令和5(ネ)639 損害賠償請求控訴事件

裁判年月日・裁判所
令和7年6月10日 福岡高等裁判所 長崎地方裁判所 令和1(ワ)258
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判決文本文42,019 文字)

主文 1 一審原告らの控訴をいずれも棄却する。 2 一審被告の控訴に基づき、原判決中一審被告の敗訴部分を取り消す。 3 前項の部分につき、一審原告A1、一審原告A2、一審原告A3及び一審原告Cの請求をいずれも棄却する。 4 訴訟費用は、1、2審を通じて、一審原告らの負担とする。 事実及び理由 第1 控訴の趣旨 1 一審原告ら(1) 原判決を次のとおり変更する。 (2) 一審被告は、別紙請求額一覧表の「当事者」欄記載の各一審原告に対し、それぞれ同表の「金額」欄記載の金員及びこれに対する令和元年9月10日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。 2 一審被告主文2、3項同旨 第2 事案の概要(以下、略称は、特に断らない限り、原判決の例による。)1(1) 事実経過亡A、亡B及び一審原告C(本件労働者ら)は、一審被告が設営する長崎造船所で就労したことがあったと主張している。 本件労働者らは、じん肺法に基づくじん肺健康診断を受け、いずれもじん 肺管理区分の管理2と決定された。 なお、亡Bは原審手続中に死亡し、さらにその訴訟承継人の一人も同手続中に死亡したことから、原審口頭弁論終結時における亡Bの訴訟承継人は、一審原告B1、一審原告B2、一審原告B3及び一審原告B4の4名(以下、同人らを「一審原告亡B相続人ら」という。)となった。 (2) 訴訟物 一審原告らは、原審において、一審被告が換気対策等をすべき安全配慮義務に違反したために、本件労働者らがじん肺にり患し、精神的苦痛を受けたと主張して、債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求として、一審被告に対し、本件労働者らそれぞれにつき慰謝料と弁護士費用の合計3520 たために、本件労働者らがじん肺にり患し、精神的苦痛を受けたと主張して、債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償請求として、一審被告に対し、本件労働者らそれぞれにつき慰謝料と弁護士費用の合計3520万円(一審原告亡B相続人らはその法定相続分に応じた額)及びこれに対す る訴状送達の日の翌日である令和元年9月10日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求めた。 (3) 原判決の骨子及び控訴提起ア原審は、次のとおり、判決した。 亡Aについて、じん肺り患の事実は認められないものの、一定程度の健康被害を受けたとして、慰謝料87万5000円、弁護士費用8万7500円の合計96万2500円の限りで、一部認容した。 亡Bについて、じん肺り患の事実は認められるが、続発性気管支炎にり患したとは認められず、その請求権は時効により消滅したとして、一審原 告亡B相続人らの請求を全部棄却した。 一審原告Cについて、じん肺及び続発性気管支炎にり患したとして、慰謝料1300万円、弁護士費用130万円の合計1430万円の限りで、一部認容した。 イ一審原告ら及び一審被告は、それぞれ敗訴部分を不服として、本件控訴 を提起した。 なお、一審原告らは、控訴に当たって、本件労働者らそれぞれの請求額を3080万円(慰謝料2800万円、弁護士費用280万円)とした(請求の減縮の趣旨と解する。)。 2 前提事実 次のとおり補正するほかは、原判決「事実及び理由」の「第2 事案の概要 等」2(原判決2頁8行目から11頁20行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、「原告A」とあるものは、すべて「亡A」に改める。 ( び理由」の「第2 事案の概要 等」2(原判決2頁8行目から11頁20行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、「原告A」とあるものは、すべて「亡A」に改める。 (1) 原判決2頁24行目の「同社」を「三菱造船株式会社」に、25行目から26行目にかけての「乙ア136」を「甲ウ2」に改める。 (2) 原判決3頁4行目「長崎造船所において」を削除する。 (3) 原判決3頁9行目「訴訟承継した」から10行目末尾までを「一審原告亡B相続人らが訴訟承継した。」に改める。 (4) 原判決3頁10行目末尾を改行し、次のとおり加える。 「(ウ) 亡Aは、令和6年▲月▲日死亡し、妻である一審原告A1、子である一 審原告A2及び一審原告A3が相続し、訴訟承継した(以下、同一審原告ら3名を「一審原告亡A相続人ら」という。弁論の全趣旨)。」(5) 原判決6頁19行目「15条所定の検査」を「15条所定の範囲内の検査」に改める。 (6) 原判決7頁11行目末尾を改行して、次のとおり加える。 「 また、肺機能検査による区分は、次のとおりである(甲イ1〔74頁〕)。 F(-) じん肺による肺機能障害が認められない。 F(+) じん肺による肺機能の障害があるが、F(++)には達しないと認められる。 F(++)じん肺による著しい肺機能障害があると認められる。」 3 争点に関する当事者の主張次のとおり補正し、後記4のとおり当審における当事者の補充主張(ただし、じん肺り患の認定方法に関するもの)を加えるほかは、原判決「第4 争点に関する当事者の主張」1から7(原判決12頁4行目から52頁2行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、「 、じん肺り患の認定方法に関するもの)を加えるほかは、原判決「第4 争点に関する当事者の主張」1から7(原判決12頁4行目から52頁2行目まで)に記載のとおりであるから、これを引用する。ただし、「原告A」とあるもの は、すべて「亡A」に改める。 (1) 原判決16頁4行目「後記被告協力医」を「D医師、E医師、F医師及びG医師(以下、これら4名の医師を「被告協力医」という。)」に改める。 (2) 原判決16頁7行目「H医師」の次に「(以下「H医師」という。)」を加える。 (3) 原判決16頁23行目「co(心臓の大きさ・形状)の異常所見」を「c o(心臓の大きさ・形状の異常)の所見」に改める。 (4) 原判決18頁15行目を「plc(胸膜石灰化像)及びco(心臓の大きさ・形状の異常)の各所見が」に改める。 (5) 原判決19頁17行目「胸膜班」を「胸膜の変化」に、18行目「co(心陰影の拡大・形状)の異常所見」を「co(心臓の大きさ・形状の異常) の各所見」にそれぞれ改める。 (6) 原判決21頁11行目及び23頁23行目「珪肺」を「けい肺」に改める。 (7) 原判決21頁21行目から23行目にかけての「D医師、E医師、F医師及びG医師(以下「被告協力医」という。)」を「被告協力医」に改める。 (8) 原判決49頁21行目「本件労働者1人当たり」から22行目末尾までを 次のとおり改める。 「本件労働者ら一人当たり、慰謝料2800万円、弁護士費用280万円を認めるのが相当である。」(9) 原判決50頁1行目「管理の」を削除し、2行目「そのうち」から6行目末尾までを次のとおり改める。 「本件労働者ら一人当たり、慰謝料1700万円と相応の弁護士費用を ある。」(9) 原判決50頁1行目「管理の」を削除し、2行目「そのうち」から6行目末尾までを次のとおり改める。 「本件労働者ら一人当たり、慰謝料1700万円と相応の弁護士費用を認めるのが相当である。」 4 当審における当事者の補充主張(ただし、じん肺り患の認定方法に関するもの)(一審被告の主張) (1) じん肺管理区分の決定に高度の信用性を認めてじん肺り患を事実上推定す ることについてアじん肺診査医の審査において、じん肺管理区分の管理1(じん肺の所見がないと認められるもの)と管理2(X線写真の像が第1 型で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの)を分ける医学的根拠は、X線写真の像が第1 型に該当するか否かのみであり、肺機能検査や胸部臨 床検査の結果は反映されていない。 イじん肺管理区分の決定で使用できる診断方法は、X線写真に限定されている。X線写真は重なり像であるから、陰影が確認できても、それが実際の肺内での変化を反映したものか明らかとはならない。 また、じん肺り患には線維化が生じていることが必要条件であるが、X 線写真で第1型の陰影が認められて管理2と決定されたとしても、医学的にはX線写真上で一定の分布を有する陰影が認められたことを意味するだけである。その陰影が線維化によって生じたことが確認されたものではない。 ウじん肺管理区分の決定手続では、じん肺と他の疾患との鑑別が行われな い。また、ばく露した粉じんの種類と陰影の特徴との整合性の検討も行われない。 エこれらからすれば、じん肺管理区分の管理2と決定されたからといって、医学的にじん肺にり患していることに結びつかない。同決定に高度の信用性は認められず、じん肺り患の事実が事実上推定されるこ い。 エこれらからすれば、じん肺管理区分の管理2と決定されたからといって、医学的にじん肺にり患していることに結びつかない。同決定に高度の信用性は認められず、じん肺り患の事実が事実上推定されることはない。 (2) CT画像所見の位置づけCT画像はX線写真よりも診断精度が高いのであるから、じん肺り患の事実は端的にCT画像所見に基づいて判断されなければならない。 そして、同事実の立証責任は一審原告らが負担しているのであるから、CT画像所見によって真偽不明とされるのであれば、同事実は認められない。 (一審原告らの主張) (1) じん肺管理区分の決定には高度の信用性が認められること及び事実上の推定が働くことアじん肺管理区分の決定手続では極めて慎重な二重の医学的審査がなされている。 また、地方じん肺診査医は、じん肺に関する相当の学識及び経験を有す る医師のうちから厚生労働大臣によって任命されており、全国的に統一された基準に基づき、管理区分決定を公平に行っている。 イじん肺管理区分の管理4の決定を受けた者、及び、管理2又は3の決定を受けた者のうち法定合併症にり患した者は、民事上及び公法上の具体的な財産的請求権を取得する。これは、じん肺管理区分決定の高度の信用性 を基礎としているからにほかならない。 ウこれらからすれば、じん肺管理区分の決定による推定は、高度の蓋然性を有するものであって、法律上の推定に準じるほどの強い推定力を有するといえる。したがって、本証と同じ程度の反証がなされない限り、じん肺り患の事実の推定は覆らないというべきである。 (2) CT画像所見は信用性がないことア CT検査は発展途上の技術であって、信用性が定まっていない。 イ現在に至るまで、じん り患の事実の推定は覆らないというべきである。 (2) CT画像所見は信用性がないことア CT検査は発展途上の技術であって、信用性が定まっていない。 イ現在に至るまで、じん肺り患を判断するための基準となるCT画像(標準CT画像)が作成されていない。そのため、CT画像所見による評価には客観性の担保がなく、読影者の主観的評価が入り込む余地がある。 ウそうすると、じん肺り患の事実を認定するに当たって、CT画像には信用性がないか、あるとしてもその証明力は制限されており、有用性を活用する限りの参考とされるにとどまるというべきである。 第3 当裁判所の判断 1 当裁判所は、原判決とは異なり、本件労働者らがじん肺にり患したとの事実 は認められず、かつ、粉じんばく露を原因とする健康被害が生じたとも認めら れないことから、一審原告らの請求をいずれも棄却するのが相当であると判断する。その理由は次のとおりである。 2 じん肺り患の事実の主張立証責任と、事実認定の方法(1) 主張立証責任債務不履行又は不法行為と事実的因果関係のある被害(損害)の発生は、 損害賠償請求をするため又は債務者に責任を帰するための前提事実であるから、これを請求する者が主張立証責任を負う。 