平成24(行ウ)552 行政文書不開示決定処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成26年4月16日 東京地方裁判所 情報公開
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判決文本文20,800 文字)

平成26年4月16日判決言渡平成24年(行ウ)第552号行政文書不開示決定処分取消請求事件主文 1 本件訴えのうち海上保安庁長官が別紙文書目録記載の各文書を開示する旨の決定をすることの義務付けを求める部分を却下する。 2 本件訴えのその余の部分に係る原告の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求 1 海上保安庁長官が原告に対して平成24年2月17日付けでした別紙文書目録記載の各文書の開示をしない旨の決定を取り消す。 2 海上保安庁長官は,原告に対し,別紙文書目録記載の各文書を開示する旨の決定をせよ。 第2 事案の概要等本件は,原告が,海上保安庁長官に対して,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(以下「情報公開法」という。)に基づき,海上保安庁の保有する別紙文書目録記載のいずれも電磁的記録である各行政文書(以下「本件各対象文書」といい,同目録記載1及び2の各行政文書を,その番号に応じて,「本件対象文書1」のようにいう。)の開示を請求したのに対し,海上保安庁長官から,本件各対象文書が刑事訴訟法(以下「刑訴法」という。)53条の2第1項所定の「訴訟に関する書類」に当たるとして,本件各対象文書の開示をしない旨の決定(以下「本件非開示決定」という。)を受けたことから,本件非開示決定の取消し及び本件各対象文書を開示する旨の決定をすることの義務付けを求めた事案である。 1 前提となる事実(当事者間に争いがない事実を含む。)(1) 平成22年9月7日,沖縄県の尖閣諸島沖の我が国の領海において,海 上保安庁の巡視船に対し,中華人民共和国をその国籍とする船舶(以下「中国船舶」という。)が衝突する事件(以下「本件事件」という。)が発生した(甲3,4,乙2)。 の我が国の領海において,海 上保安庁の巡視船に対し,中華人民共和国をその国籍とする船舶(以下「中国船舶」という。)が衝突する事件(以下「本件事件」という。)が発生した(甲3,4,乙2)。 (2) 前記(1)の巡視船の乗組員であった海上保安庁の職員は,本件事件の状況をビデオカメラで撮影した(甲3,4,乙2。以下,同撮影による映像を「本件衝突映像」という。)。 (3) 海上保安庁の職員は,中国船舶の船長(以下「本件被疑者」という。)を,本件事件についての公務執行妨害を被疑事実として,裁判官があらかじめ発した逮捕状により逮捕した(乙2)。 (4) 本件被疑者は,平成22年9月9日,公務執行妨害を被疑事実として,石垣海上保安部の司法警察員から那覇地方検察庁石垣支部の検察官に送致された(乙2)。 (5)ア本件衝突映像は,編集された後,平成22年9月17日から同月22日までの間,海上保安大学校のパブリックフォルダに保存され(この保存された映像データが,本件対象文書1である。),不特定多数の海上保安庁の職員においてこれを視聴すること等が可能な状態となっていた(乙2。なお,いかなる経緯の下に,本件衝突映像が編集されて本件対象文書1が作成され,これが海上保安大学校のパブリックフォルダに保存されたのかについては,争いがある。)。 イ神戸海上保安部の巡視艇の乗組員Aは,平成22年9月19日,海上保安大学校のパブリックフォルダに保存されていた本件対象文書1のデータを偶然に発見し,同保安部の行政情報システム端末機に保存した(乙2)。 ウ神戸海上保安部の巡視艇の乗組員Bは,平成22年10月31日,上記イの端末機に保存されていた本件対象文書1のデータを複製して部外に持ち出した上,同年11月4日,これをインターネット上に流出させた(甲 海上保安部の巡視艇の乗組員Bは,平成22年10月31日,上記イの端末機に保存されていた本件対象文書1のデータを複製して部外に持ち出した上,同年11月4日,これをインターネット上に流出させた(甲 3,4,乙2)。 (6) 本件衝突映像は,その一部が複製され,平成22年11月22日及び平成23年8月11日に,海上保安庁から参議院に提出された(弁論の全趣旨。これらの複製された映像データが「本件対象文書2」である。なお,被告は,平成22年11月22日に提出された映像データは国会法104条の規定に基づく求めに応じて参議院議長に提出されたもの(以下「本件提出用映像資料1」という。)であり,平成23年8月11日に提出された映像データは参議院予算委員会理事会にその求めに応じて提出されたもの(以下「本件提出用映像資料2」という。)であるとしている。)。 (7) 原告(a)は,平成23年11月15日付けで,海上保安庁長官に対し,情報公開法4条1項に基づき,請求する行政文書の名称等を「1,平成22年9月7日,沖縄県尖閣諸島沖で海上保安庁巡視船が撮影し,海上保安庁の共用サーバーにアップされ,庁内において閲覧可能であった中国漁船に関するビデオ映像」(本件対象文書1)及び「2,平成22年9月7日,沖縄県尖閣諸島沖で海上保安庁巡視船が撮影し,国会に提出した中国漁船に関するビデオ映像」(本件対象文書2)とする行政文書開示請求書を提出した(甲1。以下,同請求書による請求を「本件開示請求」という。)。 (8) 海上保安庁長官は,平成24年2月17日付けで,本件各対象文書については,訴訟に関する書類に該当することから刑訴法53条の2第1項の規定により情報公開法が適用されないとして,開示をしない旨の決定(本件非開示決定)をした(甲2)。 (9) 原告は,平 象文書については,訴訟に関する書類に該当することから刑訴法53条の2第1項の規定により情報公開法が適用されないとして,開示をしない旨の決定(本件非開示決定)をした(甲2)。 (9) 原告は,平成24年8月14日,本件訴えを提起した(当裁判所に顕著な事実)。 