平成14年3月13日言渡同日原本領収平成12年(ワ)第1372号保証債務履行請求事件口頭弁論終結日平成13年12月19日判決当事者の表示別紙1当事者目録記載のとおり 主文 1 被告は,原告に対し,金50万7494円及びこれに対する平成12年2月7日から支払済みまで年3割の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用はこれを4分し,その3を原告の,その余を被告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事実及び理由 第1 原告の請求被告は,原告に対し,金193万3000円及びこれに対する平成12年2月7日から支払済みまで年3割の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は,金融業等を営む原告が,Aに対し金銭を貸し付け,被告がこれを300万円の限度で連帯根保証したと主張して,連帯根保証契約に基づき,被告に対し,貸金業の規制等に関する法律(以下「貸金業法」といい,またその施行規則を単に「規則」という。)43条のみなし弁済の適用を前提に貸金残元金193万3000円とこれに対する期限の利益喪失日の翌日以降の遅延損害金の支払を求めたのに対し,被告が,原告の支配人として本件訴えの代理人となったBは,実質的には原告の支配人ではないから,訴訟代理人としての資格がなく,したがって本件訴えの提起は無効であるとして,訴えの却下を求めるとともに,本案については,貸金業法43条のみなし弁済の適用がないとして,残元金は50万7493円であると主張した事案である。 なお,原告は,その後,訴訟代理人として弁護士を選任し,原告訴訟代理人弁護士は,Bの訴訟行為を追認する旨の意思表 のみなし弁済の適用がないとして,残元金は50万7493円であると主張した事案である。 なお,原告は,その後,訴訟代理人として弁護士を選任し,原告訴訟代理人弁護士は,Bの訴訟行為を追認する旨の意思表示をした。 1 前提となる事実(証拠を掲げた事実以外は当事者間に争いがないか裁判所に顕著である。)(1) 原告は,貸金業法3条の登録を受けて貸金業を営む株式会社である。 (2) 原告は,平成9年6月30日,Aとの間で200万円の金銭消費貸借契約を締結した(以下「本件消費貸借」という。甲25。なお,その内容については,貸付金額を含め後記のとおり争いがある)。 (3) 原告と被告の連帯根保証契約(以下「本件根保証契約」という。甲1)被告は,原告との間で,平成9年6月30日,Aが原告に対し負担する前項の消費貸借等の債務を担保するために,下記事項を内容とする本件根保証契約を締結した。 ア根保証限度額 300万円イ根保証期間平成9年6月30日から5年間ウ根保証の範囲本件根保証契約締結日現在主債務者が原告に対し負担している一切の債務及び上記根保証期間に発生する一切の債務。ただし,根保証限度額は元本についての限度額である。 エ損害金年40.004パーセントオ特約上記元利金の支払を1回でも怠ったときは期限の利益を失い,債務全額及び残元本に対する遅延損害金を即時に支払う。 (4) 原告が,本件消費貸借契約締結の際,Aに交付した書類ア手形割引・金銭消費貸借契約等継続取引に関する承諾並びに限度付根保証承諾書(甲1,以下「取引承諾書」という。)イ借用証書(甲25)ウ計算書(取引明細書)(乙43,以下「計算書」という。) 2 本案前の争点は,Bが行った訴訟行為の効力及びその追認の可否であり,これに関する当事者の主張は以下のとおり 。)イ借用証書(甲25)ウ計算書(取引明細書)(乙43,以下「計算書」という。) 2 本案前の争点は,Bが行った訴訟行為の効力及びその追認の可否であり,これに関する当事者の主張は以下のとおりである。 (被告の主張)ア Bの支配人としての実質支配人(商法37条,38条)とは,本店又は支店の営業の主任者として選任された商業使用人をいい,営業全般に関する包括的な代理権を与えられた者を指す。ところが,以下のように,Bは原告から営業全般に関する包括的な代理権を与えられておらず,支配人としての実質がない。 (ア) 原告千葉支店におけるBの地位Bは,原告に設けられた14の(事業)統括部の一つである千葉統括部の副統括部長であり,統括部長の職務を補佐する補佐職である。原告の組織規定(甲10)の7条によれば,補佐職は,①著しく異なる権能をやむを得ず同一の組織単位に所管させた場合,その職能を補佐する必要のあるとき,②管理職位が直接監督すべき人員が管理統制の限界を超えるとき,③社長より高度の専門的職務能力を要する業務を命じられた場合,その業務につき管理職位を補佐する必要のあるとき,に置くものとされる。この規定のあり方からみても,補佐職が営業全般に関する包括的権能を有しないことは明らかである。 (イ) 裁判外の権限原告は貸金業者であり,したがって貸付業務は原告の営業の根幹をなすものである。しかしながら,Bは,原告千葉支店において通常の貸付業務を行っていない上,貸付を行う際には本社の決裁を得ることが必要であり,Bの一存で貸付の有無を決することはできない。 また,人事についても,社員の採用や解雇等の判断をBが独自に行うことはできず,すべて本社決裁が必要である。 このように,Bは,貸付や人事という支店の営業の根幹をなす部分について独自に判断する権限を有してお 人事についても,社員の採用や解雇等の判断をBが独自に行うことはできず,すべて本社決裁が必要である。 このように,Bは,貸付や人事という支店の営業の根幹をなす部分について独自に判断する権限を有しておらず,原告という営業主に代わってその営業に関する一切の裁判外の行為をなす権限を有しないものである。 (ウ) 裁判上の権限Bは,支配人として訴えを提起する際及び和解をする際には,原告本社の決裁を得ることが必要である。 また,Bは,和解に際しても,その内容を独自に決定することはできず,本社決裁が必要である(Bは,本社の決裁を得ないで和解をまとめたことが原因で原告千葉支店の支配人を退任している。)。 さらに,Bは,自身の判断のみで,貸金業法43条1項のみなし弁済の主張を行わないことができない。 このように,Bは,訴えの提起,和解の成立といった訴訟の開始・終了段階はもちろん,訴訟においてどのような主張を行うかといった訴訟の方針についても独自の権限を有していない者であり,原告という営業主に代わってその営業に関する一切の裁判上の行為をなす権限を有しないというべきである。 (エ) まとめ以上の事実からすれば,Bは,営業主に代わってその営業に関する一切の裁判上,裁判外の行為を行う権限を有するとはいえず,包括的な代理権を与えられた支配人でないことは明らかである。 イ Bの訴訟行為の効力を認めることの弊害(ア) 原告が支配人登記をする目的原告は,貸付に当たり複数の連帯保証人(以下,その趣旨で単に「保証人」ということがある。)を要求し,主債務者及び保証人らに膨大な数の契約書類を作成させる。その際,原告社員は,保証人に対して連帯根保証契約書に記載された極度額についての十分な説明をしないで連帯根保証契約書に署名させ,また,不動産を所有する保証人に対しては,不動産の権 書類を作成させる。その際,原告社員は,保証人に対して連帯根保証契約書に記載された極度額についての十分な説明をしないで連帯根保証契約書に署名させ,また,不動産を所有する保証人に対しては,不動産の権利証の提示を求めることなく,不動産に根抵当権の仮登記を設定することの説明もしないまま,根抵当権設定契約書兼不動産登記法32条の仮登記承諾書に署名させる。また,約束手形については,統一手形用紙を用いず,保証人の契約書の控えと同じ色の用紙を使用し,保証人に対し手形であることの十分な説明をしないで根保証の極度額いっぱいの一覧払手形に署名させる。 このように,原告社員は,保証人がその内容を確認できないほどの枚数の書類に機械的に署名させ,また,保証人から印鑑を預かって各書類に捺印する。原告がこのように膨大な書類を作成させるのは,書面が整っていれば裁判制度の利用によってスムーズに債権回収ができることを熟知しているからである。 原告は,主債務者が弁済を一度でも怠ると直ちに訴えを提起する。原告が提起する訴訟で最も数が多いのは手形訴訟である。なぜなら,手形訴訟では手形の外形のみが問題とされ,取引経過が開示されにくいから,この性質を利用すれば,貸付や保証の実態に反する違法な取立てが可能となるからである。 また,原告は,主債務者の弁済が困難になると,訴訟外の交渉を十分に行わない段階から保証人に対して給料仮差押えの申立てや,前記の仮登記の本登記手続請求訴訟を行う。なぜなら,仮差押えの申立ては,手形と簡単な報告書を提出すれば容易に認められるばかりか,保証人は給料を差し押えられれば,会社に対して体面を保つため,また,本案訴訟を提起されれば,裁判所に呼び出されたことに対する狼狽から,親戚や他の金融機関から借金をしてでも原告が請求する金額をかき集めて支払うという効果が期待で ば,会社に対して体面を保つため,また,本案訴訟を提起されれば,裁判所に呼び出されたことに対する狼狽から,親戚や他の金融機関から借金をしてでも原告が請求する金額をかき集めて支払うという効果が期待できるからである。同様に,抵当権の仮登記の設定についても,自宅が競売されてしまうかも知れないという畏怖から保証人を弁済に駆り立てさせる効果がある。 このように,原告は,裁判制度を濫用し,裁判所の権威を利用して,法的手続にうとい債務者らに心理的動揺や圧迫感を与えて債権回収を行っている。 そして,以上のような膨大な数の申立てを行うためには,コストのかからない支配人を多用しなければならない。そこで,原告は,商法38条1項が支配人に裁判上の代理権を付与していることに着目し,民訴法54条を潜脱して従業員に訴訟行為を行わせる目的で,支配人登記を利用しているのである。 (イ) 弁護士倫理の規制を受けない支配人Bは,本件においても,利息制限法所定の利率を超過する一方的な請求額で訴訟を提起し,また,被告に対して,訴訟外で,利息制限法所定の利率を超過する和解案を呈示した。 このように,Bは,弁護士でないことから弁護士倫理の規制を受けず,原告の意のままに行動するため,相手方当事者は不当不正な訴訟追行の犠牲となり,ひいては司法の公正が害されるのである。 (ウ) 原告の訴訟態度原告は,債権回収のためには,裁判所から帳簿の提出を求められても提出しなかったり,仮差押えの申立てにおいて虚偽の報告書を提出したり,訴訟において利息制限法に違反する多額の利息を請求したり,ひいては虚偽の主張までするのであり,公正な訴訟追行を行う姿勢が全くない。そして,強行法規である利息制限法に違反した無効な請求でも,被告が欠席してしまえば債務名義となってしまうのであり,そのような事態を可能にするのが, するのであり,公正な訴訟追行を行う姿勢が全くない。そして,強行法規である利息制限法に違反した無効な請求でも,被告が欠席してしまえば債務名義となってしまうのであり,そのような事態を可能にするのが,弁護士倫理に服さず,ただ原告の意のままになる従業員支配人による訴訟追行なのである。 ウ追認の可否民訴法54条1項によれば,法令により裁判上の行為をすることができる代理人のほか,弁護士でなければ訴訟代理人となることができない。同条項を潜脱し,実質的には法令上の訴訟代理人でない者が訴訟代理人として訴訟行為をしてもこれが無効であるのは当然のことである。 原告は,民訴法59条,34条2項の類推適用による追認を主張するが,同条は,授権者に訴訟能力,法定代理権又は訴訟行為をなすに必要な授権の欠缺があり,これによって訴訟代理権の授与行為に瑕疵を生ずる場合に追認できることを定めたものであるところ,本件は,これとは異なり,訴訟代理人とされている者が現実には代理人資格を欠いていたに過ぎず,授権者である原告自体に前記のような授権上の瑕疵があるわけではないから,前記規定は類推適用されないものである。 また,前記規定の類推適用が可能であるとして追認が認められるならば,原告は,とりあえず支配人に訴えの提起等をさせ,支配人性が争われた段階で弁護士を選任すれば足り,それまでの間は名目的支配人が訴訟行為を行うことができることになり,原告の訴訟の相手方は,不当な訴訟追行による被害を受けかねない。 民訴法54条1項は,依頼者の利益のみならず,相手方をも含めた法律事務に精通しない当事者の利益保護を確実にし,手続の確実,迅速を目的とするものであるから,これを害する限り追認はあり得ない。実質的に考えても,あえて法を潜脱する行為を企てた者に対して,違法な訴訟行為を有効にするための選択権を認 保護を確実にし,手続の確実,迅速を目的とするものであるから,これを害する限り追認はあり得ない。実質的に考えても,あえて法を潜脱する行為を企てた者に対して,違法な訴訟行為を有効にするための選択権を認める必要はない。 エまとめしたがって,Bによる本件訴えの提起は無効であり,また,その追認も認めるべきではない。 (原告の主張)ア民訴法54条1項との関係における「支配人」の解釈原告のように訴訟事件を多く抱える会社ではすべての事件を弁護士に委任しようとしても受任する弁護士がいないという現実的な問題がある。民訴法は本人訴訟を認めているのであるから,法人の本人訴訟を的確に行わせるためには,民訴法54条1項を被告のいうように制限的に解釈すべきではない。 したがって,民訴法54条1項との関係においては「支配人」は,登記簿上の支配人であれば足り,会社内の地位いかんにかかわらず訴訟代理権を行使できると解釈すべきである。 イ Bの権限原告は,取締役会において,社員であるBを千葉支店の支配人に選任して登記したものであり,Bは,原告から,営業の主任者として選任され,営業に関する包括的な代理権を与えられた者である。 原告においては,債権管理業務は顧客獲得のための営業と車の両輪の関係にあるところ,Bは,千葉県内の店舗における裁判外の和解交渉をはじめ債権管理業務全般について広い裁量権を持ち,千葉支店長である千葉統括部長の決裁を受ける必要がない。もっとも,Bが訴えを提起する場合には本社に報告する必要があり,訴訟を終了させる場合(和解等)には社長の承認が必要であるが,この点は弁護士が訴訟代理人となる場合も同様であるから,Bの支配人性を否定する理由にはならない。 また,Bは,債権管理業務以外の業務についても,千葉統括部の副統括部長,補佐職として,管理職位である統括部長 は弁護士が訴訟代理人となる場合も同様であるから,Bの支配人性を否定する理由にはならない。 また,Bは,債権管理業務以外の業務についても,千葉統括部の副統括部長,補佐職として,管理職位である統括部長とともに組織単位の業務の全部又は一部を遂行する任務を有し,包括的な権限を有する(甲10の組織規定7条4号)。 Bは,問題のある融資や高額融資の審査に関与する権限や,融資関係の営業に関与する権限もある。原告においては,融資はすべて代表取締役名義で行い,支配人が融資に関して原告を代理することはないが,これは原告のシステムによるものであり,対外的に代理権限が制限されているものではない。支配人がその名において融資を行えば原告がその行為を否定することはできない。 また,支店内人事は,統括部長兼支店長が立案して本社に上申するが,Bは,その立案に当たり,支店長に意見を述べる権限がある。 ウ追認以上のとおり,本件訴えは,原告の支配人として登記されたBによって提起されたものであり,民訴法に基づく適法な訴訟行為であるから,有効であるが,仮に,Bの訴訟代理権が否定されたとしても,弁護士が原告の訴訟代理人に選任された以上,従前の訴訟行為に対する追認は認められるべきである。 民訴法54条1項は,当事者の利益保護と手続の確実,迅速を目的とするものであるが,本件訴えは,その提起後に選任された訴訟代理人弁護士によってその後の訴訟追行がなされていること,また,訴えの提起自体は支配人が行っているが,訴え提起を支配人が行った場合と弁護士が行った場合とで差があるとは考えられないことからして,被告の利益保護に欠けるところはなく,手続の確実性にも問題はない。また,手続の迅速性の見地からも追認は認められるべきである。 3 本案の争点は,第1に本件消費貸借の貸付金額及び元金の支払方法であり, 被告の利益保護に欠けるところはなく,手続の確実性にも問題はない。また,手続の迅速性の見地からも追認は認められるべきである。 3 本案の争点は,第1に本件消費貸借の貸付金額及び元金の支払方法であり,第2に本件消費貸借契約に貸金業法43条1項のみなし弁済の適用があるか否かである。 そして,第2の争点について,①天引利息,前払利息に貸金業法43条1項が適用されるか否か,②貸金業法43条1項1号に規定されたいわゆる17条書面の交付があったといえるか否か,③貸金業法43条1項2号に規定されたいわゆる18条書面の交付があったといえるか否かが問題となる。 以上の争点に関する当事者の主張は以下のとおりである。 (1) 本件消費貸借の貸付金額及び元金の支払方法(原告の主張)ア貸付金額は200万円である。 イ元金の支払方法は,平成14年9月5日に一括で支払うというものであり,利息は年29.2パーセントの割合で毎月5日に支払うというものであった。 借用書(甲2)に記載された元金の一括返済期限は平成9年9月5日であるが,本件消費貸借は,合意により返済期限を最長で平成14年9月5日まで延長できるフリーローン契約であり,そのような合意があるからこそ,被告は利息の支払を継続していたものである。このような取引継続については,取引承諾書(甲1)22条にその記載がある。 (被告の主張)ア貸付金額についての原告の主張は否認する。貸付金額は186万6200円である。 イ元金の支払方法についての原告の主張は否認する。原告主張の元金支払方法の合意はない。本件消費貸借においては,当初から,Aは,原告担当者から毎月5日に利息を払えば元本の返済は後でいいと説明を受けていたため,新たな合意などすることなく支払を続けたのであり,元金を平成14年9月5日に一括で支払うとの約定はなか 初から,Aは,原告担当者から毎月5日に利息を払えば元本の返済は後でいいと説明を受けていたため,新たな合意などすることなく支払を続けたのであり,元金を平成14年9月5日に一括で支払うとの約定はなかったし,また,利息を年29.2パーセントとするとの約定もなかった。 (2) 天引利息,前払利息への貸金業法43条1項の適用(原告の主張)ア天引利息(ア) 利息制限法2条は同法1条の適用を前提とする規定であるから,貸金業法43条1項により利息制限法1条1項の適用が排除されるのであれば,同法2条の適用も排除されることになる。すなわち,利息制限法2条に「天引額が債務者の受領額を元本として前条第1項に規定する利率により計算した額をこえるときは」とあるのは,「天引額が債務者の受領額を元本として前条第1項に規定する利率(貸金業法43条1項の要件を満たすときはそれにより許容される利率)により計算した金額をこえるときは」と読み替えるべきである。 条文の規定の仕方をみても,利息制限法1条1項(及び4条1項)は,利息が同法の制限を超過する部分を無効とする規定であるのに対して,同法2条はその制限超過部分を元本に充当する規定であり,両者はその性質を異にしているのである。 (イ) 貸金業法43条1項が適用されるためには任意に支払がなされたことが必要であるが,利息の天引がなされたとの一事をもって軽々に任意性を否定すべきではなく,任意性の有無は諸般の事情を考慮して判断すべきである。 