製品は出荷時に登録されたレシピで固定運用される旨主 張する。しかしながら、ユーザが加工対象を変更するときは、新しいレ シピの登録が必須である。特に、ユーザが、Signetics 社、SmartBrazil社のような加工請負業者である場合には、加工対象物と加工態様は変わり続ける。また、被告製品が転売されたときには、新しいユーザの加工対象物と加工態様に合わせた加工条件が設定されることになる。 (4) 争点2-2:被告製品は「レンズ 、加工対象物と加工態様は変わり続ける。また、被告製品が転売されたときには、新しいユーザの加工対象物と加工態様に合わせた加工条件が設定されることになる。 (4) 争点2-2:被告製品は「レンズを測定初期位置に保持した状態で第二の レーザ光の照射を開始」(構成要件R)するものといえるか(本件発明2-1に関して)【控訴人の主張】ア全ての被告製品において、測距用レーザ光は、電源が投入された後、ステージに加工対象物であるウェハが搭載されるよりも前から照射されて いる(乙425)。したがって、全ての被告製品は、「レンズを測定初期位置に保持した状態で前記第二のレーザ光の照射を開始」(構成要件R)の要件を充足しない。 イ被告製品(低追従)WHにおいては、エッジオフ区間が設定されており、加工初期位置に「保持」した状態(固定動作)で加工対象物であるウェ ハに加工用レーザ光の照射を「開始」しておらず、「レンズを加工初期位置に保持した状態で前記第一のレーザ光の照射を開始」(構成要件2R)を充足しない。 (5) 争点2-3:被告製品は「前記第二のレーザ光の反射光に応じて、前記レンズを前記測定初期位置に保持した状態を解除」(構成要件R)し、「当 該解除後に・・前記主面との距離を調整するように前記保持手段を制御」(構成要件S)するものといえるか(本件発明2-1に関して)【被控訴人の主張】ア原判決は、構成要件Rの「レーザ光の反射光に応じて、前記レンズを前記測定初期位置に保持した状態を解除」という要件を「反射光の全光量 が閾値を超えた時点で、直ちに、『測定初期位置に前記レンズを保持』 した状態を解除」の意味に解している。 しかし、本件特許2の特許請求の範囲の請求項13 いう要件を「反射光の全光量 が閾値を超えた時点で、直ちに、『測定初期位置に前記レンズを保持』 した状態を解除」の意味に解している。 しかし、本件特許2の特許請求の範囲の請求項13には、「反射光の全光量が閾値を超えた時点で、直ちに、『測定初期位置に前記レンズを保持』した状態を解除」すべきことを示す記載はない。また、本件明細書等2の「測定初期位置にレンズを保持した状態で切断予定ラインの一 端部に第二のレーザ光を照射した後、すなわちレンズと加工対象物とが相対的に移動してレンズが加工対象物に差し掛かった後に、レンズを保持した状態を解除して主面の変位を取得するので、加工対象物の端部の形状変動による影響を極力排除して変位を取得できる。」(【0018】)との記載からすると、構成要件Rの「レーザ光の反射光に応じて、 前記レンズを前記測定初期位置に保持した状態を解除」という要件は、「レーザ光の反射光によりレンズ(第二のレーザ光の照射位置)が加工対象物に差し掛かったことが検知された後に、『測定初期位置に前記レンズを保持』した状態を解除」の意味に解するのが妥当である。本件発明2-1が加工対象物の端部の形状変動による影響を極力排除すること を目的とした発明であるから、「加工対象物の端部の形状変動による影響を受けなくなった地点」まで「初期位置保持」を続け、その後「初期位置保持」を「解除」し、そこからAF追従を開始することが望ましいのであり、この地点は、「反射光の全光量が閾値を超えた地点」とは必ずしも一致しない。 被告製品(固定)は、「レーザ光の反射光によりレンズ(第二のレーザ光の照射位置)が加工対象物に差し掛かったことが検知された後に、端部の形状変動の影響を受けないようにするために、エッジ処理区間(予め設定され (固定)は、「レーザ光の反射光によりレンズ(第二のレーザ光の照射位置)が加工対象物に差し掛かったことが検知された後に、端部の形状変動の影響を受けないようにするために、エッジ処理区間(予め設定された所定の距離)を、レンズを初期値に固定したままで進んだ後に、『測定初期位置に前記レンズを保持』した状態を解除」する 機能を有するものといえるから、構成要件Rの「レーザ光の反射光に応 じて、前記レンズを前記測定初期位置に保持した状態を解除」という要件を充足する。 イ仮に構成要件Rの「レーザ光の反射光に応じて、前記レンズを前記測定初期位置に保持した状態を解除」という要件を原判決のように解したとしても、被告製品ではエッジ処理区間を0mmに設定することもでき、 その場合には、エッジ処理区間が存在しないことになる以上、装置がウェハエッジを検出した時点で、直ちに固定制御を解除し、AF追従走査に移行する。 控訴人は、被控訴人の「被告製品ではエッジ処理区間を0mmに設定することもできる」旨の主張を明らかに争っていない。また、原判決10 1頁のチャート(【チャート3】)には、エッジ処理区間を0mmに設定して被告製品を動作させた例が「標準AF」として示されている。さらにいえば、甲211によっても、被告製品がエッジ処理区間を0mmに設定できることは確認されている。上記原判決101頁のチャート(【チャート3】)と甲211は、いずれも被告製品(低追従)につい てのものではあるが、エッジ処理区間を0mmに設定できるか否か)で、被告製品(低追従)と被告製品(固定)が相違していると考えるべき理由はない。 【控訴人の主張】ア本件発明2-1では、レンズを保持した状態の解除は、「第二のレーザ 光の反射光に応じて」行わ 告製品(低追従)と被告製品(固定)が相違していると考えるべき理由はない。 【控訴人の主張】ア本件発明2-1では、レンズを保持した状態の解除は、「第二のレーザ 光の反射光に応じて」行われる(構成要件R)ところ、解除後直ちに主面との調整を行わない場合、解除が、「第二のレーザ光の反射光に応じて」行われるとはいえない。本件明細書2の実施形態にも、端部に差し掛かったか、一端に相当する位置にあることをもって、保持した状態が解除される実施形態のみが記載されている(【0045】~【004 8】、【0055】、【0060】、【0062】、【0067】、 【図4】、【図7】、【図9】)。したがって、この点に関する原判決の判断は相当である。 イ被控訴人は、被告製品ではエッジ処理区間を0mmに設定できる旨主張するが、その根拠とする甲211は、「ML300EX」との名称からすれば低追従の装置であるにもかかわらず、「エッジAF固定」と記載 されており、信用性がない。なお、甲211の作成者が検証したという装置は、控訴人が顧客に販売した製品ではなく、台湾顧客向けのデモ機であって、顧客による検討の結果採用されなかった装置である。 (6) 争点2-4:被告製品は「前記切断予定ラインの一端部において前記改質領域を形成し」(構成要件2R)、また、「当該一端部における改質領域の 形成後に・・前記レンズを前記加工初期位置に保持した状態を解除」(構成要件2S)するものといえるか(本件発明2-2に関して)【控訴人の主張】ア本件発明2-2は、端部における集光点のずれを極力排除して改質領域を形成することができるという効果を奏しなければならないところ (【0019】、【0074】)、集光点のずれとは、加工対象物内部の加工を予定 は、端部における集光点のずれを極力排除して改質領域を形成することができるという効果を奏しなければならないところ (【0019】、【0074】)、集光点のずれとは、加工対象物内部の加工を予定する集光点の位置と、加工時の実際の集光点の位置の高さ方向のずれを意味するから(【0002】、【0004】)、本件発明2-2、加工対象物の端部において、「加工初期位置」に保持して形成される改質領域は、加工対象物内部の加工を予定する位置に集光して形 成されると解さなければならない。そもそも、本件発明2-2は、切断を予定するライン(切断予定ライン)に沿って加工対象物の内部に改質領域を形成することにより加工対象物を切断する発明である(構成要件2I)。切断を予定する位置に形成されていない加工痕は、本件発明2-2の課題解決に資さないものであり、何らの技術的意味も有さない。 そのような課題解決に資さない加工痕を「切断予定ラインの一端部に形 成された改質領域」であるとするのは著しく不合理である。 以上より、本件発明2-2の「当該レンズを加工初期位置に保持した状態で・・・前記切断予定ラインの一端部において前記改質領域を形成し」(2R)とは、レンズを加工初期位置に保持した状態で、加工を予定したシリコンウェハの内部の位置に改質領域を形成することを指すと解す るべきである。 イ被告製品(低追従)WHは、エッジオフ機能により、加工対象物の端部において、改質領域が形成されない。 被告製品(低追従)RMは、現実の端部から低追従の制御が開始することから、保持した状態で改質領域が形成されない。 被告製品(低追従)FHは、座標基準が設定されており、現実の端部から低追従の制御が開始することから、保持した状態で改質領域が形成されない。 ことから、保持した状態で改質領域が形成されない。 被告製品(低追従)FHは、座標基準が設定されており、現実の端部から低追従の制御が開始することから、保持した状態で改質領域が形成されない。 被告製品(低追従)について、ベベルのある加工対象物について光量基準を設定するとともに、エッジオフ機能をオフにした場合、いずれの 加工深さにおいても、「集光点が前記加工対象物内部の所定の位置」に合う状態で集光し、改質層が形成されるのは、光量基準によるウェハエッジの検出がなされ、低追従AFが開始した後である(乙500)から、「加工初期位置」に「保持」した状態で、「改質領域」が形成されることはない。また、いずれの加工深さにおいても、加工を予定する加工用 レーザ光の焦点の深さとずれが生じている。実際の加工痕は、ベベルの主面の表面付近に形成された加工痕も含め、切断を予定する位置に形成されたものであるとはいえない。なお、被控訴人は、乙500では加工深さが●●μmと●●●μmの2つしかない旨主張するが、前者は●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●における加工条件であ り、後者は●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●における 加工条件であるから、これらについて実験を行ったことには合理的理由がある。 被控訴人は、ベベル部分改質領域の一部区間は、エッジ検出される前に照射された加工用レーザ光により形成されているとして甲216の1、2を提出するが、ベベルの主面の表面に形成された加工痕は、表面に露 出する空洞状のもので、アブレーションと解されるから、加工対象物の内部に形成されたものとはいえない。 【被控訴人の主張】ア原判決は、被告製品(低追従)は、加工対象物にベベルがない場合には構成要件 、アブレーションと解されるから、加工対象物の内部に形成されたものとはいえない。 【被控訴人の主張】ア原判決は、被告製品(低追従)は、加工対象物にベベルがない場合には構成要件2R及び2Sを充足しないと判断する。 これは、被告製品(低追従)の「ウェハエッジ検出位置から予め設定された距離(エッジ処理区間)を通過するまで」についての被告低追従上限方式の動作が、構成要件2Qの「初期位置に前記レンズを保持」との要件を充足しないとの理解を前提にしている。 しかし、少なくともエッジ処理区間の幅が5mmに設定された被告製 品(低追従)においては、エッジ処理区間のレンズの保持状態は被告製品(固定)の保持状態と実質的に相違しないのであるから、そのように設定された被告製品(低追従)は、「ウェハエッジ検出位置から予め設定された距離(エッジ処理区間)を通過するまで」の区間においても、構成要件2Qの「初期位置に前記レンズを保持」との要件を充足すると いうべきである。そして、それを前提とすれば、被告製品(低追従)も被告製品(固定)と同様に、加工対象物にベベルがない場合にも構成要件2R及び2Sを充足する。 イ本件発明2-2が、端部における集光点のずれを極力排除して改質領域を形成することができるという効果を奏する発明であるとの控訴人の 主張には異論はない。ただし、そこでいう「集光点のずれ」は、本件明 細書等2の【0019】の記載から理解されるように、加工初期位置にレンズを保持した状態を切断予定ラインの一端部において改質領域が形成されるまで保持しなかった場合(例えば、レンズを加工対象物の外からAF追従させようとした場合)に生じるずれである。これを踏まえると、「加工初期位置にレンズを保持し インの一端部において改質領域が形成されるまで保持しなかった場合(例えば、レンズを加工対象物の外からAF追従させようとした場合)に生じるずれである。これを踏まえると、「加工初期位置にレンズを保持した状態」における「加工対象物内 部の加工を予定する集光点の位置」は、「加工初期位置にレンズを保持した状態」における集光点の位置そのものである。 ウ控訴人は、ベベルのある加工対象物について光量基準を設定するとともに、エッジオフ機能をオフにした場合、改質層が形成されるのは、低追従AFが開始した後である旨主張する。 しかし、控訴人が根拠とする乙500は、加工深さが●●μmの場合と●●●μmの場合の2通りしか示されていないが、その中間の加工深さの場合にも、ベベル部分で改質領域が形成される場合は当然にあり得る。 被告製品2(低追従)を使用して、ベベルのあるシリコンウェハにつ いて、光量基準を用いて、エッジオフ機能をオフにし、ステルスダイシング加工を行った場合のシリコンウェハの実物そのものの全光量電圧値(測距用レーザ光の反射光を受光したAFセンサーの受光素子〔フォトダイオード〕全部から出力される電圧値)を実測した結果は、甲216の1のとおりであり、ベベル部分改質領域の一部区間は、エッジ検出さ れる前に照射された加工用レーザ光により形成されている。 甲216の1のSEM(走査型電子顕微鏡)による拡大写真(甲216の2)によれば、ベベル部に形成された表面付近の加工痕で、控訴人がアブレーションであるとするものについてもボイドが観察され、「加工対象物の内部に形成される改質領域」といえるものである。 (7) 争点2-5:被告製品は「改質領域」(構成要件I、P、2I、2P、2 R、2S、3I もボイドが観察され、「加工対象物の内部に形成される改質領域」といえるものである。 (7) 争点2-5:被告製品は「改質領域」(構成要件I、P、2I、2P、2 R、2S、3I)を形成するといえるか(本件発明2全てに共通)【控訴人の主張】ア本件発明2-1は、加工対象物の外側から測定を開始し、加工対象物の内側へと測定を行っていくことによって得られた主面高さの測定値に基づいて加工対象物を加工するためのレーザ光を集光する集光レンズを 駆動すると、加工対象物の端部においてレーザ光の集光点がずれる場合があることを課題の一つとする(【0005】)。本件発明2-1の構成要件Q、Rは、同課題を解決するための手段であるから、同手段によって、加工対象物の端部における加工用レーザ光の集光点のずれを解消するようなクレーム解釈がされなければならない。 「測定初期位置」にレンズを保持することを規定する本件発明2-1も、「加工初期位置」にレンズを保持することを規定する本件発明2-2も、共に、加工対象物の端部(切断予定ラインの一端部)において、レンズを一定の高さ(「測定初期位置」であるとともに「加工初期位置」でもある高さ)に保持し、第一のレーザ光(加工用のレーザ光)の集光 点を加工対象物の内部に照射して改質領域を形成することが想定されている(本件明細書等2の【0045】、【0046】、【0059】、【0060】、【図4】)。 本件明細書等2では、加工対象物の端部(切断加工ラインの一端部)に改質領域を形成する態様が記載されているが(【0036】~【00 38】、【0058】~【0061】、【0069】、【0070】、図8、図10等)、加工対象物の端部(切断加工ラインの一端部)に改質領域を形成しない態様は一切 ているが(【0036】~【00 38】、【0058】~【0061】、【0069】、【0070】、図8、図10等)、加工対象物の端部(切断加工ラインの一端部)に改質領域を形成しない態様は一切記載されておらず、また、切断予定ラインは、加工対象物の一端から他端まで設定されることが想定されている(【0039】~【0041】、【0060】、【図4】、【図8】 等)。 よって、本件発明2-1の構成要件Iにいう「加工対象物の切断予定ラインに沿って・・・改質領域を形成する」は、レンズを測定初期位置に保持した状態で切断予定ラインの一端部において改質領域を形成することと、当該一端部における改質領域の形成後に、レンズを測定初期位置に保持した状態を解除し、変位取得手段が取得した主面の変位に基づ いてレンズと加工対象物との間隔を調整するように保持手段を制御して改質領域を形成することを意味するというべきである。 したがって、加工対象物の端部(切断予定ラインの一端部)において、第一のレーザ光の集光点が加工初期位置(測定初期位置)で合わなかったり、所望していないばらばらな位置に改質痕が形成されたとしても、 それは、切断予定ラインの一端部において改質領域を形成したことにはならない。 イ被告製品(低追従)WHでは、エッジオフ機能が設定されているから、ウェハの端部で改質領域が形成されることはない。 また、被告製品(低追従)RMにおいては、ベベル部分において改質領 域が形成されない(乙430)。 被告製品(低追従)FHにおいては、光量基準を設定したとしても、切断予定ラインの一端部において改質領域が形成されない。被告製品(低追従)WHについて、光量基準を設定し、エッジオフ機能をオフにした場合も同様である。 よ は、光量基準を設定したとしても、切断予定ラインの一端部において改質領域が形成されない。被告製品(低追従)WHについて、光量基準を設定し、エッジオフ機能をオフにした場合も同様である。 よって、被告製品(低追従)は、構成要件Iや構成要件2Iを充足しない。 【被控訴人の主張】ア本件発明2-1の構成要件Iには、加工対象物の一端部のことや切断予定ラインの一端部のことは何も規定されていないから、控訴人が主張す るような解釈は採用され得ない。 イ前記(6)【被控訴人の主張】ウのとおり、被告製品において、ベベル部分の改質領域は、低追従AFが開始する前にも形成され得るものであるから、被告製品(低追従)において、ベベルのある加工対象物について光量基準を設定するとともに、エッジオフ機能をオフにした場合、切断予定ラインの端部において改質領域が形成されることはないとの控訴人 の主張は失当である。 (8) 争点2-6:被告製品は「制御手段」(構成要件N~S、2N~2S)を備えるか(本件発明2-1、本件発明2-2に関して)【控訴人の主張】被告製品は、需要家が指定する制御を行うアプリケーションを設定して販 売されるから、各被告製品が備えているのは、需要家が指定した所定の制御を行う「制御手段」のみである。その制御が、本件発明2の各構成を充足しないことは上述したとおりであるから、被告製品は、「制御手段」を備えていない。 【被控訴人の主張】 争う。 (9) 争点5:本件実施許諾契約の成否【控訴人の主張】ア原判決は、本件業務提携契約の2条3項に、同契約の合意事項は調印者名で調印された契約書によらなければ修正できない旨の記載があったこ と 実施許諾契約の成否【控訴人の主張】ア原判決は、本件業務提携契約の2条3項に、同契約の合意事項は調印者名で調印された契約書によらなければ修正できない旨の記載があったこ とを理由に、本件業務提携契約を修正又は変更するには、上記契約書その他の書面が必要であるとし、本件でそのような書面が存在しないとして、本件実施許諾契約の成立を否定している。 イ本件業務提携契約の内容は、被控訴人が控訴人にSDエンジンを有償で納入し、控訴人がステルスダイシング装置を製造販売すること(3条)、 ロイヤルティの支払(4条)、契約の有効期間は1年間とし、期間満了 の3か月前までに被控訴人又は控訴人から書面による変更、解約の申し出のないときは、同一条件で1年単位で更新が続くこと(6条)であるが、本件実施許諾契約はこれらを一切修正・変更するものではない。 本件実施許諾契約について協議が行われた平成26年10月当時は、被控訴人製SDエンジンを搭載した控訴人のステルスダイサーの売上が 激減していた時期にあり、控訴人と被控訴人が共同開発予定であった被控訴人製SDエンジン搭載機による売上げを回復し得るようになるまでの間、暫定的に控訴人製SDエンジン搭載機を製造販売することを認めるのは、被控訴人の利益を何ら侵害するものではなく、むしろ、共存共栄をもたらすものである。 ウ原判決は、本件議事録が「東京精密と印字された」用紙に記載されたものであること、「鉛筆等の走り書き」であること、「メモ」であることをもって、「契約書その他の書面」に該当しないとしている。 しかし、「契約書その他の書面」は、当事者の意思表示の合致を証する書面であれば足り、一方当事者の名前が印字された用紙を用いて作成 してはならなないとか、手書きで作 」に該当しないとしている。 しかし、「契約書その他の書面」は、当事者の意思表示の合致を証する書面であれば足り、一方当事者の名前が印字された用紙を用いて作成 してはならなないとか、手書きで作成してはならないといった法的根拠は一切ない。 