平成28(行ウ)241 個人情報一部非開示決定処分取消請求事件

裁判年月日・裁判所
平成29年5月19日 東京地方裁判所 情報公開
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判決文本文51,154 文字)

平成29年5月19日判決言渡平成28年(行ウ)第241号個人情報一部非開示決定処分取消請求事件 主文 1 処分行政庁が原告に対して平成27年4月1日付け○第○号をもってした保有個人情報一部開示決定のうち,原告に係る患者診療記録中「現病歴(本人弁を除く)」を開示しない部分を取り消す。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを2分し,それぞれを原告と被告の各負担とする。 事実及び理由 第1 請求処分行政庁が原告に対して平成27年4月1日付け○第○号をもってした保有個人情報一部開示決定のうち保有個人情報を開示しない部分を全部取り消す。 第2 事案の概要本件は,原告が,東京都知事の決定に基づいて緊急措置入院をしていたZ1病院(以下「本件病院」という。)における診療記録につき,東京都個人情報の保護に関する条例に基づき,実施機関である東京都知事に対し,開示を請求したところ,東京都知事(処分行政庁)が,原告に対し,患者診療記録中,医師名,看護師名,栄養士名及び委託職員名並びに現病歴(本人弁を除く)を開示しない旨の保有個人情報一部開示決定処分をしたため,原告が,東京都知事の所属する被告に対し,上記処分のうち保有個人情報の一部を不開示とした部分は違法であると主張して,その取消しを求める事案である。 1 関係法令の定め(1) 東京都個人情報の保護に関する条例 東京都個人情報の保護に関する条例(平成27年東京都条例第140号による改正前のもの。以下「本件条例」という。)は別紙1のとおり定める(乙1)。 (2) 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下「精神保健福祉法」という。)は別紙2のとおり定める(以下, う。)は別紙1のとおり定める(乙1)。 (2) 精神保健及び精神障害者福祉に関する法律精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(以下「精神保健福祉法」という。)は別紙2のとおり定める(以下,同法27条1項又は2項の規定による診察を「措置診察」と,同法29条1項の規定による入院措置を「措置入院」と,同法29条の2第1項の規定による診察を「緊急措置診察」と,同項の規定による入院措置を「緊急措置入院」という。)。 (3) 障害者基本法障害者基本法は別紙3のとおり定める。 (4) 障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(以下「障害者差別解消法」という。)は別紙4のとおり定める。 なお,東京都知事は障害者差別解消法上の「行政機関等」に該当するが,本件病院は,地方公営企業法第3章の規定である同法17条ないし35条の適用を受ける地方公共団体の経営する企業(同法2条2項)として,障害者差別解消法上の「事業者」に該当する(同法2条3号,7号)。 2 前提事実(文中記載の証拠等及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)(1) 本件病院は,精神保健福祉法19条の7第1項本文により被告の設置した都道府県立精神科病院である(乙2)。 (2) 警察官は,平成26年4月29日,精神保健福祉法23条に基づき,原告について東京都知事に対する通報を行い(以下「本件23条 通報」という。),東京都知事は,同日,同法29条の2第1項に基づき,本件病院に原告を緊急措置入院させた(甲4,17。以下,その入院期間を通じて「本件緊急措置入院」という。)。 (3) 東京都知事は,翌平成26年4月30日,精神保健福祉法29条1項に基づき,同法19条の8に規定する指定病院であるZ2病院に原告を措 ,その入院期間を通じて「本件緊急措置入院」という。)。 (3) 東京都知事は,翌平成26年4月30日,精神保健福祉法29条1項に基づき,同法19条の8に規定する指定病院であるZ2病院に原告を措置入院させた(甲4,17。以下,同病院への入院の措置を,その入院期間を通じて「後行措置入院」という。)。 (4) 平成26年6月23日,原告に対する後行措置入院は解除され,原告は,同日,Z2病院を退院した(甲17)。 (5) 原告は,平成26年9月10日,本件条例13条1項に基づき,同条例上の実施機関である東京都知事に対し,「本件病院における原告に関わる全診療科分の,外来・入院の両方。平成26年4月29日から,退院日までの診療録および画像データ(退院するまでの記録)」の開示を請求した(甲1,乙3。以下「本件開示請求」という。)。 (6) 東京都知事は,本件開示請求について,請求の対象とされている保有個人情報を「本件病院における原告に係るカルテ(平成26年4月29日から退院日までの診療記録および画像データ)」と特定した上,原告に対し,平成27年4月1日付け○第○号をもって,これに該当する患者診療記録(以下「本件診療記録」という。)中,「医師名看護師名栄養士名委託職員名」(以下「本件不開示情報1」という。)及び「現病歴(本人弁を除く)」(以下「本件不開示情報2」といい,本件不開示情報1と合わせて「本件各不開示情報」という。)を開示しない旨の保有個人情報一部開示決定をした(以下「本件処分」という。)。 本件処分の通知書において,本件不開示情報1の「非開示理由及び根拠規定」としては,①「開示請求者以外の個人に関する情報であり, 開示することにより,特定の個人を識別することができる情報であるため,本件条例16条2号に該当すること 1の「非開示理由及び根拠規定」としては,①「開示請求者以外の個人に関する情報であり, 開示することにより,特定の個人を識別することができる情報であるため,本件条例16条2号に該当することから,非開示とする。」旨及び②「精神障害者の医療及び保護を目的とした措置入院制度の性質上,開示することにより,診断及び治療に関する業務の適切な遂行に支障を及ぼすおそれがあるため,本件条例16条6号に該当することから,非開示とする。」旨が,本件不開示情報2の「非開示理由及び根拠規定」としては,上記②の旨が,それぞれ掲げられていた。 ((6)全体につき,甲2,3,乙5)(7) 原告は,本件処分があったことを平成27年5月14日に知り,これについて,同月20日,東京都知事に対し,本件診療記録の全部の開示決定を求める異議申立てをしたが,東京都知事は,東京都個人情報保護審査会に諮問した上,同年12月3日付けで,同異議申立てを棄却する旨の決定をし,その頃これを原告に通知した(甲6,20,乙6ないし9)。 (8) 原告は,平成28年6月3日,本件処分のうち本件各不開示情報を開示しない部分全部の取消しを求める本件訴えを提起した(顕著な事実)。 3 争点及び当事者の主張本件の争点は,①本件不開示情報1が本件条例16条2号の非開示情報に該当するか否か,②本件不開示情報1が同条6号の非開示情報に該当するか否か,及び③本件不開示情報2が同号の非開示情報に該当するか否かであり,当事者の主張は以下のとおりである。 (被告の主張)(1) 本件不開示情報1についてア本件不開示情報1の内容精神科救急医療においては,精神保健福祉法に基づき,患者本人 の意思によらない入院措置や一定の行動制限を行うことがあるところ,本件病院においても,患者の権 ア本件不開示情報1の内容精神科救急医療においては,精神保健福祉法に基づき,患者本人 の意思によらない入院措置や一定の行動制限を行うことがあるところ,本件病院においても,患者の権利利益を保護するため,同法19条の4に定められた業務については,一定の精神科実務経験を有し,法律等に関する研修を修了した医師のうちから厚生労働大臣が指定した精神保健指定医(以下「指定医」という。)が担当しているほか,日常的な患者の診療等に当たっては,指定医のみならず,専門的な知識や経験を有する他の医師や看護師,栄養士及び委託職員もこれに関与し,適切で安全な医療の提供に努めている。 本件不開示情報1は,本件病院の指定医による緊急措置診察を受けた結果,本件緊急措置入院した原告への対応等を担当し,当該対応等の内容について本件診療記録に記録した本件病院の職員(指定医をはじめとする医師や看護師,栄養士及び委託職員)の氏名であり,このうち委託職員は,本件病院において診療報酬を算定するための業務を担当する医療事務職員で,原告に係る診療報酬算定に必要な情報を取りまとめた者である。 イ本件不開示情報1の本件条例16条2号該当性(ア) 本件条例16条2号本文該当性a 本件不開示情報1は,開示請求者以外の個人に関する情報であって,開示請求者以外の特定の個人を識別することができるものである。 b 原告は,本件不開示情報1の対象となっている本件病院の職員らが「事業を営む個人」(本件条例16条2号本文括弧書き)に該当するものであるとして,本件不開示情報1が同号本文に該当しない旨主張する。 しかし,本件条例16条2号本文が「事業を営む個人の当該事業に関する情報」を非開示情報から除外しているのは,当該 情報が同条3号本文に規定する事業を営む 号本文に該当しない旨主張する。 しかし,本件条例16条2号本文が「事業を営む個人の当該事業に関する情報」を非開示情報から除外しているのは,当該 情報が同条3号本文に規定する事業を営む個人の当該事業に関する情報と同義であることから,同号の適否によって開示又は不開示の判断をすることとしたものであり,上記各規定における「事業を営む個人」とは,いわゆる個人事業主を意味するものであるところ,本件病院の職員らはこれらに該当するものではなく,「事業を営む個人」に該当しない。 (イ) 本件条例16条2号ただし書イ非該当性a 本件病院では,措置入院患者への対応に当たり,患者本人と直接相対する指定医をはじめとする医師や看護師は,名札等を着用しないこととしており,また,栄養士及び委託職員は,もとより患者本人と直接相対することはなく,いずれの職員の氏名も,患者本人には知り得ないものである。 そして,指定医は,精神保健福祉法18条1項に基づき,厚生労働大臣により指定されている者であるが,厚生労働大臣が誰を指定したかについては,一般的には一切公表されていない。 また,東京都では,措置診察及び緊急措置診察につき,東京都知事が指定する個別の指定医に診察命令を行って診察させているところ,東京都知事がどの指定医に対して診察命令を行ったかについても,公表はしていない。 なお,本件病院においては,指定医をはじめとする精神神経科に所属する医師の氏名を来院者に向けて広報しているが,緊急措置入院患者への対応に当たって名札等を着用しておらず,自ら名乗ることもないことからして,複数名在職している医師のうち,平成26年4月29日の原告の緊急措置診察(以下「本件緊急措置診察」という。)及び本件緊急措置入院時の診療等を担当した特定の医師の氏名について,原告が いことからして,複数名在職している医師のうち,平成26年4月29日の原告の緊急措置診察(以下「本件緊急措置診察」という。)及び本件緊急措置入院時の診療等を担当した特定の医師の氏名について,原告が知ることができ, 又は知ることが予定されている情報ではない。 したがって,本件不開示情報1は,法令等の規定により又は慣行として開示請求者が知ることができ,又は知ることが予定されている情報ではないため,本件条例16条2号の定める非開示情報に該当する。 b これに対し,原告は,上記のような本件病院における名札等の取扱いにより,本件条例16条2号の適用の下,原告に相対した医師及び看護師の氏名が非開示情報となることにつき,障害者基本法4条1項及び障害者差別解消法7条1項の禁ずる障害を理由とする差別その他の権利利益を侵害する行為に該当し,違法であると指摘するようである。 しかし,本件病院における名札等の取扱いは,飽くまでも,精神疾患に伴う症状としての自傷他害行為を行うおそれに着目した対応であって,障害を理由とするものではない(緊急措置入院及び措置入院患者に限らず,患者の経過,現病歴,診察時等の言動等を総合的に勘案して,自傷他害行為を行うおそれのある患者に対しては,同様の対応をとっている。)上,当該患者の心身の安全を確保すべく,自傷他害行為を防止し,危険を除去するためになすものであって,もとより上記各規定の規定する差別ないし権利利益を侵害する行為に該当するものでもない。 また,上記の名札等の取扱いを前提として,東京都知事が,本件不開示情報1につき,本件条例16条2号ただし書イに該当しないものと判断したことについても,同号の規定に則してその要件該当性を判断したものにすぎず,障害を理由として他の者と異なる取扱いをしたものではなく 情報1につき,本件条例16条2号ただし書イに該当しないものと判断したことについても,同号の規定に則してその要件該当性を判断したものにすぎず,障害を理由として他の者と異なる取扱いをしたものではなく,障害者基本法4条1 項等に反するものではない。 なお,原告は,本件病院に所属する指定医が指定取消しの行政処分を受けたことを指摘し,本件緊急措置診察を担当した指定医の氏名を知る必要がある旨主張するが,指定医の指定の取消処分は,本件処分後の平成28年11月9日を効力発生日とするものであって,本件緊急措置診察をした指定医が上記取消処分の対象になっているか否かにかかわらず,本件処分とは無関係である。 ウ本件不開示情報1の本件条例16条6号該当性(ア)a 精神保健福祉法に基づく入院措置は,患者本人が精神障害者であり,かつ,放置すれば自傷他害のおそれがあると認められる場合には,患者本人の意思にかかわらず強制的に入院させる制度である。 b この点,本件病院は,Z3地域において,精神保健福祉法29条の2第1項に基づく緊急措置診察及び緊急措置入院を要する者に対する精神科緊急医療をはじめとする精神科救急医療を提供する医療機関として,東京都による精神科緊急医療機関の指定を受け,同地域における精神科緊急医療の基幹的役割を担っている。 そのため,本件病院での精神科緊急医療においては,患者本人の意思にかかわらず強制的に入院させることの要否を実質的に判断することになる緊急措置診察を担当した指定医が,その日の当直体制等の状況により,そのまま緊急措置入院時の診療等に当たり得ることとなる上,本来的には,命令者たる知事に対して報告することのみをもって足りる緊急措置診察における診察内容(緊急措置診察の法的性質は,もとより知事の命 による鑑 院時の診療等に当たり得ることとなる上,本来的には,命令者たる知事に対して報告することのみをもって足りる緊急措置診察における診察内容(緊急措置診察の法的性質は,もとより知事の命 による鑑定であって,通常医師が患者の求めに応じて行う医師法上の診療ではないため,診断内容を患者又はその家族に知らせる義務を負うものではなく,医師法24条1項の診療録記載義務も生じない。精神保健福祉法19条の4の2の対象たる同法19条の4第1項も,同法29条の2第1項を除外している。)が,本件病院の医師によるものとして,本件病院の診療録にも記載されることになる点において,他の精神科病院における取扱いとは大きく異なっている。 