昭和39(行ケ)161 審決(特許無効審判の審決)取消請求事件

裁判年月日・裁判所
昭和44年6月28日 東京高等裁判所 その他
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【DRY-RUN】主   文  特許庁が、昭和三十九年九月二十八日、同庁昭和三八年審判第一、七二四号事件 についてした審決は、取り消す。  訴訟費用は、被告の負担とする。        事   実 第一 当事者の求めた

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主文 特許庁が、昭和三十九年九月二十八日、同庁昭和三八年審判第一、七二四号事件についてした審決は、取り消す。 訴訟費用は、被告の負担とする。 事実 第一当事者の求めた裁判原告訴訟代理人は、「特許庁が、昭和三十九年九月二十八日、同庁昭和三八年審判第一、七二四号事件についてした審決は、取り消す。訴訟費用は、被告の負担とする」との判決を求め、被告訴訟代理人は、本案前の申立として、「本件訴は却下する」との判決を求め、本案につき、「原告の請求は棄却する。訴訟費用は、原告の負担とする」との判決を求めた。 第二請求の原因等原告訴訟代理人は、本訴請求の原因等として、次のとおり述べた。 一特許庁における手続の経緯原告は、昭和三十八年四月二十日、被告の特許第二四一、七九二号「グルクロノラクトンの製造に供しうる酸化澱粉液の製造法」なる特許権につき、特許無効の審判を請求したところ(同年審判第一、七二四号事件)、昭和三十九年九月二十八日、「本件審判の請求は成り立たない」旨の審決があり、その謄本は、同年十月一日、原告に送達された。 二本件特許発明の要旨触媒の存在下硝酸にて澱粉を酸化したる後、酸にて加水分解してグルクロノラクトンを製造するに当り、四五~六五%の硝酸と酸化触媒としての亜硝酸アルカリとにて、反応温度四〇~七〇度Cで澱粉を酸化することを特徴とするグルクロノラクトンの製造に供しうる酸化澱粉液の製造法。 三本件審決理由の要点本件審決は、本件特許発明の要旨を前項掲記のとおりと認定したうえ、これと原告が特許無効の理由として引用した出願前公知の刊行物である米国特許第二、六五〇、二三七号明細書(甲第三号証)(以下「米国特許」という。)、ケミカルアブストラクト第四八巻第一、一三三七欄(甲第五号証)(以下「ケミカルアブス て引用した出願前公知の刊行物である米国特許第二、六五〇、二三七号明細書(甲第三号証)(以下「米国特許」という。)、ケミカルアブストラクト第四八巻第一、一三三七欄(甲第五号証)(以下「ケミカルアブストラクト」という。)及びドイツ特許第八四九、六九二号明細書(甲第六号証)(以下「ドイツ特許」という。)に示すものとを比較し、結局、本件特許発明は、これら公知文献の存在により、その新規性が阻却されることなく、また、これらから容易に推考しうるものでもないとして、原告の審判請求は成り立たないと結論した。この審決理由のうち、前掲米国特許との比較に関する部分の説示(原告は、本訴においては、取消事由として、後述のとおり、この部分に関する判断が誤りであることを主張するものである。)は、次のとおりである。すなわち、「その硝酸濃度が、本件特許は四五~六五%であるのに反し、米国特許は六五~一〇〇%とあつて、単に両者の濃度範囲それ自体を論ずる限りにおいては、両者はその限界点において重複することは明らかであるが、本来、硝酸は、甲第七号証にも記載しているように、六五%附近においてNO2の溶解について臨界的な特性を有するものであり、この点を基準として硝酸濃度を区別すること(例えば、六五%以上を高濃度と呼び、以下を低濃度と呼ぶようなこと)は、技術的にも十分根拠のあることと解され、この点を境界点として硝酸濃度について別個の観念を表わすものと見ることが当該技術分野における妥当な見解というべきである。従つて、硝酸濃度において、前記のような重複点が存在するとしても、両者は別個の濃度範囲を意味するものと解すべきであり、米国特許において現実に六五%濃度の硝酸を使用する事実が認められない限り(澱粉を原料とする唯一の実施例8は単に濃硝酸と記載しているに過ぎない)、両者は使用する硝酸の を意味するものと解すべきであり、米国特許において現実に六五%濃度の硝酸を使用する事実が認められない限り(澱粉を原料とする唯一の実施例8は単に濃硝酸と記載しているに過ぎない)、両者は使用する硝酸の濃度を異にするものと解するを相当とする」と。 四本件審決を取り消すべき事由(一) 本件審決は、本件特許発明と前記米国特許との比較の点において、判断を誤つたものであり、違法があるものとして、取り消されるべきである(なお、原告は、本訴においては、前掲ケミカルアブストラクト及びドイツ特許との比較に関する本件審決の判断の誤りをその取消事由と主張することはしない。)。 (二) 本件審決は、硝酸濃度が、本件特許発明においては四五~六五%、米国特許においては六五~一〇〇%であり、両者がその限界点(すなわち六五%の点)において重複するものであることを認めながら、本件特許発明と米国特許とでは、使用する硝酸の濃度を異にする、とする。そして、その根拠として、硝酸は六五%附近において二酸化窒素NO2の溶解について臨界的な特性を有するから、この点を基準として、硝酸濃度を、たとえば、六五%以上を高濃度硝酸、以下を低濃度硝酸と呼ぶようなことは、根拠のあることであり、この点を境界点として、硝酸濃度につき、前記のような別個の観念を表わすものとみることは妥当な見解である、と説明する。 (三) しかしながら、六五%を境界として、それ以上を高濃度硝酸、それ以下を低濃度硝酸とすることは、何ら根拠のない独断である。そのような固定の概念が当該技術分野に存在するわけではない。高濃度硝酸と呼ぼうが、低濃度硝酸と呼ぼうが、本件特許発明のものが四五~六五%、米国特許のものが六五~一〇〇%であり、六五%の点において、両者が重複する事実に何の変りはない。本件審決は、前者が低濃度硝酸を使用するに対し 低濃度硝酸と呼ぼうが、本件特許発明のものが四五~六五%、米国特許のものが六五~一〇〇%であり、六五%の点において、両者が重複する事実に何の変りはない。本件審決は、前者が低濃度硝酸を使用するに対し、後者が高濃度硝酸を使用するものであるかのような言い方をしているが、全く恣意的な見解といわざるをえない。 (四) また、本件審決は、硝酸は六五%附近の濃度においてNO2(二酸化窒素)の溶解について臨界的な特性を有するというが誤りである。本件審決がその例証として挙げる甲第七号証(メラー著「インオーガニツク・アンド・セオレテイカル・ケミストリー」第八巻第五三七~五三九頁)にも、そのような記載は見当らない。あるいは、同号証第五三八頁「表三〇」の大気圧下における硝酸水溶液への吸収による過酸化窒素の硝酸への変換率のデータをそのように速断したものかとも思われるが、この表は、過酸化窒素が硝酸に変化する割合は、過酸化窒素の濃度、温度及び共存する硝酸濃度によつて変化することを示すものであり、本件審決のいうような特性のあることを示すものではない。 (五) 本件審決は、また、米国特許においては、澱粉を原料とする唯一の実施例8は単に濃硝酸というにすぎず、現実に六五%濃度の硝酸を使用する事実は認められないことをもつて、本件特許発明と米国特許との硝酸濃度が異なるとする根拠としているが、これも誤りである。すなわち、米国特許の明細書の記載を見るに、(1) 実施例8「澱粉の酸化」と題する部分には「トウモロコシ澱粉にその重量の一%に当る亜硝酸ソーダを混じ、ついで澱粉一モルに対し各一・三三、二・〇、三・〇、四・〇モルの酸化剤に相当する濃硝酸を加え、この混合物を四〇度Cに保持して攪拌した。二四時間後のウロン酸誘導体の収率は、それぞれ理論量の二〇、二一、二七、三六%であつた」(第九~ 三、二・〇、三・〇、四・〇モルの酸化剤に相当する濃硝酸を加え、この混合物を四〇度Cに保持して攪拌した。二四時間後のウロン酸誘導体の収率は、それぞれ理論量の二〇、二一、二七、三六%であつた」(第九~第一〇欄)(2) クレーム5には「グリコシドと亜硝酸ソーダとを四五~五〇度Cで硝酸中に溶液とし、ついで温度を三五~四五度Cに下げ、反応混合物をこの温度に八~二〇時間保持し、その結果生ずるウロン酸誘導体を加水分解し、この反応混合物からウロン酸を取り出すことを特徴とするウロン酸の製法。この際硝酸濃度は六五~七五%、グリコシドに対する硝酸の比はグリコシド一モルに対し少くとも硝酸一モルである」(第一〇欄末行~第一一欄一二行)(3) クレーム9には「クレーム5においてグリコシドとして澱粉を用いる方法」(第一一欄一九行~二〇行)と記載されている。 これによつてみれば、前記(1)においては、本件審決もいうとおり、硝酸濃度につき、単に「濃硝酸」と記載されているが、これは、前記(2)、(3)の記載からみて、六五~七五%の範囲内の濃度の硝酸であることが明らかである。のみならず、本件特許明細書(甲第二号証)にも、「米国特許の方法は、六五~一〇〇%の硝酸を使用し、」(第一頁左欄下から一五~一四行)と記載されている。これらの記載に徴すれば、米国特許には、澱粉の酸化に、本件特許と同じく、六五%の濃度の硝酸を使用する事実が記載されていることは疑余う地のないことである。 五被告の本案前の抗弁に対する主張別紙のうち「被告の本案前の抗弁に対する原告の主張」の項のとおり。 第三被告の答弁等被告訴訟代理人は、本案前の抗弁として、別紙のうち「被告の本案前の抗弁」の項記載のとおり陳述したうえ、答弁として、次のとおり述べた。すなわち、原告主張の請求原因事実のうち、 第三被告の答弁等被告訴訟代理人は、本案前の抗弁として、別紙のうち「被告の本案前の抗弁」の項記載のとおり陳述したうえ、答弁として、次のとおり述べた。すなわち、原告主張の請求原因事実のうち、本件に関する特許庁における手続の経緯、本件特許発明の要旨、本件審決理由の要点及び出願前公知の刊行物である米国特許の明細書の記載内容がいずれも原告主張のとおりであることは認めるが、その余は否認する。本件審決の判断は正当であり、原告主張のような違法の点はない。本件特許発明と米国特許とでは、本件審決説示のとおり、使用する硝酸の濃度を異にする。 すなわち、(一) 硝酸は、六五%附近において、二酸化窒素の溶液について臨界的な特性を有するから、この点を基準として硝酸濃度を区別することは根拠のあることである。 (1) 一般に、硝酸はアンモニアの酸化窒素を含む気体を水に吸収させることによつて製造される。その際、二酸化窒素は容易に水に反応して硝酸を生成するのであるが、硝酸濃度が高まるにつれて漸次二酸化窒素と水との反応性が低下し、硝酸濃度が約六五%に達するに及んで、二酸化窒素は硝酸には全く変換しなくなる。このような二酸化窒素の硝酸への変換性は、濃度約六五%以下では連続的であり、変換率は一般に硝酸濃度が低いほど大きく、濃度の上昇に従つて漸次減少し、約六五%濃度では変換率はゼロとなる。 (2) 約六五%以上の高濃度硝酸を得るためには、濃硝酸を加えて蒸溜脱水することを要する。 (3) 約六五%以上の濃度の硝酸に二酸化窒素を通ずると、飽和するまで、そのままの形で溶液する(発煙硝酸と呼ばれるものである)。右(1)、(2)、(3)から明らかなように、二酸化窒素は、硝酸に対し、その物理的化学的性質から、約六五%濃度に臨界点を有し、それ以上の濃度なら、二酸化窒素はそのままで溶解 と呼ばれるものである)。右(1)、(2)、(3)から明らかなように、二酸化窒素は、硝酸に対し、その物理的化学的性質から、約六五%濃度に臨界点を有し、それ以上の濃度なら、二酸化窒素はそのままで溶解しうるが、それ以下の濃度では硝酸に変化してしまうのである。 (二) 米国特許には、澱粉を六五%の濃度の硝酸で酸化してグルクロン酸の製造に供しうる酸化澱粉を生産する具体的技術が開示されていない。 (1) 米国特許における原料物質である「グリコシド」とは、配糖体、すなわち、糖の特定の箇所(還元基)に他の物質が結合した化合物を総称する広汎な上位概念であり、これに包含される種々の化合物が、種々の化学反応に際し、同じ挙動を呈するものでないことはいうまでもない。しかも澱粉は、高分子化合物であり、低分子化合物である一般のグリコシドとは著しくその性質を異にし、通常は、グリコシドとしては扱われないものである。したがつて、原料としてグリコシドを使用すると記録されているだけでは、あらゆる種類のグリコシドがウロン酸誘導体もしくはウロン酸に導かれることが示されているとはいえない。ましてや、澱粉が一般のグリコシドと同様に酸化されて同一目的物が得られるということはできない。米国特許の明細書にはメチルグリコシドその他のグリコシドについては詳細な具体的説明はあるが、高分子化合物である澱粉については、実施可能な技術は、何ら記載されていないし、また、グリコシドの酸化の理論を澱粉についてそのまま当てはめることの可能性について理論的解明は全くされていない。同明細書のクレーム9には「グリコシドが澱粉であるクレーム5による方法」という記載はあるが、単に記載があるというだけで、何らの技術を示してはいない。 (2) 米国特許においては、酸化剤として、現実に六五%濃度を用いた事実は一例も見られず、 粉であるクレーム5による方法」という記載はあるが、単に記載があるというだけで、何らの技術を示してはいない。 (2) 米国特許においては、酸化剤として、現実に六五%濃度を用いた事実は一例も見られず、すべてが七〇%以上であり、七〇~七五%の範囲内の濃度が好ましいとも記載されている。六五%については発明未完成である。 (3) 原告は、米国特許のクレーム5及び同じく9の記載から見れば、その実施例8の「濃硝酸」は、六五~七五%の範囲内にある、と主張するが、右各クレームは、澱粉の酸化についての技術を示すものではないから、これをもつて、実施例8の硝酸濃度を特定することはできない。実施例8は、硝酸の濃度については、単に「濃硝酸」というだけであり、また、その酸化生成物からグルクロン酸を現実に収得した記載は全く存しない。この実施例においては、澱粉の酸化条件、生成物の分離確認等の重要事項については記載が不備であるため、そこに得られる酸化生成物は不明といわざるをえない。 第三証拠関係(省略) 理由 本案前の抗弁について。 被告は、本件審判請求事件とa事件とは、本件特許を無効とすべきものとする理由たる事実及び証拠は同一であり、すでにa事件につき審決が確定し、その登録があつた以上、仮に本件審決が取り消されても、差し戻し後の審判については、特許法第百六十七条の一事不再理の原則の適用を免かれないのであるから、この原則を定めた法の精神からみて、本件訴は、訴の利益なしとして却下されるべきである旨主張するが、両事件における事実(無効事由として主張する事実)及び証拠は同一とはいえないこと一件記録及び被告の主張自体に徴して明らかであるから、それらが同一であることを前提とする被告の前記本案前の抗弁は、さらに進んでその余の点について判断するまでもなく、理由が 証拠は同一とはいえないこと一件記録及び被告の主張自体に徴して明らかであるから、それらが同一であることを前提とする被告の前記本案前の抗弁は、さらに進んでその余の点について判断するまでもなく、理由がないものといわざるをえない。すなわち、その方式及び趣旨から真正に成立した公文書と推定される甲第一号証(本件審決書)及び被告の陳述に徴すれば、原告は、本件特許発明が出願当時公知の事実から容易に推考しうるものである旨主張するとともに、右公知事実の一つとして、本件審判請求事件においては、出願前公知の文献であるケミカル・アブストラクト第四八巻第一一三七欄には「澱粉よりDグルクロン酸を製造する場合、二酸化窒素含有の硝酸(比重一・五二)を比重一・四二まで稀釈したものを酸化剤とし、亜硝酸ソーダを触媒として用い、OS五度Cで反応させること」が記載されていることを挙げ、この事実を裏付ける証拠として、右ケミカル・アブストラクトの該当部分(本訴における甲第五号証の一、二)を提出したこと及び被告主張のa事件においては、このような事実の主張及び証拠の提出はされていないことを認めるに足るから、本件審判請求事件とa事件とは同一の事実及び証拠に基づくものということはできない。