平成20(わ)1239

裁判年月日・裁判所
平成21年4月27日 神戸地方裁判所
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判決文本文6,099 文字)

平成20年(わ)第1239号,第1316号主文被告人A,同B,同C及び同Dをそれぞれ懲役2年6月及び罰金200万円に,被告人Eを懲役2年6月及び罰金400万円に,被告会社株式会社F及び同G株式会社をそれぞれ罰金1000万円に,被告会社H株式会社を罰金500万円に処する被告人A,同E,同B,同C及び同Dにおいてその罰金を完納することができないときは,各被告人についていずれも金1万円を,それぞれ1日に換算した期間,その被告人を労役場に留置する。 被告人A,同E,同B,同C及び同Dに対し,この裁判確定の日からいずれも4年間それぞれその懲役刑の執行を猶予する。 理由 (罪となるべき事実)被告会社株式会社Fは,大阪市a区b町c丁目d番e号に本店を置き,水産物の輸出入,加工,販売等の業務を営むもの,被告会社G株式会社は,徳島市f丁目g番h号に本店を置き,鮮魚介類等の卸売等の業務を営むもの,被告会社H株式会社は,神戸市i区j丁目k番l号に本店を置き,水産物の集荷販売等の業務を営むものであり,被告人Aは,被告会社Fの代表取締役であるとともに被告会社Gの商事部課長,被告人Bは,被告会社Fの取締役,被告人Cは,被告会社Fの取締役兼同社福岡営業所長,被告人Dは,被告会社Hの冷凍塩干部凍魚課長の職にあったものであるが,被告人5名は,I及びJらと共謀の上,被告人Aについては,被告会社F及び被告会社Gのそれぞれの業務に関し,被告人B及び同Cについては,被告会社Fの業務に関し,被告人Dについては,被告会社Hの業務に関し,それぞれ不正の目的をもって,平成20年2月9日ころから同年4月8日ころまでの間,高松市m町n番地o所在の株式会社Kにおいて,中国産うなぎ蒲焼約256.69トンを「愛知県三河一色産うなぎ蒲焼「原料原産地・愛知県(三河一色産」等と印刷さ」, ころから同年4月8日ころまでの間,高松市m町n番地o所在の株式会社Kにおいて,中国産うなぎ蒲焼約256.69トンを「愛知県三河一色産うなぎ蒲焼「原料原産地・愛知県(三河一色産」等と印刷さ」,)れた段ボール箱2万5669箱に梱包し,前記中国産うなぎ蒲焼が愛知県三河一色産のうなぎ蒲焼であるかのように表記して,商品の原産地について誤認させるような表示をした上,同年3月10日ころから同年6月13日までの間,130回にわたり,京都府京丹後市p町q番地所在の株式会社Lほか8社に対し,前記うなぎ蒲焼のうち合計1545箱(合計15.445トン)を譲渡し,もって,それぞれ不正競争を行ったものである。 (証拠の標目)記載省略(法令の適用)罰条いずれも包括して刑法60条,不正競争防止法21条2項1号,2条1項13号,22条1項刑種の選択被告人A,同E,同B,同C及び同Dにつき,いずれも懲役刑及び罰金刑労役場留置被告人A,同E,同B,同C及び同Dにつき,いずれも刑法18条懲役刑の執行猶予被告人A,同E,同B,同C及び同Dにつき,いずれも刑法25条1項(量刑の理由) 本件犯行に至る経緯及び本件の社会的影響被告会社Fは,被告会社Gの子会社であり,実質的に同社の一部門として位置付けられ,冷凍うなぎ蒲焼の販売業務を行い,その主な商品は,Gが中国から輸入し,Fが同社から買い入れるブランド名「M」という冷凍のうなぎ蒲焼である。平成19年6月,スーパーで販売されていたMから使用が禁止されている合成抗菌剤であるマラカイトグリーンが検出され,同年7月にそれが公表された。マラカイトグリーンが検出された食品は,食品衛生法に基づき,その流通,販売等が禁止されていることから,それ以降,販売先からの返品がF及びGに相次ぎ,中国産の冷凍うなぎ蒲焼の在庫は,Fが同 公表された。マラカイトグリーンが検出された食品は,食品衛生法に基づき,その流通,販売等が禁止されていることから,それ以降,販売先からの返品がF及びGに相次ぎ,中国産の冷凍うなぎ蒲焼の在庫は,Fが同福岡営業所分を含め約800トン(仕入値で約10億円,Gが約三百数十トン(同約4億円ないし5億円)に)なった。 被告人Cは,当時所長をしていたF福岡営業所の中国産冷凍うなぎ蒲焼の在庫が500トンほどにもなり,その販売に苦慮していた。本件偽装の件を初めに言い出した者が誰で,あるのかは証拠上必ずしも定かではないが,Cは,内心で,多量の在庫を処理するには国産に偽装して販売するしか方法がないと思っていた。しかし,Cは,偽装するとはっきりとは言わないまま,被告人Bに在庫の処理を相談するなどした上,被告人Dにも偽装の話を持ちかけるなどした。CとDは,以前にもNという業者が中国産冷凍うなぎ蒲焼を鹿児島産と偽装して販売した事案に関与したことがあり,これは平成19年9月に発覚して,いた。