主文 1 被告は,本件判決確定時において支払義務が生じているものを除き,住民基本台帳ネットワークシステムサポート委託料を支出してはならない。 2 被告は,Aに対し,39万8040円及びこれに対する平成21年7月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を国立市に支払うよう請求せよ。 3 本件訴えのうち,以下の部分をいずれも却下する。 (1) 原告らが被告に対し,旅券等の申請に伴い住民票の写しを無料で交付するに際して必要となる住民票用紙代の支出並びに旅券等申請に伴う住民票の写しの無料交付事務,住民の転入及び転出に伴う他の市町村(特別区を含む。)への書類交付事務並びに国立市が取りまとめた年金受給権者現況届の日本年金機構への送付事務をそれぞれ執行するための人件費の支出の各差止めを求める部分(2) 原告らが被告に対し,Aに対して531万3696円及びこれに対する平成21年7月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を国立市に支払うよう求める部分 4 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。 5 訴訟費用は被告の負担とする。 事実 及び理由 第1 請求 1 被告は,以下の(1)から(5)までの公金を支出してはならない。 (1) 旅券等の申請に伴い住民票の写しを無料で交付するに際して必要となる 住民票用紙代(2) 住民の転出に伴い他の市町村(特別区を含む。以下同じ)に交付する返信用封筒に係る郵便代(3) 国立市が取りまとめた年金受給権者現況届を日本年金機構に送付するための郵送費(4) 旅券等申請に伴う住民票の写しの無料交付事務,住民の転入及び転出に伴う他の市町村への書類交付事務並びに国立市が取りまとめた年金受給権者現況届の日本年金機構への送 構に送付するための郵送費(4) 旅券等申請に伴う住民票の写しの無料交付事務,住民の転入及び転出に伴う他の市町村への書類交付事務並びに国立市が取りまとめた年金受給権者現況届の日本年金機構への送付事務をそれぞれ執行するための各人件費(5) 住民基本台帳ネットワークシステムサポート委託料 2 被告は,Aに対し,571万8943円及びこれに対する平成21年7月1日から支払済みまで年5分の割合による金員を国立市に支払うよう請求せよ。 第2 事案の概要 1 本件は,東京都国立市(以下「国立市」という。)の住民である原告らが,国立市が住民基本台帳法(以下「住基法」という。)で定められた住民基本台帳ネットワークシステム(以下「住基ネット」という。)に接続していないことは違法であり,住基ネットに接続していないことにより生じた郵送費等の費用を支出しているのは違法であるなどと主張して,地方自治法242条の2第1項1号に基づいて,被告に対し,郵送費等の支出の差止めを求めるとともに,同項4号に基づいて,上記郵送費等に相当する金員である571万8943円及びこれに対する平成21年7月1日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金について,被告に対し,当該費用に係る財務会計行為の権限を有する国立市長であるAに損害賠償の請求をすることを求めている住民訴 訟である。 2 前提事実本件の前提となる事実は,次のとおりである。証拠により容易に認めることができる事実等は,その旨付記した。その余の事実は,当事者間に争いがない。 (1) 当事者等ア原告らは,いずれも国立市の住民である。 イ被告は,国立市の執行機関である。 ウ Aは,国立市の市長である。 (2) 住基ネットの概要等ア住基ネットは,市町村の区域を越えた住民基本台帳に関する らは,いずれも国立市の住民である。 イ被告は,国立市の執行機関である。 ウ Aは,国立市の市長である。 (2) 住基ネットの概要等ア住基ネットは,市町村の区域を越えた住民基本台帳に関する事務の処理や国の行政機関に対する本人確認情報(氏名,生年月日,性別及び住所(以下,これらを「4情報」という。)並びに住民票コード及び付随情報)の提供を行うためのネットワークシステムであり,平成11年8月18日に公布された住民基本台帳法の一部を改正する法律(平成11年法律第133号)により導入されたものである。 同法のうち,住基ネットの第1次稼働(住民票コードの住民票への記載,市町村長から都道府県知事への本人確認情報の通知,行政機関(国及び地方公共団体等)への本人確認情報の提供等)に係る規定は,公布の日から3年以内に(平成13年12月政令第430号により平成14年8月5日から),第2次稼働(住民票の写しの広域交付,転入転出の特例処理,住民基本台帳カード(以下「住基カード」という。)の交付等)に係る規定は,公布の日から5年以内に(平成15年1月政令第20号により平成1 5年8月25日から),それぞれ施行するものと定められた(同法付則1条1項)。 イ住基ネットの概要は,次のとおりである。(弁論の全趣旨)(ア) 目的住基ネットは,市町村長に住民票コードを記載事項とする住民票を編成した住民基本台帳の作成を義務付け,住民基本台帳に記録された個人情報のうち,氏名,住所など特定の本人確認情報を市町村,都道府県及び国の機関等で共有してその確認ができる仕組みを構築することにより,住民基本台帳のネットワーク化を図り,住民基本台帳に関する事務の広域化による住民サービスの向上と行政事務の効率化を図ることを目的とするものである(住基法6条,7条13号, 組みを構築することにより,住民基本台帳のネットワーク化を図り,住民基本台帳に関する事務の広域化による住民サービスの向上と行政事務の効率化を図ることを目的とするものである(住基法6条,7条13号,30条の5から30条の8まで等)。 (イ) 住基ネットの仕組み住基ネットの基本的な仕組みは,以下のとおりである。 a 市町村には,既存の住民基本台帳電算処理システム(以下「既存住基システム」という。)のほか,既存住基システムと住基ネットを接続し,その市町村の住民の本人確認情報を記録し,管理するシステムであるコミュニケーションサーバ(以下「CS」という。)が設置され,本人確認情報は,既存住基システムからCSに伝達されて保存される。都道府県には,区域内の市町村のCSから送信された本人確認情報を記録し,管理するシステムである都道府県サーバが設置されている。都道府県知事は,総務大臣の指定する者(以下「指定情報処理 機関」という。)に本人確認情報処理事務を行わせることができ(住基法30条の10第1項柱書き),指定情報処理機関には,全都道府県の都道府県サーバから送信された本人確認情報を記録し,管理する全国サーバが設置されている。都道府県知事から指定情報処理機関に送信された本人確認情報は,全国サーバに保存される(同法30条の11)。 b 市町村長は,住民票の記載,消除又は4情報及び住民票コードの全部若しくは一部についての記載の修正を行った場合には,当該住民票の記載等に係る本人確認情報を都道府県知事に通知する(住基法30条の5第1項)。都道府県知事は,通知された本人確認情報を磁気ディスクに記録し,これを原則として5年間保存しなければならない(同法30条の5第3項,同法施行令30条の6)。 c 市町村長は,条例で定めるところにより,他の市町村の 通知された本人確認情報を磁気ディスクに記録し,これを原則として5年間保存しなければならない(同法30条の5第3項,同法施行令30条の6)。 c 市町村長は,条例で定めるところにより,他の市町村の市町村長その他の執行機関から事務処理に関し求めがあったときは,本人確認情報を提供する(同法30条の6)。 都道府県知事は,同法別表に掲げる国の機関等,区域内の市町村の市町村長その他の執行機関又は他の都道府県の執行機関等から,法令又は条例によって規定された一定の事務の処理に関し求めがあったときは,政令又は条例で定めるところにより,本人確認情報を提供する(同法30条の7第3項から6項まで)。また,都道府県知事は,統計資料の作成など法令に規定する一定の事務を遂行する場合には,本人確認情報を利用することができる(同法30条の8第1項)。 (3) 国立市の住基ネットへの対応ア第1次稼働までの対応(ア) 国立市長は,平成14年6月14日,内閣総理大臣及び総務大臣に宛てて,住民の個人情報を保護するという責務を果たすとの観点から住基ネットの第1次稼働の延期を求める旨の意見書と質問書を提出した。 また,同月24日,国立市議会は,住基ネットの稼働の延期を求める意見書を可決し,国に送付した。 上記質問書に対し,国は,同年8月5日に住基ネットを稼働させなければ違法となると回答した。そこで,国立市は,個人情報保護のための施策強化に取り組みながら,住基ネットの稼働に向けた準備を開始することとした。 (以上,乙1の1,1の5)(イ) 国立市は,市民生活の安全と個人のプライバシーを守るという観点から,ストーカー行為の加害者が,住基法に定める住民票の写しの交付請求及び閲覧制度を不当な目的で悪用して,被害者の住所を探し出して追いかけ回すことなどを防止する と個人のプライバシーを守るという観点から,ストーカー行為の加害者が,住基法に定める住民票の写しの交付請求及び閲覧制度を不当な目的で悪用して,被害者の住所を探し出して追いかけ回すことなどを防止するため,住民票の写しの交付請求等に係る窓口審査を厳格化することなどを内容とする国立市ストーカー行為等の被害者支援に関する住民基本台帳事務取扱要綱を制定し,平成14年7月1日から運用を開始した。(乙1の2)(ウ) 平成14年8月5日,住基ネットの第1次稼働に係る部分の稼働が開始し,国立市もこれに参加した。 これに伴い,国立市は,情報公開及び個人情報保護に関する条例施行 規則を改正する(平成14年7月24日施行)とともに,住基ネットセキュリティ管理規程を制定した(同年8月1日制定,同日施行)。同規程は,住基ネットのセキュリティ対策体制を確立し,セキュリティ管理体制を明確化することなどを内容とするものであるが,本人確認情報の漏えい,改ざん若しくは消去が行われた場合又は行われるおそれがある場合等不測の事態が生じたときは,住基ネットの稼働の一時停止等を行うこととされていた。 (乙1の4,弁論の全趣旨)イ住基ネットへの接続切断までの経緯(ア) 国立市長は,平成14年8月30日付けで,総務大臣に対し,「住民基本台帳ネットワークシステムに関する質問書」を送付した。これは,①個人情報の保護に関する法律案に,自己の個人情報コントロール権及び指定情報処理機関が行政機関に提供した本人確認情報の提供記録の市町村側への開示制度が明記されるのか否か,②個人情報保護に関し,上記法律案の整備以外に,どのような措置を講じる予定かなどを問うものであった。(乙2)これに対し,総務大臣は,平成14年9月17日付けで,国立市長に対し,上記質問書に対する回答書を送付 に関し,上記法律案の整備以外に,どのような措置を講じる予定かなどを問うものであった。(乙2)これに対し,総務大臣は,平成14年9月17日付けで,国立市長に対し,上記質問書に対する回答書を送付した。同回答書には,①提供記録の開示については必要な措置を講じていくこととしており,情報コントロール権については,個人情報の保護に関する法律案に具体的な規定を盛り込んでいること,②その他,各種の個人情報保護措置を講じることが記載されていた。(乙3) (イ) 平成14年9月18日,国立市議会は,住基ネットの再考を求める決議を可決した。(乙1の5)また,同年10月3日,国立市情報公開及び個人情報保護審議会は,国立市長に対し,住基ネットによる個人情報の利用方法や安全対策について国に対し十分な説明を求めるとともにこれを市民に知らせること,及び国立市が個人情報の利用と安全対策等について調査点検する態勢を作って実施するとともに,個人情報保護の観点から不十分と認められる場合には改善要望や情報提供の中止などの措置を採ることを内容とする意見書を提出した。(乙4)(ウ) 国立市長は,平成14年10月11日付けで,総務大臣に対し,2回目の「住民基本台帳ネットワークシステムに関する質問書」を送付した。これは,①指定情報処理機関から国の行政機関等に対する本人確認情報の提供の開始時期及びその方法,②本人確認情報の提供を受けた国の行政機関等による情報保存の方法等,③国の行政機関等から指定情報処理機関との間のアクセスログの確認作業の有無及び方法等,④アクセスログの使用方法についてのルール及びその開示請求の可否等,⑤本人確認情報の提供により住民票の写しの添付が不要となる事務等の内容,⑥個人情報保護条例が整備されていない市区町村の数等,⑦総務省が指定情報処理機 用方法についてのルール及びその開示請求の可否等,⑤本人確認情報の提供により住民票の写しの添付が不要となる事務等の内容,⑥個人情報保護条例が整備されていない市区町村の数等,⑦総務省が指定情報処理機関との間の電気通信回線の常時接続回避を指示した例の有無及び常時接続していない市区町村の数等,⑧ストーカー被害者等から通報があった場合の安全確保の対応策について質問するものであった。 