c また,緊急措置入院についても,措置診察までの臨時的な入院としての側面が強く,継続的な治療に向けて,治療方針や治療方法等の詳細な説明をすることは想定されていない上,本件病院においては,上記制度の下,救急病床の確保を図るため,急性期を過ぎた患者については,速やかに(通常,精神保健福祉法29条の2第3項の緊急措置入院期間である72時間が経過するまでには),他の病院に転院させることが予定されているため,本件病院での精神科緊急医療においては,精神科診療における説明の前提となるべき患者と医療スタッフの知識的共通基盤を確認するための治療関係の構築が極めて困難であり,その患者のほとんどについて,十分な説明に至らない状況のまま退院(多くは措置入院決定を受けての転院)させることを余儀なくされる。 d(a) それにもかかわらず,本件不開示情報1のような緊急措置診察及び緊急措置入院時の診療等に当たった本件病院の医療者等の職員の氏名を患者に開示することになると,緊急措置入院時に存在していたような自傷他害のおそれが強い症状が再び生じた場合には うな緊急措置診察及び緊急措置入院時の診療等に当たった本件病院の医療者等の職員の氏名を患者に開示することになると,緊急措置入院時に存在していたような自傷他害のおそれが強い症状が再び生じた場合には,氏名が開示された当該職員等が 改めて患者の被害関係妄想等の対象となり得るものと考えられ,その妄想等により,措置入院に対する患者本人の認識との相違から,書類の記載内容の真偽や詳細等を確かめるため,本件病院への入院時と同様の行動に至り,当該職員の職務に支障を及ぼす行為が行われることが想定され,その結果,本件病院における診断及び治療に関する業務遂行に支障を及ぼすおそれがある。 (b) 原告の個別的な事情に着目するとしても,原告は,対人ストレスを背景に被害的となり気分も昂揚し,平成26年4月,実家にバリケードを築き立てこもったことがあるほか,本件処分に近接した時期にも,妄想症状や強迫体験を有していることが確認できるところ,本件緊急措置診察及び本件緊急措置入院時の診療等に当たった本件病院の職員らの氏名を原告に開示することになると,原告の被害関係妄想等により自傷他害のおそれが強い症状が再び生じた場合,当該職員らが改めて原告の被害関係妄想等の対象となり得ることはやはり否定し難いところであって,この点からみても,本件病院の業務遂行に支障を来すおそれがあるものと認めることができる。 e また,医療者等の職員の氏名を開示することにより,上記dのような職員の職務に支障を及ぼす行為が行われることが想定されることからして,職員らが不安を感じ,精神科緊急医療に従事することをためらうことも十分想定され得る事態であるところ,そのようなことがあれば,本件病院での精神科緊急医療に係る業務に支障が生じるおそれがあるばかりか,精神保健福祉医療行政にも影響 医療に従事することをためらうことも十分想定され得る事態であるところ,そのようなことがあれば,本件病院での精神科緊急医療に係る業務に支障が生じるおそれがあるばかりか,精神保健福祉医療行政にも影響を及ぼすことになりかねない。 f したがって,本件不開示情報1は,本件条例16条6号の定める非開示情報に該当する。 (イ) これに対し,原告は,本件処分において差別的な取扱いを受けた旨主張する。 しかし,精神保健福祉法の規定に基づく診察や措置入院中の診療は,通常の医師と患者の診療契約関係とは異なり,都道府県知事の指定によるものであって,指定医や精神科病院が,通常の診療契約に基づく場合のように診療内容を被診察者やその家族に対して知らせるべき義務を負う立場にあるものでない。 (ウ) また,原告は,後行措置入院に係る決定を受けて転院したZ2病院における診療記録等の開示状況を指摘し,当該開示状況との比較において,本件不開示情報1が非開示情報に該当しない旨論難するようである。 しかし,精神保健福祉法29条の2第1項に基づく緊急措置診察をはじめとする精神科緊急医療を担う本件病院と他の病院とでは,取り扱う業務がもとより異なっており,これを担当する職員の氏名等を開示することによる業務遂行への影響も異なる上,Z2病院の職員らと原告との間には,措置入院決定処分が解除されるほど症状が消退するに至るまで,治療関係の構築がされていたものと推測され得るところであって,上記(ア)b及びcに指摘したような原告と本件病院の職員らとの関係と同視することは適切でなく,上記の原告の指摘は当を得ない。 エ小括本件処分において本件不開示情報1を非開示とした点につき,何ら違法な点はない。 (2) 本件不開示情報2について ア本件不開示 でなく,上記の原告の指摘は当を得ない。 エ小括本件処分において本件不開示情報1を非開示とした点につき,何ら違法な点はない。 (2) 本件不開示情報2について ア本件不開示情報2の内容本件不開示情報2は,本件病院の指定医による本件緊急措置診察を受けた結果,本件緊急措置入院した原告に係る本件診療記録に,医師により緊急措置入院時における「現病歴」として記録された原告のこれまでの病歴や原告が本件緊急措置診察を受けることになった経緯等について,家族及び原告の保護に当たった警察官から聴取した情報であり(原告本人から聴取した情報は含まれてはいないが,原告を保護した際の状況に関する記載については,家族及び警察官のそれぞれから聴取した情報が混在しており,これらを区別することはできない。),その内容は,本件緊急措置診察において,緊急措置入院決定として原告の意思に反する処分をせざるを得なくなった根拠に相当する情報であって,本件緊急措置診察に係る診断書における記載内容と概ね合致している。 イ本件不開示情報2の本件条例16条6号該当性(ア)a 患者診療記録を作成する医師は,家族等の患者本人以外の第三者から聴取した患者本人に関する情報については,その内容が患者本人に開示されないことを前提に当該記載を行っている。 b とりわけ,上記(1)ウ(ア)b及びcでも指摘したとおり,緊急措置診察が知事の命による鑑定としての性質を有すること,及び,緊急措置入院が措置診察までの臨時的な入院としての側面が強いことからして,患者又はその家族に対して診断内容を知らせ,あるいは治療方針や治療方法等の詳細な説明をすることはもとより想定されていないばかりか,本件病院における精神科緊急医療においては,患者と医療スタッフの知識的共通基盤を確認する て診断内容を知らせ,あるいは治療方針や治療方法等の詳細な説明をすることはもとより想定されていないばかりか,本件病院における精神科緊急医療においては,患者と医療スタッフの知識的共通基盤を確認するための治療関係の構築が極めて困難であり,その 患者のほとんどについて,十分な説明に至らない状況のまま退院させることを余儀なくされる。 他方,精神科領域における疾患の特性として,患者本人の病識と医師の診断が異なることはままある。 c(a) まして,患者本人の意思に反して入院措置が採られたような場合について,上記のような特性を考慮しないままに,本件不開示情報2のような緊急措置診察時の急性期における病状をはじめとする家族等の患者本人以外の第三者から聴取した患者本人に関する現病歴を患者本人に開示することになると,患者本人に対し,「この当時にこうした状態像等が存在し,これに基づき医師が診断を下したこと」を知らしめることになり,患者本人につき,緊急措置入院決定時に存在していたような自傷他害のおそれが強い症状が再び生じた場合に,開示された現病歴の内容や家族等の陳述者に対する被害関係妄想が強まる可能性があり,医師と家族等の第三者との信頼関係が損なわれ,正確な事実の把握が困難になる(患者の社会復帰を図るため,家族等の関係者との連絡調整に努めることは,精神保健福祉法38条に基づく精神科病院の義務でもある。)等,本件病院の業務遂行に支障を来すおそれがある。 (b) 原告の個別的な事情に着目するとしても,その症状は,上記(1)ウ(ア)d(b)のとおりである上,家族等周囲の人間との関係が良好でないことは原告自身も認めているところであって,「現病歴」として記載された緊急措置診察時の急性期における症状をはじめとする現病歴を原告に開示することにな である上,家族等周囲の人間との関係が良好でないことは原告自身も認めているところであって,「現病歴」として記載された緊急措置診察時の急性期における症状をはじめとする現病歴を原告に開示することになると,原告の被害関係妄想等により自傷他害のおそれ が強い症状が再び生じた場合,開示された現病歴の内容や家族等の陳述者に対する被害関係妄想等が強まる可能性があることはやはり否定し難いところであって,この点からみても,本件病院の業務遂行に支障を来すおそれがあるものと認めることができる。 d そのほか,家族等の患者本人以外の第三者から聴取した患者本人に関する情報を患者本人に開示することになると,医師が患者本人の感情や反応を考慮して記載内容を簡略化・消極化するなどの事態が想定され,その結果,診療記録の記載内容が形骸化し,本件病院の診断及び治療に関する業務の今後の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある。 e したがって,本件不開示情報2は,本件条例16条6号の定める非開示情報に該当する。 (イ) これに対し,原告は,措置入院に係る診断及び治療の適正さを確認するためには,措置入院に係る事実経過を確認する必要があり,診療記録を開示することを前提として運用がされるべきであるなどと主張し,本件不開示情報2が非開示情報に該当しない旨論難する。 しかし,精神保健福祉法は,患者本人の意思によらない入院や一定の行動制限等の措置をなすに当たり,特に専門的な知識経験を有する指定医により,厚生労働大臣の定める基準に従った判定をなさしめることによって,その診断や治療の適正さを担保することとしており,このほかに,措置入院に係る事実経過につき,患者本人に対して明らかにすべきことを求める規定を置いてはいない。 (ウ) また,原告は,原告本人及びその家族が本 治療の適正さを担保することとしており,このほかに,措置入院に係る事実経過につき,患者本人に対して明らかにすべきことを求める規定を置いてはいない。 (ウ) また,原告は,原告本人及びその家族が本件不開示情報2の 開示に同意をしていることを理由として,本件不開示情報2が開示されるべきである旨主張する。 しかし,上記(ア)の本件病院における業務遂行の適正化の要請は,原告及びその家族により処分可能な法益ではなく,これらの者の同意の有無により影響を受けるものではないことからすると,原告の主張は当を得ない。 この点をおくとしても,原告の家族によるとされる同意書は,本件処分後である平成28年5月29日付けで作成されており,当該家族による同意の存在は,本件処分時においては,処分行政庁には知る由もない事情であって,本件処分の適法性を揺るがし得るものではない。 (エ) さらに,原告は,本件処分において,本件診療記録のうち「生活歴」として第三者から聴取した内容については開示されており,第三者が原告について虚偽を含んだ実際の事実と異なる説明をしていることを原告が認識していることから,医師と家族等の第三者との信頼関係は既に損なわれており,要保護性がないかのように主張する。 しかし,「生活歴」として記載された情報は,原告の病気に関する情報ではなく,また,本人が自ら体験し,既に知っているはずの情報であるのに対して,「現病歴」として記載された情報は,緊急措置診察時の急性期における病状をはじめとする情報であり,緊急措置入院決定として,原告の意思に反する処分をせざるを得なくなった根拠に相当する情報であって,これらの情報を同視することはできない。 ウ小括本件処分において本件不開示情報2を非開示とした点につき,何 ら違 思に反する処分をせざるを得なくなった根拠に相当する情報であって,これらの情報を同視することはできない。 ウ小括本件処分において本件不開示情報2を非開示とした点につき,何 ら違法な点はない。 (3) 総括原告は,障害者の権利に関する条約(以下「障害者権利条約」という。)の規定はインフォームド・コンセントを求めている旨主張するが,同条約が,司法的救済を受け得るような具体的な権利として,原告の主張するインフォームド・コンセントを受ける権利を保障したものとはにわかに解し難い。 本件処分は適法である。 (原告の主張)(1) 本件不開示情報1についてア本件不開示情報1の本件条例16条2号非該当性(ア) 本件条例16条2号本文非該当性事業とは,特定の目的をもって反復的,継続的に営む個人の活動のことをいい,本件病院の医師,看護師,栄養士,委託職員は個人であり,同人らが職務を遂行することは事業の営みであるから,本件不開示情報1は本件条例16条2号本文括弧書きの定める「事業を営む個人の当該事業に関する情報」に該当する。 (イ) 本件条例16条2号ただし書イ該当性被告は,本件不開示情報1が法令等の規定により又は慣行として開示請求者が知ることができ,又は知ることが予定されている情報ではないため,本件条例16条2号の定める非開示情報に該当すると主張する。 しかし,障害者基本法2条2号及び障害者差別解消法2条2号は,障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物,制度,慣行,観念その他一切のものを社会的障壁と定義し,同法5条は,社会的障壁の除去を実 施することを国及び地方公共団体の責務と義務付けており,さらに,同法7条1項は,行政機関等は,その事務又は事 ,観念その他一切のものを社会的障壁と定義し,同法5条は,社会的障壁の除去を実 施することを国及び地方公共団体の責務と義務付けており,さらに,同法7条1項は,行政機関等は,その事務又は事業を行うに当たり,障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより,障害者の権利利益を侵害してはならないことを定めている。また,障害者基本法4条1項は,何人も,障害者に対して,障害を理由として,差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならないことを定め,同条2項は,社会的障壁の除去は,それを必要としている障害者が現に存し,かつ,その実施に伴う負担が過重でないときは,それを怠ることによって同条1項の規定に違反することとならないよう,その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならないと定めている。 そして,平成27年2月24日に政府が閣議決定した「障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針」によれば,障害者差別解消法は,障害者に対して,正当な理由なく,障害を理由として,財・サービスや各種機会の提供を拒否する又は提供に当たって場所・時間帯などを制限する,障害者でない者に対しては付さない条件を付けることなどにより,障害者の権利利益を侵害することを禁止している。 したがって,これまで慣行として開示していないことなどから,本件不開示情報1が非開示情報に該当する旨の被告の主張には違法性がある。 本件病院において指定医の資格を不正に取得した者が存在することが公表されている現状で,本件緊急措置入院を決定した医師の氏名を原告が自ら確認したいと考えるのは当然のことであり,その氏名が明かされないなら,原告は,原告を診断した指定 医の資格が適正なものであるかどうかを確かめる端緒すら得られない。