平成27年7月16日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成26年(ネ)第10098号商標権侵害差止請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成26年(ワ)第770号)口頭弁論終結日平成27年5月28日判決 控訴人 興和株式会社 訴訟代理人弁護士 北原潤一 江幡奈歩 梶並彰一郎 被控訴人 MeijiSeikaファルマ株式会社 訴訟代理人弁護士 飯田秀郷 栗宇一樹 大友良浩 隈部泰正 和氣満美子 森山航洋 奥津啓太 清水紘武 補佐人弁理士 水野勝文 和田光 清水紘武 補佐人弁理士水野勝文 同 和田光子 同 保崎明弘 主文 - 2 - 1 控訴人の当審における交換的変更に係る請求をいずれも棄却する。 2 当審における訴訟費用は控訴人の負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 被控訴人は,別紙標章目録1ないし3記載の各標章を付した薬剤を販売してはならない。 2 被控訴人は,前項記載の薬剤を廃棄せよ。 第2 事案の概要本件は,「PITAVA」の標準文字からなる商標(以下「本件商標」という。)の商標権者である控訴人が,別紙標章目録1ないし3記載の各標章(以下「被控訴人各標章」と総称し,それぞれを同目録の番号に従い「被控訴人標章1」などという。)を付した薬剤を販売する被控訴人の行為が控訴人の有する商標権の侵害(商標法37条2号)に該当する旨主張して,被控訴人に対し,同法36条1項及び2項に基づき,上記薬剤の販売の差止め及び廃棄を求めた事案である。 控訴人は,原審において,指定商品を第5類「薬剤」とする別紙商標権目録1記載の商標権(以下「本件商標権」という。)の侵害を請求原因として主張し,被控訴人各標章を付した薬剤の販売の差止め及び廃棄を求めたが,原判決は,被控訴人による被控訴人各標章の使用はいわゆる商標的使用に当たらないから,本件商標権を侵害するものではないとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。控訴人は,原判決を不服として,本件控訴を提起した。 控訴人は,本件控訴の提起後,本件商標権の分割の申請をし,本件商標権 ら,本件商標権を侵害するものではないとして,控訴人の請求をいずれも棄却した。控訴人は,原判決を不服として,本件控訴を提起した。 控訴人は,本件控訴の提起後,本件商標権の分割の申請をし,本件商標権は,指定商品を第5類「薬剤但し,ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤を除く」とする別紙商標権目録2記載の商標権と指定商品を第5類「ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤」とする同目録3記載の商標権(以下「本件分割商標権」という。)に分割された(甲20,21の1,2)。 - 3 -その後,控訴人は,当審において,請求原因を本件商標権の侵害から本件分割商標権の侵害に変更する旨の訴えの交換的変更をした。 1 前提事実(証拠の摘示のない事実は,争いのない事実又は弁論の全趣旨により認められる事実である。)(1) 当事者控訴人と被控訴人は,いずれも医薬品等の製造,販売等を業とする株式会社である。 (2) 控訴人の商標権控訴人は,本件商標について本件分割商標権(別紙商標権目録3参照)を有している。 (3) 被控訴人の行為等ア被控訴人は,平成25年12月から,販売名を「ピタバスタチンCa錠1mg「明治」」とする薬剤(以下「被控訴人商品1」という。),販売名を「ピタバスタチンCa錠2mg「明治」」とする薬剤(以下「被控訴人商品2」という。)及び販売名を「ピタバスタチンCa錠4mg「明治」」とする薬剤(以下「被控訴人商品3」といい,また,被控訴人商品1ないし3を総称して「被控訴人各商品」という。)を販売している。 被控訴人各商品は,錠剤であり,その錠剤の外観は,それぞれ別紙錠剤目録1ないし3記載のとおりである(乙27ないし29)。被控訴人商品1の錠剤には被控訴人標章1が,被控訴人商品2の錠剤には被控訴人標章2が,被控訴人商品 剤であり,その錠剤の外観は,それぞれ別紙錠剤目録1ないし3記載のとおりである(乙27ないし29)。被控訴人商品1の錠剤には被控訴人標章1が,被控訴人商品2の錠剤には被控訴人標章2が,被控訴人商品3の錠剤には被控訴人標章3が,それぞれ付されている。 被控訴人各商品は,一般的名称(JAN)を「ピタバスタチンカルシウム」(国際一般名(INN)は「pitavstatin」)とする化学物質を有効成分とするHMG-CoA還元酵素阻害剤である。 また,被控訴人各商品は,医師等の処方箋により使用する「処方箋医薬- 4 -品」である(乙22,27ないし29)。 イ一方,控訴人は,平成15年9月当時から,ピタバスタチンカルシウムを有効成分とするHMG-CoA還元酵素阻害剤として,販売名を「リバロ錠1mg」,「リバロ錠2mg」又は「リバロ錠4mg」とする各薬剤(以下「控訴人各商品」と総称する。)を販売している。 控訴人各商品と被控訴人各商品とは,控訴人各商品が先発医薬品(新薬),被控訴人各商品がその後発医薬品(ジェネリック医薬品)の関係にある。 2 争点(1) 被控訴人各標章と本件商標の類否(争点1)(2) 被控訴人各標章の商標法26条1項6号該当性(争点2)(3) 被控訴人各標章の商標法26条1項2号該当性(争点3)(4) 商標登録の無効理由による権利行使制限の成否(争点4)(5) 権利の濫用の成否(争点5)第3 争点に関する当事者の主張 1 争点1(被控訴人各標章と本件商標の類否)について(1) 控訴人の主張ア本件商標は,欧文字の「PITAVA」なる外観を有し,「ピタバ」との称呼を生じるが,特段の観念は生じない。 他方,被控訴人各標章は,片仮名の「ピタバ」なる外観を有し,「ピタバ」との称呼を生じるが, 件商標は,欧文字の「PITAVA」なる外観を有し,「ピタバ」との称呼を生じるが,特段の観念は生じない。 他方,被控訴人各標章は,片仮名の「ピタバ」なる外観を有し,「ピタバ」との称呼を生じるが,特段の観念は生じない。 そうすると,本件商標と被控訴人各標章とは,外観が異なるものの,称呼が同一であり,特定の観念を生じない点においても同一であるから,被控訴人各標章は,本件商標に類似する商標に当たる。 イ被控訴人各商品は,本件分割商標権の指定商品と同一である。 ウしたがって,被控訴人が被控訴人各標章を付した被控訴人各商品を販売する行為は,本件分割商標権の侵害(商標法37条2号)に該当する。 - 5 -(2) 被控訴人の主張控訴人の主張のうち,本件商標及び被控訴人各標章の各外観,本件商標と被控訴人各標章とが称呼において類似性があること,被控訴人各商品が本件分割商標権の指定商品と同一であることは認めるが,その余は争う。 2 争点2(被控訴人各標章の商標法26条1項6号該当性)について(1) 被控訴人の主張ア商標法26条1項6号の商標に該当すること被控訴人が被控訴人各商品の錠剤に被控訴人各標章を表示しているのは,服用者が服用する際に他の薬剤と間違えないよう誤飲防止のためであって,自他商品識別機能を奏するために表示しているものではなく,被控訴人各商品における被控訴人各標章の使用は,いわゆる商標的使用に当たらないから,被控訴人各標章は,「需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができる態様により使用されていない商標」(商標法26条1項6号)に該当する。 (ア) 医療従事者への販売被控訴人商品1及び2の包装態様は,錠剤がパッケージされたPTPシートが複数入っている箱状(700錠,500錠,140錠,1 」(商標法26条1項6号)に該当する。 (ア) 医療従事者への販売被控訴人商品1及び2の包装態様は,錠剤がパッケージされたPTPシートが複数入っている箱状(700錠,500錠,140錠,100錠)のものと錠剤が詰めてある瓶状(500錠)のものがあり,また,被控訴人商品3の包装態様は,錠剤がパッケージされたPTPシートが複数入っている箱状(100錠)のもののみである。 被控訴人各商品が病院,診療所,薬局等の医療従事者へ販売される場合には,被控訴人及び製造委託先の製薬企業から医薬品の卸売会社を通じて販売される。この場合,箱に梱包されたままの状態で販売されるから,医療従事者が錠剤に付された「ピタバ」の表示を認識して購入することはない。 また,調剤した薬剤を患者に渡すのは薬剤師であるが,患者に対して薬- 6 -剤がPTPシートに入った状態で渡すか,「一包化調剤」で渡すかのいずれかである。いずれの場合も,薬剤師が被控訴人各商品を購入する場面ではないから,薬剤師に対して錠剤に付された「ピタバ」の表示が自他商品識別機能を奏する場面ではない。 医療用後発医薬品の場合には,医薬品の販売名等の類似性に起因する調剤間違いや患者の誤飲防止等の医療事故を防止するために,販売名に,一般的名称(有効成分)及び剤型,含量,会社名(屋号等)を付さなければならない(乙3,5)。被控訴人各商品の錠剤に付された「ピタバ」の表示は,有効成分である「ピタバスタチンカルシウム」の略称であって,薬剤師との関係では,他の薬剤と間違えて処方しないようにするための表示でしかあり得ない。 したがって,被控訴人各商品が病院,診療所,薬局等の医療従事者へ販売される場合に,錠剤に付された「ピタバ」の表示が商標的に使用されていないことは明らかである。 (イ) 患者へ しかあり得ない。 したがって,被控訴人各商品が病院,診療所,薬局等の医療従事者へ販売される場合に,錠剤に付された「ピタバ」の表示が商標的に使用されていないことは明らかである。 (イ) 患者への販売被控訴人各商品のような処方箋医薬品は,病院,診療所,薬局等へ販売(授与を含む。)する場合を除き,「医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律」(平成25年法律第84号による改正前の題名「薬事法」。以下「医薬品医療機器等法」という。)49条1項に基づき,医師等の処方箋の交付を受けた者以外の者に対して,正当な理由なく,販売を行ってはならないとされている。 したがって,被控訴人各商品を任意に選択して購入することが可能であるのは,病院,診療所,薬局が購入する場合に限られ,患者は,医師の処方に従って,被控訴人各商品を購入するにすぎないから,被控訴人各商品に関しては,患者は取引者,需要者に該当しない。 また,仮に患者が取引者,需要者に該当するとしても,以下に述べると- 7 -おり,患者が被控訴人各商品の錠剤に付された「ピタバ」の表示を認識するのは,服用の場面であって,被控訴人各商品を購入する際に商品を識別する場面とは異なる。 したがって,患者が取引者,需要者であるとしても,そもそも患者は,錠剤に付された「ピタバ」の表示に基づいて被控訴人各商品を購入することはないから,被控訴人各商品における被控訴人各標章の使用が商標的使用に当たらないことは明らかである。 a 医師による処方医師は,処方箋医薬品を患者に処方する際,その薬剤に先発医薬品と後発医薬品とがあるときは,処方箋に,先発医薬品を記載する場合,特定の後発医薬品を記載する場合又は薬剤の有効成分の一般的名称を記載する場合がある(甲11,乙36添付資料①)。 その薬剤に先発医薬品と後発医薬品とがあるときは,処方箋に,先発医薬品を記載する場合,特定の後発医薬品を記載する場合又は薬剤の有効成分の一般的名称を記載する場合がある(甲11,乙36添付資料①)。