平成15(行ウ)21 春日井市立小学校教諭戒告

裁判年月日・裁判所
平成16年3月26日 名古屋地方裁判所
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判決文本文27,766 文字)

平成16年3月26日判決言渡平成15年(行ウ)第21号懲戒処分無効確認等請求事件 主文 1 被告Aが原告に対して平成10年3月24日に発令した戒告が無効であることを確認する。 2 被告Bは,原告に対し,10万円及びこれに対する平成15年5月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 原告の被告Bに対するその余の請求を棄却する。 4 訴訟費用は,原告に生じた費用の2分の1と被告Aに生じた費用を同被告の負担とし,原告に生じたその余の費用と被告Bに生じた費用の合計を10分し,その9を原告の,その余を同被告の各負担とする。 事実及び理由 第1 請求 1 主文第1項同旨 2 被告Bは,原告に対し,100万円及びこれに対する平成15年5月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,被告A(以下「被告A」という。)から戒告処分を受けた原告が,被告Aに対し,その無効確認を求めるとともに,上記戒告処分が撤回されなかったことが違法であるとして,被告B(以下「被告B」という。)に対し,国家賠償100万円及びこれに対する訴状送達の日である平成15年5月7日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるものである。 2 争いのない事実等(1) 原告は,市町村立学校職員給与負担法1条及び2条に規定するいわゆる県費負担教職員であって,昭和49年4月1日に被告Aから愛知県春日井市公立学校教員に任命された。 上記任命以降の原告の履歴は,以下のとおりである。 昭和49年4月1日愛知県春日井市立西部中学校教諭,同市立春日井小学校助教諭昭和51年4月1日同市立春 県春日井市公立学校教員に任命された。 上記任命以降の原告の履歴は,以下のとおりである。 昭和49年4月1日愛知県春日井市立西部中学校教諭,同市立春日井小学校助教諭昭和51年4月1日同市立春日井小学校教諭昭和52年4月1日同市立山王小学校教諭昭和60年4月1日同市立北城小学校教諭平成6年4月1日同市立西山小学校(以下「本件小学校」という。)教諭(2) 被告Aは,平成10年3月24日,原告に対し,「地方公務員法第29条第1項第1号及び第2号により戒告する」と発令した(以下「本件戒告処分」という。)。 本件戒告処分の理由は,同日付けの処分説明書によれば,「あなたが,日直勤務を命じられていた平成9年8月11日(月)に,職務専念義務を免除されることなく勤務しなかったことは,地方公務員法第32条及び第35条に違反するものである。」というものであった。 (3) 本件戒告処分は,原告が平成9年8月11日(以下「8月11日」という。)に本件小学校のC校長(以下「C校長」という。)より,日直勤務を命じられていたのに職務専念義務を免除されることなく勤務しなかったという事実(以下「本件処分事実」という。)を処分事由としていた。 (4) 原告は,8月11日を欠勤処理され,同処理に基づいて勤勉手当を減額支給されるとともに,いったん支払われた同年8月分の給与及び調整手当の一部を返還させられたが,8月11日はC校長の適法な承認の下で研修を行ったものであると主張して,被告Bに対し,勤勉手当の減額分の支払並びに返還させられた給与及び調整手当の返還を求める訴訟(以下「前訴事件」という。)を提起したところ,一審の名古屋地方裁判所(平成11年(ワ)第497号不当利得返還請求事件)は,平成13年8月31日,「原告は,8月11日,学校長の有効な承認の下で研修を行っ 下「前訴事件」という。)を提起したところ,一審の名古屋地方裁判所(平成11年(ワ)第497号不当利得返還請求事件)は,平成13年8月31日,「原告は,8月11日,学校長の有効な承認の下で研修を行ったと認められる」と判示して,遅延損害金の一部については請求を棄却したものの,原告の請求の大部分を認容し(甲3),その控訴審の名古屋高等裁判所(平成13年(ネ)第748号不当利得返還請求控訴事件)は,平成14年5月15日,上記一審判決の判示を維持し,被告Bの控訴を棄却した(甲4。以下,上記一審判決と控訴審判決を総称して「前訴判決」という。)。 (5) 地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下「地教行法」という。)38条1項は,「都道府県委員会は,市町村委員会の内申をまつて,県費負担教職員の任免その他の進退を行うものとする。」と定め,同条2項は,「市町村委員会は,教育長の助言により,前項の内申を行うものとする。」と定める。 ところが,本件戒告処分については,春日井市教育委員会の内申について同委員会の議決がされていない。 (6) 原告及び地方公務員法52条に定める職員団体であり,かつ同法53条の定めにより昭和62年7月30日に春日井市人事委員会に登録しているD労働者組合(以下「訴外労働者組合」という。)は,平成14年6月5日,被告Aに対し,本件戒告処分の撤回を申し入れた。 3 争点本件の争点は,①本件戒告処分は無効か,②本件戒告処分を撤回しなかったことは違法か,③原告の損害額は幾らか,という点である。 (1) 争点①(本件戒告処分は無効か)についてア原告の主張(ア) 本件処分事実の事実誤認についてa 本件処分事実は,原告が8月11日にC校長より,日直勤務を命じられていたのに職務専念義務を免除されることなく勤務しなかったというものであるが,C 原告の主張(ア) 本件処分事実の事実誤認についてa 本件処分事実は,原告が8月11日にC校長より,日直勤務を命じられていたのに職務専念義務を免除されることなく勤務しなかったというものであるが,C校長は,平成9年7月23日,原告に対し,8月11日を研修日として承認したものであり,同承認により原告の同日の職務専念義務は免除されていた。 このことは,前訴判決でその旨認定され,同判決は確定している。 b 本件処分事実の事実誤認は,本件戒告処分に重大な違法性が認められることにほかならない。 cC校長が8月11日について,平成9年7月23日に研修として承認したことは事実経過から容易に確認できるのであり,本件処分事実の事実誤認の違法性は明白である。 (イ) 春日井市教育委員会の内申の議決の不存在についてa 地教行法38条1項に定める市町村委員会の都道府県委員会に対する内申は,県費負担教職員の任免その他進退について,県費負担教職員にその身分保障の一環として法律上保障された重要な事前手続である。 b 本件戒告処分の内申については,春日井市教育委員会において議決が存在しないから,仮に同教育委員会名で内申手続がされていたとしても,当該内申手続は違法である。そして,前述したとおり,内申は県費負担教職員にその身分保障の一環として法律上保障された重要な事前手続であることを考えると,春日井市教育委員会の議決の存在しない内申手続の違法性は重大といわなければならない。 c 春日井市教育委員会の議決が不存在の内申手続の違法性は明白である。 d これに対し,被告らは,「本件については,被告Aは,原告の非違行為が判明した当初の時点から,春日井市教育委員会と連絡を取り合って,任命権者として事実関係の調査,確認等をしてきた。」と主張するが,地教行法43条4項に定められた都道 いては,被告Aは,原告の非違行為が判明した当初の時点から,春日井市教育委員会と連絡を取り合って,任命権者として事実関係の調査,確認等をしてきた。」と主張するが,地教行法43条4項に定められた都道府県教育委員会の権能をはるかに逸脱するものであるし,また,春日井市教育委員会の内申の意思決定自体がされていないのであるから,「内申」がないまま本件戒告処分を発令したことは厳然たる事実である。 被告らは,被告Aの任命権者としての立場を強調するが,本件は勤怠上の案件であって,地教行法43条1項に定める春日井市教育委員会の服務監督に関する事項である。