2 争点及びこれに関する当事者の主張の要旨本件の争点は,本件非開示決定の適法性であり,具体的には,本件各対象 文書が刑訴法53条の2第1項の「訴訟に関する書類」に該当するといえるか否かであり,この点に関する当事者の主張の要旨は,以下のとおりである。 (被告の主張の要旨)(1) 本件各対象文書の内容本件各対象文書は,いずれも,本件事件に対処した司法警察職員である海上保安官が公務執行妨害被疑事件である本件事件の状況を撮影した際のビデオ映像(本件衝突映像)をマスターデータとして作成された電磁的記録(映像データ)である。 このうち,本件対象文書1は,石垣海上保安部において本件衝突映像の一部を編集して作成したものを第十一管区海上保安本部が海上保安大学校のパブリックフォルダに保存した映像データ1個であり,本件対象文書2は,海上保安庁長官が要請を受けて刑訴法47条ただし書に基づき参議院議長及び参議院予算委員会理事会に対して提出した本件衝突映像のうち相当と認める部分を複製した映像データ2個(本件提出用映像資料1及び2)である。 (2) 刑訴法53条の2の「訴訟に関する書類」の意義ア刑訴法53条の2の趣旨刑訴法53条の2は,「訴訟に関する書類及び押収物」については情報公開法の規定は適用しない旨を規定しているところ,これは次のような理由による。 すなわち,「訴訟に関する書類」については,①刑事司法手続の一環である捜査・公判の過程において作成されたも 情報公開法の規定は適用しない旨を規定しているところ,これは次のような理由による。 すなわち,「訴訟に関する書類」については,①刑事司法手続の一環である捜査・公判の過程において作成されたものであり,捜査・公判に関する活動の適正確保は,司法機関である裁判所により図られるべきであること,②刑訴法47条により,公判開廷前における訴訟に関する書類の公開を原則として禁止する一方,被告事件の終結後においては,同法53条及び刑事確定訴訟記録法により,一定の場合を除いて何人にも 訴訟記録の閲覧を認め,その閲覧を拒否された場合の不服申立てにつき準抗告の手続によることとされるなど,これらの書類は,刑訴法(40条,47条,53条,299条等)及び刑事確定訴訟記録法により,その取扱い,開示・不開示の要件,開示手続等が自己完結的に定められていること,③類型的に秘密性が高く,その大部分が個人に関する情報であるとともに,開示により犯罪捜査,公訴の維持その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれが大きいものであることから,情報公開法の適用除外とされている。 イ 「訴訟に関する書類」の意義(ア) 上記に述べた刑訴法53条の2の趣旨に鑑みれば,同条所定の「訴訟に関する書類」とは,被疑事件・被告事件に関して作成され,又は取得した書類一般を指し,訴訟記録に限らず,不起訴事件記録,公判不提出記録はもとより,今後訴訟になる可能性のある書類についても,全てこれに該当すると解すべきであり,また,検察庁へ事件が送致され,一件記録も併せて送付された後に,第一次捜査機関に残される写しの類についても,送致される資料と内容的に同一のものである以上,これらも「訴訟に関する書類」に該当する。 (イ) この点,刑訴法47条は,同法53条の2と同一の「訴訟に関する 機関に残される写しの類についても,送致される資料と内容的に同一のものである以上,これらも「訴訟に関する書類」に該当する。 (イ) この点,刑訴法47条は,同法53条の2と同一の「訴訟に関する書類」との文言を用いて,「訴訟に関する書類は,公判の開廷前には,これを公にしてはならない。」と規定しているところ,同法47条にいう「訴訟に関する書類」とは,被疑事件・被告事件に関して作成された書類をいい,裁判所又は裁判官の保管している書類に限らず,検察官・司法警察職員・弁護人その他の第三者の保管しているものも含むと解されている。しかるところ,同条は,刑事事件に関する書類を公にすることに関する一般原則を定めたものと解し得るので,同法53条の2の「訴訟に関する書類」の意義も,同法47条の「訴訟に関する書類」と 同義と解するのが相当であって,このことからも,同法53条の2の「訴訟に関する書類」についての上記アの解釈が相当であることは裏付けられるというべきである。 ウ刑訴法47条ただし書における「公益上の必要」の意義刑訴法47条ただし書は「公益上の必要その他の事由があって,相当と認められる場合は,この限りではない。」とし,「訴訟に関する書類」の公開の禁止の原則の例外を規定しているところ,同条ただし書における「公益上の必要」については,憲法62条は「両議院は,各々国政に関する調査を行い,これに関して,証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる」と規定し,これを受けて,国会法104条は「各議院又は各議院の委員会から審査又は調査のため,内閣,官公署その他に対し,必要な報告又は記録の提出を求めたときは,その求めに応じなければならない」と規定している。このような場合が,一般的には,刑訴法47条ただし書の「公益上の必要」な 査のため,内閣,官公署その他に対し,必要な報告又は記録の提出を求めたときは,その求めに応じなければならない」と規定している。このような場合が,一般的には,刑訴法47条ただし書の「公益上の必要」なる場合に該当すると解されている。 (3) 本件非開示決定の適法性ア本件衝突映像は,本件事件の経過を直接的に撮影した電磁的記録であり,海上保安庁の巡視船と中国船舶とが衝突するに至るまでの経過,衝突の態様等が記録されたものであるが,これは,海上保安官が公務執行妨害事件に係る証拠として撮影したものであるから,これが刑訴法53条の2第1項所定の「訴訟に関する書類」に該当することは明らかである。 そして,本件各対象文書は,本件衝突映像をマスターデータとして編集ないし複製されたものであって,やはり本件事件の経過の一部が映像として記録されているのであって,本件衝突映像と内容的に同一である。 以上によれば,本件各対象文書も刑訴法53条の2第1項所定の「訴訟に関する書類」に該当することは明らかといえるから,本件各対象文書の 開示を求める本件開示請求につき,情報公開法の規定は適用されない。 