エ原判決は、本件議事録にライセンスの対象商品、販売先の記載がないこと、実施料の定めがないこと、仮にライセンス期間について記載されているとしても、良いレーザエンジンができるまでという極めてあいまい なものにとどまることを、確定的な意思表示があったとは認められない理由としている。 しかし、本件議事録には、「顧客を引き留めるためにも」控訴人製造に係るSDエンジンを搭載したSDダイシング装置を売りたい旨記載されているから、対象商品が控訴人製SDエンジンを搭載したSDダイサ ー、販売先が同装置に係る控訴人の顧客であることが明らかである。 実施料の額については、平成26年10月23日の議事録(甲59)に、「今迄通りのロイアリティを支払う」と記載があるから、平成24年6月11日に電子メール(乙19)でのやりとりを通じて合意された1台当たり●●●●円のロイヤルティがこれに当たる。なお、後記オのとおり、平成27年3月25日の控訴人と被控訴人の会談に係る被控訴 人の社内報告書(甲60)には、「ロイヤリティフィーの%については、b顧問及びc社長との面談時に現状と同額でOKと回答。」とある。 「良いレーザエンジン」も当事者間では決してあいまいなものではなく、本件実施許諾契約を受けて当事者間で行われた共同開発では、控訴人は「1099nmSDエンジン要求性能」と題する文書において、 共同開発するエンジンが満たすべき指標を具体的に提示した(乙346、347)。共同開発製品が世に出 われた共同開発では、控訴人は「1099nmSDエンジン要求性能」と題する文書において、 共同開発するエンジンが満たすべき指標を具体的に提示した(乙346、347)。共同開発製品が世に出なかったのは、「良い製品」について控訴人と被控訴人の見解が一致しなかったからではなく、被控訴人が共同開発から撤退したからである。 オ本件議事録は、平成26年10月8日、被控訴人からd副社長(代表取 締役でもある。)及びe部長、控訴人からb顧問(控訴人の前代表取締役会長)及びc社長が出席するというトップ会談の場で作成され、全員が署名し、被控訴人側にもコピーが渡された。 カまた、控訴人製エンジン搭載機の最初のサンプル機をサムスン社に納入することになった際の平成27年3月25日、控訴人と被控訴人の会談 が行われたが、被控訴人の社内報告書(甲60)には、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● との記載及び上記エに引用した記載があり、これらはいずれも本件実施許諾契約が成立していることを前提とした記載である。 また、被控訴人は、甲60記載の面談の後、同月30日に、「装置が受注になり販売になった場合について」「⇒別途ロイヤリティ費をお支払いいただき、ロイヤリティシール(プレート)を送付させていただき ます」などと記載したメールを控訴人に送付したが、これは、サムスン社に対するサンプル機1台に限らず控訴人製 ロイヤリティ費をお支払いいただき、ロイヤリティシール(プレート)を送付させていただき ます」などと記載したメールを控訴人に送付したが、これは、サムスン社に対するサンプル機1台に限らず控訴人製SDエンジン搭載機を対象とした実施許諾がなされていたことを裏付けるものである。仮に、控訴人製SDエンジン全体についての実施許諾がされたと認められないとしても、サムスン社向けの製品については実施許諾がされたものというべ きである。 さらに、e部長らが、控訴人がTI社に控訴人製エンジン搭載機を紹介しているとの情報を得、その真偽を確かめるために、平成27年6月29日に控訴人を訪問した際も、控訴人がTI社に対する営業活動をありのままに説明したのに対し、e部長らは異議を述べず、かえって、面 談報告書(甲62)では、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●としている。 キ仮に、本件業務委託契約が存続していることが本件実施許諾契約の暗黙の前提であり、本件業務提携契約が終了したときは本件実施許諾契約も 当然に終了するとしても、本件業務提携契約が終了した平成29年9月18日までに受注した被告製品については、侵害品に当たらない。 【被控訴人の主張】争う。 控訴人の主張は、本件業務提携契約の修正又は変更に契約書その他の書 面が必要とされていることと相容れない。 (10) 争点6-1-1:特許法102条2項の適用の可否【被控訴人の主張】ア原判決は、「特許権者に侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合には、特許法102 許法102条2項の適用の可否【被控訴人の主張】ア原判決は、「特許権者に侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合には、特許法102条2項の適用が認められる」と正当に判示しながら、特許権者である被 控訴人において販売するSDエンジンが、侵害品であるSDダイサーの部品に相当するもので、SDダイサーとは需要者を異にするものであり、市場において競合関係に立たないとして、特許法102条2項の適用を否定した。 イしかし、特許権者が販売する部品を用いて生産された完成品と、侵害者 が販売する完成品とは、同一の完成品市場の利益をめぐって競合しており、いずれにも同じ機能を担う部品が包含されている。そうすると、完成品市場における部品相当部分の市場利益に関する限りでは、特許権者による部品の販売行為は、当該部品を用いた完成品の生産行為又は譲渡行為を介して、侵害品(完成品)の譲渡行為と間接的に競合する関係に あるといえるから、特許権者が部品を販売し、侵害者が完成品を販売している場合においても、特許法102条2項の適用は否定されない。 本件でいえば、控訴人が被告製品(控訴人製のSDエンジンを搭載したもの)を製造販売しなければ、被控訴人は、SDダイサーの二大メーカーであるディスコ社と控訴人に対し、各業務提携契約(ライセンス契 約)に基づき、SDダイサーに必須の部品であるSDエンジンを販売し得たとの客観的状況が存在するのであるから、「特許権者に、侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合」といえる。 原判決は、本件のような場合、侵害品の市場においては、侵害品の代 わりに部品が購入されるものとはいえないのに、特許権者 かったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合」といえる。 原判決は、本件のような場合、侵害品の市場においては、侵害品の代 わりに部品が購入されるものとはいえないのに、特許権者に、侵害者に よる特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在するものと認めるのは、明らかに特許権者が受けた損害の額以上の額を推認することになると判示するが、SDダイサーの販売による利益の額全体について102条2項の推定が及ぶと解しても、特許権者である被控訴人がSDダイサーの部品であるSDエンジンのみを製造販 売していることが、部分的な推定覆滅事由になるのであり、これも考慮すれば、特許権者が受けた損害の額以上の金額を損害として認めることにはならない。 また、原判決は、①海外にEO社等の競合他社が存在すること、②サムスン社が特定のメーカー1社のみからSDダイサーを購入しないこと を基本方針としており、当該2社も時期により変動していること、③TI社が控訴人製のSDダイサーのみを購入しており、被控訴人からSDエンジンを購入した実績がないことから、エンドユーザにおいて、控訴人からSDダイサーを購入していなければ、代わりにディスコ社からSDダイサーを購入するという関係が直ちに成り立つとはいえないとして いるが、①海外のEO社等の競合他社は、被控訴人が海外において保有する特許権を侵害することなく、SDダイサーを製造販売することは困難であったのであり、実際、サムスン社は、●●●●●●●●●●●●●●●●●●を理由に、平成28年4月以降、EO社からSDダイサーを購入していないこと(甲144の1・2)、②サムスン社は、平成2 8年4月以降は、SDダイサーを、専らディスコ社と控訴人の2社から購入して 理由に、平成28年4月以降、EO社からSDダイサーを購入していないこと(甲144の1・2)、②サムスン社は、平成2 8年4月以降は、SDダイサーを、専らディスコ社と控訴人の2社から購入していたところ、ディスコ社も控訴人も、被控訴人との業務提携契約により、控訴人からのみSDエンジンを購入する義務を負っていたこと、③SDダイサーは、平成28年3月以降は、世界的に見ても、ディスコ社と控訴人の2社のみが製造販売していたことに鑑みれば、TI社 は、仮に控訴人から被告製品を購入することができないとしたら、これ をディスコ社から購入したはずであることからすると、エンドユーザにおいて、控訴人からSDダイサーを購入していなければ、代わりにディスコ社からSDダイサーを購入するという関係があることは明らかである。 ウ知財高裁平成25年2月1日判決(平成24年(ネ)第10015号、 ごみ貯蔵機器事件大合議判決)、知財高裁令和元年6月7日判決(平成30年(ネ)第10063号、二酸化炭素含有粘性組成物事件大合議判決)とも、特許権者に、侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合には、特許法102条2項の適用が認められるとし、特許権者の製品が侵害品と需要者を共 通にし、市場において直接の競合関係に立つことが、特許法102条2項適用の要件であるとはされていない。 知財高裁令和4年10月20日判決(令和2年(ネ)第10024号、椅子式マッサージ機事件大合議判決)は、同項の趣旨からすると、「特許権者が、侵害品と需要者を共通にする同種の製品であって、市場にお いて、侵害者の侵害行為がなければ輸出又は販売することができたという競合関係にある製品(以下「競合品」という場合があ と、「特許権者が、侵害品と需要者を共通にする同種の製品であって、市場にお いて、侵害者の侵害行為がなければ輸出又は販売することができたという競合関係にある製品(以下「競合品」という場合がある。)を輸出又は販売していた場合には、当該侵害行為により特許権者の競合品の売上げが減少したものと評価できるから、特許権者に、侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在す るものと解するのが相当である。」と判示しているが、直接的には、市場における直接の競合品を念頭に判示しているだけであり、直接の競合品でなくとも、「市場において、侵害者の侵害行為がなければ輸出又は販売することができたという競合関係にある製品」であれば、「侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという 事情」が肯定されるのであるから、そのような場合に、特許法102条 2項の適用を否定しているものではない。つまり、本件におけるSDダイサーと、SDダイサーの中枢ユニットであり、SDダイサーに必須の部品であるSDエンジンとの関係であれば、同判決にいう「市場において、侵害者の侵害行為がなければ輸出又は販売することができたという(間接的な)競合関係にある製品」という関係が成立すると解される。 【控訴人の主張】ア被控訴人引用の椅子式マッサージ機事件大合議判決は、特許権者が、侵害品と「需要者を共通」にする「同種の」「競合品」であって「市場において・・・競合関係にある製品」を輸出・販売していた場合に初めて、侵害者が侵害品の輸出・販売により得た利益と同質の利益を特許権者が得 ることができたという一応の経験則が成り立ち、特許法102条2項による推定が正当化されることを踏まえたものである に初めて、侵害者が侵害品の輸出・販売により得た利益と同質の利益を特許権者が得 ることができたという一応の経験則が成り立ち、特許法102条2項による推定が正当化されることを踏まえたものである。 イ被告製品はSDダイサーであり、単にレーザの照射を行う機能だけではなく、レーザが加工対象物に照射される位置を測距用レーザ等を用いることで正確に決定する機能、加工対象物であるシリコンを個々のチップ にダイシング(割断)する機能等種々の機能を有し、SDエンジン以外の多数のハード部品、サブミクロン単位の精緻な動作を行う種々の機能を実現可能にするためのソフトウェアを備えている。 被告製品の顧客において、SDダイサーの代わりにSDエンジンを買う者はいない。 ウ被控訴人のSDエンジンの価額は約●●●●●円、被告製品の価額は約1億円であることに照らせば、被告製品の販売によって得られた利益を特許法102条2項により被控訴人の被った損害であると推定することの不合理性は明らかである。 被控訴人は、推定の覆滅がされるから不合理ではない旨主張するが、覆 滅の立証責任が侵害者側にあるとすれば、不合理であることに変わりは ない。 (11) 争点6-1-2:特許法102条2項に基づく損害額【被控訴人の主張】ア被控訴人が原審において侵害の対象として主張していた被告製品の販売(№●●●●)に係る売上高のうち、オプション及びRMモジュールを 除いたものは、原判決別紙一覧表のとおりである。 なお、被控訴人は、原審において、被告製品の売上高はオプション及びRMモジュールを含めたものとして認定されるべき旨主張していたが、控訴審において当該主張はしない。また、RMモジュール付き被告製品 なお、被控訴人は、原審において、被告製品の売上高はオプション及びRMモジュールを含めたものとして認定されるべき旨主張していたが、控訴審において当該主張はしない。また、RMモジュール付き被告製品における本体の売上高についても、控訴人の主張のとおり、全体の● ●%であることを認める。 原判決は、同表№1については、許諾があったとして損害算定の対象から除いているが、本件業務提携契約上、被控訴人が控訴人に対し、SDエンジンを有償で販売した上で、控訴人が、当該SDエンジンを搭載したSDダイシング装置をエンドユーザに売却することとされ、その変 更には調印者名で調印された契約書を要するとされているとされていることと整合しない。原判決は、被控訴人が、3月30日のメール(乙20)で、今回のサンプル出荷に限っては、ロイヤリティの支払が不要であるが、装置が受注となり、販売に至った場合には、別途ロイヤリティの支払が必要であるとしたことから、許諾を肯定しているが、サンプル 機そのものは返還され、被告製品が新たに納入されているのであるから、不当である。 イ被控訴人は、当審において、特許権侵害の対象取引として、原判決別紙一覧表のほか、令和4年6月1日に販売された被告製品(低追従)の主張を追加する(乙527)(以下、この取引を単に「№●●」といい、 原判決別紙一覧表記載の№●●●●の取引も同様に表記する。)。販売 先は●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●、機種名は、●●●●●●●●●●●●、売上金額は●●●●●●●●●●●円、売価に占める本体の金額は●●●●●●●●●●円である。 この販売時期には、本件特許権1は存続期間満了(令和3年9月13日)により消滅しているが、本件特許権2はなお存続しているから、№ ●●●●円、売価に占める本体の金額は●●●●●●●●●●円である。 この販売時期には、本件特許権1は存続期間満了(令和3年9月13日)により消滅しているが、本件特許権2はなお存続しているから、№ ●●の販売は本件特許権2を侵害する。 仮に、被告製品(低追従)が本件特許権2を侵害しないとしても、本件特許権1の侵害が認められる。上記存続期間満了日より前の令和3年3月19日に控訴人に部品が納入されており、また、乙379には同年2月か3月に受注し、5月15日納入を目指していたとあるから、遅く とも上記受注の前には譲渡の申出があったと解されるからである。 ウ控訴人は、被告製品における半期ごとの経費が乙528のとおりであると主張しているところ、販売手数料、販売変動費、試作品製造・改良費を控除することについては争い、その余は認める。 販売手数料は控訴人のグループ会社に対する手数料であり、何のため に必要なのか不明である。 販売変動費は、被告製品の販売に直接関連して追加的に必要となった費用であることを裏付ける客観的な証拠がない。 試作品製造・改良費については、被告製品の製造販売に直接関連して追加的に必要となる費用ではない。 エ被告製品の販売による利益の額全体について特許法102条2項の推定が及ぶが、特許権者である被控訴人がSDダイサーの部品であるSDエンジンのみを製造販売していることが、部分的な推定覆滅事由になることは、上述のとおりである。 本件特許は、ステルスダイシング技術に関する重要な特許であるところ、 水をかけながら切断することが困難なMEMS用ウェハ、高いチップ強 度を要求されるフラッシュメモリ用ウェハ、微小サイズチップ又は特殊形状チップが形成されたウェハは、ブレードダイサーで切断す 水をかけながら切断することが困難なMEMS用ウェハ、高いチップ強 度を要求されるフラッシュメモリ用ウェハ、微小サイズチップ又は特殊形状チップが形成されたウェハは、ブレードダイサーで切断することはできないため、技術上の価値が高い。SDダイサー(定価●●●●●●●円、販売価額●●●●●円~●●●●●●●円)とブレードダイサー(定価●●●●●円)では、定価において●倍、売価において●倍~● 倍以上の価格差が存在するが、SDダイサーとブレードダイサーでは、そのプラットフォームの基本的構成に差異はないことに鑑みれば、この価格差こそがSDエンジンの価値そのものといえる。 SDエンジンを除いた、SDダイサー用のプラットフォームの製造原価は、高くとも●●●●●円程度である(甲208の1~4)。 これに対し、被控訴人の控訴人に対するSDエンジンの販売価額は、例えば700SPHについていえば、●●●●●円であり、いかにSDダイサーの中で、SDエンジンの価値が高いかがわかる。なお、控訴人は、SDエンジンの販売価額として被控訴人から●●●●●円との申出を受けた旨主張するけれども、同価額は●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●がなされたことはない。 また、本件訂正発明1は、ステルスダイシング技術の中核的技術思想を具現化するものであって、代替技術も存在せず、重要性が極めて高いものである。●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●が記載されているとおり、光量基準による本件発明2は、SDダイサー の主な切削対象であるメモリの生産において必須の技術である。 以上の事情に鑑みれば、覆滅率は25%と解するのが相当である。なお、以上は、侵害者の利益の額全体に特許法102条2項の推定が及ぶとの解釈に立脚したものであるが、102条2項の侵害行為により得た利益の額を被告製品全体の利益の額の75%であると選択的に主張する(損害額は同一である。)。 オ以上を前提とすると、損害額合計は●●●●●●●●●●●●円、弁護士費用相当損害合計は●●●●●●●●●●円となる。 遅延損害金の起算点は、№1~33については平成30年11月1日(不法行為の後の日)、№34以降については販売された月の末日である。他の計算方法による場合に関しても同様である。 【控訴人の主張】ア №47の取引は、令和3年2月に●●●が控訴人に発注し、同年8月31日に製品として完成したが、本件特許1の存続期間満了後である同年11月11日に控訴人外国現地法人が控訴人に発注し、同月26日控訴人が控訴人外国現地法人に横浜港において引き渡した。●●●が令和4 年1月18日、控訴人外国現地法人にこれを発注し、●●●は同月25日控訴人への発注を解除し、同製品は同年2月、控訴人外国現地法人から●●●に納入された。本件特許1の存続期間である令和3年9月13日までのNo.●●に係る行為のうち、製造のみが、本件特許1に係る実施行為として、特許権侵害 、同製品は同年2月、控訴人外国現地法人から●●●に納入された。本件特許1の存続期間である令和3年9月13日までのNo.●●に係る行為のうち、製造のみが、本件特許1に係る実施行為として、特許権侵害を構成する。令和3年2月の控訴人による●● ●からの受注行為は、令和4年1月25日に解除されているから、解除の遡及効により当該行為は遡ってなかったものとなり、実施行為には該当しない。 №●●の取引は、令和3年3月に●●●が控訴人に発注し、本件特許1の存続期間満了後である同年10月15日に製品として完成したが、 同年11月11日に控訴人外国現地法人が控訴人に発注し、同月26日 控訴人が控訴人外国現地法人に横浜港において引き渡した。●●●が令和4年5月27日、控訴人外国現地法人にこれを発注し、●●●は同月29日控訴人への発注を解除し、同製品は同年6月、控訴人外国現地法人から●●●に納入された。本件特許1の有効期間である2021年9月13日までのNo.●●に係る行為のうち、本件特許1に係る実施行為と して、特許権侵害を構成するものはない。被控訴人は譲渡の申出があった旨主張するが、具体的な行為が特定されていない。 イ控訴人が控訴人の海外現地法人に支払う販売手数料は、海外現地法人による販促、顧客への納品・設置等のサポートに対する対価として、個々の製品ごとに、所定のレートにより算出して支払われるものであり、被 告製品の販売に当たり直接必要となる経費である。 「販売変動費-1」は、被告製品の支払運賃や梱包に関するものであり、販売変動費-2」は、広告費、販売促進費、サービス費からなる被告製品の販売に当たり直接必要となる経費である。 