医師は,その際,患者に対し,先発医薬品と後発医薬品の存在とそれらの違いを説明し,患者は,その説明を聞いた上で,医師に対し,処方される薬剤について希望を伝えることができる。医師は,基本的に患者の意思を尊重して,処方する薬剤を選択する(甲11)。 有効成分を「ピタバスタチンカルシウム」とする薬剤については,先発医薬品である控訴人各商品と後発医薬品である被控訴人を含めた各後発医薬品メーカーの商品が患者の選択の対象となる。 したがって,患者が,被控訴人各商品の錠剤に付された「ピタバ」の表示に基づいて,薬剤を選択することはない。 b 薬剤師による調剤処方箋医薬品を病院外の保険薬局で受け取る院外処方の場合には,患者は,医師から処方された処方箋を保険薬局等に提出し,薬剤師から,調剤した薬剤を受け取ることになる(甲11)。処方箋医薬品を病院内で受け取る院内処方の場合には,患者は,医師等の処方箋に基づき院内- 8 -の薬剤師が調剤した薬剤を受け取ることになる。 薬剤師は,処方箋の記載どおりに薬剤を調剤しなければならないが,患者の選択に基づき,処方箋に記載されている先発医薬品に代えて後発医薬品を調剤することができる場合がある。その場合,薬剤師は,患者に対し,後発医薬品を選択した基準,例えば,当該後発医薬品の品質に関する情報開示の状況,薬価,製造販売業者の製造,供給や情報提供等に係る体制等といった事項について説明することとされている(甲10,11,乙23)。 c 患者による購入患者は,保険薬局等において医師の処方又は患者の選択に基づい 業者の製造,供給や情報提供等に係る体制等といった事項について説明することとされている(甲10,11,乙23)。 c 患者による購入患者は,保険薬局等において医師の処方又は患者の選択に基づいて調剤された薬剤を受け取るが,多くの場合は錠剤がPTPシートに入っている状態で渡され,場合によっては箱のままで渡される場合がある。また,一包化調剤の場合には,錠剤が他の薬剤とまとめて一つに包装されている。いずれの場合であっても,患者は,薬剤師から当該医薬品に関する口頭による説明を受け,当該医薬品に関する説明文書を受領して購入する。患者に渡される説明文書,例えば,被控訴人商品1の説明文書には「ピタバスタチンカルシウムCa錠1㎎「明治」(一般名:ピタバスタチンCa錠1mg)」として販売名と一般名(有効成分),含量が一体として記載されているもの(乙36添付資料②,③),「名前ピタバスタチンCa錠1mg「明治」」と「成分ピタバスタチンカルシウム錠」と分けて記載されているものがある(乙36添付資料④)。また,くすりのしおりには「商品名:ピタバスタチンCa錠1mg「明治」」と「主成分:ピタバスタチンカルシウム」と分けて記載されている(乙27)。被控訴人商品2及び3も,被控訴人商品1と同様である。 したがって,患者は,被控訴人各商品を購入する際,PTPシート及び説明文書に表示された「ピタバスタチンカルシウムCa錠1㎎「明- 9 -治」」,「ピタバスタチンカルシウムCa錠2㎎「明治」」,「ピタバスタチンカルシウムCa錠4㎎「明治」」との販売名によって商品を識別して購入するものであり,錠剤に付された「ピタバ」の表示に基づいて購入することはない。 患者が,被控訴人各商品の錠剤に付された「ピタバ」の表示を認識するのは,服用する場面である。この場 品を識別して購入するものであり,錠剤に付された「ピタバ」の表示に基づいて購入することはない。 患者が,被控訴人各商品の錠剤に付された「ピタバ」の表示を認識するのは,服用する場面である。この場面では,既に被控訴人各商品の流通過程は終了しており,他の医薬品と間違えないよう誤飲防止のために錠剤を確認するものであって,被控訴人各商品を購入する際に商品を識別するためのものではない。 したがって,患者が被控訴人各商品を購入する場合において,錠剤に付された「ピタバ」の表示(被控訴人各標章)が商標的に使用されていないことは明らかである。 (ウ) 控訴人主張のアンケート調査の結果について控訴人は,アンケート調査の結果(甲22)に基づいて,患者が被控訴人各標章を有効成分の説明的表示であると認識することはないなどと主張する。 しかしながら,前記(ア)及び(イ)のとおり,そもそも,被控訴人各商品の流通において,医療従事者及び患者が錠剤に付された「ピタバ」の表示に基づいて薬剤を識別して購入することはないから,錠剤に付された「ピタバ」の表示(被控訴人各標章)が商標的に使用されていないことは明らかであり,アンケート調査自体が無意味である。 また,脂質異常症(高脂血症)の潜在的な患者数は2200万人,実際の患者数も143万3000人程度存在するが(乙38,39),控訴人が採用したアンケートの対象者はわずか700名分にすぎないから,上記アンケートは,全患者の認識を反映しているものとはいえないこと,その調査方法も,「WEB調査」と記載されているのみで,対象者にどのよう- 10 -にアクセスし,どのような方法で回答を得たのか不明であり,また,対象者の情報の正確性をどのように担保したのかも不明であることなどからすると,上記アンケート調査の証拠価 象者にどのよう- 10 -にアクセスし,どのような方法で回答を得たのか不明であり,また,対象者の情報の正確性をどのように担保したのかも不明であることなどからすると,上記アンケート調査の証拠価値はないに等しいものである。 したがって,控訴人の上記主張は理由がない。 イ小括以上によれば,被控訴人各標章は商標法26条1項6号の商標に該当するから,本件分割商標権の効力は被控訴人各標章に及ばない。 (2) 控訴人の主張ア商標法26条1項6号の商標に該当しないこと被控訴人各標章が「需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができる態様により使用されていない商標」(商標法26条1項6号)に該当するかどうか,すなわち,被控訴人各商品における被控訴人各標章の使用が商標的使用に当たらないといえるかどうかは,取引者,需要者において,被控訴人各標章が出所識別機能を発揮する表示であると認識されないといえるかどうかの問題である。 以下のとおり,被控訴人各商品の取引者,需要者である患者において,被控訴人各標章が出所識別機能を発揮する表示であると認識されないということはできないから,被控訴人各標章は,商標法26条1項6号の商標に該当しない。 (ア) 患者は,薬剤である被控訴人各商品の最終購入者であること,高コレステロール症治療剤である被控訴人各商品のような長期間反復継続して購入・服用される薬剤の場合,患者は,購入する薬剤について実質的な選択権を有するといえるし,少なくとも購入する薬剤の決定過程に影響を与える立場にあることからすると,患者が被控訴人各商品の取引者,需要者であることは明らかである。 しかも,被控訴人各標章を含む,被控訴人各商品の錠剤の表示は,「医- 11 -療関係者」(医療従事者)よりも,患者において と,患者が被控訴人各商品の取引者,需要者であることは明らかである。 しかも,被控訴人各標章を含む,被控訴人各商品の錠剤の表示は,「医- 11 -療関係者」(医療従事者)よりも,患者において,他の薬剤と区別できるように印字又は刻印されたものであって,患者に認識されることを目的としたものであることに照らせば,被控訴人各標章の使用が商標的使用でないかを論じる上で,患者の認識は重視されるべきである。 したがって,仮に被控訴人各商品の流通過程において患者による被控訴人各商品の購入よりも前の取引で被控訴人各標章が出所識別機能を発揮する表示であると認識されないことがあるとしても,患者において,被控訴人各標章が出所識別機能を発揮する表示であると認識されないといえなければ,被控訴人各標章の使用が商標的使用でないということはできない。 (イ) 患者は,自らの症状を治すために薬剤を服用するのであって,薬剤の効果や副作用について興味を持つことはあるとしても,よほど特殊な事情がない限り,当該薬剤の化学物質である有効成分の名称が何であるかについて興味や知識を持っていないのが通常である。また,医師・薬剤師が,薬剤を処方する際,患者に対して薬剤の効果や副作用を説明することはあるとしても,通常,当該薬剤の有効成分の名称が何であるかを説明することはないものであり,このことは,医師・薬剤師から薬剤の処方を受けたことのある患者にとっては常識的な事柄である。 したがって,被控訴人各商品の有効成分の名称が何であるかについて興味も知識もなく,説明も受けていない患者が,被控訴人各商品の錠剤に付された「ピタバ」の表示に触れたときに,それが「有効成分」を示すものであると認識するとはいえない。たとえ,患者が被控訴人各商品のPTPシートに付された「ピタバスタチンCa錠1 控訴人各商品の錠剤に付された「ピタバ」の表示に触れたときに,それが「有効成分」を示すものであると認識するとはいえない。たとえ,患者が被控訴人各商品のPTPシートに付された「ピタバスタチンCa錠1mg「明治」」等の表示に触れた上で,被控訴人各商品の錠剤に付された「ピタバ」の表示に触れたときに,「ピタバ」が販売名たる「ピタバスタチンCa錠1mg「明治」」等のうちの「ピタバスタチンCa」の一部の表示あるい- 12 -はそれに由来する表示であると認識することがあったとしても,「ピタバ」を「有効成分」としての「ピタバスタチンCa」を意味するものと認識することはない。 また,平成26年11月21日から25日にかけて実施された薬剤の錠剤に付された「ピタバ」の表示に関するアンケート調査の結果(甲22)に照らしても,患者が被控訴人各標章を有効成分の説明的表示であると認識するといえないことは明らかである。 すなわち,上記アンケート調査は,医師から処方された高脂血症治療薬を3か月以上服用している患者700名を対象に,4つの質問を提示し,薬剤の錠剤に付された「ピタバ」の表示をどのように認識・推測するかなどを調査したものである。上記アンケート調査の結果によれば,薬剤の錠剤に付された「ピタバ」の表示について,「この薬の有効成分(薬の効果をもたらす成分)の名前(またはその一部)」と回答したのは全体の15%にすぎず,残りの85%は「有効成分の名称(またはその一部)」であるとは認識しなかったものであり,この結果に照らせば,通常,患者が,「ピタバ」を有効成分の説明的表示であると認識するといえない。 むしろ,全体の43%が薬剤の錠剤に付された「ピタバ」の表示を「この薬の商品名」と認識しており,「商品名」とは出所識別機能を果たす表示にほかならないから, 明的表示であると認識するといえない。 むしろ,全体の43%が薬剤の錠剤に付された「ピタバ」の表示を「この薬の商品名」と認識しており,「商品名」とは出所識別機能を果たす表示にほかならないから,錠剤に付された「ピタバ」の表示は出所識別機能を発揮する表示であるといえる。 以上によれば,被控訴人各商品の取引者,需要者である患者において,被控訴人各標章が出所識別機能を発揮する表示であると認識されないということはできないから,被控訴人各標章は,商標法26条1項6号の商標に該当しない。 (ウ) 被控訴人は,これに対し,被控訴人各標章の「ピタバ」が商標的に- 13 -使用されているというためには,患者が被控訴人各商品の購入時に「ピタバ」の表示に基づいて当該商品を識別して購入する必要があるとの前提に立ち,患者において,購入時には認識されず,購入後に初めて認識される「ピタバ」の表示は商標的使用に当たらない旨主張する。 