本件では、じん肺り患の事実は、一審原告らが主張立証しなければならない(ただし、後記のとおり、じん肺法の管理区分制度における各管理区分に該当すると決定されれば、じん肺り患は事実上推定されたというべきである が、反証により覆され得る。)。 (2) 認定の方法裁判所は、管理区分決定によりじん肺り患が事実上推定されるとしても、じん肺り患の事実を認定するに当たっては、その自由な心証のもと、現時点における医学的知見に基づいて、CT (2) 認定の方法裁判所は、管理区分決定によりじん肺り患が事実上推定されるとしても、じん肺り患の事実を認定するに当たっては、その自由な心証のもと、現時点における医学的知見に基づいて、CT画像及びX線写真(以下、両者を併せ て、「放射線画像」ということがある。)から得られる所見、粉じんばく露歴、各人に認められる症状、各種検査結果等を総合的に見て、これを認定するか否かを判断するのが相当である(民訴法247条)。 敷衍すると、じん肺にり患したといえるためには、ばく露した粉じんに応じて見られる特徴的な画像所見が相当程度あることが前提とされると考えら れるから、画像所見の証明力が最も高い。そして、これに加えて、じん肺ばく露歴、症状、各種検査結果等も総合的に見て、じん肺にり患した事実が認められるか否かが判断されるべきである。 なお、放射線画像上、特徴的な所見が相当程度認められない場合でも、当該労働者の粉じんばく露歴や症状、各種検査結果等について検討して、じん 肺り患の事実を認めることはあり得る。 (3) 前記(2)のとおりとする理由アじん肺り患の事実の認定について、組織検査による病理検査の証明力が最も高いといえるが、侵襲性の問題等から現実的でなく(甲イ53〔49頁〕、弁論の全趣旨)、現実的には、それ以外の証拠により認定せざるを得ず、その中で最も証明力が高いのは、放射線画像(本件の場合、 CT画像とX線写真)ということができる。 そして、X線写真は、三次元の対象を二次元で表現するものであり、肺内の立体的構造・変化が同一平面に重なり像となって現れるため、X線写真上に陰影が認められたとしても、必ずしも、実際の病変の形態を表しているとは限らないし、胸部のどの箇所での変化であるのか正確に捉 の立体的構造・変化が同一平面に重なり像となって現れるため、X線写真上に陰影が認められたとしても、必ずしも、実際の病変の形態を表しているとは限らないし、胸部のどの箇所での変化であるのか正確に捉 えられるものでもない(乙イ1の1〔76頁〕、16の2〔198頁〕、20の3〔5頁〕、23の3〔87頁〕、24の4〔19頁〕、55〔Ⅰ-2頁〕、177〔95頁〕)。他方、CT画像には後記(4)イのとおり信用性があり、X線写真にはない長所(濃度分解能が高い、スライス厚に応じて三次元的な状態をより正確に把握できるなど)も存在する。 結局、現時点では、CT画像とX線写真は、互いに補完する関係にあるといえるから(甲イ14〔285頁〕、16〔406頁〕、乙イ16の2〔198頁〕、20の3〔5頁〕、24の3〔1、6頁〕、27の3〔402頁〕、33の3〔32頁〕、193の3〔222頁〕)、医学上の診断、ひいては損害賠償請求の可否に係る事実認定に用いられるべ き画像を、CT画像とX線写真のいずれか一方に限定するべきではない。 なお、CT画像の有用性・優位性を示す複数の文献が存在するが、それらもX線写真の診断上の有用性(空間分解能が高いなど)を否定するものではないと解する。 イ画像所見を重視すべき理由について補足する。 じん肺では、吸入した粉じんの種類によって、胸部画像所見の特徴が異 なる(乙イ3の3〔114頁〕)。多くの文献が、粉じんによってじん肺を分類し、その種類ごとに画像所見の特徴を示しているのは(甲イ4、7、13から15、30、乙イ1の1、4の3~5、5、9、13の3、27の3、38の3~6、39の3、40の3、57、162の2・4、169の3、170の2、171)、じん肺の種類に応じて、特徴的な 画像所見があ 0、乙イ1の1、4の3~5、5、9、13の3、27の3、38の3~6、39の3、40の3、57、162の2・4、169の3、170の2、171)、じん肺の種類に応じて、特徴的な 画像所見があることを前提としているからと考えられる。被告協力医の意見書も同旨のことを指摘している(乙イ55、158)。 そして、環境省中央環境審議会石綿健康被害判定小委員会は、令和2年当時の最新の医学知見に基づき「医学的判定に関する留意事項」を取りまとめ、石綿肺と医学的に判定するに当たっては、放射線画像上、線維 化所見が石綿肺としての特徴を相当程度に有していることが必要であるとした(乙イ62〔8頁以下〕)。これは石綿肺に関するものではあるが、画像所見の位置付けは他のじん肺の類型においても同様と考えられる。 また、厚生労働省は、制定からすでに40年以上が経過した「じん肺診 査ハンドブック」(甲イ1)を精査して更新等するために、令和4年に、労災疾病臨床研究事業費補助金による研究を実施し、令和6年3月、その成果として、新しい「じん肺診査ハンドブック(案)」(乙イ245)を提示した(乙イ228、244)。ここでは、じん肺の放射線画像所見と病理所見の関連について、じん肺の種類別に概説されている。 これらからすれば、じん肺にり患したというためには、じん肺管理区分決定による事実上の推定があるとしても、まずは、放射線画像上、特徴的な所見が相当程度あることが前提になるといえる。 ただし、特徴的な画像所見が認められるとしても、それらはじん肺にとって特異的なものとは限らないから、それのみでじん肺と判断すること は必ずしもできない(乙イ27の3〔402頁〕)。このような画像所 見が相当程度認められた場合には、他の疾患との鑑別のために、症 ものとは限らないから、それのみでじん肺と判断すること は必ずしもできない(乙イ27の3〔402頁〕)。このような画像所 見が相当程度認められた場合には、他の疾患との鑑別のために、症状や各種検査結果などその他間接事実も合わせて検討し、じん肺り患の有無を判断するのが相当である。 ウなお、前述のとおり、前記画像所見がないからといって、直ちにじん肺り患の事実が認められないものではないから、そのような場合には、一審 原告らにおいて、特徴的な画像所見以外の事実により、じん肺にり患したことを主張立証することになる。肺の線維化の原因には様々なものがあるし(乙イ197〔7頁〕)、前記説示のとおり、特徴的な画像所見が認められた場合でさえ、他の疾患との鑑別のために、その他の間接事実を含めた検討を要するのであるから、特徴的な画像所見が得られずともじん肺に り患したというためには、粉じん作業職歴があり、放射線画像上陰影がみられたということに加え、他の疾患との鑑別も含めた具体的な主張立証を要するというべきである。 もっとも、画像所見以外の間接事実として、例えば咳や呼吸困難等の症状の発現があり、これらの症状はじん肺でよくみられるものであるが、 じん肺に限ったものではない(乙イ1の1〔31、41頁〕)。そのため、それら症状があるとの事実が認められたからといって、直ちにじん肺り患の事実が認められるものではない。各種検査結果等も同様であると考えられる。 結局、放射線画像上、じん肺に特徴的な所見が相当程度に認められない 場合には、たとえじん肺り患と矛盾しない症状や各種検査結果が認められたとしても、じん肺にり患したとの事実が認められるとは限らない。 エ以上の理由で、じん肺り患の事実を認定するための方法を前記( 合には、たとえじん肺り患と矛盾しない症状や各種検査結果が認められたとしても、じん肺にり患したとの事実が認められるとは限らない。 エ以上の理由で、じん肺り患の事実を認定するための方法を前記(2)のとおりとした。 (4) 一審原告らの主張について アじん肺管理区分の決定に高度の信用性があるとの主張について (ア) 一審原告らは、決定されたじん肺管理区分に相当する程度のじん肺にり患しているとの事実が事実上推定されるに当たり、管理区分の決定に高度の信用性が認められると主張し、その理由として、じん肺健康診断の結果を経て決定されるじん肺管理区分は、二段階の医学的な診断又は診査を経ていることを指摘する。 (イ) しかし、じん肺管理区分の決定はじん肺法が定める目的のためになされる行政上のものであり、損害賠償責任を負わせるための民事訴訟とは目的が異なる。 すなわち、じん肺法は、ILO(国際労働機関)分類を基本として、X線写真像の区分を定めている(乙イ5〔55頁〕、34〔23、10 5頁〕)。このILO分類は、病理学的概念を定義するものではなく、粉じん作業者のスクリーニング(ふるい分け)やサーベイランス(疾患の動向を定期的に観察して、その結果を治療や予防等の対策に反映させること)のために国際的に用いられるものである(乙イ43の1〔8頁〕)。 そして、厚生労働省の第14回労働政策審議会安全衛生分科会じん肺部会(平成26年実施)において、じん肺の診断基準及び手法に関する調査研究について報告がされた。そこでは、じん肺健康診断での画像所見がX線写真のみでなされていることに関し、胸部CT画像の有用性に鑑み、その利用を促進すべき旨の意見が出されている情勢の下で、胸部 CT ついて報告がされた。そこでは、じん肺健康診断での画像所見がX線写真のみでなされていることに関し、胸部CT画像の有用性に鑑み、その利用を促進すべき旨の意見が出されている情勢の下で、胸部 CTは、①X線写真と比べて放射線被ばく量が高いこと、②じん肺健康診断の費用は事業者が負担していること、③読影技術の普及が必要であることの課題があり、これらを解決できるよう研究を進める旨が説明された(乙イ47の3)。被ばく量、費用負担及び読影技術の普及というのは、同検査を大量の被検者に実施するからこそ生じる課題であって、 これらが議論されるということは、じん肺健康診断が、大量の被検者を 対象とするスクリーニングを目的としていることが所与の前提となっているからだといえる。 また、じん肺法に基づくじん肺健康診断の目的は、じん肺の早期発見及び進展防止のための措置を講ずるに当たっての基本的な情報を得ることにあり、その情報は、分析、検討に基づいて、粉じん作業従事労働者 の健康状態の把握と作業環境評価の指標としても活用し得るとされていて(乙イ34〔91頁〕)、サーベイランスもその目的であるといえる。 このように、じん肺健康診断は、スクリーニングやサーベイランスを目的としていて、じん肺管理区分の決定は、これらを目的とする健康診断の結果に基づく程度のものであり、確定診断のためになされる高度に 医学的な見地からなされる診断とは異なる(例えば、前者は偽陽性の者が一定程度取り込まれることを容認していると解する。)というほかない。 (ウ) じん肺法は、じん肺健康診断を、X線写真による検査によって行うとしている(じん肺法3条1項1号)。 しかし、前記のとおりX線写真による検査の正確性には一定の限界があり、また、X じん肺法は、じん肺健康診断を、X線写真による検査によって行うとしている(じん肺法3条1項1号)。 しかし、前記のとおりX線写真による検査の正確性には一定の限界があり、また、X線写真で偽陽性が生じることも指摘されている(乙イ24の3〔6頁〕、25の2〔6、14頁〕、26の2〔16頁〕。前記のとおり、このことはスクリーニングやサーベイランスという目的からは容認し得るものであると考えられる。)。 (エ) じん肺管理区分の決定手続では、じん肺健康診断でじん肺の所見ありとされた者について、地方じん肺診査医が診断又は審査をする。そこでは、まず、①職歴調査と②X線写真から、管理1か、管理2以上のいずれかとされるが、その段階では、胸部臨床検査、肺機能検査、結核精密検査等の結果は考慮されていない(乙イ2〔48頁〕)。そして、①職 歴調査は、裏付け調査等によりその正確性が担保されているのかという 疑問があるし、②画像所見としてのX線写真による診断には、前記(ウ)のとおり、その信用性に一定の限界がある。 このように、二段階の診断がなされているといっても、管理1と管理2以上を区分する判断に、前記じん肺法上の目的に資する程度を超えて、医学的な正確性があるとは限らない。 (オ) 複数の医師が、じん肺法に基づく管理区分決定は、通常の医学的な診断とは異なり得る旨を指摘している。 