これに対し,総務大臣は,平成14年10月25日付けで,国立市長 に対し,上記質問書に対する回答書を送付した。 (以上につき,乙5)(エ) 国立市は,平成14年10月28日から同年11月8日までの間,国立市内に住民登録されている満20歳以上の男女3000人を対象として,住基ネットに関する市民意向調査を行ったところ,住基ネット制度については,「個人情報保護法ができるまで稼働を見合わせるべき」とする回答が43%,「住基ネットそのものに問題があるので見直すべき」とする回答が26%を占めた。(乙1の5)(オ) 国立市長は,平成14年11月28日付けで,総務大臣に対し,3回目の「住民基本台帳ネットワークシステムに関する質問書」を送付した。これは,前記(ウ)の2回目の質問書に対する回答が不十分であるとして,更なる回答を求めるものであり,回答のいかんによっては,国立市長として住基ネット稼働に関して重大な決断をせざるを得ないとするものであった。 これに対し,総務大臣は,平成14年12月19日付けで,国立市長に対し,上記質問書に対する回答書を送付した。 (以上につき,乙5)(カ) 平成14年12月18日,国立市議会は,「住基ネット切断を求める陳情」について趣旨採択した。(乙1の6)(キ) 国立市長は,前記(オ)の総務省からの回答書を検討した結果,住基ネットについ (カ) 平成14年12月18日,国立市議会は,「住基ネット切断を求める陳情」について趣旨採択した。(乙1の6)(キ) 国立市長は,前記(オ)の総務省からの回答書を検討した結果,住基ネットについては,個人情報保護対策とセキュリティ対策に関して万全の措置が講じられておらず,住基法36条の2に規定された長の責務を 遂行することはできないと判断し,平成14年12月26日,住基ネットと接続していた電気通信回線の切断(以下「本件切断」という。)をするとともに,総務省及び東京都に対し,本件切断について通知し,既に送信された国立市民の個人情報の消去を求めた。国立市長が本件切断の理由として掲げた事項は,次のとおりである。 a 住基ネット稼働に係る根本的な問題点(a) 民間事業者等の個人情報の漏えい又は不正使用等を規制する個人情報保護法が成立していないこと。 (b) 行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律が成立していないこと。 (c) ネットワークを構成する全機関に同一レベルの個人情報保護条例がないこと。 b 総務省回答の問題点(a) 住民の自己情報のコントロール権が確立されていないこと。 (b) 住民基本台帳事務を処理する国立市の住民情報のコントロール権が確立されていないこと。 (c) 情報漏えい等のリスクを補っても余りある市民及び国立市の住基ネット稼働のメリットがないこと。 (d) ストーカーやDV(ドメスティック・バイオレンス)の被害者を支援する目的で制定施行した国立市ストーカー行為等の被害者支援に関する住民基本台帳事務取扱要綱に沿った被害者支援に障害とならない制度及びその運用が確立されていないこと。 (e) 本人確認情報を利用する国の機関等の個人情報保護が十分措置されていないこと。 (f) 個人情報の漏えい 綱に沿った被害者支援に障害とならない制度及びその運用が確立されていないこと。 (e) 本人確認情報を利用する国の機関等の個人情報保護が十分措置されていないこと。 (f) 個人情報の漏えいを防止するセキュリティ対策が十分採られていないこと。 (以上につき,乙5)ウ本件切断後の状況等(ア) 東京都知事は,平成15年5月30日,国立市長に対し,住基法30条の5第1項に規定する事務(都道府県知事に対する本人確認情報の通知であり,同条2項により電気通信回線を使用して送信することにより行うものとされている。)の執行等を求める内容の地方自治法245条の6に基づく勧告をした。(甲4,乙1の21)(イ) 国立市は,住基ネットに再接続するに当たっての条件整備の方針を明らかにすることを目的として,法律及び情報システムの専門家に対して調査研究を依頼し,平成15年12月26日,調査研究報告書の提出を受けた。 上記報告書は,住基ネットの法律面については,個人情報保護関連5法が成立したものの,具体的な保護措置や国の運用指導は十分とはいえず,住民の自己情報コントロール権及び国立市の住民情報コントロール権のいずれも保障されたとはいえないとするものであり,また,住基ネットの情報システム面では,住基ネットについては,一定のセキュリティ等が確保されつつあるが,国立市の既存住基システムについては対策が十分でないことから個人情報漏えいのリスクは住基ネットより大きい ため,国立市の住基ネットの再稼働に当たっては,運用管理規程等を策定し,関連職員に遵守させることが前提であるとするものであった。 (以上につき,乙1の12)(ウ) 平成20年6月17日,国立市長は,住基ネットの問題点について再調査及び再検討をするために,総務大臣に対し,質問書を送付し ことが前提であるとするものであった。 (以上につき,乙1の12)(ウ) 平成20年6月17日,国立市長は,住基ネットの問題点について再調査及び再検討をするために,総務大臣に対し,質問書を送付した。 これは,①全国で発生している情報漏えい事件の内容,その要因及び再発防止のための対策,②漏えいした情報の不正利用の有無,③国立市の住民の本人確認情報が他の市区町村等から漏えいした場合の国立市の責任の有無等,④費用対効果の原則に照らして住基ネットが合理的であることの根拠等,⑤ストーカー等被害者保護の観点から住基ネット上の当該住民の本人確認情報を削除することの可否等を問うものであった。 これに対し,総務大臣は,平成20年7月7日,国立市長に対し,上記質問書に対する回答書を送付した。 (以上につき,乙1の19から22まで,弁論の全趣旨)(エ) 被告は,平成20年8月又は9月頃に,住基ネットに関する市民アンケート調査や意見交換会を実施することを計画し,当該計画に関連する予算を含む平成20年度補正予算案を市議会に提出したが,同年6月の市議会において,住基ネット関連予算を削除した修正案が可決されたため,上記計画は実現しなかった。(乙1の19,弁論の全趣旨)(オ) 平成20年9月9日,東京都知事は,国立市長に対し,地方自治法245条の6に基づき,住基法30条の5第1項に規定する事務を速やかに執行するよう勧告した。(甲4,乙1の21) また,平成21年2月16日,東京都知事は,総務大臣から,地方自治法245条の5第2項の規定に基づき国立市に対し住基法違反を是正するため必要な措置を講ずべきことを求めるよう指示があったとして,国立市長に対し,住基法に規定する事務を速やかに執行するよう,地方自治法245条の5第3項の規定による是正の要求をした。 法違反を是正するため必要な措置を講ずべきことを求めるよう指示があったとして,国立市長に対し,住基法に規定する事務を速やかに執行するよう,地方自治法245条の5第3項の規定による是正の要求をした。(甲5,乙1の23)(カ) 国立市長は,平成21年3月20日付けの国立市報において,住民の暮らしの安全を保つために,住基法36条の2の「適切な管理のために必要な措置」として,住基ネットへの接続を一時切断しており,市民の意向を聴きながら慎重に対応していく旨を表明した。(乙1の23)(キ) 国立市においては,本件切断以降現在まで住基ネットに接続していない状態にある(以下,国立市が住基ネットに接続していない状態を「本件不接続」という。)。 (4) 住基ネットに接続していないことに伴う国立市における事務等ア国立市は,本件不接続の下で,以下のような事務を行っている。 (ア) 旅券等の申請に伴う住民票の写しの交付事務住基ネットの稼働により,都道府県が旅券の交付事務を行うに当たって必要な本人確認情報を住基ネットを使用して取得することができるようになったため,交付申請人において住民票の写しを申請書に添付する必要がなくなったが,住基ネットに接続していない国立市の住民は,依然としてこれを添付する必要がある。そこで,国立市では,住民から旅券申請のために住民票の写しの交付申請があった場合には,無料でこれ を交付している。また,旅券申請以外の行政手続において住基ネットに接続していないことにより住民票の写しの提出を求められた住民に対しても,これを無料で交付している。(乙1の8,9及び17,乙5,弁論の全趣旨)(イ) 住民の転入及び転出に伴う他の市町村への書類送付事務a 住民の転入及び転出に伴う住基ネットを用いた事務市町村の住民から転出届が している。(乙1の8,9及び17,乙5,弁論の全趣旨)(イ) 住民の転入及び転出に伴う他の市町村への書類送付事務a 住民の転入及び転出に伴う住基ネットを用いた事務市町村の住民から転出届がされると,届出を受けた各市町村では,各市町村の住民基本台帳を管理している既存住基システムに,氏名,生年月日,住所,転出先住所,転出予定日等を入力し,住所,転出先,転出予定日等を記載した転出証明書(住民基本台帳法施行令23条参照)を発行して交付する(郵送で転出届がされた場合は,本人宛ての郵送(送料本人負担)で送付する。)。 住民が転入先の市町村長に転出元市町村から交付された転出証明書を添付して転入届をすると,転入先市町村では,転出証明書を基に,既存住基システムに,氏名,生年月日,新旧住所等を入力する。すると,これらの情報は,転入先市町村のCSに送信され,専用回線を通じて転出元市町村のCSに送信され,これが住基法9条1項の通知(以下「9条1項通知」という。)として扱われる(同条3項。)。 なお,住基カードの交付を受けている者が転出届をする場合には,転出元の市町村長に「付記転出届」を郵送ですることができ,その場合には,住民は,住基カードを提示して転入先の市町村長に対して転入届をすれば足り,転出証明書を添付する必要がない(住基法24条 の2第1項)。この場合,転入先の市町村長は,転出元の市町村長に対し,専用回線を使って転入届を受けた旨を通知し(同条3項,5項),これを受けた転出元の市町村長は,転入先の市町村長に対し,転出前の住所や転出先の住所等を専用回線を使って通知する(同条4項,5項)ことになる(以上の手続を「転入転出手続の特例」という。)。 (以上につき,弁論の全趣旨)b 国立市における事務国立市においては,9条1項通知を住基ネ 用回線を使って通知する(同条4項,5項)ことになる(以上の手続を「転入転出手続の特例」という。)。 (以上につき,弁論の全趣旨)b 国立市における事務国立市においては,9条1項通知を住基ネットを用いて送信又は受信することができない。そこで,国立市長に転出届がされたときには,転出証明書を住民に交付する際,これに料金受取人払いの返信用封筒を添付し,転入先市町村から当該封筒を用いて9条1項通知を送付してもらうこととし,また,国立市長に転入届がされたとときには,1週間分の9条1項通知を既存住基システムから出力して転出元市町村に郵送している。 なお,国立市の住民は,転入転出手続の特例を受けることはできない。 (以上につき,弁論の全趣旨)(ウ) 年金受給権者の現況届の送付事務日本年金機構(平成21年12月までは社会保険庁)は,毎年年金受給権者の誕生日月にその現況を確認しているところ,従前は,年金受給権者が「年金受給権者現況届」(以下「現況届」という。)を社会保険庁に提出することによりその確認をしていたが,平成18年1 0月からは,順次住基ネットを利用して現況確認をすることとなり,年金受給権者が現況届をする必要がなくなった。 ところが,国立市は住基ネットに接続していないため,その住民は現況届をする必要があるところ,住民が国立市役所又は国立市の出先機関に現況届を持参した場合には,国立市は,これらを毎月15日(その日が土日祝日に当たる場合はその前日)にまとめて日本年金機構に送付している。また,この一括発送後に持参された当月誕生日分の現況届及び前月以前の現況届については,随時,個別に発送している。 (以上につき,乙1の15,弁論の全趣旨)イまた,国立市は,住基ネットに再接続する場合に備え,住民異動データのバックアップ作業 況届及び前月以前の現況届については,随時,個別に発送している。 (以上につき,乙1の15,弁論の全趣旨)イまた,国立市は,住基ネットに再接続する場合に備え,住民異動データのバックアップ作業を民間事業者に委託し,委託費を支出している。 (5) 前記(4)の各事務に関連する財務会計行為の手続等前記(4)の各事務に関連する国立市における財務会計行為の手続等は,以下のとおりである。 ア旅券等の申請に伴う住民票の写しの交付事務住民票の写しを作成するためには,専用の改ざん防止住民票用紙を用いるが,当該用紙の購入は,市民課長の専決で支出負担行為を行い,同課長の専決による支出命令に従って代金を支払う。 