令和7年5月9日判決言渡同日原本領収裁判所書記官令和5年(ワ)第30550号不法行為損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和7年2月21日判決 主文 1 原告の請求を棄却する。 2 訴訟費用は原告の負担とする。 事実及び理由 第1 請求被告は、原告に対し、1000万円及びこれに対する令和5年8月22日から支払済みまで年3分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要本件は、学校法人B大学(以下「B大学」という。)の副学長であった原告が、B大学アメリカンフットボール部(以下「アメフト部」という。)の薬物事件(以下「本件薬物事件」という。)をめぐる対応の中で、B大学の理事長である被告から、各種会議への出席禁止(以下「本件行為1」という。)、違法な辞任勧告(以下「本件行為2」という。)及び学部長会議における不適切な発言(以下「本件行為3」といい、本件行為1及び本件行為2と併せて「本件各行為」という。)といったパワーハラスメントを受け、これにより本件薬物事件の全ての責任が原告にあるかのような印象操作をされたり、原告の社会的評価を低下させられたりしたと主張して、被告に対し、不法行為による損害賠償請求権に基づき、本件各行為による損害額1000万円及びこれに対する不法行為の始期である令和5年8月22日から支払済みまで民法所定の年3分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。 1 前提事実(証拠等を掲記しない事実は当事者間に争いがない。以下、引用 の際には「前提事実⑴ア」などと表記する。)⑴ 当事者等ア原告は、平成30年4月から現在に至るまでB大学の教授であるととも 実(証拠等を掲記しない事実は当事者間に争いがない。以下、引用 の際には「前提事実⑴ア」などと表記する。)⑴ 当事者等ア原告は、平成30年4月から現在に至るまでB大学の教授であるとともに、令和4年7月1日から令和5年12月31日までB大学の副学長の地位にあった者である(甲24・1頁、乙5・5頁、原告本人54頁)。B大学の副学長は、B大学の設置する学校の教学に関する事項を統括する権限を有する学長(B大学寄附行為〔甲1。以下「寄附行為」という。〕17条1項)を補佐し、学長の命により、B大学の設置する学校の校務の一部を分掌する(寄附行為17条の2第2項)。 イ被告は、令和4年7月1日からB大学の理事長の地位にある者である。 B大学の理事長は、B大学を代表し、B大学の業務を総理する権限を有する(寄附行為7条4項)。 ⑵ 本件薬物事件の概要ア原告は、令和5年7月6日、大麻使用の疑いのあるアメフト部の部員(以下、後記⑷の調査報告書での呼称に従い「f部員」という。)から、植物片が入ったビニールの小袋(パケ)や錠剤等が保管された缶(以下「本件缶」という。)の提出を受け、B大学の競技スポーツ部長であるC(以下「C競技スポーツ部長」という。)の管理する施錠されたロッカーにおいて本件缶を保管した(甲4・30、31頁、原告本人6、60頁)。 その後、原告は、同月18日、警視庁の警視に電話をし、学生から預かった所持品の中に大麻のおそれのある植物片が入ったパケがあることなどを伝えたところ、同月20日に警視庁により本件缶の差押えが行われた(甲4・34~36頁)。 イ令和5年8月1日にアメフト部の部員が学生寮内で大麻を使用しているとの報道がなされたことを受け、B大学は、文部科学省記者クラブに対し、同月2日、「現時点では、一部マスコミで報道さ ~36頁)。 イ令和5年8月1日にアメフト部の部員が学生寮内で大麻を使用しているとの報道がなされたことを受け、B大学は、文部科学省記者クラブに対し、同月2日、「現時点では、一部マスコミで報道されているように、本学ア メリカンフットボール部の寮内において、違法な薬物が発見されたとの事実は確認できておりません。」とのプレスリリースを送信した(甲4・39、40頁)。また、被告は、同日、報道関係者から囲み取材を受け、「一部マスコミで報道されていますように違法な薬物が見つかったとか、そういうことは一切ございません。」と述べ、B大学の寮から大麻が押収されたということはあるかとの趣旨の質問に対して、「それはないです。」などと回答した(甲2、4・40頁、原告本人11~13頁)。 ウ警視庁は、令和5年8月3日午後1時、アメフト部の学生寮3階及び共用部分の捜索差押え及び検証を実施した(甲4・41頁)。また、同月5日にf部員が覚醒剤取締法違反及び大麻取締法違反の被疑事実で逮捕されたことを受け、B大学は、同日付けで「本学アメリカンフットボール部員の逮捕について」と題するお知らせをホームページに掲載し、アメフト部を無期限活動停止処分としたことを公表した(甲4・42、43頁)。 エ B大学は、令和5年8月8日、記者会見を開き、原告、被告及びB大学の学長であるD(以下「D学長」という。)が登壇した。 上記記者会見において、原告は、本件缶を預かってから警察に報告するまでの空白の12日間が適切であったのかという質問に対し、警察からとりあえず大学の調査に委ねたい、もし大麻所持等の犯罪事実が認められた場合には自首させてほしいと言われており、本件缶を提出したf部員が大麻所持を認めて自首できる状態にない以上は、すぐに警察に届け出るべきではないと判断した旨発言し、 し大麻所持等の犯罪事実が認められた場合には自首させてほしいと言われており、本件缶を提出したf部員が大麻所持を認めて自首できる状態にない以上は、すぐに警察に届け出るべきではないと判断した旨発言し、逮捕されたf部員以外についても今回のような薬物の事案をB大学として把握しているかとの質問に対し、現時点でそのような事実は把握していないと回答した。 被告は、上記の原告の一連の対応はいずれも適切であったと考えている旨発言した上で、警察と協議していることであって、報道機関各社から隠蔽があったと言われることは遺憾である旨発言し、f部員以外にも今回の ような薬物の事案をB大学として把握しているかとの質問に対し、預かっている7万の学生のうちの1名が不祥事を起こして大きな問題になったというような発言をした。 (甲3、4・44~46頁、原告本人50頁)オ B大学は、令和5年8月10日午後10時50分、アメフト部の無期限活動停止処分を解除し、逮捕されたf部員のみを無期限活動停止処分とすることをホームページに公表した(甲4・50頁)。 ⑶ 被告の原告に対する辞任要求に関する報道本件薬物事件の対応を巡り、被告が原告に対してB大学の副学長を辞任するよう求めているとの報道が、令和5年10月18日になされるとともに、録音データの記録内容であるとして、後記第3の1⑺ウの同年9月4日の原告と被告とのやり取りの内容が報道された(甲5、乙1)。 原告は、同月25日頃、報道機関からのインタビューを受け、被告から辞任を求められていること、本件缶を12日間保管していたこと及び前記⑵エの記者会見についての自己の見解を述べ、その内容が報道された(甲12、24・8頁)。 ⑷ 本件薬物事件対応に係る調査報告書B大学アメリカンフットボール部薬物事件対応に係る第三 と及び前記⑵エの記者会見についての自己の見解を述べ、その内容が報道された(甲12、24・8頁)。 ⑷ 本件薬物事件対応に係る調査報告書B大学アメリカンフットボール部薬物事件対応に係る第三者委員会(以下「第三者委員会」という。)は、B大学に対し、令和4年10月頃から令和5年8月23日までの本件薬物事件に係る事実経過を整理するとともに、原告、被告及びD学長らをはじめとしたB大学関係者による本件薬物事件への一連の対応姿勢の問題点を指摘し、改善策を提言する内容の、令和5年10月30日付け調査報告書を提出した(甲4)。 ⑸ 原告及びD学長に対する辞任勧告及び辞任令和5年11月になってB大学の理事会では、本件薬物事件への対応をめぐって原告、被告及びD学長の3人とも辞任すべきとの意見が多数となった が、同月22日の理事会において、原告には副学長の即時の辞任、D学長には学長の地位の学年末での辞任を求めることとなった(甲17、24・8頁、原告本人27、53、54頁)。そして、令和5年12月31日付けで、原告はB大学の副学長を、D学長は学長を辞任した(乙5・5頁、弁論の全趣旨)。 なお、B大学の理事会は、理事(B大学では、学長及び副学長も理事となる〔寄附行為8条2項2号、3号〕)をもって組織し、理事長を議長としてB大学の業務を決定し、理事の職務の執行を監督する(寄附行為13条1項、2項、5項)。 