平成28(ワ)3483 損害賠償請求事件

裁判年月日・裁判所
令和元年7月30日 名古屋地方裁判所
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判決文本文17,591 文字)

- 1 - 令和元年7月30日判決言渡同日原本領収裁判所書記官平成283483号損害賠償請求事件口頭弁論終結日令和元年5月29日判決主文 1 被告は,原告に対し,8万8000円及びこれに対する平成26年12月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用は原告の負担とする。 事実 及び理由第1 請求被告は,原告に対し,330万円及びこれに対する平成26年12月18日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第2 事案の概要 1 本件は,他人名義の偽造旅券を行使して日本に入国したスリランカ民主社会主義共和国(以下「スリランカ」という。)国籍の原告が,退去強制令書の発付処分を受けた後,平成23年6月3日に難民不認定処分を受け,同年7月5日に前記処分に対する異議申立て(平成26年法律第69号による改正前の出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」という。)に基づくもの)をし,同申立てが棄却された場合は難民不認定処分に対して取消訴訟等をする意向を示していたにもかかわらず,入国警備官らが,前記異議申立棄却決定の後,原告による難民不認定処分に対する取消訴訟等の提起を妨害するために,同棄却決定の告知をあえて遅らせて同年12月17日にし,その直前の同月15日に原告を収容し,同棄却決定の告知後は弁護士との連絡もできなくしたほか,原告に対してスリランカ帰国後に訴訟ができるとの虚偽の説明をするなどして,同月18日に原告を強制送還したという一連の違法な公権力行使により,原告の- 2 - 裁判を受ける権利が違法に侵害されたとして,国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づき,損害賠償金合計330万円(精神的苦痛に対する慰謝料300 公権力行使により,原告の- 2 - 裁判を受ける権利が違法に侵害されたとして,国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づき,損害賠償金合計330万円(精神的苦痛に対する慰謝料300万円,弁護士費用30万円)及びこれに対する原告を強制送還した日である平成26年12月18日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 2 前提事実(当事者間に争いがないか,掲記の各証拠(特に明記しない限り,枝番があるものは枝番を含む。以下同じ。)及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実)原告原告は,昭和53年(1978年)○月○日にスリランカにおいて出生したスリランカ国籍の男性である。 ⑵ 強制送還に至る経緯ア退去強制手続の状況原告は,平成17年7月4日に他人名義の偽造旅券を行使して日本に入国したものの,平成22年6月15日,入管法24条4号ロ(不法残留)の容疑によって摘発され,同日,大阪入国管理局(以下「大阪入管」という。)入国警備官による違反調査を受けた後,名古屋入国管理局(以下「名古屋入管」という。)に収容された。(乙2ないし6)名古屋入管入国審査官は,同月16日及び同月22日に原告に対する違反審査を実施した上,原告が入管法24条4号ロ(不法残留)に該当する旨認定してこれを原告に告げたところ,原告は「早くスリランカに帰りたいと思っているので口頭審理を放棄します。」と述べて,口頭審理放棄書に署名,指印をした。名古屋入管入国審査官は,同日,原告に対し,入管法24条4号ロに該当することを理由とする退去強制令書(送還先をスリランカとするもの。以下「本件退令」という。)を発付し(以下「本件退令発付処分」という。),本件退令発付処分の取消訴- 3 - 訟について教示した。名 とを理由とする退去強制令書(送還先をスリランカとするもの。以下「本件退令」という。)を発付し(以下「本件退令発付処分」という。),本件退令発付処分の取消訴- 3 - 訟について教示した。名古屋入管入国警備官は,同日,本件退令を執行して,原告を引き続き名古屋入管に収容した。その後,原告は同年9月29日に,入国者収容所西日本入国管理センター(以下「西日本センター」という。)に移収された。原告は本件退令発付処分の取消訴訟を提起することはなかった。(乙7ないし12)平成23年6月2日,原告は仮放免が許可され,西日本センターを出所した。その後,原告は仮放免期間の延長が許可されていたものの,平成26年12月15日,名古屋入管主任審査官は原告の仮放免期間延長許可申請を不許可とし,同日,名古屋入管入国警備官は本件退令を執行して,原告を名古屋入管に収容した。