しかしながら,たとえ購入時に包装等により需要者の目に触れない表示であっても,需要者において,商品を使用する過程で目に触れる表示であれば,需要者は,当該商品を使用する過程において,当該商品に付された表示を繰り返し目にすることにより,当該商品の出所や品質と当該表示との関連性を認識・評価し,当該表示についてのイメージを形成するといえるから,当該表示は商標として使用されているといえる。 したがって,商標的使用の有無の判断において考慮する場面を,需要者が商品を購入する場面に限定し,患者において,購入時には認識されず,購入後に初めて認識される「ピタバ」の表示は商標的使用には当たらないとする被控訴人の主張は,その前提において誤りがある。 イ原判決の判断の誤り原判決は,この点に関し,被控訴人各商品の主たる取引者,需要者である れる「ピタバ」の表示は商標的使用には当たらないとする被控訴人の主張は,その前提において誤りがある。 イ原判決の判断の誤り原判決は,この点に関し,被控訴人各商品の主たる取引者,需要者である医師や薬剤師等の「医療関係者」は,被控訴人各商品に接する際,その販売名に付された会社名(屋号等)「明治」に加えて,被控訴人各商品のパッケージであるPTPシートに付された「明治」の表示や被控訴人各商品に併せて表示されている「明治」や「MS」の表示によってその出所を識別し,錠剤に表示された被控訴人各標章は,被控訴人各商品の出所を表示するものではなく,有効成分の説明的表示であると認識すると考えられ,また,患者は,医師,薬剤師から被控訴人各商品を処方される際に受ける説明等を踏まえて被控訴人各標章に接するところ,被控訴人各商品には被控訴人各標章の他に「明治」や「MS」の表示があること,被控訴人各商品は,長期間にわたり反復継続的に購入,服用される薬剤であることも考- 14 -え合わせれば,患者においても被控訴人各標章をもって被控訴人各商品の出所の表示であると認識しているとは認め難く,むしろ有効成分の説明的表示であると認識するのが一般的であると考えられるとして,被控訴人各標章の使用は,商標的使用に当たらない旨判断した。 しかしながら,前記ア(イ)のとおり,患者がピタバの表示(被控訴人各標章)を「有効成分」の説明的表示であると認識するといえない。 また,PTPシートに付された「明治」の表示や被控訴人各商品の錠剤に付された「明治」の表示が出所識別機能を有するからといって,被控訴人各商品の錠剤に付された「ピタバ」の表示が出所識別機能を有しないことにはならないし,ましてや「ピタバ」の表示が有効成分の説明的表示であると認識されることにもならないから,「明 からといって,被控訴人各商品の錠剤に付された「ピタバ」の表示が出所識別機能を有しないことにはならないし,ましてや「ピタバ」の表示が有効成分の説明的表示であると認識されることにもならないから,「明治」の表示が出所識別機能を有することは,医師や薬剤師等の「医療関係者」が被控訴人各標章を有効成分の説明的表示であると認識していることの根拠になるものではない。 したがって,原判決の上記判断は誤りである。 ウ小括以上によれば,被控訴人各標章は,商標法26条1項6号の商標に該当するものとはいえないから,本件分割商標権の効力が被控訴人各標章に及ばないとの被控訴人の主張は,理由がない。 3 争点3(被控訴人各標章の商標法26条1項2号該当性)について(1) 被控訴人の主張ア商標法26条1項2号の商標に該当すること被控訴人各商品の錠剤に付された「ピタバ」の表示(被控訴人各標章)は,「ピタバスタチン」又は「ピタバスタチンカルシウム」を想起させる略称であり,本件分割商標権の指定商品である「ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤」との関係においては,「ピタバスタチンカルシウム」- 15 -を有効成分とする医薬品であること,すなわち,商品の品質の表示であり,かつ,錠剤に有効成分又はその略称を印刷又は刻印することは一般的に行われており,「ピタバ」を錠剤に印刷又は刻印することは「普通に用いられる方法で表示するもの」といえるから,被控訴人各標章は,商標法26条1項2号の商標に該当する。 (ア) 本件商標を構成する「PITAVA」は,医薬品の一般的名称「ピタバスタチンカルシウム」の国際一般名である「pitavastatin」からコレステロール値を下げる薬の総称の1つである「statin」(スタチン)を除外した名称である。 コレステ 般的名称「ピタバスタチンカルシウム」の国際一般名である「pitavastatin」からコレステロール値を下げる薬の総称の1つである「statin」(スタチン)を除外した名称である。 コレステロール低下薬としては「スタチン系」の薬が有名であり,「ピタバスタチン」のほかに,「アトルバスタチン」,「ロスバスタチン」,「シンバスタチン」,「プラバスタチン」,「フルバスタチン」,「ローバスタチン」があるが,これらの「スタチン系」の一般的名称においても「statin」(スタチン)を除外した名称が使用されている。 例えば,平成22年3月5日開催の日本循環器学会での発表(乙6)においては,「スタチン系」の中でも強力なストロングスタチン3種として,「ピタバスタチン」,「アトルバスタチン」,「ロスバスタチン」があるところ,これらについては,それぞれ「ピタバ」,「アトルバ」,「ロスバ」と「スタチン」を省略した略称が使用されていた。上記発表は,九州の51施設の医師が参加した研究結果の発表であり,世界で初めて上記3種類の薬剤を同時に比較する試みであったことが高く評価され,多くのメディアや医師が注目したものであった。 また,国立医薬品食品衛生研究所作成の2011年(平成23年)7月7日付け医薬品安全性情報(乙41)には,「アトルバスタチン」,「フルバスタチン」,「ピタバスタチン」,「ローバスタチン」,「プラバスタチン」,「ロスバスタチン」,「シンバスタチン」について,それぞれ- 16 -「statin」(スタチン)を除外した名称が使用されている。 さらに,2006年(平成18年)以降に公開された公開特許公報等(乙7ないし13,40)においても,「スタチン系」の名称について「statin」又は「スタチン」を除外した略称が使用されている。その他の らに,2006年(平成18年)以降に公開された公開特許公報等(乙7ないし13,40)においても,「スタチン系」の名称について「statin」又は「スタチン」を除外した略称が使用されている。その他の文献等(乙16ないし18)においても,ピタバスタチンのことを「ピタバ」と略して使用され(乙14,15,42),アトルバスタチンのことを「アトルバ」,ロスバスタチンのことを「ロスバ」と略して使用されている。 のみならず,実際の調剤薬局の現場においても,アトルバスタチンを「アトルバ」,シンバスタチンを「シンバ」,プラバスタチンを「プラバ」,フルバスタチンを「フルバ」,ロスバスタチンを「ロスバ」と略して使用されている(乙19)。 以上のとおり,「スタチン系」の成分として,「スタチン」の用語を除外した部分を略称として使用することは一般的に行われていたものである。 (イ) 「ピタバスタチンカルシウム」を有効成分とする医療用後発医薬品については,平成25年12月から,後発医薬品メーカー各社が販売を開始している(乙43)。医療用後発医薬品の販売名には,医薬品の販売名等の類似性に起因した医療事故を防止するために,一般的名称,剤形及び含量,会社名(屋号等)を付さなければならないとされている(乙3,5)。 上記メーカー各社の中で,現在も,錠剤に「ピタバ」と表記しているのは,沢井製薬株式会社(以下「沢井製薬」という。),小林化工株式会社(以下「小林化工」という。),テバ製薬株式会社(以下「テバ製薬」という。)及び被控訴人の4社であるが(乙43),キョーリンリメディオ株式会社(以下「キョーリンリメディオ」という。)及び共和薬品工業株式会社(以下「共和薬品工業」という。)の2社も,発売当初は錠剤に「ピタバ」と表記していた(乙25,31,45)。 - 17 オ株式会社(以下「キョーリンリメディオ」という。)及び共和薬品工業株式会社(以下「共和薬品工業」という。)の2社も,発売当初は錠剤に「ピタバ」と表記していた(乙25,31,45)。 - 17 -また,「アトルバスタチン」を有効成分とする医療用後発医薬品においても,平成23年11月以降,錠剤に「アトルバ」と表記して販売されているものもある。 さらに,その他の有効成分に関する医療用後発医薬品においても,錠剤に有効成分の略称を付して販売されているものが多数ある(乙44)。 以上によれば,錠剤に有効成分又はその略称を印刷もしくは刻印することは一般的に行われていることであるといえる(乙5,25,31,43ないし45)。 (ウ) 控訴人は,平成25年10月17日,「ピタバ(標準文字)」の商標について商標登録出願(商願2013-08094号)をしたが,特許庁は,「ピタバ」の文字は,指定商品を取り扱う業界において,「ピタバスタチンカルシウム」又は「ピタバスタチン」の略称として使用されているから,単に商品の原材料,品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるなどとして平成26年3月4日付けの拒絶理由通知(乙24)をし,さらに,同年6月12日付けで拒絶査定(乙26)をした。 (エ) 以上によれば,ピタバスタチンカルシウムを有効成分とする後発医薬品において,「ピタバ」の表示は有効成分の略称であることを示すものであるとともに,錠剤に有効成分の略称である「ピタバ」を印刷又は刻印する方法は一般的に行われているものといえる。 (オ) 控訴人は,これに対し,アンケート調査の結果(甲22)などを挙げて,取引者,需要者である患者において,「ピタバ」の表示が「有効成分」である「ピタバスタチンカルシウム」の略称を示すものとして一般に 控訴人は,これに対し,アンケート調査の結果(甲22)などを挙げて,取引者,需要者である患者において,「ピタバ」の表示が「有効成分」である「ピタバスタチンカルシウム」の略称を示すものとして一般に認識されているとはいえない旨主張する。 しかしながら,医師や薬剤師等の口頭による薬についての説明だけでは不十分な場合があり得るので,薬の有効成分,効果,副作用等の注意- 18 -事項について網羅的に説明するために,説明文書等(乙27ないし29,乙36添付資料②)が患者に配布されており(前記2(1)ア(イ)c),上記説明文書等には薬剤の一般的名称が記載されている。 加えて,医療用後発医薬品の場合には,医薬品の販売名等の類似性に起因する調剤間違いや患者の誤飲防止等の医療事故を防止するために,販売名に,一般的名称(有効成分),剤型及び含量,会社名(屋号等)を付さなければならないことから,各製薬企業は,後発医薬品の錠剤にもその措置を行い(乙30,37),錠剤においても有効成分の名称又はその略称を表示することの周知徹底を図っていることからすると,患者においても錠剤に付された「ピタバ」の表示が有効成分である「ピタバスタチンカルシウム」を示すものであることを認識しているというべきである。 また,控訴人が挙げるアンケート調査(甲22)に証拠価値がないことは,前記2(1)ア(ウ)のとおりである。 したがって,控訴人の上記主張は理由がない。 