【DRY-RUN】主 文 本件控訴はいずれもこれを棄却する。 理 由 弁護人布施辰治の控訴趣意及び被告人Aの控訴趣意はそれぞれ刷紙記載の通りで ある。 同弁護人の控訴趣意第一
主文 本件控訴はいずれもこれを棄却する。 理由 弁護人布施辰治の控訴趣意及び被告人Aの控訴趣意はそれぞれ刷紙記載の通りである。 同弁護人の控訴趣意第一点について。 しかし、刑事訴訟法第三百三十五条第二項に所謂犯罪の成立を妨げる理由となる事実の主張とは、犯罪構成要件以外の事実であつて法律上犯罪の不成立帰すべき理由である事実上の主張の意義に解すべきものであるから、本件に於て、所論のB労働組合C本部D支部E分会が労働関係調整法(以下単に労調法と略称する)第三十九条第一項の「労働者の団体」に該当しないとの主張は、右のいわゆる犯罪の成立を妨げる理由となる事実上の主張に該当しないこと明かであるのみでなく、原判決の所論説示は、不完全ではあるがB労組E分会が労調法第三十九条第一項の「労働者の団体」に該当するとの趣旨であると認められないこともないから、原判決には所論のような違法はなく、論旨は理由がない同弁護人の控訴趣意第二点及び被告人Aの控訴趣意(1)点について<要旨>法人たる単一労働組合の構成分子であるその支部乃至分会が、組合の決議に基き組合本部の指令に従い本部</要旨>と一体となつて争議を行う場合には、労調法第三十九条の団体責任を問われるものは組合(本部)であるが、組合の決議に基かず若しくはその決議に違反し又はその決議に基く組合本部の指令に違反して、即ち組合本部の統制に違反して、支部乃至分会が本部と独立し独自の決定に従て争議を行う場合には、右争議に付組合本部に特に責むべき事由の認められぬ限り、労調法第三十九条第一項の団体責任の主体となるものは、その支部乃至分会であると解するのを相当とする。蓋し、労調法第三十九条第一項の規定は労働者の団体にも同法第三十七条第一項違反行為に付責任ある行為の主体たること 九条第一項の団体責任の主体となるものは、その支部乃至分会であると解するのを相当とする。蓋し、労調法第三十九条第一項の規定は労働者の団体にも同法第三十七条第一項違反行為に付責任ある行為の主体たることを認め、それは規定自体からみても所謂転嫁罰規定でないこと明かで、それ自体一つの独立的犯罪を規定したものであり、違反行為についての眞の責任者を処罰しようとするのがその趣旨であると共に、同条項は単に労働者の団体と規定し、同条第二項と相俟つて、法人でない団体をも包含すること明かであるところ、法人たる単一労働組合の構成分子であるその支部乃至分会も、組合内部の規律の制約の下に、実質上は労働組合法第二条第五条の要件を具備する独立した事実上の組合たる性格を有し、協約能力も団体交渉能力もあり、争議行為の主体となり、調停の申請もなし得るものというべきだからである。本件においてB労組E分会は中央本部を東京都に置き、全国九地方に各地方本部を、各都道府県に支部を、F株式会社本店支店支社の所在地に分会を置き、更に各職場別に班を置く構成の全国単一組織の組合たる法人のB労働組合の一構成分子であるが、自らの組合分会規約を有し、前記労働組合法の要件を具備する事実上の組合たる性格を有し、原審第二回公判調書中証人Gの、同第三回公判調書中証人Hの、同第四回公判調書中証人Iの各供述記載によれば、地域的問題に付てはB労組E分会執行委員が上位機関との密接な連絡の下に、F株式会社J支店K支社と団体交渉を行い、福島県地方労働委員会に調停申請をしたこともあることが認められ、また、後段認定の如く右E分会がB労組中央本部の統制に違反して独自の決定に徒て本件争議を行い、しかも右争議に付組合中央本部に何等責むべき事由が認められないのであるから、B労組E分会は労調法第三十九条第一項の「労働者の団体」に がB労組中央本部の統制に違反して独自の決定に徒て本件争議を行い、しかも右争議に付組合中央本部に何等責むべき事由が認められないのであるから、B労組E分会は労調法第三十九条第一項の「労働者の団体」に該当するものというに支障なく、而して被告人Lは右E分会の執行委員長の職にあつて同分会を代表し、且つ業務を執行し被告人Aは同副執行委員長として業務を執行し、執行委員長を補佐してきた者であるから、同法条第二項、の「法人でない団体であるときは」の「代表者その他業務を執行する役員」に該当するものというべきである。