主文 1 原告らの請求をいずれも棄却する。 2 訴訟費用は原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 被告らは,原告X1に対し,連帯して1億1210万8540円及びこれに対する平成20年9月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告らは,原告X2に対し,連帯して2894万円及びこれに対する平成20年9月30日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告国は,原告X1に対し,300万円及びこれに対する平成27年1月20日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要以下,本判決においては,主な固有名詞等について,別紙「略語一覧表」記載のとおり表記する。 1 事案の要旨(1) 請求の趣旨1項及び2項にかかる請求について請求の趣旨1項及び2項にかかる請求は,本件刑事事件において一旦有罪判決を受けたものの,再審において無罪判決を受けた原告X1及びその妻である原告X2が,本件刑事事件にかかる警察官の捜査,検察官による公訴提 起,公判維持行為及び勾留の継続並びに裁判官による判決行為がいずれも違法であって,共同不法行為を構成すると主張し,国家賠償法1条1項に基づき,これらの各行為によって原告X1が被った損害合計1億1210万8540円及び原告X2が被った損害2894万円並びにこれらに対する不法行為日である平成20年9月30日から支払済みまで民法所定の年5分の割合 による遅延損害金の支払を各求めるものである。 (2) 請求の趣旨3項にかかる請求について請求の趣旨3項にかかる請求は,原告X1が,本件刑事事件の再審請求審において,検察官が裁判所から証拠一覧表を交付 の支払を各求めるものである。 (2) 請求の趣旨3項にかかる請求について請求の趣旨3項にかかる請求は,原告X1が,本件刑事事件の再審請求審において,検察官が裁判所から証拠一覧表を交付するよう命じられたにもかかわらずこれを拒否したのは,原告X1の証拠一覧表を利用する権利を侵害し,違法であると主張して,国家賠償法1条1項に基づき,精神的損害とし て300万円及びこれに対する不法行為日である平成27年1月20日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるものである。 2 前提事実当事者間に争いがないか,後掲各証拠及び弁論の全趣旨により認定できる事 実は,次のとおりである。 (1) 原告らの家族関係ア原告X2は,原告X1の妻である。 イ A子及びB男は,原告X2の孫であり,かつ,原告らの養子である。また,B男は,A子の実兄である。 A子らは,平成7年頃から本件刑事事件の捜査が行われた平成20年頃の間,原告らの住居において,原告ら及び原告X1の母と共に生活していた(甲37の2・4頁,40の2・1頁)。 ウ Eは,原告X2の実子であり,かつ,A子及びB男の実母である。Eは,平成7年頃,A子らを原告らに預けて,A子らの実父から逃れ,平成9年 頃,同人と離婚して,Fと再婚した(甲40の2・1頁,乙13別紙速記録・2ないし3頁)。 平成21年7月頃,Fは,A子らと養子縁組をした(甲40の2・1頁)。 (2) 本件刑事事件の捜査及び公判の経過ア A子は,平成20年8月26日,大阪府警察Q警察署の司法警察員に対 して,原告X1から強制わいせつの被害を受けたとして,本件強制わいせ つ事件につき告訴した。また,同月 過ア A子は,平成20年8月26日,大阪府警察Q警察署の司法警察員に対 して,原告X1から強制わいせつの被害を受けたとして,本件強制わいせ つ事件につき告訴した。また,同月27日には,Eも,A子から被害状況を聞き取ったとして,本件強制わいせつ事件につき告訴した(甲8の1)。 イ原告X1は,平成20年9月頃,本件強制わいせつ事件の被疑者として逮捕,勾留され,同月30日に起訴された(甲6の1,52の1,54)。 ウ A子は,平成20年9月29日,検察官に対し,原告X1から強姦の被 害を受けたとして,本件強姦事件につき告訴した(甲8の1)。 エ原告X1は,平成20年10月頃,本件強姦事件の被疑者として逮捕,勾留され,同年11月12日に起訴された(甲6の2,52の2,54)。 オ原告X1は,平成21年5月15日,懲役12年の実刑判決の言い渡しを受け,これに対して,控訴,上告したが,平成22年7月21日に控訴 棄却の判決,平成23年4月21日に上告棄却の決定がされ,本件第1審の実刑判決が確定した(甲3ないし5)。 (3) 本件再審請求審及び本件再審の経過等ア原告X1は,平成26年9月12日,A子らの供述が虚偽であったことが明らかとなったとして,大阪地方裁判所に再審を請求した(甲28)。 イ原告X1は,平成26年11月18日,刑の執行が停止され,釈放された(甲29,54)。 ウ原告X1は,平成27年2月27日,再審開始決定を受け,さらに同年10月16日には本件再審において無罪判決を受けて,当該判決が確定した(甲1,2)。 エ原告X1は,平成27年11月12日,大阪地方裁判所に対し,刑事補償を請求し,平成28年2月18日,2826万250 審において無罪判決を受けて,当該判決が確定した(甲1,2)。 エ原告X1は,平成27年11月12日,大阪地方裁判所に対し,刑事補償を請求し,平成28年2月18日,2826万2500円の刑事補償の決定を受けた(甲54)。 オ原告らは,平成28年10月5日,本件訴訟を提起した(顕著な事実)。 3 争点 (1) 警察官による本件刑事事件にかかる捜査の違法性(争点1) (2) 本件各公訴提起の違法性(争点2)(3) 本件公判検事らによる公訴維持及び勾留継続の違法性(争点3)(4) 本件担当裁判所による判決行為の違法性(争点4)(5) 本件交付拒否行為の違法性(争点5)(6) 原告らに生じた損害の有無及びその額(争点6) 4 争点に対する当事者の主張(1) 争点1(警察官による本件刑事事件にかかる捜査の違法性)について(原告らの主張)本件刑事事件にかかる捜査は,以下のとおり,司法警察職員に認められる合理的裁量を逸脱したものであり,国家賠償法上違法である。 なお,警察官によるかかる違法行為は,後に主張するP1検事,本件公判検事ら及び本件担当裁判所の各行為と共同不法行為となる。 ア一般的に年少者は,家族や捜査官に誘導されやすく,取調べを行う際には,専門家を関与させること,事情聴取を早い時期に行ったうえで繰り返さず,聴取時には自由供述させること,ビデオによる記録を行ったうえで 後に鑑定すること等の配慮が必要不可欠である。警察官が,そのような配慮をしないまま,年少者の虚偽供述を証拠化した場合には,原則として重大な過失により職務上の義務を怠ったと推定すべきである。 本件刑事事件にかかる捜査が行われた当時,A子らは年少者で が,そのような配慮をしないまま,年少者の虚偽供述を証拠化した場合には,原則として重大な過失により職務上の義務を怠ったと推定すべきである。 本件刑事事件にかかる捜査が行われた当時,A子らは年少者であったから,K1巡査部長がA子らの取調べを行うに当たっては,同人らの供述を 誘導することがないよう専門家を関与させる等の配慮をし,虚偽供述を証拠化しないようにすべき職務上の義務があった。それにもかかわらず,K1巡査部長は,専門家を取調べに関与させる等の配慮をしないまま,A子らの虚偽供述を録取した供述調書を作成したのであるから,重大な過失により職務上の義務を怠ったというべきである。 イ本件刑事事件にかかる捜査が行われていた平成20年8月29日には, 本件カルテがすでに作成されていたものであるところ,当該カルテには,「処女膜は破れていない」との記載があり,A子が強姦被害にあっていなかったことを示す重要な証拠であるといえる。したがって,警察は,当該カルテを消極証拠として収集すべき職務上の義務があったところ,故意又は過失によって本件カルテの収集を怠った。 (被告大阪府の主張)ア警察官が本件カルテを証拠として収集していないことは認め,その余は否認ないし争う。 イ警察官が年少者を取り調べるに当たって,専門家を関与させることが義務付けられているわけではない。また,本件刑事事件を担当したK1巡査 部長が,本件強制わいせつ事件についてA子らを取り調べるにあたり,年少者の取調べに必要な配慮を欠いたことはない。まして,関連証拠と整合するようにA子らの供述を誘導したことはなく,A子らが虚偽の供述をするに至ったのは,K1巡査部長による取調べが原因ではない。 したがって,K1巡査部長による取調べ 。まして,関連証拠と整合するようにA子らの供述を誘導したことはなく,A子らが虚偽の供述をするに至ったのは,K1巡査部長による取調べが原因ではない。 したがって,K1巡査部長による取調べが国家賠償法上違法となること はない。 ウまた,警察官は,A子やEから,H医院を受診したことや処女膜が破れていないとの診断を受けたことを伝えられておらず,本件カルテの存在を認知することができない状況にあった。そのため,警察官が本件カルテを収集できなかったのはやむを得ないことであり,国家賠償法上違法とはい えない。 (2) 争点2(本件各公訴提起の違法性)について(原告らの主張)ア強姦事案において,最も重要な証拠は性器の状態に関する客観的証拠である。さらに,本件刑事事件においては客観的証拠が乏しく,被害者も年 少者であって,供述が変遷したり,内容が不合理であったりと,その供述 の信用性は高くなかった。このような状況の下では,P1検事は,処女膜の状況を適切に診断できる専門技能を有した医師にA子の診断をさせるべきであった。このような捜査を行っていれば,A子の性器に性的被害の痕跡が存在しないことが明らかになっていたはずである。 また,平成20年9月25日,P1検事の指示でA子が受診したIクリ ニックのG医師は,「処女膜裂傷」,「上記診断と考えます」という内容の本件診断書を作成した。一方,A子の供述を前提とすれば,A子は強姦被害に繰り返し遭っていたのであるから,この時点で処女膜裂傷があるというのは不可解である。そのため,P1検事は,G医師から診断結果の具体的内容について直接聴取すべきであった。このような捜査を行っていれば, 本件診断書の作成に当たり,A子の診察ができていなか いうのは不可解である。