被告人Aは,BやCから本件偽装の話を聞いた当初は躊躇していたものの,結局国産に偽装して販売することを承諾し,Bが被告人Eに話をするなどした結果,平成19年12月ないし遅くとも平成20年1月ころには,被告人5名やほかの共犯者らとの間でFとGが在庫として抱えている中国産冷凍うなぎ蒲焼の一部を国産に偽装し,これをDがその買入れの実質的権限を有する冷凍部の課長として勤務していた被告会社Hが買い受け,その一部をFが買い戻して販売し,残部はHが販売するということになった。 以上のように,本件偽装は,Mからマラカイトグリーンが検出されたことが公表されたことがきっかけとなっているところ,輸入食品については輸入に際して日本で認められていない抗菌剤や食品添加物が含まれていないかどうかを検査するこ は,Mからマラカイトグリーンが検出されたことが公表されたことがきっかけとなっているところ,輸入食品については輸入に際して日本で認められていない抗菌剤や食品添加物が含まれていないかどうかを検査することになっており,本件中国産冷凍うなぎ蒲焼も税関の検査に合格したものであったから,FやGの関係者が輸入に際しての検査がもっと厳格にされておれば,本件のような問題が生じなかったという気持ちを抱くのは無理もないところであると思われ,動機にある程度同情できる余地はあるが,だからと言って,食品表示に関する一般の信頼をないがしろにして目先の利益を得るためや自己保身のために在庫の早期処分を図って国産に偽装する理由になるわけではなく,犯行に至る経緯や動機に酌むべき事情は乏しいと言わざるを得ない。ことに,C及びDは,以前にも同種犯行に及んでおり,この種犯行に対する規範意識が鈍麻している。また,Eは,多額の手数料を得る目的で積極的に本件にかかわっており,動機に酌むべき点はない。 消費者は,製造業者や販売業者が食品に記載した表示を信頼して食品を購入するほかないが,本件はうなぎ蒲焼という身近な食品についてその原産地を偽装表示したものであって,その表示に対する一般消費者の信頼を大きく損なった犯行であり,その社会的影響は極めて大きい。 被告人5名の役割等Aは,材料とする中国産冷凍うなぎ蒲焼の供出や保管場所の手配を,Eは,箱の詰替えの現実の作業の管理や配送等の手配を,Bは,本件全体の仕組みを構想し,Eに本件を持ちかけたほか,仲介業者の手配,架空の販売元会社であるOの社印や代表取締役印,産地証明書の準備等を,Cは,Dを誘い入れたほか,材料とする中国産冷凍うなぎ蒲焼の供出及び偽装後の販売を,Dは,上司に虚偽の報告をするなどした上で偽装うなぎ蒲焼の買付けやその販売をそれぞれ担 役印,産地証明書の準備等を,Cは,Dを誘い入れたほか,材料とする中国産冷凍うなぎ蒲焼の供出及び偽装後の販売を,Dは,上司に虚偽の報告をするなどした上で偽装うなぎ蒲焼の買付けやその販売をそれぞれ担当し,どの一人を欠いても本件偽装はできなかったものであり,また,偽装が発覚しないように,保管場所の倉庫業者や倉庫間の運搬業者には履歴が残らないように手配し,仲介業者を介在させるなど周到な準備をして敢行しており,本件は組織的かつ巧妙に計画された悪質な事案であり,被告人5名はそれぞれに必要不可欠な重要な役割を果たしたものである。 本件偽装による不法収益本件偽装うなぎ蒲焼は,帳簿上,架空の販売元会社であるOから株式会社Pを経てQ株式会社に販売され,同社から更にHに販売され,Hは,Qに対し,その代金として7億7794万円余りを支払った。本件偽装うなぎ蒲焼の原材料となる中国産冷凍うなぎ蒲焼のGによる仕入原価は3億2488万円余りであり,これを前記代金から差し引くと,本件偽装による不法収益の合計は4億3384万円余りとなり,経費等を除いた現実に得た経済的利益としては,Qが3421万円余り,Pが620万円余り,Eが8672万円余り,,Dが1000万円,Fが1億8671万円余り,Gが1億998万円余りとなる。なおGの弁護人は,同社がFから受領した4億3487万円余りは正当な取引の結果である旨主張するが,本件偽装に供された前記仕入原価の価額を同金額から控除するのはいいとしても,残額1億998万円余りは,本件偽装商品の売上があったからこそFから支払を受けることができたものであるから,この金額は本件偽装による不法収益というべきであり,同弁護人の主張は採用できない。 中国産を国産と偽装した以外の問題点本件偽装うなぎ蒲焼からサンプルとして採取された21尾中17 たものであるから,この金額は本件偽装による不法収益というべきであり,同弁護人の主張は採用できない。 中国産を国産と偽装した以外の問題点本件偽装うなぎ蒲焼からサンプルとして採取された21尾中17尾から,食品の安全面から検出されてはならないとされているマラカイトグリーン等の合成抗菌剤が検出されている。