この点に関し、被告は、右ケミカル・アブストラクトは、a事件において提出されたドイツ特許第八四九、六九二号の発明の発明者が、右発明と同一内容を発表したものであり、内容的には前記ドイツ特許の明細書と同一であり、したがつて、審決に及ぼす影響は同一であるから、右ケミカル・アブストラクトの引用部分は、右ドイツ特許の該当部分と同一証拠というべきものである旨主張するが、両者がその引用部分(引用部分のみが証拠である)を異にし、したがつて、立証されるべき技術内容を異にする以上、両者を同一証拠ということはできないから、被告 分と同一証拠というべきものである旨主張するが、両者がその引用部分(引用部分のみが証拠である)を異にし、したがつて、立証されるべき技術内容を異にする以上、両者を同一証拠ということはできないから、被告の右主張は当を得たものということはできない。したがつて、本件訴の却下を求める被告の申立は理由がないものとして却下することとする。 本案について(争いのない事実)一本件に関する特許庁における手続の経緯、本件特許発明の要旨、本件審決理由の要点及び引用例の一である米国特許の明細書の記載内容が、いずれも原告主張のとおりであることは、本件当事者間に争いのないところである。 (本件審決を取り消すべき事由の有無について)二本件審決は、次の点において、判断を誤つた違法があるものとして取消を免かれないものといわざるをえない。すなわち、成立に争いのない甲第三号証(米国特許の明細書)には、原告主張のとおり、(1) 実施例8「澱粉の酸化」と題する部分には、「トウモロコシ澱粉にその重量の一%に当る亜硝酸ソーダを混じ、ついで澱粉一モルに対し各一・三三、二・〇、三・〇、四・〇モルの酸化剤に相当する濃硝酸を加え、この混合物を四〇度Cに保持して攪拌し………二四時間後のウロン酸誘導体の収率は、それぞれ理論量の二〇、二一、二七、三六%であつた」(第九、第一〇欄)(2) クレーム5には、「グリコシドと亜硝酸ソーダとを四五~五〇度Cで硝酸中に溶液とし、ついで温度を三五~四五度Cに下げ、反応混合物をこの温度に八~二〇時間保持し、その結果生ずるウロン酸誘導体を加水分解し、この反応混合物からウロン酸を取り出すことを特徴とするウロン酸の製法。この際硝酸濃度は六五~七五%、グリコシドに対する硝酸の比は、グリコシド一モルに対し少くとも硝酸一モルである」(第一〇欄末行~第一一欄一二行) らウロン酸を取り出すことを特徴とするウロン酸の製法。この際硝酸濃度は六五~七五%、グリコシドに対する硝酸の比は、グリコシド一モルに対し少くとも硝酸一モルである」(第一〇欄末行~第一一欄一二行)(3) クレーム9には、「クレーム5においてグリコシドとして澱粉を用いる方法」(第一一欄一九行~二〇行)なる旨の記載のあることを認めうべく、これらの記載と成立に争いのない甲第二号証(本件特許公報)の「米国特許の方法は、六五~一〇〇%の硝酸を使用する」旨の記載及び証人bの証言を総合すると、米国特許においても、澱粉の酸化について、本件特許発明と同じく、六五%の濃度の硝酸を使用する事実が記載されていることを認めるに十分であり、証人cの証言中右と牴触する部分は、前掲各証拠と比照して、たやすく信をおきがたく、他にこれを左右するに足る適確な証拠資料はない。したがつて、本件特許発明は、澱粉の酸化に使用する硝酸の濃度に関する限り、出願当時公知の文献に記載されたものであること当事者間に争いのない米国特許の方法と、ともに六五%濃度の硝酸を使用する意味において、技術思想を同じくするものといわざるをえない。 本件審決は、この点に関し、本件特許発明と米国特許とが、使用する硝酸の濃度範囲に関する限り、その限界点において重複することを認めながら、六五%を基準として、以上を高濃度、以下を低濃度と呼ぶようなことは硝酸が六五%附近において臨界的な特性を有することからみて当該技術の分野において妥当なことであるから、両者は別個の濃度範囲を意味するものと解すべきである旨説示するが、仮に、硝酸が六五%附近(「附近」とは、六五%を中心としてその前後をいうのであろう。)において臨界的特性を有するとしても(そのこと自体、全く疑問なしとしないことは、この点に関する原告の抗争するところに徴しても が六五%附近(「附近」とは、六五%を中心としてその前後をいうのであろう。)において臨界的特性を有するとしても(そのこと自体、全く疑問なしとしないことは、この点に関する原告の抗争するところに徴しても、推測に難くないところであるが)、そして、六五%以上を高濃度と呼び、六五%以下を低濃度と呼ぶことが技術的に意味のあることであり、両者が別個の濃度範囲を意味すると解するを相当とするとしても(この点も、はたして、そうであるかどうかは、高濃度硝酸あるいは低濃度硝酸というような固定の概念が確立されているとは認めがたいことから、必ずしも疑いなしとしないが)、そのような理由から、米国特許には、本件特許発明と同じく、六五%の濃度の硝酸を使用する技術が開示されている事実及び本件特許発明は、六五%濃度の硝酸を使用する技術思想に関する限り、この先行技術と一致する事実を否定することはできない筋合である(もし、仮に六五%の濃度の硝酸を使用する(イ)号方法が何人かによつて実施されたとしたら、権利者は、本件特許発明の技術的範囲に属しないとして、不問に付すべきものと考えるであろうか)。 また、本件審決は、「米国特許において現実に六五%濃度の硝酸を使用する事実が認められない限り、両者は使用する硝酸の濃度を異にするものと解するを相当とする」ともいう。しかし、請求人である原告が、いわゆる文献公知を主張した本件において、米国特許の明細書に六五%濃度の硝酸を使用する旨の記載があること以上に、現実にこれを使用する事実の立証を要するというのは何のためであろうか。 