(甲3,乙12ないし14)イ難民認定手続の状況原告は,平成22年12月12日,西日本センターにおいて,難民認定申請を行い(以下「本件難民認定申請」という。),大阪入管において受理された(なお,難民認定申請に係る仮滞在については,入管法61条の2の4第1項8号に該当するとして不許可となっている。)。 法務大臣は,平成23年6月3日,本件難民認定申請について不認定処分(以下「本件不認定処分」という。)をし,同年7月5日,これを原告に通知した。また,法務大臣は,同日,原告に対し,本件不認定処分の取消訴訟について教示した。なお,原告に対し教示の際に交付した書面(以下「教示書1」という。)には,以下の記載がある。(乙19)「本件難民不認定処分(又は本件難民認定取消処分)に対しては取消訴訟を提起することができますので,行政事件訴訟法第46条に基づき,取消訴訟の被告とすべき者及び には,以下の記載がある。(乙19)「本件難民不認定処分(又は本件難民認定取消処分)に対しては取消訴訟を提起することができますので,行政事件訴訟法第46条に基づき,取消訴訟の被告とすべき者及び出訴期間を下記のとおり教示します。 1 取消訴訟の被告とすべき者国- 4 - 2 取消訴訟の出訴期間⑴ 本件難民不認定処分(又は本件難民認定取消処分)があったことを知った日から6か月以内。ただし,正当な理由があるときはこの限りでない。 ⑵ 上記⑴の期間内であっても,本件難民不認定処分(又は本件難民認定取消処分)の日から1年を経過したときは,取消訴訟を提起することができない。ただし,正当な理由があるときは,この限りでない。 ⑶ 本件難民不認定処分(又は本件難民認定取消処分)に対し出入国管理及び難民認定法第61条の2の9に基づき異議申立てを行った場合には,上記⑴及び⑵の期間にかかわらず,異議申立てに対する裁決があったことを知った日から6か月以内。ただし,正当な理由があるときは,この限りでない。 ⑷ 上記⑶の期間内であっても,異議申立てに対する裁決の日から1年を経過したときは,取消訴訟を提起することができない。ただし,正当な理由があるときは,この限りでない。」大阪入管局長は,同年6月20日,入管法61条の2の2第2項による在留特別許可をしない旨の処分(以下「本件在特不許可処分」という。)をし,同年7月5日,原告に対して通知した上,本件在特不許可処分の取消訴訟について教示した。(乙20)原告は,同年7月5日,名古屋入管において,本件不認定処分を不服として,法務大臣に対して異議を申し立てるとともに,法務大臣に対し,口頭意見陳述申立書を提出し,同年8月12日には,異議申立てに係る申述書を名古屋入管に提出した。(乙2 おいて,本件不認定処分を不服として,法務大臣に対して異議を申し立てるとともに,法務大臣に対し,口頭意見陳述申立書を提出し,同年8月12日には,異議申立てに係る申述書を名古屋入管に提出した。(乙21ないし23)平成24年2月9日,原告は,異議申立ての審尋が大阪入管で行われることを希望する旨の要望書を大阪入管に提出し,同月14日,異議申- 5 - 立ての代理人であったA弁護士(以下「A弁護士」という。)も原告と同様の趣旨の上申書を大阪入管に提出した。その後,A弁護士は,平成26年2月6日及び同年3月10日,異議申立てに関する意見書及び資料を大阪入管に提出した。なお,同日,大阪入管において,原告に係る口頭意見陳述及び審尋が実施されている。(乙24ないし29)法務大臣は,同年11月7日,本件不認定処分の異議申立てについて,棄却する旨の決定(以下「本件異議棄却決定」という。)を行い,同年12月17日,原告に通知し,本件異議棄却決定の取消訴訟についての教示も行った。なお,原告に対し教示の際に交付した書面(以下「教示書2」という。)には,以下の記載がある。(甲1,2,乙29,30)「本件難民の認定をしない処分に係る異議申立ての決定に対しては,取消訴訟を提起することができますので,行政事件訴訟法第46条に基づき,取消訴訟の被告とすべき者及び出訴期間を下記のとおり教示します。 1 取消訴訟の被告とすべき者国 2 取消訴訟の出訴期間⑴ 本件難民の認定をしない処分に係る異議申立ての決定があったことを知った日から6か月以内。ただし,正当な理由があるときはこの限りでない。 ⑵ 上記⑴の期間内であっても,本件難民の認定をしない処分に係る異議申立ての決定の日から1年を経過したときは,取消訴訟を提起することができない。ただし,正当 当な理由があるときはこの限りでない。 ⑵ 上記⑴の期間内であっても,本件難民の認定をしない処分に係る異議申立ての決定の日から1年を経過したときは,取消訴訟を提起することができない。ただし,正当な理由があるときは,この限りではない。」ウ送還手続の経緯被告によるチャーター機での集団送還の実施- 6 - 送還を忌避する者(以下「送還忌避者」という。)について,自らの意思で帰国しようとせず,航空会社から航空機への搭乗を拒否されるなどして国費による個別送還が実施できないケースが少なくないという実情を踏まえて,入管当局においては,送還忌避者の送還を安全かつ確実に実施することを目的として,平成25年度以降,チャーター機を用いて多数の送還忌避者を一度に送還する集団送還を実施している。