令和3(ネ)10037 特許権侵害差止等請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和7年5月27日 知的財産高等裁判所 2部 判決 原判決変更 東京地方裁判所 平成30(ワ)38504
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判決文本文86,063 文字)

1令和7年5月27日判決言渡令和3年(ネ)第10037号 特許権侵害差止等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成30年(ワ)第38504号〔A事件〕、同第38508号〔B事件〕)口頭弁論終結日 令和6年12月18日5判 決 控訴人(1審A事件・B事件原告) 東レ株式会社 同訴訟代理人弁護士(1審A事件) 重 冨 貴 光10同 長 谷 部 陽 平同 秋 田 康 博同 鷲 見 健 人同 水 野 真 孝同訴訟代理人弁護士(1審B事件) 畠 山 慎 市15同 黒 川 由 子同訴訟代理人弁理士(1審A事件・B事件)皆 川 量 之 被控訴人(1審A事件被告) 沢井製薬株式会社20 被控訴人(1審B事件被告) 扶桑薬品工業株式会社 前記両名訴訟代理人弁護士 小 松 陽 一 郎25同 原 悠 介2同 千 葉 あ す か同訴訟復代理人弁護士 小 山 秀同 中 田 健 一主 文1 原判決を次のとおり変更する。 52 被控訴人沢井製薬株式会社は、控訴人に対し、別紙「裁判所認容額目録」記載1の金員を支払え。 3 被控訴人扶桑薬品工業株式会社は、控訴人に対し、別 文1 原判決を次のとおり変更する。 52 被控訴人沢井製薬株式会社は、控訴人に対し、別紙「裁判所認容額目録」記載1の金員を支払え。 3 被控訴人扶桑薬品工業株式会社は、控訴人に対し、別紙「裁判所認容額目録」記載2の金員を支払え。 4 控訴人のその余の請求をいずれも棄却する。 105 訴訟費用は、第1、2審を通じて、これを別紙「裁判所認容額目録」記載3のとおりの負担とする。 6 この判決は、2項、3項に限り、仮に執行することができる。 事 実 及 び 理 由本判決において用いる主な略語は、原判決において定義されたものも含め、次の15とおりである。 原告 控訴人(1審A事件・B事件原告)東レ株式会社被告沢井製薬 被控訴人(1審A事件被告)沢井製薬株式会社被告扶桑薬品 被控訴人(1審B事件被告)扶桑薬品工業株式会社被告ら 被告沢井製薬及び被告扶桑薬品20本件特許 発明の名称を「止痒剤」とする特許第3531170号本件特許権 本件特許に係る特許権。特許権者は原告である。 本件発明 本件特許に係る発明(請求項1に係る本件発明を「本件発明1」ということがある。)本件特許出願 本件特許に係る出願(特願平10-524506号)25本件明細書 本件特許出願の願書に添付された明細書及び図面3本件延長登録出願 本件特許に係る延長登録出願(出願番号2017-700154)本件延長登録 本件延長登録出願に基づく延長登録薬機法 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(令和元年法律第63号による改正前のもの)5旧特許法 平成28年法律第108号による改正前の 長登録薬機法 医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(令和元年法律第63号による改正前のもの)5旧特許法 平成28年法律第108号による改正前の特許法政令処分 旧特許法67条2項(現4項)の政令で定める処分本件処分 本件延長登録の理由となった政令処分である平成29年3月30日付け薬機法14条1項に規定する医薬品に係る同項の承認(承認番号22900AMX00538000)10原告製剤 本件特許権の実施として原告が製造する止痒剤(レミッチOD錠2.5㎍)TRK820 原告製剤の原薬(ナルフラフィン塩酸塩)、TRK-820(治験薬コード)と同じ。 被告製剤 原判決別紙「被告製剤目録」記載の止痒剤15製造販売等 製造、販売及び販売の申出JT 日本たばこ産業株式会社鳥居薬品 鳥居薬品株式会社。JTの子会社であり、本件特許権の独占的通常実施権者住友ファーマ 住友ファーマ株式会社(旧社名 大日本住友製薬株式会社)。 20●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●東レ・メディカル 東レ・メディカル株式会社高田製薬 高田製薬株式会社。発明の名称を「口腔内速崩壊錠」とする特許第5337430号の特許権者第1 控訴の趣旨251 原判決を取り消す。 42 被告沢井製薬は、原告に対し、158億2914万7292円並びにうち別表1の「原告の主張」「合計損害額」欄記載の各金額に対する同別表1「原告の主張」「支払期日」欄記載の各日から各支払済みまで同別表1の「原告の主張」「利率(年)」欄記載の各割合による金員及びうち3億4349万3251円 」「合計損害額」欄記載の各金額に対する同別表1「原告の主張」「支払期日」欄記載の各日から各支払済みまで同別表1の「原告の主張」「利率(年)」欄記載の各割合による金員及びうち3億4349万3251円に対する令和4年11月21日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払5え。 3 被告扶桑薬品は、原告に対し、82億2400万8843円並びにうち別表2の「原告の主張」「合計損害額」欄記載の各金額に対する同別表2「原告の主張」「支払期日」欄記載の各日から各支払済みまで同別表2「原告の主張」「利率(年)」欄記載の各割合による金員及びうち7352万0733円に対する令10和4年11月21日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 4 第2、3項につき仮執行宣言第2 事案の概要1 事案の要旨⑴ 本件は、医薬品の製造販売業者であり、発明の名称を「止痒剤」とする本15件特許権(特許第3531170号)の特許権者である原告が、医薬品の製造販売業者である被告らに対し、本件特許権の存続期間が延長されたことを前提に、平成30年6月15日又は令和3年1月6日から各令和4年10月31日までの間、被告らが被告製剤(止痒剤)を製造販売等した行為は、存続期間の延長登録がされた本件特許権を侵害(文言侵害・均等侵害)すると20主張して、被告らに対し、不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条、特許法102条)として、各損害賠償及び遅延損害金の支払を求める事案である(被告沢井製薬に対する請求が1審A事件、被告扶桑薬品に対する請求が1審B事件である。)。 ⑵ 原審は、本件特許権に係る本件発明の構成要件である「有効成分」は添加25剤を加えて製剤として組成される基となる原薬を指すところ、本件発明は「ナ5ルフラフィン(フリ 事件である。)。 ⑵ 原審は、本件特許権に係る本件発明の構成要件である「有効成分」は添加25剤を加えて製剤として組成される基となる原薬を指すところ、本件発明は「ナ5ルフラフィン(フリー体)」を有効成分とするのに対し、被告製剤は「ナルフラフィン塩酸塩」を有効成分とするものであるから、本件発明の構成要件を充足せず、出願経過等に照らし、原告はあえて「薬理学的に許容される酸付加塩」を有効成分とする構成を特許請求の範囲から除外したものであるから、均等論の適用もないとして、原告の請求をいずれも棄却した。 5これに対し、原告が、原判決を不服として本件控訴をした。 ⑶ 当審において、原告は、損害賠償請求を拡張し、特許権者である原告の損害に係る損害賠償請求権に加え、独占的通常実施権者である鳥居薬品の損害に係る損害賠償請求権の譲渡を受けたとして、控訴の趣旨第2項及び第3項記載のとおりの損害賠償請求をするものとした。 10他方、当審において、原告は、被告らに対する特許法100条1項・2項に基づく被告製剤の製造販売等の差止め・廃棄請求を取り下げた。 2 前提事実前提事実は、次のとおり補正するほかは、原判決「事実及び理由」第2の2「前提事実」(原判決3頁10行目から8頁12行目まで)に記載のとおりであ15るから、これを引用する。引用文中「別紙」とあるのは、「原判決別紙」と、「被告ら製剤」とあるのは「被告製剤」と、それぞれ読み替える。 (原判決の補正)⑴ 原判決の前提事実⑴及び⑵(原判決3頁12行目から4頁24行目まで)を次のとおり改める。 20「⑴ 当事者ア 原告及び鳥居薬品は、いずれも医薬品の製造販売等を業とする株式会社である。原告は、本件特許権を有する者であり、鳥居薬品は 4頁24行目まで)を次のとおり改める。 20「⑴ 当事者ア 原告及び鳥居薬品は、いずれも医薬品の製造販売等を業とする株式会社である。原告は、本件特許権を有する者であり、鳥居薬品は、本件特許の独占的通常実施権者である。 イ 被告らは、いずれも医薬品の製造販売等を業とする株式会社である。 25⑵ 本件特許権及び存続期間の延長登録(甲454)6ア 本件特許権は、発明の名称を「止痒剤」とする特許権(特許第3531170号)であり、出願日平成9年11月21日(優先権主張1996年11月25日、日本国)、出願番号10-524506、設定登録日平成16年3月12日、請求項の数36とする特許権である。 イ 本件特許権については、平成27年3月25日及び平成29年11月250日、それぞれ、存続期間の延長登録出願(出願番号2015-700061、2017-700309)がされ、前者については平成27年7月15日に、後者については平成30年7月25日に、それぞれ存続期間の延長登録(延長の期間5年)がされた。 前者の延長登録の理由となる政令処分は、薬機法14条1項に規定する10医薬品に係る同項の承認(承認番号22600AMX01388000、その処分の内容は、処分対象の医薬品の販売名「ノピコールカプセル2. 5㎍」、有効成分「ナルフラフィン塩酸塩」、用途「慢性肝疾患患者におけるそう痒症の改善(既存治療で効果不十分な場合に限る)」)であり、後者の延長登録の理由となる政令処分は、同項に規定する医薬品に係る同条915項(現15項。以下同じ。)の承認(承認番号22100AMX00392000、その処分の内容は、処分対象の医薬品の販売名「レミッチカプセル2.5㎍」、有効成分「ナルフラフィン塩酸塩」、用途「次 5項(現15項。以下同じ。)の承認(承認番号22100AMX00392000、その処分の内容は、処分対象の医薬品の販売名「レミッチカプセル2.5㎍」、有効成分「ナルフラフィン塩酸塩」、用途「次の患者におけるそう痒症の改善(既存治療で効果不十分な場合に限る)透析患者(血液透析患者を除く)、慢性肝疾患患者」〔ただし、無効審判請求〔無効202200-800003〕の令和5年6月8日確定の審決により、「慢性肝疾患患者におけるそう痒症の改善(既存治療で効果不十分な場合に限る)」との部分は無効とされた。〕)であり、いずれも処分対象の医薬品の剤形は、軟カプセル剤であった。 ウ 本件特許権については、平成29年11月20日、存続期間の延長登録25出願(出願番号2017-700310)がされ、平成30年7月25日7に、存続期間の延長登録(延長の期間5年)がされた(以下「延長登録(310号)」ともいう。)。 延長登録(310号)の理由となる政令処分(以下「310号処分」ということがある。)は、薬機法14条1項に規定する医薬品に係る同条9項の承認(承認番号22900AMX00538000)であり、その処分5の内容は、処分対象の医薬品の販売名「レミッチOD錠2.5㎍」、有効成分「ナルフラフィン塩酸塩」、用途「次の患者におけるそう痒症の改善(既存治療で効果不十分な場合に限る)透析患者(血液透析患者を除く)、慢性肝疾患患者」(ただし、無効審判請求〔無効2020-800004〕の令和5年6月8日確定の審決により、「慢性肝疾患患者におけるそう痒症の10改善(既存治療で効果不十分な場合に限る)」との部分は無効とされた。)であった。 エ 本件特許権については、平成29年6月29日、存続期間の延長登録出願(出願番号2017- けるそう痒症の10改善(既存治療で効果不十分な場合に限る)」との部分は無効とされた。)であった。 エ 本件特許権については、平成29年6月29日、存続期間の延長登録出願(出願番号2017-700154)がされ、令和3年8月11日本件延長登録(延長の期間4年11月26日)がされた(以下、延長登録(31510号)と併せて「本件延長登録等」ということがある。)。 本件延長登録の理由となる政令処分は、本件処分(承認番号22900AMX00538000。なお、承認番号は、310号処分と同じであり、両者を併せて「本件処分等」ということがある。)であり、その処分の内容は、処分対象の医薬品の販売名「レミッチOD錠2.5㎍」、有効成分「ナ20ルフラフィン塩酸塩(一般名称INN nalfurafine)(有効成分に関し、レミッチOD錠2.5㎍の添付文書(延長の理由を記載した資料の参考文献4)〔組成・性状〕には、ナルフラフィン塩酸塩2.5㎍、(ナルフラフィンとして2.32㎍)と記載されている。)」、用途「次の患者におけるそう痒症の改善(既存治療で効果不十分な場合に限る)血液透析患者、慢性肝疾患25患者」であった。 8オ 被告沢井製薬は、令和3年9月29日、本件延長登録について無効審判請求をしたが(無効2021-800083号)、特許庁は、令和6年2月28日、無効審判請求は成り立たないとの審決をした。被告沢井製薬は、同年4月3日、当該審決の取消しを求めて審決取消請求訴訟を提起した(知財高裁令和6年(行ケ)第10033号)。」5⑵ 原判決の前提事実⑹(原判決8頁9行目から12行目まで)を次のとおり改める。 「⑹ 鳥居薬品の損害賠償請求権の譲渡原告は、令和3年5月6日、鳥居薬品から、鳥居薬品の被告らに対する本 5⑵ 原判決の前提事実⑹(原判決8頁9行目から12行目まで)を次のとおり改める。 「⑹ 鳥居薬品の損害賠償請求権の譲渡原告は、令和3年5月6日、鳥居薬品から、鳥居薬品の被告らに対する本件特許権侵害を理由とする不法行為に基づく各損害賠償請求権の譲渡を受10け(甲178)、同月10日、被告らは、それぞれ鳥居薬品から債権譲渡の通知を受けた(甲A6の1及び2、甲B4の1及び2。なお、侵害の成否及び鳥居薬品の被告らに対する各損害賠償請求権の成否については、当事者間に争いがある。)。 ⑺ 原告製剤の「単位数量当たりの利益の額」の算定過程15以下は、原告及び鳥居薬品にそれぞれ損害賠償請求権が成立するとして、原告が示す原告及び鳥居薬品における各「単位数量当たりの利益の額」の算定過程である。 ア 期間の区分(ア) 原告は、平成30年(2018年)6月から令和4年(2022年)2010月までの間の原告における原告製剤の単位数量当たりの利益の額を算出するに当たり、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●原告の事業年度ごと、被告製剤の肝用途効能追加の前後に分けて、以下の期間ごとに算出している(別紙8参照)。 25① 2018/06~2018/11(●●●●●●●●●●●)9② 2018/12~2019/03(東レ事業年度終期)③ 2019/04~2019/08(●●●●●●●●●●●)④ 2019/09~2020/02(●●●●●●●●●●●)⑤ 2020/03(東レ事業年度終期)⑥ 2020/04~2020/12(被告製剤の肝用途効能追加前)5⑦ 2021/01~2021/02(●●●●●●●●●●●)⑧ 2021/ )⑤ 2020/03(東レ事業年度終期)⑥ 2020/04~2020/12(被告製剤の肝用途効能追加前)5⑦ 2021/01~2021/02(●●●●●●●●●●●)⑧ 2021/03(東レ事業年度終期)⑨ 2021/04~2022/02(●●●●●●●●●●●)⑩ 2022/03(東レ事業年度終期)⑪ 2022/04~2022/1010(イ) また、原告は、独占的通常実施権者である鳥居薬品における、原告製剤の単位数量当たりの利益の額を算出するに当たり、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●鳥居薬品の事業年度ごと、被告製剤の肝用途効能追加の前後に分けて、以下の期間ごとに算出している(別紙8参照)。 15❶ 2018/06~2018/11(●●●●●●●●●●●)❷ 2018/12(鳥居薬品事業年度終期)❸ 2019/01~2019/08(販売価格の改定前月)❹ 2019/09~2019/12(鳥居薬品事業年度終期)❺ 2020/01~2020/02(販売価格の改定前月)20❻ 2020/03~2020/12(鳥居薬品事業年度終期、被告製剤の肝用途効能追加前)❼ 2021/01~2021/02(販売価格の改定前月)❽ 2021/03~2021/12(鳥居薬品事業年度終期)❾ 2022/01~2022/02(販売価格の改定前月)25❿ 2022/03~2022/1010イ 原告における「単位数量当たりの利益の額」(ア) 原告は、原告における「単位数量当たりの利益の額」について、次のように算出する。 ① 透析用途の「単位数量当たりの利益の額」=(透析用途売上高-透析用途変動費)÷透析用途供給数量5 告における「単位数量当たりの利益の額」について、次のように算出する。 ① 透析用途の「単位数量当たりの利益の額」=(透析用途売上高-透析用途変動費)÷透析用途供給数量5=(透析用途売上高-〔透析用途営業費+製造原価〕)÷透析用途供給数量=(透析用途売上高-透析用途営業費)÷透析用途供給数量-1錠当たりの製造原価② 肝用途の「単位数量当たりの利益の額」10=(肝用途売上高-肝用途変動費)÷肝用途供給数量=(肝用途売上高-〔肝用途営業費+製造原価〕)÷肝用途供給数量=(肝用途売上高-肝用途営業費)÷肝用途供給数量-1錠当たりの製造原価(イ) 原告の算定における各要素15① 透析用途/肝用途の「売上高」(別紙1参照)a 売上高(別紙1-⑹参照)透析用途の売上高=(総供給額ⅰ±差額補償ⅱ)×透析用途割合ⅲ+透析用途補償ⅳ肝用途の売上高20=(総供給額ⅰ±差額補償ⅱ)×肝用途割合ⅲ-肝用途補償ⅴbⅰ 総供給額ⅰ(別紙1-⑴参照)は、原告製剤の鳥居薬品に対する供給数量に合意に基づく東レ供給単価を乗じた金額である。 ⅱ 差額補償ⅱ(別紙1-⑵参照)は、在庫補償(東レ供給単価改定実施前日の在庫数量に新単価の差額を乗じた金額を補償するも25の)及び価格精算(原告と鳥居薬品の平成31年3月25日付け11合意に基づき、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●もの)である。 ⅲ 透析用途割合ⅲ/肝用途割合ⅲ(別紙1-⑶参照)は、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●もの)である。 ⅲ 透析用途割合ⅲ/肝用途割合ⅲ(別紙1-⑶参照)は、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●5●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●に基づき算出がされた割合である。 ⅳ 透析用途補償ⅳ(別紙1-⑷参照)は、原告と鳥居薬品の合意に基づき、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●鳥居薬品が原告に対し、●●●●●●●●10●●●●●●●●●●●●を支払うものである。 ⅴ 肝用途補償ⅴ(別紙1-⑸参照)は、原告と鳥居薬品の合意に基づき、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●原告が鳥居薬品に対し、精算するものである。 15② 製造原価(別紙2参照)原告は、原価表(甲343の1~4)のうち、限界利益の算定に当たり考慮すべき費用として、原薬の原価としてTRK820(ナルフラフィン塩酸塩)の原材料・溶媒費部分(別紙2-⑴参照)、原薬TRK820の製造原価として、「荷造材料費」「ソノタヒレイヒ」(別紙220-⑵参照)、その他経費のうち「原薬配送費」(別紙2-⑶参照)を挙げる(なお、考慮すべき費用については、当事者間に争いがある。)。 ③ 営業費(別紙3参照)配賦前営業費(甲347~350の5)のうち、限界利益の算定に当たり考慮すべき各用途の保管費・運輸費は、各事業年度の保管費及25び運輸費に各事業年度の透析用途割合及び肝用途割合を乗じることに12より算出される(別紙3-⑴参照)。また、透析用途営業費は、「ユーザ べき各用途の保管費・運輸費は、各事業年度の保管費及25び運輸費に各事業年度の透析用途割合及び肝用途割合を乗じることに12より算出される(別紙3-⑴参照)。また、透析用途営業費は、「ユーザー対策費」「製品開発費」のうち広告掲載費用に係る部分、「臨床開発費」のうち販促資材の作成費用に係る部分であり(別紙3-⑵参照)、肝用途営業費は、「ユーザー対策費」「旅費交通費」のうち販促情報提供活動を行うに際して支出した費用に係る部分である(別紙3-⑶参5照)。そして、各透析用途営業費/肝用途営業費を加算し原告製剤割合を乗じることで、各用途営業費が算出される(別紙3-⑷参照)。 (ウ) (イ)の各要素に基づき、(ア)の原告における「単位数量当たりの利益の額」を算定すると、別紙4-⑸のとおりとなる(なお、前記製造費の範囲等に争いがあるため、単位数量当たりの利益の額についても、当事者10間に争いがある。)。 ウ 鳥居薬品における「単位数量当たりの利益の額」(ア) 原告は、鳥居薬品における「単位数量当たりの利益の額」について、次のように算出する。レミッチ肝手数料とは、限界利益の算定に当たり関連する全ての変動費を含む費用全額を原告製剤の売上から控除した金15額である。 ① 透析用途の「単位数量当たりの利益の額」=(透析用途売上高-透析用途変動費)÷透析用途販売数量=(透析用途売上高-透析用途変動費〔ただし原価を除く〕)÷透析用途販売数量-1錠当たりの原価(=東レ供給単価)20② 肝用途の「単位数量当たりの利益の額」=(肝用途売上高-肝用途変動費)÷肝用途販売数量=(レミッチ肝手数料)÷肝用途販売数量(イ) 透析用途の「単位数量当たりの利益の額」① 原 量当たりの利益の額」=(肝用途売上高-肝用途変動費)÷肝用途販売数量=(レミッチ肝手数料)÷肝用途販売数量(イ) 透析用途の「単位数量当たりの利益の額」① 原告の算定における各要素25a 透析用途売上高(別紙5-1参照)13透析用途売上高は、鳥居薬品の「純売上高」(甲354の1~4)に透析用途割合を乗じて算出される(別紙5-1参照)。 b 費用(別紙5-2~別紙5-5参照)透析用途の原告製剤の限界利益の算定に当たり考慮すべき費用として、物流費用(別紙5-2参照)、販管費(別紙5-3参照)、報5奨費(別紙5-4参照)、透析用途補償(別紙5-5参照)が算定される。 c 透析用途販売数量(別紙5-6参照)透析用途販売数量は、透析用途としての原告製剤の総売上高を販売価格(単価)で除して求める(別紙5-6参照)。 10d 原価原告製剤1錠当たりの原価は、東レ供給単価と同額である。 ② ①の各要素に基づき(ア)の鳥居薬品における透析用途の「単位数量当たりの利益の額」を算定すると、別紙5-7-⑼のとおりとなる。 (ウ) 肝用途の「単位数量当たりの利益の額」15① 原告の算定における各要素a レミッチ肝手数料関連するすべての変動費を含む費用全額を原告製剤の売上から控除した金額である。 b 肝用途販売数量20肝用途販売数量は、原告製剤の総販売数量から透析用途としての原告製剤の販売数量を控除したものである。 ② ①の各要素に基づき(ア)の鳥居薬品における肝用途の「単位数量当たりの利益の額」を算定 肝用途販売数量は、原告製剤の総販売数量から透析用途としての原告製剤の販売数量を控除したものである。 ② ①の各要素に基づき(ア)の鳥居薬品における肝用途の「単位数量当たりの利益の額」を算定すると、別紙6-⑷のとおりとなる。 エ 前記イ及びウによれば、原告製剤の「単位数量当たりの利益の額」は、25原告における「単位数量当たりの利益の額」と鳥居薬品における「単位数14量当たりの利益の額」を合算した額(別紙8参照)となる(以上は、原告による算定過程であり、控除すべき費用等について当事者間に争いがある。)。 ⑻ 被告製剤の販売数量等ア 平成30年6月15日から令和4年10月までの間において、被告沢井製薬による被告製剤の販売数量総数は、別表1の「原告の主張」の「透析5用途」「肝用途」の各「販売数量」欄記載の数量の合計数量である(ただし、「透析用途」と「肝用途」の振り分けについては、当事者間に争いがある。)