令和5(ワ)2727 宗教ヘイト等損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和6年11月20日 福岡地方裁判所
ファイル
hanrei-pdf-93633.txt

判決文本文12,023 文字)

主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求 被告は、原告に対し、1100万円及びこれに対する令和4年12月15日から支払済みまで年3%の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 事案の要旨本件は、原告が、北九州市議会において令和4年12月15日付けでした別紙2 記載の決議(以下「本件決議」という。)が違法であるとして、被告に対し、国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づき、損害賠償金1100万円(慰謝料合計1000万円及び弁護士費用100万円)及びこれに対する不法行為(本件決議)の日である同日から支払済みまで民法所定の年3%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 2 前提事実以下の事実(以下、「前提事実」といい、その項番号等により「前提事実⑴ア」などと記載する。)は、当事者間に争いがないか、掲記の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる。 ⑴ 原告(平成27年の名称変更前の名称世界基督教統一神霊協会)は、昭和 39年に成立した「天宙の創造神を主神として、聖書原理解説の教義をひろめ儀式行事を行い信者を教化育成する為の財務及び業務並びに事業を行う事」等を目的とする宗教法人である。 原告は、昭和29年に韓国で設立された「統一原理」を教義とする宗教団体であり、日本における当該教義を信奉する信者が設立したものであり、礼拝等の儀式、 講義等による教義の教育及び伝道による教義の布教等の宗教活動を行ってきた(弁 論の全趣旨)。 ⑵ア北九州市議会は、令和4年12月15日、定例議会において、「議員提出議案第51号・反社会的な旧統一教会に関与しないことを確認する決議」(本件決議 を行ってきた(弁 論の全趣旨)。 ⑵ア北九州市議会は、令和4年12月15日、定例議会において、「議員提出議案第51号・反社会的な旧統一教会に関与しないことを確認する決議」(本件決議)を全会一致で可決した。 イ本件決議の内容は、別紙2のとおりである。 ウ本件決議は、被告のホームページに掲載され、公衆の閲覧に供されている(以上につき、甲1)。 ⑶ 原告は、令和5年2月20日、弁護士に訴訟行為を委任して、本件訴えを提起した(顕著な事実)。 3 争点及び争点に関する当事者の主張 本件の争点は、①北九州市議会の本件決議が国賠法1条1項の適用上違法であるか否か、②原告の損害の有無及び額である。 (原告の主張)⑴ 国賠法上の違法について本件決議は、以下のとおり、国賠法1条1項の適用上違法である。 ア信教の自由の侵害及び平等原則違反について本件決議の内容は、長年原告と政治的に対立する全国霊感商法対策弁護士連絡会(以下「全国弁連」という。)が掲げる偏った一方的な情報に基づき、原告の宗教活動である献金活動及び集団結婚式や参政権的活動について批判的に取り上げ、これらをもって原告を反社会的団体であると誹謗するものであり、結論として、他の法 人や宗教団体と区別して、原告との関係では「行事への参加やメッセージなどの送付、会費の納付等の関係を一切持たない」として、北九州市議会とその議員が原告と一切の関係を持たないことを宣言するものである。このような本件決議の内容からすれば、本件決議は、宗教又は信念に基づく差別であって、原告の尊厳に対する侮辱であり、市民的及び政治的権利に関する国際規約(以下「B規約」という。)2 0条2項の規定する原告に対する差別的取扱い等を扇動する「宗教的憎悪の唱道」 基づく差別であって、原告の尊厳に対する侮辱であり、市民的及び政治的権利に関する国際規約(以下「B規約」という。)