もし、この記載が技術的に不能な事項を記載したものであるというのであれば、その理由を明示すべきは、きわめて当然のことである。 以上いずれの点においても、本件審決は、使用する硝酸濃度の点に関する限り、米国特許の明細書に六五%濃度 事項を記載したものであるというのであれば、その理由を明示すべきは、きわめて当然のことである。 以上いずれの点においても、本件審決は、使用する硝酸濃度の点に関する限り、米国特許の明細書に六五%濃度の硝酸を使用する技術の開示を否定した点において、全く説得力を欠き、その認定を誤つたものというほかはなく、したがつて、仮に他の点の認定が正しいとしても、全体において判断を誤つた違法のものといわざるをえない。(なお、叙上のほか、被告の主張するところは、本件審決の理由と直接関係のないものであるので、審決の結論、したがつてこれを支える理由が誤りであるかどうかが争点である本訴においては、とくに言及することをしない)。 (むすび)三以上詳説したとおりであるから、その主張の点に判断を誤つた違法があることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は理由があるものということができる。よつて、これを認容することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八十九条を適用して、主文のとおり判決する。 (裁判官三宅正雄石沢健滝川叡一)別紙本案前の抗弁に関する被告の主張第一特許法第一六七条(旧法第一一七条、旧旧法第八七条)は、特許の無効審判の審決が確定し登録されたときは、何人といえども、同一事実及び同一証拠によつて再び無効審判を請求しえない旨規定する。この規定は、通常訴訟における場合と対比して、きわめて特異な性格ー特許事件という特殊な事項の持つ必然の性格を有し、まず、一主観的範囲に制限はない。 故に訴訟の当事者を問わないことにおいて、審決は対世的効力を有するものと理解すべきである。それは専ら特許そのものが対象として考えられているからであつて当然のことである。 二その代り、同一事実並びに同一証拠に基いてされる二重の審判請 いて、審決は対世的効力を有するものと理解すべきである。それは専ら特許そのものが対象として考えられているからであつて当然のことである。 二その代り、同一事実並びに同一証拠に基いてされる二重の審判請求を禁止した。したがつて、新たなる事実ないし新たなる証拠に基づく限り、「一事」とは観念しないのである。 三この規定は、一読すれば、先に無効審判が確定した後に提起せらるる同一事実、同一証拠による再審を禁じたかのように見られるけれども、その二つの審判の前後、請求の時期と、審決確定の時期との関係について大審院の大正九年三月一九日第一民事部判決(大正八年(オ)第八一一号特許権利範囲確認請求事件・民録二六輯三七一頁)が「特許法第八七条(現行法一六七条)ニ所謂特許ノ効力又ハ特許権ノ範囲ニ関スル審決又ハ判決ノ登録アリヤ否ヤノ問題ハ上告人主張ノ如ク審判請求当時ノ事実ニ依ルヘキモノニアラス原判示ノ如ク審決当時ノ事実ヲ標準トシテ之ヲ決スヘキモノト解スルヲ相当トス」と判示しているように、第一の審決確定の時期に既に第二の無効審判請求がなされていても、本条が適用されるのである。 四しかして、この規定は、重複する審判請求の一方に対する審決の取消訴訟が裁判所に係属する場合にも適用あるべきものである。けだし、一事不再理の本質的な目的ー同一事件を再度審理することによつて矛盾した判断がされることを禁ずるというーからも、また、同一の争点に対し国家機関が異なつた結論を示すべきでないという法原理からも、裁判所が確定審決の存在にもかかわらず、独自の判断をすることは、同一審判について矛盾する判断がなされる結果を導くことになるからである。 また、本件についてみれば、仮に本訴において審決が取消差し戻され、再度審判手続に係属しても、既に淀川製薬株式会社との間で本件特許につき無効審判請求は 断がなされる結果を導くことになるからである。 また、本件についてみれば、仮に本訴において審決が取消差し戻され、再度審判手続に係属しても、既に淀川製薬株式会社との間で本件特許につき無効審判請求は成り立たずとの審決が確定し登録されているのであるから、第一六七条の要件の存する限り、差戻後の審判手続において、特許庁は一事不再理原則を適用しなければならないのである。すなわち、この場合取消判決は特許庁の再度の審判手続における判断を拘束しないのであるから、右判決は全く意味のないものとなること明らかである。 この点を考慮するときは、やはり確定審決の尊重、権利者にとつての二重の危険を防ぐという点からも、本訴については、訴の利益なしとして却下することが一事不再理を定めた法の精神に合致するものといわねばならない。(同趣旨、染野義信、別冊ジユリストNo.8特許判例百選一〇四頁)五なお、このような一事不再理の抗弁(本案前の抗弁)は、通常訴訟においては、普通本案の審理に入るに先だち主張されるものであるが、本条の適用については、前審判の審決の確定は、重複審判請求事件係属中の如何なる段階にても起りうることであるから、最終口頭弁論終結までの如何なる時期にでも、その構成要件の整い次第提出できるというべきである。 第二本件特許に対する審判請求等の時間的経緯を示せば、次のとおりである。 