平成16年12月1日判決言渡平成14年(ワ)第365号損害賠償請求事件口頭弁論終結日平成16年9月29日判決 主文 1 被告Aは,原告に対し,1億円及びこれに対する平成14年12月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告Bは,原告に対し,1億円及びこれに対する平成14年12月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 3 被告Cは,原告に対し,5000万円及びこれに対する平成14年12月22日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 4 訴訟費用は被告らの負担とする。 5 この判決は仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 請求の趣旨主文同旨。 第2 事案の概要 1 本件は,経営破たんした富山商銀信用組合(以下「富山商銀」という。)から損害賠償請求権を譲り受けた原告が,富山商銀の理事であった被告らに対し,大口融資規制等に違反する違法な融資を行い,忠実義務・善管注意義務(中小企業等協同組合法42条,商法254条の3,商法254条3項,民法644条)を怠る債務不履行があったとして,中小企業等協同組合法38条の2第1項に基づき,回収不能となった融資額相当の損害金の内被告A及び同Bについては1億円,被告Cについては5000万円及びこれらに対する各訴状送達の日の翌日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金を連帯して支払うことを求めた事案である。 2 争いのない事実等(証拠を掲げない事実は当事者間に争いがない。)(1) 当事者等ア原告は,破たん金融機関から買い取った資産の回収等を業とする株式会社である。(甲1)イ富山商銀は,中小企業等協同組合法及び協同組合による金融事業に関する法律に準拠して設立された,組合員に対する資金の貸付け等を 金融機関から買い取った資産の回収等を業とする株式会社である。(甲1)イ富山商銀は,中小企業等協同組合法及び協同組合による金融事業に関する法律に準拠して設立された,組合員に対する資金の貸付け等を事業目的とする信用組合である。(甲2)ウ富山商銀は,平成11年10月8日,業務及び財産の状況に照らし預金等の払戻しを停止するおそれがあるとして,金融機能再生のための緊急措置に関する法律68条1項に基づく申出を行うとともに,福井商銀信用組合(以下「福井商銀」という。)との間で,同組合に事業の全部を譲渡することで基本合意し,事実上破たんした。富山商銀は,同年11月6日開催の臨時総代会において福井商銀への事業全部の譲渡及び富山商銀の解散を決議し,同月10日福井商銀との間で富山商銀の事業の全部を福井商銀に譲渡する旨の事業譲渡契約を締結した。平成12年6月23日,富山商銀は,原告との間で富山商銀の資産を原告が買い取る旨の資産買取契約を締結し,同月30日富山商銀は解散した。(甲2,4から6まで)エ被告Aは,平成6年5月20日富山商銀の理事に選任された。被告Aは,平成7年5月27日理事長に選任され,平成11年2月までその職にあった。 オ被告Bは,平成7年5月15日富山商銀の理事に選任された。被告Bは,平成7年6月22日専務理事に選任され,富山商銀の解散まで同職にあった(なお,被告Bは,平成10年6月20日代表理事に就任した(甲2)。)カ被告Cは,平成4年6月ころ富山商銀に職員として入組し,以後業務部次長及び同部長の職にあった。被告Cは,平成9年6月25日理事に,同年7月23日常務理事に選任され,富山商銀の解散まで同職にあった。 (2) 株式会社D組(以下「D組」という。)に対する融資ア D組は,昭和37年に設立された,土木工事等を業とする株式会社 理事に,同年7月23日常務理事に選任され,富山商銀の解散まで同職にあった。 (2) 株式会社D組(以下「D組」という。)に対する融資ア D組は,昭和37年に設立された,土木工事等を業とする株式会社である。D組は,富山市等からの公共土木工事を中心に工事請負の業務を行っていたが,次第に経営が悪化し,平成12年5月31日に手形不渡りを出し,同年6月20日に銀行取引停止処分を受けて事実上破たんした。 イ富山商銀は,平成2年からD組に対する融資を実行した。D組は,平成5年ころから,富山商銀に対する返済をたびたび延滞するようになった。平成7年9月の時点で,富山商銀のD組に対する融資残高は約6億4138万円(担保預金額を控除すると約6億1729万円),延滞金額は約4億8599万円に上っていた(甲13)。 ウ富山商銀は,平成7年4月,監督官庁である富山県(以下「県」という。)から,同年1月25日を基準日とする県の検査結果に基づき,D組に対する融資が大口融資規制を超えているとして特に指摘され,違法状態を早期に解消するように指導を受けた(甲10の1,14)。そのため,富山商銀は理事会等でD組への対応を検討した結果,同年9月26日開催の理事会で,D組に対し,受注の増加や合理化による固定費の圧縮等の経営改善がなされることを前提に,理事会の責任で,当面の運転資金1億5000万円程度を追加融資することもあり得ることとされた(甲16)。 エそこで,富山商銀は,理事らを構成員とする株式会社D組管理委員会(以下「D組管理委員会」という。)を組織し(甲11),平成7年9月29日,D組との間で改めて信用組合取引契約を締結した(甲17)。