2 0条2項の規定する原告に対する差別的取扱い等を扇動する「宗教的憎悪の唱道」 に当たる。そして、憲法20条1項の信教の自由はB規約18条1項の保障を含み、憲法14条1項の法の下の平等はB規約25条・26条の保障の趣旨も含むと解されるところ、北九州市議会の本件決議が信教の自由(憲法20条1項)及び法の下の平等(憲法14条1項)に反することは、上記のとおりであるから、国賠法1条1項にいう公務員による職務遂行上の違法行為であることは明らかである。 イ名誉棄損について本件決議の内容は、一般市民の普通の注意と読み方を基準にすれば、要するに、「原告は、今も、組織的に霊感商法、多額の献金の強要、集団結婚式といった反社会的活動を繰り返し、多数の被害者を生み出している反社会的団体であり、他方では、政治家との癒着(政治倫理に違反する不適切で密接な関係)が問題となってい るため、北九州市議会とその議員は、今後、原告と一切の関係を持たないことを宣言する」という事実摘示又は意見論評をするものであり、根拠のない誹謗中傷と受け取られるものであるから、原告の社会的評価と信用を著しく低下させる。 また、全国弁連が公表している情報を基にした「2021年までの約35年間で、全国弁連の弁護士や消費生活センターが受けた旧統一教会に関する相談件数は3万 4537件で、被害総額は1237億円に上る」という記載部分は、平成15年の原告によるコンプライアンス宣言以降、原告に関する被害や相談者数が激減し、現在はほとんど消失したという事実をあえて隠蔽し、原告が今も組織的に反社会的活動を繰り返しているという印象を強めるものである。 によるコンプライアンス宣言以降、原告に関する被害や相談者数が激減し、現在はほとんど消失したという事実をあえて隠蔽し、原告が今も組織的に反社会的活動を繰り返しているという印象を強めるものである。 原告が今も組織的に反社会的活動を繰り返しているという事実については、原告 提出の証拠(甲16~20、22)から認められる事実(他の地方公共団体の公共施設の貸出状況、北九州市議会議員の認識等)をも併せ考慮すれば、被告の指摘に係る民事裁判判決等により、その真実性又は真実相当性が証明されたとはいえない。 被告の北九州市議会議員は、みだりに他人の名誉を侵害しないよう配慮すべき職務遂行上の注意義務を負っているところ、上記のように原告の名誉を侵害する本件 決議を全員一致で行ったのであるから、北九州市議会が本件決議をしたことは、国 賠法上違法の評価を受けるというべきである。 ⑵ 損害について原告は、北九州市議会の本件決議により、次のとおり合計1100万円の損害を受けた。 ア原告は、北九州市議会の本件決議により、宗教団体としての尊厳を甚だしく 蹂躙されたから、その慰謝料は、500万円を下らない。 イ原告は、本件決議によりその名誉を棄損された(社会的評価と信用が低下した)から、その慰謝料は、500万円を下らない。 ウ違法な本件決議と相当因果関係に立つ弁護士費用は、100万円を下らない。 (被告の主張) ⑴ 国賠法上の違法について本件決議は、次のとおり、国賠法1条1項の適用上違法であるとはいえない。 ア信教の自由の侵害及び平等原則違反について原告は、法人であり、個人と異なり、尊厳を観念できないため、本件決議によって宗教団体の尊厳を害したという原告の主張は、失当である。 仮に原告の尊厳が観 自由の侵害及び平等原則違反について原告は、法人であり、個人と異なり、尊厳を観念できないため、本件決議によって宗教団体の尊厳を害したという原告の主張は、失当である。 仮に原告の尊厳が観念できるとしても、本件決議は、安倍晋三元首相の銃撃事件以降、原告について様々な問題(真意を秘したままの勧誘及び教化、その影響下での金銭授受等による信者若しくはその家族の被害並びにそれに対する民事裁判における〔不法行為に基づく〕損害賠償などといった原告の社会的相当性を欠いた活動に関するもの)が社会的に大きく取り上げられてきたという社会的背景を踏まえて、 このような問題を抱える原告との間で、その主宰イベント等への参加や会費の納付等の非公式な関係を持たないとの意思を示すことを趣旨としたものである。