前払でも後払でも,借り入れた者の負担が同率である限り手形貸付方式に慣れ親しんでいる事業者にとっては何ら差がないこと,利息天引は手形貸付や手形割引の場合には当然のこととして取引社会で認められていること,天引の約定は当然に利息前払の約定であるからそこに債務者の「利息として支払う」意思が示されている 何ら差がないこと,利息天引は手形貸付や手形割引の場合には当然のこととして取引社会で認められていること,天引の約定は当然に利息前払の約定であるからそこに債務者の「利息として支払う」意思が示されているといえることからすれば,天引利息の支払には任意性があるといえる。 (ウ) 以上により,天引利息の場合にも貸金業法43条1項の適用があるというべきである。 イ前払利息(ア) 利息の前払は,支払が全体的に前にずれるだけのことであり,最初の1か月分の利息を運用した場合の運用益が損失となるが,最終期に支払が不要となる1か月分の運用益を考えると,債務者には利息を前払することの経済的不利益はほとんどなく,債務者にとって利息が前払か後払かは契約を締結する上で重要な関心事とはいえないから,任意性に影響を与えない。 取引承諾書22条には,基本契約どおりの利息を支払うことを条件に契約を継続できるとの規定があるが,これは,利息の前払を怠れば直ちに契約が終了し,元本を一括払いしなければならないということではなく,利息後払の場合の期限の利益喪失条項と同じ意味を持つに過ぎない。本件においても,毎月5日の支払日に数日遅れて利息が支払われているが,契約は継続されているし,遅延損害金の請求もされていないから,この意味でも任意性を問題にする余地はない。 (イ) したがって,前払利息の場合にも貸金業法43条1項の適用があるというべきである。 (被告の主張)ア天引利息本件消費貸借においては,平成9年6月30日の貸付時には利息を天引して貸付がなされているが(甲25),貸金業法43条1項は,利息制限法1条1項又は4条1項の特則であるにとどまり,同法2条に対する特則ではないから,利息天引の場合は,利息又は損害金の支払には該当せず,貸金業法43条の適用はない。 イ前払利息被告らによ ,利息制限法1条1項又は4条1項の特則であるにとどまり,同法2条に対する特則ではないから,利息天引の場合は,利息又は損害金の支払には該当せず,貸金業法43条の適用はない。 イ前払利息被告らによる貸付後の原告に対する支払はすべて利息の前払となっている。前払利息は,期限の猶予又は再度の貸付の条件となっていることが通常であり,利息を前払しなければ,期限の猶予や再度の貸付を受けられない状況において債務者が支払うのは天引利息の支払と同じく任意の支払とはいえない。 したがって,本件貸付に基づく各回の支払には,いずれも貸金業法43条の適用はない。 (3) 貸金業法17条書面の交付があったといえるか(原告の主張)ア最高裁平成2年1月22日判決(民集44巻1号332頁)は「債務者が貸金業者に対してした金銭の支払が貸金業法43条1項又は3項によって有効な利息又は賠償金の債務の弁済とみなされるには,契約書面又は受取証書の記載が法の趣旨に合致するものでなければならない」旨を判示するが,ここでいう「法の趣旨に合致する」とは,その記載が所定の記載事項の全部を網羅していること,また,その記載が事実と寸分違わず一致していることを要するという杓子定規な解釈ではない,事案に即した弾力的な解釈を許容する趣旨であると解される。 イ本件の借用証書(甲25)には,貸金業法17条1項所定事項の記載がある。 すなわち,「貸金業者の商号,名称又は氏名及び住所」(貸金業法17条1項1号)は欄外左上に,「契約年月日」(同項2号)は債権の表示欄の貸借日欄に,「貸付けの金額」(同項3号)は債権の表示欄の貸借金額欄に,「貸付けの利率」(同項4号)は債権の表示欄の利率欄に,「返済の方式」(同項5号)は債権の表示欄の元金支払方法欄に,「返済期間及び返済回数」(同項6号)は債権の表示欄の最 権の表示欄の貸借金額欄に,「貸付けの利率」(同項4号)は債権の表示欄の利率欄に,「返済の方式」(同項5号)は債権の表示欄の元金支払方法欄に,「返済期間及び返済回数」(同項6号)は債権の表示欄の最終弁済日及び元金返済方法欄に,「賠償額の予定」(同項7号)は債権の表示欄の損害金の箇所及び取引承諾書に記載されている。また,同項8号記載の必要事項もすべて記載がある。 ウ本件消費貸借は一括返済であるから,借用証書(甲25)の債権の表示欄の「元金支払方法」の箇所に「一括」との記載がある以上,「返済期間」(同項6号)の記載があることは明らかである。本件消費貸借は,返済期日後にも同一条件でこれを継続することができるが債務者はいつでも一括返済できること,取引継続が可能である点については取引承諾書22条に記載があることからすれば,「返済期間」(同項6号)の記載要件を満たさないとはいえない。 また,取引継続の場合も,分割払の契約でない以上,「返済回数」(同項6号),「各回の返済期日及び返済金額」(規則13条1項チ)を記載する必要はない。なお,同項5号が記載を要求している「返済の方式」とは元金の返済方法であり,利息については同項4号で利率の記載を要求しているに過ぎないから,毎月5日が利息の支払日であることが借用証書に記載される必要はない。 (被告の主張)ア利息制限法超過部分の債務は存在しないのであり,債務者が制限超過分の利息として任意に支払ったものでも原則として元本に充当されることになる。貸金業法43条1項は同項の要件を満たす限り元本への充当を否定するが,これは,制限超過の利息又は損害金の契約そのものを全面的に有効とするものではなく,上記契約のうち利息制限法超過部分は依然無効なのである。貸金業法43条1項は,依然として無効である制限超過利息の支払を一定の 制限超過の利息又は損害金の契約そのものを全面的に有効とするものではなく,上記契約のうち利息制限法超過部分は依然無効なのである。貸金業法43条1項は,依然として無効である制限超過利息の支払を一定の要件のもとに有効なものとみなすのであるから,その要件は厳格に考えるべきであり,ルーズな解釈をすることは許されない。17条書面の記載事項は,債務者が自己の債務の内容を正確に認識して弁済計画の参考となし得るために,一義的,具体的に明確なものでなければならない。 返済期間及び返済回数,各回の返済期日及び返済金額,並びに弁済の充当関係などについて時間をかけて計算しなければ理解できない程度の記載がされている書面では,貸金業法17条1項が要求する内容を満たしているとはいえない。 イ Aが借用証書の控えとして原告から受け取った計算書(乙43)には,「利率」欄には日歩8銭とあるものの,「実質年利」欄には「39.05%」とあり両者の利率は一致せず,これでは債務者に正確な利率は分からないから,「貸付の利率」(貸金業法17条1項4号),「利息の計算の方法」(規則13条1項ヘ)の記載があるとはいえない(日歩8銭を年365日で計算すると,年利29.2パーセントとなる。)。 また,「返済の方式」(貸金業法17条1項5号),「返済期間及び返済回数」(同項6号),「返済の方法及び返済を受ける場所」(規則13条1項ト),「各回の返済期日及び返済金額」(同項チ)について,原告は,本件消費貸借の内容として,元金を平成14年9月5日に一括で支払い,利息は年29.2パーセントの割合で毎月5日に支払うとの約定があったと主張するが,このような記載は,借用証書にも計算書にもない(なお,前記書面には,元本支払方法は一括,最終弁済日は平成9年9月5日と記載されているが,これは本件消費貸借の実態と全 払うとの約定があったと主張するが,このような記載は,借用証書にも計算書にもない(なお,前記書面には,元本支払方法は一括,最終弁済日は平成9年9月5日と記載されているが,これは本件消費貸借の実態と全く異なるものである。)。 貸金業法43条1項のみなし弁済の適用を主張するためには,各回の支払について同項の要件を充足する必要があり,もしも継続的取引の合意があったとするならば,それ以降の支払についても同項所定の要件を充足する必要があるが,本件消費貸借については原告が継続的取引となったと主張する時点以降に17条書面が原告から交付された形跡はないから,それ以降についてはすべて同項のみなし弁済の要件を欠くものである。 ウまた,前記計算書には,「契約の相手方(原告)の住所」(規則13条1項ロ),「貸付けに関し貸金業者が受け取る書面の内容」(同項ハ),「期限の利益喪失の定め及びその内容」(同項リ)の記載がない。 さらに,Aが支払っていた「費用」という名目については,計算書には金額の記載があるのみで,支払の根拠・時期・金額が全く分からないから,「債務者が負担すべき元本及び利息以外の金銭に関する事項」(同項ニ)の記載があるとはいえない。 エ 17条書面は,原則として1通の書面に貸金業法17条1項所定の事項のすべてが記載されているべきものであり,例外的に複数の書面によることが許容される場合であっても,基本となる書面に記載のない事項が他のいかなる書面によって補完されるのかが明確にされていなければ,17条書面の交付があったとみることはできない。 前記計算書(乙43)には,そこに記載のない事項が他のいかなる書面によって補完されるのかが明確にされていないから,本件において,被告に交付されたすべての書面を総合しても17条書面の交付があったと認めることはできない。 (4 ,そこに記載のない事項が他のいかなる書面によって補完されるのかが明確にされていないから,本件において,被告に交付されたすべての書面を総合しても17条書面の交付があったと認めることはできない。 (4) 貸金業法18条書面の交付があったといえるか(原告の主張)ア貸金業法18条1項は,契約書や領収書を一切交付しない貸金業者が存在するため,債務者保護の見地から細かい記載事項を定めているところ,債務者に交付すべき書面が法の規定に合致するか否かは債務者保護に欠けるところがあるか否かによって判断すべきであり,その意味において法の趣旨に合致する限り,所定の要件を満たしているというべきである。 イ原告が交付した別紙3の「お利息のご案内及びお取引明細」と題する利息の請求書(甲26,以下,この書式による請求書を「B型書面」という。)又は,別紙4の「電信振込依頼書」と題する利息の請求書(甲27,以下,この書式による請求書を「C型書面」という。)には,「貸金業者の商号,名称又は氏名及び住所」(貸金業法18条1項1号),「契約年月日」(同項2号)に代わるものとしての「契約番号」(規則15条2項),「貸付けの金額」(貸金業法18条1項3号),「受取金額及びその利息,賠償金の予定に基づく賠償金又は元本への充当額」(同項4号),「受領年月日」(同項5号),「弁済を受けた旨を示す文字」(規則15条1項1号),「貸金業者の登録番号」(同項2号),「債務者の商号,名称又は氏名」(同項3号),「当該弁済後の残存債務の額」(同項5号)の記載がある。 ウ最高裁平成11年1月21日判決(民集53巻1号98頁)は,「超過部分の支払が貸金業法43条1項によって有効な利息の債務の弁済とみなされるためには,右の支払が貸金業者の預金又は貯金の口座に対する払込みによってされたときで 日判決(民集53巻1号98頁)は,「超過部分の支払が貸金業法43条1項によって有効な利息の債務の弁済とみなされるためには,右の支払が貸金業者の預金又は貯金の口座に対する払込みによってされたときであっても,特段の事情のない限り,貸金業者は,右の払込みを受けたことを確認した都度,直ちに,同法18条1項に規定する書面を債務者に交付しなければならない」旨判示する。 原告は,事前に,電信振込用紙と一体となった請求書に支払を求める金額の充当関係を明示し,かつ,貸金業法18条1項が規定するすべての要件を充足した書面を送付しているのであるから,債務者は,弁済額の充当関係等をすべて認識した上で振込送金していることになり,同一内容の受取証書を交付する必要性はない。 本件のように事前に充当関係を明示して支払請求がなされた場合には,前記最高裁判決のいう「特段の事情」がある場合に該当し,18条書面の交付を要しないものというべきである。 なお,振込金額が請求金額と相違する場合でも,翌月の請求書と照合すれば充当関係等が明らかになるから,それが18条書面に該当し,債務者に何らの不利益も生じない。 エ原告は,貸金の返済についてコンピューターによる一括処理をしており,送金された金額が請求額と相違する場合には債務者に問い合わせをする必要があるときもあるし,顧客番号が入力されていない場合には送金者を確定する作業にも日時を要するため,充当関係等を確定してB型書面又はC型書面を一斉発送するまで相当の時間を要している。しかしながら,貸金業法18条1項は,文字通りの意味で機械的に受取証書を「直ちに」交付することを要求しているものではなく,債務者が充当関係を適切な時期に知ることができればこれをもって足りると解すべきである。 オしたがって,本件において18条書面の交付があったというこ 「直ちに」交付することを要求しているものではなく,債務者が充当関係を適切な時期に知ることができればこれをもって足りると解すべきである。 オしたがって,本件において18条書面の交付があったということができる。 (被告の主張)ア貸金業者がみなし弁済の規定の適用を受けるためには,貸金業法18条及び規則15条所定の事項を記載した書面を,弁済を受けた都度,直ちに交付しなければならない。 イ原告が交付したB型書面又はC型書面はいずれも各月分の利息等の支払を請求する書面であるから,それら書面に記載された金額は「受領金額」(貸金業法18条1項4号)ではないし,「弁済を受けた旨を示す文字」(規則15条1項1号),「当該弁済後の残存債務の額」(同項5号)の記載はない。 また,銀行振込により振込日が記載されるが,それは貸金業者が記載したものではないから,「受領年月日」(貸金業法18条1項5号)の記載があるとはいえない。 さらに,B型書面又はC型書面に記載されているのはあくまでも原告の請求額であり,例えば支払期日に遅れた場合の充当方法について書面からは知ることができないから,「受領金額及びその利息,賠償額の予定に基づく賠償金又は元本への充当額」(同項4号)の記載があるともいえない。 ウ本件における顧客台帳(甲21)記載の支払はすべて原告の預金口座への振込みによってなされている。したがって,貸金業者がみなし弁済の規定の適用を受けようとするなら,払込みを確認した都度直ちに18条書面を交付しなければならないところ,本件では,これがなされていない。 エ貸金業法18条1項にいう「直ちに」については,弁済の提供を受けたときと同時を意味すると解されており,預金口座に対する振込みの場合は,払込みを確認したらそれと同時に書面が交付されなければならない。しかるに,B型書面 項にいう「直ちに」については,弁済の提供を受けたときと同時を意味すると解されており,預金口座に対する振込みの場合は,払込みを確認したらそれと同時に書面が交付されなければならない。しかるに,B型書面又はC型書面は支払前に請求する書面に過ぎず,支払後「直ちに」交付された書面でない。 オ以上のように,B型書面又はC型書面は貸金業法18条1項及び規則15条の記載要件を欠き,さらに弁済前に交付された書面であるから,到底,貸金業法18条1項に定める書面ということはできない。したがって,本件において貸金業法18条書面の交付があったとはいえない。 第3 本案前の主張に対する判断 1 証拠(甲1,10,16ないし18,20,25,30,乙1の①ないし③,2ないし12,18ないし27,31ないし33,39ないし42,66,証人C,同D)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる(なお,前記第2の1の事実についても適宜併せて記載する。)。 (1) 原告の組織構造原告の組織は,営業本部,経営管理本部,債権管理本部によって構成され,営業本部の配下に14の統括部がある。そして,各統括部は,その下にある各店舗の営業,債権管理,人事管理,事務管理等の業務について責任を負い,責任者としての統括部長及び統括部長の補佐を行う副統括部長が置かれている。そして,東関東統括部(かつては千葉統括部)については,統括部長が千葉支店長,副統括部長が同支店の支配人に選任されている(なお,一般的にいえば,統括部の範囲と支店の範囲とは必ずしも一致するものではない。)。 原告の組織規定(甲10)の7条によれば,①著しく異なる職能をやむを得ず同一の組織単位に所管させた場合,その職能を補佐する必要のあるとき,②管理職位が直接監督すべき人員が管理統制の限界を超えるとき,③社長より高度の専門的 )の7条によれば,①著しく異なる職能をやむを得ず同一の組織単位に所管させた場合,その職能を補佐する必要のあるとき,②管理職位が直接監督すべき人員が管理統制の限界を超えるとき,③社長より高度の専門的職務能力を要する業務を命じられた場合,その業務につき管理職位を補佐する必要のあるときには,管理職位を補佐するため補佐職位を置くことができ,「補佐職は,管理職位とともに組織単位の業務の全部又は一部の業務を遂行する」ものとされている(なお,被告から提出された原告組織規定(乙18)には,「補佐職は,管理職位より指示された組織単位の業務の全部又は一部の業務を管理職位とともに一体として,職務を遂行するものとする。」と規定されている。)。副統括部長はこの補佐職に該当する。 (2) 原告東関東統括部長兼千葉支店長の職務権限東関東統括部長兼千葉支店長であるCは,千葉,水戸,錦糸町の各区域を管轄する同統括部の責任者であるとともに,千葉支店の支店長として千葉県下の9つの支店(千葉,市川,船橋,成田,柏,松戸,茂原,銚子,木更津)の営業促進,債権管理,人事管理,事務管理等の業務を行うが,現実には,その職務は主に営業関係に重点が置かれている。また,Cは,原告の執行役員として,本社以外の地域における業務全般についても権限を持ち,本社の役員会にも事実上出席する等原告の経営に関与している。 Cが融資の決裁に参加するのは千葉支店における取引のみであり,これについても,最終的な決定は本社に委ねられている。Cは,人事面では,社員の採用に当たり一次面接をするが,採用を行うのは本社であり,社員の解雇を決定するのも本社である。また,Cは,債権管理については,訴えの提起,和解等により訴訟を終了させること及び弁護士を訴訟代理人に選任することについての禀議に加わるが,それ以外は,副統括部 社員の解雇を決定するのも本社である。また,Cは,債権管理については,訴えの提起,和解等により訴訟を終了させること及び弁護士を訴訟代理人に選任することについての禀議に加わるが,それ以外は,副統括部長兼支配人に任せており,副統括部長が行った債権管理業務に対して支店長であるCが決裁を行ったり,指導したりすることはない。 千葉支店においては,平成12年5月に支店長Cも支配人登記されたが,実際に訴訟代理人として活動したことは一度もない。 (3) 原告東関東統括部副統括部長兼千葉支店支配人(B。後にはD)の職務権限前記副統括部長兼支配人は,主に債権管理の業務を行う。その業務の中心は,期限の利益を喪失した顧客につき取引を継続するか否か,継続するのであればどのように継続するか(分割返済等の方式),回収するのであればどのように回収するか(仮差押えの申立て,訴えの提起等)について東関東統括部の配下にある店舗の店長や担当者と相談し,指導したり,訴えの提起や仮差押えの申立てを行うか否かについて検討することである。 