昭和35(オ)662 貸金並びに物品代金請求

裁判年月日・裁判所
昭和40年12月23日 最高裁判所第一小法廷 判決 その他 福岡高等裁判所 昭和33(ネ)362
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【DRY-RUN】主    文      原判決を破棄し、第一審判決を取り消す。      被上告人は上告人に対し金一九七、五〇五円並びに内金二四、〇〇〇円 に対する昭和二九年五月一日以降右完済に至るまで年五分の割合に

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判決文本文6,193 文字)

主    文      原判決を破棄し、第一審判決を取り消す。      被上告人は上告人に対し金一九七、五〇五円並びに内金二四、〇〇〇円 に対する昭和二九年五月一日以降右完済に至るまで年五分の割合による金員、内金 一七三、五〇五円に対する昭和二九年五月一日以降右完済に至るまで年七分の割合 による金員を支払え。      訴訟の総費用は被上告人の負担とする。          理    由  上告代理人浜田三平、同大塚竜司、同橋本純人、同用松哲夫、同宮島優の上告理 由について。  原審の確定した事実によれば、訴外Dは、アメリカ合衆国ハワイ、ホノルル市a 街b番地に居住するものであるが、米国旅行中の被上告人が昭和二六年一月四日米 国通貨二五〇ドルを、ついで、同月二七日同二五〇ドルを、いずれも利息は年七分 とし請求次第直ちに支払う約定のもとに右Dから借り受けたこと、Dは同年四月東 京滞在中被上告人に対して代金即時支払の約束で米国製RCAポータブルラジオ一 台を代金二四、〇〇〇円で売り渡したこと、その後昭和二八年二月一五日Dは右二 口の貸金債権合計五〇〇ドル、右ラジオ売却代金債権を上告人に譲渡し、被上告人 に対してその旨の通知をしたこと、上告人は昭和二六年四月以来再三被上告人に対 して右債権の支払を請求したことは、明らかである。  そこで、まずラジオ売却代金の点につき考えるに、訴外Dが被上告人に対してこ れを邦貨二四、〇〇〇円の代金で売り渡した行為及びDが右代金債権を上告人に譲 渡した行為は、いずれも外国為替及び外国貿易管理法並びに外国為替管理令(以下 法及び令と略称する)所定の制限及び禁止に触れるものではないから、何ら同法令 所定の許可を要するものではない。 - 1 -  しかして、被上告人の上告人に対する右金員の支払は、法二八条のいわゆる代償 支払にも、また法二七条一項三号の 及び禁止に触れるものではないから、何ら同法令 所定の許可を要するものではない。 - 1 -  しかして、被上告人の上告人に対する右金員の支払は、法二八条のいわゆる代償 支払にも、また法二七条一項三号の「非居住者のためにする居住者に対する支払」 にも該当しないものというべきである。蓋し、本件についてみるに、右債権は本邦 において発生し、譲渡されたものであつて、被上告人の上告人に対するその支払は、 Dのためにする支払と解すべき事情が認められないからである。そして原審の確定 した事実によれば、右ラジオ代金は即時支払の約束であつたというのであるから、 右債務は既に弁済期の到来しているものというべく、被上告人は上告人に対し右ラ ジオ代金及び上告人の請求する昭和二九年五月一日以降完済に至るまで民法所定の 遅延損害金を支払う義務があるといわなければならない。しからば、この点に関す る原審の判断は失当であり、原判決は破棄を免れない。  次に、五〇〇ドルの貸金債権につき考えるに、被上告人がDよりこれを借り入れ た行為及びDが右ドル債権を上告人に譲渡した行為は、いずれも法三〇条三号並び に令一三条一項一号に該当し、従つて令一三条二項の許可を必要とするところ、原 審の確定したところによれば、いずれもその許可を得なかつたことは明らかである から、右借入行為及び譲渡行為は右法令に違反するものである。しかし、同法の目 的は法一条に明記するとおりであり、しかも法二条は「この法律及びこの法律に基 づく命令の規定は、これらの規定による制限を、その必要の減少に伴い逐次緩和又 は廃止する目的をもつて再検討するものとする」と明記しているのであつて、要す るに、同法は本来自由であるべき対外取引を国民経済の復興と発展に寄与する見地 から過渡期的に制限する取締法規であると解せられるのである。法三〇条、令一三 条を取締法 する」と明記しているのであつて、要す るに、同法は本来自由であるべき対外取引を国民経済の復興と発展に寄与する見地 から過渡期的に制限する取締法規であると解せられるのである。法三〇条、令一三 条を取締法規と解する以上、これに違反する行為は刑事法上違法ではあるが、私法 上の効力に何ら影響がないといわなければならない。なんとなれば、右貸借、譲渡 のごとき行為はその本質上許されざる行為ではなく、現在における取締の必要上、 いわば暫定的に許可を必要としているにすぎないものであつて、右取締法規のある - 2 - 故をもつて、元来負担すべき債務を免れるがごときは、民法一条の規定する信義誠 実の原則に反するからである。  