また、控訴人は、常時、費用を投じて試作品の製造と評価を繰り返す ことで、顧 り、販売変動費-2」は、広告費、販売促進費、サービス費からなる被告製品の販売に当たり直接必要となる経費である。 また、控訴人は、常時、費用を投じて試作品の製造と評価を繰り返す ことで、顧客の求めるレベルを達成しているのであるから、試作品製造・改良費は、被告製品の販売に直接関連して必要となる費用である。 ウ仮に特許権者が特許発明の実施品の部品を製造販売しているにすぎない場合にも特許法102条2項が適用されるとしても、特許権者が完成品に組み込まれる前の部品を販売することにより得られたはずの利益の範 囲で推定を受けるにとどまる。 被控訴人が控訴人に販売するSDエンジンの価額は●●●●●円であり(乙339)、被告製品の価額は1億円程度であるから、被告製品の額に●●%を乗じるのが相当である。被控訴人は、SDエンジンの価額が●●●●●円である旨主張するが、ディスコ社や控訴人への販売実績 の一部を恣意的に選択したものにすぎない。 エ競業他社の存在、顧客との関係や積極的な営業活動等の営業努力、被告製品における他の技術的特長(シリコンウェハの透過率がほどよい、亀裂を生むためのパワーを内部に集約しやすい、デバイスへのダメージが少ない、加工スピードも調整できる等)、被控訴人が控訴人に他の特許権に基づいて損害賠償を請求していることを考慮すれば、推定覆滅割合 は89%を下らない。 特に、本件特許2は、特許第4509578号(乙306、別件特許)と同日に出願され、両特許に係る各発明の技術的特徴は実質的に同一であるところ、同一の被告製品の製造販売行為について、別々に特許権侵害訴訟を提起し、別件特許に係る特許権に基づく請求は、東京地裁平成 30年(ワ)第28931事件として係属し、その控訴事件は知 あるところ、同一の被告製品の製造販売行為について、別々に特許権侵害訴訟を提起し、別件特許に係る特許権に基づく請求は、東京地裁平成 30年(ワ)第28931事件として係属し、その控訴事件は知財高裁第2部に係属している(令和5年(ネ)第10037号)。少なくともこのような場合、それぞれの訴訟で、認定される損害を2分の1とするのが相当である。 オ控訴人は、令和5年1月20日、本件仮払をしており、同日以降の遅延 損害金は発生しない。 (12) 争点6-2-1:特許法102条1項の適用の可否【被控訴人の主張】ア原判決は、「特許権者等が『侵害行為がなければ販売することができた物』とは、侵害品と需要者を共通にする同種の製品であって、市場にお いて、侵害者の侵害行為がなければ販売等することができたという競合関係にある製品をいうものと解するのが相当である」とした上で、特許権者である被控訴人が販売する製品(SDエンジン)は、侵害品であるSDダイサーの部品に相当するものであり、SDダイサーとは需要者を異にするため、市場において競合関係に立つものではない旨判断した。 しかし、知財高裁令和2年2月28日判決(平成31年(ネ)第10 003号、美容器事件大合議判決)は、「特許権者等が『侵害行為がなければ販売することができた物』とは、侵害行為によってその販売数量に影響を受ける特許権者等の製品、すなわち、侵害品と市場において競合関係に立つ特許権者等の製品であれば足りる」と判示しており、「侵害品と需要者を共通にする同種の製品」などとは述べていない。 イ完成品市場における部品相当部分の市場利益に関する限りでは、特許権者による部品の販売行為は、当該部品を用いた完成品の生産行為又は譲渡行為を介 共通にする同種の製品」などとは述べていない。 イ完成品市場における部品相当部分の市場利益に関する限りでは、特許権者による部品の販売行為は、当該部品を用いた完成品の生産行為又は譲渡行為を介して、侵害品(完成品)の譲渡行為と間接的に競合する関係にあるといえるといえることは、前記(10)【被控訴人の主張】のとおりである。 【控訴人の主張】ア特許法102条1項は、特許権者は特許製品を市場で独占的に販売することができる地位にあるから、侵害品が販売されなかったとすれば、これに代替できる製品は特許権者のみが販売できたはずであり、特許権者は、自己の製品の単位数量当たりの利益額に侵害品の譲渡数量を乗じた 額の利益を得られるはずであったとの一応の経験則を前提に立法されたものである。したがって、「侵害行為がなければ販売することができた物」とは、侵害品と市場において競合関係に立つ特許権者の製品でなければならず、特許権者が、「需要者を共通にする同種の競合品であって、市場において、侵害者の侵害行為がなければ輸出又は販売することがで きたという競合関係にある製品」を販売していた場合にのみ適用される。 イ被控訴人が販売するSDエンジンの需要者は半導体製造装置の製造業者であるのに対し、被告製品の需要者は半導体製造業者であり、需要者及び市場が異なり、SDエンジンは、SDダイサーと市場において競合関係に立つ製品ではないから、本件に特許法102条1項は適用されない。 (13) 争点6-2-2:特許法102条1項に基づく損害額 【被控訴人の主張】ア被控訴人製SDエンジンの限界利益は以下のとおりである。 控訴人は、被控訴人製SDエンジンの販売額を●●●●●円と主張するが、これが 額 【被控訴人の主張】ア被控訴人製SDエンジンの限界利益は以下のとおりである。 控訴人は、被控訴人製SDエンジンの販売額を●●●●●円と主張するが、これが失当であることは前記(11)【被控訴人の主張】エのとおりである。 また、原判決は、被控訴人製SDエンジンの原価について、被控訴人のシステムに記録されている原価データのスクリーンショット(甲142)の信用性を否定するので、甲201、202を提出する。 (ア) 控訴人製SDエンジン800DS一式の限界利益●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●(イ) 800DS交換用LDモジュールの限界利益●●●●●●●●●(ウ) 被控訴人製SDエンジン1000DS一式の限界利益●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●(エ) 1000DS交換用LDモジュールの限界利益●●●●●●●●●イ №●●●●●●●の被告製品●●台は、800DSと競合するNS900搭載機である。 これらの販売による被控訴人製SDエンジン800DS一式の逸失利益は、●●●●●●●●●●である。 ●●●●●●●●●●×●●台=●●●●●●●●●●円また、800DSが一台販売されれば、導入後●●年は使用されることになるが、その間、●年おきに計●回、交換用LDモジュールを販売 することになるので、これらの販売による交換用LDモジュールの逸失 利益は、●●●●●●●●●●●円である。 ●●●●●●●●●円×●●台×●個=●●●●●●●●●●円ウ №●●●●●●●●●●● れらの販売による交換用LDモジュールの逸失 利益は、●●●●●●●●●●●円である。 ●●●●●●●●●円×●●台×●個=●●●●●●●●●●円ウ №●●●●●●●●●●●の被告製品●●台は、1000DSと競合するNS901搭載機である。 これらの販売による被控訴人製SDエンジン1000DS一式の逸失利 益は、●●●●●●●●●●●円である。 ●●●●●●●●●円×●●台=●●●●●●●●●円また、1000DSが一台販売されれば、導入後●●年は使用されることになるが、その間、●年おきに計●回、交換用LDモジュールを販売することになるので、これらの販売による交換用LDモジュールの逸失 利益は、●●●●●●●●●●●円である。 ●●●●●●●●円×●●台×●個=●●●●●●●●●●●円エ №48の被告製品は、NS901搭載機であり、これに関する被控訴人製SDエンジンの単位数量当たりの利益は、上記ア(ウ)及び(エ)の合計額である●●●●●●●●●円を下ることはない。 オ上記弁護士費用相当額●●●●●●●●●●●円を加えると、●●●●●●●●●●●円となる。 【控訴人の主張】ア被控訴人主張の被控訴人製SDエンジンの販売額が失当であることは前記(11)【控訴人の主張】ウのとおりである。 また、甲201、202は、原価の予測値を示すにすぎないので、被控訴人製SDエンジンの原価の根拠とはならない。 イ被控訴人製SDエンジンの販売に伴い交換用LDモジュールが販売されることを示す証拠はない。 ウ特許法102条1項1号かっこ書きの「その全部又は一部に相当する数 量を当該特許権者・・・が販売でき 訴人製SDエンジンの販売に伴い交換用LDモジュールが販売されることを示す証拠はない。 ウ特許法102条1項1号かっこ書きの「その全部又は一部に相当する数 量を当該特許権者・・・が販売できないとする事情」は特許法102条 2項の推定覆滅事由と同じであり、前記(11)【控訴人の主張】エの主張を援用する。 また、本件訂正発明1は従来技術に対して特徴的部分はないこと、ディスコ社の販売するSDダイサーに搭載された控訴人製SDエンジンは本件発明2の実施品ではないことから、その顧客吸引力は限定的である。 (14) 争点6-2-3:特許法102条3項に基づく損害額【控訴人の主張】ア原判決は、被控訴人の営業方針が、SDエンジンの販売を大前提として、当該販売とSD技術関連特許に関する特許発明のロイヤリティの支払を不可分一体の条件とするものであることを理由に、SDエンジンの販売 による利益を実施料率に含めて算定しているが、これらが「不可分一体」であるとまで評価する根拠となる約定は存在せず、かえって、本件業務提携契約上、SDエンジンの価額にロイヤリティが含まれないことが明文で定められていることに照らせば、原判決の判断は不当である。 また、原判決は、被控訴人が得ていたSDエンジンの販売利益とロイ ヤルティの合計額をはるかに上回る30%もの実施料率による損害賠償を認めているが、これは差額説からは説明がつかない。しかも、SDエンジンを販売した場合には、販売者の側に、検収条件、品質保証、アフターサービス等の条件が付されるほか、製造物責任その他様々な債務を負い、それも含めて販売額が決定されている。SDエンジンを販売しな い場合にはそのような義務を負うことはないにもかかわらず、販売利益をそのまま実 件が付されるほか、製造物責任その他様々な債務を負い、それも含めて販売額が決定されている。SDエンジンを販売しな い場合にはそのような義務を負うことはないにもかかわらず、販売利益をそのまま実施料率に含めることは許されない。 イ本件業務提携契約の際に合意された係争特許を含むステルスダイシング技術に係る特許権(●●件)の実施料率は、当初●%であり、その後、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●ため、●●●%に減額されている。 帝国データバンクの「知的財産の価値評価を踏まえた特許等の活用の在り方に関する調査研究報告書~知的財産(資産)価値及びロイヤルティ料率に関する実態把握~」(乙482)では、半導体の分野での国内アンケート結果は報告されていないものの、外国における半導体分野の市場料率データは、米国では5.1%、ドイツでは3.4%とされてい る。また、「精密機器」の分野の国内アンケート結果は、3.4%である。 原判決の認定した料率が非常識なものであることは明らかである。 ウ原判決は、本件訂正発明1が、ステルスダイシング技術の中核であるとするが、本件訂正発明1は、構成要件Eの内容からして、ステルスダイ シング技術の存在を所与の前提として、厚さ方向に2層の改質領域を設けることに限定した改良発明である。 また、被控訴人製SDエンジンを搭載したディスコ社製SDダイサーも、被告製品も、座標基準によっており、本件発明2の実施品ではない。仮に納品後に顧客が設定変更を行う潜在的可能性があることをもって本件 特許権2の侵害であるとの認定がなされるとしても、本件発明2の技術的価値は極めて低いものというべきである。 エ控訴人の営業部門は 客が設定変更を行う潜在的可能性があることをもって本件 特許権2の侵害であるとの認定がなされるとしても、本件発明2の技術的価値は極めて低いものというべきである。 エ控訴人の営業部門は、顧客に対し、幅広い半導体製造装置を扱っていることを強調した営業活動を行い、実際にも、多くの顧客にそれら複数の工程に係る装置を販売している。被告製品は、顧客の被告の技術力への 信頼・評価と、これらの顧客との良好な関係を踏まえた控訴人による顧客への営業活動が効を奏した結果、販売に至ったものが非常に多い。 控訴人の開発したレーザエンジンは、レーザの波長がレーザ加工領域の形成に適しており、数々の技術的特徴を有している。 オ本件実施許諾契約の成否に関して主張した事情に加え、被控訴人は、控 訴人が控訴人製レーザエンジンを搭載した装置の開発をしていることを 認識していたにもかかわらず(甲62~64、乙322)、控訴人に対し、その開発を止めるよう要請するか、少なくとも、開発をしたとしても販売は許さないとの意思を明確に表示することもせず、漫然と、1年以上にわたり、控訴人製レーザエンジンを搭載した装置の開発を許容してきたことによれば、控訴人が、被控訴人が控訴人製レーザエンジンを 搭載した装置の販売についてライセンスする意思を有していると認識したことには合理的理由がある。また、被控訴人が、突如態度を一変させ、控訴人が懸命に進めていた控訴人専用の被控訴人製レーザエンジンの開発を棚上げしたこと(乙171等)について、控訴人が被控訴人にはライセンス契約を解除する合理的理由がないと判断し、控訴人製レーザエ ンジンを搭載した被告製品の販売を継続したことには汲むべき事情があるといえ、実施料率の認定において料率を下げる方向 訴人にはライセンス契約を解除する合理的理由がないと判断し、控訴人製レーザエ ンジンを搭載した被告製品の販売を継続したことには汲むべき事情があるといえ、実施料率の認定において料率を下げる方向に考慮されるべきである。原判決が故意責任を認めたことは不当である。 カ以上によれば、本件各特許権の実施料率が、当事者間で合意した特許1件あたりの実施料である●●●●●●(本件特許権1及び2の合計で● ●●●●●●を超えることはない。 【被控訴人の主張】ア原判決の判断枠組は基本的には正当であり、英断であるといえる。 ただ、前述のとおり被控訴人製SDエンジンの原価の認定に関し誤りがある。 また、原判決が被控訴人の業務提携契約(甲143)に規定する違約金の料率35%を考慮していないのは不当である。甲143は、その文言上、ライセンス条件に違反し、被控訴人の特許権を侵害する装置の販売に対する違約金の定めであり、特許法102条4項の趣旨からも考慮されるべきである。 その他、本件各発明の内容及び重要性、控訴人の権利侵害の悪質性に 鑑みれば、実施料相当損害の料率は、35%と認めるのが相当である。 イ被控訴人が本件各発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額は、№●●●●について、売上高●●●●●●●●●●●●円の35%相当額である●●●●●●●●●●●●円、№●●について売上高●●●●●●●●●●●円の35%相当額である●●●●●●●●●円であり、 合計は●●●●●●●●●●●●円である。これに弁護士費用相当額●●●●●●●●●●●円を加えると、●●●●●●●●●●●●円となる。 (15) 争点6-2-4:推定規定によらない損害賠償請求の成否及び損害額【被控訴人の主張】 に弁護士費用相当額●●●●●●●●●●●円を加えると、●●●●●●●●●●●●円となる。 (15) 争点6-2-4:推定規定によらない損害賠償請求の成否及び損害額【被控訴人の主張】 ア原判決は、被告製品が1台販売されたことにより、ディスコ社製のSDダイサーの販売数量が1台減少するという関係にあることが認められないから、控訴人の侵害行為と、ディスコ社のSDダイサー及びこれに組み込まれる被控訴人製SDエンジン一式の販売減少とは、民法709条にいう相当因果関係があるものとまで認めることはできないと判断した。 しかし、控訴人がサムスン社へ新規にシリコンウェハ用SDダイサーの販売をした平成28年4月以降(№2以降)現在までの期間においては、シリコンウェハ用SDダイサーを販売していたのは、控訴人とディスコ社の二社のみであったこと等を考慮すれば、控訴人による被告製品の製造販売により、その数量について被控訴人が被控訴人製SDエンジ ンを販売することができず、利益を失ったとの相当因果関係が認められる。 イ特許法102条1項に基づく前記イ~エの損害に、1台当たり300万円のライセンス料を加え、さらに弁護士費用相当額●●●●●●●●●●●円を加えると、●●●●●●●●●●●●円となる。 【控訴人の主張】 控訴人の侵害行為と、控訴人製SDエンジン一式の販売減少との因果関係を否定した原判決の判断は相当である。 なお、不法行為に基づく損害賠償請求について、ライセンス料を請求できる理由はない。 (16) 争点7:不当利得の成否及び不当利得金の額 【被控訴人の主張】不当利得の額は、前記の特許法102条3項に基づく損害額(弁護士費用相当損害を除く。)と同じ●●●●●●●●●● (16) 争点7:不当利得の成否及び不当利得金の額 【被控訴人の主張】不当利得の額は、前記の特許法102条3項に基づく損害額(弁護士費用相当損害を除く。)と同じ●●●●●●●●●●●●円である。 (17) 争点9:民訴法260条2項に基づき返還すべき額に、受領日からの遅延損害金を付すべきか 【控訴人の主張】ア控訴人は、仮執行宣言付判決である原判決に対して令和4年12月16日に控訴を提起し、令和5年1月20日に、被控訴人に対し、原判決が認めた債務の全額(同日までの遅延損害金を含む。)を、原判決が履行を命じた債務の存在を争いつつ、原判決が取消し又は変更されること を解除条件とする留保付き弁済として支払った。 控訴人が被控訴人に対してなした支払は、民訴法260条2項の「仮執行の宣言に基づき被告が給付したもの」に該当する。 イ民訴法260条2項に基づく原状回復義務の内容は、仮執行の宣言に基づき被告が給付したものの返還であり、不当利得に関する民法の規定 が類推適用され、債務者の保護に厚い民法704条に基づき、金銭の場合は、返還すべき範囲に給付受領後の利息も含まれるものというべきである。 最高裁判所平成22年6月1日第三小法廷判決・民集64巻4号953頁を始めとして、強制執行によらず、原判決の仮執行宣言に基づき控 訴人から被控訴人に対して弁済として金銭が支払われた事案においても、 支払われた金銭及びその給付の翌日から返還済みまで民法所定の割合による遅延損害金の支払が認められた事例が多数存在する。 ウ控訴人は、令和5年12月21日の弁論準備手続期日において、認容見込額を、遅延損害金を含め9億6046万5499円とする心証開示を受けている 損害金の支払が認められた事例が多数存在する。 ウ控訴人は、令和5年12月21日の弁論準備手続期日において、認容見込額を、遅延損害金を含め9億6046万5499円とする心証開示を受けている。 そこで、これと、被控訴人に支払った額との差額である7億9475万8666円について、給付日の翌日以降支払済みまで年3分の割合による金員を付して支払うことを求める。 【被控訴人の主張】ア控訴人代理人は、令和5年1月16日、被控訴人代理人に対し、控訴 人が原判決が取消又は変更されることを解除条件として原判決の認容額の弁済をし、判決確定後に、確定判決により支払いが命ぜられる額と弁済額を比較して差額分の支払い等の調整をするとの内容を含む覚書を締結したいとの連絡をしてきた。これに対し、被控訴人は、覚書の締結を拒絶するとともに、留保付きの弁済を適法な弁済の申し出と考えること はできないが、控訴人が当該弁済を最終的な紛争解決の意思としてするということであれば、本件の紛争を全面的に解決する最終的な和解契約の提案とその先履行の弁済としてなら受入れ可能との考えを伝えた(甲225)。しかし、控訴人代理人は、同月20日、被控訴人代理人に対し、弁済は予定通り行う旨を連絡し、一方的に支払がされたものである。 イ給付した金銭の利息は文言上民訴法260条2項の「仮執行の宣言に基づき被告が給付したもの」とは言い難いこと、民法上、金銭の返還に伴って、当事者間の合意によらず利息が発生する場合はその旨が明記されているが(民法545条2項、647条、669条等)、民訴法260条2項では利息の支払が明記されていないことから、金銭受領後の利 息の請求権は、「給付したものの返還」に含まれるものではなく、損害 45条2項、647条、669条等)、民訴法260条2項では利息の支払が明記されていないことから、金銭受領後の利 息の請求権は、「給付したものの返還」に含まれるものではなく、損害 賠償請求として認められる場合にのみ付される遅延損害金と解すべきである。 そして、同項における損害賠償責任は、仮執行宣言が職権でなされることもあることに鑑みれば、仮執行宣言が付されたこと自体によるものではなく、仮執行宣言を利用して強制執行をしたことによるものである と解されるから、損害賠償義務が発生するためには原告が執行に着手したことを要するというべきである。 同項の趣旨は、原告が判決未確定の間に仮執行をするという特別な利益を与えられていることに対応して、判決が変更された場合、仮執行を利用した原告に対し、被告が仮執行により被った不利益を回復させる義 務を課することとするのが公平に適するというものであることに鑑みても、原告が仮執行を利用したと評価できない場合には、同項の趣旨に照らして損害賠償義務を否定するべきである。 