イ住民の転入及び転出に伴う他の市町村への書類送付事務並びに年金受給権者の現況届の送付事務住民の転入及び転出に伴う他の市町村への書類送付のための郵送費並びに年金受給権者の現況届の送付のための郵送費を含む郵送費は,月ごとに 集計された金額を翌月に支出しているところ,B株式会社から通知(請求)があった時点で市民課長の専決で支出負担行為を行い,同課長の専決による支出命令に従って,小切手で支払を行う。 ウ人件費人件費は,職員については当月払い,嘱託員については翌月払いで支払われているところ,職員の人件費については,支出負担行為及び支出命令のいずれも総務部長の専決で行われる。嘱託員の人件費については,各主管課において支出の手続を行うところ,前記(4)ア(ア)及び(イ)の事務に係る嘱託員については,支出負担行為及び支出命令のいずれも,平成20年7月までは市民部長が,その後は市民課長が専決で行い,前記(4)ア(ウ)の事務に係る嘱託員については,支出負担行為及び支出命令のいずれも保険年金課長の専決で行っている。 エ住基ネットサポー 0年7月までは市民部長が,その後は市民課長が専決で行い,前記(4)ア(ウ)の事務に係る嘱託員については,支出負担行為及び支出命令のいずれも保険年金課長の専決で行っている。 エ住基ネットサポート委託料住基ネットサポート委託料は,年度当初に委託契約を締結し,その後毎月の委託料を翌月に支出している。 その支出負担行為は,総務部長の専決で,毎月の委託料に係る支出命令は,市民課長の専決でそれぞれ行う。 (以上につき,甲9,10(いずれも枝番を含む。),弁論の全趣旨)(6) 住民監査請求ア原告らを含む国立市の住民11名(以下「監査請求人ら」という。)は,平成21年9月29日,国立市監査委員に対し,前記(4)に係る支出(前記(4)アの事務に要する人件費の支出を含む。)が違法な公金支出に該当する として,国立市長に当該支出の差止め及びこれまでの支出に相当する金員の補を求める住民監査請求をした(以下「本件監査請求」という。)。 (甲1,2)イ国立市監査委員は,平成21年11月27日,監査請求人らに対し,地方自治法242条8項に定める監査委員の合議に至らなかったとして,その旨の通知をした。(甲3)(7) 本件訴えの提起原告らは,平成21年12月22日,本件訴えを提起した。(当裁判所に顕著な事実) 3 争点本件の主な争点は,以下のとおりである。 (1) 本案前の争点① 差止めの対象となる財務会計行為が特定されているか否か。 ② 監査請求期間が徒過したことにつき,正当な理由があるか否か。 (2) 本案の争点① 本件切断及び本件不接続が違法で,その瑕疵が重大かつ明白であるか否か。 ② 財務会計行為が違法であり,公金支出の差止めが認められるか否か。また,違法な公金支出によりAが損害賠償責任を負うか否か。 断及び本件不接続が違法で,その瑕疵が重大かつ明白であるか否か。 ② 財務会計行為が違法であり,公金支出の差止めが認められるか否か。また,違法な公金支出によりAが損害賠償責任を負うか否か。 4 争点に関する当事者の主張の概要(1) 本案前の争点①(差止めの対象となる財務会計行為が特定されているか否か。)について ア旅券等の申請に伴い住民票の写しを無料で交付するに際して必要となる住民票用紙代(以下「無料住民票用紙代」という。)について(ア) 被告の主張いかなる財務会計行為を問題としているかが不明であり,その支出の差止めを求める訴えは不適法である。住民票の写しの交付のために住民票用紙を使うことは財務会計行為とは言えない。原告らは,住民票用紙を購入することが財務会計行為であるというが,住民票用紙を購入する時点で購入行為にいかなる違法原因があるのか主張されておらず,違法性を認める余地はない。 (イ) 原告らの主張住民票の写しの作成には,住民票の写し用に作られた特注の用紙が必要となり,国立市はこの用紙を専門業者から購入しているのであり,当該用紙を購入することは特定された財務会計行為である。 イ住民の転出に伴い他の市町村に交付する返信用封筒に係る郵便代(以下「9条1項通知返送郵便代」という。)について(ア) 被告の主張国立市では,転出する住民に料金受取人払いの返信用封筒を交付しているが,受取人である国立市への料金の請求は,料金後納の郵便料金の一部として後日まとめて請求される上,転入先市区町村が送付する際,複数の転入者のものをまとめて送付したり,他の文書の送付と併せて送付したりすることもあることから,交付した返信用封筒に係る郵便代を特定することはできず,財務会計行為が特定されていない。 (イ) 原告らの主 ものをまとめて送付したり,他の文書の送付と併せて送付したりすることもあることから,交付した返信用封筒に係る郵便代を特定することはできず,財務会計行為が特定されていない。 (イ) 原告らの主張料金受取人払いの方法であっても,転出者の数は特定できるのであるから,郵便代の支払時において転出に関連する金額を特定することも可能である。 ウ人件費について(ア) 被告の主張原告らが差止めを求めている人件費に係る業務執行は,職員の本来の業務時間の中で処理されているのであって,上記人件費を特定することは困難である。 (イ) 原告らの主張争う。 (2) 本案前の争点②(監査請求期間が徒過したことにつき,正当な理由があるか否か。)についてア被告の主張原告らが国立市に対して本件監査請求を行ったのは平成21年9月29日以降であるが,原告らが違法な公金支出であると主張するもののうち,同20年9月29日より前に支出が完了しているものに対する監査請求は,地方自治法242条2項所定の1年の監査請求期間を徒過しており,不適法である。 なお,原告らは,平成14年12月から住基ネットに接続していないことが違法であると考えていたというのであるから,情報開示請求によって具体的な支出額を特定しなくても,監査請求をするに足りる程度に違法な 支出を特定することは可能であったし,仮に具体的な支出額を一応知った上で監査請求をすべきであるという前提に立ったとしても,同20年9月28日以前の支出についても責任を問いたいのであれば,より早い時期に情報開示請求をして監査請求をすればよかったのであり,それは十分に可能であったのであるから,地方自治法242条2項ただし書に規定する「正当な理由」は認められない。 イ原告らの主張原告Cは,本件監査請求 求をして監査請求をすればよかったのであり,それは十分に可能であったのであるから,地方自治法242条2項ただし書に規定する「正当な理由」は認められない。 イ原告らの主張原告Cは,本件監査請求に先立ち,平成21年7月3日,国立市長に対し,①同20年7月1日から同21年6月30日までの旅券等申請に伴う住民票の写しの交付請求件数,②同20年7月1日から同21年6月30日までの住民の転入及び転出の件数とそれに伴う市町村との書類のやり取りに係る郵送費総額,③国立市における同月現在の現況届提出者の総数と切手を貼らずに市役所に持参する人の総数及び同20年7月1日から同21年6月30日までの国立市役所が取りまとめた現況届を社会保険庁に郵送するための費用総額について,情報開示請求を行った。 これに対し,国立市長からは,平成21年7月14日付けで情報開示決定がされたが,上記①及び②については,同年5月末までの件数等しか対応できないとのことであったことから,原告Cの要請により,同20年6月1日から同21年5月31日までの件数等が開示され,③については,請求どおりの期間の費用総額が開示された。 監査請求人らは,国立市長から開示された上記情報に基づいて本件監査請求をしたものであるところ,上記のような件数や費用総額を把握するに は国立市長からの情報開示によるしかなく,また,監査請求を行うには開示の時点から一定程度の期間を要することもやむを得なかった。また,前記①及び②に係る国立市長の対応によれば,仮に情報開示を待って直ちに監査請求をしたとしても,監査請求時から過去1年分の支出を全て監査請求の対象とすることは物理的に不可能である。 したがって,監査請求人らが平成21年7月14日付けで開示された情報に基づき,この情報による「過去1年分の支出」を対象と から過去1年分の支出を全て監査請求の対象とすることは物理的に不可能である。 したがって,監査請求人らが平成21年7月14日付けで開示された情報に基づき,この情報による「過去1年分の支出」を対象として,同年9月29日に本件監査請求をしたことは相当かつやむを得ないものであり,本件監査請求の対象に当該財務会計行為の日から1年を経過したものが含まれているといっても,この部分の監査請求には地方自治法242条2項ただし書に規定する「正当な理由」がある。 (3) 本案の争点①(本件切断及び本件不接続が違法で,その瑕疵が重大かつ明白であるか否か。)についてア原告らの主張住基ネットは,住基法に定められているものであり,同法30条の5により,市町村長は住民票の記載等に係る本人確認情報を都道府県知事に電気通信回線を通じて送信することによって通知するものとするとして,住基ネットに接続することが法律上要求されている。ところが,国立市は,上記規定に反し,本件切断の後,現在まで住基ネットへの接続をしていないのであって,このことは違法である。 そして,前記第2の2の前提事実(以下「前提事実」という。)(3)ウのとおり,東京都知事は,国立市長に対し,住基ネットへの接続(東京都へ の本人確認情報の通知)につき,平成15年5月以降重ねて勧告及び指導を行い,同21年2月16日には,これ以上違法状態を放置することはできないとして,「是正の要求」を行った。また,住基ネットにおいてシステム技術や法制度上の不備はなく,個人情報が漏えいする等の具体的危険がないことは,最高裁平成19年(オ)第403号,同年(受)第454号同20年3月6日第一小法廷判決(民集62巻3号665頁。以下「平成20年判決」という。)からも明らかであり,また,最高裁平成20年7月8日第三小 裁平成19年(オ)第403号,同年(受)第454号同20年3月6日第一小法廷判決(民集62巻3号665頁。以下「平成20年判決」という。)からも明らかであり,また,最高裁平成20年7月8日第三小法廷決定は,市町村長は,都道府県知事に対し,住民の本人確認情報を送信する義務があると判示した東京高裁平成18年(行コ)第119号同19年11月29日判決に対する上告受理申立てにつき,これを受理しないとしている。このような東京都による指導,勧告及び是正要求がされ,最高裁判所によっても上記のような判断がされているにもかかわらず,国立市が住基ネットに接続しないでいることについては,政策決定として違法であり,その瑕疵は重大かつ明白である。 イ被告の主張(ア) 国立市は,前提事実(3)の経緯を経て,同イ(キ)のとおりの理由により,住基法36条の2の規定に基づき本件切断をしたものであり,本件切断は適法である。 そして,国立市は,平成20年判決の後も本件不接続を維持しているが,その経緯は,前提事実(3)ウのとおりであり,国立市が本件切断の理由とした前提事実(3)イ(キ)の各点のうち,基本的な問題点である同a(a)(民間事業者等の個人情報の漏えい又は不正使用等を規制する個人情 報保護法が成立していないこと。)及び同(b)(行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律が成立していないこと。)は解消されたが,その他は依然として解消していないためである。したがって,国立市が本件不接続を維持する方針を採っていることについても,重大かつ明白な瑕疵は存しない。 (イ) 平成20年判決は,次のとおり,本件訴訟とその前提事実を異にしており,平成20年判決をもってしても,本件切断及び本件不接続が違法とはならない。 a 平成20年判決は,個人が,憲法13条を根 (イ) 平成20年判決は,次のとおり,本件訴訟とその前提事実を異にしており,平成20年判決をもってしても,本件切断及び本件不接続が違法とはならない。 a 平成20年判決は,個人が,憲法13条を根拠としてプライバシー権侵害を排除し,又は予防するために,住基ネットからの離脱を求める積極的な権利利益が存するか否かを問題とするものであるの対し,本件は,地方自治体が住基法36条の2を根拠として行った本件切断及び本件不接続の方針に重大かつ明白な瑕疵が存するか否かを問題とするもので,事案が全く異なる。 b 国立市が本件切断をした理由のうち,前提事実(3)イ(キ)a(c)(ネットワークを構成する全機関に同一レベルの個人情報保護条例がないこと。),同b(b)(住民基本台帳事務を処理する国立市の住民情報のコントロール権が確立されていないこと。),同(c)(情報漏えい等のリスクを補っても余りある市民及び国立市の住基ネット稼働のメリットがないこと。)及び同(d)(ストーカーやDV(ドメスティック・バイオレンス)の被害者を支援する目的で制定施行した国立市ストーカー行為等の被害者支援に関する住民基本台帳事務取扱要綱に沿った被 害者支援に障害とならない制度及びその運用が確立されていないこと。)には,平成20年判決は直接触れていないところ,これらの点は,本件切断の重要な理由であり,これまでの施策を変更して積極的に住基ネットに再接続する場合には,これらの点について,更に安全性やメリットなどについて慎重に判断しなければならない。