この点は,そのような食品が一部消費者に販売され,一般消費者がそれを口にする危険が現に生じたという意味で看過できないが,これはそもそも輸入に際しての検査の際に発見されてしかるべきものであって,そのようなことを知らなかった被告人や被告会社。 らの不正競争防止法上の責任がこのことによって更に重くなるものであるとはいえないまた,本件では賞味期限も偽装されているところ,中国からの入港日を製造日とみなして2年間の賞味期限を設定した場合,本件偽装に供される前にすでに賞味期限切れとなっていたことが明確であるものが5.97トン(597箱)あり,そのほかに確定量は判明しないが賞味期限切れとなっていたものが相当数量存在しており,この点は,仲卸業者や一般消費者に賞味期限を誤認させるものであって,悪質である。 さらに,被告人らは,平成20年6月に本件偽装が発覚した後,何回か集まって,全容が判明しないように罪証隠滅を図ろうとするなどしており,犯行後の事情もよくない。 被告人5名及び被告会社3社のために酌むべき事情,被告人5名は,それぞれ,本件を反省していること,一定期間身柄を拘束されたこと本件がマスコミに取り上げられて社会的制裁を受けたことなどのほか,Aは,当初は本件に積極的でなかったこと,個人として経済的利益を直接には得ていないこと,捜査及び農林水産省の調査に協力して事実関係を詳細に供述していること,Gから懲戒解雇されたこと,Fの役員を辞任することになること,扶 極的でなかったこと,個人として経済的利益を直接には得ていないこと,捜査及び農林水産省の調査に協力して事実関係を詳細に供述していること,Gから懲戒解雇されたこと,Fの役員を辞任することになること,扶養すべき妻子がおり,長女は大学を中退するに至ったこと,前科前歴がないことなどの事情が,Eは,箱の詰替え以外には関与しておらず,全体の仕組みや取引の流れは把握していなかったこと,Rを退職し,今後は食品業界とは関与しない旨を述べていること,交通関係の罰金刑以外には前科はないことなどの事情が,Bは,本件で直接の経済的利益は得ていないこと,前科前歴がないことなどの事情が,Cは,捜査に協力して事実関係を詳細に供述していること,個人として経済的利益を直接には得ていないことなどの事情が,Dは,当初はこのような大規模な数量の偽装になると思っていなかったものと窺われること,Hから懲戒解雇されたこと,前科前歴がないことなどの事情がそれぞれ認められる。 被告会社3社は,いずれも両罰規定により従業員に対する管理監督責任としての刑事責任を負うものであるが,3社とも本件をマスコミに大きく取り上げられて一定の社会的制裁を受け,また,信用を失墜して売上が減少するなど多大の経済的制裁を受けていること,Gの代表者は,消費者の食に対する信頼を損なったことを深く反省する旨述べ,同社では,今後このようなことがないように法令遵守のシステムを作成中であること,F及びGの関係では,すでに販売された本件偽装商品について,これを購入した18業者との間で一定の被害弁償の処理をしていること,Hでは,自己の従業員が本件に関与したことを真摯に反省し,取引先や消費者に謝罪の意を表明していること,監督官庁に対し食品の表示義務遵守に向けた改善報告書を提出し,全従業員によって再発防止策を徹底していること,販売先 員が本件に関与したことを真摯に反省し,取引先や消費者に謝罪の意を表明していること,監督官庁に対し食品の表示義務遵守に向けた改善報告書を提出し,全従業員によって再発防止策を徹底していること,販売先の全業者から本件偽装商品を回収した上,関係者に対して被害弁償したこと,Dに対する監督責任は免れないものの,前記のとおり,本件偽装商品の代金として支払った分を含め経済的損失は約11億円の多額に上る見込であることなどの事情が認められる。 まとめ以上のような本件犯行の動機や経緯,態様及び結果,ことに一般消費者の食品表示に対する信頼を大きく損ねたものであることなどに照らすと,被告人5名及び被告会社3社の刑事責任は,いずれも重大であると言わざるを得ない。そこで前記のような諸事情を総合考慮し,被告人5名の地位や立場,直接の経済的利益を得たか否か,得た場合のその金額,共犯者間の量刑の均衡等に鑑み,被告人5名をそれぞれ,前記主文の刑に処した上,懲役刑についてはいずれもその執行を猶予して社会内で更生する機会を与えることとし,被告会社3社については,前記不法利得額やすでに受けた社会的経済的制裁及び今後の改善策の実施状況等に鑑み,主文のとおりの罰金刑に処することとする。 (求刑被告人A,同B,同C及び同Dにつき,いずれも懲役2年6月及び罰金200万円,被告人Eにつき,懲役2年6月及び罰金400万円,被告会社3社につき,いずれも罰金1000万円)平成21年4月27日神戸地方裁判所第2刑事部裁判官佐野哲生

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