平成16年3月23日判決言渡平成15年(ハ)第14986号保険金請求事件 主文 1 被告は,原告に対し,金19万1646円及びこれに対する平成14年10月30日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は,これを5分し,その2を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は,原告に対し,金31万9410円及びこれに対する平成14年10月30日から支払済みまで年5パーセントの割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 請求原因の要旨(1) 保険契約の締結ア原告は,東京都新宿区西新宿○-○-○所在の甲の地下1階でA(以下「本件店舗」という。)という名称で婦人服店を経営しているものであるが,平成13年2月14日,B損害保険株式会社(以下「B」という。)との間で,次の内容の動産総合保険契約(以下「本件保険」という。)を締結した。 (ア) 保険期間平成13年2月14日午後4時から平成14年2月14日午後4時まで(イ) 保険の目的商品一式(衣料品等)イ B損害保険株式会社は,平成14年4月1日,C保険株式会社に吸収合併され,同年7月1日,株式会社損害保険Dと商号変更した。 (2) 保険事故の発生(以下「本件被害」という。)平成13年8月2日午後7時から午後7時30分ころまでの間,本件店舗内にアジア系の外国人客が2人,2人,3人の連れで,それぞれ数秒,数分の間隔で入店した。3人連れは,洋服の試着をしたが購入するに至らず,小物の保険証入れを購入し,原告がその商品を包装しているときに,死角になるように立ちはだかっていた。その間,2人連れ2組は,店内を見回ってい 店した。3人連れは,洋服の試着をしたが購入するに至らず,小物の保険証入れを購入し,原告がその商品を包装しているときに,死角になるように立ちはだかっていた。その間,2人連れ2組は,店内を見回っていたが,落ち着かない不審な挙動であった。 原告が,包装し,レジを打っているときに2人連れの姿が見えなくなり,その後,他の2人連れ及び3人連れは,店内をうろうろ見回りながら店を出ていった。 原告は,アジア系の外国人客が出ていった直後に棚上の商品9枚が無くなっているのに気付いた。 そこで,原告は,ビルの警備室及び警察に電話で盗難の旨を連絡した。また,後日警察に被害届を提出し,受理された。 (3) 損害額原告は,上記9枚の商品が盗まれたことにより商品の販売価格である31万9410円相当の損害を受けた。 (4) 原告は,平成14年10月22日付け内容証明郵便により,Bに対し,保険金を支払うよう請求したが,同社はこれに応じなかった。 (5) よって,原告は,被告に対し,保険金31万9410円及びこれに対する履行期後である平成14年10月30日から支払済みまで年5パーセントの割合による遅延損害金の支払を求める。 2 被告の主張(1) 本件保険には,商品普通契約方式特約条項(以下「本件特約」という。)が付帯されているところ,本件特約第3条は,保険金を支払わない場合として「保管場所に不法に侵入しなかった者によりなされた窃取による被害。ただし,その者が暴行または強迫をした場合はこの限りではありません。」と規定している。 (2) 本件被害の状況は,店舗の営業中,5人グループの客若しくは2人組の客が,店内の商品を窃取する意図を秘し,あたかも購買する意思があるかのように装って平穏裡に店内に入り,原告もその挙動を疑うことなく,客が去った後, 況は,店舗の営業中,5人グループの客若しくは2人組の客が,店内の商品を窃取する意図を秘し,あたかも購買する意思があるかのように装って平穏裡に店内に入り,原告もその挙動を疑うことなく,客が去った後,店頭の商品がかすめ取られていることが発覚したというのであり,本件被害は,本件特約3条に定める「不法に侵入しなかった者によりなされた窃取による被害」に他ならない。 Bは,被保険者である原告の「不法に侵入しなかった者によりなされた窃取による被害」を填補しない旨約した上で損害保険契約を引き受けたのであり,このBの損害保険の契約上の地位を引き継いだ被告は,「不法に侵入しなかった者によりなされた窃取による被害」を被った原告の損害を填補する責には任じない。 4 争点本件被害は,本件特約第3条の定める保険金を支払わない場合に該当するか。 