同日以後,富山商銀からD組に行う融資は,貸付金をいったん富山商銀のD組管理委員会名義口座に入金した後,富山商銀のD組名義口座に入金す 9日,D組との間で改めて信用組合取引契約を締結した(甲17)。同日以後,富山商銀からD組に行う融資は,貸付金をいったん富山商銀のD組管理委員会名義口座に入金した後,富山商銀のD組名義口座に入金する方法がとられるようになった(甲13,23から45まで,弁論の全趣旨)。 オこのようなD組管理委員会の枠組みを利用した融資残高は,平成8年2月29日の時点で既に1億5000万円を超過したが,富山商銀はその後も同委員会の枠組みを利用した融資を行った。 カ富山商銀は,平成9年2月28日から平成10年8月31日までの間,23回にわたり,D組に対しD組管理委員会の枠組みを利用して別紙融資目録〈省略〉記載の各融資を実行した(以下「本件各融資」という。)。その結果,同委員会の枠組みを利用した本件各融資の融資残高は,平成10年8月31日現在3億0160万円に上っている。(甲45,弁論の全趣旨)(3) 信用組合の融資に関する規制等ア大口融資規制信用組合の同一人に対する融資が多額に上ると,融資の均てんが図れないばかりか,信用組合の資産の健全性を害し経営を圧迫することとなる。そのため,本件各融資当時,協同組合による金融事業に関する法律6条1項,銀行法13条,協同組合による金融事業に関する法律施行令3条により,信用組合の広義自己資本の額(出資金,準備金及び引当金)に100分の20を乗じた額が,信用組合による同一人に対する貸付額の限度(信用供与限度額)とされていた。 富山商銀の同一人に対する信用供与限度額は,平成7年1月25日現在では6121万7000円,平成9年9月9日現在では7981万8000円であった。 イ安全性の原則信用組合を含む金融機関は,多数の者から資金を集めて運用しておりその資金を安全確実に運用すべき責務がある。したがって,その融資業務におい 月9日現在では7981万8000円であった。 イ安全性の原則信用組合を含む金融機関は,多数の者から資金を集めて運用しておりその資金を安全確実に運用すべき責務がある。したがって,その融資業務において,貸出先の資産及び経営状況やその信用の程度を精査するとともに,確実かつ十分な担保を徴求するなど貸付金回収のために万全の措置を講ずる注意義務を負う。 このような安全性の原則に鑑みると,信用組合の融資の決裁をなす者には,融資先の経営状況等の調査を十分に行い,その資金使途を精査して返済計画の確実性を検証したうえ,確実かつ十分な担保を徴求するなど,貸付金を確実に回収するための措置を講ずべき法的義務がある。 (4) 資産買取契約の締結原告は,平成12年6月23日,上記(1)ウ記載のとおり,富山商銀との間で富山商銀の資産を買い取る旨の資産買取契約を締結した(甲6)。富山商銀は,平成14年3月29日,被告らに対する本件損害賠償請求権を原告に譲渡した旨被告らにそれぞれ内容証明郵便で通知し,同通知はいずれも同月30日被告らに到達した。 3 争点(1) 本件各融資の違法性(原告の主張)本件各融資は次のとおり違法な融資である。 ア大口融資規制違反富山商銀がD組管理委員会の枠組みを利用した融資を開始した平成7年9月には,D組に対する融資残高は担保預金額を控除しても約6億1730万円であった。平成7年1月25日時点での富山商銀の同一人に対する信用供与限度額は6121万7000円であった。したがって,富山商銀のD組に対する融資残高は,平成7年9月の時点で信用供与限度額を約5億5000万円も超過していた。 しかも,被告らは,この時点以後もD組管理委員会の枠組みを使用して更に多額の追加融資を行った。平成8年2月29日には,追加融資の限度枠として理事会 用供与限度額を約5億5000万円も超過していた。 しかも,被告らは,この時点以後もD組管理委員会の枠組みを使用して更に多額の追加融資を行った。平成8年2月29日には,追加融資の限度枠として理事会で定めた1億5000万円をも超過する金額になっていて,信用供与限度額を超える融資が大幅に拡大していた。 にもかかわらず,被告らは,D組に対する融資を打ち切ることなく,更に融資を継続した。その結果,信用供与限度額を超える融資を更に拡大させ,平成11年3月31日を基準日とする県の検査の時点では,D組管理委員会の枠組みを利用した融資を含むD組に対する融資残高は約8億5300万円に上っていた。 イ安全性の原則違反(ア) 本件各融資の開始当時,D組の経営状況は悪化していた。D組の売上高は,平成4年3月期から平成7年3月期にかけて年々減少していた。なお,D組の決算書によれば,平成5年3月期以降,概ね30万円から100万円程度の経常利益が計上されている。しかし,このうち営業外収益として計上されている毎年約800万円から約1000万円の受取利息は,そのうちの約700万円がD組の取締役らに対する貸付金の利息であり,これらは全く返済されることなく未収入金として累積しているものである。したがって,実質的にはD組の経常収支は赤字であった。 (イ) 従来から,D組に対する融資の使途は運転資金や支払手形の決済資金であり,その返済原資は請負工事代金収入であった。このような資金使途及び返済原資を前提に融資を実行した結果融資残高は累増した。D組管理委員会の枠組みを利用した融資を開始した平成7年9月ころには,融資残高は担保預金額を控除しても約6億1730万円,うち延滞金額は約4億8600万円にも上っていた。 したがって,D組の経営状況が抜本的に改善されない限り,従来と同様の した平成7年9月ころには,融資残高は担保預金額を控除しても約6億1730万円,うち延滞金額は約4億8600万円にも上っていた。 