令和5年5月11日東京地方裁判所刑事第3部宣告令和4年刑(わ)第2733号贈賄被告事件 主文 被告人Aを懲役1年6月に、被告人Bを懲役1年に処する。 被告人両名に対し、この裁判が確定した日から3年間、それぞれその刑の執行を猶予する。 理由 【罪となるべき事実】被告人Aは、株式会社C社の専務執行役員等であったもの、被告人Bは、同社の東京2020オリンピック・パラリンピックプロジェクト本部本部長等であったものであるが、被告人両名は、同社の代表取締役等であったDと共謀の上、平成26年4月頃から平成30年3月頃までの間、多数回にわたり、東京都港区(住所省略)所在の株式会社E社事務所等において、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(以下「組織委員会」という。)の理事として、組織委員会の理事会を構成しその業務執行の決定等について議決権を行使するとともに、組織委員会のマーケティング業務に関し、第32回オリンピック競技大会(2020/東京)及び東京2020パラリンピック競技大会(以下、両大会を合わせて「東京2020大会」という。)への協賛企業を募るなどの職務に従事していたFに対し、C社が、組織委員会のマーケティング専任代理店である株式会社G社の販売協力代理店として選任されるとともに、東京2020大会におけるスポンサー契約の提案・契約交渉及び契約締結に関する支援業務等を行わせてもらえるよう後押ししてもらいたいなど、C社が有利かつ便宜な取り計らいを受けたい旨の請託をし、同取り計らいを受けたことの謝礼及び今後も同様の取り計らいを受けたいとの趣旨の下に、別表記載のとおり(別表省略)、令和元年11月29日から令和4年1月31日までの間、26回にわたり、同区(住所省略)所在の株式 いを受けたことの謝礼及び今後も同様の取り計らいを受けたいとの趣旨の下に、別表記載のとおり(別表省略)、令和元年11月29日から令和4年1月31日までの間、26回にわたり、同区(住所省略)所在の株式会社H銀行I支店 に開設されたC社名義の当座預金口座から、同区(住所省略)所在の株式会社J銀行K支店に開設された、Fが経営し代表取締役を務める前記E社名義の普通預金口座に現金合計1485万円を振込入金し、もってFの職務に関し賄賂を供与した。 【量刑の理由】 1 本件は、大手広告代理店であるC社において東京2020大会の関連業務を担っていた被告人両名が、同社代表取締役であったD(以下、被告人両名と合わせて「被告人ら」という。)と共謀の上、組織委員会のマーケティング担当理事(以下「本件理事」という。)に対し、同大会のスポンサーセールスに関して有利かつ便宜な取り計らいを受けたい旨の請託をし、その取り計らいを受けたことの謝礼等の趣旨の下に賄賂を供与したという贈賄の事案である。 2 被告人両名の行為責任について検討する。 本件犯行の経緯は次のとおりである。すなわち、C社においては、スポーツビジネスの強化を図るとともに、東京2020大会の招致成功時には同大会のマーケティングに参画してスポンサーセールスを積極的に行い、大きな利益と実績を上げるべく、スポーツマーケティングの第一人者であり同大会のマーケティング活動のキーマンになると目された本件理事の助力を得たいと考え、同大会の招致決定に先立ち、本件理事が代表取締役を務める会社との間でコンサルティング契約(以下「本件契約」という。)を締結し、毎月のコンサルティングフィーの支払を開始した。被告人らは、同大会の招致決定後、本件理事が理事に就任する直前から約4年間という長期にわたり、組織委員会のマー 約(以下「本件契約」という。)を締結し、毎月のコンサルティングフィーの支払を開始した。被告人らは、同大会の招致決定後、本件理事が理事に就任する直前から約4年間という長期にわたり、組織委員会のマーケティング担当理事として実質的に大きな影響力を有していた本件理事に対し、判示のとおり、同大会のスポンサーセールスに関して有利かつ便宜な取り計らいを受けたい旨の請託を多数回にわたって重ねた。そして、これを受け、本件理事は、組織委員会のマーケティング専任代理店によるC社の販売協力代理店への選任やスポンサーセールスに関して、各方面への口利きや働き掛けをするなどしたほか、内部情報を踏まえ、専任代理店と競合しないスポンサーセールス可能な企業を助言するなどして、C社を後押しし、とりわけ、 C社において、スポンサー企業の獲得が難航して危機的な状況に陥っていた中で、専任代理店の取引先のスポンサー候補企業を融通し、販売協力代理店としてC社に手数料収入を得させ、大手広告代理店として何の実績もないという不名誉な状況を回避させるなど、様々な便宜を供与した。被告人らは、このような便宜供与に対する謝礼等の趣旨で、東京2020大会が終了するまで本件契約の更新を続け、本件賄賂の供与行為に及んだ(起訴の対象は令和元年11月以降の行為)。 