昭和46(行ウ)156 採用内定取消処分取消等請求事件

裁判年月日・裁判所
昭和49年10月30日 東京地方裁判所
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【DRY-RUN】○ 主文 原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 ○ 事実 第一 当事者の求める裁判 一 原告 1 本位的請求 (一) 被告東京都知事が原告に対し、昭和四六年三月二七日になした東

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○ 主文原告の請求をいずれも棄却する。 訴訟費用は原告の負担とする。 ○ 事実第一当事者の求める裁判一原告 1 本位的請求(一) 被告東京都知事が原告に対し、昭和四六年三月二七日になした東京都職員採用内定を取消した処分を取消す。 (二) 原告と被告東京都の間で、原告が同被告の建設局職員たる地位を有することを確認する。 2 予備的請求被告東京都知事は、原告を被告東京都の建設局職員として採用せよ。 3 訴訟費用は被告らの負担とする。 二被告ら 1 本案前(一) 本件訴えを却下する。 (二) 訴訟費用は原告の負担とする。 2 本案主文同旨第二当事者の主張一原告 1 本位的請求第一項について(一) 採用内定取消処分の存在原告は、昭和四六年一月二七日付をもつて被告東京都の建設局職員として採用内定した(以下「本件採用内定」という。)者であるところ、被告東京都知事は、同年三月二七日到達の書面(該書面には、建設局総務部長A名で、「職員採用内定の取消しについて」と題し、「このことについては、昭和四六年一月二七日付四五建総庶収秘第六〇五号~二より採用内定を通知しましたが、あなたは当局の職員となるべき適格性に欠く行為があつたので、採用内定を取り消します。したがつて、きたる四月一日以降、出勤には及びません。」と記載されていた。)で、同日付をもつて原告に対する右採用内定を取消す処分(以下「本件処分」という。)をした。 (二) 本件採用内定に至る経緯およびその法的性格(1) 本件採用内定に至る経緯(1) 原告は、昭和四五年八月二六日、東京都人事委員会の同年五月一五日付昭和四六年東京都職員(短大卒程度)採用試験公告による職員募集に応募し、第一次試験(同年九月二七日)および第二次試験(同年一一月一六日)のいずれにも合格し、同年一二月三日、東京都人 同年五月一五日付昭和四六年東京都職員(短大卒程度)採用試験公告による職員募集に応募し、第一次試験(同年九月二七日)および第二次試験(同年一一月一六日)のいずれにも合格し、同年一二月三日、東京都人事委員会採用候補者名薄(短大卒程度)に登載され、同年一二月中旬、配属先希望調査表を提出した。 (2) 原告は、昭和四六年一月二八日、同月二七日付東京都建設局総務部長A名の採用内定通知書を受領した。該通知書には、「面接及び身体検査の結果、あなたを昭和四六年四月一日付で建設局に採用することに内定いたしましたのでお知らせします。なお、四月一日の出勤については、三月二〇日頃に再度連絡します。」と記されていた。 (3) 原告は、昭和四六年三月九日ごろ、同日付東京都建設局総務部庶務課長Bの書面により、四月一日の出勤についての集合時間、集合場所等の指示を受けた。 (1) 原告は、同年二月一〇日、東京都建設局総務部庶務課研修係から「週間とちよう」(昭和四六年一月四日号、同月一二日号)および「けんせつ局報」(同年一月一四日号)の送付を受け、さらに、同年一二月一〇日、同係から「とうきよう広報」(同年二月号)および「けんせつ局報」(同年三月四日号)の送付を受けた。 (5) 原告は、同年三月二〇日、前記採用内定通知書に基づいて、保証書、卒業証明書(高等学校卒)を東京都建設局総務部人事係宛に持参、提出した。 (2) 本件採用内定の法的性格以上の経緯に鑑みれば、原告が昭和四五年八月二六日、前記東京都職員(短大卒程度)採用試験公告による職員募集に応募したことが被告東京都に対する労働契約の申し込みであるというべきである。仮りにそうでないとしても、原告が同年一二月三日、前記東京都人事委員会採用候補者名簿に登載された後、同年一二月中旬、配属先希望調査表を提出したことが右労働契約の申 の申し込みであるというべきである。仮りにそうでないとしても、原告が同年一二月三日、前記東京都人事委員会採用候補者名簿に登載された後、同年一二月中旬、配属先希望調査表を提出したことが右労働契約の申し込みである。これに対し、被告東京都が前記採用内定通知を発出したことが右申し込みに対する承諾であつて、従つて、原告と被告東京都との間に、昭和四六年一月二七日、右労働契約が締結されたものというべきである。仮りに、右主張が容れられないとすれば、前項(3)ないし(5)の事実によつて両当事者の契約締結の意思は明確となつたのであるから、おそくとも同年三月二〇日、右労働契約が成立したものというべきである。しかして、右労働関係は、正式採用職員としての法的地位を内容とするものであつて、条件附採用職員としての地位を内容とするものではない。従つて、原告に、右契約成立日において東京都職員としての地位を取得したものであり、ただ労務提供義務が前記出勤日の四月一日から発生するというにすぎない。そして、地方公務員法(以下「地公法」という。)二二条一項の条件附採用職員と同じく、労働関係の効果が現実に発生する右四月一日から六ヶ月間は職務執行上の不適格事由により降任免職処分をなす権利が任命権者たる被告東京都知事に留保された特約付の契約関係であるというべきである。 原告と被告東京都との間に成立した右労働関係を以上の如く解すれば、右労働関係成立後就労義務発生日までの間における本件採用内定の取消、すなわち本件処分は、正式採用職員としての労働契約の解除、しかも、公権力の一方的な行使たる免職処分に他ならないというべきである。従つて、本件処分は、明らかに行政事件訴訟法にいう「処分」に該当するものである。 (三) 違法事由本件処分は、左記の理由により違法な処分として取消さるべきものである。 に他ならないというべきである。従つて、本件処分は、明らかに行政事件訴訟法にいう「処分」に該当するものである。 (三) 違法事由本件処分は、左記の理由により違法な処分として取消さるべきものである。 (1) 被告東京都知事は、その主張する処分事由たる事実が不在であるにもかかわらず事実誤認の結果それが存在するものとして本件処分をなしたものである。以下、右処分事由(後記二の2の(一)の(2))に対する反駁を加えながら、その不存在であることを明らかにする。 (1) 先ず、本件処分事由に対する認否をする。 (ア) 冒頭の事実中、原告が初級現任研修制度に反対したこと、不退去罪、威力業務妨害罪の現行犯人として逮捕されたことは認める。但し、右逮捕は、後述するとおり、不当逮捕である。 原告が被告東京都知事主張の如き暴力行為に訴えた、との点は否認する。 原告が東京都職員としての適格性に欠けるとかその疑いが十分である、との主張は争う。 (イ) (1)の(ア)、(イ)の各事実は認める。 (ウ) 同(ウ)は争う。 任用制度改変は、その内容において東京都職員労働組合、東京都教職員組合等六組合から構成される都労連が昭和三二年から一貫して主張してきた差別撤廃の要求、すなわち、職務・職階・給料表によつて職員を分類格付し、これを身分呼称と結び付けることによつて完成されている身分体制の打破を何ら改善するものではなかつた、原告は、以上の如き問題のある任用制度のうちで重要な役割を果たすのが研修制度であつたので、それに反対したわけである。 (エ) 同(エ)の事実は認める。 (オ) 同(オ)の事実は不知。但し、都労連が賃金要求と抱合わせに被告東京都の提案を大綱において受諾したことは認める。 都労連の右受諾は、中央執行委員会が、議決機関たる中央委員会の明確な反対表明にもかかわらず、単独で、しか 不知。但し、都労連が賃金要求と抱合わせに被告東京都の提案を大綱において受諾したことは認める。 都労連の右受諾は、中央執行委員会が、議決機関たる中央委員会の明確な反対表明にもかかわらず、単独で、しかも極めて政治的・ヤミ取引的になしたものであつて、何ら研修制度の問題点を解決することにはならなかつた。 (カ) (2)の(ア)の事実は認める。 なお、前述の都労連執行部の受諾決定に対し、それを無効であるとして直接的に研修制度反対運動が次々と展開され、都職労各支部のうち、労働局、住宅局等の青年部・婦人部は勿論のこと、それ以外の任意団体である様様のグループも積極的に研修制度の問題に取り組み、各種のビラを配布し、研修ボイコツトを呼びかける等の研修反対運動を展開した。