したがって,D組の経営状況が抜本的に改善されない限り,従来と同様の資金使途及び返済原資を前提に融資を行っても,融資金が返済されなくなることは明白であった。 そのうえ,D組管理委員会の枠組みを利用した融資を開始した後,金利減免措置を実施したうえ約1億5000万円の融資をしても,経営の抜本的改善がなされる様子はなかった。 しかるに,被告らは,従来と同様の資金使途及び返済原資を前提に本件各融資を実行した。 (ウ) 被告らは,本件各融資の実行にあたって,返済計画の十分な検討をせず,確実な返済のための具体的方策もとっていなかった。D組管理委員会の枠組みを利用した融資を開始した後も,同委員会を通じたD組の管理は,せいぜい支払先や工事請負代金の入金時期について一応のチェックがなされていた程度であり,売上増加のための具体的対策や抜本的な経費節減策等の方策は講じられていなかった。 (エ) 物的担保及び人的担保a 物的担保富山商銀のD組に対する債権の物的担保は,以下の不動産及び生命保険に基づく各請求権上の質権のみである。本件各融資当時,D組の融資残高は約6億円に上っていたから,大幅な担保不足であり,本件各融資のための余剰担保がないことは明らかである。 (a) 不動産平成7年11月までの時点で根抵当権が設定された各不動産(6筆の土地及び建物)の評価額の総額は1億4803万5000円であり,その担保価格は総額1億1842万8000円(掛け目80%)であった。しかも,この評価はいわゆるバブル景気の平成2年又は平成4年に行われたものであるから,その担保価値は大幅に下落している。 なお,平成7年12月22日2筆の土地に抵当権が付されて け目80%)であった。しかも,この評価はいわゆるバブル景気の平成2年又は平成4年に行われたものであるから,その担保価値は大幅に下落している。 なお,平成7年12月22日2筆の土地に抵当権が付されているが,これらの土地の平成11年度の路線価は合計約214万円にすぎない。 (b) 生命保険に基づく各請求権上の質権設定4件の生命保険に基づく各請求権に質権の設定がなされていた。しかし,これらの生命保険の解約返戻金の合計額は,現実に解約がなされた平成12年12月ないし平成13年1月当時で,1079万6416円にすぎない。 b 人的担保D組管理委員会の枠組みを使用した融資が開始された平成7年9月29日,E,F,G,H及びIは,富山商銀との間で,D組の富山商銀に対する手形貸付債務につき連帯して保証する旨の契約を締結した。 しかし,上記各保証人はいずれも返済能力に乏しい。他方,D組管理委員会の枠組みを利用した融資開始当時でも,融資残高は約6億円に達しており,しかも,平成8年2月29日の時点では,D組管理委員会の枠組みを利用した融資残高も1億5000万円を超過することとなった。したがって,上記各保証人から本件各融資について保証債務の履行を受けることが期待できないことは明白であった。 ウ経営判断であるとの主張について本件各融資は,いずれも法令に定めのある大口融資規制に大幅に違反するものである。このような違法性のある行為につき,経営判断の原則を適用する余地はなく,違法性を阻却する特段の事情が認められない限り,理事の任務に違反した違法な行為である。 大口融資規制は,金融機関経営において,危険の分散や財務の健全性を図るために不可欠な規制である。このような大口融資規制の目的・趣旨に照らすと,同規制に違反する行為は,原則として信用組合の財務の健全性を害する不 は,金融機関経営において,危険の分散や財務の健全性を図るために不可欠な規制である。このような大口融資規制の目的・趣旨に照らすと,同規制に違反する行為は,原則として信用組合の財務の健全性を害する不合理なものであって,経営者の裁量権の範囲を逸脱するものである。 D組管理委員会の枠組みを利用した融資がD組の倒産による富山商銀の経営破たんを回避するためのものであったという被告らの主張は否認する。 仮にそうであったとしても,富山商銀が組合員が出捐した金員によって存立する金融機関であることからすれば,その資金を更に逼迫させることが明らかな状況にありながら,連鎖倒産回避の目的で回収不能な貸付を行うことは許されない。 なお,被告らは,被告らが理事となった時点では,既に大口融資規制を超えるD組への融資が実行されていて,これが不良債権になっていたと主張するが,そうであれば,むしろ,そのような融資先に更に融資を実行することはなおさら違法である。 エ県の是認があったとの主張について県が富山商銀に対し本件各融資を是認した事実はない。むしろ,県は,平成10年2月20日,富山商銀に対して,企業実体を超える過大融資や問題先送りのための安易な追加融資が認められること等を指摘し,融資にあたっては慎重な審査及び管理を行うように改善を求める旨の検査示達書を発出していた。 なお,被告らは金融機関の破たんの前例がなかったと主張するが,本件各融資当時には,既に金融機関の破たんの前例が存在していた。 そもそも,富山商銀の経営主体は被告らであり,その運営は被告らの判断と責任においてなされるべきものである。したがって,県の是認を理由に責任を回避することは許されない。 (被告らの主張)ア経営判断等被告Bが富山商銀の理事に選任された平成7年当時,富山商銀は,既に,D組(これに関連する きものである。したがって,県の是認を理由に責任を回避することは許されない。 (被告らの主張)ア経営判断等被告Bが富山商銀の理事に選任された平成7年当時,富山商銀は,既に,D組(これに関連する者を含む。)