また,平成20年判決が,住基ネットにシステム技術上又は法制度上の不備があり,そのために本人確認情報が法令等の根拠に基づかずに,又は正当な行政目的の範囲を逸脱して第三者に開示され,又は公表される具体的危険が生じているということもできな ステム技術上又は法制度上の不備があり,そのために本人確認情報が法令等の根拠に基づかずに,又は正当な行政目的の範囲を逸脱して第三者に開示され,又は公表される具体的危険が生じているということもできないと判断する理由として挙げているものは,法令の規定や制度等が存するという形式面だけであって,住基ネット運用の現場を預かる国立市としては,現場の運用やセキュリティの実情を踏まえた判断を行わなければその責任を果たせないのであって,本件切断の理由のうち前提事実(3)イ(キ)b(e)(本人確認情報を利用する国の機関等の個人情報保護が十分措置されていないこと。)及び同(f)(個人情報の漏えいを防止するセキュリティ対策が十分採られていないこと。)についても,いまだ慎重な検討が必要である。 そして,地方公共団体及び国の機関における情報セキュリティの不十分さは,総務省が平成21年10月29日に公表した「地方自治情報管理概要(地方公共団体における行政情報化の推進状況調査及び個人情報の保護に関する条例の制定状況(平成21年4月1日現在)等の取りまとめ結果)」並びに平成20年4月22日付け内閣官房情報 セキュリティセンター作成の「政府機関の対策実施状況報告(2007年度)の概要」からも明らかであり,いまだ地方公共団体及び国の現場における運用の実態は,積極的に国立市における方針を変更しなければならないほど明白に「安全である」と評価し得る水準には達していないと言わざるを得ない。 c さらに,平成20年判決は,住民票コードが行政機関等だけで利用され,容易に漏えいする具体的な危険はないことを前提に判断したものである。ところが,その後,政府や与野党の多くは,「税と社会保障の共通番号制度」の導入及びこれに住民票コードを使用し,又は住民票コードと対応させることを検 具体的な危険はないことを前提に判断したものである。ところが,その後,政府や与野党の多くは,「税と社会保障の共通番号制度」の導入及びこれに住民票コードを使用し,又は住民票コードと対応させることを検討し,それを盛り込んだ法案を提出しようとしているところ,上記の共通番号は,民間で利用すること及び個人情報を名寄せしマッチングさせることを目的としたものであって,プライバシー保護の観点から,行政機関内部におけるデータマッチングを原則として禁止し(住基法30条の42),民間からの告知要求を禁止している(同法30条の43)住民票コードと決定的に異なる。そうすると,住民票コードが上記の共通番号として用いられると,住民のプライバシーの保障の観点から重大な危険が生じるといわざるを得ず,また,仮に住民票コード以外の新たな番号にしてみても,問題状況は全く同じである。 このような情勢を踏まえれば,住民のプライバシーを保護する責務を負う国立市が,前記bの理由などともあいまって,安易に住基ネットに再接続する方針を採ることができないのは当然であり,その政策 判断に重大かつ明白な瑕疵がないことは明らかである。 d 平成20年判決は,住基ネットによる本人確認情報の管理,利用等は,法令の根拠に基づき,住民サービスの向上及び行政事務の効率化という正当な行政目的の範囲内で行われている旨判示しているところ,電子政府の基盤造り自体は考慮すべき国家政策課題であるとしても,それは,国民と在留外国人のプライバシーを保護することと両立させなければならない課題であって,プライバシー侵害が過大であるならば,その利益衡量上,電子政府化のための利便性はある程度制約を受けざるを得ないことは当然である。 この点,国民ID(国民を特定する「番号」等)を利用して電子政府化を推進している諸外 過大であるならば,その利益衡量上,電子政府化のための利便性はある程度制約を受けざるを得ないことは当然である。 この点,国民ID(国民を特定する「番号」等)を利用して電子政府化を推進している諸外国においても,電子政府化を進めるに当たって,それぞれの国の歴史や現状,財政状態,周辺国(の人々)との政治状況などを踏まえた上で,独立の第三者機関を設置したり(EU諸国やカナダなど),プライバシー影響評価制度を導入したり(カナダやアメリカ合衆国など),我が国より進んだ情報公開制度を設けたりした上で,さらに,プライバシーの保護を重視した番号制を採用したりする(ドイツやオーストリアなど)などして,プライバシー保障との調和の実現を図ろうと努めている。 これに対し,我が国は,今日に至るまで第三者機関を設けることさえしておらず,プライバシー保護を著しく軽視している国だという評価を受けているのであり,このような状況において電子政府化推進の名の下に住基ネットの安全性を安易に認めることはできない。まして や上記のような諸外国で採られているプライバシー保護の前提条件を抜きにして「番号制」を創設すること,特に住民票コードをそのまま利用し,又は同コードと1対1で対応する「税と社会保障の共通番号」制を創設することは,国民と在留外国人のプライバシーに重大な危険をもたらすことが必至である。 以上の諸点に照らせば,現状において,本件不接続を継続する方針に重大かつ明白な瑕疵が存するといえないことは明らかである。 (4) 本案の争点②(財務会計行為が違法であり,公金支出の差止めが認められるか否か。また,違法な公金支出によりAが損害賠償責任を負うか否か。)についてア原告らの主張(ア) 前記(3)アのとおり,本件不接続は違法であり,その瑕疵は重大かつ明白である めが認められるか否か。また,違法な公金支出によりAが損害賠償責任を負うか否か。)についてア原告らの主張(ア) 前記(3)アのとおり,本件不接続は違法であり,その瑕疵は重大かつ明白であるところ,以下の支出は,住基ネットに接続していれば,本来必要のない支出であるから,違法又は不当な公金の支出(地方自治法242条1項)に該当し,その差止めが認められるべきである(以下,原告らが差止請求の対象とする支出をまとめて「本件各支出」という。)。 a 無料住民票用紙代前提事実(4)ア(ア)のとおり,国立市は,住基ネットに接続していないことに伴い,旅券申請等に伴う住民票の写しの申請があった場合には,無料でこれを交付しているところ,当該無料交付用の住民票用紙を購入することは財務会計行為であり,当該購入に係る支出は,住基ネットに接続していればする必要のないものであるから,違法である。 b 9条1項通知返送郵便代前提事実(4)ア(イ)のとおり,国立市は,9条1項通知を住基ネットを用いて送信し,又は受信することができないことから,国立市長に転出届がされた場合には,転出証明書を住民に交付する際,これに料金受取人払いの返信用封筒を添付し,転入先市町村から当該封筒を用いて9条1項通知を送付してもらうこととしているところ,上記返信用封筒に係る郵便代の支払は,住基ネットに接続していれば必要のない支出であり,違法である。 c 国立市が取りまとめた現況届を日本年金機構に送付するための郵送費(以下「現況届郵送費」という。)前提事実(4)ア(ウ)のとおり,国立市は,年金受給権者の現況届を毎月まとめて日本年金機構に送付しているところ,その郵送費の支払は,住基ネットに接続していればする必要のない支出であり,違法である。 d 人件費前提事実(4)ア 国立市は,年金受給権者の現況届を毎月まとめて日本年金機構に送付しているところ,その郵送費の支払は,住基ネットに接続していればする必要のない支出であり,違法である。 d 人件費前提事実(4)アのとおり,旅券等申請に伴う住民票の写しの無料交付事務,住民の転入及び転出に伴う他の市町村への書類交付事務並びに国立市が取りまとめた現況届の日本年金機構への送付事務(以下併せて「本件人件費対象事務」という。)は,住基ネットに接続していれば必要のない事務であるから,これらを執行するための人件費の支出は,住基ネットに接続していれば必要のない支出であり,違法である。 e 住基ネットサポート委託料前提事実(4)イのとおり,国立市は,住民異動データのバックアップ を取るためのサポート委託料を支出しているところ,住基ネットへの接続を切断している以上,その支出は不要であり,違法である。 すなわち,バックアップを取っていなくても,再接続時にそれまでに既存住基システムに蓄積された情報を東京都のサーバに送信するソフトウェアを調達すれば足りるのであり,バックアップは住基ネットに再接続するために必要不可欠のものではないから,年間56万円もの高額の委託料を再接続の具体的な予定もないまま継続的に支出することは不合理であり,必要のない支出である。 (イ) そして,国立市は,前記(ア)のような違法な支出により次の損害を被ったので,Aは,当該損害を国立市に賠償する責任がある。 a 無料住民票用紙代国立市が平成20年6月1日から同21年5月31日までの間に旅券等申請に伴い住民票の写しを交付したのは,5355件であった。他方,国立市は,住民票の写しの作成用に作られた特注の用紙を専門業者から購入しているところ,同19年3月には,10万枚を20万7900円で,同20年 住民票の写しを交付したのは,5355件であった。他方,国立市は,住民票の写しの作成用に作られた特注の用紙を専門業者から購入しているところ,同19年3月には,10万枚を20万7900円で,同20年9月には,7万枚を18万3750円でそれぞれ購入しており,その1枚当たりの単価は,同19年3月納品分は1.98円,同20年9月納品分は2.5円である。 そして,単価の異なる用紙がどのように用いられたかの特定は困難であるから,低い方の単価である1.98円で上記の交付に伴う支出額を計算すると,1万0602円(1.98円×5355=1万0602円(円未満切捨て))となるから,当該金額が上記の交 付に伴う損害額である。 b 9条1項通知返送郵便代平成20年6月1日から同21年5月31日までの間に国立市から転出した住民は3591名であるところ,これらの住民についての9条1項通知の返信用封筒に係る郵便代は各80円であるから,上記期間の返信用封筒に係る郵便代は,28万7280円(80円×3591=28万7280円)であり,当該金額が上記郵便代の支出による損害額である。 c 現況届郵送費平成20年7月1日から同21年6月30日までの間に切手を貼らずに国立市に提出された現況届の総数は2680件であり,これらの現況届を日本年金機構に送付するための郵送費は2万5990円であるから,当該金額が損害額である。 d 人件費国立市の一般行政職の平均給料月額は36万2213円であり,平均年収は597万6515円となるところ,国立市職員の1年間の実働日数は243日であるから,一般行政職の平均日給は2万4595円となり,また,1週間の勤務時間は38時間45分であるから,時間給は3173円となる。 一方,国立市嘱託員の時給は1420円である。 そして, 3日であるから,一般行政職の平均日給は2万4595円となり,また,1週間の勤務時間は38時間45分であるから,時間給は3173円となる。 一方,国立市嘱託員の時給は1420円である。 そして,本件人件費対象事務は,国立市一般行政職職員と嘱託員が共同して担当するため,両者の割合を半々として時給を計算する と2297円となる。 そこで,本件人件費対象事務について,その事務処理に要する時間に上記平均時給を乗ずると,次のとおり,合計483万0591円となり,これが人件費に係る損害額である。 (a) 旅券等の申請に伴う住民票の写しの無料交付事務住民票の写しの交付の事務処理に必要な時間を1件につき5分とすると,平成20年6月1日から同21年5月31日までの間の当該事務に係る人件費は,102万4462円である。 5355件×5分=2万6775分=446時間(小数点以下四捨五入)2297円×446時間=102万4462円(b) 住民の転入及び転出に伴う他の市町村への書類交付事務住民の転入及び転出に伴う書類交付の事務処理に必要な時間を1件につき10分とすると,平成20年6月1日から同21年5月31日までの間の転入及び転出の合計7258件についての事務に係る人件費は,277万9370円である。 7258件×10分=7万2580分=1210時間(小数点以下四捨五入)2297円×1210時間=277万9370円(c) 国立市が取りまとめた現況届の日本年金機構への送付事務現況届の送付の事務処理に必要な時間を1件につき10分とすると,平成20年7月1日から同21年6月30日までの間の当 該事務に係る人件費は,102万6759円である。 2680件×10分=2万6800分=447時間(小数点以下四捨五入)2297 と,平成20年7月1日から同21年6月30日までの間の当 該事務に係る人件費は,102万6759円である。 