その反対理由の第一は、研修制度は、人事管理の手段として行なわれるものであること、第二は、東京都政に企業的経営管理概念、すなわち、能率(処理件数)一点張りの悪い生産性第一主義を導入しようとする手段としてのものであること、第三は、勤務評定としての研修、すなわち、職場研修自体職場の部課長が部下職員に対し日常の職務を通して実施するものであるから、その研修考課は必然的に勤務評定そのものとなること、第四は、思想統制としての研修、すなわち、被告東京都の一定の価値基準に馴致するためのものであるということ、からである。 (キ) 同(イ)、(ウ)の各事実は否認する。 原告は、研修所当局の退去命令については、研修所から最も離れ、研修反対集団のスビーカに最も近い地点におり、かつ視力が〇・三であつたので、正確に認識できなかつたものである。 (ク) 同(エ)の事実は知らない。 (ケ) 同(オ)の事実について研修所長が第三回目の退去命令を発したと主張する午前九時五分ごろには東京水上警察署員約一00名が既に導入されており、原 ものである。 (ク) 同(エ)の事実は知らない。 (ケ) 同(オ)の事実について研修所長が第三回目の退去命令を発したと主張する午前九時五分ごろには東京水上警察署員約一00名が既に導入されており、原告らは研修所入口前から退去させられ、同時に研修生が入構したものであつて、午前九時一五分の研修開始予定時刻には既に研修可能な状態であつた。 研修が現実に開始された時刻は知らない。 (コ) 同(カ)事実中、原告が現行犯人として逮捕され、被告東京都知事主張の期間勾留されたことは認める。しかし、右逮捕は、研修所当局の退去命令の趣旨に反した違法なものであり、故意および可罰的違法性の点から不退去罪の成立は疑問であつた。 原告の当日における具体的行動は、次のとおりである。すなわち、原告は、当日午前八時に都職労建設支部の人達と国電浜松町駅で待ち合わせ、午前八時一〇分に東京都職員研修所に到着し、研修反対の集会に参加した。そして、午前八時三〇分から研修生に対し研修ボイコツトを呼びかけたり、あるいは、その説得行動をした。 被告東京都知事の主張するようなピケツテングに加わつたことはない。午前八時四〇分ごろから同九時ごろまで同被告主張の退去命令等はあつたと思うが、研修開始時刻まで相当時間があつたので、特別気にしなかつたのである。原告は、午前九時五分、研修所前階段にいたところ、ピケ隊を押し上げながら階段を昇つてきた警官隊にテラスの方に押しやられ、午前九時一〇分にそこから公文書館の方に押された。そして、公文書館前階段上でデモ隊の方を見ており、その後、そのデモ隊に向かつて歩いて行つたところを逮捕されたのである。 (2) 以上のことから明らかなとおり、原告らの行動は、研修所を実力で封鎖したり入構を物理的に阻止するというものではなく、研修所前に集合して研修制度反対、研修ボイコツトを ころを逮捕されたのである。 (2) 以上のことから明らかなとおり、原告らの行動は、研修所を実力で封鎖したり入構を物理的に阻止するというものではなく、研修所前に集合して研修制度反対、研修ボイコツトを研修生に呼びかけたものであり、暴力的なピケツテングやバリケード封鎖といつた態様のものは全く異つていた。多数の集合を即暴力というならいざ知らず、ゲバ棒も火炎ビンも勿論ない平和的な説得活動であつた。そして、原告は、ピケツテングに加わつたこともなければ研修生に暴行を加えたこともない。しかして、研修生全員は、午前九時一五分までに研修所内に入構していたのであるから、定刻に研修は開始し得たはずであり、原告らの行為によつて研修に支障をぎたしたことはなかつた。原告は、研修所前に集まつた研修反対各派(各派によつて行動態様もそれぞれ異なつていた。)のいずれに所属することもなく、一人の東京都職員採用内定者として研修反対の呼びかけを行ない、また、警察官導入によつて生じた摩擦に巻込まれた結果、理由なく不当に逮捕されたに過ぎないのである。しかして、原告らの右研修反対行動は、前述の研修反対運動の一環としてなされたものであり、その根底には、自己の決定すら安易に覆し被告東京都の不合理な提案を受諾した都職労をもはや労働者の権利擁護の機関として頼むに足らずと認識した一人一人の東京都職員の主体的な怒りと不安感があつた。その原因は、あくまでも一方的、強権的に研修制度を職員に押しつけ、強引な労務管理を押し進めようとした被告東京都と、そのような攻撃に真の東京都職員および東京都民の利益を忘れて屈服した都職労にあるというべきである。 (2) 本件処分は、地公法二八条および二九条に規定する分限および懲戒処分に該当する事由が存しないにもかかわらずなされたものである。 本件採用内定の法的性格について した都職労にあるというべきである。 (2) 本件処分は、地公法二八条および二九条に規定する分限および懲戒処分に該当する事由が存しないにもかかわらずなされたものである。 本件採用内定の法的性格については前述したとおりであり、従つて本件処分事由は、地公法二八条および二九条に規定する正式採用職員の分限および懲戒処分事由と同一であるべきであるところ、原告には、右分限および懲戒処分事由に該当する所為がない。けだし、前項で述べた原告の行為は、右分限および懲戒処分事由に該当しないことは明らかであるからである。 なお、若干次の点を付言する。 地公法二八条一項三号にいうところの職員が「その職に必要な適格性を欠く場合」とは、当該職員の素質・性格・能力等から考えて常に地公法第三章第六節に規定する各義務の不履行が存し、職員たるに相応しくないという顕著な特性が存し、しかもこれが容易に矯正することができない程度のものでなければならないということである。 本件についてみれば、原告は前述の研修制度反対運動の参加者約一〇〇名中わずか二名の逮捕者の一人であつたのであるが、原告以外の人達も原告と同様の行動形態をとつていたのであり、原告が逮捕されたことは全く警察官の恣意もしくは偶然によるものでしかなかつたのである。従つて、このことが前記意味における「その職に必要な適格性を欠く場合」であるとは到底いうことができないものである。 次に、地公法二九条一項一号および三号に規定する懲戒処分事由は、前条の分限処分事由と異なり、各号は、要するに職員の服務義務違反を概括的に例示したに過ぎないものであるところ、前述の原告の行動は、いまだ職員としての服務義務に違反したと認められる程度に至つていない。また、右三号に規定する「非行」とは、単なる行為を指すのではなく価値判断を含んでおり、当該職員の社会的な ころ、前述の原告の行動は、いまだ職員としての服務義務に違反したと認められる程度に至つていない。また、右三号に規定する「非行」とは、単なる行為を指すのではなく価値判断を含んでおり、当該職員の社会的な地位に相応しくないものとして社会通念上非難さるべき行為又は不行為をいうものと解されるのである。そして、具体的な場合にある特定の行為が「非行」に該当するか否かは、その者の地位、その行為を行なうに至つた経緯、その行為が社会に及ぼす影響等すべての事情を考慮し、健全な常識に基づいて判断されることがらである。原告の前述した行動は、従来の任用制度反対運動の過程で真に東京都民の利益のためになされたものであり、その行為の経緯は十分考慮されなければならず、また、原告は、四年制大学中退で短大卒程度の事務職員として採用されたものであり、実質上は高校卒同様(被告東京都に提出した卒業証書は高校卒のものであつた。)の事務に従事すべき者であつて、将来幹部要員への昇任が予想されるものとは到底いえないものであつて、以上の原告の地位、行動の動機を勘案すれば、原告の前記研修反対行動は「非行」と評価し得ないものである。なお、同条項三号にいう「全体の奉仕者たるにふさわしくない」の意義は、東京都民の期待に反するということであつて、原告の前記研修反対行動は、東京都民のために行なわれたものであつて、右にいう「全体の奉仕者たるにふさわしくない」ものではなかつた。 (3) 本件処分は、憲法一四条、二一条に違反する。 被告東京都知事は、東京都職員のうち青年部を中心とした新しい労働運動に頭を痛めていたところ、たまたま原告が任用(研修)制度反対運動に参加し逮捕されたことを口実に右制度に対する反対運動を抑圧するため、一罰百戒を狙つて本件処分をなしたものであり、それは政治的な意図をもつてなされたものであり 、たまたま原告が任用(研修)制度反対運動に参加し逮捕されたことを口実に右制度に対する反対運動を抑圧するため、一罰百戒を狙つて本件処分をなしたものであり、それは政治的な意図をもつてなされたものであり、その実は、右反対運動に参加した原告の信条を理由とした差別的取扱に他ならない。 (4) 本件処分は、左記のとおり、公正な手続を全く無視してなされたものである。 (1) 本件処分にも地公法二七条一項が適用または準用されるべきである。しかして、同条項の「公正」を担保するためには、当然゜公正な手続によることが要求され、そのためには被処分者から最低限度その事由について弁明を聞くことが要求される。 本件についてみれば、被告東京都知事は、本件処分をなすに際し、昭和四六年三月一八日、二四日および二六日東京水上警察署に電話照会をなし、同日午後同署に赴き同署員から原告の逮捕時の状況を聴取し、翌二七日建設局庶務課寡および人事係長が検察事務官から原告に対する刑事処分の結果、すなわち、処分保留のまま釈放となつたことを聞たのみであつて、原告から一片の釈明もさせていない。以上のとおり、本件処分は、全く一方的であつて、とても公正な手続によるものとはいえない。 (2) 次に、地公法四九条もまた公正を担保する規定として本件処分にも準用されるべきであるが、被告東京都知事は、本件処分をなすに際し、原告に対し、採用内定を取消す旨伝え、「採用内定の取消について」と題する書面を交付したのみであつて、処分事由を記載した書面を交付しないばかりでなく、処分事由を全く明らかにしなかつた。そして、同被告は、原告のその後の再三に亘る本件処分事由を明らかにすべき旨の申し入れに対し、「職員となるべき適格性を欠いた行為があつた」旨告知するのみで、具体的処分事由を明らかにしなかつた。この点からも本件処分は 、原告のその後の再三に亘る本件処分事由を明らかにすべき旨の申し入れに対し、「職員となるべき適格性を欠いた行為があつた」旨告知するのみで、具体的処分事由を明らかにしなかつた。この点からも本件処分は、公正な手続によるものとはいえない。 (5) 仮りに、原告と被告東京都との間の本件労働契約成立年月日を昭和四六年三月二〇日と解すれば、原告が東京都職員としての地位を取得したのは同日となる。従つて、被告東京都知事が本件処分事由として主張する事実は、右地位取得以前の行為であつて、昭和三〇年九月三〇日人事院事務総局職員局長回答によれば、「職員が公務員となる以前の非行に対して懲戒権を行使することはできない」とされており、分限による免職処分も同様と解せられ、従つて、被告東京都知事の本件処分は、右局長回答に背反するものである。 (6) 本件処分は、左記のとおり、その裁量権の範囲を逸脱してなされたものである。 (1) 仮りに、原告と被告東京都との間に昭和四六年一月二七日成立した労働関係が条件附採用者もしくはそれと類似の地位をその内容とするものと解したとしても、その職員の免職処分にも合理的な制約が存し、正当な事由がなければその処分をなし得ないところである。しかして、条件附採用職員の職員としての不適格事由とは、その職に対応する労務給付の能力についての不適格性か客観的、合理的に認定されることを必要とし、それ以外の個人的な思想、人格的な要素は特にその労働力の質の評価に決定的な影響を生ぜしめるような場合、例えば、当該職員が破廉恥罪を犯したような場合に限定されるべきである。しかるに本件にあつては、前述したとおり、被告東京都知事の主張する本件処分事由には重大事実誤認が存したこと、原告の前記研修反対行動は破廉恥罪ではなく、また、職務上の能力の評価に影響を与えるものではないこ に本件にあつては、前述したとおり、被告東京都知事の主張する本件処分事由には重大事実誤認が存したこと、原告の前記研修反対行動は破廉恥罪ではなく、また、職務上の能力の評価に影響を与えるものではないこと、懲戒および分限処分事由にあたらないことが明らかである。それにもかかわらず被告東京都知事が本件処分をなしたことは、その裁量権の範囲を逸脱したものといわざるを得ない。 (2) 次に、被告東京都知事のなしたこれまでの免職処分の実例をみるに、地公法一六条の欠格条項に該当するかもしくはそれと同様の場合に限定されており、単に東京都の政策・施策に反対の意思表示をなした程度で分限・懲戒処分をなした例はない。また、本件で問題となつている研修反対行動の当日原告と同様の行動をとり同時に逮捕された東京都の職員は、一年以上を経過した今日未だに何らの処分をも受けていない。被告東京都知事は、以上のようなことを考慮に入れることなく、一片の取消通知をもつて、しかもその理由すら単に「適性を欠く行為」があつたというだけで、その行為が何であるかを具体的に示すことなく、出勤日五日前になつて一方的に本件処分をなしたものであつて、このことは著しく不当であるといわざるを得ない。 (四) よつて、原告は被告東京都知事に対し、本件処分の取消を求める。 2 本位的請求第二項について(一) 原告は、前述したとおり、被告東京都の建設局職員としての地位を取得したものである。 (二) しかるに、被告東京都は、採用内定は準備的行為にすぎず、任命行為がない以上、原告が同被告の職員としての地位を取得することはないのみならず、さらに原告に対し本件処分をなしたとして、原告が右地位を有することを争つている。 (三) よつて、原告は被告東京都に対し、原告が同被告の職員(建設局)としての地位を有することの確認を求める。 ならず、さらに原告に対し本件処分をなしたとして、原告が右地位を有することを争つている。 (三) よつて、原告は被告東京都に対し、原告が同被告の職員(建設局)としての地位を有することの確認を求める。 3 予備的請求について(一) 被告東京都知事は、前述したとおり、東京都建設局職員として採用内定した原告に対し、本件処分をなした。 (二) 右処分は、前述した理由により無効である。 (三) ところで、原告の本位的請求第一項が認容されても、日時(昭和四六年四月一日)の到来のみによつては原告がいまだ右職員としての地位を取得できず、そのためには、さらに被告東京都知事の採用行為の存在が必要であるとの見地に立つた場合、本位的請求第二項は認容されないこととなるので、その場合の予備的請求として、原告は被告東京都知事に対し、原告を東京都建設局職員として採用すべきことを求める。 (四) なお、右請求は、いわゆる無名抗告訴訟に属するが、このような訴訟も本件の如く被告東京都知事が原告を右職員として採用するにつき裁量の余地がない場合においては許されるものである。 二被告らの答弁および主張 1 本案前の答弁(一) 本位的請求第一項について本件処分は、抗告訴訟の対象となる行政処分ではないから、本位的請求第一項は不適法である。 およそ抗告訴訟の対象となる行政処分は、行政庁の公権力の行使としてなされた処分であつて、国民の権利義務に直接変動を与えるものでなければならない。ところが本件採用内定は、後述するとおり、行政機関内部における選考の一過程に過ぎず、これにより内定者自身に何ら法的に保護さるべき権利を発生させるものでなく、採用内定通知は、連絡事項を通知したに過ぎない。これと同様に、本件処分もまた行政機関内部における意思の確定であり、これにより内定者自身の権利、利益を何ら侵害 保護さるべき権利を発生させるものでなく、採用内定通知は、連絡事項を通知したに過ぎない。これと同様に、本件処分もまた行政機関内部における意思の確定であり、これにより内定者自身の権利、利益を何ら侵害するものではなく、本件採用内定取消通知もまた連絡事項を通知したに過ぎないものである。従つて、本件処分は、行政事件訴訟法にいう「処分」にあたらないというべきである。 (二) 本位的請求第二項について本位的請求第二項は、左の理由により不適法として却下されるべきである。 (1) 原告がその法的地位の不安定を解消するためには前記本位的請求第一項の訴えの提起のみで十分であつて、予め本位的請求第二項の訴えを提起する利益はないというべきである。けだし本件処分が原告主張のとおり行政事件訴訟法にいう処分であるとすれば、右事件の勝訴判決が確定すれば、該判決は関係行政庁を拘束し(行政事件訴訟法三三条一項)、関係行政庁は、右判決に従つて行動することを義務付けられるからである。 (2) 本件処分が取消される以前に、その処分によつて生ぜしめられた法律効果と抵触する法律関係の確認を求める本位的請求第二項の訴えは、処分の公定力に抵触するというべきである。 (3) 仮りに、本件処分が行政処分でないとすれば、本位的請求第二項は、採用発令という行政庁の処分以前にその処分後の法律関係につき裁判を求めるものであり、行政庁の第一次的判断権を侵害し、裁判所が行政庁に代つてその権限を行使する結果を招来することになるというべきである。 (8) 予備的請求について本件予備的請求は、いわゆる義務付け訴訟であつて、このような訴訟は、三権分立の原則あるいは裁判所の事後判断的機能の点から許されないと解すべきであるが、仮りに許されるとしても、行政庁の作為あるいは不作為義務が一義的に裁量の余地のないほど明白 つて、このような訴訟は、三権分立の原則あるいは裁判所の事後判断的機能の点から許されないと解すべきであるが、仮りに許されるとしても、行政庁の作為あるいは不作為義務が一義的に裁量の余地のないほど明白である場合とか個人が極めて大きい損害を被り、または被る危険が切迫しており、他に救済方法がない場合に限らるべきである。 本件についてみれば、任命権者たる被告東京都知事が原告を採用するか否かは競争試験における受験成績その他の能力の実証に基づき、その裁量判断によつて決定し得るところである(地公法二一条三項)から、被告東京都知事の任命行為が一義的に裁量の余地のないほど明白であるということはできない。 よつて、予備的請求は、不適法として却下されるべきである。 2 本案についての答弁、主張および反論(一) 本位的請求について(1) 答弁(1) (一)の事実(本件採用内定取消処分の存在)は認める。 (2) (二)(本件採用内定に至る経緯およびその法的性格)について(ア) (1)についてa (1)の事実中、原告の応募日は不知、その余の事実は認める。 b (2)の事実中、原告の採用内定通知書の受領日は不知、その余の事実は認める。 c (3)ないし(5)の各事実は、いずれも認める。 (4) (2)について公務員の任用は、その勤務関係の特殊性から単なる私法上の契約(労務供給契約、雇用契約)もしくは労働契約とみるべきではなく、公務員たる権利義務関係の設定を目的とする公法上の行為とみるべきであり、この場合でも公務員になろうとする者の意思を無視することは許されないから、その性質は、相手方の同意を要件とする行為と解すべきである。 公務員の任用につき以上の如く解すると、その明確性、確実性を保障するために辞令の交付等の表示行為を必要と解すべきであり、また実務上もつねに辞令の交付と 相手方の同意を要件とする行為と解すべきである。 公務員の任用につき以上の如く解すると、その明確性、確実性を保障するために辞令の交付等の表示行為を必要と解すべきであり、また実務上もつねに辞令の交付という形式によつて行なわれているのである。被告東京都においても従前から一般職員の採用にあたつては、例外なく辞令書(発令通知書)を交付している。従つて、辞令の交付による任命行為が行なわれない以上、公務員たる身分を取得したとはいえない。原告に、いまだ任命権者たる被告東京都知事から採用発令をうけておらず、その辞令の交付もなされていないから、被告東京都の職員たる身分を取得していない。 ところで、公務員の任用には、それに先行する各段階の行為が必要である。地公法によれば、任命権者は職員を採用する場合、競争試験に合格し、採用候補者名簿に登載された者について、採用すべき者一人につき人事委員会の提示する競争試験における高点順の志望者五人のうちから選考のうえ採用するのであるが、任命権者においていつから採用する予定であるか、またいつどのように辞令交付などの任命行為を行なうか等について事前に随時該当者に知らせ、また志望者も卒業の見込みとか志望部署の変更等を知らせる等相互に連絡する必要があり、また、後述のとおり、任命行為がなされるまでは、なお公務員としての適格性、資格等について審査することかできるから、これに必要な資料を提出させるべく通知する等がこれである。これらの行為は、いわば任命行為を終局的に適正かつ円滑に行なうための準備的行為にすぎず、独立して法的効果を生ずるものではなく、通知を受ける者に対し何らの権利ないし地位を与えるものではない。採用内定通知もまた、以上の各種準備的行為の一つである。任命権者は、採用内定通知において、その相手方がある程度の確実さをもつて採用を 、通知を受ける者に対し何らの権利ないし地位を与えるものではない。採用内定通知もまた、以上の各種準備的行為の一つである。任命権者は、採用内定通知において、その相手方がある程度の確実さをもつて採用を予定している者である旨を事実上通知したものに過ぎず、任命するか否かはなお任命権者の完全な自由裁量に属するものであり、無論これにより確定的に公務員たる権利関係を設定するものでもないといわなければならない。 仮りに右主張が容れられないとすれば、次のとおり主張する。 原告に対する本件採用内定通知は、一定の資格要件の審査、身体検査、面接の結果を経て行なわれているので、これらの結果によれば、原告は、特別な障害がない以上四月一日に任命行為としての発令通知書(辞令)の交付をうけ、同日、東京都職員としての身分を取得すべき期待的地位にあつたと一応はいうことができる。しかし、任命権者たる被告東京都知事は、原告に対する本件採用内定通知時において、保証書、卒業証明書の提出を求めていたから、これらの書類の提出がないこと等の理由により、なお内定は取消されうる地位にあつたといわなければならない。更にそれは、任命行為が行なわれる以前であれば、万一原告が公務員として適格性を欠くと判断されるべき特別の事情が判明したときは、その事情いかんにより任命権者において自由に採用内定を取消すこともできる地位にすぎない。 このことは、地公法が職員の採用を当初は条件附のものとしていることからもいうことができる。 すなわち、地方公務員法二二条一項は、職員の採用は臨時的任用又は非常勤職員の任用の場合を除き、すべて条件附のものとし、その職員が六ヶ月間その職務を良好な成績で遂行した後はじめて正式採用されるものとしている。そして条件附採用の者には分限、懲戒事由が緩和され、法に定める事由によらなくても免職等が べて条件附のものとし、その職員が六ヶ月間その職務を良好な成績で遂行した後はじめて正式採用されるものとしている。そして条件附採用の者には分限、懲戒事由が緩和され、法に定める事由によらなくても免職等がなされ、またこれに対する不服申立てについても正式採用職員と同様の保護をうけえないとされている(同法二九条の二・一項)。 右の規定によれば、公務員として採用する旨の任命行為があつた後でさえ、なお条件附採用にすぎないものとして、地公法が分限もしくは懲戒事由として限定した以外の事由により、しかも正式採用職員に適用される厳格な手続によらないで、任命権者は正式な職員として任用するかしないかを自由に判断し、これを採用しない自由を有するのであり、これにくらべて任命行為すらなされていない採用内定者は、任命権者のなお一層巾広い裁量のもとで、条件附採用職員として任命されるか否かが決定されるものといわなければならない。そうだとすれば、採用内定者たる地位は、条件附採用期間中の職員よりなお一層不確定な地位にすぎず、いわんやそれは、正式採用職員と同等もしくは類似の関係にたち、地公法の定める身分保障規定の全面的適用をうける者としての地位では全くない。しかし、かりに採用内定取消行為が違法だとしても、全く救済方法がないわけではない。すなわち、採用内定取消が違法だとしても相手方は直ちに任命権者たる行政庁に対して、正式採用の処分をなすことを請求しうるものではないが、違法な行政庁の行為による損害賠償を請求しうるものと解することはできるのである。 採用内定者の地位が、以上のべてきたようなものであるとすれば、任命権者は、採用内定通知をうけた者が公務員としての適格性を欠くところがないかどうか、ひきつづき審査しうるのであり、かりにそのような適格性を欠き、もしくはこれを十分疑わしめる事情が存 あるとすれば、任命権者は、採用内定通知をうけた者が公務員としての適格性を欠くところがないかどうか、ひきつづき審査しうるのであり、かりにそのような適格性を欠き、もしくはこれを十分疑わしめる事情が存在したときは、これを公務員に任命しない自由を有するものである。そして、そのような決定は、最終的には、任命行為を行なわないという事実によつて表示されるものであるが、相手方の便宜をはかるため、これに先立ちその旨の意思を通知するのが適当である。採用内定取消通知は、まさにこのような趣旨において事実上なされた通知として理解されるべきものである。 (3) (三)の本件処分が違法であるとの主張は争う。 (2) 主張-本件処分事由被告東京都知事は、原告に対し、左記の理由により本件採用内定を取得した。