2 争点及びこれに対する当事者の主張の要旨⑴ 争点⑴(本件行為1が不法行為となるか)(原告の主張)被告は、令和5年8月下旬頃、業務上の必要性を欠くにもかかわらず、原告に対してB大学で開催された主要な会議のほぼ全てへの出席を禁止する命令を出し、これにより原告は、令和5年8月22日から同年9月7日までの間、何ら合理的理由を告げら の必要性を欠くにもかかわらず、原告に対してB大学で開催された主要な会議のほぼ全てへの出席を禁止する命令を出し、これにより原告は、令和5年8月22日から同年9月7日までの間、何ら合理的理由を告げられることなく、これらの会議への出席が禁じられた(本件行為1)。これにより、被告は、当時、本件薬物事件への対応の問題をはじめとしてB大学で生じていた諸問題について、全ての責任が原告にあるかのような印象操作を行い、原告を職場内でいたたまれない状態に陥らせて、同人の就業環境を害した。被告による本件行為1は、「人間関係からの切り離し」の類型のパワーハラスメントに該当し、不法行為が成立する。 (被告の主張)第三者委員会による本件薬物事件の調査が進み、本件薬物事件に関する情報を原告が独占し、C競技スポーツ部長やアメフト部の監督であるE(以下「E監督」という。)その他の関係者の情報が原告の下で遮断されて適切に共有されず、原告から断片的で時機に後れた情報共有しかなされないという、 原告の善管注意義務違反に該当し得る状況が明らかになる中、被告を含むB大学の執行部のメンバーらは、令和5年8月22日以降、原告の存在や発言により関係者が自由に発言できないおそれがあると感じ、また、原告の責任が討議される会議において、原告が出席することは適切ではないと考えられたため、原告に対して会議への出席を遠慮していただくようにという要請を行うこととした。このように、原告が主張する本件行為1は、命令ではなくあくまでも要請にすぎず、その要請について必要性も認められたから、不法行為が成立する余地はない。 ⑵ 争点⑵(本件行為2が不法行為となるか)(原告の主張)被告は、原告に対し、令和5年9月4日、原告のみが直ちに本件薬物事件に関する責任を取るべきであると が成立する余地はない。 ⑵ 争点⑵(本件行為2が不法行為となるか)(原告の主張)被告は、原告に対し、令和5年9月4日、原告のみが直ちに本件薬物事件に関する責任を取るべきであるとして、副学長を辞任するよう執拗に求め、その際には、原告への警察の捜査が進んでいる、文部科学省が原告の処分を望んでいるなどと虚偽の事実を告げて、原告を不安に陥れるなどした。また、被告は、原告に対し、同日、全ての業務を行わないように指示した。さらに、被告は、これらと近接する日時において、B大学の常務理事で危機管理総括責任者でもあったF(以下「F常務理事」という。)、B大学の常務理事であるG(以下「G常務理事」という。)及びB大学の監事であるH(以下「H監事」という。)を用いて、原告に対して副学長の辞任を求めた。被告によるこれらの行為(本件行為2)は、原告の就業環境を害する、社会的相当性を逸脱するもので、「過大な要求」又は「過小な要求」の類型のパワーハラスメントに該当するから、不法行為が成立する。 (被告の主張)被告は、令和5年9月4日に原告と面談をした際に、原告に対し、当時の認識に反して虚偽の事実を告げたことはないし、本件薬物事件に関する原告の対応の問題を指摘しつつも、むしろ原告に寄り添う形で副学長を辞任する のが良いという考えを伝え、辞任についての検討を促したにとどまり、強要に当たるような発言は行っていない。また、その際に、原告は最終的に副学長を辞任する旨を述べているし、被告が原告に対して全ての業務を行わないようにとの命令をした事実もない。さらに、被告は、F常務理事、G常務理事及びH監事に、原告に対して副学長の辞任を働きかけるような指示を行っていないし、F常務理事、G常務理事及びH監事も、原告に対して辞任を求めていない。この ない。さらに、被告は、F常務理事、G常務理事及びH監事に、原告に対して副学長の辞任を働きかけるような指示を行っていないし、F常務理事、G常務理事及びH監事も、原告に対して辞任を求めていない。このように、被告のいずれの発言や行為についても、不法行為が成立する余地はない。 ⑶ 争点⑶(本件行為3が不法行為となるか)(原告の主張)被告は、令和5年9月22日に開催された学部長会議において、原告の会議への出席を認めなかった理由について、原告のプライバシーに関して非常に失礼なことが生じると思うなどと発言して回答を避け、出席していた学部長に対して、本件薬物事件への対応の問題の全ての責任が原告にあるかのような印象操作を行った(本件行為3)。本件行為3は、原告の社会的評価を低下させるもので、不法行為が成立することは明らかである。 (被告の主張)被告が令和5年9月22日の学部長会議において、原告に会議への出席を遠慮するように要請した理由を回答しなかったことは認める。もっとも、被告は、具体的な発言の文言までは記憶していないものの、不法行為に当たるような発言を行っていない。 ⑷ 争点⑷(原告の損害)(原告の主張)被告の本件各行為により、原告には、社会的評価が低下し、就業環境が害されるという損害が生じている。また、本件各行為により損害が生じた原告は、被告及びB大学に対し、適切な対応等を求めるため質問を行ったものの、 これを無視されるなどしたことから、現状を打破するためにやむなく令和5年10月25日頃に報道機関のインタビューを受けるなどマスメディアへの露出を余儀なくされて、原告の社会的評価がさらに低下するに至った。原告の被った損害を金銭に換算すると、1000万円を下らない。 (被告の主張) インタビューを受けるなどマスメディアへの露出を余儀なくされて、原告の社会的評価がさらに低下するに至った。原告の被った損害を金銭に換算すると、1000万円を下らない。 (被告の主張)原告の主張を争う。原告がマスメディアの取材に応じて日本全国に自身を露出させたのは、原告自身の判断によるものであり、被告が責任を負う余地はない。 第3 当裁判所の判断 1 認定事実(以下、引用の際には「認定事実⑴ア」などと表記する。)証拠(各項末尾に掲記したもの)及び弁論の全趣旨によると、以下の事実が認められる。 ⑴ 警視庁からの情報提供ア令和4年10月23日に保護者から学生寮内の盗難や部員の大麻の使用等を相談するメールを受けたこと等を契機に、アメフト部のE監督やコーチが部員に対するヒアリング調査を行っていたところ、同年11月27日、1名の部員から、自己使用及びf部員を含む他の部員による大麻の使用が申告されたが、この情報は、C競技スポーツ部長までは報告されたものの、原告やF常務理事への報告はされなかった。一方、同年12月1日、警視庁組織犯罪対策部薬物銃器対策課の係官(以下「警視庁係官」という。)2名がB大学を訪れ、アメフト部内に大麻の使用者がいるとの匿名の通報があったとして、アメフト部向けに警視庁主催の薬物乱用防止講習会の開催を提案し、同月10日、文理学部において、原告、C競技スポーツ部長、アメフト部長、E監督らが出席して、警視庁主催の薬物乱用防止講習会が開催された。(甲4・20~25頁)イ令和5年6月30日に警視庁係官2名がB大学を訪れ、同係官らは、原 告及びC競技スポーツ部長らに対し、アメフト部の学生寮3階に大麻部屋があって、数名が大麻を使用しており、指導者も知っていること等が記載された匿名のメールが同月19 がB大学を訪れ、同係官らは、原 告及びC競技スポーツ部長らに対し、アメフト部の学生寮3階に大麻部屋があって、数名が大麻を使用しており、指導者も知っていること等が記載された匿名のメールが同月19日に警視庁に届いたこと、令和4年12月10日にアメフト部の部員向けに実施した薬物乱用防止講習会では対応しきれなかったことを考えると、検挙も一つの取り得る手段として考えられること、警察が対応しないとメール送信者が報道機関に情報提供する可能性があること、警視庁係官らとしてはアメフト部の監督やコーチは、部員が大麻を所持していることを知っているのではないかと考えており、大ごとにならないよう、学生に自首してほしいと言ってもらい、もし該当者がいれば自首させてほしいこと、捜査は当然秘匿で実施するものであるが、大学に対策をお願いしたいこと、後日警視庁に来て、上司から本件について説明を受けてほしいことなどを伝えた(甲4・26、27頁)。 