例えば、中央じん肺診査医を務め、労働者健康安全機構岡山労災病院副院長、労働者健康安全機構アスベスト疾患研究・研修センター所長等を歴任した岸本卓巳医師(乙イ102、175、弁論の全趣旨)は、日 本内科学会での教育講演(平成19年9月発刊の日本内科学会雑誌に掲載)で、胸部画像上の読影所見とじん肺法でのアス ンター所長等を歴任した岸本卓巳医師(乙イ102、175、弁論の全趣旨)は、日 本内科学会での教育講演(平成19年9月発刊の日本内科学会雑誌に掲載)で、胸部画像上の読影所見とじん肺法でのアスベスト肺の診断との間には相違があることを認識しておくべきであると述べている(乙イ36〔236頁以下〕)。 地方じん肺診査医を務め、岡山大学放射線部副部長、川崎医科大学総 合放射線医学教授等を歴任したF医師(乙イ55)は、平成23年発表の論文で、医学的なじん肺と法律上・保障上のじん肺は異なる旨を指摘している(乙イ39の3〔468頁〕)。 獨協医科大学放射線医学教室の荒川浩明医師は、平成26年発表の論文で、行政上診断基準が定められているじん肺と、医学的な意味でのじ ん肺とは異なるので、両者を峻別して考えるべきであると指摘している(乙イ4の3〔1409頁〕)。 北海道中央労災病院の大塚義紀医師は、令和3年発表の論文で、日常的にじん肺の診療に携わっていない産業医に向けて、じん肺診断の流れ等を概説している。その中で、じん肺法に基づくじん肺健康診断では、 CT画像上じん肺の陰影が存在したとしても、また、病理組織にけい肺 結節が存在したとしても、X線写真所見が標準写真の1型に到達していなければ、じん肺と診断されないと指摘しており(乙イ173〔87頁以下〕)、じん肺法上の診断は医学的な診断とは異なる旨を明らかにしている。 被告協力医は、じん肺の診断方法について、じん肺法上、胸部単純X 線写真に限定されているため、じん肺法に基づいて行政上じん肺と認定されることと、医学的な意味でじん肺にり患していることとは別問題であり、両者は峻別して考えなければならないと指摘している(乙イ55〔Ⅰ-3頁〕)。なお、被告協力医は、4名全員 いて行政上じん肺と認定されることと、医学的な意味でじん肺にり患していることとは別問題であり、両者は峻別して考えなければならないと指摘している(乙イ55〔Ⅰ-3頁〕)。なお、被告協力医は、4名全員が、じん肺診査医を務めている(乙イ55〔Ⅲ〕)。 産業医科大学は、産業医のために編集した平成22年の文献(乙イ41の1)で、じん肺法では、じん肺の診断をX線写真で判定することになっているため、真の医学的判断とは異なる可能性が十分にあると指摘している(乙イ41の2〔84頁〕)。 本件に関連する訴訟(長崎地方裁判所平成28年(ワ)第89号外。 三菱長崎造船所じん肺訴訟第3陣。以下「第3陣訴訟」ということがある。)で、労働者側の証人であったI医師も、同訴訟の法廷において、じん肺法に基づくX線写真での判断には法的な評価が含まれており、100%の意味での医学判断とは異なると証言している(甲イ53〔46頁〕)。 これらからすれば、じん肺法によるじん肺管理区分の決定は、医学的な見地からなされる診断とは異なり得るというのが、医学的な知見であるといえる。 (カ) 前記(イ)から(オ)からすれば、じん肺健康診断の結果を経て決定されるじん肺管理区分に一定の信用性があり、同決定がなされたことにより、 管理区分に相当する程度のじん肺にり患したとの事実が事実上推定され るとしても、その信用性は高度のものであるとはいえず、したがってこれを反証により覆すことは可能である。一審原告らの前記主張は採用することができない。 イ CT画像は信用性がないとの主張について(ア) 一審原告らは、CT検査は発展途上の技術であり、信用性が定まって おらず、じん肺法がX線写真を基調に診断 用することができない。 イ CT画像は信用性がないとの主張について(ア) 一審原告らは、CT検査は発展途上の技術であり、信用性が定まって おらず、じん肺法がX線写真を基調に診断するとされているのは、CT検査がいまだじん肺り患の有無・程度を判定するのに十分な医学的根拠を有していないからであると主張する。 しかし、そもそもじん肺健康診断の目的がスクリーニングとサーベイランスにあることから、利便性・簡便性、放射線被ばく量、費用といっ た点により、じん肺法上、X線写真によるとされていることには一定の合理性がある。CT検査の信用性の程度とは関係がない。 そして、じん肺の種類に応じた病理や画像の特徴は、医学的に明らかにされており(病理につき、乙イ4の3~5、38の3~6、39の3、59の2、245。画像の特徴につき、前記(3)イ)、それに基づいて、 医学的知識を有している者がCT画像を読影してじん肺のり患について判断することは十分に可能であると認められる。 したがって、一審原告らの上記主張は採用することができない。 なお、「じん肺の診断基準及び手法に関する調査研究」(甲イ25)では、客観性をもったCT画像による評価基準の確立は困難とされてい るが、同研究は、じん肺健康診断での適切な診断基準及び手法の確立を目的とするものであり(甲イ25〔1頁〕)、あくまで発刊時である平成29年3月の時点で、じん肺健康診断での標準CT画像の作成が難しいとしたものといえる。この研究結果は、上記判断を左右するものではない。 また、麦谷耕一外による「じん肺検診におけるヘリカルCTの有用性」 (甲イ17)は、じん肺の粒状陰影の検出には、ヘリカルCTよりも胸部単純X線撮影が優れているとするが、この考察は また、麦谷耕一外による「じん肺検診におけるヘリカルCTの有用性」 (甲イ17)は、じん肺の粒状陰影の検出には、ヘリカルCTよりも胸部単純X線撮影が優れているとするが、この考察は、X線写真とCT画像とで所見が異なる場合には、X線写真所見の方が正確であることを前提とするものであって、その根拠が端的に示されておらず、採用することができない。 (イ) 一審原告らは、CT画像にはじん肺り患を判断する基準となるべき標準画像がないために客観性の担保を欠いており、読影者の主観的評価が入り込むおそれがあると主張する。 じん肺診査ハンドブックでは、X線写真の読影に当たり標準X線写真を用いるとされており(甲イ1)、比較対照しながらどの区分に該当す るか検討することとなるが、標準X線写真を用いて読影するにせよ、その作業には読影者の主観が入るのであって(一審原告らも、X線写真の陰影について「経験と勘」で読み解くことが重要であると主張している。)、一審原告らの主張は採用することができない。 かえって、けい肺労災病院じん肺研修部長の志田寿夫医師は、平成1 5年発表の論文で、標準X線写真について、12階尺度の0/0、0/1、1/0の区別は困難であり、読影者が、粉じん作業職歴というバイアスのために、じん肺陰影が存在していないにもかかわらず、じん肺所見ありと判定することがあるとしており(乙イ23の3〔98頁〕)、X線写真での診断は、標準X線写真を用いるとしても、主観によって左 右される趣旨の指摘をしている。被告協力医も、標準X線写真と比較して、どの標準写真に近いか判断するのは容易ではなく、読影者によってばらつきが生じることがあるとしており(乙イ55〔Ⅰ-3頁〕)、X線写真にも主観的評価が入るものである( 力医も、標準X線写真と比較して、どの標準写真に近いか判断するのは容易ではなく、読影者によってばらつきが生じることがあるとしており(乙イ55〔Ⅰ-3頁〕)、X線写真にも主観的評価が入るものである(なお、被告協力医4名全員が地方じん肺診査医を務めているのは、前記認定のとおりである。)。 安全配慮義務違反が争われる民事訴訟手続でも、じん肺り患の有無に ついては、後方視的に、現時点で入手可能な医学的知見を踏まえて、判断するのが相当である。そして、CT検査の有用性は医学的に確立していること(乙イ17の3〔12頁〕)、じん肺の種類に応じた病理と画像所見の特徴があることからすれば、一審原告らがいう「じん肺標準CT画像」が存在しないとしても、画像所見上の特徴を踏まえて画像診断 を行い、それを証拠とすることに何ら問題はない。もちろん読影者による診断それ自体が医学的に見て合理性を有するかという点は当然に検討されるべきことがらであるが、その意味での信用性は、本件に限らずあらゆる事実認定で検討されるものである。CT画像という証拠の証拠価値を一般的に否定ないし低いものとする一審原告らの主張は採用できな い。 (ウ) 一審原告らは、撮影条件や機器によって、病変の実態を正確に抽出できるか未確定であるとして、CT画像は信用できないと主張し、I医師外11名も同趣旨の意見を述べる(甲イ50〔21頁〕)。 しかし、例えば、肺病変の存在診断に適切なスライス厚について、 10mmであれば、1mm程度の病変までは確認できるとされている(乙19の2〔102頁〕)。また、令和3年版「画像診断ガイドライン」(乙イ206の5〔100頁〕)では、胸部領域のCT検査の場合、一般的には、肺尖から肺底部までの連続スキャンが推奨され、スライス厚は 19の2〔102頁〕)。また、令和3年版「画像診断ガイドライン」(乙イ206の5〔100頁〕)では、胸部領域のCT検査の場合、一般的には、肺尖から肺底部までの連続スキャンが推奨され、スライス厚は5mmが汎用されているが、必要に応じて3から5mm 程度の中層厚CTを併用するとされているほか、びまん性肺疾患に関する撮像法についても特に定められている(平成28年版も同様であり、同年版より前のガイドラインからの変更もない。乙イ205の5〔158頁〕)。このように最適な条件についての基準が設定されており、医療機関も十分にそれを把握しているということができる。 そして、本件において、医療機関は、じん肺り患の精査を目的とし て、本件労働者らにCT検査を実施したのであるから(乙カ10の1、乙キ7の1、乙ケ4の2)、それら検査は上記目的にとって最適な条件で実施されたと考えられる。そうすると、問題とされるべきは、前記(イ)に判示のとおり、検査により得られるCT画像をどのように読影し所見を得るかという点であり、CT検査や画像それ自体の信用性は 肯定できる。 これに反するI医師らの上記意見は採用できないし、一審原告らの上記主張も採用することはできない。 ウ画像所見は特徴的なものに限られないとの主張について(ア) 一審原告らは、CT画像所見にじん肺の種類に応じた特徴的な画像は 必要ではないと主張し、その根拠として、①CT画像所見によるという前提が誤っていること、②証拠として提出された文献には、特徴的な所見は何かについて記載されているが、特徴的な所見がなければじん肺と認定することはできないとは記載されていないこと、③一審被告の証人として出廷したF医師も、CT画像での粒状影などの特徴的な所見の有 無は ついて記載されているが、特徴的な所見がなければじん肺と認定することはできないとは記載されていないこと、③一審被告の証人として出廷したF医師も、CT画像での粒状影などの特徴的な所見の有 無は本質的ではないと証言していること(証人F〔速記録75項〕)、④H医師は、典型的な所見が認められるのは全症例の6から7割であり、陰影の分布が特徴的でないからといって、最も原因として確実視できる粉じんの影響がないと判断することはできないとの意見を述べていること(甲イ68〔17頁〕)を指摘する。 しかし、①CT画像所見の信用性が肯定できることは前記説示のとおりである。②前記(3)イで判示するとおり、それら文献からすれば、じん肺にり患したというためには、まずは、放射線画像上、特徴的な所見が相当程度あることが前提になっているということができる。③F医師は、限局的な粒状影の有無を議論することは本質的ではなく、びまん性 肺疾患であるじん肺では、肺のある程度の領域に、ある程度の強さの変 化が出ているかどうかが重要である旨証言しているのであって(証人F〔速記録75項〕)、特徴的な画像所見の有無は本質的ではないなどとは述べていない。一審原告らの主張は同医師の証言を正確に理解していない。④前記(2)、(3)イで判示するとおり、特徴的な画像所見がないからといって、じん肺り患の事実が認められないものではないが、その場 合には、一審原告らが、他の事実によりじん肺り患を具体的に主張立証しなければならない。