そのため,P1検事は,G医師から診断結果の具体的内容について直接聴取すべきであった。このような捜査を行っていれば, 本件診断書の作成に当たり,A子の診察ができていなかったことが明らかとなり,再度専門技能を有する他の医師に診察を依頼することになったはずであり,その結果,上記と同様に,A子の性器に性的被害の痕跡が存在しないことが明らかになっていたはずである。 さらに,P1検事は,Eから,A子を別の産婦人科にも連れて行ったこ とを聴取しているのであるから,当該産婦人科の所在や診断結果を捜査すべきであった。このような捜査を行っていれば,本件カルテの存在が明らかとなり,これを入手できたはずである。 イ以上のとおり,A子に処女膜裂傷がない旨の診断書や本件カルテは,通常要求される捜査によって獲得できる証拠であって,これらの証拠を総合 勘案すれば,本件刑事事件について,原告X1に,合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑は存在しなかった。それにもかかわらず,P1検事は本件刑事事件について,原告X1を被告人として起訴しているのであるから,本件各公訴提起は国家賠償法上違法である。 (被告国の主張) ア G医師が本件診断書を作成したこと,本件診断書に「処女膜裂傷」,「上 記診断と考えます」という記載があることは認め,その余は否認ないし争う。 イ P1検事は,警察官であれば性犯罪被害者の診察に慣れている産婦人科医を把握していると考え,適切な産婦人科医を選定し,かつ,A子に当該産婦人科医の診察を受けさせる捜査を警察官に指示している。その結果, 十分能力を有したG医師によって作成された本件診断書を入手していた。 また,P1検事は,本件診断書の内容につき,処女膜裂傷に 該産婦人科医の診察を受けさせる捜査を警察官に指示している。その結果, 十分能力を有したG医師によって作成された本件診断書を入手していた。 また,P1検事は,本件診断書の内容につき,処女膜裂傷には陳旧性のものを含むと理解していたうえ,A子も診察状況について具体的かつ詳細な供述をしていたことから,本件診断書の内容を疑うべき特段の事情はなかった。そのため,P1検事において,本件診断書及びA子の供述をふまえ ても,なお専門家による診察が必要と考えられる状況にはなかった。 さらに,P1検事が,Eから,A子が別の産婦人科を受診していた事実を聴取したのは平成20年9月25日であるところ,P1検事は,その時点で既にA子にIクリニックを受診させる手配を済ませており,近日中にその診断結果を得られる見込みであった。また,一般人が強姦被害につい て申告する前に産婦人科で処女膜裂傷の有無を確認していることは少なく,当該別の産婦人科において処女膜についての検査がされていることは想定できなかったのであり,当時,P1検事が,Eから別の産婦人科の所在やそこでの診断結果等を聴取しなかったのはやむを得ない。 ウ以上のとおり,本件刑事事件において,G医師の直接聴取等は通常要求 される捜査に該当せず,本件カルテは通常要求される捜査を遂行すれば収集し得た証拠に該当しない。 そして,本件刑事事件において,A子の供述は,被害について具体的に述べているうえ,B男の供述とも合致しており,特段不自然な点はない。 これに対して,原告X1は,インポテンツについて医師に相談したことも ないのに相談したことがある等と虚偽の供述もしており,同人の供述は信 用性が認められなかった。 したがって,第1起訴,第2起訴当時における証拠資料を総合 いて医師に相談したことも ないのに相談したことがある等と虚偽の供述もしており,同人の供述は信 用性が認められなかった。 したがって,第1起訴,第2起訴当時における証拠資料を総合勘案すれば,合理的な判断過程により原告X1が有罪と認められる嫌疑が存在し,本件各公訴提起は国家賠償法上違法とはいえない。 (3) 争点3(本件公判検事らによる公訴維持及び勾留継続の違法性)について (原告らの主張)P2検事は,本件診断書を証拠調べ請求したうえ,後に撤回するという行動に出ていることから,本件刑事事件において中核となるA子の性器の状態に関する客観的証拠が欠如していることを認識することができたはずである。 また,P3検事は,控訴審弁護人が,EがA子を産婦人科に連れて行ったと いう事実を具体的に指摘し,さらに,これに関する証拠開示請求も行っていることから,当該産婦人科の所在やその診断結果が捜査されていないことを認識できたはずである。 本件公判検事らは,このような認識があったにもかかわらず,必要な補充捜査を行わず,漫然と公訴を維持したのであるから,同人らによる公訴の維 持及び勾留の継続はいずれも国家賠償法上違法である。 (被告国の主張)公訴の提起が違法でないならば,本件公判検事らによる公訴維持行為及び勾留継続行為についても,原則として違法との評価を受けないと解すべきところ,争点2において述べたように,本件各公訴提起は適法であるから,本 件公判検事らによる公訴維持行為及び勾留継続行為も適法である。 また,本件第1審においては,A子やB男は捜査時と同様の供述をしており,公訴提起時から証拠関係が変化していない。したがって,P2検事が補充捜査を行わなかったことは不当と 行為も適法である。 また,本件第1審においては,A子やB男は捜査時と同様の供述をしており,公訴提起時から証拠関係が変化していない。したがって,P2検事が補充捜査を行わなかったことは不当とまではいえない。本件控訴審においても証拠関係は変化していないから,P3検事についても同様である。 したがって,本件公判検事らによる公訴維持行為及び勾留継続行為は,い ずれも国家賠償法上違法とはいえない。 (4) 争点4(本件担当裁判所による判決行為の違法性)について(原告らの主張)本件第1審裁判所は,本件刑事事件の中核的な証拠であるA子の性器の状態に関する客観的証拠が欠如しているにもかかわらず,これについて補充の 立証を促すことをしなかった。また,判決においては,14歳の少女が虚偽の証言をするはずがないという思い込みから,感情的に原告X1を糾弾している。 さらに,本件控訴審裁判所は,本件第1審裁判所と同様に,中核的な客観的証拠が欠如していることを認識しながら,弁護人によるA子の証人尋問請 求等を却下し,平成22年7月21日に判決を言い渡した。ところが,同年8月2日には,A子が本件刑事事件の被害は存在しなかった旨を述べるに至っており,控訴審裁判所がA子の証人尋問を採用していれば,A子が本件第1審における証言を虚偽と認めていた可能性が高い。そのため,A子の証人尋問が必要な証拠調べであったことは明らかである。 以上のとおり,本件担当裁判所は,予断,思い込み等から証拠の採否及び証拠の評価を誤り,合理的裁量を著しく逸脱して判決行為をしたものであるから,本件担当裁判所による判決行為は,いずれも国家賠償法上違法である。 (被告国の主張)争う。 証拠の評価を誤り,合理的裁量を著しく逸脱して判決行為をしたものであるから,本件担当裁判所による判決行為は,いずれも国家賠償法上違法である。 (被告国の主張)争う。 裁判官の行為が国家賠償法上違法となるには,当該裁判官が違法又は不当な目的をもって裁判したなど,裁判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認めうるような特別の事情が認められる必要があると解すべきところ,証拠の採否等については裁判官に裁量があり(刑事訴訟法297条),証拠の評価については裁判官の自由心証に委ねられて いるのであって,原告が主張するいずれの事情も,本件担当裁判所の裁量や 自由心証主義の範囲内にとどまるものであるから,上記特別の事情があるとは評価できない。 また,A子の本件第1審における証言が虚偽であることは,事後的に明らかになったものであって,本件控訴審裁判所による判決行為時の事情ではないから,同行為の違法性を基礎づける事情とはならない。 したがって,本件担当裁判所による判決行為は,いずれも国家賠償法上違法とはいえない。 (5) 争点5(本件交付拒否行為の違法性)について(原告X1の主張)再審請求人の無実を証明する証拠が,しばしば捜査機関が保有する証拠の 中に存在している実情をふまえると,再審請求人は,防御活動のために,捜査機関が保有する証拠を,証拠開示を通じて利用する権利を有している。そして,再審請求人は,捜査機関が保有している証拠の内容を知らなければ実効的な証拠開示請求をすることができないのであるから,証拠開示請求に伴う手続上の権利として,証拠一覧表交付請求権を有していると解するべきで ある。仮に,かかる権利が抽象的なものに過ぎない ば実効的な証拠開示請求をすることができないのであるから,証拠開示請求に伴う手続上の権利として,証拠一覧表交付請求権を有していると解するべきで ある。仮に,かかる権利が抽象的なものに過ぎないとしても,本件では,裁判所による本件交付命令により具体的な権利となっている。 また,再審請求審裁判所は,訴訟指揮権の行使の一環として検察官に対し証拠の開示を命じることができ,これと同様に,証拠一覧表の交付を命じることができると解される。 そして,訴訟当事者は裁判所の決定に従う義務があるところ,P4検事らは,異議申立て,特別抗告等のとりうる法的不服手段も履践せず,最高検察庁検察官及び大阪高等検察庁検察官の指揮命令に従って,本件交付拒否行為に及び,原告X1の証拠一覧表交付請求権を侵害したのであるから,当該行為は国家賠償法上違法である。 (被告国の主張) 争う。 再審請求審における証拠一覧表交付請求権や,証拠一覧表の交付命令を規定した法令はなく,裁判長の訴訟指揮権(刑事訴訟法294条)や同法435条6号は再審請求人の証拠一覧表交付請求権の根拠とはならないから,原告X1が主張する証拠一覧表交付請求権は法律上保護された権利利益とは認 められず,本件交付拒否行為によって原告X1の権利利益が侵害されたとはいえない。 仮に,証拠一覧表交付請求権を観念できるとしても,再審請求審における事実取調べの範囲は,再審請求人が請求理由として主張する事実の有無に限定されるものと解されるべきであり,このことは証拠一覧表の交付において も妥当する。一方,本件第1審におけるA子の証言が虚偽であったことや,本件カルテが存在することについて,P4検事らが争っていなかった本件再審請求審においては,無罪 は証拠一覧表の交付において も妥当する。