原告及びC競技スポーツ部長は、警視庁係官らとの面談後、D学長に対して警視庁係官らから面談で提供された情報について口頭で報告した。その際、原告は、D学長に対し、アメフト部の部員による大麻使用の疑いについてはB大学で調査する考えであること、警視庁から秘密保持を徹底するよう指示を受けたので、上記疑いについては原告、D学長及び競技スポーツ部で対応したいことといった方針を報告したところ、D学長は、これを了承した。(甲4・27、28頁)ウ令和5年7月6日に原告、C競技スポーツ部長及び競技スポーツ部の事務長が警視庁を訪問したところ、警視庁の警視らは、原告らに対し、警視庁に届いたメールに記載された事案の概要は、具体的な話も入っており、作り話とは思えないこと、警視庁としてはアメフト部の指導者も把握していて、見て見ぬふりをしてい 警視庁の警視らは、原告らに対し、警視庁に届いたメールに記載された事案の概要は、具体的な話も入っており、作り話とは思えないこと、警視庁としてはアメフト部の指導者も把握していて、見て見ぬふりをしていると推察していること、社会的影響があるので、まずはB大学で調査して、その内容によって強制捜査をするかどうか判断したいと考えていること、供述のみでも立件は可能なので、犯人がい ることを前提に調査を行ってほしいと考えていること、B大学による調査の進捗及び結果を警視庁に報告し、大麻の痕跡があればB大学側で押さえて共有してほしいことなどを伝えた(甲4・29頁)。 ⑵ 本件缶の差押えア原告及びE監督らは、令和5年7月6日の夕刻、アメフト部の学生寮に行って、アメフト部の部員らに経緯を説明した上で、各部員の荷物検査及びヒアリングを実施した。その際、原告は、E監督から、過去に大麻使用を自己申告した学生がおり、その学生が名前を挙げたf部員らに大麻使用の疑いがあるとの説明を受けたため、f部員らから荷物検査を実施したところ、305号室のf部員のベッドに備え付けられた鍵付き収納庫の中から本件缶が発見された。f部員は、原告に対し、本件缶を提出したが、同日のヒアリングの際に、大麻の所持や使用を認めず、本件缶については先輩から預かったものであるなどと述べた。一方で、同日から同月14日までに実施されたヒアリングの際に、複数の部員から、大麻を使用していた者又はその噂及び疑いがある者として、f部員のほか複数の卒業生の部員の氏名が挙げられ、特定の部員は過去に使用したことを認めるなどした。 (甲4・30~34頁、原告本人6頁)原告は、C競技スポーツ部長に対し、同月7日の午前中、本件缶をCスポーツ競技部長管理のロッカーで保管するよう命じ、同所にて施錠の上で保管 めるなどした。 (甲4・30~34頁、原告本人6頁)原告は、C競技スポーツ部長に対し、同月7日の午前中、本件缶をCスポーツ競技部長管理のロッカーで保管するよう命じ、同所にて施錠の上で保管することとなった(甲4・31頁)。そして、原告及びC競技スポーツ部長は、D学長に対し、同日、アメフト部の学生寮での荷物検査の結果、部員の所持品から大麻のカスのような物が入ったビニール袋(パケ)が保管された本件缶を発見したこと、その提出を受けてB大学の本部で保管していること、部員は大麻であることを認めていないので、まだ自首はさせられないことを報告した(甲4・31頁、原告本人6頁)。 イ原告及びC競技スポーツ部長は、被告に対し、令和5年7月13日、別 件の報告の機会に本件缶の中身が確認できる写真を示しながら、警視庁から依頼を受けてアメフト部の大麻疑惑についてB大学で調査を行ったところ、部員の荷物から大麻らしきものが発見され、これを預かっていること、当該部員は発見されたものが大麻であることを否認していることを報告したところ、被告は、原告らに対し、しっかり調査を行うよう伝えた(甲4・33頁、原告本人8、9、60頁、被告本人44頁)。 ウ被告は、令和5年7月18日、封筒に「B大学アメリカンフットボール部父母会」と記載された手紙(以下「本件告発文」という。)を受領した。 本件告発文には、息子がアメフト部に所属し、学生寮で生活していること、令和4年にアメフト部の学生寮で大麻を吸っている上級生がいることが問題となって、保護者会が開かれ、上級生たちは大麻使用を認めたが、B大学はそのことを隠蔽して何の処分もしなかったこと、令和5年7月上旬にアメフト部の学生寮で持ち物検査が実施された際に、植物片の入ったパケが発見され、それを職員がB大学本部に持ち帰っ 用を認めたが、B大学はそのことを隠蔽して何の処分もしなかったこと、令和5年7月上旬にアメフト部の学生寮で持ち物検査が実施された際に、植物片の入ったパケが発見され、それを職員がB大学本部に持ち帰ったこと、植物片を保有していた部員に対して処分はなく、警察にも通報していないことから、隠蔽するつもりではないかと思うため、調査してほしいこと、この書面は、各報道機関、日本アメフト協会及び関東アメフト連盟にも送ることが記載されていた。被告は、本件告発文をC競技スポーツ部長に手渡して、同月13日に見せられた本件缶の写真との関連についての調査を依頼し、C競技スポーツ部長は、本件告発文を原告に渡した。(甲4・34頁、26の1、原告本人9、10頁、被告本人22、23、39、40頁)原告は、同月18日、前記⑴ウで面談した警視に電話をし、学生から預かった所持品の中に大麻のおそれがある植物片の入ったパケがあること、本件告発文を受領したことを伝えたところ、警視は、学生から預かった物を提出してもらいたいと述べた(甲4・34、35頁)。 エ B大学の広報部は、令和5年7月19日午後6時頃、読売新聞及び朝日 新聞の記者からのアメフト部の部員の大麻使用に関する問合せのメールに対し、C競技スポーツ部長から原告も回答案を確認済みであることを聞いた上で、読売新聞に対しては「調査をしている事実はありますが、植物片が見つかった事実はありません」、朝日新聞に対しては「調査をしている事実はありますが、大麻が見つかった事実はありません」との回答を記載したメールを送信した(甲4・35頁)。 オ E監督は、令和5年7月18日午後9時半頃から同月19日午前9時頃までにかけて、f部員から、過去に元部員に誘われるなどして大麻を使用したこと、大麻は特定の元部員や売人から購入し ・35頁)。 オ E監督は、令和5年7月18日午後9時半頃から同月19日午前9時頃までにかけて、f部員から、過去に元部員に誘われるなどして大麻を使用したこと、大麻は特定の元部員や売人から購入していたこと、本件缶は令和5年2月に当該元部員から渡されたこと、本件缶の中に入っていた錠剤は、大麻購入時に売人からおまけとしてもらったもので、危ないものだと思っていたこと、本件缶に保管されていたパケの中身は自分で購入したものと、元部員らと吸った時のものもあるかもしれないことなどの申告を受けたため、原告に対し、f部員の申告の内容を随時、メールで報告した(甲4・35、36頁)。 カ原告及びC競技スポーツ部長は、被告及びD学長に対し、令和5年7月19日午前9時30分頃、f部員が大麻の使用を認めたので同人を自首させること、f部員から預かっている本件缶には、大麻だけでなく違法性が疑われる錠剤も保管されており、それらを警視庁に提出することを報告した。そして、原告は、同日正午頃、前記⑴ウで面談した警視に電話し、f部員を自首させようと考えていることを伝えたところ、警視は、B大学がf部員から預かっている物とB大学がこれを保管していた状況について確認させてほしいとの申出をした。同日午後1時頃に警視庁係官がB大学を訪れ、原告は、f部員の荷物検査の状況や本件缶を発見した状況及びそれをB大学の本部に持ち帰って保管していた状況について、警視庁係官の取調べを受け、その場で原告の供述調書が作成された。警視庁係官は、原告 に対し、f部員の所持品については、任意提出ではなく令状に基づいて差押えをすると伝え、同月20日午前1時55分頃、警視庁による本件缶の差押えが行われた。(甲4・36頁)⑶ アメフト部の学生寮の捜索差押えア C競技スポーツ部長は、B大学の総務 状に基づいて差押えをすると伝え、同月20日午前1時55分頃、警視庁による本件缶の差押えが行われた。(甲4・36頁)⑶ アメフト部の学生寮の捜索差押えア C競技スポーツ部長は、B大学の総務部長からF常務理事への報告を要する旨の指摘を受けたため、F常務理事に対し、令和5年7月20日、f部員がB大学の本部で警視庁職員による事情聴取を受けたこと、f部員から提出を受け、本部で保管していた本件缶の差押えが行われたこと、原告がf部員に自首するよう説得していたことなどを報告した(甲4・36、37頁、乙5・2頁)。 