被告Aは,現行の地教行法43条4項によれば,市町村教育委員会の服務監督権については単に「技術的な基準を設けることができる」にすぎない。したがって,被告Aが,春日井市教育委員会と連絡を取り合って事実関係の調査をしていたことが,仮に事実とすれば,地教行法43条4項に定められた権能をはるかに超えた逸脱行為であったことになる。 内申のないままにされた本件戒告処分は,その手続において重大な違法があって,かつ,その違法が明白であるから,本件戒告処分は無効である。 イ被告らの主張(ア) 本件処分事実の事実誤認についてa 現行制度においては,行政処分について不服がある場合,民事訴訟手続ではなく,別個独立した行政手続若しくは行政事件訴訟手続でもって違法性等が争われ解決が図られる制度となっている。 原告が本件戒告処分を争う場合,直せつに当該処分の取消しを求める不服申立てを行いあるいは取消訴訟を提起すべきであったのに,原告はこれを受容若しくは自己の不注意から不服申立期間を経過したためか,本件戒告処分は確定しているのである。 b 民事訴訟における裁判所の判断は,行政事件訴訟のそれとは必ずしも一致するものではない。民事訴訟におけ 若しくは自己の不注意から不服申立期間を経過したためか,本件戒告処分は確定しているのである。 b 民事訴訟における裁判所の判断は,行政事件訴訟のそれとは必ずしも一致するものではない。民事訴訟における裁判所の判断が確定したからといって,それでもって既に確定している行政処分が無効になるものではないし,取り消されるものでもない。 c 本件処分事実は,研修の承認,撤回等の事実認定が問題となった事案である。 双方の事実認識評価に相違があり,民事訴訟では原告の主張する事実認定が認められたが,そのことが行政事件訴訟における事実認定を拘束するものでなく,当該裁判所は本件戒告処分が何人が見ても一見して処分の根拠となった事実が不存在であるとかが明白である場合でなければ,これを法律上当然無効とすべきでないとされている。 d 本件戒告処分にはそのような事情はない。すなわち,法的な解釈として考えたとき,本件戒告処分の対象となった事実関係をして欠勤と評価する事実認識が,何人が見ても,到底そのように事実認識(評価)される余地が全くない場合であればともかく,社会通念に照らせば,そのように処分者が事実認識(評価)することがあり得る場合,結果的にその事実認識(評価)に瑕疵があったとしても,当然に当該行政処分が無効とされるものではないと解しなければ,行政事件訴訟制度を民事訴訟制度とは別に規定し,別個独立に争訟手続を峻別した制度意義が否定されることになる。 e 本件処分事実については,何人が見ても到底そのようには事実認識(評価)される余地が全くない事案ではない。したがって,既に確定した本件戒告処分を無効としなければならない理由はなく,原告の請求は行政事件訴訟制度を無視するものとして認められないものである。 f 被告Aは,任命権者として,原告の「日直は本務ではないからやらない。」 本件戒告処分を無効としなければならない理由はなく,原告の請求は行政事件訴訟制度を無視するものとして認められないものである。 f 被告Aは,任命権者として,原告の「日直は本務ではないからやらない。」という自己の主義・主張に固執し,日直をすべきというC校長の職務命令をあえて無視したばかりか,事後においてもC校長の説得に抵抗してきたという行為について,総合的にみれば,教育公務員秩序をびん乱する極めて悪質な非違行為であると認めて「欠勤」と評価し,懲戒としての本件戒告処分を発令したものである。その際,以後の原告による反省を期待する趣旨から,「戒告」という地方公務員法所定の懲戒処分の中で最も軽い処分を発令したのである。 本件の専決権者である被告Aの教育長が,諸般の事情を考慮しつつ,当該非違行為に対して懲戒処分を行うこととし,その内容として戒告処分を選択したことは,社会通念上著しく妥当性を欠き懲戒権を付与した目的を逸脱し,これを濫用したものとは到底いえないものである。単に8月11日に出勤しなかったという事実だけを処分対象として評価したものではない。 (イ) 春日井市教育委員会の内申の議決の不存在についてa 地教行法37条1項,38条1項の解釈について地教行法37条1項は,「市町村立学校職員給与負担法(中略)に規定する職員(以下「県費負担教職員」という。)の任命権は,都道府県委員会に属する」と規定する。 本条に定める「任命権」とは,単に任命の権限のみにとどまるものではなく,任用,免職,懲戒,給与の決定等,身分上の進退にかかわるすべての事項を含むものである。 本条が,県費負担教職員の任命権は都道府県教育委員会に属すると規定した趣旨は,県費負担教職員の適正な配置を図り人事交流の円滑化を図るためには,教職員の人事行政について統一的な処理が必要であると考えた 本条が,県費負担教職員の任命権は都道府県教育委員会に属すると規定した趣旨は,県費負担教職員の適正な配置を図り人事交流の円滑化を図るためには,教職員の人事行政について統一的な処理が必要であると考えたからである。 しかして,同法38条1項は,「都道府県委員会は,市町村委員会の内申をまつて,県費負担教職員の任免その他の進退を行うものとする。」と規定する。 この規定は,同法37条1項によって県費負担教職員に関する任命権は都道府県教育委員会に属するが,県費負担教職員は市町村の職員として市町村の設置する学校において市町村教育委員会の監督の下に職務を遂行していることから,都道府県教育委員会の人事行政を含む任命権の行使を適正かつ円滑に行うためには,都道府県教育委員会と市町村教育委員会が協働関係を維持しつつ,都道府県教育委員会においてその任命権を行使させることが望ましいとの判断から設けられたものである。 このように「内申」制度の趣旨は,任命権者である都道府県教育委員会が市町村教育委員会との間に協働関係を維持確保するというものであり,純粋に行政機関相互の関係を規律しているものである。換言すれば,「内申」制度は被処分者の権利保障の趣旨で設けられたものではない。 県費負担教職員の任命権者である都道府県教育委員会は,その任命権の行使に当たって,県費負担教職員の人事行政を統一的に処理していく必要から,市町村教育委員会の内申を考慮するが,飽くまで「考慮」であって,その内申に拘束されるものではない。都道府県教育委員会は,任命権者として,飽くまで自らの判断と責任において,その任命権を行使するものである。つまり,同法38条1項の「内申」は内部的行為といわれるもので,都道府県教育委員会は懲戒権の行使その他の任命権の行使に当たり,市町村教育委員会がなした「内申」には拘束されず,そ を行使するものである。つまり,同法38条1項の「内申」は内部的行為といわれるもので,都道府県教育委員会は懲戒権の行使その他の任命権の行使に当たり,市町村教育委員会がなした「内申」には拘束されず,それを参酌して独自に判断をなすという法構造になっているのである。 換言すれば,同法38条1項の趣旨は,県費負担教職員の服務監督権者である市町村教育委員会は,任命権者である都道府県教育委員会のなす懲戒を含む任命権の行使について「内申」という形で意見表明の機会をもち,この市町村教育委員会の意見具申を都道府県教育委員会は参酌資料として考慮し判断するという法構造である。 b 地教行法38条1項の「内申」の持つ意味について以上のような地教行法37条1項,38条1項の解釈によれば,県費負担教職員に対する懲戒処分は,任命権者である都道府県教育委員会が飽くまでも自らの判断と責任において独自になすものであるから,同法38条1項の内申に関しても,市町村教育委員会との協働を図るという見地から,都道府県教育委員会としては,文字どおり行政機関内部の行為として,「市町村教育委員会の内申をま」てばよく,懲戒処分の可否及びその内容については,飽くまでも,都道府県教育委員会が,その自らの判断と責任において行使すればよく,それで足りるのである。 換言すれば,同法38条1項は,市町村教育委員会に内申という形で,任命権者たる都道府県教育委員会への意見表明の機会を与える趣旨であって,その機会が実際に与えられ,内申書が都道府県教育委員会に提出され(あるいは提出されなくとも),それらを考慮して,任命権者たる都道府県教育委員会は,その任命権の行使について,独自に判断できるものである。