集団送還によって送還される者の選定に当たっては,行政訴訟等の提起や難民認定申請の有無及びそれらの進捗状況等,被退去強制者ごとの事情が検討されているところ,難民不認定処分に係る異議申立手続中の者については,同手続の進捗状況に照らし,集団送還の実施日までに異議申立手続が終了する見込みのある者も含めている。 原告は,本件退令発付処分の取消訴訟等を提起しておらず,また,本件不認定処分に係る異議申立手続中ではあったものの,本件送還の実施日までに異議申立手続が終了する見込みがあったことから,集団送還の対象者に選定された。 原告に対する本件異議棄却決定の告知及びそれに対する原告の反応等名古屋入管入国警備官は,平成26年12月17日午後3時36分頃,原告に対し,スリランカに送還する旨告知した。これに対し,原告は「6か月の間これ裁判できる。」,「おれ,おれ裁判やるの。」「帰ったら死んじゃう」,「入管が責任持つのか」,「紙に書いて判子くれ」などと述べたので スリランカに送還する旨告知した。これに対し,原告は「6か月の間これ裁判できる。」,「おれ,おれ裁判やるの。」「帰ったら死んじゃう」,「入管が責任持つのか」,「紙に書いて判子くれ」などと述べたので,名古屋入管入国警備官は「国に帰っても裁判できる」などと発言した。また,同日午後3時46分頃,原告は調査第一部門調室1号に連行された際,「飛行機に乗せるなら,自身の体を噛む。脱糞してやる。」などと発言した。(甲3の11,5,6,乙31)同日午後4時51分頃,名古屋入管入国警備官は,原告に対し,自ら- 7 - 荷物整理を行うよう促したが,原告が応じなかったことから,名古屋入管入国警備官が荷物整理を行った。 同日午後5時58分頃,名古屋入管入国警備官は,原告をマイクロバスに乗車させ,羽田空港に護送した。なお,この際,原告は自力歩行し,特段抵抗することはなかった。 同月18日午前5時43分,原告は,チャーター機により,スリランカに向けて送還された(以下「本件送還」という。)。これにより,原告は,本件不認定処分の取消訴訟の訴えの利益を失った。 ⑶ 入管法の規定ア 52条3項入国警備官(前項の規定により退去強制令書を執行する警察官又は海上保安官を含む。以下この条において同じ。)は,退去強制令書を執行するときは,退去強制を受ける者に退去強制令書又はその写しを示して,速やかにその者を次条に規定する送還先に送還しなければならない。ただし,第59条の規定により運送業者が送還する場合には,入国警備官は,当該運送業者に引き渡すものとする。 イ 61条の2第1項法務大臣は,本邦にある外国人から法務省令で定める手続により申請があったときは,その提出した資料に基づき,その者が難民である旨の認定(以下「難民の認定」という。)を行うことができる。 条の2第1項法務大臣は,本邦にある外国人から法務省令で定める手続により申請があったときは,その提出した資料に基づき,その者が難民である旨の認定(以下「難民の認定」という。)を行うことができる。 ウ 61条の2の2第1項法務大臣は,前条第1項の規定により難民の認定をする場合であって,同項の申請をした外国人が在留資格未取得外国人(別表第1又は別表第2の上欄の在留資格をもって本邦に在留する者,一時庇護のための上陸の許可を受けた者で当該許可書に記載された期間を経過していないもの及び特別永住者以外の者をいう。以下同じ。)であるときは,当該在留資格未取- 8 - 得外国人が次の各号のいずれかに該当する場合を除き,その者に定住者の在留資格の取得を許可するものとする。 エ 61条の2の4第1項法務大臣は,在留資格未取得外国人から第61条の2第1項の申請があったときは,当該在留資格未取得外国人が次の各号のいずれかに該当する場合を除き,その者に仮に本邦に滞在することを許可するものとする。 オ 61条の2の4第5項第1項の許可を受けた外国人が次の各号に掲げるいずれかの事由に該当することとなったときは,当該外国人に係る仮滞在期間(前項の規定により更新された仮滞在期間を含む。以下同じ。)は,当該事由に該当することとなった時に,その終期が到来したものとする。 1号難民の認定をしない処分につき第61条の2の9第1項の異議申立てがなくて同条第2項の期間が経過したこと。 2号難民の認定をしない処分につき第61条の2の9第1項の異議申立てがあった場合において,当該異議申立てが取り下げられ,又はこれを却下若しくは棄却する旨の決定があったこと。 カ 61条の2の6第3項第61条の2第1項の申請をした在留資格未取得外国人で,第61条の あった場合において,当該異議申立てが取り下げられ,又はこれを却下若しくは棄却する旨の決定があったこと。 カ 61条の2の6第3項第61条の2第1項の申請をした在留資格未取得外国人で,第61条の2の4第1項の許可を受けていないもの又は当該許可に係る仮滞在期間が経過することとなったものについて,第5章に規定する退去強制の手続を行う場合には,同条第5項第1号から第3号までに掲げるいずれかの事由に該当することとなるまでの間は,第52条3項の規定による送還を停止するものとする。 3 争点- 9 - ⑴ 本件送還が国賠法上違法となるか⑵ 損害額 4 当事者の主張⑴本件送還が国賠法上違法となるか)について(原告の主張)ア市民的及び政治的権利に関する国際規約(以下「自由権規約」という。)