1 昭和三七年一〇月九日淀川製薬株式会社、特許無効審判請求昭和三七年審判第二四二五号事件(以下「a審判事件」という)として係属 2 昭和三八年四月二〇日大正製薬株式会社(原告)特許無効審判請求昭和三八年審判第一七二四号事件(以下「本件審判事件」という)として係属 3 昭和三九年九月二八日本件審判事件につき「審判請求は成り立たず」との審決 4 昭和三九年一〇月二九日原告本訴提起 請求昭和三八年審判第一七二四号事件(以下「本件審判事件」という)として係属 3 昭和三九年九月二八日本件審判事件につき「審判請求は成り立たず」との審決 4 昭和三九年一〇月二九日原告本訴提起 5 昭和四〇年一月一六日 a審判事件につき「審判請求は成り立たず」との審決 6 昭和四〇年三月一三日右審決確定 7 昭和四〇年三月二九日右審決の確定があつた旨特許原簿に登録第三 a審判事件と本件審判事件とにおける主張事実及び証拠とを対比すると、次のとおりである。 本件審判事件一主張事実(一) 米国特許第二六五〇二三七号明細書(甲第一号証)には(1) グリコシドを亜硝酸塩の存在下六五~一〇〇%硝酸で二〇~一〇度Cで酸化し次いでこれを加水分解してウロン酸を得る方法が記載されグリコシドとしては澱粉があげられまたその実施例も記載されている。 (2) 実施例八の硝酸濃度はクレーム一から六五~一〇〇%と推測されるから六五%硝酸を使用したとみて何ら差支えない。従つて米国特許と本件発明とは、澱粉を亜硝酸アルカリを酸化触媒として硝酸を以て酸化し酸化澱粉を得る点で一致し、使用する硝酸濃度は六五%が一致、反応温度も米国特許の範囲内であり、本件発明に新規性がない。従つて本件特許は旧特許法第四条第二号に該当し同法第一条の規定に違反して与えられたものである(無効理由その一)(昭・38・4・20付審判請求書四頁一行~六頁三行・昭39・7・1付弁駁書(第二)一九頁一四行~二〇頁九行、同二七頁五~一二行)。 (二)(1) ヘミツシユ・ベリヒテ(ドイツ化学会誌の略称)第五四巻第四五六~四五七頁(甲第二号証)には、糖類より種々のアルデヒド酸(又はそのラクトン)を得る際に、酸化剤として通常の稀硝酸(約三二%)或はそれより高濃度の硝酸が使用されること及び触媒として亜硝酸が用い 五六~四五七頁(甲第二号証)には、糖類より種々のアルデヒド酸(又はそのラクトン)を得る際に、酸化剤として通常の稀硝酸(約三二%)或はそれより高濃度の硝酸が使用されること及び触媒として亜硝酸が用いられることが記載されている。 そして澱粉は糖類の中に含まれグルクロン酸はアルデヒド酸の範疇に含まれるから、通常の稀硝酸で澱粉を酸化しグルクリン酸を得ることは公知である。 (2) ケミカル・アブストラクト第四八巻第一一三三七欄(甲第三号証)には、澱粉よりDグルクリロン酸を製造する場合、二酸化窒素含有の硝酸(比重一・五二)を比重一・四二まで稀釈したものを酸化剤とし、亜硝酸ソーダを触媒として用い、〇~五度Cで反応させることが記載されている。 (3) ドイツ特許第八四九六九二号明細書(甲第四号証)には、澱粉を少量の亜硝酸ナトリウムを含有する比重一・四二の硝酸を以て酸化し、ポリウロン酸を製造することが記載されている。 以上甲第二ないし第四号証の記載及び甲第一号証の記載をみると、澱粉を亜硝酸塩を含有する硝酸を以て酸化し、ポリウロン酸を製造する場合に、稀硝酸(約三二%)より一〇〇%に至る濃度の硝酸を以て酸化すること並びに反応温度を〇~一〇〇度Cの広範囲に採用し得ることは本件特許の出願前一般知識として公知の事実であつたので、本件特許に進歩性がなく、旧特許法第一条の発明を構成するに至らない(無効理由その二)(審判請求書六頁四行~八頁七行、弁駁書(第二)二頁一二行~三頁九行、七頁二〇~二二行、九頁七~一三行、一七頁一五~二一行、一九頁一四行~二〇頁九行、二七頁五~一二行)。 (三) 本件特許公報に記載されている種々の効果、有毒ガスの発生、反応の調節等は、硝酸の濃度六五%に臨界点がない以上、高低濃度硝酸で差異はなく、特に硝酸の除去法は米国特許に記載されており、その他 。 (三) 本件特許公報に記載されている種々の効果、有毒ガスの発生、反応の調節等は、硝酸の濃度六五%に臨界点がない以上、高低濃度硝酸で差異はなく、特に硝酸の除去法は米国特許に記載されており、その他の効果も程度の差にすぎない。従つて本件発明は、従来法と比較して特にすぐれている点は何一つ存在せず、技術的創作としての高度性がない(無効理由その三)(審判請求書八頁八行~一一頁六行、弁駁書(第二)三頁一五行~四頁一四行、二五頁二三行~二六頁一行、二九頁一七~一九行、三〇頁一六行~三一頁一四行)。 二証拠(省略)a審判事件一主張事実(一) 米国特許第二六五〇二三七号明細書(甲第三号証)は、グリコシドを亜硝酸塩の存在下六五~一〇〇%硝酸で二〇~一〇〇度Cで酸化し、次いでこれを加水分解してウロン酸を得る方法に関するもので、グリコシドとしては澱粉があげられ、またその実施例も記載されている(昭37・12・21付理由補充書四頁五~九行)。 実施例八の硝酸はクレーム9より六五~七五%濃度であることは明らかである(昭38・11・12付弁駁書四頁一~二〇行)。 従つて米国特許と本件発明とは六五%硝酸の場合全く一致しており六五%に臨界点が認められない以上六五%より低い濃度の硝酸を用いることは容易に想到し得る。 従つて本件特許は旧特許法第一条の規定に違反して与えられたものである(前掲理由補充書四頁五~一六行)。 (一)(1) ドイツ化学会誌第五四巻四五六~四五七頁(甲第一号証)には、糖類より種々のアルデヒド酸(又はそのラクトン)を得る際、酸化剤として三二%或いはそれ以上の濃度の硝酸並びに触媒として亜硝酸(場合により大量)が用いられることが記載されている。(前掲理由補充書二頁一三行~一八行)そして、糖類の範疇に澱粉も入る。またグルクロン酸もアルデヒド酸 はそれ以上の濃度の硝酸並びに触媒として亜硝酸(場合により大量)が用いられることが記載されている。(前掲理由補充書二頁一三行~一八行)そして、糖類の範疇に澱粉も入る。またグルクロン酸もアルデヒド酸である(昭和38・11・12付弁駁書二頁五~一二行)。 (2) ドイツ特許第八四九六九二号明細書(甲第二号証)は澱粉を亜硝酸ソーダの存在下硝酸で酸化し、次いでこの酸化澱粉を加水分解してウロン酸特にグルクロン酸をそのラクトンの型にて製造する方法に関するもので、その際有利な条件としては硝酸の比重一・四二(約七〇%)反応温度〇~一〇度Cで行うものである(前掲理由補充書三頁一九行~四頁四行)。 以上甲第二号証或は甲第三号証により、澱粉を亜硝酸ソーダを含有する七二%硝酸或は六五%以上の高濃度硝酸で酸化してグルクロン酸を得ることが公知であつた以上、この高濃度硝酸に代えるに甲第一号証に既に記載されている三二%低濃度硝酸までの中間の範囲の濃度、すなわち本件説明の四五~六五%濃度範囲を選定することは、前記甲号各証より当業者の必要に応じて容易に類推、実施しうる程度のことであるから本件特許は旧特許法第一条の規定に違反して与えられたものであり、本件特許は無効である(昭38・11・12付弁駁書二頁四行~三頁一行)。 (三) 本件特許明細書に記載された種々の効果については、(1) 反応温度・反応時間については米国特許に明示されている。 (2) 硝酸の使用量については、低濃度硝酸では当然澱粉に対する溶解性は高濃度硝酸に比して大であるから、米国特許の記載から当業者の容易に想到しうるところである。 (3) 触媒の添加量・硝酸の除去法等についても、米国特許の記載から当業者の容易に想到しうるところである。 (4) 収率についても従来法と大差はない(前掲理由補充書五頁四行~一二頁一二 ろである。 (3) 触媒の添加量・硝酸の除去法等についても、米国特許の記載から当業者の容易に想到しうるところである。 (4) 収率についても従来法と大差はない(前掲理由補充書五頁四行~一二頁一二行)。 二証拠(省略)第四叙上のとおり、(一) 本訴原告の主張事実は、そのすべてがa審判事件における事実と重複する。 (二) 証拠については、本訴原告の提出した甲第一号証ないし甲第四号証のうち、甲第一、第二、第四号証はそれぞれa事件の甲第三、第一、第二号証に該当し、原告が甲第三号証として提出したケミカル・アブストラクトだけがa事件で提出されていない。そこで、これが第一六七条にいう新たなる証拠といえるか否かを検討するに判例は、重ねて同一審判請求を為しうる場合につき「別異ノ事実ヲ主張スルカ若シクハ確定審決ヲ覆スルニ足ルヘキ重要ナル新証拠ヲ提出スルコトヲ要ス」と判示(大審院大正八年(オ)第三三〇号、同年五月二四日判決第三民事部)し、また、同一証拠の意義につき「所謂同一証拠トハ単ニ証拠自体ノ同一ナルコトノミヲ謂フニ非ス審決ニ及ホス影響ノ同一ナル場合ヲモ包含スルモノトス」と判示(大審院大正八年(オ)第一八四号同年一〇月一九日判決第一民事部)し、また学説では「(本条は些少にても他の証拠を附加すれば再理を許す趣旨ではなく、同一なりや否やは)争点ノ如何ニ依リ之ヲ決シ………前審判ニ於テ排斥セラレタル争点ヲ是認セシムルニ足ル性質ノ証拠(の場合は再理を許すべし)」としている(清瀬一郎氏特許法原理四二六頁~四三〇頁)。 しかるに、原告の引用した前記ケミカル・アブストラクトは、ドイツ特許第八四九六二号発明の発明者が、右発明と同一内容を発表したもので、内容的には、その特許明細書と全く同一であることは原告の前記審判事件における主張に徴しても明らかである。したがつて クトは、ドイツ特許第八四九六二号発明の発明者が、右発明と同一内容を発表したもので、内容的には、その特許明細書と全く同一であることは原告の前記審判事件における主張に徴しても明らかである。したがつて、これが確定審決を覆すに足るべき重要なる証拠でないことは勿論、排斥せられた争点を是認せしむるに足る性質の証拠でもないことは明らかである。このように、確定審決では既にドイツ特許について判断されているのであるから、これと同一内容である本証を提出したところで、審決に及ぼす影響は同一であり、これが本条にいう同一証拠であることは疑う余地がない。 第五以上詳細に検討したとおり、原告の本訴請求は、特許法第一六七条(旧一一七条)の要件をすべて満たしており、したがつて、仮に本件が取消差戻を受けて再び審判手続に係属するに至つても、同条の適用を受けて請求を却下される運命にあるのであるから、原告にとつては、訴の利益がないこととなり、したがつて訴訟成立の要件を欠くこととなるから、本訴は却下さるべきものである。 本案前の抗弁に対する原告の主張第一被告の第一の主張に対する反論一特許法第一六七条に定むるいわゆる一事不再理の原則は重複審判請求の場合には適用がないものである。 本条は、何人も特許無効の審判又は訂正無効の審判の確定審決の登録があつたとき、すなわち、確定審決の登録があつた後は同一事実及び同一証拠に基いて無効審判を請求することができない旨を規定したものと解される。したがつて、確定審決の登録前に無効審判が請求されている場合、換言すれば、重複審判請求の場合には、右法条の適用はないものといわねばならない。