一方,本件第1審におけるA子の証言が虚偽であったことや,本件カルテが存在することについて,P4検事らが争っていなかった本件再審請求審においては,無罪を言い渡すべき明らかな証拠(刑事訴訟法435条6号)が存在することが明らかであり,更に事実の取調べを行う必要はなかったのであるから,「本件について捜査機関が保管する一切の証拠の一覧 表」の交付を命じる本件交付命令は,本件再審請求審における事実取調べの範囲を明らかに超えている。そのため,P4検事らが本件交付命令に従う義務はない。 したがって,本件交付拒否行為は国家賠償法上違法とはいえない。 (6) 争点6(原告らに生じた損害の有無及びその額)について (原告らの主張)ア原告X1の損害(ウに記載のものを除く。) 1億1210万8540円(ア) 原告X1の逸失利益 6112万円原告X1は,本件刑事事件を担当した警察官,P1検事,本件公判検事ら及び本件担当裁判所の各行為によって,勤務先の退職を余儀なくさ れ,第1起訴の日である平成20年9月30日から,本訴訟提起の日で ある平成28年10月5日までの約96か月間の収入を失った。 原告X1は,退職当時,月額55万円の給与及び年間104万円の賞与を得ていたから,原告X1の逸失利益は,これらの96か月分(8年分)の合計額である6112万円となる。 (イ) 原告X1の身体拘束に伴う損害 7125万1040円 原告X1は,第1起訴の日である平成20年9月30日から釈放された平成26年11月18日まで2241日間の身体拘束を受けた。この間,原告X1は,生活用品購入のために89万円を, 円 原告X1は,第1起訴の日である平成20年9月30日から釈放された平成26年11月18日まで2241日間の身体拘束を受けた。この間,原告X1は,生活用品購入のために89万円を,原告X2との間の信書にかかる通信費として120万円を,原告X2の面会のために交通費と宿泊費の合計193万1040円をそれぞれ支出し,合計402万 1040円の財産的損害を被った。 また,原告X1が2241日間にわたり拘束されたことによって受けた精神的損害は1日当たり3万円を下らないから,合計6723万円となる。 したがって,原告X1は,長期にわたり身体拘束されたことに伴って 合計7125万1040円の損害を被った。 (ウ) 弁護士費用 800万円原告X1は,本訴訟のために弁護士に訴訟追行を委任しなければならず,その費用は800万円が相当である。 (エ) 損益相殺 2826万2500円 原告X1は,刑事補償として2826万2500円の交付を受けているから,これを損害額から控除する。 イ原告X2の損害 2894万円(ア) 原告X1の身体拘束に伴う損害 2694万円原告X2は,大阪拘置所において680回,大阪刑務所において8回, 原告X1と面会した。また,大分刑務所においては,2日間の面会を8 回,3日間の面会を31回行った。面会のための日当は,大阪拘置所及び大阪刑務所における面会については1回当たり5000円,大分刑務所における面会については1日当たり1万円が相当であるから,原告X 回,3日間の面会を31回行った。面会のための日当は,大阪拘置所及び大阪刑務所における面会については1回当たり5000円,大分刑務所における面会については1日当たり1万円が相当であるから,原告X2が被った財産的損害は453万円となる。 また,原告X1が2241日間にわたり拘束されたことによって受け た原告X2の精神的損害は1日当たり1万円を下らないから,合計2241万円となる。 したがって,原告X2は,原告X1の身体拘束に伴って合計2694万円の損害を被った。 (イ) 弁護士費用 200万円 原告X2は,本訴訟のために弁護士に訴訟追行を委任しなければならず,その費用は200万円が相当である。 ウ原告X1は,P4検事らの本件交付拒否行為により,再審請求人としての証拠一覧表交付請求権を害され,精神的苦痛を受けた。その損害額は300万円を下らない。 (被告らの主張)ア原告X1が,約6年間にわたり身体拘束を受けたこと,刑事補償として2826万2500円の交付を受けたことは認めるが,その余については,全て不知,否認ないし争う。 イ原告らは,主張する損害について,何ら具体的証拠により立証していな い。また,原告X1に対する身体拘束と原告X2に生じた精神的損害との間には相当因果関係が認められない。 ウさらに,上記(5)(争点5)においても主張したように,原告らが主張する再審請求人としての証拠一覧表交付請求権は,国家賠償法上保護されるべき権利ないし法的利益とは認められないから,P4検事らによる本件交 付拒否行為によって,原告らが主張するような損害は発生しない。 第3 当裁判所 請求権は,国家賠償法上保護されるべき権利ないし法的利益とは認められないから,P4検事らによる本件交 付拒否行為によって,原告らが主張するような損害は発生しない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実,後掲各証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる。 (1) 本件刑事事件にかかる捜査の経過 ア A子は,平成20年8月26日,本件強制わいせつ事件について告訴した後,同月29日にH医院を受診した。その際,A子は暴れることなく医師の診察を受けた(甲37の2・46頁)。 A子に付き添っていたEは,同医院の医師から,A子の処女膜は破れていない旨の説明を受けており(甲39の2・28ないし30頁),同日に作 成された本件カルテには,「処女膜は破れていない」との記載がある(乙1)。 なお,本件カルテは,本件再審請求審に至るまで,捜査機関により証拠として収集されることはなかった。 イ A子は,平成20年9月8日及び同月24日の二度にわたり,E又は原告X2の実姉であるNに連れられてL産婦人科を受診した。その際も,A 子は暴れることなく医師の診察を受けた(甲37の2・46頁)。 Eは,同産婦人科の医師から,直接又は上記Nを通じて,A子の処女膜が破れているという旨の説明を受けたことはなかった(甲39の2・31頁)。 ウ原告X1は,平成20年9月10日,本件強制わいせつ事件の被疑者と して逮捕され,同月11日,勾留された(甲52の1,54)。 エ本件強制わいせつ事件の担当となったP1検事は,平成20年9月25日,Eに対する取調べを行った。その際,Eは,A子が原告X1から胸を揉まれたことを告白した同年8月4日以降,強姦被害を受けたことについて頑なに否 せつ事件の担当となったP1検事は,平成20年9月25日,Eに対する取調べを行った。その際,Eは,A子が原告X1から胸を揉まれたことを告白した同年8月4日以降,強姦被害を受けたことについて頑なに否定していたA子の態度が腑に落ちず,Fも何か引っかかるよう であったことから,FがA子を産婦人科へ連れて行ったことがあり,その 後,A子が強姦被害を告白した旨供述をした(乙7・8頁)。 オ A子は,平成20年9月25日,P1検事の指示により,Eが依頼したOという女性の付き添いによりIクリニックを受診した(甲39・33頁)。 同クリニックのG医師が作成した本件診断書には,病名欄に「処女膜裂傷」との,その下部に「上記診断と考えます」との各記載がある(乙2)。 一方,A子は,平成20年9月頃までに性行為をしたことはなかった(甲37の2・9頁)。また,A子は,Iクリニックを受診した際,泣いたり暴れたりしたため,適切な診察を受けることができなかった(甲37の2・45頁,甲39の2・32頁)。 カ A子は,平成20年9月29日,検察官に対し,二度にわたり原告X1 から強姦の被害を受けたとして,本件強姦事件につき告訴した(甲8の1)。 キ P1検事は,平成20年9月30日,本件強制わいせつ事件について,原告X1を起訴した(甲6の1)。 ク大阪府警察Q警察署の司法警察員K2は,平成20年10月6日,Eから本件診断書の写しの交付を受けた(乙2)。 また,Eは,同日,司法警察員に対し,本件強姦事件についても告訴した(甲8の1)。 ケ P1検事は,平成20年10月7日,A子に対する取調べを行い,Iクリニックでの診断の様子について聴取した。その際,A子は,「産婦人科へ行くと,先 姦事件についても告訴した(甲8の1)。 ケ P1検事は,平成20年10月7日,A子に対する取調べを行い,Iクリニックでの診断の様子について聴取した。その際,A子は,「産婦人科へ行くと,先生の前で足を広げさせられ,何か器具のようなものを見せても らいました。先生がこれからその器具を入れるのかと思うと,とても痛そうで,怖くて嫌でした。しかし,付き添ってくれた知り合いのおばさんが,私の手を握ってくれていたので,我慢して検査してもらいました。」と述べた(乙10)。 コ原告X1は,平成20年10月23日,本件強姦事件の被疑者として逮 捕され,同月24日に勾留された(甲52の2,54)。 サ P1検事は,平成20年11月12日,本件強姦事件について,原告X1を起訴した(甲6の2)。 (2) 本件刑事事件の捜査時におけるA子らの供述の概要以下,A子らの供述において,「おじいちゃん」又は「祖父」とは原告X1のことを,「おばあちゃん」又は「祖母」とは原告X2のことを指す。また, A子らの供述内容中,C,Dは乙8,9号証において匿名処理がなされていた人物に仮名を付したものであり,括弧内の文章は供述内容を明確にするために挿入したものである。 ア本件強制わいせつ事件に関するA子供述(乙3)A子は,平成20年9月26日,P1検事に対し,本件強制わいせつ事 件の被害状況について,「私が,おじいちゃんから胸をもまれたのは,今年の7月初めころのことです。」,「午後7時か8時ころだったと思いますが,トイレに行きたくなり,部屋から出ました。」,「そのとき,まだ,おばあちゃんは,銭湯に行って,家にいませんでした。私は,おじいちゃんがこちらに来るまでに,急いでトイレに入ろうと思い,トイレのドアを トイレに行きたくなり,部屋から出ました。」,「そのとき,まだ,おばあちゃんは,銭湯に行って,家にいませんでした。私は,おじいちゃんがこちらに来るまでに,急いでトイレに入ろうと思い,トイレのドアを開けよう としたところ,いきなり,おじいちゃんが後ろから両腕で抱きついてきて,両手で私の胸をもみました。」