主文 被告人を禁錮2年6月に処する。 この裁判確定の日から5年間その刑の執行を猶予する。 訴訟費用は被告人の負担とする。 理由 (罪となるべき事実)被告人は,平成14年9月12日午前8時2分ころ,業務として普通乗用自動車を運転し,神奈川県横須賀市a町b番地先月極駐車場に同車を停止させた際,同車はオートマチック車であり,セレクトレバーをドライブに設定し,フットブレーキを踏み込んだまま停止していたのであるから,降車するにあたっては,同車が不用意に発進しないようセレクトレバーをパーキングに設定し,かつ,サイドブレーキを引いて車両を確実に停止固定させる措置をとるべき業務上の注意義務があるのにこれを怠り,携帯電話の操作に気をとられて,セレクトレバーをパーキングに設定せず,かつ,サイドブレーキを引いて車両を確実に停止固定させる措置をとらないまま,フットブレーキから足を放し,漫然と同車から降車しようとした過失により,同車を発進させて前方に走行させ,折から自車前方を左から右へ歩行中のB(当時4歳)を同所に設置されていた自動販売機と同車前部で挟圧し,よって,同人に脳挫傷等の傷害を負わせ,同日午前11時14分ころ,同市cd丁目e番地f病院において,同人を前記傷害により死亡するに至らしめたものである。 (証拠の標目)省略(適用法令) 1 罰条刑法211条1項前段 2 刑種の選択禁錮刑を選択 3 刑の執行猶予刑法25条1項 4 訴訟費用刑事訴訟法181条1項本文(量刑事情)本件は,幼稚園教諭であった被告人が幼稚園の園児送迎用のワンボックスカーを運転し,同駐車場に到着し,園児らが降 25条1項 4 訴訟費用刑事訴訟法181条1項本文(量刑事情)本件は,幼稚園教諭であった被告人が幼稚園の園児送迎用のワンボックスカーを運転し,同駐車場に到着し,園児らが降車した際,サイドブレーキ等を引いて同車両を確実に停止させることを怠り,降車しようとしてフットブレーキから足を離したため,同車両を前方に走行させ,4歳の園児Bを同車両と自動販売機の間に挟み込み,死亡させたという事案である。なお,車両が前方に走行し,衝突した原因について,検察官は「被告人運転車両が前方に発進した際,あわててブレーキとアクセルを踏み間違えて暴走させた」旨主張するが,関係証拠によれば,被告人運転車両の事故地点までの走行距離は当初停止した地点から約1.4メートルであるところ,オートマチック車のいわゆるクリーピング現象によっても時速約2キロメートルくらいで約2.5秒で到達すること,動き出したのを認めてからアクセルペダルを踏み込んでも加速の反応を示すのはスタートしてから約2から3メートルの地点であること,被告人運転車両は衝突後直ちに停止していることが認められ,被害者Bの外傷の程度や自動販売機の損壊の程度を併せ考慮すると,上記検察官の主張は認め難く,むしろ,走行・衝突はクリーピング現象によるものと推認するのが相当である。ところで,被告人は,降車しようとした理由について,園児の出迎えをすべき教諭がまだ駐車場に来ていなかったので,降車した園児を安全に誘導しようとしたため,とする。この点,証人Dは,自分は出迎えのため駐車場に行き,事故前には停車した車両の右前方約1メートルくらいの所にいたと供述し,また,証人Cも,Dは車が停車したとき車の右前方にいたと供述する。しかし,Dがいた位置からして被告人がこれに気付かなかったとは考えにくいこと,CがDがいたとす 方約1メートルくらいの所にいたと供述し,また,証人Cも,Dは車が停車したとき車の右前方にいたと供述する。しかし,Dがいた位置からして被告人がこれに気付かなかったとは考えにくいこと,CがDがいたとする位置は車に乗車していたCの位置からは見えないのではないかとの疑問があること,これに対し,被告人の供述は,降車しようとした前記の理由について一貫しており,その信用性はあるものと考えられることからして,前記Dらの証言部分はにわかに採用できない。しかしながら,被告人の供述のとおりであったとしても,前示の状況を考えると,被告人としては,園児の事故防止のため最大限の注意を払うべきは当然であり(しかも,被告人は本件事故の5か月くらい前にも,園児送迎車両を運転中軽微であるが同じ原因態様による追突事故を起こしていた)被告人の過失に消長を来すものではなく,その過失は極めて大きいと言うべきで,幼い命を奪うことになった結果も誠に重大である。遺族の悲しみは,察するに余りがあり,被告人に対し厳罰を望んでいるのも当然である。 一方,被告人には,交通違反の反則金が2回あるだけで,他に交通事案を含め前科前歴はなく,幼稚園の教諭として真面目に勤めてきたこと,被害者の冥福を祈り一生かけてこれを償っていくことを妻とともに法廷で誓う等反省の念も真摯と認められること,被害者遺族の気持ちにより示談は未だ成立していないが,事故車両に付された保険により損害填補の可能性はあり,被告人も自ら見舞金を出捐していることなど被告人にとって酌量すべき事情もあり,なお,幼稚園側においても事故防止のため,園児の介添え,通行方法や駐車位置等について万全の措置がなされていたものと言い難いことを考慮すると,被告人に対し直ちに実刑を科すよりは,社会内処遇とし,一生かけても贖罪の道を歩ませることが相当と思料し,執 添え,通行方法や駐車位置等について万全の措置がなされていたものと言い難いことを考慮すると,被告人に対し直ちに実刑を科すよりは,社会内処遇とし,一生かけても贖罪の道を歩ませることが相当と思料し,執行猶予に付することとする。 よって,主文のとおり判決する。 (求刑ー禁錮2年6月)平成15年7月16日横浜地方裁判所横須賀支部裁判官福島節夫
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