14条1項違反について自由権規約14条1項は,民事上の権利及び義務の争いについての決定のため,法律で設置された,権限のある,独立の,かつ,公平な裁判所による,公正な公開審理を受ける権利を有する旨規定しているところ,同項に関する自由権規約委員会の「一般的な性格を有する意見」(以下「一般的意見」という。)において,締約国は,自国の法的伝統や国内法に関わりなく尊重しなければならない保障を定めており,権限のある裁判所にアクセスしようとする個人の試みが,法律上又は事実上,組織的に阻まれる状況は,第14条1項の保障に抵触する旨述べられている。加えて,国は,自由権規約に批准したほか,難民の地位に関する条約(以下「難民条約」という。)及び拷問及び他の残虐な,非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約(以下「拷問条約」という。)に加入している。そうすると,原告は,本件異議棄却決定の告知を受けた際,日本の領域内にあり,日本の管轄下に 残虐な,非人道的な又は品位を傷つける取扱い又は刑罰に関する条約(以下「拷問条約」という。)に加入している。そうすると,原告は,本件異議棄却決定の告知を受けた際,日本の領域内にあり,日本の管轄下にあったのであるから,自由権規約14条1項により保障された裁判を受けるため,少なくとも,本件不認定処分に対する取消訴訟を提起するまでの合理的期間内においては,強制送還されない権利を有していたというべきである。 入国警備官らが原告の強制送還を実施したことは,原告の前記権利を侵害する違法な行為である。 イノン・ルフールマン原則違反- 10 - 難民条約33条1項は,「締約国は,難民を,いかなる方法によっても,人種,宗教,国籍もしくは特定の社会集団の構成員であることまたは政治的意見のためにその生命または自由が脅威にさらされるおそれのある領域の国境へ追放しまたは送還してはならない」といういわゆるノン・ルフールマン原則を定めているところ,法の支配の原理からすれば,ノン・ルフールマン原則の審査においても,行政機関の決定だけでなく,裁判所の審査が必要と解される。それにもかかわらず,原告は,行政手続において難民とは認定されず,本件不認定処分の取消訴訟を提起する合理的期間が保障されることなくスリランカに送還(本件送還)されてしまっており,本件送還はノン・ルフールマン原則に違反している。 ウ憲法13条,32条,31条違反集団送還の対象者の選定についてチャーター機による集団送還は,被送還者全員の身柄を確保するため不意打ち的に身柄収容して送還することになり,個々の対象者の人権を侵害する蓋然性が極めて高い。そのため,適正手続の要請(憲法31条)から,被告による対象者の選定は恣意的であってはならず,送還が個々の対象者の権利を侵害しないかどうかを になり,個々の対象者の人権を侵害する蓋然性が極めて高い。そのため,適正手続の要請(憲法31条)から,被告による対象者の選定は恣意的であってはならず,送還が個々の対象者の権利を侵害しないかどうかを慎重に考慮する義務がある。難民不認定処分に対する取消訴訟提起の意思は,対象者の選定に当たって考慮すべき重要な事実であるところ,原告は,本件送還当時,1回目の難民認定申請の異議手続中であり,代理人を通じて,異議申立てに係る審尋が大阪入国管理局で実施されることを希望する上申書や異議申立てに関する意見書等を提出するなどしていたのであるから,異議が棄却された場合には,原告が取消訴訟を提起する可能性が高かったのであり,そのことを被告は十分に把握し得た。それにもかかわらず,被告は,原告を集団送還の対象者として選定したのであるから,前記の義務に違反している。 - 11 - また,異議棄却告知後には,原告が「裁判する」と何度も訴えているのであるから,原告の出訴の意思は明白となっており,遅くともこの段階で,このまま集団送還を実施すると,原告の裁判を受ける権利を奪ってしまうことが客観的に明白となったのであるから,被告には原告に対する強制送還手続を中止すべき義務が生じていた。それにもかかわらず,被告は原告を送還し,前記の義務に違反した。 告知の時期及び方法について本件異議棄却決定の告知は本件送還の前日の平成26年12月17日の午後3時頃に行われているところ,その時点で原告は身体を拘束されていた上,告知の翌日には退去強制が執行されており,本件不認定処分の取消訴訟を提起する時間的猶予は皆無であった。また,原告が教示書を示しながら,「裁判やりたい」などと訴えても弁護士に取り次がず,送還されても弁護士によって本件不認定処分の取消訴訟を行うことができる旨 消訴訟を提起する時間的猶予は皆無であった。また,原告が教示書を示しながら,「裁判やりたい」などと訴えても弁護士に取り次がず,送還されても弁護士によって本件不認定処分の取消訴訟を行うことができる旨の虚偽の法律上の見解を述べて出訴の意思を抑圧するなど,出訴を殊更妨害する言動を続けた。 前記のような告知方法は,原告の出訴の時間的猶予を奪うことを目的とし,処分庁が恣意的に告知の時期及び具体的方法を操作したものであって,裁判を受ける権利(憲法32条,13条)及び適正手続を受ける権利(憲法31条)を侵害するものである。 (被告の主張)ア自由権規約14条1項違反についてそもそも,国家は,国際慣習法上,外国人を受け入れる義務を負うものではなく,特別の条約ないし取決めがない限り,外国人を自国内に受け入れるかどうか,また,受け入れる場合にいかなる条件を付すかを自由に決することができるのであり,憲法上も,外国人は,我が国に入国する権利が保障されているものではないことはもちろん,在留の権利ないし引き続- 12 - き日本に在留することを要求する権利を保障されているものでもない。そして,自由権規約には,この国際慣習法上の原則を排斥する規定は存在せず,かえって,自由権規約13条が合法的に在留する外国人についてさえ法律に基づく退去強制手続を執ることが容認されていることに照らすと,自由権規約も国際慣習法上の原則を当然の前提としていると解すべきであるから,自由権規約によって,憲法の諸規定による人権保障を超えた利益までもが保護されているとはいえない。 したがって,原告が本件送還により本件不認定処分の取消訴訟の訴えの利益を欠くに至ったからといって,直ちに原告の裁判を受ける権利が侵害されたとか,それが自由権規約14条に違反するといえるものではなく,原 がって,原告が本件送還により本件不認定処分の取消訴訟の訴えの利益を欠くに至ったからといって,直ちに原告の裁判を受ける権利が侵害されたとか,それが自由権規約14条に違反するといえるものではなく,原告の主張は理由がない。 イノン・ルフールマン原則違反について行政機関は,行政処分を行うに際し,当然に法令に基づいて意思決定を行っているのであるから,その時点で法の支配の原理は及んでいるといえ,裁判所の審査が必要であるとの原告の主張はそれ自体失当である。 また,ノン・ルフールマン原則は,難民を生命又は自由が脅威にさらされるおそれのある領域の国境へ追放し又は送還してはならないという原則であるから,少なくとも,原告にとってスリランカが,生命又は自由が脅威にさらされるおそれのある領域であることが前提となって初めて,同原則に違反することになるのであり,難民不認定処分取消訴訟の出訴期間内に原告がスリランカに送還されたからといって直ちに同原則に違反するということにはならない。 ウ憲法32条,13条,31条違反について集団送還の対象者の選定について被退去強制者については,退令発付処分の取消訴訟等が提起され,執行停止の申立てがなされた場合であっても,裁判所による執行停止の決- 13 - 定がない限りは,難民認定手続中であることを理由に入管法61条の2の6第3項の規定により送還が停止している間を除き,送還は停止されないのであって,他方,入国警備官は,入管法上,被退去強制者を速やかに国籍国等の送還先へ送還することが求められているのであるから,被退去強制者に訴訟提起の意思を確認した上で,同人が訴訟提起の意思を表明した場合には,出訴期間中は送還を差し控えなければならないといったような職務上の法的義務はない。 なお,入管当局における事実上の取 去強制者に訴訟提起の意思を確認した上で,同人が訴訟提起の意思を表明した場合には,出訴期間中は送還を差し控えなければならないといったような職務上の法的義務はない。 なお,入管当局における事実上の取扱いとして,被退去強制者が退令発付処分の取消訴訟等を提起したときは,裁判所の執行停止決定がなされていない場合であっても,その者の裁判を受ける権利に配慮し,事実上送還を差し控えることとしているが,実務上退令発付処分の取消訴訟等を提起したことをもって送還を差し控えているからといって,送還を停止しなければならないといった職務上の法的義務を負っていることにはならないし,現に訴訟提起していないにもかかわらず,訴訟提起の意思を表明しただけで,将来あるか否かもわからない訴訟の提起を見込んでその者の送還を差し控えなければならないといった職務上の法的義務などない。 また,行政手続の段階において,異議申立人代理人が選任されていることと,その行政手続の結果不利益処分を受けた場合に,当該不利益処分等の取消訴訟を提起することとは関連性があるわけではなく,本件異議申立手続において異議申立人代理人としてA弁護士が選任されていたこと,A弁護士が上申書等を提出したことや原告の口頭意見陳述及び審尋期日に出席したことをもって,原告が本件異議棄却決定の通知後に本件不認定処分の取消訴訟を提起する可能性が高かったとは認められない。加えて,原告は,本件不認定処分及び本件異議棄却決定に対する取消訴訟に限らず,国を相手方とする様々な訴訟を提起することができる- 14 - 状況にあったところ,本件異議棄却決定の通知後に「裁判やる」旨の発言をしていたとはいえ,それだけでは漠然としており,そのような具体性を欠く意思表示をもって,本件不認定処分及び本件異議棄却決定に対する取消訴訟を提起 ろ,本件異議棄却決定の通知後に「裁判やる」旨の発言をしていたとはいえ,それだけでは漠然としており,そのような具体性を欠く意思表示をもって,本件不認定処分及び本件異議棄却決定に対する取消訴訟を提起する意思を明確に表明したとは認められない。 告知の時期及び方法についてそもそも,難民不認定処分に係る異議棄却決定を異議申立人に通知すべき時期は入管法上定められていないのであるから,本件異議棄却決定の原告への通知を決定書作成日から1か月後に行ったとしても何ら違法ではなく,実務上も異議棄却決定日から異議申立人の通知まで1か月かかることは一般的であって,あえて通知を遅らせたという事実はない。 