,「私は,何と言ったのかまでは覚えていませんが,大声を出しました。」,「たぶん,『やめて』などと言ったと思います。 おじいちゃんは,両手で,私の胸をぎゅっ,ぎゅっと握るように,数回,もみました。」,「私は,必死に,上半身をよじるようにしてゆさぶりました が,おじいちゃんの手は,強く私の胸をつかんでおり,すぐにはずれませんでした。しかし,私が必死で体を揺さぶるなどして暴れていたところ,おじいちゃんから逃げることができました。」等と述べた。 イ本件強制わいせつ事件に関するB男供述(乙4)B男は,平成20年9月25日,P1検事に対し,本件強制わいせつ事 件の被害を目撃した状況について,「午後7時か8時ころだと思いますが, 僕が見ていたテレビ番組が終わったので,僕は,本を取りに行こうと思いました。」,「ぎゃーという妹の声が聞こえました。」,「祖父は,妹の後ろから両手で妹の体に抱きつくように妹の体の前に手を回し,その手が妹の胸あたりにありました。」,「妹は,やめてーなどと大声で言いながら,上半身をよじって逃げようとしていました。」,「僕は,この状況を見て,自分が何 かしたわけではないのですが,なんだか恥ずかしい気持ちになりました。 また,見てはいけないものを見てしまった,とこわい気持ちになりました。 もし自分が,その場にいることを祖父に気づかれたら,自分も祖父から何かされるのではないかとこわくなりましたし,も ちになりました。 また,見てはいけないものを見てしまった,とこわい気持ちになりました。 もし自分が,その場にいることを祖父に気づかれたら,自分も祖父から何かされるのではないかとこわくなりましたし,もしかしたら,住む場所がなくなってしまうかもしれないと思いました。」等と述べた。 ウ本件強姦事件に関するA子供述(乙8ないし10)(ア) 本件強姦事件のうち1件目の強姦被害に関する供述A子は,平成20年10月7日,P1検事に対し,本件強姦事件のうち1回目の強姦の被害状況について,「この日,私は,夕飯が終わったあと,自分の部屋でお菓子を食べていました。そのお菓子は,Nおばさん が経営していた美容室の従業員であるCさんの娘さんである,Dさんの結婚式の引き出物でもらったものでした。私は,このDさんの結婚式が,11月20日だったことは覚えており,被害に遭ったのは,その翌日でしたので,私が被害に遭ったのは,平成17年11月21日のことに間違いありません。」,「おじいちゃんは,入ってくると,すぐに無言のまま, 座っていた私の後ろへ行き,私の服を脱がし始めました。」,「そして,おじいちゃんは,私の前にきて,私の肩や腕をつかんで私を仰向けに倒しました。」,「そして,(おじいちゃんは)私の両足の間に,足を割って入り,私の胸をもみました。」,「私は,膣に指を入れられ,ぐりぐりとされたので,痛くて,ぎゃー,やめて,めっちゃ痛いと泣き叫びました。」, 「そして,おじいちゃんは,四つんばいになれと言って,私の腰や腕を つかみ,私をよつんばいにさせました。」,「そして,膣の中に棒のようなものが入ってきて,言葉では言い表せないほどの痛みを感じました。」,「今,検事から,何かを膣に押し当てられただけではないかと言わ つかみ,私をよつんばいにさせました。」,「そして,膣の中に棒のようなものが入ってきて,言葉では言い表せないほどの痛みを感じました。」,「今,検事から,何かを膣に押し当てられただけではないかと言われましたが,うまくいえませんが,膣が引き裂かれるような感じで何かが入ってきました。」,「その日の夜だったと思いますが,トイレに行ったとき にパンツを見ると,血がついていました。私は,それを見て,生理が始まったのだと思いました。私は,小学校6年生の10月ころ,ちょうど運動会のころから,生理が始まっていました。それで,私は,ナプキンに変えたのですが,普通,生理は1週間くらい続くのに,その血はすぐに止まりました。それで,私は,生理じゃなかったのかな,おかしいな と思っていました。また,確かおじいちゃんが部屋を出て行ってから気付いたのですが,絨毯にも少し血が付いていました。」等と述べた。 その後,平成20年10月12日には,P1検事に対し,本件強姦事件のうち1回目の強姦被害の時期について,「以前,私は,小学校6年生のころとお話ししましたが,今回,警察の人が確認したところ,私が小 学校5年生のときだったということがわかりました。私がはっきりと記憶しているのは,以前もお話ししたとおり,Dさんの結婚式の次の日だったということです。」,「今回,警察の人が,Dさんに確認したところ,Dさんの結婚式は,平成16年の11月だったということを聞きました。 ですから,私が一番初めに被害にあったのは,平成16年のことになり ますので,この点,訂正してもらいたいと思います。」等と述べた。 (イ) 本件強姦事件のうち2件目の強姦被害に関する供述A子は,平成20年10月7日,P1検事に対し,本件強姦事件のうち2回目の強姦の被害状況 たいと思います。」等と述べた。 (イ) 本件強姦事件のうち2件目の強姦被害に関する供述A子は,平成20年10月7日,P1検事に対し,本件強姦事件のうち2回目の強姦の被害状況について,「はっきりと日にちがわかるのは,平成20年4月のことです。それは,『名探偵コナン』というアニメのシ リーズもので『赤と黒のクラッシュ』という話のうちの一話を自分の部 屋のテレビで見ていたときに,おじいちゃんが入ってきて被害に遭いました。」,「私が被害に遭ったときは,通常の30分間の番組を見ていたときでした。そして,私の記憶では,4月の終わり頃ではなく,4月の中旬ころの記憶ですので,私が被害に遭ったのは,4月14日のことで間違いないと思います。」,「私は,おじいちゃんが服を脱がせたことから, またやられると,また強姦されると思い,怖くなりました。それで,やめて,いやだなどと叫んだのですが,おじいちゃんは,無言のまま,さらに今度は私がはいていたズボンを一気に抜き取りました。」,「小学校6年生のころに犯されたときと同じように,おじいちゃんから肩や腕をつかまれて,仰向けに押し倒されました。」,「そして,おじいちゃんは, それまでと同じように,指を私の膣の中に入れ,ぐりぐりと回すように動かしました。」「おじいちゃんは,何も言わずに,仰向けになった私の両足をつかみ,私の両膝を立たせて,私の上に覆い被さってきました。」,「そして,おじいちゃんは,おちんちんを,私の膣の中に押し込んできました。私は,一番初めのように,激痛というほどではありませんが, かゆみに近いような痛みがありました。」等と述べた。 また,G医師に診察された際の状況については,「産婦人科へ行くと,先生の前で足を広げさせられ,何か器具の どではありませんが, かゆみに近いような痛みがありました。」等と述べた。 また,G医師に診察された際の状況については,「産婦人科へ行くと,先生の前で足を広げさせられ,何か器具のようなものを見せてもらいました。先生がこれからその器具を入れるのかと思うと,とても痛そうで,怖くて嫌でした。しかし,付き添ってくれた知り合いのおばさんが,私 の手を握ってくれていたので,我慢して検査してもらいました。その結果,処女膜が破れているという結果だったということを聞きました。先ほども話したように,私は,これまで,男の人と付き合ったことはなく,私が同意した上でセックスをしたことはありません。」等と述べた。 エ本件強姦事件に関するB男供述(乙11,17) (ア) 本件強姦事件のうち1件目の強姦被害に関する供述 B男は,平成20年9月29日,P1検事に対し,本件強姦事件のうち1回目の強姦被害を目撃した状況について,「僕が中学2年生のころ,やはり,夕飯後,祖母が銭湯へ出かけてからのことでしたが,仏壇のある部屋でテレビを見ていたとき,妹の叫び声がしたことから,すぐに部屋を出て行き,妹の部屋をのぞいたところ,妹と祖父が全裸になってお り,祖父が妹に覆い被さっていやらしいことをしているのを見ました。 はっきり言うと,強姦していました。」,「僕は,ひいおばあちゃんはトイレが近く,このときも妹の部屋の正面にあるトイレに度々行っていたので,妹の声に気づいていたはずだと思いました。しかし,それでもひいおばあちゃんは,何事もないかのように,じっとテレビを見ていたので, ひいおばあちゃんは,祖父のこういう行為を知っていたのに,隠していたのかもしれないと思いました。ただ,もしかすると,ひいおばあちゃ ちゃんは,何事もないかのように,じっとテレビを見ていたので, ひいおばあちゃんは,祖父のこういう行為を知っていたのに,隠していたのかもしれないと思いました。ただ,もしかすると,ひいおばあちゃんは高齢で耳が遠かったのかもしれません。」等と述べた。 また,B男は,平成20年10月7日,本件強姦事件を目撃した状況について,「僕が,一番初めに,妹が祖父から強姦されているのを見たの は,平成17年11月21日のことです。なぜ,そのように言えるかと言うと,僕は,Nおばさんが経営している美容院の従業員であるCさんの娘さんであるDさんの結婚式の次の日に,今回の事件を見たという記憶がありました。」,「その後,確かお母さんからだったと思いますが,Dさんの結婚式が11月20日だったということを聞きました。それで, その次の日の11月21日に,今回の事件を見たということが分かりました。」,「このとき,夕飯を食べ終わり,祖母は,銭湯に出かけていたと思います。この当時,まだ,ひいおばあちゃんは生きており,一緒に暮らしていたのですが,ひいおばあちゃんも一緒に,この①の部屋でテレビを見ていました。僕は,トイレに行こうとしたところ,妹がギャーと いう声を聞きました。僕は,そのような声を聞き何があったのかと心配 になり,すぐに①の部屋を出て,妹の部屋の方へ向かいました。」,「そこで,僕は,その妹を心配する一方で,恐怖心から,(妹の部屋の)その戸をゆっくりとおそるおそる開けてみました。」,「このとき,祖父は,全裸になり,四つんばいになった妹に,後ろから覆い被さっていました。」,「このとき,妹の上半身が左右に動いており,そのときに妹の頭がちら っと見えたので,それで妹が四つんばいの状態になっているのが分かりました。」, になった妹に,後ろから覆い被さっていました。」,「このとき,妹の上半身が左右に動いており,そのときに妹の頭がちら っと見えたので,それで妹が四つんばいの状態になっているのが分かりました。」,「また,その妹の周りの絨毯に血がついていました。」