そうすると,本件各対象文書は,情報公開法による開示請求の対象とならないから,同法9条2項に基づき不開示決定をすべきこととなる。 よって,本件非開示決定は適法である。 イ(ア) これに対し,原告は,①本件対象文書1は,海上保安庁が,未編集ビデオを研修用として短く編集し,海上保安大学校のコンピュータのパブリックフォルダに保管していたもの,②本件対象文書2は,国会議員の視聴に供されることを目的として編集作成された映像であり,いずれも刑事司法手続での利用とは別の目的で作成された別の文書であって,刑事司法手続で利用することを目的に作成又は取得された文書ではないから 視聴に供されることを目的として編集作成された映像であり,いずれも刑事司法手続での利用とは別の目的で作成された別の文書であって,刑事司法手続で利用することを目的に作成又は取得された文書ではないから,刑訴法53条の2第1項の「訴訟に関する書類」には該当しないと主張する。 しかしながら,前述のとおり,本件各対象文書は,刑訴法53条の2第1項に該当する本件衝突映像の一部であって,本件事件に係る映像を編集あるいは複製したことをもって,被疑事件に関する捜査の過程で取得した文書としての性質は何ら変化するものではない。そして,同法47条が「訴訟に関する書類」について裁判所又は裁判官の保管している書類に限らず,前記(2)イ(イ)で述べたとおり,検察官・司法警察職員・弁護人その他の第三者の保管している書類についても公開を禁止している趣旨に鑑みても,本件衝突映像の一部をその内容とする本件各対象文書が,刑訴法53条の2第1項の「訴訟に関する書類」に該当することは明らかというべきである。 刑訴法は,確定するまでの間の訴訟記録等の閲覧を当該事件の訴訟関係者を除き禁止しており(同法40条,49条,180条,270条及び299条1項参照),また,同法47条は,「訴訟に関する書類が公判開廷前に公開されることによって,訴訟関係人の名誉を毀損し公序良 俗を害しまたは裁判に対する不当な影響を引き起すことを防止する趣旨」(最高裁昭和27年(あ)第801号同28年7月18日第三小法廷判決・刑集7巻7号1547頁。以下「昭和28年最高裁判決」という。)から,公判の開廷前における「訴訟に関する書類」の公開を原則として禁止している。しかるところ,公判前あるいは確定するまでの間は開示が禁止される「訴訟に関する書類」と同一の内容が記録されているにも関わらず,編集・複製 における「訴訟に関する書類」の公開を原則として禁止している。しかるところ,公判前あるいは確定するまでの間は開示が禁止される「訴訟に関する書類」と同一の内容が記録されているにも関わらず,編集・複製された文書であるとの一事をもって「訴訟に関する書類」に該当しないとして,情報公開法に基づき広く開示されることになれば,刑訴法が「訴訟に関する書類」につき上記のような開示の枠組みを採用した趣旨が没却されることになる。したがって,同法53条の2第1項所定の「訴訟に関する書類」と内容を同一にする文書は,当然に「訴訟に関する書類」に該当すると解すべきであるから,本件衝突映像と同内容の本件対象文書1及び本件対象文書2も「訴訟に関する書類」に該当する。 (イ) 原告は,本件対象文書1が海上保安大学校のパブリックフォルダに保存されたままとなり,不特定多数の海上保安庁職員が閲覧可能な状態にあったことをもって,内部研修用として編集した映像を上記のフォルダに保存していたと考えるのが自然であると主張する。 原告の主張を前提としても,既に述べたとおり,本件対象文書1が刑訴法53条の2第1項にいう「訴訟に関する書類」に該当することに変わりはないから,同映像資料の作成目的いかんは,本件非開示決定が適法であるとの被告の主張を何ら左右するものではないが,事案に鑑み,本件対象文書1が内部研修用に作成されたものではないことにつき明らかにしておくこととする。 すなわち,本件事件の捜査に当たった石垣海上保安部は,本件事件の捜査の過程で,本件衝突映像の一部を事件説明用の資料として編集し (本件対象文書1),これを第十一管区海上保安本部に交付したところ,第十一管区海上保安本部は,本件事件の捜査の過程において,海上保安大学校に本件衝突映像を鑑定嘱託する前提として,正式鑑定 (本件対象文書1),これを第十一管区海上保安本部に交付したところ,第十一管区海上保安本部は,本件事件の捜査の過程において,海上保安大学校に本件衝突映像を鑑定嘱託する前提として,正式鑑定の前の事前確認のために,本件対象文書1を海上保安大学校に伝送することとしたが,このことに関する作業の過程でそれが同大学校のパブリックフォルダに保存され,それを削除することについて関係者間で確認されなかったことから,平成22年9月17日から同月22日までの間,本件対象文書1が同大学校のパブリックフォルダに掲載されたままとなり,当該パブリックフォルダにはアクセス制限が付されていなかったため,上記の間,不特定多数の海上保安庁職員が本件衝突映像を視聴することが可能な状態となったものである(平成24年5月25日付け情報流出再発防止対策検討委員会報告書(乙2。以下「報告書」という。))。 以上のとおり,本件対象文書1が,海上保安大学校のパブリックフォルダに保存され,海上保安庁職員が閲覧可能な状態となっていたことは,本件対象文書1が研修目的で作成されたものであることを裏付けるものではない。よって,原告の頭書の主張は理由がない。 (原告の主張の要旨)(1) 刑訴法53条の2第1項の意義ア刑訴法53条の2第1項が「訴訟に関する書類」について情報公開法の規定は適用しない旨規定する趣旨は,被告が「被告の主張の要旨」(2)アで述べるとおりであるが,そもそも,情報公開制度が,国民主権の理念にのっとり,行政の説明責任と国民の的確な理解と批判の下での公正で民主的な行政の推進のために定められたものであるところ,その重要性に鑑み,行政の保有する情報は公開されるのが原則とされているので,同法53条の2第1項の規定はこの例外として限定的に解釈しなければならない な行政の推進のために定められたものであるところ,その重要性に鑑み,行政の保有する情報は公開されるのが原則とされているので,同法53条の2第1項の規定はこの例外として限定的に解釈しなければならない。 