障 師の氏名を原告が自ら確認したいと考えるのは当然のことであり,その氏名が明かされないなら,原告は,原告を診断した指定 医の資格が適正なものであるかどうかを確かめる端緒すら得られない。障害者基本法,障害者差別解消法,政府の基本方針,障害者権利条約によっても,原告は,本件不開示情報1の開示を受ける権利を有している。 イ本件不開示情報1の本件条例16条6号非該当性(ア) 被告は,本件不開示情報1を開示することにより,措置入院に対する患者本人の認識との相違から,患者本人が,これらの職員に対して,書類の記載内容の真偽や詳細等を確かめるため,職員の職務に支障を及ぼす行為が行われるような事態が想定されるなどと主張する。 しかし,本件診療記録に診断及び治療に必要な事項が記載されている限り,当該職員に真偽や詳細を確かめる必要はないし,もし確かめるとしても通常の方法による一般的な問合せであり,そのような問合せまで職員の職務に支障を及ぼすおそれであるとはされない。 本件措置入院のように,原告が精神神経科外来を初診して間もない頃から本件緊急措置入院に至るまで,原告の家族等が中心となって,事実関係をありのままに認識しようとせず,不都合を歪曲したり隠蔽したりし,全てを原告の症状としてお仕着せしようとするなど不当で不法な作為が患者の背後に存在している特異な事例において,原告と医療者や家族等の第三者との間で措置入院に対する認識が相違することはあり得るところ,患者本人が書類の記載内容の真偽や詳細を確かめたい場合に,所定の手続により確かめることができる権利はあり,それに応じることは職員の通常の職務である。 患者本人が書類の記載内容の真偽や詳細を確かめようとする ことを,直ちに職員の職務に支障を来す行為であるとする本件処分は できる権利はあり,それに応じることは職員の通常の職務である。 患者本人が書類の記載内容の真偽や詳細を確かめようとする ことを,直ちに職員の職務に支障を来す行為であるとする本件処分は違法である。 (イ) 原告は,本件病院への本件診療記録の開示に係る手続等について,本件開示請求をはじめ,本件訴訟においても,所定の法令等に則して適正にのみ行っている一方,物事が必ずしも平穏な態様で行われる保証がないのは,世間一般日常の諸般事が常に同様であり,「精神障害者」とそのほかという区別はできず,ただの差別である。一口に「精神障害者」といっても,個々人の実情は実に多種多様であり,疎通可能な見識があったり,行為能力がある場合もない場合もある。「精神障害者」については,家族等の第三者の実態も含めて,できる限りその都度個別に丁寧に判断されないと,患者の人権が不当に侵害され,病状からの回復がますます難しくなる。 (ウ) 後行措置入院について原告がZ2病院にした診療経過の要約書及び診療記録の謄写の請求に対しては,全ての情報が開示され,医師名などの病院職員氏名も当然記載されている。Z2病院が取り扱った業務は,本件緊急措置入院に連続する後行措置入院であり,当該患者である原告の立場から見て,本件病院とZ2病院の立場に大差はないから,両病院の業務遂行への影響は異ならない。 ウ小括本件不開示情報1は開示されるべきである。 (2) 本件不開示情報2についてア本件不開示情報2の本件条例16条6号非該当性(ア)a 被告は,本件不開示情報2を開示することにより,医師と家族等との第三者との信頼関係が損なわれ,正確な事実の把握 が困難になる可能性が想定されるなどと主張する。 しかし,措置入院は身体の自由が簡易に奪われるため,安易 ることにより,医師と家族等との第三者との信頼関係が損なわれ,正確な事実の把握 が困難になる可能性が想定されるなどと主張する。 しかし,措置入院は身体の自由が簡易に奪われるため,安易な運用や恣意的な運用を避ける必要があり,診療記録を開示することを前提として運用がされるべきである。医師が責任を持って公正で慎重に聴取したり観察したりし,かつ,適正な診療と決定を行って正当に説明責任を果たせるのであれば,診療情報を開示することで適正に診断及び治療ができなくなるおそれはない。 また,家族等の第三者から聴取した内容は,信頼できるものとは限らず,恣意的で作為的な説明をしても,それが一方的に信頼されるのであれば,緊急措置入院決定を左右できるところ,かかる事実関係を原告から隠蔽できてしまうならば,原告は,決定が慎重かつ適正であったか,確かめられない。被告が主張するとおり,第三者からの情報を基礎として診断しているのであればこそ,なおのこと,当該情報が開示されないと,恣意的な第三者が提供した,虚偽など事実を歪めた恣意的な情報が診療及び治療の基礎とされてしまうなど,あってはならない不当な事態を生じさせる。 当該情報を開示しないことで,第三者から正確な事実の把握ができる旨の被告の主張には理由がない。 b 被告は,本件不開示情報2を開示することにより,医師が患者本人の感情や反応を考慮して記載内容を簡略化・消極化するなどの事態が想定されるなどと主張し,措置入院制度において,患者本人の感情や反応を考慮せずに診断や決定を行っていることを認めている。 しかし,医師が患者を診断するに当たっては,措置入院にお いても,患者本人の感情や反応は十分に考慮されながら,患者本人の状況をできる限り正確に把握して,適切に診断されなくてはなら 。 しかし,医師が患者を診断するに当たっては,措置入院にお いても,患者本人の感情や反応は十分に考慮されながら,患者本人の状況をできる限り正確に把握して,適切に診断されなくてはならないのは当然である。記載内容が開示されないのであれば,制度を知った上で悪用せんとする家族やその指南役等の恣意的な第三者による情報を基礎とする簡易な印象診断によって,不当な措置入院の決定がなされる。 本件病院の診察は,患者本人と第三者の実態等の正確な状況を把握することに極めて消極的であり,本件緊急措置入院の決定及び後行措置入院の決定に係る診断は極めて形骸化し,その前後に他の病院でなされた診断と全く異なっている。かような診断の形骸化は,措置入院に係る診療記録において,診療情報開示の原則に反して医師の氏名や第三者からの情報を開示しないことにより生じ得る。本件処分は,緊急措置入院決定及び措置入院決定に係る診断が形骸化することを担保するものでしかない。 c 本件不開示情報2が開示されることで,医師と家族等の第三者との信頼関係が損なわれる等のおそれはない。 (イ) そもそも診療記録等の個別医療情報は,当該患者の同意があればプライバシー権に基づいて開示されるべき情報であり,それはたとえ措置入院による医療であっても基本的には変わるところはない。 診療情報は患者の求めに応じて原則として全開示されるものだから,措置入院に係る事実経過につき,患者本人に対して明らかにすべきことを求める規定を置いてはいないから開示しないとする被告の主張には理由がない。 (ウ) まして,当該第三者の同意があれば当該患者に開示されるべ き情報であるところ,原告の家族は,平成28年5月29日付けで本件不開示情報2の開示に同意している。 (エ) さらに,本件処分 ) まして,当該第三者の同意があれば当該患者に開示されるべ き情報であるところ,原告の家族は,平成28年5月29日付けで本件不開示情報2の開示に同意している。 (エ) さらに,本件処分により開示された本件診療記録の「生活歴」欄の記載により,第三者が原告について虚偽を含んだ実際の事実と異なる説明をしていることが原告に明らかにされていることにより,医師と家族等の第三者との信頼関係は既に損なわれている。 イ小括本件不開示情報2は開示されるべきである。 (3) 総括本件開示請求は,原告が,措置入院の決定の解除後に,自己情報の開示を請求したものであり,東京都知事において措置入院を解除することが必然と判断され決定されたのであるから,現況において,本件各不開示情報を非開示とすべき各種の「おそれ」が存在するとの推論は,そもそも東京都が認め得ないことである。原告は,知人から,元暴力団員とされる実在の者が関係して,何らかの不穏な犯罪行為が関係する非常に不穏な出来事が起こる可能性があるかのように告げられ,万が一に備えて自衛することが必要だと判断せざるを得ず,危険に対し,自分や家族を守る手段をとったことはあるが,了解不能であるとか必ずしも病的だとかはいえないし,自分や他者に対して攻撃・暴力の手段はとっていない。被告は,「精神障害者」が家族やその他の者から実際に被害を受けていても,「精神障害者」においては,原則として,実際の被害とは認めず,被害関係妄想であると断定してよいかのように主張しているものである。 障害者権利条約の規定は,人権を尊重した平等なインフォームド・コンセントを求めているところ,本件処分では,原告の有する当然の 人権である知る権利に基づいて請求した個人情報が軽微に扱われた上,予断と偏見に基づいた仮 権を尊重した平等なインフォームド・コンセントを求めているところ,本件処分では,原告の有する当然の 人権である知る権利に基づいて請求した個人情報が軽微に扱われた上,予断と偏見に基づいた仮定の推論に基づき,安易かつ差別的に開示を拒まれている。 本件処分のうち本件各不開示情報を開示しない部分を取り消し,本件診療記録の全部が開示されるべきである。 第3 当裁判所の判断 1 本件不開示情報1が本件条例16条2号の非開示情報に該当するか否か(争点①)(1) 本件不開示情報1の内容等前提事実(6)並びに証拠(甲4)及び弁論の全趣旨によれば,本件不開示情報1は,本件病院において,平成26年4月29日に行われた原告の緊急措置診察(本件緊急措置診察)及び同日から同月30日までに行われた原告の緊急措置入院(本件緊急措置入院)に関する業務に関与した医師,看護師,栄養士及び委託職員(診療報酬算定業務を担当する医療事務職員)の氏名であると推認することができ,各氏名は,本件診療記録中の複数の関係箇所に記載されているものと認められる。 (2) 本件条例16条2号本文該当性についてア本件不開示情報1は,上記のとおり,開示請求者である原告以外の特定の個人を識別することができる氏名そのものに係る情報であるから,本件条例16条2号本文括弧書きの「事業を営む個人の当該事業に関する情報」に該当しない限り,同号本文に該当する。 イ原告は,本件不開示情報1が上記括弧書きの「事業を営む個人の当該事業に関する情報」に該当する旨主張するので,検討する。 この点,本件条例16条は,2号において「個人に関する情報」から「事業を営む個人の当該事業に関する情報」を除外した上で, 3号において「法人等に関する情報又は開示請求者以外の事業を営む個 この点,本件条例16条は,2号において「個人に関する情報」から「事業を営む個人の当該事業に関する情報」を除外した上で, 3号において「法人等に関する情報又は開示請求者以外の事業を営む個人の当該事業に関する情報」について定めて,個人に関する情報と法人等に関する情報とをそれぞれ異なる類型の情報として規定している。これらの規定に照らせば,同条2号が「事業を営む個人の当該事業に関する情報」を個人に関する情報から除外したのは,法人等を代表する者が職務として行う行為等当該法人等の行為そのものと評価される行為に関する情報については,専ら法人等に関する情報として非開示事由を規定する趣旨に基づくものというべきであり,そうだとすれば,同号本文括弧書きにいう「事業を営む個人の当該事業に関する情報」とは,事業主である個人が職務として行う行為に関する情報を意味すると解するのが相当である。(最高裁判所平成10年(行ヒ)第54号同15年11月11日第三小法廷判決・民集57巻10号1387頁,最高裁判所平成11年(行ヒ)第145号同15年11月21日第二小法廷判決・集民211号659頁各参照)ウこれを本件についてみると,弁論の全趣旨によれば,本件不開示情報1として氏名を開示しないこととされた本件病院の医師,看護師,栄養士及び委託職員は,いずれも本件病院の事業主ではないと認められ,その氏名は「事業を営む個人の当該事業に関する情報」であるとはいえないから,本件不開示情報1は,本件条例16条2号本文括弧書きに該当しない。 原告は,これらの者が反復,継続的な活動を営む者として事業を営む個人に該当する旨主張するが,上記イに判示した本件条例の趣旨に適合しない独自の解釈であるといわざるを得ず,採用することができない。 エ本件不開示情報1は,本件条例 な活動を営む者として事業を営む個人に該当する旨主張するが,上記イに判示した本件条例の趣旨に適合しない独自の解釈であるといわざるを得ず,採用することができない。 エ本件不開示情報1は,本件条例16条2号の適用から除かれる 同号本文括弧書きの情報には該当せず,同号本文の個人に関する情報に該当するから,そのただし書に該当するか否かを判断すべきである。 (3) 本件条例16条2号ただし書イ該当性についてア被告は,本件不開示情報1は,法令等の規定により又は慣行として開示請求者が知ることができ,又は知ることが予定されている情報ではないから,本件条例16条2号ただし書イの情報には該当しない旨主張するので,検討する。 イ法令等の規定の有無について(ア) 精神保健福祉法27条ないし29条に定める措置診察及び措置入院は,同法23条所定の警察官による通報等があり,都道府県知事において指定医による診察の必要があると認める者等について,家族等現にその保護の任に当たっている者にあらかじめ通知した上で,職員が立ち会って,その指定する指定医をして診察をさせ(同法27条,28条),その結果,その者が精神障害者であり,かつ,医療及び保護のために入院させなければその精神障害のために自傷他害のおそれがあると2人以上の指定医が一致して認めるときに,その者を都道府県知事の権限により強制的に入院させる制度(同法29条)である。 また,同法29条の2に定める緊急措置診察及び緊急措置入院は,精神症状の発生は突発的な場合が多く,上記の措置診察及び措置入院の手続を完全に採り終えるためには若干の日時が必要とされることから,その間に急迫症状が起こった場合の応急の措置として設けられた制度であり,都道府県知事は,急速を要し,同法27条等の規定による手続を採 手続を完全に採り終えるためには若干の日時が必要とされることから,その間に急迫症状が起こった場合の応急の措置として設けられた制度であり,都道府県知事は,急速を要し,同法27条等の規定による手続を採ることができない場合において,その指定する指定医をして診察をさせ,その結果,その者 が精神障害者であり,かつ,直ちに入院させなければその精神障害のために自傷他害のおそれが著しいと認めるときに,72時間以内に限り,その者を強制的に入院させることを認めるものである。 (イ) 精神保健福祉法上,措置入院又は緊急措置入院が行われる場合,その対象となった精神障害者に対して,入院措置を採ることなどが書面で告知されることとされている(同法29条3項,29条の2第4項)が,措置診察又は緊急措置診察をした指定医の氏名が告知されることは予定されていない。 