従て、これに該当するとして労調法第三十九条第一、二項を適用した原判決には所論のような擬律錯誤の違法はなく、論旨は理由がない。 同弁護人の控訴趣意第三点について労働組合が二個の事件につきそれぞれ別個の争議権を獲得した場合には、一事件に付ての争議が解決したのみでは、その事件についての争議権は消滅しても、他の事件についての争議権は当然には消滅しないというべきであること所論の通りであるとしても、本件において、所論の統一労働協約問題は当時F側と平穏裡に交渉中であつて、右統一労働協約要求事件につき獲得した争議権を行使すべき事態にはなく、B労組中央本部も最初より右争議権発動の指令を出しておらなかつたことは、原審第二回公判調書中証人Gの、同第四回公判調書中証人Iの各供述記載により明かであつて(原審第二回公判調書中証人Mの、同第四回公判調書中証人Nの各供述記載は措信し難い)、昭和二十五年三月三十日賃金値上及び冬営手当支払要求事件が妥結した当時まで行われていた争議は、右賃金値上及び冬営手当支払要求事件に付獲得した争議権の行使のみなのであり、所論のように前記統一労働協約要求事件に付獲得した争議権をも併わせ行使して両者不可分的に一個の争議をなしていたものとは認め 右賃金値上及び冬営手当支払要求事件に付獲得した争議権の行使のみなのであり、所論のように前記統一労働協約要求事件に付獲得した争議権をも併わせ行使して両者不可分的に一個の争議をなしていたものとは認められず、他方B労組E分会が同年三月三十一日Fに対してなした最低給四千円、M外七名の休解職者の復職及び馘首は絶対にやらないとの確約を得ることの三項目の要求は、後段第四点に対する判断で説明する如く、新規の要求と認めらるべきもので、同E分会が同日以降同年四月四日迄なした争議はこの新規要求に基いてなしたものであつて、所論のように既に獲得した統一労働協約要求事件に付ての争議権の行使とは認められないのであるから、原判決が右統一労働協約要求事件に付ての争議権に触れなかつたとしても、所論のような理由不備の違法があるとはいえない。所論は統一労働協約要求事件に付て獲得した争議権を行使したことを前提とするものであつて、採用し難く、論旨は理由がない。 同弁護人の控訴趣意第四点、第五点及び被告人Aの理訴趣意(2)点乃至(4)点についてB労組がFに対する賃金値上及び冬営手当支払の要求事件で昭和二十四年十一月十一日中央労働委員会に対し調停の申請を存し法定期間を経過してその争議権を獲得し、之に基き争議中、中央労働委員の斡旋で昭和二十五年三月三十日労使間に、最低給三千円とする全八項目から成る協定を遂げたこと、右争議は妥結したから一切の争議を打切るべき旨のB労組中央本部の指令が同月三十一日午前十時二十分頃B労組E分会に通達されたこと、及びその後同日午後右E分会からFK支社に対し口頭で最低給四千円、M外七名の休解職者の復職及び馘首は絶対やらないとの確約を得ることの三項目の新要求をなし、同日以降同年四月四日迄従来の争議中電源ストを中止し事務ストを行つたことは、原判決挙示の証拠に で最低給四千円、M外七名の休解職者の復職及び馘首は絶対やらないとの確約を得ることの三項目の新要求をなし、同日以降同年四月四日迄従来の争議中電源ストを中止し事務ストを行つたことは、原判決挙示の証拠によりこれを認め得るのであつて、記録を精査しても、E分会がFに対し新規の要求をなしたという趣旨の原判決の事実認定に誤があることは認められない。