令和5(ワ)70479

裁判年月日・裁判所
令和6年12月19日 東京地方裁判所
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判決文本文10,063 文字)

令和6 年12 月19 日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和5 年(ワ)第70479 号損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和6 年9 月25 日判決 原告株式会社Kindergarten 同訴訟代理人弁護士赤羽健一 被告 A 同訴訟代理人弁護士田村勇人同小林衛司 主文 1 原告の請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は、原告に対し、3495 万2000 円及びこれに対する令和5 年9 月9 日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 本件は、原告が、歯科医師及び歯科医院を対象とするコンサルタント業務等の事業の一内容として、地図情報提供サービス「Google マップ」において表示される店舗や施設についてユーザーが投稿した感想、評価等の情報(以下「Google 口コミ」という。)を有償で削除するサービス(以下「原告サービス」といい、その際に原告が用いている手法を「原告手法」という。)を行っているところ、被告 が、原告の営業秘密である原告手法につき、第三者に開示しない旨を原告に約し た上で(以下、この合意を「本件合意」という。)開示を受けたにもかかわらず、これを第三者に開示した行為は、不正競争(不正競争防止法(以下「不競法」という。)2 条1 項4 号)に当たると共に本件合意に反すると主張して、被告に対し、不競法4 条(若しくは不法行為)又は債務 これを第三者に開示した行為は、不正競争(不正競争防止法(以下「不競法」という。)2 条1 項4 号)に当たると共に本件合意に反すると主張して、被告に対し、不競法4 条(若しくは不法行為)又は債務不履行に基づき、3495 万2000 円の損害賠償及びこれに対する訴状送達の日の翌日である令和5 年9 月9 日から 支払済みまで民法所定の年3%の割合の遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(証拠等を掲記しない事実は、当事者間に争いがないか、弁論の全趣旨により容易に認められる。)(1) 当事者ア原告は、経営コンサルティング業等を目的とする株式会社であり、歯科医 師及び歯科医院を対象とするコンサルタント業務等を行っている。 原告は、そのような事業の一内容として、歯科医院を営む事業者を顧客として、当該歯科医院に係るGoogle 口コミを表示させないようにする業務を受託して対価を得る事業(原告サービス)を展開していた。 イ被告は、歯科医師であり、また、歯科医師を対象とするオンラインサロン 「D」(以下「d」という。)を主宰し、運営している。 (2) 被告は、動画投稿サイト「YouTube」に、「【Google 口コミの闇】歯科医院のGoogle 口コミマッチポンプ問題に、法律の専門家(C弁護士)×WEB の専門家が切り込む!」と題する動画(以下「被告動画」という。)を投稿した。同動画には、原告が歯科医院宛てに送付した原告サービスに関するダイレクトメー ル(DM)が映し出されていた。 原告は、被告動画が原告の名誉・信用を毀損するものであるとして、令和3年8 月31 日、当庁に対し、被告を債務者として、被告動画の削除を求める仮処分命令を申し立てた(当庁令和3 年(ヨ)第2741 号。以下「別件仮処分事件 誉・信用を毀損するものであるとして、令和3年8 月31 日、当庁に対し、被告を債務者として、被告動画の削除を求める仮処分命令を申し立てた(当庁令和3 年(ヨ)第2741 号。以下「別件仮処分事件」という。)。(甲4、20、弁論の全趣旨) (3) 別件仮処分事件に係る申立書を受領した被告は、同年9 月23 日、原告の運 営するウェブサイトの問合せフォームに以下の記載(「/」は改行部分を示す(以下同じ。)。)を含む文章を投稿すると共に(以下、この投稿による問合せを「本件問合せ」という。)、原告代理人(債権者代理人)に対し、これと同じ内容のメールを送付した。(甲1)「このたび、株式会社Kindergarten 様を債権者とする、YouTube 動画の削除 仮処分申し立てを受領し、その件についてご相談をさせて頂ければと思い連絡をさせて頂いた次第です。/具体的には動画削除の前に、Kindergarten 様が行われているGoogle 口コミ削除のスキーム詳細について聞かせて頂き、その上で判断をさせて頂くことはできないか?