令和6年11月18日宣告令和5年(わ)第787号殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件判決 主文 被告人を懲役28年に処する。 未決勾留日数中310日をその刑に算入する。 東京地方検察庁立川支部で保管中の回転弾倉式拳銃1丁(令和5年立川支領第384号符号1)を没収する。 理由 (罪となるべき事実) 被告人は、法定の除外事由がないのに、第1 令和5年5月26日午後7時36分頃、不特定若しくは多数の者の用に供される場所である東京都町田市(住所省略)A店及び同店付近通路上において、B(当時51歳)に対し、殺意をもって、持っていた回転弾倉式拳銃(令和5年立川支領第384号符号1)で弾丸6発を発射し、そのうち3発を同人の左 前胸部、右背部及び右後頭部にそれぞれ命中させ、よって、同日午後9時12分頃、相模原市(住所省略)C病院において、同人を左前胸部銃創に起因する心損傷により死亡させて殺害し、第2 同日午後7時36分頃、前記A店において、前記拳銃1丁(令和5年立川支領第384号符号1)をこれに適合する実包7発と共に携帯して所持したが、 同日、神奈川県伊勢原警察署において、警視庁司法警察員Dに前記拳銃1丁を提出して自首した。 (量刑の理由) 1 本件は、被告人が、喫茶店内及び店外の通路上において、被害者に対し、判示の拳銃(以下「本件拳銃」という。)で弾丸を発射して命中させるなどして殺害し (判示第1)、その際、本件拳銃をこれに適合する実包と共に携帯して所持した(判 示第2)事案である。 2 量刑の中心となる判示第1の殺人、拳銃発射の犯行についてみると、被告人は、営業中で客や店員のいる喫茶店内 、本件拳銃をこれに適合する実包と共に携帯して所持した(判 示第2)事案である。 2 量刑の中心となる判示第1の殺人、拳銃発射の犯行についてみると、被告人は、営業中で客や店員のいる喫茶店内の出入口付近の席に座っていた被害者に近づくと、いきなり至近距離から拳銃で弾丸1発を発射してその左胸に命中させ、奥に向かって店内を逃げ回る被害者を追いかけながら弾丸4発を発射して1発をその背 部に命中させ、同出入口から店外に逃げた被害者を追いかけ、付近の通路上で倒れている被害者に近づくと、さらに至近距離から弾丸1発を発射してその後頭部に命中させて、同人を左前胸部銃創に起因する心損傷により死亡させた。拳銃という極めて殺傷能力の高い凶器を使用したことや、弾丸を複数回発射して被害者に命中させていることに照らしても、犯行態様は、強固な殺意に基づく危険極まりない悪質 なものといわざるを得ない。被害者の生命を奪った結果が重大であることはいうまでもなく、駅ビルにある喫茶店内等で敢行された本件において、喫茶店内やその付近にいた者に与えた恐怖感や不安感には大きなものがあったと認められるし、社会に与えた不安感等も看過し得ず、被害者の内妻の処罰感情が厳しいのも当然である。 被告人は、被害者との共通の知人に自己の連絡先を被害者に伝えるように依頼し、 被害者と電話等で連絡ができるようになると、被害者を殺害する目的を秘して、以前被害者から預かっていたが返還できなかった投資金の一部を返すなどといった嘘の名目で町田市内のホテルに呼び出すなどし、本件拳銃や実包のほか、弾倉に素早く実包を装填するための道具であるスピードローダーを携帯して本件犯行に及んだのであって、計画的な犯行といえる。 次に、判示第2の拳銃の加重所持の犯行についてみると、被告人は本件拳銃1丁 素早く実包を装填するための道具であるスピードローダーを携帯して本件犯行に及んだのであって、計画的な犯行といえる。 次に、判示第2の拳銃の加重所持の犯行についてみると、被告人は本件拳銃1丁を7発の適合実包と共に所持していたのであり、本件犯行は、人の生命身体に危害を加える危険性の高い犯行といえ、現にうち6発が発射されて、その危険性が現実化したといえる。 被告人は、本件各犯行の動機や経緯について、長年にわたり暴力団員として活動 してきたが、平成24年に暴力団を離脱し、令和5年2月頃、肝硬変等による体調 の悪化や、就業先での労働組合の組合長としての活動が不本意な結果に終わった挫折感等から、拳銃を使って自殺しようと考え、拳銃の購入を手配し、その後、平成30年頃から自身と金銭トラブルのあった現役の暴力団幹部である被害者が自身を捜していると聞き、かつて被害者が自身の孫を監視しているかのような手紙を送ってきたことを思い出し、自身の死後に被害者が家族に危害を加えるおそれがあるな どと思うようになり、自殺する前に家族を守るために被害者を殺害しようと考えて本件に及んだなどという。しかしながら、金銭トラブルの相手を殺害して解決を図ろうとすることが許されるはずもないし、被告人の家族が被害者から危害を加えられる具体的なおそれがあったとも考え難く、自殺を企図していたという被告人の当時の精神状態を踏まえても、殺害に向けた被告人の意思決定は、反社会的な価値観 に基づく身勝手かつ短絡的なものというほかなく、強い非難を免れない。 また、被告人には、傷害致死や強盗致傷、銃砲刀剣類所持等取締法違反等の罪による前科が複数あり、長期間服役したことがある中で、本件各犯行に及んでおり、前刑の執行終了からは相当期間が経過していることを踏まえても、生命 は、傷害致死や強盗致傷、銃砲刀剣類所持等取締法違反等の罪による前科が複数あり、長期間服役したことがある中で、本件各犯行に及んでおり、前刑の執行終了からは相当期間が経過していることを踏まえても、生命を軽視する被告人の規範意識には問題があるといわざるを得ない。 3 以上の犯情を前提に、量刑の中心となる殺人罪を処断罪とする同種事案(殺人罪、凶器:銃器類)の量刑傾向を踏まえて検討すると、本件は、死刑や無期懲役刑を含む最も重い部類に位置付けられるとまではいえないものの、有期懲役刑の最上限あるいはそれに近い重い部類に位置付けられるものといえる。 4 そして、その他の情状についてみると、被告人は、犯行の約3時間後には自 首をしているが、元暴力団員である被告人が、別の暴力団の幹部である被害者を殺害したことからすると、その捜査は暴力団同士の抗争も視野に入れた大規模なものになることが想定されるところ、このような状況において、被告人の自首は、事件の早期解決や地域住民の不安の鎮静化に貢献したと評価できる。被告人は長期間の服役を覚悟し、事実を認め、被害者に対する謝罪の言葉や反省の弁を述べている。 また、その実効性に疑問の余地はあるものの、被告人の母親が、当公判廷において、 被告人の更生を支える旨供述し、被告人の元妻も、陳述書において、その旨述べている。 5 以上によれば、被告人に対しては、有期懲役刑を選択した上で、被告人のために酌むべき事情を考慮して、主文の刑に処するのが相当であると判断した。 よって、主文のとおり判決する。 (検察官の求刑:無期懲役及び没収、弁護人の科刑意見:懲役18年)令和6年11月18日東京地方裁判所立川支部刑事第1部 裁判長裁判官杉山正明 検察官の求刑:無期懲役及び没収 弁護人の科刑意見:懲役18年 令和6年11月18日 東京地方裁判所立川支部刑事第1部 裁判長裁判官杉山正明 裁判官河畑勇 裁判官櫻井雅典
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