等と述べた(なお,「①の部屋」とは,乙11号証に添付されている現場見取図に①と記載された部屋のことを指す。)。 (イ) 本件強姦事件のうち2件目の強姦被害に関する供述 B男は,平成20年10月7日,P1検事に対し,本件強姦事件のうち2回目の強姦被害を目撃した状況について,「僕は,③の部屋で,『名探偵コナン』というアニメを午後7時30分から見ていました。このテレビを見ていた日についてですが,僕は,4月中旬ころという記憶がありました。今,検事さんから,4月に名探偵コナンが放送されたのは, 14日と21日と28日の3日間で,そのうち21日は,通常の放送ではなく,名探偵コナンの映画が放送されていたと聞きました。映画を見ていたときではなく,通常の放送の番組を見ていた記憶なので,21日でないことは確かです。そして,4月の末ころではなかったので,やはり4月14日に,この事件を目撃したことに間違いないと思います。」, 「僕は,また妹のギャーという声を聞きました。」,「そこで,僕は,再び②の場所まで行き,閉まっていた妹の部屋の戸を,今度は以前よりも少しだけ開けました。」,「僕がのぞいたところ,やはり祖父が全裸になり,妹に覆い被さっていました。」,「刑事さんには,妹が四つんばいになっていたと説明しました。しかし,検事さんから,本当に四つんばいに間違 いなくなっていたのかどうか確認され,実際のところ,僕は,このとき は数秒見ただけでしたし,妹の頭なども見ていないので,間 説明しました。しかし,検事さんから,本当に四つんばいに間違 いなくなっていたのかどうか確認され,実際のところ,僕は,このとき は数秒見ただけでしたし,妹の頭なども見ていないので,間違いなく四つんばいにさせられていたかどうかまでは分かりません。」等と述べた(なお,「②の場所」及び「③の部屋」とは,乙11号証に添付されている現場見取図に,それぞれ②,③と記載された場所のことを指す。)。 (3) 本件第1審及び本件控訴審における審理経過 ア P2検事は,平成21年1月13日,本件第1審において,被害者が処女膜裂傷の症状を負っていることを立証趣旨として,本件診断書が添付された捜査報告書を証拠請求した(甲12)。しかし,P2検事は,同年2月16日,本件第1審の第4回公判前整理手続において,「被害者の処女膜裂傷の立証について,関連性を再検討する。」と述べ,同年3月9日の第5回 公判前整理手続において,当該捜査報告書の証拠請求を撤回した(甲7の4,7の5,12)。 イ本件第1審において,Eは,A子を2回病院に連れて行ったところ,一度目に受診した産婦人科では,医師から,A子が痛がったり,患部がはれ上がっていたりしたため,適切に検査ができないといわれ,二度目に警察 から依頼を受けて産婦人科を受診した際には,処女膜裂傷との診断を受けた旨証言した(乙13・39頁)。 ウ本件第1審裁判所は,本件第1審におけるA子の被害証言及びB男の目撃証言のいずれも信用できると判断して,平成21年5月15日,原告X1に対し,懲役12年の実刑判決を言い渡した(甲3)。 エ原告X1は,本件第1審の判決を不服として控訴した。本件控訴審において,弁護人は,平成21年12月7日,P3検事に対し,上記Eの に対し,懲役12年の実刑判決を言い渡した(甲3)。 エ原告X1は,本件第1審の判決を不服として控訴した。本件控訴審において,弁護人は,平成21年12月7日,P3検事に対し,上記Eの証言にかかるA子が一度目に受診したという産婦人科の診断書,診療記録等の開示を請求した(甲21)。これに対し,P3検事は,同月10日,当該証拠はいずれも存在しない旨回答した(甲24)。また,弁護人は,同月8日, 本件強姦事件及び本件強制わいせつ事件の具体的状況及び被害の説明が 変遷した理由や上記産婦人科を受診したときの状況が明らかになっていないなどとして,A子の証人尋問を請求した(甲25の2)。さらに,弁護人は,上記P3検事の回答を受けて,同月14日,上記産婦人科に公務所照会等を行う必要があるが,その名称,所在等が不明であるとして,Eの証人尋問を請求した(甲25の3)。本件控訴審裁判所は,平成22年4月 28日に行われた第3回公判期日において,上記弁護人の事実取調べ請求をいずれも却下したうえで,同年7月21日,原告X1の控訴を棄却した(甲4,16の1,18の3,20)。 オ原告X1は,さらに本件控訴審の判決を不服として上告したが,最高裁判所は,平成23年4月21日,上告を棄却し,本件第1審の実刑判決が 確定した(甲5,27の1)。 (4) 原告X1が再審を請求するに至った経緯及び本件再審請求審の経過ア A子は,平成21年5月15日以降,遅くとも上記本件控訴審の判決宣告があった平成22年7月21日までの間に,E及びFに対し,捜査時や本件第1審時の供述内容が虚偽であり,実際には,原告X1から強制わい せつや強姦の被害を受けたことはない旨告白した(甲37の2・19ないし22頁,甲39の2・39 に,E及びFに対し,捜査時や本件第1審時の供述内容が虚偽であり,実際には,原告X1から強制わい せつや強姦の被害を受けたことはない旨告白した(甲37の2・19ないし22頁,甲39の2・39ないし41頁)。 また,B男も,平成22年の初め頃以降,遅くとも同年7月頃までの間に,E及びFに対して,捜査時や本件第1審時の供述内容が虚偽であり,実際には,A子が原告X1から強制わいせつや強姦の被害を受けた場面を 目撃したことはない旨告白した(甲38の2・14ないし18頁)。 イ E及びFは,上記A子らの告白を受けても,その旨を捜査機関に対して申告せず(甲39の2・40頁),かえって,Fは,EにA子を精神科に連れていくよう指示し,Eは,平成22年8月2日,A子にM大学医学部附属病院の精神科を受診させた。その診察の際にも,A子は,医師に対し, 裁判で虚偽証言をした旨申告した(甲2)。 ウ原告X1は,平成26年9月12日,A子らの捜査時及び第1審時の供述内容が虚偽であるとするA子らの新供述が新たに発見されたことを主たる理由として,大阪地方裁判所に再審を請求した(甲28)。 エこれに対し,P4検事は,平成26年11月18日,上記A子らの新供述のほか,これを裏付ける「処女膜は破れていない」との記載のある本件 カルテが無罪を言い渡すべき明らかな証拠(刑事訴訟法435条6号)に当たる蓋然性が高いとして,再審の開始については,本件再審請求審裁判所においてしかるべく決定されたい旨述べ,本件カルテの写しを添付した意見書を提出した(甲2)。 オ本件再審請求審裁判所は,平成26年12月11日,A子らの証人尋問 を行った。 その際,B男は,本件第1審における証言が虚偽であり,実際にはA 添付した意見書を提出した(甲2)。 オ本件再審請求審裁判所は,平成26年12月11日,A子らの証人尋問 を行った。 その際,B男は,本件第1審における証言が虚偽であり,実際にはA子の強制わいせつ及び強姦被害を目撃したことはないこと,A子が供述した内容はEから聞いたりする等しており,それに合わせて警察官や検察官に対し供述していた旨を証言した(甲38の2・1,9ないし11,25頁)。 また,A子は,要旨以下のような証言をした。 (ア) 当初,Eに対して,胸を揉まれたことはなく,強姦被害も受けていないと言い張ったが,全く信じてもらえず,睡眠時間も削られて繰り返し問い詰められたため,その場から解放されるために,強制わいせつや強姦の被害を受けたと順次虚偽の告白をした。 強姦被害の様子については,H医院を受診した後,Eからアダルトビデオのようなものを見せられ,その映像に写っているような行為をしたのではないかとシミュレーションをした(甲37の2・32,33,43,44頁)。 (イ) 警察に被害届を提出したのは,FやEから,強姦されたのであるから 処罰感情を記載して提出しろといわれたからである。Eに怒られるのが 嫌で,警察官に対しても処罰してほしい旨を伝えた(同41ないし42頁)。 (ウ) 裁判で虚偽の強制わいせつ被害や強姦被害を証言するに当たり罪悪感はあったが,EやFに洗脳されているような状態であり,虚偽の証言をしてしまった(同55ないし58頁)。 (エ) 本件第1審の判決後,自殺しようと考えるようになり,インフルエンザの薬を大量に服用したこともあった(同58,59頁)。 カまた,本件再審請求審裁判所は,平成26年12月12日,E及びFの尋問を行 1審の判決後,自殺しようと考えるようになり,インフルエンザの薬を大量に服用したこともあった(同58,59頁)。 カまた,本件再審請求審裁判所は,平成26年12月12日,E及びFの尋問を行った。その際,Fは,A子から強姦被害を受けたという話を聴取するに当たり,深夜や明け方になるまで聴取を行っていた旨証言をした (甲40の2・7,20頁)。 キ原告X1の弁護人は,平成26年12月22日,本件再審請求審裁判所に対し,検察官に対して捜査により収集された証拠全てを弁護人に対し開示する旨の命令を発するよう申し立てた(甲33)。 ク本件再審請求審裁判所は,平成27年1月14日,検察官は,弁護人に 対して,本件刑事事件に関し,捜査機関が保管する一切の証拠の一覧表を交付するよう命ずる決定(本件交付命令)をした(甲35)。 これに対し,P4検事は,同月20日,本件交付命令は訴訟指揮に関する裁量権を逸脱したものであるなどとする意見書を提出して,証拠一覧表の交付を拒否した(本件交付拒否行為,甲36)。 ケ本件再審請求審裁判所は,平成27年2月27日,A子らが捜査時及び本件第1審時にした供述はいずれも虚偽であったとするA子らの供述が新たに発見されており,本件カルテに「処女膜は破れていない」との記載があることは当該A子の新供述の信用性を強く裏付けるものであるなどとして,再審開始の決定をした(甲2)。 2 争点1(警察官による本件刑事事件にかかる捜査の違法性)について (1) K1巡査部長によるA子らの取調べの違法性年少者の特性として,取調べを行う捜査官の言動に迎合しやすいことは一般に知られているから,警察官が,年少者を刑事事件の被害者又は目撃者として取り調べる場合には,自身の言動により年少者の べの違法性年少者の特性として,取調べを行う捜査官の言動に迎合しやすいことは一般に知られているから,警察官が,年少者を刑事事件の被害者又は目撃者として取り調べる場合には,自身の言動により年少者の供述を誘導し,不当に歪曲させることのないよう配慮することが求められるというべきである。