H医師の上記意見は、非特徴的な場合にも、り患の事実は認めることができるというにとどまる。 したがって、一審原告らの上記主張は採用することができない。 (イ) 一審原告らは、本件労働者らは長崎造船所で多種多様な粉じんにばく も、り患の事実は認めることができるというにとどまる。 したがって、一審原告らの上記主張は採用することができない。 (イ) 一審原告らは、本件労働者らは長崎造船所で多種多様な粉じんにばく 露したから、典型的・特徴的なじん肺の画像所見が見られなかったとしてもそれは当然のことであるし、審良正則医師(以下「審良医師」という。)も、けい肺、石綿肺、溶接工肺の画像所見について、非特異的であり、粉じんばく露歴、呼吸機能検査所見、理学的所見を合わせて臨床診断をすることが必要であるとしており(乙イ27の3〔402頁〕)、 典型所見が認められなかったからといって、じん肺り患が否定されることにはならないと主張する。 これについては、特徴的な画像所見が認められなくても、一審原告らがじん肺り患の事実を具体的に主張立証するのであれば、これが認められる場合があるのは、前記(2)、(3)ウに判示のとおりである。 なお、一審原告らが主張するように、複数の種類の粉じんにばく露することはあり得ると思われる。しかし、肺の線維化を生じさせるには粉じんに大量にばく露することが必要となるのであって(じん肺が発生するか否かは肺実質に沈着した粉じんの多寡による。乙イ1の1〔29頁〕)、当該労働者の作業職歴に従って、最も大量にばく露したと認め 得る粉じんに応じた特徴的な画像所見の有無を検討するのが相当である。 その上で、当該粉じんによるじん肺り患が認められないというのであれば、他の粉じんへのばく露によるじん肺り患の事実の立証の成否という問題を検討することになる。 また、審良医師の上記論文の趣旨は、そこで詳説されている画像所見はじん肺に特徴的なものであるが、じん肺以外の疾患でも認められる非 特異的な所見であるため 問題を検討することになる。 また、審良医師の上記論文の趣旨は、そこで詳説されている画像所見はじん肺に特徴的なものであるが、じん肺以外の疾患でも認められる非 特異的な所見であるため、画像所見のみでじん肺り患と診断してはならないという点にあり、必ずしも一審原告らの主張の根拠となるものではない。 エその他主張について一審原告らは、じん肺り患の事実認定の方法に関して、その他にも種々 の主張をするが、前記(2)、(3)の判断を左右するものではなく、いずれも採用することができない。 (5) 小括以下では、まず後記3でじん肺の種類及び特徴についての医学的知見を認定し、後記4で本件労働者らの粉じん作業職歴を認定する。そして、後記5 で本件労働者ら各人にじん肺り患が認められるか検討する。 3 じん肺の種類及び特徴後掲の各証拠及び弁論の全趣旨により認められる事実は、次のとおりである。 なお、これら認定は、原判決「事実及び理由」第5の3(1)欄(原判決60頁21行目から64頁19行目まで)を補正して引用するものである(主な補 正部分はゴシック体で記載する。)。 (1) じん肺の種類じん肺は、吸入した粉じんの種類や量によって病変の発生機序やX線写真、CT画像(以下、特に断らない限り胸部CT画像をいう。)の画像所見が異なり、労働省安全衛生部労働衛生課(当時)編「じん肺診査ハンドブッ ク」(甲イ1)においては、「けい肺」、「石綿肺」、「その他のじん肺」 の3つに大別されている。その他のじん肺は、粉じんの種類により種々のものがあるが、本件に関係するものとして、溶接工肺(鉄肺・酸化鉄肺)がある。(甲イ1、乙イ1の1)(2) けい肺アけい肺の特徴等 けい肺は 他のじん肺は、粉じんの種類により種々のものがあるが、本件に関係するものとして、溶接工肺(鉄肺・酸化鉄肺)がある。(甲イ1、乙イ1の1)(2) けい肺アけい肺の特徴等 けい肺は、遊離珪酸を含む粉じんの吸入によって発生する。遊離珪酸は肺に吸い込まれた後、マクロファージ等に貪食されリンパ流に乗って肺から排除されるが、その途中に沈着して結節状の線維化病巣(けい肺結節)を形成する。遊離珪酸粉じんはリンパ流の動きが相対的に少ない上葉、背側に多く貯まり易いため、けい肺結節は上葉、背側に生じ易く、 リンパ路に沿って小葉中心、小葉間隔壁、臓側胸膜などに多く生じる。 けい肺結節は、密度が高くなるに従ってより大きな結節を形成し、1cmを超えたけい肺結節は進行性塊状線維症(PMF)と呼ばれる。また、けい肺結節は肺門部や縦隔リンパ節にも生じる。 けい肺は、採石業、採鉱業、窯業、鋳物業、金属製錬業、セメント製造 業、船舶製造業、珪酸化学工業等で発生し得る。 イけい肺の画像所見の特徴(ア) X線写真上肺野優位に比較的境界明瞭な1~5mm程度の粒状影がみられる。 じん肺の進行とともに粒状影の密度が増していき、中下肺野に拡がる。 基本的に左右均一に分布するが、不均一な場合は右肺野優位に出現し、内層背側優位に出現することが多い。さらに進行すると、癒合して大陰影(PMF)がみられることがある。 (イ) CT画像粒状影は上肺野背側より優位に分布し、吸入粉じんが沈着し易い細気 管支部で線維化病巣を形成することにより、小葉中心性分布を示し、そ のほか小葉間隔壁、胸膜下等の広義間質に分布する。粒状影は辺縁明瞭でコントラストの高い結節陰影を呈する。進行すると粒状影の癒合による大きな結節影(塊 ことにより、小葉中心性分布を示し、そ のほか小葉間隔壁、胸膜下等の広義間質に分布する。粒状影は辺縁明瞭でコントラストの高い結節陰影を呈する。進行すると粒状影の癒合による大きな結節影(塊状の線維化巣)がみられることがある。 (以上につき、甲イ1、11、50、52、乙イ1の1、4の3、37、38の3・4) (3) 石綿肺ア石綿肺の特徴等石綿肺は、通常、石綿粉じんの高濃度ばく露により大量に吸入することによって発生する。吸入された石綿線維をマクロファージが貪食することと、石綿線維が直接肺胞上皮細胞を障害することから一連の生体反応 が生じてびまん性間質性線維化をきたす。石綿粉じんは、遊離珪酸と異なり、線維状粉じんであり、末梢肺に到達後の貯留率が高いため、両側下葉肺底部や上葉下部の胸膜下領域から線維化が生じ、呼吸細気管支から、周囲肺胞壁・終末細気管支壁・肺胞道壁の間質部に沿って拡がり、緩徐に進行する。粗い網目状や、辺縁不明瞭な星芒状細葉中心性線維化 巣を形成し、進行すると蜂巣肺を形成することがあるが、頻度は高くはない。また、石綿線維に鉄蛋白が付着して石綿小体が形成され、石綿小体の検出、計測によって、石綿ばく露の程度を評価できる場合がある。 石綿肺は、石綿加工業、石綿セメント製造業、断熱性石綿製品、ブレーキライニングの製造等、石綿製品取扱作業等で発生し得る。 イ石綿肺の画像所見の特徴(ア) X線写真両側下肺野優位に線状影・網状影等の不整形陰影がみられる。両側下肺外側部から上方に進展する下葉優位、背側優位の分布を呈し、進展するに従い、中肺野から上肺野に広がり、線条影・網状影が増強し、心陰 影が不鮮明となり、蜂巣肺が出現することがある。また、胸膜プラーク 上方に進展する下葉優位、背側優位の分布を呈し、進展するに従い、中肺野から上肺野に広がり、線条影・網状影が増強し、心陰 影が不鮮明となり、蜂巣肺が出現することがある。また、胸膜プラーク やびまん性胸膜肥厚のような胸膜病変を伴うことが多く、特に胸膜プラークは石綿ばく露の指標として重要である。ただし、胸膜プラークは低濃度石綿ばく露でも生じるため、これが認められたからといって、石綿肺と診断されるものではない。 (イ) CT画像 下肺野・背側優位で、両側下葉肺底部や上葉下部の胸膜下領域に初期病変が認められる。細気管支周囲の線維化を反映して、胸膜直下に小葉中心性に分布する数mm大の粒状影がみられ、進行した症例でも、病変の軽微な上中肺野の胸膜下にみられる。病変が進行すると、胸膜下粒状影が連結して胸膜下線状影を形成する。さらに病変が進行すると、小葉 内間質肥厚像、小葉間隔壁肥厚像を呈し、すりガラス影を伴うことがあり、さらに、牽引性気管支拡張が生じ、蜂巣肺所見を呈することがある。また、胸膜下楔状影や肺実質内帯状影、モザイク状影がみられることがあり、胸膜プラークやびまん性胸膜肥厚も石綿ばく露を示す指標となる。 (以上につき、甲イ1、11、50、52、乙イ1の1、4の4、9、37、38の3・6、60、62、91)(4) 溶接工肺ア溶接工肺の特徴等溶接工肺は、溶接の際に発生する酸化鉄等のヒューム(高温により溶接 面から気化した金属が急速に冷却され凝縮して生じた個体粒子。酸化鉄が主であるが、母材、溶接棒、被覆材の種類によりケイ素、マンガン、チタン、アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、クロム、ニッケル、炭素等種々の成分が含まれる。)を吸入することにより発生する。吸入 が、母材、溶接棒、被覆材の種類によりケイ素、マンガン、チタン、アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、クロム、ニッケル、炭素等種々の成分が含まれる。)を吸入することにより発生する。吸入された酸化鉄主体の粉じんは終末細気管支から呼吸細気 管支及びその周囲肺胞に達し、排泄されなかった酸化鉄粉じんは肺胞内 でマクロファージに貪食されて存在する。多くの場合、線維化を起こさず、粉じん作業離脱後、肺内の粉じんが排出され、画像所見が改善することがあるが、一部酸化鉄粉じん沈着部の細葉や小葉が収縮し、肺胞隔壁から網状線維増殖をきたし、粉じん巣を形成し、膠原線維化することにより線維化が生じ、肺胞壁の線維性肥厚、膠原線維の増殖・結節形 成、肺気腫などの不可逆的変化をきたすことがある。 溶接工肺(鉄肺・酸化鉄肺)は、電気溶接作業、ガス切断、グラインダー研磨、鉄鉱採鉱作業等で発生し得る。溶接作業の内容によっては、石綿ばく露を受け、石綿関連病変の所見を有することもある。 イ溶接工肺の画像所見の特徴 (ア) X線写真主たる所見は、中下肺野を中心に左右均等に分布する0.5~2mm大の比較的大きさがそろった軟らかい(影が淡い)小粒状影であり、けい肺等に比べ影が淡く辺縁が不鮮明なものが多い。縦隔リンパ節腫大は伴わず、通常大陰影は形成しない。進行例では、全肺野に微細結節状陰 影が密に分布する。 (イ) CT画像境界不明瞭な小葉中心性の淡い微細結節影、分岐状影及び淡い小斑状影がびまん性に現れることが特徴的であり、分岐状影は、細気管支周囲に鉄の貪食を伴うマクロファージが沈着することによるものと考えら れ、進行すると分岐状影周囲にすりガラス影を伴うようになり、さらに小葉中心性の微細粒状影や 徴的であり、分岐状影は、細気管支周囲に鉄の貪食を伴うマクロファージが沈着することによるものと考えら れ、進行すると分岐状影周囲にすりガラス影を伴うようになり、さらに小葉中心性の微細粒状影や結節状のすりガラス影を認めることがある。 (以上につき、甲イ20、50、52、乙イ1の1、4の5、37、38の5、57、171) 4 本件労働者らの粉じん作業職歴 (1) 亡A ア争いのない事実等(ア) 亡Aが次の期間に各会社に所属していた事実は、当事者間に争いがない。 ① 昭和32年6月1日から昭和35年7月17日まで株式会社日本冷熱工産工事部 ② 昭和35年12月26日から昭和40年1月6日まで合資会社吉本協運③ 昭和51年10月12日から昭和52年2月24日まで株式会社日冷鉄工(イ) また、亡Aが、少なくとも、前項①、②の期間、長崎造船所で作業 をしていた事実も認められる。 一審被告は同事実につき不知とするが、一般的に見て、複数の作業場所で就労した者の場合(しかも、①は訴訟提起の60年以上も前の事実である。)、どこでどのような作業をしたのかという点で記憶の減退や混乱はあり得るとしても、長崎造船所という、長崎のみならず全国的 に有数の大規模かつ著名な作業所で就労したという事実それ自体について、記憶違いをするとは考え難い。 また、長崎造船所での作業職歴がないのに虚偽を述べて訴訟提起をしても、就労の事実は客観的に裏付けがあって虚偽が発覚するおそれが高く、亡Aもそのことは認識していたと認められるから、そのようなリス クを冒してもなお訴訟提起をするとも考え難い。 