従つて、本件において、被上告人がDより右ドルを借り入れた行為及びDが右ド ル債権を上告人に譲渡した行為は、いずれも未だ右法令所定の許可を得ていないか ら、右法令に違反するものではあるが、私法上当然に無効のものではなく、また、 その許可は事前に得べきものではあるが、事後に得ることも亦妨げないと解すべき ものである。  さらにまた、米国で借り受けた右金員につき本邦において被上告人が上告人に支 払をなすことも、法二八条のいわゆる代償支払に該当するから、令一一条による大 蔵大臣の許可を必要とするけれども、右許可も前叙のとおり取締法規に基づく制約 であるから、私法上の効力に影響のないものといわなければならない。原審の確定 した事実によれば、右ドル債権は、請求次第支払われる約束であり、Dより上告人 に譲渡され、被上告人にその旨通知され、上告人は昭和二六年四月以来被上告人に その支払を請求しているというのであるから、右ドル債権の履行期は右請求の時に 到来しているものというべく、被上告人に既に債務不履行の責があるというを妨げ ない。大蔵大臣の許可なくして支払うことが刑事責任を生ずることを しているというのであるから、右ドル債権の履行期は右請求の時に 到来しているものというべく、被上告人に既に債務不履行の責があるというを妨げ ない。大蔵大臣の許可なくして支払うことが刑事責任を生ずることをもつて、民事 上の履行責任を解除する法令上の根拠はない。しからば、被上告人は上告人に対し 大蔵大臣の許可を得て右ドル債権額に相当する金一七三、五〇五円及び上告人の請 求する昭和二九年五月一日以降完済に至るまで約定利率年七分の割合による遅延損 害金を支払う義務があるといわなければならない。右債務の支払について大蔵大臣 の許可を必要とすることをもつて、右債務の不履行につき違法性の欠缺を主張し、 または債務の履行が不能であるということは許されない。  しからば、本件上告は理由があり原判決はこの点においても破棄を免れない。  結局、被上告人は上告人に対し、ラジオ代金二四、〇〇〇円及び貸金一七三、五 - 3 - 〇五円合計金一九七、五〇五円並びに右金二四、〇〇〇円に対する昭和二九年五月 一日以降右完済に至るまで年五分の割合による遅延損害金、右金一七三、五〇五円 に対する昭和二九年五月一日以降右完済に至るまで年七分の割合による遅延損害金 を支払う義務がある。  よつて、民訴法四〇八条一号、三九六条、三八六条、九六条、八九条に従い、裁 判官松田二郎の反対意見のある外、裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。  裁判官松田二郎の反対意見は、次のとおりである。  私は本件のうち、五〇〇ドルの支払請求の点について、多数意見に反対するもの である。  本件において、被上告人が訴外Dより五〇〇ドルを借入れた行為及びDが右ドル 債権を上告人に譲渡した行為は、いずれも外国為替及び外国貿易管理法三〇条三号 並びに外国為替管理令一三条一項一号に該当するから、同令一三条二項の許可を必 要とし、また米国で借受 入れた行為及びDが右ドル 債権を上告人に譲渡した行為は、いずれも外国為替及び外国貿易管理法三〇条三号 並びに外国為替管理令一三条一項一号に該当するから、同令一三条二項の許可を必 要とし、また米国で借受けた右金員を本邦において上告人に支払う行為も、右法律 二八条に該当するから、右管理令一一条による許可を必要とすることは、多数意見 のいうとおりであり、しかも、原審の確定したところによれば、右各行為はいずれ もその許可を受けていないのである。しかるに、多数意見は、右の許可を得ない行 為は法令違反ではあるが、その違反は私法上の効力に影響がなく、従つて、右許可 がなくとも上告人は被上告人に対し本件五〇〇ドルの支払を請求し得るものと主張 する。多数意見は、このように主張することによつて、被上告人が訴外Dより借受 けた五〇〇ドルの債務を免れることなからしめんとするものと思われる。  およそ法令違反の行為の効果としては、無効の場合があり、またその違反にもか かわらず有効な場合もあるが、いわば「浮動的無効」ともいうべきものの存在を看 過すべきではない。これは、法令に違反する行為の効力が絶対的に無効でなく、浮 動的状態にある場合であつて、この場合には、事後における承認により遡つて有効 - 4 - となり、事後における不承認により遡つて無効が確定するのである。わが国の判例 は、つとにこの種の理論を認めていた。たとえば、商法上、取締役が会社との取引 につき承認を要する場合につき、判例はいう、 「事前の承認がないとき、その取 引行為は無効ではあるが、確定的に無効なものでなく、事後の承認または承認の拒 絶あるまでは、『浮動の状態』である」(大判、大八・四・二一大審院民事判決録 二五輯六二一頁参照)と。これは、正にその一例である(もつとも、この判決は、 現行商法二六五条と異り、監査役の承認を必要としてい あるまでは、『浮動の状態』である」(大判、大八・四・二一大審院民事判決録 二五輯六二一頁参照)と。