。 また、同期間における被告扶桑薬品による被告製剤の販売数量は、総数は、別表2の「原告の主張」の「透析用途」「肝用途」の各「販売数量」欄記載の数量の合計数量である(ただし、「透析用途」と「肝用途」の振り分10けについては、当事者間に争いがある。)。 イ 令和4年11月21日時点において、被告沢井製薬の被告製剤の販売価格(仕切り価格)は●●●●●●●●●未譲渡の在庫数量は●●●●●●●●●である。 また、同日において、被告扶桑薬品の被告製剤の販売価格(仕切り価格)15は●●●●●●●●●未譲渡の在庫数量は●●●●●●●●●である。」第3 争点及び争点に関する当事者の主張1 争点侵害論の争点は、次のとおりである(争点1から7までの各争点は、原判決「事実及び理由」第2の2(原判決8 は●●●●●●●●●である。」第3 争点及び争点に関する当事者の主張1 争点侵害論の争点は、次のとおりである(争点1から7までの各争点は、原判決「事実及び理由」第2の2(原判決8頁13行目から24行目まで)記載の争20点の番号に対応する各争点と概ね実質的に同じものである。ただし、争点3(本件発明の進歩性)については、被告らが当審第1回弁論準備手続において本件発明の進歩性欠如による無効の主張を撤回したので、欠番としている。また、後記のとおり、争点1を肯定に判断するので、争点2(均等論)について主張摘示はしているが、判断はしていない。)。 25なお、前記のとおり、無効審判請求〔無効2020-800004〕の確定15審決により、当審口頭弁論終結時において、本件延長登録と延長登録(310号)の慢性肝疾患患者のそう痒症に係る重複部分は解消されている。 (侵害論の争点)⑴ 被告製剤は本件発明の技術的範囲に属するか(争点1)⑵ 被告製剤は本件発明に記載された構成と均等なものか(争点2)5⑶ (欠番)⑷ 本件延長登録等により存続期間が延長された本件特許権の効力は被告製剤の製造販売等に及ぶか(争点4)⑸ 本件延長登録等は、本件発明の実施のために、本件処分等(医薬品「レミッチOD 錠2.5㎍」に係る承認処分)を受けることが必要であったとは認10められない場合であり無効にされるべきことから、原告による本件特許権の行使は権利濫用か(争点5)⑹ 本件延長登録等は、延長期間が本件発明の実施をすることができなかった期間を超えており無効にされるべきものか(争点6)⑺ 先使用権の存否(争点7)15(損害論の争点)損害論の争点は、次のとおりである。 ⑴ 特許法102条1項に基づく損害に きなかった期間を超えており無効にされるべきものか(争点6)⑺ 先使用権の存否(争点7)15(損害論の争点)損害論の争点は、次のとおりである。 ⑴ 特許法102条1項に基づく損害に関する争点ア 鳥居薬品の損害賠償請求権の成否(争点8)イ 単位数量当たりの利益の額(争点9)20ウ 販売することができないとする事情の有無及び当該事情に相当する数量等(争点10)⑵ 特許法102条3項等に基づく損害に関する争点適正な実施料(争点11)⑶ 損害一般に関する争点25ア 消費税相当額を加算して損害を算定することの可否(争点12)16イ 原告の損害額(争点13)2 侵害論の争点に関する当事者の主張侵害論の争点に関する当事者の主張は、後記3のとおり当審における当事者の補充主張を付加するほかは、原判決「事実及び理由」第2の3⑴、⑵(原判決8頁26行目から11頁3行目まで)、第2の3⑷から⑺まで(原判決14頁53行目から19頁12行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。 3 侵害論の争点に関する当事者の補充主張⑴ 被告製剤は本件発明の技術的範囲に属するか(争点1)(原告の主張)本件発明の医薬用途発明としての技術的意義、特許請求の範囲及び本件特10許明細書の記載並びに技術常識に照らせば、本件発明の「有効成分」は、製剤中の存在形態により特定されるものではなく、薬効を生じる薬理作用を奏する成分であると理解される。そうすると、本件発明における「有効成分」はナルフラフィンと解される。また、当事者の技術常識に照らせば、被告製剤は、ナルフラフィンを「有効成分」とする止痒剤であるから、本件発明の15構成要件を充足し、その技術的範囲に属する。 (被告 はナルフラフィンと解される。また、当事者の技術常識に照らせば、被告製剤は、ナルフラフィンを「有効成分」とする止痒剤であるから、本件発明の15構成要件を充足し、その技術的範囲に属する。 (被告らの主張)本件発明は、特許請求の範囲請求項1の解釈上、塩酸塩を除外しているから、その技術的範囲はナルフラフィン(フリー体)に限定され、ナルフラフィン塩酸塩は含まない。出願経過においても、原告はナルフラフィン塩酸塩20を意識的に除外している。よって、ナルフラフィン塩酸塩が本件発明の技術的範囲に属すると主張することは信義則違反であるし、本件発明で特定、限定されているナルフラフィン(フリー体)が、延長登録によって酸付加塩に広がることもない。 ⑵ 被告製剤は本件発明に記載された構成と均等なものか(争点2)25(原告の主張)17本件特許出願時の特許請求の範囲請求項1は「オピオイドκ受容体作動性化合物を有効成分とする止痒剤」であり、本件化合物の薬理学的に許容される酸付加塩を有効成分とする止痒剤を明らかに含んでいる。本件特許の出願経過を考慮しても、被告製剤(ナルフラフィン塩酸塩を有効成分とする止痒剤)が意識的に除外されたとする特段の事情はない。 5(被告らの主張)均等侵害に関し、特許請求の範囲の補正又は訂正による減縮によって対象製品等が含まれないことが明らかになった場合は、第5要件の特段の事情があるというべきところ、本件では、補正前の請求項1では、対象化合物にナルフラフィン(フリー体)とナルフラフィン塩酸塩の双方が含まれているよ10うにも見えていたものが、補正により含まれないことが明らかになったのであるから、特段の事情がある。 ⑶ (欠番)⑷ 本件延長登録等により存続期間が延長された本件特許権の効力は被告製 るよ10うにも見えていたものが、補正により含まれないことが明らかになったのであるから、特段の事情がある。 ⑶ (欠番)⑷ 本件延長登録等により存続期間が延長された本件特許権の効力は被告製剤の製造販売等に及ぶか(争点4)15(原告の主張)ア 医薬用途特許(有効成分及び効能、効果を特徴とする発明に係る特許)について、政令で定める処分の対象となった物は、有効成分及び効能、効果により特定される医薬品と解されるから、医薬用途特許につき、存続期間が延長された特許権の効力は、政令で定める処分の対象となった物と有20効成分及び効能、効果が一致する医薬品の販売等に及ぶ。 仮に、特許法68条の2の「政令で定める処分の対象となった物」を医薬品の成分、分量、用法、用量、効能及び効果により特定するとしても、延長登録の制度趣旨等からすると、政令で定める処分の対象となった物と有効成分及び効能、効果が一致する医薬品については、政令で定める処分25の対象となった物と実質同一のものとして、存続期間が延長された特許権18の効力が及ぶ。 本件特許は特定のオピオイドκ受容体作動性化合物を有効成分とする止痒剤に係る医薬用途特許であり、本件処分の対象となった原告製剤と被告製剤は、有効成分及び効能、効果が一致するから、本件延長登録等により存続期間が延長された本件特許権の効力は、被告製剤の販売等に及ぶ。 5イ 医薬品の有効成分でない成分の一部付加、転換を考慮しても、添加剤の選択が「医薬品添加物事典」掲載の添加物から選択されるなど周知慣用技術に基づくものである場合は、医薬品として実質同一である。仮に、「医薬品添加物事典」への掲載の有無が、周知慣用技術に当たるか否かの基準とならないとしても、被告製剤の添加物は錠剤又は口腔内崩壊錠の 技術に基づくものである場合は、医薬品として実質同一である。仮に、「医薬品添加物事典」への掲載の有無が、周知慣用技術に当たるか否かの基準とならないとしても、被告製剤の添加物は錠剤又は口腔内崩壊錠の添加剤と10して通常用いられるものである。添加剤変更後の被告製剤は、周知慣用技術に基づき、原告製剤に異なる添加剤を付加し、又は原告製剤の添加剤を異なる添加剤に転換し、若しくは脱落させたものであり、有効成分でない成分の一部を周知慣用技術に基づき付加、転換したものである。よって、存続期間が延長された本件特許権の効力が及ぶ。 15(被告らの主張)ア 被告製剤は、有効成分以外の成分について周知慣用技術による転用ではなく独自に開発し、特許出願もした添加物群を適用し、有効な安定化剤として論文報告や特許出願されていたチオ硫酸ナトリウム水和物等を用いることなくナルフラフィンの安定性を確保していることから、僅かな差異20又は全体的にみて形式的な差異にすぎない場合には該当しない。したがって、被告製剤は、本件処分の対象となった医薬品とは医薬品として実質同一ではない。 イ 「医薬品添加物事典」に掲載された添加剤を使用し、厚生労働省及びPMDAが、その種類、内容、組合せについて実体的な審査を行うことなく、25後発医薬品を先発医薬品と同等品であると判断したとしても、これは有効19性と安全性において同等性が示された医薬品ということを意味するにすぎず、薬機法14条1項における製造販売承認の審査の対象である「成分、分量、用法、用量、効能、効果、副作用その他の品質」において実質同一であることは意味しない。 ウ そうすると、存続期間が延長された本件特許権の効力は、被告製品には5及ばない。 ⑸ 本件延長登録等は、本件発明の実施のために、本件 の他の品質」において実質同一であることは意味しない。 ウ そうすると、存続期間が延長された本件特許権の効力は、被告製品には5及ばない。 ⑸ 本件延長登録等は、本件発明の実施のために、本件処分等(医薬品「レミッチOD錠2.5㎍」に係る承認処分)を受けることが必要であったとは認められない場合であり無効にされるべきことから、原告による本件特許権の行使は権利濫用か(争点5)10(被告らの主張)本件発明は、特許請求の範囲及び本件明細書の記載並びに出願経過から、原告製剤のようなナルフラフィン塩酸塩を有効成分とする医薬品を含まないから、本件延長登録等は、特許発明の実施に「政令で定める処分を受けることが必要であった」とはいえず、無効である。そして、本件延長登録につい15ては、その効力を争う手続が係属し確定していないから、本件延長登録に基づく原告の権利行使は、権利濫用である。 (原告の主張)本件発明の「有効成分」は、製剤中の存在形態により特定されるものではなく、薬効を生じる薬理作用を奏する成分であるナルフラフィンであるから、20原告製剤は、「一般式(Ⅰ)で表されるオピオイドκ受容体作動性化合物」たるナルフラフィンを有効成分とする止痒剤であり、本件発明の構成要件を充足し、本件発明の実施に「政令で定める処分を受けることが必要であった」旧特許法125条の2(現125条の3。以下同じ。)第1項1号)と認められる。よって、本件延長登録等の無効の抗弁は理由がない。 25⑹ 本件延長登録等は、延長期間が本件発明の実施をすることができなかった20期間を超えており無効にされるべきものか(争点6)(被告らの主張)ア 薬機法14条1項に係る医薬品の承認申請時に添付すべき資料は、申請区分ごとに具体的に定められているとこ なかった20期間を超えており無効にされるべきものか(争点6)(被告らの主張)ア 薬機法14条1項に係る医薬品の承認申請時に添付すべき資料は、申請区分ごとに具体的に定められているところ(甲181)、承認申請が剤形追加の場合、生物学的同等性試験結果を提出することとなっており、これに5より有効性及び安全性が確認されている。また、参考資料として先行処分(本件では軟カプセル剤)の臨床試験結果を提出することがあるが、参考資料は改めて審査されるわけではない。そうすると、申請区分が剤形追加である場合には、特許の延長期間を算出する際の根拠は、特段の事情のない限り生物学的同等性試験の開始日と考えられ、本件では特段の事情も存10しない。 イ 薬機法14条9項に係る医薬品の承認申請時に添付すべき資料は、法条、通知で具体的に定められているものでなく、承認申請で追加された「腹膜透析のそう痒症」に対し、OD錠が有効性及び安全性を有すると確認することができる試験のみが審査の対象となる。審査報告書(甲229)におい15ても、既に提出された資料は初回承認時に評価済み等と記載されている。 先行処分の臨床試験結果が再度審査されるというような事情は一切見受けられない。 ウ 特許発明の実施をすることができなかった期間は、医薬品につき承認を受けるのに必要な試験の開始日又は特許権の設定登録の日のうち遅い方20の日から、承認が申請者に到達した日の前日までの期間である。本件では剤形追加の承認申請とその一部変更承認申請がされており、生物学的同等性試験の臨床試験の期間と審査期間を加えた実施をすることができなかった期間は、長くても本件特許権の存続期間の満了日から1年11月26日である。OD錠の承認に伴う本件延長登録において、軟カプセル剤の臨25 床試験の期間と審査期間を加えた実施をすることができなかった期間は、長くても本件特許権の存続期間の満了日から1年11月26日である。OD錠の承認に伴う本件延長登録において、軟カプセル剤の臨25床試験期間を再度算定することは二重に臨床試験期間を回復することに21なり制度趣旨に反する。 (原告の主張)ア 本件における延長期間4年11月26日又は5年は、本件発明を実施することができなかった期間を超えていないから、本件延長登録は無効にされるべきものではない。 5イ 「剤形追加に係る医薬品」等の医薬品の製造販売承認では、既承認医薬品に係る臨床試験成績及びその確認結果を用いることが制度上予定されており、それが存在しなければ「剤形追加に係る医薬品」の製造販売承認がされ得ない仕組みとなっている。本件延長登録においては薬機法14条1項の承認申請に当たり、延長登録(310号)においては同条9項の承認10申請に当たり、いずれも提出された既承認医薬品である軟カプセル剤に係る審査報告書やCTDの概要(サマリー)、原告製剤の添付文書(案)に記載された軟カプセル剤に係る臨床試験等に加え、カプセル剤とOD錠との生物学的同等性試験は、厚生労働省及びPMDAにおいて承認審査の対象となった。そうすると、前記処分を受けるのに必要な試験に要した期間は154年11月26日又は5年を超えることは明らかである。 ⑺ 先使用権の存否(争点7)(被告らの主張)ア 被告沢井製薬は、原告の本件延長登録の出願前にOD錠の独自開発を行って特許出願等を行い、安定性試験(長期保存試験12箇月)や生物学的20同等性試験も行い後発医薬品の製造販売承認申請をして承認後に被告製剤を上市しているから、本件延長登録出願前に準備し、後発医薬品の製造販売承認があれば製造 験(長期保存試験12箇月)や生物学的20同等性試験も行い後発医薬品の製造販売承認申請をして承認後に被告製剤を上市しているから、本件延長登録出願前に準備し、後発医薬品の製造販売承認があれば製造販売を行うという「即時実施の意図が客観的に認識される態様、程度において表明」していた。 イ 特許法79条の先使用権の制度趣旨は、特許権者と先使用権者の公平を25図ることにあるところ、特許権の存続期間満了後の製造販売を目指して、22事業の準備をしていた第三者のかかる行為を保護の埒外とすることは、産業の発達の保護という特許法の目的に反し、経済政策的にも相当でない。 被告らは、本件延長登録の効力の範囲を画する、具体的な政令処分で定められた「成分、分量、用法、用量、効能、効果」により特定された物についての特許発明を知らずに独自に開発したのであるから、実質的には5「特許出願に係る発明」(特許法79条)に該当し、又は先使用の制度趣旨には合致するので、特許法79条を類推適用すべきである。 (原告の主張)ア そもそも特許権存続期間延長登録制度は、医薬・農薬の発明等、安全性の確保等のための法規制に基づく許認可を得るに当たり、所要の実験によ10るデータの収集等の開発及びその許認可を得るための審査に相当の長期間を必要とし、その間は特許権の専有による利益を享受できないため、かかる問題を解消し、特許制度が本来予定しているはずの特許権者への一定期間の権利の専有を保証することにある。 イ 延長登録制度自体、特許権が存続している期間中における開発及び許認15可審査に相当の長期間を要することが制度上当然に想定されているのであって、特許権の存続期間が延長されたにもかかわらず、延長登録出願前に事業準備を行った第三者を先使用の抗弁類推により保 び許認15可審査に相当の長期間を要することが制度上当然に想定されているのであって、特許権の存続期間が延長されたにもかかわらず、延長登録出願前に事業準備を行った第三者を先使用の抗弁類推により保護するとすれば、第三者は公開されている特許に基づき容易に事業準備ができ特許権者の権利の専有の期間回復は事実上不可能となる。特許法79条の文理解釈か20らも類推適用は不可能である。仮に、読み替えたとしても延長登録出願に係る発明は公開された特許発明であるから、それを知らないで自ら発明をすることはない。被告らは、原告がOD錠の剤形追加を行うであろうことを平成22年には既に予測しており、原告がOD錠の剤形追加承認に伴う延長登録を得る事態は当然に承知していたから、被告らを保護すべき利益25状況はない。 234 損害論の争点に関する当事者の主張(特許法102条1項に基づく損害に関する争点)⑴ 鳥居薬品の損害賠償請求権の成否(争点8)(原告の主張)ア 原告、鳥居薬品及び住友ファーマは、共同事業として原告製剤の製造販5売事業を実施している。●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●10●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●そのため、鳥居薬品は、独占的通常実施権者として損害賠償請求権を有する。 イ 独占的通常実施権者について、独占的事実状態が維持されていることを固有の損害賠償請求権を認める要件とする ●●●●●そのため、鳥居薬品は、独占的通常実施権者として損害賠償請求権を有する。 イ 独占的通常実施権者について、独占的事実状態が維持されていることを固有の損害賠償請求権を認める要件とすることは妥当でない。 15仮に、この点を措くとしても、鳥居薬品は、独占的に、透析用途及び肝用途で、口腔内崩壊錠の剤形のナルフラフィン含有製剤を販売する権利(独占的実施権限)を有しており、本件特許権の存続期間中、鳥居薬品以外に、これを販売した者はいないから、鳥居薬品には独占的な事実状態が認められる(●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●20●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●マルホ株式会社は適応症をアトピー性皮膚炎患者の掻痒症とする範囲での実施許諾である。●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●東レ・メディカルへの許諾は軟カプセルである。原告は製造のみである。)。なお、被告らが主張する消尽は、特許製品の再譲渡等に特許25権の効力が及ぶかの侵害論の問題であり、損害論の問題ではない。共同事24業体制において、共同事業者の原告と鳥居薬品内部の特許製品の移動に消尽論を適用することは、消尽論の正当化根拠(特許製品の市場における自由な流通の阻害防止・取引の安全保護の必要性と、特許権者等に二重利得を認める必要がないとの許容性)を満たさない。 ウ 特許法103条が特許権侵害の場合に過失を推定する根拠は、特許発明5の存在及び内容が公示されていることにあり、それが何人の権利であるかが公示されていることではないから、独占的通常実施権者の法的利益の侵害行為についても同条は類推適用されるべきである。そもそも、鳥居薬品は先発医薬品である原告製剤の販売者であることは公示されて あるかが公示されていることではないから、独占的通常実施権者の法的利益の侵害行為についても同条は類推適用されるべきである。そもそも、鳥居薬品は先発医薬品である原告製剤の販売者であることは公示されていたから、後発医薬品である被告製剤を製造販売する被告らにおいて、鳥居薬品が独10占的通常実施権等の権利を有していることを予想しないはずはない。過失に関する被告らの主張は失当である。 (被告らの主張)ア 債権的な地位にすぎない通常実施権者に第三者に対する固有の損害賠償請求権が認められる実質的な理由は、独占的に特許権を実施している地15位・利益が、第三者との間でも法的保護に値することにあるから、独占的通常実施権者が損害賠償請求権を行使するには、法的保護に値するような事実上の独占状態にあることが必要である。代表者型、親子会社関係型のように実質的・経済的一体性にある場合以外は、例外的な場合となるであろうし、特許権者が複数先に実施権を許諾する場合は、これに当たらない。 20また、特許権者が実施品をライセンシーに販売すれば消尽により以後は特許権の行使をすることができないことからも、原告は鳥居薬品の損害賠償請求権を行使することができないといえる。さらに、原告と鳥居薬品に特許法102条1項に基づく損害賠償請求を認めるのは、1つの侵害行為に対し損害額の推定規定を2回認めることになり不合理である。 25本件の特許権侵害による損害の範囲は、特許権者が自己実施した場合の25利益(損害)であり、特許権者である原告の限界利益が上限となる(鳥居薬品の実施権は加算されない。)。 イ 鳥居薬品は、完全独占的通常実施権ではなく、また、鳥居薬品以外の複数主体(●●●●●●●マルホ株式会社、JT、東レ・メディカル)に対しても実施 る(鳥居薬品の実施権は加算されない。)。 イ 鳥居薬品は、完全独占的通常実施権ではなく、また、鳥居薬品以外の複数主体(●●●●●●●マルホ株式会社、JT、東レ・メディカル)に対しても実施許諾がされている。鳥居薬品は、原告と代表者型、親子会社関5係型にはなく、特許権の実施行為のうち「血液透析患者」用途のみ、販売行為のみについて通常実施権の許諾を受け利益を享受するにすぎないから、第三者との関係で法的保護を是認し得るほどの独占状態にあるとはいえない。 ウ 少なくとも、鳥居薬品の通常実施権は登録・公示されていないのである10から、不法行為の要件事実である過失の存在は否定されるべきである。 ⑵ 単位数量当たりの利益の額(争点9)(原告の主張)ア 原告製剤の単位数量当たりの利益の額は、原告及び鳥居薬品それぞれにおける単位数量当たりの利益の額の和である。原告と鳥居薬品の共同管理15体制の下で、原告が原薬及び原告製剤の製造を行い、鳥居薬品が特約店等への販売作業を行っており、それぞれに損害が生じている。特許権者である原告の損害賠償請求と独占的通常実施権者である鳥居薬品の損害賠償とは、異なる損害の賠償請求であり、原告の鳥居薬品に対する売上額は、鳥居薬品の限界利益算出に当たって経費として控除されているから、逸失20利益を算定するために単位数量当たりの利益の額をそれぞれ算出して和を用いても二重請求ではない。 イ 特許法102条1項1号は、特許権侵害による侵害品の販売数量に着目して、権利者の製品の販売数量が減少したことにより権利者に生じる逸失利益相当損害額を推定する規定である。そして、「単位数量当たりの利益の25額」は、限界利益として、当該製品の売上から変動費を控除した金額と解26される。 原告と鳥居薬 り権利者に生じる逸失利益相当損害額を推定する規定である。そして、「単位数量当たりの利益の25額」は、限界利益として、当該製品の売上から変動費を控除した金額と解26される。 原告と鳥居薬品●●●●●●●●●●●●●●●●ライセンス契約を締結しているが、独占的通常実施権の許諾の対価としては、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●等に所定の一時金が支払われるだけであり、原告製剤の製造販売数量に連動する実施料の定めはない。これらの一時金5は、原告製剤の製造販売開始以前の時期に支払われており、侵害期間における原告製剤の製造販売数量の増加との関連性はない。●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●10ウ 被告製剤と同量の原告製剤の製造のために原薬TRK820を追加製造するとしても、少量であるから別途電気料・水道料・人件費が増加することはない。TRK820の製造設備の減価償却費は製造固定費であり、限界利益の算定に当たり考慮すべきではない。