そうすると,情報公開法の適用除外となる「訴訟に関する書類」とは,上記趣旨に照らし,実際に利用されたかどうかは問わないとしても,少なくとも刑事司法手続に利用することを目的として作成又は取得された文書に限られるというべきである。 イ刑訴法53条の2の「訴訟に関する書類」の意義について(ア) 被告は,「訴訟に関する書類」とは,被疑事件・被告事件に関して作成され又は取得した書類一般を指し,訴訟記録に限らず,不起訴事件記録,公判不提出記録はもとより,今後訴訟になる可能性のある書類についても,全てこれに該当すると解すべきであり,また,検察庁へ事件が送致され,一件記録も併せて送付された後に,第一次捜査機関に残される写しの類についても,送致される資料と内容的に同一である以上,これらも「訴訟に関する書類」に該当する,とする。 しかし,このように広く解することは,これを情報公開法の適用対象外とした法の趣旨に反するものであり,「訴訟に関する書類」とは,実際に利用されたかどうかは問わないとしても,少なくとも刑事司法手続に利用することを目的として作成又は取得された文書を指すと解すべきであり,同一の内容が含まれる文書であっても,刑事司法手続以外の利用目的で作成又は取得された文書については,これに該当しないと解すべきであって,訴訟利用目的とは異なる利用目的で,編集等の改変を加えて新たに作成した行政文書まで,刑訴法53条の2の趣旨は妥当しないというべきである。なぜなら,通常の用語方法によれば,「訴訟に関する書類」とは,捜査 利用目的とは異なる利用目的で,編集等の改変を加えて新たに作成した行政文書まで,刑訴法53条の2の趣旨は妥当しないというべきである。なぜなら,通常の用語方法によれば,「訴訟に関する書類」とは,捜査・公判の課程で実際に利用される文書を指すと解するのが自然であり,訴訟以外の目的のために作成又は取得された文書も含むものとは解されないからである。また,刑訴法53条の2第1項は,「訴訟に関する書類」については情報公開法を適用しないという強い効果をもたらす。情報公開法が,国民主権の理念にのっとり,行政機 関の保有する情報の公開を図り,もって,国民に対する政府の説明責任を全うするために制定された重要な法律であり,行政機関の保有する情報については公開の原則を定めたものであること,情報公開法において,プライバシーの保護や,公益上の要請に基づく不開示事由が詳細に定められていることからすれば,その例外である「訴訟に関する書類」については,できる限り限定的に解されなければならない。被告が主張するように,「訴訟に関する書類」は,被疑事件・被告事件に関して作成され又は取得した書類を全て含むと解することは,その対象を無限に広げることになり,情報公開法を骨抜きにするものであって,許されない。 (イ) 「被告の主張の要旨」(2)アに述べられた刑訴法53条の2の趣旨は,「訴訟に関する書類」を被告の主張するように広く解する根拠とはならない。 まず,①捜査・公判に関する活動の適正確保は司法機関である裁判所により図られるべきである,という趣旨については,刑事司法手続に利用することを目的として作成又は取得された文書について情報公開法の適用除外とすれば,その目的は達し得るのであり,同一の内容が含まれる文書であっても,刑事司法手続以外の目的(行政活動の 事司法手続に利用することを目的として作成又は取得された文書について情報公開法の適用除外とすれば,その目的は達し得るのであり,同一の内容が含まれる文書であっても,刑事司法手続以外の目的(行政活動の一環として利用する目的)で作成又は取得された文書であれば,情報公開法の適用対象外とする必要性はない。訴訟利用目的とは異なる利用目的で,編集等の改変を加えて新たに作成した行政文書は,刑事司法手続の過程で作成された書類ではなく,刑事司法手続で利用されることを予定しておらず,その適正確保が,司法機関である裁判所によって図られることは全く期待できない。 また,②「訴訟に関する書類」は,刑訴法47条により,公判開廷前における訴訟に関する書類の公開を原則として禁止する一方,被告事件 の終結後においては,同法53条及び刑事確定訴訟記録法により別途開示・不開示の要件,開示手続等が自己完結的に定められている,という趣旨については,刑事司法手続に利用することを目的として作成又は取得された文書に対して及ぼせば十分であり,刑事司法手続以外の目的(行政活動の一環として利用する目的)で作成又は取得された文書であれば,情報公開法の適用対象外とする必要性はない。したがって,②の趣旨からは,「訴訟に関する書類」は,刑事司法手続に利用することを目的として作成又は取得された文書を意味すると解することが自然であり,合理的である。 そして,③「訴訟に関する書類」は,類型的に機密性が高く,その大部分が個人に関する情報であるとともに,開示により犯罪捜査,公訴の維持その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれが大きいものであることから,情報公開法の適用除外とした,という趣旨についても,刑事司法手続に利用することを目的として作成又は取得された文 訴の維持その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれが大きいものであることから,情報公開法の適用除外とした,という趣旨についても,刑事司法手続に利用することを目的として作成又は取得された文書に対して及ぼせば十分であり,刑事司法手続以外の目的(行政活動の一環として利用する目的)で作成又は取得された文書であれば,情報公開法の適用対象外とする必要性はない(異なる利用目的で作成する場合には,利用目的に応じて,作成時に個人識別事項や秘匿事項を除外することができ,必ずしも秘密性は高くなく,常に開示による支障があるとはいえない。)。また,プライバシーの保護や,犯罪捜査,公訴の維持その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれに対する配慮は,情報公開法5条各号の適用によって図られるのであるから,「訴訟に関する書類」を広く解する理由にはならない。 