ということです。/Kindergarten様が行われている口コミ削除のスキームが法的、社会通念上問題の無いもので あれば完全に当方に非がありますので、Kindergarten 様から直接スキーム詳細をお聞かせ頂いた旨、その内容が法的、社会通念上問題の無いものであった旨を、例えばYouTube、SNS 等で明言する等の方法で謝罪をさせて頂きたく思っております。…/当然ですが、お聞かせ頂いたスキームは一切口外いたしませんし、万が一口外した場合の補償などを設けて頂いても問題ございません。 /…「Google 口コミに多くの医院が悩まされている、マッチポンプ業者も存在する」という事実、その問題提 外いたしませんし、万が一口外した場合の補償などを設けて頂いても問題ございません。 /…「Google 口コミに多くの医院が悩まされている、マッチポンプ業者も存在する」という事実、その問題提起も必要なことだと考えておりますので、スキーム詳細をお聞かせ頂くことが不可能な場合は、今回の動画、当方の行為が法的にどのように判断されるのか、司法の判断に委ねたいと考えております。/動画削除の前に、Kindergarten 様が行われているGoogle 口コミ削除のスキー ム詳細について聞かせて頂き、その上で判断をさせて頂くことはできないか? ということにつきまして、ご検討頂けますと幸いです。」(4) 原告は、被告の上記申出を受け、原告手法の内容を説明した「手引き」(甲3。以下「本件説明書」という。)を作成した上、同年10 月8 日頃、別件仮処分事件の疎明資料として提出すると共に、被告に対して送付した。 本件説明書によれば、原告手法は、Google 口コミの削除を希望する顧客自身 により、自身の「Google マイビジネス」(現在の名称は「Google ビジネスプロフィール」)を開いた上で、「閉業マークを付ける」のボタンをクリックし、同ページ上に閉業マークが付いたことを確認することを指示するものであった。 (以上につき、上記のほか、甲2、20、原告代表者)(5) 被告は、同年11 月10 日、dの会員に対し、「Google 口コミ削除業者が実際 に行なっている手法、4 つ公開!」と題する記事(甲8。以下「本件被告記事」という。)を配信し、Google 口コミ削除業者が行っているとする口コミ削除の手法についての情報提供をした。本件被告記事には、その手法の1 つとして、「①閉院したことにして再登録」との見出し 事」という。)を配信し、Google 口コミ削除業者が行っているとする口コミ削除の手法についての情報提供をした。本件被告記事には、その手法の1 つとして、「①閉院したことにして再登録」との見出しの下、「※Google ビジネスプロフィール(旧Google マイビジネス)で自院のオーナー登録が済んでいることが 前提/・自院のオーナー登録した際のGoogle アカウントにログイン。/・Google マップ等から自院のビジネスプロフィール編集画面に移動。/・「営業時間」をクリックして、「閉業」を選択。/・医院情報(ビジネス情報)を新規登録する。」との記載がある。 (6) 同年12 月3 日に実施された別件仮処分事件の審尋期日において、原告と被 告との間に、被告が被告動画を削除すること、被告が被告動画を再掲する際には、被告動画のうち原告のDM が映し出されている部分をマスキングすること等を内容とする和解が成立した。(甲4) 2 争点及びこれに関する当事者の主張(1) 原告手法の営業秘密該当性 (原告の主張)以下のとおり、原告手法は、秘密管理性、非公知性及び有用性を満たす技術上又は営業上の情報であり、原告の「営業秘密」(不競法2 条6 項)に当たる。 ア秘密管理性原告手法を記載したマニュアル等の文書は存在しないものの、原告は、原 告手法の流出を防ぐため、原告手法に関与する従業員の数を最小限(約5 人) に抑えると共に、従業員に秘密保持誓約書を提出させて原告手法を管理している。また、原告は、就業規則上の秘密保持条項により、従業員に対し、秘密情報の漏洩を禁止している。さらに、原告が顧客との間で締結する原告手法の利用契約(業務委託契約)には、契約の相手方当事者に関する情報を第三者に開示 就業規則上の秘密保持条項により、従業員に対し、秘密情報の漏洩を禁止している。さらに、原告が顧客との間で締結する原告手法の利用契約(業務委託契約)には、契約の相手方当事者に関する情報を第三者に開示してはならない旨の秘密保持条項が設けられている。 イ非公知性原告手法は公然と知られていないものであった。 ウ有用性インターネット上には他人の名誉信用を毀損するような悪質な口コミが横行しているところ、原告手法は、悪質な口コミを削除するためのノウハウ として、現代社会において極めて重要かつ有用である。 (被告の主張)ア秘密管理性について不知ないし争う。原告が原告手法に関与する従業員を約5 人に抑えていることは立証されていない。また、秘密保持誓約書や就業規則にノウハウの管 理について記載があったとしても、当該記載は抽象的なものに過ぎず、具体的な原告手法の管理状況等は不明である。加えて、原告手法は誰でも実施可能な方法であるから、秘密として管理されているものとは推測されない。 イ非公知性について争う。原告手法は、別件仮処分事件において本件説明書が提出された令和 3 年10 月8 日より前からインターネット上に公開されていた。また、被告も自身の運営するウェブサイトでこれを公開していた。 ウ有用性について原告手法の重要性ないし有用性は争う。実際に原告手法を用いてGoogleマイビジネス(現在のGoogle ビジネスプロフィール)に閉業マークをつけ たとしても、口コミが削除されるものではない。また、原告自身が悪質な口 コミへの対策として行っていた方法は、Google マップ上に存在する原告の情報を、本来の企業の住所地から全く別の住所地に移転させた上、表示名も変更 ではない。また、原告自身が悪質な口 コミへの対策として行っていた方法は、Google マップ上に存在する原告の情報を、本来の企業の住所地から全く別の住所地に移転させた上、表示名も変更させることで、Google マップの閲覧者からは自社であると判断できないようにするものと推測される。このように、原告自身が原告手法を用いていないこと自体、原告手法に有用性がないことの証左である。 (2) 本件合意の成否及びその違反の有無(原告の主張)ア被告が令和3 年当時YouTube に掲載した被告動画は、他人の営業に関して自ら悪質な口コミを書き込んだ者が当該他人に対して自ら有償での口コミ削除を持ち掛ける手法(以下「マッチポンプ商法」という。)に関する場面 の中で原告のDM を映し出していたため、原告がマッチポンプ商法を行っていると受け取られかねない状況であった。そこで、原告は、被告動画の削除を求めて別件仮処分事件を申し立てたところ、被告から原告に対して本件問合せがあった。原告は、一刻でも早く被告動画を削除し、口コミ削除業を守るという目的から、被告の提案に応じ、被告に対して原告手法を開示した。 このような経過において、被告は、本件問合せの文章中に「Google 口コミ削除のスキーム詳細について聞かせて頂き…当然ですが、お聞かせ頂いたスキームは一切口外いたしませんし、万が一口外した場合の補償などを設けて頂いても問題ございません。」とあるように、原告手法の非公開を約束した。すなわち、原告と被告との間に、原告が開示した原告手法を被告は第三者に開 示しない旨の合意(本件合意)が成立した。 イ被告がdの会員に対して配信した本件被告記事により公開されたGoogle口コミ削除業者の4 つの手法のうち、「①閉院したこと を被告は第三者に開 示しない旨の合意(本件合意)が成立した。 イ被告がdの会員に対して配信した本件被告記事により公開されたGoogle口コミ削除業者の4 つの手法のうち、「①閉院したことにして再登録」は、所在地及び名称の変更を行わず閉業マークをクリックするだけの手法であり、原告手法と同一である。したがって、被告は、本件被告記事の配信によ り原告手法を公開し、本件合意に違反したから、この行為と相当因果関係が ある原告の損害について債務不履行責任を負う。 (被告の主張)ア本件合意は有効に成立しておらず、被告は、原告手法を公開しない債務を負わない。 本件問合せにおいて、被告は、原告から聞いたスキームの非公開を提案し たのみであり、原告と合意したものではない。本件問合せの時点では既に別件仮処分事件が申し立てられており、原告にはスキームの非公開についても合意する機会があったにもかかわらず、別件仮処分事件の和解において不口外条項が設けられていないことから、当時、原告と被告との間においては、公開の有無について関心がなかったといえる。 また、原告手法は公知のものであったところ、ある情報の非公開が意味を成すのはその情報が公知でないからである。このため、その場合の情報非公開の合意は、「当該情報が非公知である場合」という解除条件が潜在的に付されているはずであり、既に公知である情報の非公開の合意は、そもそも無効な合意である。 イ仮に原告と被告が原告手法の非公開について合意をしたとすれば、その合意は、「原告がどのような手法を用いているかを公開しない」という内容のものである。しかし、本件被告記事には、原告の名称や原告を特定できる情報は記載されていない。このため、本件被告記事で公開されている手法が 「原告がどのような手法を用いているかを公開しない」という内容のものである。しかし、本件被告記事には、原告の名称や原告を特定できる情報は記載されていない。