また,名古屋入管入国警備員による「国に帰っても裁判できる」旨の発言は,本件不認定処分及び本件異議棄却決定に対する取消訴訟に限定することなく,国を相手方とするあらゆる訴訟を含む趣旨でなされたものであり,原告による本件不認定処分等の取消訴訟等の提起を妨げる意図であえて虚偽の事実を述べたものではないことは明らかである。 ⑵ 争点⑵(損害額)について(原告の主張)ア慰謝料について難民認定申請者である原告にとって,難民該当性に関する法務大臣の判断について裁判を受ける必要性は極めて高いにもかかわらず,入国警備官らにより意図的に裁判を受ける権利を侵害され,その結果,法務大臣の判断について裁判を受ける機会を喪失するという回復困難な損害を受け,原告は著しい精神的苦痛を被った。原告が受けた精神的苦痛を慰謝するための金額は,少なくとも300万円を下らない。 イ弁護士費用について原告は,本件訴訟を提起するに当たり,多数の弁護士に訴訟の追行を委- 15 - 任しなければならず,そのための弁護士費用としては,少なくとも慰謝料の1割に相当する額(30万円)を 用について原告は,本件訴訟を提起するに当たり,多数の弁護士に訴訟の追行を委- 15 - 任しなければならず,そのための弁護士費用としては,少なくとも慰謝料の1割に相当する額(30万円)を下らない。 (被告の主張)いずれも争う。 第3 当裁判所の判断 本件送還が国賠法上違法となるか)について⑴ はじめに国賠法1条1項にいう違法とは,国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背することであり,当該公務員が職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と当該行為をしたと認められる事情がある場合には,前記法的義務の違背があるものというべきである(最高裁判所平成5年3月11日第1小法廷判決・民集47巻4号2863頁参照)。以上を前提に,入国警備官に違法があったかどうか検討する。 ⑵ 自由権規約14条1項違反について原告は,自由権規約14条1項の規定及び一般的意見において,裁判所における裁判を受ける権利が保障されていることを根拠として,原告は,本件異議棄却決定の告知を受けたとき,本件不認定処分に対する取消訴訟を提起するまで強制送還されない権利を有していたと主張する。 しかしながら,国際慣習法上,国家は外国人を受け入れる義務を負っているわけではなく,自由権規約においても,法律に基づいて行われた決定によって当該領域から追放され得ることが定められていることからすると,前記の国際慣習法を当然の前提としていると解される。また,自由権規約委員会の一般的意見も,締約国に対して法的拘束力を有するものではない。そうすると,自由権規約14条1項において裁判所における裁判を受ける権利が保障されていることを直接の根拠として,退去強制を受ける立場にあった原告- 16 - につ 拘束力を有するものではない。そうすると,自由権規約14条1項において裁判所における裁判を受ける権利が保障されていることを直接の根拠として,退去強制を受ける立場にあった原告- 16 - について,本件不認定処分に対する取消訴訟を提起するまでの合理的期間,強制送還されない具体的権利が保障されていたと認めることはできない。 したがって,この点に関する原告の主張は採用できない。 ⑶ ノン・ルフールマン原則違反についてまた,原告は,法の支配の原理からすれば,ノン・ルフールマン原則の審査において裁判所の審査が必要であるにもかかわらず,裁判所の審査を経ないまま行われた本件送還は同原則に違反すると主張する。 しかしながら,同原則の内容は原告が主張するとおり,難民をその生命又は自由が脅威にさらされるおそれのある領域の国境へ追放し又は送還してはならないというものであるにとどまり,同原則自体が裁判所による審査まで要求するものとは解されない。また,法の支配の原理によって原告に個別具体的な権利が保障されるわけではなく,原告の主張には論理の飛躍があるといわざるを得ない。 したがって,ノン・ルフールマン原則及び法の支配の原理から,原告が本件不認定処分に対する取消訴訟を提起し,裁判を受ける権利が保障されていたとはいえない。また,原告は,スリランカを送還先とする本件退令の執行によってスリランカに強制送還されたものであるが,原告自身において本件退令発付処分を争う機会があったにもかかわらず,これに対して取消訴訟を提起していなかった上,原告は,本件送還によりスリランカに送還されているが,これによって実際に,原告の生命又は自由が脅威にさらされたといった事情も見当たらないのであり,結局のところ,本件不認定処分ないし本件送還の実施が,ノン・ルフールマン原則に反して に送還されているが,これによって実際に,原告の生命又は自由が脅威にさらされたといった事情も見当たらないのであり,結局のところ,本件不認定処分ないし本件送還の実施が,ノン・ルフールマン原則に反していたともいい難い。したがって,原告の主張は採用できない。 ⑷ 憲法32条,13条,31条違反についてア集団送還の対象者の選定について原告は,集団送還の対象者を選定するに当たり,難民不認定処分の取消- 17 - 訴訟等を提起する可能性が高い者や出訴の意思が明白である者については,そもそも選定しないか,候補者に選んだとしても,手続中にその旨判明した場合には,当該候補者に対する強制送還を中止すべき義務があると主張する。 しかしながら,入管法では,在留資格未取得外国人について,難民不認定処分につき不服申立てがあった場合において,これを却下若しくは棄却する旨の決定があるまでは退去強制令書の執行による送還を停止するとされており(61条の2の6第3項),同項以外に送還を停止する旨の規定はない。また,被退去強制者については,退令発付処分の取消訴訟又は無効確認訴訟が提起され,執行停止の申立てがされたとしても,裁判所による執行停止の決定がない限り送還は停止されない(行政事件訴訟法25条1項)。そうすると,入管法等の規定上は,61条の2の6第3項に定められた場合や,退令発付処分の取消訴訟又は無効確認訴訟を提起して裁判所による執行停止の決定を得た場合でなければ,速やかに送還先に送還することが求められているのであって(52条3項),前記の場合以外に送還を停止する義務が発生するとは認められない。 入管法が難民認定の申請者を本邦にある外国人に限定していることからすれば(61条の2第1項),当該外国人が退令の執行により本邦から出国した場合には,難民不認 止する義務が発生するとは認められない。 入管法が難民認定の申請者を本邦にある外国人に限定していることからすれば(61条の2第1項),当該外国人が退令の執行により本邦から出国した場合には,難民不認定処分の取消しを求める訴えの利益は失われると解すべきところ(最高裁平成8年7月12日第2小法廷判決・訟務月報43巻9号2339頁参照),入管法の前記の定めによれば,本邦にある外国人が退令発付処分を受けた後に難民認定申請をした場合において,難民不認定処分に対する不服申立てが却下ないし棄却された後には,難民不認定処分の取消訴訟を提起する意図があるか否かにかかわらず,退令の執行により国外退去となり難民不認定処分を争う訴えの利益が失われる可能性があると解さざるを得ないのであって,難民不認定処分を争う訴えの利- 18 - 益が喪失するという帰結が生ずることをもって,退令の執行が制限されると解すべき根拠を見出すことはできない。そして,当該外国人が難民不認定処分の取消訴訟を提起する地位を保全しておくためには,退令発付処分の取消訴訟又は無効確認訴訟を提起して裁判所による執行停止の決定を得ておく必要があることになると解される。 なお,証拠(甲7)によれば,難民不認定処分の取消訴訟が提起された場合,当該訴訟が終結するまでの間,当該訴訟を提起した者の送還を見合わせるという運用が行われているとは認められるが,出入国管理行政に携わる法務大臣等の裁量的判断として行われている事実上の運用であって,このような運用を行うべき法的義務があるとまでは認められない。 したがって,原告が主張するような義務を被告が負っているとは認められないから,本件送還を行うに当たり,原告を対象者に選定し,また,強制送還を中止しなかったことについて,公務員が通常尽くすべき注意義務に違反した 原告が主張するような義務を被告が負っているとは認められないから,本件送還を行うに当たり,原告を対象者に選定し,また,強制送還を中止しなかったことについて,公務員が通常尽くすべき注意義務に違反したとは認められない。なお,原告は,本件退令の執行を防ぐために本件退令発付処分の取消訴訟又は無効確認訴訟を提起して執行停止の申立てをしたとしても,「緊急の必要」がないとされて当該申立てが却下される蓋然性が高く,本件において,原告に本件退令の執行を防ぐ法的手段はなかったと主張する。しかし,証拠(乙37)によれば,難民不認定処分に対する審査請求手続中のため送還が停止されていた場合であっても,退令の送還部分の執行停止が認められた事例も存在するのであって,すでに異議申立てに係る口頭意見陳述及び審尋が実施されていた原告が,これらの措置を講じることができなかったとは認められない。 イ告知の時期及び方法について告知の時期について原告は,本件異議棄却決定の告知を決定日である平成26年11月7日から1か月以上経過した同年12月17日に行った点について,原告- 19 - の出訴の時間的猶予を奪うことを目的として,処分庁が恣意的に告知の時期及び具体的方法を操作したものであって,違憲・違法であると主張する。しかしながら,原告が本件不認定処分の取消訴訟等を提起するに至らなかったのは,本件異議棄却決定の告知を遅らせたというよりもむしろ,原告を本件送還の対象者に選定したことにあるというべきである。そうすると,原告の主張は結局,原告を本件送還の対象者に選定したことが違憲・違法であるというのと同じであって,この点については,前記アで述べたとおり,職務上通常尽くすべき義務に違反したとは認められないのであるから,告知の時期に関する原告の主張は採用することができな 違憲・違法であるというのと同じであって,この点については,前記アで述べたとおり,職務上通常尽くすべき義務に違反したとは認められないのであるから,告知の時期に関する原告の主張は採用することができない。 