以上のとおり,被告の主張する刑訴法53条の2の趣旨のいずれも,「訴訟に関する書類」を広く解する根拠とはならず,かえって,「訴訟に関する書類」が,原告が主張するとおり,刑事司法手続に利用するこ とを目的として作成又は取得された文書を意味することの根拠となり得るものである。 (ウ) 刑訴法53条の2第1項は,「訴訟に関する書類」については情報公開法を適用せず,その不開示事由の有無の審査も許さないという,知る権利に対する強い制約をもたらすから,情報公開法が適用された場合の類型的弊害を明確にして,その適用場面を極めて限定的に解釈されなければならない。そうしないと,刑事訴訟に関係した書類という曖昧な要件だけで広く秘密のベールに包まれてしまい,情報公開法が目的とする「国民主権の理念にのっとり,行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により,行政機関の保有する情報の一層の公開 という曖昧な要件だけで広く秘密のベールに包まれてしまい,情報公開法が目的とする「国民主権の理念にのっとり,行政文書の開示を請求する権利につき定めること等により,行政機関の保有する情報の一層の公開を図り,もって政府の有するその諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに,国民の的確な理解と批判の下にある公正で民主的な行政の推進に資すること」が達成できない。現在では,刑事司法においても,裁判員裁判が導入され,刑事訴訟や刑事捜査についても国民の知る権利の保障の必要性が高まっており,刑事訴訟を従来のように手厚く秘密のベールに包んでよいということはない。「訴訟に関する書類」を幅広く適用除外することの必要性及び相当性については,今後も議論が進められるべきものであるが,少なくとも,刑事訴訟に関する書類を基礎に作成されたというだけで,一律に情報公開法の適用除外となるような解釈をする合理的な理由は存在しない。被告が主張するように,「訴訟に関する書類」は,被疑事件・被告事件に関して作成され又は取得した書類を全て含むと解することは,その対象を無限に広げることになり,情報公開法を骨抜きにするものであって,許されない。 (2) 本件各対象文書は,「訴訟に関する書類」に該当しないことア被告は,本件開示請求の対象文書として,本件対象文書1及び本件対象文書2を特定し,いずれも,本件衝突映像と内容が同一のものであると主 張する。 しかしながら,本件衝突映像は,全てが公務執行妨害被疑事件の状況を撮影したものではない。報道によれば,巡視船「b」で撮影した映像は,漁船の操業状況を含んでいる(甲3)。また,本件衝突映像は,海上保安庁の活動及び中国船舶の行動を記録する目的で撮影された4時間36分にわたる映像であり,その撮影中に,公務執行 b」で撮影した映像は,漁船の操業状況を含んでいる(甲3)。また,本件衝突映像は,海上保安庁の活動及び中国船舶の行動を記録する目的で撮影された4時間36分にわたる映像であり,その撮影中に,公務執行妨害被疑事件の状況が写ったと考えるのが自然である。海上保安庁は,このような映像を日常的に撮影し,一部を自身のウェブページで公表している(甲6)。したがって,複数のカメラで異なる時間帯に撮影された本件衝突映像の全てが刑事司法手続に利用することを目的として作成又は取得された文書ということはできず,その全てが「訴訟に関する書類」に該当するものではない。 また,元となった本件衝突映像と本件各対象文書の内容が異なることは明らかである。本件衝突映像は上記のような内容のものであるのに対し,他方,本件各対象文書は本件衝突映像を大幅に編集したもので文字なども挿入されている。このように,本件衝突映像と本件各対象文書の内容は異なっているものであり,被告は,本件衝突映像の撮影内容について,どの巡視船から,どのような状況を何分程度撮影したか,それぞれの撮影開始時間と共に具体的内容を明らかにすべきであったもので,また,被告は,本件各対象文書と本件衝突映像の編集内容も明らかにしなければならなかったものであるが,かかる求釈明に対して被告は回答しておらず,本件衝突映像が本件各対象文書と同一内容であると主張することの前提を欠く。 イ本件対象文書1について(ア) 被告は,本件衝突映像の一部を編集した本件対象文書1について,石垣海上保安部が第十一管区海上保安本部に対する「事件説明」の目的で作成したと主張するようである。 しかし,その根拠となる客観的証拠は提示されていない。被告が提出 する報告書(乙2)には,何らの認定根拠も添付されておらず,説明用資料かどうかの の目的で作成したと主張するようである。 しかし,その根拠となる客観的証拠は提示されていない。被告が提出 する報告書(乙2)には,何らの認定根拠も添付されておらず,説明用資料かどうかの検証もなされていない。本件対象文書1の利用目的は,本件対象文書の編集内容によって判断するべきである。報道によれば,本件対象文書1の一部に「企画・制作」の文言が挿入されており,これは「石垣海上保安部が内部研修用の素材として編集する際につけていた」ものであって,当該映像には「内部研修用に編集の跡」があった(甲4)。したがって,当該映像は,内部研修用に企画・制作された文書であって,組織内の説明目的で作成した資料ではない。 (イ) 本件対象文書1は,前記(ア)に述べたように,研修用に作成・編集され,海上保安大学校のパブリックフォルダに保存されたものであるから,捜査・公判とは異なる用途のために作成され保存されたものであり,「訴訟に関する書類」に該当しない。 この点,被告は,報告書を踏まえ,本件対象文書1の作成経緯について主張するが,同主張を裏付ける客観的資料を何ら提出しておらず,報告書にも何らの認定根拠は添付されていない。被告は,第十一管区海上保安本部職員が本件衝突映像を海上保安大学校に鑑定嘱託する「前提」で本件対象文書1のデータを海上保安大学校のパブリックフォルダに保存したと主張する。しかし,何を明らかにする鑑定嘱託か不明である。 