また,副統括部長は前記のとおり支配人登記され,千葉県下の顧客に関する訴訟について,訴訟代理人としてみずから法廷に出頭したり,弁護士が訴訟代理人として選任されている案件について訴訟に同伴したりする(現在原告千葉支店が抱えている訴訟は約80件程度であり,うち20件程度について支配人がみずから法廷に出頭している。)。そして,千葉支店支配人が担当する訴訟の範囲は,千葉県の訴訟のみならず,千葉県下の顧客が千葉県外で申し立てた訴訟(債務不存在確認の訴え等)にも及ぶ。 支配人は,準備書面の作成や証拠の選別については,統括部長の決裁を受けることなく独断で行うことができるが,本社の経営に関わるような事案については本社に報告することを要し,また,訴えの提起と和解による訴 配人は,準備書面の作成や証拠の選別については,統括部長の決裁を受けることなく独断で行うことができるが,本社の経営に関わるような事案については本社に報告することを要し,また,訴えの提起と和解による訴訟の終了に当たってはすべて本社の決裁を要する(例えば,和解金額を決めるに当たり,元本を減額することについては少額であっても一切裁量はない。)。 このような訴訟活動のうち,訴状や準備書面等の起案については部下に行わせることもあるが,それでも,支配人は,裁判所に出かけるための移動の時間を除いた実時間だけでも訴訟準備に1日に少なくとも数時間程度は費やしている。 なお,副統括部長は,補佐職として前記(2)の統括部長の業務を補佐することとなっている。しかし,これは,融資については,顧客から苦情や紛議があったときの対応等に限定されており,また,支配人には融資禀議書に決裁印を押す欄すら設けられておらず(乙66),さらに,新規顧客の獲得等の実質的な営業活動は行っていない。また,人事については,支店内の社員の採用,解雇等について統括部長や本社に意見を述べる程度に過ぎない。 結局,原告千葉支店支配人の業務は,実質的には,専ら,債権管理・回収に集中し,各種の訴訟活動及びその補助は,その業務の中核を成している。 (4) 原告における支配人登記の状況原告は,各統括部所在地の支店あるいは営業所に支配人を置くことにし,平成6年ころには原告の一つの営業所に19人もの者が支配人登記されていたこともあったが,第二東京弁護士会から,従業員に過ぎない者について支配人として登記し,訴え等を提起しているのは弁護士法違反に当たるとして厳重警告書の送付を受ける等(乙1の①)の世論の批判を受け,やがて徐々にその数を減らしていった。なお,これに関連して,原告については,実質従業員に過ぎない者を大量 ているのは弁護士法違反に当たるとして厳重警告書の送付を受ける等(乙1の①)の世論の批判を受け,やがて徐々にその数を減らしていった。なお,これに関連して,原告については,実質従業員に過ぎない者を大量に支配人登記して訴訟活動をさせるために,例えば仮差押えの申立てに関するマニュアル類を用いて即製の教育を行っているのではないかとの批判も存在した(乙33)。 原告千葉支店においては,以前は,本社の支配人が訴訟を担当していたが,平成10年10月に当時の副統括部長であったBが初めて支配人として登記された。平成12年5月になると,原告本社の方針で一般的には支店長も支配人登記されることになったが,当時の千葉支店長Eは取締役でもあり,統括部長としての業務のみならず原告の経営に関わる業務を多く抱えていたため,支配人登記はなされなかった(なお,この点については,証人D自身が,その陳述書(甲16)において,「統括部長兼支店長は極めて多忙で訴訟等の対外的活動をする余裕がなかったから副統括部長についてのみ支配人として登記された」旨述べて,訴訟活動を行う必要性と支配人登記とが関連することを認めている。)。そして,同年8月,Eの後任としてCが支店長に着任し,Cについては同年11月に支配人登記がなされたが,Cはその後一度も訴訟活動を行っていない。 (5) 原告の貸付及び回収の方式と支配人の役割原告においては,貸付に当たり,以下のような手続を行う。 ①主債務者をして借用証書(甲25)に署名押印させる。②連帯保証人との間で,根保証期間を5年間とする根保証期間限度付根保証承諾書を締結して,主債務者及び連帯保証人に取引承諾書(甲1)に署名押印させる。③主債務者及び連帯保証人が所有する不動産に対し,譲渡担保・(根)抵当権設定等の担保権を根保証金額の範囲で設定し,主債務者及び連帯保証 ,主債務者及び連帯保証人に取引承諾書(甲1)に署名押印させる。③主債務者及び連帯保証人が所有する不動産に対し,譲渡担保・(根)抵当権設定等の担保権を根保証金額の範囲で設定し,主債務者及び連帯保証人に対し,根抵当権設定契約書兼不動産登記法32条の仮登記承諾書に署名させる(甲1の15条)。④主債務者及び連帯保証人に取引承諾書(甲1)記載の根保証額を額面額とする一覧払の約束手形を共同で振り出させ,あるいは主債務者に振り出させて連帯保証人に裏書させる(甲1の11条)。この手形は,統一手形用紙を用いないものである。 以上のように,原告は,貸付に当たり,主債務者あるいは連帯保証人に対して多数の書類を作成させるが,これについては,後に,被告社員から書面の内容について十分な説明がなく,契約の意思決定の過程に錯誤や詐欺があったなどの主張があって紛争となる事案もかなり存在する。 また,原告は,主債務者や連帯保証人に対する給料等の債権仮差押えの申立て,あるいは手形訴訟等債権回収を目的とする多数の訴訟を,当庁を含む各地の裁判所に提起しているところ,これらの訴訟のかなりの部分については支配人が担当しており,これについては,主債務者が弁済を滞ると十分な事前交渉をしないで直ちに法的な手続をとり,債務者が代理人を選任して本格的に争わない限りこれを支配人に行わせ,裁判所の権威に名をかりて債務者を圧迫して取立てを図っているのではないかとの社会的批判も存在する。 (6) 本件訴訟の経過Bは,原告の支配人として,訴状を作成し,平成12年6月15日,当庁に提出して本件訴えを提起し,同年7月17日の第1回口頭弁論期日に出頭して訴状を陳述した。なお,同期日には被告本人が出頭して,答弁書を陳述した。 その後,被告は弁護士に訴訟遂行を委任し,被告訴訟代理人弁護士は,同年8月7日の第2 年7月17日の第1回口頭弁論期日に出頭して訴状を陳述した。なお,同期日には被告本人が出頭して,答弁書を陳述した。 その後,被告は弁護士に訴訟遂行を委任し,被告訴訟代理人弁護士は,同年8月7日の第2回口頭弁論期日に答弁書を陳述し,その中で,Bは実質的には原告の支配人ではないから本件訴えは却下されるべきであるとする本案前の申立てをした。 そこで,原告は,同年8月21日,訴訟代理人として弁護士を選任し,同年10月4日の第3回口頭弁論期日からは,弁護士が原告訴訟代理人として訴訟追行に当たり,原告訴訟代理人弁護士は,同口頭弁論期日において,仮にBの訴訟代理権が否定されるとしてもBの訴訟行為を追認する旨の意思表示をした。 2(1) ところで,商法38条によれば,支配人は,営業に関する裁判上及び裁判外の包括的な代理権を与えられた者であり,営業主の営業全般に及ぶ包括的な代理権を有する者であるとされている。 そして,支配人が民訴法54条にいう「法令により裁判上の行為をすることができる代理人」としての資格を有するというためには,単に形式的に支配人としての登記がなされていることだけでは足りず,実質的にみても,その者につき前記のような営業上の包括的な代理権が授与されていることを要するものというべきである。 ところが,前記1に認定したところによれば,本件訴えの提起当時原告千葉支店支配人として登記されていたBの原告千葉支店における業務は,それ自体,債権管理・回収ないしそのための訴訟活動に限定されており,融資や人事についてはほとんど関わることがなく,それらの事項に関する権限もない(なお,前記1の認定によれば,原告においては,支店長にも融資,あるいは従業員の採用・解雇に関する最終的な決定権はなく,営業に関するこうした重要事項の決定権はすべて本社に集中されていることが窺われ (なお,前記1の認定によれば,原告においては,支店長にも融資,あるいは従業員の採用・解雇に関する最終的な決定権はなく,営業に関するこうした重要事項の決定権はすべて本社に集中されていることが窺われる。)上,前記の訴訟活動についてみても,訴えの提起と和解による訴訟の終了については何ら決裁権がなく,例えば和解における元本金額の減額についてはたとえいかに少額であってもすべて本社の決裁を要するなど,Bの権限は非常に限定されており,その権限は,実際上は,訴状,準備書面等の起案やこれに関する指導等,通常の管理職従業員であっても行い得るような事項におおむね限られていたとみることができる。 もちろん,クレジット,リース等を業とする企業については,支配人の中心的な業務の一つが債権管理・回収ないしはこれに付随する訴訟活動であるといった例が外にもないではなく,このような場合について一律に支配人の実質を満たさないものとみることは相当とはいえないとしても,それは,通常は,その訴訟活動自体が支配人の業務全体の中で合理的な範囲において行われており,かつ,それについて支配人に実質的な権限があることにその根拠があるものである。 ところが,Bをはじめとする原告の支配人については,その多くの業務や権限は前記のようなものであって,債権管理・回収のうちでも仮差押えの申立てや訴えの提起等の訴訟活動にその重点が置かれている上,その内容についてみても,ある程度の重要性を持つ事柄の決定については本社の決裁が絶対の条件とされているのである。 以上によれば,Bについては,千葉支店の営業全般に及ぶ包括的な代理権を原告から与えられていた者ということは困難であり,原告の支配人としての実質を満たしていたものとはいえない。 (2) さらに,前記1の認定事実によれば,原告は,その貸付に当たり,連帯保証人 的な代理権を原告から与えられていた者ということは困難であり,原告の支配人としての実質を満たしていたものとはいえない。 (2) さらに,前記1の認定事実によれば,原告は,その貸付に当たり,連帯保証人となるべき者に期間を5年の長期とする根保証契約を締結させ,主債務者及び連帯保証人の不動産に根保証金額の範囲内の担保権を設定してその仮登記を経,また,これらの者に統一手形用紙を用いない一覧払手形に署名させるなどの定型的な債権保全策を講じ,主債務者が弁済を怠った場合には早期に給料債権仮差押えの申立てや手形訴訟等の訴えの提起を行うことによって債権回収を図っており,こうした大量の訴訟の追行を可能にするために,かつては,一つの支店について多数の支配人を選任し訴訟活動を行わせて社会的批判を浴び,その後支配人の数を限定した後にも,その業務を訴訟活動を中心とする債権回収業務に集中させた上,その重要な部分の決定については権限を与えないという方法によって,支配人制度を自己に都合のいいように利用してきたものということができる。 そして,原告におけるこのような支配人制度の利用が,原告の関係する訴訟について,十分な事前交渉もしないで直ちに法的手段に訴えるが,そこでは契約締結時の説明が十分でなかったことや債務者らの意思表示に瑕疵のあったことが主張されて争われることが多く,訴訟制度の不当な利用であるとの社会的批判を招くという弊害を生んでいる。換言すれば,こうした弊害を生む大きな原因となっているのが,弁護士倫理の規制を受けず,原告の意のままに動く支配人による訴訟活動であることが推認できるのである。 (3) 以上によれば,原告がBを支配人として選任し訴訟活動を行わせた行為はその実質において民訴法54条1項に違反するものというほかなく,その意味で,Bが行った訴訟行為は無効という できるのである。 (3) 以上によれば,原告がBを支配人として選任し訴訟活動を行わせた行為はその実質において民訴法54条1項に違反するものというほかなく,その意味で,Bが行った訴訟行為は無効というべきである。 なお,前記のとおり,クレジット,リース等を業とする企業の中で,支配人の中心的な業務が債権管理・回収とそれに付随する訴訟活動であり,それを利用して相当数の訴訟を遂行している例は外にもあるけれども,前記■のような特異な債権回収方式をとり,それに基づく極めて大量の訴訟事件を遂行し(乙19,21によれば,東京地方裁判所における手形訴訟事件の半数以上は原告が当事者となっているものであると認められる。),かつ,それらの事件について,債務者らの意思表示に瑕疵があったなどとして争われることが多く,これらによって訴訟制度を不当に利用しているとの社会的批判を浴びているのは専ら原告のみなのである。 このように,原告における支配人制度の利用状況,運用実態は,他の企業等の場合とは量的・質的にみてかなりの相違があり,全体として支配人制度の濫用的運用と評価すべき部分が大きいものであるから,このような面に着目して原告の支配人が行った訴訟行為を無効とすることにつき,他の企業の例との均衡を失するとはいえない。 (4) このように訴訟代理人資格のない者が行った訴訟行為を無効とすることについては,相手方が勝訴した場合にも当該訴訟が不適法として却下されることになり相手方の利益を害するし,敗訴した者が判決確定後に訴訟代理人資格の欠缺を指摘することが再審事由(民訴法338条1項3号)となるとすれば裁判の法的安定性を害するおそれがあるとの批判もありうるところである。 しかし,前者の点については,そのような支配人制度を濫用的に運用した者がみずからその無効を主張することは許さないとし なるとすれば裁判の法的安定性を害するおそれがあるとの批判もありうるところである。 しかし,前者の点については,そのような支配人制度を濫用的に運用した者がみずからその無効を主張することは許さないとして,その無効主張を片面的なものとすることで対処すれば足りると考えられる。また,後者の点については,前記のような形態での支配人制度の利用が外部から見ても比較的容易に認識し得る明確な事項であること,それにもかかわらず当該訴訟手続の中で何らその点を取り上げなかった相手方が,判決確定後に新たにその点を指摘し,確定判決の効力を覆すことは,時期に遅れたものであるのみならず,訴訟上の信義則にも反する面があることなどからすれば,判決が確定した後についての代理権欠缺の主張は,特段の事情がない限り許されないと考えることが可能であると思われる。 (5) もっとも,支配人として登記された者に真実包括的な代理権がなかったことによりその訴訟行為が無効とされることは法的安定性を害するとの批判にも相当の根拠があること,前記のような支配人の訴訟行為について無権代理人の訴訟行為類似の行為として無効と解するのであれば理論的には追認が認められてしかるべきこと(最高裁昭和43年6月21日判決民集22巻6号1297頁参照)を考慮するならば,右のような支配人の訴訟行為も,その行った具体的な訴訟行為の内容自体に明白な違法性が存在するなどの特別な事情がない限りは,追認を許さない絶対的無効とまで解すべきではなく,追認を許す相対的無効と解すべきである。すなわち,訴え提起の時点において前記のような事情が窺われれば代理権の補正がない限りそれ以上の訴訟行為を行うことを許すべきではないが,訴え提起の後にそのような事情が明らかになった場合には,それまでに行われた訴訟行為は相対的無効として,権限のある者によ れれば代理権の補正がない限りそれ以上の訴訟行為を行うことを許すべきではないが,訴え提起の後にそのような事情が明らかになった場合には,それまでに行われた訴訟行為は相対的無効として,権限のある者によるその追認を許すべきである。 これを本件についてみるに,前記認定によれば,本件におけるBの訴訟行為は,訴訟代理人として選任された弁護士が追認の意思表示を行うことによってさかのぼって有効となったものといえる。 なお,被告は,本件のような事案について追認が認められるならば,原告は,とりあえず,名目的な支配人に訴えの提起等をさせ,支配人性が争われた段階で弁護士を選任すれば足り,それまでの間は名目的支配人が訴訟行為を行うことができることになり,訴訟の相手方が不当な訴訟追行による被害を受けかねないと主張する。 しかしながら,本判決のように,原告の名目的支配人による訴訟行為は無効であるとの考え方に立てば,原告がそのような支配人名で訴状を作成・提出してきても,裁判所としては,まず,原告に弁護士を訴訟代理人として選任するか否かを確認し,それが確認できた段階で手続を進め,あるいは,代理人弁護士が選任されないままそのような支配人が口頭弁論期日に出頭した場合には,支配人による訴訟行為を認めないという運用をすることになると考えられるのであるから,今後,被告が懸念するような事態が一般的に生じるとは思われない。 (6) したがって,結局,本案前の抗弁は理由がないことに帰する。 第4 本案の主張に対する判断 1 本件消費貸借の貸付金額及び元金の支払方法について(1) 証拠(甲1,21,25,乙43)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる(なお,前記第2の1の事実についても適宜併せて記載する。)。 ア原告(取扱いは千葉支店,以下同じ。)は,Aに対し,平成9年6月30日, 5,乙43)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる(なお,前記第2の1の事実についても適宜併せて記載する。)。 ア原告(取扱いは千葉支店,以下同じ。)は,Aに対し,平成9年6月30日,200万円(ただし,利息及び諸費用合計13万3800円を天引)を,以下の約定で貸し渡し,その際,原告は,Aに借用証書(甲25)に署名押印させ,その控えを交付すると共に,計算書(乙43)を交付した。 (ア) 元金の支払方法平成9年9月5日に一括で支払う。ただし,原告が認めた場合,取引承諾書記載の約定に違背なき限り,最長5年とする根保証の期間内,所定の利息及び費用の支払を条件に取引継続ができる。 (イ) 利息の支払方法元金の支払期までの利息13万3800円を契約時に一括で支払い,その後の前記(ア)の取引継続の場合の利息は毎月5日に支払う。 (ウ) 利率当初年39.05パーセントであり,その後の取引継続については年38.4パーセント。 なお,借用証書及び計算書の利率及び実質年利の欄には日歩8銭すなわち年利(1年を365日で計算)29.2パーセントとの記載と年利39.05パーセントとの記載があるところ,前者は「費用」として収受される金員を含まない場合の利率であり,後者はそれを利息に含んで計算した場合の利率である(もっとも,前記各書面にはこれらの関係は何も記載されていない。)。ただ,原告は,当初の貸付の際のみならず,その後の取引継続の際の月ごとの利息の徴収の際も,常に「費用」として一定の金員を収受しているところ,その内訳,明細は何ら明らかにされていないこと,その額も利息のおおむね27パーセントくらいの定額になっていることなどからすれば,これらの「費用」として収受される金員が利息制限法3条ただし書にいう「契約の締結及び債務の弁済の費用」に当たる いこと,その額も利息のおおむね27パーセントくらいの定額になっていることなどからすれば,これらの「費用」として収受される金員が利息制限法3条ただし書にいう「契約の締結及び債務の弁済の費用」に当たるとは認め難く,これらは同条本文によって利息とみなされるべきものであり,本件消費貸借の利率は前記のようなものと認めるのが相当である(以下「利息」とは,このような費用を含んだものをいう。)。 (エ) 損害金年40.004パーセント(年365日の日割計算。