また、本件決議の表現をみても、原告の社会的相当性を欠いた行為を指摘するにとどまり、その宗教上の教義・信念には触れておらず、その文章上においても、原告の宗教上の教義・信念に着目したものとは読めない。このように、本件決議は、原告の教義 や宗教的活動に対する批判ではなく、原告が行っている活動のうちの社会的相当性 を欠いた一般民事的な活動を対象として批判し、原告の実現手段における不法性という側面に対して北九州市議会が臨むべき態度を表明したものと読むのが自然であり、このような活動に対する批判をもって、宗教的憎悪の唱道と評価することはできない。 イ名誉棄損について 本件決議は、個別の議員全員の発言の総体であり、各議員の高度な政治的判断を含む広範な裁量に委ねられている事柄であることからすれば、本件決議が名誉棄損となるのは、本件決議による事実適示が、違法又は不当な目的をもって行われた場合、又は、虚偽であることを知りながら敢えて行われた場 広範な裁量に委ねられている事柄であることからすれば、本件決議が名誉棄損となるのは、本件決議による事実適示が、違法又は不当な目的をもって行われた場合、又は、虚偽であることを知りながら敢えて行われた場合など、各議員がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような特別の 事情があることが必要である。そして、本件ではそのような特別の事情は存在しない。 なお、本件決議は、前記アのような趣旨に照らし、いわゆる意見ないし論評の表明であるところ、①その行為が公共の利害に関する事実に係り、かつ、②その目的が専ら公益を図ることにあることは明らかであり、③民事・刑事の多くの裁判例が、 原告を悪質な霊感商法及び多額の献金勧誘の実行者又は関与者として認定した上、その反社会性を指摘して不法行為責任を肯定した事実及び信頼性の高い諸機関が多数の被害相談がされていることを発表している事実からすると、本件決議の前提している事実が重要部分について真実であるといえるから、意見ないし論評としての範囲内にある本件決議による名誉毀損は成立しない。 ⑵ 損害について原告の主張⑵は、否認し又は争う。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実前提事実に加え、後掲の証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の事実(以下「認定 事実」といい、その項番号等により「認定事実⑴」等と記載する。)が認められる。 ⑴ 安倍晋三元内閣総理大臣は、令和4年7月8日、銃撃により殺害された。報道機関は、その殺人事件の被疑者が原告の信者の子であり、その犯行動機が原告への怨恨である旨を報道するとともに、原告が行う霊感商法や高額献金といった問題を大きく取り上げるようになった。 ⑵ 岸田文雄元内閣総理大臣(以下「岸田総理」という。)は、令和4年7月3 行動機が原告への怨恨である旨を報道するとともに、原告が行う霊感商法や高額献金といった問題を大きく取り上げるようになった。 ⑵ 岸田文雄元内閣総理大臣(以下「岸田総理」という。)は、令和4年7月31 日、記者団の質問に対し、社会的に問題となっている団体との関係については、国民の関心が高いため、政治家の立場からそれぞれ丁寧に説明していくことが大事だと述べた(乙11)。 ⑶ 自由民主党(以下「自民党」という。)は、令和4年8月9日、茂木敏充元幹事長(以下「茂木幹事長」という。)の名義で、自民党所属の議員に対し、国民に疑 念を持たれることがないよう、原告との関係を点検し、適正に見直すことを求める旨の通達を出した(乙13)。 ⑷ 岸田総理は、令和4年8月10日、内閣改造に伴い、原告が関連する不法行為の相談や被害者救済に万全を期すことを関係閣僚に指示し(乙14)、法務大臣は、同月15日、原告をめぐる問題に対応するため、旧統一教会問題関係省庁連絡会議 (以下「関係省庁連絡会議」という。)を設置することを明らかにした(乙15)。 関係省庁連絡会議は、同月18日、同年9月30日及び同年11月10日に開催された(乙16)。 ⑸ 茂木幹事長は、令和4年8月22日、自民党所属の議員と原告及びその関連団体とが関係を有するという問題を受け、「国民から疑念を持たれかねない過去の 行動があった場合は、きちんと説明し、反省すべきは反省し、今後の教訓にしていくことが必要だ」と述べた上、社会的に問題が指摘されている団体との関係は一切持たないというのが自民党の基本方針であることを明らかにした(乙17)。 ⑹ 消費者庁は、令和4年8月26日、原告の霊感商法への対応の強化を求める社会的な要請が高まっていることを踏まえ、「霊感商法等の悪質商法への対策検討 党の基本方針であることを明らかにした(乙17)。 ⑹ 消費者庁は、令和4年8月26日、原告の霊感商法への対応の強化を求める社会的な要請が高まっていることを踏まえ、「霊感商法等の悪質商法への対策検討 会」を開催し、消費者被害の発生及び拡大の防止を図るための対策等を検討するこ ととした。同検討会は、同月から同年10月までに7回開催された(乙20、23)。 ⑺ 岸田総理は、令和4年8月31日、自民党総裁として、原告の問題について国民から懸念や疑問の声があることについて陳謝した上で、原告との関係を絶つことを自民党の基本方針とする旨を表明し、自民党所属の議員に徹底をする意向を示すなどした(乙21)。 ⑻ 自民党は、令和4年8月26日に着手した自民党所属の国会議員と原告及びその関連団体との接点の有無に関する調査について、同年9月8日、自民党所属の国会議員379名のうち、原告及びその関連団体と接点があったと回答した議員が179名であるという調査結果を公表した。また、上記⑸の自民党の基本方針について、地方議員も含めて遵守してほしいという考えを明らかにした(乙19、22)。 ⑼ 岸田総理は、令和4年10月17日、文部科学大臣に対し、原告の問題をめぐり、原告に宗教法人法に基づく質問権の行使による調査を実施するよう指示し(乙24)、同月18日、衆議院予算委員会において、原告による被害者救済に関する法案について「今国会を念頭に準備を進めている」と答弁した(乙25)。なお、同月21日、自民党、公明党、立憲民主党及び日本維新の会による協議会の初会合が開 かれ、被害者救済法案の成立を目指して協議が始まった(乙26)。 ⑽ 西日本新聞は、令和4年10月21日、福岡県内の地方議員16名(そのうち北九州市議会議員3名)について、原 会の初会合が開 かれ、被害者救済法案の成立を目指して協議が始まった(乙26)。 ⑽ 西日本新聞は、令和4年10月21日、福岡県内の地方議員16名(そのうち北九州市議会議員3名)について、原告との接点があった旨の記事を掲載した(乙44)。 ⑾ 消費者契約法及び独立行政法人国民生活センター法の一部を改正する法律案 が令和4年11月18日に、法人等による寄付の不当な勧誘の防止に関する法律案が同年12月1日にそれぞれ国会に提出され、同月10日に成立した(乙32、33、37)。 ⑿ 北九州市議会は、令和4年12月15日、定例議会において、本件決議を全会一致で可決した(前提事実⑵)。 ⒀ 全国弁連は、平成30年頃に開設したホームページ(乙45)において、1 987年以降の被害集計数(令和4年〔2022年〕までの全国弁連及び消費者センターに対する相談件数は3万4818件、被害金額合計約1282億円)を公表していた。 なお、原告は、コンプライアンス宣言(甲7)をした平成21年以降は、原告に関する被害や相談者数が激減し、現在はほとんど消失したと主張するが、本件全証 拠によっても、これを認めるに足りる的確な証拠はない。 2 争点①(北九州市議会の本件決議が国賠法1条1項の適用上違法であるか否か)について⑴ 判断枠組み国賠法1条1項は、国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民 に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに、国又は公共団体がこれを賠償する責めに任ずることを規定するものである。そして、普通地方公共団体の議会(以下「地方議会」という。)でした議決が同項の適用上違法となるかどうかは、地方議会の議員(以下「地方議会議員」という。)の議決過程における行動 を規定するものである。そして、普通地方公共団体の議会(以下「地方議会」という。)