及びその他の融資先に対し,大口融資規制に反する過大な貸付けを実行していて,これらが不良債権となっていた。また,同年5月31日現在において富山商銀が有していた預金のうち,金融機関等の大口定期預金が2分の1を超える割合を占めていた。そのため,これらの金融機関等から払戻請求があれば,富山商銀は破たんせざるを得ない状況であった。このように,被告らが理事に就任したときには,既に富山商銀の経営は危機的な状況にあった。 D組に対する貸付けは巨額であり,D組が倒産した場合には富山商銀自身の経営破たんを招くため,被告らは,これを回避するためにD組管理委員会を組織してD組に対する融資及び回収を行った。本件各融資により融資額が増加したとしても,富山商銀自身の倒産を避けなければならないという危機的状況下での経営判断としてやむを得ずなされたものであるから,違法性はない。 イ県の是認被告らは以上の経過を随時県に報告し,県からもやむを得ないこととして是認されてきた。なお,この時点では,金融機関の破たんの前例がなくこれに関する枠組みもなかったため,監督官庁であった県は,富山商銀を直ちに経営破たんさせることはできなかった。 ウ本件各融資の回収可能性D組は公共工事が主体であり,神通川河川敷の草刈りについては長年にわたってほぼ独占的に受注していた。公共工事が受注できれば回収は確実であった。 (2) 本件各融資実行時の被告らの融資権限等(原告の主張)富山商銀では,被告Aと被告Bがそれぞれ理事長と専務理事に就任した平成7年5月以後,合議制により融資決定を 収は確実であった。 (2) 本件各融資実行時の被告らの融資権限等(原告の主張)富山商銀では,被告Aと被告Bがそれぞれ理事長と専務理事に就任した平成7年5月以後,合議制により融資決定をするものとされた。融資案件については,平成7年5月以後は少なくとも理事長である被告A及び専務理事である被告Bが,平成9年7月23日以後はこの2名に加えて常務理事である被告Cがいずれも融資の決裁をしてこれを実行していた。D組管理委員会の枠組みを利用してなされた本件各融資の稟議においても,被告らは各稟議書の押印欄に押印をして融資の決裁をしている。 また,被告らは,本件各融資の時点で既にD組に対する融資残高が大口融資規制に大幅に違反していることを認識していたし,D組の経営状況が悪化していることも認識していた。 仮に,被告Aが名目上の理事長にすぎないとの理由で,また,被告B及び被告Cが単に融資担当理事ではないとの理由で漫然と違法融資の承認(事後承認も含む。)を繰り返していたならば,それ自体が著しい職務の怠慢であり,注意義務違反となる。 ア被告A被告Aは,融資案件については理事長として最終的な決裁をする立場にあり,現に自ら決裁を行っていた。被告Aが不在のときは理事長の決裁印が押される前に融資が実行されることもあったが,その場合でも職員が事前に被告Aに電話で融資の承認を得ており,更に事後的に被告Aが自ら稟議書に決裁印を押していた。 イ被告B被告Bは,専務理事就任後富山商銀が破たんするまで,常勤として富山商銀で執務していて,融資を含めた業務全般について強い発言力を持っていた。被告Bは,専務理事就任後,全ての融資案件について事前に内容を確認して融資決裁を行っていた。 ウ被告C被告Cは,銀行出身の実務家であり,平成7年ころからは富山商銀で唯一の部長 言力を持っていた。被告Bは,専務理事就任後,全ての融資案件について事前に内容を確認して融資決裁を行っていた。 ウ被告C被告Cは,銀行出身の実務家であり,平成7年ころからは富山商銀で唯一の部長職として全ての融資案件を具体的に把握し,融資業務を統括していた。特にD組に対する融資については,被告Cは,常務理事就任前から実務上の責任者であり,常務理事就任後も融資内容を最も具体的に把握したうえで融資案件の決裁を行っていた。 (被告Aの主張)被告Aは,金融業務等の複雑で専門知識を要する仕事には疎く,信用組合の理事の義務の存在そのものや,それらの内容を理解する能力に欠けていた。また,大口融資規制の存在も知らなかった。 また,被告Aは,非常勤で名目的な理事又は理事長であったにすぎず,実質的な融資業務は行っていなかった。本件各融資についても,被告Aはその詳細を知らずほとんど事後報告を受けたにすぎない。すなわち,被告Aには,本件各融資の決裁をするとか承認するという職務権限がなかったから,本件各融資に対する責任はない。 仮に被告A作成名義の関係書類が存在するとしても,被告Aが関わったわけではない。被告A名の印影があるとしても,そのほとんどは被告Aが押印したものではない。被告A自身が押印しなかったものについて,職員から電話で承諾を求められたことはない。被告Aが署名又は押印したものがあるとしても,被告Aはその内容を理解していたわけではなく,ただ,他の者から署名又は押印するように指示されたため行ったにすぎない。 被告Aは,本件各融資の回収可能性がなかったことは知らなかった。理事長就任時に,J常務理事等から,D組の経営改善やD組に対する債権の回収が困難であるとの報告を受けていたわけではないし,それについての協議にも加わっていない。また,理事会でこのような報告 かった。理事長就任時に,J常務理事等から,D組の経営改善やD組に対する債権の回収が困難であるとの報告を受けていたわけではないし,それについての協議にも加わっていない。また,理事会でこのような報告を受けたわけでもなく,D組の再建が困難であることを認識し得なかった。 (被告B及び被告Cの主張)D組管理委員会による融資業務は,当初は前記J常務理事が担当し,その辞任後はK理事が担当し,その後L常務理事がこれに加わった。