また,「前提」という意味が不明である。本件衝突映像を鑑定嘱託する目的であれば,当該映像データをパブリックフォルダに入れることになるはずで,これを編集した本件対象文書1のデータを入れる必要はない。さらに,本件対象文書1のデータをどこの誰に伝送する趣旨でパブリックフォルダに入れ,保存したままにしたのかも不明である。伝送す なるはずで,これを編集した本件対象文書1のデータを入れる必要はない。さらに,本件対象文書1のデータをどこの誰に伝送する趣旨でパブリックフォルダに入れ,保存したままにしたのかも不明である。伝送する趣旨であれば,相手方が受領した時点で消去するのが通常である。したがって,被告の主張は,本件対象文書1が海上保安大学校のパブリックフォルダに保存された経緯の説明になっていない。内部研修用として 編集した映像を共用フォルダに保存していたと考えるのが自然である。 原告は,被告に対し,本件対象文書1を作成し,パブリックフォルダに保存した経緯を説明するに足りる組織内文書を提示した上で,その経緯を明らかにするように求めたが,被告はこれに応じなかった。そこで,原告は,第十一管区海上保安本部担当者と海上保安大学校側で本件衝突映像の伝送及び取出しに関し,提供目的を記載した手続書類や担当者間で行われたやり取りの文書の文書提出命令を申し立てたが,被告は,前者につき存在すると主張しながら任意に提出せず,後者は存在しないと主張する。以上のとおり,被告は,本件対象文書1が捜査の過程において作成されたと主張しながら,その立証をしていない。しかし,そもそも,「文書の利用目的が刑事司法手続に利用することであること」との事実は,刑訴法53条の2第1項の該当性を裏付ける事実であるから,情報公開法の適用除外の効果を主張する文書の所持者において立証責任を負う事柄である。被告は,編集元になった文書が刑事司法手続に利用する目的で作成取得されれば足りるかのような主張をするが,既に述べたとおり,別の目的で編集された場合には,編集により新たに作成された文書は,編集元が刑事司法手続に利用する目的で取得されたというだけでは同項に該当しないと解するべきであるから,改めて,被告におい べたとおり,別の目的で編集された場合には,編集により新たに作成された文書は,編集元が刑事司法手続に利用する目的で取得されたというだけでは同項に該当しないと解するべきであるから,改めて,被告において,当該文書が刑事司法手続に利用する文書であることを立証しなければならない。このように解さなければ,文書の利用目的を正確に知ることも,立証することも困難な一般国民は,広く同項の適用を受け,情報公開請求が著しく妨げられることになり不当である。他方,文書を所持する行政機関にとって,文書の利用目的の立証は極めて容易である。したがって,被告が,本件対象文書1がパブリックフォルダに入った経緯を立証し,本件対象文書1の作成目的が刑事司法手続に利用することであることを証明しなければならない。 上記を前提として,念のため,原告においてあらかじめ反証すると,本件対象文書1の利用目的は,被告の根拠のない主張によってではなく,本件対象文書1の保管状況及び編集内容によって判断するべきである。本件対象文書1は,被告も認めるとおり,6日間にわたり,不特定多数の海上保安庁職員が当該映像データを入手することが可能な状態であったものであり,特別な管理体制はとられていなかった。このような管理体制からも,同文書が,刑事司法手続に利用することを目的として作成又は取得された文書とは考えられない。また,報道によれば,本件対象文書1の一部に「企画・制作」の文言が挿入されており,これは「石垣海上保安部が内部研修用の素材として編集する際につけていた」ものであって,当該映像には「内部研修用に編集の跡」があった(甲4)。したがって,内部研修用資料であると考えるのが自然である。 以上のとおり,本件対象文書1は,研修用に作成・編集され,海上保安大学校の共有フ には「内部研修用に編集の跡」があった(甲4)。したがって,内部研修用資料であると考えるのが自然である。 以上のとおり,本件対象文書1は,研修用に作成・編集され,海上保安大学校の共有フォルダに保存されたものであるから,捜査・公判とは異なる用途のために作成され保存されたものであり,「訴訟に関する書類」に該当しないことは明らかである。 ウ本件対象文書2について本件対象文書2について,被告は,海上保安庁長官が,要請を受けて,刑訴法47条ただし書に基づき,参議院議長及び参議院予算委員会理事会に対して提出した本件衝突映像のうち相当と認める部分を複製した映像データ2個(本件提出用映像資料1及び2)であると主張する。 しかし,上記の要請の事実を裏付ける証拠はない。原告のした求釈明にもかかわらず,海上保安庁長官が同条ただし書に基づいて提出したことを示す提出書又は内部手続資料が提出されていない。被告の主張は根拠がなく信用できない。 また,既に述べたとおり,編集により新たに作成された文書は,編集元 が刑事司法手続に利用する目的で作成取得されたというだけでは同法53条の2第1項の「訴訟に関する書類」に該当しないと解するべきであるから,被告において改めて,当該文書が刑事司法手続に利用することを目的として作成又は取得された文書であることを主張立証しなければならない。被告の主張によっても,本件対象文書2は国会提出用に作成されたものであって,刑事司法手続に利用する目的で作成されたものではない。したがって,本件対象文書2は,国会に提出する目的で新たに作成・編集されたものであり,刑事司法手続に利用することを目的として作成又は取得された文書とは異なるものであるから,「訴訟に関する書類」に該当しない。 第3 当裁判所の判断1(1 的で新たに作成・編集されたものであり,刑事司法手続に利用することを目的として作成又は取得された文書とは異なるものであるから,「訴訟に関する書類」に該当しない。 