その後、F常務理事らが原告と面談したところ、原告は、F常務理事らに対し、アメフト部の大麻使用の件は警察と話を詰めており、B大学での調査を優先させてほしい、あまり騒ぐと情報が漏れる、情報が漏れて学生が逮捕されたら責任を取れるのかなどと述べた。一方で、F常務理事は、原告に対し、同月21日、翌週に予定されている執行部会や常務理事会でアメフト部の部員の大麻使用に関する情報を共有すべきではないかという意見を述べたところ、原告は、これに反対した。また、その数日後に行われた原告、被告、D学長及びF常務理事が参加する打合せにおいても、D学長は、原告の意見を支持し、執行部会において情報を共有しない方針となった。(甲4・37頁、乙5・2、3頁、原告本人41、42頁)なお、執行部会は、理事長、学長、常務理事及び副学長によって構成され、理事長を議長として、B大学の日常的業務に関する執行について議論される場であるが、設置根拠規定等は存在しない。また、常務理事会は、理事長、学長、常務理事及び副学長によって構成され、理事長を議長として、通常業務に関する意思決定、理事会に上程される議題について協議される(寄附行為13条2項)。 イ E監督 務理事会は、理事長、学長、常務理事及び副学長によって構成され、理事長を議長として、通常業務に関する意思決定、理事会に上程される議題について協議される(寄附行為13条2項)。 イ E監督は、C競技スポーツ部長の指示を受け、令和4年の保護者からのアメフト部における大麻使用に関する情報提供、大麻の自己使用に関する部員の申告をはじめとしたアメフト部指導陣が聴取した内容及び警視庁の対応といった一連の経緯が記載された「経緯書:令和4年度からの大麻疑惑について」と題する書面を作成し、令和5年7月19日午後2時44分にC競技スポーツ部長に対してメールで送信した。一方で、E監督は、原告に対し、同月20日午前2時45分、令和4年11月27日のアメフト部の部員による大麻使用の申告内容などが記載された令和4年11月28日付け「薬物吸引の疑いについてご報告」と題する文書をメールで送信した。(甲4・37~39頁)ウ令和5年8月2日午後2時に第1回専門部会が開催され、原告、被告及びF常務理事ほか7名が参加し、前提事実⑵イの同月1日の報道への対応方針及びプレスリリースの内容について協議した。当該会議においては、原告が、プレスリリースの文言に関して、本件缶について鑑定結果が出ていない以上はまだ確認されていないものとして扱えばよいという趣旨の意見を述べるなど議論がなされ、その結果を受けて、前提事実⑵イのプレスリリースが送信された。また、当該会議の終了後に、被告は、前提事実⑵イの囲み取材を受けることとなった。(甲4・39、40頁、原告本人11~13頁)なお、専門部会とは、危機管理に関する専門的事項を審議するため、B大学危機管理委員会(以下「危機管理委員会」という。)が必要に応じて設置することができるものである(危機管理規程14条。甲4・14 なお、専門部会とは、危機管理に関する専門的事項を審議するため、B大学危機管理委員会(以下「危機管理委員会」という。)が必要に応じて設置することができるものである(危機管理規程14条。甲4・14頁)。 エ令和5年8月3日午前10時30分に副学長1名を除く執行部会のメンバーにより実施されたオンラインでの打合せの際に、原告は、本件薬物事件への対応に係る一連の経過について報告をし、その中で、アメフト部の学生寮で行った荷物検査で怪しいと思われる本件缶の提出を受けてB大学 の本部に持ち帰り、その後、警視庁に令状に基づいて差し押さえられたこと、鑑定結果が出ていなかったため、「違法な薬物が発見されたという事実は確認されていません。」と前提事実⑵イのプレスリリースをしたことなどを報告した。また、原告は、差し押さえられた本件缶の中身について、植物片というよりは消しゴムのカスのような緑がかったものが小さなビニールパックに入っていた状態であり、非常に微量で大麻所持として立件するには非常に難しいと思うこと、まだ報道にはないが麻薬のMDMAの可能性がある錠剤のかけらが入っており、MDMAの所持で立件される可能性はあるとの考えを述べた。(甲4・40、41頁、原告本人13、14、47、48頁)同日午前11時から開催された臨時理事会の際に、被告は、本件薬物事件の経過についての簡単な報告をし、その中で、警察から話があって原告が中心となって調査を進めていること、原告がアメフト部の学生寮で部員の持ち物の検査を実施したが、違法な薬物が見つかっていないこと、グレーな学生がいることは事実であるが、現在、聴き取り調査をしていることなどを説明した(甲4・41頁、原告本人13頁)。 オ令和5年8月3日午後1時の前提事実⑵ウの捜索差押えが実施された際に、原 ーな学生がいることは事実であるが、現在、聴き取り調査をしていることなどを説明した(甲4・41頁、原告本人13頁)。 オ令和5年8月3日午後1時の前提事実⑵ウの捜索差押えが実施された際に、原告は、警視庁係官から、本件缶の中身の鑑定結果について、パケの中身は大麻であったこと、錠剤には覚醒剤の成分が含まれていたこと、アメフト部の学生寮の半数以上又は半数近くの学生が大麻を使用しているか、f部員の大麻使用を知っているのではないかと思われるとの見立てを告げられた。原告は、同日午後4時30分から開催された第2回専門部会に出席し、その出席者である被告、D学長及びF常務理事らに対し、上記の係官からの情報を報告した。(甲4・41、42頁)カ前提事実⑵ウのとおり、令和5年8月5日にf部員が覚醒剤取締法違反及び大麻取締法違反の被疑事実で逮捕され、B大学は、同日付けでアメフ ト部を無期限活動停止処分とした。 ⑷ 記者会見の実施ア令和5年8月7日午前11時に開催された臨時執行部会において、原告は、同年7月6日に行ったアメフト部の学生寮の部屋の荷物検査で微量の葉っぱのカスが入ったパケを見つけたが、f部員による大麻使用を疑うことまではできなかったこと、報告したら自首が成立しないので、ひとまずアメフト部の部員のヒアリング調査を進めたいと思ったこと、同月20日に令状に基づく捜索差押えにより本件缶が押収されたこと、同年8月3日に実施された警視庁による捜索差押えは、学生が生活していた3部屋と共用部分を対象に実施され、本件缶の発見状況についての検証も実施されたこと、その際に本件缶の中身から大麻と覚醒剤の成分が検出されたことを警視庁係官から教えてもらったことなどを報告した。また、被告から原告に対して同月8日に実施される記者会見後に新たな逮捕者が出る れたこと、その際に本件缶の中身から大麻と覚醒剤の成分が検出されたことを警視庁係官から教えてもらったことなどを報告した。また、被告から原告に対して同月8日に実施される記者会見後に新たな逮捕者が出る可能性もあるのかとの質問があり、これに対して原告は、逮捕者が出ることまではないと思うが、複数名の使用の可能性を発表することはあると思うと発言した。(甲4・43頁)イ令和5年8月7日午後1時に原告、被告、D学長、F常務理事及びC競技スポーツ部長らが参加する第4回専門部会が開催され、同月8日の記者会見当日の手順、冒頭の説明内容、外部アドバイザーの作成した91項目のQ&Aの内容などについて確認した。その際に原告は、上記Q&Aのうち、原告が本件缶を預かってからそのことを警察に報告するまでに約2週間が経過していたことを問題視する質問について、学生を自首させるために預かっていたものであると回答すべきと発言したが、「ご指摘は真摯に受け止めます。」という趣旨の回答案が変更されることはなかった。(甲4・43、44頁、27、原告本人10、16、49、50頁、被告本人24~27頁) ウ令和5年8月7日午後6時に開催された臨時理事会において、原告は、学生寮で行われた犯罪であることを踏まえると、その他の学生にも広がっている可能性を見極める必要があるが、逮捕者が出るというほどのことではなく、他の者もやっていたような話が出るかどうかという程度だろうなどといった考えを述べた。また、出席した学外理事から、記者会見においては正確性、透明性、迅速性及び簡潔性といった危機管理の4つの要点に沿った説明を行うべきとの助言等があったのに対し、被告は、既にリハーサルを行い質疑応答についても精査したと回答し、原告は、危機管理の観点は自分が答えることではないが、法律上の 危機管理の4つの要点に沿った説明を行うべきとの助言等があったのに対し、被告は、既にリハーサルを行い質疑応答についても精査したと回答し、原告は、危機管理の観点は自分が答えることではないが、法律上の自首が成立するように保管していたとの考えを述べた。