イ小括以上によれば,被控訴人各商品の錠剤に付された「ピタバ」の表示(被控訴人各標章)は,本件分割商標権の指定商品である「ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤」との関係においては,「ピタバスタチンカルシウム」を有効成分とする医薬品であること,すなわち,商品の品質を表示するものにすぎず,「ピタバスタチ 定商品である「ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤」との関係においては,「ピタバスタチンカルシウム」を有効成分とする医薬品であること,すなわち,商品の品質を表示するものにすぎず,「ピタバスタチンカルシウム」を有効成分とする医薬品であることの略称として普通に用いられる方法で表示するものであるから,商標法26条1項2号の商標に該当し,本件分割商標権の効力を及ぼすことはできない。 (2) 控訴人の主張ア商標法26条1項2号の商標に該当しないこと(ア) 被控訴人各商品の錠剤に付された「ピタバ」の表示(被控訴人各標- 19 -章)が,「ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤」の品質である「有効成分」を普通に用いられる方法で表示する商標(商標法26条1項2号)であるというためには,取引者,需要者一般において,「ピタバ」の表示が「有効成分」である「ピタバスタチンカルシウム」の略称として認識されていることが必要である。 しかしながら,前記2(2)ア(イ)のとおり,取引者,需要者である患者は,自らの症状を治すために薬剤を服用するのであって,薬剤の効果や副作用について興味を持つことはあるとしても,よほど特殊な事情がない限り,当該薬剤の化学物質である有効成分の名称が何であるかということには興味や知識を持っていないのが通常である。また,医師・薬剤師も,患者に対して薬剤を処方するに際し,薬剤の効果や副作用についての説明をすることがあるとしても,通常,当該薬剤の有効成分の名称が何であるかを説明することはない。 このことは,前記2(2)ア(イ)のとおり,アンケート調査(甲22)の結果によっても裏付けられている。 たとえ,患者が被控訴人各商品のPTPシートに付された「ピタバスタチンCa錠1mg「明治」」等の表示に触れた上で,被控訴人各商 とおり,アンケート調査(甲22)の結果によっても裏付けられている。 たとえ,患者が被控訴人各商品のPTPシートに付された「ピタバスタチンCa錠1mg「明治」」等の表示に触れた上で,被控訴人各商品の錠剤に表示された「ピタバ」に触れたときに,「ピタバ」が販売名たる「ピタバスタチンCa錠1mg「明治」」等のうち「ピタバスタチンCa」の一部の表示あるいはそれに由来する表示であると認識することがあったとしても,「ピタバ」を「有効成分」としての「ピタバスタチンCa」(ピタバスタチンカルシウム)を意味するものと認識することはないものと考えられる。 したがって,取引者,需要者である患者において,「ピタバ」の表示が「有効成分」である「ピタバスタチンカルシウム」の略称を示すものとして一般に認識されているとはいえない。 - 20 -(イ) 被控訴人が挙げる学会発表に関する文献や公開特許公報などの文献は,いずれも患者の認識を示す文献ではなく,患者一般において,「ピタバ」が,実質的に「有効成分を示すもの」と認識されているといえる程度に,「ピタバスタチンカルシウム」の略称として認識されていることを示すものとはいえない。 また,被控訴人が挙げる文献の内容を見ても,「ピタバスタチンカルシウム」(「pitavastatincalcium」)あるいは「ピタバスタチン」(「pitavastatin」)を「ピタバ」(「pitava」)と略記することを断った上で,「ピタバ」(「pitava」)という表記を用いているか,図においてスペースの都合上「ピタバ」(「pitava」)という略記を用いているにすぎない。ピタバスタチンカルシウム以外の「スタチン系」の省略形を用いた文献は,ピタバスタチンカルシウムと直接関係のある文献ではないし,その内容を見ても「ator ava」)という略記を用いているにすぎない。ピタバスタチンカルシウム以外の「スタチン系」の省略形を用いた文献は,ピタバスタチンカルシウムと直接関係のある文献ではないし,その内容を見ても「atorvastatin (Atorva)」などといずれも略記することを明記した上で,図においてスペースの都合上,略記を用いているにすぎない。 したがって,被控訴人が挙げる文献から,「ピタバ」が,「有効成分」である「ピタバスタチンカルシウム」の略称として一般に認識されているということはできない。 このことは,標題に「Pitava」又は「ピタバ」の語を含む104件の文献のうち,「Pitava」等の略記を用いた文献はわずか2件のみで,その他の102件は,略記を用いず,「Pitavastatin」等と表記していること(甲32)からも明らかである。また,甲33によれば,ピタバスタチンカルシウムを主成分とする薬剤を販売している後発医薬品メーカーのうち,錠剤に「ピタバ」の語を印字して使用しているのは被控訴人ら6社のみであって,その他の18社はいずれも「ピタバ」の語を使用しておらず,このことは,「ピタバ」が「ピタバスタチンカルシウム」- 21 -の略称であると認識されていないことを示すものである。 さらに,被控訴人は,控訴人が本件分割商標権の侵害を主張している商品(被控訴人各商品を含む。)において,「ピタバ」の表示がされていることを指摘しているが,商標権を侵害する表示の存在を根拠にして,当該商標権侵害が否定されるというのは背理であるから,当該商品の表示に基づいて,「ピタバ」が「ピタバスタチンカルシウム」の略称として一般に認識されるに至ったという主張は成り立ち得ない。 イ小括以上によれば,取引者,需要者である患者において,「ピタバ」の表示 基づいて,「ピタバ」が「ピタバスタチンカルシウム」の略称として一般に認識されるに至ったという主張は成り立ち得ない。 イ小括以上によれば,取引者,需要者である患者において,「ピタバ」の表示が「有効成分」である「ピタバスタチンカルシウム」の略称を示すものとして一般に認識されているとはいえず,被控訴人各標章は商標法26条1項2号の商標に該当するものとはいえないから,本件分割商標権の効力が被控訴人各標章に及ばないとの被控訴人の主張は,理由がない。 4 争点4(商標登録の無効理由による権利行使制限の成否)について(1) 被控訴人の主張ア医薬品の一般的名称(JAN)及び国際一般名(INN)は,医薬品における非独占的・一般的な名称である。 また,日本国内においては,前記2(1)ア(ア)のとおり,医療用後発医薬品の場合,医薬品の販売名等の類似性に起因する調剤間違いや患者の誤飲防止等の医療事故を防止するために,販売名に,含有する有効成分に係る一般的名称,剤型及び含量,会社名(屋号等)を付さなければならないこととされている。 したがって,医薬品の有効成分の一般的名称(国際一般名を含む。)を商標登録して独占権を与えることは,国際的及び国内的な社会秩序に反するものであり,公序良俗に反するものといえる。 イしかるところ,前記3(1)ア(ア)のとおり,本件商標を構成する「PIT- 22 -AVA」は,「ピタバスタチンカルシウム」の国際一般名である「pitavastatin」を想起させる略称である。 そうすると,本件商標は,医薬品の国際一般名である「pitavastatin」と同一視し得る商標であるといえるから,公序良俗を害するおそれがある商標(商標法4条1項7号)に該当する。 ウ以上によれば,本件商標の商標登録には,商標法4 般名である「pitavastatin」と同一視し得る商標であるといえるから,公序良俗を害するおそれがある商標(商標法4条1項7号)に該当する。 ウ以上によれば,本件商標の商標登録には,商標法4条1項7号違反の無効理由(同法46条1項6号)があり,商標登録無効審判により無効とされるべきものであるから,商標法39条において準用する特許法104条の3第1項の規定により,控訴人は,被控訴人に対し,本件分割商標権を行使することができない。 (2) 控訴人の主張前記3(2)によれば,本件商標を構成する「PITAVA」は,「ピタバスタチンカルシウム」の国際一般名である「pitavastatin」を想起させる略称であると理解されるものではなく,本件商標を医薬品の国際一般名と同一視し得るものではない。 したがって,本件商標が公序良俗を害するおそれがある商標(商標法4条1項7号)であるとはいえないから,被控訴人の主張は,理由がない。 5 争点5(権利の濫用の成否)について(1) 被控訴人の主張ア明らかな無効理由の存在(ア) 控訴人は,平成15年の発売開始以来現在まで,ピタバスタチンカルシウムを有効成分とする医薬品を「リバロ」の販売名で販売を継続し,「リバロ」は,控訴人の商品名として確立している。一方で,控訴人は,「PITAVA」又は「ピタバ」という商品名でピタバスタチンカルシウムを有効成分とする医薬品を販売しておらず,上記商品名を使用している形跡もない。 - 23 -したがって,本件商標は,控訴人が「自己の業務に係る商品について使用をする商標」(商標法3条1項柱書き)に該当しないから,本件商標の商標登録には,同項柱書きに違反する無効理由(同法46条1項1号)がある。 (イ) 前記3(1)で述べたのと同様の理由により, 使用をする商標」(商標法3条1項柱書き)に該当しないから,本件商標の商標登録には,同項柱書きに違反する無効理由(同法46条1項1号)がある。 (イ) 前記3(1)で述べたのと同様の理由により,本件商標は,「ピタバスタチンカルシウム」の国際一般名である「pitavastatin」の略称であって,「ピタバスタチン」又は「ピタバスタチンカルシウム」を想起させるものであり,本件分割商標権の指定商品である「ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤」との関係においては,「ピタバスタチンカルシウム」を有効成分とする医薬品であること,すなわち,商品の品質の表示であり,かつ,名称又はその略称を錠剤に印刷又は刻印することは「普通に用いられる方法で表示するもの」といえるから,本件商標は,「商品の品質」を「普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」(商標法3条1項3号)に該当する。 したがって,本件商標の商標登録には,商標法3条1項3号に違反する無効理由(同法46条1項1号)がある。 (ウ) 前記(ア)及び(イ)の無効理由に基づく商標登録無効審判は,本件商標の商標登録から5年を経過しているため請求することができない(商標法47条1項)。 しかしながら,商標法47条1項の規定により,商標登録無効審判を請求することができない場合であっても,明らかな無効理由が存在するときは,当該商標権に基づく請求は,権利の濫用に当たり許されないというべきである。 そうすると,本件分割商標権に基づく本件請求は,本件商標の商標登録に明らかな無効理由があるから,権利の濫用に当たり許されないというべきである。 - 24 -イ商標法50条1項の取消事由の存在(ア) 次に,前記ア(ア)のとおり,控訴人が本件商標をその指定商品に使用している形跡がないから, 濫用に当たり許されないというべきである。 - 24 -イ商標法50条1項の取消事由の存在(ア) 次に,前記ア(ア)のとおり,控訴人が本件商標をその指定商品に使用している形跡がないから,本件商標の商標登録には,商標法50条1項の取消事由がある。そこで,被控訴人は,平成26年2月19日,本件商標の商標登録について不使用取消審判を請求した(乙21の1,2)。 