したがって、前項①、②については、長崎造船所で作業をしたという亡Aの供述を採用し、同事実を認めるの 識していたと認められるから、そのようなリス クを冒してもなお訴訟提起をするとも考え難い。 したがって、前項①、②については、長崎造船所で作業をしたという亡Aの供述を採用し、同事実を認めるのが相当である。 (ウ) 他方、前記(ア)③の期間については、亡A自身、明確に記憶しておらず(甲カ3、亡A本人)、長崎造船所で就労していた事実は認められな い。 イ長崎造船所での作業内容について(ア) 一審原告亡A相続人らは、亡Aについて、前記ア(ア)の各期間は長崎造船所で主として防熱・溶接作業に従事し、粉じんにばく露したと主張し、亡Aは、日冷鉄工を除いて、同趣旨の供述等(甲カ3、亡A本人)をする。 しかし、じん肺健康診断結果証明書(甲カ2、5)には粉じん作業職歴が記載されているものの、その裏付けとなる資料は不明である。 じん肺管理区分の決定手続では、事業者の粉じん作業従事証明の提出が求められ、事業場の廃止等によって事業者の証明を得られないときは、客観的に確認し得る資料によって事業者の証明に代え、同資料も得られ ないときは、都道府県労働局が申請者の粉じん作業従事の有無を調査する(乙イ6)が、亡Aについて、日本冷熱工産及び吉本協運の粉じん作業従事証明は見当たらず、日本冷熱工産及び吉本協運に対する調査がなされた形跡もない。 じん肺健康管理手帳(甲カ8)、石綿健康管理手帳(甲カ9)に記載 されている粉じん作業職歴も裏付けとなる資料が不明である。 一審原告亡A相続人らは、第3陣訴訟でのJの供述等(乙ア95、125)によって作業内容は立証されていると主張するが、同人に関与する供述等にとどまり、亡Aが長崎造船所でどのような作業に従事したのか明らかにするものではない。 (イ) 他方 5、125)によって作業内容は立証されていると主張するが、同人に関与する供述等にとどまり、亡Aが長崎造船所でどのような作業に従事したのか明らかにするものではない。 (イ) 他方において、亡Aには胸膜プラークが認められ(争いがない)、どの作業所におけるものか、石綿肺を発症する程度のものであったかは明らかではないとしても、少なくとも石綿にばく露した事実は推認することができる。 また、長崎造船所では、亡Aが作業を行なっていた昭和32年にはけ い肺所見が認められた労働者が確認されていたし(甲ア21)、同人が 作業をしていた昭和33年から昭和40年までの粉じん調査の結果、粉じん自体の存在は認められており(甲ア23から27)、粉じんにばく露する環境であったといえる。 そこで、亡Aが主張するような粉じん作業(原判決添付別紙4-1)に係る職歴を具体的に認定・判断させる直接的な証拠はないものの、石 綿にばく露する作業に従事したことを前提として、亡Aについて、じん肺り患の事実及び健康被害の事実が認められるか検討することとする。 (2) 亡Bア争いのない事実等(ア) 亡Bが、昭和21年9月から昭和23年2月までの間、一審被告の鉄 艤装職として在籍していた事実は、当事者間に争いがない。 (イ) また、亡Bが次の各期間に各会社に所属していた事実は、当事者間に争いがない。 ① 昭和32年4月から昭和38年6月まで長崎船舶装備株式会社② 昭和38年6月から同年10月まで日本冷熱工産有限会社 ③ 昭和41年4月から昭和42年2月まで株式会社丸菱商会本部④ 昭和42年3月から同年4月まで合資会社長崎精工社⑤ 昭和 ら同年10月まで日本冷熱工産有限会社 ③ 昭和41年4月から昭和42年2月まで株式会社丸菱商会本部④ 昭和42年3月から同年4月まで合資会社長崎精工社⑤ 昭和42年4月から昭和50年9月まで丸菱商会本部⑥ 昭和51年10月から昭和52年2月まで日冷鉄工⑦ 昭和53年7月から昭和61年9月まで丸菱商会 (ウ) 前記(イ)のうち、長崎造船所作成の作業資格証明書(甲キ10)、電気溶接作業指名者証(甲キ11)、臨時入場許可証(甲キ12)によって客観的に裏付けられる③、⑤、⑦の期間中のすべて又はその一部は、長崎造船所での作業に従事していたと認められる。 (エ) 他方、それ以外の①、②、④、⑥の期間(加えて、場合によっては、 ③、⑤、⑦の期間の残部)については、客観的な裏付けを欠くところ、 前記(1)ア(イ)のとおり、通常は長崎造船所での作業に従事していたとの事実について記憶違い等は生じず、同事実を認めることができると考えられるものの、供述者の認知機能が低下しているような場合には、記憶の減退や記憶違いが生じており、そのようにいうことは困難である。 亡Bは、平成27年6月には両側慢性硬膜下水腫(後に血腫に移行)、 アルツハイマー型認知症と診断され、同年7月に長崎北徳洲会病院に入院した際に実施されたMMSEは30点中9点(重度認知症の疑いあり)であったが、同年8月は30点中17点(中等度認知症の疑いあり)に改善して、退院した(乙キ3、39)。しかし、同年9月に転倒して救急搬送されて入院し、同月実施のHSD-Rは30点中9点(やや高度 の認知症の疑いあり)と低下しており、同年10月1日実施のMMSEは30点中20点(中等度認知症の疑いあり)で、同 転倒して救急搬送されて入院し、同月実施のHSD-Rは30点中9点(やや高度 の認知症の疑いあり)と低下しており、同年10月1日実施のMMSEは30点中20点(中等度認知症の疑いあり)で、同月3日からアリセプトが処方された(乙キ40の2、41)。 これらからすれば、亡Bの認知機能は遅くとも平成27年10月当時には相当に低下しているものと認められ、その供述等がその記憶に従っ たものか不明といわざるを得ず、それ以降に作成された申立書(平成29年4月作成。乙キ5)や陳述録取書(令和2年2月作成。甲キ3)は採用することができない。その他に①、②、④、⑥の期間(加えて、場合によっては、③、⑤、⑦の期間の残部)の作業場所が長崎造船所であったことを認めるに足りる証拠はない。 したがって、これら期間について、亡Bが長崎造船所での作業に従事していたとは認められない。 イ長崎造船所での作業内容について(ア) 一審原告亡B相続人らは、亡Bについて、長崎造船所で主として鉄鋼艤装作業に従事し、粉じんにばく露したと主張する。 このうち、昭和21年9月から昭和23年2月まで一審被告の鉄艤装 職として在籍していたことは当事者間に争いはなく、同事実からすれば、その間は長崎造船所で鉄鋼艤装作業に従事していたとの事実を認めることができる。 しかし、丸菱商会に所属している間の長崎造船所での作業内容について、じん肺健康診断結果証明書(甲キ2)は、亡Bの認知機能の低下の 点からは、その正確性に疑義があるし、裏付けとなる資料も不明である。 また、丸菱商会の粉じん作業従事証明は見当たらないし、丸菱商会に対する調査がされた形跡もない。じん肺健康管理手帳(甲キ9)には、従事した粉じんに係る業務について、 し、裏付けとなる資料も不明である。 また、丸菱商会の粉じん作業従事証明は見当たらないし、丸菱商会に対する調査がされた形跡もない。じん肺健康管理手帳(甲キ9)には、従事した粉じんに係る業務について、何の記載もない。 (イ) 他方、亡Bには胸膜プラークが認められ(争いがない)、どの作業所 におけるものか、石綿肺を発症する程度のものであったかは明らかではないとしても、少なくとも石綿にばく露した事実は認められる。 そこで、亡Aでの判示と同様に、亡Bについても、その主張する作業(原判決添付別紙4-2)に係る職歴の具体的な認定・判断はできないとしても、粉じんにばく露する作業に従事したことを前提として、じん 肺り患の事実及び健康被害の事実が認められるか検討することとする。 (3) 一審原告Cア争いのない事実一審原告Cが昭和41年7月1日から昭和50年12月16日までの間、長崎造船所で電気配線作業を行なっていたことは当事者間に争いがない。 イ長崎造船所での作業内容についてその作業の際に、粉じんにばく露したか当事者間に争いがあるが、一審原告Cには胸膜プラークが認められ(争いがない)、どの作業所におけるものか、石綿肺を発症する程度のものであったかは明らかではないとしても、少なくとも石綿にばく露した事実は認められる。 そこで、亡Aでの判示と同様に、一審原告Cについても、その主張する 作業(原判決添付別紙4-3)に係る職歴の具体的な認定・判断はできないとしても、粉じんにばく露する作業に従事したことを前提として、じん肺り患の事実及び健康被害の事実が認められるか検討することとする。 5 じん肺り患の事実の有無 (1) 亡Aア一審原告亡A相続人らは、亡Aが主として防 したことを前提として、じん肺り患の事実及び健康被害の事実が認められるか検討することとする。 5 じん肺り患の事実の有無 (1) 亡Aア一審原告亡A相続人らは、亡Aが主として防熱及び溶接の作業に従事し、石綿粉じんや溶接ヒューム等にばく露したと主張していることから、石綿肺又は溶接工肺にり患したと認められるか検討する。 そして、前記説示のとおり、管理区分決定により上記り患が事実上推定 されるとしても、まずは、放射線画像に粉じんの種類に応じた特徴的な所見が認められるかを検討する。 イ X線写真による所見について(ア) H医師の証言等の検討H医師は、亡Aが石綿肺にり患しているが、溶接工肺とも考えられる と証言し (証人H)、同医師作成の意見書(甲イ59。以下「H意見書」という。)では、亡Aがじん肺にり患しているとの意見を述べている。 そして、H医師は、H意見書で、令和2年3月2日のX線写真について、両肺に石灰化した胸膜プラークが多数認められること、粒状影につ いて、両側中肺野に複数存在し、12階尺度の1/1と評価できること、不整形陰影について、左下肺野及び右下肺野に存在し、1/0から1/1と評価できることを指摘し、法廷でも同趣旨の証言をする。 まず、粒状影について、H医師は上記のとおりとするが、被告協力医はこれを否定しており、それぞれの読影結果が異なり、いずれの証明力 が高いか決し難いから、相互に補完する関係にあるCT画像について、 検討すべきである(後記ウ)。 次に、不整形陰影について、令和2年3月2日のX線写真上、左下肺野に不整形陰影が認められることは、当事者間に争いがない。また、被告協力医は、上記X線写真では右下肺野に不整形陰影は認められないとするも に、不整形陰影について、令和2年3月2日のX線写真上、左下肺野に不整形陰影が認められることは、当事者間に争いがない。また、被告協力医は、上記X線写真では右下肺野に不整形陰影は認められないとするものの、CT画像上、左右下葉にすりガラス陰影が認められるとし ている(乙イ55〔Ⅱ-1-3頁、Ⅱ-1-7頁〕)。この点についても、CT画像において、さらに検討するのが相当である(後記ウ)。 (イ) その他医師の読影の検討a 亡Aのじん肺管理区分の決定手続では、K1診療所のK2医師作成の平成29年11月17日付けじん肺健康診断結果証明書(甲カ2) が提出されている(補正後の前提事実)。 同手続で診断に供されたのは、平成29年10月30日のX線写真であり、K2医師は、じん肺健康診断では、粒状影及び不整形陰影のいずれについても、12階尺度の1/0とした(甲カ2)。また、地方じん肺診査医は、第1型であり、じん肺管理区分の管理2に当たる とした(甲カ1)。 地方労災医員のL医師は、平成29年10月30日のX線写真について、両肺に粒状影が散見され12階尺度の1/0に当たり、不整形陰影も認められ1/0に当たるとの意見を述べる(乙カ12の1)。 同じく地方労災医員のM医師は、同じX線写真について、粒状影は 認められないが、両側下肺野に左優位に不整形陰影が認められるとの意見を述べる(乙カ12の2)。 b このように種々の意見・診断がなされているが、K2医師等の上記各意見は、上記令和2年3月2日よりも前に撮影されたX線写真に関するものであるのであるから、じん肺の不可逆性(乙イ1の1、8) を考慮すると、令和2年3月2日のX線写真についてのH医師及び被 告協力医の各意見を重く見るべきであり、それらの意見 するものであるのであるから、じん肺の不可逆性(乙イ1の1、8) を考慮すると、令和2年3月2日のX線写真についてのH医師及び被 告協力医の各意見を重く見るべきであり、それらの意見が対立している以上、前記のとおりさらにCT画像を検討するべきである。 