(甲4・44頁)エ前提事実⑵エのとおり、令和5年8月8日にB大学は、記者会見を行い、原告、被告及びD学長がこれに登壇した。 ⑸ アメフト部の無期限活動停止処分の解除をめぐるやり取りア令和5年8月9日に原告、被告、D学長、F常務理事、C競技スポーツ部長及びE監督らが参加して行われた打合せの際に、E監督が、令和4年11月27日にアメフト部の部員から学生寮内で複数の部員が大麻を使用しているとの申告があったことを含めた令和4年10月から令和5年8月のf部員の逮捕に至る経緯について報告した後、一般社団法人関東学生アメリカンフットボール連盟(以下「関東学生連盟」という。)からなされた、本件薬物事件についての合計3回の質問状に対する回答内容について議論がなされた。このうち同年8月7日付けでなされたアメフト部の3回目の回答には、「令和4年7月頃に大麻と思われるものを吸った旨の自己申告をした学生に対し行った聴取では、合宿所3階305号室のベランダで、2022年度卒業生、当時の4年生からもらい、同学年2名ら計4名と2~3回吸った。一緒に吸っていないがその他にも、当時4年生2名、当時3年生1名、当時2年生1名が吸っていると当時4年生らから聞いた と申告されました。」と記載されていたところ、D学長は、自分は部員1名による大麻の自己使用があったとのみ聞いており、上記の記載内容が事実であれば記者会見の前に共有されるべき情報であったと発言し、被告は、記者会見で説明した以上に詳しい情報を関東学生連盟に提 は部員1名による大麻の自己使用があったとのみ聞いており、上記の記載内容が事実であれば記者会見の前に共有されるべき情報であったと発言し、被告は、記者会見で説明した以上に詳しい情報を関東学生連盟に提供すべきではなかったと発言した。これに対し、原告は、1名の部員が、複数名の部員が大麻を使用したと言っているだけで、調査の結果、複数名の使用は認められなかったことから、関東学生連盟に報告した事実と記者会見で説明した事実とは矛盾しないと説明した。(甲4・46、47頁、26の1ないし7、原告本人17~19頁、被告本人40、41頁)また、上記打合せでは、アメフト部の活動停止処分の解除についても議論され、原告は、大麻を使用している者が他にいても、それは個人の問題としてその者だけを活動停止にすべきであること、卒業生の逮捕者が出る可能性はあるが在学生の逮捕者は多分出ないと思うこと、関与している者の名前が出る可能性はあるが有罪になるとは思えないことなどを発言した。 これに対し、D学長は、安全性が確保され、保護者等の協力関係が確保できるのであれば活動させてやるべきであるなどといった発言をし、被告は、D学長の意見に賛成であること、学生寮で生活している学生が大麻を使っている学生が他にいないと約束してくれることを条件とすべきであることなどを発言した。(甲4・47、48頁)イ令和5年8月9日午後7時にアメフト部の臨時の保護者会がオンラインで開催され、原告は、前記アの打合せにおける議論の内容を念頭に、寮生を含むアメフト部の部員及び保護者に対し、大麻使用に関与した者や知っている者がいないか呼び掛けたが、名乗り出る者はいなかった。これらを踏まえてアメフト部は、関東学生連盟に対し、同日午後9時43分、リーグ戦に参加する意向であることを表明した。(甲4・48頁 者や知っている者がいないか呼び掛けたが、名乗り出る者はいなかった。これらを踏まえてアメフト部は、関東学生連盟に対し、同日午後9時43分、リーグ戦に参加する意向であることを表明した。(甲4・48頁)ウ令和5年8月10日午後2時30分に開催された臨時執行部会の際に、 原告は、令和4年11月27日にアメフト部の特定の寮生が、先輩に誘われて大麻と思われる物を吸ったことがあるとの申告をしたこと、申告を受けた直後に当該先輩部員にヒアリングを行ったが違法行為は認められなかったことを説明し、令和5年8月5日にf部員が逮捕され、アメフト部を同日付けで無期限活動停止処分としたが、その後の検討により基本的には学生個人の犯罪であり、現状では他に逮捕された学生はおらず、部全体で責任を負わせるべきものではないので処分を解除し、逮捕されたf部員のみ無期限活動停止処分としたいと発言した。これに対し、出席者からは今回の判断は待つべきとの意見が出されたが、原告は、現時点で大麻の自己使用の申告が確認できているのは2名だけであり、f部員以外の1名については使用したとは認定していない、逮捕された学生については単独犯であることが逮捕事実から明らかになっている、本件告発文に書かれていた事実は認定できないなどと説明し、上記の反対意見があったにもかかわらず、アメフト部の無期限活動停止処分を解除する方向で話が進んだ。そして、前提事実⑵オのとおり、同年8月10日午後10時50分にアメフト部の無期限活動停止処分の解除及びf部員のみを無期限活動停止処分とする旨が公表されたが、関東学生連盟は、アメフト部に対し、同日午後11時13分、現状では試合に出場させることができないことを通知した。 (甲4・49、50頁)⑹ 原告の会議への出席をめぐるやり取りア令和5年8月22日の 連盟は、アメフト部に対し、同日午後11時13分、現状では試合に出場させることができないことを通知した。 (甲4・49、50頁)⑹ 原告の会議への出席をめぐるやり取りア令和5年8月22日の危機管理委員会の会議の際に、参加者が原告に対して本件薬物事件に関する全ての情報を提出するよう要請したところ、原告は、具体的に聞いてくれないと出せないと回答するなどした。そして、当該会議が終了して原告が退出した後、被告、D学長、G常務理事、F常務理事ら原告を除く執行部のメンバーがいる状況で、B大学の顧問弁護士から、正しい意思決定をするためには正確な情報を得る必要があり、原告 には各種会議への出席を遠慮してもらったほうがよいとの提案があり、被告やG常務理事らをはじめとした上記のメンバーは、本件薬物事件に関する原告の報告内容が現実と異なっていることがあり、原告の助言に従い行ってきたこれまでの対応が誤ったものであった可能性があるとの認識を抱いていたことから、上記の提案に賛成した。そして、副学長の任命権者でもあったD学長は、原告に対し、同日、会議体への出席をしないでもらいたい旨が決まったと伝えた。(甲24・3頁、乙4・4頁、乙5・3頁、証人G1~5、21、22頁、原告本人1、2頁、被告本人1~6、29~31、46~49頁)イ令和5年8月23日午前9時30分に原告の参加を認めない形で開催された臨時執行部会の際に、前記⑶イでE監督が作成した経緯書が配布され、アメフト部の指導陣が、令和4年11月27日のアメフト部の部員による大麻の自己使用の申告内容など、アメフト部の寮内に大麻の使用者が複数名いるという情報を、部員から得ていたことが説明された。また、上記の経緯書は、同日に開催された常務理事会においても配布された。(甲4・50頁、乙4・4、5頁、 、アメフト部の寮内に大麻の使用者が複数名いるという情報を、部員から得ていたことが説明された。また、上記の経緯書は、同日に開催された常務理事会においても配布された。(甲4・50頁、乙4・4、5頁、乙5・3頁、証人G5、6頁)ウ原告は、令和5年8月24日午前中に、D学長から各種会議へのオンラインでの参加を許す旨の回答を得た。もっとも、同日昼頃にF常務理事及びG常務理事が原告の執務室を訪問し、原告に対してオンラインであっても出席しないよう伝えたところ、原告は、これに強く抗議するとともに、会議に出席することができないことの根拠を問いただすなど、F常務理事らと原告との間のやり取りは約1時間にわたった。(甲24・3、4頁、乙4.6頁、証人G6~8、22、23頁、原告本人2~4頁、被告本人38、39、46頁)エ令和5年8月24日午後に開催された学部長会議の際に、議長であるD学長が、自由な発言を得るため原告は出席を控えられるという旨の発言を したところ、出席した学部長の中から、原告に直接説明を聞きたいので出席を求めるとの声があがった。これに対し、被告は、他の会議でも原告が出席せずに会議を実施したところ、新たな事実が出てきた経緯もあるので、出席を控えてもらいたいなどと説明したが、学部長らの声に押されたD学長は、学長判断で原告を出席させることにすると宣言し、その結果として原告が上記学部長会議に出席した。(甲24・4頁、乙4・5頁、原告本人4~6頁)なお、学部長会議は、理事長、学長、副学長、常務理事及びB大学の学部長並びに通信教育部長によって構成され、学長を議長として主に教学に関する事項についての意思決定がなされる。 