本件では、被控訴人は、仮執行の条件とされた10億円の担保の提供もしていないのであり、損害賠償義務を負わない。 なお、控訴人引用に係る最高裁判所判決は、被上告人が上告人に対し、原判決に基づく仮執行を行う予定であることを通告したために、上告人が被上告人に対して仮執行宣言に基づく給付を行った事案である。 ウ被控訴人は、原判決が主文3項で支払を命じた損害賠償請求権が存在すると認識していたのであるから、少なくとも悪意の受益者ではない。 エ以上のとおりであって、被控訴人は、本件振込金のうち控訴審における減額部分に対応する部分について、少なくとも本件振込日の翌日から控訴審判決の言渡し日の翌日までの 受益者ではない。 エ以上のとおりであって、被控訴人は、本件振込金のうち控訴審における減額部分に対応する部分について、少なくとも本件振込日の翌日から控訴審判決の言渡し日の翌日までの遅延損害金の支払義務を負うことはないというべきである。 第5 当裁判所の判断(侵害論) 1 争点1(被告製品の本件訂正発明1の技術的範囲の属否)について 当裁判所は、原審が本件発明1(本件訂正前)に基づいて判断したのと同様の理由により、被告製品は本件訂正発明1の技術的範囲に属するものと判断する。その理由は、下記のとおり当審における控訴人の補充主張に対する判断を加えるほか、原判決「事実及び理由」第4の2~7(269頁~309頁)のとおりであるから、これを引用する。 (1) 争点1-1(構成要件A、Dの「改質領域」の形成)についてア控訴人は、被告製品により加工されたシリコンについてボイド周辺領域とボイド上方領域が単結晶シリコン領域によって隔てられていることから、両者を分けて「溶融処理領域」であるか否かを検討すべきであることを前提に、被告製品により加工されたシリコンのボイド周辺領域に改 質領域があったとしても、切断の起点となるものではなく、ボイド上方領域にあり、単結晶構造のままである転位部分である旨主張する。 しかし、本件訂正発明1は、加工対象物の内部に集光点を合わせてレーザ光を照射することにより、加工対象物の内部に改質領域を形成することができることを本質とするものであり、1回のレーザ光の照射により 形成された改質領域を分断して理解するのは相当でない。また、甲31によれば、被告製品によりシリコンウェハ内部に形成されたレーザ加工領域には、高転位領域が存在し、これが切断の起点と 照射により 形成された改質領域を分断して理解するのは相当でない。また、甲31によれば、被告製品によりシリコンウェハ内部に形成されたレーザ加工領域には、高転位領域が存在し、これが切断の起点となっていることが認められ、このこと自体は争いがないのであるから、この高転位領域が溶融処理領域であるか否かを検討すれば足りる。 ここで、本件明細書等1の【0027】には、溶融処理領域について、「溶融処理領域とは一旦溶融後再固化した領域、溶融状態中の領域及び溶融から再固化する状態中の領域のうち少なくともいずれか一つを意味する。また、溶融処理領域は相変化した領域や結晶構造が変化した領域ということもできる。また、溶融処理領域とは単結晶構造、非晶質構造、 多結晶構造において、ある構造が別の構造に変化した領域ということも できる。つまり、例えば、単結晶構造から非晶質構造に変化した領域、単結晶構造から多結晶構造に変化した領域、単結晶構造から非晶質構造及び多結晶構造を含む構造に変化した領域を意味する。加工対象物がシリコン単結晶構造の場合、溶融処理領域は例えば非晶質シリコン構造である。」(【0027】)と定義されているので、これらに該当するか どうかを検討すべきことになる。 甲33(Fig.15等)によれば、レーザが照射された範囲において、ボイド及びその上の部分に高転位密度層が形成されること、ボイドの上の部分においては、部分的に溶融・再凝固して多結晶化すること、甲32、96(Figure.4等)によれば、レーザ焦点のイメージ ライン内が溶融領域となること、最終的にボイド空間から分離した上方溶融領域は高密度であり、完全に再結晶できず、溶融領域の一部が非晶質(アモルファス)のままとなることがわかり、甲76の2(Fi ライン内が溶融領域となること、最終的にボイド空間から分離した上方溶融領域は高密度であり、完全に再結晶できず、溶融領域の一部が非晶質(アモルファス)のままとなることがわかり、甲76の2(Fig.2等)によれば、ボイドに隣接する全てを再結晶化する際に、溶融シリコンが再結晶化シリコンによって閉じ込められ、閉じ込められた溶融シリコ ン領域は、より密度の高い固体領域(無秩序化領域)に転換し、機械的な歪/応力を発生させ、クラックを形成するとの知見が認められる。そうすると、ステルスダイシングによるシリコンウェハの加工により、ボイドの上の部分には、部分的な溶融・再凝固による多結晶化領域や、アモルファス領域が形成される他、再結晶化シリコンにより閉じ込められた 溶融シリコンが再度固化し、高転位密度層になって切断の起点となるということになる。 そして、原判決「事実及び理由」第4の2(2)の認定するとおり、被告製品によりシリコン内部に形成されたレーザ加工領域においては、主としてシリコンの単結晶構造が維持されているものの、一部において、ア モルファスが存在することが認められ、また、上記知見に鑑みると、多 結晶化シリコンに閉じ込められた、完全に再結晶していない高密度の溶融シリコンが再固化して高転位層を形成し、切断の起点となっているものと認められる。アモルファスを含むボイド上方領域は、単結晶構造から非晶質構造及び多結晶構造を含む構造に変化した領域といえ、溶融処理領域に該当する。 控訴人は、被告製品により加工されたシリコンにおいて切断の起点となっているのは転位部分であり、単結晶構造のままであって、結晶構造が変化した領域には該当しない旨主張するが、転位部分が単結晶構造であるとしても、上記知見から、いったん溶融した ンにおいて切断の起点となっているのは転位部分であり、単結晶構造のままであって、結晶構造が変化した領域には該当しない旨主張するが、転位部分が単結晶構造であるとしても、上記知見から、いったん溶融したものが再固化したものとみて矛盾はない。なお、シリコンにおいて、単結晶と接する領域がい ったん溶融した後に再凝固するエピタキシャル成長という現象が存在すること、被告製品のように短時間のうちに急激な温度上昇と下降を生じさせるレーザ加工において、エピタキシャル成長による再凝固の領域に転位が生じていても矛盾がないことは、原判決が「事実及び理由」第4の2(2)ケ(ア)に説示するとおりであるし、転位部分は単結晶構造から非 晶質構造及び多結晶構造を含む構造に変化した領域である溶融処理領域内にあるから、溶融処理領域が切断の起点であると認めるのを妨げない。 イ控訴人は、被告製品により形成されるボイドは溶融により形成されたものではなく、クーロン爆発によるものであるとして、乙447を提出するが、切断の起点が転位部分であってボイドではない以上、構成要件A、 Dの充足論において直接関係する証拠とはいえないし、溶融が生じているか否かという観点からみるとしても、乙447は、サファイア(Al2O3)の集光フェムト秒レーザ加工の研究において行ったシミュレーションに基づくものであり、フェムト秒レーザによる加工(非熱的加工と呼ばれる。)とナノ秒レーザによる加工とはその加工結果が異なること (甲80、81、95等)、サファイアの集光フェムト秒レーザ加工に より生じる現象とシリコンの集光ナノ秒レーザによる加工により生じる現象が同一といえることを認めるに足る証拠も存在しないことに照らすと、控訴人の主張を裏付けるには足りないものである。 ま より生じる現象とシリコンの集光ナノ秒レーザによる加工により生じる現象が同一といえることを認めるに足る証拠も存在しないことに照らすと、控訴人の主張を裏付けるには足りないものである。 また、控訴人は、a教授が、控訴人からの改質層形成原理についての質問に対し、改質層は、固体状態で高温となって、内部が高圧となり周 囲から引っ張られることで滑りが発生し亀裂が発生していること、ボイドは溶けているのではなく、ボイドのところにあった原子が周りに押し込まれて生じていることを明瞭に説明している旨主張して、乙455を提出するが、乙455は、「2、高温領域とは何度からか? 2000K~」、「改質層形成の原理のおさらい、熱衝撃を再度ご説明していた だきたい。⇒固定状態で高温となって内部が高圧で周りが引張(2つ前までのパルス)となり、滑りが発生し亀裂が発生していると考えている。」、「ボイドは溶けているのか?⇒溶けていない。アブレーションが起きている。ボイドのところにあった原子は周りに押し込まれている。 侵入型。」という簡単なやりとりで、加工対象物も特定されておらず、 「2つ前までのパルス」が何を意味するかも不明であり、控訴人の主張を裏付けるには足りない。 ウ控訴人は、控訴人の新たに行った実験・分析結果(乙452)によれば、被告製品により形成されたレーザ加工領域は、アモルファスや多結晶ではなく、単結晶のみで構成されている旨主張する。しかし、乙452は、 一観察面で単結晶のみが観察されたというものであるから、これをもって、被告製品により形成されたレーザ加工領域は、アモルファスや多結晶ではなく、単結晶のみで構成されていると解するには十分でない。 控訴人は、仮に少量の多結晶やアモルファスが認められたとしても、多結晶やアモル 品により形成されたレーザ加工領域は、アモルファスや多結晶ではなく、単結晶のみで構成されていると解するには十分でない。 控訴人は、仮に少量の多結晶やアモルファスが認められたとしても、多結晶やアモルファスへの相転移メカニズムとしては、溶融後再固化の ほかに、圧力誘起による可能性が考えられるとして乙453の意見書を 提出するが、同意見書は、「東京精密社の試料において、p-Siやa-Siが検出されたとしても、圧力誘起によるものであるのか、溶融後の急冷凝固によるものであるのかの判別ができないことから、これらにより、溶融後の急冷凝固にが生じたことが確認できたとはいえない。」、「溶融は生じていないと仮定した場合は、圧力誘起により単結晶Siか らp-Siやa-Siへの相転移が生じたと考えるのが合理的である。」(1~2頁)としており、溶融が生じていないことまでを確認するものでなく、溶融が生じていないことを仮定した場合に圧力誘起を可能性として示しているにすぎない。 エ控訴人は、乙446を提出し、ボイドとボイド上方領域とが、隙間を挟 んで物理的に離れた場所で形成されていること、ボイド上方領域はボイドの形成有無にかかわらず形成されることから、ボイドのシリコン原子は、ボイド上方領域の形成に寄与していないと主張する。 しかし、乙446は、「2枚のシリコンウェハを・・・貼り合わせ、界面に2μm程度の隙間が生じたものを試料とし、下側のウェハ(B) 内の界面付近に集光点を設定し、レーザを照射した」(3頁)ものであるから、2枚のシリコンウェハの界面において反射光を生じ、そのレーザ光の分布は、シリコンウェハ(A)の裏面付近に反射光の焦点と直接光が重畳して照射され、シリコンウェハ(B)の表面付近に直接光の焦点ができるように照射 コンウェハの界面において反射光を生じ、そのレーザ光の分布は、シリコンウェハ(A)の裏面付近に反射光の焦点と直接光が重畳して照射され、シリコンウェハ(B)の表面付近に直接光の焦点ができるように照射されることがあり得る。その場合、被告製品における 加工のようなシリコンウェハの「内部に」レーザ加工領域を形成するものとは異なり、シリコンウェハの表面(界面)を熱的加工するものとなり、被告製品におけるレーザ加工領域の分析としては必ずしも適切でない。 (2) 争点1-5(構成要件Eの「集光用レンズを移動」させる機能)について ア本件訂正発明1の構成要件Eは、「レーザ光の集光点が前記加工対象物 の内部に位置するように、前記加工対象物のレーザ光入射面を基準として前記加工対象物の厚さ方向に第1移動量だけ前記集光用レンズを移動させ、レーザ光の集光点が前記加工対象物の切断予定ラインに沿って移動するように、前記加工対象物の厚さ方向と直交する方向に前記載置台を移動させた後、レーザ光の集光点が前記加工対象物の内部に位置する ように、前記レーザ光入射面を基準として前記加工対象物の厚さ方向に第2移動量だけ前記集光用レンズを移動させ、レーザ光の集光点が前記切断予定ラインに沿って移動するように、前記加工対象物の厚さ方向と直交する方向に前記載置台を移動させる機能を有する制御部と、を備え、」というものである。 控訴人は、改質領域の位置をレーザ光入射面を基準として定めることにより、ウェハに反りや凹凸があっても、確実にウェハ内部に改質領域を形成することができ、本件訂正発明1の課題を解決することができる旨主張するが、本件明細書等1には、本件明細書等2とは異なり、ウェハの反りや凹凸については課題として記載されておらず、かえって、 領域を形成することができ、本件訂正発明1の課題を解決することができる旨主張するが、本件明細書等1には、本件明細書等2とは異なり、ウェハの反りや凹凸については課題として記載されておらず、かえって、本 件明細書等1の図では、反りや凹凸のない加工対象物が図示されており、採用できない。 また、構成要件Eは、「レーザ光入射面を基準として」厚さ方向に第1移動量ないし第2移動量だけ集光用レンズを移動させることを規定しているが、移動方向(上下)や、移動の起点については何ら特定してい ない。 イ被控訴人は、本件特許1の出願過程において、特許法39条2項(同一発明の出願)の拒絶理由通知に対し、第1移動量と第2移動量について「レーザ光入射面」を基準とするとの補正をした上、補正と同時に提出した意見書(乙458-1)において、「本願の請求項1に係る発明に おいては、加工対象物の厚さ方向への第1移動量及び第2移動量が加工 対象物のレーザ光入射面を基準としたものであるのに対し、同日出願の請求項1に係る発明においては、加工対象物の厚さ方向への第1移動量及び第2移動量が所定の位置を基準としたものである点。」が、別件出願に係る発明とは異なるとした上で、「本願の請求項1に係る発明における第1移動量及び第2移動量の基準は、加工対象物のレーザ光入射面 である点で、所定の位置である同日出願の請求項1に係る発明における第1移動量及び第2移動量の基準の下位概念に相当します。ウェハ状の加工対象物の内部に改質領域を形成する際には、加工対象物のレーザ光入射面から所定の距離だけ内側に改質領域を形成しますが、このとき、本願の請求項1に係る発明によれば、レーザ光入射面を基準とするため、 レーザ光入射面以外の所定の位置を基準とする場合に比べ ザ光入射面から所定の距離だけ内側に改質領域を形成しますが、このとき、本願の請求項1に係る発明によれば、レーザ光入射面を基準とするため、 レーザ光入射面以外の所定の位置を基準とする場合に比べ、レーザ光入射面から所定の距離だけ内側に改質領域を精度良く形成することが可能となります。」と説明した。 控訴人は、これを根拠に、レーザ光入射面以外の所定の位置を基準として2段目の改質領域を形成するものは、本件訂正発明1の技術的範囲 に含まれないとし、被告製品は、2段目の加工を行う際、レーザ加工エンジンユニットを、「第1段AF追従レーザ加工をした位置から」、第2移動量だけシリコンウェハの主面に近づいた位置に移動させるのであって、シリコンウェハの主面を基準としてレーザ加工エンジンユニットを移動するのではないから、構成要件Eを充足しない旨主張する。 しかし、第2移動量の移動は、直接的には、1段目のレーザ加工をした位置を基準とするものであるが、当該1段目のレーザ加工をした位置自体は、シリコンウェハの主面を基準として決定されているのであるから、第2移動量の移動も、結果的には、シリコンウェハの主面を基準として決定されているものといえることは原判決の説示するとおりであり、 控訴人の指摘する本件特許1の出願経過は、これを左右するものではな い。 ウ控訴人は、被告製品のようにレーザダイシング装置がAF追従制御を行う場合には、特に加工対象物に反りがある場合を想定すると、1段目の加工の開始位置である「レーザ光の入射面」を基準に第1移動量移動した位置と、1段目の加工を終了し2段目の加工に移動するときの位置と には、ずれが生じ、その結果、1段目の加工をしたときの位置を基準に、2段目の加工位置まで第2移動量移動した位置は、「レ 量移動した位置と、1段目の加工を終了し2段目の加工に移動するときの位置と には、ずれが生じ、その結果、1段目の加工をしたときの位置を基準に、2段目の加工位置まで第2移動量移動した位置は、「レーザ光の入射面」を基準に第2移動量移動した位置ともずれることになる旨主張する。 しかし、本件訂正発明1は、加工対象物に反りや凹凸があるか、加工中において、集光用レンズの厚さ方向の位置が、第1移動量ないし第2移 動量移動した位置から変動するか否かという事項については、何ら特定するものではなく、かえって、反りや凹凸のない図面が掲載されているところに鑑みれば、前記イのとおり、第2移動量の移動が、間接的にシリコンウェハの主面を基準に決定される場合を広く含むと解するに妨げはなく、AF追従制御がされる場合を排除する理由はない。 したがって、控訴人の上記の主張は、被告製品が構成要件Eを充足しない理由とはならない。 2 争点2(被告製品の本件発明2の技術的範囲の属否)について(1) 本件発明2-1の技術的範囲の属否について当裁判所は、原審と同様、被告製品は本件発明2-1の技術的範囲に属さ ないと判断する。その理由は、以下のとおり当審における被控訴人の補充主張に対する判断を加えるほか、原判決「事実及び理由」第4の11(争点2-3関係、331頁~)のとおりであるから、これを引用する。 ア被控訴人は、原判決が、構成要件Rの「レーザ光の反射光に応じて、前記レンズを前記測定初期位置に保持した状態を解除」という要件を「反 射光の全光量が閾値を超えた時点で、直ちに、『測定初期位置に前記レ ンズを保持』した状態を解除」の意味に解したのが誤りであり、「レーザ光の反射光によりレンズ(第二のレーザ光の照射 射光の全光量が閾値を超えた時点で、直ちに、『測定初期位置に前記レ ンズを保持』した状態を解除」の意味に解したのが誤りであり、「レーザ光の反射光によりレンズ(第二のレーザ光の照射位置)が加工対象物に差し掛かったことが検知された後に、『測定初期位置に前記レンズを保持』した状態を解除」の意味に解するのが妥当である旨主張する。 しかし、本件明細書等2では、「また、反射光の光量は反射する面との 距離に応じて変化するので、例えば、反射光の光量が所定の変化をする部分を加工対象物の主面の外縁に相当するものと想定してレンズを保持した状態を解除できる。」(【0010】)、「測距用レーザ光L2はダイシングフィルム2aにおいては反射率が低く反射される全光量は少ないが、加工対象物Sにおいては反射される全光量が増大する。すなわ ち、受光部45(図1参照)の4分割位置検出素子が検出する測距用レーザ光L2の反射光の全光量が多くなるので、反射光の全光量が予め定められた閾値を超えた場合に加工対象物Sの切断予定ラインC1と加工用対物レンズ42が交差する位置にあるものと判断できる。従って、受光部45(図1参照)の4分割位置検出素子が検出する全光量が予め定 められた閾値よりも大きくなった場合に、加工用対物レンズ42が切断予定ラインC1の一端に相当する位置にあるものとして、その時点でのアクチュエータ43の伸び量の保持を解除して非点収差信号が基準値となるようにアクチュエータ43の伸び量制御を開始する(第一測定ステップ)。」(【0045】)、「制御装置7の端部判断部705は、受 光部45から出力される信号に基づいて、加工用対物レンズ42が加工対象物Sの端部に差し掛かったかどうかを判断する(ステップS06)。 端部判断部705は 、「制御装置7の端部判断部705は、受 光部45から出力される信号に基づいて、加工用対物レンズ42が加工対象物Sの端部に差し掛かったかどうかを判断する(ステップS06)。 端部判断部705は、加工用対物レンズ42が加工対象物Sの端部に差し掛かったと判断すると、アクチュエータ制御部703に対してアクチュエータ43の伸縮を開始して、非点収差信号が保持している基準値に 等しくなるように、制御信号を出力するように指示する指示信号を出力 する。」(【0055】)と記載しており、特に、【0045】の「閾値よりも大きくなった場合に、加工用対物レンズ42が切断予定ラインC1の一端に相当する位置にあるものとして、その時点でのアクチュエータ43の伸び量の保持を解除して」との記載に鑑みれば、反射量の全光量が閾値を超えた時点と、保持の解除の間に時間的間隔があることを 前提としているとは理解できない。 イ被控訴人は、原判決の解釈によっても、被告製品はエッジ処理区間を0mmに設定することもでき、「反射光の全光量が閾値を超えた時点で、直ちに、『測定初期位置に前記レンズを保持』した状態を解除」したことになる旨主張し、上記設定が可能な根拠として、被控訴人の「被告製 品ではエッジ処理区間を0mmに設定することもできる」旨の主張を明らかに争っていないこと、原判決101頁のチャート(【チャート3】)には、エッジ処理区間を0mmに設定して被告製品を動作させた例が「標準AF」として示されていること、甲211によっても、被告製品がエッジ処理区間を0mmに設定できることが確認されていることを挙 げる。 しかし、控訴人が甲211の信用性を争っていることからすれば、控訴人が被告製品ではエッジ処理区間を0mmにできるとの主張を争ってい を0mmに設定できることが確認されていることを挙 げる。 