甲1の3条3項)(オ) 特約上記元利金の支払を1回でも怠ったとき,債務者又は保証人が振出,引受,裏書した手形及び小切手が1通でも不渡りになったとき,その他期限の利益喪失事項の一つにでも該当したときは期限の利益を失い,債務全額及び残元本に対する遅延損害金を即時に支払う(甲1の8条)。 イ被告は,平成9年6月30日,原告との間で,Aが原告に対し負担する前項の債務を担保するために,下記事項を内容とする連帯根保証契約を締結し,その際,原告は,取引承諾書につき,A及び被告に署名押印させ,その写しを交付した。 (ア) 根保証限度額 300万円(イ) 根保証期間平成9年6月30日から5年間(ウ) 根保証の範囲本件根保証契約締結日現在主債務者が原告に対し,負担している一切の債務及び上記根保証期間に発生する一切の債務。ただし,根保証限度額は元本についての限度額であり,損害金が発生し,元本との総額が前記限度額を超えるときは当然にその全額を支払う。 (エ) 特約アの(エ)に同じ。 ウ Aは,平成9年8月26日ころ,原告から平成9年9月6日から同年10月5日までの利息の支払を請求するB型書面(甲26はその控え)の交付を受け,同年9月5日,原告に利息6万1300円を支払った(甲21)。そ 平成9年8月26日ころ,原告から平成9年9月6日から同年10月5日までの利息の支払を請求するB型書面(甲26はその控え)の交付を受け,同年9月5日,原告に利息6万1300円を支払った(甲21)。そこで,前記ア(ア)に基づき,Aが所定の利息を毎月5日限り原告の預金口座に振り込んで支払うことを条件に本件消費貸借の元金返済期限は延長された(甲1の12条及び22条)。 エ Aは,原告に対し,別紙2計算書「取引日」記載の各日時に「元利金入金」欄記載のとおり弁済した(甲21)。これらは,B型書面又はC型書面の送付を受け,その電信振込依頼書記載の利息の額を原告の所定の口座に振り込む方法でなされたものである(このうち,平成10年12月5日から平成11年1月5日までの利息の支払を請求したC型書面の控えが甲27である。)。 (2) 前記認定に対し,被告は,貸付金額は186万6200円であり,また,元金の支払方法につき,平成14年9月5日に一括で支払うという合意はなかったと主張する。 しかしながら,借用証書(甲25)の貸借金額欄には「2,000,0000」との記載があること,利息が天引された場合であっても当事者間に成立した本件消費貸借の元本の額は天引前の金額と考えるべきであることからすれば,この点に関する被告の主張は採用できない。 また,前記(1)の認定事実イによれば,Aは,元金支払方法「一括」,最終弁済日「09.09.05」との記載がある借用証書(甲25)にみずから署名しており,この内容を認識して署名したといえることなどからすれば,元金について,前記のような一括払いの合意がなかったとはいえない。そして,Aが原告担当者から,「毎月5日に利息を支払えば元本の返済は後でいい」との説明を受けていたことは被告も認めているところ,これは利息の支払を条件に本件消費貸借の返 の合意がなかったとはいえない。そして,Aが原告担当者から,「毎月5日に利息を支払えば元本の返済は後でいい」との説明を受けていたことは被告も認めているところ,これは利息の支払を条件に本件消費貸借の返済期限を5年まで延長できるとの取引承諾書22条の内容を説明したものと考えられること,Aは当初の返済期日後も利息のみを支払い元本は一度も返済していないことからすれば,Aは,貸付に際して原告の担当者から説明を受け,取引承諾書22条の定めに従って返済期限を最長平成14年9月5日まで延長することができる旨の合意をし,後に同条に従う支払を行ってその適用を受けるに至ったものと考えられる。 2 天引利息,前払利息への貸金業法43条の適用について(1) 天引利息への貸金業法43条の適用ア前記認定事実1(1)アによれば,本件消費貸借は利息が天引されているところ,利息制限法2条は,天引利息について,約定の名目的貸付額の全額を元本額として利息制限法の許す最高額の利息を算出し,これを超過した部分は元本に充当される旨を規定する。 利息制限法2条は,利息の天引が,消費貸借契約締結の際にあらかじめ計算した利息分を控除して差引残額のみを借主に交付するものであるから,当該利息分が同項の制限内であるとしても,現実の受領額からすると実質的には同項の制限を超える場合があることを考慮して規定されたものであり,利息について同法1条1項の制限よりもさらに厳しい制限を加えた規定と位置付けることができる。 イ一方,貸金業法43条1項は,本来ならば,利息制限法所定の制限利息又は制限損害金を超える金銭消費貸借上の利息又は損害金の支払約定は無効(利息制限法1条1項,4条1項)であるところ,貸金業者が業として行う金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約に基づき債務者が任意に支払った金銭の額が利息制 銭消費貸借上の利息又は損害金の支払約定は無効(利息制限法1条1項,4条1項)であるところ,貸金業者が業として行う金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約に基づき債務者が任意に支払った金銭の額が利息制限法1条1項に定める利息の制限額を超える場合においては,一定の条件を満たす限り,超過部分の支払について,これを利息制限法1条1項の規定にかかわらず例外的に有効な利息の債務の弁済とみなす旨を規定しており,同条3項も,前記のような消費貸借上の債務の不履行による損害額について債務者が損害金として任意に支払った金銭の額が利息制限法4条1項に定める賠償額の予定の制限額を超える場合においては,一定の条件を満たす限り,超過部分の支払についてこれを例外的に有効とみなす旨を規定する。 しかしながら,貸金業法43条は,利息制限法2条については何ら触れていない。 また,前述のように,貸金業法43条1項1号は,一定の条件のもとに利息制限法で定める利率等を超える利息等の支払を有効なものとみなし,その条件を貸金業法17条,18条,規則13条,15条に詳細に規定しているのであるから,このような厳格な制限の下に規定された利息制限法の例外規定の適用範囲を広く解釈すべきではない。 これらのことと,前述アのような利息制限法2条の位置付けを併せ考えると,貸金業法43条1項について,利息制限法2条に対する関係でも特則として機能する規定ということはできない。 そして,このように解することは,貸金業法43条1項が,「利息として支払った」と,金銭の現実の交付を要する趣旨と読むことの可能な表現をとっていることとも符合する。 ウなお,このように考えても,利息前払と利息後払との間に不均衡が生じるとはいえない。なぜなら,利息の後払の場合には,債務者は,貸金業者に対して弁済を行う際に利息制限法に従っ ることとも符合する。 ウなお,このように考えても,利息前払と利息後払との間に不均衡が生じるとはいえない。なぜなら,利息の後払の場合には,債務者は,貸金業者に対して弁済を行う際に利息制限法に従って元利充当すべきである旨を主張し,その充当関係を受取証書に記載するように要求することができるのに対し,利息天引の場合には,債務者が天引を拒否すれば事実上貸付を拒否される可能性が高いのであるから,利息前払の場合は債務者が「任意に」利息として支払ったということが難しいという相違が存在するからである。 貸金業法43条1項が利息制限法2条に何ら触れていないのは,このように利息の天引には実質的な任意性が欠けているという事情を重視したものと考えられる。 エまとめ以上のとおり,利息の天引については貸金業法43条1項のみなし弁済は適用されないというべきであり,この点に関する原告の主張は採用できない。 (2) 前払利息への貸金業法43条の適用ア前記1によれば,本件消費貸借は,利息を前払することによって元本の返済期限を延長することができるが,利息の支払を1回でも怠ると直ちに期限の利益を喪失し,債務者は,債務全額を即時弁済するとともに年40.004パーセントの割合による損害金を支払わなければならない内容のものであることが認められる。 かかる事実からすれば,Aは,利息の前払を行って弁済期を延期してもらわない限り,原告に対する債務について期限の利益を喪失し,直ちに自己及び被告に対し債務全額の履行を迫られる立場にあったことから,このような事態に陥るのを免れるために利息の前払を継続していたことが推認できる。 イこうした事情を考えると,本件における前払利息について「任意に」支払ったものということは困難であって貸金業法43条1項のみなし弁済は適用されないというべきである。も 続していたことが推認できる。 イこうした事情を考えると,本件における前払利息について「任意に」支払ったものということは困難であって貸金業法43条1項のみなし弁済は適用されないというべきである。もっとも,前払利息については,天引利息の場合と異なり,債務者の手持資金からの支払である上,前記(1)のような弁済期の徒過による期限の利益喪失の約定も,実態としては必ずしも厳密に運用されていたわけではなく,多少の遅延があっても直ちに期限の利益を喪失させた上,債務全額の履行を迫るという扱いをしていたわけでもなかったこと(甲21,弁論の全趣旨)などからすれば,前払利息については天引利息の場合と異なり,支払の任意性の要件を満たすとみる余地がないではないとは思われるが,本件では,いずれにせよ,みなし弁済の他の要件が認められないことは後述のとおりであり,この点が最終的な判断に影響を及ぼすものではない。 3 貸金業法17条書面の交付について(1) 貸金業法17条1項及び規則13条が契約内容を明らかにする書面の交付を要求する趣旨は,かかる書面を債務者に交付することによって,契約内容や弁済充当関係を明らかにして後日の紛争を防止することにある。 