告知の方法についてによれば,原告は本件異議棄却決定の告知の際に交付された教示書2を手にしながら「6か月の間これ裁判できる。」,「おれ,おれ裁判やるの。」などと発言している。また,証拠(甲5,6)によれば,原告の前記発言の前に,入国警備官が「あなた難民と認めないって,もらっただろ。」などと発言していることも認められる。そうすると,原告の発言は,本件異議棄却決定に対する取消訴訟の出訴期間が処分を知った日から6か月以内であるという教示書2の内容を踏まえて,本件不認定処分又は本件異議棄却決定の取消訴訟を提起したいという趣旨であったと認められ,原告の発言において想定されている裁判とは,本件不認定処分又は本件異議棄却決定の取消訴訟であることが明らかであり(なお,教示書2は,本件異議棄却決定に対する取消訴訟の出訴期間を教示するものであるが,原告が,同教示により本件不認定処分の取消訴訟をも想起したものと容易に推認できる。なお,本件不認定処分に対する取消訴訟の出訴期間は教示書1で教示されており,出訴可能な期間はいずれも同じである。),入国警備官らとしても原告の前記意- 20 - 図を認識することが十分に可能であったというべきである(被告は,入国警備官らは,国を相手方とするあらゆる訴訟を含む趣旨であったと主張するが,前記の事情に照らして不自然であり,採用することができない。)。 そして,前記の訴訟の場合,原告がスリランカに送還されてしまえば訴えの利益が失われることになるにもかかわらず,入国警備官らは「裁判できるけど,あんたいなくても弁護 ,採用することができない。)。 そして,前記の訴訟の場合,原告がスリランカに送還されてしまえば訴えの利益が失われることになるにもかかわらず,入国警備官らは「裁判できるけど,あんたいなくても弁護士頼めば,それ弁護士でできるんだ,これ。あんたがいなくてもいいんだ。」,「帰ってからやりなさい。」などと発言をし,原告がスリランカに送還されてもなお前記訴訟を提起することが可能であるかのような誤った教示を行っている。 前記アで述べたとおり,本件送還が違法とまではいえないことからすると,原告は教示された内容の正誤にかかわらずスリランカに送還されるのであるから,誤った教示をされたことが直ちに原告の裁判を受ける権利を侵害するものとはいえない。しかしながら,行政事件訴訟法46条が取消訴訟等の提起時に関する事項を教示しなければならないとした趣旨は,国民に権利利益の救済の機会(被告とすべき者,出訴期間等)を正しく伝える点にあるところ,その前提として,正確な内容を教示すべきであることはいうまでもなく,正確な内容の教示を受けることは国民の権利ともいうべきである。それにもかかわらず,前記のように誤った教示をしたことは,公務員たる入国警備官が職務上通常尽くすべき義務を尽くさなかったことにほかならないというべきであるから,国賠法上違法であると認めるのが相当である。 なお,教示書1,教示書2の内容は,行政事件訴訟法46条に従った内容のみが記載され,本件退令の執行により国外退去となった後は,本件不認定処分ないし本件異議棄却決定に対する取消訴訟を提起することができなくなる旨は明らかにされてはいない。教示を受ける外国人にと- 21 - っては,6か月間は難民不認定処分ないし難民不認定処分の異議申立ての棄却決定に対する取消訴訟を提起できるとの教示を受けながら,国 旨は明らかにされてはいない。教示を受ける外国人にと- 21 - っては,6か月間は難民不認定処分ないし難民不認定処分の異議申立ての棄却決定に対する取消訴訟を提起できるとの教示を受けながら,国外退去となった場合には当該取消訴訟の訴えを提起することができなくなるのであるから,教示内容として極めて分かりにくいものといわざるを得ない。教示書1,教示書2による教示が直ちに違法とはいえないものの,相当な記載がされているといえるかは疑問を持たざるを得ない。 2 争点⑵(損害額)について前記1のとおり,裁判を受ける権利そのものが侵害されたとは認められないものの,その前提となる適切な教示を受ける権利が侵害されていると認められ,それによる慰謝料は8万円とするのが相当である。 また,原告が侵害された権利の内容,認められるべき損害額などを考慮すると,弁護士費用は8000円とするのが相当である。 第4 結論以上によれば,原告の請求は,被告に対し,8万8000円及びこれに対する不法行為の日(誤った教示をした日)以降の日である平成26年12月18日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余はいずれも理由がないから棄却すべきである。なお,訴訟費用については,前記認容額等からすると,その全てについて原告の負担とするのが相当であるほか,仮執行の宣言についても,相当でないからこれを付さない。 よって,主文のとおり判決する。 名古屋地方裁判所民事第7部 裁判長裁判官前田郁勝 - 22 - 裁判官寺田幸平 裁判官餅田庄平 裁判官寺田幸平 裁判官餅田庄平

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