第3 争点等に対する判断 1 請求原因の要旨記載の事実について(1) 請求原因の要旨(1)の事実及び同(2)のうち被害態様を除く本件被害発生の事実は当事者間に争いがない。 (2) 証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件被害の態様は,原告が請求原因の要旨(2)で主張する内容にほぼ一致するものと認められるが,原告がBに対し,本件被害の状況を報告した際には,「営業中,7人の客がいた。5人グループの1人の客が商品を買ってくれた。残りの2人連れはしばらく店内にいたが出て行った。2人連れが出た後,棚を見ると棚にあったセーターがなくなっていた。」という内容であった。 (3) 請求原因の要旨(3)の損害額については,原告の主張によれば,原告主張の金額は販売価格であり,原告が販売を委託された卸売業者に実際に支払った金額は19万1646円であるとのことである。 そうすると,損害額としては,この19万1646円を対象とすべきであり,証拠及び の金額は販売価格であり,原告が販売を委託された卸売業者に実際に支払った金額は19万1646円であるとのことである。 そうすると,損害額としては,この19万1646円を対象とすべきであり,証拠及び弁論の全趣旨によれば,原告に上記損害が発生したことが認められる。 (4) 請求原因の要旨(4)の原告がBに対して,保険金を支払うよう請求したのに対し,同社がそれに応じなかった事実は,当事者間に争いがなく,証拠及び弁論の全趣旨によれば,その時期は,原告が遅延損害金を請求している平成14年10月30日より前であることが認められる。 2 争点について(1) 証拠によれば,本件保険には,本件特約が付帯されており,その第3条には,保険金を支払わない場合として,「保管場所に不法に侵入しなかった者によりなされた窃取による被害。ただし,その者が暴行または強迫をした場合はこの限りではありません。」と定められていることが認められる。 (2) 上記のとおり,本件特約第3条は,本文に「保管場所に不法に侵入しなかった者によりなされた窃取による被害」と定めて,適法な立入者による窃取による被害を保険金支払の対象外とし,ただし書に「ただし,その者が暴行または強迫をした場合はこの限りではありません。」と定めて,暴行(強取),強迫(喝取)による被害については,保険金支払の対象としている。 そこで,最初から窃取の目的をもって不法に店内に立ち入った者が,目的どおりに窃取した場合に保険金支払の対象となるのかが問題となる。 被告は,この点に関し,本件特約第3条全体の趣旨は,店内に立ち入った加害者が暴行又は強迫を用いて商品を盗取した場合(強取・喝取)には本保険で担保するものの,暴行又は強迫を用いずに商品を盗取した場合(窃取)には担保しないとの意味に解すべきである旨主張する。 ち入った加害者が暴行又は強迫を用いて商品を盗取した場合(強取・喝取)には本保険で担保するものの,暴行又は強迫を用いずに商品を盗取した場合(窃取)には担保しないとの意味に解すべきである旨主張する。 しかし,本件特約第3条は,「保管場所に不法に侵入しなかった者によりなされた窃取による被害」と定めており,最初から窃取の目的をもって不法に店内に立ち入った者が,目的どおりに窃取した場合について,保険金支払の対象外であるとは明示していない。そうすると,上記のケースにおける本件特約第3条の趣旨は,加害者が最初から窃取の目的をもって不法に店内に立ち入ったことの立証責任を被害者に負わせたものであり,被害者がその点を立証した場合には,保険金支払の対象とするものであると解するのが相当である。 3 そこで,本訴請求において,加害者が最初から窃取の目的をもって不法に本件店舗内に立ち入ったことについての立証がされたかが問題となるが,請求原因の要旨(2)の被害態様がほぼ認められることは前記のとおりであり,複数人が役割分担をした上で,短時間に高額な商品を狙って窃取し,立ち去るという犯行態様からすれば,加害者は最初から窃取の目的で不法に本件店舗内に立ち入ったと推認することができ,原告は,被告に対し,前記損害額19万1646円の保険金請求権を有するというべきである。 4 よって,主文のとおり判決する。 東京簡易裁判所民事第1室裁判官若生朋美
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