しかし、控訴人が甲211の信用性を争っていることからすれば、控訴人が被告製品ではエッジ処理区間を0mmにできるとの主張を争っていることは明らかである。 また、原判決101頁のチャート(【チャート3】)には、「標準A F」が示されているが、これは、乙67として提出された控訴人の実験結果に基づくものであり、乙67には、実験はML300EXで実施した旨が記載されているが、これが顧客に販売した控訴人の製品なのか不明である。 さらに、甲211は、エッジ処理区間で0mmに設定できた旨の記載 があるが、被告製品のGUI画面の写真等客観的な資料が添付されてい るわけでもない。 したがって、被告製品がエッジ処理区間を0mmに設定することができることを認めるに足りる証拠はないというべきである。 ウ以上のとおりであって、被告製品は、固定、低追従とも、構成要件R及びSを充足しないから、その余の点について判断するまでもなく、本件 発明2-1の技術的範囲に属しない。 (2) 被告製品(固定)の本件発明2-2及び本件発明2-3の技術的範囲への属否について当裁判所は、原審と同様、被告製品(固定)は本件発明2-2及び本件発明2-3の技術的範囲に属すると判断する。その理由は、以下のとおり当審 における控訴人の補充主張に対する判断を加えるほか、原判決「事実及び理由」第4の9(争点2-1関係、322頁~)、12(1)(争点2-4の被告製品〔固定〕関係、338頁~)、13(争点2-5関係、346頁~)、14(争点2-6関係、347頁~)のとおりであるから、これを引用する。 ア争点2-1関係 控訴人は、被告製品は、加工方法 38頁~)、13(争点2-5関係、346頁~)、14(争点2-6関係、347頁~)のとおりであるから、これを引用する。 ア争点2-1関係 控訴人は、被告製品は、加工方法・対象により5種に分けられ、主面にベベルのあるウェハを加工対象物とする場合に光量基準により制御を行うプログラムを設定して販売された被告製品はなく、いずれも、座標基準によって低追従による制御をしており、測定初期位置での「保持」は行われないから、「測定初期位置」で「保持」するとの構成を備えてお らず、本件発明2-2の構成要件2Qを充足しない旨主張する。 しかしながら、控訴人が主張するのは、ユーザにおける加工対象物や使用形態の違い、プログラムの設定の問題にすぎず、被告製品の具体的な構成に関するものではない。構成要件充足性の判断においては、被告製品が、べベルのあるシリコンウェハに光量基準を適用する機能を有する か否かを問題とすべきであることは原判決の説示するとおりである。 被控訴人は、被告製品では、加工条件の設定/変更(光量基準とするか座標基準とするかを含む。)をGUIによるパラメータの設定/変更により行うことができる旨主張するところ、控訴人はこれを争っておらず、かえって、サムスン社に納入された被告製品(低追従)に関し、控訴人又は関連現地法人のエンジニアが、光量基準により亀裂進展量の検査を 行うことがあること、納品後に顧客が設定変更を行う潜在的可能性があることは認めている(前記第4の3(3)【控訴人の主張】イ、(14)【控訴人の主張】ウ)。 そして、控訴人が令和5年5月15日付け訂正書により訂正した控訴理由書(3)別紙2の2頁「構成④」、別紙3―①~⑤の19頁、26頁、 33頁、3 、(14)【控訴人の主張】ウ)。 そして、控訴人が令和5年5月15日付け訂正書により訂正した控訴理由書(3)別紙2の2頁「構成④」、別紙3―①~⑤の19頁、26頁、 33頁、39頁及び45頁の「構成④」において特定する被告製品は、いずれも測距用レーザ光を照射し、その反射光量を検出する手段を備えている。 以上のとおりであって、原判決が被告製品を被告製品(固定)と被告製品(低追従)に大別し、後者について、光量基準によった場合に構成要 件2Qを充足すると判断したことに誤りはない。控訴人の主張は採用できない。 イ争点2-6関係前提事実によれば、被告製品は、構成⑦、⑩及び⑪のとおり、カッティングテーブルをX軸方向に動かす駆動機構、レーザ加工エンジンをZ軸 方向に動かす駆動機構及びピエゾアクチュエータを介して対物レンズを保持する機構を備え、構成⑫のとおり、これらの駆動機構やピエゾアクチュエータは、被告製品のコンピュータシステムにより制御されるのであるから、「制御手段」(構成要件2N)を備える。 この点に関する控訴人の補充主張は、本件発明2が既に判断した他の構 成要件を充足しないことを理由に、当該構成に係る「制御手段」を備え るとはいえないというものであるが、その前提において採用できない。 (3) 被告製品(低追従)の本件発明2-2及び本件発明2-3の技術的範囲への属否について当裁判所は、原審と異なり、被告製品(低追従)は本件発明2-2及び本件発明2-3の技術的範囲に属さないと判断する。その理由は、以下のとお りである(争点2-4及び争点2-5関係)。なお、被告製品(低追従)が本件訂正発明1の技術的範囲に属することは前述のとおりであるが 2-3の技術的範囲に属さないと判断する。その理由は、以下のとお りである(争点2-4及び争点2-5関係)。なお、被告製品(低追従)が本件訂正発明1の技術的範囲に属することは前述のとおりであるが、なおこの点を議論する実益があるのは、被告製品の販売の一部(№●●、●●)は本件特許1の存続期間満了により非侵害となる旨の被告の主張(前記第4の3(11)【控訴人の主張】ア)の前提問題となる(後記第6の2(1)イ、ウ参 照)ほか、特許法102条3項の相当実施料率にも影響を及ぼす可能性があるからである。 ア当審では、被告製品(低追従)が、ベベルのあるシリコンウェハを加工した場合に、構成要件2Rの「前記切断領域の一端部において前記改質領域を形成し」並びに構成要件2S及び3Iの「前記改質領域を形成す る」を満たすかが問題となっている。 イ被控訴人は、被告製品(低追従)を使用して、ベベルのあるシリコンウェハについて、光量基準を用いて、エッジオフ機能をオフにし、ステルスダイシング加工を行った場合のシリコンウェハの実物そのものの全光量電圧値(測距用レーザ光の反射光を受光したAFセンサーの受光素子 〔フォトダイオード〕全部から出力される電圧値)を実測した結果は、ベベル部分改質領域の一部区間は、エッジ検出される前に照射された加工用レーザ光により形成されているとして、甲216の1を提出し、そのパワーポイント8枚目には次のような写真があるが、同写真は被告製品(固定)であるNS900に関するものである。なお、他の写真は、 「被告従来製品」すなわち被控訴人SDエンジンを搭載したSDダイサ ーに係るもので、被告製品による加工状況を立証するに足りるものではない。)。 しかるところ、同写真をみると、被控訴人 製品」すなわち被控訴人SDエンジンを搭載したSDダイサ ーに係るもので、被告製品による加工状況を立証するに足りるものではない。)。 しかるところ、同写真をみると、被控訴人が改質領域と主張するもののうち、エッジ検出位置よりも左側(ベベル部分)にあるものは、その外 観について、エッジ検出位置の右側(平坦部)に形成されたもの(縦筋状の複数の改質痕が、ウェハの内部に水平に形成されている。)とは明らかに異なっている。すなわち、一番上の部分については、ベベル部分の表面に露出しているような状態が看取され、それとつながる下の部分については、空洞状である。ベベル部分には、それ以外には改質領域の 存在をうかがわせるようなものも存在しない。被控訴人は、甲216の1のSEM(走査型電子顕微鏡)による拡大写真であるとして甲216の2を提出し、青枠部分を拡大した写真の赤枠部分にボイドが観察されることから、「加工対象物の内部に形成される改質領域」が形成されていると主張するが、左の青枠部分と、右の拡大写真とは縦横比が異なっ ており、右の拡大写真の左上に7箇所示された赤枠部分の影が、ウェハ エッジが検出される手前で形成されたものであるか否かが不明である。 また、控訴人が、被告製品(低追従)と同等の性能を有する実験機について、ベベルのある加工対象物について光量基準を設定するとともに、 エッジオフ機能をオフにして、主面の表面から●●●μm、●●μmの切断予定ライン(加工深さ)について加工を行ったところ、いずれの加工深さにおいても、集光点が前記加工対象物内部の所定の位置に合う状態で集光し、改質層が形成されるのは、光量基準によるウェハエッジの検出がなされ、低追従AFが開始した後であり、ベベ ところ、いずれの加工深さにおいても、集光点が前記加工対象物内部の所定の位置に合う状態で集光し、改質層が形成されるのは、光量基準によるウェハエッジの検出がなされ、低追従AFが開始した後であり、ベベル部分では、表面 とつながる空洞状の加工痕が存在するのみであった(乙500)。なお、被控訴人は、乙500では加工深さが●●μmと●●●μmの2つしかないことを問題とするが、加工深さが大きく違う2つの実例によって実験することには意味がある上、控訴人は、加工深さ●●μmは●●●●●●の、加工深さ●●●μmは●●●●●における加工条件である旨主 張し、これを疑うに足りる証拠もないから、採用できない。 ウこのように、被告製品(低追従)において、ベベル部分と平坦な部分とで、レーザ加工により形成される変化領域の位置や性状が異なるのは、光が屈折する面が曲面の場合と平面の場合とでは、集光点の位置が異なるからと解される。 乙102(大村悦二ほか「透過性パルスレーザによる極薄シリコンウェハの内部改質」精密工学会誌74巻3号、2008年)によれば、レー ザエネルギーがウェハ表面で吸収される場合はアブレーションが生じており、加工対象物の内部に改質領域を形成するステルスダイシングとは別個の現象であるところ、焦点深さ15nmの場合には、シリコンウェハに内部改質層が形成されるとともに、シリコンウェハの表面にアブレーションが生じ、焦点深さ0nmの場合には、シリコンウェハの表面に アブレーションが生じたとされる。ウェハエッジのベベルの領域において、レーザの焦点深さがベベル表面近くになれば、アブレーションが生じることは当然であるから、甲216の1や乙500で加工痕が表面に露出しているように看取される部分及びこれに連続する ベルの領域において、レーザの焦点深さがベベル表面近くになれば、アブレーションが生じることは当然であるから、甲216の1や乙500で加工痕が表面に露出しているように看取される部分及びこれに連続する空洞状の部分は、内部に改質領域が形成されたのではなく、アブレーションとみるのが合 理的である。 エ本件発明2-2では、「前記加工対象物の内部に改質領域を形成する」ことが想定されているところ(構成要件2I)、被告製品(低追従)においてステルスダイシング加工をしたときにベベル部分に形成されているのは、外部に露出する空洞状の領域であり、これは改質領域とは別個 のものとされるアブレーションと認めるのが相当であることに鑑みても、被告製品(低追従)は、本件発明2-2の構成要件2R及び構成要件2Sにいう「改質領域」がなく、これらの構成要件を充足しないというべきである。 オそうすると、被告製品(低追従)は構成要件2R、構成要件2S及び構 成要件3Iを充足しないから、その余の点について判断するまでもなく、本件発明2-2及び本件発明2-3の技術的範囲に属しない。 3 争点4(本件特許2の特許無効の抗弁)について当裁判所は、原審と同様、本件特許2の特許無効の抗弁はいずれも成り立たないと判断する。その理由は、原判決「事実及び理由」第4の27~29(争 点4-1、同4-2、同4-3関係、443頁~445頁)のとおりであるか ら、これを引用する。 4 争点5(本件実施許諾契約の成否)について当裁判所は、原審と同様、本件実施許諾契約に基づく実施許諾の抗弁は成り立たないと判断する。その理由は、以下のとおり当審における控訴人の補充主張に対する判断を加えるほか、原判決「事実及び理由」の第4の30(44 、原審と同様、本件実施許諾契約に基づく実施許諾の抗弁は成り立たないと判断する。その理由は、以下のとおり当審における控訴人の補充主張に対する判断を加えるほか、原判決「事実及び理由」の第4の30(445 頁~)のとおりであるから、これを引用する。 (1) 控訴人は、本件実施許諾契約の内容は、被控訴人が控訴人にSDエンジンを有償で納入し、控訴人がSD装置を製造販売すること(3条)、ロイヤルティの支払(4条)、契約の有効期間は1年間とし、期間満了の3か月前までに被控訴人又は控訴人から書面による変更、解約の申し出のないときは、 同一条件で1年単位で更新が続くこと(6条)という本件実施許諾契約の内容を何ら変更するものではない旨主張する。しかし、控訴人主張に係る本件実施許諾契約の内容は、被控訴人が控訴人に対し、被控訴人製SDエンジンを有償で販売することを前提に、被控訴人が特許権を有するステルスダイシングに関する各発明の実施を許諾し、控訴人が被控訴人に対しロイヤリティ を支払うという基本的な枠組を変更するものであることは明らかである。 また、控訴人は、本件実施許諾契約について協議が行われた当時は、控訴人において被控訴人製SDエンジンを搭載したSDダイサーの売上が激減していた時期にあり、控訴人と被控訴人が共同開発予定であった被控訴人製エンジン搭載機による売上げを回復し得るようになるまでの間、暫定的に控訴 人製のSDエンジンを搭載したSDダイサーを製造販売することを認めるのは、被控訴人の利益を何ら侵害するものではない旨主張するが、そのような背景論は、被控訴人に本件実施許諾契約の締結に応じる事情があったかどうかという場面では問題になり得るとしても、変更又は修正自体がないという理由にはならない。 (2) 控訴人は、 ような背景論は、被控訴人に本件実施許諾契約の締結に応じる事情があったかどうかという場面では問題になり得るとしても、変更又は修正自体がないという理由にはならない。 (2) 控訴人は、「契約書その他の書面」は、当事者の意思表示の合致を証する 書面であれば足り、一方当事者の名前が印字された用紙を用いて作成してはならなないとか、手書きで作成してはならないといった法的根拠はない旨主張する。 しかし、ここで問題となっているのは、契約の成立に書面が必要か、必要であるとしてどのような体裁であることを要するかというような講学上の 一般論ではなく、資本金349億2864万8325円(被控訴人)、105億7535万1513円(控訴人。いずれも原審資格証明書による。)という大企業同士が、契約書を作成の上本件業務提携契約を締結し、かつ、その変更に「契約書その他の書面」が必要と明記されていたような場合に、その変更に係る書面が、通常は契約書のような対外的な重要文書に使用されな いことが明らかな「社名入りのメモ用紙に手書きしたもの」で作成されることが想定されるかということなのであり、控訴人の主張は原判決を正解しないものである。 (3) 控訴人は、本件議事録の記載等から、本件実施許諾契約の確定的な意思表示がされたことが理解できるとして種々主張するが、いずれも採用できない。 まず、控訴人は、本件議事録の「顧客を引き留めるためにも」との記載から、本件実施許諾契約の対象商品が控訴人製造に係るSDエンジンを搭載したSDダイシング装置、販売先が同装置に係る控訴人の顧客であることが明らかである旨主張するが、議事録はその性質上最終合意を記載するものとはいえないし、その主張自体において、対象商品や販売先の特定としては不 十分であ 売先が同装置に係る控訴人の顧客であることが明らかである旨主張するが、議事録はその性質上最終合意を記載するものとはいえないし、その主張自体において、対象商品や販売先の特定としては不 十分である。 また、控訴人は、実施料の額は、平成26年10月23日の議事録(甲59)の「今迄通りのロイアリティを支払う」と記載をもとに、平成24年6月11日の電子メール(乙19)の1台当たり●●●●円である旨主張するが、実施許諾契約を締結するか否かについて中核的な要素をなす実施料が 後日になって定められるというようなことは通常考えられない。 さらに、控訴人は、「良いレーザエンジン」を開発するまで、という本件実施許諾契約の終期も当事者間ではあいまいなものではなく、本件実施許諾契約を受けて当事者間で行われた共同開発では、控訴人において共同開発するエンジンが満たすべき指標を具体的に提示した旨主張するが、本件議事録の記載は「浜松ホトニクスとAcctはより良いレーザーを作る.精能良 いものができればその時点でそのレーザを乗せて商品化する.」というもので、共同開発について記載したものではあっても発明の実施許諾の期間を示すものと理解することはできず、また、発明の実施許諾をするか否かを判断する上で許諾期間も重要であり、それが許諾契約後に具体的に決まるということは通常考えられないことであり、さらに、控訴人が事後に提案したとい う指標が控訴人と被控訴人の共同認識だったと認めるに足りる証拠もない。 (4) 控訴人は、控訴人製エンジン搭載機の最初のサンプル機をサムスン社に納入することになった際の平成27年3月25日の会談についての被控訴人の社内報告書(甲60)は、本件実施許諾契約が締結されたことを示すものであり、同月30日の「装置が受注に サンプル機をサムスン社に納入することになった際の平成27年3月25日の会談についての被控訴人の社内報告書(甲60)は、本件実施許諾契約が締結されたことを示すものであり、同月30日の「装置が受注になり販売になった場合について」「⇒別 途ロイヤリティ費をお支払いいただき、ロイヤリティシール(プレート)を送付させていただきます」などと記載した3月30日のメールは、サムスン社に対するサンプル機1台に限らず控訴人製SDエンジン搭載機を対象とした実施許諾がなされていたか、少なくとも、サムスン社向けの製品については実施許諾がされたことを示す、e部長らが、同年6月29日に控訴人を訪 問した際も、控訴人がTI社に対する営業活動を説明したのに異議を述べなかった等と主張する。 しかし、甲60の●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●の記載に鑑みれば、甲60があくまでサムスン社へのサンプル出荷と、それが販売に至った場合の処理を前提としたものであり、他の事項については合意ができているわけでないことが明らかであり、同月30日のメールもその流れで送付されたものであるから、サンプル出荷に係る1台分に関するものと理解するのが自然である。 また、e部長が同年6月29日に控訴人を訪問したのは、控訴人がTI社に控訴人製エンジン搭載機を紹介しているとの情報を得、その真偽を確かめるためであり、わざわざ控訴人を訪問しているということは、控訴人のTI社への営業が想定されていない事態であったからとみる がTI社に控訴人製エンジン搭載機を紹介しているとの情報を得、その真偽を確かめるためであり、わざわざ控訴人を訪問しているということは、控訴人のTI社への営業が想定されていない事態であったからとみるのが合理的である。 そして、控訴人側は、e部長に●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●と説明したのであるから(甲62)、被控訴人側においてさらに追及しなかったとしても不合理ではない。また、甲62の●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●との記載は、むしろ、その時点で、上記サムスン社へのサンプル出荷以外に、控訴人の製造するSDエンジンを搭載したSDダイシング装置に関し本件特許発明 1、本件特許発明2-2及び本件特許発明2-3の実施が許諾(許容)されていなかったことを示すものである。 (5) 控訴人は、本件業務提携契約が終了したときは本件実施許諾契約も当然に終了するとしても、本件業務提携契約が終了するまでに受注した被告製品については、侵害品に当たらない旨主張するが、そもそも本件実施許諾契約が 締結されたと認められないのであるから、失当である。 第6 当裁判所の判断(損害論)当裁判所は、原審と異なり、本件においても特許法102条1項及び2項の適用は否定されない一方、同条3項につき原審が適用した相当実施料率30%は過大であると思料し、これを前提に、当審における請求原因(侵害の対象取 引)の追加も踏まえて、同条2項に基づいて認められる損害8億3191万6 753円の限度で損害賠償請求を認容すべきものと判断する。その理由は、以下のとおりである。 1 争点6-2-1(特許法102条2項の適用の可否)について(1) 特許法102条2項は、民法の原則の下 の限度で損害賠償請求を認容すべきものと判断する。その理由は、以下のとおりである。 1 争点6-2-1(特許法102条2項の適用の可否)について(1) 特許法102条2項は、民法の原則の下では、特許権侵害によって特許権者が被った損害の賠償を求めるためには、特許権者において、損害の発生及 び額、これと特許権侵害行為との間の因果関係を主張、立証しなければならないところ、その立証等には困難が伴い、その結果、妥当な損害の填補がされないという不都合が生じ得ることに照らして、侵害者が侵害行為によって利益を受けているときは、その利益の額を特許権者の損害額と推定するとして、立証の困難性の軽減を図った規定である。 すなわち、同項は損害の推定規定にとどまるものであり、同項の適用を認めたからといって、当然に侵害者利益額の全額が損害として認められるわけではなく、侵害者の利益額と特許権者の損害額との間の相当因果関係の一部についてであっても、推定を破る事情が立証されれば、部分的又は割合的に推定を覆滅させることを認めるべきであり、そうした柔軟な手法による合理 的な解釈運用が可能である。