2680件×10分=2万6800分=447時間(小数点以下四捨五入)2297円×447時間=102万6759円e 住基ネットサポート委託料平成20年度の住基ネットサポート委託料の支払額は56万4480円であるところ,これは違法な支出であるから,当該金額が損害額である。 (ウ) なお,被告は,本件に係る財務会計行為はいずれも専決権者によって行われており,当該行為を拒むことができないものであるから,当該行為には違法性がない旨の主張をする。 しかし,本件において,Aが違法な本件財務会計行為による損害につき賠償責任を負うか否かは,Aが補助職員の当該違法な財務会計上の行為を阻止すべき指揮監督上の義務に違反し,故意又は過失により違法な財務会計上の行為を阻止しなかったか否かにより判断すべきものであるところ,本件財務会計行為が住基ネットに接続していないことにより必然的に発生するものであることは,Aも当然よく知っていたところであり,自ら住基ネットに接続することを決定することによって本件各支出を阻止することができたのであるから,Aが故意又は過失により違法な財務会計上の行為を阻止しなかったことは論をまたないところである。 したがって,本件各支出につき,Aがそれにより生じた損害の賠償責任を負うことは明らかである。 イ被告の主張(ア) 住民訴訟は,財務会計行為の違法性を問題とするものであり,財務会計行為の原因となる行為が先行する場合であっても,財務会計行為の違法性をいう場合には,それ自体の違法性を主張立証すべきであり,特に先行行為が政策判断に係る場合には,住民訴訟は政策判断の是非を問題とするものではないから,財務会計行 場合であっても,財務会計行為の違法性をいう場合には,それ自体の違法性を主張立証すべきであり,特に先行行為が政策判断に係る場合には,住民訴訟は政策判断の是非を問題とするものではないから,財務会計行為の違法をいうことによって本来許されるべき政策判断を拘束することがあってはならない。 そして,本件で問題とされている財務会計行為の手続は,前提事実(5)のとおりであり,いずれも本来的な権限を持っているのは市長であるが,その決定については,いずれも長の補助機関である職員の専決に委ねられているところ,これらの財務会計行為は,国立市が住基ネットに接続していない現状において,地方公共団体として住民の福祉を図るために必要な行為であり,財務会計行為としては合理性があり,これに関して支出負担行為や支出命令を専決する者が決定を拒む余地はないのであるから,当該財務会計行為は違法とは言い難い。 また,9条1項通知返送郵便代については,料金後納の郵便料金の一部として一括した金額で請求されるから,9条1項通知返送郵便代の部分は特定できず,また,同時期に同一の市町村に転出した住民の9条1項通知がまとめて送付されたり,転入先市町村から国立市宛ての他の連絡文書と同封して送付されたりすること等もあることから,転出者数から特定することもできないのであって,住基ネットに接続していないことによる支出の部分を特定するのは困難である。人件費についても,そ もそも住基ネットへの接続又は不接続とは関係なく支出されるものであって,住基ネットに接続しないことが違法であるか否かとは関わりなく支出せざるを得ないものであるから,これらについて専決権者が支出の決定を拒むことはできないのであって,支出が違法であるとはいえない。 なお,本件人件費対象事務の執行は,職員の仕事量が若干増えたと言え 支出せざるを得ないものであるから,これらについて専決権者が支出の決定を拒むことはできないのであって,支出が違法であるとはいえない。 なお,本件人件費対象事務の執行は,職員の仕事量が若干増えたと言えるものだとしても,職員の本来の業務時間の中で処理されており,人件費の支出が増加した事実はないから,この点においても原告らの主張には理由がない。 (イ) 原告らは,住基ネットに接続しないことをもって,本件各支出の先行行為であり,当該先行行為が違法であると主張するようであるが,本件各支出は,住基ネットに接続しないことに要した費用ではなく,接続しないことによるサービス低下を防ぐために考えられる手段の中から採用して実施したものであり,不接続とは別次元の問題である。したがって住基ネットに接続しないこととは別に,各財務会計行為それ自体として,かつ,当該財務会計行為を専決する職員を基準に違法性を判断する必要があるところ,この点について原告らは具体的な主張をしていない。 このことを措くとしても,先行行為に違法がある場合であっても,先行行為が著しく合理性を欠き,そのためこれに予算執行の適正確保の見地から看過することのできない瑕疵があるといえない限り,財務会計上の行為を行う権限を有する職員は,財務会計上の行為をすべき義務があるのであって,当該財務会計上の行為は違法とはいえないところ,本件における先行行為である住基ネットに接続しないという政策決定が違法 でなく,少なくとも財務会計行為を違法とするほど明白な瑕疵があるとはいえないことは,前記(3)イのとおりである。 (ウ) なお,原告らは,住基ネットサポート委託料の支出が不要な支出であると主張するが,国立市は,将来住基ネットに再接続する状況になった場合に備えて,住民の異動データをホストコンピュータに蓄積し, (ウ) なお,原告らは,住基ネットサポート委託料の支出が不要な支出であると主張するが,国立市は,将来住基ネットに再接続する状況になった場合に備えて,住民の異動データをホストコンピュータに蓄積し,毎月1回庁内電算室において受託業者が蓄積された1か月分の住民の異動データをプログラムを投入して電磁媒体に記録しておくことを内容とする委託契約を締結しているのであって,これは再接続のために必要な支出に他ならず,違法であるとはいえない。また,その委託料は,住基ネットに接続している場合に比べて住基ネットサポート委託料は低額に収まっており,これは接続を止めているからにほかならない。 (エ) さらに,原告らは,国立市が住基ネットに接続していないことを非難し,接続するよう求めて本件訴訟を提起したものと考えられるが,住民訴訟は,地方公共団体の違法な財務会計行為について司法が是正をするものであり,制度の是非は措くとしても,明らかに経済的合理性を欠く住基ネットへの接続を住民訴訟により果たそうとするのは筋違いである。 また,原告らの請求が認められたとしても,住基ネットへの接続を命じることにはならず,むしろ住民サービスを不可能にし,住民に不利益をもたらすことになる。これらの支出は,システム上のトラブルによって一定期間住基ネットが機能しなくなった場合にも必要となるものであり,市長の判断による接続しないとの政策決定とは因果関係を欠くもの である。 第3 当裁判所の判断 1 本案前の争点①(差止めの対象となる財務会計行為が特定されているか否か。)について(1) 地方自治法242条の2第1項1号の差止請求の訴えにおいては,原告が差止請求の対象となる行為を特定しなければならず,その場合には,差止請求の対象となる行為とそうでない行為とが識別できる程度に特定さ 地方自治法242条の2第1項1号の差止請求の訴えにおいては,原告が差止請求の対象となる行為を特定しなければならず,その場合には,差止請求の対象となる行為とそうでない行為とが識別できる程度に特定されていることが必要であり,また,当該行為が行われることが相当の確実さをもって予測されるか否かの点について判断することが可能な程度に,その対象となる行為の範囲等が特定されていることが必要であり,かつ,これをもって足りるというべきである(最高裁平成3年(行ツ)第214号同5年9月7日第三小法廷判決・民集47巻7号4755頁参照)。 そこで,本件において差止請求の対象とされている本件各支出が,上記の観点から財務会計上の行為として特定されているか否かについて検討する。 (2)ア無料住民票用紙代について原告らは,国立市が無料で交付する住民票の写しの専用用紙を購入するための支出負担行為又は支出命令を差止請求の対象としているものと解されるところ,証拠(甲9,10(いずれも枝番を含む。))及び弁論の全趣旨によれば,住民票の写しの専用用紙である改ざん防止住民票用紙については,平成18年度には10万枚,同20年度には7万枚がそれぞれまとめて購入されており,その購入は,住民票の写しの交付申請がある前にされているものであって,購入の時点においては,無料で交付されるもの に使用するものと有料で交付されるものに使用するものとが区別されていないことが認められる。したがって,1回に購入する用紙のうち,無料で交付されるものに使用する枚数が何枚であるかは,当該購入の契約又はその代金の支払の時点においては不明であるといわざるを得ない。そうすると,当該財務会計上の行為のうち,原告らが差止請求の対象としている部分と,他の部分,すなわち有料で交付される住民票の写しの交付に その代金の支払の時点においては不明であるといわざるを得ない。そうすると,当該財務会計上の行為のうち,原告らが差止請求の対象としている部分と,他の部分,すなわち有料で交付される住民票の写しの交付に使用する用紙に係る部分とを識別することはできないから,差止請求の対象となる部分は特定されていないというべきである。 イ 9条1項通知返送郵便代及び現況届郵送費について原告らは,9条1項通知返送郵便代(国立市長に転出届がされたときに住民に交付した料金受取人払いの返信用封筒を用いて転入先市町村から9条1項通知が送付される際の郵便代)の支出負担行為又は支出命令及び現況届郵送費(住民が国立市役所又は国立市の出先機関に持参した現況届を日本年金機構に送付するための郵送費)の支出負担行為又は支出命令を差止請求の対象としているものと解されるところ,前提事実(5)イのとおり,上記郵便代及び郵送費は,料金後納の郵便料金の一部としてB株式会社から後日まとめて請求を受け,これを支払うことになっているが,郵便料金の請求があった時において,当該請求に係る郵便料金のうち9条1項通知返送郵便代及び現況届郵送費に該当する部分をその他の部分と識別することは可能であるというべきであり,また,9条1項通知返送郵便代及び現況届郵送費の支出負担行為及び支出命令は,それが行われることが相当な確実さをもって予測されるか否かを判断することができる程度に特定され ているということもできる。したがって,上記各行為の範囲等は,差止請求の対象として特定されているというべきである。 ウ人件費について原告らは,本件人件費対象事務に係る人件費の支出負担行為又は支出命令の差止めを求めているものと解されるが,前提事実(5)ウ及び弁論の全趣旨によれば,国立市において本件人件費対象事務は,職員と いて原告らは,本件人件費対象事務に係る人件費の支出負担行為又は支出命令の差止めを求めているものと解されるが,前提事実(5)ウ及び弁論の全趣旨によれば,国立市において本件人件費対象事務は,職員と嘱託員が,業務時間内に行っていること,職員及び嘱託員の人件費は月払いで支払われており,それは業務内容ごとに計算されるものではないことが認められるから,人件費に係る財務会計行為のうち,本件人件費対象事務に係る部分を他の部分と識別することはできない。したがって,差止請求の対象は特定されていないというべきである。 エ住基ネットサポート委託料について住基ネットサポート委託料に係る支出負担行為又は支出命令は,前提事実(4)イ及び(5)エのとおりであり,これは,他の財務会計上の行為と区別して認識できる程度に特定され,また,それが行われることが相当な確実さをもって予測されるか否かを判断することができる程度に特定されているということができる。したがって,住基ネットサポート委託料については,差止請求の対象は特定されているというべきである。 (3) 以上のとおりであるから,本件訴えのうち,無料住民票用紙代の支出及び人件費の支出の各差止めを求める部分は,その差止請求の対象となる行為が特定されていないから,不適法であって,その余の点について判断するまでもなく,却下を免れない。 (4) 次に,地方自治法242条の2第1項4号に基づき,違法又は不当な財務会計上の行為に関わった職員に損害賠償の請求をすることを求める訴えにおいても,その損害賠償の原因となる財務会計上の行為を他の財務会計上の行為と区別し,特定して認識できなければならないというべきであるから,この点についても検討する。 (5)ア無料住民票用紙代について原告らは,平成20年6月1日から同2 の行為を他の財務会計上の行為と区別し,特定して認識できなければならないというべきであるから,この点についても検討する。 (5)ア無料住民票用紙代について原告らは,平成20年6月1日から同21年5月31日までの間に無料で交付した住民票の写しの作成に使用した用紙の購入に係る支出を違法な財務会計上の行為であると主張しているところ,前記(2)アのとおり,改ざん防止用の用紙は,平成18年度と同20年度にまとめて購入されていることが認められるから,損害賠償の前提となる行為としては一応の特定はされているというのが相当である。 