c なお、K2医師は、令和3年10月5日及び令和4年11月10日のX線写真について、粒状影が認められ12階尺度の1/1に、不整形陰影も認められ1/2に当たるとの意見を述べる(甲カ10、15) じん肺の特徴に進行性があげられるとしても(乙イ8)、石綿肺について、以後のばく露がなく10年間所見に変化がない場合には、一生涯、所見が変化しないことを示唆する十分な証拠があるとされているし(乙イ9〔6頁〕)、亡Aの最終粉じん作業職歴は平成6年6月であり、H医師及び被告協力医が読影した令和2年3月2日のX線写 真撮影当時、粉じんにばく露することなくすでに25年以上も経過しているのであるから、それからわずか1、2年程度でじん肺が進行するとも考えられない。 したがって、K2医師の上記意見にかかわらず、CT画像による検討をするのが相当である。 ウ CT画像による所見について(ア) H医師の証言等の検討a(a) H医師は、H意見書で、平成30年5月24日のCT画像について、全体的に気腫性変化が認められること、粒状影が上肺野・中肺野に認められること、不整形陰影(輪状影やすりガラス影)が下 肺野に認められるが、原因の鑑別は困難であること、石灰化胸膜プラークが多数認められることを指摘し、法廷でもおおむね同趣旨の証言をする(ただし、陰影の位置及び存在について、H意見書とは異なるものもある。)。 併せて、H医師は、溶接工肺の特徴的な所見はなかっ ラークが多数認められることを指摘し、法廷でもおおむね同趣旨の証言をする(ただし、陰影の位置及び存在について、H意見書とは異なるものもある。)。 併せて、H医師は、溶接工肺の特徴的な所見はなかったと証言し ていることから、石綿肺から検討する。 (b) 粒状影について、H医師は、CT画像上、はっきり見えるのは限局的であるとしながらも、肺野全体に散らばっていると考えられることから限局的ではないなどと証言する。これは、画像上認められない粒状影を理由に所見を述べるものであって、医学的な客観的根拠が必ずしも十分といえない。 他方、被告協力医は、H医師が指摘する箇所に粒状影は認められず、血管影を誤読している可能性が高いし、仮に粒状影であるとしても、限局的で数が少ないとの意見を述べているところ(乙イ158〔Ⅱ-8頁〕)、その理由について、平成30年5月24日のCT画像を具体的に示して説明しており(乙イ158〔Ⅱ-12頁以 下〕)、医学的な直接的根拠に言及している。また、F医師も、法廷で、具体的なCT画像を示した上で、石綿肺であれば胸膜に近い位置で並んで認められるが、亡AのCT画像上認められる粒状影は限局的であり、石綿肺の特徴的な画像所見に合致しないと証言するところ(証人F〔反訳書1頁以下〕)、前記認定の石綿肺の画像所 見の特徴と整合するものであり、これも医学的根拠に基づく合理的な意見ということができる。 被告協力医及びF医師の意見は合理的で信用性があり、これらに反するH医師の証言及びH意見書は採用できない。 (c) 次に、不整形陰影について、H医師は、下肺野(Im118及び 119)に輪状影が認められるとし、法廷では、左肺の横隔膜に接する部分を指摘するが(証人H〔速記録54、56項、別 (c) 次に、不整形陰影について、H医師は、下肺野(Im118及び 119)に輪状影が認められるとし、法廷では、左肺の横隔膜に接する部分を指摘するが(証人H〔速記録54、56項、別紙13、20〕)、H意見書で指摘する箇所(10頁)とは異なる上に、法廷での証言によるとしても、同陰影は孤立性のものであって、石綿肺の特徴的な所見とはいえない。 他方、被告協力医は、冠状断像(Im82からIm101)を併 せて見れば、H医師が輪状影の存在をいう範囲においては、いずれも、肺底部の中央付近にのみ限局的に見られるところの、線状影、一部網状影及びすりガラス影が認められるにとどまり、これらは石綿肺に特徴的な所見とはいえないとの意見を述べている。この意見は、CT画像を具体的に示して説明しているものであり(乙イ15 8〔Ⅱ-25~29頁〕)、医学的な根拠に裏付けられるものとして、合理性が認められる。 また、F医師は、法廷で、上記不整形陰影について、スライス画像をたどることで、気管支拡張の所見が見られるとして、肺炎に関連した変化と考えられると証言しており(証人F〔反訳書13頁以 下〕)、これも具体的なCT画像(Im113からIm119)を示して説明されるものであって、医学的根拠を有する合理的な意見ということができる。 被告協力医及びF医師の意見は合理的で信用性があり、これと反対趣旨のH医師の証言及びH意見書は採用することができない。 なお、H医師も認めるすりガラス影は、上記のとおり石綿肺の特徴的な所見とはいえない。 (d) 以上のとおり、前記CT画像では、石綿肺り患の事実を認めるに足りない。 b 続いて、溶接工肺について、H医師は、溶接工肺に典型的な画像所 的な所見とはいえない。 (d) 以上のとおり、前記CT画像では、石綿肺り患の事実を認めるに足りない。 b 続いて、溶接工肺について、H医師は、溶接工肺に典型的な画像所 見はなかったと証言する(証人H〔速記録35項〕)。F医師も、溶接工肺の典型という画像所見はなかったと証言していて(証人F〔反訳書12頁〕)、両医師の意見は合致している。 これらからすれば、亡Aにつき溶接工肺にり患したことを認めるに足りるCT画像の所見はないということができる。 したがって、上記CT画像では、溶接工肺り患の事実を認めるに足 りない。 c なお、一審原告らは、被告協力医の意見について、その立場からくるバイアスがあるとして、信用性が認められる余地はなく、採用すべきではないと主張する。 しかし、一方当事者から依頼されて証拠を提出したということから、 当然に、一審原告らの主張する立場性によるバイアスを認めることはできない。そして、被告協力医に、他にその公正さや公平さを疑わせる具体的な事情は認められない。被告協力医は、その経歴(乙イ55〔Ⅲ〕)からも豊富な知識と経験を有していると認められ、その専門性に即した意見を述べる能力も十分有していることは明らかである。 一審原告らの上記主張は採用することができない。 (イ) その他医師のCT画像の読影の検討aN1病院のN2医師は、平成24年4月6日のCT画像について、胸膜プラークの所見があると読影している(乙カ10の1)。 しかし、前記説示のとおり、胸膜プラークが認められたからといっ て、石綿肺と診断されるものではないのであるから、上記読影によっても、上記CT画像では、石綿肺り患の事実を認めるに足りない。 、前記説示のとおり、胸膜プラークが認められたからといっ て、石綿肺と診断されるものではないのであるから、上記読影によっても、上記CT画像では、石綿肺り患の事実を認めるに足りない。 bN1病院のN3医師は、平成25年9月25日のCT画像について、上肺野を主体に胸膜肥厚・石灰化あり、右上葉SIは陳旧性炎症性変化と思われる、中下肺野にも炎症後変化やボリュームロス(肺が虚脱 して線状となっている状態。乙イ221の2の1)と思われる線状影ありとしているが(乙カ10の2)、石綿肺及び溶接工肺であるとの所見を示していない。したがって、上記読影によっても、上記CT画像では、石綿肺又は溶接工肺り患の事実を認めるに足りない。 c 地方労災医員のM医師は、平成25年9月25日のCT画像につい て、両側上葉を主体として、左右胸膜の3分の1程度の石灰化及び胸 膜プラークを認めるとの意見を述べる(乙カ12の2)。 しかし、胸膜プラークが認められたからといって、石綿肺と診断されるものではないのは、前記のとおりである。上記意見によっても、上記CT画像では、石綿肺り患の事実を認めるに足りない。 dO1メディカルセンターのO2医師は、平成28年4月11日のC T画像について、下肺野に淡いすりガラス影や網状影を認め、軽度の間質性変化が疑われると読影している(乙カ11の1)。続いて、平成29年7月20日のCT画像について、両下葉に淡いすりガラス影と網状影が見られ、軽度の間質性肺炎の所見と思われ、前回CTとほぼ変化がないとしている(乙カ11の2)。 そうすると、これらCT画像にいう間質性変化は、あくまでも間質性肺炎の所見を意味するに過ぎず、上記読影によっても、上記CT画像では、 ぼ変化がないとしている(乙カ11の2)。 そうすると、これらCT画像にいう間質性変化は、あくまでも間質性肺炎の所見を意味するに過ぎず、上記読影によっても、上記CT画像では、石綿肺又は溶接工肺り患の事実を認めるに足りない。 eN1病院のN4医師は、平成30年5月24日のCT画像について、前回(前記b)と同様であり変化がないと読影している(乙10の 3)。したがって、上記読影によっても、上記CT画像では、石綿肺又は溶接工肺のり患の事実を認めるに足りない。 f 地方労災医員のL医師は、平成30年5月24日のCT画像について、両肺に胸膜石灰化及びプラークと疑われる陰影が散見されるとの意見を述べる(乙カ12の1)。 しかし、胸膜プラークが認められたからといって、石綿肺と診断されるものではないのは、前記のとおりである。上記意見によっても、上記CT画像では、石綿肺り患の事実を認めるに足りない。 (ウ) CT画像所見に係る結論これら判示からすれば、本件に現れたCT画像については、各医師の 意見等によっても、石綿肺又は溶接工肺り患の事実を認めるに足りない というべきである。 エ画像所見がないことを前提とするり患の事実の成否について前記認定説示のとおり放射線画像上に粉じんにばく露したことに基づく特徴的な所見がないと認められることから、亡Aは、管理区分決定に関わらず、じん肺にり患したとは認められない。 なお、H医師の証言及びH意見書その他認定事実によっても、粉じんにばく露する作業に従事したことのある職歴を有する亡Aに放射線画像上陰影があるという事実を認定させるにとどまり、じん肺り患を認定するに足りない。 オその他のじん肺のり患の事実の成 も、粉じんにばく露する作業に従事したことのある職歴を有する亡Aに放射線画像上陰影があるという事実を認定させるにとどまり、じん肺り患を認定するに足りない。 オその他のじん肺のり患の事実の成否について 石綿肺及び溶接工肺とは別の種類のじん肺にり患したとの事実を認めるに足りる証拠はない。 カ亡Aについての結論以上の次第であるから、亡Aがじん肺にり患したとの事実は認められない。 (2) 亡Bア一審原告亡B相続人らは、亡Bが主として鉄鋼艤装作業に従事し、金属粉じん及び石綿粉じんにばく露したと主張していることから、石綿肺又は溶接工肺にり患したと認められるか検討する。 イ X線写真による所見について (ア) H医師の証言等の検討H医師は、亡Bが溶接工肺にり患している可能性が高いが、石綿肺の可能性もあると証言し、H意見書では、亡Bがじん肺にり患しているとの意見を述べている。 そして、H医師は、H意見書で、令和2年2月27日のX線写真につ いて、胸膜プラークを疑う所見と縦隔陰影の拡大所見が認められること、 被告協力医が指摘する箇所と、中肺野に粒状影が認められ、12階尺度の1/1から1/2と評価できること、左右下肺野に不整形陰影が認められ、1/0と評価できることを指摘し、法廷でもおおむね同趣旨と考えられる証言をする。また、平成30年2月8日のX線写真について、中肺野に粒状影が認められ、1/0から1/1と評価できること、左右 下肺野に不整形陰影が認められ、0/1から1/1と評価できることを指摘する。 まず、粒状影については、令和2年2月27日のX線写真では、密度、程度及び位置は別として、これが認められることは、当事者間に争いがない。そこで、それがじん肺に特徴 1と評価できることを指摘する。 まず、粒状影については、令和2年2月27日のX線写真では、密度、程度及び位置は別として、これが認められることは、当事者間に争いがない。そこで、それがじん肺に特徴的な粒状影と認められるか、CT画 像において、さらに検討するのが相当である(後記ウ)。 次に、不整形陰影について、被告協力医はこれを否定しており、それぞれの読影結果が異なる。