その際,市町村教育委員会の内申がいかなるものであっても,それは,飽くまで参考にされるものであって,その手続の有 権者たる都道府県教育委員会は,その任命権の行使について,独自に判断できるものである。その際,市町村教育委員会の内申がいかなるものであっても,それは,飽くまで参考にされるものであって,その手続の有効性の確認まで同法上は問題としてはいないのである。 これらのことは,法文上,「内申により」若しくは「内申に基づき」と規定せず,「内申をまつて」と規定していることにも符合する。 市町村教育委員会からの内申がないまま都道府県教育委員会が任命権を行使して行った懲戒処分の違法性が問題となり,それが適法であることが是認された先例である最高裁昭和61年3月13日第一小法廷判決は,内申が市町村教育委員会に服務監督権者の立場から意見表明の機会を与える趣旨であるとするもので,被告らの見解と同様である。 被告Aは,市町村教育委員会の内申を全く無視してよいと主張するものではない。 同法38条1項の市町村教育委員会の内申は,県費負担教職員について被告Aがその任命権を行使する際の手続要件であると考えており,その内申なしに処分を行わないことが基本であることは承知している。しかし,市町村教育委員会の内申が何らかの事情によりされない場合,任命権者として,服務監督権者の意見具申(内申)がない限り任命権を行使し得ないとは考えていない。任命権者として統一的な人事行政を行使する立場からみて,都道府県教育委員会として適正な任命権の行使が必要と判断する場合には,市町村教育委員会の内申がない場合であっても可能と考えている。 つまり,市町村教育委員会の内申は手続要件として絶対不可欠なものとは考えていない。都道府県教育委員会が市町村教育委員会の「内申をまつて」人事権を行使するという法構造は,上記のように協働関係の維持確保にあることから,都道府県教育委員会と市町村教育委員会との相互の協力関係の下に任 。都道府県教育委員会が市町村教育委員会の「内申をまつて」人事権を行使するという法構造は,上記のように協働関係の維持確保にあることから,都道府県教育委員会と市町村教育委員会との相互の協力関係の下に任命権を行使するが,仮に市町村教育委員会の内申がない場合でも,そのことを一参考資料として,任命権者たる都道府県教育委員会は,独自に自らの判断と責任において任命権を行使するのである。 正に,任命権者たる都道府県教育委員会が,市町村教育委員会の内申には拘束されないとの考えは,任命権者たる都道府県教育委員会の任命権の行使は任命権者たる都道府県教育委員会自らの判断と責任に依拠した権限行使であることを当然の前提としているのである。 c 本件について本件については,被告Aは,原告の非違行為が判明した当初の時点から,春日井市教育委員会と連絡を取り合って,任命権者として事実関係の調査,確認等をしてきた。そして,春日井市教育委員会からの内申書の提出を待って,原告に対する本件戒告処分を発令した。 原告は,被告Aが,春日井市教育委員会と連絡を取り合って事実関係の調査をしていたことが,仮に事実とすれば,地教行法43条4項に定められた権能をはるかに超えた逸脱行為であったことになる旨主張するが,県費負担教職員の任命権が都道府県教育委員会にある以上,懲戒を含む任命権の行使に際し,都道府県教育委員会自らが,非違行為に係る事実関係の調査や確認等をするのは当然至極当たり前のことである。地教行法38条1項があることにより,被告Aの適切な任命権行使が妨げられるとするならば,それは法令上の要求に反し,公教育に対する県民の負託にもこたえられないものとなる。そのような解釈法は採り得ないことである。 d 予備的主張仮に,地教行法38条1項に定める「内申」が行政の内部行為として,その有効性を に反し,公教育に対する県民の負託にもこたえられないものとなる。そのような解釈法は採り得ないことである。 d 予備的主張仮に,地教行法38条1項に定める「内申」が行政の内部行為として,その有効性を前提とするとの場合であっても,本来,都道府県教育委員会が,自らの判断と責任において任命権を行使するものであるから,市町村教育委員会の内申を欠いていたとしても,それは内部手続上の軽微な瑕疵として,当然に,都道府県教育委員会の任命権に基づく処分の効力が無効とされるものではない。 すなわち,法的安定性,行政効率の要請等に照らして,当該事案における諸般の事情を考慮し,任命権者たる都道府県教育委員会が人事行政を含む任命権の行使として何らかの処分をした場合,その処分の実質的要件が満たされる限り,当該処分は有効なものとして機能させることが行政処分の安定性,実効性確保の観点から求められる。 県費負担教職員の任命権は,都道府県教育委員会が単独で有している。市町村教育委員会は,服務監督権者としての立場から,これに意見を述べることができるにとどまり,都道府県教育委員会が有する任命権の行使を抑制したり,空洞化させることは認められていない。 換言すれば,市町村教育委員会には,都道府県教育委員会に与えられている任命権の行使を阻害する機能は,法令上,何も与えられていないのである。かかる都道府県教育委員会と市町村教育委員会との相互関係に照らせば,市町村教育委員会の「内申」については,その内実について,過大に評価すべきものでないことは明らかであろう。 本件は,原告の行動が秩序維持その他県費負担教職員の行動として非違行為であるとして懲戒処分が相当とされたものであった。すなわち,本件の場合,被告Aが把握している事実経過において,原告は,所属長たる学校長の「日直勤務をなさないのであれ 費負担教職員の行動として非違行為であるとして懲戒処分が相当とされたものであった。すなわち,本件の場合,被告Aが把握している事実経過において,原告は,所属長たる学校長の「日直勤務をなさないのであれば研修は承認できない」との真意を,教育現場の実情を熟知している者として当然知り得たにもかかわらず,かかる所属長の指示を無視した行動をとったもので,上司である所属長(学校長)から命じられた事務を忠実に遂行しその日直業務を円滑かつ適正に遂行すべき職務上の義務を,自己の見解に固執して無視したもので,正当な理由なくこの職務遂行をしなかったことにより,教職員としての職の信用を傷つけ,職務に専念する義務に違背したものであった。 したがって,任命権者としては,懲戒処分が相当と判断した事案であったため,被告Aとしては,春日井市教育委員会と連絡を取り合って事実確認等の調査を終え,その判断として懲戒処分(戒告)が相当としたものである。 後日,春日井市教育委員会からの内申書について,春日井市教育委員会会議の決議がなかったことが判明し,春日井市教育委員会の規則上,同教育委員会の内申がされていない状況を生じるに至ったが,被告Aの今回の本件戒告処分(任命権の行使)に際しては,手続的に「内申をまつて」行われたもので,当然に無効となる事案ではない。 そして,本件戒告処分に関する不服申立て(取消請求手続)もなく確定したのであるから,この不服申立期間経過後において,春日井市教育委員会会議の内申決議を欠いた事実は,この確定した行政処分の消長に影響を及ぼすべきものでない。 (2) 争点②(本件戒告処分を撤回しなかったことは違法か)についてア原告の主張(ア) 前記のとおり,本件戒告処分は,春日井市教育委員会の適法な内申のないまま処分したという,その手続に重大かつ明白な違法があったのであ 告処分を撤回しなかったことは違法か)についてア原告の主張(ア) 前記のとおり,本件戒告処分は,春日井市教育委員会の適法な内申のないまま処分したという,その手続に重大かつ明白な違法があったのであり,しかも,被告Aにおいて,改めて春日井市教育委員会に対して意見具申を求めたところ,同委員会からは何の返答もないというのであるから,本件戒告処分の内申について,同委員会が後日にせよ内申を議決する意思のないこともはっきりしている。 (イ) また,前記のとおり,C校長が平成9年7月23日に原告に対し8月11日を研修日として承認したものであり,同承認により原告の同日の職務専念義務が免除されていたことは,前訴判決により認定され,同判決は確定した。 前訴事件は,公法上の当事者訴訟(範疇としては実質的当事者訴訟)と解すべきであって,単なる民事訴訟ではない。行政事件訴訟法38条,33条は実質的当事者訴訟にも適用があると解すべきであり,被告Aは前訴判決に拘束される。 仮に,実質的当事者訴訟に行政事件訴訟法38条,33条の適用がなく,若しくは,前訴事件が公法上の当事者訴訟でないとしても,前訴事件の唯一の争点は8月11日の勤務関係が研修として承認されていたか否かであったから,同じ当事者(被告Aも実質的に同じ当事者といえる。)として,信義則上前訴判決の事実認定に拘束されると解すべきである。 これに対し,被告らは,前訴事件が公法上の当事者訴訟(実質的当事者訴訟)たり得るためには,少なくとも原告が本件戒告処分の無効を前提として訴訟提起をしていることが必要であるところ,前訴事件は8月11日に原告が欠勤したという事実を基礎とするもので,本件戒告処分の無効を前提としていないから,公法上の当事者訴訟ではない旨主張する。しかし,かかる論旨は形式主義に堕するもので失当である。行政事件 11日に原告が欠勤したという事実を基礎とするもので,本件戒告処分の無効を前提としていないから,公法上の当事者訴訟ではない旨主張する。しかし,かかる論旨は形式主義に堕するもので失当である。行政事件訴訟法36条にいう「当該処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴え」が公法上の当事者訴訟であることは疑いがないが,仮に請求の原因において明示して「当該処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無」について主張していないとしても,これら主張の原因となる事実関係と同じ事実関係を主張していたのであれば,公法上の当事者訴訟と解すべきである。そして,8月11日が欠勤か否かという事実関係は,本件戒告処分を無効とする事実関係そのものにほかならない。 (ウ) 以上のとおり,本件戒告処分の手続に重大かつ明白な違法があって,かつ,後日にせよ手続の違法を治癒されることのないことが確定した以上,前訴判決において「C校長は平成9年7月23日に,8月11日を研修日として承認した」事実が認定されこれが確定したという事実関係をも併せて考えれば,懲戒権者として適正な懲戒権を行使しなければならないとの本旨から,被告Aの委員長若しくは教育長において,信義則上,本件戒告処分を撤回すべき法的義務を負うといわなければならない。 (エ) 原告は訴外労働者組合に結成時より加入しているところ,同組合及び原告が平成14年6月5日付けで被告Aに本件戒告処分の撤回を申し入れたにもかかわらず,撤回せず,今日に至っている。 この不作為は,撤回権限を有する被告Aの代表者である委員長及び事務の最高責任者である教育長がその職務執行に当たって違法があったと解すべきである。 被告Aの委員長及び教育長は,上記の違法な職務執行について故意若しくは過失がある。 (オ) また,被告らの本訴に び事務の最高責任者である教育長がその職務執行に当たって違法があったと解すべきである。 被告Aの委員長及び教育長は,上記の違法な職務執行について故意若しくは過失がある。 (オ) また,被告らの本訴における主張自体から,被告Aの委員及び教育長が,本件戒告処分について,春日井市教育委員会の内申の議決がなかったこと,したがって,内申手続は形式的には存在したとしても実際には存在しなかったことを,遅くとも本訴提起後には十分に認識するに至っていることは明白である。よって,本訴提起後もなお本件戒告処分を維持し,撤回しないことは,故意による違法な職務執行である。 (カ) これに対し,被告らは,都道府県教育委員会の懲戒処分に当たって市町村教育委員会の内申が絶対不可欠なものとされていないと言い,最高裁昭和61年3月13日第一小法廷判決を引用する。 しかし,同判決の事案は,県教育委員会の要請にもかかわらず,市町村教育委員会が当然内申すべき非違行為について意図的に内申を拒んだという特別な事例である。このような事案の特殊性から,「市町村教育委員会が,教職員の非違行為などに関し内申しないことが,服務監督権者として採るべき措置を怠るものであり,人事管理上著しく適正を欠くと認められる場合」として,懲戒権の適正な行使の確保という観点からいわば非常事態的に容認されたと解される。ところが,本件の場合には,本来市町村教育委員会の議決によって内申の意思決定をすることが法的に予定されているのに意思決定をしないまま,ただ外形的に内申をしたというのである。本件のごとき事案では,懲戒権者の方で懲戒処分の発令に当たって適正手続の遵守を市町村教育委員会に求めるべきであり,仮に市町村教育委員会の手続において適正な手続が遵守されていないときには懲戒権の適正な行使を確保するために,処分を発令せず 戒処分の発令に当たって適正手続の遵守を市町村教育委員会に求めるべきであり,仮に市町村教育委員会の手続において適正な手続が遵守されていないときには懲戒権の適正な行使を確保するために,処分を発令せず,仮に発令済みのときには速やかに取り消さなければならない。 また,被告らは,被告Aが本件戒告処分の前提とした事実経過は,所属長たる学校長の原告に対する日直勤務をしないのであれば研修は承認できないとの真意を,教育現場の実情を熟知している原告は当然知り得たものと解されるから,かかる所属長の指示を無視した原告の行動は,教職員としての職の信用を傷つけたと同時に職務に専念する義務に違背したものとして許容できるものではないことから,確定した本件戒告処分を撤回する理由はないと判断した旨主張する。 しかし,前訴判決は,8月11日の勤務は研修として承認されたと言うのであるから,被告らの上記主張は不当であり,かえって,被告らが本件戒告処分の発令について前提とした事実が前訴判決によって否定されたのであるから,本件戒告処分が前提を欠くことを被告Aは認識したことになる。 被告らは,本件処分事実の事実誤認について,前訴事件は民事訴訟であって,前訴判決の既判力が本件戒告処分に及ぶことはないと言うが,前訴事件は実質的当事者訴訟と解すべきことは前記のとおりである。 イ被告らの主張(ア) 原告にかかわる春日井市教育委員会名義の内申が被告Aあてに出されていたが,この内申は春日井市教育委員会の議決を経ていないものであった。 (イ) このため,任命権者として原告に対する懲戒処分権限を有する被告Aとしては,問題となっている当時の原告の行動についてした本件戒告処分(既に確定している行政処分)について撤回すべきか否かの判断をするため,手続上の瑕疵とされる上記の点を考慮し,改めて,春日井市教育 としては,問題となっている当時の原告の行動についてした本件戒告処分(既に確定している行政処分)について撤回すべきか否かの判断をするため,手続上の瑕疵とされる上記の点を考慮し,改めて,春日井市教育委員会に対し,春日井市教育委員会としては懲戒処分とすべきか否かについて,どのような考えなのか,検討されてしかるべき意見具申(内申)を被告Aにされたいと,平成15年7月22日付けで照会した。 平成15年8月11日,春日井市教育委員会委員長が,被告Aを訪れ,「春日井市教育委員会としては,被告Aからの平成15年7月22日付け照会に対し,何も回答をしないこととする。」旨を伝えてきた。 (ウ) 本件戒告処分は,結果的に春日井市教育委員会の内申に関する手続において瑕疵があったわけであり,その後,この瑕疵の存在が分かった後,任命権者たる被告Aから改めての意見(内申)を求める具申照会に対し,春日井市教育委員会としては何も回答しない旨を伝えてきた。その後,しばらく経過を待っていたが,約1か月経過した後においても春日井市教育委員会からの意見具申(内申)はない。この間の経過に照らせば,本件戒告処分に関する春日井市教育委員会の意見(内申)は具申されないものと考えられる。 (エ) しかし,前記のとおり,この内申の存在は絶対不可欠なものとはされておらず,市町村教育委員会に内申が求められ,その内申の機会が与えられながら,市町村教育委員会が内申をしない場合など,例外的な場合には,市町村教育委員会の内申がなくても,任命権者たる都道府県教育委員会において懲戒処分をすることができると解されている(最高裁昭和61年3月13日第一小法廷判決参照)。 (オ) 本件戒告処分は既に確定しており,被告Aとしては,原告に関する本件戒告処分の撤回をするか否かの検討をするため,前記のとおり春日井 されている(最高裁昭和61年3月13日第一小法廷判決参照)。 (オ) 本件戒告処分は既に確定しており,被告Aとしては,原告に関する本件戒告処分の撤回をするか否かの検討をするため,前記のとおり春日井市教育委員会に対する意見(内申)の照会をしたが,これが具申されないと判断されるので,独自にこの問題について再検討することとした。 被告Aが本件戒告処分の前提とした事実経過は,所属長たる学校長の原告に対する日直勤務をしないのであれば研修は承認できないとの真意を,教育現場の実情を熟知している原告は当然知り得たものと解されるから(この事実認定について,民事事件の判決による事実認定が存在することは承知しているが,行政処分にかかわる行政事件と民事事件とは別個の争訟制度であり,民事事件の事実認定に拘束されるものではなく,再検討の際の一資料である。),かかる所属長の指示を無視した原告の行動は,その職の信用を傷つけるような行為をしてはならないことはもとより,法令の定めるところに従い,上司である所属長(学校長)から命じられた事務を忠実に遂行し,その日直業務を円滑かつ適正に遂行すべき職務上の義務を負っているにもかかわらず,自己の見解に固執してこれを無視したものであり,正当な理由なくこの職務の遂行をしなかったことは,教職員としての職の信用を傷つけたと同時に職務に専念する義務に違背したものとして許容できるものではないことから,この確定した本件戒告処分を撤回する理由はないと判断した。 (カ) 懲戒処分は,諸般の事情を考慮して,その裁量の範囲内において任命権者によってされるものである。 原告の任命権者である被告Aは,本件戒告処分はその法的効果として既に確定したものであり,たまたま別件民事訴訟の前訴判決の事実認定が被告Aの認識するところと異なるものであったとしても,あるい である。 原告の任命権者である被告Aは,本件戒告処分はその法的効果として既に確定したものであり,たまたま別件民事訴訟の前訴判決の事実認定が被告Aの認識するところと異なるものであったとしても,あるいは春日井市教育委員会の内申にかかわる一連の対応等に手続違背があったとしても,本件戒告処分に至った経緯,その他諸般の事情を総合的にすべて考慮したところ,現時点において,これを撤回しなければ著しく社会正義に反するとは当然にいえるものでなく,本件戒告処分をあえて撤回することなく,そのまま維持することが相当と判断した。 この判断は,任命権者として与えられた裁量権の行使として許されているもので,そのことについて何ら逸脱あるいは濫用はなく,国家賠償法にいう責任は何もない。 (キ) これに対し,原告は,前訴事件は実質的当事者訴訟であり,被告Aは前訴判決に拘束される旨主張する。 しかし,前訴事件が実質的当事者訴訟たり得るためには,本件に即していえば,原告が本件戒告処分の無効を前提として訴訟提起していることが必要である。しかるに,前訴判決は,本件戒告処分の無効を前提としてなされたものではないから,実質的当事者訴訟には該当しない。すなわち,原告が前訴事件において主張していた不当利得は,平成9年8月分給料及び調整手当の減額分と,同年12月10日支給の勤勉手当の減額分についてである。後者は当初より原告に支給されず,前者についても同年12月25日に原告より納付されているところ,これらの減額は8月11日に原告が欠勤したという事実を基礎としてされたもので,平成10年3月24日になってから発令された本件戒告処分とは関係のない事柄である。以上のとおり,前訴事件は,原告の主張していた「不当利得」なるものが,飽くまで民法上の不当利得であるか否かということ,すなわち,行政行為(本件に てから発令された本件戒告処分とは関係のない事柄である。以上のとおり,前訴事件は,原告の主張していた「不当利得」なるものが,飽くまで民法上の不当利得であるか否かということ,すなわち,行政行為(本件に即していえば,本件戒告処分)に基づかないで不当利得の生じた場合について争われていた訴訟であり,抗告訴訟で取り扱われるべき行政行為の有効性について争われた訴訟ではない。 原告が本件戒告処分について不服があるならば,その法的手続としては,その取消しを求める不服申立手続,取消訴訟の提起によるべきである。しかるに,原告は,不服申立期間内に不服申立手続をとらず,本件戒告処分は既に確定したものである。 取消訴訟中心主義を採用した我が国の「行政訴訟」に係る法体系にあって,不当利得返還請求訴訟という「民事訴訟」,つまり別体系の訴訟手続がされ,その訴訟の過程で何らかの関連性が認められたとしても,この「民事訴訟」は,本件戒告処分に対する不服を示す方法として,極めてう遠なやり方であり,このような「民事訴訟」について,適法に取消訴訟を提起した場合と同様の法的利益を享受させることを,法は予定していない。もし,そのような利益の享受を認めれば,早期に行政処分の効力が確定することを意図した「行政訴訟」に係る争訟法体系(争訟手続体系)を乱すもので,法がこれを許容しているとは到底いえないものである。 前訴判決の確定により,その請求対象であった不当利得なるものについては,既に当該判決に従って返還しており,それ以上の義務は,被告Bにも,ましてや被告Aにおいて何も存在しない。 (3) 争点③(原告の損害額は幾らか)についてア原告の主張原告の本件戒告処分が撤回されないことに伴う精神的苦痛は100万円を下らない。 イ被告らの主張争う。 第3 判断 1 前提となる事実(1) 前記争 原告の損害額は幾らか)についてア原告の主張原告の本件戒告処分が撤回されないことに伴う精神的苦痛は100万円を下らない。 イ被告らの主張争う。 第3 判断 1 前提となる事実(1) 前記争いのない事実等に,甲3,4,乙3,4の1,2,13の1ないし3,14の1,2,15の1ないし3及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実を認めることができる。 ア訴外労働者組合とC校長の前任の本件小学校の校長であったE(以下「E前校長」という。)は,平成8年7月12日,指定休(夏季,冬季等の生徒の休業期間中に学校長が指定する「週休日」(学校職員の勤務時間等に関する規則(昭和46年12月24日教育委員会規則第12号)3条2項のことである。)に関し,「休業中の日直日の行使を認める」との合意(以下「本件合意」という。)をした。 C校長は,平成9年4月28日,訴外労働者組合に対し,本件合意を含むE前校長と同組合との従前の合意事項は継続して守っていく旨約束した。 イ C校長は,原告に対し,平成9年度の夏季休業期間中の校務分掌として,合計3日間(同年7月23日,8月11日及び同月28日)の日直勤務を命じた。 ウ本件小学校では,夏季休業期間に入る前に「動向表」と題する書面(以下「動向表」という。)が教職員に配布され,各教職員が,動向表に夏季休業期間中の出張,旅行,年次有給休暇,研修,指定休等の取得に関する事項を記入して校長あてに提出し,これを受けた校長が,必要に応じて各教職員から事情を聴き,不適切な部分について訂正を求めた後,動向表に押印するという取扱いとなっていた。 そして,夏季休業期間中の研修の承認については,校長が動向表に承認印を押して,その旨各教職員に伝達し,夏季休業期間後に,動向表を各教職員にいったん戻し,各教職員が夏季休業期間中の実際の休暇等の取得状況に て,夏季休業期間中の研修の承認については,校長が動向表に承認印を押して,その旨各教職員に伝達し,夏季休業期間後に,動向表を各教職員にいったん戻し,各教職員が夏季休業期間中の実際の休暇等の取得状況に応じて動向表を変更,訂正して校長に再度提出すると,校長は,それを点検した後,研修承認簿と共に再度各教職員に返還し,各教職員が動向表に基づいて研修承認簿に必要事項を記入し,研修承認簿と動向表を校長に再提出すると,校長は,研修承認簿の記載が動向表と合致しているか確認した上で,誤りがなければ研修承認簿に押印する取扱い(なお,研修承認簿の承認年月日欄には実際に研修承認簿を記載した日ではなく夏季休業期間前の日付が記載される。)