1 令和7年9月18日判決言渡 同日原本領収 裁判所書記官令和3年(ワ)第1724号 損害賠償請求事件(第1事件)令和4年(ワ)第1073号 損害賠償請求事件(第2事件)令和5年(ワ)第1449号 損害賠償請求事件(第3事件)口頭弁論終結日 令和7年4月10日判 決主 文1 別紙2-1「認容額等一覧表」の「被告」欄に記載された被告らは、同欄に対応する列の「認容額」欄に金額の記載のある行の原告に対し、同「認容額」欄記載の各金員及びこれに対する同「遅延損害金起算日」欄記載の各日から各支払済みまで年5分の割合による金員を(同一の行に金額の記載のある被告が複数あるときは互いに連帯して)支払え。 2 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 3 訴訟費用は、以下のとおりとする。 ⑴ 原告らに生じた費用は、各原告について、別紙2-1「認容額等一覧表」の「負担割合」 欄に記載の割合に相当する額を、対応する行の「認容額」欄に金額の記載のある列の被告らの負担とし、その余を当該原告の負担とする。 ⑵ 被告らに生じた費用は、各被告について、別紙2-2「訴訟費用負担一覧表(被告分)」の対応する列の被告名称下の各欄に記載の割合に相当する額を、これに対応する行の原告の負担とし、その余を当該被告の負担とする。 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。ただし、別紙2-1「認容額等一覧表」の「被告」欄に記載された被告らが、各被告の列の「担保額」欄に記載のある行の原告に対し、共同又は単独で、同「担保額」欄記載の各金員の担保を供するときは、担保を供した被告は、当該原告との関係でその執行を免れることができる。 事実及び理由2 第1章 請求別紙3「請求の趣旨一覧」の「対象被告」欄の 載の各金員の担保を供するときは、担保を供した被告は、当該原告との関係でその執行を免れることができる。 事実及び理由2 第1章 請求別紙3「請求の趣旨一覧」の「対象被告」欄の各被告のうち、同「原告名」欄記載の各原告に対応する欄に〇印が記載されている各被告は、同原告に対し、連帯して、それぞれ同「請求額」欄記載の金員及びこれに対する同「遅延損害金起算日」欄記載の日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2章 事案の概要第1節 事案の要旨第1 本件は、建設作業に従事した際に石綿(アスベスト)含有建材による石綿粉じんにばく露し、中皮腫、肺がん等の石綿関連疾患を発症したと主張する北海道在住者又はその承継人である原告らが、建材メーカーである被告らに対し、上記の疾患は、被告らが石綿含有建材を製造・販売する際に石綿の危険性について警告表示をすべき義務を怠ったために発症したものであるなどと主張して、不法行為(民法719条1項後段の類推適用)に基づき、別紙3「請求の趣旨一覧」記載の各原告に対応する「対象被告」欄に〇印が記載された各被告に対し、同「請求額」欄記載の金員及びこれに対する同「遅延損害金起算日」欄記載の日から支払済みまで平成29年法律第44号による改正前の民法(以下「民法」という。)所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めた一部請求の事案である。 第2 原告らと分離前第1事件相被告であった国(以下、文脈を問わず「国」と表記する。)との間の訴訟は、令和4年6月1日に訴訟上の和解により終局した。 その他、第1事件・第2事件相被告であった(乙ク)株式会社クボタに対する訴え及び第1事件・第2事件相被告であった(乙ケ)ケイミュー株式会社に対する原告らの訴えは、令和6年4月までにいずれも取り下げられた。 、第1事件・第2事件相被告であった(乙ク)株式会社クボタに対する訴え及び第1事件・第2事件相被告であった(乙ケ)ケイミュー株式会社に対する原告らの訴えは、令和6年4月までにいずれも取り下げられた。 一部の原告の訴訟承継や訴えの一部取下げがあった結果、本件の口頭弁論終結の時点における請求は別紙3「請求の趣旨一覧」のとおりである。 第3 用語の主な略称は別紙4「略語一覧表」のとおりである。 3 第2節 前提事実以下の事実は、当事者間に争いがないか、後掲証拠(なお、枝番を含む場合、各枝番の表記を省略することがある。以下同様。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる。 第1 当事者1⑴ 原告らは、北海道に在住し、建設作業に従事した際に石綿関連疾患にり患したと主張する者(本件被災者)又はその相続人である(以下、各原告を当事者目録記載の番号を用いて略記することがある。また、各原告と本件被災者の相続関係を明らかにするため、別紙1の当事者目録記載の各原告の番号を用いて被災者を特定・略記することがある。)。 ⑵ 被災者1(A)は、本件訴訟の原告であったが、令和5年9月9日に死亡した。原告1A1は同被災者の妻であり、訴外A2、訴外A3はいずれも同被災者の子であるが、令和6年2月9日の遺産分割協議により、原告1A1が本件損害賠償請求権を相続することを合意し、同人が本件訴訟を承継した(甲D1の2の3、1の3)。 ⑶ 被災者2(B)は、本件訴訟の原告であったが、令和4年12月28日に死亡した。訴外B2は同被災者の妻であり、原告2B1及び訴外B3はいずれも被災者の子であるが、令和5年12月10日の遺産分割協議により、原告2B1が本件損害賠償請求権を相続することを合意し、同人が本件訴訟を承継した。(甲D2の3)⑷ 被災者7( び訴外B3はいずれも被災者の子であるが、令和5年12月10日の遺産分割協議により、原告2B1が本件損害賠償請求権を相続することを合意し、同人が本件訴訟を承継した。(甲D2の3)⑷ 被災者7(G)の妻のG4は、本件訴訟の原告であったが、令和6年7月15日に死亡した。原告7-2G1、原告7-3G2及び原告7-4G3はいずれもG4の子であるが、G4の損害賠償請求権については、原告7-2G1、原告7-3G2及び原告7-4G3が、それぞれ3分の1ずつを相続し、同人らが本件訴訟を承継した。(甲D7の3の1の2、7の3の2の10ないし13)4 2 被告らは、石綿含有建材を製造・販売していた企業又はその地位を承継したと原告らが主張する株式会社である。なお、被告らの一部は過去に吸収合併や商号変更を経ているものの、いずれも吸収合併や商号変更の前後を問わず、当事者目録において略記した表記を用い、旧商号を括弧書きで補足することがある。吸収合併等のうち、弁論の全趣旨から容易に認められるものについて、以下のとおり補足する。 ⑴ 被告A&AMは、平成12年10月に、株式会社アスク(旧商号は「朝日スレート株式会社」であり、昭和25年に「朝日石綿工業株式会社」に、昭和62年に「株式会社アスク」に、それぞれ商号変更した。以下、商号変更の前後を問わず、「アスク」ということがある。)と、浅野スレート株式会社(以下「浅野スレート」ということがある。)が合併した会社である(以下、アスク、浅野スレート及び被告A&AMを特に区別することなく、単に「被告A&AM」ということがある。)。 ⑵ 被告MMKは、昭和47年4月に三好石綿工業株式会社が九州菱産スレート株式会社・ミヨシボード株式会社・菱産スレート株式会社と事業統合の上で商号変更した三菱セメント石綿工業株式会社 がある。)。 ⑵ 被告MMKは、昭和47年4月に三好石綿工業株式会社が九州菱産スレート株式会社・ミヨシボード株式会社・菱産スレート株式会社と事業統合の上で商号変更した三菱セメント石綿工業株式会社(昭和48年1月に三菱セメント建材株式会社に商号変更)が、平成4年10月に富士見開発株式会社、ズィー・アール・コンクリート株式会社、菱和コンクリート工業株式会社を吸収合併して、三菱マテリアル建材株式会社に商号変更し、平成27年10月1日に現商号に商号変更した会社である(以下、合併等あるいは商号変更の前後を問わず、単に「被告MMK」という。)。(乙ワ13)第2 石綿及び石綿含有建材の概要石綿は、天然に産出される蛇紋石族及び角閃石族の繊維状けい酸塩鉱物の総称であり、クリソタイル、クロシドライト、アモサイト、アンソフィライト、トレモライト及びアクチノライトがある。石綿は、紡織性、抗張力、耐熱性等にその特長を有しており、建材等に広く使用されてきた。 5 我が国の年間石綿輸入量は、高度経済成長期に急増し、昭和36年に10万t、昭和44年に20万tをそれぞれ超え、昭和49年に35万2110tに達し、その後も20万t以上で推移し、昭和63年に32万0393tとなったが、平成元年以降は減少を続け、平成6年に20万t、平成12年に10万tをそれぞれ下回り、平成16年に8186t、平成17年に110tとなり、平成18年以降はゼロとなった。我が国に輸入された石綿の約7割は建設現場で使用された。 我が国で使用されてきた石綿含有建材には、壁や天井の内装材として用いられるスレートボード及びけい酸カルシウム板、外壁や軒天の外装材として用いられるスレート波板、屋根材として用いられる住宅屋根用化粧スレート、床材として用いられるビニール床タイル等があった。また 用いられるスレートボード及びけい酸カルシウム板、外壁や軒天の外装材として用いられるスレート波板、屋根材として用いられる住宅屋根用化粧スレート、床材として用いられるビニール床タイル等があった。また、鉄骨造建物の工事においては、躯体となる鉄骨の耐火被覆として、石綿とセメント等の結合材を混合した吹付け材が用いられていた。そのほか、煙突や給排水管として使用される石綿セメント円筒、建物内の配管の保温のための石綿含有保温材等があった。 (甲G1〔乙アA19、35〕)第3 石綿関連疾患の概要1 石綿ばく露の指標石綿ばく露の指標となる医学的所見としては、①胸膜プラーク、②石綿小体及び石綿繊維、③石綿肺が挙げられ、その概要は以下のとおりである。(甲A106)⑴ 胸膜プラーク胸膜プラークは、胸膜肥厚斑あるいは限局性胸膜肥厚ともいわれ、石綿ばく露と極めて関係の深い医学的所見である。現在の我が国においては、石綿ばく露によってのみ発生すると考えてよいといわれている。 胸膜プラークは、石綿ばく露開始直後には認められず、石綿ばく露後少なくとも10年以上、おおむね15~30年で出現すると考えられている。経6 過とともに石灰化するが、ばく露開始から20年以内に石灰化胸膜プラークが出現することはまれである。(甲A106〔3頁〕)⑵ 石綿小体及び石綿繊維石綿繊維は、他の粉じん粒子とは異なり、吸入された数十μmといった比較的長い繊維も直径が極めて細いので、肺胞にまで到達し、そのまま長期間滞留する。そうした石綿繊維の一部は、表面に鉄蛋白が付着して亜鈴状になった、いわゆる石綿小体を形成する。(甲A106〔3、4頁〕)⑶ 石綿肺石綿肺はじん肺の一種であり、石綿粉じんを吸入することによって起こる肺のびまん性間質性線維症である。我が国においては になった、いわゆる石綿小体を形成する。(甲A106〔3、4頁〕)⑶ 石綿肺石綿肺はじん肺の一種であり、石綿粉じんを吸入することによって起こる肺のびまん性間質性線維症である。我が国においては、胸部エックス線所見で下肺野の線状影を主とする異常陰影を不整形陰影と定義し、職業上の石綿ばく露歴があり、じん肺法(昭和35年法律第30号)による胸部エックス線写真の像の型が第1型以上のものを石綿肺として、肺機能検査と組み合わせて健康管理の措置を講じている。 したがって、石綿肺は、高濃度の石綿ばく露によって発生する疾患でもあり、同時に、石綿ばく露の重要な医学的所見の一つでもある。(甲A106〔5頁〕)2 石綿関連疾患石綿を吸入することによって生ずる石綿関連疾患には、①石綿肺、②肺がん、③中皮腫、④良性石綿胸水、⑤びまん性胸膜肥厚が知られている。 ⑴ 石綿肺ア 石綿肺は、石綿を大量に吸入することによって発生する職業性の疾患である。(甲A106〔17頁」)石綿肺の自覚症状としては、最も早期に出現するのは労作時息切れであり、階段や坂道、平地での急ぎ足の際に自覚される。この自覚症状は石綿ばく露中止後も次第に進行し、呼吸困難を来すようになることが多い。咳・7 痰も主要な症状である。肺機能障害の著しく発展した場合にチアノーゼが出現することもある。(甲G1〔乙アA12〈40頁〉〕)イ 石綿肺の発症と石綿ばく露濃度には量-反応関係(環境条件の変化量とそれに対する生体の反応との関係)が見られ、一般に、ばく露開始後から10年以上の職業性石綿ばく露歴を経て現れるが、石綿吹付けなどの非常に高濃度の石綿ばく露作業では、1年程度のばく露でも所見が見られることがある。(甲A106〔17頁〕、甲G1〔乙アA13、35〈107頁〉、154〈8頁〉、1 歴を経て現れるが、石綿吹付けなどの非常に高濃度の石綿ばく露作業では、1年程度のばく露でも所見が見られることがある。(甲A106〔17頁〕、甲G1〔乙アA13、35〈107頁〉、154〈8頁〉、157〈3頁〉〕)⑵ 肺がんア 肺がん(原発性)は、石綿に特異的な疾患である中皮腫と異なり、喫煙をはじめ、石綿以外に発症原因が多く存在する疾患であり、石綿粉じんばく露者の肺がんと石綿粉じんばく露を受けていない者にみられる肺がんとで臨床像に違いはない。 肺がん発症における喫煙と石綿の関係は、相加的よりも相乗的に作用すると考えられており、喫煙歴も石綿粉じんばく露歴もない人の発がんリスクを1とすると、喫煙歴があり石綿粉じんばく露歴がない人では10.85倍、喫煙歴がなく石綿粉じんばく露歴がある人では5.17倍、喫煙歴も石綿粉じんばく露歴もある人では53.24倍になると報告されている。 (甲A106〔9、10、15頁〕)イ 石綿肺がんの潜伏期間は、15~60年(中央値43年)とする報告や、平均31.8年で、石綿ばく露開始から40年以上経過して発生する事例もあるとする報告などがある。 石綿のばく露量と肺がんの発症率との間には、累積ばく露量が増えれば発症リスクが上がるという直線的な量-反応関係があることが判明している。(甲A106〔15、16頁〕、甲G1〔乙アA35〈108頁〉〕)⑶ 中皮腫8 ア 中皮腫とは、漿膜(肺、心臓、消化管等の臓器の表面と体壁の内側を覆う透明な膜)の表面にある中皮細胞に由来する腫瘍である。 中皮腫は、そのほとんどが石綿を原因とするものである。中皮腫の診断の確からしさが担保されれば、当該中皮腫は石綿を原因とするものと考えて差し支えないとされており、肺がんと異なり、喫煙との相互作用は見られない。(甲A106〔7 綿を原因とするものである。中皮腫の診断の確からしさが担保されれば、当該中皮腫は石綿を原因とするものと考えて差し支えないとされており、肺がんと異なり、喫煙との相互作用は見られない。(甲A106〔7頁〕、甲G1〔乙アA35〈121、153頁〉〕)イ 初発症状としては、息切れ、胸痛、咳が多い。胸痛は特定の部位に限局せず持続的で、中皮腫の進展とともに強くなる(肺がんなどによるがん性胸膜炎は疼痛を伴わないことが多く、極めて対照的である。)。胸痛のコントロールは難しく、予後不良因子の一つに挙げられている。(甲G1〔乙アA35〈155頁〉)ウ 石綿ばく露開始から中皮腫発症の症状確認日までの潜伏期間は、平均39.4年、中央値は40.0年とする報告などがあるが、ばく露量が多いほど短くなり、一般に肺がんより長く、また、肺がんと異なり、石綿ばく露開始からの年数を経るほど発生リスクが高くなるとされている。 職業ばく露とみなすために必要なばく露期間としては、おおむね1年以上とされているが、作業環境管理が十分に行われていなかった時代に吹付け作業等に従事した場合は、1年未満でも発症が否定できない。(甲A106〔8、9頁〕、甲G1〔乙アA35〈120頁〉、40〈80頁〉〕)エ 中皮腫は、非常に予後の悪い疾患である。2年生存率は30%、平均余命の中央値は15か月、平均値は21か月である。(甲A106〔8、9頁〕)オ すべての種類の石綿が胸膜中皮腫を引き起こすが、その発がん性は、クリソタイルを1とすると、アモサイトは100倍、クロシドライトは500倍とする意見もある。腹膜中皮腫は、クリソタイル単独ばく露による例は非常に稀である。(甲G1〔乙アA35〈113頁〉〕)9 ⑷ 良性石綿胸水ア 良性石綿胸水は、石綿胸膜炎ともいい、通常は片側で少量の胸 ある。腹膜中皮腫は、クリソタイル単独ばく露による例は非常に稀である。(甲G1〔乙アA35〈113頁〉〕)9 ⑷ 良性石綿胸水ア 良性石綿胸水は、石綿胸膜炎ともいい、通常は片側で少量の胸水を認める疾患である。石綿以外にも様々な原因で発症する疾患である。本疾患の「良性」とは、悪性腫瘍ではないということで、臨床経過が必ずしも良性であるということではない。 良性石綿胸水については、中皮腫、肺がん及び石綿肺に比べて、既知の疫学的並びに臨床的知見は非常に少なく、殊に、我が国での報告は余りない。(甲A106〔21頁〕、甲G1〔乙アA35〈128、197頁〉〕)イ 半数は自覚症状がなく、検診等で偶然発見される。自覚症状としては、胸痛、発熱、呼吸困難等が挙げられるが、これらは、胸膜中皮腫の初発症状と同様である。(甲G1〔乙アA35〈197頁〉〕)ウ 石綿高濃度ばく露の場合に発生頻度が高いとの報告がある一方で、低濃度ばく露を示唆する胸膜プラークを伴う症例の方が多いとの報告もある。 発症までの潜伏期間は石綿関連疾患中一番短く、ばく露後10年以内に発症する疾患は良性石綿胸水のみともいわれるが、他方、平均潜伏期間を28.7~34.5年とする報告もされている。(甲A106〔20頁〕、甲G1〔乙アA35〈201頁〉〕)エ 約半数の例において、本人が気付かないまま胸水が自然消失するが、胸水が消失した後に約半数の症例でびまん性胸膜肥厚を残し、程度の差はあるものの、徐々に少なからぬ肺機能障害を来す。びまん性胸膜肥厚とともに、予後不良の要因は胸膜中皮腫の合併である。(甲A106〔20頁〕)⑸ びまん性胸膜肥厚びまん性胸膜肥厚とは、胸膜プラークが壁側胸膜の病変であるのに対し、臓側胸膜(肺側胸膜)の病変であり、壁側胸膜との癒着を伴う。胸膜プラー 併である。(甲A106〔20頁〕)⑸ びまん性胸膜肥厚びまん性胸膜肥厚とは、胸膜プラークが壁側胸膜の病変であるのに対し、臓側胸膜(肺側胸膜)の病変であり、壁側胸膜との癒着を伴う。胸膜プラークとは異なり、石綿ばく露との関係は特異性が低く、必ずしも石綿によるものとは限らない。 10 石綿肺と同様に、病態は徐々に進行する経過をたどるが、肺がん・中皮腫のように短期間で死に至ることはない。(甲A106〔22頁〕、甲G1〔乙アA35〈129頁〉〕)第4 業務上疾病の認定等1 労働者に発生した疾病が、石綿関連疾患として業務上疾病に該当するか否かを認定するための具体的基準として、厚生労働省労働基準局長通達(平成24年3月29日付け基発0329第2号「石綿による疾病の認定基準について」。 以下「石綿認定基準」という。)が発出されている。 石綿認定基準は、石綿との関連が明らかな業務上疾病として、①石綿肺、②肺がん、③中皮腫、④良性石綿胸水及び⑤びまん性胸膜肥厚を挙げる。そして、石綿認定基準は、良性石綿胸水以外について、具体的な認定要件を定めている(良性石綿胸水は全案件について本省協議とされている。)。 なお、石綿肺については、石綿ばく露作業に従事した労働者に発生した疾病であって、①じん肺管理区分が管理4に該当する石綿肺か、②石綿肺に合併した合併症のみが業務上の疾病として取り扱われている。(甲G1〔乙アA2002〕)2 本件被災者は、被災者6(F)を除き、いずれも、石綿肺、肺がん、中皮腫のいずれかに罹患した者として、労働者災害補償保険法所定の労災認定を受け、本人ないしその相続人が労災保険年金、労災保険休業(補償)給付、労災遺族年金等の労災補償の給付を受けている。被災者6(F)は、アーク溶接作業等の粉じん作業とするじん肺症として労 定の労災認定を受け、本人ないしその相続人が労災保険年金、労災保険休業(補償)給付、労災遺族年金等の労災補償の給付を受けている。被災者6(F)は、アーク溶接作業等の粉じん作業とするじん肺症として労災認定を受け、療養補償給付等の給付を受けている。(甲D1ないし14の各1及び2。)第5 関係法令の概要1⑴ 昭和22年に公布された労働基準法(一部を除き同年11月1日施行。以下、昭和47年法律第57号による改正前の労働基準法を「旧労基法」という。)においては、以下の規定が設けられた。なお、使用者が42条及び4311 条の規定により講ずべき措置の基準及び労働者が44条の規定により遵守すべき事項は、命令に委任された(45条)。 ア 使用者は、粉じん等による危害を防止するために必要な措置を講じなければならない(42条)。 イ 使用者は、労働者を就業させる建設物及びその附属建設物について、換気等に必要な措置その他労働者の健康、風紀及び生命の保持に必要な措置を講じなければならない(43条)。 ウ 労働者は、危害防止のために必要な事項を遵守しなければならない(44条)。 エ 使用者は、労働者を雇い入れた場合においては、その労働者に対して、当該業務に関し必要な安全及び衛生のための教育を施さなければならない(50条)。 ⑵ 労働大臣は、昭和22年10月31日、旧労基法の規定に基づき、労働安全衛生規則(同年労働省令第9号。以下「旧安衛則」という。同年11月1日施行)を制定した。旧安衛則には、次の内容の規定が設けられた。 ア 粉じん等を発散するなど衛生上有害な作業場においては、その原因を除去するため、作業又は施設の改善に努めなければならない(172条)。 イ 粉じん等を発散する屋内作業場においては、場内空気のその含有濃度が有害な程度になら 衛生上有害な作業場においては、その原因を除去するため、作業又は施設の改善に努めなければならない(172条)。 イ 粉じん等を発散する屋内作業場においては、場内空気のその含有濃度が有害な程度にならないように、局所における吸引排出その他新鮮な空気による換気等適当な措置を講じなければならない(173条)。 ウ 屋外又は坑内において、著しく粉じんを飛散する作業場においては、注水その他粉じん防止の措置を講じなければならないが、作業の性質上やむを得ない場合はこの限りでない(175条)。 エ 粉じん等を発散し、衛生上有害な場所等には、必要ある者以外の者の立ち入ることを禁止し、その旨を掲示しなければならない(179条)。 オ 粉じん等を発散し、衛生上有害な場所における業務等においては、その12 作業に従事する労働者に使用させるために、防護衣、保護眼鏡、呼吸用保護具等適当な保護具を備えなければならない(181条)。 カ 181条等に規定する保護具は、同時に就業する労働者の人数と同数以上を備え、常時有効かつ清潔に保持しなければならない(184条)。 キ 181条等に規定する作業に従事する労働者は、就業中保護具を使用しなければならない(185条)。 ⑶ 労働大臣は、昭和46年4月28日、旧労基法の規定に基づき、及び旧労基法を実施するため、特定化学物質等障害予防規則(同年労働省令第11号。 以下「旧特化則」という。一部を除き同年5月1日施行)を制定した。旧特化則では、石綿は第二類物質とされ(2条2号、別表第2)、第二類物質に係る作業に関し、次の内容の規定が設けられた。 ア 使用者は、第二類物質の粉じん等が発散する屋内作業場について、当該発散源に局所排気装置を設けなければならず、局所排気装置の設置が著しく困難であること等により局所排気装置を設けない 設けられた。 ア 使用者は、第二類物質の粉じん等が発散する屋内作業場について、当該発散源に局所排気装置を設けなければならず、局所排気装置の設置が著しく困難であること等により局所排気装置を設けない場合には、全体換気装置を設けるなど労働者の障害を予防するため必要な措置を講じなければならない(4条1項、2項)。 イ 使用者は、第二類物質を製造し、又は取り扱う作業場に、関係者以外の者が立ち入ることを禁止し、かつ、その旨を見やすい箇所に表示しなければならない(25条1号)。 ウ 使用者は、第二類物質の運搬又は貯蔵のために使用する容器又は包装の見やすい箇所に当該物質の名称及び取扱い上の注意事項を表示しなければならない(26条2項)。 エ 使用者は、第二類物質を製造し、又は取り扱う作業場に、当該物質の粉じん等を吸入することによる障害を予防するため必要な呼吸用保護具を備えなければならない(32条)。 オ 使用者は、32条の保護具について、同時に就業する労働者の人数と同13 数以上を備え、常時有効かつ清潔に保持しなければならない(34条)。 2⑴ 昭和47年6月8日、労働安全衛生法が公布され(以下「安衛法」という。 一部を除き同年10月1日施行)、これに伴い、旧労基法42条以下に定められていた安全及び衛生に関する規定が改正され、労働者の安全及び衛生に関しては、安衛法の定めるところによるものとされた。安衛法では、安衛法は、労働基準法とあいまって、労働災害の防止のための危害防止基準の確立、責任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な作業環境(平成4年法律第55号による改正後は「職場環境」)の形成を促進することを目的としており( する総合的計画的な対策を推進することにより職場における労働者の安全と健康を確保するとともに、快適な作業環境(平成4年法律第55号による改正後は「職場環境」)の形成を促進することを目的としており(1条)、以下の規定が設けられた。なお、22条、23条等の規定により事業者が講ずべき措置及び26条の規定により労働者が守らなければならない事項は、省令に委任された(27条1項)。 ア 事業者は、労働災害を防止するための管理を必要とする作業で、政令で定めるものについては、作業主任者を選任し、その者に作業に従事する労働者の指揮その他の省令で定める事項を行わせなければならない(14条)。 イ 事業者は、粉じん等による健康障害を防止するため必要な措置を講じなければならない(22条)。 ウ 事業者は、労働者を就業させる建設物その他の作業場について、換気等に必要な措置その他労働者の健康、風紀及び生命の保持のため必要な措置を講じなければならない(23条)。 エ 労働者は、事業者が22条、23条等の規定に基づき講ずる措置に応じて必要な事項を守らなければならない(26条)。 オ 黄りんマッチ、ベンジジン、ベンジジンを含有する製剤その他の労働者に重度の健康障害を生ずる物で、政令で定めるものは、製造し、輸入し、14 譲渡し、提供し、又は使用してはならない(55条)。 カ ベンゼン、ベンゼンを含有する製剤その他の労働者に健康障害を生ずるおそれのある物で政令で定めるもの等を譲渡し、又は提供する者は、省令で定めるところにより、その容器又は包装に、名称並びに人体に及ぼす作用及び貯蔵又は取扱い上の注意等を表示しなければならない(57条)。 キ 事業者は、労働者を雇い入れたとき及び労働者の作業内容を変更したときは、当該労働者に対し、省令で定めるところにより、その す作用及び貯蔵又は取扱い上の注意等を表示しなければならない(57条)。 キ 事業者は、労働者を雇い入れたとき及び労働者の作業内容を変更したときは、当該労働者に対し、省令で定めるところにより、その従事する業務に関する安全又は衛生のための教育を行なわなければならない(59条1項、2項)。 ⑵ 内閣は、安衛法の規定に基づき、労働安全衛生法施行令(昭和47年政令第318号。以下「安衛令」という。一部を除き同年10月1日施行)を制定し、安衛令は、同年8月19日、公布された。 ⑶ 労働大臣は、昭和47年9月30日、安衛法及び安衛令の規定に基づき、並びに安衛法を実施するため、労働安全衛生規則(同年労働省令第32号。 以下「安衛則」という。一部を除き同年10月1日施行)を制定し、旧安衛則を廃止した。安衛則には、次の内容の規定が設けられた。 ア 事業者は、粉じん等を発散するなど有害な作業場においては、その原因を除去するため、代替物の使用、作業の方法又は機械等の改善等必要な措置を講じなければならない(576条)。 イ 事業者は、粉じん等を発散する屋内作業場においては、空気中の粉じん等の含有濃度が有害な程度にならないようにするため、局所排気装置又は全体換気装置を設けるなど必要な措置を講じなければならない(577条)。 ウ 事業者は、有害物を含む排気を排出する局所排気装置その他の設備については、当該有害物の種類に応じて、集じんその他の有効な方式による排気処理装置を設けなければならない(579条)。 15 エ 事業者は、粉じんを著しく飛散する屋外又は坑内の作業場においては、注水その他の粉じんの飛散を防止するため必要な措置を講じなければならない(582条)。 オ 事業者は、粉じん等を発散する有害な場所等に関係者以外の者が立ち入ることを禁止し、か の作業場においては、注水その他の粉じんの飛散を防止するため必要な措置を講じなければならない(582条)。 オ 事業者は、粉じん等を発散する有害な場所等に関係者以外の者が立ち入ることを禁止し、かつ、その旨を見やすい箇所に表示しなければならない(585条)。 カ 事業者は、粉じん等を発散する有害な場所における業務等においては、当該業務に従事する労働者に使用させるために、保護衣、保護眼鏡、呼吸用保護具等適切な保護具を備えなければならない(593条)。 キ 事業者は、593条に規定する保護具については、同時に就業する労働者の人数と同数以上を備え、常時有効かつ清潔に保持しなければならない(596条)。 ク 593条に規定する業務に従事する労働者は、事業者から当該業務に必要な保護具の使用を命じられたときは、当該保護具を使用しなければならない(597条)。 ⑷ 労働大臣は、昭和47年9月30日、安衛法及び安衛令の規定に基づき、並びに安衛法を実施するため、特定化学物質等障害予防規則(同年労働省令第39号。以下「特化則」という。一部を除き同年10月1日施行)を制定し、旧特化則を廃止した。 特化則においても、旧特化則と同様、石綿は第二類物質とされ(2条4号、安衛令別表第3第3号2)、第二類物質に係る作業に関し、次の内容の規定が設けられ、従来の規制がほぼそのまま引き継がれた。 なお、労働省は、屋内作業場における石綿スレートの切断に際しては、特化則5条の定めにより局所排気装置の設置が必要であるとの見解を示していた。(甲G1〔乙アA238〈29頁〉〕)ア 事業者は、第二類物質の粉じん等が発散する屋内作業場について、当該16 発散源に局所排気装置を設けなければならず、局所排気装置の設置が著しく困難であること等により局所排気装置を設けない場合 ア 事業者は、第二類物質の粉じん等が発散する屋内作業場について、当該16 発散源に局所排気装置を設けなければならず、局所排気装置の設置が著しく困難であること等により局所排気装置を設けない場合には、全体換気装置を設けるなど労働者の健康障害を予防するため必要な措置を講じなければならない(5条1項、2項)。 イ 事業者は、第二類物質を製造し、又は取り扱う作業場に、関係者以外の者が立ち入ることを禁止し、かつ、その旨を見やすい箇所に表示しなければならない(24条1号)。 ウ 事業者は、第二類物質の運搬又は貯蔵のために使用する容器又は包装の見やすい箇所に当該物質の名称及び取扱い上の注意事項を表示しなければならない(25条2項)。 エ 事業者は、第二類物質を製造し、又は取り扱う作業場に、当該物質の粉じん等を吸入することによる労働者の健康障害を予防するため必要な呼吸用保護具を備えなければならない(43条)。 オ 事業者は、43条の保護具について、同時に就業する労働者の人数と同数以上を備え、常時有効かつ清潔に保持しなければならない(45条)。 3⑴ 内閣は、昭和50年1月14日、安衛令を一部改正し(一部を除き同年4月1日施行)、労働大臣は、同年3月22日、安衛則を一部改正した(安衛則別表第2の改正規定等につき同年4月1日施行)。 上記の安衛令及び安衛則の改正により、石綿及び石綿を含有する製剤その他の物(ただし、石綿の含有量が重量の5%以下のものを除く。以下、石綿と安衛令、安衛則又は特化則が規制対象とする石綿を含有する製剤その他の物とを併せて「石綿等」ということがある。)が、安衛法57条に基づく表示義務の対象となり、名称、人体に及ぼす作用、取扱い上の注意等を表示すべきこととなった(上記改正後の安衛令18条2号の2、同条39号、上記改正後の 等」ということがある。)が、安衛法57条に基づく表示義務の対象となり、名称、人体に及ぼす作用、取扱い上の注意等を表示すべきこととなった(上記改正後の安衛令18条2号の2、同条39号、上記改正後の安衛則30条、32条2号の2、33条、別表第2第2号の2。ただし、昭和50年4月1日において現に存するものについては、同年9月3017 日までの間は、安衛法57条の規定は適用しないとの経過措置が設けられた。)。 ⑵ 労働省労働基準局長は、昭和50年3月27日付けで、「労働安全衛生法第57条に基づく表示の具体的記載方法について」と題する通達(同日基発第170号。以下「表示方法通達」という。)を発出し、石綿等についての安衛法57条に基づく表示の具体的記載方法として、名称、成分、含有量のほか、以下の注意事項を示した。(甲G1〔乙アB172〕)注意事項 多量に粉じんを吸入すると健康をそこなうおそれがありますから、下記の注意事項を守つて下さい。 1.粉じんが発散する屋内の取扱い作業場所には、局所排気装置を設けて下さい。 2.取扱い中は、必要に応じ防じんマスクを着用して下さい。 (3ないし5は省略)⑶ 労働大臣は、昭和50年9月30日、特化則を一部改正した(一部を除き同年10月1日施行。以下、この改正を「昭和50年改正特化則」という。)。 上記の改正のうち、石綿等に関するものの主な内容は、次のとおりである。 ア 石綿のほか、石綿を含有する製剤その他の物(ただし、石綿の含有量が重量の5%以下のものを除く。)も、第二類物質とされ、事業者の呼吸用保護具を備える義務の対象とされるなどした(前記改正後の安衛令別表第3第2号4、37、昭和50年改正特化則2条1項2号、2項、別表第1第4号)。 イ 事業者は、石綿等を含む特別管理物質を製造し、又は取り を備える義務の対象とされるなどした(前記改正後の安衛令別表第3第2号4、37、昭和50年改正特化則2条1項2号、2項、別表第1第4号)。 イ 事業者は、石綿等を含む特別管理物質を製造し、又は取り扱う作業場には、特別管理物質の名称、人体に及ぼす作用、取扱い上の注意事項及び使用すべき保護具に係る事項を、作業に従事する労働者が見やすい箇所に掲示しなければならないとされた(昭和50年改正特化則38条の3。以下、この規定を「本件掲示義務規定」という。)。 18 ウ 事業者は、原則として、石綿等を吹き付ける作業に、労働者を従事させてはならないとされた(昭和50年改正特化則38条の7第1項)。 エ 事業者は、石綿等の切断、穿孔、研磨等の作業、石綿等を塗布し、注入し、又は張り付けた物の破砕、解体等の作業、粉状の石綿等を容器に入れ、又は容器から取り出す作業及び粉状の石綿等を混合する作業のいずれかに労働者を従事させるときは、石綿等を湿潤な状態のものとすることが著しく困難なときを除き、石綿等を湿潤な状態のものとしなければならず、これらの作業を行う場所に、石綿等の切りくず等を入れるための蓋のある容器を備えなければならないとされた(昭和50年改正特化則38条の8第1項、2項)。 オ 石綿等を取り扱う作業(試験研究のため取り扱う作業を除く。)が、安衛法14条の作業主任者の選任を要する作業とされた(前記改正後の安衛令6条18号、別表第3第2号4、37、昭和50年改正特化則2条2項、別表第1第4号)。 ⑷ 労働省労働基準局長は、昭和50年10月1日付けで、「特定化学物質等障害予防規則の一部を改正する省令の施行について」と題する通達(同日基発第573号。以下「573号通達」という。)を発出した。この中で、特化則の改正は、最近特に大きな関心事となっている 定化学物質等障害予防規則の一部を改正する省令の施行について」と題する通達(同日基発第573号。以下「573号通達」という。)を発出した。この中で、特化則の改正は、最近特に大きな関心事となっている職業がん等職業性疾病の発生状況等に鑑み、特化則の充実を図ったものであるとされ、「特別管理物質」は、人体に対する発がん性が疫学調査の結果明らかとなった物、動物実験の結果発がんの認められたことが学会等で報告された物等人体に遅発性効果の健康障害を与える、又は治癒が著しく困難であるという有害性に着目し、特別の管理を必要とするものを定めたものであるとされた。また、573号通達は、本件掲示義務規定の掲示事項のうち、特別管理物質の名称、人体に及ぼす作用、取扱い上の注意事項については、表示方法通達の当該部分と同一内容として差し支えないとした。(甲G1〔乙アB32〕)19 4⑴ 内閣は、平成7年1月25日、安衛令を一部改正し(一部を除き同年4月1日施行)、アモサイト、クロシドライト及びこれらをその重量の1%を超えて含有する製剤その他の物を、安衛法55条により製造等が禁止される有害物等に定めた(上記改正後の安衛令16条4号、5号、10号)。 ⑵ 労働大臣は、平成7年1月26日、安衛則及び特化則を一部改正した(いずれも、一部を除き同年4月1日施行)。これにより、安衛則及び特化則の規制対象となる石綿を含有する製剤その他の物の範囲が、石綿の含有量が重量の5%を超えるものから、1%を超えるものに拡大された(上記改正後の安衛則別表第2第2号の2、上記改正後の特化則別表第1第4号、別表第5第1号)。 このほか、上記改正後の安衛則により、事業者に、石綿等が吹き付けられている耐火建築物等における石綿等の除去の作業を行う場合の当該作業に関する計画の届出義務が課され( 1第4号、別表第5第1号)。 このほか、上記改正後の安衛則により、事業者に、石綿等が吹き付けられている耐火建築物等における石綿等の除去の作業を行う場合の当該作業に関する計画の届出義務が課され(90条5号の2)、上記改正後の特化則により、事業者に、石綿等の切断、穿孔、研磨等の作業、石綿等を塗布し、注入し、又は張り付けた物の破砕、解体等の作業、粉状の石綿等を容器に入れ、又は容器から取り出す作業及び粉状の石綿等を混合する作業のいずれかに労働者を従事させるときに、当該労働者に呼吸用保護具、作業衣等を使用させる義務(38条の9第1項、2項)、建築物の解体等の作業を行うときに、石綿等が使用されている箇所及び使用状況を設計図書等により調査し、結果を記録する義務(38条の10)、建築物の鉄骨等に吹き付けられた石綿等を除去する作業に労働者を従事させるときに、当該除去を行う作業場所を、それ以外の作業を行う作業場所から隔離する義務(38条の11)が課された。 5 内閣は、平成15年10月16日、安衛令を一部改正し(平成16年10月1日施行)、石綿を含有する石綿セメント円筒、押出成形セメント板、住宅屋根用化粧スレート、繊維強化セメント板、窯業系サイディング等の製品で、その20 含有する石綿の重量が当該製品の重量の1%を超えるものを、安衛法55条により製造等が禁止される有害物等に定めた(上記改正後の安衛令16条1項、別表第8の2)。 6 内閣は、平成18年8月2日、安衛令を一部改正し(同年9月1日施行)、例外的に改正附則において除外するもののほか、石綿及び石綿をその重量の0. 1%を超えて含有する製剤その他の物を、安衛法55条により製造等が禁止される有害物等に定めた(上記改正後の安衛令16条1項、上記改正附則3条)。 第6 建設アスベスト訴訟にお び石綿をその重量の0. 1%を超えて含有する製剤その他の物を、安衛法55条により製造等が禁止される有害物等に定めた(上記改正後の安衛令16条1項、上記改正附則3条)。 第6 建設アスベスト訴訟における最高裁判所の判断内容等本件訴訟は、建設作業に従事し、石綿粉じんにばく露したことにより、石綿関連疾患にり患したと主張する者又はその承継人が、国及び建材メーカーらに損害賠償を求める集団訴訟であるところ(ただし、原告らと国との間の訴訟は、訴訟上の和解により終局した。)、同種事案につき、最高裁判所が言い渡した判決の概要のうち、本件に関連するのは以下のとおりである。 1 最高裁平成30年(受)第1447号、同第1448号、同第1449号、同第1451号、同第1452号令和3年5月17日第一小法廷判決(以下「神奈川1陣最判」という。)は、国に対する国家賠償請求及び建材メーカーらに対する不法行為に基づく損害賠償請求について、次のとおり判断した。 ⑴ 国に対する国家賠償請求について労働大臣が建設現場における石綿関連疾患の発生防止のために安衛法に基づく規制権限を行使しなかったこと(同法に基づく規制権限を行使して、通達を発出するなどして、石綿含有建材の表示及び石綿含有建材を取り扱う建設現場における掲示として、石綿含有建材から生ずる粉じんを吸入すると石綿肺、肺がん、中皮腫等の重篤な石綿関連疾患を発症する危険があること並びに石綿含有建材の切断等の石綿粉じんを発散させる作業及びその周囲における作業をする際には必ず適切な防じんマスクを着用する必要があることを示すように指導監督をしなかったこと)は、屋根を有し周囲の半分以21 上が外壁に囲まれ屋内作業場と評価し得る建設現場の内部(屋内建設現場)における建設作業(石綿吹付け作業を除く。以下、特に言及しない限 に指導監督をしなかったこと)は、屋根を有し周囲の半分以21 上が外壁に囲まれ屋内作業場と評価し得る建設現場の内部(屋内建設現場)における建設作業(石綿吹付け作業を除く。以下、特に言及しない限り同じ。)に従事して石綿粉じんにばく露した者のうち、労働者との関係においても、また、安衛法2条2号において定義された労働者に該当しない者(いわゆる一人親方及び個人事業主等)との関係においても、昭和50年10月1日以降、国家賠償法1条1項の適用上違法であるなどと判断した。 ⑵ 建材メーカーらに対する不法行為に基づく損害賠償請求ア 民法719条1項後段の趣旨は、被害者の保護を図るため、公益的観点から、因果関係の立証責任を転換したものであるとした上で、①被害者によって特定された複数の行為者のほかに被害者の損害をそれのみで惹起し得る行為をした者が存在しないことは、同項後段の適用の要件であること、②同項後段を類推適用する場面でも、同様に因果関係の立証責任が転換されることを認めた。 イ 多数の建材メーカーが、石綿含有建材を製造・販売する際に、当該建材が石綿を含有しており、当該建材から生ずる粉じんを吸入すると石綿肺、肺がん、中皮腫等の重篤な石綿関連疾患を発症する危険があること等を当該建材に表示する義務を負っていたにもかかわらず、その義務を履行しておらず、大工らが、建設現場において、複数の建材メーカーが製造・販売した石綿含有建材を取り扱うこと等により、累積的に石綿粉じんにばく露し、中皮腫、石綿肺、肺がん又はびまん性胸膜肥厚にり患した場合において、次の事情の下では、民法719条1項後段の類推適用が認められると判断した。その上で、判示の事情の下において寄与度により賠償責任の範囲を限定することを明示し、建材メーカーらは、上記大工らの各損害の3分の1につい では、民法719条1項後段の類推適用が認められると判断した。その上で、判示の事情の下において寄与度により賠償責任の範囲を限定することを明示し、建材メーカーらは、上記大工らの各損害の3分の1について、連帯して損害賠償責任を負うと判断した。 (ア)上記大工らは、建設現場において、石綿含有スレートボード・フレキシブル板、平板及び石綿含有けい酸カルシウム板第1種という種類の石22 綿含有建材を直接取り扱っていた。 (イ)上記の各種類の石綿含有建材のうち、A&AM、ニチアス及びMMKの3社が製造・販売したものが、上記大工らが稼働する建設現場に相当回数にわたり到達して用いられていた。 (ウ)上記大工らが、上記の各種類の石綿含有建材を直接取り扱ったことによる石綿粉じんのばく露量は、各自の石綿粉じんのばく露量全体のうち3分の1程度であった。 (エ)上記大工らの中皮腫、石綿肺、肺がん又はびまん性胸膜肥厚の発症について、上記3社が個別にどの程度の影響を与えたのかは明らかでない。 ウ また、石綿含有建材の製造・販売をする者が、建物の工事において、当該建材を建物に取り付ける作業等のような当該建材を最初に使用する際の作業に従事する者に対する義務として、当該建材が石綿を含有しており、当該建材から生ずる粉じんを吸入すると石綿肺、肺がん、中皮腫等の重篤な石綿関連疾患を発症する危険があること等を当該建材に表示する義務を負う場合、当該義務は、上記の者に対する関係においてのみ負担するものではなく、当該建材が一旦使用された後に当該工事において当該建材に配線や配管のため穴を開ける作業等をする者に対する関係においても負担するものと解するのが相当であると判断した。 2 最高裁平成31年(受)第596号令和3年5月17日第一小法廷判決(以下「東京1陣最判」という。) 穴を開ける作業等をする者に対する関係においても負担するものと解するのが相当であると判断した。 2 最高裁平成31年(受)第596号令和3年5月17日第一小法廷判決(以下「東京1陣最判」という。)は、次の⑴から⑸までの手順による立証手法により、特定の建材メーカーの製造・販売した石綿含有建材が特定の建設作業者の作業する建設現場に相当回数にわたり到達していたとの事実(以下「建材現場到達事実」という。)が立証され得ることを一律に否定した原審の判断には、経験則又は採証法則に反する違法があると判断した。 ⑴ 国土交通省及び経済産業省により公表されているデータベースに掲載されるなどした石綿含有建材を複数の種別に分類し、そのうち、建設作業者ら23 の職種ごとに、直接取り扱う頻度が高く、取り扱う時間も長く、取り扱う際に多量の石綿粉じんにばく露するといえる種別を選定する。 ⑵ 上記のとおり選定された種別に属する石綿含有建材のうち、上記建設作業者らが建設作業に従事していた地域での販売量が僅かであるもの等を除外し、さらに、上記建設作業者ごとに、建設作業に従事した期間とその建材の製造期間との重なりが1年未満である可能性のあるもの等を除外する。 ⑶ 上記⑴及び⑵により上記建設作業者ごとに特定した石綿含有建材のうち、同種の建材の中での市場占有率がおおむね10%以上であるものは、その市場占有率を用いた確率計算を考慮して、上記建設作業者の作業する建設現場に到達した蓋然性が高いものとする。 ⑷ 上記建設作業者がその取り扱った石綿含有建材の名称、製造者等につき具体的な記憶に基づいて供述等をする場合には、その供述等により上記建設作業者の作業する建設現場に到達した石綿含有建材を特定することを検討する。 ⑸ 建材メーカーらから、自社の石綿含有建材につき販売量が少な 記憶に基づいて供述等をする場合には、その供述等により上記建設作業者の作業する建設現場に到達した石綿含有建材を特定することを検討する。 ⑸ 建材メーカーらから、自社の石綿含有建材につき販売量が少なかったこと等が具体的な根拠に基づいて指摘された場合には、その建材を上記⑴から⑷までにより特定したものから除外することを検討する。 3 最高裁平成31年(受)第290号、同第291号、同第292号令和3年5月17日第一小法廷判決(以下「京都1陣最判」という。)は、判示の事情の下では、国及び建材メーカーらが、平成13年から平成16年9月30日(建材メーカーらとの関係では平成15年12月31日)までの期間に、屋外の建設現場における石綿含有建材の切断、設置等の作業(屋外建設作業)に従事する者に石綿関連疾患にり患する危険が生じていることを認識することができたということはできないと判断した。 4 最高裁平成31年(受)第491号、同第495号令和3年5月17日第一小法廷判決(以下「大阪1陣最判」という。)は、判示の事情の下では、建材メ24 ーカーが、昭和50年から平成2年までの期間に、屋外建設作業に従事する者に石綿関連疾患にり患する危険が生じていることを認識することができたということはできないと判断した。 5 最高裁令和3年(受)第1125号、同第1126号令和4年6月3日第二小法廷判決(以下「神奈川2陣最判」という。)は、建材メーカーが、石綿含有建材を製造・販売するに当たり、当該建材が使用される建物の解体作業者に対し、当該建材から生ずる粉じんにばく露すると石綿関連疾患にり患する危険があること等を表示すべき義務を負っていたということはできないと判断した。 第3節 争点第1 被告らの注意義務違反について1 被告らの注意義務の内容・予 すると石綿関連疾患にり患する危険があること等を表示すべき義務を負っていたということはできないと判断した。 第3節 争点第1 被告らの注意義務違反について1 被告らの注意義務の内容・予見可能性の程度について2 被告らの予見可能性について3 被告らの警告義務違反について4 被告らの石綿不使用義務違反について第2 警告義務違反者の特定及び石綿含有建材の建設現場への到達について1 総論(民法719条1項後段の類推適用について)2 原因建材の選定3 主要原因建材の選定4 被災者ごとの主要原因建材の特定第3 主要原因企業が負うべき責任について(責任論としての寄与割合)第4 損害について第5 喫煙歴等、石綿粉じん以外の要因について第6 被告らの個別の主張について第4節 争点に係る原告らの主張の要旨第1 被告らの注意義務違反について1 被告らの注意義務の内容・予見可能性の程度について25 ⑴ 被告らは、石綿含有建材という人の生命、身体、健康の法益を侵害する危険性を有する製品を製造・販売する企業として、高度の安全性確保義務を一般的に負っている。その内容は、医学的知見の進展等に関する研究調査義務、石綿含有建材の出荷情報等の記録・保存等を行う義務、販売後の使用状況の変化等の追跡監視義務、石綿粉じんの危険性等の警告義務、石綿含有建材の製造・販売の停止・中止義務等であるが、具体的には、石綿粉じんの危険性に関する医学知見等の進展に伴って段階的に厳しくなるものである。 ⑵ そして、被告らの警告義務は、石綿粉じんによる生命、身体、健康の法益侵害に係る危険を予見し得る段階で発生するところ、かかる義務が人の生命、身体、健康という重大な法益の侵害を未然に防止するために ⑵ そして、被告らの警告義務は、石綿粉じんによる生命、身体、健康の法益侵害に係る危険を予見し得る段階で発生するところ、かかる義務が人の生命、身体、健康という重大な法益の侵害を未然に防止するために早期に履行されるべきものであり、かつ、それを履行することによる負担が軽微であることからすれば、警告義務の前提となる予見可能性は、石綿粉じんばく露により建設作業者の生命、身体、健康に重大な被害が生じることの疑念を抱かせる程度の医学的情報等の集積に基づく抽象的な予見可能性で足りる。 したがって、後記のとおり、被告らの警告義務の始期は昭和49年1月1日であり、石綿含有建材の製造・販売の停止・中止義務は昭和40年か、遅くとも石綿の代替化努力義務が制定された昭和50年までには生じていた。 2 被告らの予見可能性について昭和33年頃には石綿肺に関する医学的知見が確立し、昭和35年には石綿粉じんを含む全ての鉱物性粉じんを対象とする旧じん肺法が施行されたこと、昭和48年の時点において、石綿関連疾患に関する医学的知見が多数報告・集積されていたこと、同年7月11日には労働省労働基準局長の通達が石綿粉じんの抑制濃度を5μm以上の繊維として5本/㎤と指示するなど、石綿粉じんの抑制措置が強化されたこと、石綿粉じん濃度の測定結果に関する論文の公表により、石綿含有建材が規制濃度を超える石綿濃度を発生させる危険性が確認されていたこと等からすれば、どんなに遅くとも、昭和49年には、被告らは、26 屋内建設現場における建設作業者との関係で、石綿含有建材から発生する石綿粉じんのばく露によって石綿関連疾患にり患する可能性を具体的に予見できたというべきである。 また、これらの事情については、後記3⑴のとおり、外装材や改修・解体工事の関係でも別異に解すべき理由はない。 んのばく露によって石綿関連疾患にり患する可能性を具体的に予見できたというべきである。 また、これらの事情については、後記3⑴のとおり、外装材や改修・解体工事の関係でも別異に解すべき理由はない。 3 被告らの警告義務違反について⑴ 警告義務の具体的内容・範囲ア 被告らの製造・販売する石綿含有建材は、切断・加工の際に石綿粉じんを発生させ、石綿粉じんにばく露した者が石綿関連疾患にり患する危険性のある製品であるから、被告らは、後記⑵の時点において、建設作業者との関係で、その生命・身体・健康の法益侵害を防止するために、①建材に石綿が含有されていること、②石綿含有建材の切断・加工等により発生する粉じんにばく露すると、石綿肺、肺がん、中皮腫等の重篤な石綿関連疾患を発症する危険があること、③かかる危険を回避するために石綿含有建材の切断・加工等を行う際には適切な防じんマスクを着用する必要があることを、石綿含有建材の容器・包装や建材そのものにシールを貼る(吹付け材の場合は施工後にラベル等を設置する)などして警告表示をすべき義務があったというべきである。 イ 外装材や屋根材といった屋外建材に分類される石綿含有建材についても、そもそも屋内・屋外の区別が明確ではないこと、屋内で切断・加工される場合が多いこと、屋外における切断・加工の際も石綿粉じんの発散源に顔を近づけて作業する場合が多いことから、作業実態に応じて建設作業者が石綿粉じんにばく露する具体的な可能性がある。したがって、被告らのうち屋外建材を製造・販売した企業も上記の警告義務を負う。 ウ 改修・解体工事に従事した建設作業者との関係についても、石綿含有建材は、建物の新築工事の後も長期間にわたって使用され、最終的には建物27 の改修・解体工事において撤去されること 。 ウ 改修・解体工事に従事した建設作業者との関係についても、石綿含有建材は、建物の新築工事の後も長期間にわたって使用され、最終的には建物27 の改修・解体工事において撤去されることが予定されているのであるから、被告らは、改修・解体工事に従事する建設作業者が石綿粉じんにばく露する危険性を予見し得た。 施工時から補修・解体時までは長期間を経過する場合があるものの、石綿含有建材の警告表示は、改修・解体工事の建設作業者の目視や同工事の事業者の事前調査等を通じて的確に把握されるものであり、石綿粉じんのばく露防止に十分な実効性があるから(かかる表示がなければ注意をする契機もないから)、被告らは、新築工事に関与する建設作業者に対してのみでなく、改修・解体作業者に対しても警告表示義務を負う。 また、被告らは、前記1のとおり、高度な安全性確保義務を負っており、上記アのような警告表示の他にも、石綿含有建材の製造・販売時に危険性情報を記載した取扱説明書を作成して施工者や建材店等に交付する方法、石綿含有建材の販売・施工時に建築士等の設計図書作成者に対して石綿含有の有無を記載するよう指示する方法、石綿含有建材の販売・施工後も出荷情報や使用状況等を記録・追跡し、石綿含有建材の使用現場や石綿含有建材の使用された建物の所有者等を把握して警告する方法、官公庁や解体業界団体、マスメディアを介した情報提供を通じて広く警告する方法等により、上記危険を回避すべき義務を負っていたというべきである。 ⑵ 警告義務の始期前記⑴の警告表示は特段の技術を要するものではなく、石綿含有建材を製造・販売する者であれば容易に行うことのできる方法である。 そして、前記2のとおり、被告らは、昭和49年には石綿含有建材の切断加工等の作業が石綿関連疾患を発症させる るものではなく、石綿含有建材を製造・販売する者であれば容易に行うことのできる方法である。 そして、前記2のとおり、被告らは、昭和49年には石綿含有建材の切断加工等の作業が石綿関連疾患を発症させる危険性を具体的に予見し得た。したがって、被告らの屋内建設作業者との関係における前記警告義務の始期は昭和49年1月1日である。 これらの事情については、被告らのうち屋外建材を製造・販売した企業、28 あるいは改修・解体業に従事した建設作業者との関係でも、別異に解すべき理由はない。 ⑶ 警告義務違反について被告らにおいて、前記⑴の警告義務を適切に履行した企業はおらず、いずれも警告義務に違反している。 なお、表示方法通達に従った警告表示や「a」マークを付して石綿含有建材であることを表示していただけでは、石綿の危険性に関する警告表示としては不十分であり、警告表示義務を履行したといえない。 4 被告らの石綿不使用義務違反について前記2のとおり、被告らは、石綿含有建材の切断加工等の作業が石綿関連疾患を発症させる危険性を予見し得たものである。そして、その被害の重篤さ、石綿含有建材の管理使用は不可能であること等に照らせば、昭和40年に、どんなに遅くとも、中皮腫に関する知見がより進展し、石綿の代替化努力義務が制定された昭和50年には、被告らにおいては、石綿含有建材の製造を終了し、石綿の代替商品を使用すべき義務を負っていたにもかかわらず、かかる義務に違反したというべきである。 第2 警告義務違反者の特定及び石綿含有建材の建設現場への到達について1 総論(民法719条1項後段の類推適用について)原告らは、神奈川1陣最判の判示を踏まえ、民法719条1項後段の類推適用により、石綿含有建材の本件被災者との関係における建材 の到達について1 総論(民法719条1項後段の類推適用について)原告らは、神奈川1陣最判の判示を踏まえ、民法719条1項後段の類推適用により、石綿含有建材の本件被災者との関係における建材現場到達事実をもって被告らの共同不法行為責任を主張するものである。 2 原因建材の選定⑴ 原告らは、建材現場到達事実について、東京1陣最判の判示を踏まえ、要旨、①石綿含有建材のデータベースの情報を基に原因建材を選定し(本項)、②原因建材のうち、石綿含有建材から当該建材の市場占有率(以下「シェア」という。)等を踏まえつつ、本件被災者への到達可能性が高いと考えられる29 建材(主要原因建材)を選定して更に絞り込み(後記3)、③その上で、個々の被災者の就労状況等を基に建材現場到達事実の認められる主要原因建材を特定すること(後記4)により、具体的に主張するものである。 ⑵ 原因建材(本件被災者の就労態様等から、含有する石綿に相当程度ばく露した可能性が高く、本件被災者が石綿関連疾患にり患する原因となった可能性がある石綿含有建材)は、別紙5「各職種における曝露可能性の高い石綿建材の種類」のとおりであり、選定方法は以下のとおりである。 ⑶ 原告らは、まず、国土交通省及び経済産業省が作成し、インターネット上で公開している「石綿(アスベスト)含有建材データベース」(国交省データベース)に掲載された石綿含有建材を、その「建材名(一般名)」に従って42種類に分類した上、これに国交省データベースに掲載されていない混和材を加えて、別紙5「各職種における曝露可能性の高い石綿建材の種類」のとおり、合計43種類の石綿含有建材を選定した(同別紙の「建材名(一般名)」欄に記載した43種類参照。以下、それぞれの石綿含有建材の種類については、同別紙の「建材名(一般 性の高い石綿建材の種類」のとおり、合計43種類の石綿含有建材を選定した(同別紙の「建材名(一般名)」欄に記載した43種類参照。以下、それぞれの石綿含有建材の種類については、同別紙の「建材名(一般名)」に、同別紙の「No.」欄の丸数字を付して「吹付け石綿①」などと表記したり、単に同別紙の「No.」欄の丸数字を用いて表記したりすることがある。)。 ⑷ そして、別紙5「各職種における曝露可能性の高い石綿建材の種類」のうち、使用時の発じん量が少ない建材(石綿含有吹付けバーミキュライト④、石綿含有吹付けパーライト⑤、石綿含有壁紙㉘、石綿含有ビニル床タイル㉙、石綿含有ビニル床シート㉚、石綿含有ソフト巾木㉜、石綿含有ルーフィング㉞)、ノンアス製品が圧倒的に多く、含有石綿にばく露する機会が少ない建材(石綿含有せっこうボード㉕)、水道管として地中に施工されるものであり、建設作業者が通常取り扱う機会のなかったもの(石綿セメント管㊵)、流通量が微小であり、本件被災者の就労現場に到達した可能性の低い建材(石綿含有その他パネル・ボード㉗)は、原因建材から除外し、その他、本件訴30 訟における被告らの主張を踏まえて一部の建材種類を除外した(同別紙は、後述のとおり、建設作業者の各職種においてばく露可能性の高い建材の種類を一覧化したものであるが、これらの観点によって除外された建材種類は各職種に対応する項目がいずれも「×」になっている。)。 3 主要原因建材の選定⑴ 原因建材のうち本件被災者への到達可能性が高いと考えられる建材(主要原因建材)は、別紙7「曝露可能性の低い製品を除外した製品一覧」のとおりであり、その選定方法は下記⑵及び⑶のとおりである(以下、同別紙記載の番号を用いて具体的な商品を特定することがある。)。 ⑵ 本件の主張・立証を踏まえた絞 能性の低い製品を除外した製品一覧」のとおりであり、その選定方法は下記⑵及び⑶のとおりである(以下、同別紙記載の番号を用いて具体的な商品を特定することがある。)。 ⑵ 本件の主張・立証を踏まえた絞り込みまず、原因建材に該当する個別の商品について、その製品の特性や販売事情等に照らして、本件被災者の就労現場に到達した可能性が極めて低いことを被告らが主張・立証した石綿含有建材を除外した。さらに、原告らの主張する被告らの注意義務の始期に照らして、昭和49年以前に製造を終了した石綿含有建材を除外した。 ⑶ シェア論による絞り込みア 被告らの製造・販売する原因建材が本件被災者に到達したか否かは、同種建材の中でのシェアが高ければ高いほど、また、特定の被災者がその建材の製造期間において作業をした建設現場の数が多ければ多いほど、建材現場到達事実が認められる蓋然性が高くなることは経験則上明らかであるから、シェアや建設現場の数を踏まえた確率計算を考慮して建材現場到達事実を推認することは可能である。 イ 例えば、シェア5%の建材を10現場で1回も取り扱わない確率は、(1-0.05)の10乗≒0.59であり、20現場で1回も取り扱わない確率は、(1-0.05)の20乗≒0.35となる。シェア10%の建材の場合、10現場で1回も取り扱わない確率は、(1-0.1)の10乗≒31 0.34となり、20現場で1回も取り扱わない確率は、(1-0.1)の20乗≒0.12となり、シェア10%の建材の場合、20現場で1回以上取り扱う確率は1-0.12≒0.88であり、90%に近い確率となる。そして、現場数が多くなれば、計算上、取り扱う確率も高くなる。 建設現場における建設作業者は、通常、少なくとも年10現場以上の現場で建設作業に従事するところ、本件被災者は 、90%に近い確率となる。そして、現場数が多くなれば、計算上、取り扱う確率も高くなる。 建設現場における建設作業者は、通常、少なくとも年10現場以上の現場で建設作業に従事するところ、本件被災者は、最も短い者でもばく露期間が4年以上であり、20現場以上の作業従事歴が認められる。したがって、シェア10%の建材の場合、建築作業現場に到達する頻度は相当回数に及ぶものと推測することができ、これを下回る建材については除外する。 ウ そして、各種の資料に基づいて、各年度のシェアが確定できる建材種類は、別紙6「資料から認定されるシェアまとめ」のとおりである。ただし、石綿保温材⑩については、国交省データベース上、被告ニチアス及び被告A&AMの2社しか製造しておらず、これらの生産量に有意な差異があるとも考え難いから、いずれも10%以上のシェアは有しているものと推定できるというべきである。 エ なお、以下の建材はその使用方法に鑑みてシェアを合算している。また、下記(イ)及び(エ)建材については、北海道内のシェアと全国のシェアを別々に認定した。 (ア)吹付け石綿①、石綿含有吹付けロックウール②及び湿式石綿含有吹付け材③(イ)石綿含有スレートボード・フレキシブル板⑮、同・平板⑯、同・軟質板⑰、同・軟質フレキシブル板⑱及び同・その他⑲(石綿含有スレートボード⑮~⑲)(ウ)石綿含有窯業系サイディング㉟及び石綿含有建材複合金属系サイディング㊱(石綿含有サイディング)(エ)石綿含有スレート波板・大波㊲、石綿含有スレート波板・小波㊳及び32 石綿含有スレート波板・その他㊴(石綿スレート波板㊲~㊴)4 被災者ごとの主要原因建材の特定⑴ 原告らは、別紙7「曝露可能性の低い製品を除外した製品一覧」を踏まえ、以下のような方法で被災者ごとの主 ート波板・その他㊴(石綿スレート波板㊲~㊴)4 被災者ごとの主要原因建材の特定⑴ 原告らは、別紙7「曝露可能性の低い製品を除外した製品一覧」を踏まえ、以下のような方法で被災者ごとの主要原因建材を特定した。 ア 国交省データベースを基礎にリストアップされた43種類の石綿含有建材のうち、職種ごとに想定される作業内容及び本件被災者の記憶等から、ばく露可能性の高い建材を特定し、それ以外の建材を除外する。 イ 各被災者の就労時期からばく露可能性が低いと考えられる時期に製造・販売された製品を除外する(新築工事の場合、建材の製造・販売期間と各被災者の就労期間に1年以上の重なりのある製品のみを残し、それ以外の製品を除外する。ただし、各職種の内容から改修・解体工事への従事がある場合、製造・販売が終了した製品を取り扱う可能性があるため、上記の重なりがない場合も当該製品を除外しない。)。 ウ 各被災者の従事した建物の種類(鉄骨造・鉄筋コンクリート造・木造の別)及び改修工事への従事歴の有無から、従事していない建物にのみ使用されている建材(種類)を除外する。 エ 個々の被災者の従事した建物の種類(「戸建て住宅」、「共同住宅」、「店舗・事務所」、「学校・幼稚園」、「工場」、「劇場・百貨店」、「倉庫」の国交省データベースの7分類の建物の別)から、従事していない建物にのみ使用されている製品を除外する。 オ 国交省データベースの「使用部位」及び「使われ方」に掲載された各製品の特徴から、各被災者との関係でばく露可能性が低いと考えられる製品を除外する。 カ その他、建設作業に従事した「地域」における建材のシェアが10%未満の製品を除外するほか、本件訴訟における被告の主張を踏まえ、本件被災者の作業内容に照らして石綿粉じんにばく露する可能性が低いと確認 その他、建設作業に従事した「地域」における建材のシェアが10%未満の製品を除外するほか、本件訴訟における被告の主張を踏まえ、本件被災者の作業内容に照らして石綿粉じんにばく露する可能性が低いと確認33 されるもの等を除外する。 ⑵ 建物の建設作業に従事する各職種の作業内容は一定程度類型化されているから、各職種の作業内容によって石綿粉じんのばく露可能性の高い建材を類型的に整理することができる。そして、各職種におけるばく露可能性の高い(主要原因建材となりうる)建材種類は、別紙5「各職種における曝露可能性の高い石綿建材の種類」のとおりである(同別紙に「●」を付した建材は、個々の被災者が従事した建物の種類や作業内容にかかわらず、およそ当該職種であれば、石綿粉じんにばく露することが予想されるものであり、「▲」を付した建材は、個々の被災者が従事した建物の種類や新築工事、改修工事の違い等によって石綿粉じんにばく露する可能性に違いがある建材である。)。 また、本件被災者の職歴は別紙8「職歴一覧」のとおりであり、各被災者の主要原因建材を特定するための就労状況等に関する具体的な事情は別紙9「各被災者の主要原因建材を特定するための就労状況等に関する事情」のとおりである。 ⑶ 上記⑴及び⑵を踏まえて、本件被災者ごとに特定した主要原因建材をリストアップした結果は別紙10(枝番を含む。)のとおりである(なお、同別紙中の「現在メーカー名」に旧社名が残存している場合、「日本バルカー工業(株)」は「(株)バルカー」と、「新日鉄住金化学(株)」は「日鉄ケミカル&マテリアル(株)」と、「三菱マテリアル建材(株)」は「(株)エム・エム・ケイ」と、「旭硝子(株)」は「AGC(株)」と、「昭和電工建材(株)」は「(株)レゾナック建材」などと、それぞれ読み替える。) テリアル(株)」と、「三菱マテリアル建材(株)」は「(株)エム・エム・ケイ」と、「旭硝子(株)」は「AGC(株)」と、「昭和電工建材(株)」は「(株)レゾナック建材」などと、それぞれ読み替える。)。 ⑷ ただし、別紙9のとおり、被災者H(原告番号8)は、シェアの観点から別紙7から除外された「カポスタック」、「ニューカポスタック」(いずれも被告ニチアスの製品)について、現場に到達した原因建材として主張している。 第3 主要原因企業が負うべき責任について(責任論としての寄与割合)34 1 本件被災者は、以上のとおり特定される主要原因企業の警告表示義務違反等によって、石綿関連疾患にり患し、生命、身体、健康の法益を侵害されたものである。 2 原告らはこれらの累積的なばく露について、全ての行為者を特定したとはいえないものの、各被災者との関係で主要原因建材の到達が認められる企業らは、神奈川1陣最判の判示するとおり、民法719条1項後段の類推適用により、本件被災者の損害について、その発生に対する寄与度に応じた範囲で(集団的寄与割合に応じて)連帯して損害賠償責任を負うというべきである。 3 そして、ここでの寄与度は、石綿粉じんばく露によって生ずる損害の一体不可分性、被告らの行為の危険性、警告義務違反の悪質さ、本件被災者との関係性等の事情を総合考慮すべきであり、上記の類推適用は、本件訴訟における主要原因企業以外に加害者となり得る者がいる場合に寄与度に応じた減額を認めるものであるが、同一の主要原因企業の有責期間より前の期間におけるばく露があったとしても、それは同企業の先行行為によるものである上、ばく露期間の長短と症状の重篤度の関係を数値化して立証することは不可能に近いから、各被災者が当該主要原因建材にばく露した期間のうち、主要 露があったとしても、それは同企業の先行行為によるものである上、ばく露期間の長短と症状の重篤度の関係を数値化して立証することは不可能に近いから、各被災者が当該主要原因建材にばく露した期間のうち、主要原因企業の有責期間に応じた減額(期間減額)を認めるべきではない。仮に期間減額を認める場合があるとしても、労災認定基準や国の定める統一和解基準と同様に、同基準で石綿関連疾病の種類ごとに定められた期間(例えば肺がんは10年、中皮腫は1年。この期間を満たすばく露には、それだけで石綿関連疾患を惹起する力があるというべきである。)に各被災者の石綿粉じんのばく露期間(主要原因企業の責任期間の外も含めるべきである。)が満たない場合に、最大でも10%の減額等をするにとどめるべきである。 また、職種ごとに他の加害者の存在を踏まえたとしても、これを過大に評価すべき理由はなく、2割の減額を超えないというべきである。 4 被告ら以外に責任者があることや国との和解を理由とする減額についての35 主張はいずれも争う。 第4 損害について1 本件被災者の生存/死亡の別、それぞれの石綿関連疾患に係る療養開始日、(死亡している場合の)死亡日、享年、療養開始から死亡までの期間、り患による離職の有無、症状は、いずれも別紙11「被災者ら損害一覧」のとおりである。 2 本件被災者は、石綿粉じんのばく露によって肺がんや中皮腫にり患したものであり、咳、痰、呼吸困難などに苦しみ、片肺ないし両肺の全部又は一部を切除したり、重大な副作用を伴う抗がん剤・放射線治療を受けたりするなど、その身体的苦痛は計り知れない。 本件被災者は、就労が不能又は困難な状況となって比較的若くして社会貢献の機会も失う、日常生活の質も大きく低下し、趣味も奪われる、治療に関する不安、絶望感 ど、その身体的苦痛は計り知れない。 本件被災者は、就労が不能又は困難な状況となって比較的若くして社会貢献の機会も失う、日常生活の質も大きく低下し、趣味も奪われる、治療に関する不安、絶望感、死への大きな不安等の様々な苦痛を余儀なくされ、本件被災者のうち死亡した被災者は、これらの苦痛の中で死を迎えたものである。 原告らは、訴訟経済、迅速な被害救済の観点から、現在まで生じている財産上のそれを含めた全損害について包括一律的に慰謝料として請求しており、以上のような被害の重篤性からすれば、相当な基準慰謝料額は3000万円を下るものではないと考えるべきである。そして、寄与度や喫煙歴、その他損益相殺を勘案したとしても、本件被災者1名につき、慰謝料2100万円、弁護士費用210万円を下るものではない。 3 原告らの各請求の遅延損害金の起算日は、別紙11記載の「療養開始日」欄記載の日とすべきである。 4 原告らは、本件訴訟で当初被告としていた国との間で訴訟上の和解をして和解金を受領したが(別紙12「和解一覧表」参照)、国と企業の責任はそれぞれ独立であるから、かかる事情は被告らの責任の範囲を限定する理由にはならない。 36 5 以上を踏まえ、死亡した被災者がいること等も考慮すると、原告らの請求は、別紙3「請求の趣旨一覧」のとおりになる。 第5 喫煙歴等、石綿粉じん以外の要因について1 被災者の喫煙に関する主張はいずれも争う。喫煙歴を理由とする減額は10%を超えない。 2 被災者F(原告番号6)が石綿ばく露に起因する石綿肺に罹患していることは、画像所見という客観的な根拠により明らかであり、石綿以外の粉じんによるじん肺症にり患していたとの被告らの主張は争う。 第6 被告らの個別の主張について(抗弁に関する反論等) に罹患していることは、画像所見という客観的な根拠により明らかであり、石綿以外の粉じんによるじん肺症にり患していたとの被告らの主張は争う。 第6 被告らの個別の主張について(抗弁に関する反論等)1 被告永大産業(乙カ)について⑴ 会社更生法に基づく免責石綿関連疾患は進行性の特質を有しているから、原告らの損害は、石綿関連疾患についての各行政決定の認定を受けた時等にこれに相当する病状に基づく損害が生じ、その後に石綿関連疾患を原因として死亡したときには、死亡した時点でその損害が発生したというべきである。これらは本件の口頭弁論終結の時点における原告らの病名、症状の進行状況、それらに基づく労災認定の結果等を踏まえて検討すべきことであり、これを待たずに会社更生手続を根拠とする免責を主張するのは失当である。 ⑵ 除斥期間本件被災者は、いずれも石綿粉じんに累積的にばく露した結果、石綿関連疾患にり患した者であり、身体に蓄積した場合に人の健康を害することとなる物質による損害や一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる損害を受けたのであるから、当該損害の全部又は一部が発生した時が除斥期間の起算点となる(最高裁平成16年4月27日第三小法廷判決・民集58巻4号1032頁)。 生存する原告らのうち、石綿肺以外の石綿関連疾患については労災認定等37 を受けた日が、遺族原告らについては被災者本人が死亡した日が、それぞれ除斥期間の起算点になり、いずれの原告についても上記の起算日から20年を経過していないから、除斥期間による免責はされない。 2 被告バルカー(乙ユ)について被告バルカーは、自ら又は訴外日本リンペット工事株式会社と共同して製造・販売した企業として、若しくは訴外日本リンペット工事による石 る免責はされない。 2 被告バルカー(乙ユ)について被告バルカーは、自ら又は訴外日本リンペット工事株式会社と共同して製造・販売した企業として、若しくは訴外日本リンペット工事による石綿含有建材の製造・販売行為を幇助した企業として、被災者らに対し、民法719条1項後段の類推適用による共同不法行為責任を負うべき立場にある。 また、被告バルカーは自らの名前で石綿含有建材の広告を出しており、吹付け材等の石綿製品を製造する会社であることは間違いない。 第5節 争点に係る被告らの主張の要旨第1 被告らの注意義務違反について1 被告らの注意義務の内容・予見可能性の程度について原告らの主張は、争う。 被告らは、具体的な結果を予見できて初めて具体的な回避措置を検討できるのであるから、医学的知見の集積状況を前提にした抽象的な予見可能性では注意義務を基礎づけるに足りない。企業としては、国の法的規制の内容を踏まえる必要があるほか、建設現場における石綿粉じんの飛散状況や被害状況が具体的に明らかになっていない段階で石綿含有建材の石綿粉じんによる石綿関連疾患のり患という結果は具体的に予見できない。 2 被告らの予見可能性について被告らは国よりも調査・情報収集能力に乏しく、昭和55年以前の段階で、クリソタイル(白石綿)によって石綿関連疾患にり患する危険があるとの知見は確立されていない。被告らのうち、微量のクリソタイルのみを含有する建材を製造・販売していた企業は、自社の建材によって石綿関連疾患にり患することを予見できなかった。 38 3 被告らの警告表示義務違反について⑴ 警告義務の具体的内容・範囲ア 原告らの主張する警告表示義務の内容は争う。 特に、石綿含有吹付けロックウ た。 38 3 被告らの警告表示義務違反について⑴ 警告義務の具体的内容・範囲ア 原告らの主張する警告表示義務の内容は争う。 特に、石綿含有吹付けロックウールを含む耐火被覆材は鉄骨全体を被覆して耐火性能を確保する建材であり、一度吹き付けられた吹付け材が施工後に剥がされることなど予定されていなかったから、このような作業に伴う石綿粉じんの発生や対策について検討する契機はなかった。仮に吹付け材を剥がすことが予見可能であったとしても、その場合に採り得る警告表示としては吹付け材を剥がす作業の禁止しかあり得ず、吹付け材が剥がされる作業が行われることを前提とした「防じんマスクの着用」を促す警告表示はできない。 また、建設現場に搬入された吹付け材は、吹付け作業の施工業者が荷受けするもので、元請事業者やその他の事業者が包装を視認することはなく、吹付け工以外の作業者との関係では、事業者を通じて警告表示の内容を認識させることはできないから、警告表示によって危険が回避できない。 その他、二次加工メーカーへの出荷分は、当該メーカーが個々の石綿含有建材の危険性を把握して警告義務を負う立場にあるから、これを出荷した建材メーカーは警告義務を負わない(被告A&AM)。 イ 屋外建材との関係では、外壁材や屋根材の石綿含有率、これらの建材が屋外での切断が予定され、実際にも屋外で切断されていたなどの施工状況に照らせば、屋外建材による石綿粉じんは微量のばく露しか想定し得えない。そして、微量なばく露による石綿関連疾患の危険性に関する知見は現時点でも確立していないから、屋外建材を使用する建築作業者との関係では石綿関連疾患のり患に関する予見可能性がない。また、個々の建設作業者の使用状況という偶然にすぎない事情によって、被告らに 知見は現時点でも確立していないから、屋外建材を使用する建築作業者との関係では石綿関連疾患のり患に関する予見可能性がない。また、個々の建設作業者の使用状況という偶然にすぎない事情によって、被告らに警告表示義務が生ずることもない。 39 京都1陣最判及び大阪1陣最判の判示において屋外建設作業者との関係で建材メーカーの予見可能性が否定されている期間について、屋外建材を製造・販売した企業の責任が認められることはない。 ウ 被告らが警告義務を負う対象は、建材の新規使用者に対してであり、改修・解体作業者との関係については、神奈川2陣最判の判示のとおり、警告義務を負わない。 石綿含有建材はその用途に応じて加工された上で建物の一部として使用され、建物の新築から解体までは長期間が経過すること等から、石綿含有建材を製造・販売した企業が出荷時に行う警告表示によって改修・解体作業者に実効性のある警告をすることは困難である。そして、当該建築物にどのような建材が使われているのかを調査する立場にあり、石綿粉じんのばく露に関する対策を講ずるべき立場にあるのは、改修・解体作業の事業者であるから、被告らが改修・解体作業者との関係で警告義務を負うことはない。 ⑵ 警告義務の始期被告らが実際に警告表示を行うためには相当長期間の準備を要し、直ちに履行が可能となるものではない。神奈川1陣最判において、国の規制権限の不行使が国家賠償法1条1項の適用上違法となる期間について、昭和50年10月1日からと判断されたことからすれば、被告らの警告義務の始期は、どんなに早くとも同日より相当程度遅い時期である。 ⑶ 警告義務違反について被告らは、表示方法通達に従った警告表示をする、施工説明書等に切断・研磨等の作業の際に長時間多量の粉じんを吸入 なに早くとも同日より相当程度遅い時期である。 ⑶ 警告義務違反について被告らは、表示方法通達に従った警告表示をする、施工説明書等に切断・研磨等の作業の際に長時間多量の粉じんを吸入すると健康を損なう恐れがあり、十分な防じん対策をされたいなどと記載する、平成元年以降は「a」マークを表示して石綿が含有されている事実を表示する、特定の施工業者に対してのみ建材を販売した上で安全な施工方法等についての情報を提供す40 る(後記第6の被告らの個別主張参照)などし、警告表示義務を尽くしていた。 4 被告らの石綿不使用義務違反について石綿含有建材の管理使用によっても石綿関連疾患の発症を防止することができないとの知見が一般化していたことを裏付ける証拠はない。石綿粉じんのばく露対策は、警告表示や国が講じるべきであった規制措置等によって確保されるべきものであったことから、石綿の使用を全面禁止するという法規制が導入される前において、より制約の大きい石綿の使用を中止すべき義務があったということはできない。 第2 警告義務違反者の特定及び石綿含有建材の建設現場への到達について1 総論(民法719条1項後段の類推適用について)神奈川1陣最判は、建材メーカーについて民法719条1項後段が類推適用される場合があることを認めたが、同条項の類推適用のためには各被告の行為に本件被災者の損害をそれのみで惹起し得る単独惹起力があることが必要である。また、少数回のばく露によって直ちに石綿関連疾患が発症するとはいえないこと等を踏まえれば、同条項の類推適用をするには石綿含有建材が被災者の稼働する建設現場に相当回数にわたり到達して用いられている事実が必要であることに注意すべきである。 2 原因建材の選定⑴ 原告らが主張するような 項の類推適用をするには石綿含有建材が被災者の稼働する建設現場に相当回数にわたり到達して用いられている事実が必要であることに注意すべきである。 2 原因建材の選定⑴ 原告らが主張するような手法によって、本件被災者が使用し、石綿関連疾患の原因となった石綿含有建材を製造・販売した企業を特定することはできない。東京1陣最判は、第2節第6の2⑴ないし⑸記載の手法によって、特定の石綿含有建材につき建材現場到達事実が立証されることがあり得ると判断したにすぎず、建材現場到達事実の立証のためのシェア基準を定立したものではないし、いずれにしても、シェア資料の有無、その内容の正確性、建材の性質・用途や流通経路等の個別要因によって建材現場到達事実は否定41 される。そして、被告らが製造・販売した石綿含有建材に関する個別事情は後記第6「被告らの個別主張について」に記載のとおりである。 ⑵ 原告らは、職種ごとに原因建材となり得る建材種類を特定するが、そもそも、同一の職種であっても実際に作業した現場は被災者ごとに異なるし、具体的な作業の内容も様々であるから、特定の職種であれば特定の(個別の)建材を取り扱うという経験則はない。 ⑶ また、建材によっては電動丸鋸ではなく、手鋸やカッターで切断されたり、工場でプレカットされた状態で使用されたりするから、あらゆる建材について切断・加工の際に石綿粉じんが生ずるとの前提は誤りである。 3 主要原因建材の選定原告らの主張するシェア論は、以下のような問題点が指摘される。 ⑴ シェア(一定の集団内の割合)を確率と同視して数学的に確率計算するためには、あるシェアの下での現場での建材の出現頻度が均等であり、かつ、建設作業者が建設現場に赴く行為が独立の試行であるという前提を満たす必要があるが、建材メーカー 率と同視して数学的に確率計算するためには、あるシェアの下での現場での建材の出現頻度が均等であり、かつ、建設作業者が建設現場に赴く行為が独立の試行であるという前提を満たす必要があるが、建材メーカーがある年に出荷した石綿含有建材が同時期、同地域に同一シェアを保ったまま全国の建設現場に等しく流れ着くことや、建設作業者が偶然・無作為に建設現場を選ぶことはあり得ないから、上記の前提は確保されない。 ⑵ 仮にある建設作業者が20個の建築現場を経験していたとしても、建材のシェアが10%の場合には当該建材が建築現場に到達していない確率が約12%残ることとなるし、建材現場到達事実は、神奈川1陣最判を踏まえれば、当該建材が被災者の稼働する建設現場に相当回数にわたって到達して用いられたことであるから、1回の到達の可能性が高いだけでは足りない。建材現場到達事実の立証において、10%のシェアでは合理性を有しないことが明らかであり、少なくとも20%ないし25%以上のシェアを要求すべきである。各被災者のばく露状況や就労現場数によっては更に高いシェアが必42 要になる場合もある。 ⑶ 石綿含有建材と石綿非含有建材(ノンアス建材)は競合関係にあり、その他にも異なる種類であるけれども同じ用途であるために互いに代替性のある建材があることから、石綿含有建材のシェアを論ずるのであれば、建材の種類ごとではなく、ノンアス建材を含め、用途を同じくする建材の全てを母数に含めて算定する必要がある(後記第6の「被告らの個別主張について」参照)。 ⑷ 原告らがシェア算定に用いた資料は、限られた期間の数値しか顕出しておらず、統計・調査の正確性・合理性の担保もない。そして、その数値も推定値が多く用いられている上、推定の根拠も明らかではなく、短期間のうちに数値が 算定に用いた資料は、限られた期間の数値しか顕出しておらず、統計・調査の正確性・合理性の担保もない。そして、その数値も推定値が多く用いられている上、推定の根拠も明らかではなく、短期間のうちに数値が大きく変動しているなどの不自然さが指摘されるほか、当該建材の石綿含有・非含有の区別もされていない。また、その資料から原告主張のシェアが整理される根拠も判然としない。 4 被災者ごとの主要原因建材の特定いずれも争う。 本件被災者との関係では、その取り扱った具体的な製品名や建材の種類を特定できておらず、建材現場到達事実を推認する基礎となる現場数やばく露の状況も不明である。また、間接ばく露の場合、ばく露の原因となった建材は主要原因建材ではない。 第3 主要原因企業が負うべき責任について(責任論としての寄与割合)1 寄与度の判断に当たっては、主要原因企業と認められた被告らにおいても、有責期間以外の期間について責任を負うべき理由はないから、有責期間前に石綿ばく露があったことは、主要原因企業の寄与度を減少させる事情になるし、責任期間と製造期間の重複期間の長短に応じた寄与度減責もされるべきである。