TRK820を1g製造するのに要する●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●、これを変動費15として考慮した場合の原告製剤1錠当たりの製造原価総計に生じる差額●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●、❷●●●●●●●●●●●●●●●●●●●や、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●ことを考慮すると、電気料・蒸気料を限界利益の算出に当たり控除すべき20変動費には該当しない。●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●ことを考慮すると、電気料・蒸気料を限界利益の算出に当たり控除すべき20変動費には該当しない。●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●は、原告製剤の供給数量の増加に25伴って増加する費用又は原告製剤製造に直接必要な費用ではない。 27エ 原告は、高田製薬に対し、高田製薬の特許に係る実施許諾料等の対価を支払った実績はない(甲449)。 (被告らの主張)ア 原告は、原告製剤を製造するにとどまるから、原告の損害は、実施料相当額の範囲となる。特許権者である原告の損害賠償請求と独占的通常実施5権者である鳥居薬品の損害賠償請求とを二重に加算することができないことは当然である。 イ 電気料、水道料、人件費等について、原薬製造では、物理的に工場ラインを集中的に使用したり、専用設備により場所的・期間的・人的に工場内の他から区別されたりするから、固有の直接経費の計上が可能である。 10ウ ライセンス契約の一時金については(甲361、362)、限界利益の算定に際し、製品の製造・譲渡数量の増加に連動した変動費だけが考慮され、それ以外は考慮されずに限界利益が算定されるのではなく、個々の製品の製造・販売と直接に連動する、いわゆる「直接固定費」(個別固定費)が控除されるのが裁判実務であるから、一時金も直接固定費として評価される。 15甲362の覚書の一時金は●●●●●●●●●●●ライセンス契約の継続中に追加的に支払われたものであるし、甲361の一時金も製造販売に直接関連して るから、一時金も直接固定費として評価される。 15甲362の覚書の一時金は●●●●●●●●●●●ライセンス契約の継続中に追加的に支払われたものであるし、甲361の一時金も製造販売に直接関連して追加的に必要となった経費である。そして、製品の増量に正確に対応しなくても、ライセンス契約の対価であることは否定することができないから、一定の比率で控除すべきであり、既払いの一時金等を平準化20して損害額から控除することも可能・必要であり、具体的な減額方法は経験則がない限りは裁判所の裁量による。 ⑶ 販売することができないとする事情の有無及び当該事情に相当する数量等(争点10)(被告らの主張)25ア 令和3年1月6日から令和4年10月31日までにおける被告製剤の用28途割合について、被告らは、原告製剤の用途割合により算定することを認めており、自白が成立している。甲373等は、実際の被告製剤の販売数量のごく一部にすぎないDeSCデータ(後記(原告の主張)ア参照)の数値のみを基に、用途割合を具体的に推計することは著しく経験則に反する。 5イ 販売することができないとする事情以下のとおり、「販売することができないとする事情」があり、控えめに見ても7割は減ぜられる。相当数量を具体的に特定立証する必要はない。 (ア) 特許権者と侵害者の業務態様や価格等に相違が存在すること(市場の非同一性)については、後発医薬品には、販売促進の国家施策と行政10指導等が強力に存在し、その薬価や市場実勢価格も先発医薬品の薬価の約4割にすぎないため、先発医薬品の販売には大きくブレーキがかかっていること、原告製剤は、用途別に販売されており、被告製剤の業務形態とは異なることなどから、具体的な市場の同一性はない。したがって、被告製剤が存 ないため、先発医薬品の販売には大きくブレーキがかかっていること、原告製剤は、用途別に販売されており、被告製剤の業務形態とは異なることなどから、具体的な市場の同一性はない。したがって、被告製剤が存在しなくても、原告製剤にシフトすることは阻害される。 15(イ) 市場における競合品の存在について、被告製剤の上市当時から、代替品となるナルフラフィン塩酸塩を有効成分とする後発医薬品が多数存在している。原告は、OD錠と(軟)カプセルを販売しているが、規格が錠剤のものは被告ら及び他1社が、規格がカプセルのものは9社がそれぞれ販売している。そして、OD錠とカプセルは、いずれも経口投与さ20れるため、安価な競合品を購入することは容易であるから、被告製剤が存在しなくても、原告製剤にシフトすることは阻害される。 (ウ) 侵害者の営業努力(ブランド力、宣伝広告)について、被告沢井製薬は後発医薬品市場で長年トップシェアを有しており、被告扶桑薬品も透析分野でトップシェアを有している。 25(エ) 侵害品及び特許権者の製品の性能(機能、デザイン等特許発明以外の29特徴)について、原告製剤は、他社特許(高田製薬の特許。乙ハ56、57)や原告の他の特許を利用しているのに対し、被告製剤は、被告沢井製薬自身の特許、製剤技術や工夫によって支えられ、製剤を封入するPTPシートには工夫した表記がされ、ナルフラフィンの安定性を高めて取り扱い易くするなどの工夫が重ねられており、顧客吸引力は高い。 5また、前記のうち、高田製薬の特許(口腔内速崩壊錠)については、原告は、そのライセンスを受けることで、初めてOD錠として製造販売することができたものである。原告製剤(OD錠)は、OD錠についての高田製薬の特許が存在してこそ成り立つのであり、本件特許がそのまま全 告は、そのライセンスを受けることで、初めてOD錠として製造販売することができたものである。原告製剤(OD錠)は、OD錠についての高田製薬の特許が存在してこそ成り立つのであり、本件特許がそのまま全部実施されているものではない(部分実施の類型)。高田製薬の特許10なくしては原告製剤のOD錠としての性能機能を発揮することができないから、高田製薬の特許の存在が販売することができない事情を全面的にカバーし、原告主張の限界利益が100%減額される。 (オ) その他の事情として、被告らにおいては、被告製剤の製造販売に至るまでの承認等の経緯や、本件発明の技術的範囲の解釈や本件延長登録の15効力等から非侵害と確信していたことなどに照らすと、被告らには故意・重過失は認められない。したがって、特許法102条5項の趣旨に照らし、同条1項に基づく損害賠償額を定めるに当たり、「軽過失」を理由とする減額が認められるべきである。 (カ) 適正な実施料の算定の際に考慮される「当該特許発明自体の価値や20他のものによる代替可能性」「特許権者と侵害者との競業関係」「販売価格」等も、減額すべき事情に該当する。 (原告の主張)ア 被告製剤の数量の透析用途/肝用途の割合について、保険者のレセプト情報等を蓄積した保険データベースである「DeSCデータベース」(甲32572)を、専門家が分析し、被告製剤の調剤記録がある患者のデータから30透析患者と肝疾患患者を分類し、用途割合を推計した(甲373)。推計に当たっては、透析用途として確実に推計できるもののみを透析用途の処方数量としている。データベースの情報や、それに基づく推計は、信用性、合理性があるから、被告製剤の用途割合の推計や、用途ごとの被告製剤の譲渡数量に係る原告の主張は合理的である。 5 透析用途の処方数量としている。データベースの情報や、それに基づく推計は、信用性、合理性があるから、被告製剤の用途割合の推計や、用途ごとの被告製剤の譲渡数量に係る原告の主張は合理的である。 5イ 販売することができないとする事情販売することができないとする事情とは、侵害行為と特許権者の製品の販売減少との相当因果関係を阻害する事情をいい、主張立証責任は侵害者側にあり、当該事情と当該事情に相当する数量を具体的に特定立証する必要があるが、被告らはこれをしていない。 10(ア) 原告製剤(先発医薬品)と有効成分・効能効果・剤形が同じである唯一の後発医薬品である被告製剤の市場の同一性が認められることは明白であり、価格差ゆえに市場が異なるとの評価はあり得ない。 (イ) ナルフラフィン製剤は、ナルフラフィンが従来の止痒剤とは化学構造も薬理作用も異なる新薬であり、既存治療で効果不十分の場合のそう15痒症の改善に用いられるため、他の止痒剤とは市場を異にする。また、市場におけるOD錠は、原告製剤と被告製剤のみであり、完全に競合する。加えて、カプセルからOD錠への置き換わり、患者の特徴に応じたOD錠の優位性、統計的解析に照らし、OD錠の市場は、それ以外の剤形(カプセル等)の市場とは異なるものとなっている(販売数量比●●20●●●●●)。さらに、先発医薬品・後発医薬品の有効成分が同一である限り、医薬用途特許の貢献度が、製剤化技術等の存在によって低下することはないし、高額療養費制度や医療費助成制度等により、ナルフラフィン製剤の患者負担額は実質的に発生しないため、先発医薬品・後発医薬品の価格差が需要者の購買動機に影響を与えることはない。したがっ25て、後発医薬品の販売推進施策の存在や、被告らの営業努力は「販売す31ることが 実質的に発生しないため、先発医薬品・後発医薬品の価格差が需要者の購買動機に影響を与えることはない。したがっ25て、後発医薬品の販売推進施策の存在や、被告らの営業努力は「販売す31ることができないとする事情」には当たらない。そして、他の後発医薬品(カプセル)メーカーは、後発医薬品の十分な製造供給を行う設備能力を有しないなどの状況等からすれば、同メーカーが、被告らに代わって被告製剤の販売相当量のナルフラフィン製剤後発医薬品を追加して製造販売し得たとはいえない。 5(ウ) 被告らが主張する「販売することができないとする事情」のうち、原告製剤が高田製薬の特許を利用していることについて、高田製薬の特許は、本件発明の作用効果を奏するための前提条件とされていない。 すなわち、高田製薬の特許は、原告が適式に実施許諾を受けて権利処理されている特許であるから、被告らによる侵害期間中、原告による原10告製剤の製造販売に当たり高田製薬の特許が支障や影響を及ぼしたことはなく、裁判例にいう「販売することができないとする事情」にも該当しない。 また、ナルフラフィン塩酸塩を原薬とするOD錠である原告製剤及び被告製剤には、本件特許の延長登録に係る効力全体が及んでおり、本件15特許が全部実施されていることは明らかである。高田製薬の特許などの他の特許の存否は、本件特許の延長登録の効力全体が及んでいることとの関係で何ら影響を及ぼすものではない。 (エ) 沢井製薬の特許の存在も、その進歩性も、被告製剤の有効成分以外の成分が何であるかも、PTPシート等も、侵害行為である被告製剤の製20造販売と、特許権者の製品である原告製剤の販売減少との相当因果関係を阻害するものではなく、前記事情と無関係である。 (オ) 被告らの特許法1 Pシート等も、侵害行為である被告製剤の製20造販売と、特許権者の製品である原告製剤の販売減少との相当因果関係を阻害するものではなく、前記事情と無関係である。 (オ) 被告らの特許法102条5項に関する主張は、「販売することができないとする事情」と無関係である。同条5項は、同条3項を適用した上でさらに同項に規定する金額を超える損害賠償を請求する場合の規定で25ある。なお、被告らは、後発医薬品メーカーが原告製剤と同じ剤形を避32ける中、あえて被告製剤を製造販売し続けたものである。 (特許法102条3項等に基づく損害に関する争点)⑷ 適正な実施料(争点11)(原告の主張)ア 本件特許権の存続期間中に製造されたが未譲渡の被告製剤については、5原告の損害を特許法102条3項に基づき算定すべきところ、適正実施料率は、20%を下らない。 イ 仮に、原告製剤と被告製剤に市場の非同一性がある等何らかの損害額の減額事情が認められる場合には、特許法102条1項2号により実施料相当損害金が発生するが、その場合の適正実施料率も、20%を下らない。 10ウ ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●業界における非紛争時の実施料率の相場は、実態報告書(甲370。表Ⅱ-3)では、産業分野「バイオ・製薬」の特許実施料は、平均6.0%、最大値32.5%、アンケート再整理(甲371)では、産業分野「製薬」15の特許実施料は平均5.9%、最大値14.5%である。一方、特許侵害をした者に対して事後的に定められるべき「実施に対して受けるべき料率」は、通常時の実施料率に比して高額になるべきものである。本件特許は、医薬用途特許であるから、最大値 4.5%である。一方、特許侵害をした者に対して事後的に定められるべき「実施に対して受けるべき料率」は、通常時の実施料率に比して高額になるべきものである。本件特許は、医薬用途特許であるから、最大値14.5%を参考にすべきである。 エ 本件発明は、オピオイドκ受容体作動作用を有する化合物を止痒剤に用20いるという画期的新薬の医薬用途発明であり、代替技術も存在しない価値の高い発明である。また、本件発明は、被告製剤における有効成分・効能・効果に関する発明であるから、被告製剤全体について実施されており、製造により生じる売上・利益に対する貢献も高い。さらに、原告は、既に口腔内崩壊錠のナルフラフィン含有止痒剤の製造販売事業を独占していた25こと、被告製剤は、原告製剤と剤形まで同じ完全な競合品であること、特33許権侵害者に対して事後的に定められるべき実施料率は通常時のものより高額になり、原告が仮に実施許諾するとしても、自己実施と同水準の利益を得られる条件となるのが必然であることなどを併せ考慮すると、適正な実施料率は20%を下らない。 被告らの主張する3~5%は、製剤特許や製法特許であるから、医薬用5途特許である本件特許の実施料算定の基準とはならない。ナルフラフィンの安定性の確保については、原告及び他の後発医薬品メーカーも対応しているから、被告らのPTPシートを含め同確保が実施料率を押さえる事情にはならない。 オ 被告らが主張する特許法102条1項の事情は、侵害行為と特許権者の10製品の販売減少との相当因果関係を阻害する事情であるから、侵害プレミアムを考慮した同条3項の料率とは、考慮要素は共通しない。 (被告らの主張)ア 適正な実施料率につき、文献(乙ハ17)に開示のデータによれば、医薬業界におけ 阻害する事情であるから、侵害プレミアムを考慮した同条3項の料率とは、考慮要素は共通しない。 (被告らの主張)ア 適正な実施料率につき、文献(乙ハ17)に開示のデータによれば、医薬業界における実施料率の相場は3~5%程度とされるべきであり、原告15の主張は過大である。 イ 適正な実施料相当額は、最低限の保証であるところ、本件は、実施料相当額のみでなく特許法102条1項1号、2号適用場面及び在庫分への適用場面を含む請求であるから、侵害プレミアムの規定があっても、直ちに加算的事情を参酌すべきではないし、参酌するとしても、減額要素も考慮20すべきである。 本件特許発明の価値等を検討しても、医薬用途特許であれば、実施料率の平均値が最大値付近となるとする主張には根拠がなく、平均値を参考にするのが自然である。さらに、市場には競合品であるカプセル剤が多数存在し、代替技術も存在している。被告製剤の上市とともに原告の独占状態25は終了しており、被告製剤の上市がなくても後発品に置き換わる状況であ34った。原告製剤は、複数の特許を利用しているため、本件発明の貢献度には限界がある。症状軽減の程度は一定程度の評価もある。後発品は、薬価及び市場実勢価格の相違があり、実施料率は下がる。「販売することができないとする事情」で主張した減額要素も考慮すべきである。 (損害一般に関する争点)5⑸ 消費税相当額を加算して損害を算定することの可否(争点12)(原告の主張)ア 特許法102条1項に基づく損害額に課せられる消費税及び地方消費税の合計税率は、平成30年6月15日から令和元年9月30日までが8%、同年10月1日以降は10%である。 10イ 無体財産権である特許権の侵害を受けた場合に収受する損害賠償 及び地方消費税の合計税率は、平成30年6月15日から令和元年9月30日までが8%、同年10月1日以降は10%である。 10イ 無体財産権である特許権の侵害を受けた場合に収受する損害賠償金の実質は侵害者による当該特許権(資産)の無断利用の対価であるから、消費税の課税対象から除外されるべき事情のない限り、消費税の課税対象となり、消費税法基本通達5-2-5にも明記されている。そのため、侵害者から特許権侵害に係る損害賠償金を収受した特許権者等は、消費税の納税15義務を負う。したがって、損害金の算定に当たり、消費税相当額を含めるのは当然である。 被告らが特許権を無断利用した対価を支払うことは、被告製剤の販売に対する課税とは別物であり、二重徴収に当たらない。消費者は、特許権の無断利用をしていないから、その損害金を消費者が負担する理由はない。 20加えて、特許権侵害に係る損害金は侵害行為時に発生し、その額が客観的に確定している。 (被告らの主張)ア 原告の損害に消費税相当額を別途加算することができるかにつき、消費税法4条、2条1項8号は、消費税の課税対象となるのは、資産の譲渡等25に該当する特定の財産の移転等があり、対価が存在し、対価と資産の譲渡35等との対応関係がある場合であることを定める。また、消費税法基本通達5-2-5は、損害賠償金が、原則、資産の譲渡等の対価に該当しないこととしつつ、例外的に「⑵ 無体財産権の侵害を受けた場合に加害者から当該無体財産権の権利者が収受する損害賠償金」は課税対象になるとする。 そして、資産の譲渡等の対価の額とされる損害賠償金の額は、当該損害賠5償金の算定方法等を総合勘案して決定するとされる。 イ そうすると、租税法律主義の趣旨から消費税法基本通達5-2-5 とする。 そして、資産の譲渡等の対価の額とされる損害賠償金の額は、当該損害賠5償金の算定方法等を総合勘案して決定するとされる。 イ そうすると、租税法律主義の趣旨から消費税法基本通達5-2-5の⑵の損害賠償金が課税対象となるのは限定的に解釈されるべきところ、消費税基本通達5-5-2が、逸失利益等に対する損害賠償金と対価に相当する部分が一括して授受される場合には、全体として資産の譲渡等の対価に10該当せず消費税は加算しないとしていること等も踏まえれば、逸失利益の補填である特許法102条1項から3項までに基づく請求は、消費税の課税対象とはなりえないというべきである。加えて、侵害者が過去に譲渡し消費税が課された製品について、その利益相当分である損害額に再度消費税を課すことは消費税の二重徴収になること、実施料相当額に対応する消15費税は、消費者に転嫁することができないなど消費税の基本的な仕組みに反すること、消費税の納税義務が成立していない消費税について、消費税相当額を損害額に含めて計算することは論理的に誤りがあることなどが指摘される。なお、原告製剤の利益額には、直接固定費等の資産の譲渡に属さない性質のものもある。 20⑹ 原告の損害額(争点13)(原告の主張)原告の受けた損害の額は、別表1及び2の各「原告の主張」の損害額合計欄に記載のとおりである。 (被告らの主張)25争う。 36第4 当裁判所の判断の概要当裁判所は、侵害論については、第5のとおり、被告製剤は、原告の本件発明の技術的範囲に属するものであり(争点1)、本件延長登録等により存続期間が延長された本件特許権の効力は被告製剤の製造販売等の行為に及び(争点4)、本件延長登録等が無効にされるべきものとはいえず(争点5、争点6) に属するものであり(争点1)、本件延長登録等により存続期間が延長された本件特許権の効力は被告製剤の製造販売等の行為に及び(争点4)、本件延長登録等が無効にされるべきものとはいえず(争点5、争点6)、5先使用権も認められない(争点7)から、被告製剤は延長登録された原告の本件特許権を侵害するものと認めるのが相当と判断する。 また、当裁判所は、損害論については、第6のとおり、本件においては、本件特許権の独占的通常実施権者である鳥居薬品の損害賠償請求権が成立し(争点8)、原告は、これを併せて被告らに対して損害賠償請求をすることができる10から、被告らが販売した被告製剤については特許法102条1項に係る単位数量当たりの利益の額に基づく損害を請求することができ(争点9)、同項1号の「販売することができないとする事情」を認めることはできず(争点10)、未譲渡の被告製剤については同条3項に係る適正な実施料(9%)に基づく損害が認められ(争点11)、消費税相当額の加算は、同条1項に係る損害について15は認められないが、同条3項に係る適正な実施料については認められる(争点12)から、原告の損害額(争点13)は、別紙「裁判所認容額目録」記載のとおりと判断する。 その理由は、以下のとおりである。 第5 侵害論についての判断201 争点1(被告製剤は本件発明の技術的範囲に属するか)について⑴ 原告は、被告製剤は本件発明の技術的範囲に属すると主張するのに対し、被告らはこれを争うので、以下、検討する。 ⑵ 本件発明ア 特許請求の範囲の記載25本件特許の特許請求の範囲の記載(請求項の数36)は、別紙特許公報37中の「特許請求の範囲の記載」のとおりである。 このうち、請求項1は、一般式(I)で表される 特許請求の範囲の記載25本件特許の特許請求の範囲の記載(請求項の数36)は、別紙特許公報37中の「特許請求の範囲の記載」のとおりである。 このうち、請求項1は、一般式(I)で表される「オピオイドκ受容体作動性化合物を有効成分とする止痒剤」とするものである。 また、請求項10は、一般式(Ⅱ)で表される「オピオイドκ受容体作動性化合物を有効成分とする止痒剤」とするものである。 5また、請求項15は、一般式(Ⅲ)で表される「オピオイドκ受容体作動性化合物またはその薬理学的に許容される酸付加塩を有効成分とする止痒剤」とするものである。 このように、請求項1には、「オピオイドκ受容体作動性化合物またはその薬理学的に許容される酸付加塩」との表現は用いられていない。 10一般式(Ⅰ) 一般式(Ⅱ) 一般式(Ⅲ) 15 イ 本件明細書(甲2)の記載本件明細書(甲2)の発明の詳細な説明には、次の記載がある。 (ア) 技術分野「本発明は、各種の痒みを伴う疾患における痒みの治療に有用なオピ20オイドκ受容体作動性化合物およびこれを含んでなる止痒剤に関する。」(本件明細書(甲2)の12頁9、10行目。以下、特に断らない限り、頁数及び行数は、本件明細書のものを指す。)(イ) 背景技術「痒み(そう痒)は、皮膚特有の感覚で、炎症を伴う様々な皮膚疾患に25多く見られるが、ある種の内科系疾患(悪性腫瘍、糖尿病、肝疾患、腎38不全、腎透析、痛風、甲状腺疾患、血液疾患、鉄欠乏)や妊娠、寄生虫感染が原因となる場合や、ときには薬剤性や心因性で起きることもある。 痒みは主観的な感覚であるため数量的に客観的に評価することが難しく、痒みの発現メカニズムはまだ十分に解明 、鉄欠乏)や妊娠、寄生虫感染が原因となる場合や、ときには薬剤性や心因性で起きることもある。 痒みは主観的な感覚であるため数量的に客観的に評価することが難しく、痒みの発現メカニズムはまだ十分に解明されていない。 現在のところ、痒みを引き起こす刺激物質としては、ヒスタミン、サ5ブスタンスP、ブラジキニン、プロテイナーゼ、プロスタグランジン、オピオイドペプチドなどが知られている。……そう痒の治療には、内服剤として抗ヒスタミン剤、抗アレルギー剤などが主に用いられ、また外用剤としては、抗ヒスタミン剤、副腎皮質ステロイド外用剤、非ステロイド系抗消炎剤、カンフル、メントール、10フェノール、サリチル酸、タール、クロタミトン、カプサイシンなど保湿剤(尿素、ヒルドイド、ワセリンなど)が用いられる。しかし内服剤の場合、作用発現までに時間のかかることや、中枢神経抑制作用(眠気、倦怠感)、消化器系に対する障害などの副作用が問題となっている。一方、外用剤の場合では、止痒効果が十分でないことや特にステロイド外用剤15では長期使用における副腎機能低下やリバウンドなどの副作用が問題となっている。 オピオイドと痒みについては、オピオイドが鎮痛作用を有する一方で痒みのケミカルメディエーターとしても機能することが知られていた。 …その一方で、モルヒネの髄腔内投与によって惹起された痒みがモルヒ20ネ拮抗薬であるナロキソンによって抑制されたこと…や肝障害の胆汁鬱血患者で内因性オピオイドペプチドの上昇によって惹起された強い痒みが、オピオイド拮抗薬であるナルメフェンによって抑制されたこと…も明らかとなり、統一的見解として、オピオイド系作動薬は痒みを惹起する作用があり、逆にその拮抗薬には止痒作用があるとされた。