被告引用の大審院判決は特許権利範囲確認請求事件に関するものであり、これと性質を異にする本件特許無効審判請求事件について右判決を引用することは適切ではない。けだし、同条 はないものといわねばならない。被告引用の大審院判決は特許権利範囲確認請求事件に関するものであり、これと性質を異にする本件特許無効審判請求事件について右判決を引用することは適切ではない。けだし、同条に定めるいわゆる一事不再理の原則は、無効審判及び訂正無効審判の確定審決に対してのみ適用され、確認審判の確定審決には適用がないからである。 二重複審判請求事件において、その一につき確定審決の登録があつても、他方に対する審決取消訴訟が裁判所に係属する場合は、いわゆる一事不再理の原則の適用はないものと解される。いわゆる一事不再理の原則の適用あるのは行政庁たる特許庁における無効審判手続においてのみであり、このことは何等裁判所を拘束するものではないから、重複審判請求事件につき特許庁における一の審決が確定しても、裁判所に係属中の他の審決取消請求事件に毫末も影響を及ぼすものではない。これは特許法が審決に対し出訴権が認めていることから当然に理解されうるところである(第一七八条)。 三被告は、「………法第一六七条の要件の存する限り差戻後の審判手続において特許庁は一事不再理の原則を適用しなければならないのである。すなわち、この場合、取消判決は特許庁の再度の審判手続における判断を拘束しないのであるから、右判決は全く意味のないものとなること明らかである」旨主張するが、これは被告の独断的見解であり、正当なものではない。何となれば裁判所が取消理由を発見したならば、裁判所独自の立場で、その趣旨の判断をすべきであり、取消後における特許庁の審理にまで立ち至つて考慮する必要はないのである。いわんや、取消後の特許庁の審理において新なる主張、新なる証拠の提出が許されることを考慮に入れるならば尚更右の配慮は必要のないものである。 第二被告の第二の主張に対し、本項は原、被告間及 ある。いわんや、取消後の特許庁の審理において新なる主張、新なる証拠の提出が許されることを考慮に入れるならば尚更右の配慮は必要のないものである。 第二被告の第二の主張に対し、本項は原、被告間及び被告淀川製薬株式会社間の特許庁における審判手続の経過を述べたに過ぎないから本項については原告は別段意見はない。 第三被告の第三の主張に対する反論特許法第一六七条にいう同一事実および同一証拠とは、確定審決が判断した事実及び証拠が同一であるという趣旨であると解さなければならないから、たとえ提出された証拠といえども、その最も重要な部分を見落し、判断の遺脱があつた場合は、その証拠は提出がないに等しいものというべく、したがつて、その重要な部分を指摘して新たに提出すれば、新証拠となるといわなければならない。この見地に立つて両事件を見ると、その主張事実はとも角、原告の甲第五号証の一、二に当るケミカル・アブストラクトはa審判事件にはなく、原告の甲第三号証に当る米国特許第二六五〇二三七号明細書はa事件においても甲第三号証として提出しているが、a審判事件においては、このものを全体として引用しているに反し、本件審判事件においては、原告は特にクレーム5及び9を引用し、これに本件特許と同一のことが記載されていると主張するのであり、審決はこのクレーム5及び9を見落した判断の遺脱があつたのであるからa審判事件とは別の新証拠となることはいうまでもない。 以上のとおり、原告の本件審判事件における証拠とa審判事件の証拠とを比較すれば、前者には後者で提出しない甲第五号証の一、二ケミカル・アブストラクトがあり、かつ、a審判事件において、特に指摘されなかつた該米国特許のクレーム5及び9を証拠とするものであるから、両者は同一証拠に基く請求であるということはできない。 第四被告 カル・アブストラクトがあり、かつ、a審判事件において、特に指摘されなかつた該米国特許のクレーム5及び9を証拠とするものであるから、両者は同一証拠に基く請求であるということはできない。 第四被告の第四の主張に対する反論原告引用の米国特許第二六五〇二三七号のクレーム5及び9の記載は、確定審決を覆すに足る重要な証拠であり、審決がこれを見落さなかつたならば、当然審決の主文も変更されたであろうと思われるので、仮に本件審決が取り消され、再び審判に係属した場合は、新事実、新証拠に基づき審理されるのであるから訴の利益なしという被告の主張は当を得ない。 本件が仮に、特許を無効とするとの確定審決があつた後の訴であるならば、あるいは訴の利益なしとして却下されることも考えられ得るが、無効とせずとの審決が如何に確定しても、特許が存在し、無効原因が存在する限り、これを無効にする利益が常に存在するものであるから、訴の利益なしというわけにはいかない。 第五もし仮に裁判所が、被告主張のように、本件につき訴の利益なしとして却下されるようなことがあれば、特許庁が最終審として裁判をしたと同様の結果に陥る虞れがある。これは明かに審決取消の訴を認めた(第一七八条)法の精神に反するのみならず、基本的には憲法が保障する裁判を受ける権利を奪うことになり(憲法第三二条)、また、行政機関は終審として裁判を行うことができない(憲法第七六条二項後段)との条章に悖ることとなり到底憲法違反の非難を免れない。

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