そして,貸金業法43条1項は,前記のような手続を履践した貸金業者につき,本来利息制限法に違反する無効な弁済を例外的に有効なものとする規定であるから,同法43条1項の適用が認められるためのものである前記条項所定の要件については厳格に解釈する必要がある。そうすると,17条書面の記載事項は,契約の実態に即した正確なものであり,かつ,債務者が自己の債務の内容を正確に認識し,容易に弁済計画の参考となし得る程度に一義的,具体的かつ明確なものでなければならない。 (2) そこで,本件で原告からAに対し,17条書面が交付されたといえるか否か が自己の債務の内容を正確に認識し,容易に弁済計画の参考となし得る程度に一義的,具体的かつ明確なものでなければならない。 (2) そこで,本件で原告からAに対し,17条書面が交付されたといえるか否かについて検討する。 ア原告がAに送付した計算書(乙43,これは借用証書(甲25)の控えである)には,利率について「日歩8銭」すなわち年利29.2パーセント(1年を365日で計算)の記載とともに「実質年利39.05パーセント」の記載があるところ,これは前記1(1)ア記載のように費用を利息とみなすか否かの相異によるものであるが,同計算書には何らその点の説明がなく,債務者がその関係を理解することは極めて困難である。 したがって,前記計算書(乙43)には,「貸付の利率」(貸金業法17条1項4号)「利息の計算方法」(規則13条1項ヘ)の明確な記載があるとはいえない。 イまた,前記1の認定事実によれば,本件消費貸借は,平成9年9月5日以後元本の返済期限が,利息の支払を条件に最長5年間延長され,かつ,利息の支払方法も当初の一括払いから,月ごとの支払に変更されているところ,その変更に符合する記載がなされた書面が原告からAに交付されたことを示す証拠はない。 したがって,本件においては,原告からAに対し,「返済の方式」(貸金業法17条1項5号),「返済期間及び返済回数」(同項6号),「返済の方法」(規則13条1項ト),「各回の返済期日及び返済金額」(規則13条1項チ)が記載された書面が交付されたとはいえない。 (3) 前記(2)イに対し,原告は,本件消費貸借の返済期限が合意により継続されることについては,取引承諾書(甲1)の22条に記載されているから「返済期間」(同法17条1項6号)の記載要件を満たすと主張する。 この主張は,要するに,返済期限の延長については,す 意により継続されることについては,取引承諾書(甲1)の22条に記載されているから「返済期間」(同法17条1項6号)の記載要件を満たすと主張する。 この主張は,要するに,返済期限の延長については,すでに交付済みの取引承諾書22条に記載されているから,被告はその内容を容易に認識し得るのであって,これと計算書(乙43)を併せみれば,「返済の方式」(貸金業法17条1項5号),「返済期間及び返済回数」(同1項6号)の記載があるとみることができるとの主張であると解される。 しかし,貸金業法17条1項が契約内容を明らかにする書面の交付を要求する趣旨からすれば,原則として,1通の書面に同項所定の事項のすべてが記載されていなければならないものというべきであり,例外的に同項所定事項の記載が複数の書面にわたる場合にこれを許容し得ることがあるとしても,そのためには,債務者が,同項所定の事項がどの書面で補完されているのかを容易に認識し得る記載が基本たる17条書面上にあることを要すると解される。 これを本件についてみるに,前記の計算書には,最終弁済日として「09.09. 05」との記載があるのみで,この返済期間が取引承諾書の22条により延長される場合があることについての記載が全くない。また,債務者は,計算書を見ただけでは,返済期限の延長についてどの書面に記載されているのかを認識することはできない。 したがって,この点に関する原告の主張は採用できない。 (4) また,前記(2)イに対し,原告は,貸金業法17条1項5号が記載を要求している「返済の方式」とは,元金の返済方法であり,利息については同項4号「貸付の利率」を明示することを要求しているに過ぎないから,毎月5日が利息の支払日であることの記載は必要でないし,また,本件消費貸借は,継続された場合でも分割払でない以上,利 利息については同項4号「貸付の利率」を明示することを要求しているに過ぎないから,毎月5日が利息の支払日であることの記載は必要でないし,また,本件消費貸借は,継続された場合でも分割払でない以上,利息の「返済期間及び返済回数」(同項6号),「各回の返済期日及び返済金額」(規則13条1項チ)の記載は不要であると主張する。 しかし,前記認定事実1(1)ア,ウによれば,本件消費貸借は,利息の支払を条件に元本の返済が猶予されていたのであり,利息の支払を1回でも怠ると債務者は直ちに期限の利益を喪失し,債務全額を即時弁済するとともに年40.004パーセントの割合による損害金を支払わなければならず,債務者にとっては,利息の支払期限が最大の関心事項であるといえる。にもかかわらず,原告主張のように,貸金業法17条1項の要件を緩やかに解釈して利息の支払日や支払金額等の記載を不要とすれば,債務者は,自己の債務の内容を正確に認識できず,将来の弁済計画をたてることも困難となり,貸金業法17条1項及び規則15条1項の趣旨が没却されかねない。したがって,この点に関する原告の前記主張は採用できない。 4 貸金業法18条書面の交付について(1) 前記1によれば,Aは,本件消費貸借の利息の弁済を原告の預金口座に振り込んで行っていたことが認められる。 ところで,貸金業法18条1項が18条書面の交付を義務づけた趣旨は,弁済の事実及び元利充当関係を明らかにし,債務者が払い込んだ金銭の利息,元本への充当関係を具体的に把握することができるようにすることにあるところ,貸金業法43条1項は受取証書の交付について何らの除外事由を設けていないこと,また,債務者は受取証書の交付を受けることによって初めて払い込んだ金銭の利息,元本等への充当関係を具体的に把握することができることからすれば,利息制限 の交付について何らの除外事由を設けていないこと,また,債務者は受取証書の交付を受けることによって初めて払い込んだ金銭の利息,元本等への充当関係を具体的に把握することができることからすれば,利息制限法1条1項所定の制限を超過する金銭の支払が貸金業法43条1項によって有効な利息の弁済とみなされるためには,その支払が貸金業者の預金又は貯金の口座に対する払込みによってなされた場合であっても,特段の事情のない限り,貸金業者は,払込みを受けたことを確認した都度,直ちに,18条書面を債務者に交付しなければならないと解される(前記最高裁平成11年1月21日判決)。 そして,利息制限法が強行規定であり,その制限を超える利息等の約定は本来無効であって存在しないものとされているにもかかわらず,貸金業法43条1項に定められた一定の要件を満たす場合に限りみなし弁済の効果を受けることができるとされ,その要件が同法及び規則に詳細に規定されていることからすれば,その要件の解釈は厳格になされるべきである。 そうすると,前記「特段の事情」については,受取証書の交付がなくても債務者が充当関係を容易に認識できる場合(債務者も貸金業者であるといった場合が考えられようか)や,債務者が明確に受取証書の交付が不要である旨を表明するような例外的な場合に限ると解するのが相当である。 (2) 前記1によれば,Aは,原告からB型書面又はC型書面の送付を受け,これに基づいて別紙2計算書の「返済額」欄記載のとおりの弁済をしていると認められるところ,これらの書面は,弁済に先立って,求める弁済の内容を明らかにするために送付されたものであって,払込みを受けたことを確認した都度直ちに交付された書面ということはできないし,それ以外に原告が弁済を受けた後に書面を交付した事実は認められない。 また,本件におい するために送付されたものであって,払込みを受けたことを確認した都度直ちに交付された書面ということはできないし,それ以外に原告が弁済を受けた後に書面を交付した事実は認められない。 また,本件においては,受取証書の交付を要しない前記「特段の事情」も認められない。 (3) これに対し,原告は,事前に,電信振込用紙と一体となった請求書に,支払を求める金額の充当関係を明示し,かつ,貸金業法18条1項が規定するすべての要件を充足した書面を送付している場合,債務者は,振込みの際弁済額の充当関係等を認識できるから,前記最高裁判決のいう「特段の事情」がある場合に該当すると主張する。 しかしながら,右のような主張が貸金業法18条1項及び規則15条1項の趣旨を没却しかねないものであって採用できないことは,4(1)に前述したところから明確である。 5 以上を前提として,利息制限法の制限利息を超えて支払われた利息を元本に順次充当すると,別紙2計算書のとおり,その残元金は50万7494円になる。 また,甲21及び弁論の全趣旨によれば,Aは,平成12年2月5日に支払うべき利息の支払を怠ったので,同日の経過により期限の利益を喪失したものであり,前記残元金に対する期限の利益を喪失した日の後である同月7日から支払済みまで利息制限法の範囲内の年3割の割合による遅延損害金を支払う義務がある。 第4 結論以上によれば,原告の請求は主文の限度で理由があるから,その限度で認容し,原告のその余の請求は理由がないからこれを棄却することとする。 千葉地方裁判所民事第1部裁判長裁判官及川憲夫裁判官瀬木比呂志裁判官安福幸江 裁判長 裁判官 及川憲夫 裁判官 瀬木比呂志 裁判官 安福幸江
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