…25このように、従来よりオピオイド系 ンによって抑制されたこと…も明らかとなり、統一的見解として、オピオイド系作動薬は痒みを惹起する作用があり、逆にその拮抗薬には止痒作用があるとされた。…25このように、従来よりオピオイド系作動薬は痒みを惹起し、その拮抗39薬が止痒剤としての可能性があるとされてきた。しかし、オピオイド系拮抗薬を止痒剤として応用することは現在までのところ実用化されていない。 本発明の目的は、上記の問題点を解決した止痒作用が極めて速くて強いオピオイドκ受容体作動薬およびこれを含んでなる止痒剤を提供する5ことにある。」(12頁12行目~13頁23行目)(ウ) 発明の開示「本発明はオピオイドκ 受容体作動性化合物およびこれを有効成分とする止痒剤である。」(13頁25行目)(エ) 発明を実施するための最良の形態10「本発明でいうκ受容体作動薬はオピオイドκ受容体に作動性を示すものであればその化学構造的特異性にとらわれるものではないが、μおよびδ受容体よりもκ受容体に高選択性であることが好ましい。より具体的には、オピオイドκ受容体作動性を示すモルヒナン誘導体またはその薬理学的に許容される酸付加塩が挙げられ、中でも一般式(I)…で15表されるオピオイドκ受容体作動性化合物またはその薬理学的に許容される酸付加塩であり、または一般式(II)…で表されるオピオイドκ受容体作動性化合物であり、または一般式(III)…で表されるオピオイドκ受容体作動性化合物またはその薬理学的に許容される酸付加塩である。 モルヒナン誘導体以外の止痒用途に用いる物質としては一般式(IV)…20で表されるオピオイドκ受容体作動性化合物またはその薬理学的に許容される酸付加塩であり、または一般式(Ⅴ)…で表されるオピオイドκ受容体作動性化合物また に用いる物質としては一般式(IV)…20で表されるオピオイドκ受容体作動性化合物またはその薬理学的に許容される酸付加塩であり、または一般式(Ⅴ)…で表されるオピオイドκ受容体作動性化合物またはその薬理学的に許容される酸付加塩であり、または一般式(Ⅵ)…で表されるオピオイドκ受容体作動性化合物またはその薬理学的に許容される酸付加塩であり、または一般式(Ⅶ)…で25表されるオピオイドκ受容体作動性化合物またはその薬理学的に許容さ40れる酸付加塩である。これらκ受容体作動薬は一種のみならず数種を有効成分として使用され得る。」(13頁35行目~17頁7行目)「治療対象となる具体的なそう痒を伴う皮膚疾患としては、アトピー性皮膚炎、神経性皮膚炎、接触皮膚炎、脂漏性皮膚炎、自己感作性皮膚炎、毛虫皮膚炎、皮脂欠乏症、老人性皮膚そう痒、虫刺症、光線過敏症、5蕁麻疹、痒疹、疱疹、膿痂疹、湿疹、白癬、苔癬、乾癬、疥癬、尋常性座瘡などが挙げられる。また、そう痒を伴う内臓疾患としては、悪性腫瘍、糖尿病、肝疾患、腎不全、腎透析、妊娠に起因するそう痒が特に対象として挙げられる。さらに、眼科や耳鼻咽喉科の疾患に伴うで痒みにも適用し得る。」(17頁8行目~13行目)10「上記κ受容体作動薬の中で、一般式(I)、(III)、(IV)、(V)、(VI)および(VII)で表される物質に対する薬理学的に好ましい酸付加塩としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、グルタル酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マンデル酸塩、マレイン15酸塩、安息香酸塩、フタル酸塩等の有機カルボン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンセンスルホン酸塩、p-トルエンスル 、リンゴ酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、マンデル酸塩、マレイン15酸塩、安息香酸塩、フタル酸塩等の有機カルボン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンセンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、カンファースルホン酸塩等の有機スルホン酸塩等があげられ、中でも塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩等が好まれるが、もちろんこれらに限られるものではない。 20これらκ受容体作動薬は、医薬品用途にまで純化され、必要な安全性試験に合格した後、そのまま、または公知の薬理学的に許容される酸、担体、賦形剤などと混合した医薬組成物として、経口または非経口的に投与することができる。」(51頁25行目~36行目)「医薬組成物中のκ受容体作動薬の含量は特に限定されないが、経口25剤では1服用あたり通常0.1μg~1000mg、外用剤では1回塗布あたり41通常0.001ng/m2~10mg/m2 となるように調製される。」(52頁13行目~15行目)(オ) 実施例「実施例9選択的なκ受容体作動性オピオイド化合物である(-)-17-(シク5ロプロピルメチル)-3,14β-ジヒドロキシ-4,5α-エポキシ-6β-[N-メチル-トランス-3-(3-フリル)アクリルアミド]モルヒナン塩酸塩7を生理食塩水に溶解し、40μg/ml 濃度の水溶液を調製した。この水溶液を成人男子下肢に生じた蕁麻疹の発赤部位3か所に、薬物濃度0.2μg/cm2 で塗布した。 10その結果、塗布前、中等度の痒み(グレードとして++と設定)を感じていたが、塗布5分で痒みを全く感じなくなった(グレードとして-と設定)。痒みのない状態は約5時間持続した。 実施例10女性アトピー性皮膚炎患者の腕および脚で強い ドとして++と設定)を感じていたが、塗布5分で痒みを全く感じなくなった(グレードとして-と設定)。痒みのない状態は約5時間持続した。 実施例10女性アトピー性皮膚炎患者の腕および脚で強い痒み(グレードとして15+++と設定)を感じる皮膚表面病巣に化合物7水溶液を塗布した。塗42布部位は5ヶ所で、10 ㎠に約50μl溶液で、塗布薬物濃度は0.2μg/㎠であった。また比較として、インドメタシン・クリーム(薬物濃度7.5mg/g)を同様に75μg/cm2 で塗布した。 その結果、表5のように、全塗布部分において、化合物7水溶液では塗布後5分で痒みは完全になくなり、強力な止痒作用を有することが判5明した。また、痒みのない状態は少なくとも3時間は持続した。一方、インドメタシン・クリームでは痒みが残る感じがあり、止痒作用は化合物7の方が優れていることが判明した。」(58頁1~18行目、59頁)「実施例12…被験薬物あるいは溶媒のいずれかをマウスの吻側背部皮下に投与し、10その30 分後に生理食塩水に溶解したCompound48/80(100μg/site)を50μLの用量で除毛部位に皮内投与した。その後直ちに観察用ケージ(10x7x16cm)に入れ、… マウスが後肢でCompound48/80 投与15部位の近傍を引っかく行動の回数をカウントした。…引っかき行動を減らす作用をもって被験化合物の20止痒効果の指標とした。」(59頁25~31行目)「試験に用いた化合物は用いた用量で止25痒効果を示した。」(化43合物8~23略)(62頁1行目)(カ) 産業上の利用可能性「本発明の止痒剤は、オピオイドκ受容体作動薬を有効成分とすることを特徴とし、各 25痒効果を示した。」(化43合物8~23略)(62頁1行目)(カ) 産業上の利用可能性「本発明の止痒剤は、オピオイドκ受容体作動薬を有効成分とすることを特徴とし、各種の痒みを伴う皮膚疾患、例えばアトピー性皮膚炎、神経性皮膚炎、接触皮膚炎、脂漏性皮膚炎、自己感作性皮膚炎、毛虫皮5膚炎、皮脂欠乏症、老人性皮膚そう痒、虫刺症、光線過敏症、蕁麻疹、痒疹、疱疹、膿痂疹、湿疹、白癬、苔癬、乾癬、疥癬、尋常性座瘡など、および、痒みを伴う内臓疾患、例えば悪性腫瘍、糖尿病、肝疾患、腎不全、腎透析、妊娠などの痒みの治療に有用である。」(63頁2~7行目)(キ) 本件特許出願の日(平成9年11月21日)において、請求項1の一10般式(Ⅰ)に示すκ受容体作動薬及びその酸付加塩は既に公知の物質であった(18頁41~42行目)。 ウ 「有効成分」に関する文献の記載等(ア) 「有効成分」の用語に関して、本件特許出願の日(平成9年11月21日)以前に頒布・刊行された文献等には、次のような記載がある。 15すなわち、❶「医薬品の有効性とは治療効果であり、治療効果は医薬品の臨床試験結果より評価されるのが通常であるが、臨床試験の前段階として、製剤より有効成分がどの程度生体内へ利用されているかを測定する必要がある。有効成分そのものがいかに利用率がよくても、製剤に加工する過程で利用されにくい形に変えられていれば、利用率が減少し、20ひいては薬効の発現がおくれたり、小さくなったりするおそれがある。 この生体への医薬品有効成分の利用率をBioavailability と称し、通常は投薬後一定時間おきに血液や尿を採取し、血清中や尿中に存在する(吸収され、代謝をうけ、また排泄された)有効成分の含量の時間的推移をしらべる 分の利用率をBioavailability と称し、通常は投薬後一定時間おきに血液や尿を採取し、血清中や尿中に存在する(吸収され、代謝をうけ、また排泄された)有効成分の含量の時間的推移をしらべることにより測定され、いろいろのパラメータを用いて、もっと25も吸収されやすい形で投与した場合(一般的には、水溶液)や他の剤形44との相対的比較で評価される。」(甲79、塩路雄作「続・医薬品工業と粉体工学」・粉体工学研究会誌Vol.14 No.7(1977)409頁)、❷「米国FDAの定義では、「生物学的利用能とは、活性を有する薬物成分あるいは治療有効成分が医薬品製剤から吸収され、薬の作用部位で利用されるようになる速さや量である」とされている。具体的には、有効成分の血5中濃度、尿中排泄あるいは薬理効果を測定することが定められているが、前述の定義で血中濃度を指標にするとAUC(area under theconcentration-time curve)の測定に他ならない。」(甲80、ファルマシアレビュー編集委員会編「ファルマシアレビュー No.1 薬が世に出るまで」社団法人日本薬学会(昭和53年)39頁)、❸「薬が体に働い10て効果を発揮するまでに、いくつもの問題がある。たとえば錠剤を内服したとき、胃とか腸とかで崩れて、効きめをもった成分が放出されることが第一段階になる。有効成分が吸収され、血流で体内に広く分布され、一部は血中のタンパク質と結びつき、また脂肪組織などに貯えられるかもしれない。肝臓を通過するとき化学的な変化をうけて活性を失ったり、15ときに活性が強められるかもしれない。腎臓を通過するときその成分は体外に排泄されるかもしれない。このような吸収、代謝、分布、排泄(ADME)といった体内での運命に関する面は、ファ 失ったり、15ときに活性が強められるかもしれない。腎臓を通過するときその成分は体外に排泄されるかもしれない。このような吸収、代謝、分布、排泄(ADME)といった体内での運命に関する面は、ファルマコキネティックス、薬動態学と呼ばれ…る」(甲81、佐久間昭「薬の効果・逆効果 臨床薬理学入門」ブルーバックスB-449、講談社(昭和56年)21~2220頁)等の記載がある。 これらの文献の記載によれば、本件特許出願の日以前において、「有効成分」とは、体内(血中)で溶出し作用する物質の意味で用いられる場合等が一般的に見られたことが認められる。 (イ) 「有効成分」の用語に関して、本件特許出願の日(平成9年11月2251日)以後に頒布・刊行された文献等には、次のような記載がある。 45すなわち、❶「有効成分〔医薬品の〕」「単体又は1種類以上の他の成分と組み合わせ、1つの医薬品の意図された作用を起こす物質。また、成分の中で薬効を示す成分。例えば生薬の薬効をもつ成分をいうことが多く、生薬中の有効成分の分離は新薬開発の一方法」(甲78、薬科学大辞典編集委員会「廣川 薬科学大辞典〔第5版〕-普及版-」廣川書店5(平成25年第5版)1584頁)、❷「製剤中に含まれている有効成分は、投与された後に、製剤から放出あるいは溶出される必要があります。 そのため、試験管内での放出速度や溶出速度を比較検討することで、それら製剤を投与後の有効成分の血中濃度や作用発現部位中の濃度は推定でき、ヒト試験の代わりになるのではと期待される面があります。」(甲1086、緒方宏泰「先発医薬品と臨床上の有効性・安全性が『同等』であるジェネリック医薬品の評価~生物学的同等性を考える~」厚生労働省医薬食品局審査管理課編集発行「後発医薬品質情報No. 」(甲1086、緒方宏泰「先発医薬品と臨床上の有効性・安全性が『同等』であるジェネリック医薬品の評価~生物学的同等性を考える~」厚生労働省医薬食品局審査管理課編集発行「後発医薬品質情報No.2」(平成26年)3~4頁)、❸「レミッチ錠のようないわゆる低分子医薬品の経口剤においては、錠剤(OD錠)又はカプセルから溶け出した有効成分が消化管(主15に小腸)から吸収されて、循環血液中に移行し、薬効を発揮します。循環血液中の有効成分が血流によって全身の組織・器官へ運ばれ、標的となる細胞に存在する受容体などのタンパク質と結合し、それによって薬効が現れます。このような医薬品の薬物動態は技術常識であり、この技術常識のもとで、この薬効を発揮する有効成分の体内での存在状態を確20認するため、有効成分の血中濃度が測定され、また、有効成分の消化管での溶出挙動を確認するために溶出試験が実施されます。これらの試験は、医薬品の製造販売承認申請において重要な基礎データとなります。」「一方、医薬品の製剤開発において、上記の有効成分を効率よく消化管で吸収させ、薬効を発揮させるために、血中に移行する有効成分に対し25て、原薬として溶解度を上げることが一般的によく行われています。例46えば、有効成分は脂溶性であることが多いですが、小腸で有効成分を効率的に吸収させるためには、水に溶けやすくして、小腸に効率よく有効成分を届ける必要があります。したがって、錠剤(OD錠)又はカプセルのような経口剤とする場合には、そのままでは、水に溶けにくい有効成分の場合には、これを解消するために、原薬として塩の形態とするこ5とで水に対する溶解度を向上させ、効率よく体内に有効成分を届けることが行われます。…このように有効成分の溶解度向上を目的とした塩種の検討は一般 これを解消するために、原薬として塩の形態とするこ5とで水に対する溶解度を向上させ、効率よく体内に有効成分を届けることが行われます。…このように有効成分の溶解度向上を目的とした塩種の検討は一般的によく行われています。」「…最終的に所望の溶解度、安定性を得た塩などの有効成分の付加形態が医薬品における原薬となります。医薬品としての製造・販売を目的とした製剤の開発においては、さ10らに、この原薬に添加剤を加えて錠剤又はカプセル剤などの経口剤として飲みやすさや安定性などの機能が付与されます。」「…有効成分、原薬及び添加剤の関係については…体内に移行し薬効を発揮する化学物質が有効成分であることを表し…原薬と添加剤との区別としては、有効成分を含む原薬が有効成分として取り扱われることを説明しています。すな15わち、…有効成分を含み、溶解性・安定性を得るため塩などを付加した形態が原薬であることから、…有効成分を含むことから効能、効果に直接関係する原薬が、効能、効果として直接の関係のない添加剤と区別されて取り扱われるものとされています。もっとも、上記で説明した医薬品における技術常識からして、原薬中の、消化管から吸収され血液に含20まれ、受容体などと結合するものを有効成分として表していることは明らかです。」「したがって、医薬品における「有効成分」とは、消化管から吸収され、循環血液に移行し、受容体などのタンパク質と結合することで薬理作用を発揮する化学物質を表すことが昭和49年から現在に至るまでの技術常識です。」(甲140、 A 「鑑定意見書」令和2年256月17日付け3~5頁。なお、同鑑定意見書4頁で言及する厚生省薬47務局編「逐条解説 薬事法」ぎょうせい(昭和58年3版)365頁〔甲26〕は、同法50条7号に関して「「有効成 和2年256月17日付け3~5頁。なお、同鑑定意見書4頁で言及する厚生省薬47務局編「逐条解説 薬事法」ぎょうせい(昭和58年3版)365頁〔甲26〕は、同法50条7号に関して「「有効成分」とは、医薬品の目的たる効能、効果を薬理的に生ぜしめる有効な成分を意味する。したがって、効能、効果と直接の関係のない賦形剤、安定剤、溶剤等の製剤補助剤は含まれない。」などと解説する。)等の記載がある。 5これらの文献の記載によれば、本件特許出願の日以後においても、「有効成分」とは、前記(ア)と同様、体内(血中)で溶出し作用する物質の意味で用いられてきていることが認められる。 エ 「塩基性薬物」に関する文献の記載等(ア) 「塩基性薬物」に関して、本件特許出願の日(平成9年11月21日)10以前に頒布・刊行された文献等には、次のような記載がある。 すなわち、❶「有機酸、有機塩基である多くの薬物の溶解は、また液のpHによって著しく左右される…このように溶解度(飽和溶液の濃度)に影響をうけた薬物は、当然溶解速度にも変化が現れる。」「このような薬物を塩として投与すると、その溶解特性はそれぞれもとの薬物とは違15ってくる。有機酸のNa塩やK塩はいずれのpHの液性からの溶解速度も、遊離酸に比べて大きい。有機塩基の塩酸塩にように強酸による塩の場合もこれと同様である。これらの塩を経口投与すると、血中濃度は著しく速く最高が現れる。」(甲99、大塚昭信、池田憲、村西昌三編「製剤学」南江堂(1987年)216頁)、❷「2.2薬物の塩化」「薬物20には中性・塩基性・酸性のものがあり、ことに塩基性の薬物はなんらかの酸との塩にして用いられるものが多い。」「遊離塩基は通常液体や低融点のものが多く、一般に空気酸化や光で分解されたり、空気 物20には中性・塩基性・酸性のものがあり、ことに塩基性の薬物はなんらかの酸との塩にして用いられるものが多い。」「遊離塩基は通常液体や低融点のものが多く、一般に空気酸化や光で分解されたり、空気中の二酸化炭素と塩を形成したりして不安定である。また、塩の方が再結晶などでの精製が容易である場合が多い。このような理由から塩基が塩化される25ことが多いのであるが、薬物を塩にするとこれら以外にも多くの利点が48得られる。」「<薬物を塩化することの意味>1)水溶性になる。2)結晶性となり取扱いやすくなる。3)光・空気・熱などに対する安定性が増す。4)中和により殊に注射時の刺激性・疼痛を和らげる。5)矯味・矯臭」「塩に変えたからといっても、服用または投与後の生体内でもなお塩のままで存在するわけではない。たとえば、塩基性薬物の希薄溶液で5は塩と遊離塩基の間に平衡関係がある。粘膜からは当然この遊離塩基が吸収されてゆく。」「塩基性物質を塩にするために用いる酸としては、塩酸が最も多く用いられる。」(甲105、太田俊作「薬品製造学」さんえい出版(1990年)235、236頁)等の記載がある。 これらの文献を含む多くの文献(甲97、100~103)の記載に10よれば、本件特許出願の日以前においても、製剤の技術分野において、「薬物の溶解性や安定性を向上させるために付加塩を構成すること」が紹介されていることが認められる。 (イ) また、文献(甲117~124)によれば、3級アミン(第三級窒素)を含む塩基性化合物についても、塩酸等により付加塩を形成したものが15原薬として医薬品に配合されていたことが開示されている。 オ 本件特許の出願経過(ア) 原告は、平成9年11月21日本件特許出願をしたところ、平成13年4月 塩を形成したものが15原薬として医薬品に配合されていたことが開示されている。 オ 本件特許の出願経過(ア) 原告は、平成9年11月21日本件特許出願をしたところ、平成13年4月24日付けで拒絶理由通知(乙イ2)を受け、「発明の詳細な説明の記載からでは、オピオイドκ受容体作動薬活性を有するすべての化合20物が止痒活性を奏するものと認めることはできない。よって、本願の発明の詳細な説明は、当業者が請求項1、2、12-21、23、26-29、40、41に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていない。」(理由2。なお、これらは一般式(Ⅱ)、(Ⅲ)、(Ⅴ)に係る請求項である。)、「請求項2には「モルヒナン誘導体」と記25載されているが…当該誘導体の意味する範囲が明らかでない。」(理由3)、49「この拒絶理由通知書中で指摘した請求項以外の請求項に係る発明については、現時点では、拒絶の理由を発見しない。」などの指摘を受けた(乙イ2)。 (イ) 原告は、平成13年7月16日付けで意見書(乙イ3)及び手続補正書(乙イ4)を提出し、前記指摘を受けた請求項について削除又は補正5等の意見を述べ、補正後の請求項を提示した(以下、この補正を「本件補正」という。)。本件補正において、原告は、補正前の請求項1~3(乙イ1)のうち、拒絶理由通知(乙イ2)で指摘を受けた請求項1及び2を削除し、これに伴い、請求項3を請求項1に改めるなどしたが、本件補正の補正後の請求項1においては、補正前の請求項3で引用していた10補正前の請求項2の「またはその薬理学的に許容される酸付加塩」の文言が欠落している。 〔補正前の請求項1~3〕(乙イ1)請求項1 オピオイドκ受容体作動性化合物を有効成分とす 10補正前の請求項2の「またはその薬理学的に許容される酸付加塩」の文言が欠落している。 〔補正前の請求項1~3〕(乙イ1)請求項1 オピオイドκ受容体作動性化合物を有効成分とする止痒剤請求項2 オピオイドκ受容体作動性化合物がモルヒナン誘導体または15その薬理学的に許容される酸付加塩である請求項1記載の止痒剤請求項3 モルヒナン誘導体が下記一般式 ( I )…[式中、…は…を表す。また、一般式( I ) は(+) 体、(-)体、(±)体を含む]で表されるものである請求項2記載の止痒剤〔補正後の請求項1〕(乙イ4)20補正前の請求項1、2は削除され、補正前の請求項3の冒頭「モルヒナン誘導体が下記一般式(Ⅰ)」を「下記一般式(Ⅰ)」と、また、補正前の請求項3の末尾「で表されるものである請求項2記載の止痒剤。」を、「で表されるオピオイドκ受容体作動性化合物を有効成分とする止痒剤。」としたものが、新たな請求項1とされた。 25(ウ) 前記(ア)のとおり、一般式(Ⅰ)を含む補正前の請求項3に係る発明50に対する拒絶の理由は通知されていない(乙イ2)。また、原告が提出した意見書(乙イ3)においても、一般式(Ⅰ)を含む補正前の請求項3が拒絶の対象となっていることの認識は示されておらず、一般式(Ⅰ)の化合物に対する言及を含め、補正後の請求項1において、「またはその薬理学的に許容される酸付加塩」の文言を欠落させたことについての説5明はされていない。 カ 本件発明1の技術的範囲の検討(ア) 請求項1には、「κ受容体作動性化合物又はその薬理学的に許容される酸付加塩」を有効成分とする止痒剤との表現は用いられていない。しかし、本件明細書の記載(前記イ(イ)(エ)(カ))によれば、「オピオイド 求項1には、「κ受容体作動性化合物又はその薬理学的に許容される酸付加塩」を有効成分とする止痒剤との表現は用いられていない。しかし、本件明細書の記載(前記イ(イ)(エ)(カ))によれば、「オピオイドκ10受容体作動薬」は、「オピオイドκ受容体作動性を示すモルヒナン誘導体またはその薬理学的に許容される酸付加塩」であり、「一般式(I)で表されるオピオイドκ受容体作動性化合物」、その「酸付加塩」、「一般式(II)で表されるオピオイドκ受容体作動性化合物」、「一般式(III)で表されるオピオイドκ受容体作動性化合物」、その「酸付加塩」等とされている。 15また、本件明細書の実施例9においても、「選択的なκ受容体作動性オピオイド化合物である…モルヒナン塩酸塩7」と記載されており、化合物とその酸付加塩の形態とは厳密に区別されていない。 (イ) しかるところ、「有効成分」の用語は、前記ウのとおり、本件特許出願の日の前後を通じて、体内(血中)で溶出し薬理作用を発揮する化学20物質の意味で用いられる場合が一般的に見られていたものであり、本件明細書において、これと異なる解釈をとるべき理由は見当たらない。確かに、製剤開発の観点から、最終的に所望の溶解度、安定性を得るために酸付加塩の形態にしたものを原薬とし、配合目的が添加剤(甲35、138参照)である構成成分と区別するために、酸付加塩の形態を含め25て「有効成分」と呼ぶ取扱いが存在することは認められるが、付加され51た塩の部分が体内で薬理作用を発揮する化学物質になるわけではない。 (ウ) もともと、本件発明の目的は、止痒作用が極めて速くて強いオピオイドκ受容体作動薬及びこれを含んでなる止痒剤を提供することにある。 前記エによれば、製剤の技術分野において、本件特許の出願当時、薬物の溶解性 もと、本件発明の目的は、止痒作用が極めて速くて強いオピオイドκ受容体作動薬及びこれを含んでなる止痒剤を提供することにある。 前記エによれば、製剤の技術分野において、本件特許の出願当時、薬物の溶解性や安定性を向上させるために酸付加塩の形態をとることは、技5術常識であったと認められ、本件明細書の記載によっても、酸付加塩の形態について、それ以外の技術的意義があることを認めるに足りない。 したがって、本件明細書をみた当業者は、本件発明の目的である止痒作用を発揮する化学物質は「κ受容体作動性化合物」であって、「薬理学的に許容される酸付加塩」の形態は、物質の止痒作用自体を変化させるた10めのものではなく、薬としての溶解性や安定性を向上させるための形態にすぎないことは容易に理解することができたはずである。そうすると、製剤開発の分野や薬事承認に際して、添加剤と区別するため、化合物とその薬理学的に許容される酸付加塩を含めて「有効成分」と呼ぶ場合があることを踏まえたとしても、当業者において、請求項1に「オピオイ15ドκ受容体作動性化合物を有効成分とする止痒剤」とだけ記載されていることを理由に、その趣旨が、「薬理学的に許容される酸付加塩」は、本件発明1でいう有効成分には当たらず、特許の技術的範囲外であると解釈するとは考えられない。止痒剤に関する特許において、合理的理由もないのに、わざわざ酸付加塩の形態という薬としての溶解性や安定性を20向上させるために通常よく用いられる構成を除外して、特許請求の範囲を決めることは不自然だからであり、むしろ、本件明細書の前記各記載によれば、「κ受容体作動性化合物の薬理学的に許容される酸付加塩」の形態は、κ受容体作動性化合物を有効成分とする止痒剤の実施形態の一つであることを容易に理解することができるというべき 書の前記各記載によれば、「κ受容体作動性化合物の薬理学的に許容される酸付加塩」の形態は、κ受容体作動性化合物を有効成分とする止痒剤の実施形態の一つであることを容易に理解することができるというべきである。 25(エ) 前記オの本件特許の出願経過を参酌しても、原告は、本件補正により、52補正前の請求項3の一般式(Ⅰ)を含む発明を補正後の請求項1に補正し、その際「またはその薬理学的に許容される酸付加塩」の文言を欠落させたことが認められるが、拒絶理由通知(乙イ2)においては、補正前の請求項3は拒絶の対象にされておらず、原告の意見書(乙イ3)においても、一般式(Ⅰ)の化合物に対する言及を含め、補正後の請求項51において「またはその薬理学的に許容される酸付加塩」の文言を欠落させたことについての説明はされていない。そうすると、本件特許の出願経過において、原告が、本件補正の際に、補正後の請求項1から「酸付加塩」の文言を意識的に除外したと認めることはできないというべきである。 10(オ) 以上のとおり、特許請求の範囲及び本件明細書の記載、本件特許の出願経過及び本件特許出願日当時の技術常識によれば、本件発明1は、酸付加塩の形態をとるか否かにかかわらず、一般式(Ⅰ)で表される化合物が、生体内において溶出して吸収され、そのオピオイドκ受容体作動性という属性に基づき「有効成分」としての薬理作用を発揮するような15止痒剤をいうものと解するのが相当である。 キ 被告らの主張について(ア) 被告らは、本件補正により、請求項1の薬理学的に許容される塩を有効成分とする止痒剤が削除され、外形的・意識的に除外されているから、出願経過参酌の原則(禁反言)及び信義則から、投与前のナルフラフィ20ン塩酸塩の形態及び投与後に溶出 理学的に許容される塩を有効成分とする止痒剤が削除され、外形的・意識的に除外されているから、出願経過参酌の原則(禁反言)及び信義則から、投与前のナルフラフィ20ン塩酸塩の形態及び投与後に溶出したナルフラフィン(フリー体)は除外されるなどと主張する。しかしながら、前記のとおり、本件補正により、請求項1の薬理学的に許容される酸付加塩を有効成分とする止痒剤が意識的に除外されたものとはいえず、被告らの主張を採用することはできない。 25(イ) 被告らは、本件発明で特定、限定されているナルフラフィン(フリー53体)が、本件延長登録によって酸付加塩に広がることはないなどと主張する。しかし、前記のとおり、もともと本件延長登録前の請求項1は、酸付加塩の形態をとるか否かにかかわらず、一般式(Ⅰ)で表される化合物が、生体内において溶出して吸収され、そのオピオイドκ受容体作動性という属性に基づき「有効成分」としての薬理作用を発揮するよう5な止痒剤を意味するものと解され、酸付加塩の形態を除外したものではない。したがって、本件延長登録により請求項1が酸付加塩に広がったわけではないから、被告らの主張は前提を欠くものといわざるを得ない。 ⑶ 被告製剤の本件発明1の構成要件充足性の検討ア 前記のとおり、本件発明1は、酸付加塩の形態をとるか否かにかかわら10ず、一般式(Ⅰ)で表される化合物が溶出して生体内において吸収され、そのオピオイドκ受容体作動性という属性に基づき「有効成分」としての薬理作用を発揮するような止痒剤をいうものと解するのが相当である。また、ナルフラフィンは、本件発明1の一般式(Ⅰ)で表される「オピオイドκ受容体作動性化合物」を充足する物質である(甲23、24、140)。 15イ 被告製剤(ア) 被告 相当である。また、ナルフラフィンは、本件発明1の一般式(Ⅰ)で表される「オピオイドκ受容体作動性化合物」を充足する物質である(甲23、24、140)。 15イ 被告製剤(ア) 被告沢井製薬が製造販売する被告製剤(承認番号23000AMX00338000)は、販売名「ナルフラフィン塩酸塩OD錠2.5㎍『サワイ』」であり、添付文書及び医薬品インタビューフォームには、組成として、有効成分が1錠中「ナルフラフィン塩酸塩2.5㎍(ナルフラフ20ィンとして2.32㎍)」との記載がある(甲A1、A3)。 (イ) 被告扶桑薬品が製造販売する被告製剤(承認番号23000AMX00337)は、販売名「ナルフラフィン塩酸塩OD錠2.5㎍『フソー』」であり、添付文書及び医薬品インタビューフォームには、組成として、有効成分が1錠中「ナルフラフィン塩酸塩2.5㎍(ナルフラフィンと25して2.32㎍)」との記載がある(甲B1、B3)。 54ウ ナルフラフィン塩酸塩は、ヒトに投与されると体液に溶解して本件発明1の一般式(Ⅰ)で表される「オピオイドκ受容体作動性化合物」であるナルフラフィンと塩化物イオンに解離し、解離したナルフラフィンは、消化管上皮細胞膜を透過して全身循環に移行し、作用部位である中枢神経系に到達する。中枢神経系では、ナルフラフィンがオピオイドκ受容体に選5択的に結合して薬効を奏するが、ナルフラフィンの受容体への結合に、塩は直接関わっておらず、止痒作用を発揮する有効成分はナルフラフィンであり、酸付加塩は薬効の存否に影響を及ぼさないことは技術常識である(甲23 B 「鑑定意見書」令和2年2月7日付け1頁、甲24 C 「鑑定意見書」同日付1頁、甲140 A 「鑑定意見書」令和2年6月1107日付け5頁)。 エ いことは技術常識である(甲23 B 「鑑定意見書」令和2年2月7日付け1頁、甲24 C 「鑑定意見書」同日付1頁、甲140 A 「鑑定意見書」令和2年6月1107日付け5頁)。 エ そうすると、被告製剤は、生体内において溶出して吸収され、オピオイドκ受容体作動性という属性に基づき止痒作用を及ぼし薬効を奏するナルフラフィンが、その酸付加塩であるナルフラフィン塩酸塩の形態で配合された医薬品であると認められるから、被告製剤は、本件発明1の「一般式15(Ⅰ)で表されるオピオイドκ受容体作動性化合物を有効成分とする止痒剤」の構成要件を充足するものと認められる。 ⑷ 以上によれば、被告製剤は、本件延長登録出願に係る特許権の請求項1に係る本件発明1の技術的範囲に属するものと認めるのが相当である。また、争点2(均等論)については、判断を要しない。 202 争点4(本件延長登録等により存続期間が延長された本件特許権の効力は被告製剤の製造販売等に及ぶか)について⑴ 特許法68条の2によれば、本件延長登録等により延長された場合の本件特許権の効力は、本件延長登録等の理由となった本件処分等の対象となった物(その処分においてその物の使用される特定の用途が定められている場合25にあっては、当該用途に使用されるその物)(以下「対象物」という。)につ55いての本件発明の実施以外の行為には及ばない。前記のとおり、被告製剤は本件発明1の技術範囲に属し、その製造販売等は本件発明1の実施に該当するから、問題は、当該実施が対象物についての実施ということができるかどうかである。しかるところ、薬機法上、その処分の対象は原告製剤であるが、薬機法に基づく処分の対象は、医薬品の品質、有効性及び安全性の確保等と5いった薬機法の目的により定まるのに対し ができるかどうかである。しかるところ、薬機法上、その処分の対象は原告製剤であるが、薬機法に基づく処分の対象は、医薬品の品質、有効性及び安全性の確保等と5いった薬機法の目的により定まるのに対し、特許法68条の2の対象物の範囲は、延長登録の制度趣旨及び特許権者と第三者との衡平を考慮し、特許法の観点から合理的に解釈すべきものである。すなわち、存続期間が延長された特許権の効力を、薬機法に基づく処分で定められた「成分、分量、用法、用量、効能及び効果」によって特定された「物」についての実施のみに限定10したときは、少しでも成分等が異なれば特許権の効力が及ばなくなるから、存続期間延長により特許権者を保護しようとした法の趣旨にそぐわない結果となる。他方、薬機法に基づく処分の対象となった「物」とはおよそ異なる「物」についての実施にも特許権を及ぼすことは、同条の文理に明らかに反することになる。そこで、薬機法に基づく処分で特定された「物」から出発15し、特許発明の技術的意義及び政令処分の内容に照らし、これと医薬品として「実質同一」であると認められる範囲の物についての実施に限り、延長後の特許権の効力が及ぶと解するのが相当である。そうすると、本件における対象物には原告製剤と医薬品としての「成分、分量、用法、用量、効能及び効果」が特許法の観点から実質同一であると認められるものも含まれるとい20うべきである。 しかるところ、本件発明1が本件特許出願当時既に公知の物質であった「一般式(Ⅰ)で表されるκ受容体作動性化合物」を止痒剤としての作用効果を有する有効成分として用いた用途発明である点に発明としての技術的特徴があること、後記のとおり、本件処分等は、前記一般式(Ⅰ)で表されるκ受25容体作動性化合物のうちナルフラフィンを有効成分とする止痒剤 有効成分として用いた用途発明である点に発明としての技術的特徴があること、後記のとおり、本件処分等は、前記一般式(Ⅰ)で表されるκ受25容体作動性化合物のうちナルフラフィンを有効成分とする止痒剤である本件56発明1を実施し、前記補正の上引用した原判決の前提事実⑵エの本件処分及び同⑵ウの310号処分の各処分の内容に示される原告製剤であるレミッチOD錠2.5㎍の製造販売をするために必要な処分であったことを踏まえると、原告製剤と被告製剤がナルフラフィンを有効成分とする止痒剤という点でその技術的特徴及び作用効果が同一であり、かつ、医薬品としての具体的5な剤形を同一にする場合において、被告製剤が、有効成分ではない「成分」に関して、政令処分申請時における周知・慣用技術に基づき、一部において異なる成分を付加、転換等しているにすぎないと認められるときや、有効成分以外の被告製剤との「成分」等の差異が医薬品としての「効能及び効果」に影響を与えず、当該差異が僅かな差異又は全体的にみて形式的な差異にす10ぎないと認められるときは、医薬品としては、本件処分の対象となった原告製剤と実質同一なものに該当するというべきである(知財高裁平成28年(ネ)第10046号平成29年1月20日特別部判決参照)。 以上を前提に、政令処分等の対象となった原告製剤と被告製剤の実質的同一性について、検討する。 15⑵ 原告製剤と被告製剤の異同及びその程度についてア 本件延長登録等における政令処分等の対象となった原告製剤は、以下の①販売名、②成分・分量、③用法・用量のものであり、それぞれの政令処分により承認された効能・効果は、④⑤のとおりである(甲6、35、152、138、甲5、311、乙ロ16)。 20① 販売名 レミッチOD錠2.5μg② 量のものであり、それぞれの政令処分により承認された効能・効果は、④⑤のとおりである(甲6、35、152、138、甲5、311、乙ロ16)。 20① 販売名 レミッチOD錠2.5μg② 成分・分量a 1錠中の有効成分 ナルフラフィン塩酸塩2.5μg(ナルフラフィンとして2.32μg)b 添加剤 チオ硫酸ナトリウム水和物、D-マンニトール、クロスポ25ビドン、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルアルコール(部分け57ん化物)、乳糖水和物、マクロゴール400、酸化チタン、三二酸化鉄③ 用法・用量 通常、成人には、ナルフラフィン塩酸塩として1日1回2.5μgを夕食後又は就寝前に経口投与する。なお、症状に応じて増量することができるが、1日1回5㎍を限度とする。 5④ 効能・効果(本件延長登録)血液透析患者、慢性肝疾患患者におけるそう痒症の改善(既存治療で効果不十分な場合に限る)⑤ 効能・効果(延長登録(310号))透析患者(血液透析患者を除く)におけるそう痒症の改善(既存治療10で効果不十分な場合に限る)イ 被告製剤被告製剤は、次のとおりである。 (ア) 被告製剤(初回承認・製造販売)ナルフラフィン塩酸塩OD錠2.5㎍「サワイ」及び同「フソー」(甲15312、313、甲A1、3、甲B1、3)① 成分、分量a 1錠中の有効成分 ナルフラフィン塩酸塩2.5㎍(ナルフラフィンとして2.32㎍)b 添加剤 トレハロース水和物、低置換度ヒドロキシプロピルセル20ロース、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、L-ロイシン、アスパルテーム② 用法、用量通常、成人には、ナルフラフィン塩酸塩 物、低置換度ヒドロキシプロピルセル20ロース、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、L-ロイシン、アスパルテーム② 用法、用量通常、成人には、ナルフラフィン塩酸塩として1日1回2.5㎍を夕食後又は就寝前に経口投与する。なお、症状に応じて増量すること25ができるが、1日1回5㎍を限度とする。 58③ 効能、効果血液透析患者におけるそう痒症の改善(既存治療で効果不十分な場合に限る)(イ) 被告製剤(効能追加後、処方変更前)ナルフラフィン塩酸塩OD錠2.5㎍「サワイ」及び同「フソー」(甲5A7、甲B5)① 成分、分量a 1錠中の有効成分 ナルフラフィン塩酸塩2.5㎍(ナルフラフィンとして2.32㎍)b 添加剤 トレハロース水和物、低置換度ヒドロキシプロピルセル10ロース、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、L-ロイシン、アスパルテーム② 用法、用量通常、成人には、ナルフラフィン塩酸塩として1日1回2.5㎍を夕食後又は就寝前に経口投与する。なお、症状に応じて増量すること15ができるが、1日1回5㎍を限度とする。 ③ 効能、効果腹膜透析患者、慢性肝疾患患者におけるそう痒症の改善(既存治療で効果不十分な場合に限る)(ウ) 被告製剤(処方変更後)20ナルフラフィン塩酸塩OD錠2.5㎍「サワイ」及び同「フソー」(甲318、319、324、325、甲A8、甲B6)① 成分、分量a 1錠中の有効成分 ナルフラフィン塩酸塩2.5㎍(ナルフラフィンとして2.32㎍)25b 添加剤 低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロー59ス、ヒドロ a 1錠中の有効成分 ナルフラフィン塩酸塩2.5㎍(ナルフラフィンとして2.32㎍)25b 添加剤 低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロー59ス、ヒドロキシプロピルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、マクロゴール6000、酸化チタン、スクラロース、エリスリトール、三二酸化鉄、カルナウバロウ② 用法、用量5通常、成人には、ナルフラフィン塩酸塩として1日1回2.5㎍を夕食後又は就寝前に経口投与する。なお、症状に応じて増量することができるが、1日1回5㎍を限度とする。 ③ 効能、効果透析患者及び慢性肝疾患者におけるそう痒症の改善(既存治療で効10果不十分な場合に限る)ウ 以上によれば、原告製剤アと被告製剤イ(ア)~(ウ)は、対象疾患を血液透析患者とするア④とイ(ア)(ウ)、慢性肝疾患患者とするア④とイ(イ)(ウ)、腹膜透析患者とするア⑤とイ(イ)(ウ)が、それぞれ対応しており、前記「成分、分量、用法、用量、効能及び効果」のうち「成分」のみにおいて、有効成分を除15く添加剤の限度で異なるものといえる。 エ 原告製剤(レミッチOD錠2.5㎍)は、剤形追加申請(本件処分の医薬品製造販売承認申請)の際に、既承認医薬品であるレミッチカプセル2. 5㎍との生物学的同等性が確認されたことが、インタビューフォーム(甲6)に記載されている。また、被告製剤(ナルフラフィン塩酸塩OD錠2. 205㎍)は、初回承認(前記⑵イ(ア))においてレミッチカプセル2.5㎍との生物学的同等性が確認されており(甲A1、甲B1)、さらに、前記⑵イ(イ)と(ウ)においては、処方変更前のものとレミッチカプセル2.5㎍との生物学的同 イ(ア))においてレミッチカプセル2.5㎍との生物学的同等性が確認されており(甲A1、甲B1)、さらに、前記⑵イ(イ)と(ウ)においては、処方変更前のものとレミッチカプセル2.5㎍との生物学的同等性が確認されている(甲A7、8、甲B5、6)。 ⑶ 添加剤について25ア 文献によれば、添加剤は、第16改正日本薬局方(平成23年3月2460日厚生労働省告示第65号)の製剤総則では「添加剤は、製剤に含まれる有効成分以外の物質で、有効成分及び製剤の有用性を高める、製剤化を容易にする、品質の安定化を図る、又は使用性を向上させるなどの目的で用いられる。製剤には、必要に応じて、適切な添加剤を加えることができる。 ただし、用いる添加剤はその製剤の投与量において薬理作用を示さず、無5害でなければならない、また、添加剤は有効成分の治療効果を妨げるものであってはならない」などとされる(甲273)。また、前記のとおり、厚生省薬務局編「逐条解説 薬事法」ぎょうせい(昭和58年3版)365頁〔甲26〕においても、同法50条7号に関して「「有効成分」とは、医薬品の目的たる効能、効果を薬理的に生ぜしめる有効な成分を意味する。 10したがって、効能、効果と直接の関係のない賦形剤、安定剤、溶剤等の製剤補助剤は含まれない。」などと解説されており、添加剤が薬理作用を示さず、かつ、有効成分の治療効果を妨げるものではないことは技術常識である。 イ 医薬品の承認申請についての厚生労働省医薬食品局長通知(薬食発111521第2号平成26年11月21日。以下「本件局長通知」という。甲181)の「第2 承認申請書に添付すべき資料」には、添加剤に関して、「既承認医薬品等の添加物として使用前例のない添加物を配合する場合又は使用前例があっても投与経路が異なる若しくは 通知」という。甲181)の「第2 承認申請書に添付すべき資料」には、添加剤に関して、「既承認医薬品等の添加物として使用前例のない添加物を配合する場合又は使用前例があっても投与経路が異なる若しくは前例を上回る量を使用する場合には、当該添加物の品質、安全性等に関する資料を併せて提出する20ことを必要とする」旨の記載がある。なお、原告製剤及び被告製剤の承認審査の過程においては、このような前例のない添加物、投与経路、分量の使用に係る資料が添付された経過は認められない。 ウ 厚生労働省「ジェネリック医薬品への疑問に答えます~ジェネリック医薬品Q&A~」(甲273)には「ジェネリック医薬品と先発医薬品とは、25有効性や安全性について基本的に違いはありません。ジェネリック医薬品61は、先発医薬品と異なる添加剤を使用する場合が多くありますが、先発医薬品が上市後に添加剤を変更する場合と同様に、添加剤の違いによって有効性・安全性に違いが生じないことを確認しています。」「先発医薬品と異なる添加剤を使用する場合であっても、日本薬局方の製剤総則規定…により、薬理作用を発揮したり、有効成分の治療効果を妨げたりする物質を添5加剤として使用することはできません。使用前例のある、安全性が確認された添加剤のみが使用されています。」「添加剤の成分や配合量が先発医薬品と異なっていても、有効性や安全性に違いが出ることがないように、ジェネリック医薬品の承認審査においては、生物学的同等性試験…のデータの提出を求めて、主成分の血中濃度の挙動が先発医薬品と同等であること10を確認しています」「既に上市されている先発医薬品でも、承認を受けた当初の製剤と異なる添加剤への変更がなされる場合があります…こうした場合についても、生物学的同等性試験によって、当初の製剤( 10を確認しています」「既に上市されている先発医薬品でも、承認を受けた当初の製剤と異なる添加剤への変更がなされる場合があります…こうした場合についても、生物学的同等性試験によって、当初の製剤(標準となる先発医薬品)と添加剤を変更した後の先発医薬品とで有効性、安全性が変化していないことを、ジェネリック医薬品と同じ方法で確認をしています」15などの記載がある。 ⑷ 検討ア 本件発明1は、「一般式(Ⅰ)で表される化合物のκ受容体作動性」という未知の属性に基づき新たな止痒剤としての医薬用途を提供する医薬用途発明である点に発明としての技術的特徴があるものであって、止痒剤に20含有される添加剤については何ら特定していない。本件明細書においても、κ受容体作動薬を経口又は非経口的に投与するに際して担体や賦形剤などと混合した医薬組成物とすることや、経口剤でのκ受容体作動薬の含量の記載がある程度である(前記1⑵イ(エ))。 イ 他方、原告製剤と被告製剤は、いずれも、一般式(Ⅰ)で表されるκ受25容体作動性化合物であるナルフラフィンを有効成分とする止痒剤であり、62レミッチカプセル2.5㎍との生物学的同等性が確認された医薬品である。 両製剤は、いずれも、経口投与剤として、レミッチカプセル2.5㎍と有効性及び安全性において違いの生じないOD錠となるように開発され、また、被告製剤の用途は原告製剤の用途の開発に合わせたものと解されるものであり、その「有効成分、分量」及び「用法、用量、効能、効果」は同5じであり(前記⑵ウ)、両製剤は有効成分を除く添加剤の限度で成分を異にするものにすぎない。しかるところ、一般に、添加剤とは、前記技術常識のとおり、その製剤の投与量において薬理作用を示さず、無害であり、また、有効成分の治 両製剤は有効成分を除く添加剤の限度で成分を異にするものにすぎない。しかるところ、一般に、添加剤とは、前記技術常識のとおり、その製剤の投与量において薬理作用を示さず、無害であり、また、有効成分の治療効果を妨げないものとして加えられるものである。原告製剤に係る本件明細書等の前記記載や、被告製剤の開発経過に照らして10も、両製剤に使用されている各添加剤がこれと異なる技術的意義を持つものとは認められない。 ウ 原告製剤と被告製剤は、ナルフラフィンを有効成分とする前記用途の止痒剤という点でその技術的特徴及び作用効果が同一であり、かつ、医薬品としての具体的な剤形も同一である。原告製剤と被告製剤のこれらの共通15点や前記の添加剤の意義に照らすと、原告製剤と被告製剤の添加剤における差異は僅かな差異又は全体的にみて形式的な差異に当たり、被告製剤は、医薬品として本件処分等の対象となった原告製剤と実質同一なものに該当するというべきである。 エ したがって、本件延長登録等により存続期間が延長された本件特許権の20効力は被告製剤の製造販売等に及ぶものと認めるのが相当である。 ⑸ 被告らの主張について被告らは、被告製剤は、有効成分以外の成分について周知・慣用技術による転用ではなく、製剤中の有効成分の安定性等に着目して独自に開発した添加物群を適用しているなどと主張する。