一 方で,現行法上,警察官による年少者の取調べにおいて,専門家を関与させたり,取調べ状況をビデオ撮影したりすることがより望ましいとしても,これを義務付ける規定はなく,警察官がこれらの配慮をしなかったことから,当然に職務上尽くすべき注意義務に反するということはできない。 本件強制わいせつ事件に関するA子の取調べに際し,担当したK1巡査部 長から一定の誘導的な質問があったことはうかがわれるものの(甲37の2・15頁),A子は,基本的にはEとの間の話をもとにして自発的に被害を申告していたものと認められ,K1巡査部長がA子の供述が明らかに不自然,不明確であるのにその重要部分について積極的に誘導したとまでは認められない。また,本件において,警察官が必要な限度を超えて繰り返しA子らの取 調べを行ったとか,A子が取調べを頑なに拒絶するような態度をとったなどの事情を認めるに足りる証拠はない。そうすると,A子の取調べについて専門家を関与させたり,後の検証のためにビデオ撮影をしたりする必要性が高かったとまでいうことはできない。さらに,本件強制わいせつ事件に関するB男の取調べについても,B男が目撃者として取調べを受けることを拒絶し ていたなどの事情は認められず,A子と同様に専門家の関与等の措置をとる必要性が高かったとまでは認められない。 したがって,K1巡査部長が年少者の取調べに当たって必要な配慮を欠いていたと評価することは困難であり,同人によるA子らの 子と同様に専門家の関与等の措置をとる必要性が高かったとまでは認められない。 したがって,K1巡査部長が年少者の取調べに当たって必要な配慮を欠いていたと評価することは困難であり,同人によるA子らの取調べについて,職務上尽くすべき注意義務を怠ったとは認められない。 (2) 本件カルテを収集しなかったことの違法性 警察官は,積極証拠か消極証拠かを問わず,捜査を行い,証拠を収集しなければならない。 もっとも,Eは,本件第1審においてもA子にH医院を受診させた際の結果等について供述を避ける態度を示しており(乙13・39頁),本件刑事事件の担当警察官に対して,当該受診の事実や結果等を自発的に告げてはいな かった可能性が高い。また,P1検事も,平成20年9月25日のEに対する取調べの時点で,H医院の受診に関する事情を詳しく聴取しておらず,その結果がP1検事を通じて本件刑事事件の担当警察官に伝えられていたとも認められない。したがって,本件刑事事件の担当警察官において,A子が本件強姦事件の捜査開始前にH医院を受診しており,同院において,A子の性 器の状態に関する診断書やカルテが作成されている可能性に思い至るべきであったとはいえない。 したがって,本件刑事事件を担当した警察官が本件カルテを証拠として収集しなかったことはやむを得ないというべきであって,職務上尽くすべき注意義務を怠ったとは認められない。 3 争点2(P1検事による公訴提起の違法性)について(1) 検察官による公訴提起の違法性の判断基準公訴提起時の検察官の心証は,その性質上,判決時における裁判官の心証と異なり,公訴提起時における各種の証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑があ 違法性の判断基準公訴提起時の検察官の心証は,その性質上,判決時における裁判官の心証と異なり,公訴提起時における各種の証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑があれば足りるところ,公訴提起時におい て,検察官が現に収集した証拠資料及び通常要求される捜査を遂行すれば収集し得た証拠資料を総合勘案して合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑があれば,公訴提起は違法性を欠くものと解するのが相当である(最高裁判所第一小法廷平成元年6月29日判決・民集43巻6号664頁参照)。 (2) 本件刑事事件において通常要求される捜査により収集し得た証拠資料 ア原告らは,IクリニックのG医師から,本件診断書の作成に至る診断結 果の具体的内容について直接聴取すべきであった旨主張する。 本件診断書は,「処女膜裂傷」との診断名が記載されているのみで,具体的な裂傷の形状等については言及されていない。したがって,これだけを見れば,受診時から比較的近い時期に生じた新鮮な処女膜裂傷が認められたとの意味に理解するのがひとまず自然であるといえるが,P1検事は, この点に関し,陳旧性の裂傷を含むものと理解し,したがってA子の供述を前提とすると当然の診断内容であると考えた旨陳述ないし供述している(乙19・17頁,証人P1・6頁)。 この点につき検討するに,A子の捜査時の供述によれば,最後に強姦被害にあったのは平成20年4月14日頃であるところ,膣や外性器,子宮 頸部の損傷は長くても10日程度で回復するとされているから(乙15),同日頃に処女膜裂傷が生じたとしても,本件診断書が作成された同年9月25日時点において新鮮な処女膜裂傷が認められる可能性は大きくない。 そうすると,本件診断書の「処女膜裂傷」との いるから(乙15),同日頃に処女膜裂傷が生じたとしても,本件診断書が作成された同年9月25日時点において新鮮な処女膜裂傷が認められる可能性は大きくない。 そうすると,本件診断書の「処女膜裂傷」との記載を上記のとおり新鮮な裂傷の趣旨に理解した場合,上記強姦被害とは別に,A子が上記診察時の 直近に性交渉をもったか,激しい運動等その他の要因によって新たに処女膜裂傷を生じた可能性がまず想定されるが,A子は,同年10月7日のP1検事による取調べにおいて,これらの可能性をいずれも否定する供述をしている(乙10・8頁)。一方で,適切に診察できていないにもかかわらず,医師が診断書を作成するなどということは通常は想定し難いことであ るといえる。これらの事情に照らすと,P1検事が,本件診断書の「処女膜裂傷」との記載について陳旧性のものを含む趣旨に理解したとしても,そのことが直ちに不合理であるということはできない。 そもそも,性的接触の後遺所見の後方視的解釈は困難であることが非常に多く,性虐待や性暴力の被害を受けたことの証明となる決定的な身体所 見はほとんどないとされ,とりわけ,医師が,治癒後の後遺所見から特定 の所見が性被害によって直接的に生じたものか否かを判断することは困難であるとされている(乙14・297ないし299頁)。そうすると,A子が申告していた平成20年4月14日頃の強姦被害の事実が,同年9月25日頃に行われた医師の診察によって積極的に裏付けられる可能性はもともと乏しかったのである。したがって,本件強姦事件の立証上,この 時期に医師の診察を受けることに意味があるとすれば,それは,主として処女膜が強姦被害によって男性器の挿入を受けたことと矛盾するような形状で残存しており,A子の供述の信用性に重大な疑問を生じさ 時期に医師の診察を受けることに意味があるとすれば,それは,主として処女膜が強姦被害によって男性器の挿入を受けたことと矛盾するような形状で残存しており,A子の供述の信用性に重大な疑問を生じさせることがないかを確認することにあったと考えられる。この時点で医師の診察を受けることの意味がそのようなものであり,かつ,本件診断書の「処女膜 裂傷」との記載は,少なくともA子の性器に同人の供述と矛盾するような客観的所見はないと理解されるものである以上,これに加えて,同記載の正確な意味を確定するべく,G医師から直接聴取し,診察状況等を確認する必要性は大きくなかったというべきである。 たしかに,本件においては,仮にこのような捜査が行われていれば,① 本件診断書の「処女膜裂傷」との記載が実際の診察結果に基づくものでないことが判明した可能性,あるいは②再度の診察の結果,A子の性器に同人の供述と矛盾するような客観的所見があることが判明した可能性,さらには,③A子が,実際にはIクリニックを受診した際に暴れて診察できない状態であり,しかも,その後のP1検事の取調べに対しては同クリニッ クで診察をしてもらった旨の虚偽の供述をしていたことが判明した可能性がある。そして,仮に上記①ないし③のような事実が判明していたとすれば,その結果,本件刑事事件の証拠構造の中核をなすA子の供述の信用性がかなりの程度に揺らいでいたであろうことは容易に想定することができる。しかしながら,P1検事が,当時の捜査状況,とりわけ本件診断 書の記載内容がそれ自体としては強姦被害の存否を決定づけるような意 味を持たないという状況のもとで,上記①ないし③のような異常な事態が生じているかもしれないことを慮り,そのことを視野に入れた捜査をしなければならないと 強姦被害の存否を決定づけるような意 味を持たないという状況のもとで,上記①ないし③のような異常な事態が生じているかもしれないことを慮り,そのことを視野に入れた捜査をしなければならないとすることは困難であると考える。 以上の検討によれば,本件診断書の提出を受けて,G医師から診察状況等を直接聴取することは,通常要求される捜査ということはできない。 イ P1検事は,Eから,平成20年9月25日の取調べの際に,同年8月頃にA子を別の産婦人科に連れて行ったことを聴取しているところ,原告は,このような情報に接した以上,P1検事は,当該産婦人科の所在や診断結果を捜査すべきであったと主張する。 しかしながら,同時点で,P1検事は,既に,警察官を通じ,A子をし てIクリニックを受診させる手配を済ませており,近くその診察結果を入手できる見込みがあったものである。また,A子が当該別の産婦人科を受診したという時期は同年8月頃であり,いずれにせよA子が最後に強姦被害に遭ったと供述している時期からは長期間が経過しているから,近く入手が期待できるIクリニックの診察結果と比べて,当該別の産婦人科の診 察結果の証拠価値が大きく上回るとは想定されない。加えて,その後,結果としては誤っていたものの,少なくともA子の性器に同人の供述と矛盾するような客観的所見はないと理解される本件診断書が取得されるに至ったものであり,このような捜査状況のもとでは,重ねて,当該別の産婦人科の名称,所在や診断結果等を捜査する必要性が大であったとはいえな い。 