になっていた。 エ原告は,平成9年7月18日,日直日として既に指定されていた8月11日に指定休を希望する旨動向表に記載して,C校長に提出した。 そこで,C校長は,同年7月18日,原告に電話し,「市教委のG先生に聞いたら,日直日の指定休はだめと言われた。組合との合意に反し心苦しいが,研修に変えてもらうか,指定休なら日直を校長か教頭に代わったことにしてほしい。」と要請したが,原告は,本件合意に反するとしてこれを断った。 オ C校長は,平成9年7月19日,原告に対し,「8月11日の日直日は研修か家族休暇でお願いしたい。」と要請したが,原告は,「日直日に指定休を認めることは合意事項であるし,以前にも実績がある。」などと述べてこれを了承しなかった。そこで,同年7月23日に,両者間で再度話合いがもたれることになった。 カ平成9年7月23日,原告とC校長との間で,8月11日の取扱いについての話合い(以下「7月23日の話合い」という。)がなされ,その際,C校長は,「8月11日は日直をお願いしておりま とになった。 カ平成9年7月23日,原告とC校長との間で,8月11日の取扱いについての話合い(以下「7月23日の話合い」という。)がなされ,その際,C校長は,「8月11日は日直をお願いしております。(中略)日直中ですので週休を指定することはできませんので,週休以外の日にしていただくか,日直を他のところに代えていただけませんか。」,「例えば,研修なら研修に。」などと原告に提案した。 これに対して,原告は,当初は難色を示していたが,最終的には今回に限って妥協して研修で申請し直す旨述べるに至り,動向表の8月11日の「指定休」欄の〇印を2重線で抹消した上,新たに「研修」欄に〇印を記入した。そこで,C校長も上記訂正を確認の上,動向表に承認印を押印した。 なお,このとき,C校長は,F教頭(以下「F教頭」という。)に対し,8月11日に日直勤務を担当するよう指示したが,原告に対して,他の日に日直勤務を行う必要がある旨述べたことはなく,原告は,8月11日の代わりに他の日に日直勤務を行う必要はないものと理解していた。 キ C校長は,平成9年8月9日,原告に電話して,「市教委のGさんに聞いたら,代わりの日に日直をやってもらわなければいかんと言われたので,何とかお願いできないか。」と要請したが,原告は,「それは7月23日の話と違う。やる必要はない。」などと述べてこれを断った。すると,C校長は,「分かりました。私も立場上のことがあるのでこういう電話のあったことだけ承知しておいてください。」と述べて電話を切った。 ク平成9年8月11日,原告は,豊橋の実家で教材研究の研修をした。 C校長は,同日,原告に連絡を取ろうとして,動向表に記載されていた連絡先の電話番号に電話したが,原告が間違った電話番号を記載していたため,全く関係のない人が電話に出て,原告と連絡を取ること をした。 C校長は,同日,原告に連絡を取ろうとして,動向表に記載されていた連絡先の電話番号に電話したが,原告が間違った電話番号を記載していたため,全く関係のない人が電話に出て,原告と連絡を取ることができなかった。 ケその後,8月11日の件について,訴外労働者組合とC校長との間で,平成9年9月11日,同月19日及び同年10月13日の3回にわたって話合いがもたれた。 (ア) 平成9年9月11日の話合いにおいて,C校長が,「まず,4月28日に本件合意を確認したが,私自身が日直や指定休の意味がよく分からなかったものであるから,本件合意は廃止したい。」旨述べたところ,訴外労働者組合側は,これを拒否し,「廃止したいのであれば,校長から廃止についての交渉を申し入れるように。」と返答した。 ついで,C校長が,「研修といったときには,他の所に日直が必ずあるという前提で原告は考えていると思った。」と発言したところ,原告は,「研修にすれば日直は終わりじゃないか。」などと述べて同発言に強く反発し,交渉は紛糾した。そして,訴外労働者組合側は,本件合意どおり指定休にするようにと要求し,最終的には,他の日に日直勤務をすることなく8月11日を指定休あるいは研修のいずれかとすることで合意し,C校長がいずれかを選択して次回に回答することになった。 (イ) 平成9年9月19日の話合いにおいて,C校長が,「日直は職務なので,日直をお願いしておいて,日直しなくてもよいというのは矛盾するから,8月11日を指定休にすることはできない。」旨述べたところ,訴外労働者組合側は,今回は指定休か研修の二者択一をするということであったから,その回答をするようにと強く迫った。これに困惑したC校長は,「今回の協議の内容を取り違えていたので,二者択一を迫られても回答が用意していないので,考える時間を の二者択一をするということであったから,その回答をするようにと強く迫った。これに困惑したC校長は,「今回の協議の内容を取り違えていたので,二者択一を迫られても回答が用意していないので,考える時間をいただけませんか。」と要請し,最終的に,「本件合意に従って8月11日の原告の日直日に指定休を認めるか,あるいは同日を研修として認めるのかいずれかを次回に回答する。他の選択肢はないものとする。」旨合意した。 (ウ) 平成9年10月13日の話合いにおいて,C校長は,「8月11日を指定休として認めることはできない。他の日に日直を担当するなら研修を認める。」,「二者択一をすることはできない。自分自身が矛盾することである。」旨述べた。 これに対して,訴外労働者組合側は猛烈に反発し,交渉は紛糾したまま時間切れ終了となった。 コ上記交渉経過を踏まえ,C校長は,平成9年10月17日,原告に対し,「平成9年8月11日は,指定休を割振らないものとする。よって,平成9年10月20日までに,休暇の届出がないかぎり,欠勤として処理するものとする。なお,今後,同種のことがあれば,猶予せず欠勤とする。」と記載した通告文を交付した。 しかし,原告は,上記通告文は認められないとして,休暇届を出さなかったため,C校長は,同月21日,8月11日に原告が欠勤したものとして処理した。 サ夏季休業期間終了後の平成9年9月初め,原告が,本件小学校における研修承認手続の取扱いに従って,夏季休業期間中にした研修につき,その承認年月日(いずれも7月19日),研修期間(7月22日,7月24日から7月25日まで,7月28日から30日まで,8月1日,8月4日から5日まで,8月11日から14日まで,8月18日から21日まで,8月25日,8月29日),研修の場所(いずれも自宅),研修項目(いずれも教材研究 で,7月28日から30日まで,8月1日,8月4日から5日まで,8月11日から14日まで,8月18日から21日まで,8月25日,8月29日),研修の場所(いずれも自宅),研修項目(いずれも教材研究)をそれぞれ研修承認簿に記載してC校長に提出したところ,C校長は,8月11日から14日までの欄については,当時まだ原告と折衝中であったため承認印を押さなかったが,それ以外の欄については承認印を押した。 (2)アa 前記(1)のウで認定した本件小学校における動向表の取扱いと夏季休業期間中の研修承認の取扱い,同エないしカで認定した7月23日の話合いに至る経緯,同日の話合いの内容及び同キで認定した平成9年8月9日の電話の際のC校長の発言内容,特に,7月23日の話合いの最後に,原告が,動向表の8月11日の「指定休」欄の〇印を2重線で抹消した上,新たに「研修」欄に〇印を記入した後,C校長がこれを確認して承認印を押し,F教頭に対して,8月11日の日直勤務を指示した事実によれば,C校長は,7月23日の話合いの際に,8月11日を研修として承認したものと認めるのが相当である。 