D組に対する融資は,これらの融資担当理事がD組の公共工事の受注状況等を確認しながらD組の求めに応じて融資の稟議書を起案し,理事長であった被告Aが融資を行うか否かの決裁を行って実行していた。このように,本件各融資は融資担当理事と理事長であった被告Aによって実行されたものである。被告B及び被告Cは,以下のとおり,融資業務を担当しておらず決裁権を有していなかったから本件各融資についての責任はない。 なお,D組管理委員会は,理事全員が委員となり,毎月開催される理事会において融資状況の概況の報告がなされていたが,融資業務の性質上事後報告にならざるを得なかった。 ア被告B被告Bは,他の韓国系信用組合と合併して富山商銀の生き残りを図るため,理事会の承認を得て,福井商銀等との折衝,韓信連(韓国系信用組合の連合組織),監督官庁であった県等との交渉に当たっていたものであり,融資業務は担当していない。 被告Bには,理事長による融資決裁前には稟議書は回されず,理事長によって融資承認の決裁がなされ融資が実行された後に稟議書が回覧されていたにすぎない。被告Bは,融資額の増額に反対していたが,既に融資が実行されていたので稟議書に押印せざるを得なかった。 イ被告C被告Cは,業務部部長として内部業務及び資金繰りを担当していたが,融資の審査業務は担当して は,融資額の増額に反対していたが,既に融資が実行されていたので稟議書に押印せざるを得なかった。 イ被告C被告Cは,業務部部長として内部業務及び資金繰りを担当していたが,融資の審査業務は担当していなかった。 被告Cは,融資実行前に稟議書に押印していたが,融資の決裁をしていたわけではなく,業務部長として内容を把握していたにとどまるものであった。 (3) 損害の有無(原告の主張)ア原告が富山商銀の資産を譲り受けた平成12年6月26日の時点で,本件各融資の残債権は3億0160万円である。 D組は,平成12年6月20日に銀行取引停止処分を受けて事実上破たんし,現在営業を廃止しているから,支払能力はない。 本件各融資を含むD組の富山商銀に対する債務を担保するために前記の物的及び人的担保が設定されているが,これらによっても本件各融資が弁済される見込みはない。 よって,本件各融資の残債権額3億0160万円が,被告らが本件各融資を違法に決裁したことにより富山商銀が被った損害となる。 イ被告Aと被告Bは,それぞれ理事長,専務理事として本件各融資の全てを決裁している。したがって,上記損害の全てについて責任を負う。 被告Cは,常務理事として,本件各融資のうち別紙融資目録記載の番号9番から23番の融資を決裁している。したがって,上記損害のうち,同目録記載の番号9番から23番の融資の残債権合計額1億5730万円について責任を負う。 (被告らの主張)争う。 (4) 原告と富山商銀との間の資産買取契約に,本件損害賠償請求権が含まれるか。 (原告の主張)原告は,資産買取契約3条2項に基づき,本件損害賠償請求権を買い取った。 (被告B及び被告Cの主張)被告Bは,自ら富山商銀の代表理事として,この契約と特別利害関係のないものとして原告との資産買取契約を締結している 契約3条2項に基づき,本件損害賠償請求権を買い取った。 (被告B及び被告Cの主張)被告Bは,自ら富山商銀の代表理事として,この契約と特別利害関係のないものとして原告との資産買取契約を締結している。 富山商銀が被告らに対して損害賠償請求権を有していた事実はなく,原告に対し富山商銀の被告らに対する損害賠償請求権を譲渡した事実もない。 第3 当裁判所の判断 1 本件各融資の違法性(争点1)について判断する。 (1) 証拠(各項目末尾に掲記)及び前記争いのない事実等によれば,以下の事実が認められる。 ア富山商銀の同一人に対する信用供与限度額は平成7年1月25日現在では6121万7000円,平成9年9月9日現在では7981万8000円であった。しかるに,富山商銀がD組管理委員会の枠組みを利用した融資を開始した平成7年9月には,D組に対する融資残高は担保預金額を控除しても約6億1730万円であった。また,その後行われた,D組管理委員会の枠組みを利用して行われた本件各融資の平成10年8月31日現在の残高は3億0160万円に上り,平成11年3月31日におけるD組に対する融資残高は8億5300万円に上っていた。(甲10の1,11,12の1,13,45,弁論の全趣旨)イ平成7年9月の富山商銀のD組に対する融資残高は,担保預金額を控除しても上記のとおり既に約6億1730万円に上っており,D組はそのうち約4億8600万円を延滞していた。D組の経営状態は,相当に悪化していて再建に懸念がもたれる状態であった。富山商銀は,平成7年9月,D組に対する融資を管理するため,理事らを構成員とするD組管理委員会を組織した。しかし,同委員会による管理は,同委員会口座を利用した貸付金の別口管理や事業に伴う支払口のチェックをするのみであり,D組の工事受注状況や 管理するため,理事らを構成員とするD組管理委員会を組織した。しかし,同委員会による管理は,同委員会口座を利用した貸付金の別口管理や事業に伴う支払口のチェックをするのみであり,D組の工事受注状況やその進捗状況及び資金計画等の財務管理には関与できていない形式的なものであった。 (甲11,13,弁論の全趣旨)ウ富山商銀のD組に対する債権についての物的担保の評価額は,前記第2の3(1)の原告の主張イ(エ)aに記載のとおりであった。また,人的担保として連帯保証人が付されていたが返済能力はなかった。