イ 9条1項通知返送郵便代について原告らは,平成20年6月1日から同21年5月31日までの間に転出した住民に交付された9条1項通知の返信用封筒に係る郵便代の支出を違法な財務会計上の行為であると主張しているところ,前提事実(5)イのとおり,当該郵便代は,月ごとに集計された金額を翌月に支出しており,弁論の全趣旨によれば,上記期間内に交付された返信用封筒に係る郵便代がいつ支出されたかを確定することはできないことが認められる。そうすると,損害賠償請求の前提となる財務会計行為は特定されていないといわざるを得ない。 ウ現況届郵送費について 原告らは,平成20年7月1日から同21年6月30日までの間に日本年金機構に送付した現況届に係る郵送費に係る支出を違法な財務会計上の行為であると主張しており(原告らは,上記期間に国立市に提出された現況届2680件の郵送費であるかのような主張もしているが,甲6によれば,上記期間に支出されたものを指しているものと解される。),当該行為は特定されているということができる。 エ人件費について原告らは,平成20年6月1日から同21年5月31日までの間の無料での住民票の写しの交付事務 ものを指しているものと解される。),当該行為は特定されているということができる。 エ人件費について原告らは,平成20年6月1日から同21年5月31日までの間の無料での住民票の写しの交付事務及び住民の転入転出に伴う他の市町村への書類交付事務並びに同20年7月1日から同21年6月30日までの間の現況届の送付事務に要した人件費に係る支出を違法な財務会計上の行為であると主張しているところ,前提事実(5)ウのとおり,人件費は,職員及び嘱託員のいずれに対しても月払いで支払われていて,上記各事務に対応して,上乗せした人件費が支払われたり,それに専従する職員が雇用されたりするなど,原告らの主張する人件費を他の事務に要する人件費と区別することができるような事情があったことはうかがわれないから,原告らが上記各事務に要したと主張する人件費の支出に対応する人件費の支払は特定されていないと言わざるを得ない。 オ住基ネットサポート委託料について原告らは,平成20年度の住基ネットサポート委託料の支払を違法な財務会計行為であると主張しており,これは特定されているといえる。 (6) そうすると,本件訴えの被告にAに対する損害賠償の請求を求める部分の うち,9条1項通知返送郵便代(28万7280円)及び人件費(483万0591円)に係る損害賠償の請求を求める部分,すなわち,合計511万7871円及びこれに対する平成21年7月1日から支払済みまで年5分の割合による金員の請求を求める部分は,その対象となる支出に係る行為が特定されておらず,不適法というべきであるから,その余の点について判断するまでもなく,却下を免れない。 2 本案前の争点②(監査請求期間が徒過したことにつき,正当な理由があるか否か。)について(1) 原告らが本件監査請求を行ったのは, ら,その余の点について判断するまでもなく,却下を免れない。 2 本案前の争点②(監査請求期間が徒過したことにつき,正当な理由があるか否か。)について(1) 原告らが本件監査請求を行ったのは,前提事実(6)のとおり,平成21年9月29日である。 そして,原告らが無料住民票用紙代として損害賠償の請求を求めている財務会計行為は,証拠(甲9,10(枝番を含む。)によれば,平成18年度の10万枚の改ざん防止住民票用紙の購入(以下,当該購入に係る用紙を「平成18年度購入分」という。)に係る平成19年3月28日の支出命令及び平成20年度の7万枚の改ざん防止住民票用紙の購入(以下,当該購入に係る用紙を「平成20年度購入分」という。)に係る平成20年10月31日の支出命令であると認められるところ,平成18年度購入分に係る監査請求(本件監査請求では,住民票の写しの無料交付費用が違法な支出であるとされているが,これには,実質的に用紙代金の支払が含まれていると解するのが相当である。)は,監査請求期間を徒過した後に行われたことになる(原告らが損害賠償の対象として主張している平成20年6月1日から同21年5月31日までに無料で交付された住民票の写しの用紙に,平成18年度購 入分以前の購入に係る用紙が用いられた可能性も否定できないが,そのようなものがあっても,当該購入に係る財務会計行為については,監査請求期間を徒過して監査請求がされたことは明らかである。)。 また,原告らが現況届郵送費として損害賠償の請求を求めている財務会計行為は,平成20年7月1日から同21年6月30日までに国立市役所及び国立市の出先機関に提出された現況届に係る郵送費であるところ,弁論の全趣旨によれば,その中には,平成20年9月28日以前に支出行為が行われたもの(総額4270円) 1年6月30日までに国立市役所及び国立市の出先機関に提出された現況届に係る郵送費であるところ,弁論の全趣旨によれば,その中には,平成20年9月28日以前に支出行為が行われたもの(総額4270円)が含まれていることが認められ,これらの支出行為に係る監査請求は,当該行為のあった日から地方自治法242条2項本文所定の1年の監査請求期間を徒過した後に行われていることになる。 さらに,原告らが住基ネットサポート委託料として損害賠償の請求を求めている財務会計行為は,平成20年4月1日から平成21年3月31日までに行われたものであるところ,弁論の全趣旨によれば,その中には,平成20年9月28日以前に支出行為が行われたもの(4か月分総額18万8160円)が含まれていることが認められ,これらの支出行為に係る監査請求についても,監査請求期間を徒過した後に行われていることになる。 そこで,上記のとおり監査請求が監査請求期間経過後にされたことに,同項ただし書の「正当な理由」があるか否かが問題となる。 (2)ア普通公共団体の執行機関又は職員の財務会計上の行為が秘密裡にされた場合,地方自治法242条2条ただし書にいう「正当な理由」の有無は,特段の事情のない限り,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査したときに客観的にみて当該行為を知ることができたかどうか,また, 当該行為を知ることができたと解されるときから相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきものである(最高裁昭和62年(行ツ)第76号同63年4月22日第二小法廷判決・裁判集民事154号57頁参照)。そして,このことは,当該行為が秘密裡にされた場合に限らず,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査を尽くしても客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在又は 4号57頁参照)。そして,このことは,当該行為が秘密裡にされた場合に限らず,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査を尽くしても客観的にみて監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在又は内容を知ることができなかった場合にも同様であると解すべきである。そのような場合には,上記正当な理由の有無は,特段の事情のない限り,普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて上記の程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきものである(最高裁平成10年(行ツ)第69号,第70号同14年9月12日第一小法廷判決・民集56巻7号1481頁)。 イ本件についてこれをみると,証拠及び弁論の全趣旨によれば,国立市は,本件切断の約1か月後である平成15年1月20日付けの市報に,共済年金給付支給事務や無線局免許事務等で住民票の提出を求められるので,無料で交付する旨の記事を(乙1の6),同年2月20日付けの市報に,一般旅券の渡航先の追加等の手続をする場合には,住民票の写し等を無料で交付する旨の記事を掲載した(乙1の7)後,同年5月5日付けの市報で,同年6月から旅券の申請に住民票の写しが不要になるが,国立市民は必要なので無料で交付する旨の記事を掲載して(乙1の8),その後も同様の記事を掲載し続けていること(乙1の9から11まで,乙1の14,乙1 の17)が認められ,さらに,住民票の写しの用紙に係る財務会計行為に関連する文書については情報公開請求があれば公開される状態に置かれていたこと(甲9,10(枝番を含む。),弁論の全趣旨)が認められ,これらの事実によれば,国立市の住民が相当の注意力をもって調査すれば,平成18年度購入分に係る財務会計行為の後間もなく客観 に置かれていたこと(甲9,10(枝番を含む。),弁論の全趣旨)が認められ,これらの事実によれば,国立市の住民が相当の注意力をもって調査すれば,平成18年度購入分に係る財務会計行為の後間もなく客観的に監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたというべきであり,原告らが上記財務会計行為について,その行為の後1年以内に監査請求をしなかったことにつき「正当な理由」があるということはできない。 ウまた,証拠によれば,国立市は,平成18年12月の社会保険庁における住基ネットを利用した現況確認の開始に際し,同年11月5日付けの市報において,国立市民については住基ネットを利用した現況確認ができないため,国立市役所年金係又は国立市の出先機関に現況届を持参すれば,国立市がまとめてそれらを社会保険庁に送付する旨の記事を掲載し(乙1の15),その後も市報にその旨の記事を掲載していたこと(乙1の17),現況届郵送費に係る文書については情報公開請求があれば公開される状態に置かれていたこと(甲6)が認められ,これらの事実によれば,国立市の住民が相当の注意力をもって調査すれば,現況届郵送費の支出の後間もなく客観的に監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたというべきであり,原告らが平成20年7月1日から同年9月28日までの間にされた現況届の郵送費の支出について,その財務会計行為の後1年以内に監査請求をしなかったことにつき「正当な理由」が あるということはできない。 原告らは,過去1年間の現況届郵送費について情報開示請求をしたところ,開示されたのが平成20年7月1日から同21年6月30日までの間の郵送料であったことをもって「正当な理由」がある旨の主張をするが,上記の認定事実によれば,同20年7月1日か 報開示請求をしたところ,開示されたのが平成20年7月1日から同21年6月30日までの間の郵送料であったことをもって「正当な理由」がある旨の主張をするが,上記の認定事実によれば,同20年7月1日から同年9月28日までの現況届郵送費の支出の存在が当該情報開示のときまで不明であったということはできないのであって,原告らの上記主張は採用できない。 エさらに,弁論の全趣旨によれば,住基ネットサポート委託料は,本件切断の後継続的に支払われていたこと,平成20年度の委託料については,平成20年度の国立市事務報告書に記載されており,平成19年度分以前の委託料も同様であったことが認められ,これらの事実によれば,国立市の住民が相当の注意力をもって調査すれば,住基ネットサポート委託料については,その支払の後間もなく客観的に監査請求をするに足りる程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたというべきであり,原告らが,平成20年4月1日から同年9月28日までの間にされた住基ネットサポート委託料の支出について,その財務会計行為の後1年以内に監査請求をしなかったことにつき,「正当な理由」があるということはできない。 オ以上によれば,本件訴えのうち,平成18年度購入分に係る住民票用紙代,平成20年7月1日から同年9月28日までに支出された現況届郵送費(合計4270円)及び同年4月1日から同年9月28日までに支出された住基ネットサポート委託料(合計18万8160円)について損害賠償の請求を求める部分は,適法な監査請求を経ていないから,不適法であ って,却下を免れない。 なお,原告らの損害賠償請求の求めうち,適法な監査請求を経ていない平成18年度購入分(又はそれ以前の購入分)に係る住民票用紙代に相当する損害額の部分について検討すると,平成20年度購入分 れない。 なお,原告らの損害賠償請求の求めうち,適法な監査請求を経ていない平成18年度購入分(又はそれ以前の購入分)に係る住民票用紙代に相当する損害額の部分について検討すると,平成20年度購入分の納品日が平成20年9月29日であること(乙10の2)及び同年6月1日から同年9月28日までの無料での住民票の写しの交付件数が1715件であること(弁論の全趣旨)からすると,少なくとも,上記1715件分の住民票の写しの作成には,平成18年度購入分又はそれ以前に購入された住民票用紙が使われていたと認められ,これらに係る損害賠償を求める部分(1. 