しかしながら、前記のとおり、被告25製剤は、原告製剤と同じく、レミッチカプセル2.5㎍と生物学的同等性を63有する医薬品として開発され、原告製剤と被告製剤とは、ナルフラフィンを止痒剤の有効成分として用いた経口投与剤であるOD錠という点で、医薬品としての技術的特徴、その作用効果及び剤形が同じである。他方、被告製剤における添加剤は、薬理作用を示さず、無害であ ルフラフィンを止痒剤の有効成分として用いた経口投与剤であるOD錠という点で、医薬品としての技術的特徴、その作用効果及び剤形が同じである。他方、被告製剤における添加剤は、薬理作用を示さず、無害であり、有効成分であるナルフラフィンの治療効果を妨げないものとして加えられている。被告らの主張は、5このような添加剤の一般的意義を否定するものではなく、むしろこれを前提とした上で、その選択に当たり、有効成分の安定性等の観点が含まれていたことを述べるに過ぎない。そうすると、被告製剤に、被告らにより独自に開発され、特許出願がされた添加物群が用いられていたとしても、それが薬理作用を有さず、ナルフラフィンの治療効果を妨げない添加剤であることに変10わりはないから、これにより原告製剤と被告製剤の医薬品としての特許法68条の2の観点からみた実質同一性が左右されるものと認めるに足りない。 よって、被告らの主張を採用することはできない。 3 争点5(本件延長登録等は、本件発明の実施のために、本件処分等(医薬品「レミッチOD 錠2.5㎍」に係る承認処分)を受けることが必要であったと15認められない場合であり無効にされるべきことから原告による本件特許権の行使は権利濫用か)について⑴ 被告らは、本件発明1の実施に「政令で定める処分を受けることが必要であった」とはいえず、無効であるから、本件延長登録等に基づく原告の権利行使は、権利濫用であるなどと主張する。 20⑵ 本件発明本件発明1は、酸付加塩の形態をとるか否かにかかわらず、一般式(Ⅰ)で表される化合物が、生体内において溶出して吸収され、そのオピオイドκ受容体作動性という属性に基づき「有効成分」としての薬理作用を発揮するような止痒剤の発明であり、酸付加塩の形態はその実施例の一つであるこ れる化合物が、生体内において溶出して吸収され、そのオピオイドκ受容体作動性という属性に基づき「有効成分」としての薬理作用を発揮するような止痒剤の発明であり、酸付加塩の形態はその実施例の一つであること、25ナルフラフィンが前記一般式(Ⅰ)で表される化合物に該当することは、前64記1⑵カ及び前記1⑶アのとおりである。 ⑶ 原告製剤ア 原告製剤は、前提事実⑵のとおり、本件処分等の対象となった医薬品であり、販売名を「レミッチOD錠2.5㎍」、有効成分を「ナルフラフィン塩酸塩」とするものである(甲35)。 5イ 原告製剤の医薬品製造販売承認書(甲35)の「成分及び分量又は本質」欄には、成分として「ナルフラフィン塩酸塩」が記載されている。また、「規格及び試験方法」欄では、溶出試験において、ナルフラフィンのピーク面積に基づいて、ナルフラフィン塩酸塩の溶出率が算定されている。 ウ 原告製剤の添付文書(甲5)の「組成・性状」の項には、組成として、10有効成分が1錠中「ナルフラフィン塩酸塩2.5㎍(ナルフラフィンとして2.32㎍)」との記載がある。 エ 前記1⑶ウの技術常識(止痒作用を発揮する有効成分はナルフラフィンであり、酸付加塩は薬効の存否に影響を及ぼさないこと)を踏まえると、原告製剤は、生体内において溶出して吸収され、オピオイドκ受容体作動15性という属性に基づき止痒作用を及ぼし薬効を奏するナルフラフィンが、その酸付加塩であるナルフラフィン塩酸塩の形態で配合された医薬品であると認められるから、原告製剤は、本件発明1の「一般式(Ⅰ)で表されるオピオイドκ受容体作動性化合物を有効成分とする止痒剤」の発明特定事項を備えるものと認められる。 20⑷ 以上によれば、原告製剤は、延長登録出願に係る特許権の請求項1に係る 式(Ⅰ)で表されるオピオイドκ受容体作動性化合物を有効成分とする止痒剤」の発明特定事項を備えるものと認められる。 20⑷ 以上によれば、原告製剤は、延長登録出願に係る特許権の請求項1に係る本件発明1の技術的範囲に属するものと認めるのが相当であり、かつ、原告製剤の製造販売等という具体的な実施行為を行うためには、薬機法の定めるところに従い、本件処分等を受ける必要があったことが認められるから、旧特許法67条2項(現4項)の延長登録の要件が満たされていたというべき25である。そうすると、本件延長登録等は、本件発明1の実施について原告製65剤の製造販売承認(本件処分等)を受けることが必要であったとは認められない場合の出願に対してされたもの(旧特許法125条の2第1項1号)ということはできない。よって、この点に関する被告らの主張を採用することはできない。 4 争点6(本件延長登録等は、延長期間が本件発明の実施をすることができな5かった期間を超えており無効にされるべきものか)について⑴ 被告らは、本件延長登録等について、特許発明の実施をすることができなかった期間は、生物学的同等性試験の臨床試験の期間と審査期間を加えた期間の1年11月26日になるから、延長期間はこれを超えているなどと主張する。 10⑵ 特許権の存続期間の延長制度は、旧特許法67条2項の政令で定める処分を受けるために特許発明を実施することができなかった期間を回復することを目的とし、特許権の存続期間の延長登録出願は、その延長を求める期間がその特許発明の実施をすることができなかった期間を超えているときは拒絶査定がされ、延長登録により延長された期間については無効理由となる(同15法67条の3(現67条の7)第1項3号、125条の2第1項3号参照)。 したがっ ができなかった期間を超えているときは拒絶査定がされ、延長登録により延長された期間については無効理由となる(同15法67条の3(現67条の7)第1項3号、125条の2第1項3号参照)。 したがって、特許権の存続期間の延長が認められるためには、延長登録出願において延長登録を求める期間(延長登録により延長された期間)が、前記政令で定める処分を受けるために特許発明を実施することができなかった期間を超えないことを要するものと解される。 20しかるところ、薬機法所定の製造販売の承認を受けることが必要である医薬品の場合、申請者は、厚生労働省令で定めるところにより、申請書に所定の資料を添付して申請しなければならないとされている(同法14条3項参照)。なお、具体的には、本件局長通知(甲181)のほか、薬食審査発1121第12号厚生労働省医薬食品局審査管理課長通知〔甲274。以下「本25件課長通知」という。〕。その他薬機法施行規則40条2項ただし書参照)。 66そして、「特許発明の実施をすることができなかった期間」は、承認を受けるのに必要な試験を開始した日又は特許権の設定登録の日のうちのいずれか遅い方の日から、承認が申請者に到達することにより処分の効力が発生した日の前日までの期間であると解される(最高裁平成10年(行ヒ)第43号平成11年10月22日第二小法廷判決・民集53巻7号1270頁)。 5⑶ 本件処分に係る医薬品の承認申請時の提出資料等ア 本件処分に係る医薬品(レミッチOD錠2.5㎍)の承認申請は、「申請書等行政情報及び添付文書に関する情報」(甲275)によれば、「剤形追加に係る医薬品(再審査期間中のもの)」の申請区分でされている。 本件局長通知によれば、承認申請にあたっては、その時点における医学10薬学等の 付文書に関する情報」(甲275)によれば、「剤形追加に係る医薬品(再審査期間中のもの)」の申請区分でされている。 本件局長通知によれば、承認申請にあたっては、その時点における医学10薬学等の学問水準に基づき、倫理性、化学性及び信頼性の確保された資料により、申請の医薬品の品質、有効性及び安全性を立証するための十分な根拠が示される必要があり、このことは、剤形追加に係る医薬品の承認申請にも妥当する。そして、本件局長通知によれば、「⑻ 剤形追加に係る医薬品」とは、既承認医薬品等と有効成分、投与経路、効能・効果及び用法・15用量は同一であるが、剤形又は含量が異なる医薬品を意味し、承認申請書に添付すべき資料としては、「ホ 吸収、分布、代謝、排泄に関する資料」のうちの「5 生物学的同等性」資料や、「チ 法第五十二条第一項に規定する添付文書等記載事項に関する資料」等の提出が求められる一方、「ト臨床成績の成績に関する資料」等の提出は求められていない。他方、本件20課長通知の「7 申請資料の編集方法等」によれば、既承認医薬品等の効能追加、用法・用量の変更等に係る申請の場合には、承認時の資料(承認書の写し、承認時の審査報告書、資料概要、添付資料一覧表等)を添付することとされている(その他、再審査期間中の新医薬品その有効成分、分量、 用法、用量、効能及び効果が同一性を有すると認められる医薬品に関25する薬機法施行規則40条2項ただし書参照)。 67イ 実際に、本件処分に係る医薬品の承認申請時に提出された資料等については、「申請書等行政情報及び添付文書に関する情報」(甲275)に開示されているところ、これによれば、医薬品の承認申請時には、「【m1-08】添付文書(案)」が提出されるとともに、「【m1-13】その他」資料である「【m1 び添付文書に関する情報」(甲275)に開示されているところ、これによれば、医薬品の承認申請時には、「【m1-08】添付文書(案)」が提出されるとともに、「【m1-13】その他」資料である「【m1-13-01】既承認医薬品に係る資料」として、既承認医5薬品「レミッチカプセル2.5㎍(初回承認:平成21年1月21日付承認)」及び「ノピコールカプセル2.5㎍」に係る「医薬品製造販売承認書(写)」(初回申請)や「医薬品製造販売承認事項一部変更承認書(写)」(効能追加申請)、「審査報告書」(甲276、277)、「資料概要」、「添付資料一覧」、「添付資料一覧」、「申請添付資料」等が提出されたことが認められ10る。 このうち、【m1-08】添付文書(案)(甲280)には、OD錠と軟カプセル剤の生物学的同等性試験の成績とともに、カプセル剤で実施された血液透析患者や慢性肝疾患患者等での臨床試験の成績の概要が、【薬物動態】及び【臨床成績】の項に示されている。また、【02】審査報告書(甲15276)や【11】審査報告書(甲277)には、原告の行った臨床試験の概要や成績が記載されている。 ウ 証拠(甲276、277、282から302の2まで)及び弁論の全趣旨によれば、原告は、OD錠及び軟カプセル剤を包含する経口剤の開発のため、20(ア) まず、軟カプセル剤を用いて健康成人を対象とした臨床試験(経口単回投与試験:C82001試験)を行い、(イ) 以後、次の各試験を行った。 〇健康成人を対象とした臨床試験(経口反復投与試験:820P1C01試験、食事の影響試験:820P1C02試験)、25〇血液透析患者を対象とした臨床試験(臨床薬理試験:820UPC0681試験、第Ⅱ相試験:820UPC02試験、用量探索試験:820 01試験、食事の影響試験:820P1C02試験)、25〇血液透析患者を対象とした臨床試験(臨床薬理試験:820UPC0681試験、第Ⅱ相試験:820UPC02試験、用量探索試験:820UPC03試験、検証的試験:820UPC04試験、長期投与試験:820UPC05試験、臨床薬理試験:820UPC06試験)、〇代償性肝硬変患者を対象とした試験(臨床薬理試験:820CPC01試験)、5〇慢性肝疾患患者を対象とした臨床試験(第Ⅱ相試験:820HPC01試験、臨床薬理試験:820HPC02試験、検証的試験:820HPC03試験、長期投与試験:820HPC04試験)(ウ) そして、これらの試験により、ナルフラフィン塩酸塩の軟カプセル剤の安全性、血液透析患者におけるそう痒症に対する有効性、慢性肝疾患10患者におけるそう痒症に対する有効性が確認されたこと、その上で、健康成人を対象としたナルフラフィン塩酸塩の口腔内崩壊錠と軟カプセル剤との生物学的同等性を確認するための生物学的同等性試験(820BED01試験)が行われたことが認められる。 エ すなわち、本件処分に係る医薬品(レミッチOD錠2.5㎍)の承認申15請においては、「剤形追加に係る医薬品」の承認申請時に提出を求められる「生物学的同等性」資料だけでなく、既承認医薬品につき実施されたこれらの試験に関する記載のある添付文書(案)や、既承認医薬品(レミッチカプセル2.5㎍等)に関する審査報告書等の資料が提出されたことで、原告の行った前記ウの各臨床試験が、本件処分に係る医薬品の有効性及び20安全性を検証及び確認するために必要な資料として各審査時点で評価試料として審査に用いられ、その結果、前記医薬品(原告製剤)について「次の患者におけるそう痒症の改善(既存治 医薬品の有効性及び20安全性を検証及び確認するために必要な資料として各審査時点で評価試料として審査に用いられ、その結果、前記医薬品(原告製剤)について「次の患者におけるそう痒症の改善(既存治療で効果不十分な場合に限る)血液透析患者、慢性肝疾患患者」との用途で承認されたことが推認され、これを覆すに足りる証拠はない。 25⑷ 延長登録を認めるべき期間について69ア 「特許発明の実施をすることができなかった期間」は、承認を受けるのに必要な試験を開始した日又は特許権の設定登録の日のうちのいずれか遅い方の日から、承認が申請者に到達することにより処分の効力が発生した日の前日までの期間である(前掲最判平成11年10月22日)。 イ 本件処分において、承認を受けるのに必要な試験は、前記⑶エの経緯を5考え合わせると、前記⑶ウの各試験であり、よって、「承認を受けるのに必要な試験を開始した日」は、C82001試験の治験計画変更届出日の、平成10年3月17日である(甲292、293)。 ウ その後、前記各試験が行われてきたところ、本件特許権設定登録日は平成16年3月12日であるので、本件特許権の設定登録日以降の前記各試10験の試験期間を考慮すると、本件延長登録を認めることが可能な期間は、以下の①から⑤までの各期間の合計となる(甲276、277、282から302の2まで。なお、前記⑶ウの各試験のうち、以下の①から⑤までに言及されていない試験は、本件特許権の設定登録日前に終了している試験又は以下の各期間内にその一部又は全部が包含されており、始期や終期15を区切る指標としなかったものである。 ①本件特許権の設定登録日から820CPC01試験の終了届出日まで(10月13日)。 ②820UPC04試験の治験計画届出日から8 ており、始期や終期15を区切る指標としなかったものである。 ①本件特許権の設定登録日から820CPC01試験の終了届出日まで(10月13日)。 ②820UPC04試験の治験計画届出日から820UPC05試験の治験終了届出日まで(2年8月22日)。 20③820HPC01試験の治験計画届出日から治験終了届出日まで(2年3月10日)。 ④820HPC04試験の治験計画届出日から治験終了届出日まで(3年4月19日)。 ⑤820BED01試験の治験依頼日から前記医薬品製造販売承認日の25前日まで(1年11月26日)70エ そうすると、本件延長登録によって延長された期間(4年11月26日)は、前記ウの各期間を合計した期間を超えるものではないから、当該延長された期間は、前記政令で定める処分を受けるために特許発明を実施することができなかった期間(前記①から⑤までの期間の合計)を超えるものということはできない。 5⑸ また、延長登録(310号)においても、政令処分の対象となった医薬品(レミッチOD錠2.5μg)の承認申請((4)新効能医薬品の申請区分)の際、提出が求められた「臨床試験の試験成績に関する資料」等に加え、既承認医薬品に係る臨床試験成績及びその確認結果に係る資料として前記(3)と同様の資料が提出され、審査報告書〔甲229〕において示された従前の試10験を含む各試験が存在した結果、310号処分に係る医薬品の有効性及び安全性が確認され、前記医薬品について「変更前」「次の患者におけるそう痒症の改善(既存治療で効果不十分な場合に限る)血液透析患者、慢性肝疾患患者」から、「次の患者におけるそう痒症の改善(既存治療で効果不十分な場合に限る)透析患者、慢性肝疾患患者」に変更することが承認されたことが推15認され 分な場合に限る)血液透析患者、慢性肝疾患患者」から、「次の患者におけるそう痒症の改善(既存治療で効果不十分な場合に限る)透析患者、慢性肝疾患患者」に変更することが承認されたことが推15認され、これを覆すに足りる証拠はない。そして、当該承認を受けるのに必要な試験は、前記(3)と同様に、腹膜透析患者に関する臨床試験820UPC07試験及び820UPC08試験も含み、本件特許権の設定登録日以降の前記各試験の試験期間を考慮すると、延長登録(310号)によって延長された期間(5年)は、前記政令で定める処分を受けるために特許発明を実施20することができなかった期間を超えるものということはできない(甲303~311)。 ⑹ 被告らの主張についてア 被告らは、承認申請が剤形追加の場合には、生物学的同等性試験結果を提出し、これにより有効性及び安全性が確認されており、また、参考資料25として先行処分(本件では軟カプセル剤)の臨床試験結果を提出すること71があっても、改めて審査されるわけではないから、先行処分の試験期間を「前記政令で定める処分を受けるために特許発明を実施することができなかった期間」に算入することはできず、これを算入すべき特段の事情も存在しないなどと主張する。 しかしながら、前記のとおり、本件では、「剤形追加に係る医薬品」の承5認申請時に提出を求められる「生物学的同等性」資料だけでなく、既承認医薬品につき実施された試験に関する記載のある添付文書(案)や、既承認医薬品(レミッチカプセル2.5㎍等)に関する審査報告書等の資料が提出されたことで、前記各臨床試験が、原告製剤の有効性及び安全性を検証し、確認するために必要な評価試料として、各審査で用いられ、その結10果、本件処分がされたことが推認される。 報告書等の資料が提出されたことで、前記各臨床試験が、原告製剤の有効性及び安全性を検証し、確認するために必要な評価試料として、各審査で用いられ、その結10果、本件処分がされたことが推認される。これらのレミッチカプセルに関する試験等は、本来、当初からカプセル剤ではなく、OD錠の承認を求める場合には、当然に必要とされていたはずのものであるから、本件において、これらの先行処分に係る既承認医薬品の試験期間を算入することが不合理であるということはできない。よって、被告らの主張を採用すること15はできない。 イ 被告らは、OD錠の承認に伴う本件延長登録等に軟カプセル剤の臨床試験期間を再度算定することは、実質的に二重に臨床試験期間を回復することになり制度趣旨に反するなどと主張する。しかしながら、医薬品における「前記政令で定める処分を受けるために特許発明を実施することができ20なかった期間」は、薬機法に基づく当該医薬品の承認手続の内容、承認による禁止解除の範囲についての解釈を踏まえ、特許法の観点から個別に判断されるものである。本件においては、OD錠である原告製剤を製造販売等するためには、本件処分等により禁止解除を得る必要があったところ、前記⑶ウに示された各試験が「承認を受けるのに必要な試験」であったと25認められることは、前記⑷イのとおりである。また、現に軟カプセル剤に72関する試験結果や効能・効果の内容等については、OD錠に関する本件処分等の承認申請手続においても資料が提出されて審査対象とされたことが認められる。加えて、軟カプセル剤の承認による禁止解除の範囲は当該軟カプセル剤の剤形に限定され、直ちにはOD錠には及ばないのであり、原告において、同じ有効成分・分量、用法・用量及び効能・効果であっても、5軟カプセル剤の承認を の承認による禁止解除の範囲は当該軟カプセル剤の剤形に限定され、直ちにはOD錠には及ばないのであり、原告において、同じ有効成分・分量、用法・用量及び効能・効果であっても、5軟カプセル剤の承認を受けただけで、本件処分等を受けることなくOD錠の剤形で本件特許を実施することができるわけではない。これらの点を考慮すると、被告らの主張を採用することはできない。 ⑺ 以上によれば、本件延長登録等によって延長された期間が、前記政令で定める処分を受けるために特許発明を実施することができなかった期間を超え10るものと認めることはできない(旧特許法125条の2第1項3号)。よって、この点に関する被告らの主張を採用することはできない。 4 争点7(先使用権の存否)について被告らは、被告沢井製薬においては、原告の本件延長登録出願前にOD錠の独自開発を行って特許出願等を行い、臨床試験等も行い後発医薬品の製造販売15承認申請をして承認後に被告製剤を上市しているから、特許法79条を類推適用して先使用権を認めるべきであるなどと主張する。 しかしながら、特許法79条は特許出願に係る発明の内容を知らないで同じ発明をした者等が現にその発明を実施する事業又はその準備をしていた場合に、通常実施権を与えることにより保護する規定である。被告沢井製薬が上市20した被告製剤については、既に公開されている本件特許に基づき、その実施品として製造販売する事業の準備等がされていたのであり、被告沢井製薬は、仮に本件延長登録出願を知らなかったとしても、本件特許の存在及びその内容は公開されていたから、被告沢井製薬において、これを知り、又は容易に知り得たはずである。このような場合にまで通常実施権を認めることは、特許の存続25期間の延長制度により特許を実施するこ その内容は公開されていたから、被告沢井製薬において、これを知り、又は容易に知り得たはずである。このような場合にまで通常実施権を認めることは、特許の存続25期間の延長制度により特許を実施することができない事情があった特許権者73の保護を図る趣旨を損なうことになり、むしろ当事者間の公平に反する結果となる。したがって、本件においては同条を類推適用する前提がないというべきであるから、被告らの主張を採用することはできない。 第6 損害論についての判断1 争点8(鳥居薬品の損害賠償請求権の成否)について5⑴ 原告は、本件特許権の独占的通常実施権者である鳥居薬品について被告らに対する独自の損害賠償請求権が成立し、原告は鳥居薬品からその債権譲渡を受けたと主張する。 特許権者の許諾により設定される通常実施権は、特許権者との債権的な関係にすぎず、法律上、通常実施権者は、特許権者や専用実施権者のように特10許発明を実施する権利を専有しているわけではない。しかし、民法709条の不法行為は、「法律上保護される利益」が侵害された場合に成立するのであり、被侵害利益が法律上排他性のある権利であることまでは要求されていない。本件においても、具体的事実関係に照らし、原告製剤の販売に関する鳥居薬品の利益が、その侵害者に対する関係で、不法行為法の観点から、法律15上保護される利益であると認められるときは、鳥居薬品には、当該利益を違法に侵害されたことを理由とする固有の損害賠償請求権が認められるというべきである。 ⑵ 前提事実に加え、掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 20ア 原告とJT及びその子会社である鳥居薬品は、平成17年3月16日付けで「TRK-820ライセンス基本契約」(甲329、 記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。 20ア 原告とJT及びその子会社である鳥居薬品は、平成17年3月16日付けで「TRK-820ライセンス基本契約」(甲329、361)を締結した。●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●25●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●74●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●5●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●鳥居薬品は、平成18年9月29日、商標「レミッチ REMITCH」の設定登録(商標登録第4992409号)を受けた(甲333)。●●●10●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●原告とJT及び鳥居薬品は、その後、平成25年3月19日付けで「T15RK-820腹膜透析効能追加および口腔内崩壊錠剤形追加に関する覚書」(甲331、362)を ●●●●●●●●●●原告とJT及び鳥居薬品は、その後、平成25年3月19日付けで「T15RK-820腹膜透析効能追加および口腔内崩壊錠剤形追加に関する覚書」(甲331、362)を締結した。