すなわち、原告は、昭和四六年三月一六日、自ら採用されることを希望している被告東京都の業務である初級現任研修制度に反対し、他の同調者らと共に、然も自ら指導的立場において、東京都職員研修所を実力で封鎖し、研修生の入構を阻止する等の暴力行為に訴え、あまつさえ、当局の再三に亘る退去命令を無視し、終に導入された警察官に右研修所入口付近において不退去罪ならびに威力業務妨害罪の現行犯人として逮捕されたものである。 以上のことは、もし原告が被告東京都の職員であつたとすれば、その適格性を欠く場合、地公法およびこれに基づく東京都の条例・規則に違反した場合ならびに全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあつた場合のいずれにも該当し、原告が公務員不適格者であることを示すものである。 (1) 先ず原告らの反対した初級現任研修制度について述べる。 (ア) 被告東京都においては、従来常勤の一般職の職員に吏員、雇員、傭員という区分を設け、雇員は、吏員昇任試験あるいは吏員昇任選考に合格することによつて吏 の反対した初級現任研修制度について述べる。 (ア) 被告東京都においては、従来常勤の一般職の職員に吏員、雇員、傭員という区分を設け、雇員は、吏員昇任試験あるいは吏員昇任選考に合格することによつて吏員に昇任し、傭員は、能力認定に合格することによつて雇員になるという昇任制度を採用していた。右吏員昇任試験は、事務、土木、建築、機械、電気の職種に従事する職員で、採用試験の受験資格区分(短大卒程度、その他)により定められた雇員(職名は主事補あるいは技師補)としての勤務年数を経た者が受験資格を有し、これに合格することにより吏員(職名は主事あるいは技師)となるものであつた。そして、右のようにして吏員となつた者は、職員の給与に関する条例に定める行政職給料表(一)五等級の給料を支給されることになつていた。 (イ) ところが、右の如き被告東京都の職員の人事制度、とりわけ任用制度には従来から様様の問題点があり、内外から改善の必要を指摘されてきたところであつた。被告東京都においても予てから任用制度全般の整備を進めてきたところであるが、東京都行政臨時調査会は、昭和四四年六月、被告東京都知事に対し、東京都における「人事管理に関する助言」を提出した。そこで、同被告は、右助言の方向に沿つて、昭和四五年度から従来行なわれてきた吏員昇任試験を廃止し、これにかわるものとして研修と勤務成績評定による昇任選考を実施することとし、同時に、職名整備の一環として吏員・傭員の区別も廃止した。この改正により、従来使用されてきた「吏員昇任」という呼称もなくなり、新しい制度による昇任は、行政職給料表(一)五等級相当職への昇任となつたのである。 (ウ) 被告東京都知事が右のような改善を行なつたのは、従前の吏員昇任試験が内容・方法ともに形式的・画一的であり、行政の著るしい専門化・多様化に伴ない職 (一)五等級相当職への昇任となつたのである。 (ウ) 被告東京都知事が右のような改善を行なつたのは、従前の吏員昇任試験が内容・方法ともに形式的・画一的であり、行政の著るしい専門化・多様化に伴ない職員の個々具体的な職務に対する遂行能力を実証しうるものではなくなつたこと、また、従来の吏員昇任にみられた身分的昇任の性格を除去し、近代的・民主的な能力主義昇任制度を志向したことによるものである。 (エ) そして、被告東京都は、従前の吏員昇任試験にかえて採用した研修を初級現任研修と称し、職場研修のほか一〇〇時間程度の集合研修を実施することとした。職場研修は、部課の長が当該部課に所属する職員を対象に、当該部課における業務遂行上直接必要な事項に関して、主として日常の職務を通して行なうものである。また、集合研修は、局区研修と中央研修とに分かれ、局区研修は、局区の長が当該局区に所属する職員を対象に、主として当該局区の業務遂行上特に必要な事項に関して行なうものであり、また、中央研修は、東京都職員研修所長が各局区に所属する職員を対象に、東京都の職員として職務執行上必要な事項のうち、主として各局区間に共通する事項に関して行なうものである。なお、研修終了の認定は、集合研修は研修の「まとめ」という小文を提出させて行ない、職場研修は各所属長の認定に委ねた。そして、これら研修の成果と勤務成績の評定等を総合的に勘案して、短大卒程度で採用された者は在職五年目に行政職給料表(一)五等級の職に昇任させることとしたのである。 (オ) 以上のような改正を行なうについては、東京都職員労働組合、東京水道労働組合等の職員団体等と長期にわたつて協議を重ね、合意に達したものであり、その上で実施に移したのである。 (2) 次に、原告らの研修妨害行為について述べる。 (ア) 前項の如き任用制度の改 東京水道労働組合等の職員団体等と長期にわたつて協議を重ね、合意に達したものであり、その上で実施に移したのである。 (2) 次に、原告らの研修妨害行為について述べる。 (ア) 前項の如き任用制度の改善に対し、東京都職員の一部から反対闘争が起きた。ところで、昭和四五年度の初級現任研修は、各局区研修が昭和四六年一月二五日から同年二月二〇日まで実施され、東京都職員研修所における中央研修が同年二月二三日から同年三月二六日まで実施されることになつていた。しかるに、中央研修の第四週目の第一日目に当る同月一六日午前七時三〇分一}ろ、研修所入口の階段に約二〇人の白へルメツーを着帽した人達が参集し、次いで、午前八時一〇分ごろ、右研修所に隣り合つた公文書館に約一二〇人の青、黒、赤のヘルメツトをそれぞれ着帽した人達が参集した。そして、右の両グループは、午前八時一八分ごろ合流したうえ、研修所および公文書館の各入口前の階段に並んで座り込み、ピケツテングを張るに至つた。そして、その中の何者かがハンドスピーカーでアジ演説を始め、また二本の竿を用いて横断幕を掲げた。このほかに、「都職反戦」、「差別撤廃」と記された旗が立てられた。 (イ) これに対し、研修所当局は、午前八時二〇分ごろから建物備え付けの放送設備により、「階段付近に座り込んでいる皆さんにお伝えします。庁内管理上支障がありますので集会を止めて下さい。」ということを繰返したが、前記ピケツテングは解かれず、却つて人数は増加し、午前八時三〇分ごろ、研修所入口は封鎖された状態となり、研修所内に入ろうとする研修所職員が右の者達に小突かれる事態となつた。これに対し、研修所当局は、午前八時四〇分、右ピケ隊に向けて、「玄関入口に座つている皆さんにお伝えします。庁舎管理上支障がありますので座り込みはやめて下さい。昭和四六年三月 小突かれる事態となつた。これに対し、研修所当局は、午前八時四〇分、右ピケ隊に向けて、「玄関入口に座つている皆さんにお伝えします。庁舎管理上支障がありますので座り込みはやめて下さい。昭和四六年三月一六日午前八時四〇分」と書いた模造紙を掲示し、かつ同一内容をハンドスピーカーで繰返し放送したが、全く無視された。 (ウ) そこで、研修所当局は、午前八時四五分、掲示と放送により第一回目の退去命令を発した。その内容は、「退去命令。階段付近の皆さんにお伝えします。庁内管理上支障がありますから直ちに庁外へ退去して下さい。昭和四六年三月一六日八時四五分庁内管理者職員研修所長」というものであつた。さらに研修所当局は、午前八時五五分、前回と同一内容の第二回目の退去命令を前回同様の方法で発した。このころには、研修受講の職員約二〇〇名が参集していたが、その職員らは、前記ピケ隊に阻まれて入構できず、研修所前の路上に立ち止つていた。また、このころ、ピケ隊は、約八〇名となつていた。 研修所長は、午前九時五分、前回と同様の方法で第三回目の退去命令を発した。その内容は、「退去命令。研修生以外の皆さんにお伝えします。庁舎管理上支障がありますので、ただちに庁外へ退去して下さい。なお、今から一〇分以内に退去しない場合は、研修所において適当な処置を講じます。昭和四六年三月一六日九時五分庁内管理者職員研修所長」というものであつた。 (エ) 然るに、ピケ隊は、一向に退去しようとしないので、研修研長は、午前九時一〇分、右の如き状態では当日の研修を実施することが不可能であると判断し、止むなく東京水上警察署に対し、文書をもつて右ピケ隊の排除要請を行なつた。 (オ) 右排除要請を受けた東京水上警察署は、午前九時七分ごろと同九時一二分ごろの二回に亘り右ピケ隊に退去するよう警告した。これに対し、研 水上警察署に対し、文書をもつて右ピケ隊の排除要請を行なつた。 (オ) 右排除要請を受けた東京水上警察署は、午前九時七分ごろと同九時一二分ごろの二回に亘り右ピケ隊に退去するよう警告した。これに対し、研修所正面入口前にいた集団のうち約二〇名のしろルメツト着帽のグループは、第一回目の警告後退去したが、赤ヘルメツト着帽のグループは退去せず、依然として研修所正面入口前にスクラムを組む形で1残つていた。