- 1 - 主文 被告人を懲役3年6月に処する。 未決勾留日数中150日をその刑に算入する。 さいたま地方検察庁で保管中の運転免許証の写し1枚(令和5年さいたま領第1497号符号1)の偽造部分を没収する。 訴訟費用は被告人の負担とする。 理由 (罪となるべき事実)被告人は、第1 介護施設Aに運転手として採用されていたものであるが、採用面接時に年齢 を偽っていたことが発覚するのを免れようと考え、令和3年11月16日頃、さいたま市(住所省略)所在のA事務所において、同施設従業員Dに対し、被告人の顔写真が印刷された上、氏名欄に被告人名、生年月日欄に「昭和a年b月c日」と印字されるなどし、かつ、埼玉県公安委員会の公印を複写した印影が表出された偽造に係る同公安委員会作成名義の自動車運転免許証の写し1通 (令和5年さいたま領第1497号符号1)を真正に作成されたもののように装って提出して行使し、第2 令和5年9月13日午後4時21分頃、普通特種自動車(車いす移動車)を運転し、前記A敷地内において、同敷地北東側駐車枠から発進するに当たり、アクセル・ブレーキを的確に操作して安全に発進進行すべき自動車運転上の注 意義務があるのにこれを怠り、ブレーキペダル上に載せていた右足を滑らせてアクセルペダルを踏み、自車が意図せずに前進加速したことに狼狽してさらにアクセルペダルを強く踏み込んだ過失により、自車を時速約20キロメートルに加速させながら前方に暴走させ、自車の約9.3メートル前方にいたB(当時89歳)、C(当時88歳)及びD(当時43歳)に自車前部を衝突させると ともに、前記B及び前記Cを車底部でれき過し、よって、両名に交通外傷の傷 - 2 -害を負わせ、同日午後4時5 9歳)、C(当時88歳)及びD(当時43歳)に自車前部を衝突させると ともに、前記B及び前記Cを車底部でれき過し、よって、両名に交通外傷の傷 - 2 -害を負わせ、同日午後4時51分頃、同所において、前記Bを、同日午後6時34分頃、同市(住所省略)のE病院において、前記Cを同傷害によりそれぞれ死亡させたほか、前記Dに加療約6か月間を要する右大腿挫滅創、右神経断裂等の傷害を負わせた。 (量刑の理由) 被告人は、介護施設の送迎車運転手であるところ、複数の利用者や職員らが被告人の乗車する送迎車の進行方向約10メートルにも満たない場所を歩行している駐車場内で、施設建物の近くに送迎車を移動させようと自車を発進させるにあたり、アクセル・ブレーキを的確に操作して安全に自動車を発進進行させるという基本的かつ重要な注意義務を怠って、ブレーキペダルを踏むつもりでアクセルペダルを踏 み意図と異なり自車を発進させてしまい、さらに、足の位置の確認もせずに不用意にアクセルペダルを踏み込み自車を急加速させたもので、被告人の過失は重大である。間近な位置から急加速して接近する自動車を被害者らが避けられるはずもない。 2名の被害者は車底部でれき過されて死亡し、1名の被害者は重傷を負ったもので、結果は重大である。また、被告人は、複数の交通違反により運転免許停止処分を受 けたことがあり、自動車運転者として交通の安全を確保する意識が低かったといわざるをえない。 さらに、被告人は、採用面接時の年齢詐称の発覚を免れるため、「生年」の記載が書き換えられた偽造の運転免許証写しを勤務先に提出したのであり、動機は身勝手で短絡的である。使われた運転免許証の写しは、一見しただけでは偽造と分からず、 実際に勤務先の担当者も偽造に気付くことができなか れた偽造の運転免許証写しを勤務先に提出したのであり、動機は身勝手で短絡的である。使われた運転免許証の写しは、一見しただけでは偽造と分からず、 実際に勤務先の担当者も偽造に気付くことができなかったもので、身分証明する文書としての信頼性がある運転免許証の信用性を害した程度も大きい。 以上の事情に照らすと、被告人の刑事責任は重いものであり、本件は実刑に処することが相当な事案である。 その上で、被告人の元勤務先の保険等により被害者らに被害弁償等がなされるこ とが見込まれること、被告人が公訴事実を認め反省の態度を示していること、被告 - 3 -人に禁錮以上の刑に処せられた前科がないこと等被告人に有利に酌むべき事情も考慮し、被告人を主文に掲げたとおりの刑に処することが相当であると判断した。 よって、主文のとおり判決する。 (求刑-懲役4年6月及び主文同旨の没収)令和6年4月22日 さいたま地方裁判所第3刑事部 裁判長裁判官金子大作 裁判官深澤純子 裁判官山本奈央
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