(甲21の1,21の2,弁論の全趣旨)(2) 以上の事実によれば,本件各融資は,平成7年9月の時点で既に約5億5000万円という信用供与限度額の約9倍に達する大幅な同限度額の超過があるのに更に実行されていて,大口融資規制に著しく違反していると認められる。大口融資規制が金融機関の経営において危険の分散や財務の健全性を図るために非常に重要な規制であることに照らすと,大口融資規制に違反して信用供与限度額を大幅に超える融資を行うことは,原則として理事らの裁量を逸脱した違法なものというべきである。 加えて,D組は経営状態が悪化していて多額の債務を延滞する状態であったうえ,本件各融資の担保も大幅に不足していた。D組管理委員会による債権管理も形式的で不十分なものであり,返済を確実にするための具体的方策は何らとられていなかった。そうすると,本件各融資にあたって貸付金を確実に回収するための措置がとられていたとは到底いうことができず,本件各融資は安全性の原則にも反する。しかも,本件各融資は,平成7年9月26日開催の理事会で定めたD組に対する追加融資の上限額を超えるものでもあった(もっとも,この決議内容自体,信用供与限度額を超える融資を許容するもので 則にも反する。しかも,本件各融資は,平成7年9月26日開催の理事会で定めたD組に対する追加融資の上限額を超えるものでもあった(もっとも,この決議内容自体,信用供与限度額を超える融資を許容するものであるから問題がある。)。このような事実は,本件各融資の違法性を一層強めるものである。 被告らは,本件各融資は,富山商銀の大口貸付先であるD組の破たんを回避し,ひいては富山商銀自体の破たんを回避するために実行されたものであって,経営判断としてやむを得ず行われたものであるから違法ではないと主張する。しかし,上記認定のとおり,本件各融資の実行によってD組の再建の見通しがあったわけではないから,仮に本件各融資がD組の破たんを回避するためになされたとしても,当面の破たんを回避できるというものにすぎず,本件各融資は既に信用供与限度額を大幅に超える貸付をしている貸付先への多額の追加融資であり,安全性の原則に反するものでもあることを併せ考慮すれば,本件各融資の違法性を阻却する特段の事情があるとはいえない。 また,被告らは,監督官庁である県から本件各融資を是認されていたのであるから,違法性がないとも主張する。しかし,仮に県が本件各融資を特に問題としなかったとしても,それ故に被告らが責任を免れるものではないし,そもそも,証拠(甲9から11まで)によれば,県は,平成4年1月16日,平成7年1月25日及び平成9年9月9日を各基準日とする富山商銀に対する各検査において,D組らに対する貸付けが信用供与限度額を超えていることを指摘し,このような大口貸出は危険分散の見地等から好ましくないとして,違法状態を早急に改善するように求めていることが認められる。ところで,被告Bは,同人が平成7年6月に県の担当者と協議した際,県の担当者からD組に対する融資を止めない方がい 地等から好ましくないとして,違法状態を早急に改善するように求めていることが認められる。ところで,被告Bは,同人が平成7年6月に県の担当者と協議した際,県の担当者からD組に対する融資を止めない方がいいと言われたかのように供述する。しかし,被告Bは,県の担当者がD組に対する融資の継続を指示した事実を明確に供述しているわけではない。むしろ,県の担当者から,D組に対し融資限度額を超える融資を行っていることの改善を求められたとか,「これ以上D組に貸し付けるのはまずいんじゃないですか」と言われたとの供述もしている(被告B10頁。なお,被告Bは,後者の供述について被告Bが発言したという趣旨であるとも供述しているが(被告B32頁),前後の文脈に照らし不自然である。)。また,この協議に近い平成7年7月21日に開催された理事会では,D組に対する融資が県からの指導事項であることを前提として協議がなされている(甲14)。これらからすると,県から本件各融資を是認されていた旨の被告Bの供述部分は信用することができない。 2 被告らの任務懈怠の有無(争点2)について判断する。 (1) 証拠(各項目末尾に掲記)及び前記争いのない事実等によれば,以下の事実が認められる。 ア富山商銀では,被告Aが理事長に就任した平成7年5月以後,融資決定が合議制でなされるようになった。(甲11)イ県は,平成7年1月25日を基準日として行った富山商銀の検査において,D組に対する貸付は貸出限度額を超える貸出である旨指摘し,富山商銀に対し違法状態の早期解消に努めるように求めた。これに対し,富山商銀は,平成9年3月31日,県に対して,大口信用供与は法令違反であるとともに信用組合の性格上好ましくないから,今後このような大口貸出が発生しないように努力する旨回答した。その回答書 れに対し,富山商銀は,平成9年3月31日,県に対して,大口信用供与は法令違反であるとともに信用組合の性格上好ましくないから,今後このような大口貸出が発生しないように努力する旨回答した。その回答書は,主に被告Cが作成したものであり,被告Aの記名及び理事長印の押印があった。(甲10の1,10の2,被告C)ウ平成7年7月,同年8月及び同年9月に開催された富山商銀の理事会で,D組への再建,支援策等が検討された。これらの理事会では,D組に対する融資が県からの指導事項であることが出席者に認識されていた。同年9月に開催された理事会で,支払利息の減免措置を取ることで再建の道はあり,当面の運転資金1億5000万円程度の別枠支援があれば現状を乗切ることができるとの結論に達し,理事会の責任の下でD組を支援することが決議された。