そこで、東京水上警察署は、午前九時一五分、これらグループを排除した。これと同時に研修所は研修生を誘導・入構せしめ、しかして、午前九時三〇分から研修を開始した。 (カ) 原告は、当日赤ヘルメツトを着帽し、研修所玄関前に座り込んだり、あるいは、立つたりしているグループに向つて携帯メガホンを使用して盛んにアジ演説をしたり、研修所当局の退去命令に対しがなるという行動に出た。右のような行動を目撃していた東京水上警察署員は、原告がリーダーであると判断し、右排除行動に移つた際、原告を前記罪名により、現行犯人として逮捕したのである。そして、原告は、同月一八日から同月二七日まで勾留されたのである。 (3) 反論(1) 原告は、本件採用内定取消につき地公法二八条および二九条が適用ないし準用され、従つて、右各条項に該当する事由がなければ右取消をなし得ない旨主張するが、そもそも採用内定者は、前述したとおり、条件附採用期間中の職員ではなく、況んや正式採用職員でもないのであるから、任命権者は、地公法二八条一項の分限処分事由および同法二九条め懲戒処分事由に該当する事由がなくとも、また、その程度に至らない事由によつても、右採用内定を取消すことができると解すべきである。けだし、地公法二九条の二は、条件附採用期間中の職員につき、同法二八条一項の規定が適用されず、従つて、分限処分事由に該 の程度に至らない事由によつても、右採用内定を取消すことができると解すべきである。けだし、地公法二九条の二は、条件附採用期間中の職員につき、同法二八条一項の規定が適用されず、従つて、分限処分事由に該当しない場合であつてもその者を正式採用しない場合があることを予定した規定であるが、これの趣旨を没却することになり、また、これとのバランスを欠くことにもなるからである。 また、原告の主張によれば、採用内定者は、任命行為を経た条件附採用職員以上に強力な身分保障を受けるという奇妙な結果となる。 また、仮りに原告の主張が正当であるとするならば、本件採用内定取消についても地公法四九条の二が適用され、それに対する不服申立てが可能であることになる。 従つて、本件拠分取消の訴えは、同法五一条の二により、右申立てに対する裁決又は決定を経なければならない。しかるに原告はこれをなしておらず、従つて、右の前置要件を欠くことになるから、本件処分取消の訴えは却下を免れないことになる。 (2) 原告は、本件処分は公正な手続を無視してなされた旨主張する。 原告の主張する事実関係は認める(但し、被告東京都知事は、昭和四六年三月二九日および同年四月六日、原告に対し、いかなる行為が「職員となるべき適格性を欠いた行為」に該当するかということを明らかにした。)。 しかしながら、採用内定者である原告に対する本件処分につき、地公法に定める分限および懲戒処分に関する手続規定は適用されないものである。しかして、地公法四九条一項は、職員に対し不利益な処分を行なう場合に際しては、その職員に対し処分の事由を記載した説明書を交付しなければならないとしているが、これはあくまで正式採用職員について要求されている措置であつて、条件附採用職員についてすら適用が除外されているものであるから、採用内定者に適用されないこ た説明書を交付しなければならないとしているが、これはあくまで正式採用職員について要求されている措置であつて、条件附採用職員についてすら適用が除外されているものであるから、採用内定者に適用されないことは当然である。従つて、任命権者が採用内定取消を受ける者に弁明の機会を与え、若しくは取消事由を明らかにすることが一般的にはより親切であるといえるにしても、これをしなかつたからといつて採用内定取消が直ちに違法視される筋合いのものではない。しかも本件にあつては、原告は自らの反都的実力行動の結果採用内定期間中に現行犯人として逮捕されるに至つたものであり、そのような明白の事情のもとではなおさらであるというべきである。 (3) 原告は、本件処分は裁量権を逸脱したものである旨主張する。 被告東京都知事が公共団体たる被告東京都の職員を採用するにあたつては、いやしくも東京都民の信頼に背くことのないよう極めて慎重に配慮すべき立場にあるのはいうまでもない。すなわち、同被告は、たとえ職員の採用内定通知をした後であつても、当該職員が職員としての適格性を欠くと認められた場合又は適格性の存在を疑わせるに足る十分な理由を見出した場合には、その内定通知を取消すことによつて右不適格者を排除することが東京都民全体に対する責務である。ところで、採用内定の段階では、その内定者が果して職員としての適格性を有するか否かを判断するに必要な資料は、一般に必らずしも豊富であるとはいえない。そこで、もし内定者に適格性を疑わしめる行為があつたときは、被告東京都知事は、その行為を検討し正式に採用すべきか否かを判断しなければならない。その場合、いやしくも法令を忠実に順守すべき義務を有する公務員の内定者が犯罪の容疑により警察に逮捕されるようなことがあれば、その逮捕が明白な誤認逮捕でないかぎり被疑事実、罪 を判断しなければならない。その場合、いやしくも法令を忠実に順守すべき義務を有する公務員の内定者が犯罪の容疑により警察に逮捕されるようなことがあれば、その逮捕が明白な誤認逮捕でないかぎり被疑事実、罪名、逮捕時の状況いかんによつては、それだけをもつてその者の職員としての適格性を疑わせるに足ると認めても何ら不当ではない場合があるというべきである。 本件についてみれば、原告は、前述したとおり、自ら採用されることを希望する被告東京都の業務を実力で妨害し、その結果警察官に逮捕されるに至つたのである。 その逮捕が誤認逮捕であることは状況上考えられず、また逮捕された者が原告を含め二名に過ぎなかつたことは原告が集団の中で指導的役割を果したことを推認させるに十分である。以上のことから本件処分は、適法かつ妥当というべきである。 仮りに、被告東京都知事が原告の如き公務員不適格者を職員として採用したとすれば、同被告は、東京都民の信頼を裏切り、同都民に損失を与える結果となる。原告が職員の内でも単純労務に従事する職種に採用されるものとすれば、同都民の被害は比較的軽度であろう。しかし、原告は、短大卒程度の事務職員に内定していたものであり、右の職は、将来の幹部要員として被告東京都の方針を立案決定し、職員を指揮監督すべき職務への昇任が予定されているのであるから、原告の如き者が将来長年月に亘り強固な身分保障のもとに同被告の職員として在職することになれば、同被告および東京都民の被る被害は計り知れないものがある。 (二) 原告の主張2(本位的請求第二項)について(1) (一)は争う。前述したとおり、原告は、単に採用内定者に過ぎなかつたものである。 (2) (二)は認める。 (三) 原告の主張3(予備的請求)について(1) (一)の事実は認める。 (2) (二)の主張は争う。本件採用 たとおり、原告は、単に採用内定者に過ぎなかつたものである。 (2) (二)は認める。 (三) 原告の主張3(予備的請求)について(1) (一)の事実は認める。 (2) (二)の主張は争う。本件採用内定取消が適法であることは前述したとおりである。 第三証拠関係(省略)○ 理由一本位的請求第一項について 1 原告の主張1の(一)の事実は、当事者間に争いがない。 2 本件採用内定について(一) 本件採用内定に至る経緯原告の主張1の(二)の(1)の事実は、原告が被告東京都の職員(短大卒程度)採用試験に応募した日および採用内定通知書を受領した日を除き、全部当事者間に争いがない。 原告本人尋問の結果によると、原告が右採用試験に応募した日は、昭和四五年八月二六日であること、採用内定通知書を受領した日は、昭和四六年一月二八日であることが認められる。右認定に反する証拠はない。 (二) 本件採用内定の法的性格前項認定の事実関係を総合して本件採用内定の法的性格を検討するに、任命権者たる被告東京都知事が昭和四六年一月二七日付採用内定通知を発出し、翌二八日原告に該通知が到達したことにより、同月二七日付をもつて、その効力発生の始期を同年四月一日とする採用行為がなされたものと解すべきである。 被告東京都知事は、採用内定通知は任命行為をするまでの準備的行為にすぎず、辞令の交付がない以上は、いまだ任命行為は存在しない旨主張する。しかし、地方公務員の任命の手続については明文の規定はなく、また国家公務員についての人事院規則八-一二(職員の任免)第七五条の規定も、国家公務員の任命をいわゆる要式行為とした趣旨とは解せられず辞令の交付の有無にかかわらず、任命権者から発令の通知がなされたときは、その意思表示のみによつて任命の効力が生ずると解するのが相当である。