鳥居薬品は、原告から効能追加及び剤形追加等に関する権利等を許諾され(2条、3条)、原告に対し、許諾の対価として、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●20●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●各金員を支払うことを約した●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●イ ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●25●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●75●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●5●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●10●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●10●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●15●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●20ウ ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●25●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●76●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●エ ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●5●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●5●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●10●●●●原告は、透析用途及び肝用途の原告製剤について、他社に通常実施権の付与等はしていない。 オ なお、原告は、TRK820のアトピー性皮膚炎患者の掻痒症の適用については、平成17年3月にマルホ株式会社との間で共同開発及び販売権について契約を締結している(乙ハ7)。また、原告は、肝用途の軟カプセ15ル製剤「ノピコール」については、東レ・メディカルに共同開発及び販売権について許諾しており、東レ・メディカルはオーファンパシフィック・インクと販売提携している(乙ハ8、9)。 ⑶ 以上の認定事実によれば、原告はJTグループとの間で、原告の有する本件特許権に係る化合物(TRK820)を医薬品として共同事業化すること20とし、具体的には、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●25●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●77●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●が認められる。原告は、原告製剤(透析 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●77●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●が認められる。原告は、原告製剤(透析用途及び肝用途)について、鳥居薬品●●●●●●●●以外に通常実施権の付与等はしておらず、結局のところ、原告が製造した原告製剤は、すべて鳥居薬品を通じて販売されていた。そうすると、本件特許権の存続期間中、少なくとも5原告製剤(透析用途)については、鳥居薬品は原告の共同事業者として独占的通常実施権を付与される一方、特許権者である原告はその製造担当者として鳥居薬品に原告製剤を製造し、供給する関係にあったのであり、原告製剤(肝用途)についても、鳥居薬品は●●●●●●●●●●●●●独占的通常実施権を取得した上、同様に、特許権者である原告が製造した原告製剤の独10占的な供給を受け、販売してきたものと認められる。このような事実関係のもとでは、鳥居薬品の独占的通常実施権の性質が債権であったとしても、それは特許権者である原告自身の医薬品事業を展開するための手段であり、鳥居薬品は原告と共同事業又はこれに類する関係にあったのであるから、鳥居薬品による原告製剤の独占的販売は、実質的には原告の事業の一形態であっ15たと評価することができる。これらの点を踏まえると、本件特許権を侵害して被告製剤を製造販売していた被告らとの関係では、鳥居薬品による原告製剤の独占的販売の利益は、原告の特許権に基づく独占的販売の利益と同様、不法行為法上、法的に保護される利益になると解するのが相当である。 ⑷ そして、鳥居薬品が先発医薬品である原告製剤の販売者であることは公に20されており、鳥居薬品以外の販売者は市場に存在しなかったのであるから、後発医薬品である被告製剤を製造 のが相当である。 ⑷ そして、鳥居薬品が先発医薬品である原告製剤の販売者であることは公に20されており、鳥居薬品以外の販売者は市場に存在しなかったのであるから、後発医薬品である被告製剤を製造販売する被告らにおいては、少なくとも鳥居薬品の法的に保護された利益を侵害することについて過失があったことが推認されるというべきであり、被告らが主張する事情は、当該推認を覆すに足りず、他にこれを覆すに足りる事情が存在することを認めるに足りる証拠25はない。したがって、鳥居薬品には、被告らに対する固有の損害賠償請求権78が成立するものと認められる。 ⑸ 被告らの主張についてア 被告らは、独占的通常実施権者に固有の損害賠償請求権が成立するのは、代表者型、親子会社関係型のように実質的・経済的一体性にある場合以外は、例外的な場合となるなどと主張するが、具体的事実関係に照らし、不5法行為法の観点から鳥居薬品に法律上保護される利益があると認められる限り、被告らが主張するような「実質的・経済的一体性」がある場合に限るべき理由はないし、前記のとおり、少なくとも、原告製剤に関する限り、原告と鳥居薬品とは共同事業又はこれに類する関係にあったものである。 したがって、同主張は採用することはできない。 10イ 被告らは、鳥居薬品は、完全独占的通常実施権ではなく、また、鳥居薬品以外の複数主体(●●●●●●●マルホ株式会社、JT、東レ・メディカル)にも実施許諾されているから、固有の損害賠償請求権は成立しないなどと主張する。しかしながら、前記のとおり、原告製剤(透析用途)について、原告とJTグループとの間で、具体的に、独占的通常実施権(販15売権)を付与されたのはJTグループの鳥居薬品であって、JTではない。 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●● (透析用途)について、原告とJTグループとの間で、具体的に、独占的通常実施権(販15売権)を付与されたのはJTグループの鳥居薬品であって、JTではない。 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●したがって、原告製剤の販売について最終的に実施許諾を得たのは鳥居薬品以外にはなく、JT●●●●●●●●の各関与によって、鳥居薬品の独占20的通常実施権(販売権)の有無及びその実施の実態が左右されることはないから、原告らの主張は、その前提を欠くものである。さらに、原告は、マルホ株式会社には皮膚疾患を適用とする実施許諾を行い、東レ・メディカルには軟カプセル剤について実施許諾をしているが、これらは、いずれも原告製剤とは異なる医薬品であるから、これにより、原告製剤に係る鳥25居薬品の独占的通常実施権(販売権)の有無及びその実施の実態が左右さ79れることはない。よって、被告らの主張を採用することはできない。 ウ 被告らは、特許権者が実施品をライセンシーに販売すれば消尽により以後は特許権の行使をすることができないなどと主張する。しかし、消尽は、特許権者の製造等に係る特許製品が譲渡等された場合において、特許権者が特許権を行使し得るか否かを画するための法理である。本件では、原告5が鳥居薬品に供給した原告製剤の譲渡等を受けた者に対し原告が特許権を行使し得るかどうかが問題になっているわけではない。本件で問題となるのは、被告らが新たに製造し、販売した医薬品(被告製剤)が本件特許を侵害する製品である場合(この場合に消尽の法理の適用はなく、原告が特許権を行使することができるのは明らかである。)において、原告から独占10的通常実施権を受け、原告製剤を独占的 剤)が本件特許を侵害する製品である場合(この場合に消尽の法理の適用はなく、原告が特許権を行使することができるのは明らかである。)において、原告から独占10的通常実施権を受け、原告製剤を独占的に販売していた鳥居薬品も、被告らに対し不法行為に基づく損害賠償請求をすることができるかどうかである。そして、この点について、鳥居薬品に不法行為法上、法的に保護される利益の侵害が認められ、固有の損害賠償請求権が認められるべきことは前記のとおりである。よって、被告らの主張を採用することはできない。 15エ 被告らは、鳥居薬品の通常実施権は登録・公示されていないから、鳥居薬品との関係では不法行為法上の過失は否定されるべきである旨主張するが、前記⑷で述べた理由により、採用することはできない。 ⑹ 以上によれば、原告製剤(透析用途及び肝用途)について本件特許権の独占的通常実施権(販売権)を有する鳥居薬品には、被告らに対する固有の損20害賠償請求権が成立するものと認められる。 そして、原告は、鳥居薬品から当該損害賠償請求権を譲り受けたのであるから、原告においては、被告らの特許権侵害行為により受けた原告の損害と鳥居薬品の損害とを併せて請求することとなるが、実質的にみれば、原告と鳥居薬品の各損害は、本件特許を利用した医薬品の製造販売を行う共同事業25体の損害であって、損害額の立証が困難であることは特許権者の受けた損害80と同様であるから、鳥居薬品の受けた損害部分についても特許法102条1項を類推適用し算定することができるものと解される。 2 争点9(単位数量当たりの利益の額)について⑴ 原告は、特許法102条1項に基づき、被告らの特許権侵害行為により被った原告と鳥居薬品の各損害を請求する。原告は、原薬(TRK820)を5製造し 争点9(単位数量当たりの利益の額)について⑴ 原告は、特許法102条1項に基づき、被告らの特許権侵害行為により被った原告と鳥居薬品の各損害を請求する。原告は、原薬(TRK820)を5製造し製剤化(原告製剤)して鳥居薬品に提供し、鳥居薬品は特約店に原告製剤を販売しているところ、原告の鳥居薬品に対する売上額は、原告の限界利益の算定上、利益として考慮されるが、当該売上額は、鳥居薬品の限界利益算定においては、変動費として鳥居薬品による売上額から控除される関係にあるから、同じ原告製剤について同じ利益が二重に計上されることはない。 10したがって、原告製剤の譲渡数量に、原告と鳥居薬品のそれぞれの「単位数量当たりの利益の額」を算定し加算しても二重請求にはならないというべきである。 そして、前提事実⑺のとおり、原告は、原告及び鳥居薬品における各「単位数量当たりの利益の額」の算定過程を提示するところ、当該算定過程及び15算定結果に特段不合理な点は認められない。よって、原告製剤の「単位数量当たりの利益の額」は、別紙8のとおり、原告における「単位数量当たりの利益の額」と鳥居薬品における「単位数量当たりの利益の額」を合算した額となる。 ⑵ 被告らの主張について20ア 被告らは、原告は、原告製剤を製造するにとどまるから、原告の損害は、実施料相当額の範囲となり、特許権者である原告の損害賠償請求と独占的通常実施権者である鳥居薬品の損害賠償請求とを二重に加算することはできないなどと主張する。 しかしながら、前記したところによれば、原告は、鳥居薬品に対し独占25的に供給する原告製剤の売上により利益を得ている。当該売上は、鳥居薬81品による原告製剤の販売量と連動しており、当該販売量は、通常、被告製剤の製造販売により影響を受けること 品に対し独占25的に供給する原告製剤の売上により利益を得ている。当該売上は、鳥居薬81品による原告製剤の販売量と連動しており、当該販売量は、通常、被告製剤の製造販売により影響を受けることになることが推認される(これを覆すに足りる証拠はない。)。すなわち、被告らの侵害行為により、原告に販売量減少による逸失利益が発生するという関係が認められる限り、相当因果関係のある原告の損害が実施料相当額の範囲に限定されるということ5はできない。また、前記したところによれば、原告と鳥居薬品の損害賠償請求を加算したとしても、同じ利益を二重に請求することにはならない。 よって、被告らの主張を採用することはできない。 イ 被告らは、原告における「単位数量当たりの利益の額」の算定に当たり、原薬(TRK820)の製造に固有の直接経費(電気料、水道料、人件費10等)を計上すべきなどと主張する。 しかしながら、原告による原告製剤の原薬(TRK820)の製造の実情について、TRK820は、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●15●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●TRK820の製造のための電気料・蒸気料が増加するものではないこと(甲369)が認められるから、そもそも被告らが主張する経費は、限界利益を算出する場合に利益から控20除すべき変動費であるとは認められない。また、仮に、製造のための電気料・蒸気料を推計しても、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● 益を算出する場合に利益から控20除すべき変動費であるとは認められない。また、仮に、製造のための電気料・蒸気料を推計しても、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●1ロットのTRK820を製造するのに必要とする電気費用の推計値は、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●25●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●82●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●がそれぞれ認められる。そして、TRK820を1g製造するのに要する●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●と算定され、原告5製剤1錠当たりのTRK820の投入量が●●●●●●●●●●●●●●●●●であること等からすれば、原告製剤1錠当たりのTRK820の製造のための電気料・蒸気料は極少額である。これらの点を考慮すると、原告が原薬(TRK820)の製造に係る変動費として、これらの経費(電気料、水道料、人件費等)を計上していないとしても、特段不相当という10ことはできず、被告らの主張を採用することはできない。 ウ 被告らは、原告、鳥居薬品●●●●●●●●●●ライセンス契約等における対価(一時金)を計上すべきと主張する。 しかしながら、前記1⑵の認定事実によれば、原告と鳥居薬品●●●●●●●●●●●●●●●ライセンス契約においては、●●●●●●●●●15●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●などに対価としての所定の一時金が支払われることとされ支払済みとなっている ●●●●●ライセンス契約においては、●●●●●●●●●15●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●などに対価としての所定の一時金が支払われることとされ支払済みとなっているが、これらは、原告製剤の製造販売数量に連動するものとはいえない(支払済みの一時金を平準化し計上すべきものとする根拠も見当たらない。)。また、原告と鳥居薬品●●●●●●●●●●●●●ライセンス契約20等では、所定の売上が達成された場合等に支払われるべき対価についても定められているが、いずも条件が満たされ現実に支払われたことを認めるに足りる証拠はない。●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●(弁論の25全趣旨によれば、肝用途の原告製剤に係る鳥居薬品の限界利益額は、関連83する変動費を含む費用全額を売上から控除した金額(レミッチ肝手数料)に基づいており、当該関連する変動費中には、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●が含まれていることが認められる。)。なお、被告らは、原告が支払うべき高田製薬の特許の実施許諾料等の対価を計上すべきとも主張するが、原告は、高田5製薬に対し、特許第5337430号に関する実施許諾料その他の名目のいかんを問わず金銭を支払っていないことが認められる(甲449)。そうすると、本件において、原告製剤の「単位数量当たりの利益の額」の算定において考慮すべき許諾の対価としての一時金を認めることはできず、被告らの主張を採用することはできない。 103 争点10(販売することができないとする事情の有無及び当該事情に相当する数量等)について 許諾の対価としての一時金を認めることはできず、被告らの主張を採用することはできない。 103 争点10(販売することができないとする事情の有無及び当該事情に相当する数量等)について⑴ 前提事実⑻のとおり、平成30年6月15日から令和4年10月までにおいて、被告沢井製薬による被告製剤の販売数量総数が、別表1の「原告の主張」の「透析用途」「肝用途」の各「販売数量」欄記載の数量の合計数量であ15ること、また、被告扶桑薬品による被告製剤の販売数量総数が、別表2の「原告の主張」の「透析用途」「肝用途」の各「販売数量」欄記載の数量の合計数量であることについては、当事者間に争いがない。 原告は、被告製剤の透析用途及び肝用途の用途割合について、保険データベース(DeSCデータ)を分析した専門家の鑑定意見(甲372、37320〔D「鑑定意見書」令和5年6月2日付け〕)に基づいて推計しているところ、被告らは、原告が当初主張していた原告製剤の用途割合により算定することを認めたから自白が成立しており、また、販売数量のごく一部にすぎないDeSCデータの数値のみを基に用途割合を推計することは経験則に反するなどと主張する。 25しかしながら、販売された被告製剤の用途割合(透析用途、肝用途)を直84接立証する証拠がない場合において、原告が当初主張した用途割合の推計方法について被告らが争わないと述べたとしても、損害の算定方法の一部について同意したにすぎず、主要事実について自白が成立したということはできない。したがって、被告らの自白の主張は採用することができない。また、専門家の鑑定意見(甲373)は、被告製剤の透析用途・肝用途の用途割合5を検討するに当たり、DeSCデータのうち、被告製剤の調剤記録のある患者を抽出し 自白の主張は採用することができない。また、専門家の鑑定意見(甲373)は、被告製剤の透析用途・肝用途の用途割合5を検討するに当たり、DeSCデータのうち、被告製剤の調剤記録のある患者を抽出した上、そのうち「肝疾患(正確には肝・胆疾患」の病名がある患者を「肝疾患の患者」に、腹膜透析・血液透析関連の診療行為が記録されている患者を「透析患者」に分類した上で、各月ごとに全体の調剤件数に対する肝・胆疾患の割合を算出する方法で推計したとし、また、DeSCデータ10は、組合健康保険だけでなく国民健康保険、後期高齢者医療制度のデータを保持していることから、実態を反映しているものと判断して、そのデータを用いたとしており、分析の基礎となる資料の選択及び分析方法において不合理な点は認められない。被告らは、販売数量の一部に係るDeSCデータを用いることの不当をいうが、保険者における被告製剤の調剤状況を反映する15ものとして、透析用途及び肝用途の用途割合を把握するものとして特に不合理なものとはいえず、被告らの主張を採用することはできない。 ⑵ 次に、被告らは、原告には、特許法102条1項1号の「特許権者又は専用実施権者が販売することができないとする事情」として、先発医薬品(原告製剤)と後発医薬品(被告製剤)においては、後発医薬品の販売促進を行20う国家施策の存在や、先発医薬品と後発医薬品の薬価・市場実勢価格の価格差、市場における代替品となる競合品の存在、被告らの営業努力・ブランド力、先発医薬品と後発医薬品の特許発明・特許発明以外の特徴等などを主張するので、以下検討する。 ⑶ まず、特許法102条1項は、民法709条に基づき販売数量減少による25逸失利益の損害賠償を求める際の損害額の算定方法について定めた規定であ85り、特許法1 するので、以下検討する。 ⑶ まず、特許法102条1項は、民法709条に基づき販売数量減少による25逸失利益の損害賠償を求める際の損害額の算定方法について定めた規定であ85り、特許法102条1項1号において、侵害者の譲渡した物の数量に特許権者等がその侵害行為がなければ販売することができた物の単位数量当たりの利益額を乗じた額を、特許権者等の実施の能力の限度で損害額とし、譲渡数量の全部又は一部に相当する数量を特許権者等が販売することができないとする事情を侵害者が立証したときは、当該事情に相当する数量に応じた額を5控除するものと規定して、侵害行為と相当因果関係のある販売減少数量の立証責任の転換を図ることにより、より柔軟な販売減少数量の認定を目的とする規定である。そして、「販売することができないとする事情」は、侵害行為と特許権者等の製品の販売減少との相当因果関係を阻害する事情をいい、例えば、①特許権者と侵害者の業務態様や価格等に相違が存在すること(市場10の非同一性)、②市場における競合品の存在、③侵害者の営業努力(ブランド力、宣伝広告)、④侵害品及び特許権者の製品の性能(機能、デザイン等特許発明以外の特徴)に相違が存在することなどの事情がこれに該当するというべきである(知財高裁平成31年(ネ)第10003号令和2年2月28日特別部判決参照)。 15⑷ 次に、前提事実に加え、掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の各事実が認められる。 ア 代替品等に関する事情いわゆる止痒剤には、原告製剤及び被告製剤以外にも多様なものがあるところ、ナルフラフィン製剤は、中枢神経系に作用する薬理作用を発揮し、20既存治療で効果不十分な場合に使用される(甲406、407、乙ハ26)。 また、有効成分がナルフラフィン塩酸 なものがあるところ、ナルフラフィン製剤は、中枢神経系に作用する薬理作用を発揮し、20既存治療で効果不十分な場合に使用される(甲406、407、乙ハ26)。 また、有効成分がナルフラフィン塩酸塩の後発医薬品(なお、被告ら以外の大半はカプセル剤である。)も複数存在するところ(乙ハ26)、ナルフラフィン製剤については、原告製剤(OD錠)の上市から1年後である平成30年6月中旬頃には、原告製剤(OD錠)とレミッチカプセルの販25売数量比が●●●となり(甲335)、被告製剤が同月15日に上市された86後も、OD錠のシェアが増加する一方、カプセルのシェアが減少し、OD錠のシェアが約●●●以上であることが指摘されている(甲422)。なお、剤形としてのOD錠については、一般に、水なしで服用することができる利便性から、嚥下能力の低下した高齢者の使用割合の高い薬剤や、泌尿器生殖器系の薬剤で水分制限されているものにおいて、OD錠のシェアが高5くなっているところ、ナルフラフィン製剤の服用対象疾患(透析が必要となる腎疾患、慢性肝疾患)の患者は、いずれも60歳以上の高齢者が過半数を超えており(甲409、410)を、かつ、これらの疾患は水分摂取量制限を要することがあるから、ナルフラフィン製剤OD錠は、その多くの服用対象疾患の患者の特徴に沿う剤形の薬剤というメリットがある(甲10420)。 さらに、ナルフラフィン製剤OD錠の市場においては、平成30年6月15日から令和4年11月21日まで、原告製剤の消化数量の減少と被告製剤の販売数量の増加との間には統計的相関関係があることが指摘されている(甲421、422)。 