98円×1715件=3395円(円未満切捨て))が適法な監査請求を経ていない部分となると解するのが相当である。 3 本案の争点①(本件切断及び本件不接続が違法で,その瑕疵が重大かつ明白であるか否か。)について(1) 住基法30条の5第1項は,「市町村長は,住民票の記載,消除又は第7条第1号から第3号まで,第7号及び第13号に掲げる事項(…略…)の全部若しくは一部についての記載の修正を行つた場合には,当該住民票の記載等に係る本人確認情報(…略…)を都道府県知事に通知するものとする。」と規定し,同条2項は,「前項の規定による通知は,総務省令で定めるところにより,市町村長の使用に係る電子計算機から電気通信回線を通じて都道府県知事の使用に係る電子計算機に送信することによつて行うものとする。」と規定しているのであって,市町村長が住民票の記載,消除等を行った場合に,都道府県知事に対し当該住民票の記載等に係る本人確認情報を送信しな いという事態は全く想定されていない。加えて,住基法30条の7第3項から6項まで及び30条の10第1項は,市町村長から都道府県知事に対し,住民に係る本人確認情報の通知があることを前 を送信しな いという事態は全く想定されていない。加えて,住基法30条の7第3項から6項まで及び30条の10第1項は,市町村長から都道府県知事に対し,住民に係る本人確認情報の通知があることを前提として,都道府県知事又は指定情報処理機関は,国の機関等からその事務に関し求めがあったときは,保存期間に係る本人確認情報を提供することを規定しているから,仮に市町村長が住民票の記載,消除等を行った場合であっても,都道府県知事に対し当該住民票の記載等に係る本人確認情報を送信しなくてもよいということになれば,一部の住民について正確な本人確認情報が保存されないという事態が発生し,国の機関等からその事務に関し求めがあったときに正確な本人確認情報を提供することができなくなることは明らかである。さらに,都道府県知事は,市町村長から通知された本人確認情報を保存すること(住基法30条の5第3項),本人確認情報の適切な管理のために必要な措置を講じること(同法30条の29第1項),区域内の市町村の住民基本台帳に脱漏若しくは誤載があり,又は住民票に誤記若しくは記載漏れがあることを知ったときは当該市町村長に通報すること(同法12条の5)などの責務を負っているから,都道府県知事が,本人確認情報の正確性を担保し,その保存,提供等の事務を適切に実施するためには,住基法30条の5第1項に基づき,区域内の全ての市町村長から,全ての住民に係る本人確認情報の通知を受けることが必要不可欠である。 そうすると,住基ネットについて一部の市町村の不参加があると,国の機関等を始めとする本人確認情報の利用者において,従来のシステムや事務処理を残さざるを得ないことになり,また,本人確認情報の提供又は利用が必 要な業務が行われる都度,不参加の市町村の住民については,ネットワーク以外の手 情報の利用者において,従来のシステムや事務処理を残さざるを得ないことになり,また,本人確認情報の提供又は利用が必 要な業務が行われる都度,不参加の市町村の住民については,ネットワーク以外の手段により当該事務に必要な氏名,住所等の情報を収集するか提出させることになるから,そのような場合には,本人確認情報を国の機関等,都道府県及び市町村で共有することにより行政コストの削減を図るという住基ネットの目的は達せられないことになる。さらに,住基ネットは,市町村間をネットワーク化し,住民基本台帳事務の広域化及び効率化を図ることを重要な行政目的としているところ,市町村においてネットワークによらない住民基本台帳事務の処理方法を残すことになると,住基法が目的とする市町村における住民基本台帳事務の効率化は著しく阻害されることにもなる。したがって,市町村は,都道府県知事に対して住民票の記載等に係る本人確認情報を電気通信回線を通じて送信するため,住基ネットに接続する法律上の義務を負うというべきである。 (2) 以上に検討したところによれば,本件切断及び本件不接続は,被告において本人確認情報を東京都知事に対して送信しないということであるから,これは,上記の法律上の義務に違反するもので,違法といわざるを得ない。そして,その違法は,住民の利便を増進するとともに国及び地方公共団体の行政の合理化に資することを目的とする住基法に明らかに違反して,その目的の達成を妨害するものであり,また,被告は,前提事実(3)ウ(オ)のとおり,東京都知事から是正の要求まで受けているのであるから,その瑕疵は重大かつ明白であるというべきである。 (3) これに対し,被告は,住基ネットにおいて,①住基ネットを構成する全機関に同一レベルの個人情報保護条例がないこと,②住民の自己情報のコン から,その瑕疵は重大かつ明白であるというべきである。 (3) これに対し,被告は,住基ネットにおいて,①住基ネットを構成する全機関に同一レベルの個人情報保護条例がないこと,②住民の自己情報のコント ロール権が確立されていないこと,③国立市の住民情報のコントロール権が確立されていないこと,④国立市ストーカー行為等の被害者支援に関する住民基本台帳事務取扱要綱に沿った被害者支援に障害とならない制度及びその運用が確立されていないこと,⑤本人確認情報を利用する国の機関等の個人情報保護が十分措置されていないこと,⑥個人情報の漏えいを防止するセキュリティ対策が十分採られていないことから,住基法36条の2の規定に基づき本件不接続を継続しているのであり,その判断に違法はない旨を主張する。 しかし,市町村のみならず,都道府県や国の行政機関は,基本的には,唯一の立法機関である国会が制定した法律を誠実に執行しなければならないのであって,このような法執行者としての立場を逸脱した事務処理を行えば法秩序が混乱を来すことは明らかであり,このことは,住基法に基づく住民基本台帳事務の実施についても全く同様である。そして,前提事実(2)イのとおり,住基法は,住民の利便の増進並びに国及び地方公共団体の行政事務の効率化を目的として,住民票コードとともに,市町村の区域を越えた住民基本台帳に関する事務の処理及び国の機関等に対する本人確認情報の提供を行う住基ネットを導入するための態勢を整備するため,全国的に正確かつ統一的な住民基本台帳事務を実施するについて市町村,都道府県,国等各行政機関の役割分担を規定したものであるから,ある地方公共団体がそこから離脱することを容認するならば,上記の住基法の目的を達することはできない。したがって,市町村長においてそのような離脱をするとい 行政機関の役割分担を規定したものであるから,ある地方公共団体がそこから離脱することを容認するならば,上記の住基法の目的を達することはできない。したがって,市町村長においてそのような離脱をするという判断をすることは許されないというべきである。 そして,行政機関が住基ネットにより住民の本人確認情報を管理,利用等する行為は,憲法13条により保障された何人も個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない自由を侵害するものでないこと及び住基ネットにより住民らの本人確認情報が管理,利用等されることによって,自己のプライバシーに関わる情報の取扱いについて自己決定する権利ないし利益が違法に侵害されるものではないことは,平成20年判決の判示するところであるところ,被告が本件切断及び本件不接続の理由として述べるもののうち,上記①,②,⑤及び⑥は,上記の権利又は利益が侵害されることを前提としたものであると解され,明らかに理由がないものというべきである。また,上記③及び④についても,結局は,住民個人の上記権利又は利益の侵害のおそれがあることを理由とするものと解されるのであるから,そのようなおそれを理由として法執行者である行政機関が法令に従った行政を行わないことを容認できないことは明らかである。そして,被告が本件切断及び本件不接続の法的根拠として主張する住基法36条の2は,その第1項が「市町村長は,住民基本台帳又は戸籍の附票に関する事務の処理に当たつては,住民票又は戸籍の附票に記載されている事項の漏えい,滅失及びき損の防止その他の住民票又は戸籍の附票に記載されている事項の適切な管理のために必要な措置を講じなければならない。」と規定しているにとどまり,その文言上,市町村長が住基ネットを利用した本人確認情報の送信をしないことを許容するようなも 票に記載されている事項の適切な管理のために必要な措置を講じなければならない。」と規定しているにとどまり,その文言上,市町村長が住基ネットを利用した本人確認情報の送信をしないことを許容するようなものということはできないのであって,同項の規定を根拠として,市町村長が,住民票の記載等を行った場合に,都道府県知事に対して当該住民票の記載等に係る本人確認情報を電気通信回線を通じて送信するもの と明示的に規定している住基法30条の5第1項及び2項の規定を,実質的に読み替えるような解釈をすることは到底許容されないというべきである。 したがって,被告の上記主張は,独自の見解であって,採用できない。 (4) さらに,被告は,住民票コードが更に拡大して利用される可能性があることから,住民のプライバシー保護の責務から本件不接続を継続することに重大かつ明白な瑕疵はない旨の主張をする。確かに,国の行政機関等において,住民票コードあるいは本人確認情報を従来の利用範囲を拡大して利用しようとする場合には,それに伴う個人の権利又は利益の侵害の可能性等に十分配慮する必要があることはいうまでもない。しかし,そのような配慮は,拡大利用をしようとする国の行政機関等において十分な対策を講じることによって実現されるべきものであって,当該対策が不十分であるような場合には,拡大利用の是非を問題とすべきであり,法執行者である地方公共団体において,抽象的な将来の危険を理由として法令上の義務の履行を拒むことが正当化されるものではないというべきであるから,被告の上記主張も採用できない。 4 本案の争点②(財務会計行為が違法であり,公金支出の差止めが認められるか否か。また,違法な公金支出についてAが損害賠償責任を負うか否か。)について(1) 公金支出の差止めの可否についてア( 本案の争点②(財務会計行為が違法であり,公金支出の差止めが認められるか否か。また,違法な公金支出についてAが損害賠償責任を負うか否か。)について(1) 公金支出の差止めの可否についてア(ア) 前記3のとおり,本件切断及び本件不接続は違法であるところ,9条1項通知返送郵便代及び現況届郵送費の支出が,本件切断及び本件不接続がなければ不要なものであることについては,争いがない。したが って,9条1項通知返送郵便代及び現況届郵送費の支出は,財務会計上の義務に違反し違法であると解することができる。 この点について,被告は,9条1項通知返送郵便代及び現況届郵送費の支出は,住基ネットに接続しないことによるサービス低下を防ぐために考えられる手段の中から採用したものであり,違法とはいえない旨主張する。確かに,本件不接続が継続したまま9条1項通知返送郵便代及び現況届郵送費の支出がされないことになると転出先市町村及び住民は,自己の負担においてこれらに係る郵便料金を負担しなければならなくなるが,それは,当該市町村又は住民と国立市との間で解決すべきものである上,そのような事態を防ぐには,本件不接続という違法状態を解消し,住基ネットに接続すれば足りるのであるから,上記被告の主張は採用できない。 (イ) もっとも,前提事実(5)イのとおり,国立市では,9条1項通知返送郵便代及び現況届郵送費については,B株式会社からの通知(請求)がされるのに応じて支出負担行為及び支出命令を行っているところ,これは,B株式会社との間で郵便の料金後納に係る基本契約を締結した上で,郵便サービスの提供を受けた対価を支払っているものであって,上記基本契約自体には,本件切断及び本件不接続を原因とする違法は認められないし,支出負担行為及び支出命令についても,上記基本契約及び郵 で,郵便サービスの提供を受けた対価を支払っているものであって,上記基本契約自体には,本件切断及び本件不接続を原因とする違法は認められないし,支出負担行為及び支出命令についても,上記基本契約及び郵便サービスの提供によって国立市が負った債務の履行として行われるものであるから,当該財務会計行為に財務会計上の義務に関する違法が認められるからといって,その履行を拒むことができるものではないという べきであり,その差止めを請求することは許されないというべきである。 イ(ア) 次に,住基ネットサポート委託料は,前提事実(4)イのとおり,住民の異動データのバックアップを取るために支出されているものであるところ,これは,本件不接続の状態が継続しているために必要なものであって,住基ネットに接続していれば必要ないものであると認められるから,当該委託料の支出も違法というべきである。