即ち先ずE分会がFに対し最低給四千円の要求をなした点に付ては、同E分会が賃金値上問題に付従来前記組合本部に対し最低給四千円を主張し、同本部もこれを採りあげて調停申請の要求事項としていたとしても、この問題は既に妥結したものである以上、同E分会が単独にFに対し、同分会従来の歩張を無視した中央の妥結は不満であるから中央の妥結を否認して従来の主張貫徹のためストを続行する旨申入れたことは、同E分会からFに対し最低給四千円という新要求をなしたものと認むべきことは疑を容れないところであつてこれを新たな要求ではなく単なる不満の意思表示であるとは到底解するを得ない。尤もその後同年四月十一日E分会及びFK支社との間の交渉で、同分会のなした争議は賃金問題に付てのストでなく、労働協約問題によるスト権の行使であることを同分会が確認したので云々の旨の回答書が、同F支社から同分会へ交付されたけれども、原審第三回公判調書中証人Oの供述記載によれば、右はE分会の従業員に対する右ストの為停止されていた賃金支払問題に付てなされたものであつて、既に同E分会が独自に新要求に基きなした争議に何等消長を来たすものではない。 又前記E分会からFに対しなした他の二項目の要求たるM外七名の休解職者の復職及び馘首は絶対やらないとの確約を得ることの二点は、所論の前記統一労働協約要求事件につきなされた調停申請の中には包含されていなかつたことは、原判決の引用する原 項目の要求たるM外七名の休解職者の復職及び馘首は絶対やらないとの確約を得ることの二点は、所論の前記統一労働協約要求事件につきなされた調停申請の中には包含されていなかつたことは、原判決の引用する原審第二回公判調書中証人Gの、同第三回公判調書中証人Hの、同第四回公判調書中証人Iの各供述記載及び押収にかかる証第二十一号の調停申請書謄本に徴し、明白であつて、仮に右二項目はE分会がB労組中央本部に対し従来主張してきたもので、統一労働協約要求事件に対し潜在的には関達する問題であるとしても、前記の如くB労組中央本部の調停申請中には何等明確に要求事項となつていないものである以上、E分会がFに対してなした右二項目の要求ま、前記統一労働協約要求事件の要求事項とは別個の新規な要求であると認むべく、所論のように前記統一労働協約要求事件の要求の継続であるとはなし難い。従て猪苗代会のなした争議が前記統一労働協約要求事件につきB労組の獲得した争議権の行使であると認むることを得ない。而してE分会がB労組中央本部の指令を無視して単独に原判示争議を為したことを目して、それは単に組合内部の統制違反の問題であつて、労調法第三十七条違反を以て問擬すべきではないとする所論は畢竟独自の見解であつて、既に前段第二点に対する判断で説明した通りであり、採用に由ない。されば原判決には所論のような審理を尽さない事実誤認や法令の適用を誤つた違法はない。 その他の所論については、原審第四回公判調書中証人Iの供述記載に上れば、賃金値上及び冬営手当支払要求事件の妥結の際この問題で馘首はしないということの了解があり、このことはB労組中央本部から下部組織に伝達さわたことが認められ、又その時の中央本部の争議中止の指令は、その文言自体からみて所論のような曖昧なところはみられないのであつて、B労組中央本部 了解があり、このことはB労組中央本部から下部組織に伝達さわたことが認められ、又その時の中央本部の争議中止の指令は、その文言自体からみて所論のような曖昧なところはみられないのであつて、B労組中央本部は同E分会の行つた本件争議に付何等責むべき事由のあることは認められない。論旨はいずれも理由がない。 なお記録を精査してみても、その他判決を破棄すべき法定の事由あることが認められないから、本件控訴は刑事訴訟法第三百九十六条に従い、いずれもこれを棄却すべきものである。 よつて主文の通り判決する。 (裁判長裁判官中兼謙吉裁判官細野幸雄裁判官岡本二郎)
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