以上のとおり、被告人らは、本件理事に対し、長期間多数回の請託を重ねた上、起訴分だけでも、約2年2か月にわたって月額55万円の支払を続けたのであり、贈賄額は合計1485万円と高額である。東京2020大会は、世界最大規模のスポーツの祭典として世界的に注目され、その開催が国家的にも特に重要と位置付けられていたところ、本件は、その準備や運営を担う組織委員会役員等の職務の公正さ及び同大会の公正かつ適正な運営を大きく損ね、これらに対する信頼 て世界的に注目され、その開催が国家的にも特に重要と位置付けられていたところ、本件は、その準備や運営を担う組織委員会役員等の職務の公正さ及び同大会の公正かつ適正な運営を大きく損ね、これらに対する信頼を失墜させ、同大会に汚点を残した(このような状況に照らし、組織委員会の業務の公正さ・適正さが現実に害されたとはいえない旨の被告人Aの弁護人の主張は採用できない。なお、前記スポンサー候補企業融通の件でも、本件理事の働き掛けによって専任代理店の意思決定がゆがめられた結果、最終的決定権を有する組織委員会の意思決定がゆがめられたことは明らかである。)。本件の結果は重大である。もとより、本件理事の影響力を利用して自社の利益や実績を上げることに執心し、自らも利益を上げようとする本件理事との癒着を続け、本件犯行に至ったという動機や経緯に酌むべき点はない(本件理事の理事就任が確実でない時点で本件契約を締結し、その際、東京2020大会以外のスポーツビジネスに関する便宜供与も期待していたことを斟酌すべきである旨の被告人Bの弁護人の主張は採用できない。)。 被告人両名の役割等についてみると、被告人両名は、いずれもDが最終判断をして決めた会社の方針に従い、Dの指示を受け、その了解を得ながら業務の一環として、本件犯行に加担したものである。 そして、被告人Aは、本件契約の締結には関与していないものの、C社の営業部 門や東京2020大会担当部門の専務執行役員等として、同大会関連業務を統括する立場にあり、その部下の被告人Bと共に、各種の請託を始めとする本件理事とのやり取りの重要部分を担い、本件契約を継続すると判断した際もDに意見具申するなど、本件犯行全般に主体的かつ積極的に関与し、不可欠で重要な役割を果たした。 また、被告人Aが、平成31年3月、同社の顧問弁護 り取りの重要部分を担い、本件契約を継続すると判断した際もDに意見具申するなど、本件犯行全般に主体的かつ積極的に関与し、不可欠で重要な役割を果たした。 また、被告人Aが、平成31年3月、同社の顧問弁護士に相談し、コンサルティングフィーの供与が贈賄に当たり得るとの指摘を受けてもなお、本件契約を見直すことなく贈賄を継続した点は思慮が浅く、規範意識の希薄さを表すものといえる(C社の子会社の従業員による問題のある営業行為につき、被告人Aが同社社長に厳重抗議した際のやり取りなども踏まえれば、違法性の認識が希薄であったという被告人Aの弁護人の主張は採用できない。)。 また、被告人Bは、C社の東京2020大会関連部門の本部長等として、その関連業務の実務担当責任者の立場にあったところ、本件理事の影響力にいち早く目を付け、Dに進言するなどして、本件契約の締結において主導的な役割を果たしたほか、本件理事との窓口として本件理事と頻繁に接触し、各種の請託や連絡調整を含め、主体的かつ積極的に本件犯行に関与して重要な役割を果たした。もっとも、本件賄賂の供与行為は、いずれも被告人Bが平成31年3月にC社を退社した後に行われている上、被告人Bは、同退社後も、自らが設立した会社とC社との間で業務委託契約を締結し、東京2020大会関連業務への関与を継続したものの、顧問弁護士の前記指摘を知らされないなど、その関与の程度は小さくなり、同契約が終了した令和3年3月末以降は、同業務に一切関わっていない(同年4月以降の贈賄額は合計550万円)。 以上によれば、被告人Aの刑事責任は重いというべきであり、被告人Bの刑事責任は、被告人Aよりも軽いと評価すべきであるものの、相応に重いというべきである。 3 更に一般情状として、被告人両名は、いずれも捜査段階から事実を認めて詳細な供述を うべきであり、被告人Bの刑事責任は、被告人Aよりも軽いと評価すべきであるものの、相応に重いというべきである。 3 更に一般情状として、被告人両名は、いずれも捜査段階から事実を認めて詳細な供述をするなど、本件を真摯に反省していること、いずれも妻又は内妻の更生 への協力が見込まれること、被告人Aは、適切な管理を怠れば生命に関わる深刻な疾病に罹患していること、いずれも前科前歴がないことなどの事情が認められる。 4 そこで、以上の諸事情を総合考慮して、主文のとおり判決する。 (求刑被告人両名につきいずれも懲役1年6月)令和5年5月11日東京地方裁判所刑事第3部 裁判長裁判官友重雅裕 裁判官諸徳寺聡子 裁判官平墳優佳 (別表省略)
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