オ原告が前記エの学部長会議への参加を許された一方で、令和5年8月24日に開催された理事会では、議長である被告が、 て構成され、学長を議長として主に教学に関する事項についての意思決定がなされる。 オ原告が前記エの学部長会議への参加を許された一方で、令和5年8月24日に開催された理事会では、議長である被告が、原告の出席によって出席者が自由に発言できなくなるおそれがあると説明し、原告を出席させるべきか否かについて、出席した理事らの意見を尋ねたところ、特に出席を求める意見は出なかった(乙4・5頁、原告本人6頁)。 カ原告は、令和5年8月22日から同年9月7日までの間にB大学において開催された20回の会議のうち、令和5年8月25日、28日、31日及び同年9月6日の執行部会、同年8月31日の危機管理委員会の会議、前記エの学部長会議の合計6回の会議に出席した(乙4・6頁、被告本人6、7、49頁)。 キ原告は、令和5年9月4日頃、B大学に対し、原告を会議に出席させないことはB大学が事実を隠蔽して原告に全ての責任を押し付けて現状を切り抜けようとしているのではないかなどといった抗議の書面を送付したところ、同月8日以降、ほとんどの会議へ参加できるようになった。 B大学は、同月12日頃、原告に対して、上記書面への反論とともに、原告が、本件薬物事件において、C競技スポーツ部長に守秘及び学生の保 護を理由に危機管理責任者であるF常務理事への報告を直ちに行わないよう指示したこと、本件缶を警察に提出するのが遅れてしまったことなどについて、文部科学省から、重大な事態におけるB大学内の情報伝達の不備及び不審物発見についての警察への連絡の不備を厳しく指摘されており、B大学としては、今後の事態の推移に強い危機意識を持っており、現にリスク管理を行っているところである旨、加えて、昨今、文部科学省から、責任者の処遇についてB大学の方針を確認されるようになり、B大学とし 大学としては、今後の事態の推移に強い危機意識を持っており、現にリスク管理を行っているところである旨、加えて、昨今、文部科学省から、責任者の処遇についてB大学の方針を確認されるようになり、B大学としての判断を明らかにする必要がある旨などを説明した書面を送付した。 (甲6、7、原告本人23頁)⑺ 原告の辞任をめぐる原告と被告との間のやり取りア F常務理事は、令和5年8月26日、B大学の常務理事であった者から、原告による大麻の保管をB大学が不問に付していることについて官庁が問題視しており、警視庁に対して原告の捜査について申入れをしているといった話や原告が捜査対象となっており逮捕もあり得るといった話を聞いたため、これを被告などに伝えた(甲22の1、乙2の1・6頁等、乙4・8頁、5・4頁)。 イ H監事は、副学長の辞任についての原告の意向を確認するために、令和5年9月4日に原告と話合いをしたところ、その結果について、H監事は、G常務理事などに対し、原告がD学長も被告も辞任するなら自分も辞任するとの意向を示しているなどと報告した(乙4・8、9頁、証人G12頁)。 ウ原告は、各種会議への出席をやめるようにとの指示に理由がなく、また、会議への出席もできない状況で、今後、副学長としてのその他の通常業務を続けて良いのか判断ができなかったため、令和5年9月4日夕方、D学長及び被告と面談した。 上記の原告と被告との間の面談は約1時間15分にわたり、大きく分け て、現段階で原告が副学長を辞任すべきか否か(甲22の1、乙2の1・5~33頁)、また、原告が会議に出席できない状況でその他の原告の通常業務を原告自身が行うのか、それとも他の者に担当させるのか(甲22の1、乙2の1・33~41頁)についてのやり取りがなされた。このやり取りの中で た、原告が会議に出席できない状況でその他の原告の通常業務を原告自身が行うのか、それとも他の者に担当させるのか(甲22の1、乙2の1・33~41頁)についてのやり取りがなされた。このやり取りの中で、被告は、原告が本件缶を12日間にわたって保管していたことや原告の記者会見での問答が、世間や報道機関からの批判に特にさらされているため、第三者委員会の報告書が出る前に原告が副学長を辞任することにより、B大学にある種の自浄作用があることを世間に見せ、かつ、原告が副学長を自ら辞任するほうが、引き続きB大学において教授の立場を有することになる原告にとってもよいとの考えを有していたことから、その旨を繰り返し伝えるなどして、原告に副学長を辞任するよう説得を試みている。一方で、原告も自らの本件薬物事件への対応や各種会議において表明した見解が法的には何ら間違っているところはないとの自己の見解を述べて反論するなどしているが、副学長の辞任の件について、最終的には「ですから、絶対に辞めないと言ってるわけじゃないから、ちょっと考えさせてくれと申し上げてるんです。今ここで、じゃ分かりました辞めますと、少なくとも私は今、そこまでの気持ちになってませんので。だから少なくとも、現在は、現時点では、13日のヒアリングまでは少なくとも、仕事をさせてもらおうと思ってたが、そのように申し上げて、今もその気持ちは変わりません。」と述べた。 一方、このやり取りの中で、原告は、被告から以下のような発言を受けるなどした。 (甲22の1及び2、甲24・5、6頁、乙2の1及び2、乙3・2、3頁、原告本人27~30、34~39、45、46頁、被告本人7~16、41~46頁)㋐ 「先週あたりから、文科省の方からA先生の処分はどうなってるとか、 まそういうあのA先生、C部長いった 頁、原告本人27~30、34~39、45、46頁、被告本人7~16、41~46頁)㋐ 「先週あたりから、文科省の方からA先生の処分はどうなってるとか、 まそういうあのA先生、C部長いったいどうなってるのかって、そういうあの、ことをお聞きしましたし、またあるところから、A先生あの事情、ま、警視庁で聴かれるんじゃないかっていうような情報も入っておりましてですね、私たち非常にあの急を急いでおりまして。」(乙2の1・6頁参照)㋑ 「えー第三者会議の後、私たちにも厳しいなに、何らかあると思いますけども、その前に一応ちょっとあの、A先生に、ちょっとお引きいただくってことが私たちにとって一番良い方法なんじゃないかなっていう風に思ってるんですけども。」(乙2の1・6頁参照)㋒ 「あのもし先生がどうしても辞めたくないというんだったら私たち何らかの形で、解任を要求したいなって思ってるんですけど。」(乙2の1・13頁参照)㋓ 「先生世間を、世間をあのー敵に戦うって言うんだったら、それは、あのー、私たちはもう執行部はしませんって、もう、あの世間にごめんなさいして、あの尾っぽを振ってくっていう結論を出してるんですよ。 先生が、あの、ほんとに誇り高く自分は間違ったことはしてないっておっしゃっても、私たちも、補助金もほしいし叩かれたくもないし、あの、もう、もう、あの文科省からどうなってるんだって言われたら、はいはい、あの分かりましたって言うしかないって、そういうことを分かっていただきたいんですけども。」(乙2の1・21頁参照)㋔ 「先生がよかれと思ったこと、私もよかれと思ったことがあの、裏目に出てどんどんこう坂を転げ落ちるみたいに、こう、どんどんどんどん大きな玉になってる。で、そこでどっかで食い止めなきゃいけないんですけども、どう かれと思ったこと、私もよかれと思ったことがあの、裏目に出てどんどんこう坂を転げ落ちるみたいに、こう、どんどんどんどん大きな玉になってる。で、そこでどっかで食い止めなきゃいけないんですけども、どういう食い止め方をするかっていうと、例えばあのー先生がこんな、あの、自分は正しいことをしたつもりだけどもこんな大きい騒ぎになって申し訳なかったって言って、おやめいただくってのは、こ の、あの、玉が大きくなる(判決注:小さくなるの意であると認める。)一つの大きな道じゃないかな、と私は考えてるんですけども。」(乙2の1・27、28頁参照)㋕ 「例えばですね、辞表を書いていただいて、それでそれをもって13日、あのお預かりして、それで、13日、もし13日の後に出すっていうのはいかがでしょうか?」(乙2の1・31、32頁参照)㋖ 「いや、だけど、先生、さ、解任ってことになると、やっぱり先生のお名前に傷がつきますよ。」(乙2の1・35頁参照)㋗ (真実かどうかは)「今となっては関係ないですよ。誰かが責任取らなきゃ…。」