また、建材メーカーの責任を基礎づける建材以外の石綿含有建材による石綿粉じんのばく露のほか、責任の対象外となる作業(特に改修・解体作業)に43 よる石綿粉じんのばく露も考慮すべきである。 原告らの主張を前提にしても、多くの職種が、直接ばく露のみならず、広範囲かつ重層的に間接ばく露をしており、主要原因建材から発生した石綿粉じんが本件被災者がばく露した石綿粉じん量全体の一部にすぎないことは明らかであり、寄与度の判断に当たっては、これらの事情を総合考慮すべきである。 2 建設作業者のアスベストによる被害は、主要原因建材を製造・販売した企業のみに 粉じん量全体の一部にすぎないことは明らかであり、寄与度の判断に当たっては、これらの事情を総合考慮すべきである。 2 建設作業者のアスベストによる被害は、主要原因建材を製造・販売した企業のみに責任があるものではなく、本件被災者を雇用した建設事業者、石綿の輸入者、国等にも責任があり、被告らの責任割合あるいは寄与度は少ないから、この点を踏まえた減責がされるべきである。 第4 損害について原告らの主張は、争う。 本件訴訟において、原告らは国との間で和解をしており、和解金を受領している。当該和解は国の責任割合が2分の1であることを前提としているから、被告らの責任が2分の1を上回ることはあり得ない。 第5 喫煙歴等、石綿粉じん以外の要因について1 喫煙による肺がんと石綿粉じんばく露による肺がんを医学的に識別することは困難であるが、喫煙は肺がんの発症に重大な影響を及ぼしており、扁平上皮がん及び小細胞がんにあっては600以上、大細胞がんでは1200以上のブリンクマン指数(喫煙年数に1日当たりの喫煙本数を乗じた指数)が認められる場合、発がんの相対リスクがおおむね5倍以上になる。 扁平上皮がん及び小細胞がんについて200以上、全ての病理組織型について400以上のブリンクマン指数が認められる場合、発がんの相対リスクが2倍(寄与危険度5割)以上になるものとして、少なくとも5割以上の慰謝料の減額をすべきである。 2 また、F(原告番号6)については、コンクリート粉じんやヒュームにばく露しており、じん肺と石綿粉じんばく露との間の相当因果関係は認められない。 44 第6 被告らの個別の主張について以下、被告らの製造・販売する個々の建材や抗弁に関する主張を記載する(以下、「番号~」と表記する際の番号は別紙7の「番号」欄記 められない。 44 第6 被告らの個別の主張について以下、被告らの製造・販売する個々の建材や抗弁に関する主張を記載する(以下、「番号~」と表記する際の番号は別紙7の「番号」欄記載の番号である。)。 1 乙イ・被告AGC被告AGCの製造・販売した「ほんばん(番号1593及び1596)」(石綿含有窯業系サイディング㉟)は、屋外で使用される低石綿の外装材である。 同建材は、耐アルカリガラス繊維等の補強効果により高い粘性を有し、その施工方法等からも、切断・取付けの際の粉じんの発生・飛散はごく微量に限られているから、被告AGCは、同建材によって石綿関連疾患にり患することについて予見可能性がない。 2 乙カ・被告永大産業⑴ 石綿含有ロックウール吸音天井板㉔は、1970年代当時、被告永大産業はそのシェアを大きく奪われており、住宅用天井材の分野に至っては10%を大きく下回るシェアしか有していなかった。原告らが主張する石綿含有ロックウール吸音天井板㉔の各社シェアは、天井材としてロックウール吸音天井板㉔が採用されるという限定的な場合の中でのものにすぎず、建設作業現場全体との関係でシェアを有することを示すものではない。 そして、上記製品の特性として、①戸建住宅等の一般住宅の台所付近という限られた場所で使用されていたこと、②切断を必要とする場面が少なく、切断をする場合もカッターナイフを使用するため、ノコギリやヤスリ掛けの場合のような大量の粉じんは発生しないこと、③解体が不要であること等から、本件被災者が接触する機会は極めて少ない。 ⑵ 会社更生法に基づく免責被告永大産業は、昭和53年5月1日、大阪地方裁判所により、会社更生手続開始決定を受けた(同庁昭和53年(ミ)第4号会社更生手続開始申立事件)。仮に被告 めて少ない。 ⑵ 会社更生法に基づく免責被告永大産業は、昭和53年5月1日、大阪地方裁判所により、会社更生手続開始決定を受けた(同庁昭和53年(ミ)第4号会社更生手続開始申立事件)。仮に被告永大産業が原告らに対して何らかの損害賠償責任を負うと45 しても、同日以前の被告永大産業による行為を原因とする部分は更生債権となり、原告らは届出期間内に届け出ることなく、更生計画の認可決定がなされたから、これら債権は消滅した(平成14年法律第154号による改正前の会社更生法241条参照)。 ⑶ 除斥期間被告永大産業は、石綿含有製品の製造を昭和51年に終了しており、原告らの提訴時点において既に44年が経過している。また、仕入販売を終了した時期(昭和55年)から起算しても、原告らの提訴時点において既に40年が経過しているから、仮に被告永大産業に共同不法行為責任が認められたとしても、かかる責任は除斥期間の定めにより免責される(平成29年法律第44号による改正前の民法724条後段)。 3 乙キ・被告A&AM⑴ 吹付け材(建材種類①~③)はいずれも主に鉄骨造建物の耐火被覆を目的として使用されるものであり、相互に代替性を有するものであるが、原告らが提出する吹付け材のシェア資料は、これらを合算したものではなく、年度や記載内容も異なるから、シェアを割り出すことができない。また、被告A&AMは、昭和50年までに石綿含有吹付ロックウールの製造を終了しており、同年以降のシェアの大部分は石綿を含有しない製品であった。 ⑵ 保温材(建材種類⑥ないし⑩)のうち、⑥⑦⑨⑩は代替性が高く、競合関係にあるため、これら4種類全体における各社の製品のシェアを検討する必要があるが、これらの製品が合算されたシェアに係る資料はなく、被告A&AMのシ ⑥ないし⑩)のうち、⑥⑦⑨⑩は代替性が高く、競合関係にあるため、これら4種類全体における各社の製品のシェアを検討する必要があるが、これらの製品が合算されたシェアに係る資料はなく、被告A&AMのシェアを認定することはできない。したがって、被告A&AMの製造・販売した石綿含有けい酸カルシウム保温材⑦及び石綿保温材⑩が本件被災者に到達した事実は認められない。 ⑶ 被告A&AMの製造・販売した石綿含有スレート(フレキシブル板⑮・平板⑯)、石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓のうち、二次加工メーカーに46 出荷した分については被告A&AMによる加害行為はない。プレハブメーカー及び住宅機器メーカーに出荷した分についても、建設現場において発じんがないから、いずれもそのシェアを除外すべきであり、寄与度においても考慮されるべきである。 また、これらの種類の建材は、外装材として使用されることも多いから、シェアを論ずる場合、内装材としての割合を算出するよう留意すべきである。 ⑷ 石綿セメント円筒㊶は、いわゆる煙突であり、屋外で使用されるほか、耐火二層管(塩ビ管セメントモルタル被覆。商品名:浅野耐火パイプ)とは用途の異なる建材であるが、三菱樹脂株式会社が自社名義で販売するOEM受注分を含め、昭和56年から昭和61年にかけて被告A&AMのシェアが12.6%にすぎず、販売実績のシェアは更に低い。 4 乙シ・被告神島化学⑴ 石綿含有窯業系サイディング㉟は外装材であり、主要原因建材に当たる余地はない。 ⑵ア 石綿含有けい酸カルシウム板の北海道内におけるシェアは、被告A&AMの製品が圧倒的であり、被告神島化学のシェアが10%を超えることはない。 イ 石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓は、フレキシブル板等のスレートボードと代替可能な建材 におけるシェアは、被告A&AMの製品が圧倒的であり、被告神島化学のシェアが10%を超えることはない。 イ 石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓は、フレキシブル板等のスレートボードと代替可能な建材であり、これらの建材も含めてシェアを検討すべきである。また、電気工、配管工については、その作業内容に照らし、石綿吹き付け材等を主要原因建材とすべきであって、石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓を含む内装材は主要原因建材から除外されるべきである。 ウ 石綿含有けい酸カルシウム板第2種⑪についても、用途が同じである耐火被覆材全体に対するシェアを検討すべきである。昭和52年の耐火被覆材の施工面積に占める被告神島化学の石綿含有けい酸カルシウム板第2種⑪の施工面積は1%以下であり、主要建材にならない。そもそも、同建47 材自体、耐火被覆材全体の施工実績の中で8.2%の施工実績があるにすぎない。 5 乙タ・被告レゾナック建材被告レゾナック建材の製造・販売する建材は同被告指定の施工代理人の職人でなければ使用しないものであり、本件被災者の中にこれに該当する者はいないし、同建材の施工後の改修・解体作業との関係では警告義務を負わない。 また、原告らが主張する被告レゾナック建材の窯業系サイディングのシェアは、一部の年を除いて資料がない推定計算であり、一部の資料に記載のあるシェアの数値も出荷開始の年の出荷量が先行業者の建材よりも多くなっていること、資料間で同じ年の推定生産量と推定出荷量に10倍の差があること、単位が異なっていること、別建材の無石綿製品を含んでいるなど、実態と全く異なるものである。 6 乙チ・被告日鉄ケミカル&マテリアル⑴ 被告日鉄ケミカル&マテリアルは、認定特約店の制度を設け、研修を受けた石綿含有吹付けロックウール んでいるなど、実態と全く異なるものである。 6 乙チ・被告日鉄ケミカル&マテリアル⑴ 被告日鉄ケミカル&マテリアルは、認定特約店の制度を設け、研修を受けた石綿含有吹付けロックウール②の十分な施工能力を有する事業者のみを特約店に認定した上で、その製造する石綿含有吹付けロックウール②(なお、昭和50年以降に製造・販売していたスプレエースの石綿含有率は5%以下であり、安衛法57条に基づく表示義務を負っていなかった。)を、当該特約店のみに供給した上でその吹付け施工を認定特約店のみに行わせ、同特約店に対し、特殊な防塵服、防じんマスクを着用し、さらには、吹付け作業をしている場所から他の作業場所に粉じんが及ばないよう養生囲いをするなどの指導を行った。 ⑵ 被告日鉄ケミカル&マテリアルの業績管理のために作成していた社内記録により判明した石綿含有吹付けロックウール②「スプレエース(番号25ないし27)」の販売数量と、「平成17年11月建築物の解体等における石綿飛散防止検討会報告書」が出典となっている石綿含有吹付けロックウール48 ②の生産量全体のデータを基に、石綿含有吹付けロックウール市場における被告日鉄ケミカル&マテリアルのシェアを算定すると、昭和43年から昭和53年までの平均は5.8%にすぎないから、これらの建材が現場に到達した事実は認められない。 7 乙ト・被告大建⑴ 被告大建工業の製造・販売する石綿含有ロックウール吸音天井板㉔については、用途を同じくする天井材全体におけるシェアを考慮する必要があり、昭和51年時点の住宅用天井材に関するロックウール吸音天井板㉔のシェアは2.4%、非住宅用天井材に関する同シェアは12%であった。仮に石綿含有ロックウール吸音天井板㉔に係る被告大建工業のシェアが25%であったと の住宅用天井材に関するロックウール吸音天井板㉔のシェアは2.4%、非住宅用天井材に関する同シェアは12%であった。仮に石綿含有ロックウール吸音天井板㉔に係る被告大建工業のシェアが25%であったとしても、その製品に接触した可能性は、住宅の天井施工に従事した建設作業者との関係では0.6%となる。 そして、被告大建工業のロックウール吸音天井板㉔の北海道への出荷比率は全国平均より大幅に低い。また、ロックウール吸音天井板㉔と化粧石膏ボードは相互に代替可能な建材であり、一方が使用されればもう一方は使用されないという関係にあるから、これらの出荷量を合算したものを分母としてシェアを計算するべきである。 したがって、同建材が現場に到達したとはいえない。 ⑵ 被告大建工業のロックウール吸音天井板㉔は、その加工にはボードカッターが用いられ、建材用のホチキスを打ち込んで固定するために釘打ちの必要もないから、石綿粉じんの発生量は少ない。したがって、同建材を主要原因建材とするのは不合理である。 8 乙ニ・被告太平洋セメント⑴ 被告太平洋セメントの製造・販売した「スプレーコート(番号20)」(石綿含有吹付けロックウール②)と「スプレーコートウェット(番号35)」(湿式石綿含有吹付け材③)は、系列化された特定の吹付け施工業者(基本的に49 各都道府県に1社ずつ)に対してしか販売されておらず(販工店制度)、それ以外の建設作業者が一般的に取り扱うことはなかったから、吹付け工以外の作業者に対する警告表示義務が認められる余地はない。そして、吹付け工との関係では防じんマスクや作業場の養生等、種々の対策を情報提供していたから、警告表示義務に違反していない。 ⑵ 同建材は、耐火被覆材であるために基本的に鉄骨造建物の中の耐火建築物以外には使用されず(なお、 は防じんマスクや作業場の養生等、種々の対策を情報提供していたから、警告表示義務に違反していない。 ⑵ 同建材は、耐火被覆材であるために基本的に鉄骨造建物の中の耐火建築物以外には使用されず(なお、スプレーコートウェットは内装用の性能を有していなかったから、鉄骨造建物以外に使用されることは一切ない。)、代替製品としてノンアス建材が存在すること等の建材現場到達事実の推認を妨げる個別事情がある。また、石綿を含有するスプレーコートの製造・販売が終了した昭和53年10月以降に使用されたスプレーコートはいずれもノンアス(無石綿)のスプレーコートであった。 ⑶ 上記各製品は昭和49年以降無石綿化が進められており、これらのノンアス建材の割合もシェアの計算において考慮されなければならない。 ⑷ 上記各製品は、いずれも施工後の削り取りを予定しておらず、正規の作業手順によれば石綿粉じんが発生しないこと、削り取り作業をしたとしても、ごく少量かつ短時間で済むこと(「スプレーコートウェット」の場合は、そもそも削り取りが不可能である。)等から、施工時に発生する石綿粉じん量は少なかった。したがって、建設現場の数が多いからといって、直ちに石綿関連疾患を生じさせる蓋然性が高くなるわけでもない。 ⑸ 被告太平洋セメントに係るシェア資料のうち昭和52年の資料だけ25%もの突出して高い数値が記載されているが、これは耐火被覆用途に限ったシェアであり、かかるシェアからの確率計算によって、建材現場到達事実を推認することはできない。 石綿含有吹付けロックウール②のうち36.1%は耐火被覆用途以外に使用されていたというのであるから、耐火被覆用途以外の数値は無視できる割50 合ではない。 9 乙フ・被告東レACE被告東レACEの石綿含有窯業系サイディ は耐火被覆用途以外に使用されていたというのであるから、耐火被覆用途以外の数値は無視できる割50 合ではない。 9 乙フ・被告東レACE被告東レACEの石綿含有窯業系サイディング㉟は屋外作業に係る外装材であるから、被告東レACEには警告義務がない。 10 乙マ・被告ニチアス⑴ 石綿含有吹付けロックウール②被告ニチアスは、昭和49年に耐火被覆用の石綿含有吹付けロックウール②の製造・販売を終了した。 ⑵ 湿式石綿含有吹付け材③昭和50年以降も製造・販売を続けていた湿式石綿含有吹付け材③は、高層ビル等の大規模設備や高い費用に見合う建設現場でのみ施工されたため、施工面積が限定的なものにとどまっていたから、これらが一定期間にわたり本件被災者に到達したとは推認できない。 被告ニチアスの製造・販売した湿式石綿含有吹付け材③のうち「トムウェット(番号33)」は、超高層ビル等の大規模な現場において特殊な噴霧機を用いなければ施工することができず、被告ニチアスが指定する少数の特定業者しか取り扱うことができなかったことに加え、施工後も湿潤化されているためほとんど粉じんを生じなかった。「ATM-120(番号32)」も「トムウェット」と同質の素材で間仕切壁を設置するものであり、同建材を使用しない現場で用いられることはほとんどなく、被告ニチアスの責任で施工されていた。「ミネラックス(番号34)」は、実際には化粧塗り材として内装材に塗り付ける形で用いられ、鉄骨や天井裏の耐火被覆のために用いられてはいなかったことなどから、本件被災者がこれら製品から発生する石綿粉じんにばく露したとは考え難い。 ⑶ 石綿含有けい酸カルシウム保温材⑦及び石綿保温材⑩石綿含有けい酸カルシウム保温材⑦及び石綿保温材⑩は、いずれも石綿含51 有 れら製品から発生する石綿粉じんにばく露したとは考え難い。 ⑶ 石綿含有けい酸カルシウム保温材⑦及び石綿保温材⑩石綿含有けい酸カルシウム保温材⑦及び石綿保温材⑩は、いずれも石綿含51 有パーライト保温材⑨と代替可能な建材であるから、同建材を含めた形でシェア及び到達の推認の可否を検討すべきである。 ⑷ 石綿含有けい酸カルシウム板第2種⑪同建材については、シェアについて立証されていない。 ⑸ 石綿含有けい酸カルシウム板第1 種㉓石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓の切断・加工は通常カッターナイフで行われるものであり、被告ニチアスの製品の場合、その出荷先の90%が非住宅(中高層建築)であり、流通経路に大きな偏りがあることを考慮すべきである。 石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓は、石綿含有スレートボード(⑮⑯)と用途や使用部位の共通性が高いから(いずれも内壁等の内装材である。)、これらのシェアを合算して検討すべきである。その場合、被告ニチアスの製造・販売した石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓のシェアはいずれも10%を超えるものではないから、主要原因建材に当たらない。 11 乙ム・被告日東紡績⑴ 被告日東紡績の製造・販売した石綿含有吹付けロックウール②は、シェアが10%以上とはならないし、湿式石綿含有吹付け材③はほとんど市場に流通していないから、いずれも現場に到達していない。 ⑵ 石綿含有ロックウール吸音天井板㉔については、シェア算定に当たりノンアス建材を考慮すべきであり、現場で毎回使用される建材ではない(天井材全体を考慮した場合のシェアは約3.2%である。)こと等から、現場に到達していない。また、同建材は有害性の低い白石綿のみを使用し、施工時にカッターナイフで切断することから、石綿粉じんはほとんど発生しない。 場合のシェアは約3.2%である。)こと等から、現場に到達していない。また、同建材は有害性の低い白石綿のみを使用し、施工時にカッターナイフで切断することから、石綿粉じんはほとんど発生しない。 12 乙メ・被告JIC⑴ 石綿含有けい酸カルシウム保温材⑦(番号48ないし54)については、被告JICの製品の大半は石油コンビナート、発電所等のプラントに使用さ52 れたが、その大半を占める前者の作業現場は屋外である上、けい酸カルシウムの中に補強繊維として石綿を配合して配管を覆うカバー状(配管部分用に配管の径に併せた金型で成形した曲面状の製品)、もしくは板状に固めたものであり、自然に崩れることはなく、粉じんが発生・飛散せず、施工の殆どは針金による取り付け、貼り付けであって過程で粉じん飛散はほとんどなく、わずかに切断する場合でも手鋸によるものであって、粉じんの飛散は極めて少ない。また、保温材は多種多様であり、用途が同じ建材の中での被告JICのシェアは例えば昭和52年で約3%弱にすぎない。 ⑵ 石綿含有けい酸カルシウム板第2種⑪について、被告JICの製品は、けい酸カルシウムの中に補強繊維として石綿を配合して成形したもので、自然に崩れることはないし、ほとんどが工場内でプレカットしたものであるため現場で加工することがほとんどなく、わずかに切断する場合でも手鋸によるものであって、加工に伴う粉じんの飛散は極めて少ない。耐火被覆材全体の中での被告JICのシェアは3.3%にすぎない。 ⑶ 被告JICの上記各製品はいずれも木造の建物では使用されない。 13 乙ユ・被告バルカー被告バルカーは、過去に石綿含有建材を製造・販売したことはない。 原告らにおいて、被告バルカーが製造・販売した石綿含有建材であるとして主張するものは、被告バ 13 乙ユ・被告バルカー被告バルカーは、過去に石綿含有建材を製造・販売したことはない。 原告らにおいて、被告バルカーが製造・販売した石綿含有建材であるとして主張するものは、被告バルカーが実施権を付与した日本リンペット工事株式会社(以下「日本リンペット」という。)が製造した製品であり、同社は平成11年(1999年)3月に解散し、法人格も消滅した。 日本リンペットは、自ら又は受注先が施工するために石綿含有建材を製造したにすぎず、吹付け石綿①は昭和46年には製造・使用を中止しており、石綿含有吹付けロックウール②は昭和51年以降、湿式石綿含有吹付け材③は昭和63年以降、石綿が使用されていない。 14 乙ラ・被告ノザワ53 被告ノザワの製造・販売した吹付け石綿①「コーベックス(番号6)」、石綿含有吹付ロックウール②「コーベックスR(番号23)」、石綿含有耐火被覆板⑫「コーベックスマット(番号102)」、石綿含有スレートボード⑮~⑲、石綿含有押出成形セメント板㉒「アスロック(番号638ないし640)」、石綿含有スレート波板㊲~㊴、混和材㊸「テーリング(番号2161)」について、これらのシェアに基づく建材現場到達事実は何ら立証されていない。 被告ノザワが吹付け石綿①を製造・販売した時期は、昭和37年から昭和50年までであり、それ以降は同建材を製造・販売していないから、そもそも被告ノザワは警告表示義務を負わない。 石綿含有押出成形セメント板㉒はその大半が外壁材として使用され、被告ノザワの「アスロック(番号638ないし640)」が間仕切壁用途で利用されたのはごく僅かであるし、ほとんどがプレカットされた状態で現場に搬入される建材で、施工の際に現場での切断・加工をしないから、同建材が主要原因建材になること 8ないし640)」が間仕切壁用途で利用されたのはごく僅かであるし、ほとんどがプレカットされた状態で現場に搬入される建材で、施工の際に現場での切断・加工をしないから、同建材が主要原因建材になることはない。 15 乙ワ・被告MMK⑴ 被告MMKの製造・販売した石綿含有スレートボード⑮~⑲、石綿含有押出成形セメント板㉒、石綿含有けい酸カルシウム板第1 種㉓は、いずれも建材現場到達事実が認められない。 ⑵ 被告MMKは、石綿含有けい酸カルシウム板第1 種㉓を北海道に出荷しておらず、石綿含有押出成形セメント板㉒は他のボードに比べてその出荷量が著しく少ない。同建材のうち、特に「メース(番号642ないし644)」は、ほぼ全てが非住宅の鉄骨建造物の外壁材として使用され、プレカットされた状態で搬入され、建設現場では切断・加工されないし、専門の販売工事店以外では施工されないから、主要原因建材に当たらない。 第3章 当裁判所の判断第1節 被告らの予見可能性に関する認定事実54 後掲証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 第1 建設作業における石綿粉じんの発散建物の建設現場においては、石綿含有スレートボード等の石綿含有建材を切断する際に、石綿粉じんが発散することがあった。また、左官工等がモルタルを作る際に、石綿又は石綿を含有する混和材を加えてかくはんすることにより、石綿粉じんが発散した。設備工事においても、電工や配管工が石綿を含有するボードに穴を開ける際に、石綿粉じんが発散することがあった。 鉄骨造建物の建築工事においては、上記のほか、吹付け材の吹付け作業の際に、ノズルから放出された吹付け材の石綿粉じんが周囲に飛散することがあった。また、吹き付けられた石綿等を配線や配管等のために削る際にも、石綿粉じ 工事においては、上記のほか、吹付け材の吹付け作業の際に、ノズルから放出された吹付け材の石綿粉じんが周囲に飛散することがあった。また、吹き付けられた石綿等を配線や配管等のために削る際にも、石綿粉じんが発散することがあった。 建物の増改築工事や解体工事においても、建材に含まれる石綿が粉じんとなって発散することがあった。 これらのほか、配管への石綿含有保温材の取付け及び取替え等の作業において、石綿粉じんが発散することがあった。 建設作業者は、自らが行った作業により発散し、又は飛散した石綿粉じんに直接的にばく露することがあったほか、同じ建設現場で他の者が行った作業によって発散し、又は飛散した石綿粉じんに間接的にばく露することもあった。 第2 石綿関連疾患に係る医学的知見の集積状況等1 労働省は、労働衛生試験研究として、昭和31年度から昭和34年度まで、石綿肺等のじん肺に関する研究を専門家に委託した。昭和31年度及び昭和32年度には、石綿肺の診断基準に関する研究が行われ、石綿肺のり患の実態、臨床像、石綿粉じんにばく露することとの因果関係等が明らかとなり、診断基準の設定にまで到達したと報告された。この昭和32年度の研究の報告がされた昭和33年3月頃には、石綿肺に関する医学的知見が確立した。 (甲A19、甲G1〔乙アA23、24、1010〕)55 2⑴ セリコフらは、1964年(昭和39年)、米国の医学誌において、「アスベストばく露と新生物」と題する論文を発表した。同論文では、建築業の断熱作業労働者の石綿ばく露は比較的軽度で断続的であるが、1943年(昭和18年)以前にこの産業に就業した632人について1962年(昭和37年)まで追跡調査を行ったところ、45人が肺又は胸膜のがんにより死亡しており、うち3人は胸膜中皮腫であったこと 、1943年(昭和18年)以前にこの産業に就業した632人について1962年(昭和37年)まで追跡調査を行ったところ、45人が肺又は胸膜のがんにより死亡しており、うち3人は胸膜中皮腫であったこと、このほか腹膜中皮腫の者が1名おり、255人の死亡者のうち4人が中皮腫であったこと、このようなまれな腫瘍の発症率としては非常に高いこと等が報告されている。(甲A204の1及び2〔1頁〕)⑵ ニューハウスらは、1965年(昭和40年)、英国の医学誌において、「ロンドン地区における石綿ばく露に伴う胸膜及び腹膜中皮腫」と題する論文を発表した。同論文においては、ロンドン病院で過去50年間に中皮腫と診断され、職歴と居住歴が判明した76人のうち40人(52.6%)に石綿の職業ばく露又は家庭内ばく露が認められたのに対し、対照群とされた他の疾患による患者76人の中で石綿ばく露が認められたのは9人(11. 8%)にとどまったこと、職業ばく露及び家庭内ばく露のいずれも確認されなかった中皮腫患者のうち30.6%(対照群では7.6%)がアスベスト工場から約850m以内に居住していたこと等が示され、石綿の職業的ばく露・家庭内ばく露のいずれも中皮腫を引き起こす危険性があると指摘されたほか、環境ばく露によってもり患する危険があること等が報告されている。 (甲A140の1〔144頁〕、206の1及び2)⑶ 上記⑴及び⑵の研究は、いずれも1964年(昭和39年)にニューヨーク科学アカデミー主催の下、ニューヨークで開催されたアスベストの生態的影響に関する国際会議で報告された(甲A140の1〔143ないし146頁〕)。 3 労働省労働基準局長は、昭和46年1月5日付けで、「石綿取扱い事業場の56 環境改善等について」と題する通達(同日基発第1号)を発出し、その中で A140の1〔143ないし146頁〕)。 3 労働省労働基準局長は、昭和46年1月5日付けで、「石綿取扱い事業場の56 環境改善等について」と題する通達(同日基発第1号)を発出し、その中で、「最近、石綿粉じんを多量に吸入するときは、石綿肺をおこすほか、肺がんを発生することもあることが判明し、また、特殊な石綿によって胸膜などに中皮腫という悪性腫瘍が発生するとの説も生まれてきた。」と指摘した(甲G1〔乙アB20〕)。 4⑴ 国立療養所近畿中央病院院長の瀬良好澄は、昭和46年、雑誌「労働の科学」26巻9号において、「石綿作業と肺疾患」と題する論文を発表した。同論文では、石綿と肺がんの発症との間に因果関係があることについては今や異論のないところであるとされ、石綿吹付け作業に従事した39名中6名に石綿肺を認めたこと等から吹付け作業については強力な予防指導を要すると思われるなどとされていた。(甲A8〔4、6頁〕)⑵ 労働省労働衛生研究所の松下秀鶴及び河合清之は、昭和46年、雑誌「労働の科学」26巻9号において、「アスベストの発がん性」と題する論文を発表した。同論文では、石綿ばく露と中皮腫の関係について強い関心が寄せられるようになったのは1960年(昭和35年)のワグナーらの報告以来であり、この報告以後、胸膜及び腹膜の中皮腫に関する疫学的研究が、英国、南アフリカ、米国、カナダ、イタリア、ドイツ等から続々と発表され、その研究結果からは、比較的低濃度の石綿ばく露であっても、長い年月を経れば十分に中皮腫が発生する危険性があるなどとされていた。また、同論文では、石綿に発がん性があるということは、疫学的にも実験腫瘍学的にも、まず疑う余地はないように思われるなどとされていた。(甲A8〔17、18、20頁〕)5 セリコフらが1972年(昭和4 同論文では、石綿に発がん性があるということは、疫学的にも実験腫瘍学的にも、まず疑う余地はないように思われるなどとされていた。(甲A8〔17、18、20頁〕)5 セリコフらが1972年(昭和47年)に行った報告では、米国及びカナダの断熱作業労働者1万7800人の1967年(昭和42年)から1971年(昭和46年)までの肺がんと胸膜中皮腫による死亡者数について、石綿ばく露の開始からの年数に応じて分析がされ、肺がんによる死亡はばく露開始後157 5~19年で有意に増加し、肺がんによる死亡者数が最も多いのはばく露開始後30年以上39年までであり、ばく露開始から少なくとも40年間観察しないと石綿ばく露による影響を評価するのは困難であるとされていた。上記発表は、昭和47年度環境庁公害研究委託費によるアスベストの生体影響に関する研究報告でも紹介されていた。(甲A31〔62頁〕、甲A390の2〔15ないし17頁〕)6 国際労働機関(ILO)は、1972年(昭和47年)に開催した「職業がんの管理と予防に関する専門家会議」において、石綿は職業がんの危険性がある物質であると指摘した(甲A307の1〔20頁〕)。 7 世界保健機関(WHO)の付属機関である国際がん研究機関(以下「IARC」という。)は、1972年(昭和47年)10月、石綿の生物学的影響に関して討議を行った。その結果の報告(「国際がん研究機関長に対する石綿癌諮問委員会の報告」)では、市販されている主要な種類の石綿は、全て肺がんを引き起こし得るとされ、アンソフィライトを除く市販の全ての種類の石綿が中皮腫を引き起こし得る証拠が得られているとされていた。上記報告は、昭和47年度環境庁公害研究委託費によるアスベストの生体影響に関する研究報告でも紹介されていた。(甲A31〔101頁〕、 類の石綿が中皮腫を引き起こし得る証拠が得られているとされていた。上記報告は、昭和47年度環境庁公害研究委託費によるアスベストの生体影響に関する研究報告でも紹介されていた。(甲A31〔101頁〕、甲A307の1〔21、22頁〕、316の1及び2〔2、3頁〕)8 山口裕は、昭和48年2月、「労働の科学」28巻2号において、「建設業における労働災害と疾病」と題する論文を発表した。同論文では、当時の建設業における労働災害及び職業性疾病の実態について分析されたが、昭和47年のセリコフの報告が引用され、近年、石綿肺、アスベストによる呼吸器その他のがん発生が大きな問題となってきた、現在建設業においてはアスベスト製品の加工使用によるアスベスト粉じん作業が増加しているなどとされていた。(甲A448〔48頁〕)9 労働省労働基準局長は、昭和48年7月11日付けで、「特定化学物質等障58 害予防規則に係る有害物質(石綿およびコールタール)の作業環境気中濃度の測定について」と題する通達(同日基発第407号。以下「昭和48年通達」という。)を発出した。昭和48年通達は、後記第3の2⑵のとおり、当面、石綿粉じんの抑制濃度を5μm以上の繊維として5本/㎤と指導することを指示しているが、通達発出の理由として、最近、石綿が肺がん、中皮腫等を発症させることが明らかとなったこと等により、各国の規制においても気中石綿粉じん濃度を抑制する措置が強化されつつあることが挙げられていた。(甲G1〔乙アB51〕)10 IARCは、1973年(昭和48年)、化学物質の人体に対する発がん性リスクについての検討結果を公表するモノグラフ集の第2巻を発行した。そこでは、石綿のがん原性に関し、肺がんの過剰リスクは、過去の強いばく露の結果であることが通常であり、肺がんのリスクは する発がん性リスクについての検討結果を公表するモノグラフ集の第2巻を発行した。そこでは、石綿のがん原性に関し、肺がんの過剰リスクは、過去の強いばく露の結果であることが通常であり、肺がんのリスクは石綿肺に関連しているようである、石綿を製造、利用する産業では、中皮腫はクロシドライトへのばく露で引き起こされており、アモサイト、クリソタイルで引き起こされる頻度はより少ない、最初のばく露から腫瘍の発現までの期間は長く、通常は30年以上であるなどとされている。(甲G1〔乙アA1009の1及び2〕)11 労働省は、昭和51年、石綿粉じんにばく露することによる肺がん及び中皮腫の労災認定基準を検討するため、「石綿による健康障害に関する専門家会議」を設置した。同会議は、産業現場における石綿ばく露の実態、石綿関連疾患の臨床、病理、疫学、環境管理等に関する国内外の文献を幅広く検討し、昭和53年9月に報告書をまとめた。同報告書では、石綿肺の進展度と肺がんの合併率との間には直線的な関連はなく、軽度所見や無所見の石綿ばく露労働者にも肺がんの発生が認められるとされ、石綿ばく露量が大となるにつれて肺がん発生の超過危険が大きくなる傾向がみられ、症例としては石綿ばく露歴がおおむね10年を超える労働者に発生したものが多いとされている。また、同報告書では、現時点の知見では、全ての種類の石綿繊維に肺がんの危険性があると考59 えるのが妥当であるとされ、中皮腫については、石綿粉じん濃度が低くても発生した例もあり、肺がんを発生するのに必要なばく露量よりも少量で発生する可能性があるなどとされている。(甲G1〔乙アA40〈170ないし172頁〉〕)12 WHOが1989年(平成元年)に発表した「石綿の職業ばく露限界」と題する報告書では、それ以下ではがんが起こらないという るなどとされている。(甲G1〔乙アA40〈170ないし172頁〉〕)12 WHOが1989年(平成元年)に発表した「石綿の職業ばく露限界」と題する報告書では、それ以下ではがんが起こらないという石綿ばく露の閾値が存在するという実質的証拠はないなどとされている(甲G1〔乙アA4の1及び2〈5頁〉〕)。 第3 石綿粉じん濃度の規制等1⑴ 日本産業衛生協会(昭和47年に日本産業衛生学会に名称が変更された。 以下、この名称変更の前後を通じて「日本産業衛生学会」という。)は、昭和40年、石綿粉じんの許容濃度として、1㎥当たり2mg(石綿の繊維数に換算すると、1㎤当たり33本。)を勧告した。許容濃度とは、労働者が有害物に連日ばく露した場合に、空気中の有害濃度がこの数値以下であれば、健康に有害な影響がほとんど見られないという濃度であり、その数値は、感受性が特別に高くない労働者が、1日8時間以内、中等労働に従事する場合の1日のばく露労働時間内の平均濃度である。(甲A95)⑵ 日本産業衛生学会は、昭和49年、昭和40年の勧告に示された石綿粉じんの許容濃度の数値の改訂を行い、クリソタイル、アモサイト、トレモライト、アンソフィライト及びアクチノライトの気中許容濃度を、時間荷重平均として、5μm(マイクロメートル)以上の繊維として1㎤当たり2本、天井値(いかなる時も15分間の平均濃度がこの値を超えてはならない数値)として、5μm以上の繊維として1㎤当たり10本とし、クロシドライトの許容濃度については、これらの濃度をはるかに下回る必要があるとした。この改訂の理由として、石綿肺のみでなく肺及び消化器のがん及び中皮腫が注目されるようになり、日本の現行許容濃度が近年に各国で設定又は改訂され60 た許容濃度と比較すると極めて高い値であること等が挙げら の理由として、石綿肺のみでなく肺及び消化器のがん及び中皮腫が注目されるようになり、日本の現行許容濃度が近年に各国で設定又は改訂され60 た許容濃度と比較すると極めて高い値であること等が挙げられている。(甲G1〔乙アA136〈58頁〉〕)⑶ 日本産業衛生学会は、昭和56年、クロシドライトの許容濃度として、1㎤当たり0.2本を勧告した(甲A97)。 ⑷ 日本産業衛生学会は、平成13年、リスクアセスメントの手法を導入し、石綿を発がん物質と分類した上、過剰発がん生涯リスクレベル10-3、10-4に対応する評価値として、クリソタイルのみのときは、それぞれ1㎤当たり0.15本、1㎤当たり0.015本、クリソタイル以外の石綿繊維を含むときは、それぞれ1㎤当たり0.03本、1㎤当たり0.003本を勧告した。上記の評価値の意味は、1日8時間、週40時間程度、50年間にわたり上記の濃度のクリソタイルのみの石綿粉じんにばく露した場合に、1㎤当たり0.15本では1000人に1人、平均寿命に到達するまでに肺がん又は中皮腫で死亡するリスク(過剰発がんリスク)が生ずるという意味である。(乙イ1ないし3)2⑴ 労働大臣は、昭和46年4月28日、旧特化則の規定に基づき、同則4条1項の局所排気装置の性能要件として、石綿の抑制濃度の規制値を1㎥当たり2mg(石綿の繊維数に換算すると、1㎤当たり33本。)と定めた(同年労働省告示第27号)(〔甲G1〔乙アB21、24〕)。 ⑵ 労働省労働基準局長は、昭和48年7月11日付けで、昭和48年通達を発出し、当面、石綿粉じんの抑制濃度を5μm以上の繊維として1㎤当たり5本と指導することを指示した。これは、当時、石綿について、濃度基準を繊維数で表示することが医学的に適切であると考えられるようになったことや、石綿が悪性 の抑制濃度を5μm以上の繊維として1㎤当たり5本と指導することを指示した。これは、当時、石綿について、濃度基準を繊維数で表示することが医学的に適切であると考えられるようになったことや、石綿が悪性新生物を発生させるとの知見が示されたことなどから、石綿粉じんを抑制する措置を強化するものであった。(甲G1〔乙アA78〈34、35頁〉、B51〕)⑶ 労働大臣は、昭和50年9月30日、特化則に基づく告示を改正し、石綿61 の抑制濃度の規制値を5μm以上の繊維として1㎤当たり5本と定めた(同年労働省告示第75号)(甲G1〔乙アB52〕)。 ⑷ 労働省労働基準局長は、昭和51年5月22日付けで、「石綿粉じんによる健康障害予防対策の推進について」と題する通達(同日基発第408号)を発出し、最近、関係各国において環気中の石綿粉じん濃度の規制を強化しつつあるとして、当面、1㎤当たり2本(クロシドライトにあっては、1㎤当たり0.2本)以下の環気中粉じん濃度を目途とするよう指導することを指示した(甲G1〔乙アB34〕)。 ⑸ 労働省労働基準局長は、昭和59年2月13日付けで、「作業環境の評価に基づく作業環境管理の推進について」と題する通達(同日基発第69号)を発出し、石綿の管理濃度を1㎤当たり2本とした。管理濃度とは、有害物質に関する作業環境の状態を評価するために、対象となる区域について実施した測定結果から当該区域の作業環境管理の良否を判断する際の指標である。個々の労働者のばく露量と対比することを前提として設定されている許容濃度とは異なる考え方であり、環境の状態が健康にとって許容できるかどうかを判定するためのものではないことから、管理濃度の超過は、健康障害に直ちに結びつくものではないとされる。(甲G1〔乙アA78〈35頁〉、137〈45ないし 環境の状態が健康にとって許容できるかどうかを判定するためのものではないことから、管理濃度の超過は、健康障害に直ちに結びつくものではないとされる。(甲G1〔乙アA78〈35頁〉、137〈45ないし47頁〉、B54、55〈252、253頁〉〕)⑹ 労働大臣は、昭和63年法律第37号による安衛法の改正に伴い、管理濃度に基づく作業環境管理が法制化されたことから、同年9月1日、石綿の管理濃度を5μm以上の繊維として1㎤当たり2本(クロシドライトにあっては、1㎤当たり0.2本)と定めた(同年労働省告示第79号)(甲G1〔乙アB56、57〕)。 ⑺ 厚生労働大臣は、平成16年10月1日、石綿の管理濃度を5μm以上の繊維として1㎤当たり0.15本と定めた(同年厚生労働省告示第369号)(甲G1〔乙アB62〕)。 62 第4 電動工具の普及状況及び防じんマスクの着用状況1 電動工具の普及状況電動丸のこ、電動ドリル等の電動工具で建材を加工する場合、手工具で加工する場合に比して多量の粉じんが発散する。機械統計年報によれば、我が国におけるこれらの電動工具の年間販売台数は、昭和43年に100万台、昭和48年に200万台、昭和52年に300万台、昭和54年に400万台、昭和55年に500万台、昭和58年に600万台、平成2年に700万台まで増加し、その後も数百万台の販売台数を維持した。(甲A437の2~10)2 防じんマスクの着用状況昭和60年頃の建設現場では、吹付け工や一部のはつり工を除き、大半の労働者は防じんマスクを着用しておらず、それ以前の建設現場も同様であった(甲A430〔30頁〕)。 第5 石綿粉じん濃度の測定結果1 屋内の作業に係る測定結果労働科学研究所の木村菊二は、昭和46年(1971年)、雑誌「労働の科学」2 の建設現場も同様であった(甲A430〔30頁〕)。 第5 石綿粉じん濃度の測定結果1 屋内の作業に係る測定結果労働科学研究所の木村菊二は、昭和46年(1971年)、雑誌「労働の科学」26巻9号において、「作業現場の石綿粉塵」と題する論文を発表した。同論文には、昭和40年頃から昭和45年頃までに行われた測定結果であるとして、石綿板製造工場における石綿板切断に係る石綿粉じん濃度の測定結果が記載されているところ、これによれば、除じん装置がない場合で10.8~16. 2本/㎤、除じん装置がある場合で7.4~10.0本/㎤であったとされている。(甲A5、1208)また、木村菊二は、昭和51年、第49回日本産業衛生学会・第20回日本産業医協議会において、「アスベスト粉塵の測定法についての検討」と題する講演を行った。同講演では、「最近の数年間に測定を行った」作業場における石綿粉じん濃度の測定結果が、①電動のこを使用して大型のアスベスト板を切断した場合において、吸じん装置作動中は2.89~25.08本/㎤、吸じん63 装置休止中は147.03~391.50本/㎤であり、②手動のこを使用して小型のアスベスト板を切断した場合において、0.31~2.55本/㎤あるいは0.11~0.38本/㎤であったとされている。