このため、本件被告記事で公開されている手法が原告のものであると知ることはできない。したがって、被告による上記合意上 の債務の不履行はない。 (3) 原告の損害(原告の主張)ア逸失利益 2995 万2000 円原告は、顧客との間の業務委託契約に基づき、月額5 万円の利用料を取得 している。その契約期間は6 か月であるが、自動更新されるケースが多い。 歯科医師又は歯科医院に限定した契約者数の推移をみると、被告が原告手法を開示した令和3 年11 月を境に、原告は、本来であれば成約できた月間8.32 件の契約の機会を喪失したことがうかがわれる。 そうすると、原告は、少なくとも令和3 年11 月から令和4 年10 月までの1 年間にわたる99.84 件分(8.32 件×12 か月)の利益を喪失したことに なるから、その逸失利益は、2995 万2000 円(30 万円×99.84 件)となる。 イ無形の損害 500 万円原告は、令和3 年11 月以降の業績の落ち込みから、令和4 年9 月、従業員に対し退職勧奨やシフト削減の提案をした。これを受けて、同年11 月21日に東京労働局より聞き取り調査が入り、原告代表者はその調査に対応せざ るを得なくなるなど、原告の社内は大混乱となった。このような事態に伴う原告の無形損害は500 万円を下らない。 (被告の主張)不知ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(原告手法の営業秘密該当性)(1) 非公知性についてアまず、証拠(乙8)及び弁論の全趣旨に い。 (被告の主張)不知ないし争う。 第3 当裁判所の判断 1 争点(1)(原告手法の営業秘密該当性)(1) 非公知性についてアまず、証拠(乙8)及び弁論の全趣旨によれば、令和2 年9 月20 日、「【悪用厳禁】Google マップのクチコミを確実に削除・リセットする方法」と題する記事(乙8。以下「乙8 記事」という。)がインターネット上で公開された ことが認められる。 乙8 記事は、Google 口コミを削除等する手法の1 つとして「B:クチコミがすべてリセットされてしまうが確実な手法」を紹介している。その具体的方法として、①店名その他の情報を変更する(B-1)、②閉業する(B-2)、③新規に店舗を作成する(B-3)という3 つの手順が記載されているところ、 このうち①については、後で検索から見つからないようにするための手順で ある旨の説明が付されている。また、①に関連して、「できれば住所などの主要な情報も書き換えておくとベターです。」との記載もある。他方、③は、全く新しい店舗として再作成するというものである。このように、①の手順は既存の店舗の名称、住所等の情報を変更するものに過ぎず、③の手順も既存の店舗の表示に影響を与えるものではない。このため、上記手法において、 既存の店舗に係るGoogle 口コミの削除は、②の手順によりもたらされるものと理解される。そうすると、乙8 記事は、②の手順によりGoogle 口コミを削除し得ることを開示するものといえる。 原告手法は、店舗(歯科医院)を営む事業者がGoogle マイビジネスで自ら自己の店舗に閉業マークを付け、Google マップ上は閉業したことにする というものであるところ、乙8 記事記載の②の手順は、店舗を営む事業 院)を営む事業者がGoogle マイビジネスで自ら自己の店舗に閉業マークを付け、Google マップ上は閉業したことにする というものであるところ、乙8 記事記載の②の手順は、店舗を営む事業者が自ら実行する場合、原告手法と異ならない。そうすると、乙8 記事は、実質的には、原告手法によりGoogle 口コミを削除し得る旨の情報を包含するものということができる。 イ証拠(乙3、9、12、被告本人)及び弁論の全趣旨によれば、令和3 年7 月 6 日、「全ての投稿と口コミを削除したいのですが、閉業を押せばリセットできますか?」との質問をGoogle マイビジネスの公開ヘルプコミュニティに投稿した者がいること、Google マイビジネス上で店舗を閉業させることがGoogle 口コミの削除に用いられる手法の1 つであることは、同年10 月以前から、インターネット検索を通じて容易に検索可能な情報であったこと、被 告自身、原告から原告手法の開示を受ける前からその手法の存在を知っていたことが認められる。 ウ以上によれば、原告手法は、原告がこれを被告に開示するより前から、Google 口コミを削除する手法として公然と知られていたものと認められる。 したがって、原告手法は「営業秘密」(不競法2 条6 項)に当たらない。 エこれに対し、原告は、乙8 記事記載の手法は一般ユーザー画面を前提とし たものであり、原告手法とは異なるなどと指摘する。 