なお,措置入院のみならず緊急措置入院中においても,精神科病院の管理者は,入院中の者の医療又は保護に欠くことのできない限度において,その行動についての必要な制限を行うことができるとされている(同法36条1項)ところ,とりわけ指定医が必要と認めて12時間を超える患者の隔離及び身体的拘束を行う場合(同法36条3項,精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第36条第3項の規定に基づき厚生労働大臣が定める行動の制限(昭和63年厚生省告示第129号))は,当該患者に対してそれらの隔離等を行う理由を知らせるように努めることとされ(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第37条第1項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準(昭和63年厚生省告示第130号)第三の三(二),第四の三(一)),その告知書面のひな形には,指定医の氏名を記入する欄が存在する(「精神科病院に入院する時の告知等に係る書面及び入退院の届出 る基準(昭和63年厚生省告示第130号)第三の三(二),第四の三(一)),その告知書面のひな形には,指定医の氏名を記入する欄が存在する(「精神科病院に入院する時の告知等に係る書面及び入退院の届出等について」(平成12年3月30日障精第22号厚生省大臣官房障害保健福祉部精神保健福祉課長通知。以下「告知書面等通知」という。)1(5)及び(6),様式10及び11)。しかしながら,こ れらの告示等の文言に照らしても,当該患者に対して指定医等の氏名を告知することが義務とされているものとまでは解されない。 (ウ) また,精神保健福祉法27条ないし29条の2所定の場合において,指定医は,都道府県知事の委嘱を受けて,患者を診察するという地位にあるものとされていること,同法29条1項及び29条の2第1項の規定による入院を必要とするかどうかの判定については,指定医が公務員として行うものとされ(同法19条の4第2項),診療録に記載しなければならない職務とはされていないこと(同法19条の4の2)からすると,指定医による措置診察ないし緊急措置診察は,通常医師が行う診療行為とは異なる性質を有するものとして性格付けられるべきものと解される。 したがって,措置入院又は緊急措置入院の対象者と病院との間で,何らかの診療契約が成立していると考えることも困難であり,患者が診療契約上の権利として担当医師等の氏名を知ることができるという地位にあるということもできない。 (エ) 以上のとおりであるから,本件不開示情報1は,法令等の規定により開示請求者が知ることができ,又は知ることが予定されている情報には当たらないというべきである。 ウ慣行の有無について(ア) 一般に,病院に所属する医師が診察や治療等の診療行為を行ったのであれば,患者が当該診療行為 でき,又は知ることが予定されている情報には当たらないというべきである。 ウ慣行の有無について(ア) 一般に,病院に所属する医師が診察や治療等の診療行為を行ったのであれば,患者が当該診療行為に関与した医師名の開示を求めた場合に,それを知ることができる慣行が存在することは公知の事実というべきであり,このことは,病院が医療事業者として管理する診療記録(医療法21条1項9号,同法施行規則20 条10号参照)における医師名の記載についても同様であると解される(厚生労働省策定の「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」が,患者本人から個人情報の保護に関する法律25条1項に基づく保有個人データの開示の求めがあった場合について,「診療録の情報の中には,患者の保有個人データであって,当該診療録を作成した医師の保有個人データでもあるという二面性を持つ部分が含まれるものの,そもそも診療録全体が患者の保有個人データであることから,患者本人から開示の求めがある場合に,その二面性があることを理由に全部又は一部を開示しないことはできない。」としていることも参照。)。 (イ) しかしながら,上記イ(ウ)のとおり,指定医による緊急措置診察は都道府県知事からの委嘱により行われるものであって,通常の診療行為とは,その基本的な性質を異にしているところ,都道府県知事が緊急措置診察等を行うことを委嘱した場合に,その判定を行った指定医等の氏名の公表を行うという慣行があることを認めるに足りる証拠はない。 そして,東京都においては,精神科夜間休日救急診療実施要綱を定め,都内を4ブロックに分けて,各ブロックに1つずつ精神科緊急医療機関となる病院を置き,緊急措置診察及び緊急措置入院を要する者に対する精神科緊急医療をはじめとす ,精神科夜間休日救急診療実施要綱を定め,都内を4ブロックに分けて,各ブロックに1つずつ精神科緊急医療機関となる病院を置き,緊急措置診察及び緊急措置入院を要する者に対する精神科緊急医療をはじめとする精神科救急医療を提供する体制が採られ,本件病院は,Z3ブロックの精神科緊急医療機関として,同地域における精神科緊急医療の基幹的役割を担うとともに,救急病床の確保を図るため,急性期を過ぎた患者については,速やかに他の病院(後方医療機関)に転院させることを予定しているものと認められる(乙11)。 このような体制の下,本件病院における精神科緊急医療においては,緊急措置入院による入院形態が多く,患者は錯乱・混乱・激しい精神運動興奮・緊張・拒否的状態や不安状態にあることが少なくなく,精神科診療における説明の前提となるべき患者と医療スタッフとの間の治療関係の構築が困難で,ほとんどの患者は,十分な説明に至らないままに退院(多くは措置入院決定を受けての転院)を迎える現状にあることから,本件病院においては,精神神経科に所属する医師の氏名を一般来院者に向けては広報しているが,緊急措置診察時及び緊急措置入院中は,医師等は,名札等を着用しておらず,自ら名乗ることもないという取扱いをしている(乙10,弁論の全趣旨)。 (ウ) 以上のとおり,緊急措置診察が都道府県知事からの委嘱により行われるものであって,通常の診療行為とはその基本的な性質を異にするものであることや,本件病院が担っている精神科緊急医療は,原則として,急性期の患者を短期間に限定して取り扱うものであり,所属の医師と患者との間における通常の診療関係の構築を行うことが困難であるような条件の下で行われていることを勘案すると,本件不開示情報1のうち医師名が,本件病院が医療事業者として管理す ものであり,所属の医師と患者との間における通常の診療関係の構築を行うことが困難であるような条件の下で行われていることを勘案すると,本件不開示情報1のうち医師名が,本件病院が医療事業者として管理する診療記録上に記載されているからといって,通常の診療関係におけるものと同様に,それを患者が知ることができるという慣行があると認めることは困難というべきである。 この点,証拠(甲17)によれば,原告は,本件緊急措置入院の終了後,Z2病院に措置入院したところ(後行措置入院),後行措置入院に係る診療記録については,主治医の氏名も含め,同病院から開示を受けることができたことが認められる。しかしな がら,上記(イ)で判示したとおり,本件病院が精神科緊急医療機関として機能しているのに対し,Z2病院は後方医療機関として機能しており,所属の医師と患者との間における通常の診療関係の構築を行うことができる条件下にあることに照らすと,この点は,医師名の開示の慣行についての上記の判断を左右するものとまではいえないと解するのが相当である。 (エ) なお,本件不開示情報1のうち,看護師名,栄養士名及び委託職員名については,一般の患者が開示を求めた場合においても,これを知ることができるとの慣行が存在することが公知である等とまではいえないと解され,他に,慣行としてこれを知ることができ,又は知ることが予定されていると認めるに足りる証拠等はない。 エ原告の主張について原告は,本件不開示情報1につき,これまで慣行として開示していないことを理由として不開示とすることは,障害者基本法等が障害を理由とする差別等を禁じていることに反し,違法である旨主張する。 しかしながら,本件病院は,患者が精神障害を有するという理由で,すべからく医師名を開示しないとい ることは,障害者基本法等が障害を理由とする差別等を禁じていることに反し,違法である旨主張する。 しかしながら,本件病院は,患者が精神障害を有するという理由で,すべからく医師名を開示しないという取扱いをしていることを認めるに足りる証拠はなく,開示しないという慣行的な取扱いをしている範囲は,緊急措置診察を行う指定医や緊急措置入院中の処置に関与する医師等の氏名に限られているものと解される(弁論の全趣旨)。そして,本件病院が上記のような慣行的な取扱いを行っているのは,①本件病院において取り扱う緊急措置診察の対象者の多くは,警察官通報によるもの(精神保健福祉法23条)であり,警察官が異常な挙動その他周囲の事情から判断して精神障害のため 自傷他害のおそれがあると認めた者であって,緊急措置診察時には対象者が興奮・混乱状態にあることを想定して対応せざるを得ないこと(乙10)や,②東京都においては,本件病院は精神科緊急医療を担当し,急性期を過ぎた者に対する医療は後方医療機関に転送して行う体制となっているため,本件病院において,医師と患者との間における通常の診療関係の構築を行うことが困難であること(上記ウ(イ))などの事情に基づくものであることがうかがわれる。 以上の諸点を勘案すれば,本件病院において,緊急措置診察及び緊急措置入院に関与する医師の名前を当該精神障害者に告げないという慣行的な取扱いをすることは,必ずしも障害者基本法等が禁止する障害を理由とする差別等に該当するとまではいえないと解される。 したがって,原告の上記主張は採用することができない。 (4) 小括以上によれば,本件不開示情報1は,本件条例16条2号の非開示情報に該当するというべきである。したがって,その余の点(争点②)について判断するまでもなく,本件 ることができない。 (4) 小括以上によれば,本件不開示情報1は,本件条例16条2号の非開示情報に該当するというべきである。したがって,その余の点(争点②)について判断するまでもなく,本件処分のうち,本件不開示情報1を不開示とした部分は適法である。 2 本件不開示情報2が本件条例16条6号の非開示情報に該当するか否か(争点③)(1) 本件不開示情報2の内容等前提事実(6)並びに証拠(甲4)及び弁論の全趣旨によれば,本件不開示情報2は,本件病院の指定医が本件緊急措置診察に先立って原告の両親及び原告の保護に当たった警察官から聴取した,原告のこれまでの病歴や生活歴,原告が同診察を受けることになった経緯等に関する情報であると推認することができ,本件診療記録中の「現 病歴」欄の記載の大部分を成すものと認められる。 なお,「現病歴」欄のうち,その冒頭に「<家族からの聴取が主であり,情報が定かでない部分が多い。本人は会話がまとまらず,聴取することはできない>」と記載された部分と,「現在はZ4病院に通院しているとのことであるが,向精神薬の投与は受けていないとの本人の弁。」と記載された部分は,開示されている(甲4)。 (2) 判断の枠組みア本件条例は,実施機関が保有する自己を本人とする保有個人情報の開示の請求(12条)について,都政の適正な運営を図りつつ,個人の権利利益を保護するため(1条参照),非開示情報が含まれている場合を除き,開示請求者に対し,当該保有個人情報を開示しなければならないものとして(16条),個人の権利利益を保護することを原則としながら,同条各号において,個人の権利利益を犠牲にしても都政の適正な運営に支障を及ぼすと考えられる非開示情報を,相当程度具体的な要件の下に類型的に限定列挙していること 利益を保護することを原則としながら,同条各号において,個人の権利利益を犠牲にしても都政の適正な運営に支障を及ぼすと考えられる非開示情報を,相当程度具体的な要件の下に類型的に限定列挙していることに鑑みれば,同条6号に規定された「都の機関又は国,独立行政法人等,他の地方公共団体若しくは地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報」が,「開示することにより,」同号イないしト「に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上,当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある」非開示情報に該当するというためには,その支障は,名目的なものでは足りず,実質的なものであることを要し,かつ,そのおそれも,法的保護に値する蓋然性を有する程度に具体的なものである必要があるというべきである。 イ被告は,本件不開示情報2は,原告の家族及び原告の保護に当たった警察官から聴取した情報であり,それらを患者本人に開示する ことにより,①本件病院の医師と家族等の第三者との信頼関係が損なわれ,正確な事実の把握が困難になる可能性があるほか,②医師が患者本人の感情や反応を考慮して記載内容を簡略化・消極化するなどの事態が想定され,その結果,診療記録の記載内容が形骸化し,診断及び治療に関する業務の今後の適正な遂行に支障を来すおそれがあるから,本件条例16条6号柱書きに定める非開示情報に該当する旨主張する。 このように,被告は,同条6号柱書きに定める「その他当該事務又は事業の性質上,当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」の具体的な内容として,第三者が提供した情報を開示することにより当該第三者との信頼関係が損なわれる点をも主張しているところ,同条7号本文は,「第三者が,実施機関の要請を受けて,開示しないとの条件で任意に提供した情報であって, が提供した情報を開示することにより当該第三者との信頼関係が損なわれる点をも主張しているところ,同条7号本文は,「第三者が,実施機関の要請を受けて,開示しないとの条件で任意に提供した情報であって,第三者における通例として開示しないこととされているものその他の当該条件を付することが当該情報の性質,当時の状況等に照らして合理的であると認められるもの」や,「その他当該情報が開示されないことに対する当該第三者の信頼が保護に値するものであり,これを開示することにより,その信頼を不当に損なうことになると認められるもの」につき非開示情報としている(いわゆる任意提供情報)。 そして,この同条7号本文の定める非開示事由は,同条6号イないしトに掲げる事由と並んで「その他当該事務又は事業の性質上,当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれ」の一部を構成する場合もあり得ること(信頼関係の毀損が事務事業運営上の支障をもたらす場合もあり得ること)に照らすと,同条7号本文の上記の要件は,本件において被告が主張するような信頼関係の毀損の有無を同条6号柱書きの下で評価判断すべき場合においても,参照す べきものと解される。 (3) 検討ア本件緊急措置診察に至る経緯及びその後の経緯等文中記載の証拠等によれば,以下の各事実が認められる。 (ア) 原告は,思春期から父母との深い葛藤があり,中学時代より強迫症状が出現し,その後,昭和61年12月からうつ状態となり,昭和62年から,精神科病院への通院及び入院歴があるが,その診断は,うつ病,境界性人格障害などと定まらなかった(甲10)。 (イ) 原告は,昭和63年から平成4年頃まで通っていた精神科病院を運営する医療法人及び同病院における主治医を被告として,同医師には原告の自己決定権を侵害する行為や と定まらなかった(甲10)。 (イ) 原告は,昭和63年から平成4年頃まで通っていた精神科病院を運営する医療法人及び同病院における主治医を被告として,同医師には原告の自己決定権を侵害する行為や守秘義務に違反する行為があったと主張して,損害賠償を求める訴えを提起したところ,同訴訟の被告らが原告に対し解決金として50万円を支払うことなどを内容とする和解が成立した(甲14の1・2,弁論の全趣旨)。 (ウ) 原告は,平成20年に婚姻したが,妻との関係に悩み,平成22年からはZ4病院に通院するようになった。同病院の医師が平成24年に作成した精神障害者保健福祉手帳用の診断書において,原告の主たる精神障害は「混合性不安抑うつ障害」とされ,「現在までの病状,状態像等」として憂うつ気分(抑うつ状態に分類)と強迫体験(不安及び不穏に分類)があるとされ,「日常生活能力の判定」欄において,「他人との意思伝達及び対人関係」及び「身辺の安全保持及び危機対応」は「援助があればできる」,「社会的手続及び公共施設の利用」及び「趣味・娯楽への関心及び文化的社会活動への参加」は「おおむねできるが援助が必要」 などとされ,総合的な「日常生活能力の程度」は,中位の「精神障害を認め,日常生活に著しい制限を受けており,時に応じて援助を必要とする。」ものであると判定されていた(甲10)。 なお,原告は,本件緊急措置診察に至るまでの間,措置入院又は緊急措置入院の対象となったことがあるとの事情はうかがわれない(甲9,弁論の全趣旨)。 (エ) 平成26年4月29日,原告は本件病院において本件緊急措置診察を受けた。本件診療記録の「現症」欄には,「見当識は保たれており,意識は清明である」が,「会話はまとまらず,携帯電話を取り出して眺めながら,『友人とか知り合いの 告は本件病院において本件緊急措置診察を受けた。本件診療記録の「現症」欄には,「見当識は保たれており,意識は清明である」が,「会話はまとまらず,携帯電話を取り出して眺めながら,『友人とか知り合いの一人が襲いに来る』『今日は○だから悪いことが起こるとしたら自分なんですよ,20時がピークなんですよ,数字の羅列とか語呂合わせで知らせてくるんですよ』と繰り返しうったえ,被害関係妄想の存在をうかがわせる」として,「本日のエピソードは病的体験に支配された言動であり,このまま放置すれば自傷他害のおそれがあると判断され,緊急措置入院が妥当であると判断した」旨が記載され,「A/P」欄には,「♯統合失調症」と記載された。 そして,本件緊急措置入院中に行われた原告の隔離の理由は,告知書面等通知の別添様式10に類似した書式を用いて,「ア他の患者との人間関係を著しく損なうおそれがある等,その言動が患者の病状の経過や予後に悪く影響する状態」及び「イ自殺企図又は自傷行為が著しく切迫している状態」に該当するとされ,「ウ他の患者に対する暴力行為や著しい迷惑行為,器物破損行為が認められ,他の方法ではこれを防ぎきれない場合」や「エ急性精神運動興奮のため,不穏,多動,爆発性などが目立ち,一般の精神病室では医療又は保護を図ることが著しく困難な状態」 に該当するとはされていなかった。また,本件緊急措置入院中に行われた原告の身体拘束の理由は,告知書面等通知の別添様式11に類似した書式を用いて,「ア自殺企図又は自傷行為が著しく切迫している状態」及び「イ多動又は不穏が顕著である状態」に該当するとされ,「ウ精神障害のために,そのまま放置すればあなたの生命にまで危険が及ぶおそれがある状態」に該当するとはされていなかった。((エ)全体につき,甲4)( は不穏が顕著である状態」に該当するとされ,「ウ精神障害のために,そのまま放置すればあなたの生命にまで危険が及ぶおそれがある状態」に該当するとはされていなかった。((エ)全体につき,甲4)(オ) 原告は,平成26年4月30日から同年6月23日までの55日間,Z2病院に入院した(後行措置入院)。同病院が作成した「入院病歴概要」には,平成26年4月12日には「妻の浮気相手から刺し殺しに行くと脅された」と警察に訴えていたこと,同月28日には「夕食に眠り薬が入っている」と言われたこと,同月29日,原告が実家に帰っていたところ,夕方に家人が帰宅すると,原告がバリケードを築き立てこもっており,大声を出していたため,家族が警察に通報して警察官が臨場し,警察署に保護するも興奮が収まらず本件23条通報となり,本件病院に搬送されたという経緯が記載されるとともに,「警察官が臨場したときは,興奮していたようだが,(Z2病院への)来院時には会話も可能となっていた。明確な幻聴や妄想の訴えはなく,Scではない印象を受けた。意識レベルにも問題なく器質的なものや薬物使用は否定。理論的なやり取りは十分にできていたが,対人関係が稚拙であり問題が起こったときに妄想的なとらえ方をするのではないかと考えた。」旨の記載があり,また,「知能指数が高すぎることもあり周囲とのコミュニケーションが取れていない可能性もあるのではないかと考えた。診断としては人格障害圏であり,時に抑うつ症状がみられるタイプとした。」「病状として は安定し6月23日措置解除とし同日自宅へ退院となった。」旨が記載された。そして,同病院において同退院日に作成された診断書上,原告の病名は「人格障害特定不能のもの(F62.9)」とされた。(甲11,17)(カ) 原告は,平成26年7月22日 た。」旨が記載された。そして,同病院において同退院日に作成された診断書上,原告の病名は「人格障害特定不能のもの(F62.9)」とされた。(甲11,17)(カ) 原告は,平成26年7月22日,Z4病院の医師の診断を受けた。同医師が同日付けで作成した原告の精神障害者保健福祉手帳用の診断書では,上記(ウ)の診断書上はなかった「現在までの病状,状態像等」として,多弁,感情高揚・易刺激性(それぞれ躁状態に分類)と妄想(幻覚妄想状態に分類)が加えられたが,その余の「現在までの病状,状態像等」並びに「日常生活能力の判定」及び「日常生活能力の程度」について,上記(ウ)の診断書との間に変化はなかった(甲12)。 (キ) 原告は,本件緊急措置入院となったことにつき不服を有し,それが本件開示請求及び本件訴訟の提起の動機となっていることがうかがわれるが,それ以外に,原告が,本件病院等に対し,直接苦情を申し述べたり,実力行使をしたりしたことがあるとの事情はうかがわれない(弁論の全趣旨)。 なお,原告は,平成28年になって,本件緊急措置入院に至る経緯等に関し,精神保健福祉関係の雑誌に匿名で手記を発表した。 当該手記には,強制入院となった日の出来事につき,「当時,私は妻や家族との間の懸案について,解決に必要な情報を求めても与えられず,とても困窮していました。不確かで不穏な情報だけが周囲に溢れ,自分がどんな状況に置かれているのか正しく知ることができませんでした。そのような状況で不確かな手がかりに左右され,その日,別居中の妻や私の実家に何らかの危険が及ぶのかもしれないと考えた私は,物騒な人が来ないように,実家に 家具などでバリケードを作ったのです。それを見た両親に110番通報をされました。警察官と話をしていた1時間半,私は暴力など振るうこ もしれないと考えた私は,物騒な人が来ないように,実家に 家具などでバリケードを作ったのです。それを見た両親に110番通報をされました。警察官と話をしていた1時間半,私は暴力など振るうことはありませんでした。」「その後,警察官に引きずられパトカーに放り込まれたのです。警察署で話をした後,病院へ連れて行かれ,注射を打たれたのが最後の記憶です。」などの記載がある。(甲9)(ク) 原告は,本件訴訟を提起するに先立ち,原告の意図するところを説明する文書を添えて,両親に対し,本件病院の医師が両親から聴取して本件診療記録に記載した情報の全てが原告に開示されることを了解する旨の「保有個人情報開示に関わる同意書」の作成を依頼したところ,原告の両親は,平成28年5月29日付けで,上記の書面にそれぞれ署名押印して原告に返送したので,原告は,本件訴訟においてこれらを書証として提出した(甲7,22の1~3,甲23)。 イ被告の主張(上記(2)イ①)について(ア) 上記(1)のとおり,本件不開示情報2の内容は,本件病院の指定医が,本件緊急措置診察に先立って原告の両親及び原告の保護に当たった警察官から提供を受けた,原告のこれまでの病歴や生活歴,原告が同診察を受けることになった経緯等に関する情報である。 そして,被告は,本件不開示情報2を原告に開示すると,本件病院の医師と家族等の第三者との信頼関係が損なわれ,正確な事実の把握が困難になる可能性がある旨主張する。 (イ)a この点,一般に,緊急措置診察を行う指定医の要請を受けて第三者が任意に提供した情報は,その性格上,それが診察対象者本人に開示されることはないとの信頼が保護に値すると されることが多いということができる。 しかしながら,緊急措置診察の対象となる本人と家族との した情報は,その性格上,それが診察対象者本人に開示されることはないとの信頼が保護に値すると されることが多いということができる。 しかしながら,緊急措置診察の対象となる本人と家族との関係は,個々の家族に応じた様々な形態のものがあり得,その意味で,純粋な第三者とは異なる立場にあり,家族の信頼を保護すべき要請も,個別の事案に応じて様々な程度のものがあると考えられることからすると,必ずしも一概に上記の一般論をもって妥当すると解することが相当とはいえない。加えて,本件においては,上記ア(ク)のとおり,原告の両親が本件病院の指定医に提供した情報につき,原告の両親が,これを原告に開示することを了解する旨の同意書を提出している。そして,上記ア(ア)のとおり,原告はその両親との間に深い葛藤を抱いており,原告とその両親は必ずしも芳しい関係にあるとはいい難いにもかかわらず(甲9,24),原告の両親が上記同意書に署名押印したものであると認められることに照らせば,上記同意書に記載された原告の両親の意向は,本件処分時や更に本件緊急措置入院時に遡っても,格別異なったものではなかったと推認されるところである。 そうすると,本件病院の指定医が,原告の両親からの聴取りに基づいて本件診療記録中の「現病歴」欄に記載した内容は,原告の両親が,本件病院に対し,「開示しないとの条件で任意に提供した情報」に当たると認めるには足りないし,また,「開示しないとの条件を付することが当該情報の性質,当時の状況等に照らして合理的であると認められるもの」に当たるともいえず,さらに,「その他当該情報が開示されないことに対する当該第三者(原告の両親)の信頼が保護に値するものであり,これを開示することによりその信頼を不当に損なうことにな ると認められるもの」 ,さらに,「その他当該情報が開示されないことに対する当該第三者(原告の両親)の信頼が保護に値するものであり,これを開示することによりその信頼を不当に損なうことにな ると認められるもの」に当たるともいえない。 また,本件開示請求に対し,本件不開示情報2における第三者からの聴取り内容を開示したからといって,他の機会における原告以外の者等に対する緊急措置診察等に際して行われる第三者からの任意の聴取りの内容を当然に開示すべきこととなるわけでもない。 したがって,本件不開示情報2のうち原告の両親が指定医に提供した情報を開示することが,原告の両親との信頼関係を損ない,正確な事実を把握することが困難になる可能性があることを理由として,本件病院における診断及び治療に関する業務の今後の適正な遂行に支障を来すおそれがあるとする被告の主張は失当であり,上記の理由に基づく上記のおそれをもって,本件条例16条6号柱書きに定める非開示情報に該当するということはできない。 以上と異なる被告の主張は,採用することができない。 b なお,被告は,原告の両親が作成した上記の同意書は,本件処分後に作成されたものであり,本件処分時において処分行政庁には知る由もない事情である旨主張する。 しかしながら,処分行政庁においては,情報提供者が本人の両親であることを踏まえ,その意見を聴取することも可能であるから(本件条例14条6項参照),純然たる処分後の事情として本件処分時に知り得なかったものとはいえない。 c また,被告は,本件診療記録中の「現病歴」欄の内容を原告に開示することは,今後,原告において被害関係妄想等により自傷他害のおそれが強い症状が再び生じた場合に,開示された現病歴の内容や家族等の陳述者に対する被害関係妄想を強め る可能性 を原告に開示することは,今後,原告において被害関係妄想等により自傷他害のおそれが強い症状が再び生じた場合に,開示された現病歴の内容や家族等の陳述者に対する被害関係妄想を強め る可能性があり,そのことにより,医師と原告の家族との信頼関係が損なわれ,正確な事実の把握が困難になるおそれがあると主張する。 しかしながら,原告がZ2病院から開示を受けている後行措置入院に係る診療記録(甲17)の記載からも,本件診療記録中の「現病歴」欄に記載された内容をかなりの程度推し量ることが可能な状態にあると認められることからすると,これに加えて本件診療記録中の「現病歴」欄を原告に開示したとしても,原告の被害関係妄想が強まるおそれが,抽象的な程度を超えて具体的にあるとはいい難い上,前記アに認定した事実によれば,原告は,意思疎通こそ不得手であり,強迫観念や妄想と関連した抑うつ症状を見せることもあるものの,それらは幻覚症状を催すまでのものではなく,通常の域を出るものとみられる行動も,基本的に自虐的ないし自己防御の方向を向くものにとどまっており,対外的に他害行為に及んだことのあるような既往歴や現病歴は一切認めることができないことからすると,仮に被害関係妄想が強まったとしても,原告が家族等に対する攻撃に及ぶ具体的なおそれがあるとは想定し難い。加えて,上記の原告の両親の同意書の存在に照らせば,今後,本件不開示情報2を開示したこと自体に起因して医師と原告の両親との間で信頼関係の破壊が生じることになる蓋然性は低いといわざるを得ない。 (ウ) 次に,被告の主張によれば,本件不開示情報2の内容は,原告の家族及び原告の保護に当たった警察官が本件病院の指定医に提供した情報であり,それぞれから聴取したものが混在しており,区別することができないというもので 主張によれば,本件不開示情報2の内容は,原告の家族及び原告の保護に当たった警察官が本件病院の指定医に提供した情報であり,それぞれから聴取したものが混在しており,区別することができないというものであるところ,この主張 は,本件不開示情報2を構成する本件診療記録中の「現病歴」欄の文章の文面上,当該警察官が本件病院の指定医に提供した情報の部分を分離して特定することができないという趣旨であると解される。 そうすると,本件不開示情報2を開示したとしても,それが上記のような記載の態様にとどまるものである以上,どの部分が当該警察官から提供されたものかは明らかにはならないし,その情報を提供した警察官を特定することも困難であるから,当該警察官と指定医との信頼関係が直ちに損なわれるということにはならないと解される。また,警察官は,精神保健福祉法23条に基づき,「異常な挙動その他周囲の事情から判断して,精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認められる者を発見した」旨を,都道府県知事に通報すべき義務を負うのであるから,その情報の提供につき,「開示しないとの条件で任意に提供した情報」に直ちに当たるとは解されないし,「開示しないとの条件を付することが当該情報の性質,当時の状況等に照らして合理的であると認められるもの」に当たるともいえず,結局,今後の業務に必要な信頼関係が損なわれることにより,正確な事実を把握することが困難になる可能性が直ちにあるということにもならないといわざるを得ない。 