そして、前記採 命をいわゆる要式行為とした趣旨とは解せられず辞令の交付の有無にかかわらず、任命権者から発令の通知がなされたときは、その意思表示のみによつて任命の効力が生ずると解するのが相当である。そして、前記採用内定通知書には、「昭和四六年四月一日付で建設局に採用することに内定いたしました」旨記載され、採用にあたつては保証書と卒業証明書が必要であるから郵便等により提出すべき旨記載されている以外は何らの留保もないのであるから、これをもつて原告が昭和四六年四月一日付で東京都職員たる地位を取得するという法律効果に向けられた確定的な意思表示とみてさしつかえなく、「内定」なる用語が使用されているだけでは右判断を左右するにたりない。 また原告は、被告東京都知事の前記採用内定通知により同日原告と同被告の間に労働契約が締結され、原告は、正式採用職員たる地位を取得したのであつて、ただ原告の労務提供義務が昭和四六年四月一日から発生するにすぎない旨主張するが、前記採用内定通知書によれば、右日時は就労開始の時期ではなく、採用の日時であることが認められるから、右主張は採用しない。 3 本件採用内定取消の法的性格について本件採用内定の法的性格が前述したとおりであることに鑑みれば、被告東京都知事が昭和四六年三月二七日付をもつてなした本件採用内定取消は、始期附採用という行政処分を始期の到来前に撤回するものであるから、それ自体あらたな行政処分であると解すべきである。 よつて、本件採用内定取消は抗告訴訟の対象たり得る処分というべく、これと異なることを前提とする被告東京都知事の本案前の抗弁は理由がない。 4 そこで、本件採用内定取消の当否について検討する。 すでに認定したとおり、本件採用内定は、昭和四六年四月一日を効力発生の始期とする採用行為であつて、採用内定者である原告は右始期の到来まで がない。 4 そこで、本件採用内定取消の当否について検討する。 すでに認定したとおり、本件採用内定は、昭和四六年四月一日を効力発生の始期とする採用行為であつて、採用内定者である原告は右始期の到来までは被告東京都の職員たる身分を取得するものではないから、地公法二七条ないし二九条の適用を受ける者ではない。しかしながら、原告は、右始期到来前においても、昭和四六年四月一日には被告東京都の職員(地公法二二条により条件付採用職員)としての身分を取得すべき期待的地位を有していたのであるから、被告東京都知事は、前記採用内定通知書に記載されている保証書または卒業証明書の提出がなかつた場合に限らず、全く自由に採用内定の取消(始期付採用行為の撤回)をなし得ると解すべきではない。地公法二九条ノ二は、条件付採用期間中の職員については、同法二七条二項および二八条一項から三項までの適用を除外しているところ、原告は右条件付採用職員となるべき期待的地位を存するにすぎないことを勘案すれば、被告東京都知事は、採用内定の取消について、条件付採用職員を正式採用にする場合よりもさらに広い裁量権を有するものとはいえるが、右裁量権の範囲は無制限ではなく、原告の右期待的地位を剥奪することを正当とするだけの公益上の必要性がなければならないと解するのが相当である。 そこで本件についてこれを検討するに、被告東京都知事の主張する本件処分事由(第二の二の2の(一)の(2))のうち、(1)の(ア)、(イ)、(エ)、(2)の(ア)、(イ)、の各事実、および、原告は、昭和四六年三月一六日、被告東京都の昭和四五年度初級現任研修に反対し、東京水上警察署員に不退去罪、威力業務妨害罪の現行犯人として逮捕され、同月一八日から同月二七日まで勾留処分を受けたことは当事者間に争いがない。 証人C、同D、同E、同Fの各 年度初級現任研修に反対し、東京水上警察署員に不退去罪、威力業務妨害罪の現行犯人として逮捕され、同月一八日から同月二七日まで勾留処分を受けたことは当事者間に争いがない。 証人C、同D、同E、同Fの各証言、原告本人尋問の結果(但し、後記信用しない部分を除く。)によれば、次の事実を認めることができる。被告東京都が従前の吏員昇任試験制度を廃止し、これに代る制度として研修と勤務成績評定による昇任選考を実施することにしたのは、右吏員昇任試験制度が内容・方法ともに形式的・画一的であり、現代の行政の著るしい専門化・多様化に伴ない職員の個々具体的な職務遂行能力を実証し得るものではなくなつたこと、また、吏員昇任にみられた身分的昇任の性格を除去し、近代的・民主的な能力主義昇任制度を志向したことによるものであつた。そして、以上の如き制度の改革には、被告東京都とその職員団体たる東京都職員労働組合等と長期に亘り協議を重ね、合意に達したところであつた。 ところが、右のような改革に対し、東京都職員労働組合の青年(特に、建設支部の青年)・婦人層の中から、右改革は、東京都政に企業的な考え方を持ち込むものであるとか、能力万能主義を導入するものであるとか、あるいは、職員のロボツト化を図るものであるとかの理由で反対運動が起り、とりわけ研修制度については、能力判定の手段とするものであるとして研修ボイコツト、研修反対のビラの配布等の各種行動が展開されるに至つた。 原告は、本件採用内定後、右制度の改革につき、右建設支部所属の東京都職員Gから、その者達が右研修制度につき反対している理由を聞いて同感し、その制度は差別的制度であると考えるようになつた。そこで、原告は、昭和四六年三月一六日、東京都職員研修所(東京都港区海岸通り一丁目所在)において、右建設支部青年部の人達が中心となつて実施され 感し、その制度は差別的制度であると考えるようになつた。そこで、原告は、昭和四六年三月一六日、東京都職員研修所(東京都港区海岸通り一丁目所在)において、右建設支部青年部の人達が中心となつて実施されることになつていた研修反対のための集会に参加すべく、同日午前八時ごろ、国鉄浜松町駅でその人達と待ち合わせ、午前八時一〇分ごろ、右研修所に到着し、同時刻ごろから開始された研修反対のための集会に参加した。同集会は、午前八時三〇分ごろまで行なわれ、その後原告は、研修受講のため集合してきた研修生に対し研修ボイコツトを呼びかけたり、その説得をするという行動に移つた。 他方研修所当局は、午前八時二〇分ごろから建物備え付けの放送設備により、研修所入口階段に座り込む等のピケ態勢をとつて研修所に入構するのを妨害していた白ヘルメツトを着帽した約二〇名のグループと青、黒、赤のヘルメツトを着帽した約三〇名のグループに対し、右妨害行為を中止するよう繰返えし放送したが、右の者達はこれに従う様子になく、その者達の人数はますます増加する一方であつて、午前八時三〇分ごろは研修所正面入口は封鎖状態となり、その中に入ることも困難になつた。そこで研修所当局は、午前八時四〇分ごろ、さらに右の者達に向けて来り込みをやめるよう書面で掲示するとともにハンドスピーカで繰返えし要請したが、前回同様その者達はこれに全く従う様子になかつた。そのため研修所当局は、午前八時四五分、掲示と放送により第一回目の退去命令を発出したが、依然右の者達はこれに従う気配になく、そこで、さらに、午前八時五五分、第二回目の退去命令を発出したが、前回同様全く無視され、さらに、午前九時五分、第三回目の退去命令を発出したが、これも全く無視された。そこで、研修所長は、このままの状態では当日の研修が不可能になると判断し、午前九時 令を発出したが、前回同様全く無視され、さらに、午前九時五分、第三回目の退去命令を発出したが、これも全く無視された。そこで、研修所長は、このままの状態では当日の研修が不可能になると判断し、午前九時一〇分、東京水上警察署に対し、文書を以つて右の者達の排除要請を行なつた。右要請を受けた右警察署は、午前九時一〇分ごろと同九時一二分ごろの二回に亘り、右妨害行為に及んでいる者達に対し、退去すべき旨の警告をした。これに対し、前記約二〇名の白ヘルメツトを着帽した人達は、第一回目の警告後退去したが、赤ヘルメツトを着帽した人達はこれに従う気配になく、依然として研修所正面入口前にスクラムを組む等のピケ態勢のもとに研修所への入構を阻止する行動に及んでいた。そこで、右水上警察署は、午前九時一五分、これらの者達の排除行動に移つたのである。しかして、右排除行動は比較的スムーズに行なわれ、研修開始は、予定時刻から一五分遅れて実施された。 原告は、右の間赤ヘルメツトを着帽し、右研修所玄関前に座り込む等して入構を妨害していた者達に向つて携帯メガホンを使用して盛んにアジ演説をしたり、前記研修所当局の退去命令に対し、がなるという行為に出でた。