その結果,前記争いのない事実等(2)エ記載のとおりD組管理委員会が組織された。これらの理事会において,被告Aは理事長として議長を務め,被告Bは理事として出席して富山商銀の業務運営について説明を行うなどし,被告Cは業務部長として出席した。また,平成10年4月に開催された理事会では,被告BがD組管理委員会の状況について報告した。(甲14ないし16,乙17)エ本件各融資にあたり,被告Aは,理事長として本件各融資の稟議書の理事長欄に自己の印章を押すとともに,自ら又は被告Cをして稟議書の可決欄に「承認」との印を押した。被告Bは,専務理事として本件各融資の稟議書の専務欄に自己の印章を押した。被告Cは,本件各融資のうち別紙融資目録記載の番号1番から8番までは業務部長として本件各融資の稟議書の役席欄に自己の印章を押し,番号9番から23番までは常務理事として,番号10番から番号23番までは常務欄に,理事に就任した直後の番号9番は役席 号1番から8番までは業務部長として本件各融資の稟議書の役席欄に自己の印章を押し,番号9番から23番までは常務理事として,番号10番から番号23番までは常務欄に,理事に就任した直後の番号9番は役席欄のみに自己の印章を押した。これらの稟議書には,D組管理委員会の枠組みを利用した融資の残高が記載されていた。本件各融資のうち最初の融資(同融資目録番号1の融資)の稟議書には,既に残高が1億9130万円に上ると記載されていて,その後の融資の際の稟議書にも累積した残高が記載されていた。(甲23から45まで)(2) 以上の事実によれば,それぞれ理事長,専務理事という富山商銀の経営者の立場にあった被告A及び被告Bは,合議の一員としてその権限を行使して本件各融資の決裁をし融資を承認・実行していたこと,被告Cは,本件各融資のうち別紙融資目録記載の番号9番から23番までの融資について,常務理事という富山商銀の経営者として,合議の一員としてその権限を行使してこれらの融資の決裁をし融資を承認・実行していたことが認められる。 また,被告らは本件各融資を実行する前に県からD組に対する融資が大口融資規制違反である事実を指摘されているうえ,決裁した稟議書の記載内容自体からも本件各融資が信用供与限度額を超える融資であることが明らかになっている。被告らがいずれも出席していた理事会ではD組の支援・再建策が議事に上り,D組管理委員会を設置して管理をすることとしたものの抜本的な改善策が講じられないまま残高が増加し,結局理事会において設定した追加融資枠をも超える本件各融資を行う事態になっている。被告B及び被告Cの供述に照らしても,被告らが,本件各融資が大口融資規制に違反するものであることや,本件各融資の際D組の経営状態が非常に悪化していて貸付金の回収が困難であるこ 行う事態になっている。被告B及び被告Cの供述に照らしても,被告らが,本件各融資が大口融資規制に違反するものであることや,本件各融資の際D組の経営状態が非常に悪化していて貸付金の回収が困難であることを認識していたことは明らかである。 そうすると,被告らが本件各融資(被告Cについては別紙融資目録記載の番号9番から23番までの融資)の決裁をして融資を承認・実行したことは,善管注意義務・忠実義務に違反し,理事の任務を怠ったものというべきである。 (3)ア被告Aは,自分は名目的な理事長であったにすぎず本件各融資を決裁する権限はなかった,本件各融資の稟議書に被告A名の押印があるとしても被告Aはその内容を理解せずに押していたにすぎないなどと主張し,その旨供述する。しかし,富山商銀という金融機関の理事長であったという被告Aの役職そのものに照らして,被告Aは富山商銀の業務である組合員への貸付等についての決定権を有していたと認められる。また,稟議書に決裁印を押印する行為は,通常これによって稟議書に記載されている事項を承認し実行を認める意思を表示するものであるし,これに伴って重大な責任が生ずることも容易に理解することができる。したがって,稟議書の記載内容を全く理解しないまま決裁印を押したという供述は不自然である。被告Aの前記主張や供述は到底採用することができない。 また,被告Aは,稟議書にある被告A名の印影の中には,被告A自身が押印しなかったものがあるとも主張し,自分は被告A名の印章を理事長室の机の引き出しに保管していたが,引き出しには鍵がついておらず,理事長室の鍵もかかっていなかったから,富山商銀の職員であれば誰でも入ることができたなどと供述する。しかし,被告Aの供述によっても,他の者が勝手に押印した可能性をいうにとどまり,特定の いておらず,理事長室の鍵もかかっていなかったから,富山商銀の職員であれば誰でも入ることができたなどと供述する。しかし,被告Aの供述によっても,他の者が勝手に押印した可能性をいうにとどまり,特定の者が被告Aの印章を冒用したという具体的事実をうかがわせるに足りる証拠はないから,この主張も採用することができない。 イ被告Bは,自分は他の韓国系信用組合との折衝等の業務を担当していて融資業務は担当していなかったと主張する。しかし,被告Bは,専務理事という理事長に次ぐ役職にあって,富山商銀経営の中心人物であったと認められる。 このことは,被告Bが担当していたという上記業務が富山商銀の存亡に関わる重要なものであったことからも明らかである。D組に対する融資案件は,富山商銀の経営に大きな影響を及ぼすものとして理事会でもその支援策が議論されていたのであり,被告B自身が理事会においてD組管理委員会の状況を報告したこともあるのであるから,経営の中枢にあった被告Bがその融資案件についての決定権限を有していなかったとは到底考えがたい。