たしかに,本件においては,仮にこのような捜査が行われていれば,「処女膜は破れていない」との記載がある本件カルテが入手できた可能性,ひいてはA子の供述の信用性が揺らいでいた可能性を否定することはでき しかに,本件においては,仮にこのような捜査が行われていれば,「処女膜は破れていない」との記載がある本件カルテが入手できた可能性,ひいてはA子の供述の信用性が揺らいでいた可能性を否定することはできない。しかしながら,P1検事が,前段に示した当時の捜査状況のもとで, これらの可能性を想定すべきであったとまではいえないと考える。 したがって,本件カルテが,本件刑事事件において通常要求される捜査により収集し得た証拠であるとは認められない。 ウ原告らは,本件において通常要求される捜査として,年少者の性的被害について高度の専門性を有した者にA子の診察を行わせるべきであり,そのような捜査を行っていれば,A子が強姦被害を受けていないことを示す 証拠を入手し得たはずであると主張する。 たしかに,長期間にわたり繰り返し強姦被害を受けている年少者は,同年齢の年少者に比して処女膜の面積が減少していたり,処女膜の辺縁に細かい凹凸が生じたりすることがあり得るところ(乙16),A子は本件刑事事件当時,性交渉自体に及んだことがなかったのであるから,年少者の強 姦被害について高度な専門性を有する医師がA子を診察すれば,これらの特徴が観察できないという診断結果は得られたであろうと推測される。 しかしながら,処女膜の面積や形状には個人差があるうえ,複数回にわたり強姦被害を受けていても,その回数いかんによっては(すなわち,その回数が比較的少ないものであったとすれば),上記のような特徴が観察 できないことも十分にあり得る。強姦被害があったとされる時期の直後にされる医師の診察についてはさておき,相当期間が経過した後にされる医師の診察については,上記のとおり医師が治癒後の状況から特定の所見が性被害によって直接的に る。強姦被害があったとされる時期の直後にされる医師の診察についてはさておき,相当期間が経過した後にされる医師の診察については,上記のとおり医師が治癒後の状況から特定の所見が性被害によって直接的に生じたものか否かを判断することは困難であるとされていることからすると,強姦被害の存否を積極的に裏付けるような 診断結果は期待し難いのであって,これを特に高度な専門性を有する者に行わせるべきであったということはできない。 したがって,P1検事が本件において指示した医師の診察とは異なって,より高度な専門性を有する医師の診察を受けさせることが通常要求される捜査であるとは認められない。 (3) 合理的な判断過程により有罪と認められる嫌疑の有無 ア本件各公訴提起時におけるA子らの供述の信用性(ア) A子らは,平成7年頃から平成20年頃までの間,養父である原告X1と同居し,自身の生活を支えてもらっていたのであるから,本件各公訴提起当時の証拠資料から,A子らに無実の原告X1を罪に陥れる虚偽供述をする動機を見出すことは困難であったと考えられる。また,捜査 当時におけるA子の被害供述とB男の目撃供述は,B男がEからA子の供述内容を聞くなどしており,概ね供述内容が合致していたと認められる。 これらの事情に加え,本件強制わいせつ事件については,第3の1(2)で認定したとおり,A子もB男も被害状況について具体的に供述してお り,第1起訴時において,A子らの供述は信用することができるものであったと認められる。 (イ) 本件強姦事件についても,上記のように,A子らに虚偽供述の動機は認められない。また,A子らの供述内容は,被害時期や被害を受けた際のA子の抵抗の様子,絨毯に血がついていたという被害後の状況等につ 本件強姦事件についても,上記のように,A子らに虚偽供述の動機は認められない。また,A子らの供述内容は,被害時期や被害を受けた際のA子の抵抗の様子,絨毯に血がついていたという被害後の状況等につ いて概ね合致している。さらに,第3の1(2)で認定したとおり,A子は,被害時期の特定について,結婚式や放送されていたアニメ等の具体的根拠に基づき供述しているうえ,二度目の強姦被害の際の痛みについて「かゆみに近いような痛み」という具体的な表現を用いて述べる等,本件強姦事件の被害状況について相当程度具体的に供述していることが認めら れる。さらに,B男も目撃したA子の被害状況や自分の恐怖心等を具体的に述べており,第2起訴時においても,A子らの供述は信用することができるものであったと認められる。 以上によれば,本件各公訴提起時において,その供述内容等に照らし,A子らの供述を信用できるというP1検事の判断が不合理であるとは いえない。 (ウ) この点について,原告らは,A子が,当初初潮を迎えたのちに初めて強姦被害にあった旨供述していたにもかかわらず,その後,初潮よりも前の段階で強姦被害にあったと供述を変遷させ,さらに,B男も同様に強姦被害の目撃時期を変遷させたのは,通常生じるはずのない不合理な変遷であるから,P1検事は,A子らの供述の信用性を慎重に吟味すべ きであったと主張する。しかしながら,A子は,初めて強姦被害にあった日を特定する根拠として,結婚式の翌日であったことを述べているのであって,初潮の時期を基礎として被害にあった日を特定しているわけではない。また,B男は,当初から時期を明確に述べていたわけではないうえ,A子と同様に,結婚式の翌日であったことを目撃日時の特定の 根拠として述べている。このようなA った日を特定しているわけではない。また,B男は,当初から時期を明確に述べていたわけではないうえ,A子と同様に,結婚式の翌日であったことを目撃日時の特定の 根拠として述べている。このようなA子らの供述内容に加え,本件強姦事件のうち1件目の被害があったとされる日から,本件刑事事件の捜査まで4年程度経過していることに鑑みれば,1年ほど被害時期が変遷したとしても,著しく不合理な変遷であるとまでは評価できない。したがって,A子らの被害時期にかかる供述の変遷が,A子らの供述の信用性 を直ちに揺るがすものとはいえず,この点に関する原告らの主張は採用できない。 また,原告らは,B男がA子の叫び声を聞いていたにもかかわらず,同居していた原告X1の母親がその声を聞いていないというのは不自然である旨指摘する。しかしながら,当時,原告X1の母は高齢であって, 耳が遠く,A子の叫び声が聞こえていなかったとしても不自然とまではいえず,原告らの主張する事情は,本件各公訴提起時におけるA子らの供述の信用性を大きく揺るがすものとまではいえない。したがって,原告らのかかる主張も採用できない。 イ原告X1の供述の信用性 原告X1は,本件刑事事件の捜査時には,いずれの事件についても否認 したうえで,本件強姦事件の犯人ではない理由として,自身は糖尿病に由来するインポテンツであり,そのことを医師にも相談していた旨述べている(乙6,12)。しかし,本件第1審においては,原告X1が診察を受けていた結城由恵医師の証人尋問が実施された結果,原告X1がインポテンツについて同医師に相談しておらず,治療も受けていない事実が判決にお いて認定されており,P1検事は,捜査段階において同医師から同旨の証言を録取していたものと推 された結果,原告X1がインポテンツについて同医師に相談しておらず,治療も受けていない事実が判決にお いて認定されており,P1検事は,捜査段階において同医師から同旨の証言を録取していたものと推認される(甲3,12)。そうすると,P1検事において,原告X1が有罪判決を免れるために虚偽の供述をしているとの心証に至ったとしても,必ずしもこれを不合理ということはできない。 (4) 以上によれば,P1検事が,本件診断書の「処女膜裂傷」との記載に陳旧 性のものが含まれると理解し,それ以上特段の捜査を行わなかった点は,やや性急な感を免れないが,通常要求される捜査を怠ったとまでいうことは困難である。したがって,P1検事が,本件各公訴提起にあたり,A子らの供述に基づいて原告X1に有罪と認められる嫌疑があると判断したことは,本件刑事事件において収集された証拠及び通常要求される捜査により収集し得 た証拠に照らして不合理であったと評価することはできないと考える。よって,本件各公訴提起は,国家賠償法上違法とは認められない。 4 争点3(本件公判検事らによる公訴維持及び勾留継続の違法性)について(1) 公訴進行時の検察官の心証は,その性質上,判決時における裁判官の心証と異なり,公訴追行時における各種の証拠資料を総合勘案して合理的な判断 過程により有罪と認められる嫌疑があれば足りるものと解するのが相当であるところ,公訴の提起が違法でないならば,公訴提起時に,すでに証拠資料から合理的な判断過程により有罪と認められる程度の嫌疑があるのであるから,当該嫌疑を覆すような特段の事情がない限り,公訴の維持も原則として違法でないと解すべきである(前掲最判参照)。 (2) 第3の3において述べたように,本件各公訴提起は適法なものであ ら,当該嫌疑を覆すような特段の事情がない限り,公訴の維持も原則として違法でないと解すべきである(前掲最判参照)。 (2) 第3の3において述べたように,本件各公訴提起は適法なものである。 また,本件第1審におけるA子らの証言は,捜査段階と同旨のものであり,本件第1審において,本件刑事事件において中核的な証拠であったA子供述やB男供述の信用性を否定するような新証拠は提出されなかった。 原告らの主張するように,本件第1審において,本件診断書が添付された捜査報告書が撤回されたという経緯はあるが,本件診断書は,A子が最後に 強姦被害にあったとされていた日から数か月後に作成されたものであって,もともと当該強姦被害があったことを立証することのできる証拠ではなかったのであるから,上記捜査報告書を撤回したからといって,原告X1に対する嫌疑が揺らぎ,何らかの補充捜査が必要となるという関係にはない。 したがって,本件各公訴提起時と同様に,本件第1審を担当したP2検事 らが,原告X1に有罪と認められる嫌疑があると考えたことは合理的であると認められる。 (3) 本件控訴審においては,弁護人から,本件第1審におけるEの供述内容を踏まえて,A子を受診させたという別の産婦人科の診断書や医療記録を取得する必要性が指摘されていたものである。しかしながら,これに対して,E は,本件第1審において,A子が痛がったり,患部がはれ上がっていたりしたため,適切に検査ができないと言われた旨供述しており,当時,Eに原告X1を虚偽の罪に陥れるような強い動機の存在はうかがえず,同供述の信用性を強く疑うべき事情があったということはできない。