15イ 後発医薬品の普及促進等の施策に関する事情我が国では、平成29年6月、閣議決定により、後発医薬品の使用割合を令和2年 統計的相関関係があることが指摘されている(甲421、422)。 15イ 後発医薬品の普及促進等の施策に関する事情我が国では、平成29年6月、閣議決定により、後発医薬品の使用割合を令和2年9月までに80%とするなどの方針が確認され(乙ハ28)、保険薬局においても、処方箋の変更不可欄に医師の署名がない限り患者の選択に基づき先発医薬品に変えて後発医薬品を調剤できるようになってい20たが(乙ハ29、31~33)、後発医薬品の普及促進等の施策がとられ(乙ハ30、34)、市場における後発医薬品の使用割合は、平成30年9月には72.6%、令和4年9月には79%となっている(乙ハ37)。 ウ 価格差に関する事情薬価は、平成30年6月時点で、後発医薬品である被告製剤及び他社の25医薬品(OD錠、カプセル錠)は、先発医薬品である原告製剤の薬価の約8741%であり、令和4年11月には、薬価が約21%の後発医薬品もある(乙ハ40、41)。 そして、低所得者や高齢者にとって医療保険の自己負担額は生活に大きく影響することが見込まれるところ(乙37)、ナルフラフィン製剤を服用する慢性腎疾患・肝疾患の患者は、高額療養費制度等において長期高額疾5病患者の負担軽減措置等を受けることが見込まれ、このうち人工透析を行う慢性腎不全の患者等においては、自己負担限度額は1万円(一定以上の所得のある者は2万円)とされる(甲425、426)。また、肝炎治療としての抗ウィルス治療においても、医療費助成により患者等の自己負担限度額は1万円(一定以上の所得のある者は2万円)とされる(甲427)。 10このような場合には患者の負担額が抑制されることになる。そして、先発品から後発品への置き換わりが進まない理由の一つとして、薬剤によっては、医療費助成制度の存 は2万円)とされる(甲427)。 10このような場合には患者の負担額が抑制されることになる。そして、先発品から後発品への置き換わりが進まない理由の一つとして、薬剤によっては、医療費助成制度の存在により、患者自身が、後発品を選ぶインセンティブが働かない場合があることなども指摘されている(甲429)。 エ 被告らのブランド力等に関する事情15被告沢井製薬は、「日経BP」(2023年11月号)の「後発企業の支持率ランキング」において好感を持っている後発医薬品会社の1位であり、長年1位を維持し(乙ハ44)、2021年度製薬企業の決算における「医療用医薬品売上高(国内)」でも15位である(乙ハ45)。また、被告扶桑薬品は、「医薬経済WEB」(2021年5月号)で「透析剤でシェアト20ップを確保」と紹介され、半世紀にわたり人工腎臓用透析剤のトップブランドの座にあるとされる(乙ハ46)。 オ 特許発明以外の特徴等に関する事情原告、本件特許を実施し原告製剤を製造販売するに当たり、高田製薬の発明の名称「口腔内速崩壊錠」とする特許(特許第5337430号)の25実施許諾を得ている(乙ハ56、57)。また、原告製剤と被告製剤は、ナ88ルフラフィン塩酸塩の安定性を獲得する添加剤において異なっている。 ⑸ 以上を前提に検討すると、次のとおりいうことができる。 ア 止痒剤には多様なものが存するものの、ナルフラフィン製剤は、中枢神経系に作用することを特徴とし、既存治療で効果不十分な場合に投与されるから、他の種類の止痒剤とは市場を異にするものと認められ、ナルフラ5フィン製剤と他の種類の止痒剤とが同一市場で競合することはない。また、ナルフラフィン製剤にはOD錠とカプセルの剤形のものがあるが、原告製剤(OD錠)が上市されて1年後には、原 められ、ナルフラ5フィン製剤と他の種類の止痒剤とが同一市場で競合することはない。また、ナルフラフィン製剤にはOD錠とカプセルの剤形のものがあるが、原告製剤(OD錠)が上市されて1年後には、原告の医薬品におけるOD錠とカプセルの販売数量比率は●●●となり、被告製剤(OD錠)が上市された後もOD錠のシェアは約●●●以上であること、OD錠は、服用に水を必10要としないという利便性があり、当該利便性は、ナルフラフィンの服用を要する患者の特徴(嚥下能力が低下している高齢者、取水制限等がある患者)に沿うものであることが認められるから、カプセルがOD錠に代替し得るということはできず、ナルフラフィン製剤のOD錠はカプセルとは市場を異にすると考えられる。結局、ナルフラフィン製剤OD錠である原告15製剤について、被告製剤以外の競合品や代替品は見当たらないのであり、現に前記のとおり、ナルフラフィン製剤OD錠の市場では、原告製剤の消化数量の減少と被告製剤の販売数量の増加については、統計的相関関係が認められることが指摘されている。 イ 確かに、我が国では後発医薬品の普及促進策が進められていることや、20平成30年6月時点で、被告製剤の薬価は原告製剤の薬価の約41%以下であったこと等が認められる。しかし、他方で、ナルフラフィン製剤を服用する慢性腎疾患・肝疾患の患者は、高額療養費制度等において長期高額疾病患者の負担軽減措置等を受けることが見込まれ、このような場合には、患者の医療保険の自己負担額が多額にならないことから、患者において後25発品を選ぶインセンティブが働かず、先発医薬品から後発医薬品への置き89換わりが進まない場合があることが指摘されている。そうすると、一般的に後発医薬品の普及促進策が推進されているからといって、本件において インセンティブが働かず、先発医薬品から後発医薬品への置き89換わりが進まない場合があることが指摘されている。そうすると、一般的に後発医薬品の普及促進策が推進されているからといって、本件において当該後発医薬品の普及促進策の存在や原告製剤と被告製剤との形式的な価格差を理由に、侵害行為がなかった場合に、原告が被告製剤と同じ数量を販売することができなかったはずであるとはにわかに認めることはできず、5他にこれを認めるに足りる的確な証拠はない。 ウ 被告らは、カプセルの剤形のナルフラフィン製剤が市場における競合品となることを主張するが、前記のとおり、両者は市場を異にするというべきであるから、同主張は、その前提を欠くものであり、採用することができない。 10エ 被告らは、原告製剤が高田製薬の特許を利用して製造されていることや、被告製剤には原告製剤とは異なる添加剤が使用されていることを主張するが、まず、原告製剤は高田製薬の特許の実施許諾を得て現に製造することができている以上、高田製薬の特許の存在が「販売することができないとする事情」に該当することはない(被告製剤の売上に高田製薬の特許が貢15献していたわけでもない。)。本件特許に係る発明は、医薬品の有効成分、効能・効果に関する医薬用途発明として被告製剤の全体に実施されており、被告製剤の一部にのみ実施されていたわけではないから、特許権の部分実施を理由として、損害賠償額を減額する理由もない。さらに、被告製剤がその添加剤等において特徴的であることを理由に、ナルフラフィン製剤O20D錠市場で優位に立っていたことを認めるに足りる証拠もないから、被告らの主張する事情は、いずれも侵害行為と特許権者等の製品の販売減少との相当因果関係を阻害する事情にはならないというべきである。 オ 被 市場で優位に立っていたことを認めるに足りる証拠もないから、被告らの主張する事情は、いずれも侵害行為と特許権者等の製品の販売減少との相当因果関係を阻害する事情にはならないというべきである。 オ 被告らは、被告らの営業努力やブランド力の存在を指摘し、被告らには後発医薬品会社として一定の知名度や好感度があることは認められるが、25そのことが、ナルフラフィン製剤OD錠市場において、対象疾患を有する90患者又はその医療機関が原告製剤ではなく被告製剤を選択する動機となっていたことを認めるに足りる証拠はない。そもそも、OD錠がナルフラフィン製剤の服用を要する多くの慢性腎疾患・肝疾患の患者の特徴に沿う剤形の薬剤であることを前提とすると、被告製剤が市場に存在しなければ原告製剤が購入されていた蓋然性が高く、被告製剤を購入した需要層のうち、5被告らの営業活動やブランド力により購入するに至ったが、原告製剤であれば購入しなかったであろうという需要層がどれだけ存在するのかは疑問である。また、具体的にそのような需要層が存在することを認めるに足りる主張立証もない。したがって、被告らの主張する営業努力やブランド力は一般論を述べたものにすぎず、本件において、「販売することができない10とする事情」になると認めることはできない。 カ その他、被告らは、被告製剤の製造販売に至るまでの承認等の経緯等に照らし、被告らには故意・重過失は認められないから、特許法102条5項により軽過失を斟酌すべきであるとか、適正な実施料の算定の際に考慮される「当該特許発明自体の価値や他のものによる代替可能性」「特許権者15と侵害者との競業関係」「販売価格」等も、減額すべき事情に該当する旨主張するが、これらの事情は、いずれも侵害行為と特許権者等の製品の販売減少との相当因果関 のものによる代替可能性」「特許権者15と侵害者との競業関係」「販売価格」等も、減額すべき事情に該当する旨主張するが、これらの事情は、いずれも侵害行為と特許権者等の製品の販売減少との相当因果関係を阻害する事情に当たるものとはいえない。 よって、被告らの主張を採用することはできない。 ⑹ 以上によれば、原告について特許102条1項1号の「販売することがで20きないとする事情」を認めることはできない。 4 争点11(適正な実施料)について⑴ 原告は、本件特許権の存続期間中に製造されたが未譲渡の被告製剤については、原告の損害を特許法102条3項に基づき算定すべきであり、適正実施料率は20%を下らないと主張するのに対し、被告らは、適正な実施料率25は3~5%程度とされるべきであるなどと主張する。 91⑵ そこで検討するに、特許法102条3項所定の「その特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当する額」に関し、実施に対し受けるべき料率は、❶当該特許発明の実際の実施許諾契約における実施料率や、それが明らかでない場合には業界における実施料の相場等も考慮に入れつつ、❷当該特許発明自体の価値すなわち特許発明の技術内容や重要性、他のものによる代替可5能性、❸当該特許発明を当該製品に用いた場合の売上げ及び利益への貢献や侵害の態様、❹特許権者と侵害者との競業関係や特許権者の営業方針等訴訟に現れた諸事情を総合考慮して、合理的な料率を定めるべきである(知財高裁平成30年(ネ)第10063号令和元年6月7日特別部判決参照)。そして、同条3項に規定する「特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当10する額」を認定するに当たっては、特許権者等が、自己の特許権等に係る特許発明の実施の対価について、当該特許権等の侵 。そして、同条3項に規定する「特許発明の実施に対し受けるべき金銭の額に相当10する額」を認定するに当たっては、特許権者等が、自己の特許権等に係る特許発明の実施の対価について、当該特許権等の侵害があったことを前提として当該特許権等を侵害した者との間で合意をするとしたならば、当該特許権者等が得ることとなるその対価を考慮することができるものである(同条4項参照)。 15⑶ 前記1⑵のとおり、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●また、アンケート調査に基づく各業界におけるロイヤルティ料率の調査研究によれば、平成22年3月時点で「バイオ・製薬」業界のロイヤルティ料率は、最小値0.5%、最大値32.5%、平均6.0%であるが20(甲370)、調査結果の再整理後には、「製薬」業界のロイヤルティ料率は、最小値0.5%、最大値14.5%、平均5.9%であるから(甲371)、本件では「製薬」業界のみのロイヤルティ料率を参考にするのが相当である。 また、前記のとおり、本件特許は医薬用途特許であり、本件発明は「一般式(Ⅰ)」で表される「オピオイドκ受容体作動性化合物」(ナルフラフィン)25「を有効成分とする止痒剤」という医薬品の有効成分及び効能・効果を内容92とするものであるところ、本件発明に係る医薬品は、既存治療で効果不十分な場合に限って使用されるから、他の止痒剤による代替可能性はないという意味において、その重要性が認められる。加えて、本件発明は、医薬品としての被告製剤全体に実施されていることからその売上及び利益への貢献度は高い。そして、侵害態様においても、原告製剤と被告製剤は、有効成分だけ5でなく剤形も同一の競合品として製造販売されている としての被告製剤全体に実施されていることからその売上及び利益への貢献度は高い。そして、侵害態様においても、原告製剤と被告製剤は、有効成分だけ5でなく剤形も同一の競合品として製造販売されているものである。これらの点を踏まえると、特許権侵害者と事後的に合意をするとしたならば特許権者が得ることとなる対価は(特許法102条4項)、通常よりも高額になるものと認められるから、本件における適正な実施料率は、9%と認めるのが相当である。 10⑷ そうすると、本件特許権の存続期間中に製造されたが未譲渡の被告製剤に係る原告の特許法102条3項に基づく損害額は、次のとおりとなる(未譲渡の被告製剤の各在庫数量は、前記補正の上引用した原判決の前提事実⑻イのとおりであり、当事者間において実質的に争いはない。)。 ア 被告沢井製薬15令和4年11月21日時点における販売価格(仕切り価格)●●●●●●●●×未譲渡の在庫数量●●●●●●●●●×0.09=1億2774万5424円イ 被告扶桑薬品令和4年11月21日時点における販売価格(仕切り価格)●●●●●20●●●×未譲渡の在庫数量●●●●●●●●●×0.09=2734万2421円(1円未満切捨て。以下、同じ)5 争点12(消費税相当額を加算して損害を算定することの可否)について⑴ 消費税法4条1項は「国内において事業者が行った資産の譲渡等…には、この法律により、消費税を課する。」と定め、同法2条1項8号は「資産の譲25渡等」につき「事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに93役務の提供(代物弁済による資産の譲渡その他対価を得て行われる資産の譲渡若しくは貸付け又は役務の提供に類する行為として政令で定めるものを含む。)をいう。」と定義する 産の譲渡及び貸付け並びに93役務の提供(代物弁済による資産の譲渡その他対価を得て行われる資産の譲渡若しくは貸付け又は役務の提供に類する行為として政令で定めるものを含む。)をいう。」と定義する。そして、消費税法基本通達5-2-5(乙ハ65)は「損害賠償金のうち、心身又は資産につき加えられた損害の発生に伴い受けるものは、資産の譲渡等の対価に該当しないが、例えば、次に掲げる5損害賠償金のように、その実質が資産の譲渡等の対価に該当すると認められるものは資産の譲渡等の対価に該当することに留意する。」とし、「無体財産権の侵害を受けた場合に加害者から当該無体財産権の権利者が収受する損害賠償金」を例として掲げている。 本件において、原告は、被告らが販売した被告製剤については、特許法11002条1項に基づいて損害額を算定し、被告らが製造し未譲渡の被告製剤については、同条3項に基づいて損害額を算定している。 このうち、特許法102条1項に基づく損害額については、原告は、同条1項1号の文言に従い、被告らが販売した被告製剤の数量に、原告の単位数量当たりの利益の額を乗じているところ、同号は、侵害行為がなければ、原15告は被告らが販売した被告製剤の数量と同じ数量の原告製剤を販売することができたはずであるという考え方に基づき、原告の逸失利益に相当する損害額の算定方法を定めたものである。この損害額の算定は、原告が被告らに対し資産の譲渡等を行ったと仮定した場合の対価相当額を計算しているわけではなく、あくまでも被告らの侵害行為がなかった場合の市場における原告製20剤の販売による得べかりし利益の全体の額を、便宜、被告製剤の販売数量に原告製剤の単位当たり利益を乗ずる方法により計算するものであって、当該単位当たり利益は譲渡の対価とは異なるもの ける原告製20剤の販売による得べかりし利益の全体の額を、便宜、被告製剤の販売数量に原告製剤の単位当たり利益を乗ずる方法により計算するものであって、当該単位当たり利益は譲渡の対価とは異なるものである。したがって、当該損害額による賠償金は、形式的には前記消費税法基本通達にいう「無体財産権の侵害を受けた場合に加害者から当該無体財産権の権利者が収受する損害賠償25金」ではあっても、「その実質が資産の譲渡等の対価」に該当すると解するこ94とは困難である。同基本通達は、行政庁内部の文書であって、当裁判所を法的に拘束するものではない。消費税法4条1項の解釈として、本件における特許法102条1項に基づく損害賠償金が「資産の譲渡等の対価」であると解することはできないというべきであるから、当該損害賠償金に消費税を上乗せすべきであるとの原告の主張は採用することができない(なお、被告ら5は、被告製剤を販売して利益を得ているが、当該被告製剤の販売に係る消費税は、その購入者が負担し、納税義務者である被告ら事業者が別途納税しているはずであるから、その限度では既に対象となる消費経済活動に係る消費税は納付されている。これに加えて、特許法102条1項に基づく損害賠償金に消費税を課すと、実質的にみて二重に消費税を課すのと同様の結果とな10るということもできる。)。 他方、特許法102条3項に基づく損害額については、事後的ではあるが、特許権侵害者と事後的に合意をするとしたならば特許権者が得ることとなる対価を損害額として計算するものであるから、実質的にみて、特許権利用の対価を事後的に定めるものとみることは可能であり、被告らが事前の合意に15より実施料を支払っていた場合には、当然、当該実施料に係る消費税を負担していたはずであるから、事後的に対価が定 許権利用の対価を事後的に定めるものとみることは可能であり、被告らが事前の合意に15より実施料を支払っていた場合には、当然、当該実施料に係る消費税を負担していたはずであるから、事後的に対価が定められた場合に消費税の負担を免れるべきであるとする理由もない。そうすると、後者については、消費税法4条1項の解釈として、資産の譲渡等の対価に該当すると解しても不自然ではなく、このように解した場合には、原告においては同法5条1項により20消費税を納める義務があることになり、現に原告は消費税相当額を含めて損害賠償を請求している。これらの点を踏まえると、本件における特許法102条3項に基づく損害賠償については、認容すべき損害額の算定に当たり、本件口頭弁論終結時における消費税相当額を加算するのが相当というべきである。 25⑵ 以上によれば、消費税を考慮した原告の損害額は、次のとおりとなる。 95ア 特許法102条1項に基づく損害は、別表1及び別表2の「裁判所認容額」「小計」「合計額(税抜)」欄記載の各金額となる。 イ 消費税相当金額を加算した後の特許法102条3項に基づく損害は、次のとおりとなる。 (ア) 被告沢井製薬について51億4051万9966円=1億2774万5424円×1.1(イ) 被告扶桑薬品について3007万6663円=2734万2421円×1.16 争点13(原告の損害額)について⑴ 被告らの特許権侵害行為による原告の損害は、特許法102条1項に基づ10く損害は、前記5⑵アのとおりであり、同条3項に基づく損害は前記5⑵イのとおりである。 ⑵ 被告らの特許権侵害行為と相当因果関係の認められる弁護士費用は、損害額の1割相当額と認められる。 ア 特許法102条1項に基づく各損害 3項に基づく損害は前記5⑵イのとおりである。 ⑵ 被告らの特許権侵害行為と相当因果関係の認められる弁護士費用は、損害額の1割相当額と認められる。 ア 特許法102条1項に基づく各損害に係る弁護士費用相当額は、別表115及び2の各「裁判所認容額」の項目中の各「弁護士費用」欄記載のとおりである。 イ 特許法102条3項に基づく各損害に係る弁護士費用相当額及びこれを前記5⑵イ(ア)(イ)の各損害額に加算した後の損害額は、次のとおりである。 20(ア) 被告沢井製薬について弁護士費用相当額①1405万1997円=1億4051万9966円×0.1弁護士費用相当額加算後の同項に基づく損害額②1億5457万1963円=前記5⑵イ(ア)+①25(イ) 被告扶桑薬品について96弁護士費用相当額①300万7666円=3007万6663円×0.1弁護士費用相当額加算後の同項に基づく損害額②3308万4329円=前記5⑵イ(イ)+①⑶ 以上によれば、弁護士費用相当額も含めた原告の損害は、別表1及び別表52の「裁判所認容額」の各「特許法102条1項による損害額合計」欄と「特許法102条3項による損害額合計」欄記載の各金員を合算した「損害額合計」欄記載の各金額となる。そして、遅延損害金は、特許法102条1項による損害については、民法404条2項及び419条1項本文(令和2年4月1日前に遅滞となった分については、平成29年法律第44号附則17条103項、同法による改正前の民法404条及び419条1項本文)により、別表1及び別表2の「裁判所認容額」の各「合計損害額」欄記載の各金員に対 なった分については、平成29年法律第44号附則17条103項、同法による改正前の民法404条及び419条1項本文)により、別表1及び別表2の「裁判所認容額」の各「合計損害額」欄記載の各金員に対する各「支払期日」欄記載の日から支払済みまで各「利率(年)」欄記載の割合による金員となり、特許法102条3項による損害については、令和4年11月21日から支払済みまで年3%の割合による金員となる。 157 小括以上によれば、原告の被告らに対する各損害賠償請求は、別紙「裁判所認容額目録」記載の金員の支払を求める範囲で理由があるから、その限度で認容すべきものであり、その余の請求は理由がないから棄却すべきものである。 第7 結論20よって、原判決は一部相当でないからこれを変更することとして、主文のとおり判決する。 知的財産高等裁判所第2部 25 97 裁判長裁判官清 水 響5 裁判官菊 池 絵 理10 裁判官頼 晋 一15 98(別紙)裁判所認容額目録1 被告沢井製薬被控訴人(1審A事件被告)沢井製薬株式会社は、控訴人に対し、142億9093万9291円並びにうち別表1の「裁判所認容額」「合計損害額」欄記載の5各金額に対する同別表1「裁判所認容額」「支払期日」欄記載の各日から各支払済みまで同別表1の「裁判所認容額」「利率(年)」欄 万9291円並びにうち別表1の「裁判所認容額」「合計損害額」欄記載の5各金額に対する同別表1「裁判所認容額」「支払期日」欄記載の各日から各支払済みまで同別表1の「裁判所認容額」「利率(年)」欄記載の各割合による金員及びうち1億5457万1963円に対する令和4年11月21日から支払済みまで年3%の割合による金員 102 被告扶桑薬品被控訴人(1審B事件被告)扶桑薬品工業株式会社は、控訴人に対し、74億7287万8838円並びにうち別表2の「裁判所認容額」「合計損害額」欄記載の各金額に対する同別表2「裁判所認容額」「支払期日」欄記載の各日から各支払済みまで同別表2の「裁判所認容額」「利率(年)」欄記載の各割合による金員及15びうち3308万4329円に対する令和4年11月21日から支払済みまで年3%の割合による金員 3 訴訟費用の負担訴訟費用は、第1、2審を通じ、これを10分し、その9を被控訴人らの負担20とし、その余を控訴人の負担とする。 ●(省略)●99●(省略)●100 101 以下の別紙は添付省略(別紙1 売上高)(別紙2 1錠当たりの製造原価)(別紙3 営業費)(別紙4 1錠当たりの利益額)(別紙5-1 透析用途に係る売上高)(別紙5-2 透析用途に係る物流費用)(別紙5-3 透析用途に係る販管費)(別紙5-4 透析用途に係る報奨費)(別紙5-5 透析用途補償)(別紙5-6 販売数量)(別紙5-7 透析用途としての控訴人製剤の1錠あたりの利益額)(別紙6 肝用途としての控訴人製剤の1錠あたりの利益額)(別紙7 複数品目にまたがる費目を按分する際に用いる控訴人製剤等に係る総売上高及び実消化数量)(別紙8 単位数量当たりの の利益額)(別紙6 肝用途としての控訴人製剤の1錠あたりの利益額)(別紙7 複数品目にまたがる費目を按分する際に用いる控訴人製剤等に係る総売上高及び実消化数量)(別紙8 単位数量当たりの利益の額(合算))

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