このような点を踏まえると、同項を適用するための要件を殊更厳格なものとする合理的な理由はないというべきであり、特許権者に、侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたであろうという事情が存在する場合には、特許法102条2項の適用が認められると解すべきであり、同項の適用に当たり、特許権者において、当該特許 発明を実施していることを要件とするものではないというべきである(前掲知財高裁平成25年2月1日判決〔ごみ貯蔵機器事件〕、同令和2年2月28日判決〔美容器事件〕、同令和4年10月20日判決〔椅子式マッサージ機事件〕参照)。 (2) のではないというべきである(前掲知財高裁平成25年2月1日判決〔ごみ貯蔵機器事件〕、同令和2年2月28日判決〔美容器事件〕、同令和4年10月20日判決〔椅子式マッサージ機事件〕参照)。 (2) 本件において、特許権者に、侵害者による特許権侵害行為がなかったなら ば利益が得られたであろうという事情があるかを検討する上で、考慮すべき 取引の実情は以下のとおりである。 ア被控訴人のビジネスモデル(甲131~135、143)(ア) 被控訴人は、開発したステルスダイシング技術の中核的ユニットであるSDエンジン一式の製造については、自社製造を必須とし、一切製造ライセンスを許諾していない。このように、被控訴人は、SDエ ンジン一式の製造販売を独占し、その営業利益により次の研究開発費用を捻出し、先端技術の研究開発を行っている。 (イ) 被控訴人は、業務提携関係にあるSDダイサーメーカー(アライアンスパートナー)に対しては、保有する本件特許を含むSD技術関連特許をライセンス許諾し、当該許諾先のSDダイサーメーカーは、ラ イセンス許諾の条件として、被控訴人に対しロイヤリティを支払うほか、被控訴人から被控訴人製のSDエンジンを買い取り、これをSDダイサーに組み込んで販売している。 このように、被控訴人は、SDダイサーメーカーに対し、SDエンジンの購入及びSD技術関連特許(本件各特許権を含む。以下同じ。) に関する特許発明のロイヤリティの支払を、ライセンス許諾の不可分一体の条件として位置付け、SDダイサーメーカーとの間で、ライセンス契約を締結し、その事業を実施してきた。 (ウ) 被控訴人は、SDエンジンのメーカーとして、SDエンジンの販売による利益を、ライセンス契約における主たる対価と位置付けており との間で、ライセンス契約を締結し、その事業を実施してきた。 (ウ) 被控訴人は、SDエンジンのメーカーとして、SDエンジンの販売による利益を、ライセンス契約における主たる対価と位置付けており、 被控訴人からSDエンジンを購入しないSDメーカーに対しては、SD技術関連特許をライセンスすることはない。また、ライセンス契約におけるロイヤリティは副次的なものであるため、ライセンスの標準料率は、1台当たりの最終販売価格の●%としていた。 イ SDダイサーの市場 (ア) 国内においては、被控訴人からシリコンのステルスダイシング技術1 に関するライセンス許諾を受けたことのあるSDダイサーメーカーは、控訴人とディスコ社の2社に限られるところ、両者は競合関係にある。 そして、ディスコ社は、現在でも被控訴人からライセンス許諾を受け、被控訴人製SDエンジンを購入している。また、ディスコ社に対するライセンス許諾も、本件業務提携契約同様、被控訴人製SDエンジン を購入することが前提となっている(甲131~135)。 なお、国外におけるSDダイサーメーカーとしては、EO社等複数存在はするものの(乙156)、これらの侵害行為時における販売実績は明らかでない。 (イ) SDダイサー市場においては、サムスン社が最大の需要者である。 サムスン社は、平成20年頃から平成23年頃までの間は、控訴人のみからSDダイサーを購入していたものの、平成23年頃以降、控訴人に加え、EO社からもSDダイサーを購入するようになった。 その後、ディスコ社が被控訴人製エンジンを搭載したSDダイサーの販売を開始したことを受け、サムスン社は、一時期、控訴人からS Dダイサーを購入することなく、ディスコ社とEO社の2社のみからSDダイサ ディスコ社が被控訴人製エンジンを搭載したSDダイサーの販売を開始したことを受け、サムスン社は、一時期、控訴人からS Dダイサーを購入することなく、ディスコ社とEO社の2社のみからSDダイサーを購入するようになった。 そして、サムスン社は、控訴人が控訴人製SDエンジンを搭載したSDダイサーを製造・販売するようになった平成28年以降は、控訴人及びディスコ社の2社のみからSDダイサーを購入し、控訴人は、 これまで合計●●台のSDダイサーをサムスン社に販売した。サムスン社がEO社の製品の取扱を中止した要因は、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●ことにあった。 サムスン社は、特定のメーカーのみから製造装置を購入すると、当該メーカーに対するコントロールが難しくなることから、SDダイサ ーについても、2社から購入するという方針を採用している(甲14 1、144、乙291)。 (ウ) 被告製品の販売台数のうち●●台は、TI社への販売である。TI社は、被告製品を高く評価しているところ、これまでのところ、被控訴人からSDエンジンを購入したことはない(甲142)。 ウ被控訴人とディスコ社の関係 被控訴人とディスコ社は、平成18年、業務提携契約を締結し、原告のSD技術を用いたディスコ社のSDダイサーの共同開発に着手し、平成19年には、被控訴人のSDエンジンを搭載したSDダイサーであるDFL7340(200mm径ウェハ用)及びDFL7360(300m径ウェハ用)を開発した。 それ以後、被控訴人は、上記業務提携契約に基づき、ディスコ社に対し、被控訴人製SDエンジンの供給を行うとともに、当該SDエンジンを搭載したSDダイサー及びその顧客による業務上の使用 それ以後、被控訴人は、上記業務提携契約に基づき、ディスコ社に対し、被控訴人製SDエンジンの供給を行うとともに、当該SDエンジンを搭載したSDダイサー及びその顧客による業務上の使用につき、包括ライセンスを付与している。 これを受けて、ディスコ社は、被控訴人製SDエンジンを搭載したSD ダイサーを製造し、エンドユーザである半導体メーカー等に販売してきた。 そして、ディスコ社は、自らがアライアンスパートナーであることを対外的に宣伝するとともに、同社製のSDダイサーにSDEマークを表示することにより、自社製品が被控訴人製SDエンジンを搭載しているこ とを明らかにしてきた(甲131~136)。 (3) 以上の事情を踏まえて検討する。 SDダイサーのメーカーは、国内では、控訴人と、被控訴人からSDエンジンの供給を受けるディスコ社に限られている。 EO社等の国外メーカーの販売実績は明らかではないが、サムスン社が 被控訴人による特許権侵害との指摘を受けてEO社との取引を中止するに至 っていることに鑑みれば、競合メーカーの参入は、不可能とまではいえないまでも、相当限定されたものと推認される。 そうすると、ステルスダイサーの販売者は、控訴人と上記ディスコ社で大部分を占める状況にあると認められる。 また、本件において、被控訴人製SDエンジンは、本件訂正発明1並び に本件発明2-2及び本件発明2-3の技術の中核をなすものであり、その侵害品である被告製品にとっても、その技術の中核的部分に相当するといえる。そうすると、被告製品の構成中、被控訴人製SDエンジンに相当する部分がステルスダイサー製品としての不可欠の技術的特徴を体現する部分であり、商品としての競争力の源泉になっているものと解 するといえる。そうすると、被告製品の構成中、被控訴人製SDエンジンに相当する部分がステルスダイサー製品としての不可欠の技術的特徴を体現する部分であり、商品としての競争力の源泉になっているものと解される。 このように、ステルスダイサーの国内市場における販売者は、控訴人と、被控訴人からSDエンジンの供給を受けるディスコ社にほぼ限定されていること、被控訴人製SDエンジン自体は、ステルスダイサー製品の部品にとどまるものではあるが、その技術の中核をなすものであって、被告製品の構成中、被控訴人製SDエンジンに相当する部分がステルスダイサー製 品としての不可欠の技術的特徴を体現する部分であり、商品としての競争力の源泉になっているものと解されることからすると、本件において、侵害者による特許権侵害行為がなかったならば特許権者に利益が得られたであろうという事情が認められるというべきである。 これを他の表現でいえば、被控訴人が主張するとおり、特許権者が販売 する部品を用いて生産された完成品と、侵害者が販売する完成品とは、同一の完成品市場の利益をめぐって競合しており、完成品市場における部品相当部分の市場利益に関する限りでは、特許権者による部品の販売行為は、当該部品を用いた完成品の生産行為又は譲渡行為を介して、侵害品(完成品)の譲渡行為と間接的に競合する関係にあるということもできる。 (4) 控訴人は、知財高裁令和4年10月20日判決(椅子式マッサージ機事件) は、特許権者が、侵害品と「需要者を共通」にする「同種の」「競合品」であって「市場において・・・競合関係にある製品」を輸出・販売していた場合に初めて、特許法102条2項による推定が正当化されることを踏まえたものである旨主張するが、同判決の事案が、控訴人の指摘する であって「市場において・・・競合関係にある製品」を輸出・販売していた場合に初めて、特許法102条2項による推定が正当化されることを踏まえたものである旨主張するが、同判決の事案が、控訴人の指摘する場合であったというにすぎず、そのような場合以外に同項が適用されないことまでは判示す るものではない。 控訴人は、被告製品はレーザの照射を行う機能以外にも様々な機能を有しており、被告製品の顧客において、SDダイサーの代わりにSDエンジンを買う者はいない旨主張するが、これらは推定覆滅の事情とはなっても、特許権者に、侵害者による特許権侵害行為がなかったならば利益が得られたで あろうという事情が否定される理由とはならない。 また、控訴人は、被控訴人製SDエンジンと被告製品の価額差を理由に、被告製品の販売によって得られた利益を同項により被控訴人の被った損害と推定することは不合理である旨主張するが、被控訴人製SDエンジンがSDダイサーの部品であることを適切に覆滅事由として反映させることは可能で あるから、採用できない。 (5) 以上のとおりであって、本件において特許法102条2項の適用は認められるというべきである。 2 争点6-1-2(特許法102条2項に基づく損害額)について(1) 対象となる被告製品の販売について 平成28年3月から令和4年6月までの間に、別紙4一覧表(乙527)の黄色セル部分の価額で、合計●●台の被告製品が販売されたことについては、当事者間に争いがない(以下、その個別の被告製品の販売は、同表の「№」欄記載の符号で示す。)。 このうち、№1、●●●●●について、損害賠償の対象となる侵害行為 に当たるかについて争いがある。 ア №1について№1は、サ 「№」欄記載の符号で示す。)。 このうち、№1、●●●●●について、損害賠償の対象となる侵害行為 に当たるかについて争いがある。 ア №1について№1は、サムスン社にサンプルとして納入されたものであるが、これについては実施許諾(個別合意)の抗弁が成り立つものと認められる。 その理由は、以下のとおり当審における被控訴人の補充主張に対する判断を加えるほか、原判決「事実及び理由」第4の33(2)ア及びイ(47 2頁~474頁)のとおりであるから、これを引用する。 (ア) 被控訴人は、№1について許諾を認めることは、本件業務提携契約上、被控訴人が控訴人に対し、SDエンジンを有償で販売した上で、控訴人が、当該SDエンジンを搭載したSDダイシング装置をエンドユーザに売却することとされ、その変更には調印者名で調印された契約書を要す るとされているとされていることと整合しない旨主張する。 しかし、控訴人製エンジン搭載機の最初のサンプル機をサムスン社に納入することになった際の平成27年3月25日の会談についての被控訴人の社内報告書(甲60)には●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●「ロイヤリティの支払については、今回あくまでサンプル出荷のため販売にな った時点でよいか?」等の記載があり、3月30 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●「ロイヤリティの支払については、今回あくまでサンプル出荷のため販売にな った時点でよいか?」等の記載があり、3月30日のメール(乙20)には、今回のサンプル出荷に限っては、ロイヤリティの支払が不要であるが、装置が受注となり、販売に至った場合には、別途ロイヤリティの支払が必要である旨の記載がある。さらに、平成28年10月21日の協議の議事録(甲151。作成は被控訴人)においても、被控訴人のf 部長代理が、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●との発言をしている。そうすると、控訴人と被控訴人の間では、控訴人が、控訴人製造のSDエンジンを搭載したSDダイサーをサムスン社に1台サンプル納入し、受注に至れば販売することも前提とされていたということができるし、また、1台限りのものであるので、本件業務提携契約の根幹に関わるものでないことが共通認 識となっていたことが認められ、被控訴人の主張は採用できない。 (イ) 被控訴人は、サンプル機そのものは返還され、被告製品№1が新たに納入されていることを問題とするが、販売が1台にとどまる限りにおいて、許諾の対象がサンプル機そのものに限られる実質的な理由は認められず、被控訴人の主張は採用できない。 イ №●●について(ア) №●●については、以下の経過が認められる(乙508~515)。 令和3年2月 ●●●が控訴人に発注同年8月31日完成同年9月13日本件特許1の存続期間満了 同年11月11日控訴人外国現地法人が控訴人に発注同月26日控訴人が控訴人外国現地法人に横浜港において引き渡し 完成同年9月13日本件特許1の存続期間満了 同年11月11日控訴人外国現地法人が控訴人に発注同月26日控訴人が控訴人外国現地法人に横浜港において引き渡し令和4年1月18日 ●●●が控訴人外国現地法人に発注同月25日 ●●●が控訴人への発注を解除 同年2月控訴人外国現地法人から●●●に納入同年3月14日 ●●●が控訴人外国現地法人に代金支払同年6月22日控訴人外国現地法人が控訴人に代金支払(イ) 控訴人は、令和3年2月の控訴人による●●●からの受注行為は令和4年1月25日に解除されており、解除の遡及効により当該行為は遡っ てなかったものとなるから、本件特許1の存続期間である令和3年9月 13日までに行われた行為のうち、製造のみが本件特許権1の侵害を構成する旨主張する(№●●の対象は被告製品〔低追従〕であり、本件特許権2は侵害しないため)。 しかし、特許権の存続期間内に製造され、あるいは譲渡の申出がされた製品は、特許権を侵害するものであるから、これが特許権存続期間後 に譲渡された場合であっても、当該譲渡によって失った特許権者の市場機会の喪失は、特許存続期間内の侵害行為と相当因果関係にある損害となり得るもので、その場合に侵害者が得た利益は、特許法102条2項の「その侵害の行為により利益を受けているとき」の「その利益の額」に含まれるというべきである。 乙379によれば、№●●は、もともと本件特許権1の存続期間内の令和3年5月15日に引渡し予定だったところ、新型コロナウイルス感染症の世界的流行に起因する半導体生産環境の混乱等を理由に、顧客から引渡日を延期するよう依頼され、同感染症の流行に伴 1の存続期間内の令和3年5月15日に引渡し予定だったところ、新型コロナウイルス感染症の世界的流行に起因する半導体生産環境の混乱等を理由に、顧客から引渡日を延期するよう依頼され、同感染症の流行に伴う流通の混乱を受けることなく、顧客の指定する日に確実に引渡ができるようにするた め、●●●から控訴人への発注が解除され、控訴人→控訴人外国現地法人→●●●という商流に変更されたものである。そうすると、№●●は、本来本件特許権1の存続期間内に被告製品が引き渡されるはずだったものであるし、全体として評価すれば、実質的には控訴人と●●●との取引である点に変更はなく、控訴人は、代金を控訴人外国現地法人を介し て回収してもいるから、●●●から控訴人への発注が解除された点も、ことさら重視することはできない。 よって、№●●について、損害賠償の対象となる侵害行為(譲渡の申出及び製造)が認められる。 ウ №●●について (ア) №●●については、以下の経過が認められる(乙379、510、5 11、518~522)。 令和3年2月か3月 ●●●が控訴人に発注同年9月13日本件特許1の存続期間満了同年10月15日完成同年11月11日控訴人外国現地法人が控訴人に発注 同月26日控訴人が控訴人外国現地法人に横浜港において引き渡し令和4年5月27日 ●●●が控訴人外国現地法人に発注同月29日 ●●●が控訴人への発注を解除同年6月控訴人外国現地法人から●●●に納入 同年7月14日 ●●●が控訴人外国現地法人に代金支払同年7月22日控訴人外国現地法人が控訴人に代金支払(イ) 控訴人は、No.●●について行われた行 ら●●●に納入 同年7月14日 ●●●が控訴人外国現地法人に代金支払同年7月22日控訴人外国現地法人が控訴人に代金支払(イ) 控訴人は、No.●●について行われた行為のうち、本件特許1に係る実施行為として、特許権侵害を構成するものはない旨主張するが、令和3年2月か3月に●●●から№●●の発注があった以上は、これに先立 ち控訴人から●●●に対する販売の申込があったか、●●●からの発注後に控訴人から●●●に承諾の意思表示をしたものというべきで、譲渡の申出があったことが推認される。個別の時期が主張立証されないからといって、不十分ということはない。 特許権の存続期間内に製造され、あるいは譲渡の申出がされた製品は、 特許権を侵害するものであるから、これが特許権存続期間後に譲渡された場合であっても、当該譲渡によって失った特許権者の市場機会の喪失は、特許存続期間内の侵害行為と相当因果関係にある損害となり得るものであることは前記イのとおりである。 乙379によれば、№●●は、№●●とともに、本件特許権1の存続 期間内である令和3年5月15日に控訴人から●●●に引渡し予定だっ たのであり、引渡期日の延期も、商流の形式的変更も、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う流通の混乱を避けるためという偶然の事後的事情によるものであることも№●●の場合と同様であり、控訴人は代金を控訴人外国現地法人を通して回収しているから、№●●について、損害賠償の対象となる侵害行為(譲渡の申出)が認められる。 (2) 控除されるべき経費について本件においては、販売手数料、販売変動費、試作品製造・改良費が控除されるべき経費に当たるかが争われている。 ア販売手数料について れる。 (2) 控除されるべき経費について本件においては、販売手数料、販売変動費、試作品製造・改良費が控除されるべき経費に当たるかが争われている。 ア販売手数料について乙524によれば、これらの費用は、販促や顧客サポートのために実際 に支払われていることが認められ、経費として認めるのが相当である。 被控訴人は、これらの支払が控訴人の関連会社に対するもので発売に直接必要なものか不明である旨主張するが、製品名が特定された上で販売手数料が記載されており、販売先が控訴人の関連会社である場合は発生していないことからすると(乙528の99B、100Aの下段。時期 的に、№●●、●●に対応する。)、実体のあるものと認められる。 イ販売変動費について乙331によれば、これらの費用は、当該半期に販売したレーザダイシングのうち、侵害品の割合に基づいて算出したものであり、個別の帳票はないものの、特に不自然な点はない。 次に、それぞれの費目について、経費として控除するのが相当であるかについて検討すると、販売変動費―1は支払運賃や梱包費用であり、その性質上、被告製品の販売に直接関連して追加的に必要となった費用であると認められる。 一方、販売変動費―2は、広告費、販売促進費で、被告製品の売上と の個別の関連性が立証されているといえないので、経費として控除する のが相当とはいえない。 ウ試作品製造・改良費について既に製造されている被告製品について、試作品製造・改良費を経費と認めることはできない。 控訴人は、絶えず試作・改良することは、継続的販売のために必要で ある旨主張するが、そうであるからといって、試作品製造・改良費が、被告製品の販売に 製造・改良費を経費と認めることはできない。 控訴人は、絶えず試作・改良することは、継続的販売のために必要で ある旨主張するが、そうであるからといって、試作品製造・改良費が、被告製品の販売に直接関連して追加的に必要となった費用ということはできない。 (3) 限界利益以上を前提に、乙528に基づき、各期ごとに、売上高から直接原価、 販売手数料、販売変動費-1を除いて限界利益を求め、この限界利益の売上高に対する割合により限界利益率を求めると、別紙5限界利益計算書の「限界利益率」の欄のとおりである(小数点3桁以下四捨五入)。 (4) 推定の覆滅立証の困難を緩和するという特許法102条2項の趣旨からすると、同項 所定の侵害行為により侵害者が受けた利益の額とは、原則として、侵害者が得た利益全額であると解するのが相当であって、このような利益全額について同項による推定が及ぶと解すべきである。もっとも、上記規定は推定規定であるから、侵害者の側で、侵害者が得た利益の一部又は全部について、特許権者が受けた損害との相当因果関係が欠けることを主張立証した場合には、 その限度で上記推定は覆滅されるものということができる。 ア本件では、被控訴人が製造するのはSDダイサーの部品であるSDエンジンであり、この点で、特許法102条2項の推定が覆滅されるべきことに争いはない。 そして、SDエンジンの販売者である被控訴人が、SDエンジンの販売 による利益を超えた損害の賠償を得られる理由はなく、本件においては、 被告製品の販売に係る限界利益(①)に、SDエンジンの価額(②)のSDダイサーの価額(③)に占める割合を乗じて(①×②/③)被控訴人の損害とし、それを超える部分については推定が覆滅さ 、 被告製品の販売に係る限界利益(①)に、SDエンジンの価額(②)のSDダイサーの価額(③)に占める割合を乗じて(①×②/③)被控訴人の損害とし、それを超える部分については推定が覆滅されると解するのが相当である。このように解することが、完成品市場における部品相当部分の市場利益に関する限りで、特許権者による部品の販売行為は、当 該部品を用いた完成品の生産行為又は譲渡行為を介して、侵害品(完成品)の譲渡行為と間接的に競合する関係にあるとして特許法102条2項の適用を認めることと整合的でもある。 イ被控訴人は、被告製品の販売による限界利益全体について推定が及ぶ前提で覆滅率は25%となるか、同限界利益の75%について推定が及ぶ (その場合は覆滅はない)として種々主張するが、以下のとおり、いずれも採用することができない。 (ア) 被控訴人は、SDダイサーは、ブレードダイサーで切断することができないウェハを切断できるため、技術上の価値が高く、SDダイサーとブレードダイサーでは、そのプラットフォームの基本的構成に差異はな いことに鑑みれば、SDダイサーとブレードダイサーの価格差(定価において●倍、売価において●倍~●倍以上)の価格差がSDエンジンの価値である旨主張する。 しかし、SDダイサーとブレードダイサーの各エンジンを除いた部分に互換性があることを認めるに足りる証拠はなく、SDダイサーとブレ ードダイサーの価格差を単純にSDエンジンの価値であるということはできない。 (イ) 被控訴人は、SDダイサー用のプラットフォームの製造原価は、高くとも●●●●●円程度であるのに対し、被控訴人の控訴人に対するSDエンジンの販売価額は、700SPHについていえば、●●●●●円で あり、SDエ ダイサー用のプラットフォームの製造原価は、高くとも●●●●●円程度であるのに対し、被控訴人の控訴人に対するSDエンジンの販売価額は、700SPHについていえば、●●●●●円で あり、SDエンジンの価値は高い旨主張するが、SDダイサー用のプラ ットフォームの「製造原価」とSDエンジンの「販売価額」を比較している点において妥当でない。 (ウ) 被控訴人は、本件訂正発明1は、ステルスダイシング技術の中核的技術思想を具現化するものであって、代替技術も存在せず、重要性が極めて高い旨主張する。 しかし、そうだとしても、被控訴人が製造するのはSDダイサーの部品であるSDエンジンであって、この点で侵害者利益(SDダイサーの販売利益)の全額を被控訴人の損害と推定することには無理があり、推定の覆滅を免れないことは、上記アのとおりである。被控訴人の上記主張は、このような観点から行われる推定の覆滅を妨げる理由となるもの ではない。 ウ控訴人は、競業他社の存在、営業努力、被告製品における他の技術的特長、被控訴人が控訴人に他の訴訟で他の特許権に基づいて損害賠償を請求していることを考慮すれば、推定覆滅割合は89%を下らない旨主張する。 しかし、競業他社については販売実績が明らかでないことは上述のとおりであるし、控訴人の営業努力や、被告製品における他の技術的特長に関しては、推定を覆すだけの具体的な事情の主張立証はない。 次に、被控訴人が控訴人に他の訴訟において他の特許権に基づいて損害賠償請求をしている事実に関していえば、そのような請求がされたと しても、別個の特許権に基づくものである以上、それが関連特許権に基づくものであったとしても、当然に本件における認容額に影響するものではない。また、別件特許に係る特 、そのような請求がされたと しても、別個の特許権に基づくものである以上、それが関連特許権に基づくものであったとしても、当然に本件における認容額に影響するものではない。また、別件特許に係る特許権に基づく請求(当庁令和5年(ネ)第10037号)を含め、未だ確定しておらず、その最終的な帰すうは明らかでない。 したがって、控訴人の上記主張も採用できない。 エ進んで、前記アで示した考え方に則って、被告製品の限界利益に、SDエンジンの価額のSDダイサーの価額に占める割合を乗ずる方法で、覆滅後の被控訴人の損害額を具体的に算定することとする。 (ア) SDダイサーの価額が1億円であることに争いはない。 (イ) 被控訴人と控訴人の間の平成18年6月8日付け売買基本契約書(乙 14)によれば、被控訴人から控訴人へのSDエンジンの販売価額は基本的に1台●●●●●円であり、また、平成21年10月から平成22年9月までは、累計台数に応じ1台●●●●●円から●●●●●円と定められている。 被控訴人は、平成27年9月8日付けの報告書(乙339)で、控訴 人に対し、SDエンジンの価額として、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●との提案をしている。 一方、被控訴人は、ディスコ社に対し、●●●●●●●●●●●頃、SDエンジン(800DS)を代金●●●●●円で売却し(AFユニット及び対物レンズを含む。)、●●●●●●●●●●●頃、SDエンジ ン(1000DS)を代金●●●●●●●●●円で売却している(甲142、147、148)。 また、被控訴人は、平成27年3月から平成28年9月頃までの間に、控訴人に対し、被控訴人製SDエンジンユニットを1台当たり●●●●●円で、合計●●台販売してい いる(甲142、147、148)。 また、被控訴人は、平成27年3月から平成28年9月頃までの間に、控訴人に対し、被控訴人製SDエンジンユニットを1台当たり●●●●●円で、合計●●台販売している(甲205、222、223)。 以上のように、被控訴人製SDエンジンユニットの価額は一定せず、特にディスコ社に対するものは、平成28年から令和元年9月までの5年間に、被控訴人製SDエンジンを搭載したディスコ社製SDダイサーが、●●●台超販売されているにもかかわらず(弁論の全趣旨。被控訴人は、附帯控訴状14頁において、原判決の第4の31(1)イ(ウ)〔45 5頁〕における、ディスコ社の販売数の認定を認めている。)、●●● ●年と●●●●年の2件しか開示されていない。 (ウ) 推定覆滅に係る事情については、侵害者である控訴人が立証責任を負うべきものであるが、本件においては、推定の覆滅を根拠づける基本的な事情(侵害者利益はSDダイサー製品の販売利益であるのに対し、被控訴人が競合品として販売しているのは、その部品であるSDダイサー であるという事実)には争いがなく、その覆滅の割合を合理的に算定するための被控訴人製SDエンジンの販売価格の認定が問題なっているにすぎない。同販売価格を知り得る立場にない控訴人がこれを的確に立証できなくてもやむを得ない面があり、証拠上明らかとなっている事実関係を総合して、合理的な推認をすべきである。 以上のような観点を踏まえると、上記(イ)の事実関係、証拠関係の下において、推定覆滅の割合を算定する前提としての被控訴人製SDエンジンの価額は、控訴人主張額(●●●●●円)と、被控訴人が開示する額(概ね●●●●●円前後であるため、●●●●●円とする。)の中間値である●●●●●円 の割合を算定する前提としての被控訴人製SDエンジンの価額は、控訴人主張額(●●●●●円)と、被控訴人が開示する額(概ね●●●●●円前後であるため、●●●●●円とする。)の中間値である●●●●●円と認めるのが相当である。そうすると、控訴人 の販売するSDダイサー1億円に占める割合は●●●●%となるから、限界利益のうち、この割合を超える部分については推定が覆滅されることになる。 以上を前提に、各期の売上高に前記の限界利益率を乗じ、これに●●●%を乗じると、別紙6認容額計算表の「覆滅後(A)」の合計欄のと おり7億5628万7981円となり、これが特許法102条2項により算定される損害額となる。 3 争点6-2-1(特許法102条1項の適用の可否)について(1) 特許法102条1項は、民法709条に基づき販売数量減少による逸失利益の損害賠償を求める際の損害額の算定方法について定めた規定であり、特 許法102条1項1号において、侵害者の譲渡した物の数量に特許権者又は 専用実施権者(以下「特許権者等」という。)がその侵害行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益額を乗じた額を、特許権者等の実施の能力の限度で損害額とし、譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を特許権者等が販売することができないとする事情を侵害者が立証したときは、当該事情に相当する数量に応じた額を控除するものと規定して、侵害行 為と相当因果関係のある販売減少数量の立証責任の転換を図ることにより、より柔軟な販売減少数量の認定を目的とする規定である。 特許法102条1項の文言及び上記の趣旨に照らせば、特許権者等が「侵害行為がなければ販売することができた物」とは、侵害行為によってその販売数量に影響を受ける特許権者等 とする規定である。 特許法102条1項の文言及び上記の趣旨に照らせば、特許権者等が「侵害行為がなければ販売することができた物」とは、侵害行為によってその販売数量に影響を受ける特許権者等の製品、すなわち、侵害品と需要者を共通 にする同種の製品であって、市場において、侵害者の侵害行為がなければ販売等することができたという競合関係にある製品をいうものと解するのが相当である。 (2) 前記のとおり、ステルスダイサーの国内市場における販売者は、控訴人と、被控訴人からSDエンジンの供給を受けるディスコ社にほぼ限定されている こと、被控訴人製SDエンジン自体は、ステルスダイサー製品の部品にとどまるものではあるが、その技術の中核をなすものであって、被告製品の構成中、被控訴人製SDエンジンに相当する部分がステルスダイサー製品としての不可欠の技術的特徴を体現する部分であり、商品としての競争力の源泉になっているものと解されることからすると、被控訴人製SDエンジンは、侵 害行為によって販売数量に影響を受けるものと認められ、本件において、特許法102条1項所定の「その侵害行為がなければ販売することができた」という関係が認められるというべきである。 (3) 控訴人は、特許法102条1項は、「需要者を共通にする同種の競合品であって、市場において、侵害者の侵害行為がなければ輸出又は販売すること ができたという競合関係にある製品」を販売していた場合にのみ適用される ところ、被控訴人が販売するSDエンジンの需要者は半導体製造装置の製造業者であるのに対し、被告製品の需要者は半導体製造業者であり、需要者及び市場が異なり、SDエンジンは、レーザダイシング装置と市場において競合関係に立つ製品ではないから、本件において適用 造装置の製造業者であるのに対し、被告製品の需要者は半導体製造業者であり、需要者及び市場が異なり、SDエンジンは、レーザダイシング装置と市場において競合関係に立つ製品ではないから、本件において適用をみない旨主張する。 しかし、前記(2)のとおり、本件における事実関係に即して検討すれば、 特許権者に、侵害者による特許権侵害行為がなかったならば販売することができたという関係が認められるのであって、控訴人の主張は採用できない。 (4) 以上のとおりであって、本件において特許法102条1項の適用は認められるというべきである。 4 争点6-2-2(特許法102条1項に基づく損害額)について (1) 被控訴人製SDエンジンの1個当たりの価額被控訴人製SDエンジンの価額は、特許法102条1項1号の「単位数量当たりの利益の額」を算出する前提となるものであるから、同項の適用を主張する被控訴人が立証責任を負うべきものであり、また、被控訴人の立場で、これを客観的な証拠をもって明らかにすることは可能なはずである。 ところが、本件においては、被控訴人製SDエンジンの価額を客観的に明らかにする的確な証拠は提出されておらず、前記2(4)エ(イ)の事実関係、証拠関係の下では、控訴人主張額である●●●●●円を超える価額を認定することはできない。この点、推定覆滅の割合を算定する前提としての被控訴人製SDエンジンの価額の認定と齟齬が生じても、やむを得ないというべきで ある。 (2) 原価について被控訴人製SDエンジンの原価について、●●●●●円の限度では当事者間に争いがない。 被控訴人は、被控訴人のシステムに記録されている原価データのスクリー ンショット(甲142)に基づ 被控訴人製SDエンジンの原価について、●●●●●円の限度では当事者間に争いがない。 被控訴人は、被控訴人のシステムに記録されている原価データのスクリー ンショット(甲142)に基づき、①800DSの原価は、●●●●●●● ●●円であり、②1000DSの原価は、●●●●●●●●●円である旨主張するが、上記スクリーンショットは、画面のごく一部を抜粋したものにすぎず、記載項目の具体的な内容やその正確性が明らかであるということはできないから、上記スクリーンショットの記載をもって、原価を認定するのは相当ではない。 被控訴人は、さらに、当審において、甲201、202を提出するが、証拠説明書によれば、これらは予測値を示すにすぎず、実績値の立証としては不十分である。 よって、原価としては、上記争いのない●●●●●円と認定するのが相当である。 (3) LDモジュールに係る逸失利益について被控訴人は、被控訴人製SDエンジンが販売されると、800DSについては●●年に●回、1000DSについては●●年に●回、LDモジュールを販売することができたとして、その限界利益を損害として主張する。 しかし、LDモジュール自体は侵害品ではない上、必ずLDモジュール が販売されることになると認めるに足りる客観的な証拠はない。 よって、LDモジュールに係る逸失利益を損害と認めることはできない。 (4) 特許法102条1項に基づき推定される損害額被控訴人製SDエンジンの1個当たりの利益の額は、(1)の被控訴人製SDエンジンの1個当たりの価額から(2)の原価を控除した●●●●円である。 その●●台分は●●●●●●●円であり、前記の特許法102条2項に基づき算定される損害額7億5628 )の被控訴人製SDエンジンの1個当たりの価額から(2)の原価を控除した●●●●円である。 その●●台分は●●●●●●●円であり、前記の特許法102条2項に基づき算定される損害額7億5628万7981円を下回るから、本件において同条1項に基づく損害は、採用の限りでない。 5 争点6-2-3(特許法102条3項に基づく損害額)について(1) 特許法102条3項に基づく損害の算定基準 特許法102条3項は、特許権侵害の際に特許権者が請求し得る最低限度 の損害額を法定した規定であって、同項による損害は、原則として、侵害品の売上高を基準とし、そこに、実施に対し受けるべき料率を乗じて算定すべきである。そして、平成10年法律第51号による改正により、「通常受けるべき金銭の額」という同項の規定のうち「通常」の部分が削除された経緯に照らせば、同項に基づく損害の算定に当たっては、必ずしも特許権につい ての実施許諾契約における実施料率に基づかなければならない必然性はなく、特許権侵害をした者に対して事後的に定められるべき、実施に対し受けるべき料率は、むしろ、通常の実施料率に比べて自ずと高額になるであろうことを考慮すべきである。 したがって、実施に対し受けるべき料率は、①当該特許発明の実際の実施 許諾契約における実施料率や、それが明らかでない場合には業界における実施料の相場等も考慮に入れつつ、②当該特許発明自体の価値すなわち特許発明の技術内容や重要性、他のものによる代替可能性、③当該特許発明を当該製品に用いた場合の売上げ及び利益への貢献や侵害の態様、④特許権者と侵害者との競業関係や特許権者の営業方針等訴訟に現れた諸事情を総合考慮し て、合理的な料率を定めるべきである。 (2) 本件にお いた場合の売上げ及び利益への貢献や侵害の態様、④特許権者と侵害者との競業関係や特許権者の営業方針等訴訟に現れた諸事情を総合考慮し て、合理的な料率を定めるべきである。 (2) 本件における当てはめア当該特許発明の実際の実施許諾契約における実施料率や、それが明らかでない場合には業界における実施料の相場等(①)、特許権者と侵害者との競業関係や特許権者の営業方針等(④) (ア) 前記のとおり、被控訴人は、その開発に係るステルスダイシング技術の中核的ユニットであるSDエンジン一式の製造については、自社製造を必須とし、一切製造ライセンスを許諾せず、SDエンジンの販売利益により先端技術の研究開発を継続するものであり、そのため、被控訴人は、アライアンスパートナーに対し包括ライセンスを付与するに当たっ ては、被控訴人製造に係るSDエンジンの販売を大前提として、当該販 売とSD技術関連特許に関する特許発明のロイヤリティの支払を不可分一体の条件とするものであり、被控訴人は、アライアンスパートナーに対しては、本件特許発明を含めたSD技術関連特許につき、SDダイサーの最終販売価格の●%という実施料率に基づき、包括ライセンスを行っており、他方、被控訴人からSDエンジンを購入しないSDメーカー に対しては、SD技術関連特許を包括ライセンスすることは一切ないものである。 したがって、被控訴人と控訴人の間では、当初本件業務提携契約によりライセンス料が●%とされ、その後、●●●%に値下げされたが(乙15)、この実施料率を相当実施料率算定の基準とするのは相当 でない。 (イ) 前述のとおり、ステルスダイサーの販売者としては、控訴人と、被控訴人からSDエンジンの供給を受けるディスコ社が )、この実施料率を相当実施料率算定の基準とするのは相当 でない。 (イ) 前述のとおり、ステルスダイサーの販売者としては、控訴人と、被控訴人からSDエンジンの供給を受けるディスコ社が大きな割合を占めており、両者の競合関係は明らかである。 (ウ) 平成21年度の特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書である帝国 データバンクの「知的財産の価値評価を踏まえた特許等の活用の在り方に関する調査研究報告書~知的財産(資産)価値及びロイヤルティ料率に関する実態把握~」(乙482)によれば、外国における半導体分野の市場料率データ平均値は、米国では5.1%(94頁)、ドイツでは2.0%(95頁)であること、「精密機器」の分野の国内アンケート 結果の料率平均値は、3.5%である(52頁)ことが認められる。 イ当該特許発明自体の価値すなわち特許発明の技術内容や重要性、他のものによる代替可能性(②)、当該特許発明を当該製品に用いた場合の売上げ及び利益への貢献(③)本件訂正発明1は、ステルスダイシング技術を所与の前提として、加 工対象物を切断する際の起点となる箇所を増やすことに技術的な特徴が ある発明であり、厚みのある加工対象物の切断を容易にするもので、多様な加工対象物への対応のために相当の価値はあるといえるが、本件明細書等1には、本件明細書等2とは異なり、ウェハの反りや凹凸については課題として記載されておらず、反りや凹凸のない加工対象物が図示されており、ウェハに反りや凹凸があっても、確実にウェハ内部に改質 領域を形成することが担保された技術でもない。また、本件発明2-2や本件発明2-3は、ウェハの反りや凹凸については対処できるものの、端部の形状変動については、十分に対処することができない 改質 領域を形成することが担保された技術でもない。また、本件発明2-2や本件発明2-3は、ウェハの反りや凹凸については対処できるものの、端部の形状変動については、十分に対処することができないものである。 そのため、本件訂正発明1については相当の価値があり、売上や利益にも貢献し得るものであるが、本件発明2-2や本件発明2-3により 補わなければならない点があるところ、被告製品(低追従)は本件発明2-2及び本件発明2-3の技術的範囲に属さない(前記第5の2(3))。 ウ侵害の態様(③)本件業務提携契約の変更に「契約書その他の書面」が必要とされているにもかかわらず、控訴人が、控訴人の社名が入ったメモ用紙への手書き の記載等を理由に、本件実施許諾契約の成立を主張するのは、客観的には強弁というほかない。 他方、控訴人が被控訴人側と頻繁に連絡をとり、平成27年3月25日の会談についての被控訴人の社内報告書(甲60)において、控訴人側として、最終的に被控訴人製のSDエンジンの購入を希望する旨の記載 もあること、控訴人が、被告製品№1以外にも、控訴人製SDエンジンを搭載して販売したことが発覚した後の平成28年10月21日の協議の議事録(甲151)でも、控訴人からは、許諾を受けていたとの認識が示されていることからすると、控訴人の侵害行為は、重過失はともかく故意によるものとまでは認められない。 