第3 当裁判所の判断1(1)ア (ア) 刑訴法47条は,「訴訟に関する書類」は,公判の開廷前には,これを公にしてはならないが,ただし,公益上の必要その他の事由があって,相当と認められる場合は,この限りではない旨を定めているところ,犯罪の捜査に関する文書を含む「訴訟に関する書類」は,それに記録された情報の性格上,これが公にされると,被疑者,被害者その他の関係者等の名誉やプライバシーが侵害されたり,公序良俗が害されることになったり,又は捜査や刑事裁判が不当な影響を受けたりするなどの弊害が発生することが考えられることから,同条は,こうした弊害が発生するのを防止するため,上記のような「訴訟に関する書類」について,それを保有する行政機関等に対して原則としてそれを公にすることを禁じているものと解される(昭和28年最高裁判決,最高裁平成15年(許)第40号同16年5月25日第三小法廷決定・民集58巻5号1135頁参照)。 (イ) また,公訴が提起され,更には刑事被告事件に係る訴訟の終結した後においても,関係する「訴訟に関する書類」又は訴訟記録の閲覧等 については,特別の規定により規律されているところである(同法40条,49条,53条,270条等,刑事訴訟規則(以下「刑訴規則」という。)31条,301条等,刑事確定訴訟記録法)。 (ウ) 加えて,刑訴法40条本文は,弁護人は,公訴の提起後は,裁判所において,「訴訟に関する書類」等を謄写することができる旨を定め,刑訴規則31条は,弁護人は,裁判長の許可を受けて,自己の使用人その他の者に「訴訟に関する書類」等を謄写させるこ 訴の提起後は,裁判所において,「訴訟に関する書類」等を謄写することができる旨を定め,刑訴規則31条は,弁護人は,裁判長の許可を受けて,自己の使用人その他の者に「訴訟に関する書類」等を謄写させることができる旨を定め,刑訴法270条1項は,検察官は,公訴の提起後は,「訴訟に関する書類」等を謄写することができる旨を定めるなど,公訴の提起後は,弁護人又は検察官において,「訴訟に関する書類」を謄写し,その写しを保有することが認められているが,弁護人又は検察官の保有する上記の「訴訟に関する書類」の写しについても,同法47条の規定の趣旨に照らし,同条の規定による規律に服するものと解される。 イところで,刑訴法53条の2第1項は,「訴訟に関する書類」については,情報公開法の規定は,適用しない旨を定めているところ,これは,既に述べた各規定によりそれに記録された情報の特殊性に応じて開示が認められているところを超えて情報公開法により行政文書の開示が認められることになるとすると,既に述べたような各種の弊害が生じ得,刑訴法及び刑訴規則並びに刑事確定訴訟記録法の規定による規律が無意義になるおそれがあることから,公訴の提起のない被疑事件に係るものを含め,「訴訟に関する書類」である行政文書の開示の取扱いについては,これらの規定により規律されているところに委ねるものとして,情報公開法の規定の適用を排除することとしたものと解される。 ウ上記ア及びイに述べた各規定の内容及びその趣旨並びにこれらの法制上の関係を踏まえると,刑訴法53条の2第1項にいう「訴訟に関する書 類」とは,被疑事件又は刑事被告事件に関して作成又は取得がされた文書一般をいうものと解するのが相当であり,また,ある文書がひとたび「訴訟に関する書類」に該当することとなった以上は,当該文書 類」とは,被疑事件又は刑事被告事件に関して作成又は取得がされた文書一般をいうものと解するのが相当であり,また,ある文書がひとたび「訴訟に関する書類」に該当することとなった以上は,当該文書はその後も引き続き「訴訟に関する書類」の閲覧等に関する既に述べた刑事訴訟手続に関する法令の規律に服するものと解される。 また,「訴訟に関する書類」の謄写が許容されている一方で,それにより作成された写しも上記の法令の規定の規律に服すると解されることに照らせば,当該文書の全部又は一部について複製又は編集がされて他の文書が作成されたとしても,当該文書と当該他の文書にそれぞれ記録された情報の内容の同一性を考慮すると,特段の事情がない限りは,当該他の文書もやはり「訴訟に関する書類」に該当すると解するのが相当であり,それについて情報公開法の規定の適用はないものと解される。 原告は,「訴訟に関する書類」は,刑事司法手続に利用することを目的として作成又は取得された文書を意味する旨主張するところ,既に述べたような当該文書に記録されている情報の内容のいかんを問わず専らその作成又は取得の目的ないし動機等に着目してそのように限定して解すべき的確な法令上の根拠は見当たらず,採用し難いものというべきである。 (2)ア前記第2・1の前提となる事実(2)に述べたように,本件衝突映像は,本件事件の状況を撮影したものであり,本件被疑者に対する公務執行妨害被疑事件の捜査に関して作成されたものとして,これが刑訴法53条の2第1項の「訴訟に関する書類」に該当することは明らかである。 この点,原告は,本件衝突映像につき,全てが公務執行妨害被疑事件の状況を撮影したものではなく,海上保安庁の活動及び中国船舶の行動(操業状況)を記録する目的で撮影された4時間36分にわたる映像 この点,原告は,本件衝突映像につき,全てが公務執行妨害被疑事件の状況を撮影したものではなく,海上保安庁の活動及び中国船舶の行動(操業状況)を記録する目的で撮影された4時間36分にわたる映像であって,複数のカメラで異なる時間帯に撮影された本件衝突映像の全て が刑事司法手続に利用することを目的として作成又は取得された文書ということはできず,その全てが「訴訟に関する書類」に該当するものではない旨を主張するが,本件衝突映像は,原告の主張するところを前提としても,本件事件の経緯を複数の職員が客観的な記録媒体をもって記録したものといえ,それに記録された情報の内容及び性質に照らし,その一部のみが「訴訟に関する書類」に該当すると認めるのが相当であるとはいえず,原告の主張は採用し難いものといわざるを得ない。 イ次に,本件対象文書1について検討する。 (ア) 乙2(報告書)によれば,本件対象文書1の作成等に係る経緯は,以下のとおり認められ,同認定を覆すに足りる証拠はない。 (イ) 石垣海上保安部は,本件事件の捜査の過程で,本件事件の発生の前後の状況を撮影した本件衝突映像を編集して本件対象文書1を作成し,これを事件の説明のための資料として本件被疑者を送致した検察官の所属する那覇地方検察庁及び第十一管区海上保安本部に交付していたところ,第十一管区海上保安本部は,本件事件の捜査のために,海上保安大学校に本件衝突映像を鑑定嘱託することになったのを受け,平成22年9月17日,正式鑑定の事前確認のために,本件対象文書1を行政情報システムを使用して海上保安大学校に伝送することとした。 