そうすると、CT画像において、さらに検討するべきである(後記ウ)。 (イ) その他医師の読影の検討 亡Bは、昭和59年12月16日及び平成4年4月8日、管理2の決定を受けており(補正後の前提事実)、同手続で第1型相当と診断されたことが認められる。 その他にも、P1病院のP2医師は、X線写真について、次のとおり読影している(甲キ2、4、13)。 平成29年2月23日粒状影 1/2令和元年11月14日粒状影 1/2他方、労働基準監督署の調査では、平成29年2月23日のX線写真について、不整形陰影は認められないとされた(乙キ1)。 このような意見・診断がなされているが、令和2年2月27日のX線 写真について、H医師及び被告協力医の意見が示され、さらにCT画像 を検討するのが相当であるのは、前記(ア)のとおりである。そうすると、上記各意見(P2医師等によるもの)は、上記令和2年2月27日よりも前に撮影されたX線写真に関するものであるから、じん肺の不可逆性を考慮すると、P2医師等の意見にかかわらず、じん肺り患の事実が認められるかは、より新しいCT画像による検討に委ねるのが相当である。 ウ CT画像による所見について(ア) H医師の証言等の検討a P2医師等の意見にかかわらず、じん肺り患の事実が認められるかは、より新しいCT画像による検討に委ねるのが相当である。 ウ CT画像による所見について(ア) H医師の証言等の検討aH医師は、H意見書で、令和2年2月27日のCT画像について、左右上葉に明瞭な粒状影所見が認められること、中葉にも粒状影が認められること、左右下葉にすりガラス影及び網状影が認められ、 石綿肺を示唆する所見であることを指摘し、法廷でもおおむね同旨の証言をする(ただし、陰影の位置について、H意見書とは異なるものもある。)。 b 粒状影について、H意見書で示されているのは、Im24の赤矢印3か所である(矢印で指示しているのは、認められる粒状影の一 部であるとしているが、その余がどこであるのか明らかでない。)。 また、法廷において指摘されたのは、Im16、24(証人H尋問調書添付別紙15、16)で示された4箇所(H意見書とは異なる位置である。)である(証人H〔反訳書20頁以下〕。その他の位置にも存在する可能性はあると証言するが、H医師自身、はっきり しないとしており、そのような陰影は認めるに足りない。)。いずれにせよ、石綿肺というのであれば、胸膜下に認められるべきであるのに、H医師が指摘するのは胸膜から離れた内層面である点で、その特徴に合致しない。溶接工肺というのであれば、左右の肺に広範にびまん性に現れるべきであるのに、H医師が示す粒状影は上記 の位置に限られる点で、その特徴に合致しない。 他方、被告協力医は、H医師がIm24で粒状影とするのは、血管影を誤読している可能性が高いと意見を述べているところ(乙イ158〔Ⅲ-4頁〕)、その理由について、H医師が指す粒状影は、冠状断像(Im32、35)では線状影として確 m24で粒状影とするのは、血管影を誤読している可能性が高いと意見を述べているところ(乙イ158〔Ⅲ-4頁〕)、その理由について、H医師が指す粒状影は、冠状断像(Im32、35)では線状影として確認できることから、血管影であることがわかるとして、CT画像を具体的に示して説明 しており(乙イ158〔Ⅲ-12~16頁〕)、医学的な根拠に裏付けられるものとして、合理性を有し証明力が高い。 これと反対趣旨の前記H医師の証言及びH意見書は採用することができない。 c 不整形陰影について、石綿肺であれば、前記認定の石綿肺の特徴 等からすれば、胸膜に沿って線維化が広がり、胸膜から内層に向けて線維化の陰影が広がって、すりガラス影が生じるところ(弁論の全趣旨)、H医師の指摘はこれとは異なるものであり、その特徴に合致しない。溶接工肺であれば、すりガラス影は分岐状影に伴うものであるが、それが認められず、その特徴に合致しない。 他方、被告協力医は、H医師がIm35、37、38で不整形陰影とするのは、①気管支拡張及び炎症後変化の陰影、②炎症後変化と考えられる胸膜まで達する線状影や索状影、③軽度の線維化所見と考えられる軽度高吸収域及び網状影、④呼気不十分で未梢肺が虚脱している部分であるとの意見を述べているところ(乙イ55〔Ⅱ -2-11~13頁〕、158〔Ⅲ-4~5頁〕)、その理由について、CT画像を具体的に示して説明しており(乙イ158〔Ⅲ-17~19頁〕)、医学的な根拠に裏付けられるものとして、合理性を有し証明力が高い。 そうすると、これと反対趣旨のH医師の証言及びH意見書は採用 することができない。 d これらからすれば、H医師の証言及びH意見書によっても、上記CT画像では、石綿肺及び溶接工肺のり患 、これと反対趣旨のH医師の証言及びH意見書は採用 することができない。 d これらからすれば、H医師の証言及びH意見書によっても、上記CT画像では、石綿肺及び溶接工肺のり患の事実を認めるに足りない。 (イ) その他医師のCT画像の読影の検討aQ1病院のQ2医師は、平成17年1月17日のCT画像につい て、両肺小分岐状陰影、胸膜肥厚、石灰化、小粒状影と読影しているが、同年11月21日のCT画像では、胸膜肥厚、ブラ、両肺に小結節影と、平成18年11月22日のCT画像では、両側胸膜肥厚石灰化、両肺に小結節影と読影している(甲キ9)。 このうち、小分岐状陰影は、最初のCT画像で指摘されるのみで あるから、可逆性変化によるものと考えられるのであって、じん肺の所見とはいえない。 小粒状影及び小結節影は、肺野のどの部分にどのように広がっているのか明らかでない。胸膜肥厚や石灰化が認められたからといって、じん肺のり患の事実が認められるものでもない。結局、CT画 像上、石綿肺や溶接工肺に特徴的な所見を認めるには足りない。 したがって、上記医師の読影によっても、上記各CT画像では、じん肺り患の事実を認めるに足りない。 bR1病院のR2医師は、平成20年6月9日のCT画像について、両側胸膜肥厚、石灰化、両肺小結節影と読影した。また、同病院の R3医師は、平成21年6月15日のCT画像について、胸膜肥厚、小結節のみと読影し、以下、平成22年6月11日、平成23年6月14日、平成24年6月12日、平成25年6月18日、平成26年6月18日、平成28年6月2日の各CT画像について、胸膜肥厚を認め、小結節は変化なしと読影している(以上につき、甲キ 9、乙キ6の1~8)。 2日、平成25年6月18日、平成26年6月18日、平成28年6月2日の各CT画像について、胸膜肥厚を認め、小結節は変化なしと読影している(以上につき、甲キ 9、乙キ6の1~8)。 しかし、小結節影が肺野のどの部分にどのように広がっているのか明らかでない。胸膜肥厚や石灰化が認められたからといって、じん肺のり患の事実が認められるものでもない。そのため、CT画像上、石綿肺や溶接工肺に特徴的な所見を認めるには足りない。 したがって、上記各医師の読影によっても、上記各CT画像では、 じん肺り患の事実を認めるに足りない。 cP1病院のP3医師は、平成29年2月23日のCT画像について、両側胸膜に石灰化を伴う肥厚が散見され、陳旧性胸膜炎と考えられ、横隔膜石灰化、両側肺尖部、両側肺底部に索状影を認め、陳旧性炎症性変化を疑うと読影した(乙キ7の1)。また、同病院の P4医師は、平成30年8月2日のCT画像について、陳旧性炎症性変化を疑い、明らかな活動性病変を指摘できないとした。そして、前回CT画像と比較して、新たな肺病変は指摘できないとしている(乙キ7の2)。 続いて、同病院のP5医師は平成31年2月7日のCT画像につ いて両肺胸膜下を中心に線状索状の変化がみられるとしたが、前回画像と比較して、性状分布に変化はみられないとし(乙キ7の3)、P6医師は令和元年8月22日のCT画像について前回と著変なしとし(乙キ7の4)、P7医師は令和2年2月27日のCT画像について両肺に散見される索状影に著変なしとしている(乙キ7の 5)。 このように、P1病院での上記一連の読影は、石綿肺及び溶接工肺による線維化所見を示すものではなく、それらに特徴的な所見を認めるに足りない。した 著変なしとしている(乙キ7の 5)。 このように、P1病院での上記一連の読影は、石綿肺及び溶接工肺による線維化所見を示すものではなく、それらに特徴的な所見を認めるに足りない。したがって、上記各CT画像では、じん肺り患の事実を認めるに足りない。 (ウ) CT画像所見に係る結論 これら判示からすれば、本件に現れたCT画像にも考慮すると、石綿肺又は溶接工肺にり患したとの事実は認められないというべきである。 エ画像所見がないことを前提とするり患の事実の成否について亡Bについても、放射線画像上に粉じんに応じた特徴的な所見がないと認められることから、亡Bは、管理区分決定に関わらず、じん肺にり患 しているとは認められない。 なお、H医師の証言及びH意見書その他認定事実によっても、粉じんにばく露する作業に従事したことのある職歴を有する亡Bに放射線画像上陰影があるという事実を認定させるにとどまり、じん肺り患を認定するに足りない。 オその他のじん肺のり患の事実の成否について被告協力医は、令和2年2月27日のCT画像について、左右上葉に認められる粒状影は医学的にはけい肺の初期病変の可能性があるとの意見を述べる(乙イ55〔Ⅱ-2-5頁〕)。しかし、あくまでも初期病変の可能性を指摘するにとどまり、同意見をもってしても、けい肺にり患したと の事実を認めるに足りない。 カ亡Bについての結論以上の次第であるから、亡Bがじん肺にり患したとの事実は認められない。 (3) 一審原告C ア一審原告Cは、船舶の居住区等で電気配線の作業に従事し、石綿粉じんや溶接ヒュームにばく露したと主張していることから、石綿肺又は溶接工肺にり患したと認められるか検討する 一審原告C ア一審原告Cは、船舶の居住区等で電気配線の作業に従事し、石綿粉じんや溶接ヒュームにばく露したと主張していることから、石綿肺又は溶接工肺にり患したと認められるか検討する。 イ X線写真による所見について(ア) H医師の証言等の検討 H医師は、一審原告Cが石綿肺にり患しているが、溶接工肺の可能性 もあると証言し、H意見書では、一審原告Cがじん肺にり患しているとの意見を述べている。 そして、H医師は、H意見書で、令和2年3月13日のX線写真について、多数の石灰化プラーク所見を認めること、粒状影について、左右上肺野に認められ、12階尺度の1/0と評価できること、不整形陰影 について、石灰化プラークが肺野全体を覆うように存在しているため必ずしも明瞭とはいえないが、左右下肺野に認められ、1/0と評価できることを指摘している。また、令和元年10月18日のX線写真について、粒状影について、上記同様であり、不整形陰影について、左下肺野に比較的明瞭に認められ、右下肺野にも同様に認められ、1/0から1 /1と評価できることを指摘し、法廷でもおおむね同旨の証言をする。 しかし、上記各X線写真では、右横隔膜の挙上や肺容積の減少が認められる。それらの原因として、胸椎及び腰椎の圧迫骨折による脊柱の弯曲(一審原告Cについてこれらが認められることは後述のとおりである。)、心拡大、食道裂孔ヘルニア及び呼気不足などが考えられる。ま た、石灰化胸膜プラークや一部石灰化を伴う胸膜肥厚や胸膜の癒着なども認められる(乙イ55〔Ⅱ-3-3頁〕、158〔Ⅳ-2~4頁〕。 なお、H医師も、脊柱の弯曲、横隔膜挙上及び心陰影拡大所見があること、食道裂孔ヘルニア及び気胸等の所見があることを認めている。甲イ 認められる(乙イ55〔Ⅱ-3-3頁〕、158〔Ⅳ-2~4頁〕。 なお、H医師も、脊柱の弯曲、横隔膜挙上及び心陰影拡大所見があること、食道裂孔ヘルニア及び気胸等の所見があることを認めている。甲イ59)。 そのため、重なり像であるX線写真では、肺内の陰影の確認に誤りが混入するおそれがあると考えられるのであって、これだけを基に判断するのは相当でなく、CT画像によりさらに検討するべきである。 (イ) その他医師の読影の検討a 一審原告Cのじん肺管理区分の決定手続では、K1診療所のK2医 師作成の平成30年12月22日付けじん肺健康診断結果証明書(甲 ケ2)が提出されている(補正後の前提事実)。 