また,前記(1)のウ,サで認定したとおり,本件小学校においては,学校長の研修承認簿への必要事項の記載と押印は,夏休みが明けた9月に入ってから行われていたことが認められるところ,研修承認簿への必要事項の記載,押印が研修承認の有効要件であるとすると,各教職員は,研修承認がされないまま研修を行っていたということにならざるを得ないが,かかる事態は極めて不都合である上,各教職員の意思にも合致しないというべきであるし,加えて,研修承認簿の「承認年月日」欄には,実際に研修承認簿を記載した日ではなく,夏季休業期間前の日付が記載されていることを併せ考えると,前記(1)のウで認定したとおり,本件小学校において であるし,加えて,研修承認簿の「承認年月日」欄には,実際に研修承認簿を記載した日ではなく,夏季休業期間前の日付が記載されていることを併せ考えると,前記(1)のウで認定したとおり,本件小学校においては,各教職員が動向表によって夏季休業期間中の研修申請を行い,校長が動向表に押印することによってこれを承認するという手順で研修承認を行っていたと認めるのが相当である。 b 乙1の「学校職員の研修及び休暇の取扱について」(昭和33年6月30日付け教職第232号教育長通知)には,「その取扱について,特に別記の事項に留意して処理されたい。」とあり,別記として,改正処務規程第15条の6は,教員が研修を行う場合その承認を受けようとするときの手続である,研修承認簿の様式は別記によられたい等の記載があり,研修承認簿の様式が付記されている。 しかし,教育公務員特例法(以下「教特法」という。)は20条で「教育公務員には,研修を受ける機会が与えられなければならない。教員は,授業に支障のない限り,本属長の承認を受けて,勤務場所を離れて研修を行うことができる。」と研修について定めているが,本属長(学校長)の研修承認の方式について特段の定めをしていないから,法的には口頭による承認であっても有効というべきである。 上記認定のとおり,本件小学校においては,動向表による研修承認方法が長期休業期間に際して運用されそれなりの教育現場の工夫として定着していたこと,教特法自体は口頭の承認であっても有効と解されることなどにかんがみると,動向表による研修承認の効力を否定するには,特段の明確な根拠が認められなければならないというべきである。しかるに,上記乙1の通知は,あて名が県立学校長となっており,春日井市立学校である本件小学校の学校長やその教員である原告に直接適用されるか否かにつき明確では められなければならないというべきである。しかるに,上記乙1の通知は,あて名が県立学校長となっており,春日井市立学校である本件小学校の学校長やその教員である原告に直接適用されるか否かにつき明確ではなく,これを根拠に動向表による研修承認の効力を否定することは困難である。 イそして,前記(1)のキで認定したとおり,C校長は,平成9年8月9日,原告に対し,他の日に日直を行うことを要請し,原告がこれを拒否しても,研修承認の撤回をうかがわせるようなことは何も言わずに電話を切っているのであるから,上記電話での会話内容から,C校長が黙示的に8月11日の研修としての承認を撤回したと認めることは到底できない。 むしろ,C校長の上記要請を拒否した原告に対し,C校長がそれ以上何らの交渉を行っていないことからすると,C校長としても,少なくとも8月11日の研修当日までは,原告に日直を分担してもらいたいという意図は有しつつも,研修承認自体についてはやむなく容認していたと解される。 被告らは,被告Aが本件戒告処分の前提とした事実経過として,教育現場の実情を熟知している原告は,所属長たる学校長の原告に対する日直勤務をしないのであれば研修は承認できないとの真意を当然知り得たものと解される旨主張する。 しかし,C校長の8月11日の研修承認については上記動向表によりそれなりの手続を踏んでいるのであり,一方,承認の撤回は研修者に少なからぬ不利益を与えかねないことからすると,研修承認の撤回は明示であるべきであって,よほどの事情がない限り黙示の撤回は認められないというべきである。上記認定のごとく,本件合意に基づき,指定休の行使は当然認められるべきである旨の,訴外労働者組合や原告の姿勢は特に変わっていないこと,研修承認問題をめぐって原告が前訴事件を提起するに至っていることなどにかん ごとく,本件合意に基づき,指定休の行使は当然認められるべきである旨の,訴外労働者組合や原告の姿勢は特に変わっていないこと,研修承認問題をめぐって原告が前訴事件を提起するに至っていることなどにかんがみると,原告において日直勤務をしないのであれば研修は承認できないとの学校長の真意を当然知り得たものとは到底認め難い。むしろ,原告は,指定休の申請を研修日とすることで妥協したとの認識であり,他の日に日直を振り替えるようなことは考えていなかったものと認められる。 かかる事情に照らし,他の日の日直振替えを拒否することによりいったんされた承認が黙示的に撤回されたということはできない。 ウさらに,学校長がいったんした研修承認を研修日経過後にも撤回可能であるとすると,各教職員は研修が承認されているとの認識の下で実際に研修を行ったにもかかわらず,その後に翻って欠勤扱いされることになってしまうが,かかる事態を容認することができないのは当然であるから,研修が実際に行われていなかった等の特段の事情がある場合は格別,そうでない限り,いったんされた研修承認を研修日経過後に撤回することは,研修が承認されたと認識し研修を行った教職員が事後的撤回によりできるだけ不利益を被ることがないよう十分に配慮されていたとしても,許されないと解するのが相当である。 なお,C校長が,日直指定日に研修を承認するためには,他の日に日直勤務を行う必要があると判断したのであれば,研修日が経過した以上,原告に対して,他の日に日直勤務を命ずることによって対処すべきであり,原告が任意に他の日に日直勤務を行わなかったからといって,研修承認を撤回することはできないというべきである。 そして,原告が8月11日に豊橋の実家において教材研究の研修を行っていたことは,前記(1)のクで認定したとおりである。 エ以 かったからといって,研修承認を撤回することはできないというべきである。 そして,原告が8月11日に豊橋の実家において教材研究の研修を行っていたことは,前記(1)のクで認定したとおりである。 エ以上によれば,原告は,8月11日,C校長の有効な承認の下で研修を行ったものと認められる。 2 争点①(本件戒告処分は無効か)について(1) 前記争いのない事実等によれば,本件戒告処分の理由は,「あなたが,日直勤務を命じられていた平成9年8月11日(月)に,職務専念義務を免除されることなく勤務しなかったことは,地方公務員法第32条及び第35条に違反するものである。」というものであり,本件処分事実は,原告が,8月11日に,C校長より日直勤務を命じられていたのに,職務専念義務を免除されることなく勤務しなかったというものである。 しかし,前記前提となる事実にあるとおり,原告は,8月11日,C校長の有効な承認の下で研修を行ったと認められるのであり,職務専念義務を免除されることなく勤務しなかったという本件処分事実は存在しなかったものといわざるを得ない。 これに対し,被告らは,原告が自己の主義・主張に固執し,日直をすべきというC校長の職務命令をあえて無視したばかりか,事後においてもC校長の説得に抵抗してきたという行為について,総合的にみれば,教育公務員秩序をびん乱する極めて悪質な非違行為であると認めて「欠勤」と評価したものであり,単に8月11日に出勤しなかったという事実だけを処分対象として評価したものではない旨主張する。 しかし,前記前提となる事実において認定したとおり,C校長は,平成9年8月9日,原告に対し,他の日に日直を行うことを要請し,原告がこれを拒否したのに対し,それ以上何らの交渉を行っておらず,少なくとも8月11日の研修当日までは,原告に日直を分担し ,C校長は,平成9年8月9日,原告に対し,他の日に日直を行うことを要請し,原告がこれを拒否したのに対し,それ以上何らの交渉を行っておらず,少なくとも8月11日の研修当日までは,原告に日直を分担してもらいたいという意図は有しつつも,研修承認自体についてはやむなく容認していたと解されるのであり,原告が日直をすべきというC校長の職務命令をあえて無視したという被告らの主張はそもそも採用することができない。 