でした議決が同項の適用上違法となるかどうかは、地方議会の議員(以下「地方議会議員」という。)の議決過程における行動が個別の国民に対して負う職務上の法的義務に違背してされたかどう かの問題であり、上記行動についての評価は原則として当該地方公共団体の住民の政治的判断に委ねられるべき事柄であって、仮に当該議決の内容が憲法の規定に違反するものであるとしても、そのゆえに地方議会でした議決が直ちに同項の適用上違法の評価を受けるものではない。このことは、憲法及び地方自治法が、①地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置し(憲法 93条1項、地方自治法89条1項等)、②その議会の議員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙すること(憲法93条2項、地方自治法17条~19条、89条1項等)とした上で、③普通地方公共団体の議会は、地方自治法の定めるところにより当該普通地方公共団体の重要な意思決定に関する事件を議決し、並びに地方自治法に定める検査及び調査その他の権限を行使すること(地方自治法89条 2項、96条以下)とする一方で、④地方議会が地方自治法違反等の行為があった 議員に対する紀律・懲罰を行うこと(地方自治法129条~137条)としていることから明らかである。 そして、地方議会の運営に関する事項については、議事機関としての自主的かつ円滑な運営を確保すべく、その性質上、議会の自律的な権能が尊重されるべきであり、このことは、当該事項について地方議会の意向等を表明する議決に関しても、 同様であると解される。 そうすると、地方議会議員は、地方議会の運営に関する事項について地方議会の意向等を表明する議決に のことは、当該事項について地方議会の意向等を表明する議決に関しても、 同様であると解される。 そうすると、地方議会議員は、地方議会の運営に関する事項について地方議会の意向等を表明する議決に関しては、原則として、当該地方公共団体の住民に対する関係で政治的責任を負うにとどまり、個別の国民の権利に対応した関係での法的義務を負うものではないというべきであって、地方議会がした当該議決は、地方議会 議員がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認め得るような例外的な場合でない限り、国賠法1条1項の規定の適用上、違法の評価を受けないものといわなければならない。 ⑵ 当てはめこれを本件についてみると、前提事実及び認定事実並びに弁論の全趣旨によれば、 次のとおり指摘することができる。 ① 本件決議は、北九州市議会が、別紙2記載の事実についての認識を示した上で、原告との間で、行事への参加やメッセージなどの送付、会費の納付等の関係を一切持たないという意向を事実上表明するものにすぎず(前提事実⑵)、当該意向の対象も北九州市議会の運営に関する事項にとどまっていることが明らかである。 ② 他方、例えば、「旧統一教会の反社会的活動や政治家との癒着が浮き彫りとなり、大きな社会問題となっている。それは国政に限らず、地方議会にまで及ぶ広範な癒着構造を作り出している」、「旧統一教会は、「霊感商法」や多額献金の強要、集団結婚等で多数の被害者を作り出してきた」といった意見ないし論評の前提となっている事実及び「全国弁連は、2021年までの約35年間で、全国弁連の弁護士 や消費生活センターが受けた旧統一教会に関する相談件数は3万4537件で、被 害総額は1237億円に上る」、「文部科学省は宗教法人法に 21年までの約35年間で、全国弁連の弁護士 や消費生活センターが受けた旧統一教会に関する相談件数は3万4537件で、被 害総額は1237億円に上る」、「文部科学省は宗教法人法に基づく「質問権」を行使し、解散命令の請求要件に該当するかどうかを調査している。」との事実は、認定事実及び被告の指摘する裁判例(被告準備書面⑵別紙2)に照らし、その重要な部分について真実であると認められる。本件全証拠によっても、これらの事実が明らかな虚偽であり、北九州市議会議員がそのことを知りながらあえてその事実を摘示 したと認めるに足りる的確な証拠はない。