(乙2の1・39頁参照)㋘ 「先生も私もこういう執行部にいて先生は副学長っていう、私も理事長っていうお立場で、あ立場であのこのB大を守んなきゃいけないんですよ。もうB大、こう難破船のように叩かれ、もうある種叩かれてるわけで、どうやったらちょっとあの、ちょっと無事に、あの、港までたどり着くかってことを考えなきゃいけないわけで、例えば私たち、私だって言いたいこといっぱいありますけど今ぐっとこらえて、あのー…こらえてます。こらえてます。それで、あの、先生、私たちのそのプライドとかそんなことどうでもいいから、まずちょっとこの学校を守るってことをお考えになってくれませんか。」(乙2の1・39頁参照)㋙ 「あの、通常業務を ます。それで、あの、先生、私たちのそのプライドとかそんなことどうでもいいから、まずちょっとこの学校を守るってことをお考えになってくれませんか。」(乙2の1・39頁参照)㋙ 「あの、通常業務をおやめください。」(乙2の1・40頁参照)⑻ 令和5年9月22日の学部長会議での被告の発言学部長会議では、原告を会議に出席させなかったことを問題視する意見を有する出席者が多かった。そのような状況で、令和5年9月22日に開催された学部長会議において、原告を会議に出席させなかった理由について議論となった際に、被告は、その理由として、原告の責任について執行部会で議論した内容を当該会議において話すと、原告の名誉が毀損されてしまうので はないかと考え、「A学長のプライバシーに関して非常に失礼なことが生じると思うので発言しない」と述べた。(甲24・6、7頁、乙3、証人G8~10頁、原告本人24~26頁、被告本人17、18、27、28、31~33頁)⑼ 原告のB大学に対する要望ア原告は、前記⑹キのとおり、令和5年9月4日付けの書面をB大学宛てに送付して、原告をB大学の各種会議に参加させない根拠等を質問したのに続けて、B大学に対し、同月21日付け書面により、自身が出席できなかった会議の議事録及び録音の提出などを求めた。さらに、原告は、同月28日付け書面により、自身の立場や見解を会議の構成員に広く知ってもらうために、上記の原告が送付した各書面について、各学部長及び各理事に送付するよう依頼したが、B大学がこれに応じなかったことから、原告は、各学部長及び各理事に対して上記各書面を送付した。しかしながら、原告のこれらの要望に対してB大学が十分な対応を行っていないと感じた原告は、自身の置かれた現状を打破しようと考え、前提事実⑶の報道機関のイ 部長及び各理事に対して上記各書面を送付した。しかしながら、原告のこれらの要望に対してB大学が十分な対応を行っていないと感じた原告は、自身の置かれた現状を打破しようと考え、前提事実⑶の報道機関のインタビューを受けるなどすることにした。(甲6、8~10、24・7、8頁)。 イ原告は、B大学に対し、令和5年10月下旬頃から同年11月初旬頃にかけて、原告を各種会議に参加させなかったこと等に関して、学部長及び理事が自由な雰囲気の中での討議の場を設けることを、複数回にわたって書面により提案したが、B大学がこれに応じることはなかった。(甲13~16、24・8頁、原告本人26、27頁) 2 争点⑴(本件行為1が不法行為となるか)について⑴ 原告は、被告が令和5年8月22日から同年9月7日までの間のB大学における各種会議への原告の出席を禁止したことが、人間関係からの切り離しという類型のパワーハラスメントに該当し、不法行為が成立すると主張する。 一般的にパワーハラスメントとは、職場における優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、就業者の就業環境が害されるものをいう(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律30条の2第1項参照)。そして、学校法人における役員同士であったとしても、法人内部において、一方が他方に対して優越するような関係を有し、その優越する者による言動が、業務上必要かつ相当な範囲を超えたもので、相手方の職務執行に係る環境を害するといえる場合に、当該言動は、パワーハラスメントと評価され得るというべきである。 ⑵ア認定事実⑹ア、ウ、エ及びオによると、D学長、F常務理事及びG常務理事が原告に対して会議に出席しないよう伝えた事実や、原告が会議 該言動は、パワーハラスメントと評価され得るというべきである。 ⑵ア認定事実⑹ア、ウ、エ及びオによると、D学長、F常務理事及びG常務理事が原告に対して会議に出席しないよう伝えた事実や、原告が会議に出席できない理由について、被告及びD学長が学部長会議や理事会において説明した事実が認められる。 一方で、本件薬物事件における原告の対応等の一連の経緯をみると、原告は、警視庁係官や警視と直接のやり取りをして(認定事実⑴、同⑵ウ、カ、同⑶オ)、f部員を自首させることやB大学内での秘密保持を徹底することという方針を立て、その方針を被告、D学長及びF常務理事へ報告して了承を得る(認定事実⑴イ、同⑵ア、イ、カ、同⑶ア)とともに、アメフト部の学生寮での荷物検査及びヒアリングの実施(認定事実⑵ア、オ)、f部員から提出を受けてから12日間にわたる本件缶のB大学内での保管(認定事実⑵ア、カ)、報道機関に対する回答案やプレスリリース案の作成への関与(認定事実⑵エ、同⑶ウ)、B大学内の打合せや執行部会における本件薬物事件の一連の経過報告(認定事実⑶エ、同⑷ア、同⑸ウ)など、本件薬物事件へのB大学としての対応を主導していたものと認められる。そして、原告は、令和5年7月に実施されたアメフト部の部員に対するヒアリングにおいて、f部員のほか複数の卒業生の部員の大麻使 用の疑いや、特定の部員による過去の大麻使用の自己申告等の情報を得ており(認定事実⑵ア)、同月20日にはE監督から令和4年11月27日のアメフト部の部員による大麻使用の申告内容等の情報を得ていたにもかかわらず(認定事実⑶イ)、鑑定結果が出るまでは違法な薬物の存在が確認されていないものと取り扱えばよいなどと助言をして(認定事実⑶ウ、エ)、それに沿うような形で、プレスリリースの送信や被告の囲み取材の らず(認定事実⑶イ)、鑑定結果が出るまでは違法な薬物の存在が確認されていないものと取り扱えばよいなどと助言をして(認定事実⑶ウ、エ)、それに沿うような形で、プレスリリースの送信や被告の囲み取材の対応が行われている(前提事実⑵イ)。しかも、原告は、上記各情報だけでなく、令和5年8月3日に前提事実⑵ウの捜索差押えが実施された際には、警視庁係官から、本件缶の中身が大麻であり、アメフト部の学生寮の半数以上又は半数近くの学生が大麻を使用していると思われるとの情報を入手していた(認定事実⑶オ)が、これらの重要な情報の共有を十分に図ることなく、f部員の他にアメフト部内から逮捕者が出る可能性は低いこと(認定事実⑷ア、ウ、同⑸ア、ウ)、大麻使用については個人の問題として取り扱うべきこと(認定事実⑸ア、ウ)といった助言をし、それを踏まえて、令和5年8月8日の記者会見が実施され(前提事実⑵エ)、同月10日にはアメフト部の無期限活動停止処分の解除が公表される(前提事実⑵オ)に至っている。 このような一連の経緯をみて、被告、D学長、G常務理事及びF常務理事をはじめとした原告を除く執行部会のメンバーらは、本件薬物事件における原告の対応等に影響され、B大学としての対応が必ずしも望ましい結果となっていないとの認識を有していた(認定事実⑹ア)ところ、令和5年8月22日の危機管理委員会の会議において、原告が本件薬物事件に関する情報提供に協力的でなかったことから、正しい意思決定をするためには原告が各種会議に出席しないほうが望ましいとのB大学の顧問弁護士による意見も踏まえ、ひとまず原告を各種会議から外す形で議論して、B大学としての対応を検討することが望ましいと考え、原告にB大学の各種会 議へ出席しないよう伝えるとの方針を採るに至ったものと認められる。 そうする とまず原告を各種会議から外す形で議論して、B大学としての対応を検討することが望ましいと考え、原告にB大学の各種会 議へ出席しないよう伝えるとの方針を採るに至ったものと認められる。 そうすると、D学長、F常務理事及びG常務理事は、上記の被告ら執行部会のメンバーの判断内容として、原告に対し、会議に出席しないよう伝えたにすぎず、また、被告及びD学長は、上記の判断を採るに至る理由を学部長会議や理事会において説明したにすぎないといえる。 