しかし、乙8 記事は、「B:クチコミがすべてリセットされてしまうが確実な手法」を紹介するに当たり、「以下の手順では、店舗オーナーの場合は別の管理画面から情報を修正することもできますが、簡単のため一般ユーザー画面で説明します。」としており、店舗オーナーがアカウントにログ 手法」を紹介するに当たり、「以下の手順では、店舗オーナーの場合は別の管理画面から情報を修正することもできますが、簡単のため一般ユーザー画面で説明します。」としており、店舗オーナーがアカウントにログインして 操作する場合をも想定して、Google 口コミ削除の手法を解説するものであるから、この点に関する原告の指摘は当たらない(なお、上記記載は「B-1.店名その他の情報を変更する」との見出しの下部に記載されたものであるが、「「B.クチコミがすべてリセットされてしまうが確実な手法」をご紹介します。」との本文の記載に続いて置かれていることなどに鑑みると、「B.クチコ ミがすべてリセットされてしまうが確実な手法」の各手順に共通するものと理解される。)。 その他原告の主張を裏付けるに足りる具体的な事情は認められないから、この点に関する原告の主張は採用できない。 (2) 小括 以上のとおり、原告手法は非公知性を欠き「営業秘密」に当たらないことから、その余の点につき論ずるまでもなく、被告による本件被告記事の配信をもって「不正競争」(不競法2 条1 項4 号)に当たるということはできない。したがって、原告は、被告に対し、不競法4 条(又は不法行為)に基づく損害賠償請求権を有しない。 2 争点(2)(本件合意の成否及びその違反の有無)(1) 本件合意の成否について前提事実、証拠(甲20、原告代表者)及び弁論の全趣旨によれば、原告代表者は、被告動画の削除を求めて別件仮処分事件の申立てをした後、令和3 年9月23 日に被告から本件問合せを受け、原告がマッチポンプ商法等の悪質な行 為を行っていないことを被告に理解してもらい、被告動画を削除してもらうた めに原告手法を開示することとし、同年10 被告から本件問合せを受け、原告がマッチポンプ商法等の悪質な行 為を行っていないことを被告に理解してもらい、被告動画を削除してもらうた めに原告手法を開示することとし、同年10 月8 日頃、本件説明書を被告に送付したことが認められる。また、本件問合せにおいて、被告は、原告に対し、「当然ですが、お聞かせ頂いたスキームは一切口外いたしませんし、万が一口外した場合の補償などを設けて頂いても問題ございません。」と申し出ていたものである。 しかし、そもそも、秘密保持契約の締結に当たっては、情報の開示を受ける者(以下「被開示者」という。)が既に保有している情報や公知の情報については秘密保持の対象から除外し、被開示者によるこれらの情報の利用が制限されないようにすることが合理的であり、かつ、一般的と考えられる。本件問合せにおける上記申出も、本件問合せ全体の趣旨を踏まえると、これを前提として、 原告に対して原告手法の開示を求めるに当たっての誘因として提示されたものに過ぎないと理解される。したがって、この申出の存在及び原告による原告手法の開示をもって直ちに本件合意の成立を認めることはできない。また、原告手法の開示に当たり、原告が被告との間で秘密保持契約の締結を目的とした協議等を行ったことや、本件説明書の被告への送付に際し、原告手法の取扱い について留保や制限等を付したことをうかがわせる事情も見当たらない。別件仮処分事件での和解においても、原告手法に係る秘密保持条項その他第三者に対する非開示に関する条項は設けられていない。 加えて、被告に対する開示当時、原告手法が公知のものであったことは、前記認定のとおりである。 以上の事情を総合的に考慮すると、少なくとも被告に対する開示当時既に公知の情報であっ 加えて、被告に対する開示当時、原告手法が公知のものであったことは、前記認定のとおりである。 以上の事情を総合的に考慮すると、少なくとも被告に対する開示当時既に公知の情報であった原告手法について、第三者に対する非開示を定める本件合意が原告と被告との間で成立していたとは認められない。これに反する原告の主張は採用できない。 (2) 小括 以上のとおり、原告と被告との間における本件合意の成立が認められない以 上、被告による本件被告記事の配信につき、原告は、被告に対し、本件合意上の債務の不履行に基づく損害賠償請求権を有しない。 第4 結論よって、原告の請求はいずれも理由がないから、これらをいずれも棄却することとして、主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第47 部 裁判長裁判官杉浦正樹 裁判官細井直彰 裁判官志摩祐介

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