また,本件開示請求に対し,本件不開示情報2における第三者からの聴取り内容を開示したからといって,他の機会における原告以外の者等に対する緊急措置診察等に際して行われる第三者からの任意の聴取りの内容を当然に開示すべきこととなるわけ 示情報2における第三者からの聴取り内容を開示したからといって,他の機会における原告以外の者等に対する緊急措置診察等に際して行われる第三者からの任意の聴取りの内容を当然に開示すべきこととなるわけでもないことは,上記(イ)aと同様である。 したがって,本件不開示情報2における当該警察官からの聴取 り内容を開示することが,警察官との信頼関係を損ない,正確な事実を把握することが困難になる可能性があることを理由として,本件病院における診断及び治療に関する業務の今後の適正な遂行に支障を来すおそれがあるとする被告の主張も失当であり,上記の理由に基づく上記のおそれをもって,本件条例16条6号柱書きに定める非開示情報に該当するということはできない。 ウ被告の主張(上記(2)イ②)について被告は,家族等の患者本人以外の第三者から聴取した患者本人に関する情報を患者本人に開示することになると,医師が患者本人の感情や反応を考慮して記載内容を簡略化・消極化するなどの事態が想定され,その結果,診療記録の記載内容が形骸化し,本件病院の診断及び治療に関する業務の今後の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある旨も主張する。 しかし,緊急措置診察の対象者の現病歴及びこれに関連する事実行為は,既往歴及びこれに関連する事実行為とともに,精神保健福祉法29条の2第4項により準用される同法28条の2に規定する厚生労働大臣の定める基準である「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律第二十八条の二の規定に基づき厚生労働大臣の定める基準」(昭和63年厚生省告示第125号)により,指定医が,当該者の自傷行為又は他害行為のおそれを認定するに当たって,考慮するものとすることとされている事項にほかならない(同告示第1の2)。したがって,その認定に基づき当該者を緊急措 号)により,指定医が,当該者の自傷行為又は他害行為のおそれを認定するに当たって,考慮するものとすることとされている事項にほかならない(同告示第1の2)。したがって,その認定に基づき当該者を緊急措置入院させた場合においては,当該緊急措置入院が適法であったことを証する上で,記録化することを避けられない事項であると考えられる(そして,その記録化されたものは,仮に,精神科病院に入院中の者又はその家族等から精神保健福祉法38条の4に基づく退院等 の請求がされた場合,同法38条の5第4項に基づき,精神医療審査会から提出を命じられることのある「診療録その他の帳簿書類」に該当すると解される。)。 そうすると,医師が患者本人に開示した場合の本人の感情や反応を考慮したからといって,その記載を簡略化,消極化することは容易にはなし得ないものと解され,その内容が形骸化する具体的なおそれがあるということはできない。 したがって,その形骸化に伴い本件病院の診断及び治療に関する業務の今後の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがある旨の被告の主張も,採用することはできない。 エ帰結以上のとおりであるから,本件緊急措置診察の基礎とされた現病歴に関して原告の両親及び警察官から提供を受けた情報(本件不開示情報2)について,これを原告に開示した場合,本件病院における診断及び治療に関する業務の今後の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると解するのは困難というべきである。したがって,本件不開示情報2が本件条例16条6号の非開示情報に該当するということはできない。 (4) 小括以上によれば,本件非開示情報2は,原告との関係で本件条例16条6号の非開示情報に該当しないというべきである。したがって,本件処分のうち,本件不開示情報2を不開示とした部分は違 (4) 小括以上によれば,本件非開示情報2は,原告との関係で本件条例16条6号の非開示情報に該当しないというべきである。したがって,本件処分のうち,本件不開示情報2を不開示とした部分は違法である。 3 結論よって,原告の請求は,本件処分のうち本件不開示情報2を不開示とした部分の取消しを求める限度で理由があるからその範囲でこれを認容するとともに,その余は理由がないから棄却することとし,訴訟 費用の負担につき行政事件訴訟法7条,民事訴訟法64条本文,61条を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部 裁判長裁判官谷口豊 裁判官平山馨 裁判官馬場潤 (別紙1)東京都個人情報の保護に関する条例(平成27年東京都条例第140号による改正前のもの)(抄)第1条この条例は,高度情報通信社会の進展にかんがみ,実施機関における個人情報の取扱いについての基本的事項を定め,保有個人情報の開示,訂正及び利用停止を請求する権利を明らかにするとともに,民間部門における個人情報の取扱いについての東京都(以下「都」という。)の役割を定め,もって都政の適正な運営を図りつつ,個人の権利利益を保護することを目的とする。 第12条何人も,実施機関に対し,当該実施機関が保有する自己を本人とする保有個人情報の開示の請求(以下「開示請求」という。)をすることができる。 2 〔略〕第13条前条の規定に基づき開示請求をしようとする者は,実施機関に対して,次に掲げる事項を記載した開示請求書を提出しなければならない。 一開示 いう。)をすることができる。 2 〔略〕第13条前条の規定に基づき開示請求をしようとする者は,実施機関に対して,次に掲げる事項を記載した開示請求書を提出しなければならない。 一開示請求をしようとする者の氏名及び住所又は居所二開示請求をしようとする保有個人情報を特定するために必要な事項三前二号に掲げるもののほか,実施機関が定める事項2及び3 〔略〕第14条実施機関は,開示請求があった日から14日以内に,開示請求者に対して,開示請求に係る保有個人情報の全部若しくは一部を開示する旨の決定(以下「開示決定」という。)又は開示しない旨の決定〔中略〕をしなければならない。〔以下略〕2ないし5 〔略〕 6 実施機関は,開示請求に係る保有個人情報に開示請求者〔中略〕以外のものに関する情報が含まれている場合は,開示決定等に先立ち,当該開示請求者以外のものに対し,開示請求に係る保有個人情報が記録された公文書の表示その他実施機関が定める事項を通知して,意見書を提出する機会を与えることができる。 7 〔略〕第16条実施機関は,開示請求があったときは,開示請求に係る保有個人情報に次のいずれかに該当する情報(以下「非開示情報」という。)が含まれている場合を除き,開示請求者に対し,当該保有個人情報を開示しなければならない。 一 〔略〕二開示請求者以外の個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって,当該情報に含まれる氏名,生年月日その他の記述等により開示請求者以外の特定の個人を識別することができるもの〔中略〕。ただし,次に掲げる情報を除く。 イ法令等の規定により又は慣行として開示請求者が知ることができ,又は知ることが予定されている情報ロ人の生命,健康,生活 人を識別することができるもの〔中略〕。ただし,次に掲げる情報を除く。 イ法令等の規定により又は慣行として開示請求者が知ることができ,又は知ることが予定されている情報ロ人の生命,健康,生活又は財産を保護するため,開示することが必要であると認められる情報ハ当該個人が公務員等〔中略〕である場合において,当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは,当該情報のうち,当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分三法人等に関する情報又は開示請求者以外の事業を営む個人の当該事業に関する情報であって,開示することにより,当該法人等又は当該事業を営む個人の競争上又は事業運営上の地位その他社会的な地位が損なわれると認められるもの。ただし,人の生命,健康,生活又 は財産を保護するため,開示することが必要であると認められる情報を除く。 四及び五 〔略〕六都の機関又は国,独立行政法人等,他の地方公共団体若しくは地方独立行政法人が行う事務又は事業に関する情報であって,開示することにより,次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上,当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるものイ試験,選考,診断,指導,相談等に係る事務に関し,評価,判断等その事務の過程若しくは基準が明らかとなるおそれ又は公正な判断が行えなくなるおそれロないしホ 〔略〕ヘ独立行政法人等,地方公共団体が経営する企業又は地方独立行政法人に係る事業に関し,その企業経営上又は事業運営上の正当な利益を害するおそれト 〔略〕七第三者が,実施機関の要請を受けて,開示しないとの条件で任意に提供した情報であって,第三者における通例として開示しないこととされているものその他の当該条件を付することが当該情報の性質,当時の状況等に照らし ,実施機関の要請を受けて,開示しないとの条件で任意に提供した情報であって,第三者における通例として開示しないこととされているものその他の当該条件を付することが当該情報の性質,当時の状況等に照らして合理的であると認められるものその他当該情報が開示されないことに対する当該第三者の信頼が保護に値するものであり,これを開示することにより,その信頼を不当に損なうことになると認められるもの。ただし,人の生命,健康,生活又は財産を保護するため,開示することが必要であると認められるものを除く。 八 〔略〕以上 (別紙2)精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(抄)第4章精神保健指定医,登録研修機関,精神科病院及び精神科救急医療体制第1節精神保健指定医(精神保健指定医)第18条厚生労働大臣は,その申請に基づき,次に該当する医師のうち第19条の4に規定する職務を行うのに必要な知識及び技能を有すると認められる者を,精神保健指定医(以下「指定医」という。)に指定する。 一 5年以上診断又は治療に従事した経験を有すること。 二 3年以上精神障害の診断又は治療に従事した経験を有すること。 三厚生労働大臣が定める精神障害につき厚生労働大臣が定める程度の診断又は治療に従事した経験を有すること。 四厚生労働大臣の登録を受けた者が厚生労働省令で定めるところにより行う研修(申請前1年以内に行われたものに限る。)の課程を修了していること。 2及び3 〔略〕(職務)第19条の4 指定医は,第21条第3項及び第29条の5の規定により入院を継続する必要があるかどうかの判定,第33条第1項及び第33条の7第1項の規定による入院を必要とするかどうか及び第20条の規定による入院が行われる状態にないかどうかの判定 9条の5の規定により入院を継続する必要があるかどうかの判定,第33条第1項及び第33条の7第1項の規定による入院を必要とするかどうか及び第20条の規定による入院が行われる状態にないかどうかの判定,第36条第3項に規定する行動の制限を必要とするかどうかの判定,第38条の2第1項(同条第2項において準用する場合を含む。)に規定する報告事項に係る入院中の者の診察並びに第40条の規定により一時退院さ せて経過を見ることが適当かどうかの判定の職務を行う。 2 指定医は,前項に規定する職務のほか,公務員として,次に掲げる職務を行う。 一第29条第1項及び第29条の2第1項の規定による入院を必要とするかどうかの判定二第29条の2の2第3項(第34条第4項において準用する場合を含む。)に規定する行動の制限を必要とするかどうかの判定三第29条の4第2項の規定により入院を継続する必要があるかどうかの判定四第34条第1項及び第3項の規定による移送を必要とするかどうかの判定五第38条の3第3項(同条第6項において準用する場合を含む。)及び第38条の5第4項の規定による診察六第38条の6第1項の規定による立入検査,質問及び診察七第38条の7第2項の規定により入院を継続する必要があるかどうかの判定八第45条の2第4項の規定による診察 3 指定医は,その勤務する医療施設の業務に支障がある場合その他やむを得ない理由がある場合を除き,前項各号に掲げる職務を行うよう都道府県知事から求めがあつた場合には,これに応じなければならない。 (診療録の記載義務)第19条の4の2 指定医は,前条第1項に規定する職務を行つたときは,遅滞なく,当該指定医の氏名その他厚生労働省令で定める事項を診療録に記載しなければならな ばならない。 (診療録の記載義務)第19条の4の2 指定医は,前条第1項に規定する職務を行つたときは,遅滞なく,当該指定医の氏名その他厚生労働省令で定める事項を診療録に記載しなければならない。 第3節精神科病院(都道府県立精神科病院)第19条の7 都道府県は,精神科病院を設置しなければならない。ただし,次条の規定による指定病院がある場合においては,その設置を延期することができる。 2 〔略〕(指定病院)第19条の8 都道府県知事は,国,都道府県並びに都道府県又は都道府県及び都道府県以外の地方公共団体が設立した地方独立行政法人(以下「国等」という。)以外の者が設置した精神科病院であつて厚生労働大臣の定める基準に適合するものの全部又は一部を,その設置者の同意を得て,都道府県が設置する精神科病院に代わる施設(以下「指定病院」という。)として指定することができる。 第5章医療及び保護第1節任意入院第20条精神科病院の管理者は,精神障害者を入院させる場合においては,本人の同意に基づいて入院が行われるように努めなければならない。 第21条精神障害者が自ら入院する場合においては,精神科病院の管理者は,その入院に際し,当該精神障害者に対して第38条の4の規定による退院等の請求に関することその他厚生労働省令で定める事項を書面で知らせ,当該精神障害者から自ら入院する旨を記載した書面を受けなければならない。 2 精神科病院の管理者は,自ら入院した精神障害者(以下「任意入院者」という。)から退院の申出があつた場合においては,その者を退院 させなければならない。 3 前項に規定する場合において,精神科病院の管理者は,指定医による診察の結果,当該任意入院者 者」という。)から退院の申出があつた場合においては,その者を退院 させなければならない。 3 前項に規定する場合において,精神科病院の管理者は,指定医による診察の結果,当該任意入院者の医療及び保護のため入院を継続する必要があると認めたときは,同項の規定にかかわらず,72時間を限り,その者を退院させないことができる。 