同手続で診断に供されたのは、平成30年11月5日のX線写真であり、K2医師は、じん肺健康診断では、粒状影につき12階尺度の1/0、不整形陰影について1/2とした(甲ケ2)。また、地方じん肺診査医は、第1型であり、じん肺管理区分の管理2に当たるとし た(甲ケ1)。 地方労災医員のL医師は、平成30年11月5日及び平成31年2月12日のX線写真について、両肺に粒状影が散見され、左肺に不整形陰影が認められるとした(乙ケ5の1)。同じく地方労災医員のM医師は、平成30年11月5日のX線写真について、両下肺野を主体 に不整形陰影が散見されるとした(乙ケ5の2)。 しかし、一審原告Cは、上記各X線写真の撮影に先立つ平成22年頃に第10胸椎圧迫骨折をし(乙ケ22の2)、平成24年10月には第3腰椎圧迫骨折が判明し(乙ケ23の2)、これらのために脊柱の弯曲があり、遅くとも平成29年には背中の側弯・前屈の増強が認 められた(乙ケ6)。これが右横隔膜の挙上や肺容積 24年10月には第3腰椎圧迫骨折が判明し(乙ケ23の2)、これらのために脊柱の弯曲があり、遅くとも平成29年には背中の側弯・前屈の増強が認 められた(乙ケ6)。これが右横隔膜の挙上や肺容積の減少の要因のひとつと考えられるのは、前記(ア)のとおりであり、上記各X線写真撮影時には、右横隔膜挙上等の要因は存在していた。 また、上記各X線写真は平成30年11月5日又は平成31年2月12日に撮影されていて、古いものでも、右横隔膜の挙上及び肺容積 の減少等が認められる令和元年10月18日のX線写真のわずか1年ほど前のものである。 そうすると、K2医師、地方じん肺診査医、L医師及びM医師が読影したX線写真が撮影された時点で、一審原告Cに、すでに、右横隔膜挙上及び肺容積の減少等が生じていた可能性は高いと考えられる (なお、平成24年のCT画像でも横隔膜挙上が認められている。乙 イ158〔Ⅳ-1頁〕)。したがって、K2医師等の上記意見にかかわらず、前記(ア)のとおり、CT画像をさらに検討するのが相当である。 bK2医師は、令和2年6月19日のX線写真について、粒状影が認められ12階尺度の1/0に、不整形陰影も認められ1/2に当たる との意見を述べる(甲ケ4)。さらに、令和4年1月28日及び令和5年1月13日のX線写真について、粒状影が認められ1/0に、不整形陰影も認められ2/1に当たるとの意見を述べる(甲ケ17、18)。 しかし、これらX線写真が撮影された時点でも、右横隔膜の挙上及 び肺容積の減少等があると考えられるのであって、K2医師の意見にかかわらず、前記(ア)のとおり、CT画像をさらに検討するのが相当である。 ウ CT画像による所見について(ア) H医 肺容積の減少等があると考えられるのであって、K2医師の意見にかかわらず、前記(ア)のとおり、CT画像をさらに検討するのが相当である。 ウ CT画像による所見について(ア) H医師の証言等の検討 a(a) H医師は、H意見書で、令和元年12月13日のCT画像について、左右上肺野に複数の粒状影が認められること、左右下肺野に線状影、索状影、網状影が認められること、これら所見は石綿肺による線維化所見と矛盾するものではないことを指摘し、法廷でもおおむね同趣旨と考えられる証言をする(ただし、陰影の位置について、 H意見書とは異なるものもある。)。 併せて、H医師は、溶接工肺の特徴的な所見はなかったと証言していることから、石綿肺から検討する。 (b) 粒状影について、H医師は、明瞭に見えるのは部分的であるが、肺野全体に広がっていると思う旨を証言する。これは、画像上認め られない粒状影を理由に所見を述べるものであって、医学的な根拠 が必ずしも十分でない。 他方、被告協力医は、H意見書で粒状影とされるもの(Im33、34、39、40、41)について、血管影の誤読であるか、仮に粒状影であるとしても、限局的で数も少なく、石綿肺に特徴的な所見ではないとの意見を述べているところ(乙イ158〔Ⅳ-5 頁〕)、その理由について、令和元年12月13日のCT画像を具体的に示して説明しており(乙イ158〔Ⅳ-8、9頁〕)、医学的な根拠に裏付けられるものとして、合理性を有し証明力が高い。 F医師も、H医師が法廷でIm65に粒状影であると指摘したものについて、前後のスライスを比較しながら血管影であると証言し (証人F〔反訳書3、4頁〕)、さらに、H医師が法廷でIm66 い。 F医師も、H医師が法廷でIm65に粒状影であると指摘したものについて、前後のスライスを比較しながら血管影であると証言し (証人F〔反訳書3、4頁〕)、さらに、H医師が法廷でIm66に粒状影であると指摘したものについて、粒状影であるとしても、胸膜との距離があり石綿肺の特徴的な画像所見に合致しないと証言している(証人F〔反訳書4、5頁〕)。これらF医師の証言は、具体的なCT画像を踏まえて説明するものであるし、また、前記認 定の石綿肺の特徴と整合するものであり、医学的根拠を有する合理的な意見ということができる。 したがって、これと反対趣旨の、粒状影に関するH医師の証言及びH意見書は、採用することができない。 (c) 不整形陰影について、一審被告においても、左右下肺野に線状影、 索状影、網状影が認められること自体は認めている。 しかし、H医師は、それらが石綿肺の所見と矛盾しないと述べるにとどまる。 他方、被告協力医は、上記不整形陰影について、そのほとんどが多数の胸膜プラーク直下に認められることから、圧排に伴う肺虚脱 の陰影であるとし、さらに、一審原告Cに認められる脊椎弯曲、食 道裂孔ヘルニア、心拡大の悪化による肺容積減少及び呼気不足等の影響によるものとしている。その他にも胸膜から肺内に及ぶ炎症後変化も認めるとする(以上につき、乙イ55〔Ⅱ-3-5頁〕)。 これら所見は、一審原告Cの既往症(圧迫骨折による脊柱の弯曲、心拡大、食道裂孔ヘルニア、気胸等)や画像所見に沿うものであっ て、医学的な根拠に基づいている。 また、前記認定のとおり、石綿肺では、病変が進行すると、胸膜下粒状影が連結して胸膜下線状影を形成するが、一審原告CのCT画像上、胸膜に並行し 沿うものであっ て、医学的な根拠に基づいている。 また、前記認定のとおり、石綿肺では、病変が進行すると、胸膜下粒状影が連結して胸膜下線状影を形成するが、一審原告CのCT画像上、胸膜に並行して走行する曲線状陰影は明らかではない(乙イ55〔Ⅱ-3-5頁〕)。なお、H医師は、法廷で、Im90の 右肺に線状影があると指摘するものの(証人H〔反訳書12頁〕、証人H尋問調書添付別紙9)、それが上記にいう胸膜に並行して走行する曲線状陰影であるか不明である。 そうすると、被告協力医の上記意見は反証として十分であり、一審原告Cに認められる不整形陰影が石綿ばく露に由来するものであ るか真偽不明というほかなく、これに関するH医師の証言及びH意見書は、採用することができない。 (d) これらからすれば、H医師の証言及びH意見書によっても、令和元年12月13日のCT画像では、石綿肺り患の事実を認めるに足りない。 b 溶接工肺について、H医師は、溶接工肺に特徴的な画像所見はなかったと証言しているし(証人H〔速記録35項〕)、F医師も、溶接工肺の典型という画像所見はなかったと証言していて(証人F〔反訳書12頁〕)、両医師の意見は合致している。 これらからすれば、一審原告Cにつき溶接工肺にり患したことを認 めるに足りるCT画像の所見はないということができる。 したがって、令和元年12月13日のCT画像では、溶接工肺り患の事実を認めるに足りない。 (イ) その他医師のCT画像の読影の検討aS病院の医師は、平成24年8月22日のCT画像について、両側胸膜斑を認め、おそらく石綿肺と読影しているが(乙ケ3の5)、石 綿肺を疑わせる線維化所見についての指摘はなく、胸 討aS病院の医師は、平成24年8月22日のCT画像について、両側胸膜斑を認め、おそらく石綿肺と読影しているが(乙ケ3の5)、石 綿肺を疑わせる線維化所見についての指摘はなく、胸膜プラークを指摘しているにとどまる可能性がある。したがって、上記読影によっても、上記CT画像では、石綿肺り患の事実を認めるに足りない。 bN1病院のN5医師は、平成30年11月5日のCT画像について、両肺野胸膜直下に線維化が目立ち、石綿肺を疑うと読影しているが (乙ケ4の1)、線維化の原因には種々あり、それが石綿ばく露によるものであることの根拠は明らかではない。また、それが石綿肺に特徴的な画像所見を呈しているか不明である。したがって、上記読影によっても、上記CT画像では、石綿肺り患の事実を認めるに足りない。 c 地方労災医員のL医師は、平成30年11月5日のCT画像につい て、石綿所見が認められるとするが(乙ケ5の1)、石綿プラークを指摘するにとどまる。したがって、上記読影によっても、上記CT画像では、石綿肺り患の事実を認めるに足りない。 d 地方労災医員のM医師は、平成30年11月5日のCT画像について、石綿プラークに加えて、両側下葉の胸膜を主体に線状影及び不整 形陰影が、上葉を主体に粒状影が認められるとするが(乙ケ5の2)、陰影の存在を指摘するにとどまり、石綿肺に特徴的な画像所見とまでいえるか不明である。したがって、上記読影によっても、上記CT画像では、石綿肺り患の事実を認めるに足りない。 eN1病院のN4医師は、令和元年12月13日のCT画像について、 両下葉胸膜下から肺底部に軽度の網状影を認め、石綿肺の可能性があ るとするが(乙ケ4の2)、同時に炎症後 eN1病院のN4医師は、令和元年12月13日のCT画像について、 両下葉胸膜下から肺底部に軽度の網状影を認め、石綿肺の可能性があ るとするが(乙ケ4の2)、同時に炎症後の変化の可能性も指摘している。可能性をいうにとどまり、上記読影によっても、上記CT画像では、石綿肺り患の事実を認めるに足りない。 (ウ) CT画像所見に係る結論これら判示からすれば、本件に現れたCT画像については、各医師の 意見等によっても、石綿肺又は溶接工肺り患の事実を認めるに足りないというべきである。 エ画像所見がないことを前提とするり患の事実の成否について前記認定説示のとおり放射線画像上に粉じんにばく露したことに基づく特徴的な所見がないと認められることから、一審原告Cは、管理区分決 定に関わらず、じん肺にり患したとは認められない。 なお、H医師の証言及びH意見書その他認定事実によっても、粉じんにばく露する作業に従事した職歴を有する一審原告Cに放射線画像上陰影があるという事実を認定させるにとどまり、じん肺り患を認定するに足りない。 オその他のじん肺のり患の事実の成否について石綿肺及び溶接工肺とは別の種類のじん肺にり患したとの事実を認めるに足りる証拠はない。 カ一審原告Cについての結論以上の次第であるから、一審原告Cがじん肺にり患したとの事実は認め られない。 6 健康被害の有無じん肺にり患したとしてもそれが初期のものであれば肺機能障害はほとんど生じない(乙イ141〔2頁〕)。じん肺り患が認められない本件労働者らであるのであるから、何かしらの健康被害が認められるとしても、それらが粉じ んばく露に由来するとは認められない。 したがって、健康被害を理由 じん肺り患が認められない本件労働者らであるのであるから、何かしらの健康被害が認められるとしても、それらが粉じんばく露に由来するとは認められない。したがって、健康被害を理由とする損害賠償請求は認められない。 結論 以上の次第であるから、一審原告らの請求は、その余について判断するまでもなく、いずれも認められない。よって、一審原告らの控訴はいずれも理由がなく、一審被告の控訴はいずれも理由がある。 福岡高等裁判所第1民事部 裁判長裁判官高瀬順久 裁判官古川大吾 裁判官野々垣隆樹は、差支えのため、署名押印することができない。 裁判長裁判官高瀬順久 (別紙) 請求額一覧表 当事者金額 一審原告A11540万円 一審原告A2770万円 一審原告A3770万円 一審原告B11026万6666円 一審原告B21026万6666円 一審原告B3513万3332円 一審原告B4513万3332円 一審原告C3080万円 以上

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