原告の指摘する事実(他の地方公共団体の公共施設の貸出状況、北九州市議会議員の認識等)は、以上の判断を妨げるものとはいえない。 ③ 本件決議中の意見ないし論評の表明に当たる表現部分は、上記②のような事実の存在を踏まえると、直ちに不適切であるとはいえない。特に、本件決議中の「旧 統一教会は、「霊感商法」や多額献金の強要、集団結婚等で多数の被害者を作り出してきた」との表現部分は、そもそも原告が現在もそのような活動を組織的に繰り返していると断定する表現にはなっていない上、全国弁連の公表内容(認定事実⒀)を踏まえると、北九州市議会議員としては、原告が霊感商法等の活動を継続しているものと疑うこともやむを得ないから、上記のように判断することが合理性を欠く とか、その表現が不適切であるとはいえない。 ④ そうすると、北九州市議会が本件決議をしたことにつき、これが前記⑴の例外的な場合に当たると解すべき余地はなく、国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではないといわざるを得ない。 ⑶ 信教の自由の侵害及び平等原則違反に関する原告の主張について これに対し、原告は、上記第2 すべき余地はなく、国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではないといわざるを得ない。 ⑶ 信教の自由の侵害及び平等原則違反に関する原告の主張について これに対し、原告は、上記第2の3(原告の主張)⑴アのとおり、本件決議が、B規約20条2項の規定する原告に対する差別的取扱い等を扇動する「宗教的憎悪の唱道」に該当し、信教の自由及び法の下の平等に反する旨を主張する。 しかしながら、前提事実によれば、本件決議は、原告の霊感商法、多額献金の強要等に係る相談件数・被害総額、原告と政治家との関係が現在社会問題となってい ること、文部科学省が、原告について宗教法人法に基づく解散命令の請求要件に該 当するかを調査していること等に係る事実認識を示した上で、市民の代表である市議会議員が、原告と癒着することは政治に対する不信感を増し、更なる被害者を作り出すことにつながりかねないとして、北九州市議会において、原告との間で、行事への参加やメッセージなどの送付、会費の納付等の関係を一切持たないことを宣言する(前提事実⑵)というものであって、北九州市議会がその事実認識及び意思 を事実上表明するものにすぎず、何らかの法的効果を伴うものではない。 また、本件決議の内容は、原告の思想良心の自由、宗教活動を行うことを含む信教の自由、政治への参与等を制限するものではなく、原告の信仰、世界観、儀式又は宗教活動そのものを理由に差別的取扱いをするものではない(本件決議が指摘する霊感商法・多額献金の強要等の原告の宗教の教義等とは直接の関係がない事情に 着目してされた取扱いにすぎない。)。 以上によれば、北九州市議会が本件決議をしたことは、B規約20条2項の規定する原告に対する差別的取扱い等を扇動する「宗教的憎悪の唱道」には該当せず に 着目してされた取扱いにすぎない。)。 以上によれば、北九州市議会が本件決議をしたことは、B規約20条2項の規定する原告に対する差別的取扱い等を扇動する「宗教的憎悪の唱道」には該当せず、信教の自由及び法の下の平等に反するものともいえない。 したがって、原告の上記主張は、いずれの点も採用することができない。 ⑷ 名誉棄損に関する原告の主張についてアまた、原告は、上記第2の3(原告の主張)⑴イのとおり、本件決議の内容が、意見ないし論評であったとしても、原告の社会的評価と信用を著しく低下させるものであり、その前提となる事実の真実性又は真実相当性が証明されたとはいえないから、北九州市議会が本件決議をしたことは、国賠法上違法の評価を受ける旨 を主張する。 イ前提事実によれば、本件決議は、被告のホームページに掲載されているところ(前提事実⑵ウ)、その内容は上記⑵・⑶のとおりであり、これを閲覧した一般の公衆においては、別紙2記載のような事情により、原告が反社会的活動を繰り返す一方で、政治家との癒着を強めて、大きな社会問題となっているとの事実を摘示す るものと理解することが考えられるから、これにより原告の社会的評価が低下した ものという余地がある。 