この点に関し,控訴人は,控訴人とキョーリンリメディオ間の平成25年12月19日付け商標使用許諾契約に基づいて,キョーリンリメディオに対し,本件商標について通常使用権を許諾し,キョーリンリメディオは本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用しているから,本件商標の商標登録には,商標法50条1項の取消事由が存在しない旨主張する。 しかしながら,上記使用許諾契約は本件商標の積極的な使用を継続的に許諾するものではなく,キョーリンリメディオが錠剤の「ピタバ」の表示を速やかに中止することを前提に,契約締結日において保有している製品の在庫の限度内で本件商標権に基づく権利行使を行わないという,禁止権行使の猶予を合意したものである。同項の趣旨は,実際に使用される商標の保護を通じて商標に化体されている商標権者の業務上の信用を保護するという商標制度の目的にそぐわない商標を整理するという点にあるから,商標権者から禁止権行使の猶予を受けたにすぎない者は同項所定の「通常使用権者」に該当しないというべきである。 したがって,キョーリンリメディオによる「ピタバ」の使用をもって,同項にいう通常使用権者における本件商標又はこれと社会通念上同一と認められる商標の使用があるということはできないから,控訴人の上記主張は理由がない。 (イ) そうすると,本件商標の商標登録には,商標法50条1項の取消 者における本件商標又はこれと社会通念上同一と認められる商標の使用があるということはできないから,控訴人の上記主張は理由がない。 (イ) そうすると,本件商標の商標登録には,商標法50条1項の取消事由が存在し,不使用取消審判により取り消されるべきことが明らかであ- 25 -るから,不使用取消制度及び商標権制度の趣旨に照らし,控訴人の本件分割商標権に基づく本件請求は,権利の濫用に当たり許されないというべきである。 ウ小括以上のとおり,本件商標の商標登録には,明らかな無効理由があり,また,商標法50条1項の取消事由が存在し,不使用取消審判により取り消されるべきことが明らかであるから,控訴人の本件分割商標権に基づく本件請求は,権利の濫用に当たり許されないというべきである。 (2) 控訴人の主張ア無効理由の不存在製薬会社である控訴人は,自ら本件商標を使用する意思をもって,本件商標の商標登録出願をし,本件商標権の登録を受けたものであるから,本件商標の商標登録に商標法3条1項柱書きに違反する無効理由が存在するとの被控訴人の主張は理由がない。 また,前記3(2)で述べたのと同様の理由により,本件商標は,「ピタバスタチン」又は「ピタバスタチンカルシウム」を想起させる略称であるとはいえないから,本件商標の商標登録に商標法3条1項3号に違反する無効理由が存在するとの被控訴人の主張も理由がない。 イ商標法50条1項の取消事由の不存在控訴人は,キョーリンリメディオに対し,平成25年12月19日付け商標使用許諾契約に基づいて通常使用権を許諾し,キョーリンリメディオは,本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用している。上記使用許諾契約に係る契約書(甲8)の1条及び2条によれば,キョーリンリメディオが本件商標の通常使用 用権を許諾し,キョーリンリメディオは,本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用している。上記使用許諾契約に係る契約書(甲8)の1条及び2条によれば,キョーリンリメディオが本件商標の通常使用権者であることは明らかであり,キョーリンリメディオは,契約締結時の在庫の販売が完了するまでの間,「ピタバ」の表示を付した製品を新たに製造して販売することができるのであるか- 26 -ら,上記使用許諾契約は,本件商標の積極的な使用を継続的に許諾するものにほかならない。 したがって,本件商標の商標登録に商標法50条1項の取消事由が存在するとの被控訴人の主張は理由がない。 ウ小括以上によれば,控訴人の本件分割商標権に基づく本件請求が権利の濫用に当たり許されないとの被控訴人の主張は理由がない。 第4 当裁判所の判断当裁判所は,被控訴人各商品の錠剤に付された被控訴人各標章は,「需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができる態様により使用されていない商標」(商標法26条1項6号)に該当し,また,商品の「品質」又は「原材料」を「普通に用いられる方法で表示する商標」(同項2号)に該当するものと認められ,控訴人が有する本件分割商標権の効力は被控訴人各標章に及ばないものと認められるから,控訴人の当審における交換的変更に係る請求は,いずれも理由がないものと判断する。 その理由は,以下のとおりである。 1 判断の基礎となる認定事実(1) 被控訴人各標章の構成,その使用態様等についてア被控訴人各標章の構成について被控訴人各標章は,別紙標章目録1ないし3記載のとおり,「ピタバ」の片仮名3字を同一書体,同じ大きさで,略円弧状に横書きに書してなる標章である。 被控訴人各標章からそれぞれ「ピタバ」の称呼が生じる。 各標章は,別紙標章目録1ないし3記載のとおり,「ピタバ」の片仮名3字を同一書体,同じ大きさで,略円弧状に横書きに書してなる標章である。 被控訴人各標章からそれぞれ「ピタバ」の称呼が生じる。 イ被控訴人各商品について(ア) 被控訴人商品1は,販売名を「ピタバスタチンCa錠1mg「明治」」とする円形の錠剤,被控訴人商品2は,販売名を「ピタバスタチンCa- 27 -錠2mg「明治」」とする円形の錠剤,被控訴人商品3は,販売名を「ピタバスタチンCa錠4mg「明治」」とする円形の錠剤であり,いずれも一般的名称(JAN)を「ピタバスタチンカルシウム」(国際一般名(INN)は「pitavstatin」)とする化学物質を有効成分とする「HMG-CoA還元酵素阻害剤」である。 被控訴人各商品は,HMG-CoA還元酵素阻害作用で肝臓のコレステロール合成を阻害することによって,血液中のコレステロールを低下させる作用効果があり,通常,高コレステロール血症,家族性高コレステロール血症の治療に用いられる(乙27ないし29)。 また,医薬品医療機器等法49条1項は,「薬局開設者又は医薬品の販売業者は,医師,歯科医師又は獣医師から処方箋の交付を受けた者以外の者に対して,正当な理由なく,厚生労働大臣の指定する医薬品を販売し,又は授与してはならない。ただし,薬剤師等に販売し,又は授与するときは,この限りでない。」と定めている。 そして,「ピタバスタチン」,その誘導体,それらの水和物及びそれらの塩類を有効成分とする製剤は,厚生労働大臣によって,医薬品医療機器等法49条1項に基づき,「処方箋医薬品」に指定されており(平成17年2月10日厚生労働省告示第24号。乙22),被控訴人各商品は,「処方箋医薬品」である(乙27ないし29)。 厚生労働省医 機器等法49条1項に基づき,「処方箋医薬品」に指定されており(平成17年2月10日厚生労働省告示第24号。乙22),被控訴人各商品は,「処方箋医薬品」である(乙27ないし29)。 厚生労働省医薬食品局長発出の都道府県知事等あて平成17年3月30日付け薬食発第0330016号「処方せん医薬品等の取扱いについて」と題する書簡(一部改正平成23年3月31日薬食発0331第17号。乙23)には,「処方せん医薬品」の取扱いについて,「原則」として,「処方せん医薬品については,病院,診療所,薬局等へ販売(授与を含む。)する場合を除き」,医薬品医療機器等法49条1項の規定に基づき,「医師等からの処方せんの交付を受けた以外の者に対して,正当- 28 -な理由なく,販売を行ってはならないものであること」,「正当な理由なく,処方せん医薬品を販売した場合については,罰則が設けられているものであること」などの記載がある。 (イ) 被控訴人商品1は直径6.1mm,厚さ2.6mmの白色の錠剤(乙27),被控訴人商品2は直径7.1mm,厚さ2.9mmのごくうすい黄赤色の割線入り錠剤(乙28),被控訴人商品3は直径8.6mm,厚さ4.0mmの淡黄色の割線入り錠剤(乙29)であり,それぞれの外観は,別紙錠剤目録1ないし3のとおりである。 被控訴人各商品の包装態様は,別紙包装目録1ないし3のとおりであり,錠剤が10錠ずつPTPシートにパッケージされて,その複数のPTPシートが外箱に入れられたもの(同目録1ないし3参照)と,錠剤が瓶詰めされ,その瓶が外箱に入れられたもの(同目録1及び2参照)がある(乙37の「21.」)。 被控訴人商品1の外箱には,別紙包装目録1のとおり,「ピタバスタチンCa錠1mg「明治」」と横書きで大きく表示され,その上部には「HM もの(同目録1及び2参照)がある(乙37の「21.」)。 被控訴人商品1の外箱には,別紙包装目録1のとおり,「ピタバスタチンCa錠1mg「明治」」と横書きで大きく表示され,その上部には「HMG-CoA還元酵素阻害剤」,その下部には「ピタバスタチンカルシウム錠」,「1錠中ピタバスタチンカルシウム1.0mg」との表示があり,また,PTPシートの表面には,「ピタバスタチンCa錠1mg「明治」」,「ピタバスタチン」,「1mg」,「meijiMS047」,その裏面には,「PITAVASTATINCa1mg「Meiji」」,「ピタバスタチンCa「明治」」,「1mg」との表示がある。 被控訴人商品2の外箱には,別紙包装目録2のとおり,「「ピタバスタチンCa錠2mg「明治」」と横書きで大きく表示され,その上部には「HMG-CoA還元酵素阻害剤」,その下部には「ピタバスタチンカルシウム錠」,「1錠中ピタバスタチンカルシウム2.0mg」との- 29 -表示があり,また,PTPシートの表面には,「ピタバスタチンCa錠2mg「明治」」,「ピタバスタチン」,「2mg」,「meijiMS048」,その裏面には,「PITAVASTATINCa2mg「Meiji」」,「ピタバスタチンCa「明治」」,「2mg」との表示がある。 被控訴人商品3の外箱には,別紙包装目録3のとおり,「「ピタバスタチンCa錠4mg「明治」」と横書きで大きく表示され,その上部には「HMG-CoA還元酵素阻害剤」,その下部には「ピタバスタチンカルシウム錠」,「1錠中ピタバスタチンカルシウム4.0mg」との表示があり,また,PTPシートの表面には,「ピタバスタチンCa錠4mg「明治」」,「ピタバスタチン」,「4mg」,「meijiMS049」,その裏面には,「PIT チンカルシウム4.0mg」との表示があり,また,PTPシートの表面には,「ピタバスタチンCa錠4mg「明治」」,「ピタバスタチン」,「4mg」,「meijiMS049」,その裏面には,「PITAVASTATINCa 4mg「Meiji」」,「ピタバスタチンCa「明治」」,「4mg」との表示がある。 ウ被控訴人各標章の使用態様について被控訴人商品1には,別紙錠剤目録1のとおり,錠剤の一方の面の1段目に「ピタバ」の片仮名3字(被控訴人標章1),2段目に数字の「1」,3段目に「明治」の漢字2字が表示されている。なお,錠剤の他方の面には特に表示はない。 被控訴人商品2には,別紙錠剤目録2のとおり,錠剤の一方の面の1段目に「ピタバ」の片仮名3字(被控訴人標章2),2段目に数字の「2」が表示されている。また,錠剤の他方の面の1段目に「MS」の欧文字3字,2段目に数字の「048」が表示され,その1段目及び2段目の間に割線が表示されている。 被控訴人商品3には,別紙錠剤目録3のとおり,錠剤の一方の面の1段目に「ピタバ」の片仮名3字(被控訴人標章3),2段目に数字の「4」- 30 -が表示されている。