4 前項に規定する場合において,精神科病院(厚生労働省令で定める基準に適合すると都道府県知事が認めるものに限る。)の管理者は,緊急その他やむを得ない理由があるときは,指定医に代えて指定医以外の医師(医師法(昭和23年法律第201号)第16条の4第1項の規定による登録を受けていることその他厚生労働省令で定める基準に該当する者に限る。以下「特定医師」という。)に任意入院者の診察を行わせることができる。この場合において,診察の結果,当該任意入院者の医療及び保護のため入院を継続する必要があると認めたときは,前二項の規定にかかわらず,12時間を限り,その者を退院させないことができる。 5ないし7 〔略〕 第2節指定医の診察及び措置入院(警察官の通報)第23条警察官は,職務を執行するに当たり,異常な挙動その他周囲の事情から判断して,精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認められる者を発見したときは,直ちに,その旨を,最寄りの保健所長を経て都道府県知事に通報しなければならない。 (申請等に基づき行われる指定医の診察等)第27条都道府県知事は,第22条から前条までの規定による申請,通報又は届出のあつた者について調査の上必要があると認めるときは, その指定する指定医をして診察をさせなければならない。 2 都道府県知事は,入院させなければ精神 までの規定による申請,通報又は届出のあつた者について調査の上必要があると認めるときは, その指定する指定医をして診察をさせなければならない。 2 都道府県知事は,入院させなければ精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあることが明らかである者については,第22条から前条までの規定による申請,通報又は届出がない場合においても,その指定する指定医をして診察をさせることができる。 3ないし5 〔略〕(診察の通知)第28条都道府県知事は,前条第1項の規定により診察をさせるに当つて現に本人の保護の任に当つている者がある場合には,あらかじめ,診察の日時及び場所をその者に通知しなければならない。 2 後見人又は保佐人,親権を行う者,配偶者その他現に本人の保護の任に当たつている者は,前条第1項の診察に立ち会うことができる。 (判定の基準)第28条の2 第27条第1項又は第2項の規定により診察をした指定医は,厚生労働大臣の定める基準に従い,当該診察をした者が精神障害者であり,かつ,医療及び保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあるかどうかの判定を行わなければならない。 (都道府県知事による入院措置)第29条都道府県知事は,第27条の規定による診察の結果,その診察を受けた者が精神障害者であり,かつ,医療及び保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認めたときは,その者を国等の設置した精神科病院又は指定病院に入院させることができる。 2 前項の場合において都道府県知事がその者を入院させるには,その指定する2人以上の指定医の診察を経て,その者が精神障害者であり, かつ,医療及び保護のため に入院させることができる。 2 前項の場合において都道府県知事がその者を入院させるには,その指定する2人以上の指定医の診察を経て,その者が精神障害者であり, かつ,医療及び保護のために入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがあると認めることについて,各指定医の診察の結果が一致した場合でなければならない。 3 都道府県知事は,第1項の規定による措置を採る場合においては,当該精神障害者に対し,当該入院措置を採る旨,第38条の4の規定による退院等の請求に関することその他厚生労働省令で定める事項を書面で知らせなければならない。 4 〔略〕第29条の2 都道府県知事は,前条第1項の要件に該当すると認められる精神障害者又はその疑いのある者について,急速を要し,第27条,第28条及び前条の規定による手続を採ることができない場合において,その指定する指定医をして診察をさせた結果,その者が精神障害者であり,かつ,直ちに入院させなければその精神障害のために自身を傷つけ又は他人を害するおそれが著しいと認めたときは,その者を前条第1項に規定する精神科病院又は指定病院に入院させることができる。 2 都道府県知事は,前項の措置をとつたときは,すみやかに,その者につき,前条第1項の規定による入院措置をとるかどうかを決定しなければならない。 3 第1項の規定による入院の期間は,72時間を超えることができない。 4 〔中略〕第28条の2の規定は第1項の規定による診察について,前条第3項の規定は第1項の規定による措置を採る場合について,〔中略〕準用する。 第29条の2の2 都道府県知事は,第29条第1項又は前条第1項の規定による入院措置を採ろうとする精神障害者を,当該入院措置に係る 定による措置を採る場合について,〔中略〕準用する。 第29条の2の2 都道府県知事は,第29条第1項又は前条第1項の規定による入院措置を採ろうとする精神障害者を,当該入院措置に係る 病院に移送しなければならない。 2 〔略〕 3 都道府県知事は,第1項の規定による移送を行うに当たつては,当該精神障害者を診察した指定医が必要と認めたときは,その者の医療又は保護に欠くことのできない限度において,厚生労働大臣があらかじめ社会保障審議会の意見を聴いて定める行動の制限を行うことができる。 (入院措置の解除)第29条の4 都道府県知事は,第29条第1項の規定により入院した者(以下「措置入院者」という。)が,入院を継続しなくてもその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがないと認められるに至つたときは,直ちに,その者を退院させなければならない。この場合においては,都道府県知事は,あらかじめ,その者を入院させている精神科病院又は指定病院の管理者の意見を聞くものとする。 2 前項の場合において都道府県知事がその者を退院させるには,その者が入院を継続しなくてもその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがないと認められることについて,その指定する指定医による診察の結果又は次条の規定による診察の結果に基づく場合でなければならない。 第29条の5 措置入院者を入院させている精神科病院又は指定病院の管理者は,指定医による診察の結果,措置入院者が,入院を継続しなくてもその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがないと認められるに至つたときは,直ちに,その旨,その者の症状その他厚生労働省令で定める事項を最寄りの保健所長を経て都道府県知事に届け出なければならない。 害を及ぼすおそれがないと認められるに至つたときは,直ちに,その旨,その者の症状その他厚生労働省令で定める事項を最寄りの保健所長を経て都道府県知事に届け出なければならない。 第3節医療保護入院等(医療保護入院)第33条精神科病院の管理者は,次に掲げる者について,その家族等のうちいずれかの者の同意があるときは,本人の同意がなくてもその者を入院させることができる。 一指定医による診察の結果,精神障害者であり,かつ,医療及び保護のため入院の必要がある者であつて当該精神障害のために第20条の規定による入院が行われる状態にないと判定されたもの二第34条第1項の規定により移送された者 2 〔略〕 3 精神科病院の管理者は,第1項第1号に掲げる者について,その家族等〔中略〕がない場合又はその家族等の全員がその意思を表示することができない場合において,その者の居住地〔中略〕を管轄する市町村長(特別区の長を含む。以下同じ。)の同意があるときは,本人の同意がなくてもその者を入院させることができる。第34条第2項の規定により移送された者について,その者の居住地を管轄する市町村長の同意があるときも,同様とする。 4 第1項又は前項に規定する場合において,精神科病院(厚生労働省令で定める基準に適合すると都道府県知事が認めるものに限る。)の管理者は,緊急その他やむを得ない理由があるときは,指定医に代えて特定医師に診察を行わせることができる。この場合において,診察の結果,精神障害者であり,かつ,医療及び保護のため入院の必要がある者であつて当該精神障害のために第20条の規定による入院が行われる状態にないと判定されたときは,第1項又は前項の規定にかかわらず,本人の同意がなくても,12時間を限り,その者を入院させる 必要がある者であつて当該精神障害のために第20条の規定による入院が行われる状態にないと判定されたときは,第1項又は前項の規定にかかわらず,本人の同意がなくても,12時間を限り,その者を入院させることができる。 5及び6 〔略〕 7 精神科病院の管理者は,第1項,第3項又は第4項後段の規定による措置を採つたときは,10日以内に,その者の症状その他厚生労働省令で定める事項を当該入院について同意をした者の同意書を添え,最寄りの保健所長を経て都道府県知事に届け出なければならない。 (応急入院)第33条の7 厚生労働大臣の定める基準に適合するものとして都道府県知事が指定する精神科病院の管理者は,医療及び保護の依頼があつた者について,急速を要し,その家族等の同意を得ることができない場合において,その者が,次に該当する者であるときは,本人の同意がなくても,72時間を限り,その者を入院させることができる。 一指定医の診察の結果,精神障害者であり,かつ,直ちに入院させなければその者の医療及び保護を図る上で著しく支障がある者であつて当該精神障害のために第20条の規定による入院が行われる状態にないと判定されたもの二第34条第3項の規定により移送された者 2 前項に規定する場合において,同項に規定する精神科病院の管理者は,緊急その他やむを得ない理由があるときは,指定医に代えて特定医師に同項の医療及び保護の依頼があつた者の診察を行わせることができる。この場合において,診察の結果,その者が,精神障害者であり,かつ,直ちに入院させなければその者の医療及び保護を図る上で著しく支障がある者であつて当該精神障害のために第20条の規定による入院が行われる状態にないと判定されたときは,同項の規定にかかわらず,本人の同意がなくても,1 ければその者の医療及び保護を図る上で著しく支障がある者であつて当該精神障害のために第20条の規定による入院が行われる状態にないと判定されたときは,同項の規定にかかわらず,本人の同意がなくても,12時間を限り,その者を入院させることができる。 3ないし7 〔略〕 (医療保護入院等のための移送)第34条都道府県知事は,その指定する指定医による診察の結果,精神障害者であり,かつ,直ちに入院させなければその者の医療及び保護を図る上で著しく支障がある者であつて当該精神障害のために第20条の規定による入院が行われる状態にないと判定されたものにつき,その家族等のうちいずれかの者の同意があるときは,本人の同意がなくてもその者を第33条第1項の規定による入院をさせるため第33条の7第1項に規定する精神科病院に移送することができる。 2 都道府県知事は,前項に規定する精神障害者の家族等がない場合又はその家族等の全員がその意思を表示することができない場合において,その者の居住地を管轄する市町村長の同意があるときは,本人の同意がなくてもその者を第33条第3項の規定による入院をさせるため第33条の7第1項に規定する精神科病院に移送することができる。 3 都道府県知事は,急速を要し,その者の家族等の同意を得ることができない場合において,その指定する指定医の診察の結果,その者が精神障害者であり,かつ,直ちに入院させなければその者の医療及び保護を図る上で著しく支障がある者であつて当該精神障害のために第20条の規定による入院が行われる状態にないと判定されたときは,本人の同意がなくてもその者を第33条の7第1項の規定による入院をさせるため同項に規定する精神科病院に移送することができる。 4 第29条の2の2第2項及び第3項の規定は,前 と判定されたときは,本人の同意がなくてもその者を第33条の7第1項の規定による入院をさせるため同項に規定する精神科病院に移送することができる。 4 第29条の2の2第2項及び第3項の規定は,前三項の規定による移送を行う場合について準用する。 第4節精神科病院における処遇等(処遇)第36条精神科病院の管理者は,入院中の者につき,その医療又は保護 に欠くことのできない限度において,その行動について必要な制限を行うことができる。 2 精神科病院の管理者は,前項の規定にかかわらず,信書の発受の制限,都道府県その他の行政機関の職員との面会の制限その他の行動の制限であつて,厚生労働大臣があらかじめ社会保障審議会の意見を聴いて定める行動の制限については,これを行うことができない。 3 第1項の規定による行動の制限のうち,厚生労働大臣があらかじめ社会保障審議会の意見を聴いて定める患者の隔離その他の行動の制限は,指定医が必要と認める場合でなければ行うことができない。 第37条厚生労働大臣は,前条に定めるもののほか,精神科病院に入院中の者の処遇について必要な基準を定めることができる。 2 前項の基準が定められたときは,精神科病院の管理者は,その基準を遵守しなければならない。 3 〔略〕(相談,援助等)第38条精神科病院その他の精神障害の医療を提供する施設の管理者は,当該施設において医療を受ける精神障害者の社会復帰の促進を図るため,当該施設の医師,看護師その他の医療従事者による有機的な連携の確保に配慮しつつ,その者の相談に応じ,必要に応じて一般相談支援事業を行う者と連携を図りながら,その者に必要な援助を行い,及びその家族等その他の関係者との連絡調整を行うように努めなければならない。 (定期の つつ,その者の相談に応じ,必要に応じて一般相談支援事業を行う者と連携を図りながら,その者に必要な援助を行い,及びその家族等その他の関係者との連絡調整を行うように努めなければならない。 (定期の報告等)第38条の2 措置入院者を入院させている精神科病院又は指定病院の管理者は,措置入院者の症状その他厚生労働省令で定める事項(以下この項において「報告事項」という。)を,厚生労働省令で定めるところ により,定期に,最寄りの保健所長を経て都道府県知事に報告しなければならない。この場合においては,報告事項のうち厚生労働省令で定める事項については,指定医による診察の結果に基づくものでなければならない。 2 前項の規定は,医療保護入院者を入院させている精神科病院の管理者について準用する。この場合において,同項中「措置入院者」とあるのは,「医療保護入院者」と読み替えるものとする。 3 都道府県知事は,条例で定めるところにより,精神科病院の管理者〔中略〕に対し,当該精神科病院に入院中の任意入院者〔中略〕の症状その他厚生労働省令で定める事項について報告を求めることができる。 (定期の報告等による審査)第38条の3 都道府県知事は,前条第1項若しくは第2項の規定による報告又は第33条第7項の規定による届出(同条第1項又は第3項の規定による措置に係るものに限る。)