しかしながら、上記⑵・⑶において説示したところによれば、本件決議は、その内容が公共の利害に関する事実に係り、かつ、専ら公益を図る目的に出たものであり、少なくとも、北九州市議会議員において本件決議に摘示された事実を真実であると信ずるについて相当の理由があるということができる。 ウさらに、本件決議中の「市民の代表である市議会議員が、このような団体と癒着することは、市民の政治に対する不信感を増し、更なる被害者を作り出すことにつながりかねな るということができる。 ウさらに、本件決議中の「市民の代表である市議会議員が、このような団体と癒着することは、市民の政治に対する不信感を増し、更なる被害者を作り出すことにつながりかねない」との部分について、これを意見ないし論評の表明とみたとしても、これが公共の利害に関する事実に係り、かつ、専ら公益を図る目的に出たものであり、少なくとも、北九州市議会議員においてその前提としている事実を真実 であると信ずるについて相当の理由があることは、上記⑵・⑶に説示したところから認められる。そうすると、本件決議中の上記部分についても、意見ないし論評の域を逸脱するものということはできない。 エ以上によれば、北九州市議会が本件決議をしたことについては、事実を適示しての名誉毀損又はある事実を基礎としての意見ないし論評の表明による名誉毀損 に当たるかという観点からみても、その故意又は過失が否定され、名誉毀損による不法行為は成立しないものということができるから、国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けるものとはいえない。 したがって、原告の上記主張は、採用することができない。 ⑸ 小括 以上によれば、北九州市議会が本件決議をしたことは、国賠法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではない。 第4 結語よって、原告の請求は、その余の点を判断するまでもなく、理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。 福岡地方裁判所第1民事部 裁判長裁判官林史高 裁判官溝渕章展 裁判官高橋弘乃 別紙1当事者目録は掲載省略 裁判官溝渕章展 裁判官高橋弘乃 別紙1当事者目録は掲載省略 (別紙2) 議員提出議案第51号・反社会的な旧統一教会に関与しないことを確認する決議 旧統一教会(現在は、「世界平和統一家庭連合」)の反社会的活動や政治家との癒 着が浮き彫りとなり、大きな社会問題となっている。それは国政に限らず、地方議会にまで及ぶ広範な癒着構造を作り出している。 旧統一教会は、「霊感商法」や多額献金の強要、集団結婚等で多数の被害者を作り出してきた。全国霊感商法対策弁護士連絡会(全国弁連)は、2021年までの約35年間で、全国弁連の弁護士や消費生活センターが受けた旧統一教会に関する相 談件数は3万4537件で、被害総額は1237億円に上るとし、これでも「氷山の一角」だとしている。 そのような反社会的活動を繰り返す一方で、旧統一協会は政治家との癒着を強めてきた。選挙活動の支援、パーティー券購入等の見返りに、政治家が旧統一教会が行うイベントなどに出席し、祝電を送るなどすることで、旧統一教会の活動に「お 墨付き」を与えてきた。 市民の代表である市議会議員が、このような団体と癒着することは、市民の政治に対する不信感を増し、更なる被害者を作り出すことにつながりかねない。文部科学省は宗教法人法に基づく「質問権」を行使し、解散命令の請求要件に該当するかどうかを調査している。 よって、本市議会は、旧統一教会との関係で、行事への参加やメッセージなどの送付、会費の納付等の関係を一切持たないことをここに宣言する。 以上、決議する。 よって、本市議会は、旧統一教会との関係で、行事への参加やメッセージなどの送付、会費の納付等の関係を一切持たないことをここに宣言する。 以上、決議する。

▼ クリックして全文を表示

🔍 類似判例を検索𝕏 でシェア← 一覧に戻る