エ検討 以上のとおり、被控訴人と控訴人の間では、当初ライセンス料が●%とされ、その後、●●●%に値下げされたが、これは、控訴人において被控訴人製SDエンジンのみを使用してSDダイサーを製造販売することが前提となっているから、この前提を欠く場合に、上記ライセンス料の とされ、その後、●●●%に値下げされたが、これは、控訴人において被控訴人製SDエンジンのみを使用してSDダイサーを製造販売することが前提となっているから、この前提を欠く場合に、上記ライセンス料のみをもって受けるべき料率とするのは相当でなく、他方、被控訴人製の SDエンジンの利益そのものを特許法102条3項の料率の基準とすることも相当でないこと、一般的なライセンス料の傾向、控訴人と被控訴人は競合状態にあること、本件訂正発明1については本件発明2-2や本件発明2-3により補わなければならない点があるところ、被告製品(低追従)は本件発明2-2及び本件発明2-3の技術的範囲に属さな いこと等の事情を総合すれば、本件において被控訴人が実施に対し受けるべき料率としては、15%と認めるのが相当である。 (3) 当事者の主張についてア控訴人は、被告製品は、顧客の被告の技術力への信頼・評価と、これらの顧客との良好な関係を踏まえた控訴人による顧客への営業活動が効を 奏した結果、販売に至ったものが非常に多いとか、控訴人の開発したレーザエンジンは数々の技術的特徴を有しているなどと主張するが、これらについて、本件における料率の決定について意味があるだけの事情は認められず、採用できない。 また、控訴人は、本件各特許権の実施料率が、当事者間で合意した特許 1件あたりの実施料である●●●●●%(本件特許権1及び2の合計で●●●●●%)を超えることはない旨主張するが、当事者で合意した実施料率●●●%を基礎とし、それを対象特許の数で除すのは、当該料率が定められた前提や、本件特許権の独自の価値を無視する点で妥当でなく、採用できない。 イ被控訴人は、違約金の料率を35%と定める業務提携契約(甲143) 許の数で除すのは、当該料率が定められた前提や、本件特許権の独自の価値を無視する点で妥当でなく、採用できない。 イ被控訴人は、違約金の料率を35%と定める業務提携契約(甲143) は、その文言上、ライセンス条件に違反し、被控訴人の特許権を侵害する装置の販売に対する違約金の定めであり、特許法102条4項の趣旨からも考慮されるべきである旨主張する。 しかし、乙143は12条(違反行為)として、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●とするが、8条の全てが開示されているわけではなく、その他内容が不明な点も多く、前提条件が不明であって、これをもとに実施料相当損害の料率を定めるのは 相当でない。 (4) 特許法102条3項に基づき算定される損害額本件において特許権の侵害が認められる№●●●●の販売額合計は、別紙6認容額計算表のとおり●●●●●●●●●●●●円であり、これに15%を乗じると、●●●●●●●●●●●円となる。これは、特許法102条2 項に基づき算定される損害額7億5628万7981円を下回るから、本件において、同条3項に基づく損害は、採用の限りでない。 6 争点6-2-4(推定規定によらない損害賠償請求の成否及び損害額)について(1) 被控訴人は、控訴人がサムスン社へ新規にシリコンウェハ用SDダイサー の販売をした平成28年4月以降現在までの期間において、シリコンウェハ用SDダイサーを販売していたのは、控訴人とディスコ社の二社のみであっ 人がサムスン社へ新規にシリコンウェハ用SDダイサー の販売をした平成28年4月以降現在までの期間において、シリコンウェハ用SDダイサーを販売していたのは、控訴人とディスコ社の二社のみであったこと等を理由に、控訴人による被告製品の製造販売により、その数量について被控訴人が被控訴人製SDエンジンを販売することができず、利益を失ったとの相当因果関係が認められる旨主張するが、EO社など他のSDダイ サーのメーカーの存在等を考慮すれば、推定規定によらずに相当因果関係を 認めるだけの事情はない。 また、被控訴人は、特許法102条1項に基づく損害額と同額の逸失利益を主張するところ、前記のとおり認定した特許法102条1項に基づく損害額を超える額を認めるに足りる証拠はない。 なお、被控訴人は、ライセンス料も請求するところ、不法行為に基づく損 害賠償請求において、本件業務提携契約に基づくライセンス料を請求できる理由がない。 (2) よって、推定規定によらない損害賠償請求は、損害額の立証がなく、理由がない。 7 争点7(不当利得の成否及び不当利得金の額)について 被控訴人の不当利得返還請求は、不法行為に基づく損害賠償請求が認められないことを条件とする予備的なものであり、また、その請求額は特許法102条3項に基づく損害額と同額であるところ、前記のとおり、本件では特許法102条2項により、同条3項に基づく損害額を上回る損害が認められるので、判断を要しない。 8 弁護士費用及び遅延損害金(1) 弁護士費用について本件特許権侵害の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は、上記2で認めた損害額の1割が相当である。 その額は、各取引ごとに、別紙6認容額計算 金(1) 弁護士費用について本件特許権侵害の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用は、上記2で認めた損害額の1割が相当である。 その額は、各取引ごとに、別紙6認容額計算表「弁護士費用(B)」欄に 記載のとおりである(1円未満切り捨て)。 (2) 遅延損害金の起算日について№2~33については、遅延損害金の起算点は、平成30年11月1日(不法行為の後の日)、№34以降については販売された月の末日であり、別紙6認容額一覧表「起算日」欄のとおりである。 9 損害額のまとめ 以上によると、被控訴人の控訴人に対する請求は、弁護士費用を含めた損害額元本として8億3191万6753円及びこれに対する別紙6認容額一覧表記載の起算日以降の遅延損害金(№●●●●については平成29年法律第49号による改正前の民法所定の年5分、№●●●●●については同改正後の民法所定の年3分)の請求を求める限度で理由がある。 なお、本件仮払が民訴法260条2項の「仮執行の宣言に基づき被告が給付したもの」に該当することについては争いがないところ、上記損害額は、本件仮払の事実を考慮することなく、判断したものであり(最高裁判所昭和36年2月9日第一小法廷判決・民集15巻2号209頁)、併合されている遅延損害金についても同様である(大審院大正15年4月21日判決・民集5巻26 6頁、最高裁判所平成24年4月6日第二小法廷判決・民集66巻6号2535頁)。実体法的にみれば、本件仮払には弁済の提供の効果はあり、その額17億5522万4165円は、本件仮払の時点で控訴人が被控訴人に支払うべき額(遅延損害金1億2903万7210円と合わせ9億6095万3963円)より大きいから、令和5年1月21日 はあり、その額17億5522万4165円は、本件仮払の時点で控訴人が被控訴人に支払うべき額(遅延損害金1億2903万7210円と合わせ9億6095万3963円)より大きいから、令和5年1月21日以降の遅延損害金は発生しないもの と解されるが(この点は被控訴人も特段争っていない。)、確定判決に基づく強制執行の手続において考慮されるべきものである。 第7 当裁判所の判断(民訴法260条2項の申立て関係) 1 以下に掲記の各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 (1) 控訴人代理人は、原判決が言い渡された後の令和5年1月16日送信の 電子メール(乙538)で、被控訴人代理人に対し、原判決主文第3項で命じられた損害賠償について、原判決が取消し又は変更されることを解除条件とする留保付き弁済を同月20日に行うこと、同弁済については、覚書を締結し、判決確定時に控訴人が弁済を命じられる額と、上記弁済額を比較の上、前者が後者を超える場合は控訴人が被控訴人に差額を支払い、両者が同額の 場合は調整不要とし、後者が前者を超える場合は、被控訴人が控訴人に差額 を同月21日以降の年3分の利息を付して支払うことを提案した。 (2) 被控訴人代理人は、同月19日送信の電子メールで、控訴人代理人に対し、覚書の締結を拒絶するとともに、留保付きの弁済を適法な弁済の申し出と考えることはできないが、控訴人が当該弁済を最終的な紛争解決の意思としてするということであれば、本件の紛争を全面的に解決する最終的な和解契約 の提案とその先履行の弁済としてなら受入れ可能との考えを伝えた。 これに対し、控訴人代理人は、同月20日送信の電子メール(甲225)で、被控訴人に対し、被控訴人の返信内容は控訴人に伝えるが、弁済自体 その先履行の弁済としてなら受入れ可能との考えを伝えた。 これに対し、控訴人代理人は、同月20日送信の電子メール(甲225)で、被控訴人に対し、被控訴人の返信内容は控訴人に伝えるが、弁済自体は予定どおり行う旨伝え、本件仮払に至った。 2 民訴法260条2項が仮執行をした原告の原状回復義務及び損害賠償義務に つき特に定めを設けたのは、原告が判決未確定の間に仮執行をするという特別な利益を与えられていることに対応して、右判決が変更された場合、仮執行を利用した原告に対し、被告が仮執行により被った不利益を回復させる義務を課することとするのが公平に適するとの考慮に出たものと認めるべきである(最高裁判所昭和52年3月15日第三小法廷判決・民集31巻2号289頁)。 本件で問題となっているのは、仮執行の宣言に基づき被告が給付した金銭につき、民訴法260条2項に基づく返還義務が生ずる場合に、その金銭を元金とする給付後の利息又は遅延損害金が発生するか否かであるところ、これが「仮執行の宣言に基づき被告が給付したものの返還」(原状回復)に当たらないことは、文言上明らかであり、同項所定の損害の賠償の対象となるか否かが 第一義的に問題となる。 そして、同項は、「仮執行の宣言に基づき」被告が給付したものの返還(原状回復)と「仮執行により又はこれを免れるために」被告が受けた損害の賠償を区別しているところからすると、「仮執行により又はこれを免れるために」被告が受けた損害というためには、単に仮執行宣言がされただけでは足りず、 原告が執行に着手するか、それに準ずる事実関係が必要であると解される。こ のように解することは、仮執行が職権でされることもあること(民訴法259条1項)と整合的である。 控訴人引用 告が執行に着手するか、それに準ずる事実関係が必要であると解される。こ のように解することは、仮執行が職権でされることもあること(民訴法259条1項)と整合的である。 控訴人引用に係る最高裁判所平成22年6月1日第三小法廷判決は、上告人の「仮執行の原状回復及び原状回復を命ずる裁判の申立書」に記載された「被上告人は、上告人に対して、・・・本件原審判決に基づく仮執行を行う予定で あることを通告してきた」という事実について争いのない事案であるから、上記判断と矛盾しない。 3 本件において、原判決は控訴人が10億円の担保を供することを仮執行の条件としているところ、被控訴人は、この担保提供を要する執行に着手していないことはもとより、控訴人に対し執行の意向を示すなど執行の着手に準 ずるような事情があったとも認められない。 したがって、本件では、「仮執行により又はこれを免れるために被告が受けた損害」の発生は認められず、期限の定めのない債務一般の履行遅滞の問題として、履行の請求を受けた時から遅滞に陥るにとどまると解すべきである(民法412条3項)。本件における遅延損害金の起算日は、本判決の送 達の日の翌日と解すべきである。 4 控訴人は、不当利得の規定の類推適用を前提に、民法704条に基づく受領後の利息の発生についても主張するが、被控訴人が本件仮払に係る金銭の受領当時、悪意の受益者であったと認めるに足りる証拠はない。被控訴人が悪意の受益者であったというためには、原判決の仮執行宣言付き給付命令が 取り消されることを現に認識していたことを要すると解されるが、本件の事実関係の下で、そのような事実を認めるには無理があるというほかない。また、当審における審理の過程で、裁判所から原判決変更(認容額の減額)の心証開 を現に認識していたことを要すると解されるが、本件の事実関係の下で、そのような事実を認めるには無理があるというほかない。また、当審における審理の過程で、裁判所から原判決変更(認容額の減額)の心証開示があったからといって、その時点で悪意の受益者になったと認めることも相当でない。 5 本件仮払に係る控訴人の給付額は17億5522万4165円(①)のと ころ、当審における原判決変更後の損害賠償請求の認容額は8億3191万6753円(②)、これを元本として本件仮払の日(令和5年1月20日)までに発生した確定遅延損害金の額は、別紙6認容額計算表「損害金」欄の合計1億2903万7210円(③、1円未満切り捨て)であるから、民訴法260条2項の申立てに基づいて被控訴人に返還を命ずべき額は、7億9 427万0202円(=①-②-③)となる。 第8 結論以上によれば、被控訴人の控訴人に対する請求は、不法行為に基づき8億3191万6753円及び遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却すべきところ、これと異なる原判決を 控訴人の控訴及び被控訴人の附帯控訴に基づき主文1項のとおり変更し、控訴人の民訴法260条2項の申立ては7億9427万0202円及びこれに対する本判決送達の日の翌日から支払済みまで年3分の遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し、その余は棄却することとする。なお、原判決中被告製品の製造販売等の差止め及び廃棄請求を認めた部分は被控訴 人の訴えの取下げにより失効しているから、その旨を明らかにすることとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官 しているから、その旨を明らかにすることとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官宮坂昌利 裁判官 本吉弘行 裁判官岩井直幸 別紙1略語一覧 (略語) (意味)〇本件特許1 :被控訴人を特許権者とする特許第3867108号の特許 ・本件発明1 :本件特許1の特許請求の範囲の請求項1に係る発明・本件訂正発明1 :本件訂正後の本件特許1の特許請求の範囲の請求項1に係る発明・本件明細書等1 :本件特許1に係る明細書及び図面(甲1の2)〇本件特許2 :被控訴人を特許権者とする特許第4601965号の特許 ・本件発明2-1 :本件特許2の特許請求の範囲の請求項13に係る発明・本件発明2-2 :本件特許2の特許請求の範囲の請求項15に係る発明・本件発明2-3 :本件特許2の特許請求の範囲の請求項16に係る発明・本件明細書等2 :本件特許2に係る明細書及び図面(甲2の2)〇本件無効審判 :控訴人が本件特許1について請求した無効審判(無効20 19-800082号)〇本件訂正 :本件無効審判手続において被控訴人が令和3年5月28日付けでした訂正請求に係る訂正(確定済み)〇被告製品 :下記品番の被告製品。控訴人の製造するSDダイサーに被控訴人の製造するSDエンジンを搭載したステ において被控訴人が令和3年5月28日付けでした訂正請求に係る訂正(確定済み)〇被告製品 :下記品番の被告製品。控訴人の製造するSDダイサーに被控訴人の製造するSDエンジンを搭載したステルスダイシ ング装置。ただし、下記原告SDEマークが筐体に付されたものを除く。 1.ML300シリーズ(「ML300」、「ML300EX」、「ML300EXWH」、「ML300PlusWH」、「ML3 00PlusXWH」など、その型番中に「ML300」 を含むもの。)2. ML200シリーズ(「ML200」、「ML200EX」、「ML200EXWH」、「ML200PlusXWH」など、その型番中に「ML200」を含むもの。) 【原告SDEマーク】 ・被告製品(固定) :被告製品のうちウェハ上の所定の区間において対物レンズを所定の高さに固定する方式(AF固定方式)を採用するもの ・被告製品(低追従):被告製品のうちAF追従走査の開始前に対物レンズをウェハ表面の起伏に緩やかに追従させる方式(低追従AF方式)を採用するもの〇本件仮払 :控訴人が、原判決の仮執行宣言付き一部認容判決を受けて、控訴提起後の令和5年1月20日、被控訴人に支払った1 7億5522万4165円(金銭請求に係る原審認容額及び同日までの遅延損害金の合計)の仮払。原判決が履行を命じた債務の存在を争いつつ、原判決が取消し又は変更されることを条件とする留保付き弁済として行われたものである。 以上 別紙2 遅延損害金目録 №請求元本額認容元本額起算日利率●●●●●●●●●●円 ●●●●●●●円平成30 年11 月 以上 別紙2 遅延損害金目録 №請求元本額認容元本額起算日利率●●●●●●●●●●円 ●●●●●●●円平成30 年11 月1 日年5 分●●●●●●●●●●円 ●●●●●●●円平成31 年3 月31 日年5 分●●●●●●●●●●円 ●●●●●●●円令和2 年3 月31 日年5 分●●●●●●●●●●円 ●●●●●●●円令和2 年7 月31 日年3 分●●●●●●●●●円年3 分●●●●●●●●●●円 ●●●●●●●円令和2 年9 月30 日年3 分●●●●●●●●●●円 ●●●●●●●円令和2 年11 月30 日年3 分●●●●●●●●●●円 ●●●●●●●円令和3 年1 月31 日年3 分●●●●●●●●●●円 ●●●●●●●円令和3 年3 月31 日 年3 分●●●●●●●●●円年3 分●●●●●●●●●●円 ●●●●●●●円令和3 年4 月30 日年3 分●●●●●●●●●●円 ●●●●●●●円令和3 年6 月30 日年3 分●●●●●●●●●●円 ●●●●●●●円令和3 年7 月31 日年3 分●●●●●●●●●●円 ●●●●●●●円令和3 年8 月31 日年3 分●●●●●●●●●●円 ●●●●●●●円令和4 年2 月28 日年3 分●●●●●●●●●●円 ●●●●●●●円令和4 年6 月30 日年3 分 別紙3 本件特許1の特許請求の範囲(請求項1) 1 (本件訂正前)ウェハ状の加工対象物の内部に、切断の起点となる改質領域を形成するレーザ加工装置であ 6 月30 日年3 分 別紙3 本件特許1の特許請求の範囲(請求項1) 1 (本件訂正前)ウェハ状の加工対象物の内部に、切断の起点となる改質領域を形成するレーザ加工装置であって、前記加工対象物が載置される載置台と、 レーザ光を出射するレーザ光源と、前記載置台に載置された前記加工対象物の内部に、前記レーザ光源から出射されたレーザ光を集光し、そのレーザ光の集光点の位置で前記改質領域を形成させる集光用レンズと、前記加工対象物のレーザ光入射面から前記加工対象物の厚さ方向に第1の距離 だけ離れた第1の位置にレーザ光の集光点を合わせて、前記加工対象物の切断予定ラインに沿ってレーザ光の集光点を移動させた後、前記レーザ光入射面から前記加工対象物の厚さ方向に第2の距離だけ離れた第2の位置にレーザ光の集光点を合わせて、前記切断予定ラインに沿ってレーザ光の集光点を移動させる機能を有する制御部と、を備え、 前記加工対象物はシリコンウェハであることを特徴とするレーザ加工装置。 2 (本件訂正後)ウェハ状の加工対象物の内部に、切断の起点となる改質領域を形成するレーザ加工装置であって、 前記加工対象物が載置される載置台と、レーザ光を出射するレーザ光源と、前記載置台に載置された前記加工対象物の内部に、前記レーザ光源から出射されたレーザ光を集光し、そのレーザ光の集光点の位置で前記改質領域を形成させる集光用レンズと、 前記加工対象物のレーザ光入射面から前記加工対象物の厚さ方向に第1の距離だけ離れた第1の位置にレーザ光の集光点を合わせて、前記加工対象物の切断予定ラインに沿ってレーザ光の集光点を移動させた後、前記レーザ光入射面か のレーザ光入射面から前記加工対象物の厚さ方向に第1の距離だけ離れた第1の位置にレーザ光の集光点を合わせて、前記加工対象物の切断予定ラインに沿ってレーザ光の集光点を移動させた後、前記レーザ光入射面から前記加工対象物の厚さ方向に第2の距離だけ離れた第2の位置にレーザ光の集光点を合わせて、前記切断予定ラインに沿ってレーザ光の集光点を移動させ る機能を有する制御部と、を備え、前記加工対象物は、シリコン単結晶構造部分に前記切断予定ラインに沿った溝が形成されていないシリコンウェハであることを特徴とするレーザ加工装置。 別紙4(省略) 別紙5限界利益計算書期93B94A94B95A95B96A96B97A97B98A98B99A99B100A販売時期2015/10-2016/32016/4-2016/92016/10-2017/32017/4-2017/92017/10-2018/32018/4-2018/92018/10-2019/32019/4-2019/92019/10-2020/32020/4-2020/92020/10-2021/32021/4-2021/92021/10-2022/32022/4-2022/9売上高直接原価販売手数料販売変動費-1限界利益限界利益率 (省略)別紙6認容額計算表NO.期売上高限界利益率限界利益覆滅後(A)A+B起算日仮払日日数利率損害金(省略) 弁護士費用(B) 合計(省略) 士費用(B) 合計(省略)
▼ クリックして全文を表示