イ加えて、原告は、D学長、F常務理事及びG常務理事から各種会議に出席しないよう伝えられた後も、令和5年8月22日から同年9月7日までの間、執行部会、危機管理委員会の会議、学部長会議に合計6回参加し、さらに、自分を会議に出席させないことについて被告へ抗議をした後の令和5年9月8日以降の会議にはほとんど参加できるようになっている(認定事実⑹カ、キ、同⑺ウ)ことからすると、D学長、F常務理事及びG常務理事の伝達内容が徹底されておらず、原告を除く執行部会のメンバーが採った方針が、原告に対して会議への出席を禁止するものであったとまでは評価できない。 ⑶ 以上によると、原告に対して令和5年8月22日から同年9月7日までの間にB大学において開催された各種会議に出席しないよう伝える意思決定をした主体は、B大学の理事長である被告、D学長及び常務理事らを含む執行部会のメンバー(副学長である原告を除く。)であり、原告に伝達された内容も、原告に対して会議への出席を禁止するものであったとまではいえない。 したがって、B大学の業務を総理する者として、上記意思決定の理由を説明したにすぎない被告に、パワーハラスメントを理由とする不法行為が成立するとの原告の主張は、その前提を欠くというべきである。 なお、原告も問題視するよ 業務を総理する者として、上記意思決定の理由を説明したにすぎない被告に、パワーハラスメントを理由とする不法行為が成立するとの原告の主張は、その前提を欠くというべきである。 なお、原告も問題視するように、前記⑵アの方針を採るに当たっての意思決定が、学校法人であるB大学の機関のいずれでなされたか、その所在が不明であり、また、会議の構成員に対して会議へ出席しないよう伝達する場合には、その理由を明確にすることが学校法人の経営上、望ましいこととはい えるが、この点を捉えて被告が個人責任を負うものでもなく、いずれにせよ本件行為1について不法行為は成立しない。 3 争点⑵(本件行為2が不法行為となるか)について⑴ 認定事実⑺ウのとおり、令和5年9月4日の原告と被告との面談では、大きく分けて、現段階で原告が副学長を辞任すべきか否か、また、原告が担当している通常業務を原告自身が行うのか、それとも他の者に担当させるのかについてのやり取りがなされているところ、その内容からしても、原告と被告との間には、本件薬物事件への一連の対応について、B大学が世間や報道機関からの猛烈な批判にさらされる中で、最終的にどのように幕引きを図るかということが念頭にあったことは明らかである。 確かに、被告は、上記のやり取りの中で、原告が現段階で辞任すべきであるとの見解を原告に対して繰り返し述べるなどしているが、あくまで本件薬物事件への一連の対応をめぐる問題の幕引きを図る方法の一つとして、原告に対する説得に徹しており、原告も、被告からの話を受けて、自己の見解を述べて反論をしていたが、最終的には「ですから、絶対に辞めないと言ってるわけじゃないから、ちょっと考えさせてくれと申し上げてるんです。」などと述べ、被告の話を持ち帰って検討することとしている。 さらに、原告は、被告 たが、最終的には「ですから、絶対に辞めないと言ってるわけじゃないから、ちょっと考えさせてくれと申し上げてるんです。」などと述べ、被告の話を持ち帰って検討することとしている。 さらに、原告は、被告に対し、辞任の件を持ち帰って検討する間、副学長として担当している通常業務をやるべきか否かについて、複数回にわたって回答を求め、被告は、最終的に「通常業務をおやめください。」(認定事実⑺ウ㋙)と回答した上で、原告の副学長としての担当業務については被告及びG常務理事らにおいて何とかする旨を述べている。 以上によると、令和5年9月4日に原告と被告は、理事長又は副学長という各自の立場に基づき、本件薬物事件への一連の対応をめぐる問題について率直な意見交換を行ったものと評価でき、その際の被告の発言(認定事実⑺ウ㋐ないし㋙を含む。)について、被告がその優越的な関係を背景として、 業務上必要かつ相当な範囲を超えて、原告に副学長の辞任を求めたり、副学長としての通常業務をやめるように命じたりして、原告の職務執行に係る環境を害したものとは認められない。 ⑵ また、令和5年9月4日の原告とH監事とのやり取り(認定事実⑺イ)についても、あくまで原告とH監事とが、本件薬物事件への一連の対応をめぐる問題についてのB大学の対応方針の意見交換及び原告の進退についての話合いをしたものとしか、証拠上評価することはできない。 ⑶ したがって、令和5年9月4日に被告が原告に対して副学長の辞任を求めた行為がパワーハラスメントに当たるとはいえないし、同日の被告の原告に対する言動が、そのほかの理由で不法行為となるような違法性を認めることもできない。また、H監事の原告に対する言動について、被告が責任を負うべき理由もないから、本件行為2について、不法行為は成立しない。 、そのほかの理由で不法行為となるような違法性を認めることもできない。また、H監事の原告に対する言動について、被告が責任を負うべき理由もないから、本件行為2について、不法行為は成立しない。 この点に関し、原告は、被告が、原告への警察の捜査が進んでいる、文部科学省が原告の処分を望んでいるといった虚偽の事実を伝えて、副学長の辞任を求めた点も違法であると主張する。確かに、被告は、原告に対し、令和5年9月4日のやり取りの中で、文部科学省から原告の処分がどうなっているか質問されていることや、原告が警視庁から事情聴取を受ける可能性があることを複数回にわたって発言している(認定事実⑺ウ㋐等)。しかしながら、文部科学省からの質問については、B大学が文部科学省から本件薬物事件の責任者の処遇についての方針を確認されていたこと(認定事実⑹キ)、原告が警視庁から事情聴取を受ける可能性については、F常務理事が被告に伝えたものであること(認定事実⑺ア)からすると、被告がこれらの事実を虚偽のものであると認識して発言していたとはいえない。また、被告の「先生がそういうリスクを、私たちがリスクを一つずつ取り除いていくとしたら、あの、やっぱりA先生が辞任なさった、辞任なさるってことは、すごく私たちからリスクが少なくなることだと思ってるんですけども。」(甲22の1、 乙2の1・14頁)との発言からも明らかなとおり、被告はF常務理事から聞いた話(認定事実⑺ア)が事実であるとしたら、本件薬物事件への一連の対応をめぐる問題の鎮静化を図る上でのリスクの一つとなると認識して、原告への説得の一環としてこれらを伝えたにすぎない。そうすると、原告の上記主張は、前記⑴の認定判断を左右するものではない。 4 争点⑶(本件行為3が不法行為となるか)について⑴ 認定事実⑻のと 告への説得の一環としてこれらを伝えたにすぎない。そうすると、原告の上記主張は、前記⑴の認定判断を左右するものではない。 4 争点⑶(本件行為3が不法行為となるか)について⑴ 認定事実⑻のとおり、被告は、令和5年9月22日の学部長会議において、「A学長のプライバシーに関して非常に失礼なことが生じると思うので発言しない」と発言している。 もっとも、上記の被告の発言は、原告を会議に出席させなかった理由を問われた際のもので、その文脈からすると、当該発言を聞いた通常人は、被告がその理由を話すことを学部長会議の場では差し控える旨の発言をしたとの理解をするにとどまり、裏を返して、その理由が原告のプライバシーに関して非常に失礼なものであるとの印象までも抱くとはいえない。そうすると、原告にとって、自身が会議に出席できなかった理由について議論となっている際に、被告にその理由を伏せられたことも相まって不愉快に感じられることがあったとしても、被告の発言が、原告の社会的評価や名誉感情を違法に侵害するものとは認められない。 また、会議の場における違法とは評価できない被告の発言を捉えて、被告が、その優越的な関係を背景に、業務上必要かつ相当な範囲を超えて、原告の職務執行に係る環境を悪化させるパワーハラスメントを行ったとも評価できず、被告の上記発言について、不法行為となるような違法性を認めることはできない。 ⑵ したがって、本件行為3について不法行為は成立しない。 第4 結論よって、原告の請求は理由がないから、これを棄却することとして、主文の とおり判決する。 東京地方裁判所民事第37部 裁判長裁判官上拂大作 裁判官髙岡遼大 裁判官安川秀方は、転補 とおり判決する。 東京地方裁判所民事第37部 裁判長裁判官上拂大作 裁判官髙岡遼大 裁判官安川秀方は、転補につき、署名押印することができない。 裁判長裁判官上拂大作
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