加えて,前記のとおり,当該別の産婦人科の受診時においても,A子が最後に強姦被害を受けた と るような強い動機の存在はうかがえず,同供述の信用性を強く疑うべき事情があったということはできない。加えて,前記のとおり,当該別の産婦人科の受診時においても,A子が最後に強姦被害を受けた とする日から長期間が経過しており,その診断書や医療記録はそれほど証拠価値が高くないと考えられたことからすると,本件控訴審を担当したP3検事が補充捜査を実施して本件カルテを取得しなかったとしても,通常要求される捜査を怠ったものとは認められない。 (4) 以上によれば,本件公判検事らによる公訴維持行為及びこれに伴う勾留継 続行為は,いずれも国家賠償法上違法とは認められない。 5 争点4(本件担当裁判所による判決行為の違法性)について裁判官による判決行為が国家賠償法上違法と評価されるのは,担当裁判官が違法又は不当な目的をもって裁判したなど,裁判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認めうるような特別の事情が存在する場合に限られる(最高裁判所第二小法廷判決・昭和57年3月12日民集3 6巻3号329頁)。 しかしながら,これらの点を指摘する原告らの主張は,要するに,本件第1審及び本件控訴審の事実認定や経験則,証拠評価等を批判するものであって,担当裁判官による裁判につき,違法又は不当な目的があった等の上記特別の事情が存在したことを基礎づけるものではない。また,確かにA子は,本件第1 審終了後,本件控訴審判決がされるまでの間に,自身の証言が虚偽であることを告白しているが,本件控訴審裁判所において,そのような告白がされたことをうかがい知ることができる主張書面や証拠は提出されていない。したがって,その結果本件控訴審裁判所がA子に対する再度の尋問等は行わない旨の判断に至ったことを不合理という ,そのような告白がされたことをうかがい知ることができる主張書面や証拠は提出されていない。したがって,その結果本件控訴審裁判所がA子に対する再度の尋問等は行わない旨の判断に至ったことを不合理ということはできないから,本件控訴審裁判所裁判所がA 子の証人尋問を行わなかったことをもって上記特別の事情が存するとは認められない。 以上によれば,原告らの主張は採用できず,本件担当裁判所による判決行為を国家賠償法上違法ということはできない。 6 争点5(本件交付拒否行為の違法性)について (1) 国家賠償法上の違法性が認められるには,公務員が個別の国民に対して負担する職務上の注意義務に違反したと認められなければならず(最高裁判所第一小法廷昭和60年11月21日判決・民集39巻7号1512頁参照),違法性が認められる前提として,国家賠償請求をする者が主張する権利利益が,法律上保護された権利利益でなければならない。 そこで,再審請求者の証拠一覧表交付請求権が,法律上保護された権利利 益と認められるかどうかを検討する。 (2) 刑事裁判の通常審は,当事者主義が採用されており,公判前整理手続に付された事件については,刑事訴訟法316条の14以下に規定された証拠開示手続に基づいて,検察官から弁護人に対し,証拠一覧表の交付及び証拠開示が行われることが予定されている。 これに対し,再審請求審の手続は,通常の刑事裁判手続を尽くして確定した有罪判決を覆す非常救済手続であって,再審請求権者から新規かつ明白な証拠が提出されるなど(刑事訴訟法435条6号),所定の再審事由の存在が前提とされているうえ,刑事訴訟法316条の14以下に規定された証拠開示手続は準用されていない。また,証拠一覧表の交付手続は,平成28 提出されるなど(刑事訴訟法435条6号),所定の再審事由の存在が前提とされているうえ,刑事訴訟法316条の14以下に規定された証拠開示手続は準用されていない。また,証拠一覧表の交付手続は,平成28年1 2月1日に施行された改正刑事訴訟法316条の14第2項において初めて認められたものであり,本件交付命令がされた平成27年1月14日当時,通常審の手続においても認められていなかったものである。 このような手続内容の差異や改正の経緯をふまえると,本件交付命令当時,刑事訴訟法上,証拠一覧表交付請求権すなわち再審請求人が検察官から証拠 一覧表の交付を受ける権利は,法律上保護された権利利益として認められているものではなかったと解するのが相当である。 (3) この点について,原告X1は,本件交付命令がされたことで,同人の証拠一覧表交付請求権が具体化したと主張する。 検察官側と被告人側との証拠収集能力には決定的な格差が存在し,そのこ とは再審請求審においても変わりがなく,検察官側が保管する証拠中に再審請求者側に有利な重要証拠が存在することも全くないわけではないから,再審請求者が提出した証拠の明白性を判断するための審理の一環として,公正な裁判と訴訟の円滑な遂行等の目的のもとに,再審請求審裁判所が,訴訟指揮権に基づき,証拠一覧表の交付を命ずることができると解する余地は十分 にあるというべきである。しかしながら,再審請求審裁判所が訴訟指揮の一 環として検察官に対して証拠一覧表の交付を命ずる旨の決定をした場合において,検察官がこれに応じ又は応じなかったことにより,訴訟状態が再審請求者に有利又は不利に変動することがあったとしても,そのことは再審請求者の実体的な権利が実現し又は毀損されたことを意味しない。換言すれ ,検察官がこれに応じ又は応じなかったことにより,訴訟状態が再審請求者に有利又は不利に変動することがあったとしても,そのことは再審請求者の実体的な権利が実現し又は毀損されたことを意味しない。換言すれば,再審請求者が証拠一覧表の交付を受ける利益は,そのような訴訟指揮に検察 官が従った結果,反射的に享受することがあるにすぎないものというべきである。 以上によれば,本件交付命令により,原告X1の証拠一覧表交付請求権が法律上保護される具体的な権利利益となったということはできず,同人による上記主張は採用しない。 なお,本件再審請求審において,担当検察官は,その初期からA子らの新供述が無罪を言い渡すべき明らかな証拠に当たる蓋然性が高いことを認め,当該A子の新供述の信用性を裏付ける本件カルテの存在及び記載内容を進んで開示していたのであり,原告X1が,証拠一覧表の交付を受けられないことによって,再審事由の存在が認められないおそれがあるなど,その防御権 が実質的に制約されるような事態は想定し難いものであったというべきである。 (4) 以上によれば,P4検事らが不服申立の手続をとらずに裁判所の訴訟指揮に従わなかったことの当否はおくとしても,再審請求人の証拠一覧表交付請求権は法律上保護された権利利益とはいえず,本件交付拒否行為によって原 告X1の具体的な権利利益が侵害されたわけでもないから,本件交付拒否行為は国家賠償法上違法とは認められない。 第4 結論よって,その余の点を判断するまでもなく,原告らの請求はいずれも理由がないから棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第18民事部 裁判長裁判官大島雅弘 裁判官石上興 いから棄却することとし,主文のとおり判決する。 大阪地方裁判所第18民事部 裁判長裁判官大島雅弘 裁判官石上興一 裁判官岩本圭矢 (別紙)略語一覧表 A子 本件刑事事件の被害者とされていた者のこと。なお,本判決においては仮名を用いる。 B男 本件刑事事件の目撃者とされ,かつ,A子の実兄であるB男のこと。なお,本判決においては仮名を用いる。 A子ら A子及びB男のこと。 E 原告X2の実子であり,かつ,A子及びB男の実母である者のこと。 F Eの夫である者のこと。 P1検事 本件刑事事件の捜査担当であったP1検事のこと。 本件強制わいせつ事件 原告X1を加害者,A子を被害者とする,平成20年7月上旬頃に発生したとされた強制わいせつ事件のこと。 本件強姦事件 原告X1を加害者,A子を被害者とする,平成16年11月21日頃及び平成20年4月14日頃に発生したとされた各強姦事件のこと。 本件刑事事件 本件強制わいせつ事件及び本件強姦事件のこと。 第1起訴 P1検事が,平成20年9月30日,本件強制わいせつ事件について,原告X1を被告人として起訴したこと。 第2起訴 P1検事が,平成20年11月12日,本件強姦事件について,原告X1を被告人として起訴したこと。 本件各公訴提起 第1起訴及び第2起訴のこと。 本件第1審 本件刑事事件の確定審第1審のこと。 本件控訴審 本件刑事事件の確定審控訴審のこと。 本件再審請求審 本件 12 本件各公訴提起第1起訴及び第2起訴のこと。 13 本件第1審本件刑事事件の確定審第1審のこと。 14 本件控訴審本件刑事事件の確定審控訴審のこと。 15 本件再審請求審本件刑事事件の再審請求審のこと。 16 本件再審本件刑事事件の再審のこと。 17 K1巡査部長本件強制わいせつ事件について,A子らの取調べを担当した大阪府警察Q警察署の司法警察員巡査部長Kのこと。 18 P2検事本件第1審の公判担当であったP2検事のこと。 19 P3検事本件控訴審の公判担当であったP3検事のこと。 20 本件公判検事らP2検事及びP3検事のこと。 21 P4検事ら本件再審請求審を担当したP4検事及びP5検事のこと。 22 本件第1審裁判所本件第1審公判を担当した裁判官3名による合議体のこと。 23 本件控訴審裁判所本件控訴審公判を担当した裁判官3名による合議体のこと。 24 本件担当裁判所本件1審裁判所及び本件控訴審裁判所のこと。 25 本件交付命令本件再審請求審裁判所が,P4検事らに対して証拠一覧表の交付を命じた決定のこと。 26 本件交付拒否行為P4検事らが,本件交付命令に対し,証拠一覧表の交付を拒否した行為のこと。 27 本件カルテH医院の医師が,平成20年8月29日に作成したA子のカルテ(乙1)のこと。 28 本件診断書IクリニックのG医師が,平成20年9月25日に作成した診断書(乙2)のこと。 29 G医師本件診断書を作成したG医師のこと。 30 証拠一覧表交付請求権原告X1が主張する,再審請求人が検察官から証拠一覧表の交付を受ける権利のこと。 以上 証拠一覧表交付請求権 原告X1が主張する,再審請求人が検察官から証拠一覧表の交付を受ける権利のこと。 以上
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