また,錠剤の他方の面の1段目に「MS」の欧文字3字,2段目に数字の「049」が表示され,その1段目及び2段目の間に割線が表示されている。 (2) 後発医薬品の販売名の命名に関する規制等についてア平成17年9月22日付け薬食審査発第0922001号厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知「医療用後発医薬品の承認申請にあたっての販売名の命名に関する留意事項について」(以下「本件厚労省課長通知」という。)には,次のような記載がある(乙5)。 「医薬品の販売名については,承認申請書の名称欄の記載に関し,…「保健衛生上の危害の発生する 名に関する留意事項について」(以下「本件厚労省課長通知」という。)には,次のような記載がある(乙5)。 「医薬品の販売名については,承認申請書の名称欄の記載に関し,…「保健衛生上の危害の発生するおそれのないものであり,かつ,医薬品としての品位を保つものであること。また,医療用医薬品の販売名には,原則として剤形及び有効成分の含量(又は濃度等)に関する情報を付すること。」とされているところです。 また,医薬品の販売名等の類似性に起因した医療事故等を防止するための対策の一環として,平成12年9月19日付医薬発第935号厚生省薬安全局長通知「医療事故を防止するための医薬品の表示事項及び販売名の取扱いについて」(…)により,医療事故を防止するための販売名の取扱いに関する一般原則を示してきました。 しかしながら,現状に加え,医療用医薬品が今後引き続き新たに承認される状況にあって,既存のものとの類似性が低い販売名を命名することがますます困難な状況になることが予想されます。 ついては,今後新たに承認申請される医薬用後発医薬品の販売名について,下記の点に留意するよう,貴管下関係業者に対して周知方をお願いいたします。 記1.一般的名称を基本とした販売名を命名する際の取扱い- 31 -製造販売承認のための承認申請書の名称欄の記載に関し,以下に留意の上,製造販売会社名が明確に判別できるようにした上で,原則として,含有する有効成分に係る一般的名称を基本とした記載とすること。なお,本取扱いは,原則として,単一の有効成分からなる品目に適用されるものであること。 (1) 全般的事項ア販売名の記載にあたっては,含有する有効成分に係る一般的名称に剤型,含量及び会社名(屋号等)を付すこと。なお,一般的名称を基本とした記載を行わない場合は のであること。 (1) 全般的事項ア販売名の記載にあたっては,含有する有効成分に係る一般的名称に剤型,含量及び会社名(屋号等)を付すこと。なお,一般的名称を基本とした記載を行わない場合は,その理由を明らかにする文書を承認申請書に添付して提出すること。…(2) 語幹に関する事項ア有効成分の一般的名称については,その一般的名称の全てを記載することを原則とするが,当該有効成分が塩,エステル及び水和物等の場合にあっては,これらに関する記載を元素記号等を用いた略号等で記載して差し支えないこと。また,他の製剤との混同を招かないと判断される場合にあっては,塩,エステル及び水和物等に関する記載を省略することが可能であること。」イ前記アの事実に加えて,証拠(乙27ないし29)及び弁論の全趣旨によれば,被控訴人商品1の販売名「ピタバスタチンCa錠1mg「明治」」は,本件厚労省課長通知に従って命名されたものであり,「含有する有効成分に係る一般的名称」である「ピタバスタチンCa」,「剤形及び含量」である「錠1mg」,「会社名(屋号等)」である「明治」から構成されていること,被控訴人商品2及び3についても,これと同様に,本件厚労省課長通知に従って命名されたことが認められる。 (3) スタチン系医薬品及びその表記についてア証拠(乙6ないし19,40ないし42)及び弁論の全趣旨によれば,①- 32 -HMG-CoA還元酵素阻害薬は,医師,薬剤師等の医療従事者の間において,「スタチン系薬」,「スタチン系化合物」などと一般に呼ばれ,「スタチン系薬」又は「スタチン系化合物」には,「ピタバスタチン」のほかに,「アトルバスタチン」,「ロスバスタチン」,「シンバスタチン」,「プラバスタチン」,「フルバスタチン」,「ローバスタチン」などがある ン系薬」又は「スタチン系化合物」には,「ピタバスタチン」のほかに,「アトルバスタチン」,「ロスバスタチン」,「シンバスタチン」,「プラバスタチン」,「フルバスタチン」,「ローバスタチン」などがあること,②平成22年3月5日開催の日本循環器学会において,「スタチン」の中でも強力なストロングスタチン薬剤である「ピタバスタチン」,「アトルバスタチン」及び「ロスバスタチン」の3種類の薬剤の安全性及び有効性について同時に比較試験を行った研究成果が発表され,その発表において,それぞれが「ピタバ」,「アトルバ」及び「ロスバ」と表記され,「スタチン」の部分を省略した名称で特定されていたこと(乙6),③国立医薬品食品衛生研究所作成の2011年(平成23年)7月7日付け「医薬品安全性情報」記載の「◇スタチン系薬およびスタチン系薬を基本とした治療による相対的なLDL低下効果」と題する「表」において,「アトルバスタチン」,「フルバスタチン」,「ピタバスタチン」,「ローバスタチン」,「プラバスタチン」,「ロスバスタチン」及び「シンバスタチン」について,それぞれ「Atrova」,「Fluva」,「Pitava」,「Lova」,「Prava」,「Rosva」,「Simva」と表記され,「statin」(スタチン)を除外した名称が使用されていたこと,一方で,同表の下には「Atrova=Atrovastatin;Fluvastatin;Pitava=Pitavastatin;…」との記載があること(乙41),④そのほか,2006年(平成18年)以降に公開された公開特許公報,研究報告等の文献(乙7ないし13,40)において,「スタチン系化合物」の名称について,「statin」又は「スタチン」を除外した略称が使用されたり,「ピタバスタチン」を「ピタバ」と略して使用された 究報告等の文献(乙7ないし13,40)において,「スタチン系化合物」の名称について,「statin」又は「スタチン」を除外した略称が使用されたり,「ピタバスタチン」を「ピタバ」と略して使用された例(乙14,15,42)があることが認められる。 他方で,甲32(控訴人従業員作成の2014年12月16日付け報告- 33 -書)によれば,2001年(平成13年)から2007年(平成19年)までの間に発行された「臨床医薬」等の文献104件を調査した結果,標題に「Pitava」又は「ピタバ」の語を含む104件の文献のうち,「ピタバスタチン」(「Pitavastatin」)の説明をする際に,略記を用いずに,「ピタバスタチン」(「Pitavastatin」)と表記している文献が102件,「ピタバスタチン」(「Pitavastatin」)の説明をする際に,「ピタバ」又は「Pitava」の略記を用いた文献は2件であったことが示されている。 イ前記アの認定事実を総合すると,「スタチン系薬」又は「スタチン系化合物」は,医師,薬剤師等の医療従事者の間において,HMG-CoA還元酵素阻害薬の総称として一般に知られていたこと,「スタチン系薬」又は「スタチン系化合物」に属する具体的な物質を表記する場合,「スタチン」の用語を除外した部分を略称として使用することが一般的であるとまではいえないが,「スタチン系薬」又は「スタチン系化合物」を説明する際に,「ピタバスタチン」,「アトルバスタチン」,「ロスバスタチン」等について「ピタバ」,「アトルバ」,「ロスバ」等の略称で表記する場合もあり,医師,薬剤師等の医療従事者であれば,「スタチン系薬」又は「スタチン系化合物」を説明する文献又は文脈の中で,上記表記がされた場合,それらが「ピタバスタチン」,「アトルバスタチン 表記する場合もあり,医師,薬剤師等の医療従事者であれば,「スタチン系薬」又は「スタチン系化合物」を説明する文献又は文脈の中で,上記表記がされた場合,それらが「ピタバスタチン」,「アトルバスタチン」,「ロスバスタチン」等を意味することを理解するものと認められる。 (4) 本件の経過等について前記第2の1の前提事実と証拠(甲1,2,8,20,21,33,37,乙1,24ないし26,37,43(枝番のあるものは枝番を含む。))及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。 ア控訴人は,平成15年9月当時から,ピタバスタチンカルシウムを有効成分とするHMG-CoA還元酵素阻害剤として,販売名を「リバロ錠1mg」,「リバロ錠2mg」又は「リバロ錠4mg」とする各薬剤(控訴- 34 -人各商品)を販売していた。 イ控訴人は,平成17年8月30日,指定商品を第5類「薬剤」として,「PITAVA」の標準文字からなる本件商標について商標登録出願をし,平成18年4月7日,本件商標権の設定登録を受けた。 ウ平成25年8月,被控訴人を含む後発医薬品メーカー21社が承認申請していたピタバスタチンカルシウムを有効成分とする後発医薬品(ジェネリック医薬品)の製造販売が承認された(乙1,43)。 エ控訴人は,平成25年10月17日,指定商品を第5類「薬剤」として,「ピタバ」の標準文字からなる商標について商標登録出願(商願2013-080944号)をした。 その後,特許庁は,平成26年3月4日付けで拒絶理由通知(乙24)をした。その拒絶理由は,指定商品を取り扱う業界において,「ピタバ」の文字は,「ピタバスタチンカルシウム」又は「ピタバスタチン」の略称として使用されているので,指定商品中,「ピタバスタチンカルシウムを有効成分とする薬剤」 指定商品を取り扱う業界において,「ピタバ」の文字は,「ピタバスタチンカルシウム」又は「ピタバスタチン」の略称として使用されているので,指定商品中,「ピタバスタチンカルシウムを有効成分とする薬剤」に使用したときは,「ピタバスタチンカルシウムを有効成分とする商品」等の意味合いを理解させるにとどまり,単に商品の原材料,品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と認められるから,商標法3条1項3号に該当し,また,上記以外の商品に使用するときは,商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるから,同法4条1項16号に該当するというものであった。 その後,特許庁は,同年6月12日付けで,上記拒絶理由が解消されていないとして,上記商標登録出願について拒絶査定(乙26)をした。これに対し控訴人は,拒絶査定不服審判を請求した。 オ被控訴人は,平成25年12月から,ピタバスタチンカルシウムを有効成分とする被控訴人各商品の製造販売を開始した。被控訴人以外の後発医薬品メーカー20社も,同月から,ピタバスタチンカルシウムを有効成分- 35 -とする後発医薬品の製造販売を開始した。被控訴人以外の後発医薬品メーカーの薬剤の販売名は,本件厚労省課長通知に従って,「ピタバスタチンCa錠1mg「サワイ」」(沢井製薬が製造販売する薬剤)などと命名され,PTPシート及び外箱には,上記販売名と同様の表示がされている。 被控訴人を含む後発医薬品メーカー上記21社のうち,被控訴人,沢井製薬,小林化工,テバ製薬,キョーリンリメディオ及び共和薬品工業の6社は,錠剤に「ピタバ」の表示をした。 その後,控訴人は,キョーリンリメディオとの間で,本件商標権について,平成25年12月19日付け商標使用許諾契約(甲8)を締結した。 