(甲A1132〔372、373頁〕)2 屋外建設作業に係る測定結果⑴ 慶応義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室の桜井治彦らは、昭和62年、「一般家屋壁材施工時の発塵状況調査結果」を公表した。この調査結果では、同年、一般個人用住宅建設時に、吸じん装置付き丸鋸や発塵防止用マットの使用の有無といった各種の条件の下、屋外で電動のこぎり又は丸のこを使用して防火サイディングの切断作業をする者につき測定時間を約2~3分として石綿粉じん 設時に、吸じん装置付き丸鋸や発塵防止用マットの使用の有無といった各種の条件の下、屋外で電動のこぎり又は丸のこを使用して防火サイディングの切断作業をする者につき測定時間を約2~3分として石綿粉じんの個人ばく露濃度を測定した結果は、0.08本/㎤、0.17本/㎤、0.20本/㎤、0.27本/㎤、0.27本/㎤、1.16本/㎤、2.05本/㎤であったとされている(以下、この測定結果を「測定結果①」という。)。(甲G1〔乙アA206〈2ないし4頁〉〕)⑵ 海老原勇は、平成19年、「建設作業者の石綿関連疾患-その爆発的なひろがり-」と題する書籍を出版した。同書籍では、昭和62年、屋外の木造住宅の建設現場において、防じん電動丸のこ、電動丸のこ又は手動のこぎりを使用して外壁材の切断及び張付けの作業をする者につき測定時間を129~203分として石綿粉じんの個人ばく露濃度を測定した結果は、4件で0.94~1.58本/㎤であり、(作業の中でも発じんが顕著な作業の測定として)防じん電動丸のこを使用して外壁材の切断を中心とする作業をする者につき測定時間を11~15分として個人ばく露濃度を測定した結果は、3件で2.3~6.7本/㎤であったとされている(以下、この測定結果を「測定結果②」という。)。(甲A108〔4ないし8頁〕)⑶ 名古屋大学医学部衛生学教室の久永直見らは、昭和63年、雑誌「労働衛生」に「アスベストに挑む三管理 環境管理と作業管理-建築業の現場を中64 心に-」と題する論文を発表した。同論文では、同年、屋根葺き用石綿スレートによる屋根葺き作業をする者につき測定時間を115分としてその者の鼻先で気中石綿粉じん濃度を測定した結果は、0.13本/㎤であったとされている(以下、この測定結果を「測定結果③」という。)。(甲A430〔28頁〕 業をする者につき測定時間を115分としてその者の鼻先で気中石綿粉じん濃度を測定した結果は、0.13本/㎤であったとされている(以下、この測定結果を「測定結果③」という。)。(甲A430〔28頁〕)⑷ 労働省労働基準局長は、平成4年1月1日付けで「石綿含有建築材料の施工作業における石綿粉じんばく露防止対策の推進について」と題する通達(同日基発第1号)を発出した。同通達に添付された資料では、「石綿含有建築材料の施工における作業マニュアル」(後記⑸の初版と考えられる。)を出典として、屋外で除じん装置付き電動丸のこを使用してスレートの施工作業をする者につき測定時間を各120分として石綿粉じんの個人ばく露濃度を測定した結果は、4件で0.006~0.032本/㎤であったとされている(以下、この測定結果を「測定結果④」という。)。(甲G1〔乙アB45〈221頁〉〕)⑸ 建設業労働災害防止協会は、平成9年に労働省労働基準局安全衛生部化学物質調査課編「改訂 石綿含有建築材料の施工における作業マニュアル-石綿粉じんばく露防止のために-」を出版した(初版は平成4年1月)。このマニュアルでは、昭和62年から昭和63年にかけての測定結果として、屋外で除じん装置の付いていない電動丸のこ又はバンドソーを使用してスレート等の切断、葺上げ、張付け等の作業をする者につき採取時間を32~180分として石綿粉じんの個人ばく露濃度を測定した結果は、14件で0.01~0.31本/㎤(うち0.15本/㎤以上のものは5件)であったとされ、昭和62年の測定結果として、屋外で除じん装置付き電動丸のこを使用して押出成形板の切断、葺上げ、張付け等の作業をする者につき採取時間を15~230分として石綿粉じんの個人ばく露濃度を測定した結果は、10件で0.002~0.091本/㎤であ 置付き電動丸のこを使用して押出成形板の切断、葺上げ、張付け等の作業をする者につき採取時間を15~230分として石綿粉じんの個人ばく露濃度を測定した結果は、10件で0.002~0.091本/㎤であったとされている(以下、この測定65 結果を「測定結果⑤」という。)。上記マニュアルには、屋外での石綿含有建材の切断作業に際しては、大気の拡散効果により、除じん装置を使用していなくても、風向き、天候によっては石綿粉じんの管理濃度の5分の1以下となり、作業者に対してはばく露抑制となっている旨が記載されている。(甲A248〔31、36、37頁〕)⑹ ドイツ職業保険組合中央会は、1997年(平成9年)、石綿のばく露歴からばく露量を推定し、石綿原因の肺がんの労災認定を行う際のマニュアルとしてBKレポートを出版した。BKレポートでは、屋外で除じん装置のない研削切断器を使用して行う配管工事において、管の切断10回、積み上げ、積み下ろし等の作業をした場合の繊維濃度90パーセンタイル値は2本/㎤、外壁化粧張りの作業をした場合の繊維濃度90パーセンタイル値は0. 4本/㎤であったとされている(以下、この測定結果を「測定結果⑥」という。)。なお、「BKレポート」の上記測定データは、「傷害保険組合関係の情報源から得た」ものと記載されているが、その元データや、測定条件の詳細は不明である。(甲A492の1及び2〔1、10、11頁〕)⑺ 平成17年に行われた第45回日本労働衛生工学会の抄録集には、外山尚紀らによる建設現場における石綿含有建材加工時の気中石綿濃度に関する研究の報告が掲載されている。同報告では、屋根上でサンダーを使用して屋根用化粧スレートを加工する作業又は屋外で電動丸のこを使用してスレート若しくはサイディング材を加工する作業をする者につき採取時間 研究の報告が掲載されている。同報告では、屋根上でサンダーを使用して屋根用化粧スレートを加工する作業又は屋外で電動丸のこを使用してスレート若しくはサイディング材を加工する作業をする者につき採取時間を10~15分として石綿粉じんの個人ばく露濃度を測定した結果は、0.11本/㎤、0.14本/㎤、0.17本/㎤、0.25本/㎤であったとされている(以下、この測定結果を「測定結果⑦」という。)。(乙タ11)第6 建設業労働者のじん肺症発生件数及びじん肺合併症発生件数建設業労働者のじん肺症発生件数(昭和53年度以前)又はじん肺症及びじん肺合併症発生件数(昭和54年度以降)は、昭和45年度には77件であったが、66 昭和46年度に100件を、昭和49年度に200件を、昭和51年度に400件をそれぞれ超え、昭和52年度に516件に達した。その後、平成15年度に至るまで増減を繰り返したが、多い年度では700件を超え、少ない年度でも200件を下回ることはなかった。また、産業別の石綿関連疾患発生件数の統計のある平成17年度以降、建設業労働者の石綿関連疾患の発生件数は、同年度が299件、平成18年度が1105件であり、平成19年度から平成26年度までは500件台又は600件台で推移した。(甲G1〔乙アA306〕)第2節 被告らの注意義務違反について(建設作業者の石綿被害に関する被告らの予見可能性と警告義務違反について)第1 被告らの注意義務の内容・予見可能性の程度について1 原告らは、石綿含有建材という人の生命、身体、健康の法益を侵害する危険性を有する製品を製造・販売する企業においては、医学的知見の進展等に関する研究調査義務、石綿含有建材の出荷情報等の記録・保存等を行う義務、販売後の使用状況の変化等の追跡監視義務、石綿粉じんの危険性 性を有する製品を製造・販売する企業においては、医学的知見の進展等に関する研究調査義務、石綿含有建材の出荷情報等の記録・保存等を行う義務、販売後の使用状況の変化等の追跡監視義務、石綿粉じんの危険性等の警告義務、石綿含有建材の製造・販売の停止・中止義務等の安全性確保義務を負っており、これらは石綿粉じんの危険性に関する医学知見等の進展に伴って段階的に厳しくなると主張する。 2 前記第2章第2節(前提事実)第2のとおり、石綿は、その紡績性、拡張力、耐熱性等の特長から建材等に広く使用されてきたものであり、我が国においても、特に昭和30年代の高度経済成長期に輸入量が急増し、石綿の普及が急速に広がった一方で、前記第1 節(認定事実)第2のとおり、昭和33年3月頃には石綿肺に関する医学的知見が確立するなど、石綿の普及に伴い、その有害性に関する知見も集積されてきた経過が認められる。 一般的に、製品を製造・販売する企業は、自社の製品の原材料やその特性についての知見・情報を保持し、使用方法に伴うものも含め、自社製品の危険性について高い関心を払い、その安全性確保に向けた対策を講ずるべき立場にあ67 ることから、石綿含有建材を製造・販売する企業においても、石綿に関する医学的知見を積極的に収集すべき立場にあるというべきである。 そして、後記第3の1のとおり、石綿含有建材を製造・販売する企業は、自社製品を使用して建設作業に従事した者が同建材から発散した石綿粉じんのばく露によって石綿関連疾患にり患する危険を具体的に予見できた場合には、かかる危険を回避するために、警告義務を負うものと解するのが相当である。 3 他方、建材の製造・販売については、人体に薬理効果を及ぼすことを目的とする医薬品の製造・販売と直ちに同列に論ずることはできず、各製品の出荷情報 に、警告義務を負うものと解するのが相当である。 3 他方、建材の製造・販売については、人体に薬理効果を及ぼすことを目的とする医薬品の製造・販売と直ちに同列に論ずることはできず、各製品の出荷情報等の記録・保存や使用状況を追跡監視することに関する法令上の根拠がなく、国内における石綿の使用量が急増する状況の下、建材を製造・販売する企業がかかる対応を行うには相当の経済的負担を強い得るものであり、前記2の予見可能性に基づく警告義務が生じるのに先立ち、各企業において、石綿含有建材の出荷情報等の記録・保存等を行い、販売後の使用状況の変化等の追跡監視をすべき義務があったとは認められない。 したがって、この点に関する原告らの主張は採用できず、被告らの負うべき注意義務の内容やその前提となる予見可能性の程度は前記2の限度で認めるのが相当である(被告らの石綿不使用義務については後記第4において判示する。)。 第2 被告らの予見可能性について1 屋内作業に従事した者との関係について⑴ 石綿粉じんばく露に係る医学的知見としては、前記第1 節第2のとおり、我が国において、昭和33年3月頃には石綿肺の医学的知見が確立し、その後も石綿粉じんと肺疾患に関する研究が重ねられたこと、昭和46年1月5日には労働省労働基準局長が石綿取扱事業場の環境改善等に関する通達を発出したこと、昭和47年にはILOが「職業がんの管理と予防に関する専門家会議」において石綿は職業がんの危険性がある物質であると指摘したほ68 か、セリコフによる肺がんと胸膜中皮腫の死亡者数に対する石綿ばく露開始からの年数に応じた分析結果の報告、IARCにおける石綿の生物学的影響に関する討議の結果報告がされたこと等を踏まえると、昭和47年の時点においては、石綿粉じんばく露と肺がん及び中皮腫との関 く露開始からの年数に応じた分析結果の報告、IARCにおける石綿の生物学的影響に関する討議の結果報告がされたこと等を踏まえると、昭和47年の時点においては、石綿粉じんばく露と肺がん及び中皮腫との関連性、肺がん及び中皮腫が潜伏期間の長い遅発性の疾患であることに関する医学的知見が明らかになってきたと考えられる。 そして、前記第1の2のとおり、石綿含有建材を製造・販売する企業においても、石綿に関する医学的知見を積極的に収集すべき立場にあるというべきであることからすると、被告らにおいても、その頃において、上記の医学的知見を認識していた又は認識すべき状況であったといえる。 ⑵ 上記⑴のような医学的知見の集積に関する状況がある中、前記第1 節第2及び第3のとおり、昭和48年7月には労働省労働基準局長が昭和48年通達を発出し、石綿が肺がん、中皮腫等を発症させることが明らかとなったこと等により、各国の規制においても気中石綿粉じん濃度を抑制する措置が強化されつつあることを理由として、石綿の抑制濃度を5本/㎤と指導することを指示したことに加え、昭和49年には、日本産業衛生学会が、他国の許容濃度の数値を踏まえて、昭和40年の勧告に示された石綿粉じんの許容濃度の数値を厳格化しており、規制強化の流れも明らかとなっていた。 ⑶ 前記⑵の規制強化の流れに加え、前記第2章第2節(前提事実)第2及び前記第1 節第1、第3ないし第5によれば、昭和40年台後半の当時、我が国における石綿の輸入量は急増し、輸入された石綿の約7割が建設現場で使用されていたこと、多量の粉じんを発散させる電動工具の普及に伴い、建設作業現場は石綿粉じんにばく露する危険性の高い作業環境にあったこと、それにもかかわらず建設作業現場においては、吹付け工や一部のはつり工を除き、大半の労働者 じんを発散させる電動工具の普及に伴い、建設作業現場は石綿粉じんにばく露する危険性の高い作業環境にあったこと、それにもかかわらず建設作業現場においては、吹付け工や一部のはつり工を除き、大半の労働者が粉じんマスクの着用をしていなかったことが、それぞれ認められるから、当時の建設作業者には石綿粉じんのばく露により石綿関連69 疾患にり患する危険が広範に生じていたと認められる。 ⑷ 被告らが私法上の義務として警告義務を負うためには、人の生命・身体に関わる問題であることを十分に考慮しても、石綿粉じんばく露により建設作業者の生命、身体、健康に重大な被害が生じることの疑念を抱かせる程度の医学的情報等の集積に基づく抽象的な予見可能性では足らず、石綿粉じんにより建設作業従事者が石綿粉じん関連疾患にり患する蓋然性が高いとの具体的な予見可能性が必要である。もっとも、石綿粉じん関連疾患にり患する蓋然性が高いと具体的に予見できるのであれば、かかる危険を回避する義務が生じるといえるために、石綿含有建材を製造・販売する企業において、石綿粉じんにより建設作業従事者が石綿粉じん関連疾患にり患する具体的な発症プロセスを認識することまでは不要である。 そこで検討をすると、前記⑴~⑶の石綿関連疾患に関する医学的知見の集積や建設現場の状況を取り巻く国内の情勢からすれば、遅くとも日本産業衛生学会が昭和40年の勧告に示された石綿粉じんの許容濃度の数値を厳格化した昭和49年には石綿粉じんばく露と肺がん及び中皮腫との関連性、肺がん及び中皮腫が潜伏期間の長い遅発性の疾患であることに関する医学的知見を把握することができ、少なくとも屋内建設現場における建設作業者との関係では、建設作業者が当該建材から発散される石綿粉じんにばく露し、石綿関連疾患にり患する危険を具体的に予見することが る医学的知見を把握することができ、少なくとも屋内建設現場における建設作業者との関係では、建設作業者が当該建材から発散される石綿粉じんにばく露し、石綿関連疾患にり患する危険を具体的に予見することができたと認めるのが相当である。 2 屋外建設作業に従事した者との関係⑴ 前記第1 節第3のとおり、石綿粉じんの抑制濃度については、昭和48年通達によって5本/㎤と指導することが指示された後、昭和50年に労働省告示によって規制値が5本/㎤と定められ、昭和51年に労働省労働基準局長通達によって当面は2本/㎤(クロシドライトにあっては0.2本/㎤)以下の環気中粉じん濃度を目途とするように指導することが指示されたこ70 と、石綿粉じんの管理濃度については、昭和59年の同局長通達及び昭和63年の労働省告示において2本/㎤と定められた後、平成16年10月1日の労働省告示によって0.15本/㎤と定められたことが、それぞれ認められる。 これに対し、前記第1 節第5の2で認定した屋外における石綿粉じん濃度の測定結果①~⑦のうち、測定結果①及び②においては2本/㎤を超える数値があったと認められるものの、測定結果②は平成19年に出版された書籍に記載されたものであり、それ以前に、被告らが認識し得たとは認められない。また、測定結果①は、主に石綿含有建材の切断作業をする者につきその作業をする限られた時間の個人ばく露濃度を測定したものであり、この測定結果をもって、屋外建築作業に従事する者が就業時間を通じて当該濃度の石綿粉じんにばく露していたということはできない。 ⑵ 前記第1節第3のとおり、日本産業衛生学会は、平成13年、石綿を発がん物質と分類し、過剰発がん生涯リスクレベル10-3に対応する評価値としてクリソタイルのみのときは0.15本/㎤を勧告したが、 ⑵ 前記第1節第3のとおり、日本産業衛生学会は、平成13年、石綿を発がん物質と分類し、過剰発がん生涯リスクレベル10-3に対応する評価値としてクリソタイルのみのときは0.15本/㎤を勧告したが、その意味は、労働者が1日8時間、週40時間程度、50年間にわたり0.15本/㎤のクリソタイルのみの石綿粉じんにばく露したときに、1000人に1人、過剰発がんリスクが発生するというものであった。 そうすると、上記の数値以上の濃度の石綿粉じんに短時間ばく露することにより、直ちに上記の過剰発がんリスクが発生するというものではない。また、測定結果①、②、⑤~⑦には0.15本/㎤以上のものが相当数あるが、測定結果①及び⑤については主に石綿含有建材の切断作業をする者につきその作業をする限られた時間の個人ばく露濃度を測定したものであり、測定結果⑥については測定時間等の測定条件の詳細が明らかでないから、これらの測定結果をもって、屋外建築作業に従事する者が就業時間を通じて当該濃度の石綿粉じんにばく露していたということはできない。測定結果②は平成71 19年に出版された書籍に記載されたものであり、測定結果⑦も平成17年に報告されたものであって、これらの報告をもって屋外建築作業時における石綿粉じんばく露によって石綿関連疾患にり患する危険に関する知見がその当時確立されたとも認め難い。そして、測定結果③及び④は、いずれも0. 15本/㎤を下回るものである。 ⑶ 前記第1 節第5によれば、屋外建設作業に係る石綿粉じん濃度の測定結果①~⑦は、全体として屋内の作業に係る石綿粉じん濃度の測定結果を大きく下回るところ、これは、屋外の作業場においては、屋内の作業場と異なり、風等により自然に換気がされ、石綿粉じん濃度が薄められるためであると考えられる。 ⑷ 以上によれば 粉じん濃度の測定結果を大きく下回るところ、これは、屋外の作業場においては、屋内の作業場と異なり、風等により自然に換気がされ、石綿粉じん濃度が薄められるためであると考えられる。 ⑷ 以上によれば、測定結果①ないし⑦のなかに0.15本/㎤を上回るものがあったとしても、石綿含有建材を製造・販売していた被告らにおいて、屋外建設現場における建設作業者との関係で、その者が当該建材から発散される石綿粉じんにばく露し、石綿関連疾患にり患する危険性を具体的に予見することができたと直ちに認めることはできない。 3 被告らの主張について被告らの中には、企業が国よりも調査・情報収集能力に乏しく、昭和55年以前の段階で石綿のうちクリソタイルについては石綿関連疾患にり患する危険があることの知見は確立されていない、微量のクリソタイルのみを含有する建材については石綿関連疾患のり患を予見できなかったなどと主張する企業もある。 しかしながら、前記判示のとおり、昭和47年のIARCの報告により、市販されている主な石綿の一種であるクリソタイルが肺がんや中皮腫を惹起し得る旨の医学的知見が国際機関によって示されており、石綿含有建材を製造・販売する立場にある被告らはこれを認識すべきであったというべきであり、クリソタイルの知見の確立に関する被告らの主張も採用できない。また、個々の72 企業が製造・販売した石綿含有建材から生ずる石綿粉じんが微量であったとしても、石綿粉じんばく露の態様は作業内容等によっても異なるから、そのことをもって屋内建設現場における作業によって石綿関連疾患を惹起させる可能性が直ちに否定されるものではないし、他社の製造・販売する石綿含有建材から生ずる石綿粉じんと相まって、建設作業者に石綿関連疾患を発症させる危険性も予見できたというべきであるから、こ を惹起させる可能性が直ちに否定されるものではないし、他社の製造・販売する石綿含有建材から生ずる石綿粉じんと相まって、建設作業者に石綿関連疾患を発症させる危険性も予見できたというべきであるから、この点に関する被告らの主張も採用できない。 第3 警告義務違反について1 警告義務の具体的内容・範囲⑴ 警告義務の具体的内容被告らの製造・販売する石綿含有建材は、その性質上、切断や加工等の作業をする際に石綿粉じんを発散し、石綿粉じんにばく露した者が石綿関連疾患にり患する危険性のある製品であるから、石綿含有建材を製造・販売をしていた被告らにおいて、屋内建設作業に従事する者が当該建材から発散される石綿粉じんにばく露し、石綿関連疾患にり患する危険を具体的に予見することができる場合には、それが二次加工メーカーに出荷した分か否かを問わず、当該建設作業者との関係で、その製造・販売する石綿含有建材に内在する危険性の内容及び回避手段を警告すべき義務(以下「警告義務」という。)を負うものと解される。 そして、上記の石綿含有建材の性質に加え、石綿含有建材の流通形態等を踏まえれば、各建材に共通する警告義務の具体的な内容としては、①建材に石綿が含有されていること、②石綿粉じんを吸引すると石綿肺、肺がん、中皮腫等の重篤な石綿関連疾患を発症する危険性があること、③上記危険を回避するために、当該建材を取り扱う際には適切な防じんマスクを着用する必要があること等を、当該建材に明確かつ具体的に表示することが要求され、建材を取り扱う作業者の目に確実に触れるように、個々の建材自体(又はそ73 の最小単位の包装)にラベルを貼付すること等により表示すべき義務(以下「警告表示義務」という。)を負うものと解される。 また、石綿粉じんは周囲に飛散し、特 々の建材自体(又はそ73 の最小単位の包装)にラベルを貼付すること等により表示すべき義務(以下「警告表示義務」という。)を負うものと解される。 また、石綿粉じんは周囲に飛散し、特に屋内建設現場においては高い濃度となっていたところ、上記の警告表示の目的に鑑みれば、石綿含有建材が新規に使用された建設現場における全ての屋内建設作業に従事する者に対して警告が表示される必要性があるが、警告表示自体を直接目にすることがない建設作業者との関係では、当該工事を監督する立場にある者等を通じて警告表示の内容が伝達されることが合理的に期待されるというべきである。 ⑵ 警告義務の相手方等ア 二次的加工者との関係石綿含有建材の性質のほか、建設工事の一般的な工程を踏まえると、屋内建設作業において石綿含有建材が一旦使用された後、当該工事において必要な限度で吹付け材を剥がしたり、当該建材に配線や配管のため穴を開けたりする作業が実施され、その作業を実施する者が発散した石綿にばく露することは合理的に想定される。また、石綿粉じんの発散を伴う切断・加工等の作業に近接した場所でこれと並行して作業する者が石綿にばく露することも合理的に想定される。石綿含有建材を製造・販売する被告らにおいても、このような屋内建設作業の実態を予見することができなかったとは考え難い。 そして、前記⑴のとおり、石綿含有建材から生ずる粉じんにばく露することで石綿関連疾患にり患する危険がある等との警告表示は、当該建材に付された表示を契機として、工事を監督する立場にある者等を通じて上記のような二次的加工に関与する者にも伝達されるべきものといえる(上記の表示がなければ当該工事を監督する立場にある者等が当該建材の危険性を知る契機がなく、かかる情報が伝達されな にある者等を通じて上記のような二次的加工に関与する者にも伝達されるべきものといえる(上記の表示がなければ当該工事を監督する立場にある者等が当該建材の危険性を知る契機がなく、かかる情報が伝達されない。)。 以上によれば、警告表示義務の相手方の範囲としては、屋内建設現場に74 おいて当該建材が一旦使用された後に、当該工事において、必要な限度で吹付け材を剥がしたり当該建材に配線や配管のため穴を開けたりする二次的加工に関わる者や、石綿粉じんの発散を伴う作業に近接した場所で並行して作業する者に対する関係においても、これを負担するものと解するのが相当である。 イ 屋外建材の関係(ア)原告らは、外装材や屋根材といった屋外建材に分類される石綿含有建材についても、そもそも屋内・屋外の区別が明確ではないこと、屋内で切断・加工される場合が多いこと、屋外における切断・加工の際も石綿粉じんの発散源に顔を近づけて作業する場合が多いことから、作業実態に応じて建設作業者が石綿粉じんにばく露する具体的な可能性があるとして、屋外建材を製造・販売した企業も警告義務を負うと主張する。 (イ)しかしながら、屋外建材の用途を踏まえると、その切断作業等は屋外で行うことが最も合理的であり、証拠(乙ケ1004〔15、22、30頁〕)によれば、昭和63年に公表された石綿含有建築材料調査報告書(日本石綿協会)においても、スレート波板や屋根用スレート材、石綿セメントサイディング等の屋外建材の作業場所は屋外であるとされていると認められる。 そして、個々の作業実態によっては屋外建材の加工作業が屋内で行われることがあり得たとしても、かかる事情をもって直ちに外装材の加工作業が屋内でされることが一般的であったとは認められないから、屋外建材を製造・販売する企 実態によっては屋外建材の加工作業が屋内で行われることがあり得たとしても、かかる事情をもって直ちに外装材の加工作業が屋内でされることが一般的であったとは認められないから、屋外建材を製造・販売する企業において外装材の石綿ばく露による石綿関連疾患のり患に対する具体的な予見可能性を認めるのは困難であり、他に屋外建材を屋内で加工するのが一般的であった、あるいは屋外建材を製造・販売する被告らにおいて屋外建材を屋内で加工する作業実態を具体的に認識していたと認めるに足りる的確な証拠はない。 75 以上によれば、屋外建材を製造・販売する被告らにおいて、当該建材の施工に従事した者との関係で、石綿粉じんばく露による石綿関連疾患のり患を予見することは困難であったといわざるを得ないから、屋外建設作業で用いられる外装材等の屋外建材に関する警告表示義務を認めることはできない。 ウ 改修・解体工事の関係(ア)原告らは、石綿含有建材を製造・販売する被告らは、当該建材が使用される建物の改修・解体作業に従事した者との関係でも警告義務(警告表示義務)を負担している旨主張する。 (イ)しかしながら、石綿含有建材の中には、吹付け材のように当該建材自体に警告情報を記載することが困難なものがある上、その記載をしたとしても、加工等により当該記載が失われたり、他の建材、壁紙等と一体となるなどしてその視認が困難な状態となったりすることがあり得る。 また、建物において石綿含有建材が使用される部位や態様は様々であるから、警告情報を記載したシール等を当該建材が使用された部分に貼付することが困難な場合がある上、その貼付がされたとしても、当該シール等の経年劣化等により警告情報の判読が困難な状態となることがあり得る。警告情報を記載した注意書及びその交付を促す文 された部分に貼付することが困難な場合がある上、その貼付がされたとしても、当該シール等の経年劣化等により警告情報の判読が困難な状態となることがあり得る。警告情報を記載した注意書及びその交付を促す文書を石綿含有建材に添付したとしても、当該建材が使用された建物の解体までには長期間を経るのが通常であり、その間に当該注意書の紛失等の事情が生じ得るのであって、当該注意書が解体作業者に提示される蓋然性が高いとはいえない。 そして、被告らは、建材メーカーであり、上記の貼付又は交付等の実現を確保することはできず、石綿含有建材を製造・販売するに当たり、改修・解体作業者が石綿粉じんにばく露する危険を回避するための警告情報の表示方法として、実効性等の高い表示方法があったということも76 できない。 加えて、被告らは、その製造・販売した石綿含有建材が使用された建物の解体に関与し得る立場になく、建物の解体作業は、当該建物の解体を実施する事業者等において、当該建物の解体の時点での状況等を踏まえ、あらかじめ職業上の知見等に基づき安全性を確保するための調査をした上で必要な対策をとって行われるべきものということができる。 (ウ)以上によれば、被告らが、石綿含有建材を製造・販売するに当たり、当該建材が使用される建物の(全部又は一部の)解体作業や(一部の解体作業を伴う)建物の改修作業に従事する者に対し、前記判示に係る警告義務(警告表示義務)を負っていたということはできない。 (エ)原告らは、改修・解体工事の関係で、石綿含有建材の製造・販売時に危険性情報を記載した取扱説明書を作成して施工者や建材店等に交付する方法、石綿含有建材の販売・施工時に建築士等の設計図書作成者に対して石綿含有の有無を記載するよう指示する方法、石綿含有建材の販売・施工後も出荷情報や使用状 説明書を作成して施工者や建材店等に交付する方法、石綿含有建材の販売・施工時に建築士等の設計図書作成者に対して石綿含有の有無を記載するよう指示する方法、石綿含有建材の販売・施工後も出荷情報や使用状況等を記録・追跡し、石綿含有建材の使用現場や石綿含有建材の使用された建物の所有者等を把握して警告する方法、官公庁や解体業界団体、マスメディアを介した情報提供を通じて広く警告する方法等により、上記危険を回避すべき義務を負っていたなどと主張する。 しかしながら、上記のとおり、建物の解体作業に従事する者の石綿粉じんへのばく露については、当該建物の解体を実施する事業者等において、当該建物の解体の時点での状況等を踏まえ、職業上の知見等に基づき予め安全性を確保するための調査をした上で必要な対策をとって行われるべきものであるから、原告らの主張する方法が石綿粉じんのばく露を回避する観点から望ましい点を考慮しても、被告らにおいて、原告らの主張するような方法によって危険を回避すべき法的義務があっ77 たとまでは認められない。 2 警告義務の始期・終期⑴ 前記第2のとおり、石綿含有建材を製造・販売していた被告らは、遅くとも昭和49年には、少なくとも、屋内建設現場における建設作業者との関係で、当該建材から発散される石綿粉じんにばく露し、石綿関連疾患にり患する危険性を具体的に予見することができたと認められる。 そして、石綿含有建材を製造・販売していた被告らにおいて、具体的に予見することが可能な事実を認識してから、その対策を実施するためには、一定の期間が必要であるものの、前記1で認めた内容・範囲の警告表示は、石綿含有建材の性質を変更するものではなく、特段の技術を要するものでもなく、対策を実施するまでにはさほど時間を要するとはいえないことに加え、石 要であるものの、前記1で認めた内容・範囲の警告表示は、石綿含有建材の性質を変更するものではなく、特段の技術を要するものでもなく、対策を実施するまでにはさほど時間を要するとはいえないことに加え、石綿関連疾患に係る生命・身体・健康に与える影響の重大さに照らせば、上記の被告らにおいては、屋外建材を除き、昭和50年1月1日の時点で、屋内建設現場における建設作業者との関係で警告表示義務を負担するに至ったと解するのが相当である。 ⑵ 被告らの中には、被告らが実際に警告表示を行うためには相当長期間の準備を要し、直ちに履行が可能となるものではなく、神奈川1陣最判において、国の規制権限の不行使が国家賠償法1条1項の適用上違法となる期間について、昭和50年10月1日からと判断されたことからすれば、被告らの警告義務の始期は同日より遅い時期と解すべきであると主張する企業がある。 しかしながら、前記判示のとおり、石綿含有建材を製造・販売する被告らにおいて、屋内建設作業に従事する者との関係で、石綿含有建材から発散される石綿粉じんにばく露し、石綿関連疾患にり患する危険性を具体的に予見できた時点から、警告表示を準備するまでには迅速な対応が求められていたというべきであり、上記主張は採用できない。 ⑶ 警告義務(警告表示義務)の終期については、警告義務が石綿含有建材の78 製造・販売に伴って生ずるものであるから、当該石綿含有建材の製造・販売を終了した時点が終期となる。そして、前記第2章第2節(前提事実)第5の6のとおり、石綿等の製造は平成18年9月1日に施行された安衛令で全面的に禁止されたが、同日以降も被告らが石綿含有建材の製造・販売を続けたと認めるに足りる証拠はないから、製造・販売の期間が不明な製品に関しては、遅くとも同年8月31日が 月1日に施行された安衛令で全面的に禁止されたが、同日以降も被告らが石綿含有建材の製造・販売を続けたと認めるに足りる証拠はないから、製造・販売の期間が不明な製品に関しては、遅くとも同年8月31日が警告義務の終期になるものと認める。 3 警告義務違反について⑴ 被告らのうち、警告表示義務を負担していた者が、かかる義務を履行したと認めるに足りる証拠はない。 ⑵ア 被告らの中には、表示方法通達に従った警告表示をする、施工説明書等に切断・研磨等の作業の際に長時間多量の粉じんを吸入すると健康を損なう恐れがあり、十分な防じん対策をされたいなどと記載する方法で警告表示をしていたと主張する企業もあるが、表示方法通達の注意事項は石綿粉じんの危険性及び防じんマスクの必要性に関する抽象的な警告表示にとどまっており、上記主張に係る表示をしたことで警告表示義務を尽くしたとは認められない。 イ 被告らの中には、自社の製造・販売した石綿含有建材に「a」マークを表示していたなどと主張する企業もあるが、上記マークは、当該建材に石綿が含有されている事実を表示するにとどまるから、かかる表示によって警告表示義務を尽くしたとは認められない。 ウ 被告らの中には、特定の施工業者に対してのみ建材を販売した上で安全な施工方法等について情報提供したなどと主張する企業もあるが、警告表示義務として求められるべき石綿粉じんを吸引すると石綿肺、肺がん、中皮腫等の重篤な石綿関連疾患を発症する危険性があること等の情報を提供していたと認めるに足りる証拠はないから、かかる主張を踏まえても、警告表示義務を尽くしたとは認められない。 79 第4 被告らの石綿不使用義務違反について1 原告らは、被告らにおいて、石綿含有建材が石綿関連疾患を発症させる危険性を予見し得た以上、石綿含有建 表示義務を尽くしたとは認められない。 79 第4 被告らの石綿不使用義務違反について1 原告らは、被告らにおいて、石綿含有建材が石綿関連疾患を発症させる危険性を予見し得た以上、石綿含有建材の製造を終了し、石綿の代替商品を使用すべき義務を負っていたなどと主張する。 2⑴ 前記第1節第2によれば、石綿と肺がん、中皮腫との関係が具体的に明らかになった昭和48年頃においても、粉じん濃度の制限といった議論にとどまっており、石綿粉じん濃度が抑制され、防じんマスクの適正な着用等を義務付けると、石綿の管理使用が可能であったと考えることは直ちに不相当といえず、昭和50年又はそれ以前において、被告らに石綿不使用義務が生じるものと解することはできない。 ⑵ また、証拠(甲A324、甲G1〔乙アA4の1及び2、55〕)によれば、WHO等の国際機関においては、その後も、石綿が発がん性を有することを前提としつつ、特にクリソタイルに関してその管理使用の余地を許容しており、石綿の使用等の全面的な禁止が言及されたのは、ILO第95回総会において平成18年6月14日に採択された決議が初めてであったと認められ、これ以前に石綿の管理使用を全面的に禁止すべきであるとの国際的な共通認識が形成されていたと認めるに足りる証拠はない。 加えて、石綿不使用義務を課すには、代替建材が提供できる見通しがなければ実際上困難であるといえ、代替建材の存在を考慮する必要があることも否定できず、代替建材の提供見通しを含めて石綿不使用義務を検討すべきであるといえる。代替建材については、証拠(甲G1〔乙アA5の1及び2、6の1及び2、123〈41ないし46頁〉、128〕)によれば、石綿の代替繊維の安全性について、発がんの可能性が指摘されるなどしており、石綿代替物質の安全性について更なる知 1〔乙アA5の1及び2、6の1及び2、123〈41ないし46頁〉、128〕)によれば、石綿の代替繊維の安全性について、発がんの可能性が指摘されるなどしており、石綿代替物質の安全性について更なる知見の集積を要することが示唆されていたこと、グラスウール、ロックウール、スラグウールについては、平成14年のIARC報告によって、人に対する発がん性の有無については分類する80 ことができないと評価が改められたが、平成16年の中央労働災害防止協会の報告では、上記3種類の繊維についてなお発がん性の潜在的な能力を有する旨の知見が示されていたことが、それぞれ認められるところであり、石綿含有建材の全面的な代替化は必ずしも容易なものではなかったといえる。 以上のとおり、石綿等の管理使用が不可能であり、早急に石綿等の製造等を全面的に禁止すべきであるとの知見が確立したのは、早くとも平成18年と認められるのであって、同年9月1日に施行された安衛令で石綿等の製造が全面的に禁止されるまでの間、被告らにおいて、石綿等の管理使用が可能であると考えたとしても不合理とはいい難い。このことに加えて、石綿含有建材の全面的な代替化は必ずしも容易なものではなかったことを併せ鑑みれば、既に石綿のがん原性が明らかとなっていたことを十分に考慮しても、上記知見が確立した平成18年よりも前に、より制約が大きい、石綿含有建材の製造・販売の中止・停止義務を負っていたと解するのは困難である。 第3節 警告義務違反者の特定及び石綿含有建材の建設現場への到達について第1 総論(民法719条1項後段の類推適用について)1 複数の者がいずれも被害者の損害をそれのみで惹起し得る行為を行い、そのうちのいずれの者の行為によって損害が生じたのかが不明である場合には、被害者の保護を図るため公益 段の類推適用について)1 複数の者がいずれも被害者の損害をそれのみで惹起し得る行為を行い、そのうちのいずれの者の行為によって損害が生じたのかが不明である場合には、被害者の保護を図るため公益的観点から規定された民法719条1項後段の適用により、因果関係の立証責任が転換され、上記の者らが連帯して損害賠償責任を負うこととなるところ、被害者によって特定された複数の行為者のほかに被害者の損害をそれのみで惹起し得る行為をした者が存在しないことは、民法719条1項後段の適用の要件であると解される。 2 他方、石綿含有建材を製造・販売した企業の警告義務違反によって石綿含有建材から発散した石綿粉じんにばく露し、石綿関連疾患にり患した被災者との関係では、前記第1 節第1 のような建設現場の実情に照らし、特定の企業が製造・販売した石綿含有建材から発散した石綿粉じんが当該被災者の石綿関連疾81 患のり患に寄与したとしても、それがどの程度の影響を与えたかは明らかでないこと、被災者が本件訴訟の被告ら以外の企業が製造・販売した石綿含有建材から発散される石綿粉じんにばく露している可能性もあることを踏まえると、民法719条1項後段を直接適用するのは困難である。 3 しかし、石綿含有建材を製造・販売する被告らが前記判示にかかる警告義務を負っていながらこれを履行しておらず、これによって、本件被災者が複数の建材メーカーが製造・販売した石綿含有建材を取り扱うこと等により、累積的に石綿粉じんにばく露し、中皮腫や肺がん等の石綿関連疾患にり患した場合においては、当該被災者の取り扱った石綿含有建材のうち被告らの製造・販売したものが当該被災者の稼働する建築現場に相当回数にわたり到達して用いられているとの事情(建材現場到達事実)が認められる場合には、当該建材がかかる 者の取り扱った石綿含有建材のうち被告らの製造・販売したものが当該被災者の稼働する建築現場に相当回数にわたり到達して用いられているとの事情(建材現場到達事実)が認められる場合には、当該建材がかかる石綿関連疾患のり患に寄与しているといえることから、個々の建材が石綿関連疾患に影響した程度が不明であったとしても、民法719条1項後段が直接適用される場合との均衡を図り、同条後段の類推適用により、因果関係の立証責任が転換されると解するのが相当である(なお、上記の見地に立ち、民法719条1項後段が直接適用される場合との均衡を考慮すれば、建材現場到達事実は高度の蓋然性をもって立証されなければならないと解される。)。 ただし、被告らに民法719条1項後段の類推適用によって共同不法行為責任が認められたとしても、前記2のとおり、個々の被災者が本件訴訟の被告ら以外の企業が製造・販売した石綿含有建材から発散される石綿粉じんにばく露している可能性もあることを踏まえると、共同不法行為責任を認められた被告らの行為が損害の発生に与えた寄与度に応じた範囲での損害賠償責任を負うものと解すべきである。(以上につき、神奈川1陣最判参照)第2 原因建材の選定1 証拠(甲A1030、甲C30の1、2)及び弁論の全趣旨によれば、国交省データベースは、建築物等の解体工事等に際し、使用されている建材の石綿82 含有状況に関する情報を簡便に把握し得るようにすることを目的として作成されたものであると認められ、その掲載情報は、建築物等の解体作業者が石綿粉じんにばく露することを防止するなどのために非常に重要なものであるから、その確度を高めるための措置がとられてしかるべきである。そして、国交省データベースは、官公庁、業界団体、建材メーカー等が公表していたデータを収集し、また するなどのために非常に重要なものであるから、その確度を高めるための措置がとられてしかるべきである。そして、国交省データベースは、官公庁、業界団体、建材メーカー等が公表していたデータを収集し、また、それらから保有するデータの提供を受けるなどの協力を得て構築され、平成18年度に初めて公表されたものであり、公表以降、おおむね1年に1回、追加、修正、削除等の更新がされており、その掲載情報は、石綿含有建材のメーカーの従業員、国交省及び経産省の担当部局の職員、大学の研究者等により構成される石綿(アスベスト)含有建材データベース構築委員会で審議され、決定されている。 以上によれば、国交省データベースは、官公庁、業界団体、建材メーカー等が公表又は保有していたデータ等を収集して構築された後、相当期間にわたり専門家らにより逐次更新がされてきたものであって、少なくとも石綿含有建材の名称、製造者、製造期間等に係る掲載情報については相応の信用性があるということができる。 2 そうすると、建材現場到達事実の認定・判断に当たり、国交省データベースを基に分類された石綿含有建材の種別を基にして、建設作業者の職種ごとに取り扱う頻度・時間等を基に石綿粉じんにばく露するといえるものを整理し、販売量が僅かなもの等を除外して原因建材を選定し、同種の建材の中でのシェアを用いた確率計算を考慮しつつ、被災者の建設作業従事期間と建材の製造期間の重なり等を含む個々の被災者と企業の事情に関する具体的な主張立証の内容を踏まえて主要原因建材の特定を検討するなどの手法には一定の合理性があると解される。