があつたときは,当該報告又は届出に係る入院中の者の症状その他厚生労働省令で定める事項を精神医療審査会に通知し,当該入院中の者についてその入院の必要があるかどうかに関し審査を求めなければならない。 2 精神医療審査会は,前項の規定により審査を求められたときは,当該審査に係る入院中の者についてその入院の必要があるかどうかに関し審査を行い,その結果を都道府県知事に通知しなけ ければならない。 2 精神医療審査会は,前項の規定により審査を求められたときは,当該審査に係る入院中の者についてその入院の必要があるかどうかに関し審査を行い,その結果を都道府県知事に通知しなければならない。 3 精神医療審査会は,前項の審査をするに当たつて必要があると認めるときは,当該審査に係る入院中の者に対して意見を求め,若しくはその者の同意を得て委員(指定医である者に限る。第38条の5第4項において同じ。)に診察させ,又はその者が入院している精神科病院の管理者その他関係者に対して報告若しくは意見を求め,診療録その他の帳簿書類の提出を命じ,若しくは出頭を命じて審問することがで きる。 4 〔略〕 5 都道府県知事は,第1項に定めるもののほか,前条第3項の規定による報告を受けたときは,当該報告に係る入院中の者の症状その他厚生労働省令で定める事項を精神医療審査会に通知し,当該入院中の者についてその入院の必要があるかどうかに関し審査を求めることができる。 6 第2項及び第3項の規定は,前項の規定により都道府県知事が審査を求めた場合について準用する。 (退院等の請求)第38条の4 精神科病院に入院中の者又はその家族等〔中略〕は,厚生労働省令で定めるところにより,都道府県知事に対し,当該入院中の者を退院させ,又は精神科病院の管理者に対し,その者を退院させることを命じ,若しくはその者の処遇の改善のために必要な措置を採ることを命じることを求めることができる。 (退院等の請求による審査)第38条の5 都道府県知事は,前条の規定による請求を受けたときは,当該請求の内容を精神医療審査会に通知し,当該請求に係る入院中の者について,その入院の必要があるかどうか,又はその処遇が適当であるかどうかに関し審査を求めなけれ 前条の規定による請求を受けたときは,当該請求の内容を精神医療審査会に通知し,当該請求に係る入院中の者について,その入院の必要があるかどうか,又はその処遇が適当であるかどうかに関し審査を求めなければならない。 2 精神医療審査会は,前項の規定により審査を求められたときは,当該審査に係る者について,その入院の必要があるかどうか,又はその処遇が適当であるかどうかに関し審査を行い,その結果を都道府県知事に通知しなければならない。 3 精神医療審査会は,前項の審査をするに当たつては,当該審査に係る前条の規定による請求をした者及び当該審査に係る入院中の者が入 院している精神科病院の管理者の意見を聴かなければならない。ただし,精神医療審査会がこれらの者の意見を聴く必要がないと特に認めたときは,この限りでない。 4 精神医療審査会は,前項に定めるもののほか,第2項の審査をするに当たつて必要があると認めるときは,当該審査に係る入院中の者の同意を得て委員に診察させ,又はその者が入院している精神科病院の管理者その他関係者に対して報告を求め,診療録その他の帳簿書類の提出を命じ,若しくは出頭を命じて審問することができる。 5及び6 〔略〕(報告徴収等)第38条の6 厚生労働大臣又は都道府県知事は,必要があると認めるときは,精神科病院の管理者に対し,当該精神科病院に入院中の者の症状若しくは処遇に関し,報告を求め,若しくは診療録その他の帳簿書類の提出若しくは提示を命じ,当該職員若しくはその指定する指定医に,精神科病院に立ち入り,これらの事項に関し,診療録その他の帳簿書類〔中略〕を検査させ,若しくは当該精神科病院に入院中の者その他の関係者に質問させ,又はその指定する指定医に,精神科病院に立ち入り,当該精神科病院に入院中の者を診察さ 項に関し,診療録その他の帳簿書類〔中略〕を検査させ,若しくは当該精神科病院に入院中の者その他の関係者に質問させ,又はその指定する指定医に,精神科病院に立ち入り,当該精神科病院に入院中の者を診察させることができる。 2及び3 〔略〕(改善命令等)第38条の7 〔略〕 2 厚生労働大臣又は都道府県知事は,必要があると認めるときは,第21条第3項の規定により入院している者又は第33条第1項,第3項若しくは第4項若しくは第33条の7第1項若しくは第2項の規定により入院した者について,その指定する2人以上の指定医に診察させ,各指定医の診察の結果がその入院を継続する必要があることに一 致しない場合又はこれらの者の入院がこの法律若しくはこの法律に基づく命令に違反して行われた場合には,これらの者が入院している精神科病院の管理者に対し,その者を退院させることを命ずることができる。 3ないし5 〔略〕(仮退院)第40条第29条第1項に規定する精神科病院又は指定病院の管理者は,指定医による診察の結果,措置入院者の症状に照らしその者を一時退院させて経過を見ることが適当であると認めるときは,都道府県知事の許可を得て,6月を超えない期間を限り仮に退院させることができる。 第6章保健及び福祉第1節精神障害者保健福祉手帳(精神障害者保健福祉手帳)第45条精神障害者(知的障害者を除く。以下この章及び次章において同じ。)は,厚生労働省令で定める書類を添えて,その居住地〔中略〕の都道府県知事に精神障害者保健福祉手帳の交付を申請することができる。 2 都道府県知事は,前項の申請に基づいて審査し,申請者が政令で定める精神障害の状態にあると認めたときは,申請者に精神障害者保健福祉手帳を交付しなければな 祉手帳の交付を申請することができる。 2 都道府県知事は,前項の申請に基づいて審査し,申請者が政令で定める精神障害の状態にあると認めたときは,申請者に精神障害者保健福祉手帳を交付しなければならない。 3ないし6 〔略〕(精神障害者保健福祉手帳の返還等)第45条の2 〔略〕 2 〔略〕 3 都道府県知事は,精神障害者保健福祉手帳の交付を受けた者について,前条第2項の政令で定める状態がなくなつたと認めるときは,その者に対し精神障害者保健福祉手帳の返還を命ずることができる。 4 都道府県知事は,前項の規定により,精神障害者保健福祉手帳の返還を命じようとするときは,あらかじめその指定する指定医をして診察させなければならない。 5 〔略〕以上 (別紙3)障害者基本法(抄)(目的)第1条この法律は,全ての国民が,障害の有無にかかわらず,等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのつとり,全ての国民が,障害の有無によつて分け隔てられることなく,相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため,障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策に関し,基本原則を定め,及び国,地方公共団体等の責務を明らかにするとともに,障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策の基本となる事項を定めること等により,障害者の自立及び社会参加の支援等のための施策を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。 (定義)第2条この法律において,次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。 一障害者身体障害,知的障害,精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であつて,障害及び社 語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。 一障害者身体障害,知的障害,精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であつて,障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。 二社会的障壁障害がある者にとつて日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物,制度,慣行,観念その他一切のものをいう。 (差別の禁止)第4条何人も,障害者に対して,障害を理由として,差別することその他の権利利益を侵害する行為をしてはならない。 2 社会的障壁の除去は,それを必要としている障害者が現に存し,か つ,その実施に伴う負担が過重でないときは,それを怠ることによつて前項の規定に違反することとならないよう,その実施について必要かつ合理的な配慮がされなければならない。 3 〔略〕以上 (別紙4)障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(抄)第1章総則(目的)第1条この法律は,障害者基本法(昭和45年法律第84号)の基本的な理念にのっとり,全ての障害者が,障害者でない者と等しく,基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ,その尊厳にふさわしい生活を保障される権利を有することを踏まえ,障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本的な事項,行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置等を定めることにより,障害を理由とする差別の解消を推進し,もって全ての国民が,障害の有無によって分け隔てられることなく,相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする。 (定義)第2条この法律において,次の各号に掲げる用語の意 の国民が,障害の有無によって分け隔てられることなく,相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に資することを目的とする。 (定義)第2条この法律において,次の各号に掲げる用語の意義は,それぞれ当該各号に定めるところによる。 一障害者身体障害,知的障害,精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害(以下「障害」と総称する。)がある者であって,障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう。 二社会的障壁障害がある者にとって日常生活又は社会生活を営む上で障壁となるような社会における事物,制度,慣行,観念その他一切のものをいう。 三行政機関等国の行政機関,独立行政法人等,地方公共団体(地方公営企業法(昭和27年法律第292号)第3章の規定の適用を受ける地方公共団体の経営する企業を除く。第7号〔中略〕において同じ。) 及び地方独立行政法人をいう。 四ないし六 〔略〕七事業者商業その他の事業を行う者(国,独立行政法人等,地方公共団体及び地方独立行政法人を除く。)をいう。 (国及び地方公共団体の責務)第3条国及び地方公共団体は,この法律の趣旨にのっとり,障害を理由とする差別の解消の推進に関して必要な施策を策定し,及びこれを実施しなければならない。 (国民の責務)第4条国民は,第1条に規定する社会を実現する上で障害を理由とする差別の解消が重要であることに鑑み,障害を理由とする差別の解消の推進に寄与するよう努めなければならない。 (社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮に関する環境の整備)第5条行政機関等及び事業者は,社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮を的確に行うため,自ら設置する施設の構造 的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮に関する環境の整備)第5条行政機関等及び事業者は,社会的障壁の除去の実施についての必要かつ合理的な配慮を的確に行うため,自ら設置する施設の構造の改善及び設備の整備,関係職員に対する研修その他の必要な環境の整備に努めなければならない。 第2章障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針第6条政府は,障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策を総合的かつ一体的に実施するため,障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針(以下「基本方針」という。)を定めなければならない。 2 基本方針は,次に掲げる事項について定めるものとする。 一障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する基本的な方向 二行政機関等が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項三事業者が講ずべき障害を理由とする差別を解消するための措置に関する基本的な事項四その他障害を理由とする差別の解消の推進に関する施策に関する重要事項3ないし6 〔略〕 第3章行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置(行政機関等における障害を理由とする差別の禁止)第7条行政機関等は,その事務又は事業を行うに当たり,障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより,障害者の権利利益を侵害してはならない。 2 行政機関等は,その事務又は事業を行うに当たり,障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において,その実施に伴う負担が過重でないときは,障害者の権利利益を侵害することとならないよう,当該障害者の性別,年齢及び障害の状態に応じて,社会的障壁の除去の実施につ る旨の意思の表明があった場合において,その実施に伴う負担が過重でないときは,障害者の権利利益を侵害することとならないよう,当該障害者の性別,年齢及び障害の状態に応じて,社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。 (事業者における障害を理由とする差別の禁止)第8条事業者は,その事業を行うに当たり,障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより,障害者の権利利益を侵害してはならない。 2 事業者は,その事業を行うに当たり,障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において,その実 施に伴う負担が過重でないときは,障害者の権利利益を侵害することとならないよう,当該障害者の性別,年齢及び障害の状態に応じて,社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をするように努めなければならない。 以上

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