カ控訴人は,平成26年1月15日, ピタバ」の表示をした。 その後,控訴人は,キョーリンリメディオとの間で,本件商標権について,平成25年12月19日付け商標使用許諾契約(甲8)を締結した。 カ控訴人は,平成26年1月15日,被控訴人に対し,本件商標権に基づいて被控訴人各標章を付した薬剤の販売の差止め及び廃棄を求める本件訴訟を提起した後,同年8月28日,控訴人の請求をいずれも棄却する旨の原判決が言い渡された。 その間の同年2月19日,被控訴人は,本件商標の商標登録の取消しを求めて不使用取消審判を請求した(乙21の1,2)。 キ控訴人は,平成26年9月10日,本件控訴を提起した後,本件商標権の分割の申請(受付日同年11月18日)をし,本件商標権は,指定商品を第5類「薬剤但し,ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤を除く」とする別紙商標権目録2記載の商標権と指定商品を第5類「ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤」とする同目録3記載の商標権(本件分割商標権)に分割された。 その後,控訴人は,当審において,請求原因を本件商標権の侵害から本件分割商標権の侵害に変更する旨の訴えの交換的変更をした。 2 被控訴人各標章の商標法26条1項6号該当性(争点2)について(1) 被控訴人は,被控訴人が被控訴人各商品の錠剤に被控訴人各標章を表示しているのは,服用者が服用する際に他の薬剤と間違えないよう誤飲防止のた- 36 -めであって,自他商品識別機能を奏するために表示しているものではなく,被控訴人各商品における被控訴人各標章の使用は,いわゆる商標的使用に当たらないから,被控訴人各標章は,「需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができる態様により使用されていない商標」(商標法26条1項6号)に該当する旨主張する。 アそこで検討するに,前記1の認定事 訴人各標章は,「需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができる態様により使用されていない商標」(商標法26条1項6号)に該当する旨主張する。 アそこで検討するに,前記1の認定事実によれば,①被控訴人各商品は,一般的名称(JAN)を「ピタバスタチンカルシウム」とする化学物質を有効成分とする「HMG-CoA還元酵素阻害剤」であり,医療用後発医薬品(ジェネリック医薬品)であること,②医薬品の販売名等の類似性に起因した医療事故等を防止するための対策の一環として平成17年9月22日付で発出された本件厚労省課長通知は,医療用後発医薬品の承認申請に当たっての販売名の命名に関し,「販売名の記載にあたっては,含有する有効成分に係る一般的名称に剤型,含量及び会社名(屋号等)を付すこと」を定めており,被控訴人各商品の販売名である「ピタバスタチンCa錠1mg「明治」」,「ピタバスタチンCa錠2mg「明治」」及び「ピタバスタチンCa錠4mg「明治」」は,本件厚労省課長通知に従って命名されたこと,③被控訴人を含む後発医薬品メーカー21社は,平成25年12月から,ピタバスタチンカルシウムを有効成分とする後発医薬品(「HMG-CoA還元酵素阻害剤」)の製造,販売を開始し,被控訴人以外の20社も,本件厚労省課長通知に従って,上記後発医薬品の販売名を命名し(例えば,「ピタバスタチンCa錠1mg「サワイ」),剤型及び含量が同じであれば,被控訴人各商品との販売名の違いは「会社名(屋号等)」だけであること,④「スタチン系薬」又は「スタチン系化合物」は,医師,薬剤師等の医療従事者の間において,HMG-CoA還元酵素阻害薬の総称として一般に知られていたこと,⑤「スタチン系薬」又は「スタチン系化合物」に属する具体的な物質を表記する場合,「スタチン」の- 剤師等の医療従事者の間において,HMG-CoA還元酵素阻害薬の総称として一般に知られていたこと,⑤「スタチン系薬」又は「スタチン系化合物」に属する具体的な物質を表記する場合,「スタチン」の- 37 -用語を除外した部分を略称として使用することが一般的であるとまではいえないが,「スタチン系薬」又は「スタチン系化合物」を説明する際に,「ピタバスタチン」,「アトルバスタチン」,「ロスバスタチン」等について「ピタバ」,「アトルバ」,「ロスバ」等の略称で表記する場合もあり,医師,薬剤師等の医療従事者であれば,「スタチン系薬」又は「スタチン系化合物」を説明する文献又は文脈の中で,上記表記がされた場合,それらが「ピタバスタチン」,「アトルバスタチン」,「ロスバスタチン」等を意味することを理解すること,⑥本件厚労省課長通知には,「有効成分の一般的名称については,その一般的名称の全てを記載することを原則とするが,当該有効成分が塩,エステル及び水和物等の場合にあっては,これらに関する記載を元素記号等を用いた略号等で記載して差し支えないこと。また,他の製剤との混同を招かないと判断される場合にあっては,塩,エステル及び水和物等に関する記載を省略することが可能であること。」との記載があることが認められる。 上記認定事実によれば,被控訴人各商品の錠剤に付された「ピタバ」の表示(被控訴人各標章)は,有効成分である「ピタバスタチンカルシウム」について,その塩であることを示す部分(「カルシウム」)の記載及び「スタチン」の記載を省略した「略称」であることが認められる。 イ次に,被控訴人各商品の包装態様は,別紙包装目録1ないし3のとおりであり,錠剤が10錠ずつPTPシートにパッケージされて,その複数のPTPシートが外箱に入れられたもの(同目録1ないし3参照) イ次に,被控訴人各商品の包装態様は,別紙包装目録1ないし3のとおりであり,錠剤が10錠ずつPTPシートにパッケージされて,その複数のPTPシートが外箱に入れられたもの(同目録1ないし3参照)と,錠剤が瓶詰めされ,その瓶が外箱に入れられたもの(同目録1及び2参照)があり(前記1(1)イ(イ)),被控訴人各商品の錠剤は,通常は,PTPシートから取り出して服用することが想定されているといえる。 また,被控訴人商品1の外箱には,「ピタバスタチンCa錠1mg「明治」」と横書きで大きく表示され,その上部には「HMG-CoA還元酵- 38 -素阻害剤」,その下部には「ピタバスタチンカルシウム錠」,「1錠中ピタバスタチンカルシウム1.0mg」との表示があり,PTPシートの表面には,「ピタバスタチンCa錠1mg「明治」」,「ピタバスタチン」,「1mg」,「meijiMS047」,その裏面には,「PITAVASTATINCa1mg「Meiji」,「ピタバスタチンCa「明治」」,「1mg」との表示があること(別紙包装目録1参照),被控訴人商品2及び3の外箱及びPTPシートについても,含量及び「MS」に続く3桁の数字の表記が異なるほかは,被控訴人商品1と同様の表示があること(同目録2及び3参照)は,前記1(1)イ(イ)のとおりである。 さらに,被控訴人各商品の外箱又はPTPシートに記載された「ピタバスタチンCa」,「ピタバスタチン」等の表示と被控訴人各商品の錠剤に付された「ピタバ」の表示(被控訴人各標章)を同じ機会に目にした場合,「ピタバスタチンCa」又は「ピタバスタチン」と「ピタバ」の言語構成から,「ピタバ」が「ピタバスタチンCa」又は「ピタバスタチン」の頭部分の3字を略記したものであることを自然に理解するものと認められる。 そ ンCa」又は「ピタバスタチン」と「ピタバ」の言語構成から,「ピタバ」が「ピタバスタチンCa」又は「ピタバスタチン」の頭部分の3字を略記したものであることを自然に理解するものと認められる。 そして,医師,薬剤師等の医療従事者の間においては,後発医薬品の販売名は含有する有効成分に係る一般的名称に剤型,含量及び会社名(屋号等)から構成されていることは一般的に知られているものと認められるから,医療従事者が,被控訴人各商品に接した場合,被控訴人各商品が「ピタバスタチンCa錠1mg「明治」」等を販売名とする後発医薬品であることを認識し,被控訴人各商品の錠剤に付された「ピタバ」の表示(被控訴人各標章)は,有効成分である「ピタバスタチンカルシウム」の略称であることを認識するものと認められる。 一方で,患者においては,PTPシートに入れられた状態で被控訴人各商品の交付を受けた場合,PTPシートから被控訴人各商品を取り出して- 39 -服用する際に,PTPシートに記載された「ピタバスタチンカルシウム」等の表示が自然に目に触れ,被控訴人各商品は「ピタバスタチンカルシウム」が含有された錠剤であること認識するものと認められるから,被控訴人各商品の錠剤に付された「ピタバ」の表示(被控訴人各標章)は,被控訴人各商品の含有成分を略記したものであることを理解するものと認められる。 また,被控訴人各商品は,医師等の処方箋により使用する「処方箋医薬品」であり(前記1(1)イ(ア)),被控訴人各商品と他の薬剤とが一つの袋にまとめて包装される「1包化調剤」により処方される場合があるが,この場合,患者は,1包化した袋を開封し,その袋内に薬剤が入ったままの状態で服用するので,被控訴人各商品の錠剤に付された「ピタバ」の表示を認識することはないのが通常である。もっ される場合があるが,この場合,患者は,1包化した袋を開封し,その袋内に薬剤が入ったままの状態で服用するので,被控訴人各商品の錠剤に付された「ピタバ」の表示を認識することはないのが通常である。もっとも,患者は,1包化した袋からいったん薬剤を取り出して服用する場合もあるが,その際には,取り出した薬剤を一緒に服用すべきひとまとまりの薬剤として認識し,個々の薬剤の表示が目に触れたとしても,その表示が薬剤の出所を示すものと理解することはないものと認められる。 以上によれば,被控訴人各商品の需要者である医師,薬剤師等の医療従事者及び患者のいずれにおいても,被控訴人各商品に付された「ピタバ」の表示(被控訴人各標章)から商品の出所を識別したり,想起することはないものと認められるから,被控訴人各商品における被控訴人各標章の使用は,商標的使用に当たらないというべきである。 ウしたがって,被控訴人各標章は,「需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができる態様により使用されていない商標」(商標法26条1項6号)に該当するものと認められる。 (2) 控訴人は,これに対し,①患者は,通常,被控訴人各商品の有効成分の名称が何であるかについて興味も知識もなく,医師,薬剤師等から説明も受け- 40 -ていないから,被控訴人各商品の錠剤に表示された「ピタバ」に触れたときに,それが「有効成分」を示すものであると認識するものとはいえないし,たとえ,患者が被控訴人各商品のPTPシートに付された「ピタバスタチンCa錠1mg「明治」」等の表示に触れた上で,被控訴人各商品の錠剤に表示された「ピタバ」に触れたときに,「ピタバ」の表示が販売名たる「ピタバスタチンCa錠1mg「明治」」等のうちの「ピタバスタチンCa」の一部の表示あるいはそれに由来する表示で 控訴人各商品の錠剤に表示された「ピタバ」に触れたときに,「ピタバ」の表示が販売名たる「ピタバスタチンCa錠1mg「明治」」等のうちの「ピタバスタチンCa」の一部の表示あるいはそれに由来する表示であると認識することがあったとしても,「ピタバ」を「有効成分」としての「ピタバスタチンCa」を意味するものと認識することはないから,被控訴人各商品の取引者,需要者である患者において,被控訴人各標章が出所識別機能を発揮する表示であると認識されないということはできない,②薬剤の錠剤に付された「ピタバ」の表示に関するアンケート調査結果(甲22)によれば,「ピタバ」の表示が「この薬の有効成分(薬の効果をもたらす成分)の名前(またはその一部)」と回答したのは全体の15%にすぎず,残りの85%は有効成分の名称(またはその一部)であるとは認識しなかったこと,全体の43%が薬剤の錠剤に付された「ピタバ」の表示を「この薬の商品名」と認識していたことからすると,患者が被控訴人各標章を有効成分の説明的表示であると認識するとはいえないとして,被控訴人各標章は,商標法26条1項6号に該当しない旨主張する。 