その際,第十一管区海上保安本部の担当者は,まず,第十一管区海上保安本部側の行政情報システム端末機のデスクトップ上に作成した共有フォルダに本件対象文書1に して海上保安大学校に伝送することとした。 その際,第十一管区海上保安本部の担当者は,まず,第十一管区海上保安本部側の行政情報システム端末機のデスクトップ上に作成した共有フォルダに本件対象文書1に係るデータを保存し,海上保安大学校側に同データへのアクセス権限を付与する方法で伝送を試みたが,システムの構成上,海上保安大学校側からアクセスすることができなかった。 次いで,第十一管区海上保安本部の担当者は,海上保安大学校のパブリックフォルダに本件対象文書1を保存し,同大学校側がこれを取り出す方法により伝送することとしたが,同大学校側が何度か試みても 保存された本件対象文書1を取り出すことができなかった。 その際,海上保安大学校のパブリックフォルダに保存された本件対象文書1を削除することにつき,同大学校と第十一管区海上保安本部の担当者の間で確認しなかったため,同日から同月22日までの間,本件対象文書1が同大学校のパブリックフォルダに掲載されたままとなった。そして,当該パブリックフォルダにはアクセス制限が付されていなかったため,上記の間,不特定多数の海上保安庁職員が本件衝突映像を視聴すること等が可能な状態となった。 (ウ) 上記(イ)に認定したように,本件対象文書1は,石垣海上保安部が,本件事件の捜査の過程において,本件衝突映像を編集して作成したものを,本件事件の説明用の資料として第十一管区海上保安本部が取得した後,本件事件の捜査のため海上保安大学校に本件衝突映像を鑑定嘱託するに先立ち,事前確認のために送付したものであるところ,前記(1)に述べたところを踏まえると,それに記録されている情報と本件衝突映像に記録されている情報との間の内容の同一性や,その作成等の経緯に照らし,刑訴法53条の2第1項の「訴訟に関する書類」 ろ,前記(1)に述べたところを踏まえると,それに記録されている情報と本件衝突映像に記録されている情報との間の内容の同一性や,その作成等の経緯に照らし,刑訴法53条の2第1項の「訴訟に関する書類」に該当するものと認めるのが相当であり,これとは異なる認定判断をするのを相当というに足りる特段の事情が存在することをうかがわせる証拠等は見当たらない。 (エ) 原告は,本件対象文書1が研修目的で作成されたものである旨を主張するところ,同主張に係る事実を認めるに足りる的確な証拠は見当たらず,そのような事実を前提に,それが「訴訟に関する書類」に当たらないとする原告の主張は採用し難いものといわざるを得ない。 ウ続いて,本件対象文書2について検討する。 (ア) 前記第2・1の前提となる事実(6)に述べたように,本件対象文書2(本件提出用資料1及び2)は,本件衝突映像の一部を複製した上 で,平成22年11月及び平成23年8月に海上保安庁から参議院に提出されたものであり,その提出の経緯にも照らし,それに記録されている情報は,本件衝突映像に記録されている情報のうち本件事件における犯罪の行為の核心部分にわたるものを含むものと推認するのが相当であるから,前記(1)に述べたところを踏まえると,やはり,刑訴法53条の2第1項の「訴訟に関する書類」に該当するものと認めるのが相当であり,これとは異なる認定判断をするのを相当というに足りる特段の事情が存在することをうかがわせる証拠等は見当たらない。 (イ) 原告は,本件対象文書2は国会に提出する目的で新たに作成・編集されたものであり,「訴訟に関する書類」に当たらない旨を主張するが,前記(3)に述べたとおり,その主張は採用し難いものといわざるを得ない。 エ以上を前提にすると,本件各対象 的で新たに作成・編集されたものであり,「訴訟に関する書類」に当たらない旨を主張するが,前記(3)に述べたとおり,その主張は採用し難いものといわざるを得ない。 エ以上を前提にすると,本件各対象文書については,情報公開法の規定の適用はないから,本件各対象文書の開示をしないとした本件非開示決定は適法というべきであり,取り消されるべきものとはいえない。 2 本件訴えのうち本件各対象文書を開示する旨の決定をすることの義務付けを求める部分の適法性について一定の処分を求める旨の法令に基づく申請を却下し又は棄却する旨の処分がされた場合における当該一定の処分についての義務付けの訴えは,当該申請に対する応答としてされた処分が「取り消されるべきものであり,又は無効若しくは不存在である」(行政事件訴訟法37条の3第1項2号)という要件に該当するときに限り提起することができるところ(同項のいわゆる柱書き),本件非開示決定が取り消されるべきものではないことは,前記1で判示したとおりであるから,本件訴えのうち本件各対象文書を開示する旨の決定をすることの義務付けを求める部分は不適法である。 第4 結論よって,本件訴えのうち本件各対象文書を開示する旨の決定をすることの義務付けを求める部分は不適法であるのでこれを却下し,本件訴えのその余の部分に係る原告の請求はいずれも理由がないからこれらを棄却することとし,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官八木一洋 裁判官石村智 裁判官品川英基 (別紙)文書目録 1 平成22年9月7日,沖縄県尖閣諸島沖で海上保安庁巡視船が撮影し,海上保安庁の共用サー 智 裁判官品川英基 (別紙)文書目録 1 平成22年9月7日,沖縄県尖閣諸島沖で海上保安庁巡視船が撮影し,海上保安庁の共用サーバーにアップされ,庁内において閲覧可能であった中国漁船に関するビデオ映像 2 平成22年9月7日,沖縄県尖閣諸島沖で海上保安庁巡視船が撮影し,国会に提出した中国漁船に関するビデオ映像

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