そうすると,被告BがD組への融資を決定をする権限を有していたことが明らかに認められる。 被告Bは,本件各融資の稟議書は既に理事長である被告Aの決裁が終わった後に回ってきていて,自分は融資実行が決まった後に押印したにすぎないと主張し,その旨供述する。しかし,この主張や供述は,被告Bの富山商銀における地位にそぐわない不自然なものである。被告B自身も,融資がなされる前に融資稟議書や添付書類に目を通していたか否かについてこれを明確に否定しないあいまいな供述をするにとどまっている(被告B24頁)。以上に照らすと,被告Bは基本的には被告Aの決裁の前に稟議書に決裁印を押していたと認められる。仮に被告Aの決裁が終わった後に被告Bが 否定しないあいまいな供述をするにとどまっている(被告B24頁)。以上に照らすと,被告Bは基本的には被告Aの決裁の前に稟議書に決裁印を押していたと認められる。仮に被告Aの決裁が終わった後に被告Bが本件各融資の稟議書の決裁をしたことがあったとしても,富山商銀では合議により融資を決定するものとされていたのであるから,自己に稟議書が回ってきた段階で融資の実行に異議を述べることは可能であったし,そのようにすべきものでもあった。結局,被告Aの決裁後であってもこれを漫然と追認して決裁したことは,任務懈怠に他ならないというべきであるから,その責任を免れることはできない。 ウ被告Cは,融資の審査業務は担当していなかったと主張し,その旨供述する。 しかし,被告Cは銀行出身者として特に富山商銀に招へいされた者である。被告Cは,理事に就任する前には,D組に対する融資の稟議書を作成し,これに自ら作成した回収の見込み等を記載した説明資料やD組から被告Cあてに送付された資料を添付している(甲13,甲58の1から61の2まで,被告C)。常務理事に就任した後も,例えば,県の検査示達書に対する回答書(平成9年3月31日付け)を作成していて,これには融資業務に関する記述も含まれている(甲10の2,被告C)。これらによれば,被告Cが融資の審査業務を実質的に担当していたことは明らかに認められる。 被告Cは,形式を整えるために稟議書に押印していたにすぎないとも主張及び供述する。しかし,稟議書に権限を有する者が押印することの意味は被告Aの主張に対して上記アで述べたとおりである。しかも,証拠(甲28)によれば,被告Cは稟議書の決裁にあたり資金の使途が記載されている添付書類に自ら補足説明を書き加えていることも認められる。したがって,上記主張及び供述は採用することがで ある。しかも,証拠(甲28)によれば,被告Cは稟議書の決裁にあたり資金の使途が記載されている添付書類に自ら補足説明を書き加えていることも認められる。したがって,上記主張及び供述は採用することができない。 3 損害額(争点3)前記認定事実及び争いのない事実等によれば,本件各融資の残債権額は合計3億0160万円であること,D組は平成12年6月20日に銀行取引停止処分を受けていて同残債権を支払う能力がないこと,富山商銀のD組に対する債権の担保は大幅に不足しており,この担保から本件各融資の残債権を回収することは困難であることが認められる。 したがって,本件各融資の残債権額合計3億0160万円が,富山商銀に生じた損害であると認められる。 被告A及び被告Bは,本件各融資の全てについて任務懈怠が認められるから,残債権額の全額を賠償する義務がある。 被告Cは,本件各融資のうち別紙融資目録記載の番号9番から23番までの融資について任務懈怠が認められるから,これらの残債権額の合計1億5730万円を賠償する義務がある。 4 原告と富山商銀との間の資産買取契約に本件損害賠償請求権が含まれるか否か(争点4)について判断する。 資産買取契約書(甲6)によれば,原告と富山商銀との間で締結した資産買取契約の3条2項には,富山商銀が有する債務不履行に基づく損害賠償請求権も原告が富山商銀から買い取る資産に含まれると規定されている。しかも,同項には,損害賠償請求権等の内容として,特に「現在及び過去における富山商銀の役職員に対し責任追及する一切の権利を含む。資産買取日(平成12年6月26日)においてその存在の確認若しくは内容の特定が未了であるものを含むものとする。」と規定されている。そうすると,富山商銀の被告らに対する中小企業等協同組合法38 を含む。資産買取日(平成12年6月26日)においてその存在の確認若しくは内容の特定が未了であるものを含むものとする。」と規定されている。そうすると,富山商銀の被告らに対する中小企業等協同組合法38条の2第1項に基づく損害賠償請求権が,同条の買取資産に含まれることは明らかである。 被告Bは,同資産買取契約は被告B自身が富山商銀を代表して原告と締結したものであり,自己に対する損害賠償請求権が含まれているとは認識していなかったと主張するが,上記資産買取契約書の文言に照らして採用することができない。富山商銀とその代表理事である被告Bとは別個の主体であるから,被告Bが富山商銀を代表して同資産買取契約を締結したからといって,直ちに富山商銀の被告Bに対する損害賠償請求権が対象外となるものではない。 第4 結論以上によれば,原告の請求にはいずれも理由があるので,主文のとおり(ただし,各被告は連帯責任であり,被告Cは主文3項記載の金員の限度での連帯責任である。)判決する。 富山地方裁判所民事部裁判長裁判官永野圧彦裁判官剱持淳子裁判官三輪篤志
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