そして,原告が,8月11日,C校長の有効な承認の下で研修を行ったと認められる以上,職務専念義務を免除されることなく勤務しなかったという評価はそもそもできないというべきであって,公務員秩序をびん乱する極めて悪質な非違行為であると認めて「欠勤」と評価したとする被告らの主張は採用することができない。 (2) そして,前記前提となる事実において認定した本件小学校における動向表の取扱いと夏季休業期間中の研修承認の取扱い,7月23日の話合いに至る経緯,同日の話合いの内容及び平成9年8月9日の電話の際のC校長の発言内容,特に,7月23日の話合いの最後に,原告が,動向表の8月11日の「指定休」欄の〇印を2重線で抹消した上,新たに「研修」欄に〇印を記入した後,C校長がこれを確認して承認印を押し,F教頭に対して,8月11日の日直勤務を指示したという事実,並びに,その後上記承認が事前に撤回されたとはいえず,また,研修日経過後に承認の撤回が許されるような特段の事情があったともいえないという事実に照らせば,本件処分事実が不存在であることは,極めて容易に知り得べき事情ということができ,何人の判断によってもほぼ同一の結論に到達し得る程度に明らかというべきであって,本件処分事実が存在するとした被告Aの認定が誤認であることは,本件戒告処分の当初から外形上客観的に明白であった ができ,何人の判断によってもほぼ同一の結論に到達し得る程度に明らかというべきであって,本件処分事実が存在するとした被告Aの認定が誤認であることは,本件戒告処分の当初から外形上客観的に明白であったということができる。 そして,本件処分事実が存在しないにもかかわらずに行われた本件戒告処分の違法の程度は重大といわざるを得ない。 以上によれば,その余の点について判断するまでもなく,本件戒告処分は無効というべきである。 これに対し,被告らは,本件処分事実は,研修の承認,撤回等の事実認定が問題となった事案であって,事実認識評価に相違があるところ,何人が見ても一見して本件戒告処分の根拠となった事実が不存在であることが明白である場合でなければ,これを法律上当然無効とすべきでないとされているが,本件戒告処分にはそのような事情はない旨主張する。 しかし,前記説示のとおり,本件処分事実が存在するとした被告Aの認定が誤認であることは,本件戒告処分の当初から外形上客観的に明白であったというべきであって,被告らの主張は採用することができない。 3 争点②(本件戒告処分を撤回しなかったことは違法か)について(1) 前記前提となる事実によれば,本件戒告処分は,本件処分事実が存在しないにもかかわらずに行われたものであり,甲3,4によれば,そのことが前訴判決の確定により,権限ある国家機関の判断によっても,明らかとなったものと認められる。 そして,前記争いのない事実等及び弁論の全趣旨によれば,前訴事件は,原告に対する8月11日の欠勤処理に基づいてされた平成9年8月分給料及び調整手当の減額並びに同年12月10日支給の勤勉手当の減額について,その欠勤処理に基づく減額に理由がないことによって生じた不当利得返還請求債権の履行を求めるものであるところ,かかる債権は,原告が,被告Bの県 減額並びに同年12月10日支給の勤勉手当の減額について,その欠勤処理に基づく減額に理由がないことによって生じた不当利得返還請求債権の履行を求めるものであるところ,かかる債権は,原告が,被告Bの県費負担教職員であるという公法上の地位に基づいて,被告Bから欠勤処理に基づく給料,調整手当及び勤勉手当の減額を受けたという公法上の法律関係に基づいて発生した公法上の債権というべきである。したがって,かかる公法上の債権について履行を求める前訴事件の訴訟類型は,実質的当事者訴訟と解されるのであり,しかも,欠勤処理に基づく給料,調整手当及び勤勉手当の減額の有効性が先決問題となっていたものであるから,そのような実質的当事者訴訟である前訴判決については,行政事件訴訟法41条1項,33条1項により,当事者である被告B及びその関係行政庁に対する拘束力を有すると解するのが相当である。 そうすると,被告Bの設置に係る被告Aは,関係行政庁として,前訴判決に拘束されるものであり,前訴判決において,本件戒告処分の根拠とされた本件処分事実が存在しないことが認定された以上,その認定判断に拘束され,処分根拠を欠くことが明らかとなった本件戒告処分について,職権によってこれを撤回しなければならないことになるものというべきである。 しかるに,被告Aは,本件戒告処分の撤回をしていないのであるから,これは職務上の注意義務に違反した不作為として国家賠償法上違法の評価を受けるといわざるを得ず,その余の点について判断するまでもなく,被告Bは,被告Aのかかる違法な職務行為について国家賠償責任を負うものというべきである。 (2) これに対し,被告らは,被告Aが本件戒告処分の前提とした事実経過は,所属長たる学校長の原告に対する日直勤務をしないのであれば研修は承認できないとの真意を,教育現場の実情を というべきである。 (2) これに対し,被告らは,被告Aが本件戒告処分の前提とした事実経過は,所属長たる学校長の原告に対する日直勤務をしないのであれば研修は承認できないとの真意を,教育現場の実情を熟知している原告は当然知り得たものと解されるから,かかる所属長の指示を無視した原告の行動は,その職の信用を傷つけるような行為をしてはならないことはもとより,法令の定めるところに従い,上司である所属長(学校長)から命じられた事務を忠実に遂行し,その日直業務を円滑かつ適正に遂行すべき職務上の義務を負っているにもかかわらず,自己の見解に固執してこれを無視したものであり,正当な理由なくこの職務の遂行をしなかったことは,教職員としての職の信用を傷つけたと同時に職務に専念する義務に違背したものとして許容できるものではないことから,確定した本件戒告処分を撤回する理由はないと判断したものであって,上記の事実と異なる民事事件の前訴判決による事実認定は存在するが,行政処分にかかわる行政事件と民事事件とは別個の争訟制度であり,民事事件の事実認定に拘束されるものではなく,再検討の際の一資料である旨主張する。 しかし,前訴事件が民事事件ではなく,実質的当事者訴訟であり,前訴判決が拘束力を有することは前記説示のとおりであって,被告らの主張は採用することができない。 なお,前訴判決の拘束力の有無とは別に,乙16ほかの被告ら提出の証拠によっても前訴判決が認定した事実を覆すに足りるものではなく,前記認定のとおり,前訴判決が認定したとおりの事実が認められるから,本件戒告処分は,本件処分事実が存在しないにもかかわらずに行われたものであることが前訴判決によって明らかになったものというべきであって,それにもかかわらず本件戒告処分の撤回をしないことは,信義則上も許されないことというべき 実が存在しないにもかかわらずに行われたものであることが前訴判決によって明らかになったものというべきであって,それにもかかわらず本件戒告処分の撤回をしないことは,信義則上も許されないことというべきであって,国家賠償法上違法の評価を受けるというべきである。 4 争点③(原告の損害額は幾らか)について前訴判決確定後も本件戒告処分が撤回されなかったことによって,原告は精神的苦痛を被ったものと認められるが,前記のとおり,本件戒告処分の無効を確認すべきものと判断される以上,その無効確認自体によって回復される損害があることは否定できず,また,地方公務員法29条1項によれば,戒告は,同法所定の懲戒処分の中で最も軽い処分であるから,これらを総合勘案すると原告の精神的苦痛を慰謝するための慰謝料としては,10万円が相当であると認められる。 第4 結論よって,原告の被告Aに対する請求は理由があるから認容し,原告の被告Bに対する請求は主文掲記の限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないからこれを棄却することとし,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第1部裁判官橋本昌純

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