これは、正にその一例である(もつとも、この判決は、 現行商法二六五条と異り、監査役の承認を必要としていた時代のものであるが、承 認の点の理論は現在でも変りない)。そしてこの判例の採る理論は、法令違反の場 合につき、有効か無効かという二者択一より生ずる硬直性を緩和する形態ともいう べきものとして、われわれに示唆を与えるところが多いのである。  思うに、ある法令に違反した行為が、私法上、無効であるか有効であるか、ある いは右に述べた「浮動的無効」であるかは、それぞれの法令の当該規定の性格によ つて決すべきところであるが、今本件の対象たる外国為替及び外国貿易管理法の性 格を考えるに、同法は本来自由であるべき対外取引をば、国民経済の復興と発展に 寄与する見地から過渡的に制限したものであつて、必要の減少に伴い、逐次、その 制限を緩和又は廃止しようとするものである以上(同法一条二条参照)、同法の前 記法条に違反する行為の効力は、「浮動的無効」であると解するのを相当とする。 そして右法令による制約が、かくのごとき性格を有し、わが国の現段階における要 請に基づくものに過ぎない以上、これに違反する行為をもつて絶対的無効とするこ とは、行き過ぎであろう。しかし、また、多数意見の主張するごとく、その違反が 私法上の効力に何等の影響を及ぼさないものとすれば、前示法令は管理の目的を果 し得ないこととなろう。ことに、私は多数意見に対して、次のごとき疑問を有する。 多数意見は、 「判決主文」において、無条件の支払を命ずるものであるが、この 判決の命ずるところにより、許可を俟たずして、その支払をしたとき、刑事上の処 - 5 - 罰はどうなるのであろうか。もしこの場合、刑事上の責任を負うものとすれば、多 数意見 払を命ずるものであるが、この 判決の命ずるところにより、許可を俟たずして、その支払をしたとき、刑事上の処 - 5 - 罰はどうなるのであろうか。もしこの場合、刑事上の責任を負うものとすれば、多 数意見は難きを強いるものであり、もし刑事上の責任を負わないものとすれば、前 記法令の要求する許可を得ないまま、無条件に支払を命ずる判決を得る方法によつ て、容易に右法令による管理を潜脱し得ることとなろう。  要するに、右法条に違反する行為は、同法令の定める許可があるまで、浮動的状 態にあるが、その許可があれば最初に遡つて有効のものとなり、不許可となれば、 最初より無効たることが確定するのである。しかして、この許可は、本来、法律行 為の事前に受けるべきものであるが、事後に受けることも妨げないと解される。け だし、その許可は、外国為替並に外国貿易に関する行為を国家的見地よりして是認 するものである以上、それは必ずしも事前たることを要しないからである。従つて、 本件において五〇〇ドルの貸与及びその譲渡は、許可を受けることなく行われたに せよ、今後その許可を受けることによつて、右行為は最初に遡つて有効となり得る ものであり、さらにその支払についての許可をも受けるならば、結局、本件五〇〇 ドルの貸与、譲渡及び支払は、前示法令に違反するところがないといい得るのであ る。  叙上の理由により、本件五〇〇ドルの貸与、譲渡及び支払について許可があると きは、上告人は被上告人に対して右五〇〇ドルの支払を求め得ることは、明らかで ある(もつとも許可を要する以上、その支払を求めるこの訴は将来の給付の訴であ るが、本件において被上告人が上告人に対し無条件に支払うべきポータブルラジヲ の代金についてすら、請求を受けながら未だその支払をしていないことに鑑みれば、 上告人は被上告人に対し将来の給付の訴によつて、本件 、本件において被上告人が上告人に対し無条件に支払うべきポータブルラジヲ の代金についてすら、請求を受けながら未だその支払をしていないことに鑑みれば、 上告人は被上告人に対し将来の給付の訴によつて、本件五〇〇ドルの支払を求める 利益を有する)。ただ、上告人は右金員に対する遅延損害金の支払をも求めるが、 被上告人は許可あるまで、本件五〇〇ドルの支払をなすことを法律上禁止され、す なわち、そのときまでその支払について遅滞に陥るものではないのである。従つて、 - 6 - 上告人が支払を求める遅延損害金は、その許可の日の翌日以後のものに限り、是認 されるのである。しからば、結局、上告人は被上告人に対し前示許可があるときは、 右五〇〇ドルの残額を邦貨に換算した金一七三、五〇五円並にこれに対する許可の 日の翌日以降年七分の割合による遅延損害金の支払を求め得、上告人のその余の請 求は失当である。そして原判決は、これに従つて変更されることを要するのである。      最高裁判所第一小法廷          裁判長裁判官    松   田   二   郎             裁判官    入   江   俊   郎             裁判官    長   部   謹   吾             裁判官    岩   田       誠 - 7 -

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