この点について,被告は,当該委託料は,将来住基ネットに再接続する状況になった場合に備えて支出しているもので,再接続のために必要な支出であるから違法ではない旨主張するが,本件不接続が違法である以上,その状態を直ちに解消すべきであって,そうすれば将来の再接続に備えた支出も不要となるのであるから,再接続に備えた支出であることをもって,当該支出が適法となると解することはできない。この点について,再接続のために技術的観点等からある程度の準備期間が必要になることも考えられなくはなく,そのような場合には,一定期間の上記委託料の支払が必要となる事態も生じ得るが,そのような支出の必要性についての主張立証はないから,そのような事態を考慮して上記委託料の支払が適法であると解するのは相当でない。なお,被告は,上記委託料の支出は住基ネットに接続した場合より低額に収まっているなどとしてその正当性の 張立証はないから,そのような事態を考慮して上記委託料の支払が適法であると解するのは相当でない。なお,被告は,上記委託料の支出は住基ネットに接続した場合より低額に収まっているなどとしてその正当性の主張をするようであるが,住基ネットに接続した場合に必要となる支出は,違法な支出でないことは明らかであって,比較の対象として不適切である。 (イ) もっとも,普通公共団体における契約の締結が,財務会計上の義務に違反し違法であるとしても,当該契約が私法上無効とはいえない場合 には,普通公共団体は契約の相手方に対して当該契約に基づく債務を履行すべき義務を負うのであるから,当該債務の履行として行われる行為自体はこれを違法ということはできず,このような場合に住民が地方自治法242条の2第1項1号所定の住民訴訟の手段によって普通地方公共団体の執行機関又は職員に対して当該債務の履行として行われる行為の差止めを請求することは,許されないものというべきである(最高裁昭和56年(行ツ)第144号同62年5月19日第三小法廷判決・民集41巻4号687頁参照)。 本件についてこれをみると,前提事実(5)エのとおり,住基ネットサポート委託料は,年度当初に委託契約(以下「本件委託契約」という。)を締結するという支出負担行為を行い,その後これに基づいて毎月支出命令がされているのであり,本件委託契約の締結は,本件不接続を前提とするものであるから,財務会計上の義務に違反する違法なものであるが,本件委託契約の相手方が民間の法人であること(甲8)等に照らすと,上記違法事由は,本件委託契約の私法上の効力を無効とするようなものではないというのが相当である。そうすると,既に締結された本件委託契約に基づいて支払義務が生じている住基ネットサポート委託料に係る支出命令を行うことは 件委託契約の私法上の効力を無効とするようなものではないというのが相当である。そうすると,既に締結された本件委託契約に基づいて支払義務が生じている住基ネットサポート委託料に係る支出命令を行うことは違法とはいえず,当該行為の差止めを請求することは許されない。 (ウ) しかしながら,他方,将来の住基ネットサポート委託料の支払の差止めについては許されないものではなく,また,被告が本件切断及び本件不接続に重大かつ明白な瑕疵はなく,本件各支出も適法であると主張 していることからすれば,今後も住基ネットサポート委託料の支出がされるであろうことは,相当な確実さをもって予測されるところであるから,本件判決確定時において支払義務が生じているものを除く住基ネットサポート委託料の支出は差し止められるべきものである。 (2) 損害賠償の請求の可否についてア前記3のとおり,本件切断及び本件不接続は違法であり,原告らは,そのような状況下で行われた本件各支出も違法であると主張しているところ,弁論の全趣旨によれば,本件各支出は,所定の財務会計法規に則って行われたものであると認められるから,本件切断及び本件不接続が違法であることによって,無料住民票用紙代,現況届郵送費及び住基ネットサポート委託料の支出が違法として損害賠償請求が認められるべきであるか否かについて検討する。 イ無料住民票用紙代について前記1(2)アのとおり,改ざん防止住民票用紙は,まとめて事前に購入されているところ,その購入に係る支出命令の時点において,購入する用紙のうちに無料で交付される住民票の写しに利用するものがあるか,また,あるとしてそれが何枚なのかは全く不明であると考えられるから,将来無料で交付される住民票の写しに利用する可能性があるからといって,支出命令の時点において,その 票の写しに利用するものがあるか,また,あるとしてそれが何枚なのかは全く不明であると考えられるから,将来無料で交付される住民票の写しに利用する可能性があるからといって,支出命令の時点において,その全部又は一部が違法とはならないというのが相当である。したがって,適法な監査請求を経ていると認められる平成20年購入分に係る支出命令は違法であるとは認められない。 ウ現況届郵送費及び住基ネットサポート委託料について (ア) 地方自治法242条の2の定める住民訴訟は,普通地方公共団体の執行機関又は職員による同法242条1項所定の財務会計上の違法な行為又は怠る事実の予防又は是正を裁判所に請求する権能を住民に与え,もって地方財務行政の適正な運営を確保することを目的とするものであるところ,同法242条の2第1項4号所定の当該職員に損害賠償の請求をすることを当該普通地方公共団体の長に対して求める訴訟は,このような住民訴訟の一類型として,財務会計上の行為による当該職員の個人としての損害賠償義務の履行を求めるものにほかならない。したがって,当該職員の財務会計上の行為を捉えて上記規定に基づく損害賠償責任を問うことができるのは,たとえこれに先行する原因行為に違法事由が存する場合であっても,原因行為を前提としてされた当該職員の行為自体が財務会計上の義務に違反する違法なものであるときに限られる(最高裁昭和61年(行ツ)第133号平成4年12月15日第三小法廷判決・民集46巻9号2753頁)。 そして,当該職員が財務会計上の行為をするに当たって職務上負担する義務には,地方自治法138条の2の地方公共団体の誠実執行義務等も含まれると解されることに照らすと,原因行為を前提としてされた財務会計上の行為が財務会計上の義務に違反するものであるかは,当該原因行為に には,地方自治法138条の2の地方公共団体の誠実執行義務等も含まれると解されることに照らすと,原因行為を前提としてされた財務会計上の行為が財務会計上の義務に違反するものであるかは,当該原因行為に重大かつ明白な瑕疵があるなど財務会計的観点から看過し難い違法があったにもかかわらず,当該財務会計行為が行われたか否かによって判断すべきものというべきである。 本件についてこれを見ると,前提事実(5)イ及びエのとおり,現況届の送 付のための郵送費に係る支出負担行為及び支出命令は市民課長が,住基ネットサポート委託料に係る支出負担行為は総務部長が,支出命令は市民課長がそれぞれ国立市長から専決を任されて行ったものであるところ,本件不接続は,前記3(2)のとおり住基法に違反するものであり,その瑕疵は重大かつ明白なものであるところ,そのことは,前提事実(3)ウ(オ)のとおり,東京都知事から是正の要求を受けるなどしていることに照らせば,上記の各職員にも明らかであったと認められる。したがって,本件不接続は違法であり,その瑕疵は,重大かつ明白であって財務会計的観点から看過し難いものであったというのが相当である。そうすると,本件切断及び本件不接続を前提としてされた現況届郵送費及び住基ネットサポート委託料に係る上記各財務会計上の行為は,いずれも財務会計上の義務に違反する違法なものであったというべきである。 (イ) そして,本件においては,地方自治法242条の2第1項4号前段の規定に基づき,財務会計職員としての国立市長個人であるAの損害賠償責任が追及されているところ,前提事実(5)のとおり,国立市長の権限に属する現況届郵送費及び住基ネットサポート委託料に係る支出負担行為及び支出命令は,あらかじめ他の職員に専決により処理させることとされているけれども,地方公 ,前提事実(5)のとおり,国立市長の権限に属する現況届郵送費及び住基ネットサポート委託料に係る支出負担行為及び支出命令は,あらかじめ他の職員に専決により処理させることとされているけれども,地方公共団体の長は,その権限に属する一定の範囲の財務会計上の行為をあらかじめ特定の職員に委任することとしている場合であっても,当該財務会計上の行為を行う権限を法令上本来的に有するものとされている以上,当該財務会計上の行為の適否が問題とされている住民訴訟において,地方自治法242条の2第1項4号前段にいう「当該職員」に該 当するものと解すべきであり,委任を受けた職員が委任に係る当該財務会計上の行為を処理した場合においては,長は,同職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止すべき指揮監督上の義務に違反し,故意又は過失により同職員が財務会計上の違法行為をすることを阻止しなかったときに限り,自らも財務会計上の違法行為を行ったものとして,普通公共団体に対し,当該違法行為により当該普通地方公共団体が被った損害につき賠償責任を負うものと解するのが相当であって,このことは,財務会計上の行為を専決により処理させた場合も同様である(最高裁平成2年(行ツ)第137号同3年12月20日第二小法廷判決・民集45巻9号1455頁,最高裁昭和62年(行ツ)第148号平成5年2月16日第三小法廷判決・民集47巻3号1687頁,最高裁平成4年(行ツ)第156号同9年4月2日大法廷判決・民集51巻4号1673頁)。 そこで,Aに上記のような指揮監督上の義務違反があったか否かについて検討すると,本件切断及び本件不接続は,前提事実(3)のとおり,被告において,住基ネットには,個人情報保護等の観点等から問題があると考え,市民に対する意向調査でもこれに懸念を示す意見が多数寄せられたこ 討すると,本件切断及び本件不接続は,前提事実(3)のとおり,被告において,住基ネットには,個人情報保護等の観点等から問題があると考え,市民に対する意向調査でもこれに懸念を示す意見が多数寄せられたこと等を踏まえ,その政治的判断として政策決定をしたものと解されるところではあるが,前記3のとおり,それは違法であり,その瑕疵は重大かつ明白であるというべきであって,許容される余地のないものと解されるのであるから,Aは,そのような政策決定を撤回して職員が各財務会計行為を行うことを阻止すべき指揮監督上の義務を負うものというべきであり,これを阻止しなかったことについて故意が認められるというべきである。 したがって,Aには,財務会計上の違法行為が認められ,それによって国立市が被った損害につき賠償責任を負うというのが相当である。 エそこで,本件不接続により行われた違法な公金支出によって国立市が被った損害額について検討すると,その金額は,以下のとおり,合計39万8040円であると認められる。 (ア) 現況届郵送費平成20年7月1日から同21年6月30日までの支出分2万5990円(争いがない)監査請求期間が徒過したもの 4270円差引損害額 2万1720円(イ) 住基ネットサポート委託料平成20年4月1日から同21年3月31日までの支出分56万4480円(争いがない)監査請求期間が徒過したもの 18万8160円差引損害額 37万6320円第4 結論よって,本件訴えのうち,原告らが被告に対し,無料住民票用紙代及び本件人件費対象事務を執行するための人件費の支出の差止めを求める部分,並びにAに対して531万3696円及びこれに対する遅延損害金の損害賠償の請 件訴えのうち,原告らが被告に対し,無料住民票用紙代及び本件人件費対象事務を執行するための人件費の支出の差止めを求める部分,並びにAに対して531万3696円及びこれに対する遅延損害金の損害賠償の請求をするよう求める部分は,いずれも不適法であるからこれらを却下し,その余の部分に係る請求は,原告らが被告に対し,本件判決確定時において支払義務が生じているものを除く住基ネットサポート委託料の支払の差止めを求め,さ らに,Aに対し,39万8040円及びこれに対する不法行為の後の日である平成21年7月1日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金を国立市に支払うよう求める限度で理由があるからこれらを認容し,その余の請求は理由がないからいずれも棄却することとし,訴訟費用の負担については,本件訴訟が住民訴訟であり,その主な争点が本件切断及び本件不接続の違法性であるところ,これについては原告らの主張どおり違法と認められたことなどを考慮し,行政事件訴訟法7条,民訴法61条,64条ただし書を適用して,主文のとおり判決する。 東京地方裁判所民事第38部 裁判長裁判官杉原則彦 裁判官角谷昌毅 裁判官澤村智子
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