(以上につき、東京1陣最判参照)第3 主要原因建材1 シェアを用いた確率計算について83 ⑴ シェアを用いた確率計算による主要原因建材の選定は、建材のシェアが高 される。(以上につき、東京1陣最判参照)第3 主要原因建材1 シェアを用いた確率計算について83 ⑴ シェアを用いた確率計算による主要原因建材の選定は、建材のシェアが高ければ高いほど、また、被災者の作業現場が多ければ多いほど、建材現場到達事実が認められ得る蓋然性が高くなるという経験則に基づくものである。 原告らは、本件被災者が石綿粉じんにばく露した期間は5年以上と主張するところ、同主張が認められるのであれば、作業した現場の数も相当多数に上るということができる。そうすると、例えば、特定の建材が作業現場で用いられる確率が10%、被災者の作業現場数が20~30箇所である場合には、当該建材が作業現場に1回でも到達する可能性は約88%~96%になるのであるから、原告らが主張する10%を基にシェアによる建材現場到達事実の推認を論ずることは一応の合理性があると考えられる。 ⑵ この点について、被告らの中には、シェア(一定の集団内の割合)を確率と同視して数学的に確率計算するためには、あるシェアの下での現場での建材の出現頻度が均等であり、かつ、建設作業者が建設現場に赴く行為が独立の試行であるという前提を満たす必要がある、また、その母数にはノンアス製品を含めるべきであるなどと主張する企業がある。 ⑶ たしかに、上記のようなシェアを用いた確率計算の手法は数学的な確率計算とは性質が異なる。また、特定の建材について代替品のノンアス製品が存在するのであれば、作業現場に到達した建材の中にノンアス製品が含まれる可能性があるから、石綿含有建材のみを母数とするシェアを用いた石綿含有建材の到達の確率はノンアス製品を考慮した到達の確率よりも高い確率となることが考えられ、ノンアス製品が存在する場合、その存在について考慮する必要がある場合もあると考 母数とするシェアを用いた石綿含有建材の到達の確率はノンアス製品を考慮した到達の確率よりも高い確率となることが考えられ、ノンアス製品が存在する場合、その存在について考慮する必要がある場合もあると考えられる。 しかし、前記1の「シェアを用いた確率計算」は、本件被災者との関係で主要原因建材となる製品を製造・販売した企業(主要原因企業)に当たり得る者を特定するために行うための一つの事情として考慮するためのものであり、認定したシェアによって硬直的に建材現場到達事実が導かれるもので84 はない。そのような意味において、数学的な確率計算とは性質が異なることをもって直ちにシェアを用いた確率計算による認定・判断が不合理となるものではないし、ノンアス製品も含めたシェアが10%を下回った場合も、石綿関連疾患にり患した本件被災者との関係で直ちに建材現場到達事実が認められなくなるとの帰結に至るわけでもない。すなわち、シェアを用いた確率計算の性質を踏まえつつ、かかる計算の際にノンアス製品が含まれているなどの種々の事情は、本件被災者との間で主要原因建材を特定する際に個別に考慮すれば足りるというべきである。 ⑷ 以上によれば、シェアがおおむね10%を超える企業が製造・販売した石綿含有建材は、建設現場において相当程度使用されたことを一応推認できるものとして、個々の被災者に対する建材現場到達事実を検討するのが相当である。 2 建材ごとの認定以下、原告らの主張する原因建材ごとの被告らのシェアについて検討する(事実認定に用いた証拠はその都度掲記する。シェアは、小数点第2位を四捨五入した概数で認定する。)。 ただし、屋外建設作業に従事する者や改修・解体工事の作業に従事する者との関係では被告らが警告義務を負っていたとは認められないのは前記判示のとおりで 小数点第2位を四捨五入した概数で認定する。)。 ただし、屋外建設作業に従事する者や改修・解体工事の作業に従事する者との関係では被告らが警告義務を負っていたとは認められないのは前記判示のとおりであり、一般的に屋外建設作業で用いられる石綿含有建材に関しては、シェアの認定は要しない。 なお、シェアを用いる際は、市場に流通した製品が全て同年中に消費されるものではなく、一定の在庫の存在を観念し得る点に留意する必要がある。 ⑴ 石綿吹付け材①~③ア 吹付け材について石綿吹付け材は、石綿をセメント等の結合材と水に混合して、直接吹き付けて使用する建材である。吸音、断熱、結露防止、耐火等に優れており、85 昭和31年頃から学校、ビル、ホテル、劇場、公民館・公会堂、体育館、ダンスホール、ボウリング場、駐車場、船舶、電車等の車両、工場等について、吸音、断熱・耐火、結露防止を目的として広く吹き付けられた(天井断熱材・機械室吸音材等)。一方、昭和42年頃から建築物の高層ビル化と鉄骨構造化が進み、耐火被覆目的で鉄骨に吹き付けられた(鉄骨耐火被覆材)。鉄骨造以外の戸建て住宅に使われた事例は少ない。 吹付け石綿としては、クロシドライトが多く用いられ、アモサイトとクリソタイルは下吹きや吹付けクロシドライトの表面に化粧のために吹き付けた場合等があった。学校や保育園、ホールや体育館等公共の建物にはクロシドライトが吹き付けられる場合が特に多かった。 昭和50年改正特化則は、石綿含有率5%を超える石綿含有製剤を吹き付ける作業を原則として禁止した。そのため、吹付け石綿①の使用期間は、耐火被覆用のものが昭和38年頃から昭和50年まで、吸音・断熱用のものが昭和30年頃から昭和50年までとされ、昭和50年以降は、代替製品として、石綿含有吹付けロックウール②や湿式 綿①の使用期間は、耐火被覆用のものが昭和38年頃から昭和50年まで、吸音・断熱用のものが昭和30年頃から昭和50年までとされ、昭和50年以降は、代替製品として、石綿含有吹付けロックウール②や湿式石綿含有吹付け材③が、同様の用途で使われた。石綿吹付け材としては、このほかにひる石(バーミキュライト)やパーライト等に石綿を混ぜて吹き付けたものがあり、仕上げ材や吸音材等として使用された。 なお、昭和55年には、乾式の製品(石綿含有吹付けロックウール②)について、平成元年には湿式の製品(湿式石綿含有吹付け材③)について、それぞれ業界団体の自主規制により石綿がほぼ使用されなくなったため、これらの石綿含有製品が製造されたのは平成元年までである(半乾式の製品は石綿を含有していない。)。 (以上につき、甲A36の1〔14頁〕、36の2〔8頁〕、395〔6ないし11〕頁、甲C1001の28ないし30、甲G1〔乙アA35〈34、35頁〉〕、乙ニ13〔4ないし8頁〕)86 イ 吹付け石綿①について原告らは、吹付け石綿①に係る主要原因企業として被告ニチアス(日本アスベスト)及び被告ノザワを挙げ、そのシェアを示す証拠として、①甲A1139(「無機繊維系建材と石膏ボード」24頁)、②甲A1149(「鉱石質建材市場要覧」25頁)、及び③甲A1313(「防火建材の市場性と成長性」73、74頁)を提出する(上記証拠①などと略記する。以下同じ。)。 しかし、上記証拠①から読み取れるのは、吹付け石綿に係る被告らの月間生産能力にすぎず(時期は不明であるが、発刊された昭和46年頃の数値と思われる。)、直ちに記載どおりの生産量があったと認定することはできない。かえって、石綿成形板に関する記載ではあるものの、月間生産能力が2万㎡であるとされる被告ノザワの「コー た昭和46年頃の数値と思われる。)、直ちに記載どおりの生産量があったと認定することはできない。かえって、石綿成形板に関する記載ではあるものの、月間生産能力が2万㎡であるとされる被告ノザワの「コーベックスマット」について、「実績少、4月より5000㎡/月の生産を予定」と記載されていることや、月間生産能力が1万2500㎡であるとされる内外アスベストの「サーモボード」について、「実績なし」と記載されていることからすれば、同資料に記載された数値は、実際の生産量と相当程度乖離していることが合理的に疑われる。 また、上記証拠②についても、同様に月間生産能力の記載しかなく、その数値が信用し難いことは上述のとおりである(いずれも株式会社東洋化学経済研究所が作成したものである。)。この点を措くとしても、記載されているのは「7~8万㎡(月間)」、「15~20万㎡(月間)」等の幅のある数値であり、これを年間に換算すると相当の幅が生ずることは明らかであるから、これをもってシェアを認定することは困難である。 上記証拠③には、昭和48年の実績として、企業ごとに「吹き付け石綿700(トン/月)」(朝日石綿工業)等と記載されている。しかし、同社が製造していた吹付け石綿の製品(「ブロベスト」)は、昭和46年(1987 71年)に製造を終了しているから(甲C29の1)、上記証拠③の記載についても信用性が乏しいといわざるを得ない。 したがって、昭和50年以降の吹付け石綿を製造・販売する上記被告らのシェアを上記各証拠から認定することはできず、他にこれを認めるに足りる的確な証拠もない。 ウ 石綿含有吹付けロックウール②及び湿式石綿含有吹付け材③について(ア)原告らは、石綿含有吹付けロックウール②に係る主要原因企業として被告A&AM(朝日石綿工業、浅野スレー 的確な証拠もない。 ウ 石綿含有吹付けロックウール②及び湿式石綿含有吹付け材③について(ア)原告らは、石綿含有吹付けロックウール②に係る主要原因企業として被告A&AM(朝日石綿工業、浅野スレート)、被告日東紡績、被告ニチアス(日本アスベスト)、被告太平洋セメント(日本セメント)、被告バルカー(日本リンペット)、被告ノザワ、被告日鉄ケミカル&マテリアル(新日本製鉄化学)、湿式石綿含有吹付け材③に係る主要原因企業として被告A&AM、被告日東紡績、被告ニチアス、被告太平洋セメント(日本セメント)、被告バルカーをそれぞれ挙げ、そのシェアを示す証拠として、①甲A1150(「昭和52~53年版 建材用途・部位別需要動向と競合性」108頁)、②甲A1167(「昭和51年版 建材用途・部位別需要動向と競合性」72頁)、③甲A1176(「’80年版 建材用途・部位別需要動向と競合性」126頁)、④甲A1177(「1980年版 日本の建材産業」119頁)、⑤甲A1293(「建材の需給実態」300頁)、⑥甲A1313(「防火建材の市場性と成長性」73、74頁)、⑦甲C103(「百年史」491頁)等を提出する。 上記証拠①ないし③は、吹付けロックウール(乾式と湿式が含まれていることから、石綿含有吹付けロックウール②と湿式石綿含有吹付け材③の両者を含むものと認められる(乙ニ10参照)。以下、両者を併せて単に「吹付けロックウール」ということがある。)に係る主要メーカーの施工量(出荷量)の数値等を記載した資料であり、同一の発行者が、発行年に近い年次のデータを継続的に公刊していたものであると認めら88 れ、その数値は、当該資料を作成した民間団体による推定値であるものの、複数年にわたって相応に具体的な数値を提供しているものと認められる。そして、後記(エ に公刊していたものであると認めら88 れ、その数値は、当該資料を作成した民間団体による推定値であるものの、複数年にわたって相応に具体的な数値を提供しているものと認められる。そして、後記(エ)の点を除けば、これが積極的に誤っていることをうかがわせる証拠等はなく、その信用性に疑義を生じさせる特段の事情も認められないから、一応信用できる。 上記証拠④については、その信用性に疑義を生じさせる具体的な事情は見当たらないものの、耐火被覆材としての施工実績が記載されているにとどまり、その数値も後記(エ)のとおり疑義のあることが指摘されるから、同証拠によって吹付けロックウールのシェアを直接認定するのは相当ではない。 上記証拠⑤は、昭和46年の吹付け材の施工メーカーにおける月間施工量の推定値を50トン単位で記載したものにすぎず、被告らの有責期間における建材のシェアを認定するための証拠としては相当ではなく、上記証拠⑥の信用性が乏しいのは前記イで述べたとおりである。 上記証拠⑦には、「アサノスプレーコート(番号20)」(石綿含有吹付けロックウール②)の昭和56年の工事量が、シェア約20%を取得したとの記載がある一方で(491頁)、当該製品が昭和53年4月にノンアス製品に切り替えられたとも記載されているから(490頁)、同証拠を用いるのは相当ではない。 (イ)上記証拠①ないし③によれば、吹付けロックウールの施工実績ないし出荷量の割合は、以下のとおりと認められる(表中の年号は、特に断らない限り昭和である。以下同じ。)。 49 年51 年53 年 甲A1167甲A1150甲A1176日本アスベスト27.1%20.4%20.0%89 朝日石綿工業18.6%19.4%20.0%日本セメン 年 甲A1167甲A1150甲A1176日本アスベスト27.1%20.4%20.0%89 朝日石綿工業18.6%19.4%20.0%日本セメント18.6%16.5%16.4%新日本製鉄化学18.6%12.6%12.7%日東紡績11.4%9.7%10.0%日本バルカー不明不明不明(ウ)吹付け石綿①を製造・販売していた企業は、遅くとも昭和50年までに当該製品の製造を中止したことが認められるから(甲C29の1ないし8)、同年以降の流通量は相当程度減少していたことが推認されることや、証拠(甲A396〔4頁〕)によれば、建築物の解体等における石綿飛散防止検討委員会が平成17年11月に取りまとめた石綿飛散防止対策の強化に関する報告書において、昭和50年の吹付け石綿の施工量が記載されていないことからすれば、同年以降のシェアの認定に当たり、吹付け石綿①と吹付けロックウール(石綿含有吹付けロックウール②及び湿式石綿含有吹付け材③)を合算して検討する必要はない。なお、被告ニチアスは、湿式石綿含有吹付け材③は、高層ビル等の大規模設備や高い費用に見合う建設現場でのみ施工されたため、施工面積が限定的なものにとどまっていたと主張するものの、高層ビル等の大規模な現場であれば施工面積も大きくなる傾向があるといえるほか、証拠(甲A2417の1及び2)及び弁論の全趣旨によれば、湿式石綿含有吹付け材③で施工されたポーラ本社ビルは、「地下2階地上10階」建てであり、高さは50mに満たないことが認められるから、その施工現場が上記のシェアを覆す程度に限定されるとまでは証拠上認め難い。したがって、個々の被災者の作業内容との関係で上記の事情を考慮すべきであるとはいえ さは50mに満たないことが認められるから、その施工現場が上記のシェアを覆す程度に限定されるとまでは証拠上認め難い。したがって、個々の被災者の作業内容との関係で上記の事情を考慮すべきであるとはいえるものの、シェアの検討に当たっては上記の主張は直ちに採用できない。 (エ)また、被告日鉄ケミカル&マテリアル(新日本製鉄化学)のシェアに90 ついては、その製造・販売していた石綿含有吹付けロックウール②が耐火被覆用途のものであったにもかかわらず(甲C29の25ないし27)、上記証拠④(甲A1177(「1980年版 日本の建材産業」〔119頁〕)によれば、昭和52年における耐火被覆用途としてのシェアが10%を大きく下回ることが示されているなど、そのシェアの認定に当たって具体的な疑義が認められる。これに加え、被告日鉄ケミカル&マテリアルが、自社製品の販売数量について、内部資料に基づき、社団法人日本作業環境測定協会作成の環境省委託事業報告書(建築物の解体等に係る石綿飛散防止対策マニュアル、甲A394)の示す計算方法の下で算定した昭和50年以降のシェアが平均5.8%であることを示す報告書(乙チ14)を提出していることを考慮すれば、同被告が製造・販売した石綿吹付け材のシェアが10%を超えるものであったとは、本件の証拠関係に照らして認め難いといわざるを得ない。 (オ)以上によれば、少なくとも昭和50年頃から昭和53年頃までの間に建設現場で使用された石綿含有吹付けロックウール②及び湿式石綿含有吹付け材③については、被告ニチアス(日本アスベスト)、被告A&AM(朝日石綿工業)及び被告太平洋セメント(日本セメント)が製造・販売した製品が相当程度使用されたことを一応推認できる。 上記建材について、被告ニチアスは昭和49年に、被告A&AMは昭和50年 AM(朝日石綿工業)及び被告太平洋セメント(日本セメント)が製造・販売した製品が相当程度使用されたことを一応推認できる。 上記建材について、被告ニチアスは昭和49年に、被告A&AMは昭和50年に、それぞれ、石綿含有吹付けロックウール②の製造・販売を終了しているが(甲C29の9、10、18、19)、それぞれの企業が製造・販売を終了してから在庫品を回収する動きがあったと認めるに足りる証拠はないところ、製造終了後も一定の期間は現場到達があり得たと考えられる。ただし、証拠(甲A1177〔119頁〕)によれば、耐火被覆材の数値ではあるものの、昭和52年度の吹付けロックウール(湿式)の施工実績推定(合計で59万㎡)は、同年度の吹付けロック91 ウール(乾式)の施工実績推定(合計で682万㎡)の1割に満たない面積であったことが認められることを踏まえると、被告A&AM及び被告ニチアスの製造・販売した湿式石綿含有吹付け材③が上記のシェアを占める割合は相対的に少なかったと認められる。そうすると、被告A&AM及び被告ニチアスが石綿含有吹付けロックウール②の製造・販売を終了した後の吹付けロックウールのシェアには、吹付けロックウールのノンアス化が漸次進められていたことに伴うノンアス製品が含まれていたと認めるのが相当である。 また、被告太平洋セメントは、昭和53年に石綿含有吹付けロックウール②の製造・販売を終了しているが(甲C29の20)、被告太平洋セメントが製造・販売を終了してから在庫品を回収する動きがあったと認めるに足りる証拠はないところ、製造終了後も一定の期間は現場到達があり得たと考えられる。もっとも、証拠(乙ニ49、50、56、57、59、69の1及び2)及び弁論の全趣旨によれば、被告太平洋セメントは、昭和50年に、ノンアス製品である吹付 一定の期間は現場到達があり得たと考えられる。もっとも、証拠(乙ニ49、50、56、57、59、69の1及び2)及び弁論の全趣旨によれば、被告太平洋セメントは、昭和50年に、ノンアス製品である吹付けロックウール(スプレーコートS)の製造・販売を開始したことが認められるところ、上記事実に加え、昭和50年改正特化則により、石綿含有量が5%を超える吹付け材を使用した吹付け作業が禁止されたこと等を踏まえると、被告太平洋セメントにおいても、昭和50年から徐々にノンアス製品に置き換わっていたと考えられ、昭和50年以降の吹付けロックウールのシェアには、吹付けロックウールのノンアス化が漸次進められていたことに伴うノンアス製品が含まれていたと認めるのが相当である。なお、被告太平洋セメントは、昭和50年頃から出荷品の5割ないし8割がノンアス製品であった旨主張し、それを裏付ける証拠として、昭和51年2月の時点において、石綿含有吹付ロックウールの出荷割合を全体の2割と仮定していた社内文書(乙ニ69の1及び2)を提出するが、上記証拠に92 よれば、被告太平洋セメントにおいて昭和50年頃から吹付けロックウールのノンアス化が漸次進めていたことを裏付けるものとはいえるが、上記証拠に記載された石綿含有の建材の出荷割合は仮定にすぎず、どのような根拠に基づくものであるかも明らかではなく、上記証拠によっても、被告太平洋セメントにおいて、昭和50年頃から出荷品の5割ないし8割がノンアス製品であったとは認められない。 したがって、シェアの確率計算を用いて石綿含有建材の建材現場到達事実を推認する際は、これらの点に留意する必要がある。 (カ)なお、被告らの中には、石綿吹付け材(建材種類①~⑤)は、互いに代替する関係にあるから、一括してシェアを算定すべきであると主張する 到達事実を推認する際は、これらの点に留意する必要がある。 (カ)なお、被告らの中には、石綿吹付け材(建材種類①~⑤)は、互いに代替する関係にあるから、一括してシェアを算定すべきであると主張する企業もあるが、石綿含有吹付けバーミキュライト④及び石綿含有吹付けパーライト⑤は、仕上げ材として用いられたものと認められ(甲A36の2〔16、17頁〕)、これを覆すに足りる証拠はないから、この点に係る被告らの主張は採用できない。 ⑵ 石綿含有保温材(⑦、⑩)ア 石綿含有保温材は、ボイラーや各種の加熱炉、配管等を保温し、熱損失を防ぐために用いられる建材であり、石綿含有けいそう土保温材⑥、石綿含有けい酸カルシウム保温材⑦、石綿含有パーライト保温材⑨及び石綿保温材⑩等がある。このうち石綿含有けい酸カルシウム保温材⑦は、発電所、製鉄、製紙、造船、石油化学等のプラントに多く使用された。(甲A36の1〔4頁〕、247〔27、28頁〕、1171の1及び2〔92頁〕、甲G1〔乙アA35〈33、34頁〉〕)イ(ア)原告らは、石綿含有けい酸カルシウム保温材⑦に係る主要原因企業として、被告A&AM(朝日石綿工業)、被告ニチアス(日本アスベスト)、被告JIC(大阪パッキング)を挙げ、そのシェアを示す証拠として、甲A1171の1及び2(「断熱材市場の全貌」93頁)、甲A1493 07(「’80各種断熱材の市場実態と中期需要予測」100頁)を提出する。 上記各証拠によれば、けい酸カルシウム保温材の昭和50年から昭和53年までの出荷量の割合は、以下のとおりと認められる。 50 年51 年52 年53 年 甲A1171甲A1171甲A1171甲A1407日本アスベスト29.7%29.7%30.0%32.2% る。 50 年51 年52 年53 年 甲A1171甲A1171甲A1171甲A1407日本アスベスト29.7%29.7%30.0%32.2%朝日石綿工業20.0%20.0%20.0%19.9%大阪パッキング19.7%19.7%19.8%18.9%神島化学17.5%15.6%19.8%19.1%(イ)原告らは、石綿保温材⑩に係る主要原因企業として、被告ニチアス及び被告A&AMを挙げるが、そのシェアを認定するに足りる的確な証拠はない。 しかし、国交省データベースに登録された石綿保温材⑩は、被告ニチアス(日本アスベスト)及び被告A&AM(朝日石綿工業)が製造した3製品のみであるところ(甲C29の61ないし63)、各製造期間に照らし、一方の企業の製品が他方の製品より圧倒的にシェアが劣るとは考え難い。これらの点に加えて、上記各被告から同建材のシェアに係る的確な資料等も提出されていないことを踏まえれば、その製造期間中、上記各被告が製造・販売した製品が、いずれも相当程度のシェアを有していたと考えられる。 ウ 被告らの中には、建材種類⑥⑦⑨⑩は代替性が高く、競合関係にあるため、これら4種類全体における各社のシェアを検討する必要があると主張する企業があることから、以下検討する。 (ア)石綿含有けいそう土保温材⑥については、証拠(甲C29の43、甲G1〔乙アA35〈34頁〉〕)によれば、そもそも昭和30年には製造94 が終わっていたとする文献があるほか、国交省データベースにおいても被告ニチアスの製品が1つ存在するものの、昭和50年以前に製造が終了したとされており、そのシェアも不明であるから、同建材のシェアについては特段の考慮を要し 献があるほか、国交省データベースにおいても被告ニチアスの製品が1つ存在するものの、昭和50年以前に製造が終了したとされており、そのシェアも不明であるから、同建材のシェアについては特段の考慮を要しないというべきである。 石綿含有パーライト保温材⑨については、証拠(甲A1171の2〔5ないし7、88頁〕、甲C29の60)によれば、昭和50年以降もノンアス化された製品が製造・販売されており、その使用温度帯はけい酸カルシウム保温材と共通していたと認められるものの、「昭和58年度環境庁委託業務調査報告書」(甲A1023〔120頁〕)において、パーライト保温材は「もろさがありけい酸カルシウム板に追われる。」とされるなど、その代替性には疑義がある上、競合製品にシェアを奪われている事情がうかがわれることから、シェアの検討において特段の考慮を要しないというべきである。 (イ)これに対し、石綿保温材⑩については、証拠(甲A36の2〔18頁〕、甲G1〔乙アA35〈33、34頁〉〕)によれば、使用部位・目的が共通していたことがうかがわれる上、けい酸カルシウム保温材との代替性に疑いを抱かせるに足りる事情も認め難いことから、代替性が高いと認めるのが相当である。 (ウ)以上の点に照らせば、石綿含有けい酸カルシウム保温材⑦と石綿保温材⑩については、他の証拠から使用した建材を特定できる場合等を除き、これらをまとめたシェアを考慮することが相当である。 この点について、証拠上、石綿保温材⑩の年間出荷量等は不明であるものの、同建材に該当する製品が昭和53年から昭和54年までに製造を中止されていること(甲C29の61ないし63)を踏まえれば、特に昭和53年頃においては、出荷量も相当程度少なくなっていることが推認される。そうすると、両者を合わせた市場においては、被告 でに製造を中止されていること(甲C29の61ないし63)を踏まえれば、特に昭和53年頃においては、出荷量も相当程度少なくなっていることが推認される。そうすると、両者を合わせた市場においては、被告ニチア95 ス(日本アスベスト)及び被告A&AM(朝日石綿工業)がおおむね20%を超えるシェアを有していたと認めることが相当である。他方で、石綿含有けい酸カルシウム保温材⑦の製造を昭和54年までに終了していた被告JIC(大阪パッキング)及び被告神島化学については、そのシェアが10%を上回っていたとは認められない(なお、被告神島化学は同建材との関係で主要原因企業として主張されていない。)。 エ 以上によれば、少なくとも昭和50年頃から昭和53年頃までの間に建設現場で使用された石綿含有けい酸カルシウム保温材⑦及び石綿保温材⑩に関しては、被告A&AM及び被告ニチアスが製造・販売した製品が相当程度使用されたことを一応推認できる。 ただし、証拠(後掲のもの)によれば、被告ニチアスが製造した石綿含有けい酸カルシウム保温材⑦は主に工場で用いられたと認められ(乙マ1038〔92頁〕、1113〔17頁〕、1121〔120頁〕、1128の2及び3)、被告ニチアスが製造した石綿保温材⑩は、主に、船舶又は工場等で用いられたこと(乙マ1120〔7頁〕、1121〔117頁〕、1128の6)が認められるため、これらの点については、個々の被災者の作業内容との関係で上記事情を考慮することとする。 ⑶ 石綿含有けい酸カルシウム板第2種⑪ア 石綿含有けい酸カルシウム板第2種⑪は、石綿含有耐火被覆板⑫と共に、吹付け材の代わりに鉄骨造建物の耐火被覆材として用いられた建材であり、事務所、店舗、駐車場等の柱・梁、壁、天井の下地材等として使用された。(甲A36の2〔20頁〕 ⑪は、石綿含有耐火被覆板⑫と共に、吹付け材の代わりに鉄骨造建物の耐火被覆材として用いられた建材であり、事務所、店舗、駐車場等の柱・梁、壁、天井の下地材等として使用された。(甲A36の2〔20頁〕、247〔30、32頁〕、甲C29の64等、1001の31)イ 原告らは、石綿含有けい酸カルシウム板第2種⑪に係る主要原因企業として、被告A&AM(朝日石綿工業、浅野スレート)、被告JIC(大阪パッキング)、被告神島化学及び被告ニチアス(日本アスベスト)を挙げ、そ96 のシェアを示す証拠として、①甲A1171の1及び2(「断熱材市場の全貌」93頁)及び②甲A1177(「1980年版 日本の建材産業」60頁)を提出する(なお、甲A1139号証によってシェアを認定することができないのは前記⑴イのとおりである。)。 上記証拠①によれば、石綿含有けい酸カルシウム板第2種の昭和50年から昭和52年までの出荷量の割合は、以下のとおりと認められる。 50 年51 年52 年 甲A1171甲A1171甲A1171日本アスベスト14.5%15.1%15.1%朝日石綿工業17.0%16.9%16.9%大阪パッキング28.4%26.5%41.7%神島化学13.7%8.2%10.7%また、上記証拠②によれば、昭和52年度における石綿含有けい酸カルシウム板第2種⑪の施工面積の割合は、被告A&AM(朝日石綿工業)が21.0%、被告神島化学が12.0%、被告ニチアス(日本アスベスト)が24.0%、被告JIC(大阪パッキング)が40.0%であったことが、それぞれ認められる。 ウ これに対し、被告らの中には、耐火被覆材全体の施工実績に占める石綿含有けい酸カルシウム板第2種⑪の施 が24.0%、被告JIC(大阪パッキング)が40.0%であったことが、それぞれ認められる。 ウ これに対し、被告らの中には、耐火被覆材全体の施工実績に占める石綿含有けい酸カルシウム板第2種⑪の施工実績が8.2%にすぎないことを考慮すべきである旨を主張する企業がある。 そこで検討するに、証拠(甲A1177〔118頁〕)によれば、石綿含有けい酸カルシウム板第2種⑪は、同じ成形耐火被覆材である石綿含有耐火被覆板⑫と使用する部位や目的も共通であると認められるから、本件被災者が取り扱った成形耐火被覆材の中には、これらが混在していた可能性が相当程度認められる(吹付け材も耐火被覆材という点では共通するが、外観が明らかに異なるものであり、本件被災者の供述等を踏まえて建材種97 類を特定し得るから、そのシェア等を合算する必要はない。)。そして、上記証拠によれば、成形耐火被覆材の施工面積中、石綿含有けい酸カルシウム板第2種⑪の占める割合は、72.0%(昭和50年)、72.4%(昭和51年)、71.9%(昭和52年)と認められる。 そうすると、同じ施工面積で比較した場合、成形耐火被覆材全体における石綿含有けい酸カルシウム板第2種⑪のシェア(昭和52年)は、被告JIC(大阪パッキング)が28.8%、被告ニチアス(日本アスベスト)が17.3%、被告A&AM(朝日石綿工業)が15.1%、被告神島化学が8.6%となる(他の年についても、おおむね出荷量の7割と見てよいと考えられる。)。 エ 以上によれば、少なくとも昭和50年頃から昭和53年頃までの間に建設現場で使用された石綿含有けい酸カルシウム板第2種⑪に関しては、被告JIC、被告ニチアス及び被告A&AMが製造・販売した製品が相当程度使用されたことを一応推認でき、被告神島化学は昭和51年に石綿含有け で使用された石綿含有けい酸カルシウム板第2種⑪に関しては、被告JIC、被告ニチアス及び被告A&AMが製造・販売した製品が相当程度使用されたことを一応推認でき、被告神島化学は昭和51年に石綿含有けい酸カルシウム板第2種⑪の製造を中止したこと(甲C29の78及び79)を踏まえれば、そのシェアが10%を超えていたとは認められない。 ⑷ 石綿含有耐火被覆板⑫ア 石綿含有耐火被覆板⑫は、吹付け材の代わりとして、鉄骨柱、梁、エレベーター周辺の下地材等として使用された耐火被覆材である(甲A36の2〔21頁〕、247〔30、32頁〕、甲C29の97等)。 イ 原告らは、同建材に係る主要原因企業として、被告A&AM(朝日石綿工業)、被告バルカー(日本リンペット)及び被告ノザワを挙げ、そのシェアを示す証拠として、甲A1139(「無機繊維系建材と石膏ボード」)を提出するが、同証拠が信用できないものであることは、前記⑴イのとおりである。 したがって、石綿含有耐火被覆板⑫のシェアを認定することは困難であ98 る。 ⑸ 石綿含有スレートボード⑮~⑲ア 石綿スレートは石綿とセメントを主原料とした建材であり、その形状により、「波板」(後述する建材種類㊲~㊴)と「ボード」(建材種類⑮~⑲)に大別される。 石綿含有スレートボードの代表的製品であるフレキシブル板(フレキシブルボード)は、防火性能が高く、湿度による膨張・収縮が少ないという特性を有しており、外装材としては軒天井に、内装材としては壁、天井等に使用された(平板も同様の用途で用いられたが、フレキシブル板は、湿度による影響が少ないため、浴室の壁・天井、台所の壁等にも使用された。)。 軟質板は、湿度による伸縮性があることから外部には使用できず、また、浴室や洗面所等にも使用できなかった。軟質フレキシ 板は、湿度による影響が少ないため、浴室の壁・天井、台所の壁等にも使用された。)。 軟質板は、湿度による伸縮性があることから外部には使用できず、また、浴室や洗面所等にも使用できなかった。軟質フレキシブル板は、耐候性等を改善する化粧加工を施した製品については外装材として、その他の化粧加工を施した製品は内装材として使用された。パーライト板は、主に工場、倉庫、事務所等の壁材、天井下地材等に使用された。 (甲A36の2〔24、40、41頁〕、1133〔8頁〕、1176〔45頁〕、甲C1001の2ないし5、13、甲G1〔乙アA35〈29、30頁〉〕)イ(ア)原告らは、石綿含有スレートボード⑮~⑲に係る主要原因企業として、被告A&AM(浅野スレート、朝日石綿工業、アスク)、被告ノザワ及び被告MMK(三菱セメント建材。ただし建材種類⑱では挙げられていない。)を挙げ、その北海道内及び全国のシェアを示す証拠として、甲A1503(「平成2暦年 スレート統計年報」84、85頁等)及び甲A1517の53(「昭和53暦年 石綿スレート統計年報」134、135頁等)等を提出する。 これらの証拠に記載された「ボード類」には、けいカル板、「ドライ製品」(住宅屋根材)及び「その他」(石綿含有スレートボードと異なるも99 のであることは明らかである。)の実績が含まれており(甲A1517の53〔2、114頁参照〕)、これらについては販売実績から除外する必要がある(以下、上記証拠における各社の「フレキシブル板」、「軟質フレキシブル板」、「平板」、「軟質板」、「パーライト板」の出荷実績を合計した上でかかる数値が「けいカル板」、「ドライ製品」及び「その他」を含む合計に占める割合を算出し、同割合を各社の北海道と国内における出荷実績に乗じて各別の出荷実績のうち「フレキシ 」の出荷実績を合計した上でかかる数値が「けいカル板」、「ドライ製品」及び「その他」を含む合計に占める割合を算出し、同割合を各社の北海道と国内における出荷実績に乗じて各別の出荷実績のうち「フレキシブル板」、「軟質フレキシブル板」、「平板」、「軟質板」、「パーライト板」に相当する実績を求め、当該数値を基にシェアを算出することとする。なお、各社に支社がある場合は支社ごとに上記の計算をした上で小計を出す一方、浅野防建社等、浅野スレートの関連会社と思われる会社については、現在に至るまで被告A&AMがこれらの権利・義務、財産を承継したと認めるに足りる証拠がないから、これらを浅野スレートに含めずに計算する。)。 (イ)上記(ア)の各証拠で示される数値について上記(ア)記載の修正・計算を行うと、石綿含有スレートボードの北海道内における販売実績の割合は、概ね以下のとおりと認められる。 (道内)53 年平成2 年 甲A1517 の53114、115、134、135 頁甲A150374、75、82、83 頁浅野スレート53.4%60.3%朝日石綿工業15.4%8.9%ノザワ19.4%9.0%三菱セメント建材2.2%5.4%久保田鉄工7.8%0%(ウ)上記(ア)の各証拠について上記(ア)の修正・計算を行うと、石綿含有スレートボードの日本国内における販売実績の割合(上記(ア)に100 よる修正後のもの)は、以下のとおりと認められる。これらの年以外はけいカル板等が含まれている割合を認定することができず、適切に控除することができない。 (国内)53 年平成2 年 甲A1517 の53114、115、134、135 頁甲A150374、75、82、8 を認定することができず、適切に控除することができない。 (国内)53 年平成2 年 甲A1517 の53114、115、134、135 頁甲A150374、75、82、83 頁浅野スレート22.6%20.1%朝日石綿工業25.9%25.2%ノザワ9.9%21.4%三菱セメント建材15.6%14%久保田鉄工2.6%0%ウ 以上によれば、少なくとも昭和53年から平成2年頃までの北海道内の建設現場で使用された石綿含有スレートボード⑮ないし⑲に関しては、被告A&AMが製造・販売した製品が相当程度使用されたことを一応推認できる。また、同時期に国内の建設現場で使用された石綿含有スレートボードに関しては、被告A&AM、被告ノザワ及び被告MMKが製造・販売した製品が相当程度使用されたことを一応推認できる(ただし、被告ノザワのシェアは昭和53年頃の時点で10%に僅かに届いておらず、その後シェアを伸ばした経過があると考えられ、個々の被災者の現場到達事実を検討する際はかかる事情に留意する必要がある。)。 なお、石綿含有スレートボード(⑮ないし⑲)は、外装材等の屋外建材として使用される場合も相応にあるものの、建材全体の出荷量が多く、内装材としても数多く使用されたと認められることから(甲A1176号証〔44ないし45頁〕)、内装材を切断・加工する作業に従事した被災者との関係では、主要原因建材になり得るものと考えられる。 ⑹ 石綿含有押出成形セメント板㉒101 ア 石綿含有押出成形セメント板㉒は、石綿、セメント無機質材を主原料として押出成形したもので、断熱、結露防止、遮音性等に優れており、非耐力壁用材料として使用された。昭和51年頃は非住宅の壁材(耐火間仕切り壁 有押出成形セメント板㉒は、石綿、セメント無機質材を主原料として押出成形したもので、断熱、結露防止、遮音性等に優れており、非耐力壁用材料として使用された。昭和51年頃は非住宅の壁材(耐火間仕切り壁、外壁)に使用されることが多かったが、昭和54年頃には住宅の外壁材としても使用されるようになった。厚さ35mm以上の「厚物」と15~25mmの「薄物」(昭和53年発売開始)の二つの規格があり、用途が異なるとされている(被告レゾナック建材(昭和電工建材)の製品のうち「薄物」の「ラムダ」は、国交省データベースでは石綿含有窯業系サイディング㉟に分類される。)。 (甲A36の2〔38頁〕、1167〔55頁〕、1176〔52、53頁〕、1181〔150ないし158頁〕、甲C29の1760ないし1811、1001の9、甲G1〔乙アA35〈30頁〉〕)イ 原告らは、押出成形セメント板に係る主要原因企業として、被告ノザワ及び被告MMK(三菱セメント建材)を挙げ、そのシェアを示す証拠として、①甲A1150(「昭和52~53年版 建材用途・部位別需要動向と競合性」54頁)、②甲A1176(「’80年版 建材用途・部位別需要動向と競合性」52頁)、③甲A1177(「1980年版 日本の建材産業」46頁)、④甲A1181(「’95建材の市場動向」151頁)を提出する。 そこで検討するに、上記証拠③によれば、押出成形セメント板(厚物)の出荷量の割合は、以下のとおりと認められる(なお、「薄物」は昭和53年から生産が開始されたようであるが、ノザワの主力商品である「アスロック」及び三菱セメント建材の主力商品である「メース」は、「厚物」が一般的であった(甲A1176〔52頁〕参照))。 49 年50 年51 年52 年ノザワ99.6% 96.8% 」及び三菱セメント建材の主力商品である「メース」は、「厚物」が一般的であった(甲A1176〔52頁〕参照))。 49 年50 年51 年52 年ノザワ99.6% 96.8% 90.6% 90.9%102 三菱セメント建材0.4%3.2%9.4%9.1%また、上記証拠④及び甲A1182(「屋根材・外装材の市場展望」・208頁)によれば、押出成形セメント板(厚物)の出荷額の割合は、以下のとおりと認められる(ただし、この期間に被告レゾナック建材(昭和電工建材)が製造した「厚物」には石綿が使われていない(乙タ1〔2枚目〕)。)。 平成5 年平成7 年 甲A1181甲A1182ノザワ58.3%56.3%三菱マテリアル建材32.2%32.5%昭和電工建材6.1%6.3%なお、上記証拠①②に記載された数値は推定値であり、昭和電工建材が昭和53年の時点でノザワの生産数量を上回っていたかには疑義があること、その他の証拠との整合性(上記証拠③④及び甲A1182))を考慮し、押出成形セメント板との関係では上記証拠③④からシェアを認定することとする。 ウ 以上によれば、少なくとも昭和50年頃から平成7年頃までの間に建設現場で使用された押出成形セメント板(厚物)については、被告ノザワが製造・販売した製品が相当程度使用されたことを一応推認できる。 しかし、石綿含有押出成形セメント板㉒は、前記アのとおり、昭和51年頃は非住宅の壁材(耐火間仕切り壁、外壁)に使用されることが多く、昭和54年頃には住宅の外壁材としても使用されるようになり、外壁材等の屋外建材として使用される場合が多く、その出荷量も石綿含有スレートボード⑮~⑲に比して少ないと考えられる(甲A11 ることが多く、昭和54年頃には住宅の外壁材としても使用されるようになり、外壁材等の屋外建材として使用される場合が多く、その出荷量も石綿含有スレートボード⑮~⑲に比して少ないと考えられる(甲A1150、1176。甲A1150号証〔55頁〕によれば昭和51年時点で概ね5割が外壁として計上され、甲A1176号証〔53頁〕によれば昭和53年時点では非住宅においても外壁の占める割合がさらに増加している。)。 103 そして、証拠(甲A1241〔57頁〕、乙ラ2~4、9〔180頁〕、10〔63頁〕、11〔51頁〕、12〔65頁〕、乙ワ11、12)によれば、昭和63年に公表された石綿含有建築材料調査報告書(日本石綿協会)において、石綿含有押出成形セメント板㉒は、切断・加工を屋内でする場合があるとされる一方、約90%は工場でプレカットされた上で現場に直送されると説明されていること、被告ノザワの「アスロック」の加工については、特殊な工具を使用する必要があり、また、現場で作業する際にも、専門の業者が行っていたので、通常の大工がこれを直接に扱うことはなかったこと、「アスロック」は遅くとも平成3年以降は間仕切り壁としての用途が10%前後で推移していること、被告MMKの「メース」は主に鉄骨造建物で使用され、専属施工店によって施工されていたことが、それぞれ認められる。 以上によれば、石綿含有押出成形セメント板㉒については、個々の被災者との関係で、非住宅の現場において間仕切り壁を切断・加工したなどの具体的な事情が認められない限りは建材現場到達事実を認めるのは困難であり、また、昭和53年以降は間仕切り壁として利用される割合が減少し、競合建材が間仕切り壁に使用される割合が増加したことに留意する必要がある。そして、上記イによれば、平成5年頃からは被告MMK 難であり、また、昭和53年以降は間仕切り壁として利用される割合が減少し、競合建材が間仕切り壁に使用される割合が増加したことに留意する必要がある。そして、上記イによれば、平成5年頃からは被告MMKの製造・販売した製品も相当程度使用されたことが一応推認できるものの、この頃は外壁材として使用されることがほとんどであったと認められるから、被告MMKを主要原因企業と認めるのは困難である(なお、被告ノザワは平成3年時点における間仕切り壁の市場のうち「アスロック」の占める割合が1.1%である旨を主張するものの、昭和50年代の頃の事情は不明であるから、この点をもって直ちに、当該時期における被告ノザワの建材現場到達事実が否定されると認めることはできない。)。 ⑺ 石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓104 ア 石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓は、石綿とけい酸カルシウムを原料とした石綿含有成形板の一種であり、軽量で耐火性・断熱性に優れているという特性を有することから、一般建築物の内装材(壁、天井、耐火間仕切り)や外装材(軒天井材)として使用された。住宅では、台所等の天板の裏打材や浴室のタイル下地(タイル補強板)等を中心に内装材として使用された。(甲A36の2〔26、31、39頁〕、1176〔48頁〕、甲C1001の10)イ(ア) 原告らは、同建材に係る主要原因企業として、被告A&AM(浅野スレート、朝日石綿工業、アスク)、被告神島化学、被告ニチアス(日本アスベスト)及び被告MMK(三菱セメント建材)を挙げ、そのシェアを示す証拠として、①甲A1150(「昭和52~53年版 建材用途・部位別需要動向と競合性」50頁)、②甲A1167(「昭和51年版 建材用途・部位別需要動向と競合性」50頁)、③甲A1176(「’80年版 建材用途・部位別 50(「昭和52~53年版 建材用途・部位別需要動向と競合性」50頁)、②甲A1167(「昭和51年版 建材用途・部位別需要動向と競合性」50頁)、③甲A1176(「’80年版 建材用途・部位別需要動向と競合性」47頁)、④甲A1177(「1980年版 日本の建材産業」48頁)、⑤甲A1520(「1981年版/市場調査資料 住宅システム市場調査総覧」35頁)を提出する(なお、原告らは、他に甲A1139号証及び甲A1149号証を提出するが、前記⑴イのとおり、これらの証拠によってシェアを認定することはできない。)。 上記証拠①ないし③によれば、けい酸カルシウム板の出荷量の割合は、以下のとおりと認められる。ただし、これらの証拠では「石綿セメント珪酸カルシウム板」という項目でまとめられており、けい酸カルシウム板第2種を含めた数値が記載されていることがうかがわれる(例えば、主要メーカーの紹介欄に耐火被覆板を作る企業が記載されていたり(〔甲A1150〔50頁〕、甲A1176〔47頁〕〕、耐火被覆板としての用途が紹介されていたりする(甲A1176〔49頁〕)ことに照ら105 せば、基となったスレート協会の数値が、けい酸カルシウム板第2種を含めていたと考えるのが合理的である。)から、この点に留意する必要がある(日本アスベスト、朝日石綿工業及び神島化学等は両種製品を製造していた。)。 49 年51 年53 年 甲A1167甲A1150甲A1176日本アスベスト36.6%35.3%32.5%朝日石綿工業22.0%18.8%19.2%三菱セメント建材12.2%9.4%11.8%大建工業12.2%9.4%不明浅野スレート8.5%5.9%5.9% 22.0%18.8%19.2%三菱セメント建材12.2%9.4%11.8%大建工業12.2%9.4%不明浅野スレート8.5%5.9%5.9%また、上記証拠⑤によれば、けい酸カルシウム板の販売数量の割合は、以下のとおりと認められる(内装材分野として記載されているが、耐火被覆板としての用途が紹介されていることから(同号証34頁)、同じくけい酸カルシウム板第2種を含む数値であることがうかがわれる。)。 54 年55 年日本アスベスト30.3%30.6%朝日石綿工業18.3%17.6%三菱セメント建材9.6%9.8%久保田鉄工6.1%6.7%浅野スレート5.7%5.7%その他30.0%29.6%なお、上記証拠①~③と証拠⑤の数値が整合しているのに対し、上記証拠④は同一年における数値に上記証拠③の数値と齟齬があることを踏まえ、石綿含有けい酸カルシウム板第2種⑪との関係では、上記証拠106 ①~③及び⑤に基づき、シェアを認定することとする。 (イ)以上の点に加えて、前記⑶のとおり、石綿含有けい酸カルシウム板第2種⑪についても、日本アスベスト及び朝日石綿工業のシェアが相当程度高かったことを踏まえれば、少なくとも昭和51年頃から昭和55年頃までの間に建設現場で使用された石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓については、被告A&AM(朝日石綿工業)及び被告ニチアス(日本アスベスト)が製造・販売した製品が相当程度使用されたことを一応推認できる。 なお、被告ニチアスは、自社の製品は中高層ビル等の非住宅の現場で使用され、戸建住宅ではほとんど使用されなかった旨を主張するところ、証拠(乙マ1032〔21頁〕、1033〔62頁 一応推認できる。 なお、被告ニチアスは、自社の製品は中高層ビル等の非住宅の現場で使用され、戸建住宅ではほとんど使用されなかった旨を主張するところ、証拠(乙マ1032〔21頁〕、1033〔62頁〕)によれば、確かに昭和50年頃の出荷先は非住宅が90%であり、中でも中高層建築の需要が圧倒的に多く、その傾向はその後も続いていたことが認められる。 したがって、主に戸建住宅の建設に従事した本件被災者との関係では、この点に留意する必要がある。 ウ 被告らの中には、石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓は、フレキシブル板等の石綿含有スレートボードと用途が共通する建材であるから、シェアの検討においてこれらの建材の出荷量も分母に含める必要があると主張する企業があるところ、前述した石綿含有スレートボードの使用部位・目的によれば、けい酸カルシウム板第1種との共通性が認められるから、建材現場到達事実の認定に当たっては、シェアの合算や使用割合の考慮が必要となり得る。 そして、証拠(甲A396〔5頁〕)によれば、石綿含有スレートボードとけい酸カルシウム板第1種を合わせた出荷量のうちけい酸カルシウム板第1種の出荷量が占める割合は、16.0%(昭和50年)、20.9%(昭和51年)、23.6%(昭和52年)、25.2%(昭和53年)と107 徐々に増加し、平成3年には49.5%にまで達したが、その後は概ね10%台で推移したことが認められる。 したがって、建材現場到達事実を認定する際は、これらの点に留意する必要がある(被告らの中には上記各建材のいずれも製造・販売していた者がおり、石綿含有スレートボードのシェアにも留意する必要がある。)。 ⑻ 石綿含有ロックウール吸音天井板㉔ア 石綿含有ロックウール吸音天井板㉔は、主に住宅、事務所、学校、講堂、病院等の天 いた者がおり、石綿含有スレートボードのシェアにも留意する必要がある。)。 ⑻ 石綿含有ロックウール吸音天井板㉔ア 石綿含有ロックウール吸音天井板㉔は、主に住宅、事務所、学校、講堂、病院等の天井に不燃・吸音天井板として多く使用された内装材(僅かに軒天等にも使用された。)である(甲A36の2〔27頁〕、甲C1001の11)。 イ(ア)原告らは、石綿含有ロックウール吸音天井板㉔に係る主要原因企業として、被告永大産業、被告大建工業及び被告日東紡績を挙げ、そのシェアを示す証拠として、①甲A1150(「昭和52~53年版 建材用途・部位別需要動向と競合性」72頁)、②甲A1174(「内装材の総合分析〔市場分析篇〕」74頁)、③甲A1176(「’80年版 建材用途・部位別需要動向と競合性」80頁)、④甲A1177(「1980年版 日本の建材産業」122頁)、⑤甲A1313(「防火建材の市場性と成長性」11頁)等を提出する(なお、甲A1137「日本マーケットシェア時点 1972年版」383頁は、昭和46年以前の、甲A1293「建材の需給実態」298頁は、昭和47年以前の時点における吸音板メーカーの月産量推定の数値を記載するものであるから、昭和50年以降の警告義務が問題となる本件のシェアの検討に当たって採用するのは相当ではない。)。 上記証拠①及び②によれば、ロックウール吸音板に係る出荷量(出荷面積)の割合は、以下のとおりと認められる(これらの数値の中には壁材としての用途が含まれた時期もあるが、その時期も同建材は9割以上108 が天井材として用いられていたので(甲A1174〔75頁〕)、シェアに与える影響は限定的と考えられる。)。なお、上記証拠③が相応の出荷量があったと考えられる東洋テックス(甲A1174〔74頁〕)の数値を計上して 用いられていたので(甲A1174〔75頁〕)、シェアに与える影響は限定的と考えられる。)。なお、上記証拠③が相応の出荷量があったと考えられる東洋テックス(甲A1174〔74頁〕)の数値を計上していないこと、上記証拠④は昭和50年の数値(5万4704トン)を母数にして昭和52年のシェアを算出しているように見られることを踏まえ、ロックウール吸音板との関係では上記証拠①及び②に基づき、シェアを認定することとする。 51 年52 年53 年54 年 甲A1150甲A1174甲A1174甲A1174大建工業40.0%26.9%25.9%25.0%日東紡績40.0%38.6%40.7%41.0%松下電工20.0%20.0%19.7%20.5%また、上記証拠⑤によれば、昭和49年におけるロックウール吸音板の推定シェアは、大建工業が31%、日東紡績が30%、松下電工が18%、永大産業が15%であるとされる。もっとも、永大産業は昭和51年にロックウール吸音板の業界から撤退したから(甲A1150〔72頁〕参照)、昭和50年時点における同社の出荷量の割合は、昭和49年に比して相当程度低くなっていると考えられ、そのシェアが10%を上回っていることを認めるに足りる証拠はない。 (イ)以上によれば、少なくとも昭和51年頃から昭和54年頃までの間に建設現場で使用された石綿含有ロックウール吸音天井板㉔に関しては、被告大建及び被告日東紡績が製造・販売した製品が相当程度使用されたことを一応推認できる。 ウ 他方で、証拠(甲A1150〔43、72頁〕、甲A1174〔75頁〕、甲A1176〔200頁〕)によれば、ロックウール吸音板は、天井材の分野において、不燃の点では化粧石膏ボ を一応推認できる。 ウ 他方で、証拠(甲A1150〔43、72頁〕、甲A1174〔75頁〕、甲A1176〔200頁〕)によれば、ロックウール吸音板は、天井材の分野において、不燃の点では化粧石膏ボードと、断熱面や吸音面ではインシ109 ュレーションボード(木質系天井板)とそれぞれ競合しており、吸音板という用途に絞っても、この分野の競合品は非常に多かったと認められる。 そして、昭和51年の住宅用天井材の出荷面積の割合として、ロックウール吸音板が占める割合は5.3%にすぎず、競合品とされる化粧石膏ボードの割合(15.0%)やインシュレーションボードの割合(9.2%)を下回っていた(甲A1150〔165頁〕)。同年の非住宅用天井材の出荷面積の割合についても、ロックウール吸音板が占める割合は22.0%であり、競合品とされる化粧石こうボードの割合(17.7%〔石こう吸音板の割合を含めると22.9%〕)も相当高かった(同236頁)。住宅用天井材については、その後も特に変化があるとは認められず(甲A1176〔197頁。住宅用天井材の数値〕参照)、非住宅用天井材についてはその後の傾向は不明である。 また、ロックウール吸音板に関しては、各企業が得意とする分野を異にしていたと認められ、例えば、被告日東紡績の製品は非住宅用の需要が圧倒的であったのに対し、被告大建工業の製品は住宅用の需要の方が大きかった(甲A1137〔383頁〕、甲A1176〔80頁〕)。 これらの事情を踏まえれば、天井材市場における被告らのシェアは、上記イ(ア)で認定した出荷量の割合よりも相当程度低くなることが明らかであり、本件の証拠関係に照らすと、住宅用・非住宅用のいずれについても、天井材市場における被告らのシェアが10%を超えていた期間が相当期間にわたって継続していたとまで も相当程度低くなることが明らかであり、本件の証拠関係に照らすと、住宅用・非住宅用のいずれについても、天井材市場における被告らのシェアが10%を超えていた期間が相当期間にわたって継続していたとまでは認められないから、少なくとも石綿含有ロックウール吸音天井板㉔が天井材として使用されている場合には、上記イの推認は覆ることとなり、シェアを用いた確率計算による事実認定はできない(そして、後記第4のとおり、本件被災者との関係で建材種類㉔を主要原因建材と認めることはできない。)。 ⑼ 石綿含有住宅屋根用化粧スレート㉝110 証拠(甲A36の2(43頁)、1150〔91頁〕、1176〔95頁〕、甲C1001の19)によれば、石綿含有住宅屋根用化粧スレート㉝は、セメントに補強材として石綿を混入し、平板状等に成形した屋根材であり、ほとんどが屋根材(一部は外壁材)として使用されたことが認められる。 したがって、当該建材は、一般的に屋外建材として用いられるものと認められ、被告らの警告義務の対象にならないから、同建材について主要原因建材の認定は要しない。 ⑽ 石綿含有窯業系サイディング㉟証拠(甲A36の2(36、37頁)、甲C1001の21及び22)によれば、石綿含有窯業系サイディングは、防火・耐火性能、耐震性、耐久性が高い等の特性を有しており、一般的に外壁材として使用されたことが認められる。 したがって、当該建材は、一般的に屋外建材として用いられるものと認められ、被告らの警告義務の対象にならないから、同建材について主要原因建材の認定は要しない。 ⑾ 石綿含有スレート波板㊲~㊴証拠(甲A36の2〔42頁〕、1167〔49頁〕、1176〔45頁〕、甲C1001の23ないし25、甲G1〔乙アA35〈29頁〉〕)によれば、スレー ない。 ⑾ 石綿含有スレート波板㊲~㊴証拠(甲A36の2〔42頁〕、1167〔49頁〕、1176〔45頁〕、甲C1001の23ないし25、甲G1〔乙アA35〈29頁〉〕)によれば、スレート波板は軽量強靭で塗装の必要もなく腐食もしないという特性があり、下地材も不要であることなどから、多くは工場、倉庫等の屋根(大波)、外壁(小波)に使用され(外装材)、木造戸建て住宅の屋根や壁に使われた事例は少ないと認められる。 したがって、これらの建材は一般的に屋外建材として用いられるものと認められ、被告らの警告義務の対象にならないから、同建材について主要原因建材の認定は要しない。 ⑿ 石綿セメント円筒㊶111 ア 石綿セメント円筒㊶は、石綿セメントを原料とするパイプ状製品の総称であり、煙突、排気管、上下水道管・雑排水管等に用いられた(甲A36の2〔45頁〕、甲G1〔乙アA35〈30、31頁〉〕)。 原告らは、石綿セメント円筒㊶に係る主要原因企業として、被告A&AM(浅野スレート)を挙げ、そのシェアを示す証拠として、被告A&AMが昭和57年から昭和63年までの間に製造・販売した耐火被覆塩ビ管(甲C29号証の2087及び2088によれば、「浅野換気用耐火パイプ」及び「浅野耐火パイプ」がこれに該当すると認められ、前者は「浅野耐火パイプ」の通気管であると考えられる。)のシェアに関する①甲A2203(「昭和61年度版 特殊管材市場の総点検と展望(上巻)」139頁以下)及び②甲A2204(「配管材市場のマーケット・マニュアル」86頁以下)を提出するが、上記以外の製品に係るシェアを示す資料はない。 なお、耐火被覆塩ビ管は、硬質塩ビ管の外面に繊維強化モルタル等を被覆した製品であり、主にマンション、ホテル、学校等の汚水管及び雑排水管として用いられ が、上記以外の製品に係るシェアを示す資料はない。 なお、耐火被覆塩ビ管は、硬質塩ビ管の外面に繊維強化モルタル等を被覆した製品であり、主にマンション、ホテル、学校等の汚水管及び雑排水管として用いられるほか、通気管としても用いられた。耐火被覆塩ビ管と競合する建材は排水用塩ビライニング鋼管であるが、継手の価格が他の建材よりも高価という欠点があるとされる(甲A2203〔139ないし142、147頁〕、2204〔85ないし87頁〕、甲C29の2088)。 イ 上記証拠①及び②によれば、耐火被覆塩ビ管の主要メーカーの販売実績に関し、昭和57年から昭和61年までにおける被告A&AMのシェアは、7.5%(昭和57年)、9.8%(昭和58年)、13.3%(昭和59年)、16.9%(昭和60年)、21.0%(昭和61年)と認められる。 このことに加えて、その当時、耐火被覆塩ビ管市場の規模が年々拡大していたことを踏まえれば、少なくとも昭和59年から昭和63年までの期間に建設現場で使用された耐火被覆塩ビ管に関しては、被告A&AMの製品が相当程度使用されていたことを一応推認できる。なお、競合品である112 とされる排水用塩ビライニング鋼管に関しては、上述のような欠点があるとされていることや、その出荷量等も明らかでないことから、代替性の高い建材であるとはいい難い。 ⒀ 混和材㊸モルタル混和材は、モルタル(セメントと砂(細骨材)と水を練り混ぜた建築材料)に混ぜることで必要な性能(可塑性、保水性、亀裂防止等)を付与させる目的で使用される。このうち材料の粘度を増してコテ滑り(伸び)を良くし、作業性を向上させる目的で混和される作業改良材に関しては、被告ノザワが昭和31年から平成15年まで販売した「テーリング」が、その代名詞となっていた。平成4年4月に日本セ てコテ滑り(伸び)を良くし、作業性を向上させる目的で混和される作業改良材に関しては、被告ノザワが昭和31年から平成15年まで販売した「テーリング」が、その代名詞となっていた。平成4年4月に日本セメント株式会社(被告太平洋セメント)がモルタル混和材(作業改良材)の販売を開始した時には、「テーリング」が90%以上の圧倒的なシェアを有していたと認められる。(甲A1248の1〔2枚目〕、甲C2001の1〔1、3頁〕、2001の2〔1頁〕)他にこれと競合する混和材を製造・販売していた企業があったことを裏付ける具体的な証拠はないから、モルタル混和材の市場においては、昭和50年以降、同製品が圧倒的なシェアを占めていたと認めることが相当である。 ⒁ 小括以上によれば、各建材種類においてその製品が相当程度使用されていたと一応認められる企業は以下のとおりとなり、記載のない建材種類については被告らのシェアが認定できない(なお、本件被災者の建材現場到達事実の検討に当たっては、個々の被災者の事情を踏まえることになるほか、前記判示に係る個々の注意事項に留意する必要がある。)。 建材種類②、③ 乙キ、ニ、マ建材種類⑦、⑩ 乙キ、マ建材種類⑪ 乙キ、マ、メ建材種類⑮~⑲ 乙キ、ラ、ワ113 建材種類㉒ 乙ラ建材種類㉓ 乙キ、マ建材種類㉔ 乙ト、ム建材種類㊶ 乙キ建材種類㊸ 乙ラ第4 被災者ごとの主要原因建材の特定1 原告1被災者A⑴ 石綿粉じんにばく露した作業期間被災者1(昭和1 ㊶ 乙キ建材種類㊸ 乙ラ第4 被災者ごとの主要原因建材の特定1 原告1被災者A⑴ 石綿粉じんにばく露した作業期間被災者1(昭和19年1月24日生)は、被告らが責任を負う可能性のある(昭和50年1月1日から最も遅くとも平成18年8月31日までの)責任期間のうち、同被災者の別紙8記載の職歴②(ただし、始期は昭和50年1月1日として昭和59年5月20日まで〔約9年4月〕。なお、別紙8の本件被災者ごとの職歴を同別紙記載の丸番号に即して「職歴①」などということがある。)及び職歴③(ただし、昭和59年6月30日から終期は平成18年8月31日まで〔約22年2月〕)において、約31年6月の間、配管工として石綿粉じんばく露作業に従事した(甲D1の1。また、責任期間の前に約14年7月のばく露を認める。)。 石綿粉じんばく露作業期間の算定については、始期の日付が不明の場合には当該月の末日を始期とし、終期の日付が不明の場合には当該月の1日を終期として年数、月数及び日数を算定し、30日に満たない日数は切り捨てた概算で認定する(ただし、石綿粉じんばく露作業期間が勤務先又は時期を異にして複数存在するときには、期間ごとに上記のとおり年数及び月数を算定した。なお、本件被災者のうち、冬季に建設作業に従事していないと認められる期間がある者については、その期間のうち冬季休業期間と認められる期間の割合を概算で控除する。以下同じ。)。 また、各被災者の現場作業数は、各被災者の作業内容に照らし、年間の現114 場数が10件に満たないなど特段の事情が認められない限り、シェアを用いた確率計算に基づく事実認定に支障のない程度に及んでいたものとして検討する。 ⑵ 石綿粉じんにばく露した作業の内容 場数が10件に満たないなど特段の事情が認められない限り、シェアを用いた確率計算に基づく事実認定に支障のない程度に及んでいたものとして検討する。 ⑵ 石綿粉じんにばく露した作業の内容被災者1は、北海道の建設作業現場において、配管工として、冷蔵冷凍倉庫のある水産加工場等の建物における冷蔵冷凍機器を設置し、配管を通す作業に従事した。その際、配管を通すためにスレートボードを切断・加工したほか、現場で保温材が巻かれているパイプを切断することもあり、石綿吹付後の現場で作業を行うことがあった(なお、被災者1は、労災申請をした際の事情聴取の際、スレートボードの切断・加工や保温材が巻かれているパイプの切断等の作業を行っていた旨はっきりと述べていたわけではないが、労災申請をした際の事情聴取の際、天井、壁に石綿が含まれているスレート板の使用されている中での配管設置作業があった旨言及していたり(甲D1の1・24頁)、「石綿ばく露歴質問票」における「あなた(被災労働者)のそばで、次のような仕事が行われていませんでしたか」という質問に対して、保温材で包まれたパイプの取り付け・取り外しの項目に丸印を付けていた(甲D1の1・23頁)ことからすると、被災者1自身も、配管工として、スレートボードの切断・加工や保温材が巻き付いた配管の切断等の作業にも従事していたものと認められる。)。 被災者1が作業した現場は、主に鉄筋コンクリート造の建物の新築工事であったが、改修工事に従事することもあった。 被災者1は、作業の際、マスクを着けることはなかった。 (以上につき、甲D1の1 、1の4、1の4の2、原告1A1本人)⑶ 主要原因建材及び主要原因企業の認定ア 上記⑴及び⑵で認定した石綿粉じんばく露期間や作業の内容に照らせば、被災者1の主要原因建 つき、甲D1の1 、1の4、1の4の2、原告1A1本人)⑶ 主要原因建材及び主要原因企業の認定ア 上記⑴及び⑵で認定した石綿粉じんばく露期間や作業の内容に照らせば、被災者1の主要原因建材となり得る建材種類は、吹付けロックウール115 (建材種類②、③)、石綿含有保温材(建材種類⑦、⑩)、石綿含有スレートボード(建材種類⑮~⑲)及びこれと用途が共通する石綿含有けい酸カルシウム板第1種(建材種類㉓)、石綿セメント円筒(建材種類㊶)と認められる(なお、前記第3の2⑴のとおり、吹付け石綿①を製造・販売していた企業は、遅くとも昭和50年までに当該製品の製造を漸次中止し、建築物の解体等における石綿飛散防止検討委員会が平成17年11月に取りまとめた石綿飛散防止対策の強化に関する報告書においても昭和50年の吹付け石綿の施工量が記載されていないこと、シェアを用いた確率計算によって建材現場到達事実を認められないことから、本件被災者において具体的な製品名が挙げられているなどの事情がない限り、主要原因建材と認めない。以下、吹付け材が問題になる場合は、上記のような特段の事情がない限り、吹付けロックウール②、③について検討する。また、石綿含有押出成形セメント板㉒については、前記第3の2⑹のとおり、外壁材として使用される割合が高く、プレカットされた状態で現場に納入されていたものであり、被災者1において現に間仕切り壁を切断・加工したとの事実を認めるに足りる証拠はないから、建材現場到達事実が認められない。)。 イ 石綿吹付け材(建材種類②、③)について(ア)上記⑵で認めた被災者1の作業内容に照らせば、同被災者が粉じんにばく露した吹付け材は、鉄骨造建物に施工された耐火被覆用途の吹付けロックウール②、③と認めるのが相当である。そして、耐火 ついて(ア)上記⑵で認めた被災者1の作業内容に照らせば、同被災者が粉じんにばく露した吹付け材は、鉄骨造建物に施工された耐火被覆用途の吹付けロックウール②、③と認めるのが相当である。そして、耐火被覆用途の吹付けロックウール②、③に関しては、前記第3の2⑴のとおり、昭和50年頃から昭和53年頃までの間は被告ニチアス、被告A&AM、被告太平洋セメントのシェアが高かったことが認められる。 (イ)ただし、被告ニチアス及び被告A&AMについては、前記第3の2⑴ウ(オ)のとおり、被告ニチアスが昭和49年、被告A&AMが昭和5116 0年に、石綿吹付ロックウール②の製造を中止しており、上記の製造・販売の終了後、市場における上記被告らの製品の多くが直ちにノンアス製品に置き換わったとまでは言い難く、少なくとも製造を中止した翌年までは相応の量が建設作業現場までに到達していたものと推認されるが、その後においては徐々にノンアス製品に置き換わっていったと考えられる。 また、被告太平洋セメントについては、前記第3の2⑴ウ(オ)のとおり、被告太平洋セメントは昭和53年に石綿含有吹付けロックウール(スプレーコート)の製造・販売を終了しているが、昭和50年にノンアス製品である吹付けロックウール(スプレーコートS)の製造・販売を開始し、昭和50年から徐々にノンアス製品に置き換わっていたと考えられ、昭和50年以降の吹付けロックウールのシェアには、吹付けロックウールのノンアス化が随時進められていたことに伴うノンアス製品が含まれていたと認められる。 以上を踏まえて検討をすると、被災者1の従事した作業現場は主に鉄筋コンクリート造であり、鉄骨造の建物で耐火被覆作業の付近で作業をした頻度は証拠上不明であるから、吹付けロックウール②、③について、被災者1との えて検討をすると、被災者1の従事した作業現場は主に鉄筋コンクリート造であり、鉄骨造の建物で耐火被覆作業の付近で作業をした頻度は証拠上不明であるから、吹付けロックウール②、③について、被災者1との関係で建材現場到達事実を認めるのは困難である。 ウ 石綿含有保温材(建材種類⑦、⑩)について石綿含有けい酸カルシウム保温材⑦及び石綿保温材⑩については、前記第3の2⑵のとおり、昭和50年頃から昭和53年頃までの期間については、被告A&AM及び被告ニチアスのシェアが高かったことが認められ、被災者1の配管工としての作業期間・内容に照らすと、これらの建材の建材現場到達事実を認めるのが相当である。なお、前記第3の2⑵エのとおり、被告ニチアスが製造した石綿含有けい酸カルシウム保温材⑦は主に工場で用いられており、被告ニチアスが製造した石綿保温材⑩は、主に船舶117 又は工場等で用いられたと認められるが、上記⑵で認定したとおり、被災者1は、主に冷蔵冷凍倉庫のある水産加工場等の建物の工事に従事したと認められるから、被告ニチアスの製品の建材現場到達事実を認めるのが相当である。 エ 石綿含有スレートボード(建材種類⑮~⑲)、石綿含有けい酸カルシウム板第1種(建材種類㉓)について(ア)前記第3の2⑸及び⑺のとおり、石綿含有スレートボード(建材種類⑮~⑲)、石綿スレート及び石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓は、いずれも内壁等の内装材として用いられ、代替性が高い(なお、前記第3の2⑺ウのとおり、建材種類⑮~⑲と建材種類㉓を合わせた出荷量のうち建材種類㉓の出荷量が占める割合は、16.0%(昭和50年)、20.9%(昭和51年)、23.6%(昭和52年)、25.2%(昭和53年)と徐々に増加し、平成3年には49.5%にまで達した 量のうち建材種類㉓の出荷量が占める割合は、16.0%(昭和50年)、20.9%(昭和51年)、23.6%(昭和52年)、25.2%(昭和53年)と徐々に増加し、平成3年には49.5%にまで達したが、その後はおおむね10%台で推移したことに注意を要する。)。 (イ)そして、前記第3の2⑸のとおり、石綿含有スレートボード⑮~⑲の道内におけるシェアは平成2年の時点で被告A&AMのシェアが高く、また、同⑺のとおり、これと代替性のある石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓のシェアについても被告A&AMのシェアが高かったことが認められる。一方、被告ノザワは建材種類⑮~⑲について昭和53年の時点で道内のシェアが相当程度高かったと認められるが、その後は減少傾向にあることに加え、建材種類㉓のシェアはなく、昭和50年代から平成3年にかけて建材種類⑮~⑲と建材種類㉓を合わせた出荷量のうち建材種類㉓の出荷量が占める割合が増えていった経緯も踏まえれば、道内におけるこれら建材のシェアは被告A&AMが特に高かったと認めるのが相当である。 建材種類㉓については、前記第3の2⑺イ(イ)のとおり、昭和50118 年頃、被告ニチアスの製品は非住宅、中高層建築の需要が圧倒的に多いところ、上記⑵の作業内容に照らすと、被災者1は、主に冷蔵冷凍倉庫のある水産加工場等の建物の工事に従事しており、被災者1は非住宅の中層規模以上の建物の工事に従事したと認められるから、被告ニチアスの製品の建材現場到達事実を認めるのが相当である。 (ウ)以上によれば、建材種類⑮ないし⑲、㉓については、被告A&AM及び被告ニチアスの製品の建材現場到達事実を認めるのが相当である。 オ 石綿セメント円筒㊶(耐火被覆塩ビ管)について石綿セメント円筒㊶(耐火被覆塩ビ管)に関しては、前記 ㉓については、被告A&AM及び被告ニチアスの製品の建材現場到達事実を認めるのが相当である。 オ 石綿セメント円筒㊶(耐火被覆塩ビ管)について石綿セメント円筒㊶(耐火被覆塩ビ管)に関しては、前記第3の2⑿のとおり、少なくとも昭和59年から昭和63年までの期間については、被告A&AMが製造・販売した「浅野耐火パイプ」のシェアが高かったことが認められ、上記⑵で認めた被災者1の配管工としての作業期間・内容に照らすと、かかる製品の建材現場到達事実を認めるのが相当である。 カ 小括以上より、被災者1との関係では、主要原因企業は被告A&AM、被告ニチアスと認められる。 2 原告2被災者B⑴ 石綿粉じんにばく露した作業期間被災者2(昭和20年4月24日生)は、責任期間のうち、同被災者の職歴⑥(ただし、始期は昭和50年1月1日として平成11年3月31日まで〔約24年3月〕)において、約24年3月の間、配管工として石綿粉じんばく露作業に従事した(甲D2の1。また、責任期間の前に約5年7月のばく露を認める。)。 ⑵ 石綿粉じんにばく露した作業の内容被災者2は、北海道の建設作業現場において、配管工として、百貨店や学校等を中心に、ガスの配管を通す作業に従事した。その際、配管の切断・加119 工・取付けや配管に巻き付ける保温材の切断・加工をしたり、天井裏で作業をしたり、石綿が吹付けられた天井にアンカーボルトを打つ作業をしたり、配管を通すためにスレートボードを切断・加工したり、スレートボードを切断・加工する作業の付近で配管作業に従事したりした(なお、被災者2は、労災申請をした際の事情聴取の際、スレートボードの切断・加工の作業を行っていたり、スレートボードを切断・加工する作業の付近で配管作業に従事してい の付近で配管作業に従事したりした(なお、被災者2は、労災申請をした際の事情聴取の際、スレートボードの切断・加工の作業を行っていたり、スレートボードを切断・加工する作業の付近で配管作業に従事していた旨はっきりと述べていたわけではないが、労災申請をした際の事情聴取の際、配管のために壁をピックで穴を空けたりもすることもあった旨言及していたり(甲D2の1・23頁)、労災の災害の原因及び発生状況について、配管工として作業に従事していた際に、近くでアスベストを含む資材の撤去、切削などが行われていた旨記載していた(甲D2の1・11頁)ことからすると、被災者2自身が、配管を通すためにスレートボードを切断・加工したり、スレートボードを切断・加工する作業の付近で配管作業に従事することがあったと認められる。)。 被災者2が作業した現場は、主に、鉄筋コンクリート造又は鉄骨造の建物であったが、木造の建物のこともあった。また、新築工事のみならず、改修工事及び解体工事に従事することもあった。 被災者2は、作業の際、マスクを着けることはなかった。 (以上につき、甲D2の1、2の4、原告2B1本人)⑶ 主要原因建材及び主要原因企業の認定ア 上記⑴及び⑵で認定した石綿粉じんばく露期間や作業の内容に照らせば、被災者2の主要原因建材となり得る建材種類は、石綿吹付け材(建材種類②、③)、石綿含有保温材(建材種類⑦、⑩)、石綿含有スレートボード(建材種類⑮~⑲)、石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓、石綿セメント円筒(建材種類㊶)と認められる(石綿含有押出成形セメント板㉒については、前記第3の2⑹のとおり、外壁材として使用される割合が高く、120 プレカットされた状態で現場に納入されていたものであり、被災者2において現に間仕切り壁を切断・加工したとの事実を については、前記第3の2⑹のとおり、外壁材として使用される割合が高く、120 プレカットされた状態で現場に納入されていたものであり、被災者2において現に間仕切り壁を切断・加工したとの事実を認めるに足りる証拠はないから、建材現場到達事実が認められない。)。 イ 吹付けロックウール(建材種類②、③)については、前記第3の2⑴ウ(オ)のとおり、被告ニチアスが昭和49年、被告A&AMが昭和50年には石綿吹付ロックウール②の製造をそれぞれ中止し、吹付けロックウール②、③は漸次ノンアス化が進んでおり、被告太平洋セメントが石綿吹付ロックウール②の製造を中止したのは昭和53年であるが、昭和50年から徐々にノンアス製品に置き換わっていたことが認められる。被災者2の従事した作業現場は、主に、鉄筋コンクリート造又は鉄骨造の建物であり、木造の建物を取り扱うこともあったというものであるが、その割合も証拠上明らかではない上、新築工事のみならず、改修工事及び解体工事にも従事していたこと等を踏まえると、昭和50年から昭和53年までの間に、鉄骨造の建物で耐火被覆作業の付近で作業をした頻度が相当回数あったとまでは認められず、吹付けロックウール②、③について、被災者2との関係で建材現場到達事実を認めるのは困難である。 ウ 石綿含有けい酸カルシウム保温材⑦及び石綿保温材⑩については、前記1の被災者1で述べたのと同様、被告A&AMの建材現場到達事実を認めるのが相当である。他方、被告ニチアスが製造した石綿含有けい酸カルシウム保温材⑦は主に工場で用いられており、被告ニチアスが製造した石綿保温材⑩は主に船舶又は工場等で用いられたところ、上記⑵で認定したとおり、被災者2が作業に従事した現場は学校や百貨店といった建物であり、これらの作業に相当回数にわたって従事したとの スが製造した石綿保温材⑩は主に船舶又は工場等で用いられたところ、上記⑵で認定したとおり、被災者2が作業に従事した現場は学校や百貨店といった建物であり、これらの作業に相当回数にわたって従事したとの事実を認めるに足りる証拠はないから、被告ニチアスの製品の建材現場到達事実は認められない。 エ 石綿含有スレートボード⑮~⑲、石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓については、前記1の被災者1で述べたのと同様、被告A&AMの製品及121 び被告ニチアスの製品の現場到達事実を認めるのが相当である(被災者2についても、百貨店や学校といった、非住宅の中層以上の建物に数多く従事したものと認められるから、被告ニチアスの製品の建材現場到達事実を認めるのが相当である。)。 オ 石綿セメント円筒㊶(耐火被覆塩ビ管)については、前記1の被災者1で述べたのと同様、被告A&AMの製品の建材現場到達事実を認めるのが相当である。 カ 小括以上より、被災者2との関係では、主要原因企業は被告A&AM、被告ニチアスと認められる。 3 原告3被災者C⑴ 石綿粉じんにばく露した作業期間被災者3(昭和8年4月28日生)は、責任期間のうち、同被災者の職歴③(ただし、始期は昭和50年1月1日として平成3年3月1日まで〔約16年2月〕)から石綿粉じんにばく露したとしたと認められない5年間(昭和53年度から昭和57年度までの5年間は、職歴①(農業)を基本とした上で、冬の農閑期等の業務として職歴⑤(除雪作業)を行っていた。)を除いた約11年2月の3分の1程度(被災者3は、季節労働者として冬の農閑期等の約4月のみ労働したものと認められる。)の約3年8月の間、電気工として石綿粉じんばく露作業に従事した(甲D3号証の1。また、責任期間の前に約6年4月のばく露を認める。上記算定に として冬の農閑期等の約4月のみ労働したものと認められる。)の約3年8月の間、電気工として石綿粉じんばく露作業に従事した(甲D3号証の1。また、責任期間の前に約6年4月のばく露を認める。上記算定に当たっては職歴②の8年6月に、職歴③から職歴②と職歴④との重複期間を除いた10年6月を加えた合計約19年のうち、被災者3が冬の農閑期等における季節労働者であることを考慮して、その3分の1相当である約6年4月とした。)。 ⑵ 石綿粉じんにばく露した作業の内容被災者3は、関東地方の建設作業現場において、電気工として、ケーブル122 の取り替え作業を行った際に出る廃材の運搬、電気設備の配線工事、新築工事や改修工事に伴う電気工事の現場で資材や廃材の運搬等に従事しており、被災者3は、他の職員によるボード類の切断作業に近接した場所で並行して作業していた。 被災者3は、作業の際、マスクを着けることはなかった。 (以上につき、甲D3の1、3の4、原告3C1本人)⑶ 主要原因建材及び主要原因企業の認定ア 上記⑴及び⑵で認定した石綿粉じんばく露期間や作業の内容に照らせば、被災者3の主要原因建材となり得る建材種類は、石綿含有スレートボード(建材種類⑮~⑲)、石綿含有けい酸カルシウム板第1種(建材種類㉓)と認められる(上記⑵のとおり、被災者3が吹付け作業をしている付近で作業したなどの具体的事情を認めるに足りる証拠はないから、吹付けロックウール②、③を主要原因建材と認めるのは困難である。また、石綿含有押出成形セメント板㉒については、前記第3の2⑹のとおり、外壁材として使用される割合が高く、プレカットされた状態で現場に納入されていたものであり、被災者3において現に間仕切り壁を切断・加工したとの事実を認めるに足りる証拠 いては、前記第3の2⑹のとおり、外壁材として使用される割合が高く、プレカットされた状態で現場に納入されていたものであり、被災者3において現に間仕切り壁を切断・加工したとの事実を認めるに足りる証拠はないから、建材現場到達事実が認められない。)。 イ 石綿含有スレートボード(建材種類⑮~⑲)、石綿含有けい酸カルシウム板第1種(建材種類㉓)について被災者3は、道外の建設作業現場においても電気工として就労していることが認められ、これが冬季の季節雇用であることを踏まえても、その業務に従事した期間の合計が約3年8月に及ぶことに照らせば、相当数の作業現場に及ぶものと認められる。そして、被災者3は、上記⑴のとおり、責任期間のうち、昭和50年1月から平成3年3月まで(ただし、昭和53年度から昭和57年度を除く。)の間、電気工として、業務に従事してい123 るところ、前記第3の2⑸及び⑺のとおり、その期間に係る石綿含有スレートボード⑮~⑲に係る国内のシェアは、被告A&AMが特に大きく、同建材は被告A&AM及び被告ニチアスのシェアが大きい石綿含有けい酸カルシウム板第1 種㉓との代替性が認められることからすると、被告A&AMについては建材現場到達事実を認めるのが相当である。 他方で、前記第3の2⑸及び⑺のとおり、被告ノザワのシェアは昭和53年頃の時点で9.9%であったが、その後シェアを伸ばして、平成2年頃の時点で21.4%となったことや、被告MMKのシェアは昭和53年頃の時点で15.6%であり、平成2年頃の時点で14%とほぼ横ばいであったところ、石綿含有スレートボード(建材種類⑮~⑲)とけい酸カルシウム板第1種㉓を合わせた出荷量のうちけい酸カルシウム板第1種㉓の出荷量が占める割合は、16.0%(昭和50年)、20.9%(昭和51 ところ、石綿含有スレートボード(建材種類⑮~⑲)とけい酸カルシウム板第1種㉓を合わせた出荷量のうちけい酸カルシウム板第1種㉓の出荷量が占める割合は、16.0%(昭和50年)、20.9%(昭和51年)、23.6%(昭和52年)、25.2%(昭和53年)と徐々に増加し、平成3年には49.5%にまで達してはいるものの、被災者3が冬季の季節雇用であり、業務に従事した期間の合計が約3年8月でありその期間が長期に及ぶものとはいえないこと等を総合的に勘案すると、被告ノザワ及び被告MMKの製品について建材現場到達事実は認められない。 また、被告ニチアスの製品(建材種類㉓)は、前記1⑶エのとおり、非住宅、中高層建築の需要が圧倒的に多いところ、上記⑵によれば、被災者3が非住宅・中高層建築の現場に相当回数にわたって従事したとの事実を認めるに足りる証拠はないから、被告ニチアスの製品の建材現場到達事実は認められない。 ウ 小括以上より、被災者3との関係では、主要原因企業は被告A&AMと認められる。 4 原告4被災者D124 ⑴ 石綿粉じんにばく露した作業期間被災者4(昭和25年2月25日生)は、責任期間のうち、同被災者の職歴④(ただし、始期は昭和50年1月1日として平成元年2月28日まで〔約14年2月〕)、職歴⑤(平成元年3月1日から平成8年8月30日まで〔約7年5月〕)及び職歴⑦(平成15年1月1日から終期は平成18年8月31日まで〔約3年8月〕)において、約25年3月の間、電気工として石綿粉じんばく露作業に従事した(甲D4の1。なお、責任期間の前に約5年10月のばく露がある。)。 ⑵ 石綿粉じんにばく露した作業の内容被災者4は、主に北海道の建設作業現場において、電気工として、火災報知器の設置・配線に係る作業や点検作業に従 任期間の前に約5年10月のばく露がある。)。 ⑵ 石綿粉じんにばく露した作業の内容被災者4は、主に北海道の建設作業現場において、電気工として、火災報知器の設置・配線に係る作業や点検作業に従事した。 火災報知器を設置する際は、電動ドリルでボード類に穴を開けて配線をしていた。また、鉄骨に石綿を吹き付けている付近で配線作業をすることもあった。点検作業において、異常があったときは、火災報知器を外して、天井裏等にある配線まで確認しており、その際、配線に対しても吹付け剤が付着していることがあった。 被災者4は、百貨店、店舗、工場等の建物を中心に作業に従事しており、鉄筋コンクリート造の建物の割合が8割程度であり、鉄骨造の建物の割合は2割程度であった。 被災者4が取り扱った現場の数は、1年間で約30件~40件であった。 被災者4は、新築建物のみならず、既存建物で消防機器の交換等の作業に従事することがあったが、職歴④と⑤においては、新築建物で従事することが多く、職歴⑦においては、既存建物で従事することが多かった。 被災者4は、作業の際、マスクを着けることはなかった。 (以上につき、甲D4の1 、4の4、原告4D本人)⑶ 主要原因建材及び主要原因企業の認定125 ア 上記⑴及び⑵で認定した石綿粉じんばく露期間や作業の内容に照らせば、被災者4の主要原因建材となり得る建材種類は、吹付けロックウール(建材種類②、③)、石綿含有スレートボード(建材種類⑮~⑲)及びこれと用途が共通する石綿含有けい酸カルシウム板第1種(建材種類㉓)と認められる(石綿含有押出成形セメント板㉒については、前記第3の2⑹のとおり、外壁材として使用される割合が高く、プレカットされた状態で現場に納入されていたものであり、被災者4において現に間仕切り壁 認められる(石綿含有押出成形セメント板㉒については、前記第3の2⑹のとおり、外壁材として使用される割合が高く、プレカットされた状態で現場に納入されていたものであり、被災者4において現に間仕切り壁を切断・加工したとの事実を認めるに足りる証拠はないから、建材現場到達事実が認められない。)。 イ(ア)吹付けロックウール(建材種類②、③)については、上記⑵で認めた被災者4の作業内容に照らせば、同被災者が粉じんにばく露した吹付け材は、鉄骨造建物に施工された耐火被覆用途の吹付けロックウール②、③と認めるのが相当である。そして、耐火被覆用途の吹付けロックウール②、③に関しては、前記第3の2⑴ウ(オ)のとおり、昭和49年頃から昭和53年頃までの間は被告ニチアス、被告A&AM、被告太平洋セメントのシェアが高かったことが認められる。 (イ)上記⑵のとおり、被災者4の作業現場は、百貨店、店舗、工場等の建物であり、前記第3の2⑴ウのとおり、被告ニチアスが昭和49年に石綿吹付ロックウール②の製造を中止しており、湿式石綿含有吹付け材③についても、高層ビル等の大規模な現場で施工されており、被災者4が昭和50年から昭和53年頃までの間に湿式石綿含有吹付け材③が施工されるような高層ビル等に匹敵する百貨店、店舗、工場等の建物における作業に相当回数従事したと認めるに足りる証拠はないから、被告ニチアスの製品について建材現場到達時事実は認められない。 (ウ)被告A&AMについては、前記1の被災者1で述べたのと同様、昭和50年に石綿吹付けロックウール②の製造を中止しているものの、少な126 くとも製造を中止した翌年までは相応の量が建設作業現場まで到達していたと推認されるが、被災者4については、被災者4が取り扱った現場が年間約30件~40件であったも しているものの、少な126 くとも製造を中止した翌年までは相応の量が建設作業現場まで到達していたと推認されるが、被災者4については、被災者4が取り扱った現場が年間約30件~40件であったものの、鉄骨造の建物の割合は2割程度であり、改修工事にも従事していたこと等を踏まえると、被告A&AMの製品について建材現場到達時事実は認められない。 (エ)被告太平洋セメントについても、前記1の被災者1で述べたのと同様、昭和50年から徐々にノンアス製品に置き換わっていたと考えられるが、被告太平洋セメントが製造・販売した吹付けロックウール②については、昭和50年頃から昭和53年頃までのシェアが約16%であり、被災者4については、点検作業において、吹付け剤が付着している配線の確認することがあったことや鉄骨に石綿を吹き付けている付近で配線作業をすることがあり、被災者4が取り扱った現場が年間約30件~40件であったことからすると、被災者4が取り扱っていた鉄骨造の建物の割合は2割程度であり、改修工事にも従事していたことや、ノンアス製品の製造・販売に関する被告太平洋セメントの主張を踏まえても、同被災者との関係で被告太平洋セメントの製品について建材現場到達事実を認めるのが相当である。 なお、被告太平洋セメントについては、吹付けロックウールの施工を「販工店」に行わせていたことが認められるが(乙ニ35、36、42〔17、18頁〕)、「販工店」による吹付け作業後に作業をする者を「販工店」ないし被告太平洋セメントの系列に属する者に限定していたと認めるに足りる証拠はない。 ウ 石綿含有スレートボード⑮~⑲、石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓については、前記1の被災者1で述べたのと同様、被告A&AM及び被告ニチアスの製品の建材現場到達事実を認めるのが相当で 。 ウ 石綿含有スレートボード⑮~⑲、石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓については、前記1の被災者1で述べたのと同様、被告A&AM及び被告ニチアスの製品の建材現場到達事実を認めるのが相当である(被災者4についても、木造の共同住宅等を取り扱った件数は少なく、非住宅の中層以127 上の建物に数多く従事したものと認められるから、被告ニチアスの製品の建材現場到達事実を認めるのが相当である。)。 エ 小括以上より、被災者4との関係では、主要原因企業は被告A&AM、被告太平洋セメント、被告ニチアスと認められる。 5 原告5被災者E⑴ 石綿粉じんにばく露した作業期間被災者5(昭和26年5月26日生)は、責任期間内のうち、同被災者の職歴③(昭和51年10月31日から昭和54年8月25日まで〔約2年9月〕)、職歴④(同年9月30日から同年12月1日まで〔約2月〕)、職歴⑤(昭和55年1月30日から平成13年8月25日まで〔約21年6月〕)において、約24年5月の間、電気工として石綿粉じんばく露作業に従事した(甲D5の1。なお、責任期間の前のばく露はない。)。 ⑵ 石綿粉じんにばく露した作業の内容被災者5は、北海道の建設作業現場において、電気工として、配線関係の作業に従事していた。 配線作業では、防火壁に配線のための開口部を設ける目的で、スレート板でできた防火壁を開口部の形に合わせて電動丸鋸等で切断した。また、鉄骨造の建物では、鉄骨部分につり金具を取り付けるために、カッターで鉄骨に付着する吹付材に切り目を入れて手でそれを除去することがあった。 また、配線工事を行っている近くで、吹付作業がされることやボードを切断する作業が行われたり、改修工事の場合には天井裏で配線作業をすることが多かった。 目を入れて手でそれを除去することがあった。 また、配線工事を行っている近くで、吹付作業がされることやボードを切断する作業が行われたり、改修工事の場合には天井裏で配線作業をすることが多かった。 被災者5は、学校、百貨店、店舗、工場等の建物を中心に作業に従事しており、鉄筋コンクリート造の建物の割合が7割程度、鉄骨造の建物の割合は2割程度、木造の建物の割合が1割程度であった。 128 被災者5は、主に、新築建物で作業に従事していたが、既存建物で作業に従事することもあった。 被災者5は、作業の際、マスクを着けることはなかった。 (以上につき、甲D5の1 、5の4、原告5E本人)⑶ 主要原因建材及び主要原因企業の認定ア 上記⑴及び⑵で認定した石綿粉じんばく露期間や作業の内容に照らせば、被災者5の主要原因建材となり得る建材種類は、石綿含有スレートボード(建材種類⑮~⑲)、石綿含有けい酸カルシウム板第1種(建材種類㉓)と認められる(石綿含有押出成形セメント板㉒については、前記第3の2⑹のとおり、外壁材として使用される割合が高く、プレカットされた状態で現場に納入されていたものであり、被災者5において現に間仕切り壁を切断・加工したとの事実を認めるに足りる証拠はないから、建材現場到達事実が認められない。)。 イ 吹付けロックウール(建材種類②、③)については、前記第3の2⑴ウ(オ)のとおり、被告ニチアスが昭和49年、被告A&AMが昭和50年には石綿吹付ロックウール②の製造をそれぞれ中止し、吹付けロックウール②、③は漸次ノンアス化が進んでおり、被告太平洋セメントが石綿吹付ロックウール②の製造を中止したのは昭和53年であるが、昭和50年から徐々にノンアス製品に置き換わっていたことが認められる。そして、上記⑴及び⑵を ンアス化が進んでおり、被告太平洋セメントが石綿吹付ロックウール②の製造を中止したのは昭和53年であるが、昭和50年から徐々にノンアス製品に置き換わっていたことが認められる。そして、上記⑴及び⑵を踏まえると、被災者5の石綿粉じんばく露期間の始期が昭和51年10月であり、被災者5自身が吹付け作業と近接・並行して作業を行った頻度が相当回数に及ぶと認めるに足りる証拠もないから、これらの建材現場到達事実は認められない。 ウ 石綿含有スレートボード⑮~⑲、石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓については、前記1の被災者1で述べたのと同様、被告A&AM及び被告ニチアスの製品の建材現場到達事実を認めるのが相当である(被災者5に129 ついても、木造の共同住宅や戸建て住宅を取り扱った件数は少なく、非住宅の中層以上の建物に数多く従事したものと認められるから、被告ニチアスの製品の建材現場到達事実を認めるのが相当である。)。 エ 小括以上より、被災者5との関係では、主要原因企業は被告A&AM、被告ニチアスと認められる。 6 原告6被災者F⑴ 石綿粉じんにばく露した作業期間被災者6(昭和21年10月30日生)は、責任期間内のうち、職歴④(昭和50年1月1日から昭和52年3月26日まで〔約2年2月〕)及び職歴⑥(昭和53年1月31日から平成18年8月31日まで〔約28年7月〕)において、約30年9月の間、エレベーター工として従事した(甲D6の1。 なお、責任期間の前に少なくとも約7年6月のばく露がある。)。 ⑵ 石綿粉じんにばく露した作業の内容被災者6は、北海道又は道外の建設作業現場において、エレベーター工として、エレベーターを取り付けるために、エレベーターホールの中で、ロックウールが吹き付けられていたコンク んにばく露した作業の内容被災者6は、北海道又は道外の建設作業現場において、エレベーター工として、エレベーターを取り付けるために、エレベーターホールの中で、ロックウールが吹き付けられていたコンクリートの壁をドリルで穴を開ける作業をすることもあったが、その壁に既に吹付けが施工されていた割合は不明である。また、エレベーターホール内のコンクリート壁に石綿を吹き付けている付近で作業をすることもあった。 被災者6は、新築建物のエレベーター工事のみならず、エレベーターの改修工事や解体工事に従事することもあった。 被災者6の取り扱った現場は、年間約10件であり、そのうち鉄骨造と鉄筋コンクリート造の建物の割合は同じくらいであった。また、エレベーターホール内のコンクリート壁に石綿を吹き付けている付近で作業をすることは年に1、2回であった。 130 被災者6は、責任期間における作業の際、マスクをほとんど着けなかった 。 (以上につき、甲D6の1 、6の4、6の4・2、原告6F本人)⑶ 主要原因建材及び主要原因企業の認定ア 上記⑴及び⑵で認定した石綿粉じんばく露期間や作業の内容に照らせば、被災者6の主要原因建材となり得る建材種類は、吹付けロックウール(建材種類②、③)と認められる。 イ 吹付けロックウール(建材種類②、③)については、前記第3の2⑴ウ(オ)のとおり、被告ニチアスが昭和49年、被告A&AMが昭和50年には石綿吹付ロックウール②の製造をそれぞれ中止し、吹付けロックウール②、③は漸次ノンアス化が進んでおり、被告太平洋セメントが石綿吹付けロックウール②の製造を中止したのは昭和53年であるが、昭和50年から徐々にノンアス製品に置き換わっていたことが認められる。そして、上記⑴及び⑵で認定した職歴及び作業内容を踏 洋セメントが石綿吹付けロックウール②の製造を中止したのは昭和53年であるが、昭和50年から徐々にノンアス製品に置き換わっていたことが認められる。そして、上記⑴及び⑵で認定した職歴及び作業内容を踏まえると、被災者6は昭和52年4月頃から同年12月頃までの間エレベーター工として業務をしておらず、被災者6が取り扱った現場が年間約10件であり、そこには鉄骨造の建物のみならず、鉄筋コンクリート造の建物も含まれており、新築工事のみならず改修工事にも従事することもあったこと、ロックウールが吹き付けられていたコンクリートの壁をドリルで穴を開ける作業をすることもあったが、その壁には既に吹き付けが施工されていた割合は不明であること等も踏まえると、新築の鉄骨造の建物で作業に従事した頻度が相当回数に及ぶものとは認められない。また、被災者6自身が吹付け作業と近接・並行して作業を行った頻度も多かったとはいえないから、これらの建材現場到達事実は認められない。 ウ 小括以上より、被災者6との関係では、主要原因建材及び主要原因企業のいずれも認め難いというべきである。 131 7 原告7被災者G⑴ 石綿粉じんにばく露した作業期間被災者7(昭和19年9月2日生)は、責任期間のうち、同被災者の職歴①(ただし、始期は昭和50年1月1日として平成3年10月1日まで〔約16年9月〕)において、約16年9月の間、現場監督として石綿粉じんばく露作業に従事した(甲D7の1〔13、20頁〕。なお、責任期間の前に少なくとも約11年8月のばく露がある。)。 ⑵ 石綿粉じんにばく露した作業の内容被災者7は、北海道の新築・改修工事の建設作業現場で現場監督業務に従事した。被災者7が取り扱った現場は、主に、鉄骨造又は鉄筋コンクリート造のビルや ⑵ 石綿粉じんにばく露した作業の内容被災者7は、北海道の新築・改修工事の建設作業現場で現場監督業務に従事した。被災者7が取り扱った現場は、主に、鉄骨造又は鉄筋コンクリート造のビルや工場等であり、改修工事に従事することもあった。 被災者7は、新築工事の現場において、石綿を含有した耐火被覆の吹付けや耐火建材(ボード類)の切断する作業現場で現場管理業務をしたが、鉄骨に石綿を吹き付けている作業やボード類を切断する作業の近くで、立ち会うことがあった(なお、被災者7は、労災申請をした際、ボード類を切断する作業の付近で配管作業に従事していた旨はっきりと述べていたわけではないが、労災の災害の原因及び発生状況について、「大工さんの建材取付作業等現場監督として現場を見回る仕事をしていた」旨記載しており(甲D7の1・13頁)、大工による建材取付け作業には、ボード類を切断する作業も含まれると考えられるため、被災者7が、ボード類を切断する作業の近くで、立ち会うことがあったと認められる。)。 被災者7が取り扱った現場の数は、1年間で1、2件であった。 被災者7は、作業の際、マスクを着けることはなかった。 (以上につき、甲D7の1、7の4)⑶ 主要原因建材及び主要原因企業の認定ア 上記⑴及び⑵の職歴及び作業内容によれば、被災者7自身が直接石綿含132 有建材を取り扱う立場にはなく、仮に取扱いがあったとしてもその回数は不明であるから、現場監督という職種から直ちに被災者7に関する主張する建材種類の全てについてシェアを用いた確率計算による建材現場到達事実を認めるのは困難である。もっとも、被災者7が作業に従事した現場の件数は年間1、2件と多くはないものの、約16年9月の間、現場監督として石綿粉じんばく露作業に従事しており、そ による建材現場到達事実を認めるのは困難である。もっとも、被災者7が作業に従事した現場の件数は年間1、2件と多くはないものの、約16年9月の間、現場監督として石綿粉じんばく露作業に従事しており、その期間が長期に及ぶことからすると、石綿含有スレートボード(建材種類⑮~⑲)、石綿含有けい酸カルシウム板第1種(建材種類㉓)については建材現場到達事実を認めるのが相当である。 これに対し、吹付けロックウール(建材種類②、③)については、前記第3の2⑴ウ(オ)のとおり、被告ニチアスが昭和49年、被告A&AMが昭和50年、被告太平洋セメントが昭和53年には石綿吹付ロックウール②の製造をそれぞれ中止し、吹付けロックウール②、③は漸次ノンアス化が進んでいたことが認められる。そして、上記⑵の作業内容を踏まえると、被災者7自身が石綿含有建材を直接取り扱う立場にはなく、被災者7が従事した現場の数は1年間で1、2件であったことに照らせば、被災者7との関係では、シェアを用いた確率計算によって吹付ロックウール②、③の建材現場到達事実を認められない。また、石綿含有保温材(建材種類⑦、⑩)、耐火被覆板(建材種類⑪及び⑫)、石綿含有押出成形セメント板㉒、石綿含有ロックウール吸音天井板㉔、石綿セメント円筒㊶、混和材㊸についても、被災者7の職種が現場監督であり、石綿含有建材を直接取り扱う職種に比して石綿粉じんのばく露量が相対的に少ない事情等も考慮するとシェアを用いた確率計算による建材現場到達事実を認めるのは困難といわざるを得ない。 イ 石綿含有スレートボード⑮~⑲、石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓については、前記1の被災者1で述べたのと同様、被告A&AM及び被告133 ニチアスの製品の建材現場到達事実を認めるのが相当である(被災者7についても、非住宅の中層以 い酸カルシウム板第1種㉓については、前記1の被災者1で述べたのと同様、被告A&AM及び被告133 ニチアスの製品の建材現場到達事実を認めるのが相当である(被災者7についても、非住宅の中層以上の建物に数多く従事したものと認められるから、被告ニチアスの製品の建材現場到達事実を認めるのが相当である。)。 ウ 小括以上より、被災者7との関係では、主要原因企業は被告A&AM、被告被告ニチアスと認められる。 8 原告8被災者H⑴ 石綿粉じんにばく露した作業期間被災者8(昭和17年1月8日生)は、責任期間のうち、同被災者の職歴②(ただし、始期は昭和50年1月1日として平成12年12月30日まで〔約25年11月〕)において、約25年11月の間、現場監督として石綿粉じんばく露作業に従事した(甲D8の1〔22頁〕。なお、責任期間の前に少なくとも約4年7月のばく露がある。)。 ⑵ 石綿粉じんにばく露した作業の内容被災者8は、北海道の新築・改修工事の建設作業現場で現場監督業務に従事した。被災者8が取り扱った現場は、鉄骨鉄筋又は鉄筋の店舗、事務所、工場、倉庫等であり、木造の建物はなかった。 被災者8は、新築工事の現場において、現場管理業務の一環として、鉄骨に石綿を吹き付けている作業やボード類の切断する作業の近くで、立ち会うことがあった。 また、被災者8は、現場で作業したこともあり、その際、カポスタックを切断・加工する作業に従事した。 被災者8が取り扱った現場の数は、1年間で5件未満であった。また、新築工事と改修工事のいずれも取り扱っており、その割合は新築工事が約2割であり、改修工事が約8割であった。 被災者8は、責任期間における作業の際、マスクをほとんど着けなかった 。 134 (以上につき、 工事のいずれも取り扱っており、その割合は新築工事が約2割であり、改修工事が約8割であった。 被災者8は、責任期間における作業の際、マスクをほとんど着けなかった 。 134 (以上につき、甲D8の1、8の4、原告8H本人)⑶ 主要原因建材及び主要原因企業の認定ア 上記⑴及び⑵の職歴及び作業内容によれば、被災者8自身が石綿含有建材を取り扱う立場にはなく、仮に取扱いがあったとしてもその回数は不明であるから、現場監督という職種から直ちに原告8Hの主張する建材種類の全てについてシェアを用いた確率計算による建材現場到達事実を認めるのは困難である。もっとも、被災者8が作業に従事した現場の件数は年間5件未満と多くはないが、約25年11月の間、現場監督として石綿粉じんばく露作業に従事しており、その期間が長期に及ぶことからすると、現に被災者8が自ら取り扱った建材として特定されている「カポスタック」(建材種類⑭。別紙10(原告番号8番被災者H)建材番号108)のほか、石綿含有スレートボード(建材種類⑮~⑲)、石綿含有けい酸カルシウム板第1種(建材種類㉓)については建材現場到達事実を認めるのが相当である(なお、原告8Hは、昭和50年から昭和53年頃、「トムレックス」(建材種類①。別紙10(原告番号8番被災者H)建材番号3)という製品の吹付け作業をしている際に、その近くに現場監督として立ち会っていた旨供述するものの、証拠(甲C29の3)によれば、同製品は被告ニチアスが昭和49年には製造を中止していたことが認められるところ、被災者8は、上記⑴のとおり、責任期間の前から現場監督の作業をしており、上記製品による吹付け作業に立ち会ったのが責任期間の前であった可能性が相当程度あること等も踏まえると、被災者8が責任期間において「トムレック 記⑴のとおり、責任期間の前から現場監督の作業をしており、上記製品による吹付け作業に立ち会ったのが責任期間の前であった可能性が相当程度あること等も踏まえると、被災者8が責任期間において「トムレックス」の吹付けにより石綿粉じんにばく露したことを認めるのは困難である。また、吹付けロックウール(建材種類②、③)については、上記⑵の作業内容を踏まえると、被災者8自身が石綿含有建材を取り扱う立場にはなく、仮に取扱いがあったとしてもその回数は不明であること、被災者8が従事した現場の数は、1年間で5件未満であったことに照135 らせば、被災者8との関係では、シェアを用いた確率計算によって吹付ロックウール②、③の建材現場到達事実を認めるのは困難である。その他、石綿含有保温材(建材種類⑦、⑩)、耐火被覆板(建材種類⑪及び⑫)、石綿含有押出成形セメント板㉒、石綿含有ロックウール吸音天井板㉔、石綿セメント円筒㊶、混和材㊸についても、被災者8の職種が現場監督であり、直接作業をする職種に比して石綿粉じんのばく露量が相対的に少ない事情等も考慮するとについてシェアを用いた確率計算による建材現場到達事実を認めるのは困難といわざるを得ない。さらに、原告8Hは、「ニューカポスタック(断熱層部+ライナー部)」。建材種類⑭。別紙10(原告番号8番被災者H)建材番号109)及び「ニューカポスタック(ライナー部)」(建材種類㊶。別紙10(原告番号8番被災者H)建材番号2120)を取り扱った旨主張するが、被災者8が具体的に取り扱った旨供述するのは、「カポスタック」(建材種類⑭。建材番号108)であり、昭和50年から昭和53年頃に使用した旨供述しているところ、「カポスタック」の製造期間は昭和39年から昭和52年までであり(甲C29の108)、被災者8の供述と概ね一致して 材番号108)であり、昭和50年から昭和53年頃に使用した旨供述しているところ、「カポスタック」の製造期間は昭和39年から昭和52年までであり(甲C29の108)、被災者8の供述と概ね一致しているから、被災者8が「ニューカポスタック」を取り扱ったとは認められない。)イ 石綿含有スレートボード⑮~⑲、石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓については、前記1の被災者1で述べたのと同様、被告A&AM及び被告ニチアスの製品の建材現場到達事実を認めるのが相当である(被災者8についても、非住宅の中層以上の建物に数多く従事したものと認められるから、被告ニチアスの製品の建材現場到達事実を認めるのが相当である。)。 ウ 煙突用材について上記アのとおり、被告ニチアスの「カポスタック」の建材現場到達事実が認められる(甲C29の108)。 エ 小括136 以上より、被災者8との関係では、主要原因企業は被告A&AM、被告被告ニチアスと認められる。 9 原告9被災者I⑴ 石綿粉じんにばく露した作業期間被災者9(昭和28年2月28日生)は、責任期間のうち、同被災者の職歴④(昭和50年5月1日から昭和62年12月19日まで〔約12年7月〕のうち、概ね1年に平均4月程度の冬季休業期間が認められるから、その3分の2相当の約8年4月)、職歴⑤(昭和63年5月13日から平成3年12月21日まで〔約3年7月〕のうち、概ね1年に平均4月程度の冬季休業期間が認められるから、その3分の2相当の約2年4月)、職歴⑥(平成4年5月2日から平成6年6月16日まで〔約2年1月〕のうち、概ね1年に平均4月程度の冬季休業期間が認められるから、その3分の2相当の約1年4月)及び職歴⑦(平成6年7月31日から終期は平成18年8月31日まで〔約12 年6月16日まで〔約2年1月〕のうち、概ね1年に平均4月程度の冬季休業期間が認められるから、その3分の2相当の約1年4月)及び職歴⑦(平成6年7月31日から終期は平成18年8月31日まで〔約12年1月〕のうち、これまでの職歴と同様に、概ね1年に平均4月程度の冬季休業期間があったと考えられることから、その3分の2相当の約8年)において、約20年の間、大工として石綿粉じんばく露作業に従事した(甲D9の1。なお、責任期間の前に約4年4月にわたって大工としての就労歴があり、上記と同様冬季離職期間を考慮して、その3分の2相当の約2年10月を有責期間前のばく露期間と認める。)。 ⑵ 石綿粉じんにばく露した作業の内容被災者9は、北海道の建設作業現場において、大工として、主に、個人住宅の新築工事の作業現場を中心に大工として稼働し、ボード類の切断・加工を含む作業等に従事した。また、改修工事や解体工事にも従事していた。 被災者9の作業現場は、主に木造の個人住宅が中心であったが、鉄骨造の建物の工事にも従事することがあった。 被災者9は、上記⑴の期間中、作業中にマスクを着けることはなかった。 137 (以上につき、甲D9の1 、9の4、原告9I1本人)⑶ 主要原因建材及び主要原因企業の認定ア 上記⑴及び⑵で認定した職歴及び作業内容に照らせば、被災者9の主要原因建材となり得る建材種類は、内装材一般のうち、石綿含有スレートボード(建材種類⑮~⑲)、石綿含有けい酸カルシウム板第1種(建材種類㉓)であると認められる(被災者9は、木造の住宅が中心であるから、耐火被覆に係る建材種類①ないし③、⑪、⑫の建材現場到達は認められず、建材種類㉒についても、非住宅の現場において、現に間仕切り壁を切断・加工したとの事実を認めるに足りる証拠はない が中心であるから、耐火被覆に係る建材種類①ないし③、⑪、⑫の建材現場到達は認められず、建材種類㉒についても、非住宅の現場において、現に間仕切り壁を切断・加工したとの事実を認めるに足りる証拠はないから、建材現場到達事実も認められない。また、石綿含有ロックウール吸音天井板㉔については、前記第3の2⑻のとおり、そもそも天井材全体で見るとロックウール吸音板が占める割合が20%程度にすぎず、被災者9が同建材を取り扱ったことを認めるに足る的確な証拠もないから、建材現場到達事実が認められない。 その他、屋外建材については警告義務の対象とならない。)イ 石綿含有スレートボード⑮~⑲、石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓については、前記1の被災者1で述べたのと同様、被告A&AMの製品の建材現場到達事実を認めるのが相当である(被災者9が非住宅・中高層建築の現場に相当回数にわたって従事したとの事実を認めるに足りる証拠はないから、被告ニチアスの製品の建材現場到達事実は認められない。)。 ウ 小括以上より、被災者9との関係では、主要原因企業は被告A&AMと認められる。 10 原告10被災者J⑴ 石綿粉じんにばく露した作業期間被災者10(昭和35年1月10日生)は、責任期間のうち、同被災者の職歴①(昭和51年4月6日から昭和53年3月26日まで〔約1年11月〕)、138 職歴②(昭和53年5月1日から昭和55年12月27日まで〔約2年7月〕のうち、約9月の冬季休業期間が認められるから、約1年10月)及び職歴③(昭和56年4月4日から昭和57年11月30日まで〔約1年7月〕のうち、約4月の冬季休業期間が認められるから、約1年3月)において、約5年の間、大工として石綿粉じんばく露作業に従事した(甲D10の1。なお、責任期間の前の 和57年11月30日まで〔約1年7月〕のうち、約4月の冬季休業期間が認められるから、約1年3月)において、約5年の間、大工として石綿粉じんばく露作業に従事した(甲D10の1。なお、責任期間の前のばく露はない。)。 ⑵ 石綿粉じんにばく露した作業の内容被災者10は、北海道の建設作業現場において、大工として、木造の個人住宅の作業現場を中心に大工として稼働し、ボード類の切断・加工を含む内装作業等に従事した。 被災者10は、木造の個人住宅の新築工事のみならず、改修工事にも従事していた。 被災者10は、上記⑴の期間中、作業中にマスクを着けることはほとんどなかった。 (以上につき、甲D10の1 、10の4、原告10-2J2本人)⑶ 主要原因建材及び主要原因企業の認定ア 上記⑴及び⑵で認定した石綿粉じんばく露期間や作業の内容に照らせば、被災者10の主要原因建材となり得る建材種類は、内装材一般のうち、石綿含有スレートボード(建材種類⑮~⑲)、石綿含有けい酸カルシウム板第1種(建材種類㉓)であると認められる(被災者10は、木造の住宅が中心であるから、耐火被覆に係る建材種類①ないし③、⑪、⑫の建材現場到達は認められず、建材種類㉒についても、非住宅の現場において、現に間仕切り壁を切断・加工したとの事実を認めるに足りる証拠はないから、建材現場到達事実も認められない。また、石綿含有ロックウール吸音天井板㉔については、前記第3の2⑻のとおり、そもそも天井材全体で見るとロックウール吸音板が占める割合が20%程度にすぎず、被災者10が同139 建材を取り扱ったことを認めるに足る的確な証拠もないから、建材現場到達事実が認められない。その他、屋外建材については警告義務の対象とならない。)なお、同原告は、解体工として石綿粉じんばく 建材を取り扱ったことを認めるに足る的確な証拠もないから、建材現場到達事実が認められない。その他、屋外建材については警告義務の対象とならない。)なお、同原告は、解体工として石綿粉じんばく露作業に従事した旨主張するが、前述したとおり、被告企業らの警告表示義務は、解体行為に従事する建設作業従事者に対して負担するものではないから、解体工として業務をした点に関しては、同被災者との関係で主要原因建材等を認定する必要はない。 イ 石綿含有スレートボード⑮~⑲、石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓については、前記1の被災者1で述べたのと同様、被告A&AMの製品の建材現場到達事実を認めるのが相当である(被災者10が非住宅・中高層建築の現場に相当回数にわたって従事したとの事実を認めるに足りる証拠はないから、被告ニチアスの製品の建材現場到達事実は認められない。)。 ウ 小括以上より、被災者10との関係では、主要原因企業は被告A&AMと認められる。 11 原告11被災者K⑴ 石綿粉じんにばく露した作業期間被災者11(昭和18年11月11日生)は、責任期間のうち、同被災者の職歴①(昭和51年10月31日から平成16年7月21日まで〔約27年8月〕)において、約27年8月の間、大工として石綿粉じんばく露作業に従事した(甲D11の1。また、責任期間の前に約2年2月のばく露を認める。)。 ⑵ 石綿粉じんにばく露した作業の内容被災者11は、北海道の建設作業現場において、大工として、木造の個人住宅の中心に稼働し、ボード類の切断・加工を含む内装作業等に従事していた。 140 被災者11は、木造の個人住宅の解体・改修工事が多かったが、新築工事にも従事しており、取り扱った現場の数は1年間で約30件であった。 工を含む内装作業等に従事していた。 140 被災者11は、木造の個人住宅の解体・改修工事が多かったが、新築工事にも従事しており、取り扱った現場の数は1年間で約30件であった。 被災者11は、作業中にマスクを着けることはほとんどなかった。 (以上につき、甲D11の1、11の4、原告11K1本人)⑶ 主要原因建材及び主要原因企業の認定ア 上記⑴及び⑵で認定した職歴及び作業内容に照らせば、被災者11の主要原因建材となり得る建材種類は、内装材一般のうち、石綿含有スレートボード(建材種類⑮~⑲)、石綿含有けい酸カルシウム板第1種(建材種類㉓)であると認められる(被災者11は、木造の住宅が中心であり、建材種類㉒については、非住宅の現場において、現に間仕切り壁を切断・加工したとの事実を認めるに足りる証拠はないから、建材現場到達事実も認められない。また、石綿含有ロックウール吸音天井板㉔については、前記第3の2⑻のとおり、そもそも天井材全体で見るとロックウール吸音板が占める割合が20%程度にすぎず、被災者11が同建材を取り扱ったことを認めるに足る的確な証拠もないから、建材現場到達事実が認められない。 その他、屋外建材については警告義務の対象とならない。)イ 石綿含有スレートボード⑮~⑲、石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓については、前記1の被災者1で述べたのと同様、被告A&AMの製品の建材現場到達事実を認めるのが相当である(被災者11が非住宅・中高層建築の現場に相当回数にわたって従事したとの事実を認めるに足りる証拠はないから、被告ニチアスの製品の建材現場到達事実は認められない。)。 ウ 小括以上より、被災者11との関係では、主要原因企業は被告A&AMと認められる。 12 原告12被災者L⑴ 石綿粉じんに ニチアスの製品の建材現場到達事実は認められない。)。 ウ 小括以上より、被災者11との関係では、主要原因企業は被告A&AMと認められる。 12 原告12被災者L⑴ 石綿粉じんにばく露した作業期間141 被災者12(昭和26年11月12日生)は、責任期間のうち、同被災者の職歴②(ただし、始期は昭和50年1月1日として昭和53年12月23日までの約2年11月のうち、概ね1年に平均3月程度の冬季離職期間が認められるから、その4分の3相当の約2年2月)、職歴④(昭和55年5月6日から同年11月30日まで〔約6月〕)、職歴⑤(昭和55年12月31日から昭和58年3月1日までの約2年2月のうち、概ね1年に平均3月程度の冬季離職期間が認められるから、その4分の3相当の約1年7月)、職歴⑥(昭和58年4月1日から平成3年12月21日までの約8年8月のうち、概ね1年に平均3月程度の冬季離職期間が認められるから、その4分の3相当の約6年6月、職歴⑦(平成4年4月10日から平成6年12月24日までの約2年8月のうち、概ね1年に平均3月程度の冬季離職期間が認められるから、その4分の3相当の約2年)及び職歴⑧(平成7年4月1日から平成18年8月31日までの約11年5月のうち、概ね1年に平均3月程度の冬季離職期間が認められるから、その4分の3相当の約8年6月)において、約21年3月の間、大工として石綿粉じんばく露作業に従事した(甲D12の1。なお、被災者12は、冬季期間には、勤務先を退職して、別のところで大工作業等をしていた旨供述するが、勤務先やそこでの業務内容も明確ではなく、冬季期間において、勤務先を退職したにもかかわらず、北海道の建設作業現場において、新築工事に係る大工作業に従事したとは考え難い上、被災者12の供述を するが、勤務先やそこでの業務内容も明確ではなく、冬季期間において、勤務先を退職したにもかかわらず、北海道の建設作業現場において、新築工事に係る大工作業に従事したとは考え難い上、被災者12の供述を裏付ける客観的な証拠もなく、冬季離職期間は石綿粉じんにばく露した作業期間から除くこととした。また、責任期間の前に約7年3月にわたって大工としての就労歴があり、上記と同様冬季離職期間を考慮して、その4分の3相当の約5年5月を有責期間前のばく露期間と認める。)⑵ 石綿粉じんにばく露した作業の内容被災者12は、北海道の建設作業現場において、大工として、主に木造の一般住宅の新築工事に従事し、その際、内壁材、天井材などの内装材の切断142 や外壁材のサイディングの加工を行った。また、被災者12は、改修工事に従事することもあった。 被災者12は、作業の際、マスクを着けることはなかった。 (以上につき、甲D12の1、12の4の1・2、原告12L本人)⑶ 主要原因建材及び主要原因企業の認定ア 上記⑴及び⑵で認定した職歴及び作業内容に照らせば、被災者12の主要原因建材となり得る建材種類は、内装材一般のうち、石綿含有スレートボード(建材種類⑮~⑲)、石綿含有けい酸カルシウム板第1種(建材種類㉓)であると認められる(被災者12は、新築工事としては木造建築の住宅が中心であるから、耐火被覆に係る建材種類①ないし③、⑪、⑫の建材現場到達は認められない。原告は、建材種類㉒についても、非住宅の現場において、現に間仕切り壁を切断・加工したとの事実を認めるに足りる証拠はないから、建材現場到達事実も認められない。また、石綿含有ロックウール吸音天井板㉔については、前記第3の2⑻のとおり、そもそも天井材全体で見るとロックウール吸音板が占める割合が 認めるに足りる証拠はないから、建材現場到達事実も認められない。また、石綿含有ロックウール吸音天井板㉔については、前記第3の2⑻のとおり、そもそも天井材全体で見るとロックウール吸音板が占める割合が20%程度にすぎず、被災者12が同建材を取り扱ったことを認めるに足る的確な証拠もないから、建材現場到達事実が認められない。その他、屋外建材については警告義務の対象とならない。)。 イ 石綿含有スレートボード⑮~⑲、石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓については、前記1の被災者1で述べたのと同様、被告A&AMの製品の建材現場到達事実を認めるのが相当である(被災者12が非住宅・中高層建築の現場に相当回数にわたって従事したとの事実を認めるに足りる証拠はないから、被告ニチアスの製品の建材現場到達事実は認められない。)。 ウ 小括以上より、被災者12との関係では、主要原因企業は被告A&AMと認められる。 143 13 原告13被災者M⑴ 石綿粉じんにばく露した作業期間被災者13(昭和22年11月18日生)は、責任期間のうち、同被災者の職歴②(昭和50年1月1日から平成8年12月14日まで〔約21年11月〕のうち、概ね1年に平均4月程度の冬季休業期間が認められるから、その3分の2相当の約14年7月)、職歴③(平成9年2月1日から終期は平成18年8月31日まで〔約9年7月〕のうち、概ね1年に平均4月程度の冬季休業期間が認められるから、その3分の2相当の約6年4月)において、約20年11月の間、大工として石綿粉じんばく露作業に従事した(甲D13の1。また、責任期間の前に約7月(冬季休業期間として1月を控除した。)のばく露がある。)。 ⑵ 石綿粉じんにばく露した作業の内容被災者13は、北海道の建設作業現場において、 た(甲D13の1。また、責任期間の前に約7月(冬季休業期間として1月を控除した。)のばく露がある。)。 ⑵ 石綿粉じんにばく露した作業の内容被災者13は、北海道の建設作業現場において、大工として、スレートボードを切断・加工したり、墨出し作業(工事の進行に必要な線等を表示すること)に従事しており、鉄骨造の建物の新築工事の際に、吹付け作業後に、吹付け材を削ったりする作業を行うこともあった。 被災者13は、主に共同住宅、学校、店舗、事務所等の建物を中心に作業に従事しており、鉄筋コンクリート造の建物の割合が6割程度であり、鉄骨造の建物の割合は2割程度であり、木造の建物の割合は2割程度であった。 被災者13は、新築建物のみならず既存建物での改修工事にも従事していた。 被災者13は、作業中にマスクを着けることはなかった。 (以上につき、甲D13の1 、13の4、原告13M本人)⑶ 主要原因建材及び主要原因企業の認定ア 上記⑴及び⑵で認定した職歴及び作業内容に照らせば、被災者13の主要原因建材となり得る建材種類は、吹付けロックウール(建材種類②、③)、144 内装材一般のうち、石綿含有スレートボード(建材種類⑮~⑲)、石綿含有けい酸カルシウム板第1種(建材種類㉓)であると認められる(石綿含有けい酸カルシウム板第2種(建材種類⑪)、石綿含有耐火被覆板(建材種類⑫)については、被災者13自身が取り扱っていた回数が少なった旨供述しており(原告13M本人16頁、17頁)、建材現場到達事実は認められない。また、石綿含有保温材(建材種類⑦、⑩)、石綿セメント円筒㊶については、前記⑵の被災者13の作業内容に照らしても、これらを切断等する現場が相当数に及んだとは認められず、建材現場到達事実が認められない。また、石綿含有 材(建材種類⑦、⑩)、石綿セメント円筒㊶については、前記⑵の被災者13の作業内容に照らしても、これらを切断等する現場が相当数に及んだとは認められず、建材現場到達事実が認められない。また、石綿含有押出成形セメント板㉒については、前記第3の2⑹のとおり、外壁材として使用される割合が高く、プレカットされた状態で現場に納入されていたものであり、被災者13において現に間仕切り壁を切断・加工したとの事実を認めるに足りる証拠はないから、建材現場到達事実が認められない。また、石綿含有ロックウール吸音天井板㉔については、前記第3の2⑻のとおり、そもそも天井材全体で見るとロックウール吸音板が占める割合が20%程度にすぎず、被災者13が同建材を取り扱ったことを認めるに足る的確な証拠もないから、建材現場到達事実が認められない。混和材㊸については、前記⑵の被災者13の作業内容に照らしても、混和材を取り扱う現場が相当数あったとは認められず、建材現場到達が認められない。)。 イ 吹付けロックウール(建材種類②、③)については、前記第3の2⑴ウのとおり、被告ニチアスが昭和49年、被告A&AMが昭和50年、被告太平洋セメントが昭和53年には石綿吹付ロックウール②の製造をそれぞれ中止し、吹付けロックウール②、③は漸次ノンアス化が進んでいたことが認められるところ、被災者13が取り扱った鉄骨造の建物の割合は約2割程度であり、新築建物のみならず、既存建物での改修工事にも従事していたことからすると、昭和50年から昭和53年にかけて、鉄骨造の建145 物の新築工事の現場数が相当程度に及ぶと認めるに足りる証拠はなく、被災者13との関係では、吹付ロックウール②、③の建材現場到達事実を認めるのは困難である。 ウ 石綿含有スレートボード⑮~⑲、石綿含有けい酸カルシウム 数が相当程度に及ぶと認めるに足りる証拠はなく、被災者13との関係では、吹付ロックウール②、③の建材現場到達事実を認めるのは困難である。 ウ 石綿含有スレートボード⑮~⑲、石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓については、前記1の被災者1で述べたのと同様、被告A&AMの製品の建材現場到達事実を認めるのが相当である(被災者13が非住宅・中高層建築の現場に相当回数にわたって従事したとの事実を認めるに足りる証拠はないから、被告ニチアスの製品の建材現場到達事実は認められない。)。 エ 小括以上より、被災者13との関係では、主要原因企業は被告A&AMと認められる。 14 原告14被災者N⑴ 石綿粉じんにばく露した作業期間被災者14(昭和21年7月13日生)は、責任期間のうち、同被災者の職歴②(ただし、始期は昭和50年1月1日として昭和54年3月1日まで〔約4年2月〕)、職歴③(昭和54年4月30日から昭和57年4月1日まで〔約2年11月〕)、職歴④(昭和57年5月31日から昭和58年5月17日まで〔約11月〕)、職歴⑤(昭和58年6月30日から昭和60年5月1日まで〔約1年10月〕)、職歴⑥(昭和60年6月30日から昭和61年5月1日まで〔約10月〕)及び職歴⑦(昭和61年9月30日から平成3年6月29日まで〔約4年8月〕)において、約15年4月の間、内装工として石綿粉じんばく露作業に従事した(甲D14の1。また、責任期間の前に約8年3月のばく露がある。)。 ⑵ 石綿粉じんにばく露した作業の内容被災者14は、北海道の建設作業現場において、内装工として、スレートボード等の内装材を切断・加工し、スナック等の飲食店のカウンターの内側146 に貼り付けるなどの作業に従事していた。 また、スレートボードを貼り付け 設作業現場において、内装工として、スレートボード等の内装材を切断・加工し、スナック等の飲食店のカウンターの内側146 に貼り付けるなどの作業に従事していた。 また、スレートボードを貼り付ける際には、下地を入れるなどしており、その際に壁に吹き付けられた石綿をカッターで取り除くこともしていた。 被災者14は、鉄筋コンクリート造、鉄骨造、木造の建物のいずれの現場にも従事していたが、鉄筋コンクリート造の建物が多く、新築建物のみならず既存建物での改修工事にも従事していた。 被災者14は、作業の際、マスクを着けることはなかった。 (以上につき、甲D14の1、14の4、原告14N本人)⑶ 主要原因建材及び主要原因企業の認定ア 上記⑴及び⑵で認定した職歴及び作業内容に照らせば、被災者14の主要原因建材となり得る建材種類は、吹付けロックウール(建材種類②、③)、石綿含有スレートボード(建材種類⑮~⑲)、石綿含有けい酸カルシウム板第1種(建材種類㉓)と認められる(石綿含有けい酸カルシウム板第2種(建材種類⑪)、石綿含有耐火被覆板(建材種類⑫)については、被災者14自身が取り扱っていた記憶がない旨供述しており(原告14N本人20頁)、建材現場到達事実は認められない。また、石綿含有押出成形セメント板㉒については、前記第3の2⑹のとおり、外壁材として使用される割合が高く、プレカットされた状態で現場に納入されていたものであり、被災者14において現に間仕切り壁を切断・加工したとの事実を認めるに足りる証拠はないから、建材現場到達事実が認められない。石綿含有ロックウール吸音天井板㉔については、前記第3の2⑻のとおり、そもそも天井材全体で見るとロックウール吸音板が占める割合が20%程度にすぎず、被災者14が同建材を取り扱ったことを認め れない。石綿含有ロックウール吸音天井板㉔については、前記第3の2⑻のとおり、そもそも天井材全体で見るとロックウール吸音板が占める割合が20%程度にすぎず、被災者14が同建材を取り扱ったことを認めるに足る的確な証拠もないから、建材現場到達事実が認められない。)。 イ 吹付けロックウール(建材種類②、③)については、前記第3の2⑴ウのとおり、被告ニチアスが昭和49年、被告A&AMが昭和50年、被告147 太平洋セメントが昭和53年には石綿吹付ロックウール②の製造をそれぞれ中止し、吹付けロックウール②、③は漸次ノンアス化が進んでいたことが認められるところ、被災者14は、鉄筋コンクリート造の建物を取り扱うことが多く、新築建物のみならず既存建物での改修工事にも従事しており、昭和50年から昭和53年にかけて、鉄骨造の建物の新築工事の現場数が相当程度に及ぶと認めるに足りる証拠はなく、被災者14との関係では、吹付けロックウール②、③の建材現場到達事実を認めるのは困難である。 ウ 石綿含有スレートボード⑮~⑲、石綿含有けい酸カルシウム板第1種㉓については、前記1の被災者1で述べたのと同様、被告A&AMの製品の建材現場到達事実を認めるのが相当である(被災者14が非住宅・中高層建築の現場に相当回数にわたって従事したとの事実を認めるに足りる証拠はないから、被告ニチアスの製品の建材現場到達事実は認められない。)。 エ 小括以上より、被災者14との関係では、主要原因企業は被告A&AMと認められる。 第4節 主要原因企業が負うべき責任について(責任論としての寄与割合)第1 総論1 前記第3節第1 のとおり、主要原因企業の石綿含有建材から発散した石綿粉じんが本件被災者の石綿関連疾患のり患に寄与したとして、民法719条1項後段 責任論としての寄与割合)第1 総論1 前記第3節第1 のとおり、主要原因企業の石綿含有建材から発散した石綿粉じんが本件被災者の石綿関連疾患のり患に寄与したとして、民法719条1項後段の類推適用によって各主要原因企業の共同不法行為責任が認められる場合においても、共同不法行為責任を認められた被告は、自らの行為が損害の発生に与えた寄与度に応じた範囲での損害賠償責任を負うものと解される。 2 そして、前記第2節のとおり、被告らが責任を負う期間(有責期間)は、昭和50年1月1日から平成18年3月31日までと認められるところ、前記第3節第4のとおり、本件被災者の中には有責期間の前にも石綿粉じんばく露作148 業に従事していた者が含まれている。 また、前記第1節第1で認めた建設作業における石綿粉じんの発散状況に加え、前期第3節第4のとおりの本件被災者のそれぞれの具体的な作業状況を考慮すると、本件被災者は、自らの作業やその周辺作業によって生じた石綿粉じんにばく露することがあったほか、同じ建設現場で他の者が行った作業によって生じた石綿粉じんから広く間接ばく露することもあったと認められる。そして、前記第3節第1で述べたシェアを用いた確率計算による建材現場到達事実の認定手法の性質に照らせば、本件被災者の現場に到達した建材の中には、主要原因企業以外の建材メーカーが製造・販売した石綿含有建材が含まれているというべきであり、これらの建材の切断・加工等や間接ばく露も本件被災者の個々の石綿関連疾患に寄与したものと認めるのが相当である。 以上によれば、本件被災者が主要原因建材を取り扱ったことによる石綿粉じんのばく露量は、①期間の観点、②他の企業による寄与の観点から、各自の石綿粉じんのばく露量全体の一部にとどまると認められ、個々の被災者の作業期 、本件被災者が主要原因建材を取り扱ったことによる石綿粉じんのばく露量は、①期間の観点、②他の企業による寄与の観点から、各自の石綿粉じんのばく露量全体の一部にとどまると認められ、個々の被災者の作業期間・作業内容に照らして、これらの寄与度を検討する必要がある(以下、上記①の観点による減額を「期間減額」、上記②の観点による減額を「他原因減額」ということがある。)。 その他、被告らの中には、被告らの責任期間と主要原因建材の製造期間の重複期間の長短に応じた寄与度減責もされるべきであるなどと主張する企業もあるが、主要原因建材は、各建材の製造・販売の期間と各被災者の石綿粉じんばく露期間との重なり合いのみならず、各被災者が従事した作業内容を踏まえて認定され、これらの事情を基に民法719条1項後段の類推適用によって上記①及び②の寄与度に応じて損害賠償責任を連帯して負うものであるから、上記主張は採用できない。 3 期間減額については、有責期間の前に石綿粉じんにばく露した期間に応じて寄与度を検討することになるが、前記第1 節第2のとおり、昭和48年7月に149 は労働省労働基準局長が昭和48年通達を発出し、石綿が肺がん、中皮腫等を発生させることが明らかとなったこと等により、各国の規制においても気中石綿粉じん濃度を抑制する措置が強化されつつあることを理由として、石綿の抑制濃度を5本/㎤と指導することを指示したことに加え、昭和49年には、日本産業衛生学会が、他国の許容濃度の数値を踏まえて、昭和40年の勧告に示された石綿粉じんの許容濃度の数値を厳格化するなど、規制強化が進められてきたことが認められるところ、こうした事実経過等を踏まえると、有責期間の前の時期においては、石綿の危険性に対する認識もより一層希薄な時期で、間接的にばく露する事態も相当数存在し 規制強化が進められてきたことが認められるところ、こうした事実経過等を踏まえると、有責期間の前の時期においては、石綿の危険性に対する認識もより一層希薄な時期で、間接的にばく露する事態も相当数存在したと認められるほか、石綿吹付け石綿①を製造・販売していた企業は、昭和50年頃まで当該製品の製造をしていたことからすると(甲C29の1~8)、有責期間の前の時期においては、石綿吹付け材①のように、発がん性の高いクロシドライト等が使われた石綿含有建材も多かったと認められる。 したがって、期間減額に当たっては、有責期間における石綿粉じんばく露期間と有責期間の前の石綿粉じんばく露期間の割合を考慮しつつも、上記のような有責期間の前の石綿粉じんばく露の性質に留意をする必要がある(時代を下るに連れて建材のノンアス化が進められると共に、建設作業現場における石綿粉じんの防止措置も定着していったと考えられることから、平成18年9月以降の現場作業については、石綿粉じん防止措置をせずに解体作業に従事したなどの特段の事情が証拠によって認められない限り、石綿粉じんばく露を認めない。)。 他原因減額については、個々の被災者の作業内容を踏まえて検討する必要があるものの、有責期間における石綿粉じんばく露期間が長くなれば、現に取り扱った、あるいは間接ばく露の原因となった建材の種類も多くなると認められることや、被告らの警告義務の対象にならない解体・改修作業に従事し、これによる石綿粉じんばく露が認められる場合には、これらの事情を踏まえて寄与150 度を認めるのが相当である。 4 以上の諸点を踏まえ、後記第2において、被告らが責任を負う本件被災者ごとに責任割合を検討する。なお、本件被災者の作業期間及び作業内容は、いずれも前記第3節第4の各認定事実をに基づくものであり、例え 以上の諸点を踏まえ、後記第2において、被告らが責任を負う本件被災者ごとに責任割合を検討する。なお、本件被災者の作業期間及び作業内容は、いずれも前記第3節第4の各認定事実をに基づくものであり、例えば解体・改修作業に従事していたか否かは、証拠から認められる作業内容に照らして他原因減額を認められる程度のものか否かを評価した上で認定することとし、単に原告らが別紙9において解体・改修作業に「有」と主張していることのみをもって有意に減額するものではない。 第2 各論1 原告1(被災者1A)⑴ 期間減額被災者1においては、有責期間において約31年6月の石綿粉じんばく露が認められるのに対し、有責期間前において約14年7月の石綿粉じんばく露が認められるから、期間の観点による各主要原因企業の寄与の割合を約7割と認める。 ⑵ 他原因減額被災者1においては、石綿粉じんばく露期間が長く、改修作業にも従事していたと認められるから、他原因の観点による各主要原因企業の寄与の割合を約6割と認める。 ⑶ 小括上記⑴及び⑵を踏まえ、被災者1の作業に関する事情を総合考慮すれば、各主要原因企業の寄与度は4割と認めるのが相当である。 2 原告2(被災者2B)⑴ 期間減額被災者2においては、有責期間において約24年3月の石綿粉じんばく露が認められるのに対し、有責期間前において約5年7月の石綿粉じんばく露151 が認められるから、期間の観点による各主要原因企業の寄与の割合を約8割と認める。 ⑵ 他原因減額被災者2においては、石綿粉じんばく露期間が長く、改修作業及び解体作業にも従事していたと認められるから、他原因の観点による各主要原因企業の寄与の割合を約6割と認める。 ⑶ 小括上記⑴及び⑵を踏まえ、被災者 は、石綿粉じんばく露期間が長く、改修作業及び解体作業にも従事していたと認められるから、他原因の観点による各主要原因企業の寄与の割合を約6割と認める。 ⑶ 小括上記⑴及び⑵を踏まえ、被災者2の作業に関する事情を総合考慮すれば、各主要原因企業の寄与度は5割と認めるのが相当である。 3 原告3(被災者3C)⑴ 期間減額被災者3においては、有責期間において約3年8月の石綿粉じんばく露が認められるのに対し、有責期間前において約6年4月の石綿粉じんばく露が認められるから、期間の観点による被告A&AMの寄与の割合を約5割と認める。 ⑵ 他原因減額被災者3においては、石綿粉じんばく露期間が長いとはいえず、改修工事に関与した程度を考慮し、他原因の観点による被告A&AMの寄与の割合を約8割と認める。 ⑶ 小括上記⑴及び⑵を踏まえ、被災者3の作業に関する事情を総合考慮すれば、被告A&AMの寄与度は4割と認めるのが相当である。 4 原告4(被災者4D)⑴ 期間減額被災者4においては、有責期間において約25年3月の石綿粉じんばく露が認められるのに対し、有責期間前において約5年10月の石綿粉じんばく152 露が認められるから、期間の観点による各主要原因企業の寄与の割合を約8割と認める。 ⑵ 他原因減額被災者4においては、石綿粉じんばく露期間が長く、取り扱った建材の種類も多いと認められるほか、改修作業にも従事していたと認められるから、他原因の観点による各主要原因企業の寄与の割合を約6割と認める。 ⑶ 小括上記⑴及び⑵を踏まえ、被災者4の作業に関する事情を総合考慮すれば、各主要原因企業の寄与度は5割と認めるのが相当である。 5 原告5(被災者5E)⑴ 期間減額被災者5におい ⑶ 小括上記⑴及び⑵を踏まえ、被災者4の作業に関する事情を総合考慮すれば、各主要原因企業の寄与度は5割と認めるのが相当である。 5 原告5(被災者5E)⑴ 期間減額被災者5においては、有責期間以外の石綿粉じんばく露を踏まえた寄与度を検討すべき理由は認められない。 ⑵ 他原因減額被災者5においては、石綿粉じんばく露期間が長く、改修作業にも従事していたと認められるから、他原因の観点による各主要原因企業の寄与の割合を約6割と認める。 ⑶ 小括上記⑴及び⑵を踏まえ、被災者5の作業に関する事情を総合考慮すれば、各主要原因企業の寄与度は6割と認めるのが相当である。 6 原告7(被災者7G)⑴ 期間減額被災者7においては、有責期間において約16年9月の石綿粉じんばく露が認められるのに対し、有責期間前において約11年8月の石綿粉じんばく露が認められるから、期間の観点による各主要原因企業の寄与の割合を約6割と認める。 153 ⑵ 他原因減額被災者7においては、石綿粉じんばく露期間が長く、改修作業にも従事していたと認められるから、他原因の観点による各主要原因企業の寄与の割合を約7割と認める。 ⑶ 小括上記⑴及び⑵を踏まえ、被災者7の作業に関する事情を総合考慮すれば、各主要原因企業の寄与度は4割と認めるのが相当である。 7 原告8(被災者8H)⑴ 期間減額被災者8においては、有責期間において約25年11月の石綿粉じんばく露が認められるのに対し、有責期間の前において約4年7月の石綿粉じんばく露が認められるから、期間の観点による各主要原因企業の寄与の割合を約8割と認める。 ⑵ 他原因減額被災者8においては、石綿粉じんばく露期間が長く、改修作業に主に従事していたと 粉じんばく露が認められるから、期間の観点による各主要原因企業の寄与の割合を約8割と認める。 ⑵ 他原因減額被災者8においては、石綿粉じんばく露期間が長く、改修作業に主に従事していたと認められるから、他原因の観点による各主要原因企業の寄与の割合を約6割と認める。 ⑶ 小括上記⑴及び⑵を踏まえ、被災者8の作業に関する事情を総合考慮すれば、各主要原因企業の寄与度は5割と認めるのが相当である。 8 原告9(被災者9I)⑴ 期間減額被災者9においては、有責期間において約20年の石綿粉じんばく露が認められるのに対し、有責期間前において約2年10月の石綿粉じんばく露が認められるから、期間の観点による被告A&AMの寄与の割合を約8割と認める。 154 ⑵ 他原因減額被災者9においては、石綿粉じんばく露期間が長く、改修作業や解体工事にも従事していたと認められるから、他原因の観点による被告A&AMの寄与の割合を約5割と認める。 ⑶ 小括上記⑴及び⑵を踏まえ、被災者9の作業に関する事情を総合考慮すれば、被告A&AMの寄与度は4割と認めるのが相当である。 9 原告10(被災者10J)⑴ 期間減額被災者10においては、有責期間以外の石綿粉じんばく露を踏まえた寄与度を検討すべき理由は認められない。 ⑵ 他原因減額被災者10においては、石綿粉じんばく露期間が長いとはいえない。一方、大工として稼働していた際に改修工事にも従事したほか、平成20年から令和元年にかけて解体工として稼働しており、これらの作業に従事したことに起因するばく露が新築工事の作業の際のばく露の量を上回ると認められるから、他原因の観点による被告A&AMの寄与割合は約4割と認める。 ⑶ 小括上記⑴及び⑵を踏 これらの作業に従事したことに起因するばく露が新築工事の作業の際のばく露の量を上回ると認められるから、他原因の観点による被告A&AMの寄与割合は約4割と認める。 ⑶ 小括上記⑴及び⑵を踏まえ、被災者10の作業に関する事情を総合考慮すれば、被告A&AMの寄与度は4割と認めるのが相当である。 10 原告11(被災者11K)⑴ 期間減額被災者11においては、有責期間において約27年8月の石綿粉じんばく露が認められるのに対し、有責期間の前において約2年2月の石綿粉じんばく露が認められるから、期間の観点による被告A&AMの寄与の割合を約9割と認める。 155 ⑵ 他原因減額被災者11においては、石綿粉じんばく露期間が長く、改修作業や解体工事に主に従事していたと認められるから、他原因の観点による被告A&AMの寄与の割合を約4割と認める。 ⑶ 小括上記⑴及び⑵を踏まえ、被災者11の作業に関する事情を総合考慮すれば、被告A&AMの寄与度は3割5分と認めるのが相当である。 11 原告12(被災者12L)⑴ 期間減額被災者12においては、有責期間において約21年3月の石綿粉じんばく露が認められるのに対し、有責期間の前において約5年5月の石綿粉じんばく露が認められるから、期間の観点による被告A&AMの寄与の割合を約8割と認める。 ⑵ 他原因減額被災者12においては、石綿粉じんばく露期間が長く、改修工事や解体工事にも従事していたと認められるから、他原因の観点による被告A&AMの寄与の割合を約5割と認める。 ⑶ 小括上記⑴及び⑵を踏まえ、被災者12の作業に関する事情を総合考慮すれば、被告A&AMの寄与度は4割と認めるのが相当である。 12 原告13(被災者13M)⑴ 割と認める。 ⑶ 小括上記⑴及び⑵を踏まえ、被災者12の作業に関する事情を総合考慮すれば、被告A&AMの寄与度は4割と認めるのが相当である。 12 原告13(被災者13M)⑴ 期間減額被災者13においては、有責期間において約20年11月の石綿粉じんばく露が認められるのに対し、有責期間の前において約7月の石綿粉じんばく露が認められるから、期間の観点による被告A&AMの寄与の割合を約9割と認める。 156 ⑵ 他原因減額被災者13においては、石綿粉じんばく露期間が長く、改修作業にも従事していたと認められるから、他原因の観点による被告A&AMの寄与の割合を約6割と認める。 ⑶ 小括上記⑴及び⑵を踏まえ、被災者13の作業に関する事情を総合考慮すれば、被告A&AMの寄与度は5割5分と認めるのが相当である。 13 原告14(被災者14N)⑴ 期間減額被災者14においては、有責期間において約15年4月の石綿粉じんばく露が認められるのに対し、有責期間の前において約8年3月の石綿粉じんばく露が認められるから、期間の観点による被告A&AMの寄与の割合を約6割と認める。 ⑵ 他原因減額被災者14においては、石綿粉じんばく露期間が長く、改修・解体作業にも従事していたことが認められるから、他原因の観点による被告A&AMの寄与の割合を約5割と認める。 ⑶ 小括上記⑴及び⑵を踏まえ、被災者14の作業に関する事情を総合考慮すれば、被告A&AMの寄与度は3割と認めるのが相当である。 第5節 損害について第1 損害額の算定に関する基本的な考え方1 基準となる慰謝料額⑴ 本件被災者の各労災記録、原告ら提出の陳述書並びに本件訴訟における各証人の証言及び各本人尋問の結果によれば、本 損害について第1 損害額の算定に関する基本的な考え方1 基準となる慰謝料額⑴ 本件被災者の各労災記録、原告ら提出の陳述書並びに本件訴訟における各証人の証言及び各本人尋問の結果によれば、本件被災者は、主要原因建材より生じた石綿粉じんのばく露によって肺がんや中皮腫にり患し、咳、痰、呼157 吸困難等の重篤な肺機能障害に苛まれ、従前の就労ができなくなるのみならず、個々人の意志・選好に沿った社会活動や従前の日常生活そのものを送ることができなくなり、肺の摘出手術や抗がん剤・放射線治療を受けたりするなど、その診療においても重大な精神的・身体的苦痛を余儀なくされたものと認められ、その病状は極めて深刻というほかない。本件被災者のうち、石綿関連疾患を原因として死に至った者については、これらの苦痛に苛まれながら最期を迎えたものと認められる。 ⑵ 原告らが本件損害賠償請求の慰謝料に包括的に含まれる個々の財産的損害については慰謝料算定に当たって考慮事由の一部とすることを超えて直接加算するのは困難であると解されるほか、前記第2章第2節(前提事実)のとおり、労災保険給付等を受給している被災者ないしその承継人もいることを最大限考慮しても、上記のような石綿関連疾患に伴う病状の重篤さを踏まえると、基本となる慰謝料の額は、石綿関連疾患により死亡した場合は2700万円、肺がん又は中皮腫にり患した場合は2400万円とするのが相当であると判断する。 2 喫煙による損害額の修正前記第2章第2節第3の2のとおり、喫煙歴も石綿粉じんばく露歴もない人の発がんリスクを1とすると、喫煙歴があり石綿粉じんばく露歴がない人では10.85倍、喫煙歴がなく石綿粉じんばく露歴がある人では5.17倍、喫煙歴も石綿粉じん曝露歴もある人では53.24倍になると報告されており、喫 とすると、喫煙歴があり石綿粉じんばく露歴がない人では10.85倍、喫煙歴がなく石綿粉じんばく露歴がある人では5.17倍、喫煙歴も石綿粉じん曝露歴もある人では53.24倍になると報告されており、喫煙が石綿を原因とする肺がんのり患リスクを相乗的に高めていることは、明らかといえる。したがって、損害の公平な分担の見地に照らし、肺がんにり患した被災者のうち喫煙歴がある者の慰謝料額を定めるに当たっては、喫煙歴があることを斟酌するのが相当である(民法722条2項類推適用)。 もっとも、個々の喫煙量や喫煙期間がどの程度肺がんの発症に影響を与えるかは不明瞭であること、喫煙自体は社会的に許容された嗜好であることを考慮158 すれば、肺がんにり患した被災者の喫煙歴による慰謝料額については、一律1割を減ずることとするのが相当である。 3 損害の填補⑴ 弁論の全趣旨によれば、国が、訴訟上の和解により、別紙12「和解一覧表」の「和解日」欄記載の日に、同「原告名」欄記載の原告との間で、「和解金額(損害賠償額)」欄記載の額を支払うとの内容の和解をし、同「和解金受領日」欄記載の日に所定の和解金(損害賠償金)を支払ったこと、これらの和解はいずれも建設アスベスト訴訟原告団、建設アスベスト訴訟全国弁護団会議及び建設アスベスト訴訟全国連絡会並びに国(厚生労働大臣)との間で令和3年5月18日に交わされた建設アスベスト訴訟に関する基本合意書(以下、単に「基本合意書」という。)に基づくものであることが、それぞれ認められる。 ⑵ そして、基本合意書の趣旨に照らせば、同和解において支払うものとされた慰謝料は、いずれも石綿粉じんばく露によって本件被災者に生じた損害をてん補することを目的とするものと解されるから、個々の被災者の慰謝料請求権は、支払を受けた限度で消滅す 解において支払うものとされた慰謝料は、いずれも石綿粉じんばく露によって本件被災者に生じた損害をてん補することを目的とするものと解されるから、個々の被災者の慰謝料請求権は、支払を受けた限度で消滅するというべきである。 他方、国の労働安全衛生法に基づく規制権限の不行使と主要原因企業の警告義務違反行為は、それぞれ性質の異なる責任原因であり、国の規制権限の不行使によって惹起された石綿粉じんばく露と主要原因企業の警告義務違反によって惹起された石綿粉じんばく露は厳密に重複するものでもないことからすれば、共同不法行為が成立するとは解し難い。したがって、上記⑴の和解における国の慰謝料支払義務と被告らが負担する慰謝料支払義務は当然に(不真正)連帯債務の関係にあるとは認められない。 そうすると、損害の公平な分担という見地からしても、上記⑴の和解に基づき国が支払った慰謝料額は、本件被災者又はその承継人の寄与度減額前の損害額から控除すべきであり、控除後の損害額が、被告らが賠償すべき損害159 額を下回らない限りは被告らが賠償すべき損害額に影響しないものと解するのが相当である。ただし、上記⑴の和解においては、遅延損害金について特段の定めはされておらず、別紙12の「和解金額(損害賠償額)」欄の金額は慰謝料として支払うものと明示されていることに鑑みれば、その支払は個々の慰謝料の元本に充当され、上記⑴の和解の時点で発生した遅延損害金請求権には充当されないというべきである。 4 弁護士費用・遅延損害金の起算日本件に現れた一切の事情を考慮すると、被告らの責任と相当因果関係のある弁護士費用としては、それぞれ認容すべき慰謝料額の約1割に相当する金額と認めることが相当である。 また、被告らの各損害賠償債務に係る遅延損害金については、本件被災者が 任と相当因果関係のある弁護士費用としては、それぞれ認容すべき慰謝料額の約1割に相当する金額と認めることが相当である。 また、被告らの各損害賠償債務に係る遅延損害金については、本件被災者が石綿関連疾患を発症し、療養を開始した時点をもって損害が発生したものと認め、同時点から遅滞の責任があると解するのが相当である。 第2 本件被災者の慰謝料額等1 原告1(被災者1A)⑴ 石綿関連疾患の発症被災者1は、石綿粉じんばく露作業に従事した結果、平成24年9月19日、石綿を原因とする肺がんを発症し、同日から療養を開始した(甲D1の1。被災者1の石綿粉じんばく露に係る期間・作業内容のほか、胸膜プラーク所見があることなどに照らせば、石綿粉じんばく露と肺がんの発症との間に相当因果関係を認めるのが相当である。)。 ⑵ 被災者1の死亡等同被災者は、令和5年9月9日、新型コロナウィルス肺炎により死亡した(甲D1の2の3)。なお、直接の死因は、新型コロナウィルス肺炎であるが、その部位等に照らすと、同被災者が肺がんにり患していたことが死亡の結論に大きな影響を与えていたと考えられるところであり、同被災者の死亡160 は石綿粉じんばく露との間で相当因果関係が認められる。 原告1は同被災者の妻であり、訴外A2、訴外A3はいずれも同被災者の子であるが、令和6年2月9日の遺産分割協議により、原告1A1が本件損害賠償請求権を相続することを合意した(甲D1の3)。 ⑶ 慰謝料額ア 基準慰謝料額 2700万円イ 寄与度による限定 ×0.4ウ 喫煙歴による修正(甲D1の4の2〔3頁〕) ×0.9エ 上記修正後の慰謝料額 972万円オ 損害の填補2700万円から和解金1035万円を控除した残額は1665万円であり、上記小 ウ 喫煙歴による修正(甲D1の4の2〔3頁〕) ×0.9エ 上記修正後の慰謝料額 972万円オ 損害の填補2700万円から和解金1035万円を控除した残額は1665万円であり、上記小計に影響しない。 カ 弁護士費用 97万2000円⑷ 認容額1069万2000円及びこれに対する平成24年9月19日(療養開始日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金2 原告2(被災者2B)⑴ 石綿関連疾患の発症被災者2は、石綿粉じんばく露作業に従事した結果、平成27年11月10日、石綿を原因とする中皮腫を発症し、同日から療養を開始した(甲D2の1)。 ⑵ 被災者の死亡等同被災者は、令和4年12月28日、中皮腫により死亡した(甲D2の3)。 原告2は同被災者の子であり、訴外B2は同被災者の妻であり、訴外B3は被災者の子であるが、令和5年12月10日の遺産分割協議により、原告2B1が本件損害賠償請求権を相続することを合意した(甲D2の3)。 161 ⑶ 慰謝料額ア 基準慰謝料額 2700万円イ 寄与度による限定 ×0.5ウ 上記修正後の慰謝料額 1350万円エ 損害の填補2700万円から和解金1150万円を控除した残額は1550万円であり、上記小計に影響しない。 オ 弁護士費用 135万円⑷ 認容額前記⑶慰謝料及び弁護士費用は合計1485万円であるが、1430万円の限度で一部請求している(別紙3)。 したがって、認容額は1430万円及びこれに対する平成27年11月10日(療養開始日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金に限られる。 3 原告3(被災者3C)⑴ 石綿関連疾患の発症被災者3は、石綿粉じんばく露作業に従事した結果、平成28年2月 療養開始日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金に限られる。 3 原告3(被災者3C)⑴ 石綿関連疾患の発症被災者3は、石綿粉じんばく露作業に従事した結果、平成28年2月10日、石綿を原因とする中皮腫を発症し、同日から療養を開始した(甲D3の1)。 ⑵ 被災者の死亡等同被災者は、平成30年3月21日、中皮腫により死亡した(甲D2の3)。 原告3は同被災者の妻であり、訴外C3、訴外C4及び訴外C2は被災者の子であるが、令和3年10月7日の遺産分割協議により、原告3C1が本件損害賠償請求権を相続することを合意した(甲D3の3)。 ⑶ 慰謝料額ア 基準慰謝料額 2700万円162 イ 寄与度による限定 ×0.4ウ 上記修正後の慰謝料額 1080万円エ 損害の填補2700万円から和解金1300万円を控除した残額は1400万円であり、上記小計に影響しない。 オ 弁護士費用 108万円⑷ 認容額1188万円及びこれに対する平成28年2月10日(療養開始日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金4 原告4(被災者4D)⑴ 石綿関連疾患の発症被災者4は、石綿粉じんばく露作業に従事した結果、平成28年7月5日、石綿を原因とする肺がんを発症し、同日から療養を開始した(甲D4の1。 被災者4の石綿粉じんばく露に係る期間・作業内容のほか、広範囲な胸膜プラーク所見があることが認められることに照らせば、石綿粉じんばく露と肺がんの発症との間に相当因果関係を認めるのが相当である。)。 ⑵ 慰謝料額ア 基準慰謝料額 2400万円イ 寄与度による限定 ×0.5ウ 喫煙歴による修正(甲D4の4〔7頁〕) ×0.9エ 上記修正後の慰謝料額 1080万円オ 損害の填補 ⑵ 慰謝料額ア 基準慰謝料額 2400万円イ 寄与度による限定 ×0.5ウ 喫煙歴による修正(甲D4の4〔7頁〕) ×0.9エ 上記修正後の慰謝料額 1080万円オ 損害の填補2400万円から和解金1035万円を控除した残額は1365万円であり、上記小計に影響しない。 カ 弁護士費用 108万円⑶ 認容額163 1188万円及びこれに対する平成28年7月5日(療養開始日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金5 原告5(被災者5E)⑴ 石綿関連疾患の発症被災者5は、石綿粉じんばく露作業に従事した結果、令和元年11月11日、石綿を原因とする肺がんを発症し、同日から療養を開始した(甲D5の1。被災者5の石綿粉じんばく露に係る期間・作業内容のほか、広範囲な胸膜プラーク所見があることなどに照らせば、石綿粉じんばく露と肺がんの発症との間に相当因果関係を認めるのが相当である。)。 ⑵ 慰謝料額ア 基準慰謝料額 2400万円イ 寄与度による限定 ×0.6ウ 喫煙歴による修正(甲D5の4〔7頁〕) ×0.9エ 上記修正後の慰謝料額 1296万円オ 損害の填補2400万円から和解金1035万円を控除した残額は1365万円であり、上記小計に影響しない。 カ 弁護士費用 129万6000円⑶ 認容額1425万6000円及びこれに対する令和元年11月11日(療養開始日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金6 原告7(被災者7G)⑴ 石綿関連疾患の発症被災者7は、石綿粉じんばく露作業に従事した結果、令和元年5月21日、石綿を原因とする中皮腫を発症し、同日から療養を開始した (甲D7の1)。 ⑵ 被災者の死亡等164 同被災者は、 症被災者7は、石綿粉じんばく露作業に従事した結果、令和元年5月21日、石綿を原因とする中皮腫を発症し、同日から療養を開始した (甲D7の1)。 ⑵ 被災者の死亡等164 同被災者は、令和元年8月16日、中皮腫により死亡した(甲Dの7の2の3)。 被災者7(G)の妻のG4は、同被災者の妻であり、原告7-2G1、原告7-3G2及び原告7-4G3はいずれも同被災者の子であり、被災者7に係る本件損害賠償請求権について、G4が2分の1を、原告7-2G1が6分の1を、原告7-3G2が6分の1を、原告7-4G3が6分の1をそれぞれ相続した。 また、G4は、本件訴訟の原告であったが、令和6年7月15日に死亡した。原告7-2G1、原告7-3G2及び原告7-4G3はいずれもG4の子であるが、G4に係る本件損害賠償請求権について、原告7-2G1が3分の1を、原告7-3G2が3分の1を、原告7-4G3が3分の1をそれぞれ相続した(甲D7の3)。 ⑶ 慰謝料額ア 基準慰謝料額 2700万円相続分に応じた額G4 1350万円原告7-2G1、原告7-3G2及び原告7-4G3各450万円イ 寄与度による限定 ×0.4ウ 上記修正後の慰謝料額 1080万円相続分に応じた額G4 540万円原告7-2G1、原告7-3G2及び原告7-4G3各180万円エ 損害の填補G4につき1350万円から相続分に応じた和解金650万円を控除165 した残額は700万円、原告7-2G1450万円から相続分に応じた和解金216万6668円を控除した残額は233万3332円であり、原告7-3G2及び原告7-4G3につき、それぞれ450万円から相続分に応じた和解金216万6 -2G1450万円から相続分に応じた和解金216万6668円を控除した残額は233万3332円であり、原告7-3G2及び原告7-4G3につき、それぞれ450万円から相続分に応じた和解金216万6666円を控除した残額は233万3334円であり、いずれも上記ウの小計に係る相続分に応じた損害額に影響しない。 オ G4の死亡に伴う相続原告7-2G1、原告7-3G2及び原告7-4G3各180万円カ 弁護士費用原告7-2G1、原告7-3G2及び原告7-4G3につき、それぞれ36万円と認める。 ⑷ 認容額原告7-2G1、原告7-3G2及び原告7-4G3それぞれ396万円及びこれに対する令和元年5月21日(療養開始日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金7 原告8(被災者8H)⑴ 石綿関連疾患の発症被災者8は、石綿粉じんばく露作業に従事した結果、令和元年11月14日、石綿を原因とする中皮種を発症し、同日から療養を開始した(甲D8の1)。 ⑵ 慰謝料額ア 基準慰謝料額 2400万円イ 寄与度による限定 ×0.5ウ 上記修正後の慰謝料額 1200万円エ 損害の填補166 2400万円から和解金1150万円を控除した残額は1250万円であり、上記小計に影響しない。 オ 弁護士費用 120万円⑶ 認容額1320万円及びこれに対する令和元年11月14日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金8 原告9(被災者9I)⑴ 石綿関連疾患の発症被災者9は、石綿粉じんばく露作業に従事した結果、平成31年2月4日、石綿を原因とする中皮腫を発症し、同日から療養を開始した(甲D9の1)。 ⑵ 被災者の死亡等同被災者は、令和2年8月27日、 被災者9は、石綿粉じんばく露作業に従事した結果、平成31年2月4日、石綿を原因とする中皮腫を発症し、同日から療養を開始した(甲D9の1)。 ⑵ 被災者の死亡等同被災者は、令和2年8月27日、中皮腫により死亡した(甲D9の2の3)。 原告9は同被災者の妻であり、訴外I2及び訴外I3はいずれも被災者の子であるが、令和3年1月22日の遺産分割協議により、原告9I1が本件損害賠償請求権を相続することを合意した。(甲D9の3)⑶ 慰謝料額ア 基準慰謝料額 2700万円イ 寄与度による限定 ×0.4ウ 上記修正後の慰謝料額 1080万円エ 損害の填補2700万円から和解金1300万円を控除した残額は1400万円であり、上記小計に影響しない。 オ 弁護士費用 108万円⑷ 認容額1188万円及びこれに対する平成31年2月4日(療養開始日)から支167 払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金9 原告10(被災者10J)⑴ 石綿関連疾患の発症被災者10は、石綿粉じんばく露作業に従事した結果、令和元年8月25日、石綿を原因とする中皮腫を発症し、同日から療養を開始した (甲D10の1)。 ⑵ 被災者の死亡等同被災者は、令和2年9月2日、中皮腫により死亡した(甲D10の3の2の3)。 原告10-1J1及び原告10-2J2はいずれも同被災者の子であり、本件損害賠償請求権について、原告10-1J1及び原告10-2J2が2分の1をそれぞれ相続した(甲D10の3)。 ⑶ 慰謝料額ア 基準慰謝料額 2700万円相続分に応じた額原告10-1J1及び原告10-2J2各1350万円イ 寄与度による限定 ×0.4ウ 上記修正後の慰謝料額 1080万円相続分に応じた額 慰謝料額 2700万円相続分に応じた額原告10-1J1及び原告10-2J2各1350万円イ 寄与度による限定 ×0.4ウ 上記修正後の慰謝料額 1080万円相続分に応じた額原告10-1J1及び原告10-2J2各540万円エ 損害の填補原告10-1J1及び原告10-2J2につき、それぞれ1350万円から相続分に応じた和解金650万円を控除した残額は700万円であり、いずれも上記ウの小計に係る相続分に応じた損害額に影響を及ぼさな168 い。 オ 弁護士費用原告10-1J1及び原告10-2J2につき、それぞれ54万円と認める。 ⑷ 認容額原告10-1J1及び原告10-2J2につき、それぞれ594万円及びこれに対する令和元年8月25日(療養開始日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金10 原告11(被災者11K)⑴ 石綿関連疾患の発症被災者11は、石綿粉じんばく露作業に従事した結果、平成25年6月28日、石綿を原因とする中皮腫を発症し、同日から療養を開始した(甲D11の1)。 ⑵ 被災者の死亡等同被災者は、平成31年2月3日、中皮腫により死亡した(甲D11の2の3)。 原告11は同被災者の妻であり、訴外K2及び訴外K3はいずれも被災者の子であるが、令和元年6月10日の遺産分割協議により、原告11K1が本件損害賠償請求権を相続することを合意した(甲D11の3)。 ⑶ 慰謝料額ア 基準慰謝料額 2700万円イ 寄与度による限定 ×0.35ウ 上記修正後の慰謝料額 945万円エ 弁護士費用 94万5000円⑷ 認容額1039万5000円及びこれに対する平成25年6月28日(療養開始169 日)から支払済みまで民法所定の年5分の割 後の慰謝料額 945万円エ 弁護士費用 94万5000円⑷ 認容額1039万5000円及びこれに対する平成25年6月28日(療養開始169 日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金11 原告12(被災者12L)⑴ 石綿関連疾患の発症被災者12は、石綿粉じんばく露作業に従事した結果、令和元年12月6日、石綿を原因とする肺がんを発症し、同日から療養を開始した(甲D12の1。被災者12の石綿粉じんばく露に係る期間・作業内容などに照らすと、石綿粉じんばく露と肺がんの発症との間に相当因果関係を認めるのが相当である。)。 ⑵ 慰謝料額ア 基準慰謝料額 2400万円イ 寄与度による限定 ×0.4ウ 喫煙歴による修正(甲D12の4〔7頁〕) ×0.9エ 上記修正後の慰謝料額 864万円オ 弁護士費用 86万4000円⑶ 認容額950万4000円及びこれに対する令和元年12月6日(療養開始日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金12 原告13(被災者13M)⑴ 石綿関連疾患の発症被災者13は、石綿粉じんばく露作業に従事した結果、令和2年2月28日、石綿を原因とする肺がんを発症し、同日から療養を開始した(甲D13の1。被災者13の石綿粉じんばく露に係る期間・作業内容のほか、胸膜プラーク所見があることなどに照らせば、石綿粉じんばく露と肺がんの発症との間に相当因果関係を認めるのが相当である。)。 ⑵ 慰謝料額ア 基準慰謝料額 2400万円170 イ 寄与度による限定 ×0.55ウ 喫煙歴による修正(甲D13の4〔3頁〕) ×0.9エ 上記修正後の慰謝料額 1188万円オ 弁護士費用 118万8000円⑶ 認容額1306万8000円及びこ る限定 ×0.55ウ 喫煙歴による修正(甲D13の4〔3頁〕) ×0.9エ 上記修正後の慰謝料額 1188万円オ 弁護士費用 118万8000円⑶ 認容額1306万8000円及びこれに対する令和2年2月28日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金13 原告14(被災者14N)⑴ 石綿関連疾患の発症被災者14は、石綿粉じんばく露作業に従事した結果、平成23年3月17日、石綿を原因とする肺がんを発症し、同日から療養を開始した(甲D14の1。被災者14の石綿粉じんばく露に係る期間・作業内容のほか、胸膜プラーク所見が認められることに照らせば石綿粉じんばく露と肺がんの発症との間に相当因果関係を認めるのが相当である。)。 ⑵ 慰謝料額ア 基準慰謝料額 2400万円イ 寄与度による限定 ×0.3ウ 喫煙歴による修正(甲D14の4〔10頁〕) ×0.9エ 上記修正後の慰謝料額 648万円オ 弁護士費用 64万8000円⑶ 認容額712万8000円及びこれに対する平成23年3月17日(療養開始日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金第4章 結論以上によれば、原告らの被告らに対する各請求は、別紙2-1「認容額等一覧表」の「原告」欄に記載のある各原告につき、同表の「認容額」欄に金額の171 記載のある被告に対して同欄記載の金額及びこれに対する遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから、その限度で認容し、原告らのその余の請求はいずれも理由がないから、これらを棄却することとし、訴訟費用の負担について、民訴法61条、64条本文を、仮執行宣言につき同法259条1項を、仮執行免脱宣言につき同条3項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。 札幌地方裁判所民事第3 ることとし、訴訟費用の負担について、民訴法61条、64条本文を、仮執行宣言につき同法259条1項を、仮執行免脱宣言につき同条3項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。 札幌地方裁判所民事第3部 裁判長裁判官小 野 瀬 昭 裁判官濱 岡 恭 平 裁判官石 川 紘 紹 172 ※別紙1及び別紙5ないし12の掲載を省略する。
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