アしかしながら,前記(1)イ認定のとおり,患者は,PTPシートに入れられた状態で被控訴人各商品の交付を受けた場合には,PTPシートから被控訴人各商品を取り出して服用する際に,PTPシートに記載された「ピタバスタチンカルシウム」等の表示が自然に目に触れ,被控訴人各商品は「ピタバスタチンカルシウム」が含有された錠剤であること認識するものと認められるから,被控訴人各商品の錠剤に付された「ピタバ」の表示(被控訴人各標章)は,被控訴人各商品の含有成分を略記したものであること- 41 -を理解するものと認められる。 次に,被控訴人各商品が「1包化調剤」により処方され に付された「ピタバ」の表示(被控訴人各標章)は,被控訴人各商品の含有成分を略記したものであること- 41 -を理解するものと認められる。 次に,被控訴人各商品が「1包化調剤」により処方された場合には,患者は,1包化した袋を開封し,その袋内に薬剤が入ったままの状態で服用するので,個々の薬剤の表示には被控訴人各商品の錠剤に付された「ピタバ」の表示を認識することがないのが通常であり,また,患者が1包化した袋からいったん薬剤を取り出して服用する場合もあるが,その際には,患者は,取り出した薬剤を一緒に服用すべきひとまとまりの薬剤として認識し,個々の薬剤の表示が目に触れたとしても,その表示が薬剤の出所を示すものと理解することはないものといえるから,患者において,被控訴人各商品に付された「ピタバ」の表示(被控訴人各標章)から商品の出所を識別したり,想起することはないものと認められる。 イまた,控訴人の挙げる「ピタバ」の表示に関するアンケート調査(甲22)は,「ピタバ」の表示が付された「錠剤」の写真と「PTPシート」の写真とを対比して質問に対する回答を求めたものであり,患者が被控訴人各商品を処方され,これを服用する際の実情を踏まえたものといえないから,上記アンケート調査の結果は,患者において被控訴人各商品に付された「ピタバ」の表示(被控訴人各標章)から商品の出所を識別したり,想起することはないとの上記アの認定を左右するものではない。 ウしたがって,被控訴人各商品における被控訴人各標章の使用は,商標的使用に当たらないから,控訴人の上記主張は,採用することができない。 (3) 以上によれば,被控訴人各商品の錠剤に付された被控訴人各標章は,商標法26条1項6号に該当するから,控訴人が有する本件分割商標権の効力は,被控訴人各標章に及ばないと 用することができない。 (3) 以上によれば,被控訴人各商品の錠剤に付された被控訴人各標章は,商標法26条1項6号に該当するから,控訴人が有する本件分割商標権の効力は,被控訴人各標章に及ばないというべきである。 3 被控訴人各標章の商標法26条1項2号該当性(争点3)について(1) 被控訴人は,被控訴人各商品の錠剤に付された「ピタバ」の表示(被控訴人各標章)は,「ピタバスタチン」又は「ピタバスタチンカルシウム」を想- 42 -起させる略称であり,本件分割商標権の指定商品である「ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤」との関係においては,「ピタバスタチンカルシウム」を有効成分とする医薬品であること,すなわち,商品の品質の表示であり,かつ,錠剤に有効成分又はその略称を印刷又は刻印することは一般的に行われており,「ピタバ」を錠剤に印刷又は刻印することは「普通に用いられる方法で表示するもの」といえるから,被控訴人各標章は,商標法26条1項2号の商標に該当する旨主張する。 アそこで検討するに,前記2(1)ア認定のとおり,被控訴人各商品の錠剤に付された「ピタバ」の表示(被控訴人各標章)は,有効成分である「ピタバスタチンカルシウム」について,その塩であることを示す部分(「カルシウム」)の記載及び「スタチン」の記載を省略した「略称」であることが認められる。 そして,前記2(1)イ認定のとおり,医師,薬剤師等の医療従事者の間においては,後発医薬品の販売名は含有する有効成分に係る一般的名称に剤型,含量及び会社名(屋号等)から構成されていることは一般的に知られているものと認められるから,医療従事者が,被控訴人各商品に接した場合,被控訴人各商品が「ピタバスタチンCa錠1mg「明治」」等を販売名とする後発医薬品であることを認識し,被控訴人各商 般的に知られているものと認められるから,医療従事者が,被控訴人各商品に接した場合,被控訴人各商品が「ピタバスタチンCa錠1mg「明治」」等を販売名とする後発医薬品であることを認識し,被控訴人各商品の錠剤に付された「ピタバ」の表示(被控訴人各標章)は,有効成分である「ピタバスタチンカルシウム」の略称であることを認識するものと認められる。 そうすると,被控訴人各商品の需要者である医療従事者においては,被控訴人各商品に付された被控訴人各標章は,「商品の品質」である「有効成分」を表示する商標であると理解するものと認められる。 イ次に,前記2(1)イ認定のとおり,患者においては,PTPシートに入れられた状態で被控訴人各商品の交付を受けた場合,PTPシートから被控訴人各商品を取り出して服用する際に,PTPシートに記載された「ピタ- 43 -バスタチンカルシウム」等の表示が自然に目に触れ,被控訴人各商品は「ピタバスタチンカルシウム」が含有された錠剤であること認識するものと認められるから,被控訴人各商品の錠剤に付された「ピタバ」の表示(被控訴人各標章)は,被控訴人各商品の含有成分を略記したものであることを理解するものと認められる。 また,被控訴人各商品は処方箋医薬品であって(前記1(1)イ(ア)),患者は,医師等から処方箋の交付を受けなければ,被控訴人各商品を購入することができないものであるところ,医師等から,処方箋医薬品が処方される際には,通常は,処方される薬剤にどのような効能・効果があるかの説明がされ,さらに,薬局等に処方箋を提出して処方箋医薬品を購入する際には,通常は,薬剤師から,購入する薬剤の効能・効果に加えて,当該薬剤の名称やその服用方法等についても説明がされるから(乙27ないし30,36,37,弁論の全趣旨),患者は,被 箋医薬品を購入する際には,通常は,薬剤師から,購入する薬剤の効能・効果に加えて,当該薬剤の名称やその服用方法等についても説明がされるから(乙27ないし30,36,37,弁論の全趣旨),患者は,被控訴人各商品を購入するまでの過程において,医師又は薬剤師から,被控訴人各商品の有効成分が「ピタバスタチンカルシウム」である旨の説明を受ける場合もあるものと認められる。 そうすると,被控訴人各商品の需要者である患者においては,被控訴人各商品に付された被控訴人各標章は,「商品の原材料」である「含有成分」又は「商品の品質」である「有効成分」を表示する商標であると理解するものと認められる。 ウ証拠(乙30,44)及び弁論の全趣旨によれば,後発医薬品の一般的名称の略称ないし一部(例えば,「アトルバスタチンカルシウム水和物」につき「アトルバ」,「バルサルタン」につき「バルサ」又は「バルサル」,「ラベプラゾールナトリウム」につき「ラブペラ」等)を錠剤に表示することは,普通に行われていることが認められる。 エ前記アないしウを総合すると,被控訴人各商品の錠剤に付された被控訴- 44 -人各標章は,「商品の品質」である「有効成分」又は「商品の原材料」である「含有成分」を「普通に用いられる方法で表示する商標」(商標法26条1項2号)に該当するものと認められる。 (2) 控訴人は,これに対し,患者は,薬剤の効果や副作用について興味を持つことはあるとしても,当該薬剤の化学物質である有効成分の名称が何であるかということには興味や知識を持っていないのが通常であり,また,医師・薬剤師も,患者に対して薬剤を処方するに際し,薬剤の効果や副作用についての説明をすることはあるとしても,通常,当該薬剤の有効成分の名称が何であるかを説明することはないなどとして,取引者 また,医師・薬剤師も,患者に対して薬剤を処方するに際し,薬剤の効果や副作用についての説明をすることはあるとしても,通常,当該薬剤の有効成分の名称が何であるかを説明することはないなどとして,取引者,需要者である患者において,「ピタバ」の表示が「有効成分」である「ピタバスタチンカルシウム」の略称を示すものとして一般に認識されているとはいえないから,被控訴人各標章は商標法26条1項2号の商標に該当しない旨主張する。 しかしながら,前記(1)イ認定のとおり,患者は,被控訴人各商品を購入するまでの過程において,医師又は薬剤師から,被控訴人各商品の有効成分が「ピタバスタチンカルシウム」である旨の説明を受ける場合もあるものと認められる。 また,仮に患者がそのような説明を受けないとしても,前記(1)イ認定のとおり,患者は,被控訴人各商品に付された被控訴人各標章は,少なくとも,「商品の原材料」である「含有成分」を表示する商標であることを理解するものと認められる。 したがって,被控訴人各標章は商標法26条1項2号の商標に該当しないとの控訴人の上記主張は,採用することができない。 (3) 以上によれば,被控訴人各商品の錠剤に付された被控訴人各標章は,商標法26条1項2号に該当するから,控訴人が有する本件分割商標権の効力は,被控訴人各標章に及ばないというべきである。 4 結論- 45 -以上の次第であるから,その余の点について判断するまでもなく,控訴人の当審における交換的変更に係る請求は,いずれも理由がない。 したがって,控訴人の上記請求をいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官富田善範 裁判官大鷹一郎 いずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第4部 裁判長裁判官富田善範 裁判官大鷹一郎 裁判官鈴木わかな 主文 1 登録番号第4942833号出願日平成17年8月30日登録日平成18年4月7日指定商品第5類「薬剤」登録商標PITAVA(標準文字) 2 登録番号第4942833号の1出願日平成17年8月30日登録日平成18年4月7日指定商品第5類「薬剤但し,ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤を除く」登録商標PITAVA(標準文字) 3 登録番号第4942833号の2出願日平成17年8月30日登録日平成18年4月7日(商標登録原簿の甲区欄記載の登録日平成26年12月2日)指定商品第5類「ピタバスタチンカルシウムを含有する薬剤」登録商標PITAVA(標準文字) 標章目録 錠剤目録 包装目録 1 被控訴人商品1 2 被控訴人商品2 包装目録 1 被控訴人商品1 2 被控訴人商品2 3 被控訴人商品3
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