右の如き行動を目撃した警察官は、原告が右集団のリーダーであると判断し、研修所前において、前記の各罪名により現行犯人として逮捕したものである。 以上の認定に反する原告本人尋問の結果は、前掲各証拠に照らし措信し難く、他に以上の認定を左右するに足りる証拠はない。 右認定事実によれば、原告は、他の者と共謀のうえ、右研修妨害行動につき積極的役割を果たしたことが推認され、証人Aの証言によれば、被告東京都知事は、原告が自ら東京都職員として採用されることを希望し、採用内定になつているにもかかわらず、右の如く他の同調者と共にその手段・方法を選ぶことなく、い とが推認され、証人Aの証言によれば、被告東京都知事は、原告が自ら東京都職員として採用されることを希望し、採用内定になつているにもかかわらず、右の如く他の同調者と共にその手段・方法を選ぶことなく、いずれは自らもその一員となるであろう職場の研修を妨害するという行動に出で、しかも研修開始時刻を約一五分間に亘り遅延させ、遂に導入された警察官に不退去罪、威力業務妨害罪の現行犯人として逮捕されたことから、原告を被告東京都の職員として採用するについては、その適格性に欠けるところがあると判断し、本件処分に及んだことが認められる。 原告は、研修制度にこそ不都合な点があり、むしろ原告の行動は正当であるかの如く主張するが、右制度は、前記認定のとおり、被告東京都において長期間検討を重ねてきたものであり、またその実施については東京都職員労働組合等とも協議を重ね合意に達していたものであつて、前記の如き妨害行為に出でたことは、いかなる意味においても許されないところであると断ずる他ない。 また、原告は、前記逮捕が不当逮捕であつた旨主張するが、前記認定の事実によれば、右逮捕が不当であつたということはできない。 以上述べてきたところよりすれば、被告東京都知事において原告が被告東京都の公務員としての適格性に欠けると判断したことには首肯し得るものがあり、少くとも原告には被告東京都の公務員としての適格性を欠くことを疑うに足りる相当な理由があるというべきであつて、前記のように原告が条件付採用職員となるべき期待的地位を有するにすぎないことをあわせ考えると、本件処分については、原告の右期待的地位を剥奪するのを正当とするだけの公益上の必要性があるものと解するを相当とする。 5 原告の主張に対する判断(一) 原告は、本件処分は憲法一四条、二一条に違反する旨主張する。 原告が研修制度に反対 地位を剥奪するのを正当とするだけの公益上の必要性があるものと解するを相当とする。 5 原告の主張に対する判断(一) 原告は、本件処分は憲法一四条、二一条に違反する旨主張する。 原告が研修制度に反対していたことは前記のとおりであるが、それだからといつて被告東京都知事が原告の逮捕を口実に任用制度反対運動抑圧のため一罰百戒を狙つて政治的に本件処分をなしたとか、あるいは原告の信条を理由として差別的に本件処分をなしたとかの事実を認めるに足りる証拠はないから、この点に関する原告の主張は採用しない。 (二) 原告は、本件処分は公正な手続を全く無視してなされた旨主張する。 原告が昭和四六年四月一日までは被告東京都の職員たる身分を取得せず、したがつて、地公法二七条の適用がないことは前記のとおりであり、このことは、同法四九条についても同様であつて、条件付採用職員について同条の適用が排除されていることからみれば、原告のように条件付採用職員となるべき期待的地位を有するにすぎない者については、同条の準用も考えられない。もつとも、地公法二七条一項の精神は、本件処分に当つても尊重されなければならないであろうが、前記4で認定した事実関係のもとにあつては被告東京都知事が本件処分をなすに際し、原告からその処分事由についての弁明を聞かなかつた(このことは当事者間に争いがない。)からといつてそれが公正な措置でなかつたということはできない。 従つて、この点に関する原告の主張は理由がない。 (三) 原告は、仮定的に、本件処分は原告が東京都職員としての地位を取得する以前の事由によりなされたものである旨主張するが、本件採用内定の法的性格および本件処分の法的性格については前述したとおりであつて、これを異なることを前提としての主張であるから採用しない。 (四) 裁量権濫用の主張について被告 である旨主張するが、本件採用内定の法的性格および本件処分の法的性格については前述したとおりであつて、これを異なることを前提としての主張であるから採用しない。 (四) 裁量権濫用の主張について被告東京都知事が本件処分をなし得る場合については前述したところであり、これと異なることを前提としての原告の主張は理由がない。 次に、原告の主張する免職処分の実例、および、原告と同時に逮捕された被告東京都の職員に関する主張は、いずれも被告東京都の職員たる身分を取得していない原告には適切でないので理由がない。 原告は、本件処分につき具体的な事由が明示されなかつた旨主張するが、前記認定の事実関係の下にあつて、原告は、その事由を当然知り得たところであり、また、その事由を具体的に明示することは好ましい措置であるということができても、地公法四九条の適用がないことは前述したところであつて、その明示につき具体性に欠けるところがあつたからといつて本件処分が違法となるものではない。 また、本件処分が出勤日五日前になされたからといつて不当であるということもできない。 従つて、この点に関する原告の主張は採用しない。 6 以上のとおりであるから、本件処分は適法であつて、本位的請求第一項は失当である。 二本位的請求第二項について 1 本案前の答弁について(一) 木位的請求第一項の勝訴判決が確定すれば、該判決は関係行政庁を拘束し、関係行政庁が右判決に従つて行動することを義務付けられることは、被告東京都の主張するとおりである。しかし、右判決の拘束力は、本件処分を違法とする事由に関係のある判断について生じるだけであつて、本件処分の前提をなつている本件採用内定の法的性質に関する判断についてまで及ぶものではないと解するのが相当である。ところで、被告東京都が、採用内定は準備的行為にすぎず、 断について生じるだけであつて、本件処分の前提をなつている本件採用内定の法的性質に関する判断についてまで及ぶものではないと解するのが相当である。ところで、被告東京都が、採用内定は準備的行為にすぎず、任命行為がない以上、原告が同被告の職員としての地位を取得することはない旨主張していることは、当事者間に争がないから、原告は、本位的請求第一項のほかに同第二項の請求をする法律上の利益を有するものというべきである。 (二) 本件処分が抗告訴訟の対象たり得る処分であることは前記のとおりであるが、原告は、本位的請求第二項を同第一項の関連請求として、行政事件訴訟法一九条により併合提起し、両者について同時に判断を受けることを求めており、本位的請求第一項の判決以前に同第二項の判決を求めているのではないから、同第二項の請求が本件処分の公定力に抵触するとはいえない。 (三) 原告は、第一次的には、本件採用内定にもとづき、被告東京都の建設局職員たる地位を取得したとして、その地位の確認を求めているのであつて、あらたに採用発令という行政処分が必要であることを前提としているのではないから、本位的請求第二項は裁判所が行政庁に代つてその権限を行使する結果になるという非難はあたらない。 以上のとおり、被告東京都の本案前の抗弁は、いずれも理由かない。 2 本案についてしかし、本件処分が適法であり、したがつて本件採用内定がその効力を失つたことは、前記のとおりであるから、原告東京都の職員たる地位を取得するに由なく、本位的請求第二項も理由がない。 三予備的請求について予備的請求は、原告の被告東京都知事に対する本位的請求第一項が認容され、しかも被告東京都に対する本位的請求第二項が認容されない場合の請求であるところ、前述したとおり、すでに本位的請求第一項は理由がないのであるから、予備的 告東京都知事に対する本位的請求第一項が認容され、しかも被告東京都に対する本位的請求第二項が認容されない場合の請求であるところ、前述したとおり、すでに本位的請求第一項は理由がないのであるから、予備的請求についての判断を要しない。 四以上のとおり、原告の・被告両名に対する各本位的請求は、いずれも理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。 (裁判官大西勝也林豊中田昭孝)

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